説明

制御/調整放出型メチルフェニデート経口製剤

【課題】患者の服薬遵守の改善につながるメチルフェニデートまたは同様の作用をもつ薬物の新しい経口投与製剤の提供。
【解決手段】作用の初期発現が迅速であり、かつ作用持続時間が延長された調整/制御放出型メチルフェニデート経口製剤であり、少なくとも1種のPH依存性コーテイングを有する基材を含む経口投与製剤。即時放出型メチルフェニデート製剤の標準品よりもピーク濃度が低く、作用が投与間隔の最後で急速に低下するため、夕食時の患者の食欲と、その後の患者の睡眠に影響を及ぼすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1998年12月17日に出願された米国特許仮出願第60/112,617号に基づいて優先権主張し、当該出願の開示内容を本明細書内に参考として組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
徐放性剤形は、(患者の服薬遵守の改善および有害な薬物反応の発生率の低減の両方による)改良された治療法の研究において中心的なものである。即時放出性剤形の投与後に通常得られるものよりも長い投与後の薬理学的作用時間を提供することは、全ての徐放性製剤が意図するものである。徐放性組成物を用いて、消化管のある部分に到達するまで薬物の吸収を遅らせ、従来の即時放出性剤形を投与した時のものよりも長い時間、血流中において前記薬物を所望の濃度に保つことができる。このようなより長い反応時間は、対応する作用時間の短い即時放出性調製物を用いては得られない多くの治療上の利益を提供する。したがって、治療は、患者の睡眠を妨げることなく継続することができる。これは、例えば中程度から重度の痛みを伴う患者(例えば術後の患者や癌患者等)、または起床時に偏頭痛を起こす患者を治療する場合、ならびに睡眠が不可欠な衰弱した患者などを治療する場合、特に重要である。作用時間の長い薬物調製物のさらなる一般的な利点は、患者の怠慢や健忘により投与をし損なうのを回避することによる患者の服薬遵守の改善である。
【0003】
従来の即効型薬物療法では、周到かつ頻繁に投与することで薬物の有効な定常状態血中レベルを維持しない限りは、化合物の急速な吸収と全身からの排泄、および代謝による不活化のために、活性薬物の血中レベルに山と谷が発生し、その結果、患者の維持療法において特殊な問題が生じてしまう。このことから、制御放出剤形によって、理想的には、濃度の山/谷比を軽減しながら投与間隔全体にわたって維持される薬物の血中治療濃度を達成することが、多くの当業者の目標であると考えられる。開発過程の中心をなすのは、有効成分のin vivoでの放出とこれに続く胃腸管からの吸収に影響を及ぼす数多くの変数である。
【0004】
薬学の分野において、ヒトおよび動物に経口投与した後に組成物中に含まれる薬理学的に活性な物質の徐放性を提供する該組成物を調製することは公知である。当分野で公知の徐放性製剤としては、特に、調製物のコーティングの選択的な崩壊を介して、または特別なマトリックスとの混ぜ合わせによって、活性薬物の放出に影響を及ぼすことにより、該薬物がゆっくりと放出される、コーティングしたペレット、コーティングした錠剤、およびイオン交換樹脂が挙げられる。幾つかの徐放性製剤は、投与後の所定時間の間、単一用量の活性化合物の関連する連続的な放出を提供する。
【0005】
制御放出および/または徐放性組成物は、当該技術分野において確実に進歩しているものの、このような組成物を、特に、注意欠陥過活動性障害(ADHD)や糖尿病等の症状に適用し得る製剤用に改良することが求められている。
【0006】
注意欠陥障害は、子供における最も一般的な精神障害(Campbellら、1992)であり、その罹患率は4%〜9%であると報告されている(Amanら、1993)。注意欠陥障害(ADD)は、不注意および衝動性によって特徴付けられ、多動を伴う場合もある(ADHD)(Shaywitzら、1984)。他の特徴としては、攻撃性、盗み、虚言、無断欠席、放火、家出、かんしゃく、認識および学習問題、ならびに社会的能力の乏しさが挙げられる(Campbellら、1992)。女児に比べ男児では罹患率が4〜5倍高い(Campbellら、1992)。
【0007】
アンフェタミンなどの興奮薬は、活動調節および注意力調節の障害を持つ子供の治療において最も効果的な物質であることが分かっており、罹患した子供の70〜80%において有意な改善をもたらす(Shaywitzら, 1984)。興奮薬の良い効果は、行動能力、社会能力、知覚能力、運動活動、衝動制御、注意力調節および認識能力を含む様々な領域において実証されている(Barkley 1977, Kavale 1983, Offenbacherら, 1983, Rosenthalら, 1978)。
【0008】
メチルフェニデート[dl-トレオ-メチル-2-フェニル-2-(2-ピペリジル)アセテート]は、多動および注意欠陥障害の治療に最も良く使用される精神興奮薬である。この薬は、他の精神興奮薬に比べて、良い効果を発現する率が高く、悪い影響を発現する率が低いと思われる。注意力および行動的症状の改善におけるメチルフェニデート(「MPH」)の効力は、多くの研究によって確認されている。
【0009】
即時放出性メチルフェニデート調製物は、半減期が短いため、子供の授業時間を通して、適切な治療を確実に行うために、短い間隔で頻繁に投与する必要がある。即時放出性メチルフェニデート調製物の急速な効力の発揮(onset)および低下(offset)は、注意欠陥障害を持つ薬物治療中の子供が、その日のうちの比較的短い時間しか最大効果を得られないことを意味する。その短い半減期のため、MPHは通常1日2回投与され、通常は、朝食後に1回および授業中に1回であり、これは一部の子供達および一部の学校関係者等が明らかに避ける事柄であって、その結果、処方投薬レジメの服薬遵守が不充分となる(Brownら, 1985; Firestone 1982)。服薬遵守は、真昼または午後中頃の投薬を必要とする子供達にとって大きな問題である。というのは、多くの学校は、授業中に子供たちが薬を服用することを禁じており、またある学校はしばしば全ての薬は看護婦によって投与されるべきであると主張しているからである。薬の服用における不充分な服薬遵守は、一部には、多動性の子供の行動の改善に及ぼす薬の影響についての多くの研究において報告された様々で且つ矛盾する結果を説明し得るものである。即時放出性メチルフェニデートのこれらの限界は、効果的な作用期間が長い製品へと関心を向けさせた。即時放出性メチルフェニデート調製物のこれらの限界は、効果的な作用期間が長い製品へと関心を向けさせた。
【0010】
メチルフェニデートの徐放性形態は、市販されている(Ritalin(登録商標)SR)。多くの臨床試験の結果、注意欠陥多動性障害の治療に携る様々なオピニオンリーダーは、Ciba-Geigyにより製造されたRitalin(登録商標)SR(徐放性メチルフェニデート)について以下のコメントを作成した:(i)Ritalin(登録商標)SRは、早朝における行動管理を可能とする程十分早くは効果を発揮しない;(ii)Ritalin(登録商標)SRは、即時放出性メチルフェニデートの昼食時の服用によって生成されるような有益な後半の(late)効果を持たないので、SR製剤を用いることの目的が果たせない;(iii)Ritalin(登録商標)SRの効果は、1日を通して一貫していないかまたは不安定である。
【0011】
当分野では、当分野の現状の欠点を克服するために、急速に効果を発揮して長時間作用した後に効力が急速に低下する薬物製剤を開発する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の目的
患者の服薬遵守の改善につながるメチルフェニデートまたは同様の作用を持つ薬物の新しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
注意欠陥多動性障害(ADHD)等の症状に有効な現在利用可能な調製物に比べて改良された新しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0014】
子供の授業時間中ずっと適切な治療を確実に行う、メチルフェニデートまたは同様の作用を持つ薬物の新しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
一回(即ち朝)の投与を行うだけで、注意欠陥障害を持つ子供を日中ずっと最大限に治療することができるようにする新しい経口投与製剤を提供することが本発明の目的である。
【0016】
急速に効果を発揮して剤形中に組み込まれた活性薬物が長時間放出された後に急激に効力が低下する、新しい制御/調節放出性経口投与製剤を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0017】
全てのタイプの薬学的に活性な成分に対して有用であり、および全てのこのような成分の放出時間を延長することができる、新しい制御/調節放出性経口投与製剤を提供することが、本発明の更に別の目的である。
【0018】
急速に効果を発揮し且つ1日中ずっと血漿濃度を持続した後に薬物の血漿濃度が最小効果濃度未満まで急速に低下する経口制御放出性製剤を提供することが、本発明の更に別の目的である。
【0019】
全てのタイプの薬学的に活性な成分に有用であり、且つ作用時間を所望の長さに延長することができる「複数層放出(multi-layer release)」(MLR)技術を提供することが、本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概要
上記欠点および他の目的に目を向けて、本発明は、一部には、急速な効果の発揮および1日中ずっと持続される血漿濃度の両方を組合せることを意図する制御放出性製品に関する。重要なことに、本発明の製剤は、急速な効力の発揮、延長された作用時間およびその後の効果の急速な低下、即ち「方形波」状プロフィールを提供する。
【0021】
上記および他の目的に従って、本発明は、有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、少なくとも1種の放出調整物質とを含んでなる経口剤形に一部関する。該放出調整物質は、製剤の最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約0.5〜約4時間とし、ピーク血漿濃度を経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約3ng/ml〜約6.5ng/mlとするものであり、該ピーク血漿濃度は、経口投与してから約9時間後に製剤から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍であり、製剤に含まれるメチルフェニデートによる作用は、経口投与してから約8〜約12時間後に有効血漿濃度以下となる。ある好適な実施形態では、経口剤形の最大血漿濃度に至るまでの時間が経口投与後約0.5〜約2時間である。さらに好適なある実施形態では、ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に経口剤形から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍である。さらに好適なある実施形態では、経口剤形に含まれるメチルフェニデートによる作用は、経口投与してから約8〜約10時間後に有効血漿濃度以下となる。
【0022】
ある更なる好適な実施形態において該製剤は、経口投与後約0.5〜約4時間で最大血漿濃度を示し、投与後少なくとも約6時間にわたって効果的な血中レベルを提供する。
【0023】
ある更なる好適な実施形態において該製剤は、血液血漿曲線において約2時間〜約6時間続く「プラトー」を示す。他の実施形態は、約6時間〜約12時間続く「プラトー」を示す。「プラトー」は、測定区間の最終点での血漿レベルと測定区間の開始時点での血漿濃度との差が20%を超えない、好ましくは10%を超えない、安定した血漿濃度によって特徴付けられる。
【0024】
ある更なる好適な実施形態において、該製剤は、剤形からの活性剤の2峰性放出(bimodal release)を示す。活性剤の2峰性放出は、剤形から活性剤が2種以上の異なった放出速度で放出されていることにより特徴付けられる。幾つかの実施形態において、放出速度は非放出期間または実質的な非放出期間によって隔てられうる、これが常に必要であるわけではない。
【0025】
ある更なる好適な実施形態において、該製剤は、活性剤の2相性吸収を示す。活性剤の2相性吸収は、活性剤が2以上の異なった吸収速度で天然障壁(例えば胃腸管の粘膜内層等)を通して吸収されることによって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、この吸収速度は、非吸収期間または実質的な非吸収期間によって隔てられ得るが、これは常に必要であるわけではない。製剤は、活性剤の2相性吸収および2峰性放出の両方を示すことができ、この場合、2相性吸収は、2峰性放出速度の関数である。しかし、2相性吸収が常に放出速度に依存するというわけではなく、2峰性放出を示さない製剤においても起こり得る。
【0026】
好適な実施形態では、製剤は2峰性放出および/または二相吸収を示し、血漿曲線において約2時間〜約6時間持続する「プラトー」を示す。他の実施形態では、約6時間〜約12時間持続する「プラトー」を示す2峰性放出および/または二相吸収が見られる。他の実施形態では、活性薬剤の有効血漿レベルが剤形の投与後約16〜約18時間持続する。
【0027】
本発明はさらに、有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、少なくとも1種の放出調整物質とを含んでなる経口剤形に関する。該放出調整物質は、製剤をin vitroで溶解させた場合に、薬物を0.25時間後に約0〜約45%、約1時間後に約10〜約50%、約4時間後に約30〜約80%、8時間後に約65%以上、約12時間後に約80%以上放出させるものであり、該経口剤形はさらに、ヒト患者へ経口投与した場合に、最大血漿濃度に至るまでの時間が経口投与後約0.5〜約2時間であり、経口投与後約8〜約10時間持続する作用持続時間を示し、該薬物血漿濃度は、経口投与後約8〜約10時間で最小有効血漿濃度未満のレベルまで急速に低下する。ある好適な実施形態では、経口剤形は、ヒト患者へ経口投与した場合に、経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約4ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度を示す。ある好適な実施形態では、経口剤形は、経口投与した場合に、経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約5ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度を示す。さらに好適なある実施形態では、経口剤形は、経口投与約9時間後に製剤から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍のピーク血漿濃度を示し、より好ましくは、経口投与約9時間後に製剤から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍のピーク血漿濃度を示す。
