説明

制御装置および燃料電池システム

【課題】高い発電効率で燃料電池を稼動させることができる燃料電池の制御装置およびこれを用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池の状態を検出する検出部と、該燃料電池の膜電極複合体に流れる電流値を変更する電流値変更部と、検出部および電流値変更部に接続され、検出部による検出結果に応じて、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部を制御するための制御部とを備える制御装置およびこれを用いた燃料電池システムである。燃料電池は、好ましくはアニオン伝導性電解質膜を電解質膜とする膜電極複合体を備えるアルカリ形燃料電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い発電効率で燃料電池を稼動させることができる燃料電池の制御装置およびこれを用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発電主要部として、電解質膜をアノード極およびカソード極で挟持した構成の膜電極複合体(MEA)を備えており、電解質膜の種類によって、固体高分子形燃料電池(直接形燃料電池を含む)、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、アルカリ形燃料電池などに分類される。
【0003】
上記のうち、アルカリ形燃料電池は、電解質膜としてアニオン伝導性電解質膜(アニオン交換膜)を用いた、電荷キャリアが水酸化物イオン(OH-)である燃料電池である。アルカリ形燃料電池においては、アノード極とカソード極とを電気的に接続すると、次のような電気化学反応によりアノード極とカソード極との間に電流が流れ、電気エネルギーを得ることができる。すなわち、カソード極に酸化剤(たとえば酸素または空気など)および水(この水は、アノード極で生じ、電解質膜を透過した水であり得る)を供給すると、下記式(1):
カソード極:1/2O2+H2O+2e → 2OH- (1)
で表される触媒反応によりOH-が生成される。このOH-は、水分子との水和状態で電解質膜を介してアノード極側に伝達される。一方、アノード極では、供給された還元剤(燃料)、たとえばH2ガスとカソード極から伝達されたOH-とが、下記式(2):
アノード極:H2+2OH- → 2H2O+2e (2)
で表される触媒反応を起こし、水および電子を生成する。
【0004】
アルカリ形燃料電池は、触媒などの構成材料の制限が少なく、より安価に製造できるなどの利点を有している一方、他の燃料電池と異なり、電解質膜および触媒層の電解質にアニオン伝導性電解質を用いるために、電解質膜および触媒層が環境中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、電解質膜および触媒層中のOH-が、下記式(3)および(4):
CO2+2OH- → CO32-+H2O (3)
CO2+OH- → HCO3- (4)
のような反応によってCO32-および/またはHCO3-(以下、「CO2由来アニオン」ということがある。)に置換されやすいという本来的な課題を有している。このようなCO2由来アニオンの濃度上昇(OH-イオン濃度の低下)は、電解質のアニオン伝導度を低下させ、結果、セル抵抗を大きく増大させるため、発電効率の低下を招く。
【0005】
上記セル抵抗増大の問題は、アルカリ形燃料電池の稼動により生じる「セルフパージ」と呼ばれる現象により改善できることが知られている(たとえば非特許文献1)。「セルフパージ」とは、アルカリ形燃料電池の稼動により、アニオン伝導度の低下の要因である、電解質膜および触媒層に含まれるCO2由来アニオンがアノード極に移動し、還元剤によって還元され、CO2ガスとしてアノード極から排出される現象をいい、具体的には下記式(5)および(6):
2+CO32- → CO2+H2O+2e- (5)
2+2HCO3- → 2CO2+2H2O+2e- (6)
で表すことができる。
【0006】
ところで、アルカリ形燃料電池に限らず、燃料電池の発電電力を有効に利用するためには、当該燃料電池を電力源とする電子機器の電力消費量に応じて、燃料電池の発電量を調整する必要がある。たとえば、電子機器の電力消費が無い場合には、燃料電池の稼動(発電)を停止したり、電子機器の電力消費が小さい場合には、燃料電池の発電量(すなわち、動作電流値)を小さくしたり、電力消費が大きい場合には、燃料電池の発電量を大きくしたりする必要がある。
【0007】
しかしながら、アルカリ形燃料電池においては、電子機器の電力消費量に応じて稼動停止したり、動作電流値を小さくしたりすると、セルフパージによるアノード極からのCO2ガスの排出が十分に進行せず、セル抵抗増大による発電効率の低下を十分に抑制することができない。また、アノード極へのCO2由来アニオンの蓄積が進行することにより、アノード極における反応過電圧が高くなるという問題もある。反応過電圧の増大も発電効率を増大させる要因となる(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hiroyuki Yanagi,and Kenji Fukuta,ECS Transactions,16(2),257−262(2008)
【非特許文献2】Yu Matsui,Morihiro Saito,Akimasa Tasaka,and Minoru Inaba,ECS Transactions,25(13),105−110(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い発電効率で燃料電池を稼動させることができる燃料電池の制御装置およびこれを用いた燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、燃料電池の状態を検出する検出部と、該燃料電池の膜電極複合体に流れる電流値を変更する電流値変更部と、検出部および電流値変更部に接続され、検出部による検出結果に応じて、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部を制御するための制御部とを備える制御装置を提供する。燃料電池は、好ましくはアニオン伝導性電解質膜を電解質膜とする膜電極複合体を備えるアルカリ形燃料電池である。また、所定電流値Aは、たとえば600〜1000mA/cm2の範囲内である。
【0011】
検出部は、好ましくは単位時間T0内における、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものである。
【0012】
電流値変更部は、アルカリ形燃料電池に接続される電子負荷装置または可変抵抗器を少なくとも備えるものであることができる。また、電流値変更部は、アルカリ形燃料電池に接続される電子負荷装置または可変抵抗器と、アルカリ形燃料電池に対して直列に接続される電源装置とを含むものであってもよい。
【0013】
本発明の1つの好ましい実施形態において、膜電極複合体は、アニオン伝導性電解質膜と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極とからなり、検出部は、単位時間T0内における、第1電極と第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、電流値変更部は、第1電極と第2電極との間に流れる電流値を変更するものであり、制御部は、検出部による検出結果に応じて、第1電極と第2電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部を制御するものである。第1電極は発電時におけるアノード極であり、第2電極は発電時におけるカソード極であることができる。
【0014】
本発明の他の好ましい実施形態において、膜電極複合体は、アニオン伝導性電解質膜と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極と、第1電極と離間して第1表面に積層される第3電極とからなり、検出部は、単位時間T0内における、第1電極と第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、電流値変更部は、第3電極と第2電極との間に流れる電流値を変更するものであり、制御部は、検出部による検出結果に応じて、第3電極と第2電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部を制御するものである。本実施形態においても、第1電極は発電時におけるアノード極であり、第2電極は発電時におけるカソード極であることができる。
【0015】
本発明のさらに他の好ましい実施形態において、膜電極複合体は、アニオン伝導性電解質膜と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、アニオン伝導性電解質膜の第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極と、第1電極と離間して第1表面に積層される第3電極と、第2電極と離間して第2表面に積層される第4電極とからなり、検出部は、単位時間T0内における、第1電極と第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、電流値変更部は、第3電極と第4電極との間に流れる電流値を変更するものであり、制御部は、検出部による検出結果に応じて、第3電極と第4電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部を制御するものである。本実施形態においても、第1電極は発電時におけるアノード極であり、第2電極は発電時におけるカソード極であることができる。
【0016】
本発明においては、アノード極としての第1電極が有する触媒層の体積を、カソード極としての第2電極が有する触媒層の体積より大きくすることも好ましい。
【0017】
また、本発明は上記燃料電池を含む燃料電池部と、本発明に係る制御装置とを備える燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制御装置および燃料電池システムによれば、高い発電効率で燃料電池を稼動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る制御装置およびこれを適用した燃料電池システムの構成を示す概略図である。
【図2】燃料電池の膜電極複合体に、ある単位時間内における一定時間、所定電流値A以上の電流が流れるサイクルが繰り返されている状態およびこのときのCO2由来アニオン濃度の変化の様子を示す概念図である。
