制御装置の端子と回路導体の溶接方法
【課題】FET等の電子部品の端子とバスバー等の回路導体とを超小型のTIG溶接機で電子部品の破壊を防止しつつ簡単かつ確実に低コストで溶接することができる制御装置の端子と回路導体の溶接方法を提供する。
【解決手段】複数の端子11を有した電子部品10′の端子11と回路導体22とを超小型のTIG溶接機1′の一方の電極4からの溶接アーク9により溶融して接合するようにした制御装置に用いる電子部品10′の端子11と回路導体22の溶接方法であって、電子部品10′の複数の端子11の全ての端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具6で挟んで全ての端子11が同電位になる状態とした後で、溶接する端子11と回路導体22とをアースを取りながらアーク溶接する。この際、複数の端子の各端子間の距離が離れるように予め形成しておいた電子部品を用いると良い。
【解決手段】複数の端子11を有した電子部品10′の端子11と回路導体22とを超小型のTIG溶接機1′の一方の電極4からの溶接アーク9により溶融して接合するようにした制御装置に用いる電子部品10′の端子11と回路導体22の溶接方法であって、電子部品10′の複数の端子11の全ての端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具6で挟んで全ての端子11が同電位になる状態とした後で、溶接する端子11と回路導体22とをアースを取りながらアーク溶接する。この際、複数の端子の各端子間の距離が離れるように予め形成しておいた電子部品を用いると良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを溶接アークにより溶融して接合する制御装置の端子と回路導体の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品としてのFET(電界効果トランジスタ)の端子と、EPS(電動パワステ)コントロールユニットに用いられる回路導体としてのバスバーは、抵抗溶接等により溶接されている(例えば、特許文献1参照。)。即ち、EPSコントロールユニットにおいて、FETの接続は、ガラエポ基板(ガラスエポキシ基板)に半田付け、または、金属基板に半田付け、または、FETの端子にプロジェクションを設け、バスバー等に抵抗溶接するのが一般的であり、溶接時に流れる電流が大きすぎて電子部品を破壊するおそれのあるアーク溶接法は殆ど使用されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記FETは大電流用であるため、FETの端子をガラエポ基板に半田付けして実装する場合には、EFT専用のヒートシンクや外装に熱逃げ機構を設けたり、外装を放熱板として利用する必要があり、その分、部品点数や管理工数等が増えてコスト高になり、また、ガラエポ基板では最大許容電流が低く、さらに、半田の寿命にも懸念があった。
【0005】
また、FETの端子を金属基板に半田付けして実装する場合には、基板の材料費が高額になると共に、部品点数及び管理工数等が増え、かつ、金属基板実装の専用ラインが必要となって、コスト高になり、また、半田の寿命にも懸念があった。
【0006】
さらに、FETの端子とバスバーを抵抗溶接して実装する場合には、抵抗溶接法が溶接物の抵抗により熱を生じて溶接する工法であるため、回路導体としてのバスバーが低抵抗金属(純銅、KFC等)であり、材料の抵抗値が低くて使用することが難しく、また、FETの端子とバスバーが銅材同士である場合、そのまま抵抗溶接を行う場合では、点溶接になって溶接部の強度に安定性がなく、また、溶接機への負荷が大きくなり、その対応が難しかった。
【0007】
また、抵抗値を上げるべく、異種金属のメッキ等を用いると、溶接後の接合部の電気抵抗も増大してしまい、FETの使用時に発熱の原因となると共に、放熱対策を考慮する必要が生じる。
【0008】
さらに、溶接工法としてレーザ溶接があるが、FETの端子とバスバーのように純銅の端子はレーザ光の吸収が悪く殆どのエネルギーが反射してしまうため、メッキを塗布することなどで吸収率を上げなければならず、そのためには高精度のメッキ管理が必要となり、コスト高であった。
【0009】
尚、EPS用等の大電流を扱うコントロールユニットの他の部品の実装には、マイクロスポットTIG溶接機(超小型のTIG溶接機)が使用されることが多いため、FETの端子とバスバーの溶接にも同じ設備であるマイクロスポットTIG溶接機で行うことができれば、設備の削減等が可能になるが、複数の端子間にアークが飛ぶことによって、耐圧を超える電圧や、過電流によって素子が破壊・破損する可能性があり、従来手法では、特に車載等の小型制御装置には適用が難しかった。
【0010】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、FET等の電子部品の端子とバスバー等の回路導体とを超小型のTIG溶接機で電子部品の破壊を防止しつつ簡単かつ確実に低コストで溶接することができる制御装置の端子と回路導体の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主要な構成は、電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機で溶接する方法であって、電子部品の該当の端子をアースクランプするか、電子部品の複数の端子のうちで溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、アースクランプ治具で挟んで当該各端子を同電位にし、溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機で電子部品の破壊を防止しつつ簡単かつ確実に低コストで溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図3】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機で溶接アークが小さい場合の説明図である。
【図4】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いて好適な電子部品を示す斜視図である。
【図5】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いて好適な他の電子部品を示す斜視図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるコントロールユニットの斜視図、(b)は同コントロールユニットの溶接部分の拡大斜視図である。
【図7】(a)は上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の斜視図、(b)は同アースクランプ治具のクランパが開いた状態を示す斜視図である。
【図8】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子部品の斜視図である。
【図9】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる他の電子部品の斜視図である。
【図10】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の変形例を示す斜視図である。
【図11】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による他の素子の溶接を示す説明図である。
【図12】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる別の電子部品の斜視図である。
【図13】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる更に別の電子部品の斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図15】(a)〜(d)は上記第4実施形態の溶接に用いられる端子の形状をそれぞれ示す説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【0016】
図1に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1は、超小型のTIG溶接機であり、電子部品としてのFET(電界効果トランジスタ)10の端子11と、EPS(電動パワステ)等の電子コントロールユニット20に用いられる回路導体としてのバスバー22とを溶接アーク9により溶融して接合するものである。このマイクロスポットTIG溶接機1は、溶接機本体2と、溶接機本体2の負極に電線3を介して接続される溶接トーチの電極(一方の電極)4と、溶接機本体2の正極に電線3を介して接続されると共に端子11をクランプして該端子11との間にアーク放電を発生させる電極(他方の電極)を兼用したアースクランプ治具5とを備えている。この他方の電極を兼ねたアースクランプ治具5は、溶接するFET10の端子11とバスバー22を挟んでクランプすると共にアーク溶接時にアースを取るものである。
【0017】
FET10の主要部は、図示しないソース、ドレイン、ゲート等から構成されており、その背面側から直列にかつ上方に延びるようにソース用とドレイン用及びゲート用の3本(複数)の端子11,11,11をそれぞれ突設させている。この各端子11,11間の距離は、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れている。
