説明

制御棒貫通孔部材検査装置

【課題】 原子炉圧力容器内の制御棒貫通孔部材に適用して精度よく検査が行えるようにした制御棒貫通孔部材検査装置を提供すること。
【解決手段】 原子炉圧力容器1内の上部格子板8と炉心支持板9の間にガイドパイプ10を着座させ、この中にチェーンブロック11のチェーン12によりマニピュレータ7とスキャナ5を吊り下げ、これらにより保持した超音波プローブ4を、マニピュレータ7とスキャナ5により移動させ、下鏡2に設置してあるCRDスタブチューブ3の溶接部の超音波探傷を行うようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器内の溶接部を対象とした非破壊検査装置に係り、特に、当該容器内に設置されている制御棒貫通孔部材の溶接部の健全性を検査するための制御棒貫通孔部材検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉圧力容器の中で当該容器の内部を非破壊検査する探傷検査装置については、従来から種々の提案がなされているが、その中の従来技術の一例では、原子炉圧力容器の上部からリンク機構により保持した超音波プローブを挿入し、リンク機構により超音波プローブを動かして対象部位を走査し、当該容器内の超音波探傷を行うものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、この従来技術では、CRDと略称される制御棒駆動機構のハウジング部に収納部を仮設し、ここに多関節腕を取付け、多関節腕から超音波プローブを保持しているリンク機構を操作し、炉内構造物であるジェットポンプディフューザ及びバッフルプレートを超音波探傷している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、従来技術の他の例としては、制御棒駆動機構に備えられていて、スタブチューブと称されている制御棒貫通孔部材の内面から超音波探傷を行うようにしたスタブ溶接部用超音波探傷装置とその探傷方法がある(例えば、特許文献2参照。)。そして、この従来技術では、検査対象のスタブチューブの上部に駆動装置を設置し、当該スタブチューブ内に水を入れ、駆動装置に取付けた超音波プローブを走査し、水浸法により超音波探傷を行うようにしている。
【特許文献1】特公平6−68485号公報
【特許文献2】特許第3489036号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のうち、原子炉圧力容器の上部から超音波探傷装置を挿入し測定を行うようにした従来技術は、探傷面が平面形状で干渉物が少なく、多関節部及びリンク機構の走査に充分なスペースがある場所では、探傷が可能である。
【0006】
しかしながら、原子炉炉底部の下鏡に設置してあるCRDスタブチューブの場合、それらは、球面をした下鏡の傾斜面に溶接されているため、探傷面が曲率傾斜形状になっており、且つ、それらが原子炉炉底部に密集して取付けられているため、狭隘な環境になっていて、充分なスペースが存在しない。
【0007】
しかもCRDスタブチューブの間には、中性子計測ハウジングが多数取付けられ、CRDスタブチューブ外周部と原子炉圧力容器内面壁の間には、シュラウドサポートリングなども設置されているため、多関節部及びリンク機構を操作し、プローブを下鏡球面の傾斜面に合わせて傾け、曲率傾斜形状である探傷面に沿ってプローブを走査する必要があるが、従来術では対応が極めて困難である。
【0008】
また、この従来技術のように、上下回転軸方向でしか操作できない多関節部及びリンク機構を用いた場合、狭隘な箇所で操作すると、隣接するCRDスタブチューブや中性子計測ハウジング、シュラウドサポートリングなどに検査装置を干渉させてしまうという問題が発生する。
【0009】
次に、スタブ溶接部用超音波探傷装置とその探傷方法に関する従来技術の場合、CRDハウジングの内面とCRDスタブチューブの溶接部の間には空隙があるので、超音波の伝播が難しく、このため超音波探傷の実機適用は困難であり、しかもCRDスタブチューブの溶接部の場合は、探傷部分が極めて狭隘なため、駆動装置をコンパクトにしなければならないので、この点でも、従来技術では超音波探傷の実機適用が困難である。
【0010】
また、正確な超音波探傷のためには、超音波プローブの接触性を良くして超音波をできるだけ垂直に探傷面に入射させる必要があるが、この場合は探傷面が曲率傾斜形状になっていので、やはり従来技術では超音波プローブの接触性を良くするのが困難である。
