説明

制御装置、制御プログラム、および印刷システム

【課題】複数の処理装置の処理により印刷物を作成する場合に、消費電力を低減する。
【解決手段】ワークフロー生成部208は、印刷ジョブ中の属性情報を用いて、複数のデバイス30のうちのどれによる処理をどの順番で実行して印刷物を作成するかを表すワークフローを生成する。起動時間特定部210は、ワークフロー中の各デバイス30の起動時間を特定する。工程処理時間算出部210は、ワークフロー中の各デバイス30が印刷物の作成のために行う処理にかかる工程処理時間を算出する。起動開始時刻決定部214は、起動時間と工程処理時間とを用いて、あるデバイス30の処理終了の時刻と、次の順番のデバイス30の起動処理終了の時刻とが一致するように、ワークフロー中の各デバイス30の起動処理の開始の時刻を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御プログラム、および印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数台の画像形成装置を連結動作させる画像形成システムにおいて消費電力を低減する技術が開示されている。特許文献1に記載の画像形成システムにおいて、マスター装置は、省電力モードで待機しているスレーブ装置のウォームアップ時間と、設定されたジョブの処理時間と、を比較し、処理時間がウォームアップ時間以上のとき、スレーブ装置を起動させると共にスレーブ装置に並行ジョブ要求を送信して、並行ジョブ処理を開始する。処理時間がウォームアップ時間より短い場合は、マスター装置が単独動作でジョブを実行する。
【0003】
特許文献2には、ウォームアップを必要とする後処理装置が接続された画像形成装置において複数のジョブを処理する場合に、ウォームアップを必要とする後処理を施さないジョブの処理時間と、後処理装置のウォームアップ完了時間とに基づいて、後処理装置のウォームアップ完了前に、上述の複数のジョブの実行順序を決定する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3に記載の技術では、複数の処理装置で連携してワークフローを実行するシステムにおいて、起動側の処理装置がフローファイルを読み込んで、後続のワークフローでスリープ機能が有効な処理装置が存在するか否かを判定し、スリープ機能が有効な処理装置が存在する場合に、当該処理装置に対して、当該処理装置が実行するコマンドを受信したらスリープ機能を復帰させるコマンドとして登録する。当該処理装置が登録された復帰コマンドと一致するコマンドを受信すると、スリープモードから通常のモードに復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−7961号公報
【特許文献2】特開2007−163559号公報
【特許文献3】特開2010−219630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置が特定の順番で自装置の担当の処理工程を行うことで印刷物を作成することがある。この場合に、印刷ジョブの処理を開始する前に、印刷ジョブの処理に関わるすべての処理装置を起動させて処理待ち状態にしておくことで、印刷ジョブの処理中に各処理装置の起動を待つことなく各処理装置の担当の処理工程を実行できるようにすることが考えられる。しかし、印刷ジョブの処理を開始する前にすべての処理装置を起動させておくと、より後の処理工程を担当する処理装置において、処理開始の待ち時間が発生し、この待ち時間の間の消費電力は、処理の実行に利用されない、無駄な電力であるとも捉えられる。
【0007】
印刷ジョブの各処理工程を担当する複数の処理装置による消費電力を低減するために、各処理装置の電源の状態をオフ状態または省電力状態に設定しておき、ある処理装置の担当の処理工程の1つ前の処理工程を担当する処理装置の処理が終了した時点で、当該ある処理装置を起動することが考えられる。しかし、このように各処理装置の電源の状態を制御すると、1つの処理装置による処理工程が終了してから次の処理工程の処理装置が処理を開始するまでの間に待ち時間が発生するため、印刷ジョブの処理開始時にすべての処理装置を起動させておく上述の場合と比較して、印刷ジョブ全体の処理の開始から終了までの時間がより長くなり得る。
【0008】
本発明の目的は、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置が特定の順番で自装置の担当の処理工程を行うことで印刷物を作成する場合に、印刷物の作成にかかる時間を短縮すると共に、複数の処理装置による消費電力を低減することができる制御装置、制御プログラム、および印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成手段と、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定手段と、前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出手段と、前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定手段と、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定手段が決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御手段と、を備えることを特徴とする制御装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記工程情報に含まれる処理装置のうち最初に処理を実行する1番目の処理装置に対して、当該1番目の処理装置の起動処理の終了の時刻に前記印刷命令を送信する送信手段をさらに備える。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記制御手段は、さらに、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、当該処理装置における処理が終了した時点で当該処理装置の電源の状態を省電力モードまたは電源オフ状態に設定するよう制御する。
【0012】
請求項4に係る発明は、作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成ステップと、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定ステップと、前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出ステップと、前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定ステップと、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定ステップで決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御ステップと、をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
【0013】
請求項5に係る発明は、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置と、前記複数の処理装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、前記複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成手段と、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定手段と、前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出手段と、前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定手段と、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定手段が決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御手段と、を備えることを特徴とする印刷システムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、4、または5に係る発明によると、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置が特定の順番で自装置の担当の処理工程を行うことで印刷物を作成する場合に、印刷物の作成にかかる時間を短縮すると共に、当該複数の処理装置による消費電力を低減することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、1番目の処理装置の起動処理の終了の時刻に、当該1番目の処理装置の処理を開始させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、各処理装置の処理工程の終了後の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】印刷物を作成するシステムの概略構成の例を示す図である。