【0018】
電子コントロールユニット20は、合成樹脂製のユニット本体21上に回路パターンを構成する複数のバスバー(回路導体)22を上方に突出するようにモールド成形してある。
【0019】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1を用いた溶接工法により、FET10の端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0020】
図1に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1の一方の電極4から発生する溶接アーク9の影響を少なくするために、各端子11,11間の距離が溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れている大型のFET10を使用する。
【0021】
次に、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10を挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10の溶接する端子11を実装する。
【0022】
次に、このFET10の溶接する端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部のみを、アースクランプ治具5で挟んでアースを取りながら当該端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物(ワーク)としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の可及的に距離を短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0023】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具5を取り外すことにより、溶接作業が終了する。これにより、単一金属同士の溶融、拡散接合とすることができ、電気抵抗が小さく、強度の高い接合が行える。
【0024】
このように、大型のFET10の各端子11,11間は、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れているため、例えば、ゲート用の端子11を溶接する場合に、溶接する端子11と該端子11に隣接するバスバー22のみをアースクランプ治具5で挟むことによりアースを取り、他のドレイン用とソース用の各端子11に溶接アーク9が飛ばないようにしたことにより、溶接アーク9の漏れがFET10の内部に届くことがなく、ゲートとドレイン或いはソースに大きな電圧差を生じさせたり、FET10の内部の絶縁膜を破損させたりすることがない。また、他のドレイン用やソース用の各端子11を溶接する際も他の端子11との電圧差によりFET10が破壊されることはない。
【0025】
さらに、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にマイクロスポットTIG溶接機1が使用されている場合、FET10の端子11とバスバー22の溶接も同じ設備であるマイクロスポットTIG溶接機1で行うことができるため、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができ、また、量産性を図ることができる。
【0026】
図2は本発明の第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図、図3は同マイクロスポットTIG溶接機で溶接アークが小さい場合の説明図である。
【0027】
この第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機1′は、FET(電子部品)10′の3本の端子11の全部をクランプして同電位とする他方の電極を兼ねたアースクランプ治具6を備えている。尚、マイクロスポットTIG溶接機1′の他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分に同一符号を用いて説明する。
【0028】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1′を用いた溶接工法により、FET10′の端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0029】
このマイクロスポットTIG溶接機1′では、FET10′の全ての端子11をクランプして同電位とするアースクランプ治具6と、各端子11,11間の距離が小さい小型のFET10′を使用する。
【0030】
詳述すると、図2に示すように、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10′を挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10′の溶接する端子11を実装する。
【0031】
次に、このFET10′の全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具6で挟んでアースを取りながら当該溶接する端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の距離を可及的に短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0032】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具6を取り外すことにより、溶接作業が終了する。
【0033】
図2に示すように、FET10′の全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具6で挟んでアースを取りながらアーク溶接することにより、溶接アーク9がFET10′の溶接しない隣りの端子11へ飛んでしまった場合でも、FET10′の内部に電気が入らず、FET10′が破壊することはない。
【0034】
また、図3に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1′の溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくした場合でも、FET10′の全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具6で挟んでアースを取りながらアーク溶接する際に、アースクランプ治具6によりFET10′の全ての端子11が同電位となって、FET10′の各端子11間への負荷が低減できるため、各端子11,11間の電圧差がなく、FET10′が破壊されることはない。
【0035】
但し、図2及び図3に示す第2実施形態の場合は、図1に示す第1実施形態と異なり、各端子11の距離が比較的小さい小型のFET10′に適用する場合であり、マイクロスポットTIG溶接機1′の溶接アーク9がFET10′の溶接しない隣りの端子11へ誤って飛んでしまうおそれがあり、端子毎の溶接度合いがばらつくなどで、各々の溶接が安定して行われない可能性があるため、図4及び図5に示すように、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のFET(電子部品)10A,10Bを使用すると良い。
【0036】
図4に示すFET10Aは、両側の端子11をFET10Aの上面に対して直角になるように上方に曲げ、中央の端子11をFET10Aの下面に対して直角になるように下方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、図5に示すFET10Bは、両側の端子11をFET10Bの下面に対して直角になるように下方に曲げ、中央の端子11をFET10Bの上面に対して直角になるように上方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものである。
【0037】
また、各端子11,11間のクリアランスを広げた小型のFET10A,10Bを使用することにより、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができる。その結果、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させてFET10A,10Bの内部の破損等を確実に防止することができる。ここで、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離までクリアランスを広げれば、大型のFET10を用いた際と同様、溶接する端子11のみをアースクランプしても良い。
【0038】
このように、各FET10′,10A,10Bの端子11とバスバー22の接合を、マイクロスポットTIG溶接機1′で行うことにより、端子11とバスバー22の溶接部の強度は溶融・拡散接合のため、強固で安定させることができる。また、部品数の削減が可能となる。さらに、マイクロスポットTIG溶接機1′は、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にも使用できるものであるため、他の溶接部位と共用に設定すれば、各FET10′,10A,10Bの端子11とバスバー22の溶接だけの新たな設備が不要となり、また、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができると共に、量産性を図ることができる。