【図3】燃料電池の膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が1回のみ流れるときのCO2由来アニオン濃度の変化の様子を示す概念図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において燃料電池部が備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態において燃料電池部が備え得るアルカリ形燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【図9】本発明の第3の実施形態において燃料電池部が備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図である。
【図10】図9に示されるX−X線における概略断面図である。
【図11】図9に示されるXI−XI線における概略断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態において燃料電池部が備え得るアルカリ形燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図13】図12に示されるXIII−XIII線における概略断面図である。
【図14】図12に示されるXIV−XIV線における概略断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【図17】本発明の第5の実施形態において燃料電池部が備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図である。
【図18】図17に示されるXVIII−XVIII線における概略断面図である。
【図19】図17に示されるXIX−XIX線における概略断面図である。
【図20】図17に示されるXX−XX線における概略断面図である。
【図21】図17に示されるXXI−XXI線における概略断面図である。
【図22】本発明の第6の実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明に係る制御装置およびこれを適用した燃料電池システムの構成を示す概略図である。図1に示されるように、本発明の制御装置は、燃料電池を含む燃料電池部10(燃料電池)に接続され、該燃料電池の状態を検出するための検出部20;燃料電池部10(燃料電池)に接続され、該燃料電池の膜電極複合体に流れる電流の電流値を変更するための電流値変更部30;および、検出部20と電流値変更部30とに接続される制御部40を基本的に備える。制御部40は、検出部20から燃料電池の状態に関する検出結果(情報信号)を受信し、受信した検出結果に応じて、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電流値変更部30を制御する。
【0021】
また、本発明の燃料電池システムは、燃料電池を含む燃料電池部10;燃料電池部10(燃料電池)に接続され、該燃料電池の状態を検出するための検出部20;燃料電池部10(燃料電池)に接続され、該燃料電池の膜電極複合体に流れる電流の電流値を変更するための電流値変更部30;および、検出部20と電流値変更部30とに接続される制御部40を基本的に備えている。燃料電池部10を構成する燃料電池は、好ましくはアニオン伝導性電解質膜を有する膜電極複合体を備えるアルカリ形燃料電池である。
【0022】
本発明の制御装置は、燃料電池の膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が「一定時間」流れるように燃料電池を制御するものである。図2は燃料電池の膜電極複合体に、ある単位時間内における一定時間、所定電流値A以上の電流が流れるサイクルが繰り返されている状態を示した概念図である。図2を参照して説明すると、本発明において「膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れる」とは、燃料電池がこれを電力源とする電子機器への電力供給を行なっているか(すなわち、発電しているか)否かに関わらず、単位時間T0内におけるある一定時間、所定電流値A以上の電流が流れていることを意味している。そして好ましくは、図2に示されるように、このような所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返される。上記の「燃料電池がこれを電力源とする電子機器への電力供給を行なっているか(すなわち、発電しているか)否かに関わらず」とは、所定電流値A以上の電流が、電子機器からの要求に従った発電によるものか、制御装置が強制的に流したものであるかを問わないことを意味している。
【0023】
所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが2回以上繰り返される場合において、上記一定時間はすべて同じ時間長さであってもよいし、2種以上の異なる時間長さを含んでいてもよい。また、膜電極複合体に流される電流は所定電流値A以上である限り特に制限されず、すべて同じ電流値であってもよいし、2種以上の異なる電流値を含んでいてもよい。単位時間T0内に所定電流値A以上の電流が複数回流されてもよい。
【0024】
図2には、アルカリ形燃料電池の膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されている(所定電流値A以上の電流が間欠的に流れている)ときの、CO2由来アニオン濃度の変化の様子を併せて示している。図示されるように、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されることにより、セルフパージが繰り返されるため、膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を実質的に常に低い状態に維持することができ、CO2由来アニオンの蓄積を抑制することができる。これにより、セル抵抗増大およびアノード極における反応過電圧の上昇の問題が改善され、アルカリ形燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0025】
一方、図3は、アルカリ形燃料電池の膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0が1つのみである(所定電流値A以上の電流が1回のみ流れる)ときの、CO2由来アニオン濃度の変化の様子を概念的に示したものである。このような場合とは、たとえば、制御装置によって所定電流値A以上の電流を強制的に流し、それ以降、制御装置および燃料電池の稼動を行なわない場合;制御装置によって所定電流値A以上の電流を強制的に流し、それ以降、所定電流値A未満の電流で燃料電池が発電を行なう場合;所定電流値A以上の電流で燃料電池が発電を行なった後、それ以降、所定電流値A未満の電流で燃料電池が発電を行なうか、または燃料電池の稼動を停止する場合などである。
【0026】
本発明における「膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れる」とは、図3に示されるような場合、すなわち、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0が1つのみである場合を含み得るが、好ましくは図2に示されるように、このような単位時間T0のサイクルが繰り返される。膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を実質的に常に低い状態に維持できるためである。所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0が1つのみである場合には、当該単位時間T0後に燃料電池の発電を行なう際、十分に高い発電効率が得られないおそれがある。ただし、発電効率を顕著に低下させる程度にまでCO2由来アニオンが電解質膜および触媒層中に蓄積された後に燃料電池の発電を行なわないような場合には、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0が1つのみであってもよい。
【0027】
すなわち、付随効果も含めて、本発明の制御装置およびこれを適用した燃料電池システム(とりわけ、アルカリ形燃料電池システム)は次のような作用効果を奏し得る。
〔i〕上記のとおり、燃料電池が発電しているか否か(換言すれば、燃料電池を電力源とする電子機器の電力消費量)に関わらず、膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を実質的に常に低くした状態に維持することができるため、セル抵抗増大およびアノード極における反応過電圧の上昇を抑制した状態で燃料電池(アルカリ形燃料電池)を発電させることができ、もって発電効率を向上させることができる。
〔ii〕膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を低くした状態で燃料電池(アルカリ形燃料電池)の稼動を停止することができ、また、停止中においても、CO2由来アニオン濃度を低くした状態に維持できるため、燃料電池(アルカリ形燃料電池)を起動する際の立ち上げ(立ち上げ時間)を早くすることができる(すなわち、要求される発電量に達するまでの時間を短くすることができる)。
〔iii〕単位時間T0内におけるある一定時間、動作電流値を大きくするよう制御するため、連続的に動作電流値を大きくする場合と比べて、余剰電力(電子機器が要求する量を超える電力)の発生を抑制することができる。このことも発電効率の向上に寄与する。なお、当該余剰電力に起因する発電効率の低下を抑制するために、余剰電力をたとえば図示しない蓄電池などに蓄電してもよい。
〔iv〕単位時間T0内におけるある一定時間、動作電流値を大きくするよう制御するため、このような制御を一切行なわない場合と比べて、燃料電池からの発熱量を増加させることができる。これにより、補助熱源を利用しなくても燃料電池の動作温度を適温に維持することができるようになる。このこともまた、発電効率の向上および立ち上げ時間の短縮化に寄与する。
〔v〕単位時間T0内におけるある一定時間、動作電流値を大きくするよう制御するため、このような制御を一切行なわない場合と比べて、アルカリ形燃料電池のアノード極における生成水量を増加させることができる〔上記式(2)参照〕。これにより、アニオン伝導性電解質膜の含水量を高く維持してそのアニオン伝導抵抗を低く維持することができるようになる。このこともまた、発電効率の向上および立ち上げ時間の短縮化に寄与する。
【0028】
また本発明において、検出部20によって検出される「燃料電池の状態」とは、膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を評価することができる指標(パラメータ)を指しており、アルカリ形燃料電池に関し、具体的には次のものを挙げることができる。
〔a〕ある単位時間T0内における、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0