【図2A】ワークフロー規則の概略例を示す図である。
【図2B】ワークフロー規則の概略例を示す図である。
【図3】本実施形態の例により印刷ジョブを処理する場合の各デバイスの処理の様子の例を時系列で示す図である。
【図4】図3に例示する各デバイスの起動開始時刻および工程処理終了時刻を示す図である。
【図5】スケジューラが作成する計画の一部の例を示す図である。
【図6】スケジューラが作成する計画の他の一部の例を示す図である。
【図7】プリントサーバが行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態の例と異なるタイミングで各デバイスの起動処理を開始させる場合の各デバイスの処理の様子の例を時系列で示す図である。
【図9】本実施形態の例と異なるタイミングで各デバイスの起動処理を開始させる場合の各デバイスの処理の様子の他の例を時系列で示す図である。
【図10】コンピュータのハードウエア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、印刷システムの概略構成の例を示す。図1の例の印刷システムは、クライアント10、プリントサーバ20、および複数のデバイス30を備える。クライアント10とプリントサーバ20とは、図示しない通信手段により接続される。クライアント10とプリントサーバ20とを接続する通信手段は、例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークであってよい。プリントサーバ20は、さらに、複数のデバイス30のそれぞれと、図示しない通信手段により接続される。プリントサーバ20と各デバイス30とを接続する通信手段は、各デバイス30に適した通信手段であればよい。例えば、プリントサーバ20との間で、特定の種類の通信手段により通信するデバイス30については、当該特定の種類の通信手段でプリントサーバ20と接続すればよい。また例えば、LANなどのネットワークによりプリントサーバ20と通信するデバイス30については、LANなどのネットワークによりプリントサーバ20と接続すればよい。なお、クライアント10とプリントサーバ20とを接続する通信手段およびプリントサーバ20とデバイス30とを接続する通信手段は、有線および無線のいずれの通信手段であってもよい。
【0019】
クライアント10は、システムのユーザが操作する端末装置である。クライアント10は、印刷物の作成を指示するユーザの入力に従って、指示された印刷物の作成のための命令を含む印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブをプリントサーバ20に送る。クライアント10は、例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)などの汎用の情報処理装置によって実現すればよい。
【0020】
プリントサーバ20は、クライアント10から受信した印刷ジョブに従って、各デバイス30を制御し、印刷物を作成させる。プリントサーバ20の詳細は後述する。
【0021】
複数のデバイス30のそれぞれは、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部の工程を行う。例えば、紙などの媒体に画像を印刷するプリンタ、プリンタによる印刷の準備のためのプリプレス処理を行うプリプレス処理装置、およびプリンタによる印刷が完了した媒体に対して特定の後処理を行う後処理装置などがデバイス30としてシステム内に設けられる。プリンタは、インクジェット方式やレーザ方式、熱転写方式など、従来から知られている方式の印刷装置であってよい。プリプレス処理装置は、例えば、PCなどの汎用の情報処理装置に、プリプレス処理を実行するソフトウエアをインストールすることで実現すればよい。プリプレス処理は、後に用いられるプリンタの特性などに適したデータを生成するための処理であり、例えば、画像データの解像度の変更、色調補正、およびノイズ除去などの画像処理であってよい。後処理装置の例としては、用紙にファイリング用の穴を開ける穴あけ装置、複数の用紙をステープル止めする装置、予め設定された折り方で自動的に用紙を折る紙折り機、用紙を自動的に封筒に詰める作業を行う封筒詰め機、および各種の製本を行う製本機などが挙げられる。
【0022】
また、プリプレス処理装置であるデバイス30は、プリプレス処理の結果のデータをプリンタであるデバイス30に送信するための通信手段により、プリンタであるデバイス30と接続される。さらに、プリンタであるデバイス30は、印刷結果の媒体を後処理装置であるデバイス30に渡すための物理的な機構(例えば、用紙を搬送する装置など)により後処理装置に接続されていてよい。
【0023】
なお、図1の例の印刷システムは、デバイス30として、プリプレス処理装置、プリンタ、および後処理装置を、それぞれ複数種類、備えていてよい。また、複数のデバイス30は、それぞれが独立した装置であってもよいし、複数のデバイス30の一部または全部が、1つの装置内に、各デバイス30の機能を実現するユニットとして設けられていてもよい。例えば、複数のデバイス30は、出版物などを印刷する業務用のプロダクションプリンタを構成する複数のデバイスユニットであってよい。
【0024】
各デバイス30は、処理実行部32および電源状態制御部34を備える。処理実行部32は、当該デバイス30が備える機能の処理を実行する。例えば、デバイス30がプリプレス処理装置であれば、処理実行部32はプリプレス処理を行い、デバイス30がプリンタであれば、処理実行部32は印刷を行う。また例えば、デバイス30が後処理装置であれば、処理実行部32は、上述の例の後処理装置の処理のいずれかを行う。電源状態制御部34は、デバイス30の電源の状態(電源状態)を制御する。ここで、電源状態には、デバイス30が電力の供給を受けている「オン状態」およびデバイス30が電力の供給を受けていない「オフ状態」の二種類の状態がある。本実施形態の例では、さらに、オン状態において、アイドルモード、処理実行モード、および省電力モードの四種類のモードがあるとする。アイドルモードは、処理開始の命令を受けた時点で処理を開始できるように処理実行部32が待機している状態(アイドル状態)である。処理実行モードは、デバイス30の処理実行部32が処理を実行中の状態である。省電力モードは、デバイス30の一部のみに電力を供給することで、アイドルモードおよび処理実行モードにおけるデバイス30の消費電力よりも小さい消費電力で待機するモードである。省電力モードは、デバイス30のどの部分に電力を供給するかなどに応じて、さらに複数のモードに分かれていてもよい。
【0025】
本実施形態の例において、電源状態制御部34は、プリントサーバ20などの外部装置から受信した制御信号に従って電源状態を切り替える機能を有する。例えば、上述した例の電源状態のいずれかを指定する命令を表す制御信号をプリントサーバ20から受信した場合に、電源状態制御部34は、デバイス30の電源状態を、受信した制御信号が表す命令により指定された電源状態に切り替える。また例えば、電源状態制御部34は、デバイス30が備える電源スイッチなどの入力装置(図示しない)を介して得られるユーザの指示に従って電源状態を切り替えることもある。また例えば、電源状態制御部34は、電源状態の切り替えの条件として予め設定された条件が満たされた場合に、電源状態を切り替えてもよい。例えば、アイドルモードにおいて最後にユーザの入力を受け付けた後、予め設定されたタイムアウト時間が経過した時点で、電源状態をアイドルモードから省電力モードに切り替えることが考えられる。また例えば、処理実行モードによる処理の実行が終了した時点で、処理実行モードから、アイドルモード、省電力モード、およびオフ状態のいずれかの電源状態に切り替えるようにしてもよい。