【0039】
図6(a)は本発明の第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子コントロールユニットの斜視図、図6(b)は同電子コントロールユニットの溶接部分の拡大斜視図、図7(a)は同マイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の斜視図、図7(b)は同アースクランプ治具のクランパが開いた状態を示す斜視図、図8は同マイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子部品の斜視図である。
【0040】
図6(a),(b)に示すように、この第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機1″は、FET(電子部品)10Cの3本の端子11の全部をクランプして同電位とする他方の電極を兼ねたアースクランプ治具30を備えている。このアースクランプ治具30は、図6(b)及び図8に示すように、FET10Cの各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のものに用いる例で示してあり、具体的には、FET10Cの両側の端子11を上に曲げ、中央の端子11の腕部11bを両側の端子11に対し、FET10Cから離間する方向に長く延設し、その先端部を上にL字状に大きく折り曲げて各端子11,11間のクリアランスを広くして、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離までクリアランスを広げたものに用いる。
【0041】
図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示すように、アースクランプ治具30は、内部に端子11の配置に合わせた凸段差状の収納空間32を有する金属製で枠状の治具本体31と、この治具本体31の基端部に形成された3つの丸孔31a,31a,31aに摺動自在に支持された金属製で円柱状のピストン棒33,33,33と、この中央のピストン棒33の先端に固定され、収納空間32の中央の収納部32aに圧縮コイルバネ36を介して往復摺動する金属製の長クランパ34と、両側のピストン棒33,33の各先端に固定され、収納空間32の両側の収納部32b,32bに各圧縮コイルバネ36を介して往復摺動する金属製の短クランパ35,35とで構成されている。
【0042】
そして、FET10Cの中央の端子11がアースクランプ治具30の中央の収納部32aの内壁と長クランパ34の先端部34aとの間に隙間なく挟み込まれ、両側の端子11,11がアースクランプ治具30の両側の収納部32b,32bの各内壁と両側の短クランパ35,35の各先端部35aとの間に隙間なく挟み込まれるようになっている。この際、各圧縮コイルバネ36の付勢力に抗して各クランパ34,35が後退して開いた状態で、各クランパ34,35の先端部34a,35aと各収納部32a,32bの内壁間にFET10Cの各端子11を挟んでクランプすることができるようになっている。このアースクランプ治具30は、FET用に設定したものであり、他の部品に用いる際は対象となる端子の数、配置に応じて適する形態のもを用いる。
【0043】
また、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のものとして、図9に示すFET(電子部品)10Dを使用しても良い。このFET10Dは、その両側の端子11の腕部11bを中央の端子11に対し、FET10Dから離間する方向に長く延設し、その先端部をFET10Dの上面に対して直角になるように上方にL字状に大きく折り曲げている。また、中央の端子11をFET10Dの上面に対して直角になるようにその背面より上方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、アースクランプ治具30をFET10Cの各端子11を挟む場合とは前後逆向きにして使用する。
【0044】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1″を用いた溶接工法により、FET10Cの端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0045】
このマイクロスポットTIG溶接機1″では、FET10Cの全ての端子11をクランプして同電位とするアースクランプ治具30を使用するため、各端子11,11間の距離が比較的小さい小型のFET10Cを使用できる。
【0046】
詳述すると、図6(a),(b)に示すように、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10Cを挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10Cの溶接する端子11を実装する。
【0047】
即ち、この例では、図6(b)に示すように、各バスバー22,22,22の横幅aは、これに対応する各端子11,11,11の横幅bよりも長い横幅にて形成されている。また、バスバー22の横幅面と端子11の横幅面とは互いに接触した状態にてクランプされている。さらに、各バスバー22,22,22は、各端子11,11,11のFET10C本体に臨む面(端子11に対して内側)に配置されている。これらバスバー22と端子11との相対的な形状および配置関係によって以下の効果を有する。
【0048】
1)アースクランプ治具30の圧縮コイルバネ36により付勢された長/短クランパ34,35は、幅広なバスバー22を押圧する。さらに、このバスバー22が隣接した幅狭の端子11を、収納部32a,32bの内壁に押圧する。従って、長/短クランパ34,35が、幅狭な端子11を直接押圧するのではなく、幅広なバスバー22を介して端子11を押圧するから、長/短クランパ34,35にガタつきや、押圧方向、押圧力のずれが生じても、一体に形成されて相対的に強固なアースクランプ治具30の収納部32a,32b側に保持されることで、クランプ時に端子11がずれたり、屈曲することなく、端子11をバスバー22の横幅aの略中央に位置させてクランプさせることができる。
【0049】
2)バスバー22の横幅aは、端子11の横幅bより長い横幅にて形成されているから、バスバー22の電気的な抵抗値を下げることができ、バスバー22と端子11との接続部の発熱を抑えることが可能となる。
【0050】
他の実施例として、中央のバスバー22を、端子11のFET10C本体に臨む面(端子11に対して内側)に配置させ、両側のバスバー22,22を端子11のFET10C本体とは反対側に臨む面(端子11に対して外側)に配置させることもできる。この場合は、両側のバスバー22,22の配線をFET10C側から配線し、中央のバスバー22の配線をFET10Cとは反対側から配線するようにもできるから、配線上中央のバスバー22を迂回させる必要がある際に用いると、中央のバスバー22の配線を単純化でき、配線長を比較的短くすることが可能となる。
【0051】
次に、このFET10Cの全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具30の治具本体31の各収納部32a,32bの内壁と各クランパ34,35の先端部34a,35aとの間で挟んでアースを取りながら溶接する端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の距離を可及的に短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0052】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具30を取り外すことにより、溶接作業が終了する。
【0053】
図6(a),(b)に示すように、FET10Cの全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具30で挟んでアースを取りながらアーク溶接することにより、溶接アーク9がFET10Cの溶接しない隣りの端子11へ飛んでしまった場合でも、FET10Cの内部に電気が入らず、FET10Cが破壊することはない。また、マイクロスポットTIG溶接機1″の溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくした場合でも、FET10Cの全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具30で挟んでアースを取りながらアーク溶接する際に、アースクランプ治具30によりFET10Cの全ての端子11が同電位となって、FET10Cの各端子11間への負荷が低減できるため、各端子11,11間の電圧差がなく、FET10Cが破損されることはない。
【0054】
このように、各端子11,11間のクリアランスを広げた小型のFET10Cを使用することにより、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができる。その結果、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させてFET10Cの内部の破損等を確実に防止することができる。
【0055】
