説明

制振材用樹脂組成物

【課題】制振性に優れるとともに、用途に応じた特性を発揮する制振材の設計が容易で、各種構造体の制振材に有用な制振材用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】単量体成分を重合してなるポリマーを含有する制振材用樹脂組成物であって、該制振材用樹脂組成物は、少なくとも2種類の重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上であることを特徴とする制振材用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材用樹脂組成物に関する。より詳しくは、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つために使用される制振材の材料として有用な制振材用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
制振材は、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、例えば、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されている。このような制振材に用いられる材料としては、従来、振動吸収性能及び吸音性能を有する材料を素材とする板状成形体やシート状成形体等の成形加工品が使用されているが、振動や音響の発生箇所の形状が複雑な場合には、これらの成形加工品を振動発生箇所に適用することが困難であることから、作業性を改善して制振性を充分に発揮させるための手法が種々検討されている。すなわち、例えば、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれており、制振材を形成する種々の制振材用組成物や重合体の検討がなされている。
【0003】
そこで、このような成形加工品の代替材料として、塗布型制振材(塗料)が開発されており、例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法により塗布することにより形成される塗膜により、振動吸収効果及び吸音効果を得ることが可能な制振塗料が種々提案されるに至っている。具体的には、例えば、アスファルト、ゴム、合成樹脂等の展色剤に合成樹脂粉末を配合して得られる塗膜硬度を改良した水系制振塗料の他、自動車の室内用に適するものとして、樹脂エマルションに充填剤として活性炭を分散させた制振塗料等が開発されている。しかしながら、これらの従来品をもってしても未だ、制振性能が充分に満足できるレベルにあるとはいえず、更に充分に制振性能を発揮できるようにする技術が求められている。
【0004】
従来の塗布型制振材用樹脂に関し、幅広い温度領域での制振性等に優れた制振材を得ることを目的として、メチルメタクリレートを25質量%以上含有する単量体混合物を共重合した制振材用共重合エマルション、アクリル共重合体からなり、コア部とシェル部とを有する粒子を含有し、コア部に含まれる共重合体の重量平均分子量、及び/又は、コア部とシェル部とを有する粒子の重量平均分子量が2万〜25万である制振材用エマルションや、SP値が10.0以上14.0以下である極性基含有単量体を含む単量体成分を共重合したアクリル共重合体を含有する制振材用エマルションが開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0005】
また、樹脂組成物一般として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定されたクロマトグラムが分子量1000〜80000及び分子量100000〜2000000のそれぞれの領域に少なくとも1つの極大値をもつビニル系モノマー重合体を含む現像粉が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この現像粉は、高分子成分によって複写画像の品質が高められ、低分子成分によってトナー製造性が高められることとなり、複写画像の品質とトナー製造性とが共に優れた現像粉が得られている。また、耐ブラックヒールマーク性、耐スカッフ性、耐摩耗性等に優れた水性光沢組成物を得ることを目的として、共重合体エマルションと粘度平均分子量が3000〜20000である低分子量三元共重合体を含有する水性光沢組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。その他、高温高湿の条件下において生じられる粘着耐久信頼性などの主要特性を変化させないながら同時に光漏れ現象を改善させる偏光光用アクリル系粘着剤組成物を得ることを目的として、重量平均分子量100万以上の高分子量(メタ)アクリル系共重合体と重量平均分子量2000〜30000の低分子量(メタ)アクリル系共重合体と多官能性架橋剤とを含む偏光板用アクリル系粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−281577号公報(第1−2頁)
【特許文献2】再表2007−023819号公報(第1−2頁)
【特許文献3】再表2007−023820号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開昭56−016144号公報(第1−2頁)
【特許文献5】特開昭62−112673号公報(第1−2頁)
【特許文献6】特表2007−518862号公報(第1−2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、制振材用樹脂組成物として、様々な形態のものが開示されている。しかしながら、制振材用途に用いられる樹脂組成物は、制振性に加え、他にも様々な物性が要求されることから、これらの要求に応えることができるよう、求められる物性に応じた単量体を用いながら、優れた制振性を発揮することができる設計の自由度の高い樹脂組成物が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、制振性に優れるとともに、用途に応じた特性を発揮する制振材の設計が容易で、各種構造体の制振材に有用な制振材用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、制振材用樹脂組成物について種々検討し、振動による運動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換することで制振性が発現することに着目し、振動による運動エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換することができる樹脂組成物について種々検討した。そして、ポリマー間の運動性の差異が大きければ大きいほど、ポリマー間での摩擦力も大きくなり、熱エネルギーへの変換が効率的に行われると考え、制振材用樹脂組成物を少なくとも2種類の重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上のものとしたところ、優れた制振性を発揮する樹脂組成物となることを見出した。この樹脂組成物では、含まれるポリマー間で分子量の差さえあればよいことから、ポリマー設計の自由度が高く、優れた制振性に加え、樹脂組成物が使用される用途に応じた物性をもつポリマーを容易に製造することが可能であるため、制振材用樹脂組成物をこのようなものとすることで、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
本発明は、重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含むことで、それぞれのポリマー成分の性能を併せ持った樹脂組成物を得るのではなく、ポリマー(A)とポリマー(B)との運動性の差に由来する効果という、ポリマー(A)、ポリマー(B)単独では成し得ない性能を有する制振材用樹脂組成物を得るものである。
【0009】
すなわち本発明は、単量体成分を重合してなるポリマーを含有する制振材用樹脂組成物であって、上記制振材用樹脂組成物は、少なくとも2種類の重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上である制振材用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の制振材用樹脂組成物は、少なくとも2種類の重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上のものであるが、ポリマー(A)とポリマー(B)とは重量平均分子量において異なっていればよく、例えば、ガラス転移温度、SP値(溶解度係数)、使用される単量体の種類、単量体の使用割合等のその他の各種物性においては、同一であってもよいし異なっていてもよい。