【0028】
薬物であるメチルフェニデートとADHDについては、本明細書に記載の新規製剤の利点として以下の事項を含む:a)学校で昼食時に服用する必要がなくなる、b)即時放出型メチルフェニデート製剤と同等の薬効を発現することができる、c)作用の持続時間が授業時間よりも長い(即ち、有効血中レベルが10〜12時間持続する)。
【0029】
本発明のある実施形態では、制御/調整放出製剤は、多層放出(「MLR」)技術に基づくものであり、薬剤製品はビーズを含む経口カプセルの形状であってよい。カプセルに封入されたビーズの場合、各ビーズには異なる特性を有する一連の層、即ち、即時放出外層、放出遅延層(腸溶性コート)、即時放出層を覆う制御放出層が含まれる。MLR製剤は、経口投与した際に、即時放出型薬物の一部を含む製剤の外層が急速に溶解して吸収され、これにより薬物が治療血漿レベルまで急速に上昇するように設計されている。この後、吸収の起こらない期間が続き(腸溶性コーティングのため)、その後、薬物が製剤から制御放出されて血漿レベルが維持される。即時放出コアから薬物が吸収された後は、血漿レベルが急速に低下する。MLR製剤から薬物を放出させることにより、薬物の血漿レベルは、時間/濃度曲線上にプロットすると「方形波」の形状を示す。
【0030】
ある好適な実施形態において、アクリル樹脂を用いて、所定の若しくは指定された期間にわたって治療的活性成分の制御遅延放出を提供する。このため、アクリル樹脂は、「基礎組成物」の有意な部分を含む。このようなアクリル樹脂から調製される基礎組成物は、ヒトまたは動物への投与(一般的には経口投与)後5時間〜24時間もの時間にわたる治療的活性成分の徐放性を提供する。
【0031】
本発明の他の実施形態において、本発明の製剤は、
(i)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と腸溶性コーティングを施した即時放出性粒子(例えばビーズなど)との混合物;(ii)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と腸溶性コーティングを施した制御放出性粒子(例えばビーズなど)との混合物;または(iii)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と制御放出性粒子(例えばビーズなど)との混合物を含む。これらの各ケースにおいては、異なる放出特性を有する粒子の混合物が一緒にブレンドされ、硬質ゼラチンカプセルの中に充填される。
【0032】
ある好適な実施形態では、本発明の制御/調整放出型メチルフェニデート製剤は、複数の単一ビーズからなり、各ビーズには、即時放出成分と、吸収過程において遅れを生じさせるための腸溶性制御放出成分とが含まれる。薬剤製品は、メチルフェニデートビーズを含む経口カプセルである。各ビーズには、異なる放出特性を有する一連の層、即ち、即時放出外層、遅延放出層、制御放出層、および即時放出コアが含まれる。最終製品は、即時放出成分と制御放出成分の双方を有する多層放出(MLR)ビーズを含むカプセルである。このカプセルは、胃内容排出後まで溶解を遅らせるために腸溶性コーティングされた制御放出ビーズからなる。腸溶性制御放出ビーズは、吸収の初期速度をリタリン(Ritalin)即時放出型錠剤と同等またはそれ以上にするための即時放出性トップコートを有する。即時放出成分はビーズ当たりの総用量の40%に相当し、制御放出成分は60%に相当する。この製剤は、経口投与後に治療血漿レベルまで急速な上昇を示し(外層の急速な溶解と吸収のため)、その後、吸収の低下した期間が続き、次いで即時放出コアからの制御放出が生じて治療血漿レベルが維持されるように設計されている。即時放出コアの吸収が終わると、メチルフェニデートの排泄動態に従って血漿レベルは急速に低下すると考えられる。本製剤の生体利用性の研究結果からは、本明細書中に示す薬学的な理論的解釈と一致する二相放出プロフィールが明らかである。
【0033】
本発明の他の実施形態において、該製剤のビーズサイズは、胃排出とビーズのサイズとの間の相関関係に基づいて、所望の薬物動力学プロフィールを得るために、調節することができる。ビーズのサイズが小さいほど、大きなサイズのビーズに比べて胃排出が速くなる。
【0034】
本発明の他の目的および利点は、本明細書および添付の特許請求の範囲をさらに読み深めていくに従い、明らかとなろう。
【0035】
本発明の意図において、「pH依存性」という用語は、環境pH(例えばin-vitro溶出媒体における変化によるもの、または剤形の胃腸管通過によるものなど)によって変化する特性(例えば溶出)を有するものとして定義される。
【0036】
本発明の目的において、「pH非依存性」という用語は、pHによって実質的に影響を受けない特性(例えば溶出)を有するものと定義され、例えば、つまり米国薬局方XXIIのUSP Paddle法(1990)を用いて100rpmにて900mlの緩衝水溶液中においてin-vitroで測定したときの、あるpHで放出されるメチルフェニデートの量とそれ以外のpHで放出される量との差がどの時間においても10%未満であるというようなことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
詳細な説明
メチルフェニデート(2-ピペリジン酢酸,α-フェニル-,メチルエステル)は、アンフェタミンに構造上関連性のあるピペリジン誘導体であり、塩酸塩の状態で市販されている。メチルフェニデートは、多動および注意欠陥障害の治療に最も頻繁に使用される精神刺激薬である。メチルフェニデートは、他の精神刺激薬よりも陽性作用が高く、かつ有害作用が低い傾向がある。本発明の制御/調整放出型メチルフェニデート製剤は、神経終末トランスポーターにおける取込み阻止の推定作用機序によって、細胞外ドーパミンおよびノルエピネフリンを増加させることで作用すると考えられる。
【0038】
メチルフェニデートの薬理特性は、本質的にはアンフェタミンと同一である。しかしながら、アンフェタミンとは対照的に、メチルフェニデートは、運動活動よりも精神活動に対してより顕著な効果を示すマイルドなCNS刺激薬である。メチルフェニデートにはエリトロ異性体およびトレオ異性体が存在する。運動刺激作用は立体構造に特異的なものであるが、モノアミンオキシダーゼ阻害はそうではない。メチルフェニデートの運動刺激作用の機序は、モノアミンオキシダーゼの阻害以外の機序であると考えられている。d-トレオ体メチルフェニデートによるカテコールアミン取込みのシナプス抑制は、ラセミ薬物の挙動および昇圧作用に本来関与している可能性が研究から示唆されている。メチルフェニデートは、アンフェタミンに十分匹敵する用量依存性の挙動プロフィールを促進する。アンフェタミンは、ドーパミンに対する作用だけでなく、細胞外ノルエピネフリンとセロトニンを増加させる。最近の研究から、メチルフェニデートは、一時的に投与すると細胞外ドーパミンとノルエピネフリンが増加することが明らかになっており、神経終末トランスポーターの取込み阻害薬であると推定されているメチルフェニデートの作用機序と一致する。
【0039】
メチルフェニデートを投与した後のピーク血中レベルは1〜3時間目に確認されている(Farajら, 1974; Milbergら, 1975)。該薬物の半減期は、成人および小児で2〜4時間である(Farajら、1974; Hungundら、1979; Soldinら, 1979)。Hungundら(1979)には、4人の多動症小児におけるメチルフェニデートの薬物動態ついて報告されている。半減期の平均は2.5時間であった。このパラメータには殆どばらつきはなかったが、全身クリアランスは3倍の変動があった。このことから、血漿メチルフェニデートレベルは、患者間でかなりばらつくことが示唆された。
【0040】
メチルフェニデートに対する代謝の主な経路は、リタリン酸(ritalinic acid)への脱エステル化であり、リタリン酸は尿中に排泄される総メチルフェニデートの75%〜91%を占めている。他の代謝産物は、ラクタムへのp-ヒドロキシル化または酸化によって生じる。
【0041】
本発明のメチルフェニデート製剤は6歳以上の小児へ投与可能であり、好ましくは、その作用持続時間が約8〜約12時間、好ましくは約8〜約10時間である。本発明のメチルフェニデート製剤は朝食時に服用すべきであり、朝食時および昼食時の2回に分けて服用されるメチルフェニデート即時放出型製剤の代わりになるよう設計されている。即時放出型メチルフェニデートを日に3回以上の高頻度で投与する必要のある患者に、本発明のメチルフェニデート製剤を服用する場合には、即時放出型メチルフェニデートを夕食時にさらに処方してもよい。メチルフェニデートMLRカプセルの内容物を軟らかい食品にふりかけて服用させてもよい。
【0042】
本発明の制御/調節放出性製剤は、顆粒、球状物、ビーズ、ペレット、イオン交換樹脂ビーズ、およびその他の多粒子系などの任意の多粒子系と共に使用して、治療的活性剤の所望の徐放性を得ることができる。本発明に従って調製されたビーズ、顆粒、球状物またはペレットなどは、カプセルまたは他の適切な単位剤形に入れて提供することができる。時間をかけて所望の用量の薬物を提供するのに有効な量の多粒子を、カプセルに入れたり、パケットに入れたり、食事に振りかけたり、錠剤などのその他の任意の適切な経口固体剤形に取り入れたりしてもよい。一方、本発明は、マトリックス錠剤の形態をとってもよい。このような任意の製剤全てについては、薬物の最初の即時放出により急速に効果を発揮し、この効果の発揮が即時放出性製剤に類似するものであり、さらに製剤により血漿中に治療上有効なレベルの薬物を所望の時間にわたって維持し、その後、典型的な徐放性製剤に比べて比較的速い血中血漿レベルの減衰をもたらす徐放性成分が得られるように調製されることが望ましい。in vivo時間/濃度プロットとして見た場合、本発明の製剤から得られる薬物の血漿レベルは「方形波」を呈している。即時放出性成分は本発明の製剤に含まれるメチルフェニデートの合計用量の約30%〜約40%を占めることが好ましく、制御放出性成分は該合計用量の約60%〜約70%を占めることが好ましい。本発明のMLR実施形態を含む特定の好適な実施形態では、即時放出性成分は、製剤に含まれるメチルフェニデートの合計用量の約40%を占め、制御放出性成分は、該合計用量の約60%を占める。
【0043】
メチルフェニデートの場合、作用の開始は、経口剤形を投与した約0.5〜約4時間で生じることが望ましく、約0.5〜約2時間後に生じることが好ましく、さらに、用量の経口投与後約8〜約12時間、より好ましくは約8〜約10時間で該剤形がメチルフェニデートの有効な血漿レベルを示さなくなることが望ましい。このようにして、メチルフェニデートの用量を、朝、学校が始まる前に子供に投与して、学校の始まりと共に所望の効果をもたらし、学校が終わるまで、好ましくは夕食の前までは薬物の薬理学的作用が衰えずに、食欲抑制剤として作用する副作用を生じないようにできる。
【0044】
本発明の製剤は、経口投与後に治療血漿レベルまで急速な上昇を示し(外層の急速な溶解と吸収のため)、その後、吸収の低下した期間が続き、次いで即時放出コアからの制御放出が生じて治療血漿レベルが維持されるように設計されている。即時放出コアの吸収が終わると、メチルフェニデートの排泄動態に従って血漿レベルは急速に低下すると考えられる。
【0045】
胃腸液中に活性物質が単に存在するだけでは、生物学的利用能を保証しないことが一般に理解されている。生物学的利用能は、より分かりやすく言い換えると、薬物物質が体循環に吸収されて標的組織部位に効く程度または量である。吸収されるためには、活性薬物物質は溶液に含まれていなければならない。用量ユニットに含まれる所与の割合の活性薬物物質が、適切な生理学的液の溶液に入るのに必要とされる時間は、溶出時間として知られている。用量ユニットからの活性物質の溶出時間は、特定の時間にわたって用量ユニットから放出される活性薬物物質の量の割合として、標準的条件下で行われる検査法により決定される。胃腸管の生理学的液が、溶出時間を決定するための媒介である。従来技術の医薬組成物の溶出時間、および検査方法は、世界中の公的解説に記載されている。
【0046】
薬物物質がその担体から溶出するのに影響を及ぼす多数の様々な因子があるが、特定の組成物からの薬理学上活性な物質について決定された溶出時間は、比較的一定で再現可能である。溶出時間に影響を及ぼす様々な因子としては、溶出溶媒媒体に提示される薬物物質の表面積、溶液のpH、特定の溶媒媒体中での物質の溶解度、および溶媒媒体中での溶出物質の飽和濃度の推進力がある。従って、組織部位にわたる吸収により溶出媒体から成分が移動することにより、活性薬物物質の溶出濃度はこの安定状態において動的に変化する。生理学的条件下では、溶出物質の飽和レベルは、用量形態レザーブから補充されることによって溶媒媒体中の溶出濃度を比較的均一および一定に維持して、安定状態の吸収を得る。
【0047】
胃腸管の組織吸収部位にわたる輸送は、膜の両側に対するドナン浸透平衡力により影響を受ける。なぜなら、推進力の方向は、膜の両側における活性物質の濃度(すなわち、胃腸液に溶出される量と、血液中に存在する量と)間の差異であるからである。血中レベルは、希釈、循環変化(circulatory changes)、組織貯留(tissue storage)、代謝交換および全身性分泌により常に変化するため、活性物質の流れは、胃腸間から血流へと向けられる。
【0048】
薬物物質の溶出及び吸収の両方に影響を及ぼす様々な因子に関わらず、多くの場合、用量形態について決定されたin vitro溶出時間と、in vivo生物学的利用能との間に重要な相関関係が成立する。この相関関係は、当該分野においてあまりに確固として成立しているので、溶出時間は、特定の用量形態に含まれる多くのクラスの活性成分について生物学的利用能の可能性を一般的に示すものとなった。この関係を考慮すると、組成物について決定した溶出時間は、制御放出性製剤をin vivoで検査するべきかを評価する場合の考慮のための重要な根本的特徴の1つである。
【0049】
上述したことを念頭にいれて、本発明による製剤について、様々な時点での薬物のin vitro溶出を以下に示す:

【0050】
本発明のある好ましい実施形態における、本発明による製剤について、様々な時点での薬物のin vitro溶出を以下に示す:

【0051】
徐放性コーティング
ある好ましい実施形態においては、薬物は物質中または物質上に組み入れられ、その上に徐放性コーティングを施す。例えば、以下のようにして、薬物を物質中または物質上に含ませることができる。すなわち、(i)(例えば、微晶性セルロースなどの製薬上許容される球状化剤(spheronizing agent)と共に)マトリクス球状物に組み入れる、(ii)不活性の製薬上許容されるビーズ(例えば、ノンパレイユビーズ)上にコーティングする、(iii)通常の放出性錠剤コアに組み入れる、または(iv)徐放性担体物質を含むマトリクスを含んでなる錠剤コアに組み入れる。その後、徐放性コーティングを、上記(i)〜(iv)のような基質に施す。本発明の用量形態は、放出の調節または製剤の保護に好適な1つ以上の物質により随意にコーティングできる。一実施形態では、コーティングは、(例えば、胃腸液に曝された場合に)pH依存性放出またはpH非依存性放出のいずれかを可能にするために施される。pH依存性コーティングは、胃腸(GI)管(例えば、胃または小腸)の所望の領域での薬物の放出をもたらす。pH非依存性コーティングが望ましい場合、環境液(例えば、GI管)のpH変化とは無関係に最適な放出を得られるようにコーティングを設計する。また、GI管の1つの所望される領域(例えば、胃)において用量の一部を放出し、残りの用量をGI管のその他の領域(例えば、小腸)において放出する組成物を調製することも可能である。
【0052】
pH依存性コーティングを利用して製剤を得る本発明による製剤には、また繰返し作用効果を授けてもよい。すなわち、非保護薬物を腸溶性被覆物上にコーティングして胃で放出させ、残りの腸溶性コーティングにより保護されたものをさらに下の胃腸管で放出させるようにしてもよい。本発明に従って使用することができるpH依存性のコーティングには、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyproplmethylcellulose phthalate)、メタクリル酸エステルコポリマー、ゼインなどが含まれる。
【0053】
ある好ましい実施形態においては、薬物を含む基質(例えば、錠剤コアビーズ、マトリクス粒子)を、(i)アルキルセルロース、(ii)アクリルポリマー、または(iii)それらの混合物から選択される疎水性物質でコーティングする。コーティングは、有機または水性の溶液または分散溶液の形態で適用できる。コーティングは、基質の約2〜約25%の重量を得るように適用し、所望の徐放性プロフィールを得ることができる。このような調製は、例えば、本発明の譲受人に譲渡され、参照より本明細書中に組み込まれる米国特許第5,273,760号および同第5,286,493号に詳細に記載されている。粒子は、他の所定の性質と組み合わせて、所望のin vitro放出速度およびin vivo血漿レベルが得られるような、薬物の放出を可能にする物質で膜コーティングされることが好ましい。本発明の徐放性コーティング製剤は、平滑かつ見かけ良く、顔料および他のコーティング添加物を支持可能で、非毒性、不活性および不粘着な強固かつ連続した膜を作製することが可能である。
【0054】
本発明に従って使用できる徐放性製剤およびコーティングの他の例としては、参照よりその全体が本明細書中に組み込まれる譲受人の米国特許第5,324,351号、同第5,356,467号、および同第5,472,712号のものが含まれる。
【0055】
アルキルセルロースポリマー
アルキルセルロースを含むセルロース物質およびポリマーは、本発明によるビーズをコーティングするのに良く適した疎水性物質を提供する。単なる例示であるが、好ましいアルキルセルロースポリマーの1つは、エチルセルロースである。しかし、他のセルロースおよび/またはアルキルセルロースポリマーも単独または任意に組合せられて、本発明による疎水性コーティングの全体または一部として容易に用いることができることを当業者は理解するであろう。
【0056】
市販のエチルセルロースの分散水溶液の1つに、Aquacoat(登録商標)(FMC Corp., Philadelphia, Pennsylvania, U.S.A.)がある。Aquacoat(登録商標)は、エチルセルロースを水不混和性の有機溶媒に溶解させ、界面活性剤および安定剤の存在下で水中で乳化させることにより調製される。サブミクロン小滴を生成するために均質化した後、真空下で有機溶媒を蒸発させて、偽ラテックスを形成する。製造工程の間、偽ラテックスには可塑剤が取り入れらない。従って、偽ラテックスをコーティングに使用する場合、使用前に、Aquacoat(登録商標)を適切な可塑剤と密接に混合する必要がある。
【0057】
別のエチルセルロースの分散水溶液は、Surelease(登録商標)(Colorcon, Inc., West Point, Pennsylvania, U.S.A.)として市販されている。この製品は、製造工程の間、可塑剤を分散溶液に取り入れることで調製される。ポリマー、可塑剤(セバシン酸ジブチル)および安定剤(オレイン酸)のホットメルトを、均質混合物として調製し、それをアルカリ溶液で希釈して、基質上に直接適用できる分散水溶液を得る。
【0058】
アクリルポリマー
制御放出性コーティングを含む疎水性物質は、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(無水メタクリル酸)、ならびにグリシジルメタクリレートコポリマーを含む(ただしこれらに限定されない)、製薬上許容可能なアクリルポリマーを含んでいてもよい。
【0059】
特定の好適な実施形態では、アクリルポリマーは、1つ以上のアンモニアメタクリレートコポリマーを含む。アンモニアメタクリレートコポリマーは、当該分野で周知であり、低量の4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの完全に重合されたコポリマーとしてNF XVIIに記載されている。
【0060】
所望の溶出プロフィールを得るために、異なる物理的特性を有する2つ以上のアンモニアメタクリレートコポリマー(例えば、4級アンモニウム基のモル比が異なるもの)を中性(メト)アクリル酸エステルに入れる必要があるかもしれない。
【0061】
特定のメタクリル酸エステル系ポリマーは、本発明に従って使用されうるpH依存性コーティングを調製するのに有用である。例えば、Rohm Tech, Inc.製のEudragit(登録商標)として市販され、メタクリル酸コポリマーまたは重合化メタクリレートとしても知られている、ジエチルアミノエチルメタクリレートおよび他の中性メタクリル酸エステルから合成されるコポリマーのファミリーがある。Eudragit(登録商標)は、いくつかの異なる種類がある。例えば、Eudragit E(登録商標)は、酸性溶媒中で膨潤し溶解するメタクリル酸コポリマーの一例である。Eudragit L(登録商標)は、約5.7未満のpHでは膨潤せず、約6を上回るpHで可溶なメタクリル酸コポリマーである。Eudragit S(登録商標)は、約6.5未満のpHでは膨潤せず、約7を上回るpHで可溶である。Eudragit RL(登録商標)およびEudragit RS(登録商標)は、水で膨潤し、これらのポリマーに吸収される水の量はpHに依存するが、Eudragit RLおよびRS(登録商標)でコーティングされた剤形は、pHに依存しない。
【0062】
特定の好適な実施形態では、アクリルコーティングは、Eudragit RL30D(登録商標)およびEudragit RS30D(登録商標)という商品名でそれぞれRohm Pharmaから市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit RL30D(登録商標)およびEudragit RS30D(登録商標)は、低量の4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマーであり、残る中性(メト)アクリル酸エステルに対するアンモニウム基のモル比はEudragit RL30D(登録商標)において1:20、Eudragit RS30D(登録商標)において1:40である。平均分子量は約150,000である。コード符号RL(高透過性)およびRS(低透過性)は、これらの薬物の透過性特性を指す。Eudragit RL/RS(登録商標)混合物は、水および消化液中で不溶性である。しかし、これらで形成されるコーティングは、水溶液および消化液中で膨潤および浸透可能である。
【0063】
本発明のEudragit RL/RS(登録商標)分散溶液は、所望の溶出プロフィールを有する徐放性製剤を最終的に得るために、任意の割合で混合してよい。所望の持続放出性製剤は、例えば、Eudragit RL(登録商標) 100%、Eudragit RL(登録商標) 50%およびEudragit RS(登録商標) 50%、ならびにEudragit RL(登録商標) 10%およびEudragit RS(登録商標) 90%から得られる抑制コーティングにより達成される。勿論、当業者は、例えば、Eudragit L(登録商標)などの他のアクリルポリマーも使用できることは理解できるであろう。
【0064】
可塑剤
アルキルセルロースまたはアクリルポリマーなどの疎水性物質の分散水溶液がコーティングに含まれる本発明の実施形態では、疎水性物質の分散水溶液に有効量の可塑剤を含ませることで、徐放性コーティングの物理的性質がさらに改善される。例えば、エチルセルロースは比較的高いガラス転移温度を有し、通常のコーティング条件下では可塑性膜を形成しないため、徐放性コーティングを含むエチルセルロースコーティングをコーティング材料として使用する前に可塑剤を入れることが好ましい。一般に、コーティング溶液に含まれる可塑剤の量は、膜形成剤の濃度に基づく(例えば、最も多くの場合には、膜形成剤の約1〜約50重量%)。しかし、可塑剤の濃度は、用途に応じた特定のコーティング溶液および方法での注意深い実験を行って初めて正確に決定できるものである。
【0065】
エチルセルロースのための適切な可塑剤の例としては、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、およびトリアセチンなどの水不溶性可塑剤が挙げられるが、その他の水不溶性可塑剤(例えば、アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油など)も使用可能である。クエン酸トリエチルは、本発明のエチルセルロースの分散水溶液に特に好ましい可塑剤である。
【0066】
本発明のアクリルポリマーに適した可塑剤の例としては、クエン酸トリエチルNF XVIなどのクエン酸エステル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル、および場合によっては1,2-プロピレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。Eudragit RL/RS(登録商標)ラッカー溶液などのアクリル膜から形成される膜の可塑性向上に適していることが分かっているその他の可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油、およびトリアセチンが挙げられる。クエン酸トリエチルは、本発明のエチルセルロースの分散水溶液に特に好ましい可塑剤である。
【0067】
少量のタルクを添加することにより、分散水溶液が、処理の途中で固着して研磨剤として作用する性向を低下させることがさらに分かっている。
【0068】
疎水性物質の分散水溶液を使用して、薬物を含む基質(例えば、ノンパレイユ(nu pariel)18/20ビーズなどの不活性医薬ビーズ)をコーティングする場合、得られる複数の安定化固形制御放出性ビーズを、その後、環境液(例えば、胃液または溶出媒体)に摂取および接触した場合に有効な制御放出性用量を得るのに十分な量で、ゼラチンカプセルに入れる。また、基質は、徐放性コーティング、あるいはさらにOpadry(登録商標)などの膜形成剤または着色剤でコーティングされた錠剤コアであってもよい。
【0069】
アルキルセルロースなどの疎水性ポリマーの分散水溶液を基質に適用する製剤においては、コーティングされた製剤が、例えば、高温および/または高湿といった保存条件に曝されても、実質的に影響を受けない溶出プロフィールを獲得するという最終目標に達するまで、コーティングされた基質を可塑化ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度且つ周囲状態を上回る相対湿度にて硬化させることが好ましい。一般的に、このような製剤において、硬化時間は約24時間以上であり、硬化条件は例えば約60℃で、相対湿度は85%である。このような製剤の安定化についての詳細な情報は、米国特許第5,273,760号、同第5,681,585号、および同第5,472,712号に記載されており、該文献全てについてその内容全体を参照として本明細書に援用する。
【0070】
アクリルポリマーの分散水溶液を基質に適用する製剤においては、コーティングされた製剤が、例えば、高温および/または高湿といった保存条件に曝されることで実質的に影響を受けない溶出プロフィールを獲得するという最終目標に到達するまで、コーティングされた基質が可塑化ポリマーのガラス転移温度より高い温度にて硬化されることが好ましい。一般的に、硬化時間は24時間以上で、硬化温度は例えば約45℃である。このような製剤の安定化についての詳細な情報は、米国特許第5,286,493号、同第5,580,578号および同第5,639,476号に記載されており、該文献全てについてその内容全体を参照として本明細書に援用する。
【0071】
本発明のコーティングされた製剤の徐放性プロフィールは、例えば、疎水性物質の分散水溶液でコーティングする量を変化させること、疎水性物質の分散水溶液に可塑剤を添加する手法を変えること、疎水性物質に対する可塑剤の量を変化させること、追加の成分または賦形剤を含有させること、製造方法を変えることなどによって変えることができる。最終的な製品の溶出プロフィールも、例えば、抑制コーティングの厚みを厚くしたり薄くしたりすることにより変えることができる。
【0072】
治療上の有効成分でコーティングされた球状物またはビーズは、例えば、治療上の有効成分を水に溶解し、その溶液をウスターインサート(Wuster insert)を使用して基質(例えば、ノンパレイユ18/20ビーズ)に噴霧することにより調製される。適宜、ビーズをコーティングする前に追加の成分を添加して、薬物とビーズとの結合を補ったり、および/または溶液を着色したりする。例えば、着色料が入った、または入っていないヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを含む製品(例えば、Colorcon, Incから市販されているOpadry(登録商標))を溶液に添加して、該溶液をビーズに適用する前に (例えば、約1時間)混合してもよい。このビーズの例の場合、得られるコーティングされた基質は、任意に防護剤(barrier agent)でさらにコーティングして、治療上の有効成分を疎水性の制御放出性コーティングから分離してもよい。適切な防護剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むものがある。しかし、当該分野で公知の膜形成剤を任意に使用できる。防護剤は、最終製品の溶出速度に影響を与えないことが好ましい。
【0073】
次いで、ビーズを、疎水性物質の分散水溶液でオーバーコーティングする。疎水性物質の分散水溶液は、有効量の可塑剤(例えば、トリエチルクエン酸)をさらに含むことが好ましい。予め調製されたエチルセルロースの分散水溶液(例えば、Aquacoat(登録商標)またはSurelease(登録商標)など)が使用できる。Sureleaseを使用する場合、可塑剤を別に添加する必要はない。あるいはまた、予め調製されたアクリルポリマーの分散水溶液(例えば、Eudragit)を使用してもよい。
【0074】
本発明のコーティング溶液は、膜形成剤、可塑剤および溶媒系(すなわち、水)の他に、着色料を含有させて、外観を良くし、製品区別できることが好ましい。着色料は、疎水性物質の分散水溶液の代わりにまたはそれに加えて、治療的活性剤の溶液に添加してもよい。例えば、着色料を、アルコールまたはプロピレングリコールベースの着色分散溶液、磨砕アルミニウムレーキ(aluminum lake)および乳白剤(二酸化チタン)を使用して、水溶性ポリマー溶液に剪断力(shear)をかけながら、次いで可塑化Aquacoatに低い剪断力(shear)を用いて着色料を添加することにより、Aquacoatに添加してもよい。あるいはまた、本発明の製剤を着色するために任意の適切な方法を使用してもよい。アクリルポリマーの分散水溶液を使用した製剤を着色するのに適切な成分としては、二酸化チタン、および酸化鉄顔料などの顔料が挙げられる。ただし、顔料を取り込む場合には、コーティングの遅延作用が上昇することがある。
【0075】
疎水性物質の可塑化分散水溶液を、治療的活性剤を含む基質に、当該分野で公知の適切な噴霧装置を任意に使用して噴霧して施すことができる。好ましい方法においては、アクリルポリマーコーティングが噴霧される間、下から噴射されるエアジェットによりコア物質を流動化して乾燥させるビュルスター流動床系を使用する。コーティングされた基質が水性溶液(例えば、胃液)に曝された場合に治療的活性剤(すなわち、薬物)の所定の徐放を得るのに十分な量の疎水性物質の分散水溶液を、治療的活性剤の物理的特性および可塑剤の取り込みかたなどを考慮して施すことが好ましい。疎水性物質でコーティングした後、膜形成剤(例えば、Opadry)のさらなるオーバーコーティングを任意にビーズに施してもよい。このオーバーコーティングは、施される場合には、ビーズの凝集を実質的に減少させるために施される。
【0076】
本発明の徐放性製剤からの薬物の放出は、1つ以上の放出調節剤を添加することで、またはコーティングにより1つ以上の進路を作ることで、さらに影響を与えることができる(すなわち、所望の速度に調節できる)。疎水性物質と水溶性物質との比率は、とりわけ、必要とされる放出速度および選択された物質の溶解特性などの要因に応じて決定される。
【0077】
孔形成剤として機能する放出調節剤は、有機物質または無機物質であり、使用環境においてコーティングから溶出、抽出または浸出できる物質を含む。孔形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの1つ以上の親水性物質を含んでいてもよい。
【0078】
本発明の徐放性コーティングはまた、デンプンおよびゴムなどの侵食促進剤を含むこともできる。
【0079】
本発明の徐放性コーティングはまた、例えば、重合鎖において炭酸基が再度生じる炭酸の直鎖状ポリエステルからなるポリカーボネートなど、使用環境下で微孔性積層を作るのに有用な物質を含んでいてもよい。
【0080】
放出調節剤はまた、半透性ポリマーを含んでいてもよい。
【0081】
特定の好適な実施形態では、放出調節剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸金属塩、および前記の任意の混合物から選択される。
【0082】
