説明

制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物

【課題】 家電分野、事務機分野や情報機器分野に有効に使用できる制振性の優れた難燃樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂またはこれとポリスチレン系樹脂40〜85重量部、(B)スチレン系化合物の重合体ブロック10〜35重量%およびビニル結合の総含有量が40%以上であり、かつ残留する不飽和結合の70%以上が水素添加されたイソプレンの重合体ブロックとから成るブロック共重合体樹脂5〜30重量部、(C)ポリオレフィン系樹脂0〜2重量部未満および(D)芳香族燐酸エステル系難燃剤5〜30重量部から成り、かつ(B)+(C)成分が分散相を形成し、かつ分散粒子の平均径が0.2〜3μmの範囲である制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は耐熱性、寸法安定性あるいは電気特性等に優れるため家電分野、事務機分野等に広く用いられている。
【0003】
近年、騒音、振動等の環境問題が注目されてきているため、構造材料に制振性が要求されることが多くなっている。
【0004】
一方、情報機器分野では情報の容量や処理速度の大幅な増加に伴い駆動部に高速回転が要求されるに至っている。駆動部が高速で回転すると当然振動が発生し易くなり、読み込みミスや誤作動を招き易い。
【0005】
従って、家電分野、事務機分野や情報機器分野に広く用いられているポリフェニレンエーテル系樹脂にも当然制振性が要求されるに至っている。
【0006】
元来、ポリフェニレンエーテル系樹脂の制振性は決して優れるものではない。ポリフェニレンエーテル系樹脂の制振性を改良する方法として下記特許文献1にはビニル芳香族の重合体ブロックとイソプレンまたはイソプレン−ブタジエンから成る0℃以上にtanδの主分散ピークを持つ未水添または水添された重合体ブロックとのブロック共重合体を配合する方法が開示されている。しかし、未水添のブロック共重合体を配合したものは、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形温度で成形すると、共役二重結合が熱架橋するために流動性の低下や外観の悪化が発生するため実用的でない。またポリフェニレンエーテル系樹脂中のブロック共重合体樹脂の分散粒子径が小さくなり過ぎると制振効果が極端に悪化する。
【0007】
ポリフェニレンエーテル系樹脂とビニル芳香族の重合体ブロックと水添されたイソプレンの重合体ブロックとのブロック共重合体を含む樹脂組成物に関わる技術が下記特許文献2に開示されている。しかし、この技術はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリオレフィンとの樹脂組成物を得ることを目的としたものであり、水添されたブロック共重合体は両者の相溶性を向上させるために用いられるものである。従って、この技術は優れた制振性を持つ樹脂組成物の適正範囲を示すものではない。
【0008】
樹脂材料を家電分野、事務機分野や情報機器分野に用いる時は殆どの場合難燃性が要求される。難燃化する場合、ハロゲン化合物や三酸化アンチモンを用いるのでは時代の要求に合わないし、燐酸エステル類で難燃化できれば環境上好ましい。しかしオレフィン化合物の重合体が連続相を形成するような樹脂組成物を燐酸エステル類で難燃化する事は不可能である。従って、特許文献2に開示されている技術の範囲を燐酸エステル類で適正に難燃化することはできない。
【特許文献1】特開平3−181552号公報
【特許文献2】特開平7−165998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は家電分野、事務機分野や情報機器分野に有効に使用できる制振性の優れた難燃樹脂組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、熱による流動性の低下や外観の悪化がなく、環境に悪影響を及ぼさない難燃剤で難燃化でき、かつ優れた制振性を持つポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を得ることを目的に鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物の重合体ブロックと水添されたイソプレンの重合体ブロックとのブロック共重合体を添加するに際し、制振効果を十分に持たせた上に難燃化するためには適正な分散粒子径の範囲があること、芳香族燐酸エステル系難燃剤を用いると難燃効果が飛躍的に向上することおよびポリオレフィンを併用することでtanδの主分散ピークの温度を上げられることを発見して本発明に至り、制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供できるに至った。
即ち本発明は、
[1] (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂またはこれとポリスチレン系樹脂40〜85重量部、(B)スチレン系化合物の重合体ブロック10〜35重量%と、ビニル結合の総含有量が40%以上であり、かつ残留する不飽和結合の70%以上が水素添加されたイソプレンの重合体ブロックとから成るブロック共重合体樹脂5〜30重量部、(C)ポリオレフィン系樹脂0〜2重量部未満および(D)芳香族燐酸エステル系難燃剤5〜30重量部から成り、かつ(B)+(C)成分が分散相を形成し、かつ分散粒子の平均径が0.2〜3μmの範囲であることを特徴とする制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、
