説明

制振装置

【課題】本発明はブレースの摺接音を低減することを課題とする。
【解決手段】制振装置10は、下梁14に固定された伝達部材30と、伝達部材30と上梁16との間に装架された油圧ダンパ32と、伝達部材30に挿通されたブレース34,36とより構成されている。伝達部材30の中空部38,40の上端は、上梁16の手前で切断された自由端に形成されている。伝達部材30は、下梁14に地震による振動が入力されると、下梁14と共に水平方向に揺動する際に、内部通路38a,40aがブレース34,36の中間部分の振幅を許容すると共に、内部通路38a,40aの寸法形状によってブレース34,36の中間部分の振幅を所定範囲内に規制する。これにより、ブレース34と36とが干渉せず、制振動作時の摺接音の発生が防止される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は制振装置に係り、特に上梁と下梁と柱により形成される空間を有する構造物の傾動を緩和するよう構成された制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の制振装置としては、例えば、上梁に連結された上部伝達部材の下端と下梁に連結された下部伝達部材との間に油圧ダンパが設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この制振装置では、上梁と下梁との相対的な並行移動により油圧ダンパが伸縮動作して減衰力を発生して上梁と下梁との相対変位を緩和させるように構成されており、上梁と下梁と柱により形成される空間の対角方向に延在するブレースと油圧ダンパとが交差しないように配置されている。
【0004】
上記従来の制振装置では、限られたスペースで形成された壁面内部にブレース、油圧ダンパ、上部伝達部材、下部伝達部材が設けられており、油圧ダンパが他の部材と干渉しないように配置することが難しく、且つ油圧ダンパのピストンストロークを確保することが難しかった。
【0005】
そのため、上部伝達部材及び、下部伝達部材の内部を板と板とを対向させて中空形状とし、上部伝達部材及び、下部伝達部材の中空部にブレースを挿通させることが考えられている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−3597号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来は、上部伝達部材及び下部伝達部材を中空形状とした場合、上部伝達部材及び下部伝達部材の内部に挿入されたブレースが上梁と下梁との相対変位により圧縮荷重と引張り荷重を交互に付与される際にブレースの中間部分が撓んだり、伸びたりして壁面と近接する方向に移動することになる。
【0008】
これにより、ブレースが交差するように配置されている場合にはブレースの交差部分でブレース同士の接触音が発生したり、あるいはブレースが伝達部材を介して壁面に取り付けられるパネルに接触して接触音が発生するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決した制振装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような特徴を有する。
上記請求項1の発明は、構造物の上梁と下梁と柱により形成される垂直な壁面空間の対角線上に設けられたブレースと、上梁または下梁の何れか一方に一端側が固定された伝達部材と、伝達部材を介して上梁と下梁との相対的な並行移動を緩和する緩衝部材とを備えた制振装置において、伝達部材が、ブレースを収納するようにブレースの長手方向に沿って形成された中空部を有し、他端側が上梁または下梁の手前で切断された自由端に形成され、自由端の近傍に緩衝部材が連結されたものであり、ブレースの中間部分の振幅を中空部によって規制することでブレースの振動による摺接音の発生を防止することが可能になる。
【0011】
また、上記請求項2の発明は、中空部の断面が上梁及び下梁の相対変位の際、内部でブレースの移動を所定範囲に制限するように移動方向に長細形状に形成されたものであり、ブレースの中間部分の振幅を中空部の長細形状によって規制することでブレースの振動による摺接音の発生を防止することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明になる制振装置の第1実施例の取り付け状態を示す正面図である。
【0013】
図1に示されるように、第1実施例の制振装置10は、構造物の基礎12に横架された下梁14と、2階床を支持するように横架された上梁16と、下梁14と上梁16との間で起立する一対の柱18,20とにより形成された垂直な壁面空間22に取り付けられている。
