説明

制御装置、レーザ照射装置、最適化フォントデータDB、記録方法、プログラム、記憶媒体

【課題】ストロークの太さ、文字サイズを考慮して、ストロークの隙間や重複による過大な熱による媒体への影響を抑制することができる制御装置等を提供すること。
【解決手段】伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体に可視情報を記録する装置を制御する制御装置100であって、文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段41と、描画情報記憶手段41から、描画対象となる線画の描画情報を取得する描画情報取得手段102と、線画の太さを指定する太さ情報を取得する太さ情報取得手段103と、太さ情報と前記描画情報に基づき、線分の太さを含めた描画範囲が互いに重なり合う、対の線分を検出する重複線分検出手段104と、描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分
割する描画情報調整手段105と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字などの線画を非接触又は接触に描画する装置の制御装置等に関し、特に、情報の記録、消去を繰り返し行っても、記録材料の記録面へ与える損傷が少ない制御装置、レーザ照射装置、最適化フォントデータDB、記録方法、プログラム及び記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物にレーザ光を照射して対象物がレーザ光を吸収して加熱されることで、対象物に文字や記号を書き込む技術を活用したレーザ照射装置(レーザマーカー)が市販されている。
レーザ照射装置のレーザ光源にはガスレーザ、固体レーザ、液体レーザ、半導体レーザ等を用いて、レーザ光の発振波長により、対象物を金属、プラスチック、感熱紙、サーマルリライタブル媒体等に書き込むことが出来る。
金属やプラスチックは、レーザ光を照射して加熱することで削ったり、焦がしたりすることで対象物に印字を行う。一方、感熱紙、サーマルリライタブル媒体では、レーザ光照射による加熱で記録層が発色することで印字を行う。
物品のあて先や物品名を印字する媒体に感熱紙を用いられることがある。例えば工場で使われるプラスチック製のコンテナにはこのような感熱型の媒体が貼付されている。感熱紙の媒体は、熱により変色する性質をもっており、熱ヘッド等を利用して文字や記号を書き込むことができる。
【0003】
そして、このような感熱紙でも書き込み、消去を繰り返し行えるリライタブルタイプのものが登場してきた。物流で利用する際には、コンテナに媒体を貼ったまま書き込み、消去ができることが望ましいため、非接触でレーザ光を媒体に照射して発熱させることで文字等を描く方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、フレキシブルジョイントにより構成された複数のレンズ系の一端から入射したレーザ光による画像を他端まで伝達するリレーレンズ系が記載されている。
【0004】
なお、レーザによる画像形成は従来から知られており(例えば、特許文献2参照。)、特許文献2には、1つの原画像データを複数のラインに分割して、ライン毎に感光ドラムにレーザを照射する画像形成方法が記載されている。
【0005】
ところで、このサーマルリライタブル媒体は、ある温度の熱で発色が消去され、さらに高熱をかけると発色する性質を持っている。しかし、過大な熱負荷を加えるとサーマルリライタブル媒体が変質し、媒体の寿命が短くなったり、消去が完全に行えなくなったりするなどの劣化が現れやすくなる。
【0006】
ここでサーマルリライタブル媒体に文字を描画することを考える。文字のストロークをレーザでなぞることで発熱し文字が媒体上に浮き上がる。図1は、サーマルリライタブル媒体にレーザで描画された文字の一例を示す。図1の文字は例えば数字の「7」を変形したものであるが、交点210でストロークが交差している。ストローク同士が交差していると、直前に描いたストロークの余熱があるうちに、再度レーザがあたることになり、結果として交点210がより高熱になってしまうため、サーマルリライタブル媒体に悪影響が出てしまう。
【0007】
また、交点がなくても数字の「7」では折り返し部分220が存在するが、レーザの照射方向を制御するミラーの慣性の影響により、折り返し部分220では比較的長時間折り返し点付近にレーザが照射されるのでやはり高熱になってしまい、サーマルリライタブル媒体に悪影響をもたらす。
【0008】
そこで、レーザを重複して照射することを回避する技術が提案されている(例えば、特許文献3,4,5参照。)。特許文献3には、レーザで描画するに際し、線が重複する箇所は、前に描いた線を通り越してから次の線を描くようにレーザを走査する記録方法が開示されている。特許文献4には、レーザの描画線が交差する場合に、交差する描画点に照射されるレーザのパワー及び照射時間の少なくとも一方を少なくするように制御する記録消去装置が開示されている。特許文献5には、文字などの描画線が重なる部分では、一方の描画線ではレーザ光を照射しない交点除去の記録方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3、4、5には、重複箇所や折り返し部分の具体的な検出方法が記載されていない。また、レーザ光は点ではなくある程度の幅を持ってレベルに文字等を印字するため、ストロークも有限の太さを持っている。このため、レーザの太さによってストロークが重複するか否かが影響される。図2は、ストロークの太さにより影響されるストロークの重複の一例を示す図である。図2(a)(b)はいずれも「にんべん」でありストロークを構成する座標点は同じであるが、図2(a)は太さが細く図2(b)は太さが太い。図2(b)ではストロークが太いため、重複点230が生じている。また図2(c)は文字の大きさにより重複度合いが変化することを示す図である。従来技術は重複を防ぐために前に描いた線を通り越しているが、どの程度通り越すかは文字の大きさを考慮することなく予め決定されている。その場合、このデータを元に異なる大きさの文字を同じストローク太さで描く場合は、文字サイズが拡大すると通り越す長さが変倍されて大きくなるのに対して、ストロークの太さが一定であるために隙間が開くことになる。逆に、文字サイズを縮小すると、通り越す長さが変倍されて小さくなるのにストロークの太さが一定であるので重複が残存することになる。レーザ光による描画線は幅を持つため、特許文献2、3、5の技術では、文字のサイズ、線幅により、交点だけでなく折り返し点やその他の部位で、ストロークの隙間、重複を十分に回避できないという問題がある。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、ストロークの太さ、文字の大きさを考慮して、ストロークの隙間や重複による過大な熱が加わることによる媒体への影響を抑制することができる制御装置、レーザ照射装置、最適化フォントデータDB、記録方法、プログラム及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体に可視情報を記録する装置を制御する制御装置であって、文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段と、前記描画情報記憶手段から、描画対象となる線画の描画情報を取得する描画情報取得手段と、線画の太さを指定する太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、前記太さ情報と前記描画情報に基づき、前記線分の太さを含めた描画範囲が互いに重なり合う、対の線分を検出する重複線分検出手段と、描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割する描画情報調整手段と、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割することで、文字サイズ、線幅に依存せず、隙間が開いたり、ストロークが重複することを抑制出来る。
ストロークの重複により、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱で線が太くなることを防ぐことで文字潰れを抑制出来、また、隙間が空くことで文字品質が低下することを防ぐことが出来る。
更に、リライタブル媒体では、ストロークの重複を防ぐことで、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱が加わることを防ぎ、繰返し書き換えによる劣化での消え残り(消去しても消えない)や発色部の濃度低下を抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
ストロークの太さを考慮して過大な熱による媒体への影響を抑制することができる制御装置、レーザ照射装置、最適化フォントデータDB、記録方法、プログラム及び記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】サーマルリライタブル媒体にレーザで描画された文字の一例を示す図である。
【図2】ストロークの太さ、文字のサイズにより影響されるストロークの重複の一例を示す図である。
【図3】描画制御装置により描画される文字の一例を示す図である。
【図4】レーザ照射装置のハードウェア構成図の一例である。
【図5】レーザ光により描画した例の一例を示す図である。
【図6】全体制御装置のハードウェア構成図の一例である。
【図7】従来のレーザ照射装置の機能ブロック図の一例である。
【図8】従来のレーザによるストロークフォントの描画手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】フォントデータの一例を示す図である。
【図10】レーザ照射装置の機能ブロック図の一例である。
【図11】重複ストローク算出手段の機能をより詳細に説明する図の一例である。
【図12】円形状の文字を直線に変換する手順を模式的に示す図の一例である。
【図13】線分同士の最短距離の検出を模式的に説明する図の一例である。
【図14】分割・短縮される線分を模式的に説明する図の一例である。
【図15】分割・短縮される線分の別の例を模式的に説明する図の一例である。
【図16】分割・短縮した場合としない場合の線分の例を模式的に説明する図の一例である。
【図17】描画順の最適化を模式的に説明する図の一例である。
【図18】線分グループの描画順の決定を模式的に説明する図の一例である。
【図19】重複が排除された文字の描画例とその描画命令の一例を示す図である。
【図20】レーザを用いてリライタブル媒体に描画する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図21】重複した線分を検出する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図22】描画順整理の前半部の流れを示すフローチャート図の一例である。
【図23】描画順整理の後半部の流れを示すフローチャート図の一例である。
【図24】描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計から、描画順を決定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図25】レーザ照射装置の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図26】最適化フォントデータの一例と、最適化フォントデータから生成される描画命令の一例を、それぞれ示す図である。