【0011】
本発明の目的は、原子炉圧力容器内の制御棒貫通孔部材に適用して精度よく検査が行えるようにした制御棒貫通孔部材検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、原子炉圧力容器内にある制御棒貫通孔部材の溶接部を当該制御棒貫通孔部材の外面から非破壊検査する制御棒貫通孔部材検査装置において、検査用のプローブを検査対象部位の近傍にもたらす移動機構と、前記プローブの姿勢を前記検査対象部位の表面に合わせるための移動機構とが設けられていることにより達成される。
【0013】
このとき、前記原子炉圧力容器内に設置されている上部格子板と炉心支持板の間に配置されたガイドパイプを設け、前記検査用のプローブを検査対象部位の近傍にもたらす移動機構と、前記プローブの姿勢を前記検査対象部位の表面に合わせるための移動機構が、このガイドパイプを介して前記炉心支持板の下部に吊り下げられるようにしても上記目的が達成され、ここで、前記検査用のプローブが超音波プローブと過流プローブの何れかに組替えられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波プローブなどの検査用プローブの姿勢を制御し走査させる移動機構と、この移動機構を検査対象となるCRDハウジングの周囲に位置させる移動機構とを別にしたので、各々に駆動機構を分担させることができ、この結果、検査用プローブを検査対象部位に追従させるための駆動機構がコンパクト化できるようになり、CRDスタブチューブが設置されている狭隘部に対しても検査装置の適用が可能になる。
【0015】
また、検査用プローブの姿勢が制御できるので、検査用プローブを探傷面に垂直に押し付けることができ、超音波探傷に際して、より正確な探傷結果を得ることができ、このとき、上記手段によれば、CRDハウジング内面とCRDスタブチューブ溶接部に空隙があっても、CRDスタブチューブ外面から探傷を行うため、超音波探傷に際しても空隙による影響をなくすことができる。
【0016】
本発明の実施形態に則して言えば、非破壊検査用のプローブの姿勢を制御し走査させるスキャナと、このスキャナをCRDハウジングの周囲にもたらして位置決めさせるマニピュレータとが設けられているので、スキャナには、探傷面に超音波プローブを追従させるために必要な駆動機構だけが集約でき、この結果、超音波プローブ近傍の駆動系がコンパクト化され、CRDスタブチューブが設置されている狭隘部に対しても適用できることになる。
【0017】
しかも、このスキャナには、超音波プローブを探傷面に垂直に押し付けるために必要な駆動軸が保持してあるので、正確な超音波探傷を得ることができ、且つ、CRDハウジング内面とCRDスタブチューブ溶接部に空隙があっても、超音波の入射は、CRDスタブチューブ外面から探傷を行うため、空隙による影響を受ける虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による制御棒貫通孔部材検査装置について、図示の一実施の形態により詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の全体構成図で、この図から明らかなように、この実施形態の適用対象である原子炉圧力容器1の炉底部には下鏡2があり、これに複数本のCRDスタブチューブ3が溶接されている。
【0020】
そこで、この実施形態では、これらCRDスタブチューブ3の溶接部を超音波により探傷するため、超音波プローブ4を用い、これと共にスキャナ5とマニピュレータ7、ガイドパイプ10、チェーンブロック11、チェーン12、作業台車13、それにレール14を設けたものである。
【0021】
そして、まず、スキャナ5は、検査用プローブの姿勢を検査対象部位の表面に合わせるための移動機構を構成するもので、このため超音波プローブ4を保持し、超音波プローブ4の角度を任意に変え、傾斜及び曲率をもっている溶接部の探傷面に対しても当該プローブ4が垂直になるようにした上で、超音波プローブ4を探傷面に押付け、超音波プローブ4により探傷面を走査させる働きをする。
【0022】
このとき、原子炉圧力容器1の外部には、図示してないが、超音波探傷装置が設けてあり、これから原子炉圧力容器1の中までケーブルが延長され、超音波プローブ4に接続されていて、超音波プローブ4による超音波探傷が行えるようになっている。