【0026】
なお、以下では、各デバイス30の電源状態制御部34は、処理実行モードによる処理が終了すると、当該デバイス30の電源状態を省電力モードまたはオフ状態に切り替えるものとして、本実施形態の例を説明する。
【0027】
プリントサーバ20は、デバイス情報登録処理部200、デバイス情報記憶部202、ジョブ受信部204、ジョブ属性情報取得部206、ワークフロー生成部208、起動時間特定部210、工程処理時間算出部212、起動開始時刻決定部214、スケジューラ216、ジョブ送信部218、および起動制御部220を備える。
【0028】
デバイス情報登録処理部200は、各デバイス30の動作に関する動作情報と、各デバイス30の現在の電源状態を表す電源状態情報と、を各デバイス30から取得し、取得した各デバイス30の動作情報および電源状態情報をデバイス情報記憶部202に登録する。各デバイス30の動作情報および電源状態情報は、後述の起動時間特定部210および工程処理時間算出部212において当該デバイス30についての処理に用いられる。
【0029】
デバイス情報登録処理部200が取得する各デバイス30の動作情報は、例えば、当該デバイス30の性能を表す情報および当該デバイス30の電源状態の制御に関する情報を含む。デバイス30の性能を表す情報は、単位時間当たりに当該デバイス30が処理可能なデータまたは媒体の量や、当該デバイス30が特定の処理を行うために必要な時間などであってよい。また、デバイス30の電源状態の制御に関する情報は、デバイス30がアイドルモードから省電力モードに切り替える条件に関する情報を含んでいてよい。例えば、アイドルモードにおいて最後にユーザの入力を受け付けた後、予め設定されたタイムアウト時間が経過した時点で、電源状態をアイドルモードから省電力モードに切り替える仕様のデバイス30について、当該タイムアウト時間を動作情報の一部として取得してよい。さらに、例えば、オフ状態または省電力モードからアイドルモードに復帰することを指示する命令をデバイス30が受けた後、オフ状態および省電力モードのそれぞれから、アイドルモードに切り替えるまでの各復帰時間を動作情報の一部として取得してよい。なお、複数の省電力モードを有するデバイス30の場合、複数の省電力モードのそれぞれのタイムアウト時間および復帰時間を動作情報の一部として取得してよい。
【0030】
プリプレス処理装置であるデバイス30の場合、例えば、当該プリプレス処理装置を実現する情報処理装置のCPU(中央演算装置)の性能を表す情報を動作情報として取得すればよい。また、当該プリプレス処理装置のタイムアウト時間および復帰時間も動作情報として取得してよい。
【0031】
プリンタであるデバイス30の場合、例えば、PPM(Page Per Minute)およびFPOT(First Print Output Time)の値を含む動作情報を取得すればよい。ここで、PPMは、当該プリンタが1分間に印刷できる面数を表す。また、FPOTは、印刷開始命令を受けた時点から1枚目の印刷済み用紙が排出されるまでの所要時間を表す。当該プリンタがモノクロ印刷およびカラー印刷の両方を実行可能であれば、モノクロ印刷時およびカラー印刷時のそれぞれについてPPMおよびFPOTの各値を当該プリンタの動作情報の一部として取得してよい。さらに、当該プリンタが複数の原稿サイズの印刷を実行可能であれば、原稿サイズごとのPPMおよびFPOTの各値を当該プリンタの動作情報の一部として取得してよい。また、当該プリンタのタイムアウト時間および復帰時間も動作情報の一部として取得してよい。
【0032】
後処理装置であるデバイス30の場合、当該後処理装置で行われる処理の内容に応じて異なる動作情報が取得され得る。例えば製本機であれば、単位時間(例えば1分間)で製本可能な冊子の数を取得すればよい。この製本機において、1冊に含まれるページ数の範囲ごとに、単位時間で製本可能な冊子の数が異なっていれば、当該ページ数の範囲ごとの単位時間で製本可能な冊子の数を取得すればよい。なお、後処理装置のタイムアウト時間および復帰時間も動作情報の一部として取得してよい。
【0033】
以上、デバイス情報登録処理部200が取得する各デバイス30の動作情報の例を説明した。デバイス情報登録処理部200が取得する各デバイス30の電源状態情報は、当該デバイス30が取り得る電源状態のうち、現在の電源状態がどの状態であるかを表す情報である。
【0034】
デバイス情報登録処理部200は、例えば、予め設定された時間間隔で定期的に、各デバイス30に当該デバイス30の動作情報および電源状態情報を問い合せて取得する。あるいは、後述のジョブ受信部204が印刷ジョブを受信した際に、各デバイス30の動作情報および電源状態情報を取得してもよい。動作情報および電源状態情報の取得は、例えば、通信手段を介して接続された装置に関する情報を取得する通信規約として従来から知られている通信規約を用いて行えばよい。例えば、各デバイス30について、SNMP(Simple Network Management Protocol)のMIB(Management Information Base)情報にアクセスして、当該デバイス30の動作情報および電源状態情報を取得することが考えられる。また例えば、デバイス情報登録処理部200は、SOAP(Simple Object Access Protocol)に従って各デバイス30と通信を行うことで、当該デバイス30の動作情報および電源状態情報を取得してもよい。また、電源状態がオフ状態かオン状態かを確認するために、IP(Internet Protocol)のpingコマンドを用いてもよい。例えば、デバイス情報登録処理部200は、各デバイス30に対し、pingによる応答要求を送信し、この応答要求に対して予め設定された時間内にpingの応答を返してきたデバイス30の電源状態をオン状態と判断し、時間内に応答を返してこなかったデバイス30の電源状態をオフ状態と判断する。
【0035】
デバイス情報登録処理部200は、各デバイス30の識別情報に関連付けて、当該デバイス30について取得した動作情報および現在の電源状態をデバイス情報記憶部202に登録する。
【0036】
デバイス情報記憶部202は、各デバイス30に関する情報を記憶する記憶装置である。デバイス情報記憶部202は、例えば、各デバイス30の識別情報に関連付けて、当該デバイス30についてデバイス情報登録処理部200が取得した動作情報および現在の電源の状態を記憶する。本実施形態の例のデバイス情報記憶部202は、各デバイス30の識別情報に関連付けて、さらに、当該デバイス30の種類を表す情報を記憶する。デバイス30の種類には、上述したように、プリプレス処理装置、プリンタ、および後処理装置などがある。また、デバイス情報記憶部202は、各デバイス30の仕様をさらに記憶しておいてもよい。例えば、プリンタであるデバイス30の場合、印刷の方式(インクジェットやレーザ等)、カラー印刷対応の有無、印刷可能な原稿サイズなどの仕様を表す情報を当該デバイス30の識別情報に関連付けて記憶しておく。
【0037】
ジョブ受信部204は、印刷物の作成命令である印刷ジョブをクライアント10から受信する。印刷ジョブには、作成対象の印刷物の属性を示す属性情報が含まれる。ここで、印刷物の属性の例として、原稿サイズ、片面/両面印刷の別、モノクロ/カラー印刷の別、N−up設定(複数のページを用紙の1面に印刷する設定)の有無、ページ数、部数、および仕上げ方式などが挙げられる。仕上げ方式は、後処理装置による処理に対応し、例えば、ステープラ止め、ノリ綴じ製本、中綴じ製本、折り、および封筒詰めなどであってよい。ジョブ受信部204は、例えば、受信した印刷ジョブを一時記憶装置(図示しない)上に構成された印刷キューに保存しておき、FIFO(First In First Out)方式でジョブ属性情報取得部206に渡す。
【0038】