【図27】最適化フォントデータの生成手順と、最適化フォントデータを用いた文字の描画手順をそれぞれ示すフローチャート図の一例である。
【図28】線分の端点の発色について説明する図の一例である。
【図29】レーザ照射装置の機能ブロック図の一例である(実施例3)。
【図30】端点の延長手順を含む描画命令生成処理のフローチャート図の一例である。
【図31】「Y」という文字に対し、一部の線分の短縮結果の一例を示す図である。
【図32】一筆部品において延長されない線分を説明する図の一例である。
【図33】延長により重複が生じた文字の一例を示す図である。
【図34】アウトラインフォントのフォントデータからそのまま描画した「ま」という文字の一例を示す図である。
【図35】レーザ照射装置の機能ブロック図の一例である(実施例4)。
【図36】直線近似の手順を示す図の一例である。
【図37】内部を塗りつぶされた袋文字、及び、白黒反転文字の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0016】
なお、以下では、遍(へん)や旁(つくり)、又は、更にその一部など文字の一部を区別せずに文字という。また、レーザの1回の照射開始点から終了点までにより描画される文字の一画を一筆部品という。したがって、文字は1以上の一筆部品から構成される。なお、後述するように一筆部品は1以上の線分から構成される。
【0017】
本実施形態の一筆部品(一画)は従来のストロークフォントのストロークに対応するが、本実施形態の一筆部品は、レーザ照射装置200による文字の描画に最適化されてものであって、公的機関(例えば、日本規格協会、ISO等)等が定める一画と同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態のレーザ照射装置200は、レーザ光により媒体を発色させて一筆部品を描画するため、一筆部品を適切な形状に調整する。
【0018】
図3は、本実施形態のレーザ照射装置200により描画される文字の一例を示す。図3(a)のように交点210が生じる文字の場合、レーザ照射装置200は交点210が生じないよう一方の一筆部品を分割する。図3(a)では縦の一筆部品110を一筆部品110aと110bに分割することで、交点210を解消している。
【0019】
図3(b)のように文字の太さのため重複点230が生じる文字の場合は、レーザ照射装置200は重複点230が生じないよう一筆部品130を分割するか、一筆部品140を短縮する。図3(b)では一筆部品140を一筆部品141に短縮することで、重複点230を解消している。
【0020】
図3(c)のように折り返しのため折り返し点220と複数の折り返し点221が存在する文字の場合、2通りの対応が考えられる。1つは折り返し点220と221を全て解消して図3(c)の右上のように一筆部品150から一筆部品151と複数の一筆部品152を形成する方法である。もう1つは、折り返し点220、221の折り返し角度を考慮して、図3(c)の右下のように、折り返し角度が浅い折り返し点221ついては重複を解消しない文字の形成方法である。折り返し角度が浅い場合、リライタブル媒体20の劣化は大きくないので、このように文字を構成することで文字の美観を維持しやすくできる。
【0021】
以下では、交差、重複、折り返しを区別しない場合、単に文字(又は一筆部品)の重複と表現する。本実施形態のレーザ照射装置200は、このように文字の太さを考慮して、あらゆる形状の文字に生じうる重複を適切に抑制することができる。
【実施例1】
【0022】
図4は、本実施形態のレーザ照射装置200のハードウェア構成図の一例を示す。レーザ照射装置200は、全体を制御する全体制御装置100と、レーザを照射するレーザ照射部160とを有する。また、レーザ照射部160は、レーザを照射するレーザ発振器11と、レーザの照射方向を変える方向制御ミラー13と、方向制御ミラー13を駆動する方向制御モータ12と、光学レンズ14と、集光レンズ15と、を有する。
【0023】
レーザ発振器11は、半導体レーザ(LD(Laser Diode))であるが、気体レーザ、固体レーザ、液体レーザ等でもよい。方向制御モータ12は、方向制御ミラー13の反射面の向きを2軸に制御する例えばサーボモータである。方向制御モータ12と方向制御ミラー13とによりガルバノミラーを構成する。光学レンズ14は、レーザ光のスポット径を大きくするレンズであり、集光レンズ15はレーザ光を収束させるレンズである。
【0024】
リライタブル媒体20は、180℃以上の温度に加熱して急冷することで発色し、130〜170℃の温度に加熱することで消色する書き換え可能な感熱媒体である。通常の感熱紙やサーマルリライタブル媒体は近赤外領域のレーザ光を吸収しないので、近赤外レーザ波長を発振するレーザ光源(半導体レーザや固体レーザのYAGなど)を用いる場合は、感熱紙、サーマルリライタブル媒体にレーザ光を吸収する材料の添加や層を追加する必要がある。
本実施形態では、文字サイズ、線幅に依存せず、隙間が開いたり、ストロークが重複することを抑制出来る。書き換え可能なリライタブル媒体20では、ストロークの重複により、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱で線が太くなる現象を防ぐことで文字潰れを抑制出来、また、隙間が空くことで文字品質が低下することを防ぐことが出来、また、ストロークの重複を防ぐことで、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱が加わることを防ぎ、繰返し書き換えによる劣化での消え残り(消去しても消えない)や発色部の濃度低下を抑制することが出来る。書き換えとは、レーザ光で加熱して記録を行い、レーザ光又は温風、ホットスタンプ等で加熱して消去することである。
また、本実施形態では、サーマルペーパ、プラスチック、金属等のように書き換えが可能でない媒体に対しても、ストロークの重複により、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱で線が太くなる現象を防ぐことで文字潰れを抑制出来、また、隙間が空くことで文字品質が低下することを防ぐことが出来、好適に適用できる。
なお、書き換えができないサーマルペーパとは、加熱により消色が困難な感熱紙をいう。
【0025】
図5を用いて具体例を説明する。図5はレーザ光により描画した例の一例を示す図である。
【0026】
図5(a)は、交差した2本の線分の一例を示す。正方形で示した交差部分210は、短い時間で2度レーザ光が照射されるため他の部分より高温になる。高温になった交差部210の周りも発色に必要な温度に到達するため、図の斜線で示した部分210a〜210dも発色してしまう。そのため、交差部分210が不明瞭になり、文字が小さい場合は、線との間の本来あるべき隙間(印字されていない部分)がなくなり、文字が潰れてしまう。
【0027】
また、図5(b)は2本の線分を連続して描いた例である。方向変化が急であるため、折り返し部220が高温になることは既に説明した通りである。しかし、折り返し部220にレーザ光が長時間照射されることになり、高温になった折り返し部220の周りも発色に必要な温度に到達するため、図の斜線で示した部分220aも発色してしまう。このため、文字の輪郭が崩れ、周囲の斜線部220aが玉のような形状になってしまう。
【0028】
図5(a)(b)のような現象は、書き換えできないサーマルペーパ、プラスチック、金属などにおいても発生しうる。本実施形態のレーザ照射装置200は、交差部210や急角度での折れ曲がり部220を解消することで、こういった周囲の加熱も防ぐことができるので、リライタブル媒体20でない書き換えできないサーマルペーパ、プラスチック、金属などにおいても、図5(a)(b)で示すような現象が発生せず、また、図2(c)で文字サイズを拡大したときに発生する隙間を抑制出来、結果として文字等の描画品質を向上させることができる。
【0029】
図4に戻り、レーザ発振器11で発生したレーザ光は、光学レンズ14を通過してスポット径が拡大される。そして、ガルバノミラーにより文字の形状に応じた方向に進行方向が調整された後、集光レンズ15により所定の焦点距離に集光され、リライタブル媒体20に照射される。レーザ光が照射されるとリライタブル媒体20が熱を持ち、その熱で発色して文字などを描画できることになる。なお、消去パワーは抑制されている。
【0030】
照射位置の調整は、全体制御装置100が方向制御モータ12を駆動して方向制御ミラー13を動かすことで行う。レーザのON、OFFやパワーは全体制御装置100がレーザ発振器11を制御して行う。照射パワーの制御や光学レンズ14、集光レンズ15のレンズ位置又は焦点距離、リライタブル媒体の位置を調整することで、描画する線分の線幅を変化させることもできる。
【0031】
図6は、全体制御装置100のハードウェア構成図の一例を示す。図6は、主にソフトウェアによって全体制御装置100を実装する場合のハードウェア構成図であり、コンピュータを実体としている。コンピュータを実体とせず全体制御措置100を実現する場合、ASIC((Application Specific Integrated Circuit))等の特定機能向けに生成されたICを利用する。
【0032】
全体制御装置100は、CPU31、メモリ32、ハードディスク35、入力装置36、CD−ROMドライブ33、ディスプレイ37及びネットワーク装置34を有する。ハードディスク35には、ストロークフォントの一連の文字のフォントデータを記憶するフォントデータDB41、フォントデータから重複を排除した描画命令を生成しレーザ照射部160を制御する文字描画プログラム42が記憶されている。
【0033】
CPU31は、ハードディスク35から文字描画プログラム42を読み出し実行し、後述する手順で、リライタブル媒体20に文字を描画する。メモリ32は、DRAMなどの揮発性メモリで、CPU31が文字描画プログラム42を実行する際の作業エリアとなる。入力装置36は、マウスやキーボードなどレーザ照射部160を制御する指示をユーザが入力するための装置である。ディスプレイ37は、例えば文字描画プログラム42が指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数で、GUI(Graphical User Interface)画面を表示するユーザインターフェイスとなる。例えば、リライタブル媒体20に描画する文字の入力欄が表示される。
【0034】
CD−ROMドライブ33は、CD-ROM38を脱着可能に構成され、CD−ROM38からデータを読み出し、また、記録可能な記録媒体にデータを書き込む際に利用される。文字描画プログラム42及びフォントデータDB41は、CD-ROM38に記憶された状態で配布され、CD-ROM38から読み出されハードディスク35にインストールされる。CD−ROM38は、この他、DVD、ブルーレイディスク、SDカード、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード、xDカード等、不揮発性のメモリで代用することができる。
【0035】