【0014】
尚、柱18,20の上端及び下端は、金属板からなるL字状補強金具28により上梁16及び下梁14に強固に締結されている。
【0015】
また、制振装置10は、下梁14に固定された伝達部材30と、伝達部材30と上梁16との間に装架された緩衝部材として油圧ダンパ32と、伝達部材30に挿通されたブレース(筋交い)34,36とより構成されている。
【0016】
伝達部材30は、中空形状に形成されて対角方向に延在する第1の中空部38と、第1の中空部38と交差するように対角方向に延在する第2の中空部40と、第1の中空部38の上端と第2の中空部40の上端との間に横架された横架部材42とを有する。
【0017】
また、第1の中空部38の下端と第2の中空部40の下端は、ブラケット44を介して下梁14に固定されている。ブラケット44は、下梁14と柱18,20とが結合される角部近傍に固定される。そのため、下梁14の変位が伝達部材30を介して油圧ダンパ32に効率良く伝達されて油圧ダンパ32のピストンストロークを確保することが可能になり、振動エネルギに対する減衰力(抵抗力)を効果的に発生させることが可能になる。
【0018】
また、第1,第2の中空部38,40は、水平方向に幅広とされた長方形状の内部通路38a,40aが内部を貫通するように形成されている。そのため、ブレース34,36は、内部通路38a,40a(図1中、破線で示す)に水平方向に移動可能な遊嵌状態で挿通される。すなわち、内部通路38a,40aは、水平方向の断面形状がブレース34,36の中間部分の振動方向に延在する長方形に形成されている。また、第1,第2の中空部38,40の壁面に対して近接または離間する方向の寸法は、ブレース34,36の太さ寸法よりも若干大きな寸法に設定されている。
【0019】
また、中空部38,40の上端は、上梁16の手前で切断された自由端に形成されている。そして、上梁16に締結される上部伝達部材が不要であるので、構成の簡素化が図られている。
【0020】
伝達部材30は、下梁14に地震等による振動が入力されると、下梁14と共に水平方向に揺動する際に、内部通路38a,40aがブレース34,36の中間部分の振幅を許容すると共に、通路幅寸法によってブレース34,36の中間部分の振幅を所定範囲内に規制する。また、振動のメカニズムによりブレース34,36が撓んだり、伸びたりして壁面と近接または離間する方向(壁面に対して垂直方向)に移動しても中空部38,40の内部通路38a,40aがその移動を規制する。
【0021】
このように、伝達部材30を構成する第1,第2の中空部38,40の内部通路38a,40aにブレース34,36を挿通させたため、ブレース34と36とが干渉せず、制振動作時の摺接音の発生が防止される。また、伝達部材30が下梁14に締結されるように取り付けられているので、油圧ダンパ32を伝達部材30及びブレース34,36と干渉しないように配置することができ、油圧ダンパ32のストロークが確保される。
【0022】
ブレース34,36は、第1,第2の中空部38,40の内部通路38a,40aに挿通されており、両端が夫々壁面空間22の角部に固定されたL字状補強金具28に連結されている。また、ブレース34,36の上端付近には、長さ調整用ナット46が設けられている。
【0023】
油圧ダンパ32は、シリンダ32bの内部に粘性を有する作動油が充填されており、ピストンロッド32aの端部に設けられたピストン(図示せず)がシリンダ32bの内部を摺動することにより作動油の粘性抵抗による減衰力(抵抗力)を発生するように構成されている。そして、油圧ダンパ32は、シリンダ32bの端部が上梁16の下面に固定された連結部材48に連結され、ピストンロッド32aの端部が横架部材42に固定された連結部材50に連結される。
【0024】
また、第1、第2の中空部38,40は、X字状に交差するように形成されており、ブレース34,36の下側の3/4の長さ部分を覆うように形成されている。従って、伝達部材30は、ブラケット44を介して下梁14に固定され、且つ上梁16及び柱18,20と分断されているため、下梁14の変位が油圧ダンパ32に効率良く伝達されて油圧ダンパ32のストロークを確保することが可能になり、振動エネルギに対する減衰力(抵抗力)を効果的に発生させることが可能になる。
【0025】
また、油圧ダンパ32は、横架部材42と上梁16との間に形成された空きスペースに設けられているため、コンパクトに収納されると共に、振動入力時に上梁16と下梁14との相対変位が伝達されるとブレース34,36と接触せずに伸縮動作する。
【0026】