【0023】
なお、このような場合、渦電流検査技法の適用も可能であり、従って、この渦電流検査技法を適用して本発明の実施形態としたときには、超音波プローブ4に代えて渦流プローブを用い、超音波探傷装置に代えて渦電流検査装置が設けられることになる。
【0024】
次に、マニピュレータ7は、検査用のプローブを検査対象部位の近傍にもたらす移動機構を構成するもので、このためスキャナ5を保持し、CRDハウジング6の近傍からスキャナ5をCRDスタブチューブ3の溶接部に移動させる働きをする。
【0025】
このとき、ガイドパイプ10は、マニピュレータ7を内部に保持し、当該マニピュレータ7を上下方向に移動させる際、左右方向に揺れるのを防ぐ働きをする。このため当該ガイドパイプ10の内部に保持されているマニピュレータ7は、チェーンブロック11からチェーン12により吊り下げられていて、ガイドパイプ10内を上下に移動することができ、且つ、マニピュレータ7がガイドパイプ10の上端に位置したときは、ガイドパイプ10もチェーンブロック11からチェーン12により吊り下げられた状態になるように構成してある。
【0026】
従って、この状態では、マニピュレータ7をチェーンブロック11により上下に移動させることにより、ガイドパイプ10もマニピュレータ7と一緒に上下に移動できるようになるので、この状態でガイドパイプ10を吊り下げ、上部格子板8の上側から当該上部格子板8の格子の間を通って原子炉圧力容器1内に挿入させ、炉心支持板9の孔に着座させることにより、原子炉圧力容器1内に位置決めさせることができるようになっている。
【0027】
ここで、チェーンブロック11は、上記したように、ガイドパイプ10とマニピュレータ7をチェーン12により吊り下げ、ガイドパイプ10とマニピュレータ7を上下方向に移動させる働きをするが、このとき、更に、このチェーンブロック11は、作業台車13のレール14の上に、このレール14に沿って手動により移動可能に保持されていて、原子炉圧力容器1の上で、当該原子炉圧力容器1内の任意の位置の上に移動できることになる。
【0028】
次に、この実施形態の動作について説明すると、この制御棒貫通孔検査装置の実施形態では、まず、マニピュレータ7の先に、超音波プローブ4を備えたスキャナ5を取付け、次いでガイドパイプ10内にスキャナ5が吊り下げられている状態のマニピュレータ7を挿入する。そして、この状態でチェーンブロック11のチェーン12にマニピュレータ7を取付け、チェーンブロック11を操作し、原子炉圧力容器1内の所定の位置でマニピュレータ7とガイドパイプ10を降下させ、上部格子板8の格子間を通して炉心支持板9にガイドパイプ10を着座させる。
【0029】
次に、マニピュレータ7をガイドパイプ10内で降下させ、CRDハウジング6の近傍に位置させた後、マニピュレータ7を操作し、スキャナ5をCRDスタブチューブ3の溶接部に配置させ、スキャナ5に取付けてある超音波プローブ4を走査し、超音波探傷を実施するのである。
【0030】
従って、この実施形態によれば、ガイドパイプ10が上部格子板8の格子間を通して炉心支持板9に着座されているので、探傷に際して、超音波プローブ4を保持したスキャナ5と、これらを保持したマニピュレータ7を炉心支持板9の下側まで、容易に、しかも、必要な場所に間違いなくもたらすことができる。
【0031】
図2は、マニピュレータ7の詳細で、図示のように、このマニピュレータ7は、回転部71から回転部75までの5軸の可動機構を備えた多関節型腕機構で構成されている。そして、この図2において、(a)図は操作前の初期状態を示しており、(b)図は各軸の動きを表わしている。このとき、各回転機構には、図には表されていないが、所定のアクチュエータ、例えば電動アクチュエータが個別に設けられている。
【0032】
従って、これらの図から明らかなように、このマニピュレータ7によれば、スキャナ5の操作に自由度5を与えることができる。このため、図示してないが、原子炉圧力容器1の外部には、マニピュレータ7を制御するための制御装置が設けてあり、これも図示してないケーブルを介してマニピュレータ7に接続され、各回転部に設けてある電動アクチュエータが個別に制御できるようになっている。
【0033】