ネットワーク装置34は、LANやインターネットなどのネットワークに接続するためのインターフェイス(例えばイーサネット(登録商標)カード)であり、OSI基本参照モデルの物理層、データリンク層に規定されたプロトコルに従う処理を実行して、レーザ照射部160に文字コードに応じた描画命令を送信することを可能とする。文字描画プログラム42及びフォントデータDB41は、ネットワークを介して接続した所定のサーバからダウンロードすることができる。なお、ネットワーク経由でなく、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、ワイヤレスUSB、Bluetooth等で直接、全体制御装置100とレーザ照射部160を接続してもよい。
【0036】
リライタブル媒体20に描画される描画対象の文字は、例えばリスト状にハードディスク35に記憶されているか、入力装置36から入力される。文字は、UNICODEやJISコードなどの文字コードで特定され、全体制御装置100は文字コードに対応する文字のフォントデータをフォントデータDB41から読み出し、それを描画命令に変換することでレーザ照射部160を制御する。
【0037】
〔従来の描画〕
図7は、従来のレーザ照射装置200の機能ブロック図の一例を示す。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が文字描画プログラム42を実行することで実現される。
【0038】
まず従来の、レーザによるストロークフォントの描画について、図8のフローチャート図に基づき説明する。まず、対象文字コード取得手段101は、描画対象の文字の文字コードを取得する(S1000)。
【0039】
描画対象の文字の文字コードは、入力装置36から入力される場合と、予めハードディスク35に記憶されている場合(ネットワーク経由で入力される場合を含む)とがある。
入力装置36から入力される場合はキーボードのキーを押下することで入力されるキーコードに対応した文字コード、又は、IME(Input Method Editor)が起動している場合にキーコードからIMEが変換した文字コードが対象文字コード取得手段101に入力される。また、ハードディスク35に予め記憶されている場合、例えば宛先などの文字列がリスト状に記憶されているので、文字列の文字を指定する文字コードが読み出され、対象文字コード取得手段101に入力される。
【0040】
ついで、フォントデータ取得手段102は、文字コードに基づきフォントデータDB41を参照し、文字コードに対応づけられたフォントデータを読み出す(S2000)。
【0041】
図9(a)はフォントデータの一例を示す。図9(a)のフォントデータは「1」という文字のフォントデータであり、線分(直線又は曲線のいずれでもよい)で定義される文字の例である。フォントデータは線分の端点の座標、及び、描画順を有する。この座標は、文字をビットマップに配置した場合のビットマップの所定画素を原点に指定されている。
【0042】
ストロークフォントをレーザなどで描画する場合、座標だけではレーザを照射しながら移動するのか、レーザを照射しないで移動するのかを判別できない。このため、ストロークフォントのフォントデータには、レーザの描画開始位置(人間が書くとすると筆をおろす位置)と移動命令、レーザの描画終了位置(人間が書くとすると筆を上げる位置)と移動命令が含まれている。図9(a)では、「m」がレーザの描画開始位置とその座標までの移動命令を、「d」が描画終了位置とその座標までの移動命令をそれぞれ示す。したがって、「m」は筆を上げて移動すること、「d」は筆を下ろして移動すること、を意味する。このように、フォントデータは、座標による文字の形状、描画の順番、描画の方向(図では矢印を有する線分)を規定し、「m」「d」によりレーザ照射の有無を規定する。すなわち、一以上の連続した「d」に対応づけられた座標により表される直線が一筆部品である。
【0043】
したがって、図示するフォントデータの場合、座標(24,24)から座標(88、24)まで線分が描かれ、座標(88,24)から座標(56、24)までは線分を描かずに移動し、座標(56、24)から座標(56、224)まで線分が描かれ、座標(56、224)から座標(24、176)まで線分が描かれる。
【0044】
一方、描画される文字の形状は、線分を指定する2点の座標が線分の数だけあれば特定できることになる。図9(b)は描画される文字を構成する各線分の座標の一例を示す。
後述するように本実施形態では、この描画される線分の座標と文字の太さから、重複の有無を判定する。
【0045】
なお、図9(b)では、フォントデータに基づき文字の大きさ2倍に拡大した。ストロークフォントは、アウトラインフォントようにスケーラブルフォントの一種なので、例えばリライタブル媒体20に描画する際の文字の大きさを指定できるようになっている。
【0046】
ストロークフォントの文字の大きさの調整方法はいくつか知られているが、ここでは説明のため単にフォントデータの座標をそれぞれ2倍にした。例えば文字の中心からの距離に応じて線分の座標を調整してもよい。
【0047】
「1」のように3本の直線で描画される文字の場合、線分の座標は3対となる。[ ]で囲まれた数字は描画の順番であり、続く4つの数字のうち最初の2点は線分の始点を、後ろの2点は線分の終点を表す。
【0048】
次いで、図8に戻り、太さ情報取得手段103はフォントデータの太さの情報を取得する(S3000)。太さの情報は、フォントデータDB41に登録されているか、ユーザが入力装置36から入力する。文字の太さはレーザがリライタブル媒体20に照射される際の径に依存するので、太さの情報により、レーザ発振器11の出力や光学レンズ14、集光レンズ15のレンズ位置又は焦点距離やリライタブル媒体20の位置が制御される。
【0049】
ついで、描画命令生成手段107は、フォントデータに基づき描画命令を生成する(S4000)。描画命令については後述するが、文字の太さ、筆をおろして移動する2点の座標、及び、筆を上げて移動する2点の座標等を含む。
【0050】
レーザ照射部160は、描画命令を受け取ると、太さの情報に基づきレーザ発振器11の出力や光学レンズ14、集光レンズ15の焦点距離やリライタブル媒体20の位置を必要に応じて調整し、リライタブル媒体20の指定された座標から座標までレーザ光を照射する(S5000)。これにより、発熱によりリライタブル媒体20が発色して文字が描画される。
【0051】
図9(c)は、レーザ用フォントデータにより描画された文字の一例を示す。ここではまだ重複を排除していない。線分91〜93がレーザ光の中心が通過した軌跡に対応し、矢印の向きが描画の方向を示す。また、文字中に記された数字は、各線分91〜93の描画の順番である。レーザ光の照射パワーや光学レンズ14、集光レンズ15のレンズ位置又は焦点距離やリライタブル媒体20の位置に応じてえられた太さの文字「1」が描画されている。
【0052】
〔本実施形態の描画〕
図10は、本実施形態のレーザ照射装置200の機能ブロック図の一例を示す。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が文字描画プログラム42を実行することで実現される。図10において、図7と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図10のレーザ照射装置200は、重複ストローク算出手段104、ストローク分割・短縮手段105及び描画順整理手段106、を有する。
【0053】
〔重複の判定〕
本実施形態の描画について説明する。重複ストローク算出手段104は、フォントデータに基づき、線分の位置と線の太さに起因して重複する可能性のある線分を検出する。
【0054】
まず、重複の判定について説明する。図11は、重複ストローク算出手段104の機能をより詳細に説明する図の一例である。線分検出手段111は、フォントデータに基づき図9(b)の如く線分の座標を決定する。この線分の座標から、文字に重複が生じるか否かが判定される。
【0055】
ところで、数字の「1」のように、文字が全て直線で形成されている場合、線分の座標を容易に抽出することができる。しかしながら、アウトラインフォントでは曲線をスケーラブルに描画できるように、例えばベジェ曲線のような曲線で描画できるようになっている。曲線で描画されていると、線分間の距離の算出が複雑になるので、曲線を含む文字であっても直線に変換して描画することが好適になる。
【0056】
そこで、線分検出手段111は、フォントデータが曲線を含む場合、曲線部分を直線に変換し、各直線の線分の座標を検出する。なお、文字が曲線を含む場合、フォントデータには曲線制御用のデータが含まれているので、その文字が曲線を含むか否かはフォントデータから判定される。
【0057】
図12(a)は、円形状の文字から生成される線分を模式的に示す図の一例である。始点の座標(A,B)と終点の座標(C,D)に曲線制御が施され、円形状の一筆部品310が得られる。このような文字の場合、線分検出手段111は、所定距離s毎に一筆部品310の線分の座標を検出する。描画される線分の座標は、スケールを調整した後の座標である(2倍なら2倍した後)。
【0058】
線分検出手段111は、微少間隔毎に距離を蓄積し、距離s毎にその座標を取得する。図12(a)では、5つの座標が得られている。この座標を元に、図9(b)のような描画される線分の座標を決定する。図12(b)は、曲線を直線に変換した後の、線分の座標の一例を示す。
【0059】
図11に戻り、距離算出手段115は、線分同士の最短距離を求める。最短距離の求め方は次の手順に従う。
・線分同士に交点がある場合、距離はゼロ
・交点がない場合は、
- 1対の線分の端点間距離
- 一方の線分の端点から他方の線分に下ろした垂線の足までの距離(垂線が設定できる場合)のいずれかにより距離を求める。すなわち、交点がない場合は、2つの方法でそれぞれ距離を求め、最も短い距離により重複の有無を判定する。
【0060】
図13は、線分同士の最短距離の検出を模式的に説明する図の一例である。図13(a)は交点のある2つの線分の一例を示す。交点は、2つの線分を直線の方程式で表し、その連立方程式を解くことで、求めることができる。
【0061】
y=ax+b
y=ax+b
の場合、交点を(x,y)とすると、
(x,y)=( (b−b)/(a−a),a+b
2つの直線は平行でない限り交点が得られるが、本実施形態では交点(x,y)が線分内に含まれる場合にのみ、交点があると判定する。
【0062】
図13(b)は、一方の線分の端点から降ろした垂線の足の長さの算出を模式的に説明する図の一例である。図11の垂線算出手段113は、図示するような垂線を算出する。垂線は、他方の線分に直交する線分で、一方の線分の端点を通る線分である。したがって、垂線算出手段113は、まず、他方の線分に直交する傾きの直線であって、一方の線分の端点を通過する垂線の式を算出する。
【0063】
y=cx+d
この直線が他方の線分と交差すれば、一方の線分の端点から他方の線分に垂線を降ろすことができることになる。図13(a)と同様に、垂線の足存在範囲算出手段114は、例えば垂線と他方の線分の交差する点を求め、それが線分内であれば垂線が引けたと判定する。この場合、距離算出手段115は、一方の線分の2つの端点から、他方の線分まで降ろした垂線の足の長さを算出する。これは端点と交点までの距離として求めることができる。
【0064】
2つの線分の関係によっては、垂線を引くことができない場合がある。図13(c)は2つの線分の端点間の距離の算出を模式的に説明する図の一例である。距離算出手段115は、一方の線分の2つ端点と、他方の端点の2つの端点の距離をそれぞれ(すなわち4つの距離)算出する。距離算出手段115は、垂線算出手段113が垂線を算出できないと判定した場合のみ算出してもよいし、垂線の算出の是非に関わらす端点間の距離を算出してもよい。
【0065】