[2] (D)芳香族燐酸エステル系難燃剤がトリフェニルホスフェートであることを特徴とする[1]記載の制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、従来技術では困難であったポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物の難燃樹脂組成物の制振性を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を更に詳細に説明する。本発明において(C)成分が含まれない場合は分散粒子径が小さく成りやすい。(C)成分を添加することで分散粒子が肥大化すると共にtanδの主分散ピークの温度も上昇するために制振性の改良効果が大きい。しかし必要以上に(C)成分が添加されると分散粒子が大きく成りすぎて難燃化できなくなると共に、成型品の剛性が低下する。制振性の改良効果が十分に発揮され、しかも芳香族燐酸エステル系難燃剤を用いて難燃化できる分散粒子径の範囲は0.2〜3μmの範囲である。分散相の粒子径は電子顕微鏡写真から求めた分散相の長径と短径の相加平均をもって示したものである。
【0013】
(B)+(C)成分が連続相を形成する場合にはポリフェニレンエーテル系樹脂の持つ特性が発揮できない上に、芳香族燐酸エステル系難燃剤を用いても必要なレベルまで難燃化し難くなる。
【0014】
難燃化する場合は(B)+(C)成分が分散相を形成していても芳香族燐酸エステル系難燃剤以外の燐酸エステル系難燃剤では難燃効果が乏しいために目的を達成することができない。芳香族燐酸エステル系難燃剤を用いた場合に限り難燃効果が大きいのはポリフェニレンエーテル系樹脂成分がチャー化し易くなり、このチャーが保護膜を形成して(B)+(C)成分を燃焼し難くするためと推測される。(B)+(C)成分よりなる分散粒子の径が大きくなるに従ってチャーにより保護しきれなくなるため難燃効果が低下するものと考えられる。
【0015】
本発明の(A)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、次に示す
一般式(1)、
【0016】
【化1】

(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素等の一価の残基であり、R5,R6は同時に水素ではない)
を繰り返し単位とし、構成単位が一般式(1)の〔a〕及び〔b〕からなる単独重合体、あるいは共重合体が使用できる。
【0017】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
【0018】
ポリフェニレンエーテル共重合体は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体あるいはo−クレゾールとの共重合体あるいは2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を包含する。
【0019】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。
【0020】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0021】
さらに、例えば特開平2−276823号、特開昭63−108059、特開昭59−59724等に記載されている、炭素−炭素二重結合を持つ化合物により変性されたポリフェニレンエーテルも含む。
【0022】
(A)成分はポリフェニレンエーテル系樹脂の他に、任意の割合でポリスチレン系樹脂を含むことができる。ポリスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、スチレン系化合物と共重合可能な化合物をゴム質重合体存在または非存在下に重合して得られる重合体である。
【0023】
スチレン系化合物とは、一般式〔2〕
【0024】
【化2】

(式中、Rは水素、低級アルキルまたはハロゲンを示し、Zはビニル、水素、ハロゲン及び低級アルキルよりなる群から選択され、pは0〜5の整数である。)
で表される化合物を意味する。
【0025】
これらの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムおよび共役ジエンと芳香族ビニル化合物のコポリマーまたはこれらの水添物あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。本発明のために好適なスチレン系樹脂はポリスチレンおよびゴム強化ポリスチレンである。
【0026】
本発明の(B)成分であるブロック共重合体とは、少なくとも1個のスチレン系化合物の重合体ブロックと少なくとも1個のポリイソプレンブロックとより成るブロック共重合体である。ポリイソプレンブロックに占める3,4−結合および1,2−結合より成るビニル総含有量は40%以上である必要がある。ビニル総含有量が40%に満たない場合はtanδの主分散ピークの温度が低く、ポリオレフィン系樹脂を併用しても制振性を発揮するに十分な温度まで上げることができないため好ましくない。
【0027】
ポリイソプレンブロックに占める不飽和結合の70%以上が水素添加されている必要がある。不飽和結合が30%より多く残っている場合には、熱により組成物の流動性の低下や成型品の外観の悪化が生ずるため好ましくない。スチレン系化合物の重合体ブロックおよびポリイソプレンブロックの分子量は特に限定されるものではないが、スチレン系化合物の重合体ブロックの分子量が低下すると(A)成分とブロック共重合体との相溶性が悪化して成形品が層剥離し易くなるため、数平均分子量が2,500以上のものを用いるのが好ましい。ポリイソプレンブロックは分子量が低下すると弾性体としての性能が低下して制振性を損なうため、数平均分子量が10,000以上のものを用いるのが好ましい。
【0028】
ブロック共重合体に占めるスチレン系化合物の重合体ブロックの含有量の好適な範囲はブロック共重合体の分子量によって異なるため特に限定されるものではないが、一般的には10〜50重量%の範囲より選ばれる。スチレン系化合物の重合体ブロックの含有量が10重量%に満たない場合は(A)成分との相溶性が不十分なため成型品が層剥離し易くなるため好ましくなく、50重量%を上回る場合は(C)成分を添加しても分散粒子が0.2μmに満たないため十分な制振効果が得られないため好ましくない。(C)成分を添加しない場合には35重量%を超えると分散粒子が0.2μm以下になるため10〜35重量%の範囲が好適である。