ジョブ属性情報取得部206は、ジョブ受信部204から受け取った印刷ジョブに含まれる属性情報を当該印刷ジョブから取得する。例えば、印刷ジョブのヘッダ情報として属性情報が含まれている場合、ジョブ属性情報取得部206は、受け取った印刷ジョブのヘッダ情報を参照することで属性情報を取得する。ジョブ属性情報取得部206は、取得した属性情報をワークフロー生成部208に渡す。
【0039】
ワークフロー生成部208は、ジョブ属性情報取得部206が取得した属性情報を用いて、当該印刷ジョブで指示される印刷物の作成のためのワークフローを生成する。本実施形態の例において、ワークフローとは、作成対象の印刷物を作成する処理の工程を表す情報である。より具体的には、ワークフローは、どのデバイス30によるどのような処理をどの順番で実行すべきかを示す。本実施形態の例のワークフロー生成部208は、プリントサーバ20からアクセス可能なワークフロー規則記憶部40を参照して、ワークフローを生成する。本実施形態の例のワークフロー規則は、印刷物の属性の組合せと当該組合せの属性を有する印刷物の作成のためのワークフローパタンとを対応づける規則である。ワークフローパタンは、どの種類の装置による処理をどの順番で実行するかを示す情報である。本実施形態の例のワークフロー生成部208は、ワークフロー規則部40に記憶されたワークフロー規則に従って、ジョブ属性情報取得部206が取得した属性情報が表す属性に含まれる組合せに対応するワークフローパタンを特定する。ワークフロー生成部208は、さらに、システム内のデバイス30のうち、特定したワークフローパタンに含まれる各装置の種類に対応するデバイス30を特定する。ワークフローパタンに含まれる各装置の種類に対応するデバイス30の特定は、デバイス情報記憶部202に記憶された各デバイス30の識別情報および種類を参照して行えばよい。さらに、ワークフロー生成部208は、特定したワークフローパタンで示される順番で、特定した各デバイス30による処理を実行すべきことを表すワークフローを生成する。
【0040】
図2Aおよび図2Bに、ワークフロー規則記憶部40に記憶されるワークフロー規則の概略例を示す。図2Aは、カラー印刷され、くるみ製本された冊子を作成する印刷ジョブに対応するワークフローパタンを示す規則の例である。図2Bは、モノクロ印刷され、中綴じ製本された冊子を作成する印刷ジョブに対応するワークフローパタンを示す規則の例である。図2Aを参照し、印刷物の属性「カラー印刷」および「くるみ製本」の組合せに対し、プリプレス処理PC、カラー対応レーザプリンタ、ノリ綴じ製本機、およびくるみ製本表紙綴じ機の4つのデバイス30による処理を順に実行することを示すワークフローパタンが対応づけられている。図2Bを参照し、印刷物の属性「モノクロ印刷」および「中綴じ製本」の組合せに対し、プリプレス処理PC、モノクロプリンタ、および中綴じ製本機の3つのデバイス30による処理を順に実行することを示すワークフローパタンが対応付けられている。
【0041】
ワークフロー生成部208は、例えば、属性「カラー印刷」および「くるみ製本」の組合せを含む属性情報を印刷ジョブから取得した場合、図2Aの例のワークフローパタンをワークフロー規則記憶部40から読み出す。そして、読み出したワークフローパタンに含まれる装置(プリプレス処理PC、カラー対応レーザプリンタ、ノリ綴じ製本機、およびくるみ製本表紙綴じ機)のそれぞれが、システム内のどのデバイス30に該当するかを特定し、特定したデバイス30の識別情報を図2Aの例のワークフローパタンで示される順番に並べたワークフローを生成する。なお、システム内のデバイス30の特定は、デバイス情報記憶部202に記憶された、各デバイス30の識別情報と当該デバイス30の種類とを参照して行えばよい。
【0042】
なお、ワークフロー規則記憶部40に記憶される規則は、印刷物の属性の組合せに応じてワークフローパタンを特定できるような規則であれば、必ずしも図2A,2Bに示すような形式を有していなくてもよい。例えば、ワークフローパタンに対応付けられる属性の組合せは、属性の項目の値を引数とする論理式によって記述してもよい。
【0043】
再び図1を参照し、ワークフロー生成部208は、印刷ジョブに対応するワークフローを生成すると、さらに、生成したワークフローに含まれる各デバイス30について、当該デバイス30で行われる工程の処理の開始から終了までの時間(以下、「工程処理時間」と言う)を算出するために必要な情報を特定する。各デバイス30の工程処理時間を算出するために必要な情報は、印刷ジョブから取得される属性情報と、当該印刷ジョブを処理する過程で予定される各デバイス30の入出力を表す情報と、を用いて特定される。例えば、属性情報のうち、作成対象の印刷物の原稿サイズ、ページ数、および部数など、ワークフロー中のデバイス30における処理の量に関係する情報を、当該デバイス30の工程処理時間の算出に必要な情報として特定する。また、ワークフロー中の1つのデバイス30に対する入力は、当該デバイス30における処理の量に関係し、当該デバイス30からの出力は、ワークフローにおける次の順番のデバイス30の入力となる。このため、あるデバイス30の出力は、その次の順番のデバイス30における処理の量に関係し得る。したがって、各デバイス30の入出力を表す情報を、各デバイス30の工程処理時間を算出するために必要な情報として特定してもよい。
【0044】
一具体例として、両面モノクロ印刷で中綴じ製本された冊子を作成する印刷ジョブを処理する場合を考える。本具体例において、印刷ジョブから取得される属性情報が「モノクロ印刷」および「中綴じ製本」の属性の組合せを含むことから、図2Bの例のワークフローパタンに従ってワークフローが生成されるとする。また、当該印刷ジョブから取得される属性情報には、「モノクロ印刷」および「中綴じ製本」の属性に加えて、「両面印刷」を示す属性、「N−up設定なし」を示す属性、原稿サイズ、一冊当たりのページ数、および作成する冊子の部数が含まれるとする。生成されたワークフローにおいて1番目のデバイス30であるプリプレス処理PCは、例えば、印刷対象の全ページをPDL(ページ記述言語)で記述したPDLデータを入力として受け取り、受け取ったPDLデータを変換して、ワークフローにおける2番目のデバイス30であるモノクロプリンタでの印刷処理に適した形式の画像データを生成する処理を行うとする。本例の場合、プリプレス処理PCからの出力は、印刷対象の全ページの画像データである。ここで、プリプレス処理PCによる処理にかかる時間は、処理対象の原稿サイズおよびページ数に依存すると考えられるため、プリプレス処理PCの工程処理時間の算出に必要な情報として、例えば、属性情報に含まれる原稿サイズおよびページ数が特定される。2番目のデバイス30であるモノクロプリンタは、プリプレス処理PCが出力した画像データを入力として受け取り、属性情報で表される原稿サイズの用紙に、属性情報で表されるページ数および部数の両面印刷を行う。本例では、属性情報が「N−up設定なし」を示す属性を含むことから、モノクロプリンタは、用紙の1面(表面または裏面)に1ページを印刷する。モノクロプリンタは、上述の原稿サイズの用紙に上述のページ数だけ両面印刷された、上述の部数の印刷済み用紙を出力する。モノクロプリンタによる印刷処理にかかる時間は、両面印刷か否か、N−up設定の有無、原稿サイズ、ページ数、および部数に依存すると考えられることから、モノクロプリンタの工程処理時間の算出に必要な情報として、属性情報に含まれる「両面印刷」属性、「N−up設定なし」属性、原稿サイズ、ページ数、および部数が特定される。3番目のデバイス30である中綴じ製本機は、モノクロプリンタから出力される印刷済み用紙を入力として受け取り、受け取った用紙を属性情報が表すページ数の冊子ごとに纏めて、冊子の中央をステープラ止めする製本処理を行う。中綴じ製本機の出力は、属性情報が表す部数の、中綴じ製本された冊子である。中綴じ製本機による処理にかかる時間は、作成する冊子の部数に依存すると考えられることから、中綴じ製本機の工程処理時間の算出に必要な情報として、属性情報に含まれる部数が特定される。
【0045】
なお、どのような種類のデバイス30について、どのような種類の情報を工程処理時間の算出に必要な情報として特定するかは、例えば、ワークフロー規則記憶部40に記憶されるワークフローパタン中に記述しておけばよい。あるいは、各デバイス30の識別情報に関連付けてデバイス情報記憶部202に登録しておいてもよい。
【0046】