〔b〕アニオン伝導性電解質膜中のCO2由来アニオン濃度(またはこのうちのCO32-濃度)、
〔c〕アニオン伝導性電解質膜のpH、
〔d〕アニオン伝導性電解質膜の抵抗値、
〔e〕アルカリ形燃料電池の出力電圧値。
【0029】
上記のなかでも、膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度に影響を与える指標であるとともに、検出手法が比較的容易であることから、検出部20は上記〔a〕を検出するものであることが好ましい。
【0030】
以下、実施の形態を示して本発明の制御装置および燃料電池システムについてより詳細に説明する。後述する実施形態はいずれもアルカリ形燃料電池を制御する制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムに係り、アルカリ形燃料電池の状態として上記〔a〕を検出するものである。
【0031】
<第1の実施形態>
図4は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置は、アニオン伝導性電解質膜を有する膜電極複合体を備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部10としての燃料電池部10aに接続される、検出部20としての、上記〔a〕(ある単位時間T0内における、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0)を検出する検出部20a;燃料電池部10aに接続されるとともに、電子機器50に対して並列に接続される、電流値変更部30としての、アルカリ形燃料電池の膜電極複合体に流れる電流の電流値を変更するための電子負荷装置30a;および、検出部20aと電子負荷装置30aとに接続され、検出部20aによる検出結果に応じて、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電子負荷装置30aを制御するための制御部40aを備えている。
【0032】
なお、図4では燃料電池部10aを、アルカリ形燃料電池が有する膜電極複合体の第1電極(たとえばアノード極)および第2電極(たとえばカソード極)のみを示す形で図示しているが、これは単に模式的に図示したに過ぎず、燃料電池部が有するアルカリ形燃料電池が採り得るより具体的な構造については後述の記載および後述の図面が参照される。図4と同様の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの概略図を示した他の図面についても同様である。
【0033】
本実施形態において検出部20aは、膜電極複合体に流れる電流値(より具体的には膜電極複合体の第1電極−第2電極間を流れる電流値)を測定するための、燃料電池部10a(アルカリ形燃料電池)に接続された電流計を少なくとも備えており、この電流計とともに、単位時間T0および膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1を測定するための時間測定手段(タイマーなど)ならびに、電流値および時間T0、T1を記憶する記憶手段(メモリなど)を具備することができる。ただし、時間測定手段および記憶手段は制御部40aに包含することもできる。
【0034】
電子負荷装置30aとしては従来公知のものを使用することができ、可変抵抗器を使用することもできる。制御部40aとしては、検出部20aによる検出結果に応じて、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように電子負荷装置30aを制御できるものであれば特に制限されず、たとえばパーソナルコンピュータなどであることができる。
【0035】
本実施形態において、検出部20aは上記時間割合T1/T0を好ましくは常時検出し、この時間割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、制御部40aは、燃料電池部10aが発電(電子機器50への電力供給)を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に(第1電極−第2電極間に)所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう(たとえば図2に示されるような電流波形パターンが得られるよう)電子負荷装置30aを制御する。
【0036】
より具体的に説明すると、時間割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、第1電極に還元剤、第2電極に酸化剤を供給しつつ、制御部40aによって電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第1電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。
【0037】
なお上述のように、本発明においては、実質的に常に低いCO2由来アニオン濃度を実現するために、燃料電池部10aが発電(電子機器50への電力供給)を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れている状態が維持されればよく、流れた電流の少なくとも一部は、電子機器50の要求に従って行なわれた発電によるものであってもよい。すなわち、電子機器50の要求に従って発電を行なわれ、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れている場合、上記制御フローに従えば、制御部40aは強制的に所定電流値A以上の電流が流れるような制御を行なわないが、この場合でも、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れている状態が維持されるため、実質的に常に低いCO2由来アニオン濃度が実現される。
【0038】
上記単位時間T0は特に制限されず、たとえば10〜30分程度の範囲内とすることができる。上記所定の時間割合WTは、所望する発電効率向上の程度や立ち上げ時間向上の程度などを考慮して決定され、たとえば5〜20%の範囲(たとえば10%)から選択することができる。所定電流値Aも、所望する発電効率向上の程度や立ち上げ時間向上の程度などを考慮して決定され、400〜1000mA/cm2の範囲、好ましくは600〜1000mA/cm2の範囲から選択することができる。なお本発明でいう電流値(検出部によって検出する電流値および一定時間(T2)流される電流の電流値の双方)とは、膜電極複合体(本実施形態では第1電極−第2電極間)に流れる電流量を、カソード極(後述の例示された各種アルカリ形燃料電池における第2電極)の電解質膜への投影面積で割った値である。
【0039】
検出部20aによる検出結果に応じて、膜電極複合体に一定時間(時間長さT2)流される「所定電流値A以上の電流」の値は、検出部20aによって検出する「単位時間T0内における、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0」において設定される「所定電流値A」と同じであってもよいし、これより大きくてもよい。T2は通常、T1より長くなるように設定される。
【0040】
〔アルカリ形燃料電池〕
次に、本実施形態の燃料電池部10aが備えるアルカリ形燃料電池について詳細に説明する。図5は、本実施形態において燃料電池部10aが備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図である。図5に示されるアルカリ形燃料電池は、アニオン伝導性電解質膜101、アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に積層される第1電極(アノード極)103およびアニオン伝導性電解質膜101の第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極(カソード極)102からなる膜電極複合体(MEA)1を備えるものである。第1電極103と第2電極102とは、アニオン伝導性電解質膜101を介して対向するように設けられている。電極の周縁には、電極端面からの空気等の浸入を防止するために、ガスケット106(たとえば、シリコーンゴム等の弾性樹脂からなる層や、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂の硬化物層)が設けられている。
【0041】
また、図5に示されるアルカリ形燃料電池は、第1電極103上に積層される第1集電層105および第2電極102上に積層される第2集電層104を備えている。これらの集電層は、これに接する電極との間で電子の授受を行なうとともに、電気的配線を行なうための部材である。第1集電層105には、第1電極103に還元剤を供給するための第1流路105aが設けられている。同様に、第2集電層104には、第2電極102に酸化剤を供給するための第2流路104aが設けられている。このように、図5に示されるアルカリ形燃料電池において各集電層は、還元剤や酸化剤を供給するための部材でもある。
【0042】
(1)アニオン伝導性電解質膜
アニオン伝導性電解質膜101としては、OH-イオンを伝導でき、かつ、第1電極103と第2電極102との間の短絡を防止するために電気的絶縁性を有する限り特に制限されないが、アニオン伝導性固体高分子電解質膜を好適に用いることができる。アニオン伝導性固体高分子電解質膜の好ましい例は、たとえば、パーフルオロスルホン酸系、パーフルオロカルボン酸系、スチレンビニルベンゼン系、第4級アンモニウム系の固体高分子電解質膜(アニオン交換膜)が挙げられる。また、ポリアクリル酸に濃厚水酸化カリウム溶液を含浸させた膜やアニオン伝導性固体酸化物電解質膜をアニオン伝導性電解質膜101として用いることもできる。
【0043】
アニオン伝導性電解質膜101は、アニオン伝導率が10-5S/cm以上であることが好ましく、パーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜などのアニオン伝導率が10-3S/cm以上の電解質膜を用いることがより好ましい。アニオン伝導性電解質膜101の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmである。
【0044】
(2)第1電極および第2電極
アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に積層され、発電時にアノード極として機能する第1電極103、および、第1表面に対向する第2表面に積層され、発電時にカソード極として機能する第2電極102には、触媒と電解質とを含有する多孔質層からなる触媒層が少なくとも設けられる。これらの触媒層は、アニオン伝導性電解質膜101の表面に接して積層される。第1電極103の触媒(アノード触媒)は、第1電極103に供給された還元剤とOH-とから、水および電子を生成する反応を触媒する。第1電極103の電解質は、アニオン伝導性電解質膜101から伝導してきたOH-を触媒反応サイトへ伝導する機能を有する。一方、第2電極102の触媒(カソード触媒)は、第2電極102に供給された酸化剤および水と、第1電極103から伝達された電子とから、OH-を生成する反応を触媒する。第2電極102の電解質は、生成したOH-をアニオン伝導性電解質膜201へ伝導する機能を有する。
【0045】
アノード触媒およびカソード触媒としては、従来公知のものを使用することができ、たとえば、白金、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銀、ルテニウム、イリジウム、モリブデン、マンガン、これらの金属化合物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。合金は、白金、鉄、コバルト、ニッケルのうち少なくとも2種以上を含有する合金が好ましく、たとえば、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、鉄−コバルト合金、コバルト−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金等、鉄−コバルト−ニッケル合金が挙げられる。アノード触媒とカソード触媒とは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0046】
アノード触媒およびカソード触媒は、担体、好ましくは導電性の担体に担持されたものを用いることが好ましい。導電性担体としては、たとえば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、活性炭等の導電性カーボン粒子が挙げられる。また、気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー等の炭素繊維を用いることもできる。
【0047】
第1電極103および第2電極102の電解質としては、アニオン伝導性固体高分子電解質膜を構成する電解質と同様のものを用いることができる。各触媒層における触媒と電解質との含有比は、重量基準で、通常5/1〜1/4であり、好ましくは3/1〜1/3である。
【0048】
第1電極103および第2電極102はそれぞれ、触媒層上に積層されるガス拡散層を備えていてもよい。ガス拡散層は、供給される還元剤または酸化剤を面内において拡散させる機能を有するとともに、触媒層との間で電子の授受を行なう機能を有する。
【0049】
ガス拡散層は、導電性を有する多孔質層であることができ、具体的には、たとえば、カーボンペーパー;カーボンクロス;カーボン粒子を含有するエポキシ樹脂膜;金属または合金の発泡体、焼結体または繊維不織布などであることができる。ガス拡散層の厚みは、厚み方向に対して垂直な方向(面内方向)への還元剤または酸化剤の拡散抵抗を低減させるために、10μm以上であることが好ましく、厚み方向への拡散抵抗を低減させるために、1mm以下であることが好ましい。ガス拡散層の厚みは、より好ましくは100〜500μmである。
【0050】
(3)集電層
第1集電層105、第2集電層104はそれぞれ、第1電極103、第2電極102上に接して設けられる、接する電極との間で電子の授受を行なうとともに、電気的配線を行なうための部材である。また、図5に示されるアルカリ形燃料電池において、これらの集電層は、還元剤や酸化剤を供給する機能も兼ね備えており、第1集電層105には、還元剤を第1電極103に供給するための第1流路105aが、第2集電層104には、酸化剤を第2電極102に供給するための第2流路104aが設けられている。
【0051】
集電層の材質は特に制限されず、たとえば、カーボン材料、導電性高分子、各種金属、ステンレスに代表される合金などの導電性材料を用いることができる。各集電層の材質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
第1流路105aおよび第2流路104aは、集電層の電極側表面に設けられた1または2以上の溝から構成することができ、その形状は特に制限されず、ライン状、サーペンタイン状等であることができる。
【0053】
集電層に還元剤や酸化剤を供給する機能を付与するのではなく、還元剤や酸化剤の供給を担う別途の部材(流路板)を集電層上に積層してもよい。流路板は、たとえば、各種プラスチック材料などの非導電性材料からなる板状体の表面に1または2以上の溝を設けたものであることができる。
【0054】
還元剤としては、たとえばH2ガス、炭化水素ガス、アルコール、アンモニアガスなどを用いることができ、なかでもH2ガスを用いることが好ましい。酸化剤としては、たとえばO2ガスや、空気等のO2を含むガスなどを用いることができ、なかでも空気が好ましく用いられる。本明細書中で例示される他のアルカリ形燃料電池においても同様である。
【0055】
また、本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムにおいては、図6に示されるようなアルカリ形燃料電池を使用してもよい。図6に示されるアルカリ形燃料電池は、膜電極複合体2を備えることを特徴としており、膜電極複合体2は、第1電極103が有する触媒層(アノード触媒層)の体積を第2電極102が有する触媒層(カソード触媒層)の体積より大きくして、アノード触媒層に含有されるアノード触媒の重量をカソード触媒層に含有されるカソード触媒の重量より多くしたことを特徴としている。これにより、上記(5)および(6)で示されるようなセルフパージによるCO2ガス排出の速度がより大きくなるため、電解質膜および触媒層中のCO2由来アニオン濃度をより迅速に低下させることができるようになる。このことは、所定電流値A以上の電流が流される時間長さ(すなわち、一定時間T2)を短くできることを意味しており、さらなる余剰電力の低減および発電効率の向上に寄与する。
【0056】
第1電極103が有する触媒層(アノード触媒層)の体積を第2電極102が有する触媒層(カソード触媒層)の体積より大きくする手段としては、アノード触媒層の面積をより大きくする、すなわち、アノード触媒層におけるアニオン伝導性固体高分子電解質膜側の面の面積をカソード触媒層におけるアニオン伝導性固体高分子電解質膜側の面の面積より大きくする;アノード触媒層の厚さをカソード触媒層の厚さより大きくする;および、これらの組み合わせが挙げられる。このようなアノード触媒層の面積や厚みをより大きくすることは、アノード触媒層の耐久性向上の観点からも有利である。図6は、アノード触媒層の面積をカソード触媒層より大きくした例である。
【0057】
本実施形態において燃料電池部10aと電子機器50とは、コンバータ(昇圧回路)を介して接続してもよい。後述する他の実施形態においても同様である。
【0058】
<第2の実施形態>
図7は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムは、電流値変更部30が電子負荷装置30aに加えて、電源装置30cをさらに含むこと以外は上記第1の実施形態と同様である。この電源装置30cは、スイッチ30bを介して燃料電池部10aのアルカリ形燃料電池に対して直列に接続される。スイッチ30bは、電子負荷装置30aと燃料電池部10aを接続する回路内への電源装置30cの介在/非介在を切り替える役割を果たす。
【0059】
本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際の駆動力として、上記第1の実施形態のようにアルカリ形燃料電池の化学反応を利用するのではなく、電源装置を利用するものである。具体的には、制御部40aによってスイッチ30bを操作して電源装置30cと燃料電池部10aとを直列接続し、さらに場合によっては電源装置30cの起電力を大きくするとともに、電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第1電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。電源装置を利用する本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際、電極に還元剤、酸化剤を供給する必要はない。
【0060】
電源装置30cとしては、アルカリ電池、マンガン電池などの一次電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などの二次電池、さらに、直流安定化電源などを用いることができる。特に直流安定化電源を用いる場合は、電源装置の起電力を調整することができるため、膜電極複合体に流れる電流の制御性が向上する。
【0061】
<第3の実施形態>
図8は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムは、アノード極としての第1電極およびカソード極としての第2電極に加えて、第1電極側にさらに第3電極を備える膜電極複合体を有するアルカリ形燃料電池を燃料電池部10aに用いること以外は上記第1の実施形態と同様である。この第3電極は、第1電極および第2電極とは独立して設けられる、いわばセルフパージ用の電極であり、発電時においてアノード極として機能する第1電極と同じ側のアニオン伝導性電解質膜表面に積層されるが、第1電極と離間して(接触しないように)配置される。
【0062】
本実施形態においては、単位時間T0内における、膜電極複合体(第1電極−第2電極間)に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、制御部40aは、燃料電池部10aが発電(電子機器50への電力供給)を行なっているかに関わらず、膜電極複合体の第3電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電子負荷装置30aを制御する。
【0063】
より具体的に説明すると、時間割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、第3電極に還元剤、第2電極に酸化剤を供給しつつ、制御部40aによって電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第3電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。なおここでいう一定時間(T2)流される電流の電流値は、第3電極−第2電極間に流れる電流量を、カソード極(第2電極)の電解質膜への投影面積で割った値として算出され、400〜1000mA/cm2の範囲、好ましくは600〜1000mA/cm2の範囲から選択することができる。
【0064】