具体的に説明すると、このマニピュレータ7は、まず、回転部71の操作を行うことで矢印(イ)方向の回転移動が得られ、次に、回転部72の操作を行うことで矢印(ロ)方向の回転移動が得られる。そして、以下、回転部73の操作では矢印(ハ)方向の回転移動が得られ、回転部74の操作では矢印(ニ)方向の回転移動が得られ、そして、回転部75の操作では矢印(ホ)方向の回転移動が得られることになり、これによりスキャナ5を、容易にCRDスタブチューブ3の溶接部まで移動させることができる。
【0034】
次に、スキャナ5について説明すると、このスキャナ5は、第1の回転機構と、左右方向の直線移動機構、第2の回転機構、それに超音波プローブ4を探傷面に押付けるための押付け機構を備えたものであり、このため図3に示すように構成されている。ここで、図3の(a)は側面図で、(b)は正面図である。そして、このスキャナ5には、マニピュレータ7からケーブルが接続されていて、上記したケーブルをかいして制御装置に接続されている。
【0035】
まず、このスキャナ5には、上記した第1の回転機構として、動力源となるモータ32(後述)を内蔵した駆動部15と、回転動力を伝達するための歯車列(連結歯車)を内蔵した機構部16、回転軸17、それに連結板18が備えられていて、これらにより矢印(へ)方向の回転移動が連結板18に得られるように構成されている。
【0036】
このとき駆動部15のモータからの動力は機構部16の歯車列を介して回転軸17に伝達され、この結果、回転軸17に取付けた連結板18が矢印(へ)方向に駆動されることになる。
【0037】
ここで、図4は、駆動部15の詳細を示したもので、モータ32に電流が供給されるとシャフト33が回転する。そこで、シャフト33の先端に取付けてあるかさ歯車34が回転して、機構部16内に設置してある連結歯車35が回転するようになっている。このとき、モータ32のシャフト33には位置検出器36が設けてあり、これにより連結板18の動きが制御できるようになっている。
【0038】
次に、この連結板18には、上記した左右方向の直線移動機構として、動力源となるモータを内蔵した駆動部19と、回転動力を伝達するための歯車列(連結歯車)とボールネジ機構を内蔵した機構部20、21、それに前記ボールネジ機構により駆動される連結板22が備えられていて、これらにより、矢印(ト)方向の直線移動が連結板22に得られるように構成されている。
【0039】
このとき、駆動部19からの動力は機構部20に内蔵されている歯車列(連結歯車)を介して、同じく機構部21に内蔵されているボールネジ機構に伝達され、この結果、連結板22が矢印(ト)で示す左右方向に駆動されることになる。
【0040】
ここで、図5は、駆動部19と機構部20、21の詳細を示したもので、モータ37に電流が供給されるとシャフト38が回転し、このシャフト38に設けられている連結歯車39が回転され、この連結歯車39に連結されているボールネジ40が回転し、当該ボールネジ40の回転により、これに噛み合っているボールナット移動し連結板22が左右方向に駆動されることになる。このときモータ37の回転量が位置検出器41により検出され、連結板22の動きが制御できるようになっている。
【0041】
また、この連結板22には、上記した第2の回転機構として、動力源となるモータを内蔵した駆動部23と、回転動力を伝達するための歯車列(連結歯車)を内蔵した機構部24、回転軸25、25a、それにホルダ26が備えられていて、これらにより矢印(チ)方向の回転移動がホルダ26に得られるように構成されている。
【0042】
このとき、駆動部23からの動力は機構部24に内蔵されている歯車列を介して回転軸25に伝達され、この結果、これら回転軸25、25aに取付けられているホルダ26が矢印(チ)方向に回転駆動されることになる。
【0043】
そして、このホルダ26には、上記した押付け機構として、スライドガイド27、27aと、ホルダ28、エアシリンダ29、それにロッド30が備えられていて、これらにより矢印(リ)方向の直線移動がホルダ28に得られるように構成されている。
【0044】
このとき、スライドガイド27、27aはホルダ28に取付けられ、ここでホルダ28にはエアシリンダ29が取付けられていて、エアシリンダ29のロッド30はホルダ26に取付けられている。そこて、エアシリンダ29に空気圧が加えられると、ホルダ28がスライドガイド27、27aに沿って、矢印(リ)方向に直線駆動されることになる。
【0045】
ここで、図6は、駆動部23と機構部24、及びホルダ26、28の詳細を示したもので、モータ42に電流が供給されると、機構部24内のシャフト43が回転し、このシャフト43に設けてある連結歯車44を介して回転軸25が回転され、この回転軸25が取付けられてるホルダ26が回転する。このときのモータ42の回転量は、モータ42に取付けてある位置検出器45により検出され、ホルダ26の動きが制御される。
