説明

制振塗料組成物

【課題】マイカの配合量を増加した場合であっても、組成物の粘性が高まることを抑制することのできる制振塗料組成物を提供する。
【解決手段】制振塗料組成物には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜の制振性を高めるためのマイカとが含有されている。同制振塗料組成物には、さらにアルキルエーテルリン酸が含有されている。アルキルエーテルリン酸は、“X=親水基の分子量×20/分子量”に示される親水性と疎水性とのバランス(X)を4〜14の範囲としていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイカを含有する制振塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜の制振性を高めるためのマイカとを含有した制振塗料組成物が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】国際公開第97/42844号パンフレット
【特許文献2】特開2002−302583号公報
【特許文献3】国際公開第99/28394号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/40391号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水系樹脂分散液を含む制振塗料組成物において、マイカの配合量を増加させることで塗膜の制振性能を高めることができるようになる。ところが、マイカの配合量の増大に伴って組成物の粘性が過剰に高まる結果、組成物の取り扱いが困難となるおそれがあった。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイカの配合量を増加した場合であっても、組成物の粘性が高まることを抑制することのできる制振塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の制振塗料組成物は、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるためのマイカとを含有してなる制振塗料組成物であって、アルキルエーテルリン酸をさらに含有することを要旨とする。
【0006】
上記アルキルエーテルリン酸は、リン酸イオンが陰イオンであることから陰イオン界面活性剤の一種であり、モノエステル及びジエステルの少なくとも一方を含む。こうしたアルキルエーテルリン酸を、例えば非イオン界面活性剤に変更したとしても、組成物の粘性が高まることを有効に抑制することができない。また、アルキルエーテルリン酸を例えばアルキルエーテル硫酸に変更したとしても、組成物の粘性が高まることを有効に抑制することができない。この発明は、本発明者らが、アルキルエーテルリン酸が組成物の粘性が高まることを有効に抑制することができることを見出すことでなされたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振塗料組成物において、前記アルキルエーテルリン酸は、その親水性と疎水性とのバランスについて式(1):
親水性と疎水性とのバランス(X)=親水基の分子量×20/分子量 ・・・(1)
で表したとき、その親水性と疎水性とのバランス(X)を4〜14の範囲とする化合物であることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の制振塗料組成物において、前記アルキルエーテルリン酸は、前記式(1)に示される親水性と疎水性とのバランス(X)を8.4〜9.7の範囲とする化合物であることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の制振塗料組成物において、前記アルキルエーテルリン酸がポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であり、同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するアルキル鎖の炭素数が12〜18の範囲であるとともに同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するエチレンオキサイドの付加モル数が2〜4の範囲であることを要旨とする。
【0010】
上記アルキル鎖の炭素数は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸がジエステルの場合には、各アルキル鎖の炭素数を平均した炭素数を表している。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制振塗料組成物において、前記アルキルエーテルリン酸の含有量が前記マイカ100質量部に対して1質量部以上であることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制振塗料組成物において、前記マイカが35質量%以上含有されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイカの配合量を増加した場合であっても、組成物の粘性が高まることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における制振塗料組成物には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜の制振性を高めるためのマイカとが含有されている。制振塗料組成物には、さらにアルキルエーテルリン酸が含有されている。
【0014】
樹脂粒子を構成する高分子材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル/アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの高分子材料は変性体であってもよい。
【0015】
樹脂粒子は、単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、複数種の高分子材料から形成されていてもよい。さらに、水系樹脂分散液には、これらの高分子材料から構成される樹脂粒子を単独で含有させてもよいし、複数種の樹脂粒子を含有させてもよい。