このように本発明の制振材用樹脂組成物を、重量平均分子量の比が5以上であるポリマー(A)とポリマー(B)とを含む形態とすることにより、本発明の制振材用エマルション組成物から形成される制振材の制振性を優れたものとすることができる。
制振性が発現する理由としては、以下が考えられる。振動が制振材における共重合体(本明細書中、樹脂又はポリマーともいう)に伝播すると、ポリマー間の摩擦により熱エネルギーに変換され、制振性が発現することになる。よって、原則的には、ポリマー間の摩擦が大きいほど、振動がより熱エネルギーに変換されやすくなるため、より制振性が向上することになる。ここで、ポリマー間の摩擦を大きくするための一つの方法として、組成物中でのポリマー間の運動性に大きな差をつけるという方法が挙げられる。ポリマー間の運動性に大きな差があると、その運動性の違いに起因してポリマー間の摩擦が大きくなる。そして、高分子量のポリマーに比べ低分子量のポリマーの方が組成物中での運動性は高いことから、ポリマー間の分子量に大きな差をつけることにより、ポリマー間に運動性の差が出ることとなり、制振性に効果を有することとなる。
なお、本発明の制振材用樹脂組成物は、該ポリマー(A)及びポリマー(B)を含んでいれば特に制限されず、その他の成分を含んでいてもよい。
【0011】
上記ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比は、5以上であることが好ましい。より好ましくは、6以上であり、更に好ましくは、7以上である。また、上記ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比の上限としては、100以下であることが好ましい。より好ましくは、90以下であり、更に好ましくは、80以下である。
【0012】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーは、通常、媒体中に分散された形態で存在する。すなわち、上記制振材用樹脂組成物は、媒体と、媒体中に分散されたポリマーとを有するものであることが適当である。媒体としては、水性媒体であることが好ましく、例えば、水や、水と混じりあう溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。中でも、本発明の制振材用樹脂組成物を含む塗料を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水が好適である。
【0013】
上記ポリマー(A)は、重量平均分子量が2万〜80万であり、上記ポリマー(B)は、ポリマー(A)よりも重量平均分子量の低いポリマーであることが好ましい。振動エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換するためには、ポリマー(A)、(B)ともに振動が加えられたときに運動するものであることが好ましい。
ポリマー(A)の重量平均分子量が2万〜80万の範囲であり、ポリマー(A)、(B)がこのようなものであると、ポリマー(A)とポリマー(B)ともに、運動性を有しながら、充分な運動性の差が出ることとなり、制振性がより充分に発揮されることになる。また、ポリマー(A)の重量平均分子量が2万〜80万の範囲にあると、制振材用樹脂組成物を塗布して焼き付けを行った場合に塗膜にワレやフクレを生じることが充分に抑制される。
ポリマー(A)の重量平均分子量としては、より好ましくは、3万〜70万であり、更に好ましくは、4万〜70万であり、特に好ましくは、4万〜60万である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0014】
上記ポリマー(B)は、500〜2万の重量平均分子量を有することが好ましい。重量平均分子量が500〜2万であった場合に、制振材におけるポリマー間の相互作用が大きくなり制振性をより充分に発揮することができる。中でも好ましくは、ポリマー(A)及びポリマー(B)がともに上述のような範囲の重量平均分子量を有することである。
重量平均分子量は、上述した方法により測定することができる。
【0015】
上記ポリマー(A)は、極性基含有単量体の共重合割合が単量体成分100質量%に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。
上記共重合割合が0.1〜5質量%であると、制振材におけるポリマー間の相互作用がより大きなものとなり、ポリマー間の摩擦がより大きくなることから、制振性がより充分に発揮されることとなる。共重合割合としては、より好ましくは、0.3〜4質量%であり、更に好ましくは、0.5〜3質量%である。
【0016】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーにおける上記極性基は、有機化合物において一般に極性基とされるものであればよいが、上記極性基が、水酸基、ニトリル基、カルボキシル基、アミド基及びピロリドン基からなる群より選択される少なくとも1種であることもまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
これにより、制振材におけるポリマー間の相互作用がより充分なものとなり、制振性をより優れたものとすることができる。
中でも、上記極性基がニトリル基及び/又はカルボキシル基であることがより好ましい。
【0017】
上記ポリマー(A)は、−20〜30℃のガラス転移温度を有することが好ましい。ポリマー(A)のガラス転移温度が−20〜30℃であると、制振材の実用温度域での制振性能を効果的に発現することができることとなる。ポリマー(A)のガラス転移温度としては、より好ましくは、−15〜30℃であり、更に好ましくは、−15〜25℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式(1)より算出することができる。
【0018】
【数1】

【0019】
式中、Tg′は、ポリマーのTg(絶対温度)である。W′、W′、・・・Wn′は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T、T、・・・Tnは、各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
【0020】
また、上記ポリマー(A)のガラス転移温度とポリマー(B)のガラス転移温度との差は、40℃以内であることが好ましい。ポリマー(A)のガラス転移温度とポリマー(B)のガラス転移温度との差が、40℃以内であると、幅広い温度領域(20℃〜60℃)にわたっての充分な制振性を得ることができる。より好ましくは、35℃以内であり、更に好ましくは、30℃以内である。
また、ポリマー(A)のガラス転移温度と、ポリマー(A)のガラス転移温度とポリマー(B)のガラス転移温度との差が、ともに上記好ましい範囲であることがより好ましい。
すなわち、ポリマー(A)は、−20〜30℃のガラス転移温度を有し、ポリマー(A)のガラス転移温度とポリマー(B)のガラス転移温度との差が、40℃以内であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0021】
本発明の制振材用樹脂組成物は、ポリマー(A)とポリマー(B)との質量比が95/5〜60/40であることが好ましい。
ポリマー(A)とポリマー(B)との質量比が95/5を超えると、ポリマー間の相互作用が充分なものでなくなり、制振性が充分に向上しないおそれがある。60/40未満であると、制振材におけるポリマーの運動性が抑制され、制振性が低下してしまうおそれがある。上記下限は、より好ましくは65/35であり、更に好ましくは70/30である。また、上記上限は、より好ましくは90/10である。
【0022】
本発明において、ポリマー(A)とポリマー(B)とは、単量体組成の異なるポリマーであることが好ましい。単量体組成の異なるものとすることにより、運動性の差がより大きくなる。なお、単量体組成が異なるとは、ポリマー(A)を構成する単量体成分とポリマー(B)を構成する単量体成分とにおいて、使用される単量体の少なくとも1種が異なっているか、及び/又は、単量体の構成比率が異なっていることを意味する。
