説明

制振組成物

【課題】制振性を高めることの容易な制振組成物を提供する。
【解決手段】制振組成物には、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散した複合分散液を固化してなる複合体と、非膨潤性マイカとが含有されている。また、制振組成物は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイト及び非膨潤性マイカを分散した複合分散液として構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液を用いた制振組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料を母材とした制振組成物は、充填剤が配合されることで高分子材料の制振性を高めるように構成されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/42844号パンフレット
【特許文献2】特開2002−302583号公報
【特許文献3】国際公開第99/28394号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/40391号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制振組成物においては、制振性を高めるためにマイカの含有は有効である。マイカの中でも、膨潤性マイカは水系分散媒に対して膨潤性を有するため、水系分散媒中での分散性が確保され易い。ところが、膨潤性マイカは、天然物としては存在せず、いわゆる合成マイカの一種であるため、その製造に手間を要するという問題がある。この点、非膨潤性マイカは、水系分散媒中での分散性については膨潤性マイカよりも劣るものの、天然物として存在することから、容易に入手することができるといった利点がある。一方、膨潤性マイカと同様に、水系分散媒に対して膨潤性を有する充填剤としてモンモリロナイトが知られている。モンモリロナイトについても、天然物として存在しているため、容易に入手することができるといった利点がある。
【0005】
本発明は、モンモリロナイト及び非膨潤性マイカを併用することで、膨潤性マイカ及び非膨潤性マイカを併用した場合よりも、制振性が高められることを見出すことでなされたものである。本発明の目的は、制振性を高めることの容易な制振組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の制振組成物は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散した複合分散液を固化してなる複合体と、非膨潤性マイカとを含有してなることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明の制振組成物は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイト及び非膨潤性マイカを分散した複合分散液として構成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の制振組成物において、前記樹脂粒子としてアクリル系樹脂粒子を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制振性を高めることの容易な制振組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における制振組成物には、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散した複合分散液を固化してなる複合体と、非膨潤性マイカとが含有されている。
【0011】
樹脂粒子を構成する高分子材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル/アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの高分子材料は変性体であってもよい。
【0012】
樹脂粒子は、単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、複数種の高分子材料から形成されていてもよい。さらに、水系樹脂分散液には、これらの高分子材料から構成される樹脂粒子を単独で含有させてもよいし、複数種の樹脂粒子を含有させてもよい。
【0013】
高分子材料の中でも、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易であるという観点からアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。
【0014】
樹脂粒子の全量に対するアクリル系樹脂粒子の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。最も好ましくは樹脂粒子の全量がアクリル系樹脂粒子である。
【0015】
樹脂粒子を分散する水系分散媒としては、水、及び水と一価アルコールとの混合液が挙げられる。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
【0016】
こうした水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散させることで複合分散液が得られる。モンモリロナイトは、層状粘土鉱物の一種であり、ベントナイトの主成分として含まれる。モンモリロナイトは、火山岩、その凝灰岩、天然ガラス等が風化することで生成される。すなわち、モンモリロナイトは天然物として存在しているため、容易に入手することができるという利点がある。なお、水系樹脂分散液にモンモリロナイトを配合するに際して、それを主成分とするベントナイトを配合してもよい。このようにベントナイトの配合によれば、ベントナイトからモンモリロナイトを精製する手間を省くことができる。
【0017】
モンモリロナイトの平均粒径は、特に限定されないが、例えば1〜100μmの範囲が好適である。
水系樹脂分散液中では、モンモリロナイトが水系分散媒により膨潤されることでモンモリロナイトは容易に分散される。モンモリロナイトは、水系樹脂分散液に配合した後に静置、又は、必要に応じて攪拌することで分散させることができる。
【0018】
モンモリロナイトの含有量は、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは3〜30質量部である。
複合分散液には、必要に応じて制振性付与成分、無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、発泡剤、滑剤、分散剤、ゲル化剤、造膜助剤、凍結防止剤、粘度調整剤等を必要に応じて加えることができる。
【0019】
制振組成物には、制振性を高めるという観点から、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の制振性付与成分を含有させることが好ましい。
【0020】
ベンゾチアジル系化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、及びN,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合したものであって、2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−(2′−ハイドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)、及び2−(2′−ハイドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HOPB)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0022】
ジフェニルアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(ECDPA)、及びオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(OCDPA)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0023】
正リン酸エステル系化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
芳香族第二級アミン系化合物としては、例えばp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン及び4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0025】