このようにして検出されたいくつかの距離のうち、文字の太さよりも短い距離がある場合、線分が互いに重複することになる。すなわち、最短距離が文字の太さよりも短くなければ交差しないので、いくつかの距離のうち最短距離を決定する。距離比較手段116は、太さ情報取得手段103が取得した太さの情報と、最短距離を比較する。そして、最短距離が太さ以下であれば、その最短距離が検出された1対の線分を抽出する。これにより、重複ストローク算出手段104は、当該文字のその1対の線分には重複が生じることを検出することができる。なお、この場合、重複ストローク算出手段104は、「重複量
= 太さ−最短距離」を検出する。
【0066】
〔線分の分割・短縮〕
図10に戻り、ストローク分割・短縮手段105は、距離がゼロの一対の線分、端点と線分の距離又は端点間の最短距離が文字の太さ以下の距離となった一対の線分について、一方の線分を分割又は短縮する。一方の線分としたのは、どちらか一方の分割又は短縮することで重複を解消できるからである。
【0067】
どちらの線分を、分割・短縮するかは次のルールにより決定する。
R1)分割・短縮することで一方のストロークのみが完全に消失する場合、他方のストロークを分割・短縮する。
R2)どちらの線分も完全には消失しない、又は、どちらの線分も完全に消失する場合、分割・短縮により消失する線分長が短いほうを分割又は短縮対象とする(これは、消失長が短いほうが情報量の欠落が小さいとの考えに基づくものである。)。
【0068】
図14は、分割・短縮される線分を模式的に説明する図の一例である。図14(a)は分割又は短縮する前の線分により描画された文字を示す。線分51の端点は(E,F)と(G,H)であり、線分52の端点は(G,H)と(J,K)であり、線分53の端点は(L,M)と(N,O)である。
【0069】
重複ストローク算出手段104は、線分51の端点(G,H)と線分53の端点(L、M)との距離、線分52の端点(G,H)と線分53の端点(L、M)との距離、がそれぞれ文字の太さ以下であることを検出する。なお、厳密には、線分51と52の端点(G,H)が一致するのでここでも重複すると判定されるが、このように交差の角度が小さい重複は後述するように無視できる。
【0070】
まず、ストローク分割・短縮105は、交点がないこと、及び、どちらを短縮しても一方のストロークのみが完全に消失しないので、ルールR2が適用されると判定する。このため、ストローク分割・短縮手段105は、仮に、線分51と52を両方とも短縮した場合と、線分53を短縮した場合とで、短縮量を比較する。
【0071】
図14(b)は、線分53を短縮して描画された文字の一例を、図14(c)は、線分51,52を短縮して描画された文字の一例を、それぞれ示す。重複ストローク算出手段104は、分割・短縮により消失する線分長が短いほうを分割又は短縮対象とする。
【0072】
ストローク分割・短縮手段105は、線分53を短縮する場合の短縮量と、線分51、52をそれぞれ短縮する場合の短縮量を算出し、どちらを短縮するかを決定する。線分51と線分53の重複量と、線分52と線分53の重複量が等しい場合、線分53を短縮する場合は、「1×重複量」が短縮量になるのに対し、線分51、52を短縮する場合は、「2×重複量」が短縮量になる。したがって、線分53を短縮した方が、消失する線分長が短い。
【0073】
ストローク分割・短縮手段105は、かかる計算に基づき線分53を短縮すると決定する。短縮量は重複量と同じである。したって、ストローク分割・短縮手段105は、線分53の端点(L、M)を短縮量だけ短縮して、その線分53の短縮後の座標を決定する。
【0074】
図15は、分割・短縮される線分の別の例を模式的に説明する図の一例である。図15(a)は分割又は短縮する前の線分により描画された文字をしめす。重複ストローク算出手段(正確にはストローク交点検出手段)104は、線分54と線分55が交差することを検出する。
【0075】
このため、ストローク分割・短縮手段105は、線分54又は55のいずれかを分割又は短縮する。交点の場合は、分割することになる。
【0076】
まず、ストローク分割・短縮105は、仮に、両方の線分をそれぞれ分割してみて、重複量だけ分割後の線分を短縮した場合に、一方のストロークのみが完全に消失するか否かを判定する。
【0077】
図15(b)は、線分55を仮に分割して、重複量を短縮して描画された文字の一例を、図15(c)は、線分54を仮に分割して重複量を短縮して描画された文字の一例を、それぞれ示す。図15(b)に示すように、線分55を、線分54と重複しないように分割すると、線分55が完全に消失してしまう。したがって、図15の文字の場合、ルールR1が適用されるので、重複ストローク算出手段104は、線分54を分割対象とする。
【0078】
なお、完全に消失してしまうことは、線分55の端点(V,W)と交点(P,Q)の距離が、文字の太さより短いことから検出される。
【0079】
交差する場合、ストローク分割・短縮手段105は、交点を線分の一方の端点として線分54を分割し、端点が(R,S)(P,Q)の線分54aと端点が(P,Q)(T,U)の線分54bを生成し、線分55との重複量を算出する。交差している場合、端点(P,Q)が線分55と重複する重複量は文字の太さの半分と同じなので、特に算出することなく重複量を検出できる。短縮量は、短縮して移動した端点の広がりを考慮して文字の太さに等しい。
【0080】
したがって、ストローク分割・短縮手段105は、線分54を分割した線分54aの2つの端点の座標を(R,S)(P,Q+太さ)に決定する。同様に、線分54を分割した線分54bの2つの端点の座標を(P,Q−太さ)(T,U)に決定する。以上から、図15(c)のように、交差を解消した文字を描画することができる。
【0081】
このように、線分の分割・短縮を、重複がなくなる最低限度行うことで、図2(c)に示したように隙間が空いたり、ストロークの重複により交点、重複点、折り返し点で過剰な熱で線が太くなる現象を防ぐことで文字潰れを抑制出来、文字の品質低下を最小限に抑制することができる。更に、リライタブル媒体20では、ストロークの重複を防ぐことで、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱が加わることを防ぎ、繰返し書き換えによる劣化での消え残り(消去しても消えない)や発色部の濃度低下を抑制することが出来る。
【0082】
〔重複回避の例外〕
この文字の品質を確保する考え方に従い、重複していても分割又は短縮しない場合について説明する。図16は、分割・短縮した場合としない場合の線分の例を模式的に説明する図の一例である。図16(a)は分割又は短縮する前の線分により描画された文字を示す。図16(a)の文字「C」が、直線のみから構成されるフォントデータの場合はそのまま描画すればよく、曲線を含むフォントデータの場合は、線分検出手段111が距離s毎に決定した線分の座標を利用する。
【0083】
図16(a)では、線分56〜69の端点が一致している。したがって、重複ストローク算出手段104は、線分同士が交差していること又は端点間の距離が太さ以下であることを検出する。上記のルールR2が適用されるとすると、各線分56〜69が短縮され図16(b)に示す文字を描画することができる。
【0084】
しかしながら、このように短い距離で文字が途切れるとユーザが見づらいと感じる場合がある。そこで、ストローク分割・短縮手段105は、新たなルールR3を定義し、文字を描画する。
R3)2本の線分が連続しており、かつ、それらが交わる角度が浅い場合には分割・短縮を行わない。
【0085】
図16(d)は線分が交わる角度を説明する図である。例えば、線分57と58は図示するように交わる角度が大きい。線分が交わる角度が大きい場合、方向制御モータ12や方向制御ミラー13の慣性の影響が少なくレーザが重複した部分が過度に高温となることは少ない。そこで、ストローク分割・短縮手段105は、線分が連続している場合には、線分が交わる角度を算出し、交わる角度が所定値(例えば45度)以下の場合のみ、線分を短縮する。
【0086】
線分の交わる角度は、2つの線分をベクトル(原点はどこでもよい)v1、v2で表し、ベクトルの内積をベクトルの大きさで割ることで得られる。
【0087】
cosθ= (v1・v2)/(|v1||v2|)
ルールR3を図16(a)の文字に適用すると、線分56と57以外の重複部では線部を短縮する必要がないと判定される。線分56と57で、ストローク分割・短縮手段105が例えば線分56を短縮することで、図16(c)に示す文字が描画される。ルールR3により、交わる角度が深い場合には、レーザの向きを制御する方向制御モータ12と方向制御ミラー13の慣性の影響を考慮して重複を解消でき、交わる角度が小さい場合には重複したまま描画できるので図16(b)のように太さが頻繁に変化するような文字の品質低下を防止できる。
【0088】
〔描画順の最適化〕
線分が重複しないように各線分の端点の座標が決定されたら描画命令生成手段107が、描画命令を生成することで、文字を描画することができるが、描画順を最適化することで描画速度を向上させることができる。
【0089】
図10に戻り、描画順整理手段106は、線分の座標に基づき線分の描画順を最適化する。最適化とは、例えば方向制御ミラー13の移動距離が最小となることをいう。
【0090】
図17(a)は、分割・短縮までが完了した文字「B」の線分と描画結果の一例を示す。文字「B」は線分71〜85により構成されている。この状態では、分割や曲線の線形化により線分が増えた場合、その線分をいつどのように描画するかの情報が含まれていないとしてよい。このため、各線分に対し改めて描画順を整理する。
【0091】
描画順整理手段106は、次の手順で描画順を最適化する。
s1)所定の線分(どの線分でもよい)の端点と同じ座標を持つ他の線分の端点を数珠繋ぎ的に探し、配置順に並べ替えた上で1つの線分グループを決定する。
【0092】
例えば、図17(a)では、線分71の端点は線分72の端点と一致し、線分72の端点は線分73の端点と一致し、線分73の端点は線分74の端点と一致し、線分74の端点は線分75の端点と一致し、線分75の端点は線分76の端点と一致し、線分76の端点は線分77の端点と一致する。したがって、線分71〜77は、1つの線分グループであり、線分79〜84は、1つの線分グループである。
【0093】
s2)端点が同じ他の線分がない場合は、1本の線分のみで1つの線分グループとする。
例えば、図17(a)では、線分78,85が1つの線分グループである。
【0094】
s3)すべての線分をいずれかの線分グループに所属させる。
図17(a)では4つの線分グループが形成される。したがって、この線分グループは、一筆部品と同等である。
【0095】
s4)線分がグループ化されると、線分グループ間で描画順を決定する。所定の線分グループの終点にもっとも近い、他の線分グループの始点・終点を次々に探し、その順に線分グループの描画順を並べ替える。
並べ替えるとしたのは、元の描画順が残っているからであるが、元の描画順を初期化してから描画順を決定してもよい。
【0096】
例えば、線分グループIから始めると、線分グループII(又はVIだがここではIIを選択する)があり、線分グループIIの他方の端点の近くには線分グループIIIの端点がある。
したがって、線分グループI,II、III、VIの順番に線分グループの描画順を並べる。
【0097】
s5)注目している線分グループの終点が、その先にある線分グループの終点に近いと判断された場合は、その先にある線分グループ内の線分の順番およびその向きを反転させる。
【0098】