本発明の徐放性コーティングはまた、少なくとも1つの進路、オリフィスなどを含む出口を含んでいてもよい。進路は、米国特許第3,845,770号、同第3,916,889号、同第4,063,064号および同第4,088,864号(全て参照により本明細書に援用する)に開示されているような方法により形成できる。進路は、円、三角、四角、楕円、変形などの任意の形状であってよい。
【0083】
本発明の基質は、球状化されて球状物を形成しうる活性剤成分と共に、球状化剤により調製されてもよい。微晶性セルロースが好ましい。適切な微晶性セルロースとしては、例えば、Avicel PH 101(商品名、FMC Corporation)として販売されている物質がある。このような実施形態では、活性成分および球状化剤の他に、球状物は結合剤を含んでいてもよい。低粘度の水溶性ポリマーなどの適切な結合剤は、医薬分野の当業者に周知である。しかし、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性ヒドロキシ低級アルキルセルロースが好ましい。さらに(あるいはまた)、球状物は、水溶性ポリマー、特にアクリルポリマー、メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマーなどのアクリルコポリマー、またはエチルセルロースを含んでいてもよい。このような実施形態では、徐放性コーティングは、通常、(a)単独もしくは脂肪アルコールと混合されたワックス、または(b)シェラックもしくはゼイン、などの水不溶性物質を含む。
【0084】
本発明の特に好適な実施形態では、制御/調節放出メチルフェニデート製剤は、コーティングされた不活性ビーズを含む多層放出(MLR)製剤として調製される。このような製剤を製造するための1つの方法の概要を以下に要約する。まず、約8%の薬物充填で、流動床乾燥機中で糖ビーズにメチルフェニデート水溶液を噴霧することにより、即時放出性(IR)薬物でコーティングされたビーズを調製する。噴霧プロセスは、ビュルスターカラムを備える流動床乾燥機中で行われる。Opadry(登録商標)物質(例えば、Opadry(登録商標) Clear (製剤番号:YS-1-7006))を使用して、透明なHPMCのオーバーコーティングを重量が約1%増すように施す。次に、制御放出性コーティングをIRビーズに施し、これにより制御放出性(CR)ビーズに変換させる。これは、Eudragit(登録商標) RS30D、トリエチルクエン酸(可塑剤)、およびタルク(潤滑剤)の溶液をIRビーズに噴霧することにより達成される。次に、コーティングされたビーズを硬化処理して、治療的活性剤の安定した放出速度を得る。CRコーティングにアクリル樹脂を利用して薬物の放出を制御する本発明の好ましい実施形態では、この段階でのCRビーズを、可塑化アクリルポリマーのTgより高い温度にて所望の時間の間オーブン硬化(oven curing)にかける。特定の製剤の温度および時間の最適値は、実験的に決定される。本発明の特定の実施形態では、約40〜50℃の温度において約12〜約24時間以上にわたって行うオーブン硬化を経て安定化された製品を得る。次いで、CRビーズに腸溶性コーティングを施して、腸溶性コーティングCR(ECCR)ビーズに変換させる。これは、Eudragit(登録商標) L30D-55分散溶液、トリエチルクエン酸(可塑剤)およびタルク(潤滑剤)の溶液をCRビーズに噴霧することによって達成される。最終的に、即時放出性コーティング(例えば、IRトップコートと称する)をECCRビーズに施す。これは、メチルフェニデート水溶液をEC CRビーズに噴霧することで達成される。
【0085】
初期の研究の結果は、この製剤が室温(25℃、60%RH)およびそれ以上の条件下(40℃、75%RH)において安定であることを示している。
【0086】
徐放性マトリックス
本発明のある好適な実施形態では、徐放性製剤は、薬物と徐放性担体とを含むマトリックスを含んでなる。該徐放性担体は、1種以上の疎水性物質、例えば、本明細書中で既に定義したようなアルキルセルロースおよび/またはアクリルポリマーを含むことができる。徐放性マトリックスへ配合するのに適した物質は、マトリックスの形成方法によるであろう。
【0087】
本発明の徐放性マトリックスへ配合するのに適した物質としては、薬物以外に下記のものが挙げられる:
(A)親水性および/または疎水性物質、例えば、ゴム、アルキルセルロース、セルロースエーテル(ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロース等)、アクリル樹脂(上述のアクリルポリマーとアクリルコポリマーは全て含まれる)、およびタンパク質より誘導した物質。これらの例示は限定を意味するものではなく、薬剤の望ましい徐放プロフィールを賦与することのできる任意の製薬上許容し得る疎水性物質または親水性物質が含まれることを意味している。該剤形は、例えば、このような物質を約1重量%〜約80重量%含んでいてもよい。
【0088】
本発明のある好適な実施形態では、疎水性物質は製薬上許容し得るアクリルポリマーであり、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートのコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートのコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(無水メタクリル酸)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、疎水性物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、および上述した物質の混合物等の物質から選択される。さらに別の実施形態では、疎水性物質はアルキルセルロースである。
【0089】
(B)消化可能な長鎖(C8-C50、特にC12-C40)置換または未置換炭化水素、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱油および植物油並びに天然もしくは合成ワックス、多価アルコール(ポリアルキレングリコール等)。本発明の経口剤形は、このような物質を60%(重量)まで含んでいてもよい。ある実施形態では、2種以上の炭化水素物質を組み合わせてマトリックス製剤に配合する。炭化水素物質をさらに配合する場合には、天然および合成ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、およびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0090】
好適な炭化水素は水不溶性であって、ある程度顕著な親水性および/または疎水性傾向を示し、融点は約30℃〜約200℃、好ましくは約45℃〜約90℃である。
【0091】
本発明では、ワックス様物質を、室温では通常固体であって、約30℃〜約100℃の融点を有する任意の物質と定義する。適切なワックスとしては、例えば、ミツロウ、グリコワックス(glycowax)、カスターワックスおよびカルナウバワックスが挙げられる。
【0092】
脂肪族アルコールは、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールまたはステアリル、セチルおよび/もしくはセトステアリルアルコールであってよい。本発明の経口剤形に配合する場合、脂肪族アルコールの量は、上述したように、要求される薬物放出の正確な速度によって決まる。ある実施形態では、経口剤形には20%〜50%(重量)の脂肪族アルコールが含まれる。少なくとも1種のポリアルキレングリコールが経口剤形に含まれる場合には、少なくとも1種の脂肪族アルコールと少なくとも1種のポリアルキレングリコールを合わせた重量が、全投与量の20%〜50%(重量)を占めるのが好ましい。
【0093】
実施形態の1つでは、例えば、少なくとも1種のヒドロキシアルキルセルロースまたはアクリル樹脂と少なくとも1種の脂肪族アルコール/ポリアルキレングリコールとの比によって、かなりの程度まで、製剤からの薬物の放出速度が決まる。
【0094】
適切なポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが挙げられる。少なくとも1種のポリアルキレングリコールの数平均分子量は、1,000〜15,000、特に1,500〜12,000であるのが好適である。
【0095】
上述の成分以外にも、制御放出マトリックスには、適量の他の物質、例えば、製薬分野で慣用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、着香剤および流動促進剤が含まれていてもよい。
【0096】
本発明の経口用徐放性固形剤形の調製を容易にするには、当業者に公知のマトリックス製剤を調製する任意の方法を使用すればよい。例えば、マトリックスへの配合は、(a)少なくとも1種の水溶解性ヒドロキシアルキルセルロースと薬物またはその塩を含む顆粒を形成し、(b)ヒドロキシアルキルセルロースを含む該顆粒と少なくとも1種のC12-C36脂肪族アルコールとを混合し、(c)任意に、顆粒を圧縮および成形することによって行うことが可能である。好ましくは、ヒドロキシアルキルセルロース/薬物を水を用いて湿式造粒することによって顆粒を形成する。この方法の特に好適な実施形態では、湿式造粒工程時の水の添加量を、好ましくは薬物の乾燥重量の1.5〜5倍、特に1.75〜3.5倍にする。
【0097】
さらに別の実施形態では、球状化剤(spheronizing agent)を有効成分と共に球状化して球状物を形成する。微結晶性セルロースが好適である。適切な微結晶性セルロースは、例えば、Avicel PH 101(商標、FMC Corporation)として販売されている物質である。このような実施形態では、有効成分と球状化剤の他にも、結合剤が球状物に含まれていてもよい。低粘度の水溶解性ポリマー等の適切な結合剤は、製薬分野の当業者に周知であろう。しかしながら、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶解性ヒドロキシ低級アルキルセルロースが好適である。さらに(または、それに代わるものとして)球状物には水不溶性ポリマー、特にアクリルポリマー、アクリルコポリマー(メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー等)またはエチルセルロースが含まれていてもよい。このような実施形態では、通常、徐放性コーティングに疎水性物質、例えば、(a)ワックスを単独でもしくは脂肪アルコールと組み合わせて、または(b)シェラックもしくはゼインを、配合する。
【0098】
溶融押出マトリックス
本発明のある好適な実施形態では、徐放性マトリックスを、溶融造粒技術または溶融押出技術によって調製してもよい。このような製剤は、米国特許出願第08/334,209号(1994年11月4日出願)および米国特許出願第08/833,948号(1997年4月10日出願)に開示されている(これらの特許出願はいずれも引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)。一般に、溶融造粒技術は、通常は固形の疎水性物質(ワックス等)を溶融し、粉末化薬物をそこへ配合するものである。徐放性剤形を得るには、追加の疎水性物質(エチルセルロースまたは水不溶性アクリルポリマー等)を溶融したワックス系疎水性物質へ配合することが必要である。溶融造粒技術で調製した徐放性製剤の例は、米国特許第4,861,598号に見られる(本特許は本発明の譲受人に譲渡されたものであり、引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)。
【0099】
追加の疎水性物質には、1種以上の水不溶性ワックス様熱可塑性物質が含まれていてもよく、該1種以上の水不溶性ワックス様物質よりも疎水性が低い1種以上のワックス様熱可塑性物質との混合物としてもよい。定常的な放出を達成するためには、製剤中の個々のワックス様物質が、初期放出相の際に胃腸液に対して実質的に非分解性かつ不溶性でなければならない。有用な水不溶性ワックス様物質は、水溶解度が約1:5,000(w/w)未満のものである。
【0100】
上記成分以外にも、徐放性マトリックスには、適量の他の物質、例えば、製薬分野で慣用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、着香剤および流動促進剤が含まれていてもよい。これらの追加物質の量は、所望の製剤に所望の効果を賦与するのに十分な量である。溶融押出多粒子を配合した徐放性マトリックスには、上記成分以外にも、必要であれば、適量の他の物質、例えば、製薬分野で慣用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、着香剤および流動促進剤が、粒子の約50重量%までの量で含まれていてもよい。
【0101】
経口剤形の製剤化に使用可能な製薬上許容し得る担体および賦形剤の具体的な例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)(引用により本明細書に含まれるものとする)に記載されている。
【0102】
本発明の適切な溶融押出マトリックスの調製には、例えば、鎮痛薬(即ち、薬物)を少なくとも1種の疎水性物質および好ましくは追加の疎水性物質と混合して均一混合物を得る工程が含まれていてもよい。次いで均一混合物を、該混合物を少なくとも軟化させるのに十分な温度まで加熱して、該混合物を押出せるようにする。次いで得られた均一混合物を押出してストランドを形成する。好ましくは押出物を冷却し、当該技術分野で公知の手段で多粒子へ切断する。ストランドを冷却して多粒子へ切断する。次いで、多粒子を単位用量へ分配する。好ましくは、押出物の直径は約0.1〜約5mmであり、治療上活性な薬剤を約8〜約24時間にわたって徐放する。多粒子は、ゼラチンカプセルへ封入することで単位用量に分配してもよいし、適切な錠剤形状へ圧縮してもよい。
【0103】
本発明の溶融押出物を調製する任意の方法には、疎水性物質、製薬上活性な薬剤、および任意に結合剤を直接計量して押出機へ供給し、均一混合物を加熱し、均一混合物を押出すことによりストランドを形成し、均一混合物からなるストランドを冷却し、ストランドを直径約0.1mm〜約12mmの粒子へ切断し、前記粒子を単位用量へ分配することが含まれる。本発明のこの態様では、比較的連続した製造手順が実現される。
【0104】
押出機の開口部または排出部の直径を調整して押出されるストランドの太さを変えることもできる。さらに、押出機の排出部は円形である必要はなく、長楕円形、長方形等であってもよい。熱線カッター、裁断機等を利用して、排出されるストランドを粒子へ切断してもよい。
【0105】
溶融押出多粒子系は、押出機の出口オリフィスに応じて、例えば、顆粒、球状物またはペレットの形状にすることができる。本発明では、用語「溶融押出多粒子」、「溶融押出多粒子系」および「溶融押出粒子」は、好ましくは同等のサイズおよび/または形状の範囲内に含まれる複数の単位物であって、1種以上の活性薬剤と1種以上の賦形剤、好ましくは本明細書に記載の疎水性物質を含むものを指す。この点については、溶融押出多粒子は、長さが約0.1〜約12mmの範囲にあり、約0.1〜約5mmの直径を有する。さらに、溶融押出多粒子は、このサイズ範囲に収まる任意の幾何学形状であってよいと理解されるべきである。あるいは、押出物を単に所望の長さに切断し、球状化工程を経ずに治療上活性な薬剤の単位用量へ分配してもよい。
【0106】
好適な実施形態の1つでは、経口剤形を、有効量の溶融押出多粒子をカプセルに封入するように調製する。例えば、複数の溶融押出多粒子を、摂取され胃液に接触した際に有効な徐放性用量が得られるような十分な量でゼラチンカプセルへ封入すればよい。
【0107】
別の好適な実施形態では、標準的な技術を利用する慣用の打錠装置を用いて、適量の多粒子押出物を経口錠剤へ圧縮する。錠剤(圧縮および成形錠剤)、カプセル(硬質および軟質ゼラチン)並びに丸剤を製造する技術および組成は、Remington's Pharmaceutical Sciences, (Arthur Osol編), 1553-1593(1980)にも開示されている(引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0108】
さらに別の好適な実施形態では、米国特許第4,957,681号(Klimeschら)に記載されているように押出物を錠剤へ成形することが可能である。該特許は、先に詳述されており、引用により本明細書に含まれるものとする。
【0109】
任意に、上述の徐放性コーティング等の徐放性コーティングによって、徐放性溶融押出多粒子系または錠剤をコーティングしてもよく、また、ゼラチンカプセルをさらにコーティングしてもよい。このようなコーティングには、好ましくは、重量増加レベルが約2〜約30%となるような十分な量の疎水性物質が配合されるが、使用する特定の鎮痛薬化合物の物理的特性と所望の放出速度に応じて、オーバーコートが他の物質よりも多くなっていてもよい。
【0110】
さらに本発明の溶融押出単位剤形には、カプセルへ封入する前に、上述したような1種以上の治療上活性な薬剤を含む溶融押出多粒子を組み合わせて配合してもよい。さらに、該単位剤形には、迅速な治療効果を得るために、一定量の治療上活性な即時放出性薬剤を配合することが可能である。治療上活性な即時放出型薬剤は、例えば、別個の粒剤としてゼラチンカプセル内に封入してもよく、また、剤形を調製した後に多粒子の表面へコーティングしてもよい(例えば、制御放出コーティングまたはマトリックス系)。本発明の単位剤形はまた、所望の効果を達成するため、制御放出ビーズとマトリックス多粒子の組み合わせを含んでいてもよい。
【0111】
本発明の徐放性製剤は、例えば、摂取され、胃液そして腸液へ接触した際に、好ましくは治療上活性な薬剤を徐放するものである。本発明の溶融押出製剤の徐放プロフィールは、例えば、遅延剤(即ち、疎水性物質)の量を変えたり、疎水性物質に対する可塑剤の量を変えたり、追加の成分または賦形剤を配合したり、製造方法を変えたりすることで、変更することができる。
【0112】
本発明の他の実施形態では、治療上活性な薬剤を配合せずに溶融押出物質を調製し、該薬剤は後から押出物へ添加する。このような製剤では、徐放性製剤を得るために、典型的には治療上活性な薬剤を押出マトリックス材料と混合し、次いで混合物を打錠する。このような製剤は、例えば、製剤へ配合される治療上活性な薬剤が、疎水性物質および/または遅延剤物質を軟化させるのに要する温度の影響を受け易い場合に有利である。
【0113】
本発明の基材は、溶融ペレット化技術によって調製することも可能である。このような場合には、微細分割した活性薬物を結合剤(同じく粒子状)および他の任意の不活性成分と配合し、次いで、混合物を高剪断ミキサーで機械的に処理するなどしてペレット化し、ペレット(顆粒、球状物)を形成する。その後、必要なサイズのペレットを得るために、ペレット(顆粒、球状物)を篩にかけてもよい。結合剤物質は好ましくは粒子状であり、融点が約40℃以上である。適切な結合剤物質としては、例えば、硬化ヒマシ油、硬化植物油、他の硬化脂肪、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド等が挙げられる。
【0114】
本発明のメチルフェニデート製剤の推奨される力価(strength)は、例えば、10、15、20および30mgである。本発明のMLRメチルフェニデート多粒子製剤では、このような投与力価に対して推奨されるカプセルサイズと充填重量は以下の通りである:

【0115】
本発明のある好適な実施形態では、有効量の即時放出型薬物を薬物製剤に配合する。該即時放出型薬物は、薬物の血中濃度(例えば、血漿濃度)が最大濃度に至るまでの時間を短縮するのに有効な量で配合され、Tmaxまでの時間が、例えば約0.5〜約2時間へ短縮される。一定量の即時放出型薬物を製剤に配合することで、作用が発現するまでの時間が大幅に短縮され、参考標準IR処理(リタリンIR)と同等またはそれよりも短縮される。
【0116】
このような実施形態では、有効量の即時放出型薬物を、本発明の基材(例えば、多粒子または錠剤)上へコーティングしてもよい。例えば、薬物の製剤からの持続放出が制御放出性コーティングによる場合には、即時放出層を制御放出性コーティングの最外面上へオーバーコーティングすることができる。一方、薬物が制御放出マトリックス内に配合されている基材の場合には、その表面へ即時放出層をコーティングしてもよい。有効単位用量の薬物を含む複数の徐放性基材(例えば、ペレット、球状物、ビーズ等の多粒子系)を硬質ゼラチンカプセルへ封入する場合には、十分な量の即時放出型薬物を粉末または顆粒としてカプセル内に封入することで、即時放出される薬物用量をゼラチンカプセルへ含有させてもよい。あるいは、ゼラチンカプセル自体を薬物の即時放出層でコーティングしてもよい。当業者であれば、即時放出される薬物量を単位用量へ含有させるさらに別の代替手法が明らかであろう。このような代替手法は、特許請求の範囲に包含されると考えられる。
【0117】
好適な実施形態の詳細な説明
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示する。これらの実施例は、特許請求の範囲を何ら限定するものではない。
【0118】
実施例1
塩酸メチルフェニデート即時放出性ビーズ
【表1】

1. Niro-Aeromatic Strea 1 Fluid Bed Wurster Coaterに14/18メッシュNupareil(登録商標)PG(糖球(sugar spheres)NF)を装入する。
2. 塩酸メチルフェニデート(12% w/w)およびOpadry clear(4% w/w)の水溶液を噴霧することにより、ビーズを60℃にてコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを60℃にて2分または3分間乾燥させる。
【0119】
4. 室温にて浅い皿の中でビーズを冷却する。
5. 塊があれば破砕する。
6. ビーズをTyler 10メッシュの篩(穴のサイズ:1.77mm)にかけた後、Tyler 20メッシュの篩(穴のサイズ:850μm)にかけて、微粉を除去する。
7. 着色したOpadry clear溶液(4% w/w)を噴霧することにより、1% w/wの理論重量増加までビーズにトップコーティングを施す。
【0120】
オーバーコーティングが完了した後、20mgの力価までビーズを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0121】
USP装置1(バスケット法)を用い、酵素を含まない人工胃液500mL中、100rpm、37℃にて、ビーズを充填したIRカプセルについて溶出試験を実施した。結果は以下の通りである。
【0122】
【表2】

上記表に記載した溶出結果は、塩酸メチルフェニデートの98.5%が45分間で溶出したことを示す。
【0123】
実施例2
アクリルポリマーコーティングを施した塩酸メチルフェニデート制御放出性(CR)ビーズ
【表3】

【0124】
制御放出性コーティングは以下のように製造した。
1. Eudragit(登録商標)RS30Dを、トリエチルクエン酸およびタルクで約30分間可塑化する。
2. 多量のIRビーズを、1mmのスプレーノズルを用いてエアロマチック流動床乾燥器(Aeromatic Fluid Bed Dryer)のウイルステル・インサート(Wurster insert)に入れ、ビーズを約8%重量増加するまでコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを40℃〜50℃にて24時間硬化する。
次に、20mgの力価でビーズを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
以下のUSP装置(バスケット法)を用い、ビーズを充填したCRカプセルについて溶出試験を行った。カプセルを、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液500mL中に入れた後、残りの試験時間の間は、酵素を含まない人工腸液500mL中に入れた。結果は以下の通りである。
【0125】
【表4】

上記表に記載した溶出結果は、24時間で塩酸メチルフェニデートの92.8%が溶出したことを示す。
【0126】
実施例3および4
制御放出性(CR)ビーズからの塩酸メチルフェニデートの放出率の、アクリルポリマーコーティングの量への依存性
塗布するEudragit(登録商標)RS 30Dの量を調節することにより、放出率を調節することができる。この効果を以下の実施例3および4に示す。
【0127】
【表5】

実施例3および4における制御放出性ビーズを製造するための方法は、実施例2で記載した方法と似ており、ビーズとEudragit(登録商標)RS 30Dとの割合を変化させることにより行う。
【0128】
硬化したビーズを20mgの力価で硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0129】
実施例2と同じ条件下で行った溶出試験の結果を以下に示す。
【0130】
【表6】