起動時間特定部210は、ワークフロー生成部208が生成したワークフローに含まれる各デバイス30について、当該デバイス30の起動時間を特定する。各デバイス30の起動時間は、当該デバイス30の電源状態を、現在の電源状態からアイドルモードに切り替えるための起動処理にかかる時間である。起動時間特定部210は、ワークフローに含まれる各デバイス30の電源状態情報および動作情報をデバイス情報記憶部202から読み出し、読み出した電源状態情報および動作情報を用いて、各デバイス30の起動時間を求める。例えば、あるデバイス30の現在の電源状態がオフ状態である場合、当該デバイス30の動作情報に含まれる、オフ状態からの復帰時間を当該デバイス30の起動時間とする。また例えば、当該デバイス30について、現在の電源状態が省電力モードの場合、省電力モードからの復帰時間を起動時間とすればよい。
【0047】
工程処理時間算出部212は、ワークフロー生成部208が生成したワークフローに含まれる各デバイス30について、当該デバイス30の工程処理時間を算出する。工程処理時間算出部212は、システムが備える全デバイス30のそれぞれに対応する算出部を含む。例えば、N個のデバイス30を備える図1の例のシステムでは、工程処理時間算出部212は、N個のデバイス30のそれぞれに対応する、デバイス1用算出部212−1、デバイス2用算出部212−2、…、デバイスN用算出部212−NのN個の算出部を含む。これらN個の算出部のそれぞれは、対応するデバイス30の種類および仕様等に応じた、工程処理時間の算出手順を図示しない記憶装置に保持しており、この算出手順に従って、対応するデバイス30の工程処理時間を算出する。工程処理時間算出部212は、これらのN個の算出部のうち、ワークフローに含まれるデバイス30の識別情報に対応する算出部を特定し、特定した各算出部により、当該デバイス30の起動時間および工程処理時間を算出する。
【0048】
ワークフローに含まれる各デバイス30の工程処理時間は、当該デバイス30の工程処理時間の算出に必要な情報としてワークフロー生成部208が特定した情報および当該デバイス30の動作情報を用いて算出される。例えば、図2Bを参照する上述の具体例(両面モノクロ印刷で中綴じ製本された冊子を作成する印刷ジョブの例)の場合、1番目のデバイス30であるプリプレス処理PCについては、当該プリプレス処理PCの性能を表す情報を当該プリプレス処理PCの動作情報から取得し、取得した性能を表す情報と、作成対象の印刷物の原稿サイズおよびページ数と、を用いて工程処理時間が算出される。2番目のデバイス30であるモノクロプリンタについては、作成対象の印刷物の原稿サイズで両面印刷を行う場合のPPMおよびFPOTの値を当該モノクロプリンタの動作情報から取得し、取得したPPMおよびFPOTの値と、作成対象の印刷物のページ数および部数と、を用いて、工程処理時間が算出される。本例において、ページ数をNp、部数をNsとすると、「N−up設定なし」であることから、ページ数Npと部数Nsとの積がモノクロプリンタによって印刷される面数となる。したがって、モノクロプリンタの工程処理時間は、
FPOT+(Np×Ns−1)/PPM (式1)
により求められる。「N−up設定あり」の場合は、ページ数Npを1面当たりのページ数で除算した結果から印刷の面数を求め、求めた面数を上記の(式1)のNpの代わりに用いればよい。また、3番目のデバイスである中綴じ製本機については、例えば、当該中綴じ製本機の動作情報から単位時間当たりに作成可能な冊数を取得し、取得した冊数で作成対象の印刷物の部数を除算することで算出される。
【0049】
なお、工程処理時間の算出の手順は、デバイス30の種類や仕様によって異なるため、上述の例に限定されない。例えば、対応するデバイス30の内部または周辺環境の温度や湿度が工程処理時間に影響する場合もあり、この場合、工程処理時間算出部210は、動作情報および属性情報だけでなく、該当する温度や湿度の値も取得して、工程処理時間を算出する。温度や湿度の値は、デバイス30の内部または周辺に予め設けられたセンサから取得すればよい。
【0050】
起動開始時刻決定部214は、起動時間特定部210が特定した起動時間および工程処理時間算出部212が算出した工程処理時間を用いて、ワークフローに含まれるデバイス30それぞれの起動処理を開始する時刻を決定する。本実施形態の例では、1番目のデバイス30については、起動処理の終了の時刻と印刷ジョブの処理の開始の時刻とが一致するように、2番目以降のデバイス30については、自身の1つ前の順番のデバイス30の工程処理の終了の時刻と自身の起動処理の終了の時刻とが一致するように、各デバイス30の起動処理の開始の時刻を決定する。ここで、「一致」するとの用語は、2種類の時刻が完全に一致する場合だけでなく、2種類の時刻の間の差が予め定められた時間の範囲内(例えば、1〜5秒以内など)に収まる場合も含むものとする。
【0051】
図3は、K個のデバイス30を順に用いて印刷ジョブを処理する場合であって、本実施形態の例の起動開始時刻決定部214が各デバイス30の起動処理の開始の時刻を決定した場合の、各デバイス30の起動処理および工程処理の実行のタイミングの例を示す。以下の説明において、i番目のデバイス30(i=1,2,…,K)の起動時間をIi、工程処理時間をDiとする。図3を参照し、印刷ジョブの処理を開始する時刻、つまり、1番目のデバイス30による工程処理を開始する時刻をTjobとすると、起動開始時刻決定部214は、時刻Tjobから1番目のデバイス30の起動時間I1だけ前の時刻Tjob−I1に1番目のデバイス30の起動処理を開始することを決定する。この場合、1番目のデバイス30の工程処理が終了する時刻は、工程処理を開始する時刻Tjobから1番目のデバイス30の工程処理時間D1だけ後の時刻Tjob+D1となる。時刻Tjob+D1において、2番目のデバイス30の工程処理を開始させることを可能とするため、起動開始時刻決定部214は、時刻Tjob+D1から2番目のデバイス30の起動時間I2だけ前の時刻Tjob+D1−I2に2番目のデバイス30の起動処理を開始することを決定する。同様にして、起動開始時刻決定部214は、3番目以降K番目までのデバイス30の起動処理の開始時刻を決定する。1番目からK番目のデバイスそれぞれの起動処理の開始時刻を以上のように決定することで、図3に例示するように、あるデバイス30の工程処理の終了の時刻と次の順番のデバイス30の工程処理の開始の時刻とが一致する。
【0052】
なお、図3の例において、1番目からK番目までのデバイス30は、それぞれ、自身の工程処理が終了すると、電源状態を省電力モードまたはオフ状態に切り替えるものとする。よって、図3の例では、各デバイス30がアイドルモードで待機して電力を消費することはない。
【0053】
図4に、図3を参照して説明した上述の例のように1番目からK番目までの各デバイス30の起動開始時刻を決定した場合の各デバイス30の起動開始時刻および工程処理終了時刻を示す。図4の例の表において、デバイス番号1,2,3,…,K−1,Kは、それぞれ、図3の1番目〜K番目のデバイスに対応する。1番目のデバイス30(デバイス番号「1」)の起動開始時刻は、上述したとおり、印刷ジョブ処理の開始時刻Tjobから1番目のデバイス30の起動時間I1だけ前の時刻Tjob−I1である。2番目以降のデバイス30の起動開始時刻は、1つ前の順番のデバイス30の工程処理終了時刻より自デバイス30の起動時間だけ前の時刻である。本例では、あるデバイス30の工程処理が終了した時刻に次の順番のデバイス30の工程処理が開始されるため、各デバイス30の工程処理終了時刻は、印刷ジョブ処理の開始時刻Tjobに、1番目のデバイスから当該デバイスまでの各工程処理時間の和を加算した値になる。
【0054】
図3および図4を参照して説明した上述の例では、起動開始時刻決定部214は、印刷ジョブの処理開始時刻Tjobを基準とした相対的な時刻を、各デバイス30の起動処理の開始の時刻として決定する。起動開始時刻決定部214は、決定した時刻を表す情報をスケジューラ216に渡す。例えば、図4の例の表の「起動開始時刻」の列に示すような、各デバイス30の起動開始時刻の式をスケジューラ216に渡せばよい。
【0055】