【0046】
また、ホルダ28に取付けているエアシリンダ29に空気圧が加わると、ホルダ26に取付けられているロッド30が突き出され、ホルダ26とホルダ28を接続しているスライドガイド27、27aに沿ってホルダ28が上下方向に駆動されることにあなる。
【0047】
従って、このスキャナ5によれば、マニピュレータ7により与えられる自由度5、つまり図2の矢印(イ)〜(ホ)により示される自由度5に加えて、更に図3の矢印(ヘ)〜(リ)により示される自由度4が与えられることになる。そこで、このホルダ28に、超音波プローブ4のホルダ31を取付けてやれは、超音波プローブ4にも、スキャナ5による自由度4の動きが与えられ、マニピュレータ7から見た場合、超音波プローブ4には、最終的に自由度9が与えられることになる。
【0048】
そこで、この実施形態によれば、まず、マニピュレータ7により、スキャナ5をCRDスタブチューブ3の溶接部まで移動させ、次いでスキャン5により、超音波プローブ4に任意の姿勢を取らせた上で、溶接部に接触させることができる。
【0049】
従って、この実施形態では、超音波プローブ4の移動系が、位置を設定する移動系と、姿勢を制御する移動系に分けられていて、マニピュレータ7により位置を設定する移動系を構成し、スキャナ5により姿勢を制御する移動系を構成したことになり、この結果されるようにしたものになっている。
【0050】
この結果、スキャナ5には、探傷面に超音波プローブ4を追従させるために必要な駆動機構だけが集約でき、この結果、超音波プローブ4の近傍の駆動系がコンパクト化され、CRDスタブチューブ3が多数本設置されている下鏡2などの狭隘部に対しても容易に適用することができる。
【0051】
また、この結果、原子炉炉底部などで、探傷面が曲率傾斜形状になっていても、この実施形態によれば、超音波プローブ4を接触性良く探査面に押しつけることができる。
【0052】
また、この結果、CRDスタブチューブ3などが密集して狭隘な環境になっていて、充分なスペースが存在しない場合でも、この実施形態によれば、容易に超音波プローブ4を探査面にもたらし、接触性良く探査面に押し付けることができる。
【0053】
このときの本実施形態による動作について、図7により説明する。ここで、まず、図7(a)は、CRDハウジング6の手前側にある溶接部を検査対象部位としたときの状態を示したもので、次に図7(b)は、図7(a)のA方向から見た状態を示したものである。
【0054】
この場合、まず、マニピュレータ7を、図1のチェーンブロック11により、ガイドパイプ10で案内してCRDハウジング6の近傍に下降させる。このとき、最初にガイドパイプ10を上部格子板8から挿入させ、炉心支持板9に着座させておくことは言うまでもない。
【0055】
次に、マニピュレータ7の各軸のアクチュエータを制御し、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の各回転方向に駆動させ、まず、スキャナ5をCRDスタブチューブ3の溶接部に対応した位置に設定させる。次に、スキャナ5を制御し、図7(a)に示すように、傾斜形状になっている下鏡2の表面に超音波プローブ4が垂直に当接するように、矢印(へ)方向と矢印(ト)方向に超音波プローブ4を動かす。
【0056】
次いで、図7(b)に示すように、CRDスタブチューブ3の軸方向に曲率のついた探傷面に沿って、超音波プローブ4を矢印(チ)方向に動かし、この後、超音波プローブ4を矢印(リ)方向に動かして、探傷面に超音波プローブ4を押し付け、この後、超音波プローブ4を矢印(ト)で示すように、左右方向に走査させて、CRDスタブチューブ溶接部46の超音波探傷を行うのである。
【0057】
従って、この実施形態によれば、超音波プローブ4の移動系をスキャナ5とマニピュレータ7に分割しているので、スキャナ5には、探傷面に超音波プローブ3を追従させるために必要な駆動軸だけが集約され、この結果、超音波プローブ4の駆動系がコンパクト化されるので、CRDスタブチューブ3が多数本設置されている下鏡2などの狭隘部に対しても適用することができる。
【0058】