このように本実施形態は、第3電極(セルフパージ用)と第2電極(カソード極)との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるようにする点において上記第1の実施形態と相違する。
【0065】
第3電極を備えたアルカリ形燃料電池を使用する本実施形態は、上記〔i〕〜〔v〕に加えて、次のような作用効果〔vi〕を奏し得る。セルフパージを行なうと、膜電極複合体中のCO2由来アニオンは、アノード極からCO2ガスとして排出されるが、CO2由来アニオンの一部がアノード極に蓄積される傾向にあることが知られている(上記非特許文献2)。このようなアノード極へのCO2由来アニオンの蓄積は、アノード極における反応過電圧の上昇を招来し、発電効率を低下させる要因となる。すなわち、アノード極としての第1電極およびカソード極としての第2電極のみを備えるアルカリ形燃料電池を用いる場合(たとえば上記第1の実施形態)、第1電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を一定時間(好ましくは繰り返し)流すと、膜電極複合体中のCO2由来アニオン濃度を実質的に常に低い状態に維持することができるため、上述のように、セル抵抗増大およびアノード極における反応過電圧の上昇の問題が改善されるが、第1電極にCO2由来アニオンが蓄積される分、反応過電圧の低下が十分でない場合が生じ得る。
【0066】
第1電極とは独立してセルフパージ用の第3電極を設け、第1電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると判断された場合に、膜電極複合体の第3電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるようにすると、CO2由来アニオンの蓄積は第3電極において生じることになるため、発電時においてアノード極として機能する第1電極における反応過電圧の上昇を防止することができ、この分、発電効率をより向上させることが可能になる。
【0067】
本実施形態において電子負荷装置30aは、膜電極複合体の第3電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を一定時間流すことができるよう、第3電極および第2電極に接続され、実質的な発電に寄与する第1電極および第2電極が、第3電極および第2電極と電子負荷装置30aとを接続する配線とは異なる配線を用いて電子機器50に接続される(図8参照)。膜電極複合体と電子負荷装置30aとの間に、所定電流値A以上の電流が流れているかどうかを確認するための電流計を配してもよい。
【0068】
〔アルカリ形燃料電池〕
次に、本実施形態の燃料電池部10aが備えるアルカリ形燃料電池についてより詳細に説明する。図9は、本実施形態において燃料電池部10aが備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図であり、図10および図11はそれぞれ、図9に示されるX−X線、XI−XI線における概略断面図である。図9に示されるアルカリ形燃料電池は、膜電極複合体(MEA)3を備えることを特徴としている。膜電極複合体3は、アニオン伝導性電解質膜101;アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に積層される第1電極(アノード極)103;アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極(カソード極)102;および、第1電極103と離間して第1表面に積層される、セルフパージ用の第3電極110から主に構成される。電極の周縁には、電極端面からの空気等の浸入を防止するために、ガスケット106(たとえば、シリコーンゴム等の弾性樹脂からなる層や、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂の硬化物層)が設けられている。
【0069】
第1電極103と第2電極102とは、アニオン伝導性電解質膜101を介して対向するように設けられている。このような対向配置は、第1電極103と第2電極102との間の距離を最も短くさせ、これにより、これらの電極間に電流が流れる際の抵抗が低減されるため、発電効率の低下抑制に有利である。また、図9に示される例において、第1電極103は2つに分割されて積層されており、これら2つの第1電極103の間に、第1電極103と離間するように第3電極110が配置されている。
【0070】
また、図9に示されるアルカリ形燃料電池は、第1電極103上に積層される第1集電層105;第2電極102上に積層される第2集電層104;および、第3電極110上に積層される第3集電層120を備えている。これらの集電層は、これに接する電極との間で電子の授受を行なうとともに、電気的配線を行なうための部材である。第1集電層105と第3集電層120とは、これらの集電層の間に絶縁層130を介在させることにより互いに電気的に絶縁されている。また、第1集電層105および第3集電層120には、第1電極103または第3電極110に還元剤を供給するための第1流路105aが設けられている。同様に、第2集電層104には、第2電極102に酸化剤を供給するための第2流路104aが設けられている。このように、図9に示されるアルカリ形燃料電池において各集電層は、還元剤や酸化剤を供給するための部材でもある。
【0071】
本実施形態で用いられるアルカリ形燃料電池が有するアニオン伝導性電解質膜101、第1電極103および第2電極102の構成材料等は上記第1の実施形態で用いられるアルカリ形燃料電池と同様であることができる。
【0072】
第1電極103および第2電極102は、燃料電池単位面積あたりの出力を向上させる観点から、アニオン伝導性電解質膜101上にできるだけ大きい面積を有して形成されることが好ましく、たとえば図10に示されるように、アニオン伝導性電解質膜101と同じ長さまたは同程度の長さを有して形成されることが好ましい。
【0073】
第3電極110はセルフパージ用の電極であり、第3電極110への還元剤の供給および第2電極102への酸化剤の供給により、CO2由来アニオンをCO2ガスとして排出する電極である。第3電極110の構成および組成に関しては、上記第1の実施形態における第1電極103について既述した内容が引用される。
【0074】
第3電極110は、セルフパージ用として独立に機能させるために、第1電極103と離間してアニオン伝導性電解質膜101の第1表面上に配置される。ここで、図示される膜電極複合体3においては、第1電極103を2つに分割し、それらの間であって、アニオン伝導性電解質膜101の第1表面の中央領域に第3電極110を配置しているが、このような配置に限定されるものではない。たとえば、第1電極103を分割することなく、第3の電極110を第1電極103の側方に配置するなど、第1電極103の数(分割の有無)や第3の電極110の位置は特に制限されない。ただし、セルフパージの効率を考慮すると、第2電極102に対向するような位置に第3電極110を設けることが好ましい。
【0075】
第1電極103の面積(幅×長さ)と、第3電極110の面積との比は、燃料電池の発電能力とセルフパージの効率性の双方を勘案して決定される。当該比(第1電極103の面積/第3電極110の面積)があまりに大きいと、第3電極110が小さすぎてセルフパージの効率が低下する。一方、当該比があまり小さいと、発電に寄与するアノード極としての第1電極103が小さすぎて十分な出力を得ることができない。セルフパージの効率を考慮すると、第3電極110の長さは、アニオン伝導性電解質膜101のできるだけ広い範囲からCO2由来アニオンを取り込むことができるよう長いことが好ましく、たとえば、アニオン伝導性電解質膜101と同じか、または略同じ長さとすることができる(図10参照)。第1電極103の厚みと第3電極110の厚みは同じであることが好ましい。
【0076】
第1集電層105、第2集電層104、第3集電層120はそれぞれ、第1電極103、第2電極102、第3電極110上に接して設けられる、接する電極との間で電子の授受を行なうとともに、電気的配線を行なうための部材である。また、図9に示されるアルカリ形燃料電池において、これらの集電層は、還元剤や酸化剤を供給する機能も兼ね備えており、第1集電層105および第3集電層120には、還元剤を第1電極103および第3電極110に供給するための第1流路105aが、第2集電層104には、酸化剤を第2電極102に供給するための第2流路104aが設けられている。
【0077】
上述のように、第1集電層105と第3集電層120とは、これらの集電層の間に絶縁層130を介在させることにより互いに電気的に絶縁されている。絶縁層130は、電気的絶縁性を示すものであれば特に制限されず、たとえば、各種非導電性高分子(絶縁性接着剤などを含む)からなることができる。集電層の材質は特に制限されず、たとえば、カーボン材料、導電性高分子、各種金属、ステンレスに代表される合金などの導電性材料を用いることができる。各集電層の材質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
第1流路105aおよび第2流路104aは、集電層の電極側表面に設けられた1または2以上の溝から構成することができ、その形状は特に制限されず、ライン状、サーペンタイン状等であることができる。なお、第1電極103に還元剤を供給するための流路と第3電極110に還元剤を供給するための流路とは連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。
【0079】
集電層に還元剤や酸化剤を供給する機能を付与するのではなく、還元剤や酸化剤の供給を担う別途の部材(流路板)を集電層上に積層してもよい。流路板は、たとえば、各種プラスチック材料などの非導電性材料からなる板状体の表面に1または2以上の溝を設けたものであることができる。
【0080】
また本実施形態では、図12に示されるようなアルカリ形燃料電池を用いることもできる。図12は、本実施形態において燃料電池部10aが備え得るアルカリ形燃料電池の他の一例を示す概略断面図であり、図13および図14はそれぞれ、図12に示されるXIII−XIII線、XIV−XIV線における概略断面図である。図12に示されるアルカリ形燃料電池は、セルフパージ用の第3電極110を複数(図12の例では3つ)有する膜電極複合体4を備えることを特徴としており(図12および図13参照)、これ以外の構成については、図9に示されるアルカリ形燃料電池と同様とすることができる(可能な変形についても図9に示されるアルカリ形燃料電池と同様である)。
【0081】