線分グループ内の描画方向は、線分グループ毎に線分に一様な方向であればよく、元の描画順に基づき、線分グループ内の描画方向が既に定められている。図17(a)ではこれを矢印の方向で示すが、描画順を並べ替えた結果、元の描画順に基づく描画方向が適切でない場合がある。そこで、描画方向を最適化する。例えば、図17(a)では線分グループIの終点に最も近い、始点・終点を持つ線分グループは線分グループVIとIIである。
線分グループVIは端点が始点なので何もしなくてよいが、線分グループIIは端点が終点なので方向を逆にする。
【0099】
次に、方向の逆になった線分グループIIの終点に最も近い、始点・終点を持つ線分グループは線分グループIIIである。その線分グループIIIの端点は終点なので、線分の順番及び方向を並べ替える。図17(b)は、描画方向が変更された描画方向の一例を示す。
s6)線分グループの描画順、線分グループ内の描画方向を更新する。
以上の処理に基づきフォントデータに含まれる、線分グループの描画順、線分グループ内の描画方向が変更されるので、新たな描画順及び描画方向でフォントデータを更新する。
【0100】
すなわち、描画順を整理する際は、連続描画する線分グループを定め、その後、無駄な方向制御ミラー13の動きがないように、線分グループ間の距離が近いものを次の描画対象にし、描画順に応じて描画方向を決定することで、描画にかかる時間を短く(方向制御ミラー13の移動距離が最小となる)することができる。
【0101】
〔描画順の更なる最適化〕
線分グループの描画順を決定し、線分グループ内の各線分の順番及び方向を替える手順に代えて、端点間の距離を指標にして線分グループの描画順を決定することができる。
図18は、線分グループの描画順の決定を模式的に説明する図の一例である。図18(a)は「ナ」という文字であるが、重複を排除した結果、第1画が分割され、3つの一筆部品から構成されている。ここでは、説明のためi番目の一筆部品をSiと表現する。但し、n=一筆部品の数として、i (0≦i≦n-1)である。
【0102】
n本の一筆部品がある場合、書き順の組み合わせは「n!」通りである。しかし、一筆部品毎に、始点と終点のどちらから描画してもよいので、それを考慮すると、1組の描画順について、2^(n-1)通りの並び方が存在する。(^ はべき乗を表す)。
【0103】
したがって、n個の一筆部品を有する文字について、始点と終点を考慮した書き順の組み合わせは、「n ! × 2^(n-1)」通りの並び方がある。「ナ」についてn=3とすると、書き順は24通り存在する。
【0104】
図18では、例として3通りの並べ方を示した。重複を排除した直後の、線分の座標は3つなので、図18(b)に各線分の座標を示した。この座標に基づき描画順を最適化する。
図18(c)は、並べ替えを行っていない状態である。
図18(d)は並べ替えを行ったものである。
図18(e)は、始点・終点の逆転したものを交えて並べ替えを行ったものである。図18(c)〜(e)の先頭の[ ]は、「+」が始点と終点を逆転していないものを、「−」が始点と終点を逆転したものをそれぞれ示す。
【0105】
描画順整理手段106は、それぞれの並び方に対し、線分グループ間の距離の和を求める。すなわち、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計を求める。
【0106】
図18(c)の例では、(160、32)から(272、480)に描画した後、(16,352)から(240、352)へ描画し、(304、352)から(448、352)に描画する。したがって、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計は次のようになる。
【0107】
距離の合計=L1+L3
=√{(272−16)+(480−352)}+√{(240−304)+(352−352) }= 350.2
図18(d)の例では、(16、352)から(240、352)に描画した後、(304,352)から(448、352)へ描画し、(160、32)から(272、480)に描画する。したがって、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計は次のようになる。
【0108】
距離の合計=L3+L2
=√{(240−304)+(352−352) }+√{(448−160)+(352−32) } = 494.5
図18(e)の例では、(16、352)から(240、352)に描画した後、(304,352)から(448、352)へ描画し、(270、480)から(160、32)に描画する。したがって、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計は次のようになる。
【0109】
距離の合計=L3+L4
=√{(240−304)+(352−352) }+√{(448−272)+(352−480) } = 281.6
描画順整理手段106は、最も距離の合計が小さい描画順を選択する。図18の例では、例示した以外も含めた24通りの組み合わせの中で図18(e)の描画順が最も距離の合計が短い。
【0110】
なお、図18の例は、1文字だけの最適化であるが、2文字以上を連続して描画する場合、1つ前の文字の最後の描画位置と、次の文字の最初の描画位置まで、描画を行わずにただ描画対象位置が動くことになる。したがって、図18の処理を1文字ずつではなく、1枚のリライタブル媒体20全体の文字列に対し行うことで、処理時間は増大するが、描画そのものにかかる時間をより短くすることができる。
【0111】
〔描画命令〕
図10に戻り、描画命令について説明する。図19は、重複が排除された文字の描画例とその描画命令の一例を示す。この文字「1」は図9に示したように3つの線分から構成されていたが、線分91は交点(112、48)により線分91a、91bに分割され、線分93は折り返し点(112、448)により短縮され線分93aとなっている。したがって、重複が排除された結果、線分は4つになっている。
【0112】
図19(a)は図9(b)と同じものであり、図19(b)は描画命令の生成対象となる線分の座標である。図19(c)は、描画例を示す。なお、すでに描画順の最適化は終了しているものとする。
【0113】
このように、線分の座標、描画順、が定まれば、図9で説明した「m」と「d」を座標に対応づけることで描画命令を生成することができる。図19(d)は、描画命令の一例を示す。図19(d)において「m」と「d」は図9と同じ制御コードであり、「t」は文字の太さ、「w」は描画にかかるまでの待ち時間(動いた方向制御ミラー13が完全停止するまでまって描画を安定させるための制御コード)を含んでいる。なお、「w」はレーザ照射部160に適した固定値が予め与えられており、例えばミリ秒やマイクロ秒、又は、レーザ照射部160に特有のユニット時間を単位とする。
図19(b)によれば、最初に座標(48,48)まで描画せずに移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「m 48 48」「w 50」となる。
【0114】
次に、座標(48,48)から(80,48)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(112,48)に移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「d 80 48」「m 112 48」 「w 50」となる。
【0115】
次に、座標(112,48)から座標(112,448)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(80,400)に移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「d 112 448」「m 80 400」「w 50」となる。
【0116】
次に、座標(80,400)から座標(48,352)まで筆をおいて描画し、その後、描画せずに座標(144,48)に移動し、その後、所定時間「w 50」待つので、「d 48 352」「m 144 48」「w 50」となる。
【0117】
次に、座標(144,48)から座標(176,48)まで筆をおいて描画し、終了なので、「d 176 48」となる。このような描画命令により、図19(c)のように重複のない文字を描画することができる。
【0118】
〔動作手順〕
以上の構成を用いて、本実施形態のレーザ照射装置200が、レーザを用いてリライタブル媒体20に描画する手順について説明する。図20は全体の流れを示し、図21は重複した線分を検出する手順を示し、図22と図23は描画順の最適化の手順を示す。
【0119】
図20において、ステップS10〜S30は従来の手順と同様である。すなわち、対象文字コード取得手段101は、描画対象の文字の文字コードを、入力装置36又は、ハードディスク35に予め記憶されているリスト状の文字列から取得する(S10)。
【0120】
ついで、フォントデータ取得手段102は、文字コードに基づきフォントデータDB41を参照し、文字コードに対応づけられたフォントデータを読み出す(S20)。フォントデータは図9(a)に示した。
【0121】
ついで、太さ情報取得手段103はフォントデータの太さの情報を取得する(S30)。太さの情報は、フォントデータDB41に登録されているか、ユーザが入力する。文字の太さはレーザがリライタブル媒体20に照射される際の径に依存する。
【0122】
・重複する線分の検出
続いて、重複ストローク算出手段104は、重複する線分を検出する(S40)。ステップS40の処理を図21に基づき説明する。
【0123】
まず、線分検出手段111は、1文字のフォントデータから線分の座標を抽出し、任意の2つの線分を読み出す(S401)。
【0124】
そして、ストローク交点検出手段112は、2つの線分に交点があるか否かを判定する(S402)。
【0125】
交点がない場合(S402のNo)、端点間の距離を検出するため、2つの線分の4つの端点のうち、1つの端点を選択する(S403)。そして、距離算出手段115は、他方の(注目している端点を有さない方の)線分の端点との距離を検出する(S404)。
【0126】
次に、垂線算出手段113は、他方の線分まで垂線を降ろす(S405)。垂線が他方の線分と交わらないことがあるので、垂線の足存在範囲算出手段114は垂線の足が他方の線分と交差するか否かを判定する(S406)。
【0127】
垂線が他方の線分と交わる場合は(S406のYes)、距離検出手段は、端点と他方の線分までの垂線の長さを検出し(S407)、交わらない場合は(S406のNo)、次の端点の処理に移行する。
【0128】
2つの線分の4つの端点について端点間又は垂線の足の長さの検出が終了すると(S408のYes)、4つの端点について求めた距離のうち最小の距離を決定する(S409)。これにより、交点がない2つの線分について最も接近している部分の距離を決定することができる。
【0129】
なお、ステップS402で交点があると判定された場合、線分間の距離はゼロと判定される(S413)。
【0130】
ついで、距離比較手段116は、距離が文字の太さ以下か否かを判定する(S410)。距離が太さ以下でない場合(S410のNo)、重複ストローク算出手段104は、その2つの線分については分割・短縮処理が不要であると判定する(S414)。
【0131】
距離が太さ以下の場合(S410のYes)、重複ストローク算出手段104は、その2つの線分については分割・短縮処理が必要であると判定する(S411)。
【0132】
ついで、重複ストローク算出手段104は、全ての線分の2つの組み合わせについて吟味したか否かを判定し(S412)、吟味した場合には処理を終了する。