図1の説明に戻り、スケジューラ216は、起動開始時刻決定部214が決定した時刻に、各デバイスに起動処理を開始させるための制御の計画(スケジュール)を作成する。スケジューラ216が作成する計画は、例えば、どの時刻に、どのデバイスに対して、どのような制御信号を送信するかを表すものであってよい。本実施形態の例のスケジューラ216は、図4に例示するような、各デバイス30の起動処理開始時刻を表す式を起動開始時刻決定部214から受け取って、受け取った式を実際の時刻の値に変換する。例えば、スケジューラ216は、まず、各デバイス30の起動処理開始時刻の式を起動開始時刻決定部214から受け取った時刻よりも後の時刻を、1番目のデバイス30の起動開始時刻Tjob−I1の値として設定する。このとき、現在時刻の直後の時刻の値をTjob−I1に設定すれば、スケジューラ216が起動開始時刻を表す式を受信した直後に1番目のデバイス30の起動処理が開始されることになる。1番目のデバイス30の起動時間I1は、起動時間特定部210により特定済みであるため、Tjob−I1の値を設定すると、印刷ジョブの処理開始時刻Tjobの値が定まる。このように定めた印刷ジョブの処理開始時刻Tjobの値、起動時間特定部210により特定済みの各デバイス30の起動時間Iiの値、および工程処理時間算出部212により算出済みの各デバイス30の工程処理時間Diの値を、2番目以降のデバイス30の起動開始時刻の式に代入して計算することで、スケジューラ216は、2番目以降のデバイス30の起動開始時刻の値を求める。1番目からK番目の各デバイス30について求めた起動開始時刻の値および印刷ジョブの処理開始時刻Tjobの値を用いて、スケジューラ216は、印刷ジョブ送信の計画および起動開始命令送信の計画を生成する。生成される計画の例を図5および図6に示す。
【0056】
図5は、印刷ジョブを1番目のデバイス30に送信する計画の例である。図5の例の表は、ID、ジョブ送信時刻Tjob、宛先デバイス名、および宛先デバイスIPアドレスを含む。IDは、当該印刷ジョブの処理に関連してプリントサーバ20がデバイス30に対して1つの制御信号を送信する処理の識別情報である。スケジューラ216は、1回の制御信号の送信に対して1つのIDを割り当てる。図5の例の表において、ジョブ送信時刻Tjobは、上述の印刷ジョブの処理開始時刻Tjobを表す。宛先デバイス名は、1番目のデバイス30に付された名称を表す。宛先デバイスIPアドレスは、1番目のデバイス30のIPアドレスを表す。宛先デバイス名および宛先デバイスIPアドレスは、各デバイス30の識別情報に関連付けて当該デバイス30の名称およびIPアドレスを予めデバイス情報記憶部202に登録しておき、1番目のデバイス30の識別情報に関連付けられた名称およびIPアドレスを読み出して、計画に含めればよい。
【0057】
図6は、各デバイス30に対する起動開始命令の送信の計画の例である。図6の例の表は、ID、起動開始命令送信時刻、対象デバイス名、および対象デバイスIPアドレスを含む。図6の例の表の1行は、1つのデバイス30に対する起動開始命令の送信の計画に対応する。図6は、4つのデバイス30がワークフローに含まれる場合(K=4)の例である。図6の例の表において、IDは、図5の例の表のIDと同様、制御信号の送信処理の識別情報を表し、ワークフローにおける順番がより早いデバイス30に対する制御信号の送信に対して、より数値の小さいIDが割り当てられている。起動開始命令送信時刻は、対応するデバイス30に対して、起動処理の開始を指示する命令を表す制御信号を送信する時刻を表し、各デバイス30について上述のように求めた起動開始時刻の値である。対象デバイス名および対象デバイスIPアドレスは、それぞれ、対応するデバイス30の名称およびIPアドレスを表す。対象デバイス名および対象デバイスIPアドレスは、図5の例の宛先デバイス名および宛先IPアドレスと同様、デバイス情報記憶部202から取得すればよい。
【0058】
再び図1を参照し、スケジューラ216は、印刷ジョブの送信の計画をジョブ送信部218に渡し、起動開始命令送信の計画を起動制御部220に渡す。
【0059】
ジョブ送信部218は、スケジューラ216が作成した計画に従って、印刷ジョブを送信する。例えば、図5の例の表に示す計画の場合、1番目のデバイス30である「プリプレス処理PC」のIPアドレス「192.10.22.101」を宛先として、時刻「9:47:42」に印刷ジョブを送信する。印刷ジョブを受け取ったデバイス30は、受け取った印刷ジョブについて、自身の担当の工程処理を実行する。また、本実施形態の例のジョブ送信部218は、ワークフロー生成部208が生成したワークフローの情報も印刷ジョブと共に1番目のデバイス30に対して送信する。1番目のデバイス30は、このワークフローの情報を参照して、自身の次の順番(つまり、2番目)のデバイス30の識別情報を取得し、自身の工程処理の結果と当該ワークフローの情報とを当該識別情報のデバイス30に渡す。2番目以降のデバイス30も、ワークフローの情報を参照して、自身の次の順番のデバイス30を特定し、特定したデバイス30に対して自身の工程処理の結果と当該ワークフローの情報とを渡す。
【0060】
起動制御部220は、スケジューラ216が作成した計画に従って各デバイス30が起動処理を開始するよう、各デバイス30を制御する。例えば、起動制御部220は、図6の例の表に示す計画の場合、プリプレス処理PC、カラー対応レーザプリンタ、ノリ綴じ製本機、およびくるみ製本表紙綴じ機のそれぞれのIPアドレスを宛先として、起動開始命令送信時刻で示される時刻に、起動処理を開始することを指示する命令を表す制御信号を送信する。
【0061】
起動制御部220からの制御信号を受け取った各デバイス30の電源状態制御部34は、自身の電源状態をアイドルモードに切り替える起動処理を行う。本実施形態の例では、各デバイス30の起動処理が終了してアイドルモードになると同時に、当該デバイス30の1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了し、その処理結果が当該デバイス30に渡される。このため、各デバイス30は、起動処理の終了と同時に自身の担当の工程を開始し、電源状態がアイドルモードから処理実行モードに切り替えられることになる。
【0062】
以下、図7を参照し、プリントサーバ20が行う処理の手順の例を説明する。プリントサーバ20は、クライアント10から印刷ジョブを受信した場合に、図7に例示する手順の処理を開始する。
【0063】
プリントサーバ20のジョブ受信部204は、クライアント10から受信した印刷ジョブをジョブ属性情報取得部206に渡す。ジョブ属性情報取得部206は、受け取った印刷ジョブから属性情報を取得する(ステップS10)。属性情報は、受信した印刷ジョブによる作成対象の印刷物の属性を示し、原稿サイズ、片面/両面印刷の別、モノクロ/カラー印刷の別、N−up設定の有無、ページ数、部数、および仕上げ方式などの属性を含む。
【0064】
次に、ワークフロー生成部208は、ステップS10でジョブ属性情報取得部206が取得した属性情報を用いて、処理対象の印刷ジョブに対応するワークフローを生成する(ステップS12)。例えば、ワークフロー生成部208は、まず、ワークフロー規則記憶部40を参照して、ステップS10で取得された属性情報に含まれる属性の組合せに対応するワークフローパタンを特定する(図2A,2B参照)。そして、特定したワークフローパタンに含まれる各装置の種類に対応するデバイス30の識別情報をデバイス情報記憶部202から読み出す。さらに、読み出した識別情報の各デバイス30による処理を、前述のワークフローパタンで示される順番で実行すべきことを表すワークフローを生成する。ワークフロー生成部208は、ステップS12で生成したワークフローを起動時間特定部210および工程処理時間算出部212に渡す。
【0065】
ワークフローを生成した後、ワークフロー生成部208は、生成したワークフローに含まれる各デバイス30の工程処理時間の算出のために必要な情報を特定する(ステップS14)。例えば、図2Bを参照して上述した具体例のように、印刷ジョブから取得された属性情報およびワークフローに含まれる各デバイス30の入出力に関する情報のうち、各デバイス30における処理の量に関係する情報を、工程処理時間の算出のために必要な情報として特定する。ワークフロー生成部208は、ステップS14で特定した情報を工程処理時間算出部212に渡す。
【0066】