また、FET10Cの全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具30の治具本体31の各収納部32a,32bの内壁と各クランパ34,35の先端部34a,35aとの間で隙間なく挟むことができ、TIG溶接の接合精度を高めることができ、量産性を向上させて低コスト化を図ることができる。
【0056】
ここで、アースクランプ治具として、図10に示すように、アースクランプ用突起37を設けたアースクランプ治具30′を用いても良い。このアースクランプ治具30′では、アースクランプ用突起37を設けてあるため、アース線の接続が容易となる。又は、アース接続用の配線をクランプに設置しても良い。尚、図10に示すアースクランプ治具30′は、各端子11,11間のクリアランスを広げた図8に示す小型のFET10Cに用いるものではないが、図7に示すアースクランプ治具30と同様に3つのクランパ35,35,35の位置を異ならせれば、上記小型のFET10Cの端子11等の溶接に対応させることができる。
【0057】
また、本第3実施形態では、電子部品としてFETを用いたが、図11に示すように、コンデンサ(他の素子)10″やI/C等でも同様に適用できる。さらに、素子の全ての端子をクランプする他、耐電圧等で問題が生じるおそれのある端子のみをクランプしても良い。
【0058】
さらに、マイクロスポットTIG溶接機1″は、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にも使用できるものであるため、他の溶接部位と共用に設定すれば、FET10Cの端子11とバスバー22の溶接だけの新たな設備が不要となり、また、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができると共に、量産性を図ることができる。
【0059】
さらに、マイクロスポットTIG溶接機1″を用いた端子11とバスバー22を溶接する場合、図12及び図13に示すように、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のFET(電子部品)10E,10Fを使用することもできる。
【0060】
図12に示すFET10Eは、両側の端子11をFET10Eの上面又は下面に対して直角になるように上方又は下方に曲げ、中央の端子11を曲げることなくその背面より真っ直ぐに延ばして各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、図13に示すFET10Fは、両側の端子11をFET10Fの上面して直角になるように上方に曲げることなくその背面より真っ直ぐ延ばし、中央の端子11をFET10Fの上面又は下面に対して直角になるように上方又は下方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものである。これにより、中央の端子11と両側の端子11,11のクリアランスを広くでき、隣り合った端子11へ溶接時の溶接アーク9が飛ぶのを抑制できる。
【0061】
図14は、本発明の第4実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【0062】
この第4実施形態では、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接アーク9を小さくするために、大型のFET10の端子11の溶接部となる先端部11aとバスバー22の溶接部となる先端部11aの形状を先細に形成してある。
【0063】
このように、大型のFET10の端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用することにより、溶接アーク9が拡散(飛散)するのを抑制でき、実質的な各先端部11a,22aの幅が狭いために溶接アーク9をより精度よく誘導できるので、小さなアーク球でも充分な溶接が可能となり、マイクロスポットTIG溶接機1のパワーを抑えられるため、他の部分への熱影響を更に小さくすることができる。このため、小さな溶接アーク9でも十分な溶接が可能となり、図1に示すものより、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接のパワーを小さくすることで溶接アーク9を小さくすることができる。その結果、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができ、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させて大型のFET10の内部の破壊等を確実に防止することができる。
【0064】
この端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用するアーク溶接は、各端子11,11間の距離が小さい小型のFET10′,10A〜10Fの場合に、特に有効となる。即ち、小型のFET10′,10A〜10Fの端子11とバスバー22を溶接する際に、前記第2及び第3実施形態と同様の効果を奏すると共に、小型のFET10′,10A〜10Fの端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用することにより、溶接アーク9が拡散(飛散)するのを抑制でき、小さな溶接アーク9でも十分な溶接が可能となるため、図1に示すものより、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接のパワーを小さくすることで溶接アーク9を小さくすることができる。このため、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができ、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接する端子11の他への溶接アーク9の飛散を縮小させて小型のFET10′,10A〜10Fの内部の破壊等を確実に防止することができる。
【0065】
また、端子11とバスバー22の各先端部11a,22aの形状は、図14に示す先細の形状に限らず、図15(a)に示すように、全体を先端部に行くに従って先細に形成したり、図15(b)に示すように、先端部を凸状に形成したり、図15(c)に示すように、先端部を半円形に形成したり、図15(d)に示すように、全体を細く形成しても良い。このように、端子11とバスバー22の各先端部11a,22aの先端をマイクロスポットTIG溶接機1の電極4に対向する面がより小さくなるようカットした上で、溶接アーク9により端子11とバスバー22を接合すれば、実質的な各先端部11a,22aの幅が狭いために溶接アーク9をより精度よく誘導できるので、小さなアーク球でも充分な溶接が可能となり、マイクロスポットTIG溶接機1のパワーを抑えられるため、他の部分への熱影響を更に小さくすることができる。
【0066】
尚、前記各実施形態によれば、アース機能とクランプ機能を兼ねたアースクランプ治具を用いた場合について説明したが、図16に示すように、アース治具としてのアース台7とクランプ治具8を別々に備えたマイクロスポットTIG溶接機1Aを用いてFET10の端子11等とバスバー22をアーク溶接するようにしても良い。このマイクロスポットTIG溶接機1Aでは、溶接機本体2に電線3で接続されるアース台7は導電性材で形成されていて、溶接する部品の全ての端子を同電位にしている。さらに、溶接の際には、アース台7上にFET10の全ての端子11等が接触されるように上から押し付けられるようになっている。また、クランプ治具8と溶接機本体2との接続は不要となり、このクランプ治具8で溶接を行う端子とバスバーをクランプしても良いし、全ての端子又は耐電圧等で問題となる端子をクランプしても良い。
【0067】
また、前記第2及び第3実施形態によれば、各端子間の距離が離れるように端子の突出位置を可変させて予め形成させておいた電子部品としてのFETを用いたが、FETに他の部品(例えば、ピンや金属基板等)を使用して十分な各端子間のクリアランスを確保するようにしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1,1′,1″,1A マイクロスポットTIG溶接機(超小型のTIG溶接機)
3 一方の電極
5,6 アースクランプ治具
9 溶接アーク
10,10′,10A〜10F FET(電子部品)
11 端子
22 バスバー(回路導体)
30,30″ アースクランプ治具
34 長クランパ(クランパ)
35 短クランパ(クランパ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを溶接アークにより溶融して接合する制御装置の端子と回路導体の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品としてのFET(電界効果トランジスタ)の端子と、EPS(電動パワステ)コントロールユニットに用いられる回路導体としてのバスバーは、抵抗溶接等により溶接されている(例えば、特許文献1参照。)。即ち、EPSコントロールユニットにおいて、FETの接続は、ガラエポ基板(ガラスエポキシ基板)に半田付け、または、金属基板に半田付け、または、FETの端子にプロジェクションを設け、バスバー等に抵抗溶接するのが一般的であり、溶接時に流れる電流が大きすぎて電子部品を破壊するおそれのあるアーク溶接法は殆ど使用されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記FETは大電流用であるため、FETの端子をガラエポ基板に半田付けして実装する場合には、EFT専用のヒートシンクや外装に熱逃げ機構を設けたり、外装を放熱板として利用する必要があり、その分、部品点数や管理工数等が増えてコスト高になり、また、ガラエポ基板では最大許容電流が低く、さらに、半田の寿命にも懸念があった。