膜電極複合体4は、アニオン伝導性電解質膜101;アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に積層される第1電極103;アニオン伝導性電解質膜101の第2表面に積層される第2電極102;および、第1電極103と離間して第1表面に積層される、3つの第3電極110から主に構成される。第1電極103と第2電極102とは、アニオン伝導性電解質膜101を介して対向するように設けられている。第1電極103は2つに分割されて積層されており、これら2つの第1電極103の間、および2つの第1電極103それぞれの外側側方に、第1電極103と離間するように合計3つの第3電極110が配置されている。
【0082】
図12に示されるアルカリ形燃料電池は、第1電極103上に積層される第1集電層105(計2つ);第2電極102上に積層される第2集電層104;および、第3電極110上に積層される第3集電層120(計3つ)を備えている。第1集電層105と第3集電層120とは、これらの集電層の間に絶縁層130を介在させることにより互いに電気的に絶縁されている。また、第1集電層105および第3集電層120には、第1電極103または第3電極110に還元剤を供給するための第1流路105aが設けられており、第2集電層104には、第2電極102に酸化剤を供給するための第2流路104aが設けられている。
【0083】
図12に示されるアルカリ形燃料電池のように、複数の第3電極を設ける場合においては、図12および図13に示されるように、これら複数の第3電極をアニオン伝導性電解質膜101の第1表面内において略均等に分散して配置することが好ましい。これは次の理由による。アニオン伝導性電解質膜101は非常に薄いため、膜厚方向のイオン伝導抵抗は、膜面内方向のイオン伝導抵抗に比べて非常に小さい。したがって、セルフパージを進めた場合、主に、第3電極110近傍のアニオン伝導性電解質膜101および第2電極102と第3電極110との間でCO2由来アニオンの移動が起こり、セルフパージが優先的に進行する。一方、第3電極110から遠く離れた領域のアニオン伝導性電解質膜101および第2電極102と第3電極110との間では、イオン伝導抵抗が大きいため、CO2由来アニオンの移動が起こりにくく、セルフパージが十分に進まない傾向にある。複数の第3電極110を設け、好ましくはこれらを第1表面内において略均等に分散して配置することにより、第3電極110近傍の領域を増加させることができ、これによりアニオン伝導性電解質膜101および第2電極102全体のセルフパージを行なうことができるようになる。なお、セルフパージの効率を考慮すると、複数の第3電極110は、第2電極102に対向するような位置に設けることが好ましい。
【0084】
<第4の実施形態>
図15は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムは、電流値変更部30が電子負荷装置30aに加えて、電源装置30cをさらに含むこと以外は上記第3の実施形態と同様である。この電源装置30cは、スイッチ30bを介して燃料電池部10aのアルカリ形燃料電池に対して直列に接続される。スイッチ30bは、電子負荷装置30aと燃料電池部10aを接続する回路内への電源装置30cの介在/非介在を切り替える役割を果たす。本実施形態では、上記第3の実施形態と同様、セルフパージ用の第3電極110を備えるアルカリ形燃料電池が用いられる。
【0085】
本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際の駆動力として、上記第3の実施形態のようにアルカリ形燃料電池の化学反応を利用するのではなく、電源装置を利用するものである。具体的には、制御部40aによってスイッチ30bを操作して電源装置30cと燃料電池部10aとを直列接続し、さらに場合によっては電源装置30cの起電力を大きくするとともに、電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第3電極−第2電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。電源装置を利用する本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際、電極に還元剤、酸化剤を供給する必要はない。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムによっても、上述の〔i〕〜〔vi〕の作用効果を奏することができる。
【0086】
<第5の実施形態>
図16は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムは、アノード極としての第1電極およびカソード極としての第2電極に加えて、第1電極側に第3電極を、第2電極側に第4電極をさらに備える膜電極複合体を有するアルカリ形燃料電池を燃料電池部10aに用いること以外は上記第1の実施形態と同様である。これらの第3電極および第4電極は、第1電極および第2電極とは独立して設けられるセルフパージ用の電極である。第3電極は、発電時においてアノード極として機能する第1電極と同じ側のアニオン伝導性電解質膜表面に積層されるが、第1電極と離間して(接触しないように)配置される。第4電極は、発電時においてカソード極として機能する第2電極と同じ側のアニオン伝導性電解質膜表面に積層されるが、第2電極と離間して(接触しないように)配置される。
【0087】
本実施形態においては、単位時間T0内における、膜電極複合体(第1電極−第2電極間)に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、制御部40aは、燃料電池部10aが発電(電子機器50への電力供給)を行なっているかに関わらず、膜電極複合体の第3電極−第4電極間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電子負荷装置30aを制御する。
【0088】
より具体的に説明すると、時間割合T1/T0が所定の時間割合WT未満であると制御部40aによって判断された場合、第3電極に還元剤、第4電極に酸化剤を供給しつつ(あるいは第3電極に酸化剤、第4電極に還元剤を供給しつつ)、制御部40aによって電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第3電極−第4電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。なおここでいう一定時間(T2)流される電流の電流値は、第3電極−第4電極間に流れる電流量を、カソード極(第2電極)の電解質膜への投影面積で割った値として算出され、400〜1000mA/cm2の範囲、好ましくは600〜1000mA/cm2の範囲から選択することができる。
【0089】
このように本実施形態は、第3電極(セルフパージ用)と第4電極(セルフパージ用)との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるようにする点において上記第1の実施形態と相違する。また、第3電極(セルフパージ用)と第2電極(カソード極)との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるようにする上記第3の実施形態とも相違する。
【0090】
第3電極および第4電極を備えたアルカリ形燃料電池を使用する本実施形態のアルカリ形燃料電池システムは、上記〔i〕〜〔vi〕に加えて、次のような作用効果〔vii〕を奏し得る。すなわち、第3電極−第4電極間に所定電流値A以上の電流を流すようにすれば、第1電極−第2電極間に流れる電流量は変化せず、第1電極−第2電極間の起電力も低下しないため、発電効率を低下させることなく、CO2由来アニオン濃度を低下させることができる。
【0091】
本実施形態において電子負荷装置30aは、膜電極複合体の第3電極−第4電極間に所定電流値A以上の電流を一定時間流すことができるよう、第3電極および第4電極に接続され、実質的な発電に寄与する第1電極および第2電極が、第3電極および第4電極と電子負荷装置30aとを接続する配線とは異なる配線を用いて電子機器50に接続される(図16参照)。膜電極複合体と電子負荷装置30aとの間に、所定電流値A以上の電流が流れているかどうかを確認するための電流計を配してもよい。
【0092】
〔アルカリ形燃料電池〕
次に、本実施形態の燃料電池部10aが備えるアルカリ形燃料電池についてより詳細に説明する。図17は、本実施形態において燃料電池部10aが備え得るアルカリ形燃料電池の一例を示す概略断面図であり、図18〜図21はそれぞれ、図17に示されるXVIII−XVIII線、XIX−XIX線、XX−XX線、XXI−XXI線における概略断面図である。図17に示されるアルカリ形燃料電池は、セルフパージ用の第3電極110に加えて、同じくセルフパージ用の第4電極115を有する膜電極複合体(MEA)5を備えることを特徴としている。膜電極複合体5は、アニオン伝導性電解質膜101;アニオン伝導性電解質膜101の第1表面に積層される第1電極(アノード極)103;アニオン伝導性電解質膜101の第2表面に積層される第2電極(カソード極)102;第1電極103と離間して第1表面に積層される第3電極110;および、第2電極102と離間して第2表面に積層される第4電極115から主に構成される。電極の周縁には、ガスケット106が設けられている。第1電極103と第2電極102とは、アニオン伝導性電解質膜101を介して対向するように設けられている。
【0093】
また、図17に示されるアルカリ形燃料電池は、第1電極103上に積層される第1集電層105;第2電極102上に積層される第2集電層104;第3電極110上に積層される第3集電層120;および、第4電極115上に積層される第4集電層125を備えている。第1集電層105と第3集電層120とは、これらの集電層の間に絶縁層130を介在させることにより互いに電気的に絶縁されている。同様に、第2集電層104と第4集電層125とは、絶縁層130を介在させることにより互いに電気的に絶縁されている。また、第1集電層105および第3集電層120には、第1電極103または第3電極110に還元剤を供給するための第1流路105aが設けられている。同様に、第2集電層104および第4集電層125には、第2電極102または第4電極115に酸化剤を供給するための第2流路104aが設けられている。このように、図17に示されるアルカリ形燃料電池において各集電層は、還元剤や酸化剤を供給するための部材でもある。
【0094】
本実施形態で用いられるアルカリ形燃料電池が有するアニオン伝導性電解質膜101、第1電極103および第2電極102の構成材料等は上記第1の実施形態で用いられるアルカリ形燃料電池と同様であることができる。
【0095】
第3電極110および第4電極115はセルフパージ用の電極であり、第3電極110への還元剤の供給および第4電極115への酸化剤の供給により、第3電極110からCO2由来アニオンがCO2ガスとして排出される(第4電極115に還元剤を供給し、第3電極に酸化剤と供給した場合には、第4電極115からCO2由来アニオンがCO2ガスとして排出される)。第3電極110および第4電極115の構成および組成に関しては、第1電極103について既述した内容が引用される。