【0133】
・分割又は短縮
図20のステップS50に戻る。ついで、ストローク分割・短縮手段105は、分割・短縮が必要であると判定された2つの線分について、その一方の線分を分割又は短縮する(S50)。分割又は短縮する線分の選択方法はR1、R2に示した通りであり、分割又は短縮の有無のルールはR3に示したとおりである。また、線分の短縮量は重複量とすることができる。
【0134】
・描画順の整理
次に、描画順整理手段106は、各線分の描画順を整理する(S60)。ステップS60の処理を図22、図23に基づき説明する。図22は描画順整理の前半の、同一の端点を持つ線分をグループ化する処理を示しており、図23は後半部分で、線分グループの描画順を定め、さらに所属する線分の描画方向を定めている。
【0135】
まず、描画順整理手段106は、線分を1つずつ線分グループに登録していく(S601)。全ての線分はいずれかの線分グループに登録されるので、描画順整理手段106は、未登録の線分があるか否かを判定する(S602)。
【0136】
未登録の線分がある場合(S602のNo)、線分グループの終点(この時点では線分グループの終点が真の終点とは限らない)と端点が一致する線分を探す(S603)。線分グループの終点と端点が一致する場合(S604のYes)、端点が一致する線分はその線分グループに登録する(S605)。
【0137】
これにより、その線分グループには新たな線分が加わったことになるので、描画順整理手段106は線分グループの終点を更新する(S606)。この処理を未登録の線分がなくなるまで繰り返す。
【0138】
続いて線分グループの始点側の処理を実行する。全ての線分はいずれかの線分グループに登録されるので、描画順整理手段106は、未登録の線分があるか否かを判定する(S607)。
【0139】
未登録の線分がある場合(S602のNo)、線分グループの始点(この時点では線分グループの始点が真の始点とは限らない)と端点が一致する線分を探す(S607)。線分グループの始点と端点が一致する場合(S607のYes)、端点が一致する線分はその線分グループに登録する(S609)。
【0140】
これにより、その線分グループには新たな線分が加わったことになるので、描画順整理手段106は線分グループの始点を更新する(S610)。この処理を未登録の線分がなくなるまで繰り返す。以上の処理により、全ての線分がいずれかの線分グループに登録された。
【0141】
続いて、線分グループの描画順を定め、さらに所属する線分の描画順を定める処理を図23に基づき説明する。
【0142】
まず、描画順整理手段106は、線分グループを1つ選択する(S611)。ここで最初に選択する線分グループは、例えば予めフォントデータに第1画であると定められた線分グループである。全ての線分グループの登録が完了していない場合(S612のNo)、線分グループの終点に最も近い端点を有する別の線分グループを検索する(S613)。等距離に端点が複数ある場合は、その全ての端点を抽出しておく。
【0143】
そして、その別の線分グループの端点が終点か否かを判定する(S614)。終点でない場合(S614のNo)は何もせず、終点の場合(S614のYes)は終点を端点とする線分グループ内の線分の順番と方向を反転させる(S615)。図17(b)を例にすれば、線分グループIIは線分の順番と方向(方向のみ)が反転させられ、線分グループVIの線分は反転されない。
【0144】
そして、描画順整理手段106は、次の線分グループを1つ選択してステップS612から繰り返す(S616)。ここで選択する線分グループは、端点が終点か否かを判定した線分グループである。図17の文字「B」の線分グループII・VIのように対象の線分が複数ある場合は、抽出しておいた端点を順番に選択して同様に処理すればよい。
【0145】
全ての線分グループの登録が完了した場合(S612のYes)、線分グループの描画順を並べ替える(S617)。すなわち、端点が終点か否かを判定した線分グループの順番に、線分グループの描画順を決定する。
【0146】
以上により、線分がグループ化された線分グループの描画順を最適化することができた。なお、図23の処理の代わりに、図18で説明した端点間の距離に基づき描画順を最適化してもよい。
【0147】
図24は、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計から、描画順を決定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0148】
まず、描画順整理手段106は、一筆部品の数に基づき、全ての描画順の組み合わせを作成する(S701)。組み合わせの数は、「n ! × 2^(n-1)」個である。
【0149】
ついで、描画順整理手段106は、1つの描画順の組み合わせについて、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離の合計を求める(S702)。
【0150】
そして、全ての描画順の組み合わせについて、距離の合計を求めたか否かを判定し(S703)、全ての描画順の組み合わせについて距離の合計を求めると、最も距離の小さいものを描画順に決定する(S704)。
【0151】
これにより、描画を行わずにただ描画対象位置が動く際の距離が最も小さい描画順を決定することができる。
【0152】
本実施例のレーザ照射装置200は、文字の太さを考慮して重複が生じる場合には、分割又は短縮することで、あらゆる形状の文字に生じうる重複を抑制することができる。描画すべき文字サイズが変化する場合でも、変倍を行ってからその重複除去の量を決定するので、隙間や重複残が発生することがない。また、描画順を最適化するので、分割・短縮しても文字の描画にかかる時間を短くすることができる。更に、リライタブル媒体では、ストロークの重複を防ぐことで、交点、重複点、折り返し点で過剰な熱が加わることを防ぎ、繰返し書き換えによる劣化での消え残り(消去しても消えない)や発色部の濃度低下を抑制することが出来る。
【0153】
なお、本実施例では、文字を対象に説明したが、線分の組み合わせで表現できるものであれば文字に限られず、例えば線画なども重複を排除して描画することができる。また、文字には、数字や「!、$、%、&、?」等の記号が含まれ、絵文字や顔文字を含む。
【0154】
また、本実施例ではレーザ光で描画する場合を例に説明したが、電子線や放射線を用いてこれらに反応する媒体に描画してもよい。また、レーザは非接触で描画することができるが、プローブ(スタイラス)等を直接リライタブル媒体20に接触させて描画してもよい。
【実施例2】
【0155】
実施例1では、レーザ照射部160を用いてリライタブル媒体20に描画する際に、フォントデータから重複を排除し、描画順を最適化して描画命令を生成したが、文字の形状が固定であることを考慮すると、重複を排除し描画順を最適化したフォントデータ(以下、最適化フォントデータという)を予め記憶しておくことができる。予め最適化フォントデータを記憶しておくことで、描画時の処理負荷を低減できる。
【0156】
図25(a)は最適化フォントデータを生成する装置170の機能ブロック図の一例を示し、図25(b)はレーザ照射装置200の機能ブロック図を示す。なお、図25において図10と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0157】
図25(a)では、最適化フォントデータ生成手段123と最適化フォントデータDB121を有し、図25(b)では最適化フォントデータ取得手段122を有する点で図10と異なる。最適化フォントデータを生成する装置170は、全体制御装置100と同様にコンピュータを実体とする。図25(a)と図10を比較すると明らかなように、最適化フォントデータの生成手順は実施例1と同様である。
【0158】
このうち、最適化フォントデータ生成手段123は、重複を排除した最適化フォントデータを再利用可能な態様で生成し、最適化フォントデータDB121に格納する。
【0159】
本実施例では、最適化フォントデータDB121がハードディスク35に実装されている。最適化フォントデータDB121は、記憶媒体に記憶したりネットワークを介して配布可能である。最適化フォントデータDB121には、最適化フォントデータが文字コードに対応づけて記憶されており、最適化フォントデータ取得手段122は、最適化フォントデータDB121から文字コードに対応づけられた最適化フォントデータを読み出す。
【0160】
図26(a)は、最適化フォントデータの一例を、図26(b)は最適化フォントデータから生成される描画命令の一例を、それぞれ示す。最適化フォントデータは、例えば、図19(d)から「w」「t」の制御コードを除いたものであるが、図18(b)〜(e)のような線分の座標であってもよい。
【0161】
最適化フォントデータ生成手段123は、描画順整理手段106が生成した線分の座標から、描画命令を生成するのと同様の手順で(制御コードである「w」を考慮せずに)最適化フォントデータを生成する。図26(a)の最適化フォントデータが、重複を排除するために分割・短縮された線分の座標に基づき、描画順を最適化したものである。「m」「d」の意味は実施例1と同様である。
【0162】
最適化フォントデータは線の太さにより異なるので、線の太さ毎に用意し、予めハードディスク35に記憶されていることが好適となる。また、線の太さに幅を設け、太さt1〜t2、t2〜t3、…のように、最適化フォントデータを用意しておいてもよい。これにより、容量を低減できる。なお、最適化フォントデータDB121又は最適化フォントデータをサーバに登録しておき、描画の際にハードディスク35にダウンロードしてもよい。
【0163】
同様に、ストロークフォントデータはスケーラブルフォントなので、文字の大きさによって最適化フォントデータが異なる。このため、文字の大きさ毎に最適化フォントデータを用意しておくことが好適となる。
【0164】
描画命令生成手段107は、1文字ごとに最適化フォントデータを読み出し、図26(b)の描画命令を生成する。図26(b)の描画命令は、図19(d)と同じものである。描画命令生成部は、動いた方向制御ミラー13が完全停止するまでまって描画を安定させるための制御コードである「w」をハードディスク35又はレーザ照射部160から読み出す。そして、取得した文字の太さ「t」と、「w」を用いて描画命令を生成する。
【0165】
本実施形態のレーザ照射部160では、最適化フォントデータの「m」の後に、「w 50」を挿入することで描画命令を生成することができる。
【0166】
〔動作手順〕
図27(a)は最適化フォントデータの生成手順を、図27(b)は最適化フォントデータを用いた文字の描画手順をそれぞれ示す。
【0167】
最適化フォントデータの生成手順は、実施例1で説明した手順と同じである。すなわち、太さの情報と大きさの情報を設定し(S801)、対象文字コード取得手段101が対象となる文字の文字コードを取得する(S802)。太さや大きさの情報はユーザにより入力装置36から入力され、文字コードは文字コード表に従い順番に読み出せばよい。
【0168】
そして、フォントデータ取得手段102が、文字コードに対応づけられたフォントデータを読み出し(S803)、重複ストローク算出手段104が重複ストロークを検出する(S804)。ついで、ストローク分割・短縮手段105がストロークを分割又は短縮する(S805)。
【0169】