【0023】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有される少なくとも2種類のポリマーの存在形態としては、特に制限されないが、(1)別々に重合して合成した後、ポリマーを混合(ブレンド)して得られる混合物である形態、(2)一連の製造工程の中でポリマー(A)とポリマー(B)とを含むものを製造(例えば、多段重合等)して得られる混合物である形態が挙げられる。一連の製造工程の中でポリマー(A)とポリマー(B)とを含むものを得るためには、モノマー滴下条件等の製造条件を適宜設定することにより得ることが可能である。
上記いずれの形態であっても、得られたポリマー混合物のGPC測定を行った場合のGPCチャートに、ピークトップが少なくとも2つ以上あることが好ましい。そのような形態であった場合に、本発明の制振材用樹脂組成物の作用効果がより充分に発揮させることとなる。
【0024】
上記(1)、(2)のいずれの形態においても、ポリマー(A)とポリマー(B)とを混合することにより得られる形態としてもよく、ポリマー(A)にポリマー(B)を吸収させて得られる形態としてもよい。
上記ポリマー(A)にポリマー(B)を吸収させて得られる形態のものは、ポリマー(A)を合成した後、ポリマー(A)に、ポリマー(B)として液状のポリマーを吸収させることにより得ることができる。このようにポリマー(A)にポリマー(B)を吸収させると、ポリマー(A)とポリマー(B)とが均一に混ざり合ったポリマーとすることができる。液状ポリマーとしては、アクリルオリゴマー、ウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー等を用いることができる。
上記(2)の形態としては、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態であることが好ましい。
【0025】
上述のように、本発明の制振材用樹脂組成物に含有される少なくとも2種類のポリマーの存在形態としては、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態であることが好ましい。本発明の制振材用樹脂組成物に含有される少なくとも2種類のポリマーの存在形態がこのようなものである場合、コア部とシェル部とが完全に相溶し、これらを区別できない均質構造のものであってもよく、これらが完全には相溶せずに不均質に形成されるコア・シェル複合構造やミクロドメイン構造であってもよい。
これらの構造の中でも、エマルションの特性を充分に引き出し、安定なエマルションを作製するためには、コア・シェル複合構造であることが好ましい。
コア部とシェル部とを有するエマルションは、実用温度範囲内の幅広い範囲における制振性に優れる。特に高温域においても、他の形態の制振材配合物と比較して優れた制振性を発揮し、その結果、実用温度範囲内において、常温から高温域まで幅広い範囲に渡って制振性能を発揮することができる。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
【0026】
このように、本発明の制振材用樹脂組成物は、上記ポリマー(A)及び上記ポリマー(B)が、上記コア部とシェル部とを有するエマルションの共重合体成分を構成する形態であってもよい。
例えば、本発明の制振材用樹脂組成物において、上記ポリマー(A)及び上記ポリマー(B)の一方がエマルション粒子のコア部を構成し、もう一方がシェル部を構成する形態が好ましい。これにより、本発明の効果をより充分に発揮することができる。ポリマーがこのような形態のものであると、本発明の制振材用樹脂組成物がより優れた効果を発揮するものとなる。
また、上記エマルション粒子が複数層を有する場合には、複数層の内の少なくとも1層がポリマー(A)であり、残りの少なくとも1層がポリマー(B)であることが好ましい。
なお、上記(2)の形態の混合物は、後述する本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーがコア部とシェル部とを有するエマルションである場合と同様に、乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
【0027】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有される少なくとも2種類のポリマー(A)、ポリマー(B)のそれぞれは、どちらもがコア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態であってもよく、どちらかがコア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態であってもよい。
上記ポリマー(A)及び/又はポリマー(B)がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態である場合には、コア部を形成する共重合体と、シェル部を形成する共重合体とは、例えば、重量平均分子量やガラス転移温度、SP値(溶解度係数)、使用される単量体の種類、単量体の使用割合等の各種物性のうちいずれかにおいて異なるものであればよい。中でも、重量平均分子量、ガラス転移温度の少なくとも1つで差を有するものであることが好適である。
【0028】
上記ポリマー(A)及び/又はポリマー(B)がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態である場合、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分とのガラス転移温度(Tg)の差が10〜60℃であることが好ましい。Tgの差がこのような範囲であることによって、幅広い温度領域(20℃〜60℃)にわたってより高い制振性を発揮することが期待できる。より好ましくはTgの差が15〜55℃であることであり、更に好ましくは、20〜50℃である。また、コア部を形成する単量体成分のTgは、シェル部を形成する単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。すなわち、コア部とシェル部とを有するエマルションを製造する場合、コア部のエマルションを形成した後、シェル部のエマルションを形成する多段重合により製造されることになるが、前段工程で使用される単量体成分のTgは、後段工程で使用される単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。エマルションが3段階以上の工程で製造される場合も同様に、後の工程で使用される単量体成分のTgは、その直前の工程で使用される単量体成分のTgよりも低いものであることが好ましい。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、後述する乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
【0029】
本発明の制振材用樹脂組成物が含むポリマーがエマルション粒子の形態である場合、エマルション粒子の平均粒子径は100〜450nmであるものであることが好ましい。
平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される基本性能を充分なものとしたうえで、制振性をより優れたものとすることができる。
上記上限は、400nmであることが好ましい。より好ましくは、350nmである。エマルション粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、本発明の制振材用樹脂組成物の作用効果がより効果的に発揮されることになる。
平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
【0030】
本発明の制振材用樹脂組成物において、上記平均粒子径を有するエマルション粒子は、標準偏差をその体積平均粒子径で割った値(標準偏差/体積平均粒子径×100)で定義される粒度分布が40%以下であることが好ましい。より好ましくは、30%以下である。粒度分布が40%を超えると、エマルション粒子の粒子径分布の幅が非常に広いものとなり、一部に粗大粒子を含むものとなるために、そのような粗大粒子の影響で制振材用樹脂組成物が充分な加熱乾燥性を発揮することができないおそれがある。
【0031】
本発明の制振材用樹脂組成物のpHとしては特に限定されないが、例えば、2〜10であることが好ましく、より好ましくは、3〜9である。更に好ましくは、7〜8である。樹脂組成物のpHは、樹脂組成物に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