【0005】
また、FETの端子を金属基板に半田付けして実装する場合には、基板の材料費が高額になると共に、部品点数及び管理工数等が増え、かつ、金属基板実装の専用ラインが必要となって、コスト高になり、また、半田の寿命にも懸念があった。
【0006】
さらに、FETの端子とバスバーを抵抗溶接して実装する場合には、抵抗溶接法が溶接物の抵抗により熱を生じて溶接する工法であるため、回路導体としてのバスバーが低抵抗金属(純銅、KFC等)であり、材料の抵抗値が低くて使用することが難しく、また、FETの端子とバスバーが銅材同士である場合、そのまま抵抗溶接を行う場合では、点溶接になって溶接部の強度に安定性がなく、また、溶接機への負荷が大きくなり、その対応が難しかった。
【0007】
また、抵抗値を上げるべく、異種金属のメッキ等を用いると、溶接後の接合部の電気抵抗も増大してしまい、FETの使用時に発熱の原因となると共に、放熱対策を考慮する必要が生じる。
【0008】
さらに、溶接工法としてレーザ溶接があるが、FETの端子とバスバーのように純銅の端子はレーザ光の吸収が悪く殆どのエネルギーが反射してしまうため、メッキを塗布することなどで吸収率を上げなければならず、そのためには高精度のメッキ管理が必要となり、コスト高であった。
【0009】
尚、EPS用等の大電流を扱うコントロールユニットの他の部品の実装には、マイクロスポットTIG溶接機(超小型のTIG溶接機)が使用されることが多いため、FETの端子とバスバーの溶接にも同じ設備であるマイクロスポットTIG溶接機で行うことができれば、設備の削減等が可能になるが、複数の端子間にアークが飛ぶことによって、耐圧を超える電圧や、過電流によって素子が破壊・破損する可能性があり、従来手法では、特に車載等の小型制御装置には適用が難しかった。
【0010】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、FET等の電子部品の端子とバスバー等の回路導体とを超小型のTIG溶接機で電子部品の破壊を防止しつつ簡単かつ確実に低コストで溶接することができる制御装置の端子と回路導体の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主要な構成は、電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機で溶接する方法であって、電子部品の該当の端子をアースクランプするか、電子部品の複数の端子のうちで溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、アースクランプ治具で挟んで当該各端子を同電位にし、溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機で電子部品の破壊を防止しつつ簡単かつ確実に低コストで溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図3】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機で溶接アークが小さい場合の説明図である。
【図4】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いて好適な電子部品を示す斜視図である。
【図5】上記第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いて好適な他の電子部品を示す斜視図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるコントロールユニットの斜視図、(b)は同コントロールユニットの溶接部分の拡大斜視図である。
【図7】(a)は上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の斜視図、(b)は同アースクランプ治具のクランパが開いた状態を示す斜視図である。
【図8】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子部品の斜視図である。
【図9】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる他の電子部品の斜視図である。
【図10】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の変形例を示す斜視図である。
【図11】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による他の素子の溶接を示す説明図である。
【図12】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる別の電子部品の斜視図である。
【図13】上記第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる更に別の電子部品の斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【図15】(a)〜(d)は上記第4実施形態の溶接に用いられる端子の形状をそれぞれ示す説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【0016】
図1に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1は、超小型のTIG溶接機であり、電子部品としてのFET(電界効果トランジスタ)10の端子11と、EPS(電動パワステ)等の電子コントロールユニット20に用いられる回路導体としてのバスバー22とを溶接アーク9により溶融して接合するものである。このマイクロスポットTIG溶接機1は、溶接機本体2と、溶接機本体2の負極に電線3を介して接続される溶接トーチの電極(一方の電極)4と、溶接機本体2の正極に電線3を介して接続されると共に端子11をクランプして該端子11との間にアーク放電を発生させる電極(他方の電極)を兼用したアースクランプ治具5とを備えている。この他方の電極を兼ねたアースクランプ治具5は、溶接するFET10の端子11とバスバー22を挟んでクランプすると共にアーク溶接時にアースを取るものである。
【0017】
FET10の主要部は、図示しないソース、ドレイン、ゲート等から構成されており、その背面側から直列にかつ上方に延びるようにソース用とドレイン用及びゲート用の3本(複数)の端子11,11,11をそれぞれ突設させている。この各端子11,11間の距離は、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れている。
【0018】
電子コントロールユニット20は、合成樹脂製のユニット本体21上に回路パターンを構成する複数のバスバー(回路導体)22を上方に突出するようにモールド成形してある。
【0019】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1を用いた溶接工法により、FET10の端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0020】
図1に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1の一方の電極4から発生する溶接アーク9の影響を少なくするために、各端子11,11間の距離が溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れている大型のFET10を使用する。
【0021】
次に、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10を挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10の溶接する端子11を実装する。
【0022】
次に、このFET10の溶接する端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部のみを、アースクランプ治具5で挟んでアースを取りながら当該端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物(ワーク)としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の可及的に距離を短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0023】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具5を取り外すことにより、溶接作業が終了する。これにより、単一金属同士の溶融、拡散接合とすることができ、電気抵抗が小さく、強度の高い接合が行える。
【0024】
このように、大型のFET10の各端子11,11間は、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離まで離れているため、例えば、ゲート用の端子11を溶接する場合に、溶接する端子11と該端子11に隣接するバスバー22のみをアースクランプ治具5で挟むことによりアースを取り、他のドレイン用とソース用の各端子11に溶接アーク9が飛ばないようにしたことにより、溶接アーク9の漏れがFET10の内部に届くことがなく、ゲートとドレイン或いはソースに大きな電圧差を生じさせたり、FET10の内部の絶縁膜を破損させたりすることがない。また、他のドレイン用やソース用の各端子11を溶接する際も他の端子11との電圧差によりFET10が破壊されることはない。