【0029】
本発明の(C)成分であるポリオレフィン系樹脂自体は公知のものであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体やエチレン−プロピレン系共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系モノマーを含む共重合体等が挙げられる。本発明のために好適なポリオレフィン系樹脂は低結晶性ポリプロピレンおよびエチレン−プロピレン系共重合体である。
【0030】
本発明の(D)成分である芳香族燐酸エステル系難燃剤は特に限定されるものではないが、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等が挙げられ、単独でも二種以上組み合わせて使用しても良い。本発明のために特に好適な芳香族燐酸エステル系難燃剤はトリフェニルホスフェートである。トリフェニルホスフェートは他の芳香族燐酸エステル系難燃剤に較べ難燃化効果が優れる上に、いかなる理由か(B)+(C)成分による制振性の改良効果を増大するため好ましい。
【0031】
本発明において、(A)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂またはこれとポリスチレン系樹脂の添加量は40〜85重量部の範囲より選ばれる。(A)成分の添加量が40重量部を下回る場合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の特徴が発揮されないことに加え、(B)+(C)成分が分散相を形成できなくなるために好ましくない。(A)成分の添加量が85重量部を上回る場合は、制振性を賦与するに十分な(B)成分および(C)成分と難燃性を賦与するに十分な(D)成分を添加できないために好ましくない。
【0032】
本発明において、(B)成分であるブロック共重合体の添加量は5〜30重量部の範囲より選ばれる。(B)成分の添加量が5重量部を下回る場合は十分な制振効果が得られないため好ましくなく、30重量部を超える場合は分散粒子を形成する形で(C)成分を添加する事ができなくなるため芳香族燐酸エステル系難燃剤による難燃化ができなくなる上に成型品が層剥離しやすくなるため好ましくない。
【0033】
本発明において、(C)成分であるポリオレフィン系樹脂の添加量は、0〜2重量部、但し2重量部である場合を除く、すなわち0〜2重量部未満の範囲より選ばれる。
【0034】
本発明において、(D)成分である芳香族燐酸エステル系難燃剤の添加量は5〜30重量部の範囲より選ばれる。5重量部を下回る場合は難燃化効果が不十分になり、30重量部を上回る場合は組成物の耐熱性を大幅に低下させるために好ましくない。
【0035】
本発明の樹脂組成物には必要に応じて各種添加剤を配合することができる。剛性や寸法性能等を増すためには任意の割合で無機質フィラーが添加される。無機質フィラーを配合する場合にはガラスフレーク、マイカ、鱗片状タルク、鱗片状黒鉛等の鱗片状フィラーを用いると制振性が向上するために特に好ましい。
【0036】
樹脂組成物の安定性を増すための酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や着色剤、離型剤等も添加することができる。
【0037】
本発明の組成物の調整方法は特に限定されるものではないが、分散粒子径をコントロールするために押し出し機が一般的に用いられる。分散粒子径は押し出し時の剪断応力でコントロールするのが最も容易である。押し出し時の剪断応力は押し出し温度、スクリューパターン、スクリュー回転数等で変えられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の用いる部は重量部であり%は重量%である。
【0039】
以下の実施例および比較例で用いたポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体は次に示すものである。
(1)ハイブラ−VS−1(ポリスチレンブロック量:20%、ビニル結合量:70%、非水添)、クラレ(株)製
(2)ハイブラ−HVS−3(ポリスチレンブロック量:20%、ビニル結合量:55%、水添率:85%)、クラレ(株)製
(3)ハイブラ−HVS−429(ポリスチレンブロック量:40%、ビニル結合量:55%、水添率:85%)、クラレ(株)製
実施例および比較例中の各測定値は以下の方法により求めた。
(1)tanδ特性
オリエンテック社のレオバイブロンを用いて粘弾性スペクトルを測定し、ピーク温度と23℃におけるtanδ値を求めた。
(2)分散相の平均粒子径
樹脂組成物の超薄切片の電子顕微鏡写真を撮り、分散相粒子の長径と短径の相加平均を粒子径とし、分散相粒子約500個より平均を求めた。
(3)制振性(損失係数η)
2チャンネル高速フーリエ変換装置を用いて、非接触ランダム加振による片持ち梁法により測定し、%で表示した。測定温度は23℃である。
(4)燃焼性
1.6mm厚みの試験片を用いてUL−94試験法に基づいて測定した。
(5)流動性
東洋精機(株)のメルトインデクサ−P−111を用いて、250℃、5kg荷重にてメルトインデックス(MI)を測定した。
参考例1
固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル30部、旭化成工業(株)のポリスチレン685を49部、ハイブラ−HVS−3を20部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1部とを池貝鉄工所(株)のPCM30二軸押出機を使用し、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング:1個を有するスクリューパターンで、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数100rpm