【0016】
高分子材料の中でも、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易であるという観点からアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。
【0017】
樹脂粒子を分散する水系分散媒としては、水、及び水と一価アルコールとの混合液が挙げられる。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
【0018】
マイカは、樹脂粒子から塗膜が形成される際に塗膜に充填されることで、塗膜の制振性を高める。マイカとしては、天然マイカ及び合成マイカが挙げられる。なお、マイカは、膨潤性マイカであってもよいし、非膨潤性マイカであってもよい。
【0019】
マイカの含有量は、制振塗料組成物中に含まれる樹脂粒子100質量部に対して100質量部以上、より好ましくは130質量部以上、さらに好ましくは150質量部以上である。マイカの含有量が制振塗料組成物中に含まれる樹脂粒子100質量部に対して100質量部未満である場合、塗膜の制振性を十分に高めることができないおそれがある。なお、制振塗料組成物中に含まれる樹脂粒子100質量部に対するマイカの含有量の上限は、制振塗料組成物及び塗膜中におけるマイカの分散性を維持するという観点から、250質量部以下であることが好ましい。
【0020】
また、制振塗料組成物中には、マイカが35質量%以上含有されることが好ましい。これにより、樹脂粒子に対するマイカの配合比が高まる結果、塗膜において所望する制振性が得られ易くなる。
【0021】
アルキルエーテルリン酸は、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させる。アルキルエーテルリン酸としては、例えば炭素数8〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルエーテルリン酸、炭素数8〜24の分岐アルキル基を有するアルキルエーテルリン酸、炭素数8〜16のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、及び炭素数8〜12のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。
【0022】
炭素数8〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルエーテルリン酸としては、オクチルエーテルリン酸、イソオクチルエーテルリン酸、デシルエーテルリン酸、ドデシルエーテルリン酸、トリデシルエーテルリン酸、テトラデシルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0023】
炭素数8〜24の分岐アルキル基を有するアルキルエーテルリン酸としては、イソオクチルエーテルリン酸、2−エチルヘキシルエーテルリン酸、イソトリデシルエーテルリン酸、イソヘキサデシルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0024】
炭素数8〜16のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンイソオクチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0025】
炭素数8〜12のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0026】
アルキルエーテルリン酸として例示した化合物は、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。なお、アルキルエーテルリン酸は、モノエステルであってもよいし、ジエステルであってもよい。また、アルキルエーテルリン酸は、モノエステルとジエステルとの混合物であってもよい。アルキルエーテルリン酸のジエステルは、同一のアルキル基が結合したものであってもよいし、異なる二種のアルキル基が結合したものであってもよい。
【0027】
アルキルエーテルリン酸の中でも、同アルキルエーテルリン酸について親水性と疎水性とのバランスを下記式(1)で示したとき、そのバランス(X)を4〜14の範囲とする化合物であることが好ましく、同バランス(X)を8.4〜9.7の範囲とする化合物であることがより好ましい。
【0028】
親水性と疎水性とのバランス(X)=親水基の分子量×20/分子量 ・・・(1)
親水性と疎水性とのバランス(X)が8.4〜9.7の範囲である場合、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させる効果が顕著に得られるようになる。
【0029】
例えばポリエキシエチレンアルキルエーテルリン酸の場合には、上記バランス(X)は「−(CHCHO)−PO」を親水基として算出される。また例えば、アルキルエーテルリン酸がモノエステル及びジエステルを含む場合には、上記バランス(X)はモノエステルのバランス(X)の値及びジエステルのバランス(X)の値とそれらモノエステル及びジエステルのモル比とから平均値として算出される。
【0030】
また、アルキルエーテルリン酸の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であり、同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するアルキル鎖の炭素数は12〜18の範囲であるとともに同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸のエチレンオキサイドの付加モル数は2〜4の範囲であることが好ましい。ここで、アルキル鎖の炭素数は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸がジエステルの場合には、各アルキル鎖の炭素数を平均した炭素数を表している。
【0031】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、そのアルキル鎖の炭素数、及びエチレンオキサイドの付加モル数によって、親水性と疎水性とのバランス(X)が調整される。このため、アルキル鎖の炭素数、及びエチレンオキサイドの付加モル数を上記範囲とすることで、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させる効果が顕著に得られるようになる。