【0025】
さらに、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にマイクロスポットTIG溶接機1が使用されている場合、FET10の端子11とバスバー22の溶接も同じ設備であるマイクロスポットTIG溶接機1で行うことができるため、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができ、また、量産性を図ることができる。
【0026】
図2は本発明の第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図、図3は同マイクロスポットTIG溶接機で溶接アークが小さい場合の説明図である。
【0027】
この第2実施形態のマイクロスポットTIG溶接機1′は、FET(電子部品)10′の3本の端子11の全部をクランプして同電位とする他方の電極を兼ねたアースクランプ治具6を備えている。尚、マイクロスポットTIG溶接機1′の他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分に同一符号を用いて説明する。
【0028】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1′を用いた溶接工法により、FET10′の端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0029】
このマイクロスポットTIG溶接機1′では、FET10′の全ての端子11をクランプして同電位とするアースクランプ治具6と、各端子11,11間の距離が小さい小型のFET10′を使用する。
【0030】
詳述すると、図2に示すように、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10′を挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10′の溶接する端子11を実装する。
【0031】
次に、このFET10′の全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具6で挟んでアースを取りながら当該溶接する端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の距離を可及的に短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0032】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具6を取り外すことにより、溶接作業が終了する。
【0033】
図2に示すように、FET10′の全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具6で挟んでアースを取りながらアーク溶接することにより、溶接アーク9がFET10′の溶接しない隣りの端子11へ飛んでしまった場合でも、FET10′の内部に電気が入らず、FET10′が破壊することはない。
【0034】
また、図3に示すように、マイクロスポットTIG溶接機1′の溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくした場合でも、FET10′の全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具6で挟んでアースを取りながらアーク溶接する際に、アースクランプ治具6によりFET10′の全ての端子11が同電位となって、FET10′の各端子11間への負荷が低減できるため、各端子11,11間の電圧差がなく、FET10′が破壊されることはない。
【0035】
但し、図2及び図3に示す第2実施形態の場合は、図1に示す第1実施形態と異なり、各端子11の距離が比較的小さい小型のFET10′に適用する場合であり、マイクロスポットTIG溶接機1′の溶接アーク9がFET10′の溶接しない隣りの端子11へ誤って飛んでしまうおそれがあり、端子毎の溶接度合いがばらつくなどで、各々の溶接が安定して行われない可能性があるため、図4及び図5に示すように、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のFET(電子部品)10A,10Bを使用すると良い。
【0036】
図4に示すFET10Aは、両側の端子11をFET10Aの上面に対して直角になるように上方に曲げ、中央の端子11をFET10Aの下面に対して直角になるように下方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、図5に示すFET10Bは、両側の端子11をFET10Bの下面に対して直角になるように下方に曲げ、中央の端子11をFET10Bの上面に対して直角になるように上方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものである。
【0037】
また、各端子11,11間のクリアランスを広げた小型のFET10A,10Bを使用することにより、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができる。その結果、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させてFET10A,10Bの内部の破損等を確実に防止することができる。ここで、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離までクリアランスを広げれば、大型のFET10を用いた際と同様、溶接する端子11のみをアースクランプしても良い。
【0038】
このように、各FET10′,10A,10Bの端子11とバスバー22の接合を、マイクロスポットTIG溶接機1′で行うことにより、端子11とバスバー22の溶接部の強度は溶融・拡散接合のため、強固で安定させることができる。また、部品数の削減が可能となる。さらに、マイクロスポットTIG溶接機1′は、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にも使用できるものであるため、他の溶接部位と共用に設定すれば、各FET10′,10A,10Bの端子11とバスバー22の溶接だけの新たな設備が不要となり、また、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができると共に、量産性を図ることができる。
【0039】
図6(a)は本発明の第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子コントロールユニットの斜視図、図6(b)は同電子コントロールユニットの溶接部分の拡大斜視図、図7(a)は同マイクロスポットTIG溶接機に用いられるアースクランプ治具の斜視図、図7(b)は同アースクランプ治具のクランパが開いた状態を示す斜視図、図8は同マイクロスポットTIG溶接機に用いられる電子部品の斜視図である。
【0040】
図6(a),(b)に示すように、この第3実施形態のマイクロスポットTIG溶接機1″は、FET(電子部品)10Cの3本の端子11の全部をクランプして同電位とする他方の電極を兼ねたアースクランプ治具30を備えている。このアースクランプ治具30は、図6(b)及び図8に示すように、FET10Cの各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のものに用いる例で示してあり、具体的には、FET10Cの両側の端子11を上に曲げ、中央の端子11の腕部11bを両側の端子11に対し、FET10Cから離間する方向に長く延設し、その先端部を上にL字状に大きく折り曲げて各端子11,11間のクリアランスを広くして、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の漏れが生じない距離までクリアランスを広げたものに用いる。
【0041】
図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示すように、アースクランプ治具30は、内部に端子11の配置に合わせた凸段差状の収納空間32を有する金属製で枠状の治具本体31と、この治具本体31の基端部に形成された3つの丸孔31a,31a,31aに摺動自在に支持された金属製で円柱状のピストン棒33,33,33と、この中央のピストン棒33の先端に固定され、収納空間32の中央の収納部32aに圧縮コイルバネ36を介して往復摺動する金属製の長クランパ34と、両側のピストン棒33,33の各先端に固定され、収納空間32の両側の収納部32b,32bに各圧縮コイルバネ36を介して往復摺動する金属製の短クランパ35,35とで構成されている。
【0042】
そして、FET10Cの中央の端子11がアースクランプ治具30の中央の収納部32aの内壁と長クランパ34の先端部34aとの間に隙間なく挟み込まれ、両側の端子11,11がアースクランプ治具30の両側の収納部32b,32bの各内壁と両側の短クランパ35,35の各先端部35aとの間に隙間なく挟み込まれるようになっている。この際、各圧縮コイルバネ36の付勢力に抗して各クランパ34,35が後退して開いた状態で、各クランパ34,35の先端部34a,35aと各収納部32a,32bの内壁間にFET10Cの各端子11を挟んでクランプすることができるようになっている。このアースクランプ治具30は、FET用に設定したものであり、他の部品に用いる際は対象となる端子の数、配置に応じて適する形態のもを用いる。
