説明

制御装置の製造方法

【課題】従来のジョイスティックよりも頑丈であり、性能が劣化せず、苛酷な環境内でも、高い信頼性が得られるようにする。
【解決手段】制御装置を形成する方法は、金型内に磁石およびシャフトを位置決めするステップと、磁石およびシャフトのまわりに、亜鉛をダイキャストするステップとを備えている。磁石は、C字形をした本体に沿って、スロットを形成する両端部を有する焼結されたC字形のものである。金型内に回転防止ピンを位置決めし、このピンの少なくとも一部を、スロット内に挿入する。磁石、シャフトおよび回転防止ピンのまわりに、亜鉛をダイキャストする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義では制御装置に関し、より詳細には、磁気ジョイスティック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にジョイスティックと称される手動制御装置は、種々の機械、例えば建設用重機で使用されている。この制御装置は、パラメータ、例えば位置、速度、および加速度を制御するようになっている。この制御装置は、一般には、一端にハンドルを有し、他端に1つ以上のセンサと相互作用する有形部品を有する長いシャフトを備えている。ハンドルの運動は、センサによって電気信号に変換され、この電気信号は、所望の応答運動を生じさせる装置に伝送されるようになっている。
【0003】
前記センサは、有形部品に連動する磁石の運動を検出する。磁石は、センサの面に接近していることが好ましく、一般に、設計上許容される空間を制限するシャフトに機械的に締結されている。更に、温度、湿度、または振動に起因して、ネジ、クランプ、接着部、または成形品が故障することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来のジョイスティックよりも頑丈であり、性能が低下せず、苛酷な環境内でも、高い信頼性が得られるようにするために、部品の数を最少限とした手動制御装置が望まれている。
【0005】
従って、本発明の主な目的は、磁石のまわりにダイキャストされている手動制御装置を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、C字形の磁石におけるスロット内に、少なくとも一部が位置する回転防止ピンを備えるジョイスティックを提供することにある。
【0007】
以下の説明を読めば、当業者であれば、上記およびそれ以外の目的が明らかとなると思う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による制御装置を形成する方法は、金型内に磁石およびシャフトを位置決めするステップと、磁石およびシャフトのまわりに亜鉛をダイキャストするステップとを備えている。
【0009】
磁石は、両端部の間が開口スロットとなっている焼結されたC字形のものである。金型内に回転防止ピンを位置決めし、このピンの少なくとも一部を、前記開口スロット内に挿入する。磁石、シャフト、および回転防止ピンのまわりに、亜鉛をダイキャストする。
【0010】
これとは異なり、磁石のまわりに亜鉛をダイキャストし、亜鉛の球形ボールだけでなく、この球形ボールから延びる亜鉛の制御シャフトを形成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、図1および図2を参照する。制御装置10は、オペレータの手による入力に基づき、傾斜角を、非接触状態で検出しうるものである。この制御装置10は、制御シャフト12を備え、この制御シャフト12の一端は、球形部材14に取り付けられている。球形部材14が、その中心のまわりに、自由に枢動できるように、制御装置10の支持部材16に支持されている。
【0012】
この制御シャフト12が傾斜する角度および方向は、支持部材16に取付けられた1つ以上の磁気センサ18によって検出される。この磁気センサは、球形部材16内に位置する磁石20と非接触状態で相互作用し、電気信号を発生するようになっている。
【0013】
制御シャフト12は、制御装置10の中心軸線26に沿って、グリップ端部22から締結端部24まで延びている。グリップ端部22は、オペレータが制御装置10へ手動入力をするのに使用される。締結端部24は、球形部材14の内部に嵌合して、固定されている。
【0014】
これとは異なり、制御シャフト12を球形部材14の外部に接続してもよい。この場合、締結端部24には、それと直交する回転防止ピン30の一部が嵌合されるボア28があけられる。
【0015】
球形部材14は、ネオジウム−鉄−ホウ素(NdFeB)材料を焼結して製造するのが好ましい磁石20を備えている。
【0016】
これとは異なり、磁石20を、サマリウムコバルト(SmCo、Sm1Co5、Sm2Co17)、または接合または焼結フェライト(セラミック)で製造してもよい。
【0017】
この磁石20は、頂端面34と底端面36とを備えるC字形の本体32を有している。頂端面34と底端面36は、磁石20のN極とS極を形成するように、互いにほぼ平行をなす平面とすることが好ましい。
【0018】
球形部材14は、その赤道を磁石20のN極とS極がまたがり、かつこれらの極が、制御シャフト12の軸線26と直交するように磁化されている。
【0019】
C字形の本体32には、制御装置10の軸線26に沿う中心孔38があけられており、この中心孔38には、制御シャフト12が嵌合されるようになっている。
【0020】
本体32は、対向する平面状端面40および42で終端する中断された側壁39を有し、これら平面状端面40と42は、それらの間にスロット44を形成するように、互いに離間している。
【0021】