【0032】
制振塗料組成物中において、アルキルエーテルリン酸の含有量は、マイカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。アルキルエーテルリン酸の含有量を、マイカ100質量部に対して1質量部以上となるように設定することで、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させる効果が十分に得られるようになる。なお、アルキルエーテルリン酸の含有量の上限は、特に限定されないが、アルキルエーテルリン酸の過剰な配合は、不経済となるおそれがあることから、マイカ100質量部に対して例えば10質量部以下であることが好ましい。
【0033】
なお、アルキルエーテルリン酸は、アルキルエーテルリン酸塩として配合してもよい。アルキルエーテルリン酸塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
制振塗料組成物には、その他の成分として、制振性付与剤、ゲル化剤、発泡助剤、分散剤、粘度調整剤、増粘剤、流動改良剤、硬化剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、沈降防止剤等を必要に応じて配合することが可能である。制振性付与剤としては、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。ゲル化剤としては、有機ゲル化剤と無機ゲル化剤とに分類され、有機ゲル化剤としてはでんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられ、無機ゲル化剤としては硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。また、マイカ以外の無機充填剤を含有させてもよい。マイカ以外の無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス、シリカ、アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉄、アスベスト、酸化チタン、酸化鉄、珪藻土、ゼオライト、フェライト等が挙げられる。
【0034】
制振塗料組成物は、水系樹脂分散液、マイカ、アルキルエーテルリン酸等を攪拌機等の公知の混合手段を用いて混合することによって調製することができる。このとき、制振塗料組成物に含まれるアルキルエーテルリン酸は、マイカを含有した組成物の粘性が高まることを抑制する。
【0035】
このように構成された制振塗料組成物には、所定量のマイカが含有されているため、制振塗料組成物の乾燥を通じて形成される塗膜では、制振性が高められている。制振塗料組成物の制振性能は、制振塗料組成物の損失係数又は損失弾性率によって示される。つまり、制振塗料組成物の損失係数の値又は損失弾性率の値が高ければ高いほど、制振塗料組成物の制振性能が優れることが示される。制振塗料組成物の損失係数は周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができるとともに損失弾性率は周知の動的粘弾性測定装置により測定することができる。
【0036】
制振塗料組成物は、振動エネルギーの抑制について要求される各種分野において利用することができる。制振塗料組成物の適用分野としては、例えば自動車、壁材、床材、屋根材、フェンス等の建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。
【0037】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)制振塗料組成物において、マイカの配合量を増加させることで塗膜の制振性能を高めることができるようになる。しかしながら、マイカの配合量の増大に伴って組成物の粘性が過剰に高まる結果、組成物の取り扱いが困難となるおそれがある。本実施形態の制振塗料組成物に含有されるアルキルエーテルリン酸は、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させるため、制振塗料組成物においてマイカの配合量を増加した場合であっても、その組成物の粘性が高まることを抑制することができる。従って、マイカの配合量を増加することで制振性能を高めようとした場合であっても、組成物の取り扱いが容易となる。例えば、組成物の粘性が過剰に高まることを防止することで、適用物への塗布に適した粘性を維持することができるようになる。
【0038】
(2)また、マイカの配合量の増大に伴って組成物の粘性が高まるため、水系樹脂分散液にマイカを分散させ難くなる傾向となる。マイカが十分に分散されない場合には、マイカの配合量に見合った制振性能が発揮させないおそれがあった。本実施形態の制振塗料組成物では、粘性が高まることを抑制することができるため、マイカを分散させ易くなる。従って、マイカの配合量に見合った制振性能を容易に発揮させることができるようになる。
【0039】
(3)アルキルエーテルリン酸は、親水性と疎水性とのバランス(X)を4〜14の範囲としていることで、組成物の粘性が高まることをさらに抑制することができる。特に、上記バランス(X)を8.4〜9.7の範囲としているアルキルエーテルリン酸を含有させることで、組成物の粘性が高まることを顕著に抑制することができる。
【0040】
(4)アルキルエーテルリン酸がポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であり、同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するアルキル鎖の炭素数が12〜18の範囲であるとともに同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するエチレンオキサイドの付加モル数が2〜4の範囲であることが好ましい。このように構成した場合、組成物の粘性が高まることをさらに抑制することができる。
【0041】
(5)アルキルエーテルリン酸の含有量は、マイカ100質量部に対して1質量部以上となるように設定することで、マイカの配合された水系樹脂分散液の粘性を低下させる効果が十分に得られるようになる。