そして、描画順整理手段106が描画順を整理する(S806)。そして、描画順に基づき、最適化フォントデータ生成手段123が、最適化フォントデータを生成し(S807)、最適化フォントデータDB121に格納する(S808)。全ての文字を処理すると終了する(S809)。
【0170】
続いて、文字の描画手順について説明する。文字コード取得手段は、描画対象の文字の文字コードを取得する(S901)。また、最適化フォントデータ取得手段122は、文字の太さと大きさの情報を取得する(S902)。
【0171】
そして、最適化フォントデータ取得手段122は、文字コード、太さ、大きさに基づき最適化フォントデータDB121を参照し、最適化フォントデータを読み出す(S903)。描画命令生成手段107は、最適化フォントデータから図26(b)のような描画命令を生成する(S904)。
【0172】
そして、描画対象の全ての文字の描画命令を生成したか否かを判定し(S905)、描画対象の全ての文字を処理するとレーザ照射部160によりリライタブル媒体20に文字を描画する(S906)。
【0173】
本実施例のレーザ照射装置200によれば、重複を排除し描画順を最適化した最適化フォントデータを予め記憶しておくことで、文字の描画時に処理負荷を低減し、描画時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0174】
本実施例では、線分の端点の形状について説明する。
図28は、線分の端点の発色について説明する図の一例である。図28(a)はレーザ光の中心とレーザ光が形成する円の動きの関係を説明する図を、図28(b)はレーザ光の軌跡と温度の関係を説明する図を、それぞれ示す。
【0175】
線分の端点は、リライタブル媒体20の外部から加えられた熱に対する昇温感度がやや低く、レーザ光で熱を加えてもすぐには発色温度に到達しない場合がある。この場合は図28(b)に示すように、レーザ光の径によりカバーされた領域であっても、線分の端点付近の領域410が十分に加熱されず、発色しない場合がある。
【0176】
図28(a)は横向きの線分を描く場合を示すが、中心線の周りにもレーザ光の径分の照射領域があり、レーザ光の円が通過する領域は全て加熱されて媒体が発色することが期待される。しかしながら、図28(b)に示すように、線分の端点付近の領域410は、熱がレーザ光のあたらない方向へ逃げるため発色に必要な量の加熱が得られない。これに対し、線分の内側の領域420は、線分の左右方向に均等に加熱されるため、熱の流出が左右方向に生じないことになり結果として発色に必要な加熱が得られる。このようにして、昇温感度が低いリライタブル媒体20では、線分の内側の領域420だけが発色し、レーザ光の走査距離よりも線分が短くなることになる。例えば、フォントデータによる線分の長さがLであっても、発色した線分の長さはLより短くなってしまう。
【0177】
そこで、本実施例のレーザ照射装置200は、線分の端点を移動することで線部を延長し、線分の長さを補正する。図28(c)は、線分の端点を移動した場合の発色領域を説明する図の一例である。図28(c)では、線分の左側にE1,右側にE2だけ端点の位置をずらしている。E1、E2をどの程度にするかは、リライタブル媒体20の熱に対する昇温感度に応じて調整するが、図では線幅の半分程度とした。また、図ではE1とE2は同じであるが、両者を異ならせてもよい。
【0178】
端点の位置を移動することで、発色した領域をフォントデータによる線分の長さLと同程度にすることができる。
【0179】
図29は、本実施例のレーザ照射装置200の機能ブロック図の一例である。図29において図10と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図29のレーザ照射装置200は一筆部品延長手段131を有する。一筆部品延長手段131は、一筆部品の端点を移動して一筆部品を延長する。一筆部品延長手段131は、一筆部品の端点を特定し、端点の位置を線分が延長される方向に移動する。
【0180】
図30に、端点の延長手順を含む描画命令生成処理のフローチャート図の一例を示す。なお、図30において図20と同一部のステップの説明は省略する。図30では、ステップS55に一筆部品の端点を延長する処理が加わっている。
【0181】
まず、ステップS10〜S50により、線分の分割、短縮処理の後、重複のない一筆部品群が生成される。
【0182】
次に、一筆部品延長手段131は、注目しているフォントデータから、一筆部品をひとつ選択する。まず、線分の分割を施さない、元のフォントデータにおいて一筆部品となるものが、一筆部品の候補となる。候補の一筆部品が分割されない場合、候補の一筆部品が端点の移動対象の一筆部品となる。この場合、一筆部品は短縮されていてもいなくてもよい。例えば、図14(b)では、線分51と52が両者で1つの一筆部品で、線分53が1つの一筆部品である。上記のようにフォントデータにおける連続した「d」が、1つの一筆部品である。
【0183】
また、候補の一筆部品が、分割されていた場合、分割により複数の一筆部品が生成されるので、それぞれの一筆部品が端点の移動対象の一筆部品となる。例えば、図19(c)では、線分91a、線分91b、線分92、線分93aが、それぞれ端点の延長対象の一筆部品となる。また、図16の「C」の文字の場合、線分56が端点の移動対象の一筆部品で、線分57〜69がそれら全体で端点の移動対象の一筆部品となる。
【0184】
こうすることで、図31に示すように、移動すべき端点が明確になる。図31は「Y」という文字に対し、一部の線分の短縮結果の一例を示す。短縮処理の結果、「Y」は2つの一筆部品520と530を有する。
【0185】
一筆部品520は2つの線分から構成されているが、2つの線分の端点が重複する端点525,526では、端点を移動する必要がない。図32(a)(b)は、一筆部品において移動されない端点を説明する図の一例である。「Y」の一筆部品520のように、端点525,526が重複した線分540、550を延長すると、図32(b)のように、延長した線分540、550の周囲で重複部分が発生してリライタブル媒体20が加熱してしまう。また、書き換えできないサーマルペーパ、プラスチック、金属であっても、線分540,550を延長すると文字の形状が変わってしまう。
【0186】
このため、一筆部品延長手段131は、図32(a)に示すように、特定した一筆部品の、最初の端点と、最後の端点だけを移動する。
【0187】
図32(c)は、3つの線分560〜580からなる一筆部品の延長の一例を示す図である。一筆部品延長手段131は、検出した一筆部品の両端の線分560、580の向きに線分を延長する(端点の位置を移動する)。延長する長さは、およそ線幅の半分程度で良い。実際に、どの程度延長すべきかは、リライタブル媒体20の熱に対する昇温感度に応じて決定する。例えば、フォントデータによる線分の長さLと、実際に発色した線分の長さを比較することで決定できる。なお、この値はユーザがパラメーターとしてレーザ照射装置200に与えるようにすることが好適である。
【0188】
具体的には、一筆部品延長手段131は、線分560、580の向きを検出する。そして、一筆部品延長手段131は、線分560、580の向きに端点561,581から、線幅の半分程度の位置にある座標を決定する。該座標を、端点561、581の新たな座標とする。一筆部品延長手段131は、注目している文字の全ての一筆部品に延長処理を施したら、延長処理を終了する。
【0189】
図30に戻り、レーザ照射装置200はステップS60以降の処理を実施する。以降の処理は実施例1と同様である。
【0190】
なお、この延長処理をフォントデータに施す場合、延長により、一筆部品に重複が生じる場合がある。図33は、延長により重複が生じた文字の一例を示す。図33のように「T」という文字では、ストローク分割・短縮部105が重複を解消する。しかしながら、一筆部品延長手段131により、「T」の横線の中心部に2度レーザ光が照射される部分が発生する。
【0191】
しかし延長処理は、元々、加熱が不十分なため発色が不良となることを解消するための処理なので、2度レーザ光が照射される部分は、発色に必要な温度以下にしか加熱されない。このため、延長処理によりレーザ光で二度描画する部分が存在しても、リライタブル媒体20が劣化する温度には達しない。
【0192】
なお、本実施例では一旦、分割、短縮してえられた一筆部品の座標値を延長する処理を施しているが、一筆部品が得られた段階(例えば、分割、短縮された段階)で、延長分を加味した座標を、短縮・分割時にフォントデータに設定してもよい。
【0193】
以上説明したように、本実施例のレーザ照射装置200は、一筆部品の端点を線分方向に移動することで、リライタブル媒体20の熱の昇温感度が低くても、一筆部品の長さが短くなることを防止できる。
【実施例4】
【0194】
実施例1では、ストロークフォントのフォントデータから描画命令を生成する例について説明したが、レーザ照射装置200の描画命令は、アウトラインフォントからも生成することができる。
【0195】
アウトラインフォントのフォントデータには、一般に、ベジエ曲線などの曲線情報による輪郭情報が格納されている。したがって、輪郭情報にしたがって、レーザ光を照射すれば、文字や数字を描くことができる。
【0196】
図34(a)は、アウトラインフォントのフォントデータからそのまま描画した「ま」という文字の一例を示す。外観からは、「ま」の文字が描画されているが、アウトラインフォントからそのままフォントデータを描画すると、折り返し部610〜624が発生してしまう。そこで、本実施例のレーザ照射装置200は、アウトラインフォントのフォントデータに重複除去処理を行ってから描画命令を生成する。
【0197】
図35は、本実施例のレーザ照射装置200の機能ブロック図の一例である。図35において図29と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図35のレーザ照射装置200は、直線近似手段1021を有する。直線近似手段1021は、アウトラインフォントのフォントデータから得られる曲線を直線に近似する。
図36は、直線近似の手順を示す図の一例である。ベジェ曲線では、4つの制御点P〜Pで曲線を表現する。制御点PとPはベジェ曲線の始点と終点になり、制御点PとPを結ぶ直線を、本実施形態ではベースラインと称す。
【0198】
まず、直線近似手段1021は、図36(a)に示すように、ベースラインP0 −P3 からベジェ曲線P(t) の頂点までの距離、すなわちベースラインP0 −P3 からベジェ曲線P(t) までの最大距離dを求める。この距離dが与えられた許容値δ以下であれば、ベースラインP0 −P3 はベジェ曲線P(t) を補間近似する直線そのものとする。すなわち、直線近似しない。
【0199】
距離dがトレランスδを超えている場合、図36(b)に示すように、直線近似手段1021は、ベジェ曲線P(t) を2分割する点とベジェ曲線P(t) の始点P0 および終点P3 をそれぞれ結ぶ2本の直線分で近似する。こうすることで、ベースラインの直線よりもよい近似が得られる。
【0200】
次に、直線近似手段1021は、図36(c)に示すように、これら2本の直線とベジェ曲線P(t) との間の最大距離d1およびd2をそれぞれ求め、これらが許容値δ以下であれば補間近似処理を終了とする。
【0201】
最大距離d1又はd2が許容値δを超えている場合、図36(d)に示すように、直線近似手段1021は、さらに2本の直線で補間する。
【0202】
直線近似手段1021は、アウトラインフォントのフォントデータから得られる曲線の1つ1つに、以上のような処理を近似直線とベジェ曲線P(t) との間の最大距離がすべて許容値δ以下になるまで繰り返し行う。これにより、曲線を直線に近似して、文字を構成する線分を得ることができる。