上記のように、下梁14、上梁16、一対の柱18,20を有する構造物では、地震などによる振動エネルギが基礎12に入力されると、下梁14と上梁16との間、及び柱18,20間で水平方向の層間変位が生じる。このような下梁14と上梁16との間の相対変位により、柱18、20がA,B方向に揺動(傾動)すると、その際の変位は、伝達部材30を介して油圧ダンパ32に伝達される。
油圧ダンパ36は水平方向(A,B方向)の変位に対して減衰力(抵抗力)を発生し、構造物の揺動を抑制する。
【0027】
ここで、上記のように構成された制振装置10の制振動作について説明する。図2は下梁14にA方向の加速度が入力された場合の動作を模式的に示す図である。図3は下梁14にB方向の加速度が入力された場合の動作を模式的に示す図である。
【0028】
図2に示されるように、基礎12及び下梁14にA方向の加速度が入力された場合、上梁16と下梁14との相対変位に伴う荷重が伝達部材30を介して油圧ダンパ32に伝達される。そのため、油圧ダンパ32には、連結部材48と50との離間距離が増幅されて引っ張り荷重が付与される。これにより、油圧ダンパ32は、シリンダ32bに対してピストンロッド32aが伸びる方向に動作し、これに伴って作動油の粘性抵抗が減衰力となって上梁16に伝達される。
【0029】
図3に示されるように、基礎12及び下梁14にB方向の加速度が入力された場合、上梁16と下梁14との相対変位が伝達部材30を介して油圧ダンパ32に伝達されるため、連結部材48と50との離間距離が増幅されて油圧ダンパ32に圧縮荷重が付与される。これにより、油圧ダンパ32は、シリンダ32bに対してピストンロッド32aが圧縮方向に動作し、これに伴って作動油の粘性抵抗が減衰力となって上梁16に伝達される。
【0030】
このように、下梁14にA,B方向の振動が入力された場合、柱18,20の傾動に伴う上梁16の振動は、油圧ダンパ32の制振動作によって発生された抵抗力により減衰される。
【0031】
ここで、第2実施例について説明する。
図4は第2実施例の構成を示す正面図である。尚、図4において、前述した第1実施例と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図4に示されるように、第2実施例の制振装置60の伝達部材62は、中空形状に形成されて対角方向に延在する第1の中空部64と、第1の中空部64と交差するように対角方向に延在する第2の中空部66とを有する。
【0033】
また、第1の中空部64の下端と第2の中空部66の下端は、ブラケット44を介して下梁14に固定されている。また、第1,第2の中空部64,66は、水平方向に幅広とされた長方形状の内部通路64a,66aが内部を貫通するように形成されている。そのため、ブレース34,36は、内部通路64a,66a(図1中、破線で示す)に水平方向に移動可能な遊嵌状態で挿通される。
【0034】
すなわち、内部通路64a,66aは、水平方向の断面形状がブレース34,36の中間部分の振動方向に延在する長方形に形成されている。
【0035】
また、中空部64,66の上端は、上梁16の手前で切断された自由端に形成されている。そして、上梁16に締結される上部伝達部材が不要であるので、構成の簡素化が図られている。
【0036】
伝達部材62は、下梁14に地震による振動が入力されると、下梁14と共に水平方向に揺動する際に、内部通路64a,66aがブレース34,36の中間部分の振幅を許容すると共に、通路幅寸法によってブレース34,36の中間部分の振幅を所定範囲内に規制する。また、振動のメカニズムによりブレース34,36が撓んだり、伸びたりして壁面と近接または離間する方向(壁面に対して垂直方向)に移動しても中空部64,66の内部通路64a,66aがその移動を規制する。
【0037】
このように、伝達部材62を構成する第1,第2の中空部64,66の内部通路64a,66aにブレース34,36を挿通させたため、ブレース34と36とが干渉せず、制振動作時の摺接音の発生が防止される。また、伝達部材62が下梁14に締結されるように取り付けられているので、油圧ダンパ32を伝達部材62及びブレース34,36と干渉しないように配置することができ、油圧ダンパ32のストロークが確保される。
【0038】
また、第1の中空部64は、ブレース34の全長の1/2を覆うように延在形成されており、上端が第2の中空部66の側面に固着されている。そのため、ブレース34は、第1の中空部64の内部通路64aに挿通されると共に、第2の中空部66と交差する部分から露出されるが、第2の中空部66の側面とは離間して非接触である。
【0039】
そして、油圧ダンパ32は、シリンダ32bの端部が上梁16の下面に固定された連結部材48に連結され、ピストンロッド32aの端部が第2の中空部66の上端側面に固定された連結部材50に連結される。
【0040】