次に、起動時間特定部210は、ワークフロー中の各デバイス30の起動時間を特定する(ステップS16)。例えば、起動時間特定部210は、まず、ステップS12で生成されたワークフローに含まれる各デバイス30の識別情報に関連付けられた電源状態情報および動作情報をデバイス情報記憶部202から読み出す。そして、各デバイス30について、電源状態情報が表す現在の電源状態からアイドルモードに切り替えるまでの復帰時間(動作情報に含まれる)を、当該デバイス30の起動時間として特定する。起動時間特定部210は、各デバイス30について特定した起動時間を起動開始時刻決定部214に渡す。
【0067】
また、工程処理時間算出部212は、ワークフロー中の各デバイス30の工程処理時間を算出する(ステップS18)。例えば、工程処理時間算出部212は、まず、ステップS12で生成されたワークフローに含まれる各デバイス30の識別情報から、N個のデバイス30用算出部のうちのどの算出部を用いるかを特定する。そして、特定した各算出部において、対応するデバイス30の工程処理時間の算出に必要な情報としてステップS14で特定された情報を用いて、当該デバイス30の工程処理時間を算出する。工程処理時間算出部212は、各デバイス30について算出した工程処理時間を起動開始時刻決定部214に渡す。
【0068】
なお、起動時間の特定処理(ステップS16)および工程処理時間の算出処理(ステップS18)は、並行して行ってもよいし、処理の順番を逆にしてもよい。
【0069】
起動開始時刻決定部214は、ワークフロー中の各デバイスについて、起動処理を開始する時刻を決定する(ステップS20)。本実施形態の例では、起動開始時刻決定部214は、ステップS20で、ワークフローにおける1番目のデバイス30の起動処理の終了の時刻と印刷ジョブの処理開始の時刻とが一致し、かつ、2番目以降の各デバイス30について、自身の1つ前の順番のデバイス30の工程処理の終了の時刻と自身の起動処理の終了の時刻とが一致するように、各デバイス30の起動処理の開始の時刻を決定する。図3および図4を参照して上記で説明した各デバイス30の起動開始時刻は、ステップS20で決定される、起動処理開始の時刻の具体例である。起動開始時刻決定部214は、ステップS20で決定した、各デバイス30の起動処理開始の時刻をスケジューラ216に渡す。
【0070】
スケジューラ216は、ステップS20で決定された各デバイス30の起動処理開始の時刻に従って、印刷ジョブの送信の計画およびワークフロー中の各デバイス30に対する起動開始命令の送信の計画を生成する(ステップS22)。スケジューラ216は、例えば、印刷ジョブの処理の開始時刻に対する相対的な時刻の形式で求められた各デバイス30の起動処理開始時刻に従って、印刷ジョブ送信および起動開始命令送信の具体的な時刻の値を決定する。図5および図6を参照して上記で説明した計画は、ステップS22でスケジューラ216が生成する計画の具体例である。スケジューラ216は、印刷ジョブ送信の計画をジョブ送信部218に渡し、起動開始命令送信の計画を起動制御部220に渡す。
【0071】
ジョブ送信部218および起動制御部220は、ステップS22でスケジューラ216が生成した計画に従って、それぞれ、印刷ジョブの送信および起動開始命令の送信を行う(ステップS24)。例えば、起動制御部220は、起動開始命令送信の計画で示される時刻に、ワークフロー中の各デバイス30に対して、当該デバイス30の起動処理を開始することを指示する命令を表す制御信号を送信する。
【0072】
以上で説明した実施形態の例によると、1つのデバイス30の工程処理の終了の時刻と次のデバイス30の起動処理の終了の時刻とが一致するため、当該次のデバイス30は、当該1つのデバイス30の工程処理の終了の後、アイドルモードでの待ち時間なしで自身の工程処理を開始することになる。
【0073】
以下、図8および図9を参照し、本実施形態の例と異なるタイミングでワークフロー中の各デバイス30の起動処理を開始させる場合の各デバイス30の処理の様子の例を説明する。図8は、印刷ジョブの処理を開始する前にワークフロー中のすべてのデバイス30の起動処理を開始する場合の例を示し、図9は、2番目以降のデバイス30について、自身よりも1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了した時点で起動処理を開始させる場合の例を示す。図8および図9のいずれの例においても、上述の実施形態の例の場合の各デバイス30の処理の様子の例を示す図3と同様、1番目からK番目までのK個のデバイス30により印刷ジョブを処理するものとする。また、図8および図9のいずれの例においても、印刷ジョブの処理の開始時刻は図3の例と同様の時刻Tjobであるとする。また、図8および図9において、デバイスi(i=1,2,…,K)の起動時間をIi、工程処理時間をDiと記す。
【0074】
図8の例では、K個のデバイス30のすべてが、同じ時刻Tjob−I1に起動処理を開始させられ、1番目のデバイス30は、起動処理が終了した時点(時刻Tjob=Tjob−I1+I1)で印刷ジョブの処理を開始する。2番目からK番目までのデバイス30は、起動処理が終了した後、アイドル状態で自身の1つ前の順番のデバイス30の工程処理の終了を待ち受け、1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了すると、自身の工程処理を開始する。図8の例において、印刷ジョブの処理が終了する時刻、つまり、K番目のデバイス30の処理が終了する時刻は、図3の例と同様、Tjob+D1+D2+…+DKである。図8の例では、2番目からK番目のデバイス30において起動処理が終了してから工程処理を開始するまでのアイドル状態の間の消費電力の分だけ、図3の例の場合よりも多くの電力が消費される。
【0075】
図9の例では、1番目のデバイス30は、時刻Tjob−I1に起動処理を開始させられ、2番目からK番目までのデバイス30は、自身の1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了した時点で、起動処理を開始させられる。図9の例によると、図8の例と異なり、2番目からK番目のデバイス30において、起動処理の終了から工程処理の開始までアイドル状態で待機することはない。よって、図9の例では、図8の例と比較して電力消費は小さくなる。しかし、図9の例の場合、印刷ジョブの処理が終了する時刻は、印刷ジョブの処理開始時刻Tjobに対し、各デバイス30の工程処理時間の和だけでなく各デバイス30の起動時間の和を加えた時刻Tjob+D1+D2+…+DK+I1+I2+…+IKとなり、図8の例の場合よりも印刷ジョブの処理に時間がかかる。本実施形態の例に係る図3の例では図8の例と同様に時刻Tjob+D1+D2+…+DKに印刷ジョブの処理が終了するため、図9の例によると、印刷ジョブの処理のために図3の例よりも多くの時間がかかると言える。また、図9の例では、例えば、あるデバイス30の起動処理が終了しなければ1つ前の順番のデバイス30の工程処理の結果を当該あるデバイス30において受け取ることができない場合に、1つ前の順番のデバイスにおいて工程処理が終了した後、アイドル状態となり、次のデバイス30の起動処理の終了を待つことが考えられる。このような場合の例として、図9に、2番目のデバイス30の工程処理の終了から3番目のデバイス30の起動処理の終了までの「アイドル状態」を示している。このようなアイドル状態における電力消費は、上述の実施形態の例に係る図3の場合には生じない。
【0076】
図8および図9を参照して以上で説明したとおり、各デバイス30の起動処理の終了の時刻と当該デバイス30の1つ前の順番のデバイス30の工程処理の終了の時刻とが一致するように各デバイス30の起動処理を開始させる上述の実施形態の例では、印刷ジョブの処理開始の前にすべてのデバイス30の起動処理を開始させる場合、および、2番目以降の各デバイスについて自身よりも1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了した時点で起動処理を開始させる場合のいずれの場合よりも、少ない消費電力で印刷ジョブが処理される。また、上述の実施形態の例において、印刷ジョブの処理にかかる時間は、各デバイス30の工程処理時間の和であり、2番目以降の各デバイスについて自身よりも1つ前の順番のデバイス30の工程処理が終了した時点で起動処理を開始させる場合と比較して、より短時間で印刷ジョブが処理される。