このスロット44には、前記回転防止ピン30が嵌合しうるようになっている。回転防止ピン30は、スロット44を貫通した後、制御シャフト12の締結端部24におけるボア28に嵌合される。
【0022】
ボール46が、制御シャフト12の締結端部24の上だけでなく、回転防止ピン30および焼結された磁石20を覆うようになっている。磁石20は、焼結され、ボール46内に完全に封入されている。
【0023】
シャフト12の締結端部24の一部だけでなく、回転防止ピン30の一部も、ボール46の外面を越えて延びている。ボール46は、亜鉛からなっていることが好ましく、このボール46によって、制御装置10は、すべての方向に回転することができる。
【0024】
ボール46は、それが嵌合されている支持部材16に対する球形ベアリングとしても働く。
【0025】
支持部材16は、球形部材14を支持する球状ブッシング48を形成している。この球状ブッシング48には、球形部材14がスライド可能に嵌合され、この球状ブッシング48により、球形部材14は、その中心を中心として、自由に回動することができるようになっている。
【0026】
球状ブッシング48の表面、またはその内部には、磁気センサ18が取り付けられている。この磁気センサ18は、ホール効果センサまたはその他の適当なタイプの磁気センサであることが好ましい。磁気センサ18は、1つないし4つ設けられている。
【0027】
2つ以上の磁気センサ18を設ける場合、磁気センサ18は、互いに90度で位置決めされ、運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線に対して、直角に位置決めされるだけでなく、運動の左軸線および右軸線に対しても、直角に位置決めされる。
【0028】
制御装置10を組み立てるには、磁石20の中心孔38内に、制御シャフト12の締結端部24を挿入し、次に、回転防止ピン30を、磁石20の本体32のスロット44へ通し、これを越えて延びるように、制御シャフト12のボア28内に挿入する。
【0029】
こうして組み立てられた部品のまわりに、金型(図示せず)を配置し、金型に、亜鉛または別の材料を鋳込み、組み立てられた部品のまわりにボール46を形成する。このようにして、支持部材16内にある磁気センサ18と相互作用するよう、制御シャフト12、磁石20、および回転防止ピン30を、ボール46に保持させる。
【0030】
これとは異なり、金型に亜鉛を鋳込む際に、ボール46に沿って、制御シャフト12および回転防止ピン30が形成されるように、金型を製造してもよい。
【0031】
次に作動について説明する。オペレータが制御シャフト12を、手で中立位置(例えば直立方向)から移動させる。制御シャフト12の移動中、磁気センサ18は、磁石20のN極およびS極のオフセット運動を検出し、運動に比例した電流を出力する。
【0032】
運動軸線、例えば運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線および右軸線に対して直角の運動を検出するのに、単一のホール効果磁気センサ18が使用される。精密さが要求される場合、2つの磁気センサ18を使って、運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線および右軸線に対して直角な運動を検出する。
【0033】
多軸的な用途では、2つのホール効果磁気センサ18からの出力を組み合わせ、運動の軸線、例えば運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線、および右軸線に対して直角でない動きを測定する。
【0034】
精密さが必要な場合、多軸的な用途において、4つの磁気センサを使用し、運動の軸線、例えば運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線、または右軸線に対して直角でない動きを測定する。
【0035】
次に、図3および図4を参照する。これらの図には、オペレータの手による入力に基づき、傾斜角を非接触状態で検出できる別の制御装置10が示されている。制御装置10では、制御ボタン50が、軸線52を中心として自由に枢動できるように、支持部材16によって支持されている。
【0036】
制御ボタン50が傾斜する角度および方向は、1つ以上の磁気センサ18によって検出される。これらの磁気センサは、支持部材16に固定されており、磁気センサは、制御ボタン50内に位置する磁石20と非接触状態で相互作用し、電気信号を発生する。
【0037】
制御ボタン50は、上端部に押圧面58を有するT字形本体56と、押圧面58まで上方へほぼ垂直に延びる連設アーム60とを有する。T字形本体56の連設アーム60内に磁石20が位置しており、この焼結された磁石20は、T字形本体56内に完全に封入されている。磁石20は、ネオジウム−鉄−ホウ素(NdFeB)材料から形成された焼結磁石であることが好ましい。
【0038】
T字形本体56の1つ以上の側面から、ピボットピン62が延びている。このピボットピン62は、制御ボタン50に対する回転軸線52を構成している。
【0039】
支持部材16は、制御ボタン50が内部に嵌合される中心孔64を有する。支持部材16の側壁の内面に形成されたスロット66には、ピボットピン62が嵌合されている。スロット66は、中心孔64内に制御ボタン50を固定している。このスロット66によって、制御ボタン50は、支持部材16に対してピボットピン62を中心として回転できるようになっている。
【0040】
制御ボタン50の磁石20の運動を検出するために、磁石20と隣接する支持部材16内に、1つ以上の磁気センサ18が取り付けられている。
【0041】
組み立てを行うには、金型(図示せず)内に、磁石20およびピボットピン62を配置し、T字形本体56を形成するために、亜鉛またはその他の材料を、金型に流し込み、この材料によって、磁石20およびピボットピン62を、T字形本体56に接続する。