本明細書中、pHは、pHメーターにより測定することができる。例えば、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)を用いて25℃での値を測定することが好ましい。
【0032】
本発明の制振材用樹脂組成物の粘度としては特に限定されないが、例えば、1〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、5〜300mPa・sである。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
【0033】
本発明における制振材用樹脂組成物を構成するポリマーの原料となる単量体成分としては、本発明の作用効果を発揮することができればよいが、不飽和カルボン酸単量体を含んでなるものであることが好ましい。より好ましくは、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体とを含んでなるものである。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。すなわちエチレン系不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分を重合してなるポリマーを含んでなる制振材用樹脂組成物は、本発明の好ましい形態の1つである。
なお、本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーが、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
【0034】
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマイエート、モノエチルマイエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸、及び、(メタ)アクリル酸の塩や(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体を意味する。
すなわち、本発明の制振材用樹脂組成物を構成するポリマーは、アクリル共重合体であることが好ましい。
【0035】
本発明において、「アクリル共重合体」とは、少なくとも2種以上の単量体成分を用いて得られる共重合体であって、該単量体成分の少なくとも1種が、(メタ)アクリル系単量体である共重合体を意味する。これらの中でも、(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体成分を用いて得られるものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸系単量体とは、(メタ)アクリル酸及びその塩を意味する。すなわち、本発明のアクリル共重合体は、単量体成分の少なくとも1種が、C(R)=CH−COOR、又は、C(R)=C(CH)−COOR(R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基を表す。)で表される単量体である単量体成分を用いて得られるものであることが好ましい。
【0036】
上記アクリル共重合体の原料となる単量体成分は、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.1〜20質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を99.9〜80質量%含んでなることが好ましい。(メタ)アクリル酸系単量体を含むことにより、本発明の制振材用樹脂組成物を必須とする制振材配合物において、無機粉体等の充填剤の分散性が向上し、制振性がより向上することになる。また、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、ポリマーの酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。上記単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体が0.1質量%未満であっても、20質量%を超えても、いずれも、ポリマーが安定に共重合できないおそれがある。本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーでは、これらの単量体から形成される単量体単位の相乗効果により、水系制振材において優れた加熱乾燥性と制振性とをより充分に発揮することが可能となる。
より好ましくは、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.5〜3質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を99.5〜97質量%含んでなることである。
その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体には、後述する(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、芳香環を有する不飽和化合物、(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能なその他の単量体が含まれる。
【0037】
上記アクリル共重合体の原料となる単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の1種又は2種以上を使用することが好適である。
また、(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等の他、これらの塩やエステル化物等の1種又は2種以上を使用することが好適である。
【0038】
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
【0039】
上記単量体成分としてはまた、上記(メタ)アクリル酸(塩)系単量体と共重合可能なその他の単量体を含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等の芳香環を有する不飽和化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の窒素原子を有する不飽和化合物等が挙げられる。中でも、窒素原子を有する不飽和化合物が好ましい。特に好ましくは、アクリロニトリルである。
【0040】
上記アクリル共重合体の原料となる単量体成分としては、(メタ)アクリル系単量体を全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上含有するものであることが好ましい。より好ましくは、30質量%以上である。
【0041】
上記アクリル共重合体を形成する単量体成分は、更に、官能基を有する不飽和単量体を含んでいてもよい。該官能基を有する不飽和単量体における官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等が挙げられる。これらの官能基は、不飽和単量体の1分子中に1種あってもよく、2種以上あってもよい。
【0042】
上記官能基を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体類等が挙げられる。これらの中でも、官能基を2個以上有する不飽和単量体(多官能性不飽和単量体)を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記アクリル共重合体として2種以上のアクリル共重合体を用いる場合には、Tgが異なるものを用いることが好適である。このようにガラス転移温度(Tg)に差を設けることにより、幅広い温度領域下でより高い制振性を発現させることが可能となり、特に実用的範囲である20〜60℃域での制振性が格段に向上されることとなる。なお、3種以上のアクリル共重合体を用いる場合には、このうちの少なくとも2種のアクリル共重合体がTgの異なるものであればよく、残りの1種以上については、当該2種のアクリル共重合体のいずれかとTgが同じものであってもよい。
【0044】
上記Tgの異なるアクリル共重合体として、Tgの高いものを「アクリル共重合体(1)」、低いものを「アクリル共重合体(2)」とすると、これらのTg差は10〜60℃であることが好ましい。