無機充填剤としては、例えばタルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス、シリカ、アルミナ、アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉄、アスベスト、酸化チタン、酸化鉄、珪藻土、ゼオライト、フェライト等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。制振組成物には、制振性を高めるという観点から、さらに炭酸カルシウムを含有させることが好ましい。
【0026】
こうして得られた複合分散液を固化することで樹脂粒子を構成する高分子材料とモンモリロナイトとの複合体が得られる。複合分散液は、例えば加熱により水系分散媒を揮発させることで固化される。こうして得られた複合体に非膨潤性マイカを配合し、公知の混合又は混練手段を用いて混合することで、制振組成物が得られる。
【0027】
非膨潤性マイカは、水中では膨潤しない特性を有する。非膨潤性マイカとしては、例えば白雲母、金雲母、黒雲母、絹雲母等の天然非膨潤性マイカが挙げられる。非膨潤性マイカの平均粒径は、特に限定されないが、例えば10〜100μmの範囲が好ましい。また、非膨潤性マイカのアスペクト比は、例えば40以上の範囲が好適に用いられる。非膨潤性マイカのアスペクト比は、制振性をより高めるという観点から、好ましくは45を超える範囲であり、より好ましくは90以上の範囲である。非膨潤性マイカのアスペクト比の上限は、特に限定されないが、例えば1000以下であることが好適である。
【0028】
非膨潤性マイカの含有量は、樹脂粒子100質量部に対して好ましくは10〜300質量部、より好ましくは50〜250質量部である。
制振組成物は、振動エネルギーの抑制が要求される各種分野において利用することができる。制振組成物の適用分野としては、例えば自動車、壁材、床材、屋根材、フェンス等の建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。
【0029】
このように構成された制振組成物では、モンモリロナイトの分散性に優れるとともに、非膨潤性マイカが含有されていることにより、高分子材料中において、振動エネルギーが熱エネルギーへ効率よく変換される。こうした制振組成物の制振性能は、制振組成物の損失弾性率又は損失係数によって示される。つまり、制振組成物の損失弾性率の値又は損失係数の値が高ければ高いほど、制振組成物の制振性能が優れることが示される。制振組成物の損失弾性率は周知の動的粘弾性測定装置により測定することができるとともに損失係数は周知の損失係数測定装置によって測定することができる。
【0030】
制振組成物は、シート状に成形することで非拘束型制振材料として利用される。こうした非拘束型制振材料は、シート面を適用箇所の形状に沿うようにして適用箇所に設けることで、適用箇所とは反対側のシート面が拘束されていない状態で使用される。そして、上記損失弾性率は、非拘束型制振材料の制振性能についての指標となる。すなわち、損失弾性率が高まれば、非拘束型制振材料としての制振性能が高まるため、本実施形態の制振組成物は、シート状の非拘束型制振材料としての利用価値が極めて高い。
【0031】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)膨潤性マイカは、いわゆる合成マイカの一種であり、その製造に手間を要するという問題がある。本実施形態の制振組成物では、モンモリロナイト及び非膨潤性マイカといった充填剤を用いている。こうした充填剤は、天然物として入手可能であるという利点がある。しかも、水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散するとともに、そのモンモリロナイトと非膨潤性マイカとを併用している。このように構成することにより、膨潤性マイカ及び非膨潤性マイカを併用した場合よりも、制振性が高められるようになる。よって、制振性を高めることの容易な制振組成物を提供することができる。
【0032】
(2)樹脂粒子としてアクリル系樹脂粒子を含むことで、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易であるため、常温付近において優れた制振効果を発揮させることができる。
【0033】
(3)制振組成物には、炭酸カルシウム及び上記制振性付与成分の少なくとも一方が含有されることで、制振性をさらに高めることが容易となる。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
【0034】
・モンモリロナイトを予め水系分散媒に分散したモンモリロナイトの分散液を調製した後に、その分散液と水系樹脂分散液とを混合することで、複合分散液を調製してもよい。
・モンモリロナイト以外の配合成分については、水系樹脂分散液又は複合分散液に配合することで制振組成物に含有させてもよいし、複合体に配合することで制振組成物に含有させてもよい。
【0035】
・前記制振組成物を、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイト及び非膨潤性マイカのいずれも分散した複合分散液として構成することもできる。このように複合分散液として構成した制振組成物は、固化することで例えばペレット等の固化物を形成し、その固化物を成形することで、例えば制振シート等の成形品を得ることができる。また、複合分散液として構成した制振組成物は例えば鋼板等の金属板に塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる制振塗料として利用することができる。このようにモンモリロナイト及び非膨潤性マイカのいずれも分散した複合分散液として構成した場合であっても、上記(1)欄で述べた作用効果を得ることができる。
【0036】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の制振性付与成分を含有する制振組成物。
【0037】
・炭酸カルシウムを含有する制振組成物。
・前記モンモリロナイトは、ベントナイトとして配合される制振組成物。
・樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイト及び非膨潤性マイカを分散した複合分散液を固化してなる制振組成物。
【実施例】
【0038】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
表1に示されるように、樹脂粒子の水系樹脂分散液にベントナイト(株式会社ホージュン製、平均粒径約63μm)を配合するとともに攪拌した後、ベントナイトを膨潤させるために24時間静置した。なお、水系樹脂分散液には、ベントナイトの膨潤を促進するためにイオン交換水を適量添加している。静置後、再度攪拌することで複合分散液を調製した。複合分散液を110℃、24時間の条件で乾燥させることで複合体を調製した。なお、樹脂粒子はアクリル系樹脂粒子である。次いで、同複合体に非膨潤性マイカ(平均粒径49μm)、炭酸カルシウム及び制振性付与成分を配合するとともにロール混練及び圧縮プレスによって、制振組成物としての厚さ1mmのシート材を作製した。
【0039】
(比較例1)
比較例1では、ベントナイトを膨潤性マイカに変更した以外は、実施例1と同様にして制振組成物としての厚さ1mmのシートを作製した。
【0040】
(比較例2)
比較例2では、ベントナイト及び膨潤性マイカを配合せずに、実施例1と同様にして制振組成物としての厚さ1mmのシート材を作製した。
【0041】
(比較例3)
比較例3では、水系樹脂分散液にベントナイトを分散させずに、固形のアクリル系樹脂にベントナイトを配合した以外は実施例1と同様に制振組成物を調製している。この比較例3では、まず水系樹脂分散液を110℃、24時間の条件で乾燥させることで、固形のアクリル系樹脂を得た。同アクリル系樹脂にベントナイト、非膨潤性マイカ、炭酸カルシウム及び制振性付与成分を配合するとともにロール混練及び圧縮プレスによって、制振組成物としての厚さ1mmのシート材を作製した。
【0042】
<動的粘弾性の測定>
各例で得られたシート材を35mm×3mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。動的粘弾性測定装置(RSA−II:レオメトリック社製)を用いて各試験片を加振しながら連続的に昇温した際の損失弾性率E″を測定した。測定条件は、周波数10Hz、測定温度範囲−40℃〜+90℃、昇温速度5℃/分とした。各例のシート材について、損失弾性率E″の結果を表1に併記している。
【0043】
【表1】