【0096】
第3電極110は、セルフパージ用として独立に機能させるために、第1電極103と離間してアニオン伝導性電解質膜101の第1表面上に配置される。同様に、第4電極115は、セルフパージ用として独立に機能させるために、第2電極102と離間してアニオン伝導性電解質膜101の第2表面上に配置される。
【0097】
図17に示されるように、第3電極110と第4電極115とは、アニオン伝導性電解質膜101を介して対向するように設けるのではなく、第1電極103の一方の外側側方に配置される第3電極110に対して、第4電極115は、第2電極102における第3電極110に対向する側とは反対側の外側側方に配置することが好ましい。これにより、第3電極110と第4電極115との間に所定電流値A以上の電流を流してセルフパージを行なう際、電流が必然的に第1電極103と第2電極102との間に介在するアニオン伝導性電解質膜101内を通ることとなるため、アニオン伝導性電解質膜101のかなり広い領域(第3電極および第4電極を膜電極複合体のほぼ端部に配置した場合にはアニオン伝導性電解質膜101のほとんどの領域)についてセルフパージを行なうことができるようになる。
【0098】
なお、第3電極110と第4電極115との配置構成およびこれら電極の形状は図示されるものに限定されず、第3電極110から第4電極115に至る最短経路が、第1電極103と第2電極102との間に介在するアニオン伝導性電解質膜101内を通るように配置されるように第3電極110および第4電極115を設けることで、上述の有利な効果を得ることができる。
【0099】
<第6の実施形態>
図22は、本実施形態に係る制御装置およびこれを適用したアルカリ形燃料電池システムを示す概略図であり、電力が供給される電子機器(電子機器50)と接続された状態で制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの構成を示したものである。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムは、電流値変更部30が電子負荷装置30aに加えて、電源装置30cをさらに含むこと以外は上記第5の実施形態と同様である。この電源装置30cは、スイッチ30bを介して燃料電池部10aのアルカリ形燃料電池に対して直列に接続される。スイッチ30bは、電子負荷装置30aと燃料電池部10aを接続する回路内への電源装置30cの介在/非介在を切り替える役割を果たす。本実施形態では、上記第5の実施形態と同様、セルフパージ用の第3電極110および第4電極115を備えるアルカリ形燃料電池が用いられる。
【0100】
本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際の駆動力として、上記第5の実施形態のようにアルカリ形燃料電池の化学反応を利用するのではなく、電源装置を利用するものである。具体的には、制御部40aによってスイッチ30bを操作して電源装置30cと燃料電池部10aとを直列接続し、さらに場合によっては電源装置30cの起電力を大きくするとともに、電子負荷装置30aに流れる負荷電流を大きくすることにより、T2/T0≧WTとなるようなある一定時間T2の間、第3電極−第4電極間に所定電流値A以上の電流を流す。そして好ましくは時間割合T1/T0を常時検出して、所定電流値A以上の電流が流れている一定時間を含む単位時間T0のサイクルが繰り返されるようにする。電源装置を利用する本実施形態では、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流を強制的に流す際、電極に還元剤、酸化剤を供給する必要はない。本実施形態の制御装置およびアルカリ形燃料電池システムによっても、上述の〔i〕〜〔vii〕の作用効果を奏することができる。
【0101】
以上、検出部20が「アルカリ形燃料電池の状態」として〔a〕ある単位時間T0内における、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出する場合を例に挙げて本発明を詳細に説明したが、検出部20は、「アルカリ形燃料電池の状態」として、上述の〔b〕〜〔e〕のいずれかを検出するものであってもよく、このような場合においても同様の効果を奏し得る。
【0102】
「アルカリ形燃料電池の状態」として、〔b〕アニオン伝導性電解質膜中のCO2由来アニオン濃度(またはこのうちのCO32-濃度)を検出する場合においては、当該濃度を検出部20により常時または一定時間おきに検出し、当該濃度が所定の濃度を超えていると判断された場合、制御部40は、燃料電池部10が発電を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電流値変更部30を制御する。
【0103】
「アルカリ形燃料電池の状態」として、〔c〕アニオン伝導性電解質膜のpHを検出する場合においては、当該pHを検出部20(アニオン伝導性電解質膜に接触させたpHメータ)により常時または一定時間おきに検出し、当該pHが所定のpHを下回っていると判断された場合、制御部40は、燃料電池部10が発電を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電流値変更部30を制御する。
【0104】
「アルカリ形燃料電池の状態」として、〔d〕アニオン伝導性電解質膜の抵抗値を検出する場合においては、当該抵抗値を検出部20により、カレントインタラプト測定またはインピーダンス測定などの方法で常時または一定時間おきに検出し、当該抵抗値が所定の抵抗値を超えていると判断された場合、制御部40は、燃料電池部10が発電を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電流値変更部30を制御する。
【0105】
「アルカリ形燃料電池の状態」として、〔e〕アルカリ形燃料電池の出力電圧値を検出する場合においては、当該電圧値を検出部20(MEAに接続した電圧計)により常時または一定時間おきに検出し、得られる電圧/電流特性が所定の電圧/電流特性を下回っている(所定の電圧/電流特性より劣っている)と判断された場合、制御部40は、燃料電池部10が発電を行なっているかに関わらず、膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるよう電流値変更部30を制御する。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
〔制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの作製〕
<実施例1>
以下の手順で図4と同様の構成を有する制御装置およびアルカリ形燃料電池システムを作製した。
【0108】
(1)膜電極複合体の作製
芳香族ポリエーテルスルホン酸と芳香族ポリチオエーテルスルホン酸との共重合体をクロロメチル化した後、アミノ化することにより、触媒層用のアニオン伝導性固体高分子電解質を得た。これをテトラヒドロフランに添加することにより、5重量%アニオン伝導性固体高分子電解質溶液を得た。
【0109】
Pt担持量が50重量%のPt/Cである触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、上記で得られた電解質溶液とを、重量比で2/0.2となるように混合し、さらにイオン交換水およびエタノールを添加することにより、アノード触媒層用の触媒ペーストを調製した。
【0110】
同様に、Pt担持量が50重量%のPt/Cである触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、上記で得られた電解質溶液とを、重量比で2/0.2となるように混合し、さらにイオン交換水およびエタノールを添加することにより、カソード触媒層用の触媒ペーストを調製した。
【0111】
次に、アノードガス拡散層としてカーボンペーパー(東レ社製「TGP−H−060」、厚み約190μm)を縦23mm×横23mmのサイズに切り出し、そのアノードガス拡散層の一方の面に、上記のアノード触媒層用の触媒ペーストを触媒量が0.5mg/cm2となるように、縦23mm×横23mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、室温にて乾燥させることにより、アノードガス拡散層であるカーボンペーパーの片面の全面にアノード触媒層が形成されたアノード極(第1電極)を作製した。得られたアノード極の厚みは約200μmであった。
【0112】
同様に、カソードガス拡散層としてカーボンペーパー(東レ社製「TGP−H−060」、厚み約190μm)を縦23mm×横23mmのサイズに切り出し、そのカソードガス拡散層の一方の面に、上記のカソード触媒層用の触媒ペーストを触媒量が0.5mg/cm2となるように、縦23mm×横23mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、室温にて乾燥させることにより、カソードガス拡散層であるカーボンペーパーの片面の全面にカソード触媒層が形成されたカソード極(第2電極)を作製した。得られたカソード極の厚みは約200μmであった。
【0113】
次に、50mm×50mmのサイズに切り出したフッ素樹脂系高分子電解質(旭化成社製「アシプレックス」)をアニオン伝導性固体高分子電解質膜として用い、上記アノード極と電解質膜と上記カソード極をこの順で、それぞれの触媒層が電解質膜に対向するように重ね合わせた後、130℃、10kNで2分間の熱圧着を行なうことにより、アノード極およびカソード極を電解質膜に接合し、膜電極複合体を得た。上記重ね合わせは、アノード極とカソード極の電解質膜の面内における位置が一致するように、かつアノード極と電解質膜とカソード極の中心が一致するように行なった。
【0114】
(2)アルカリ形燃料電池の作製
上記膜電極複合体を、市販の燃料電池セル(エレクトロケム社製)を分解して取り出した部品と組み合わせて燃料電池を作製した。具体的には、まず、アノード極側集電体(エンドプレート)/カーボン製アノード極セパレータ(還元剤供給用の流路(第1流路)を備えている)/ポリテトラフルオロエチレン製ガスケット/膜電極複合体/ポリテトラフルオロエチレン製ガスケット/カーボン製カソード極セパレータ(酸化剤供給用の流路(第2流路)を備えている)/カソード極側集電体(エンドプレート)の順に積層した。なお、両ガスケットの中心部には貫通孔が形成されているため、得られた積層体において、各極セパレータと膜電極複合体とは接触している。最後に、M3のボルトおよびナットを用いて5N・mで締め付けることによって、図5と同様の構成を有するアルカリ形燃料電池を得た。
【0115】