上記表に記載した溶出結果は、12時間で塩酸メチルフェニデートの82.1%および92.8%がそれぞれ溶出したことを示す。しかし、実施例4での薬物の放出は、1、2、3、4、6および8時間目で有意な速さを示した。
【0131】
実施例5
腸溶性コーティング(EC)コーティング放出性(CR)ビーズ‐EC・CRビーズ
【表7】

腸溶性コーティング法を以下に記載する。
1. Eudragit(登録商標)L30D55を、トリエチルクエン酸およびタルクで約30分間可塑化する。
2. 多量のメチルフェニデートCRビーズを、1mmのスプレーノズルを用いてエアロマチック流動床乾燥器(Aeromatic Fluid Bed Dryer)のウイルステル・インサート(Wurster insert)に入れ、ビーズを約9%重量増加までコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを40℃にて18時間硬化する。
4. 次に、硬化したビーズをTyler 10メッシュ(穴のサイズ:1.7mm)およびTyler 20メッシュ(穴のサイズ:850μm)で篩にかけて、微粉を除去する。
次に、ビーズを20mgの力価で硬質ゼラチンカプセルに充填した。
USP装置1(バスケット法)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まないSGF(500mL)を用いて、および残りの試験時間は酵素を含まないSIFを用いて、ビーズを充填したCR充填カプセルについて溶出試験を行った。結果を以下に示す。
【0132】
【表8】

上記表に記載した溶出結果は、腸溶性コーティングの後には胃液中にて非常に少量の薬物しか溶出しないこと、およびCRビーズの溶出プロフィールが変更されたことを示す。
【0133】
実施例6
臨床試験用の製剤
以下の実施例6A、6Bおよび6Cには、臨床試験で開発および試験された製剤を記載する。
【0134】
実施例6A:(IR・EC・CRビーズ)
腸溶性コーティングされた制御放出性(EC・CR)メチルフェニデートビーズの即時放出性(IR)コーティング
(IR・EC・CRビーズ)製剤(以後、製剤1と呼ぶ)は、即時放出性および制御放出性成分の両方を有する多層放出性ビーズを含むカプセルである。これは、胃内容排出まで溶解を遅らせるために腸溶性コーティングで覆われた制御放出性ビーズから成る。腸溶性コーティングされた制御放出性ビーズは、即時放出性の表皮を有することにより、Ritalin(商標登録)IR即時放出性錠剤と同じか、これより速い初期吸収速度を提供する。即時放出性成分は、1ビーズ当たり、全用量の40%を占め、制御放出性成分は60%を占める。
【0135】
【表9】

【0136】
腸溶性コーティングされたCRビーズの表面への即時放出性コーティングの実施について、以下に記載する。
1.塩酸メチルフェニデート USPとOpadryを攪拌しながら水に溶解させる。
2.EC・CRビーズをエアロマチック流動床乾燥器(Aeromatic Fluid Bed Dryer)のウイルステル・インサート(Wurster insert)に装入する。
3.50℃より低い温度で、1mmスプレーノズルを用いて、コーティング溶液をビーズに噴霧する。
4.コーティングが完了したら、該ビーズを室温で冷却し、Tyler10メッシュおよびTyler20メッシュの篩にかけて、微粉を除去する。
次に、20mg力価までビーズを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
UPS装置1(バスケット法)を用い、最初の1時間および2時間は、酵素を含まない人工胃液500mL中、それ以降は、酵素を含まない腸液500mL中、100rpm、37℃にて、製剤1を充填したビーズについて、溶出試験を実施した。
結果は以下の通りである。
【0137】
【表10】

上記表に記載した溶出結果は、溶出が急速に開始した後、作用が長続きすることを示す。
【0138】
実施例6B:(IR+EC・CRブレンド)
即時放出性メチルフェニデートビーズ(IR)と、腸溶性コーティングされた制御放出性(EC・CR)メチルフェニデートビーズとの組合せ
実施例5に記載した腸溶性コーティングされた制御放出性(EC・CR)ビーズを、実施例1に記載した即時放出性(IR)ビーズと、比率を変えながら混合し、カプセルに充填することにより、最終ブレンド投与形態、(IR+EC・CRブレンド)(以後、製剤2と呼ぶ)を得た。製剤2は、製剤1より速い制御放出性部分の吸収速度を提供するよう設計されている。即時放出性成分は、1カプセル当たり、全用量の35%を占め、制御放出性成分は65%を占める。
【0139】
溶出試験を実施し、その比較結果を以下の表11に示す。
【0140】
実施例6C:(IR・CRビーズ)
制御放出性(CR)メチルフェニデートビーズの即時放出性(IR)コーティング
IR・CRビーズ製剤(以後、製剤3と呼ぶ)は、即時放出性表皮と、制御放出性コアとから構成される個々のビーズを含み、制御放出性製剤である製剤1および2の間の制御放出性部分の吸収速度を提供するように設計されている。即時放出性成分は、1ビーズ当たり、全用量の30%を占め、制御放出性成分は、70%を占める。
【0141】
実施例6Aで製剤1について記載したのと同様に、制御放出性表皮をCRビーズにコーティングする。
【0142】
製剤1〜3および比較対照として用いるRitalin(商標登録)SRの溶出プロフィールを以下の表11に示す。500mlの人工胃液中に1時間および2時間浸した。3時間以降は、人工腸液(500ml)を使用した。溶出試験の結果から、予想されたin vivo溶出プロフィールが確認された。
【0143】
【表11】

【0144】
実施例7
1回投与の製剤1(摂食および絶食時)および2回投与のRitalin IR(摂食および絶食時)の4通りの比較
メチルフェニデートMLRカプセルの生物学的利用能を、4通りのブラインド試験で検定した。この試験では、摂食および絶食条件下で、1回投与する用量20mgの製剤1と、2回投与する(4時間おき)Ritalin (商標登録)IRとを比較した。
【0145】
健康な男性ボランティアに、用量20mgの製剤1を1回投与するか、もしくは、即時放出性メチルフェニデート10mgを4時間あけて、2回投与した。いずれも、摂食および絶食条件の両方で行った(n=12)。「摂食」条件とは、被験者が、高脂肪の朝食を取った後に、試験製剤を投与したことを意味する。一晩、少なくとも10.0時間、絶食した後、正常、健康かつ非喫煙の男性に、ウイリアム設計4処置無作為化計画に従い、次の処置を施した。
【0146】
処置1:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性、製剤1、20mgカプセルを朝投与。
処置2:対照製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート即時放出性、Ritalin (商標登録)(Novartis)、10mg錠剤を朝およびその4時間後に投与。
処置3:試験製剤:高脂肪朝食から5分後、メチルフェニデート制御放出性、製剤1、20mgカプセルを投与。
処置4:対照製剤:高脂肪朝食から5分後、朝と4時間後に、メチルフェニデート即時放出性、Ritalin (商標登録)(Novartis)、10mg錠剤を投与。
【0147】
試験期間の間に7日のウォッシュアウト期間を置いた。各試験期間中に、投与前の1時間以内に各被験者から血液サンプル(各1×5ml)を採取し、製剤1については、投与から0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50、4.00、5.00、6.00、7.00、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後および投与前に、また、Ritalin (商標登録)IRについては、投与から0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、6.00、7.00、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後にそれぞれ採取した。各血液サンプルから血漿を取り出し、−20℃のフリーザーに貯蔵した後、血漿メチルフェニデート濃度を検定した。血漿メチルフェニデート濃度の検定は、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)を用いて実施した。
【0148】
平均血漿濃度、標準偏差および変動係数は、絶食および摂食条件のそれぞれについて、表12および13に時間の関数として示す。
【0149】
このデータは、図1〜4にグラフとして表す。図1は、絶食条件下での製剤1およびRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図2は、摂食条件下での製剤1およびRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。図3は、摂食および絶食条件下での製剤1についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図4は、摂食および絶食条件下でのRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。
【0150】
【表12】

【0151】
【表13】

【0152】
実験結果
4通りの試験から得られたデータをもとに、薬物動力学的パラメーターを算出した。AUC0-t(pg・h/mL)、AUC0-inf(pg・h/mL)、AUCνinf(%)、Cmax(pg/ml)、Tmax(時間)、T1/2 el(時間)、K el(時間-1)、TLIN(時間)およびLQCT(時間)は、以下に記載するように、算出した。
【0153】
本発明の目的のため、下記の用語は、次のような意味を有する。
【0154】
薬物動力学的データの分析と統計的分析
AUC0-t:ゼロ濃度時間から最後の非ゼロ濃度の時間までの濃度−時間曲線下の面積(これは、制御放出性および即時放出性製剤の両方についての試験製剤の投与間隔にわたる、濃度−時間曲線下の面積に相当する)
AUC0-inf:ゼロ時間から無限までの濃度−時間曲線下の面積
C.I.:信頼区間
CV:変動係数
Cmax:最大観測濃度
K el:除去速度定数
LQCT:最後の定量化可能濃度時間
SD:標準偏差
TLIN:対数−線形除去(log-linear elimination)が開始する時点
T1/2 el:観測されたCmaxの時間
サンプル採取時間:試験しようとするパラメーターに基づく血漿コレクションの投与後時間
予定時間:サンプル採取の予定(時計)時間
実際時間:サンプルを採取した正確な(時計)時間
【0155】
Tmax≦4時間の薬物についてのサンプル採取中の時間偏差は、次のように扱った:
血液採取の実際および予定時間の遅延が<10%の場合には、投与後0〜6時間までのサンプル採取時間を統計的分析に使用した。投与から6時間以降については、血漿採取の実際および予定時間の遅延が<15%の場合、サンプル採取時間を統計的分析に使用した。既述した許容基準の場合には、サンプル採取時間を使用し、薬物動力学的パラメーターの計算を実施する際に、補正されたサンプル採取項目を使用する。サンプル採取時間は、統計報告書の濃度表およびグラフに示す。
【0156】
各サンプル採取時間および処置におけるメチルフェニデートの血漿濃度について、平均、標準偏差(SD)および変動係数(CV)を算出した。同様に、AUC0-t(pg・h/mL)、AUC0-inf(pg・h/mL)、Cmax(pg/mL)、Tmax(時間)、T1/2 el(時間)、K el(時間-1)、TLIN(時間)およびLQCT(時間)について、平均、SDおよびCVを計算した。これら薬物動力学的パラメーターの計算については、以下に説明する。
【0157】
濃度−時間曲線下の面積
線形台形法則を用いてAUC0-tを算出した。
【0158】
AUC0-tを導き出すが、ここで、tは、各処置について、最後の測定可能な(非ゼロ)濃度(Ct)の時間(t)である。
【0159】
AUC0-infは、次のように算出した:

ただし、上記式において、Ct=その処置の最後の非ゼロ濃度、AUC0-t=ゼロ時間から、その処置の最後の非ゼロ濃度時間までのAUC、ならびに、K el=除去速度係数とする。
【0160】
最大観測濃度と、観測されたピーク濃度の時間
各被験者および各処置について、最大観測濃度Cmaxと、ピーク濃度に達するまでの観測時間Tmaxとを決定した。
【0161】
半減期および除去速度定数
除去速度定数(K el)を算出するために、血漿濃度値(y)対時間(x)の自然対数(Ln)について、線形回帰分析を実施した。計算は、対数−線形除去段階が開始する時点から、(LQCT)が出現した時点までの間に行った。K el=は、(−1)で掛けた傾きとして、見かけ半減期(T1/2 el)は0.693/ K elとして得られた。
【0162】
TLINおよびLQCT
各被験者および各処置について、TLIN、すなわち、対数−線形除去が開始する時点と、LQCT、すなわち、最後の定量化可能な濃度時間を決定した。
【0163】
吸収された薬物パーセンテージ
吸収された薬剤パーセンテージは、次の式に従い、キネティカ(Kinetica)ソフトウエア、バージョン2.0.1で実施されるように、修正されたワグナー−ネルソン法により、各サンプル採取時間(t)で算出した。
【0164】

【0165】
ANOVAはすべて、SAS一般線形モデル手順(GLM)を用いて実施した。すべての分析について、'F'を伴う確率が、0.050より小さい場合には、効果が統計的に有意であるとみなした。対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmaxデータの対毎の比較に基づき、式:"e(X-Y)×100"に従い算出した幾何平均値の相対比、ならびに、90%幾何信頼区間を決定した。
【0166】
結果
制御放出性配合物である製剤1の投与後に不変のメチルフェニデートの血漿濃度は、絶食条件下で平均3.27時間、ならびに、摂食条件下で平均7.29時間で、最大濃度(Cmax)に達し、二相吸収プロフィールを示す。即時放出性製剤(Ritalin (商標登録)IR)を2回投与した後に不変のメチルフェニデートの血漿濃度は、絶食条件下で5.96時間、ならびに、摂食条件下で3.54時間で、最大濃度(Cmax)に達した。Cmaxの決定を、即時放出性メチルフェニデートの1回目の投与に限定すると、Tmaxは、絶食条件下で1.71時間、ならびに、摂食条件下で1.63時間であった。
【0167】
絶食条件および摂食条件下での制御放出性メチルフェニデート20mg製剤1と、即時放出性メチルフェニデート10mg(Ritalin (商標登録)IR)の完全な薬物動力学的パラメーターを以下の表14および15にまとめる。
【0168】
【表14】