【0203】
線分が得られれば、実施例1と同じ手順で、線分の重複を解消するため、分割、短縮処理を施す。すなわち、ストロークフォントのフォントデータの代わりに、直線近似されたアウトラインフォントの輪郭情報を使うことだけが違いとなる。
【0204】
例えば、図34(a)のアウトラインフォントでは、折り返し部610〜624で輪郭が途切れ、各折り返し部で挟まれた複数の線分に近似されることになる。図34(b)は、直線近似後の「ま」という文字の描画例を示す図である。図34の(a)では折り返し部610〜624で急角度の折れ曲がりとなり媒体が加熱により損傷する可能性があった。これに対し、アウトラインフォントのフォントデータを直線に近似し、重複を解消することで、加熱が発生することを防止できる。
【0205】
また、図34(b)をみると分かるように、アウトラインフォントのフォントデータから「袋文字」が得られることがわかる。すなわち、比較的大きな文字や数字を描画する場合に、文字や数字の表現を多様化することができる。
【0206】
また、図34(b)に示した「袋文字」の、内部を塗りつぶしてもよい。図37(a)は内部を塗りつぶされた袋文字の一例を示す図である。すなわち、輪郭を描いたあとに内部を横方向に重ならないように線を描いていくことで塗りつぶすことができる。あるいは、輪郭部の座標を予め求めておいてから内部を塗りつぶし、その後に輪郭部を描いても良い。
【0207】
一方、内部を塗りつぶさず外部を塗りつぶせば白黒反転文字となる。図37(b)は白黒反転文字の一例を示す図である。輪郭を描いたあとに外部を横方向に、重ならないように線を描いていくことで塗りつぶすことができる。白黒反転文字の場合は、輪郭を描くことなく、輪郭部を端点とする横方向の線を描画しても良い。
【0208】
以上説明したように、本実施例のレーザ照射装置200は、アウトラインフォントから生成したフォントデータを用いて、レーザ光でリライタブル媒体20に文字等を描画することができる。また、容易に袋文字を描画することができる。
【符号の説明】
【0209】
11 レーザ発振器
12 方向制御モータ
13 方向制御ミラー
14 光学レンズ
15 集光レンズ
20 リライタブル媒体
38 CD−ROM(記憶媒体)
41 フォントデータDB
42 文字描画プログラム
100 全体制御装置
101 対象文字コード取得手段
102 フォントデータ取得手段
103 太さ情報取得手段
104 重複ストローク算出手段
105 ストローク分割・短縮手段
106 描画順整理手段
107 描画命令生成手段
111 線分検出手段
112 ストローク交点検出手段
113 垂線算出手段
114 垂線の足存在範囲算出手段
115 距離算出手段
116 距離比較手段
121 最適化フォントデータDB
131 一筆部品延長手段
160 レーザ照射部
200 レーザ照射装置
1021 直線近似手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0210】
【特許文献1】特開2004−90026号公報
【特許文献2】特開2004−341373号公報
【特許文献3】特開2006−306063号公報
【特許文献4】特許第3990891号公報
【特許文献5】特開2008−179135号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体に可視情報を記録する装置を制御する制御装置であって、
文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段と、
前記描画情報記憶手段から、描画対象となる線画の描画情報を取得する描画情報取得手
段と、
線画の太さを指定する太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、
前記太さ情報と前記描画情報に基づき、前記線分の太さを含めた描画範囲が互いに重な
り合う、対の線分を検出する重複線分検出手段と、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割する描画情報調整手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記重複線分検出手段は、
1対の線分の交点を検出する交点検出手段と、
1対の線分の端点から他方の線分への垂線を算出する垂線算出手段と、
垂線が他方の線分と交差するか否かを判定する垂線交差判定手段と、
1対の線分が交点を有する場合は交点から1対の線分までの距離がゼロであると検出し、
1対の線分の端点と他方の線分の端点との端点間の距離を検出し、及び、垂線が他方の線分と交差する場合、垂線の足の長さを検出する距離検出手段と、を有する、
ことを特徴する請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記描画情報調整手段は、
予め定められた規則に基づき、前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分のうち、どちらの線分を短縮又は分割するかを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項4】
前記描画情報調整手段は、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の端点の座標と太さ情報に基づき求めた、前記描画範囲の重複量から、分割又は短縮した場合の線分の短縮量を線分毎に算出し
1対の線分のいずれかを分割又は短縮すると仮定した場合に、分割又は短縮することにより消失する線分がある場合、消失しない方の線分を分割又は短縮すると決定する、
ことを特徴とする請求項3記載の制御装置。
【請求項5】
前記描画情報調整手段は、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の端点の座標と太さ情報に基づき求めた、
前記描画範囲の重複量から、分割又は短縮した場合の線分の短縮量を線分毎に算出し、短縮量の少ない方の線分を分割又は短縮すると決定する、
ことを特徴とする請求項3記載の制御装置。
【請求項6】
前記描画位置調整手段は、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の端点の位置が互いに略一致する場合、
1対の線分のなす角があらかじめ定めた値より小さい場合にのみ、1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割する、
ことを特徴とする請求項3記載の制御装置。
【請求項7】
前記エネルギーを継続して伝達することで描画される一筆部品の2つの端点の位置を、
該端点を含む線分の延長上に移動する一筆部品延長手段、
を有することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項8】
前記一筆部品延長手段は、線分の前記太さ情報のおよそ半分程度の長さ、一筆部品の2つの端点の位置を移動する、
ことを特徴とする請求項7記載の制御装置。
【請求項9】
前記エネルギーを継続して伝達することで描画される一筆部品の描画順を決定する描画順整理手段、
を有することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項10】
前記描画順整理手段は、
線分の端点の位置が略一致する線分同士をグループ化して一筆部品を生成し、各一筆部品の描画順、及び、一筆部品毎に描画する際の始点及び終点を決定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記描画順整理手段は、
一筆部品の終点から所定距離内の、他の一筆部品の端点を抽出し、
該他の一筆部品の端点が始点の場合、該他の一筆部品の始点及び終点を入れ替える、
ことを特徴とする請求項10記載の制御装置。
【請求項12】
前記描画順整理手段は、
1つの線画の描画情報が含む一筆部品の数、及び、一筆部品毎の描画方向、の全ての組み合わせ毎に、
一筆部品の終点から、エネルギーを伝達することなく次に描画される一筆部品の始点までの移動距離の、該線画における合計を算出し、
移動距離の合計が最も小さい組み合わせを、該線画の一筆部品の描画順及び各一筆部品の描画方向に決定する、
ことを特徴とする請求項10記載の制御装置。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか1項記載の制御装置と、
レーザを照射するレーザ発振器と、
レーザの照射方向を変える方向制御ミラーと、
方向制御ミラーを駆動する方向制御モータと、
を有することを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項14】
線画の描画情報を記憶した最適化フォントデータDBであって、
文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段と、
前記描画情報記憶手段から、描画対象となる線画の描画情報を取得する描画情報取得手段と、
線画の太さを指定する太さ情報を取得する太さ情報取得手段と、
前記太さ情報と前記描画情報に基づき、前記線分の太さを含めた描画範囲が互いに重なり合う、対の線分を検出する重複線分検出手段と、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割する描画情報調整手段と、を有する情報処理装置が生成した、
重複が解消された線画の最適化描画情報を記憶していることを特徴とする、
最適化フォントデータDB。
【請求項15】
伝達位置を変えながらエネルギーを断続的に伝達して媒体に可視情報を記録する記録方法であって、
描画情報取得手段が、文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段から、描画対象となる線画の描画情報を取得するステップと、
太さ情報取得手段が、線画の太さを指定する太さ情報を取得するステップと、
重複線分検出手段が、前記太さ情報と前記描画情報に基づき、前記線分の太さを含めた描画範囲が互いに重なり合う、対の線分を検出するステップと、
描画情報調整手段が、前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割するステップと、
を有することを特徴とする記録方法。
【請求項16】
前記媒体は、前記可視情報の消去及び再記録が可能なリライタブル媒体である、
ことを特徴とする請求項15記載の記録方法。
【請求項17】
コンピュータに、
文字、数字、記号等の線画が含む線分の描画情報を記憶する描画情報記憶手段から、描画対象となる線画の描画情報を取得するステップと、
線画の太さを指定する太さ情報を取得するステップと、
前記太さ情報と前記描画情報に基づき、前記線分の太さを含めた描画範囲が互いに重なり合う、対の線分を検出するステップと、
前記描画範囲が互いに重なり合う1対の線分の少なくとも一方の線分を、重なり合わないように短縮又は分割するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
請求項17記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−25647(P2011−25647A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178744(P2009−178744)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】