(3)制御装置およびアルカリ形燃料電池システムの作製
図4と同様の構成を有する制御装置を作製し、上記で作製したアルカリ形燃料電池を燃料電池部10aとして用いて、アルカリ形燃料電池システムを作製した。具体的には次のとおりである。
【0116】
還元剤供給用配管を燃料電池部10aのアノード極セパレータに還元剤を供給できるように接続するとともに、酸化剤供給用配管を燃料電池部10aのカソード極セパレータに酸化剤を供給できるように接続した。また、検出部20aおよび電子負荷装置30aとしての充放電バッテリシステム(菊水電気工業株式会社製「PFX2011」、電流計、電圧計および電子負荷装置を一体として備えている)を燃料電池部10aのアノード極側集電体およびカソード極側集電体に接続した。この検出部20aは、単位時間T0内における、膜電極複合体の第1電極−第2電極間)に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものである。また、制御部40aとしてのパーソナルコンピュータ〔時間測定手段(タイマー)および電流値および時間T0、T1を記憶する記憶手段(メモリ)を備えている。〕を充放電バッテリシステムに接続して検出結果を受信可能にするとともに、該検出結果に基づき充放電バッテリシステムに制御情報を送信可能とした。
【0117】
<比較例1>
制御部40aを有していないこと以外は実施例1と同様にしてアルカリ形燃料電池システムを作製した。
【0118】
〔アルカリ形燃料電池の発電効率の評価〕
(1)実施例1の場合
単位時間T0=9分、時間割合WT(=T1/T0)=10%、所定電流値A=600mA/cm2、所定電流値Aの電流を流す時間T2を1分に設定した実施例1の制御装置(アルカリ形燃料電池システム)において、燃料電池部10a(アルカリ形燃料電池)の稼動を停止(電流値0mA/cm2)しておくことにより、電流値0mA/cm2(9分間)→電流値600mA/cm2(1分間)→電流値0mA/cm2(9分間)→・・・というパターンで膜電極複合体に間欠的に600mA/cm2の電流を強制的に流した。このようなパターンでの電流取り出しは、制御部40aによる時間割合WT=0との判断に基づくものである。上記のようなパターンでの電流取り出しを2時間行なった後、200mA/cm2の電流を取り出したところ、50%の発電効率が得られるまでの時間は5分であった。なお、電流値はいずれも第1電極−第2電極間に流れる電流量を、第2電極の電解質膜への投影面積で割った値である。
【0119】
単位時間T0=9分、時間割合WT(=T1/T0)=10%、所定電流値A=600mA/cm2、所定電流値Aの電流を流す時間T2を1分に設定した実施例1の制御装置(アルカリ形燃料電池システム)において、燃料電池部10a(アルカリ形燃料電池)を電流値100mA/cm2で稼動しておくことにより、電流値100mA/cm2(9分間)→電流値600mA/cm2(1分間)→電流値100mA/cm2(9分間)→・・・というパターンで膜電極複合体に間欠的に600mA/cm2の電流を強制的に流した。このようなパターンでの電流取り出しは、制御部40aによる時間割合WT=0との判断に基づくものである。上記のようなパターンでの電流取り出しを2時間行なった後、200mA/cm2の電流を取り出したところ、50%の発電効率が得られるまでの時間は5分であった。
【0120】
(2)比較例1の場合
比較例1のアルカリ形燃料電池システムを、膜電極複合体に間欠的に電流を強制的に流す操作を行なうことなく、2時間稼動停止状態(電流値0mA/cm2)にした後、200mA/cm2の電流を取り出したところ、5分後の発電効率は30%であり、50%の発電効率が得られるのに30分を要した。
【0121】
また、比較例1のアルカリ形燃料電池システムを、膜電極複合体に間欠的に電流を強制的に流す操作を行なうことなく、電流値100mA/cm2で2時間稼動させた後、200mA/cm2の電流を取り出したところ、5分後の発電効率は35%であり、50%の発電効率が得られるのに15分を要した。
【0122】
なお、上記発電効率の評価において、発電効率は、充放電バッテリシステムが備える電圧計によって計測された実電圧値(出力電圧値)に基づき、下記式:
発電効率=実電圧値/1.23
により算出した。
【符号の説明】
【0123】
1,2,3,4,5 膜電極複合体、10,10a 燃料電池部、20,20a 検出部、30 電流値変更部、30a 電子負荷装置、30b スイッチ、30c 電源装置、40,40a 制御部、50 電子機器、101 アニオン伝導性電解質膜、102 第2電極、103 第1電極、104 第2集電層、104a 第2流路、105 第1集電層、105a 第1流路、106 ガスケット、110 第3電極、115 第4電極、120 第3集電層、125 第4集電層、130 絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の状態を検出する検出部と、
前記燃料電池の膜電極複合体に流れる電流値を変更する電流値変更部と、
前記検出部および前記電流値変更部に接続され、前記検出部による検出結果に応じて、前記膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように前記電流値変更部を制御するための制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記燃料電池は、アニオン伝導性電解質膜を電解質膜とする膜電極複合体を備えるアルカリ形燃料電池である請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記検出部は、単位時間T0内における、前記膜電極複合体に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものである請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電流値変更部は、前記アルカリ形燃料電池に接続される電子負荷装置または可変抵抗器を少なくとも備える請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電流値変更部は、前記アルカリ形燃料電池に接続される電子負荷装置または可変抵抗器と、前記アルカリ形燃料電池に対して直列に接続される電源装置とを含む請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記膜電極複合体は、前記アニオン伝導性電解質膜と、前記アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、前記アニオン伝導性電解質膜の前記第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極とからなり、
前記検出部は、単位時間T0内における、前記第1電極と前記第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、
前記電流値変更部は、前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流値を変更するものであり、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に応じて、前記第1電極と前記第2電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように前記電流値変更部を制御する請求項3〜5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記膜電極複合体は、前記アニオン伝導性電解質膜と、前記アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、前記アニオン伝導性電解質膜の前記第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極と、前記第1電極と離間して前記第1表面に積層される第3電極とからなり、
前記検出部は、単位時間T0内における、前記第1電極と前記第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、
前記電流値変更部は、前記第3電極と前記第2電極との間に流れる電流値を変更するものであり、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に応じて、前記第3電極と前記第2電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように前記電流値変更部を制御する請求項3〜5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記膜電極複合体は、前記アニオン伝導性電解質膜と、前記アニオン伝導性電解質膜の第1表面に積層される第1電極と、前記アニオン伝導性電解質膜の前記第1表面に対向する第2表面に積層される第2電極と、前記第1電極と離間して前記第1表面に積層される第3電極と、前記第2電極と離間して前記第2表面に積層される第4電極とからなり、
前記検出部は、単位時間T0内における、前記第1電極と前記第2電極との間に所定電流値A以上の電流が流れた時間T1の割合T1/T0を検出するものであり、
前記電流値変更部は、前記第3電極と前記第4電極との間に流れる電流値を変更するものであり、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に応じて、前記第3電極と前記第4電極との間に所定電流値A以上の電流が一定時間流れるように前記電流値変更部を制御する請求項3〜5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1電極は発電時におけるアノード極であり、前記第2電極は発電時におけるカソード極である請求項6〜8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1電極が有する触媒層の体積は、前記第2電極が有する触媒層の体積より大きい請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記所定電流値Aは、600〜1000mA/cm2の範囲内である請求項1〜10のいずれかに記載の制御装置。
【請求項12】
前記燃料電池を含む燃料電池部と、請求項1〜11のいずれかに記載の制御装置とを備える燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−199082(P2012−199082A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62618(P2011−62618)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】