で溶融混練して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−1に示す。
比較例1
イソプレン成分の量を合わせるため、ハイブラ−HVS−3とポリスチレンの内の7部をハイブラ−HVS−429に替えて参考例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−1に示す。
【0040】
【表1】

実施例1
参考例1のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル45部、ポリスチレンを27部、ハイブラ−HVS−3を15部、ビスフェノールAビスホスフェート12部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1部とを池貝鉄工所(株)のPCM30二軸押出機を使用し、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング:1個を有するスクリューパターンで、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−2に示す。
比較例2
ハイブラ−HVS−3をハイブラ−VS−1に替えて参考例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−2に示す。
比較例3
イソプレン成分の量を合わせるため、ハイブラ−HVS−3とポリスチレンの内の5部をハイブラ−HVS−429に替えて実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−2に示す。
参考例2
ハイブラ−HVS−429の内の10部を日本ポリオレフィン(株)のポリプロピレンSA510に替えて比較例3を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−2に示す。
比較例4
HVS−429とSA510を除いて参考例2を繰り返して樹脂組成物を得た後、HVS−429とSA510をそれぞれ10部加え、サーモプラスチック工業(株)の40mm単軸押出機を使用し、フルフライトスクリューパターンで、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−2に示す。
【0041】
【表2】

参考例3
参考例1のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル40部、ポリスチレン13部、HVS−3を7部、SA510を7部、トリフェニルホスフェート12部、13μm径のガラス繊維10部、クラレ(株)のマイカ200K1を10部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1部とを参考例1と同一の押出条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−3に示す。
比較例5
トリフェニルホスフェートをエチルアシッドホスフェートに替えて参考例3を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−3に示す。
比較例6
トリフェニルホスフェートをエチングリコールアシッドホスフェートに替えて参考例3を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−3に示す。
参考例4
参考例1のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル45部、ポリスチレン9部、HVS−3を15部、SA510を15部、トリフェニルホスフェート15部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1部とを参考例1と同一の押出条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−3に示す。
比較例7
HVS−3を15部から5部に減らし、SA510を15部から25部に増やした以外は参考例4を繰り返して樹脂組成物を得た。該組成物の物性試験結果を表−3に示す。
【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の樹脂組成物は、家電分野、事務機分野や情報機器分野に有効に使用できる制振性に優れた難燃樹脂組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂またはこれとポリスチレン系樹脂40〜85重量部、(B)スチレン系化合物の重合体ブロック10〜35重量%と、ビニル結合の総含有量が40%以上であり、かつ残留する不飽和結合の70%以上が水素添加されたイソプレンの重合体ブロックとから成るブロック共重合体樹脂5〜30重量部、(C)ポリオレフィン系樹脂0〜2重量部未満および(D)芳香族燐酸エステル系難燃剤5〜30重量部から成り、かつ(B)+(C)成分が分散相を形成し、かつ分散粒子の平均径が0.2〜3μmの範囲であることを特徴とする制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項2】
(D)芳香族燐酸エステル系難燃剤がトリフェニルホスフェートであることを特徴とする請求項1記載の制振性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−57107(P2006−57107A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293115(P2005−293115)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【分割の表示】特願平9−170511の分割
【原出願日】平成9年6月26日(1997.6.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】