差が10℃未満であったり、温度差が大き過ぎると、実用的範囲での制振性がより充分なものとはならないおそれがある。
また、より好ましくは15〜55℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
【0045】
上記アクリル共重合体(1)のガラス転移温度(Tg1)としては、Tg1が−10℃以上、また、30℃以下のものが好適である。より好ましくは、Tg1が−5℃以上、また、25℃以下である。更に好ましくは、Tg1が0℃以上、また、20℃以下である。これにより、本発明の制振材用樹脂組成物を含む塗料を用いて形成された制振材塗膜の乾燥性が良好となり、塗膜表面の膨張やクラックが充分に抑制されることになる。すなわち、格段に優れた制振性を有する制振材が形成されることとなる。
また、上記アクリル共重合体(2)のガラス転移温度(Tg2)としては、−50℃以上、10℃以下が好ましい。より好ましくは、−30℃以上、−10℃以下である。
【0046】
本発明の制振材用樹脂組成物が上述したアクリル共重合体のエマルションを含むものである場合、アクリル共重合体のエマルションのみを含むものであってもよく、その他のエマルション樹脂と混合したものであってもよい。
その他のエマルション樹脂としては、ウレタン樹脂、SBR樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−エチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂等のエマルション樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含むものであってもよい。
この場合、アクリル共重合体のエマルションと他のエマルション樹脂との質量比(アクリル共重合体のエマルション/他のエマルション樹脂)が、100〜50/0〜50となるように設定することが好ましい。
【0047】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーの製造方法としては、乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いることが好ましい。
乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の各種界面活性剤、及び、高分子界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーがコア部とシェル部とを有するエマルションである場合、通常の乳化重合法を用いて得ることが好ましい。具体的には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。このように、本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーがコア部とシェル部とを有するエマルションであって、該エマルションがコア部を形成した後、シェル部を形成する多段重合により得られるものである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0049】
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
【0050】
上記乳化剤の使用量としては、全重合性不飽和結合基を含有する化合物の使用量に対して、下限値が0.1〜10質量%である。0.1質量%未満であると、機械安定性を充分に向上できないうえに、重合安定性が充分に維持できないおそれがある。より好ましくは、0.5〜5質量%であり、最も好ましくは、1〜3質量%である。
【0051】
上記アニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;及び、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
上記アニオン性乳化剤として特に好適な化合物としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS−H、エマルゲンA−60、B−66(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN、AB−26S、ABEX−2010、2020、2030、DSB(ローディア日華社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する界面活性剤も使用することができる。
【0053】
上記アニオン性乳化剤としてはまた、反応性乳化剤として、反応性アニオン系界面活性剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
【0054】
また、上記アニオン性乳化剤としては更に、反応性乳化剤として、下記の界面活性剤等も用いることができる。
炭素数3〜5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1〜4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
【0055】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER−20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」等)等の反応性を有するノニオン系界面活性剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
上記カチオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
上記高分子界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
上記界面活性剤の中でも、環境面からは、非ノニルフェニル型の界面活性剤を用いることが好適である。
上記界面活性剤の使用量としては、用いる界面活性剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ポリマーを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。更に好ましくは、1〜3重量部である。
【0060】
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、界面活性剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル共重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
【0061】
上記重合開始剤としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、水溶性開始剤が好適に使用される。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル共重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
【0062】
上記重合開始剤にはまた、乳化重合を促進させるため、必要に応じて還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、アクリル共重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
【0063】
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100重量部に対して、通常2.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。
【0064】
上記乳化重合においては、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
【0065】
上記製造方法における乳化重合条件に関し、重合温度としては特に限定されず、例えば、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、40〜95℃である。また、重合時間も特に限定されず、例えば、1〜15時間とすることが好適で、より好ましくは、5〜10時間である。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
【0066】