【0077】
また、上述の実施形態の例では、印刷ジョブごとにワークフローが生成され、当該ワークフローに含まれるデバイス30に対してのみ、起動開始命令が送信される。よって、上述の実施形態の例では、印刷ジョブごとに、当該印刷ジョブに対応した各デバイス30の起動制御が行われる。さらに、上述の実施形態の例において、各デバイス30は、工程処理の実行中以外は省電力モードまたはオフ状態である。したがって、上述の実施形態の例では、処理中の印刷ジョブのための一工程を実行中のデバイス30および後の工程のために起動処理中のデバイス30の他は、省電力モードまたはオフ状態となる。
【0078】
なお、上述の実施形態の例は、本発明の実施形態の一例にすぎず、上述の実施形態の例の他にも各種の変形例があってよい。例えば、上述の実施形態の例において、各デバイス30の電源状態制御部34は、処理実行部32による工程処理が終了すると、自身の電源状態を省電力モードまたはオフ状態に設定する。変形例では、工程処理の終了の時点で各デバイス30が自ら電源状態を省電力モードまたはオフ状態に設定する代わりに、プリントサーバ20からの制御信号に従って各デバイス30の電源状態を省電力モードまたはオフ状態に設定してもよい。例えば、各デバイス30の工程処理終了時刻に、プリントサーバ20が当該デバイス30に対して省電力モードまたはオフ状態への電源状態の切り替えを指示する命令を表す制御信号を送信し、この制御信号を受信したデバイス30の電源状態制御部34が制御信号に従って当該デバイス30の電源状態を省電力モードまたはオフ状態に設定する。
【0079】
また、他の変形例では、各デバイス30は、必ずしも、工程処理の終了の時点で、電源状態を省電力モードまたはオフ状態に設定しなくてもよい。例えば、工程処理の終了の時点で各デバイス30の電源状態制御部34が電源状態をアイドルモードに設定するようにしてもよい。
【0080】
以上に例示したプリントサーバ20は、典型的には、汎用のコンピュータにて上述のプリントサーバ20の各部の機能または処理内容を記述したプログラムを実行することにより実現される。コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、図10に示すように、CPU80、メモリ(一次記憶)82、各種I/O(入出力)インタフェース84等がバス86を介して接続された回路構成を有する。また、そのバス86に対し、例えばI/Oインタフェース84経由で、ハードディスクドライブ(HDD)88やCDやDVD、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体を読み取るためのディスクドライブ90が接続される。このようなドライブ88または90は、メモリに対する外部記憶装置として機能する。実施形態の処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、またはネットワーク経由で、HDD88等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがメモリに読み出されCPUにより実行されることにより、実施形態の処理が実現される。
【符号の説明】
【0081】
10 クライアント、20 プリントサーバ、30 デバイス、32 処理実行部、34 電源状態制御部、40 ワークフロー規則記憶部、80 CPU、82 メモリ、84 I/Oインタフェース、86 バス、88 HDD、90 ディスクドライブ、200 デバイス情報登録処理部、202 デバイス情報記憶部、204 ジョブ受信部、206 ジョブ属性情報取得部、208 ワークフロー生成部、210 起動時間特定部、212 工程処理時間算出部、214 起動開始時刻決定部、216 スケジューラ、218 ジョブ送信部、220 起動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成手段と、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定手段と、
前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出手段と、
前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定手段と、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定手段が決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記工程情報に含まれる処理装置のうち最初に処理を実行する1番目の処理装置に対して、当該1番目の処理装置の起動処理の終了の時刻に前記印刷命令を送信する送信手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、当該処理装置における処理が終了した時点で当該処理装置の電源の状態を省電力モードまたは電源オフ状態に設定するよう制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成ステップと、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定ステップと、
前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出ステップと、
前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定ステップと、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定ステップで決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御ステップと、
をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項5】
印刷物の作成のための処理の互いに異なる一部をそれぞれ行う複数の処理装置と、
前記複数の処理装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
作成対象の印刷物の属性を表す属性情報を含む印刷命令を端末装置から受信した場合に、前記印刷命令に含まれる前記属性情報と、印刷物の属性および当該属性を有する印刷物の作成のために実行すべき複数の処理に関して予め設定された規則と、を用いて、前記複数の処理装置のうちのどの処理装置による処理をどの順番で実行することで前記作成対象の印刷物を作成するかを表す工程情報を生成する生成手段と、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれから取得される、当該処理装置の動作に関する動作情報および当該処理装置の電源の状態を表す電源状態情報を用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて当該処理装置を起動する起動処理にかかる起動時間を特定する特定手段と、
前記動作情報と前記電源状態情報と前記印刷命令に含まれる前記属性情報とを用いて、前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれについて前記作成対象の印刷物の作成のために当該処理装置が行う処理にかかる処理時間を算出する算出手段と、
前記起動時間および前記処理時間と、前記工程情報が表す前記処理装置の処理の実行の順番と、を用いて、1つの処理装置の処理の終了の時刻と当該1つの処理装置の次に処理を実行する処理装置の起動処理の終了の時刻とが一致するように、前記工程情報に含まれる処理装置それぞれの起動処理の開始の時刻を決定する決定手段と、
前記工程情報に含まれる処理装置のそれぞれを、前記決定手段が決定した時刻に起動処理を開始するよう制御する制御手段と、
を備える、ことを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25657(P2013−25657A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161551(P2011−161551)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】