表1に示されるように、実施例1の損失弾性率E″のピーク値は、比較例1よりも高い結果が得られている。この結果から、実施例1では比較例1よりも制振性が高まっていることが分かる。このように、ベントナイトを含有した実施例1では、膨潤性マイカの含有した比較例1よりも制振性能が発揮されることが分かる。
【0044】
また、損失弾性率E″=100×10dyn/cm以上の温度幅(℃)について、実施例1は比較例1よりも広がっていることが分かる。このように実施例1では、比較例1よりも制振性が高められるとともに所定の制振性を示す温度幅が広がっていることが分かる。比較例2では、実施例1よりも非膨潤性マイカの含有量を高めているものの、損失弾性率E″の結果から、実施例1よりも制振性が劣っている。また、比較例3では、水系樹脂分散液にベントナイトを分散していない。すなわち、ベントナイトの膨潤性を生かした分散が行われていないため、実施例1よりも制振性が劣っている。
【0045】
(実施例2〜4)
表2に示されるように、ベントナイト及び炭酸カルシウムの含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして制振組成物を調製した。また、各例と同様にして損失弾性率E″を測定した。その結果を表2に併記している。
【0046】
【表2】

表2に示されるように、実施例2ではベントナイトの含有量を削減している。こうした実施例2のベントナイトの含有量は、比較例1の膨潤性マイカの含有量よりも少ないものの、実施例2の制振性は比較例1の制振性と同等の結果が得られていることが分かる。また、実施例3及び4では、比較例1よりも制振性が高まっていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイトを分散した複合分散液を固化してなる複合体と、非膨潤性マイカとを含有してなることを特徴とする制振組成物。
【請求項2】
樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液にモンモリロナイト及び非膨潤性マイカを分散した複合分散液として構成されていることを特徴とする制振組成物。
【請求項3】
前記樹脂粒子としてアクリル系樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制振組成物。

【公開番号】特開2010−235888(P2010−235888A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87956(P2009−87956)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】