本発明の制振材用樹脂組成物に含有されるポリマーの製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。中和剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、制振材用樹脂組成物を必須とする制振材配合物から形成される塗膜の耐水性等が向上することから、塗膜の加熱時に揮散する揮発性塩基を用いることが好ましい。より好ましくは、加熱乾燥性が良好となり、制振性が向上することから、沸点が80〜360℃のアミンを用いることが好ましい。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミンが好適である。より好ましくは、沸点が130〜280℃のアミンを用いることである。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
【0067】
本発明の制振材用樹脂組成物は、必要に応じて他成分とともに、制振材配合物を構成することができるものであり、本発明の制振材用樹脂組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を必須成分とする制振材配合物もまた、本発明の1つである。このような本発明の制振材用樹脂組成物を必須とする制振材配合物は、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮し得る水系制振材を形成することができるものである。
上記制振材配合物としては、例えば、制振材配合物の総量100質量%に対し、固形分を40〜90質量%含有してなることが好適であり、より好ましくは、50〜90質量%であり、更に好ましくは、60〜90質量%である。また、制振材配合物のpHは、7〜11とすることが好ましく、より好ましくは、7〜9である。
上記制振材配合物における制振材用樹脂組成物の配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分100質量%に対し、制振材用樹脂組成物の固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは、15〜60質量%である。
【0068】
上記発泡剤としては、例えば、低沸点炭化水素内包の加熱膨張カプセル、有機発泡剤、無機発泡剤等が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。加熱膨張カプセルとしては、例えば、マツモトマイクロスフィアーF−30、F−50(松本油脂社製);エクスパンセルWU642、WU551、WU461、DU551、DU401(日本エクスパンセル社製)等が挙げられ、有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)等が挙げられ、無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、シリコンハイドライド等が挙げられる。
上記発泡剤の配合量としては、制振材用樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは、1.0〜3.0重量部である。
【0069】
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。増粘剤の配合量としては、制振材用樹脂組成物の固形分100重量部に対し、固形分で0.01〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1.5重量部であり、更に好ましくは、0.1〜1重量部である。
上記顔料としては、例えば、後述する着色剤や防錆顔料等の1種又は2種以上を使用することができる。上記顔料の配合量としては、制振材用樹脂組成物100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
【0070】
その他、本発明の制振材配合物に配合することのできる他成分としては、例えば、溶媒;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;充填剤;分散剤;消泡剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、上記制振材用樹脂組成物等と混合され得る。
【0071】
上記溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。溶剤の配合量としては、制振材配合物中の制振材用樹脂組成物の固形分濃度が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
【0072】
上記水系架橋剤としては、例えば、エポクロスWS−500、WS−700、K−2010、2020、2030(いずれも商品名、日本触媒社製)等のオキサゾリン化合物;アデカレジンEMN−26−60、EM−101−50(いずれも商品名、ADEKA社製)等のエポキシ化合物;サイメルC−325(商品名、三井サイテック(株)製)等のメラミン化合物;ブロックイソシアネート化合物;AZO−50(商品名、50質量%酸化亜鉛水分散体、日本触媒社製)等の酸化亜鉛化合物等が好適である。水系架橋剤の配合量としては、例えば、制振材用樹脂組成物の固形分100重量部に対し、固形分で0.01〜20重量部とすることが好ましく、より好ましくは、0.15〜15重量部、更に好ましくは、0.5〜15重量部であり、制振材用樹脂組成物に添加してよいし、制振材配合物として他の成分を配合するときに同時に添加してもよい。
上記制振材用樹脂組成物又は配合物に架橋剤を混合することにより、樹脂の強靱性が向上し、その結果、高温領域で充分な高制振性が発現する。中でもオキサゾリン化合物を用いることが好ましい。
【0073】
上記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、クレー等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤等が挙げられる。無機質充填剤の配合量としては、制振材用樹脂組成物の固形分100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
【0074】
上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機又は無機の着色剤が挙げられる。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤及びポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記防錆顔料としては、例えば、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
【0075】
上記他成分としては更に、多価金属化合物を用いてもよい。この場合、多価金属化合物により、制振材配合物の安定性、分散性、加熱乾燥性や、制振材配合物から形成される制振材の制振性が向上することとなる。多価金属化合物としては特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記多価金属化合物の形態としては、例えば、粉体、水分散体や乳化分散体等であってよい。中でも、制振材配合物中への分散性が向上することから、水分散体又は乳化分散体の形態で使用することが好ましく、より好ましくは乳化分散体の形態で使用することである。また、多価金属化合物の使用量は、制振材配合物中の固形分100重量部に対して、0.05〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜3.5重量部である。
【0076】
上記制振材配合物は、例えば、基材に塗布して乾燥することにより制振材となる塗膜を形成することになる。基材としては特に限定されるものではない。また、制振材配合物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができる。
上記制振材配合物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるようにすることが好ましい。より好ましくは、3.0〜6.0mmである。
また、乾燥時(後)の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/mとなるように塗布することも好ましい。より好ましくは、2.0〜6.0kg/mである。なお、本発明の制振材配合物を使用することにより、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも傾斜面の塗料のずり落ちも発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