【0043】
また、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のものとして、図9に示すFET(電子部品)10Dを使用しても良い。このFET10Dは、その両側の端子11の腕部11bを中央の端子11に対し、FET10Dから離間する方向に長く延設し、その先端部をFET10Dの上面に対して直角になるように上方にL字状に大きく折り曲げている。また、中央の端子11をFET10Dの上面に対して直角になるようにその背面より上方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、アースクランプ治具30をFET10Cの各端子11を挟む場合とは前後逆向きにして使用する。
【0044】
次に、マイクロスポットTIG溶接機1″を用いた溶接工法により、FET10Cの端子11と電子コントロールユニット20のバスバー22との溶接について説明する。
【0045】
このマイクロスポットTIG溶接機1″では、FET10Cの全ての端子11をクランプして同電位とするアースクランプ治具30を使用するため、各端子11,11間の距離が比較的小さい小型のFET10Cを使用できる。
【0046】
詳述すると、図6(a),(b)に示すように、電子コントロールユニット20のユニット本体21の下側よりFET10Cを挿入し、ユニット本体21上に突出した溶接するバスバー22に隣接するようにFET10Cの溶接する端子11を実装する。
【0047】
即ち、この例では、図6(b)に示すように、各バスバー22,22,22の横幅aは、これに対応する各端子11,11,11の横幅bよりも長い横幅にて形成されている。また、バスバー22の横幅面と端子11の横幅面とは互いに接触した状態にてクランプされている。さらに、各バスバー22,22,22は、各端子11,11,11のFET10C本体に臨む面(端子11に対して内側)に配置されている。これらバスバー22と端子11との相対的な形状および配置関係によって以下の効果を有する。
【0048】
1)アースクランプ治具30の圧縮コイルバネ36により付勢された長/短クランパ34,35は、幅広なバスバー22を押圧する。さらに、このバスバー22が隣接した幅狭の端子11を、収納部32a,32bの内壁に押圧する。従って、長/短クランパ34,35が、幅狭な端子11を直接押圧するのではなく、幅広なバスバー22を介して端子11を押圧するから、長/短クランパ34,35にガタつきや、押圧方向、押圧力のずれが生じても、一体に形成されて相対的に強固なアースクランプ治具30の収納部32a,32b側に保持されることで、クランプ時に端子11がずれたり、屈曲することなく、端子11をバスバー22の横幅aの略中央に位置させてクランプさせることができる。
【0049】
2)バスバー22の横幅aは、端子11の横幅bより長い横幅にて形成されているから、バスバー22の電気的な抵抗値を下げることができ、バスバー22と端子11との接続部の発熱を抑えることが可能となる。
【0050】
他の実施例として、中央のバスバー22を、端子11のFET10C本体に臨む面(端子11に対して内側)に配置させ、両側のバスバー22,22を端子11のFET10C本体とは反対側に臨む面(端子11に対して外側)に配置させることもできる。この場合は、両側のバスバー22,22の配線をFET10C側から配線し、中央のバスバー22の配線をFET10Cとは反対側から配線するようにもできるから、配線上中央のバスバー22を迂回させる必要がある際に用いると、中央のバスバー22の配線を単純化でき、配線長を比較的短くすることが可能となる。
【0051】
次に、このFET10Cの全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具30の治具本体31の各収納部32a,32bの内壁と各クランパ34,35の先端部34a,35aとの間で挟んでアースを取りながら溶接する端子11の先端部とバスバー22の先端部の溶接部を溶融して接合する。このアーク溶接の際に、被溶接物としての端子11及びバスバー22に合った溶接条件(例えば、電極4と被溶接物の溶接部の距離を可及的に短くし、溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくしたり、溶接スタート時にアップスロープの時間を設けて溶接電流を急激に上げずに穏やかに上げることで、一気に溶接アーク9が飛ぶことにより、周囲の端子11等への溶接アーク9の飛散が生じたり、ブローホールの生成等により、接続強度や接合部の電気容量が不十分になったりすることを低減する等)を選定して、TIG溶接を実施する。
【0052】
次に、TIG溶接が完了した後で、アースクランプ治具30を取り外すことにより、溶接作業が終了する。
【0053】
図6(a),(b)に示すように、FET10Cの全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具30で挟んでアースを取りながらアーク溶接することにより、溶接アーク9がFET10Cの溶接しない隣りの端子11へ飛んでしまった場合でも、FET10Cの内部に電気が入らず、FET10Cが破壊することはない。また、マイクロスポットTIG溶接機1″の溶接電流を絞って溶接アーク9の大きさを小さくした場合でも、FET10Cの全ての端子11の各基端部をアースクランプ治具30で挟んでアースを取りながらアーク溶接する際に、アースクランプ治具30によりFET10Cの全ての端子11が同電位となって、FET10Cの各端子11間への負荷が低減できるため、各端子11,11間の電圧差がなく、FET10Cが破損されることはない。
【0054】
このように、各端子11,11間のクリアランスを広げた小型のFET10Cを使用することにより、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができる。その結果、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させてFET10Cの内部の破損等を確実に防止することができる。
【0055】
また、FET10Cの全ての端子11の基端部と溶接するバスバー22の基端部を、アースクランプ治具30の治具本体31の各収納部32a,32bの内壁と各クランパ34,35の先端部34a,35aとの間で隙間なく挟むことができ、TIG溶接の接合精度を高めることができ、量産性を向上させて低コスト化を図ることができる。
【0056】
ここで、アースクランプ治具として、図10に示すように、アースクランプ用突起37を設けたアースクランプ治具30′を用いても良い。このアースクランプ治具30′では、アースクランプ用突起37を設けてあるため、アース線の接続が容易となる。又は、アース接続用の配線をクランプに設置しても良い。尚、図10に示すアースクランプ治具30′は、各端子11,11間のクリアランスを広げた図8に示す小型のFET10Cに用いるものではないが、図7に示すアースクランプ治具30と同様に3つのクランパ35,35,35の位置を異ならせれば、上記小型のFET10Cの端子11等の溶接に対応させることができる。
【0057】
また、本第3実施形態では、電子部品としてFETを用いたが、図11に示すように、コンデンサ(他の素子)10″やI/C等でも同様に適用できる。さらに、素子の全ての端子をクランプする他、耐電圧等で問題が生じるおそれのある端子のみをクランプしても良い。
【0058】
さらに、マイクロスポットTIG溶接機1″は、電子コントロールユニット20の他の部品の実装にも使用できるものであるため、他の溶接部位と共用に設定すれば、FET10Cの端子11とバスバー22の溶接だけの新たな設備が不要となり、また、半田レス、設備の削減、治工具の削減、作業・管理工数の削減等により低コスト化を図ることができると共に、量産性を図ることができる。
【0059】
さらに、マイクロスポットTIG溶接機1″を用いた端子11とバスバー22を溶接する場合、図12及び図13に示すように、各端子11間の距離が離れるように予め形成しておいた小型のFET(電子部品)10E,10Fを使用することもできる。
【0060】
図12に示すFET10Eは、両側の端子11をFET10Eの上面又は下面に対して直角になるように上方又は下方に曲げ、中央の端子11を曲げることなくその背面より真っ直ぐに延ばして各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものであり、図13に示すFET10Fは、両側の端子11をFET10Fの上面して直角になるように上方に曲げることなくその背面より真っ直ぐ延ばし、中央の端子11をFET10Fの上面又は下面に対して直角になるように上方又は下方に曲げて各端子11,11間の溶接部位間のクリアランスを広くしたものである。これにより、中央の端子11と両側の端子11,11のクリアランスを広くでき、隣り合った端子11へ溶接時の溶接アーク9が飛ぶのを抑制できる。
【0061】
図14は、本発明の第4実施形態のマイクロスポットTIG溶接機による溶接を示す説明図である。
【0062】
この第4実施形態では、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接アーク9を小さくするために、大型のFET10の端子11の溶接部となる先端部11aとバスバー22の溶接部となる先端部11aの形状を先細に形成してある。
【0063】