しかも、このスキャナ5には、超音波プローブ4を探傷面に垂直に押し付けるために必要な駆動軸が設けてあるので、正確な超音波探傷を得ることができ、且つ、CRDスタブチューブ3の外面から探傷を行うため、CRDハウジング6の内面とCRDスタブチューブ3の溶接部に空隙があっても、超音波の入射と伝播に影響が現れる虞がなく、従って、高精度で検査することができる。
【0059】
なお、以上の説明では、スキャナ5に超音波プローブ4を設け、超音波探傷を行うようにした実施形態について示したが、上記したように、検査用プローブとして渦流プローブを用い、渦電流探傷装置に接続してやれば、渦流探傷技法による制御棒貫通孔検査装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による制御棒貫通孔部材検査装置の一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるマニピュレータの詳細を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるスキャナの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるスキャナの一部の駆動部の詳細を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるスキャナの他の一部の駆動部の詳細を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるスキャナの更に別の駆動部の詳細を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の動作説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1:原子炉圧力容器(RPV)
2:下鏡
3:CRDスタブチューブ(制御棒駆動機構の制御棒貫通孔部材)
4:超音波プローブ
5:スキャナ
6:CRDハウジング
7:マニピュレータ
71〜75:回転部
8:上部格子板
9:炉心支持板
10:ガイドパイプ
11:チェーンブロック
12:チェーン
13:作業台車
14:レール
15:駆動部
16:機構部
17:回転軸
18:連結板
19:駆動部
20:機構部
21:機構部
22:連結板
23:駆動部
24:機構部
25、25a:回転軸
26:ホルダ
27、27a:スライドガイド
28:ホルダ
29:エアシリンダ
30:ロッド
31:ホルダ
32:モータ
33:シャフト
34:かさ歯車
35:連結歯車
36:位置検出器
37:モータ
38:シャフト
39:連結歯車
40:ボールネジ
41:位置検出器
42:モータ
43:シャフト
44:連結歯車
45:位置検出器
46:CRDスタブチューブ溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器内にある制御棒貫通孔部材の溶接部を当該制御棒貫通孔部材の外面から非破壊検査する制御棒貫通孔部材検査装置において、
検査用のプローブを検査対象部位の近傍にもたらす移動機構と、
前記検査用プローブの姿勢を前記検査対象部位の表面に合わせるための移動機構とが設けられていることを特徴とする制御棒貫通孔部材検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御棒貫通孔部材検査装置において、
前記原子炉圧力容器内に設置されている上部格子板と炉心支持板の間に配置されたガイドパイプを設け、
前記検査用のプローブを検査対象部位の近傍にもたらす移動機構と、前記プローブの姿勢を前記検査対象部位の表面に合わせるための移動機構が、このガイドパイプを介して前記炉心支持板の下部に吊り下げられるように構成されていることを特徴とする制御棒貫通孔部材検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御棒貫通孔部材検査装置において、
前記検査用のプローブが超音波プローブと過流プローブの何れかに組替えられるように構成されていることを特徴とする制御棒貫通孔部材検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−3400(P2007−3400A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185019(P2005−185019)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】