このように、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるように塗工し、乾燥する制振材配合物の塗工方法や、乾燥後の塗膜の面密度が2.0〜6.0kg/mとなるように塗工し、乾燥する制振材配合物の塗工方法もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。また、上記制振材配合物の塗工方法によって得られた制振材もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
【0077】
上記制振材配合物を塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる条件としては、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、本発明における制振材配合物は、加熱乾燥性に優れることから、効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥の温度としては、80〜210℃とすることが好ましい。より好ましくは、110〜180℃、更に好ましくは、120〜170℃である。
【0078】
上記制振材配合物の制振性は、制振材配合物から形成される膜の損失係数を測定することにより評価することができる。
損失係数は、通常ηで表され、制振材に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。上記制振材配合物から形成される膜の損失係数のピーク値として好ましくは、20%以上である。より好ましくは、21%以上であり、更に好ましくは、22%以上であり、特に好ましくは、23%以上である。
上記損失係数の測定方法としては、共振周波数付近で測定する共振法が一般的であり、半値幅法、減衰率法、機械インピーダンス法がある。本発明の制振材配合物において、制振材配合物から形成される膜の損失係数としては、片持ち梁法を用いた共振法(3dB法)により測定することが好適である。片持ち梁法を用いる測定は、例えば、株式会社小野測機製のCF−5200型FFTアナライザーを用いて行うことができる。
また、上記損失係数は、冷間圧延鋼板(SPCC−SD:250×10×1.6mm)上に200×10×3.0mmの塗膜容量で塗布し、95℃×30分乾燥後、130℃×60分焼付け乾燥することで被膜を形成して測定することが好ましい。損失係数の測定は、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃及び60℃の各温度における損失係数を共振法(3dB法)により測定し、その中のピーク値により評価するのが好ましい。また、制振材配合物から形成される膜の実用温度範囲が通常では20〜60℃であるので、20〜60℃の各温度における損失係数を合計した値で制振性能を評価してもよく、制振材配合物から形成される膜が、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した総損失係数が0.20以上である制振材配合物もまた、本発明の1つである。そのような制振材配合物である場合に、制振材配合物から形成される膜の実用温度範囲である20〜60℃において充分な制振性を発揮しているということができる。
総損失係数としては、より好ましくは、0.27以上であり、更に好ましくは、0.30以上である。
【発明の効果】
【0079】
本発明の制振材用樹脂組成物は、上述の構成よりなり、制振材に要求される基本性能を発揮するとともに、制振性に格段に優れる制振材を形成することができるものであり、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等の工業的な用途に好適に適用することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。また、「wt%」は「質量%」を意味するものとする。
【0081】
なお、以下の実施例において、各種物性等は以下のように評価した。
<ガラス転移温度(Tg)>
各段で用いた単量体組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
【0082】
【数2】

【0083】
なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
上記計算式(1)により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
メタクリル酸(MAA):130℃
アクリロニトリル(AN):96℃
【0084】
<不揮発分(N.V.)>
得られた水性樹脂分散体約1gを秤量、熱風乾燥機で110℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
【0085】
<平均粒子径、粒度分布>
動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、体積平均粒子径を測定した。
また、標準偏差をその体積平均粒子径で割った値(標準偏差/体積平均粒子径×100)を粒度分布として算出した。
<重量平均分子量>
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定した。
【0086】
<制振性試験>
上記制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0kg/mの制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)をもちいて、それぞれの温度(20℃、40℃、60℃)における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、40℃、60℃での損失係数の合計)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
【0087】
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水320部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート230部、スチレン300部、ブチルアクリレート270部、2−エチルヘキシルアクリレート180部、アクリル酸15部、メタクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン4部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF(商品名、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩:日本乳化剤社製)180.0部及び脱イオン水194部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの10部、5%過硫酸アンモニウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を180分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液100部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液100部を180分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、モノエタノールアミン5部を添加し、不揮発分55.0%、pH7.0、粘度420mPa・s、粒子径230nm、粒度分布22%、重量平均分子量67,000、Tg5.0℃のエマルションを得た。
【0088】
(製造例2、4〜7)
製造例1同様の手順で、表1に示すモノマー組成により所定のエマルションポリマーを得た。得られたエマルションポリマーのスペックを表1に示す。
【0089】