このように、大型のFET10の端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用することにより、溶接アーク9が拡散(飛散)するのを抑制でき、実質的な各先端部11a,22aの幅が狭いために溶接アーク9をより精度よく誘導できるので、小さなアーク球でも充分な溶接が可能となり、マイクロスポットTIG溶接機1のパワーを抑えられるため、他の部分への熱影響を更に小さくすることができる。このため、小さな溶接アーク9でも十分な溶接が可能となり、図1に示すものより、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接のパワーを小さくすることで溶接アーク9を小さくすることができる。その結果、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができ、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接アーク9の漏れを縮小させて大型のFET10の内部の破壊等を確実に防止することができる。
【0064】
この端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用するアーク溶接は、各端子11,11間の距離が小さい小型のFET10′,10A〜10Fの場合に、特に有効となる。即ち、小型のFET10′,10A〜10Fの端子11とバスバー22を溶接する際に、前記第2及び第3実施形態と同様の効果を奏すると共に、小型のFET10′,10A〜10Fの端子11とバスバー22の溶接部となる各先端部11a,22aの形状を先細に形成したものを使用することにより、溶接アーク9が拡散(飛散)するのを抑制でき、小さな溶接アーク9でも十分な溶接が可能となるため、図1に示すものより、マイクロスポットTIG溶接機1の溶接のパワーを小さくすることで溶接アーク9を小さくすることができる。このため、溶接しない他の端子11に溶接アーク9が飛ぶことを抑制することができ、溶接しない他の端子11への溶接アーク9の飛散の影響を抑制でき、かつ、溶接する端子11の他への溶接アーク9の飛散を縮小させて小型のFET10′,10A〜10Fの内部の破壊等を確実に防止することができる。
【0065】
また、端子11とバスバー22の各先端部11a,22aの形状は、図14に示す先細の形状に限らず、図15(a)に示すように、全体を先端部に行くに従って先細に形成したり、図15(b)に示すように、先端部を凸状に形成したり、図15(c)に示すように、先端部を半円形に形成したり、図15(d)に示すように、全体を細く形成しても良い。このように、端子11とバスバー22の各先端部11a,22aの先端をマイクロスポットTIG溶接機1の電極4に対向する面がより小さくなるようカットした上で、溶接アーク9により端子11とバスバー22を接合すれば、実質的な各先端部11a,22aの幅が狭いために溶接アーク9をより精度よく誘導できるので、小さなアーク球でも充分な溶接が可能となり、マイクロスポットTIG溶接機1のパワーを抑えられるため、他の部分への熱影響を更に小さくすることができる。
【0066】
尚、前記各実施形態によれば、アース機能とクランプ機能を兼ねたアースクランプ治具を用いた場合について説明したが、図16に示すように、アース治具としてのアース台7とクランプ治具8を別々に備えたマイクロスポットTIG溶接機1Aを用いてFET10の端子11等とバスバー22をアーク溶接するようにしても良い。このマイクロスポットTIG溶接機1Aでは、溶接機本体2に電線3で接続されるアース台7は導電性材で形成されていて、溶接する部品の全ての端子を同電位にしている。さらに、溶接の際には、アース台7上にFET10の全ての端子11等が接触されるように上から押し付けられるようになっている。また、クランプ治具8と溶接機本体2との接続は不要となり、このクランプ治具8で溶接を行う端子とバスバーをクランプしても良いし、全ての端子又は耐電圧等で問題となる端子をクランプしても良い。
【0067】
また、前記第2及び第3実施形態によれば、各端子間の距離が離れるように端子の突出位置を可変させて予め形成させておいた電子部品としてのFETを用いたが、FETに他の部品(例えば、ピンや金属基板等)を使用して十分な各端子間のクリアランスを確保するようにしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1,1′,1″,1A マイクロスポットTIG溶接機(超小型のTIG溶接機)
3 一方の電極
5,6 アースクランプ治具
9 溶接アーク
10,10′,10A〜10F FET(電子部品)
11 端子
22 バスバー(回路導体)
30,30″ アースクランプ治具
34 長クランパ(クランパ)
35 短クランパ(クランパ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記複数の端子の各端子間の距離が離れている電子部品を用い、この電子部品の溶接する端子と回路導体のみを、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んでアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項2】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記電子部品の複数の端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んで当該各端子が同電位になる状態とした後で、前記溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項3】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記複数の端子の各端子間の距離が離れるように予め形成しておいた電子部品を用い、この電子部品の複数の端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んで当該各端子が同電位になる状態とした後で、前記溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項4】
請求項3記載の制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記距離が離れる各端子を各クランパでそれぞれクランプするアースクランプ治具を用い、このアースクランプ治具の各クランパで前記距離が離れた端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子が同電位になるように当該各端子をそれぞれ挟むことを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項1】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記複数の端子の各端子間の距離が離れている電子部品を用い、この電子部品の溶接する端子と回路導体のみを、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んでアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項2】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記電子部品の複数の端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んで当該各端子が同電位になる状態とした後で、前記溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項3】
複数の端子を有した電子部品の端子と回路導体とを超小型のTIG溶接機の一方の電極からの溶接アークにより溶融して接合するようにした制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記複数の端子の各端子間の距離が離れるように予め形成しておいた電子部品を用い、この電子部品の複数の端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子を、他方の電極を兼用したアースクランプ治具で挟んで当該各端子が同電位になる状態とした後で、前記溶接する端子と回路導体とをアースを取りながらアーク溶接することを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【請求項4】
請求項3記載の制御装置の端子と回路導体の溶接方法であって、
前記距離が離れる各端子を各クランパでそれぞれクランプするアースクランプ治具を用い、このアースクランプ治具の各クランパで前記距離が離れた端子のうちで少なくとも前記溶接アークの飛散の影響を受ける端子が同電位になるように当該各端子をそれぞれ挟むことを特徴とする制御装置の端子と回路導体の溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−62723(P2011−62723A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215144(P2009−215144)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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