【0042】
これとは異なり、磁石20のまわりに、ピボットスロット66およびT字形本体56を一体的に成形するように、金型を形成してもよい。
【0043】
作動の際、オペレータが、底部押圧面58に、手により力を加えると、T字形本体56は、中立位置から(例えば直線状に上方向に)移動させられる。T字形本体56の運動中に、磁気センサ18は、磁石20のN極およびS極のオフセット運動を検出し、運動に比例した電流を出力する。
【0044】
運動の軸線、例えば運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線または右軸線に対して、直角の運動を検出するのに、単一の磁気センサ18が使用される。
【0045】
詳細が求められる場合には、2つの磁気センサ18を使って、運動の軸線、例えば運動の前進方向の軸線、および逆進方向の軸線、または運動の左軸線、および右軸線と直角な運動を検出する。
【0046】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本装置に関して、他の種々の変形を行うことができることが理解できると思う。かかるすべての変形例および変更例は、特許請求の範囲に含まれるものであり、特許請求の範囲によってカバーされているものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の制御装置の縦断正面図である。
【図2】同じく制御装置の分解斜視図である。
【図3】同じく制御装置の縦断正面図である。
【図4】制御ボタンの斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10 制御装置
12 制御シャフト
14 球形部材
16 支持部材
18 磁気センサ
20 磁石
22 グリップ端部
24 締結端部
26 軸線
28 ボア
30 回転防止ピン
32 本体
34 頂端面
36 底端面
38 中心孔
39 側壁
40、42 平面状端面
44 スロット
46 ボール
48 球状ブッシング
50 制御ボタン
52 回転軸線
56 T字形本体
58 押圧面
60 連設アーム
62 ピボットピン
64 中心孔
66 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を製造する方法であって、
C字形をした磁石の中心孔にシャフトを挿入し、
前記シャフトのボアに回転防止ピンを挿入し、前記磁石のスロットに前記回転防止ピンが延びるようにし、
球形部材をダイキャスティングして、前記シャフト、前記磁石、および前記ピンを封止するようにし、
前記シャフトは、前記制御装置へ手動で入力するのに使用され、前記制御シャフトが傾斜する方向と角度は、磁気センサによって検出され、前記磁気センサは、前記球形部材内に位置する前記C字形をした磁石と相互作用する、方法。
【請求項2】
制御装置を製造する方法であって、
C字形をした磁石を設け、
部材をダイキャスティングし、部材は、シャフトと回転防止ピンを形成し、かつ前記磁石を完全に封止し、
前記シャフトは、前記制御装置へ手動で入力するのに使用され、前記シャフトが傾斜する方向と角度は、磁気センサによって検出され、前記磁気センサは、部材内に位置する前記C字形をした磁石と相互作用する、方法。
【請求項3】
制御装置(10)を製造する方法であって、前記制御装置(10)は、主に、制御シャフト(12)と、C字形をした磁石(20)と、球形部材(14)と、磁気センサ(18)を有する支持部材(16)を備える方法において、
C字形をした磁石(20)の中心孔に制御シャフト(12)を挿入し、
前記制御シャフト(12)のボア(28)に回転防止ピン(30)を挿入し、前記磁石のスロットに前記回転防止ピンが延びるようにし、
球形部材(14)をダイキャスティングして、前記球形部材(14)が、前記制御シャフトと、前記C字形をした磁石と、前記回転防止ピン(30)を封止し、かつ磁気センサ(18)を有する支持部材(16)と嵌合するようにし、
前記制御シャフト(12)は、前記制御装置(10)へ手動で入力するのに使用され、前記制御シャフト(12)が傾斜する方向と角度は、支持部材(16)に位置する磁気センサ(18)によって検出され、前記磁気センサは、前記球形部材(14)内に位置する前記C字形をした磁石(20)と相互作用する、方法。
【請求項4】
制御装置(10)を製造する方法であって、前記制御装置(10)は、主に、シャフト(12)と、C字形をした磁石(20)と、部材(14)と、磁気センサ(18)を有する支持部材(16)を備える方法において、
C字形をした磁石(20)を設け、
部材(14)をダイキャスティングし、前記部材(14)は、シャフト(12)と回転防止ピン(30)を形成し、前記磁石(20)を完全に封止し、
前記シャフト(12)は、前記制御装置(10)へ手動で入力するのに使用され、前記シャフト(12)が傾斜する方向と角度は、磁気センサ(18)によって検出され、前記磁気センサ(18)は、部材(14)内に位置する前記C字形をした磁石(20)と相互作用する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103145(P2011−103145A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31233(P2011−31233)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【分割の表示】特願2006−221966(P2006−221966)の分割
【原出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】