【0042】
(6)前記マイカは、35質量%以上含有されることで、優れた制振性能が発揮されるようになる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
水系樹脂分散液としてのアクリル系樹脂分散液211.5質量部(樹脂粒子114.1質量部)に対して、アルキルエーテルリン酸としてのトリデシルエーテルリン酸を6質量部、及びマイカを167.4質量部配合した後、プロペラ式の攪拌機を用いて撹拌することにより、制振塗料組成物を調製した。なお、制振塗料組成物には、制振性付与剤、分散剤、増粘剤、造膜助剤等が樹脂粒子に対して所定量となるように含有されている。
【0044】
(実施例2〜8)
実施例2〜8においては、アルキルエーテルリン酸の種類、及びマイカの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして制振塗料組成物を調製した。
【0045】
表1には、各実施例で使用したアルキルエーテルリン酸について示している。なお、X算出値は、前記(1)式より親水性と疎水性とのバランス(X)を算出した値を示している。前記バランス(X)の算出において、アルキルエーテルリン酸がモノエステル及びジエステルを所定のモル比で含有する場合には、そのモル比に基づいた平均値として算出している。また、実施例3において、アルキル鎖の炭素数、エチレンオキサイドの付加モル数、及びX算出値は、二種のアルキルエーテルリン酸のモル比から算出した平均値である。
【0046】
【表1】

(比較例1)
比較例1においては、アルキルエーテルリン酸を配合せずに、ポリオキシエチレントリデシル硫酸を6質量部配合するとともに、マイカの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして制振塗料組成物を調製した。
【0047】
(比較例2)
比較例2においては、アルキルエーテルリン酸を配合せずに、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルを6質量部配合するとともに、マイカの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして制振塗料組成物を調製した。
【0048】
<制振塗料組成物の粘度測定>
各例の制振塗料組成物について、B型粘度計(ロータ:No.7、ロータ回転数:20rpm)を用いて、測定温度20℃の条件で粘度を測定した。
【0049】
<粘性評価結果>
各例の制振塗料組成物についての粘度測定の結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

表2の結果から明らかなように、各実施例においては、各比較例よりもマイカの配合量が多い。しかしながら、各実施例の粘度は、各比較例の粘度よりも低い値を示している。すなわち、各実施例においてはアルキルエーテルリン酸が含有されているため、マイカの配合量を増加した場合であっても、組成物の粘性が高まることを抑制することができる。
【0051】
また、表1に示されるように実施例2〜6において配合したポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、そのアルキル鎖の炭素数が12〜18の範囲であるとともにエチレンオキサイドの付加モル数が2〜4の範囲のものである。そして表2の結果から明らかなように、これら実施例2〜6は、実施例1、7及び8よりもマイカの配合率を高めているものの、実施例1、7及び8よりも粘性が低いことがわかる。
【0052】
また、表1に示されるように実施例2〜5において配合したポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、親水性と疎水性とのバランス(X)を8.4〜9.7の範囲としている。そして表2の結果から明らかなように、実施例2〜5は、実施例1及び6〜8よりもマイカの配合率を高めているものの、実施例1及び6〜8よりも粘性が低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるためのマイカとを含有してなる制振塗料組成物であって、
アルキルエーテルリン酸をさらに含有することを特徴とする制振塗料組成物。
【請求項2】
前記アルキルエーテルリン酸は、その親水性と疎水性とのバランスについて式(1):
親水性と疎水性とのバランス(X)=親水基の分子量×20/分子量 ・・・(1)
で表したとき、その親水性と疎水性とのバランス(X)を4〜14の範囲とする化合物であることを特徴とする請求項1に記載の制振塗料組成物。
【請求項3】
前記アルキルエーテルリン酸は、前記式(1)に示される親水性と疎水性とのバランス(X)を8.4〜9.7の範囲とする化合物であることを特徴とする請求項2に記載の制振塗料組成物。
【請求項4】
前記アルキルエーテルリン酸がポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であり、同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するアルキル鎖の炭素数が12〜18の範囲であるとともに同ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の有するエチレンオキサイドの付加モル数が2〜4の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の制振塗料組成物。
【請求項5】
前記アルキルエーテルリン酸の含有量が前記マイカ100質量部に対して1質量部以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制振塗料組成物。
【請求項6】
前記マイカが35質量%以上含有されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制振塗料組成物。

【公開番号】特開2009−242704(P2009−242704A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93446(P2008−93446)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】