【0169】
【表15】

【0170】
対数変換されたAUC0-tデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定(Duncan's Multiple Range Test)の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1のAUC0-tは、処置2および3のAUC0-tとは有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違は検出されなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表16にまとめる:
【表16】

【0171】
対数変換されたAUC0-infデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1のAUC0-infは、処置2および3のAUC0-infとは有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違は認められなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表17にまとめる:
【表17】

【0172】
対数変換されたCmaxデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1のCmaxは、処置3のCmaxとは有意に相違しなかった。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と2、ならびに、3と4を比較すると、Cmaxに統計的に有意な相違が認められた。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表18にまとめる:
【表18】

【0173】
Tmaxデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定により、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置1と2、処置3と4、ならびに、処置1と3の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。
【0174】
T1/2 elデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定では、処置1と3のT1/2 elに、統計的に有意な相違は認められなかった。しかし、ダンカンの多重検定により、処置1と2、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。
【0175】
K elデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定により、処置1と2、処置3と4に、統計的に有意な相違が認められたが、処置1と3には認められなかった。
【0176】
まとめと分析
摂食および絶食条件下での制御放出性メチルフェニデート20mg製剤1のAUCおよびCmax比を以下の表19にまとめる。絶食条件下での即時放出性メチルフェニデート10mg(Ritalin (商標登録)IR)と製剤1のAUCおよびCmax比の比較を以下の表20にまとめる。表21は、摂食条件下での即時放出性メチルフェニデート10mg(Ritalin (商標登録)IR)と製剤1に関する比較比を示す。
【0177】
処置1(製剤1、絶食時)対処置3(製剤1、摂食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2elに関して、ANOVAでは、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置1および3の対数変換AUC0-tおよびAUC0-inf、ならびに、非変換Tmaxに統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、対数変換されたCmaxと、非変換KelおよびT1/2elには、統計的に有意な相違が認められなかった。すべての製剤比、ならびに、試験製剤(製剤1、絶食条件)の対照製剤(製剤1、摂食条件)に対する相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。これを以下の表19にまとめる:
【表19】

【0178】
処置1(製剤1、絶食時)対処置2(Ritalin (商標登録)、絶食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2elに関して、ANOVAにより、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定では、処置1および2のすべてのパラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。Cmaxを除くすべての製剤比、ならびに、試験製剤(製剤1)の対照製剤(Ritalin )に対する相対平均AUC0-tおよびAUC0-infの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。これを以下の表20にまとめる:
【表20】

【0179】
処置3(製剤1、摂食時)対処置4(Ritalin (商標登録)、摂食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2elに関して、ANOVAにより、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定では、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infを除いて、処置3および4のすべてのパラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。Cmaxを除くすべての製剤比、ならびに、試験製剤(製剤1)の対照製剤(Ritalin )に対する相対平均AUC0-tおよびAUC0-infの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。これを以下の表21にまとめる:
【表21】

【0180】
結論
個々の血漿MPH時間曲線を見直したところ、次のことがわかった:
12時間での血漿MPH濃度は、摂食および絶食の両条件下で、被験者全員において、Ritalin より製剤1の方が高かった。
【0181】
絶食条件下では、12被験者のうち7〜10人、また摂食条件下では、12被験者のうち8〜12人で、二相プロフィールが明らかであった。従って、絶食条件下で安定したプラトーを示す平均曲線が、個々のプロフィールを十分に表すわけではない。このように、腸溶性コーティングは、絶食条件下であっても、何人かの被験者に二相プロフィールを生じさせた。
【0182】
絶食条件下での血漿MPH上昇の見かけ速度は、12被験者のうち、絶食条件下で8人、また、摂食条件下で4〜5人において、Ritalin IRのそれと同等か、それより速かった。従って、絶食条件下で同等の上昇速度を、また、摂食条件下でそれより遅い速度を示す平均曲線は、個々のプロフィールを大体表しているといえた。
【0183】
Ritalin IRと比較した製剤1の生物学的利用能は、摂食および絶食の両条件下で、許容可能であった(相対AUCinf 106%および112%)。摂食すると、製剤1およびRitalin の両方で、AUCの増加が認められた(それぞれ、13.1%、17.9%)。
【0184】
製剤1は、2回投与したRitalin IRより長続きする平均血漿MPH濃度時間プロフィールを有していた。横断的(across)試験比較によっても、製剤1は、Ritalin SRより長く続くプロフィールを有することがわかる。
【0185】
絶食条件下で、製剤1は、Ritalin IRに類似した血漿MPH上昇の平均初期速度を有し、投与後8時間まで、比較的平坦なプラトーを示した。
【0186】
摂食条件下では、製剤1からの血漿MPH初期上昇は、絶食条件下より遅く、プラトーは、二相プロフィールを示した。このことは、腸溶性コーティングが、制御放出性成分の放出を遅らせる、また、この遅れは、摂食条件下の方が長い(従って、IR成分により、初期血漿濃度ピークが、制御放出性成分からの放出開始前に降下する)という予想と一致した。
【0187】
製剤1を使用すると、血漿メチルフェニデート濃度の初期上昇速度が高くなり、しかも持続期間が長続きする。絶食条件下での長いプラトープロフィールから、摂食条件下での二相プロフィールへの変換は、予想通りであった。従って、製剤1は、急速に効果を発揮し且つ治療効果が長続きするという2つの目的を満たす可能性を有し、これらは、ADD/ADHD治療用の制御放出性メチルフェニデート製剤の望ましい特徴と考えられる。
【0188】
成人の健康なボランティアで完了した初期試験生物学的利用能調査から、1回投与(20mg)の上記製剤が、4時間の間隔をあけて2回投与される即時放出性メチルフェニデート(10mg)と同等の吸収度を有することが確認された。制御放出性製剤を用いた場合の最大血漿濃度は、即時放出性メチルフェニデートの1回目の投与で達成されるものと類似しており、投与後約10時間からは、即時放出性メチルフェニデートの2回目の投与後に得られるものより高い。
【0189】
これらの結果から、この製剤を朝、1回投与することにより、朝食および昼食時に、即時放出性メチルフェニデートを2回投与して得られる効果と少なくとも同等の臨床効果が達成される可能性があり、同時に、作用が長く持続するため、同じ日の後に、3回目の即時放出性メチルフェニデート投与の必要性を減らし得ることがわかる。
【0190】
実施例8
1回投与の製剤2(摂食および絶食時)、1回投与の製剤3(摂食および絶食時)および1回投与のRitalin SR(絶食時)の5通りの比較
5通りのブラインド試験を実施し、この試験で、摂食および絶食の両条件下で、1回投与する製剤2、20mgと、摂食および絶食の両条件下で、1回投与する製剤3、20mgと、絶食時に1回投与するRitalin SR、20mgとを比較した。発表された文献および医師からの実体験に基づく所見によれば、Ritalin SRを使用しているのは、メチルフェニデート治療患者の20%を下回る。
【0191】
健康な男性ボランティア12人に、それぞれ用量20mgの製剤2または製剤3を、いずれも、摂食および絶食の両条件下で、4時間毎に1回ずつ投与するか(n=12)、あるいは、緩徐放出性メチルフェニデート(Ritalin SR)20mgを絶食条件下で投与した。「摂食」条件とは、被験者が、高脂肪の朝食を取った後に、試験製剤を投与したことを意味する。一晩(少なくとも10.0時間)絶食した後、正常、健康かつ非喫煙の男性被験者に対して、ウイリアムズ設計5処置無作為化計画に従い、次の処置を実施した。
処置1:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤2、20mgカプセルを朝投与。
処置2:試験製剤:摂食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤2、20mgカプセルを朝投与。
処置3:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤3、20mgカプセルを朝投与。
処置4:試験製剤:摂食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤3、20mgカプセルを朝投与。
処置5:対照製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート緩徐放出性Ritalin SR(Novartis)、20mg錠剤を投与。
【0192】
試験期間の間に7日のウォッシュアウト期間を置いた。各試験期間中、投与前の1時間以内、ならびに、投与から0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、6.00、7.00、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後にそれぞれ、各被験者から血液サンプル(各1×5ml)を採取した。各血液サンプルから血漿を回収し、−20℃のフリーザーに貯蔵した後、血漿メチルフェニデート濃度を検定した。
【0193】
このデータは、図5〜8にグラフとして表す。図5は、絶食および摂食条件下の製剤2、ならびに、絶食条件下のRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図6は、絶食および摂食条件下の製剤3ならびに絶食条件下のRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。図7は、絶食条件下の製剤2および3についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図8は、摂食条件下の製剤2および3についての、平均血漿濃度対時間を示す。
【0194】
絶食および摂食条件下の制御放出性メチルフェニデート20mg(製剤2および3)と、絶食条件下の緩徐放出性メチルフェニデート20mg(Ritalin (商標登録)SR)の完全薬物動力学的パラメーターを以下の表22〜24にまとめる。
【0195】
【表22】

【表23】

【表24】

【0196】
対数変換されたCmaxデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置3のCmaxは、処置4および5のCmaxと有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と処置2、または処置1と処置5との間に、統計的に有意な相違は認められなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表25にまとめる:
【表25】

【0197】
対数変換されたTmaxデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定により、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになった。ダンカンの多重検定によれば、処置1と2、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。また、ダンカンの多重検定では、処置1と3、処置3と5の比較において、Tmaxに、統計的に有意な相違は認められなかった。
【0198】
T1/2 elデータに関して実施されたANOVAにより、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになった。ダンカンの多重検定によれば、処置1と3、処置3と4、ならびに、処理1と5のT1/2 elには、統計的に有意な相違は認められなかった。しかし、ダンカンの多重検定では、処置3と5の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。
【0199】
K elデータに関して実施されるANOVAにより、このパラメーターについて各処置間で、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定では、処置1と2、処置3と4、または処置1と5を比較した際、K elに各処置間で統計的に有意な相違は認められなかった。しかし、ダンカンの多重検定により、処置3と5の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認められた。
【0200】
対数変換されたAUC0-tデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定により、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1および3のAUC0-tは、処置2および4のAUC0-tとはそれぞれ有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と処置5、または処置3と処置5をそれぞれ比較した際、該パラメーターに、統計的に有意な相違は検出されなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表26にまとめる:
【表26】

【0201】
対数変換されたAUC0-infデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定により、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1および3のAUC0-infは、処置2および4のAUC0-infとはそれぞれ有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と処置3、または処置3と処置5を比較した際、該パラメーターに、統計的に有意な相違は認められなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表27にまとめる:
【表27】

【0202】
処置1(製剤2、絶食時)対処置2(製剤2、摂食時)
ANOVAでは、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T1/2elおよびKelに関して、摂食条件および絶食条件、すなわち処置1および処置2間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置1および2の対数変換AUC0-tとAUC0-inf、ならびに、非変換Tmaxに統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、対数変換されたCmaxと、非変換T1/2elおよびKelに、各処置間で、統計的に有意な相違は認められなかった。すべての製剤比、ならびに、相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、以下の表28に示されるように80〜125%の範囲内に認められた。従って、製剤2については、食物が、メチルフェニデートの吸収度を増加することが明らかである。しかし、この食物効果は、平均して20%に満たない。:
【表28】

【0203】
処置3(製剤3、絶食時)対処置4(製剤3、摂食時)
ANOVAでは、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置3および4の対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmaxに、統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、T1/2elおよびKelについては、各処置間に統計的に有意な相違が認められなかった。Cmaxの幾何信頼区間が90%を下回る以外は、すべての製剤比、ならびに、相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、以下の表29に示されるように、80〜125%の範囲内に認められた。従って、製剤3については、食物が、メチルフェニデートの吸収度を増加することが明らかである。しかし、この食物効果は、平均して20%に満たない。
【0204】
【表29】

【0205】
処置1(製剤2、絶食時)対処置5(Ritalin SR(商標登録)、絶食時)
ANOVAにより、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置1および5のすべてのパラメーターに、統計的に有意な相違は認められなかった。以下の表30に示すように、すべての製剤比、ならびに、対照製剤に対する試験製剤の相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。従って、製剤2は、絶食条件下で、対照製剤Ritalin SR(商標登録)と生体内利用率が等価である。
【0206】
【表30】

【0207】
処置3(製剤3、絶食時)対処置5(Ritalin SR(商標登録)、絶食時)
ANOVAにより、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置3および5の対数変換されたCmax、ならびに、非変換のT1/2elおよびKelに、統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、対数変換されたAUC0-tおよびAUC0-inf、ならびに、非変換のTmaxに、各処置間で、統計的に有意な相違は認められなかった。以下の表31に示すように、すべての製剤比、ならびに、対照製剤に対する試験製剤の相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。従って、製剤3は、絶食条件下で、対照製剤Ritalin SR(商標登録)と生体内利用率が等価である。
【0208】
【表31】