(製造例3)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水320部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート120部、スチレン150部、ブチルアクリレート120部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、アクリル酸7.5部、メタクリル酸2.5部、t−ドデシルメルカプタン2部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF(商品名、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩:日本乳化剤社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの10部、5%過硫酸アンモニウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を90分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにメチルメタクリレート120部、スチレン150部、ブチルアクリレート120部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、アクリル酸7.5部、メタクリル酸2.5部、t−ドデシルメルカプタン25部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、90分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を90分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、モノエタノールアミン5部を添加し、不揮発分54.8%、pH7.3、粘度620mPa・s、粒子径210nm、粒度分布21%、1段目の重量平均分子量69,000、2段目の重量平均分子量8500、1段目のTg6.0℃、2段目のTg6.0℃、トータルTg6.0℃のエマルションを得た。
【0090】
(製造例8)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水320部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート150部、スチレン150部、ブチルアクリレート120部、2−エチルヘキシルアクリレート70部、アクリル酸7.5部、メタクリル酸2.5部、t−ドデシルメルカプタン2部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF(商品名、日本乳化剤社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの10部、5%過硫酸アンモニウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を90分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにメチルメタクリレート110部、スチレン110部、ブチルアクリレート120部、2−エチルヘキシルアクリレート150部、アクリル酸7.5部、メタクリル酸2.5部、t−ドデシルメルカプタン2部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、90分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を90分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、モノエタノールアミン5部を添加し、不揮発分55.0%、PH7.2、粘度280mPa・s、粒子径240nm、粒度分布21%、重量平均分子量73000、1段目のTg17.3℃、2段目のTg−10.3℃、トータルTg2.8℃のエマルションを得た。
【0091】
(実施例1〜6、比較例1、参考例1〜3)
<制振材配合物の調製>
表2に示した制振材用エマルションを下記の通り配合し、制振材配合物として制振材塗膜を作製し、制振性を評価した。結果を表2に示す。
制振材用エマルション 359部
炭酸カルシウム(NN#200*1) 620部
分散剤(アクアリックDL−40S*2) 6部
増粘剤(アクリセットWR−650*3) 4部
消泡剤(ノプコ8034L*4) 1部
発泡剤(F−30*5) 6部
*1:日東粉化工業社製 充填剤
*2:日本触媒社製 ポリカルボン酸系分散剤(有効成分44%)
*3:日本触媒社製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
*4:サンノプコ社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
*5:松本油脂社製 発泡剤
なお、表2中、アクリルオリゴマー(1)は、アクトフローUME−1001(商品名、綜研化学社製、Tg:−22℃、Mw:1200)を表し、アクリルオリゴマー(2)は、ARUFON UP−1190(商品名、東亞合成社製、Tg:−50℃、Mw:1700)を表している。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
上述した実施例及び比較例から、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上であると、5未満である場合に比べて、制振性において有利な効果を発揮することがわかった。この実施例と比較例との差は、数値上はわずかに見えるが、制振性を表す損失係数としては、有意に大きな差である。なお、上記実施例においては、ポリマーとしてアクリル共重合体を用いているが、分子量に大きな差のある少なくとも2種類のポリマーは、そのポリマー間に運動性の差があり、その運動性の差によってポリマー間に摩擦力が生じるために、そのような少なくとも2種類のポリマーを含む樹脂組成物が優れた制振性を示す、という機構は、ポリマーの単量体成分に関わらず同様であることから、上記実施例、比較例の結果から、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体成分を重合してなるポリマーを含有する制振材用樹脂組成物であって、
該制振材用樹脂組成物は、少なくとも2種類の重量平均分子量の異なるポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、ポリマー(A)とポリマー(B)との重量平均分子量の比が5以上であることを特徴とする制振材用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(A)は、重量平均分子量が2万〜80万であり、前記ポリマー(B)は、
ポリマー(A)よりも重量平均分子量の低いポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の制振材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリマー(B)は、500〜2万の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の制振材用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(A)は、極性基含有単量体の共重合割合が、単量体成分100質量%に対して0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリマー(A)は、−20〜30℃のガラス転移温度を有し、ポリマー(A)のガラス転移温度とポリマー(B)のガラス転移温度との差が、40℃以内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。
【請求項6】
前記制振材用樹脂組成物は、ポリマー(A)とポリマー(B)との質量比が95/5〜60/40であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を必須成分とすることを特徴とする制振材配合物。
【請求項8】
前記制振材配合物から形成される膜は、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した総損失係数が0.20以上であることを特徴とする請求項7に記載の制振材配合物。

【公開番号】特開2011−57829(P2011−57829A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208401(P2009−208401)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】