【0209】
結論
Ritalin SR(商標登録)に対する製剤2の生物学的利用能は、絶食条件下で、許容可能であった(相対AUCinf 101%、摂食条件下では試験せず)。
【0210】
絶食条件下でのRitalin SR(商標登録)の生物学的利用能は、実施例7に記載したように、Ritalin IR(商標登録)のそれと類似している(それぞれ、AUCinf 29.2対46.5ng.h/mL)。文献データによれば、Ritalin (商標登録)IRおよびSRは、同等の速度で吸収されることがわかっており、これは、実施例7および8に示した試験の比較が妥当であることを示している。
【0211】
製剤1および2の生物学的利用能は、絶食および摂食条件下で、類似している(絶食時:49.8.対51.2 ng.h/mL;摂食時:55.7対57.9 ng.h/mL)。
【0212】
製剤2およびRitalin SR(商標登録)の平均曲線から、血漿MPHの初期上昇速度は、Ritalin SR(商標登録)と比較して、製剤2の方が若干速い。摂食条件下では、製剤2での血漿MPHの上昇速度は、低下し、絶食時の製剤2および絶食時のRitalin SR(商標登録)と比較して、Tmaxが遅れる。
【0213】
Ritalin SR(商標登録)に対する製剤3の生物学的利用能は、絶食条件下で、許容可能であった(相対AUCinf 100.8%、摂食条件下では試験せず)。
【0214】
製剤1および3の生物学的利用能は、絶食および摂食条件下で、類似している(絶食時:50.0対51.2 ng.h/mL;摂食時:56.3対57.9 ng.h/mL)。また、製剤2および3がほとんど同じAUC値を有することにも留意すべきである。
【0215】
製剤3およびRitalin SR(商標登録)の平均曲線から、血漿MPH濃度の初期上昇速度は、Ritalin SR(商標登録)と比較して、製剤3の方が若干速い。
【0216】
製剤2とは対照的に、濃度の初期上昇速度に対する食物の影響は最小限である。製剤3が、腸溶性コーティングを含まないことから、これは、腸溶性コーティングが、同じビーズの一部である(製剤1の場合、IRコーティングの下)場合と、別個のビーズである(製剤2のように)場合の両方で、食物が、腸溶性コーティングを含む製剤のIR成分からの初期放出を遅らせることを示唆している。
【0217】
また、製剤2とは対照的に、製剤3の平均曲線のTmaxは、絶食および摂食条件下で、Ritalin SR(商標登録)のそれと同様の時間に出現する。製剤2(および製剤1)については、摂食条件下の第2吸収段階のTmaxが、Ritalin SR(商標登録)に対して、実質的に遅れている。
【0218】
結論−実施例7および8
1.少なくとも絶食条件下で、初期上昇速度が高く、且つ、効果が長く持続する。絶食条件下で長く続くプラトー・プロフィールから、摂食条件下での二相プロフィールへの変換は、予想通りである。これらの条件は、極端な「食物ストレス」を示すことから、正常の食事と時間を組み合わせて投与すれば、中間のプロフィールを提供すると推測できる。また、正常の食事スケジュールでは、子供の胃内容排出は、高脂肪の食事を取った成人より速いため、第2吸収段階が、早く起こると共に、12時間以降は濃度が低下する傾向があると考えられる。従って、製剤1は、急速に効果を発揮し、且つ効果が長く持続する、という2つの目的を満たす。
【0219】
2.製剤2はまた、絶食条件下でRitalin SR(商標登録)と非常に類似しているが、摂食条件下ではピークの遅れが認められ、その結果、投与後6時間以降、血漿MPH濃度が、Ritalin SR(商標登録)(絶食時)より高くなる。製剤2の制御放出性成分は、製剤1より放出が速く、血漿MPH濃度は、投与後10時間から、製剤2の方が低い。
【0220】
3.全体として、製剤3(腸溶性コーティングなし)は、絶食および摂食の両条件下で、Ritalin SR(商標登録)と非常に類似したプロフィールを有する。製剤3のIR成分により、絶食条件下のRitalin SR(商標登録)と比較して、初期吸収速度が増加する。同日中で時間が経過すると、2つの製剤の濃度は類似してくることから、全用量の成分の放出を遅らせない限り、高い初期上昇速度と、同日の時間経過後の濃度増加は、同じ用量では不可能であるという考えが確認された。
【0221】
実施例9
実施例9は、製剤を調製する本発明の別の実施形態に関する。該製剤は、最初に作用を迅速に発現するだけでなく持続時間も延長されており、また、そのピーク濃度がリタリンIRを下回ることがない一方で、持続時間は、夜間に不眠を引き起こすほど長期間に及ぶものではない。理想的な標的血漿薬物濃度プロフィールを図9に示す。このプロフィールは、リタリンIR、リタリンSR、製剤1(実施例7に記載)および実施例9の「標的」製剤をプロットしたものである。
【0222】
ヒトにおけるメチルフェニデートの一次排泄を想定して、一次排泄速度定数を、リタリンIRを経口投与した後の血漿メチルフェニデート濃度曲線(片対数用紙にプロット)の後半部分の直線勾配から推定した。上述の製剤1の吸収プロフィールは、Wagner-Nelsen法(「Fundamentals of Clinical Pharmacokinetics」, John G. Wagner, Drug Intelligence Publications, Inc. 1975, 174頁)を利用して、血漿薬物濃度プロフィールに逆重畳積分計算を行って求めることができる。図10に示すように、in vitroにおける薬物溶解プロフィールはin vivoにおける吸収プロフィールとよく相関している。この相関関係は、in vitro溶解法を利用してin vivoにおける薬物吸収を予測できるということを示唆する。
【0223】
標的吸収/溶解プロフィールを得るために、ヒトにおけるメチルフェニデートの一次排泄を想定して、一次排泄速度定数を、Wagner-Nelsen法を利用して、リタリンIRを経口投与した後の血漿メチルフェニデート濃度曲線(片対数用紙にプロット)の最終の直線勾配から推定した。標的吸収プロフィールを図11に示す。図10に示したようにin vitro/in vivo間に相関関係が確立されることから、同様の薬物放出機構が利用されていると想定すれば、このin vivo吸収曲線を標的溶解プロフィールとして採用することができる。
【0224】
実施例10
実施例10では、溶融押出造粒(MEG)技術を利用して本発明のメチルフェニデート製剤を調製する。成分を下記の表32に示す。
【0225】
【表32】

【0226】
製造方法
メチルフェニデート塩酸塩、Eudragit RSPO、ステアリルアルコール、Eudragit L100-55およびAvicelを配合する。粉末状配合物を回転スクリュー溶融押出機へ供給する。加熱帯域を80℃に、スクリュー速度を30rpmに設定し、粉末を高温の押出機中へ送り込み、温かいストランドとして1mmの孔を有するダイプレートから押出す。押出されたストランドをコンベヤーベルト上で冷却する。次いで冷却したストランドを細かく砕く。次いで砕いたストランドを、Fitzmillを用いて顆粒へ粉砕する。次いで顆粒をタルクおよびステアリン酸マグネシウムと配合し、打錠機を用いて錠剤へ圧縮する。
【0227】
パドル速度を100rpmに設定したUSPバスケット装置1を用い、500mlのSGF中pH1.2にて2時間、次いで500mlのリン酸緩衝液(pH5.8)中にて予想されるこれらの錠剤の溶解を表33に示す。
【0228】
【表33】

【0229】
実施例11
実施例11では、実施例10に記載したような溶融押出造粒(MEG)技術を利用して本発明のメチルフェニデート製剤を調製する。成分を表34に示す。
【0230】
【表34】

パドル速度を100rpmに設定したUSPバスケット装置1を用い、500mlのSGF中pH1.2にて2時間、次いで500mlのリン酸緩衝液(pH5.8)中にて予想されるこれらの錠剤の溶解を表35に示す。
【0231】
【表35】

【0232】
実施例12
実施例12では、直接圧縮技術を利用した、本発明の制御放出型メチルフェニデート塩酸塩錠剤を製造する別の方法を使用する。
【0233】
実施例12の成分を下記の表36に示す。
【0234】
【表36】

【0235】
製造方法
該成分を配合する。配合した材料を錠剤へ圧縮する。上記と同様の方法論を用いてこれらの錠剤を溶解について試験し、得られた結果を下記の表37に示す。
【0236】
【表37】

【0237】
実施例13
実施例13では、実施例12の制御放出型メチルフェニデート塩酸塩錠剤の製造方法を利用し、直接圧縮技術によって別の製剤を製造する。実施例13の成分を下記の表38に示す。
【0238】
【表38】

【0239】
上記と同様の方法論を用いて錠剤を溶解について試験し、得られた結果を下記の表39に示す。
【0240】
【表39】

【0241】
上述の実施例は限定を意味するものではない。本発明の多くの他の改変が当業者には明らかであり、このような改変は特許請求の範囲の範囲内に含まれるものと思料する。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】図1は、被検者を絶食条件下で製剤1およびRitalin(登録商標)で処置した場合のメチルフェニデート(methylphenidate)の平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図2】図2は、被検者を摂食条件下で製剤1およびRitalin(登録商標)で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図3】図3は、被検者を絶食条件下および摂食条件下で製剤1で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図4】図4は、被検者を絶食条件下および摂食条件下でRitalin(登録商標)で被験者を処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図5】図5は、被検者を、絶食条件下および摂食条件下で製剤2で処置した場合と、絶食条件下でRitalin(登録商標)SRで処置した場合とのメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図6】図6は、被検者を、絶食条件下および摂食条件下で製剤3で処置した場合と、絶食条件下でRitalin(登録商標)SRで処置した場合とのメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図7】図7は、被検者を絶食条件下で製剤2および製剤3で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図8】図8は、被検者を摂食条件下で製剤2および製剤3で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図9】図9は、本発明の標的血漿薬物濃度プロフィールの1つを示すグラフである。
【図10】図10は、製剤1におけるin vitro薬物溶解プロフィールとin vivo吸収プロフィールとの相関を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の製剤の標的吸収プロフィールを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、基材の約2〜約25%の重量を得るように適用される少なくとも1種のpH依存性コーティングとを含有する基材を含んでなる経口製剤であって、製剤の最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約0.5〜約4時間とし、ピーク血漿濃度を経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約3ng/ml〜約6.5ng/mlとするものであり、該ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍であり、米国薬局方XXII(1990)のUSP装置1(バスケット法)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液500ml中に入れ、そして、前記最初の2時間の後は、酵素を含まない人工腸液中に入れて測定する、in vitroにおいて下記の溶解を示し、

そして、製剤に含まれるメチルフェニデートによる作用が、経口投与してから約8〜約12時間後に有効血漿濃度以下に低下することを特徴とする、前記経口製剤。
【請求項2】
最大血漿濃度に至るまでの時間を、経口投与後約0.5〜約2時間とする、請求項1記載の経口製剤。
【請求項3】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍である、請求項2記載の経口製剤。
【請求項4】
経口製剤に含まれるメチルフェニデートによる作用が、経口投与してから約8〜約10時間後に有効血漿濃度以下に低下する、請求項3記載の経口製剤。
【請求項5】
図1で見られるような「方形波」状の血漿プロフィールを示す、請求項1記載の経口製剤。
【請求項6】
in vitroにおいて下記の溶解を示す、請求項1記載の経口製剤:

【請求項7】
メチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩の部分が、即時放出性製剤の中にある、請求項1記載の経口製剤。
【請求項8】
pH依存性コーティングが、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyproplmethylcellulose phthalate)、pH依存性メタクリル酸エステルコポリマー及びゼインからなる群から選ばれる、請求項1記載の経口製剤。
【請求項9】
pH依存性コーティングが、pH依存性メタクリル酸エステルコポリマーである、請求項8記載の経口製剤。
【請求項10】
基材が、マトリクスに含まれるメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩を含む、請求項1記載の経口製剤。
【請求項11】
マトリクスが、マトリクス球状物錠剤コアの大部分である、請求項10記載の経口製剤。
【請求項12】
マトリクスが、溶融造粒技術により製造される、請求項10記載の経口製剤。
【請求項13】
マトリクスが、溶融押出技術により製造される、請求項10記載の経口製剤。
【請求項14】
基材が、不活性のビーズ上にコーティングされたメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩を含む、請求項1記載の経口製剤。
【請求項15】
コーティングされた不活性のビーズが、pH依存性コーティングによりオーバーコーティングされている、請求項14記載の経口製剤。
【請求項16】
有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、基材の約2〜約25%の重量を得るように適用される少なくとも1種のpH依存性コーティングとを含有する基材を含んでなる経口製剤であって、米国薬局方XXII(1990)のUSP装置1(バスケット法)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液500ml中に入れ、そして、前記最初の2時間の後は、酵素を含まない人工腸液中に入れて測定する、in vitroで製剤を溶解させた場合に、薬物を0.25時間後に約0〜約45%放出させ、約1時間後に約10〜約50%放出させ、約4時間後に約30〜約80%放出させ、8時間後に約65%以上放出させ、約12時間後に約80%以上放出させるものであり、該経口製剤はさらに、ヒト患者へ経口投与した場合に、最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約0.5〜約2時間とし、作用持続時間を経口投与後約8〜約10時間とするものであり、該薬物の血漿濃度を、経口投与後約8〜約10時間で最小有効血漿濃度未満のレベルまで急速に低下させることを特徴とする、前記経口製剤。
【請求項17】
経口投与した場合に、経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約4ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度をもたらす、請求項16記載の経口製剤。
【請求項18】
経口投与した場合に、経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約5ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度をもたらす、請求項16記載の経口製剤。
【請求項19】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍である、請求項16記載の経口製剤。
【請求項20】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍である、請求項16記載の経口製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−119479(P2007−119479A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315261(P2006−315261)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【分割の表示】特願2000−587770(P2000−587770)の分割
【原出願日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】