このように第2実施例の制振装置60では、伝達部材62の構成が第1実施例のものよりも簡略化されており、横架部材42が無いので、その分油圧ダンパ32の設置スペースが広くなり、設計の自由度が高められる。
【0041】
ここで、第3実施例について説明する。
図5は第3実施例の構成を示す正面図である。尚、図5において、前述した第1、2実施例と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図5に示されるように、第3実施例の制振装置70の伝達部材72は、中空形状に形成されて対角方向に延在する第1の中空部74と、第1の中空部74と交差するように対角方向に延在する第2の中空部76とを有する。
【0043】
また、第1の中空部74の下端と第2の中空部76の下端は、ブラケット44を介して下梁14に固定されている。また、第1,第2の中空部74,76は、水平方向に幅広とされた長方形状の内部通路74a,76aが内部を貫通するように形成されている。
【0044】
また、第1の中空部74は、第2の中空部76のほぼ1/2の長さを有しており、且つ内部通路74aが内部通路76aの長手方向の中間部分に連通されている。
【0045】
本実施例では、一方のブレース36のみが、内部通路76aに水平方向に移動可能な遊嵌状態で挿通される。すなわち、内部通路76aは、水平方向の断面形状がブレース36の中間部分の振動方向に延在する長方形に形成されている。
【0046】
また、中空部76の上端は、上梁16の手前で切断された自由端に形成されている。そして、上梁16に締結される上部伝達部材が不要であるので、構成の簡素化が図られている。
【0047】
伝達部材72は、下梁14に地震による振動が入力されると、下梁14と共に水平方向に揺動する際に、内部通路76aがブレース36の中間部分の振幅を許容すると共に、通路幅寸法によってブレース36の中間部分の振幅を所定範囲内に規制する。
【0048】
このように、伝達部材72では、第2の中空部76の内部通路76aにブレース36を挿通させたため、ブレース36が壁面に取り付けられるパネル(図示せず)と干渉せず、制振動作時の摺接音の発生が防止される。また、伝達部材72が下梁14に締結されるように取り付けられているので、油圧ダンパ32を伝達部材72及びブレース36と干渉しないように配置することができ、油圧ダンパ32のストロークが確保される。
【0049】
そして、油圧ダンパ32は、シリンダ32bの端部が上梁16の下面に固定された連結部材48に連結され、ピストンロッド32aの端部が第2の中空部76の上端側面に固定された連結部材50に連結される。
【0050】
このように第3実施例の制振装置70では、第1の中空部74が短く形成され、且つ一方のブレース36のみが空間22の対角方向に装架されるため、構成が第2実施例のものよりも簡略化されており、その分油圧ダンパ32の設置スペースが広くなり、設計の自由度がより一層高められる。
【0051】
ここで、第4実施例について説明する。
図6は第4実施例の構成を示す正面図である。尚、図6において、前述した第1〜3実施例と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図6に示されるように、第4実施例の制振装置80の伝達部材82は、三角形状の板部84と、中空形状に形成されて対角方向に延在する中空部86とを有する。
【0053】
また、板部84は、右側傾斜部が中空部86の側面に一体的に設けられ、下端に下梁14に固定されるブラケット部84aが設けられている。尚、中空部86は、水平方向に幅広とされた長方形状の内部通路86aが内部を貫通している。
【0054】
本実施例では、一方のブレース36のみが、内部通路86aに水平方向に移動可能な遊嵌状態で挿通される。すなわち、内部通路86aは、水平方向の断面形状がブレース36の中間部分の振動方向に延在する長方形に形成されている。
【0055】
また、中空部86の上端は、上梁16の手前で切断された自由端に形成されている。そして、上梁16に締結される上部伝達部材が不要であるので、構成の簡素化が図られている。
【0056】
伝達部材82は、下梁14に地震による振動が入力されると、下梁14と共に水平方向に揺動する際に、内部通路86aがブレース36の中間部分の振幅を許容すると共に、通路幅寸法によってブレース36の中間部分の振幅を所定範囲内に規制する。
【0057】
このように、中空部86の内部通路86aにブレース36を挿通させたため、ブレース36が壁面に取り付けられるパネル(図示せず)と干渉せず、制振動作時の摺接音の発生が防止される。また、伝達部材82が下梁14に締結されるように取り付けられているので、油圧ダンパ32を伝達部材72及びブレース36と干渉しないように配置することができ、油圧ダンパ32のストロークが確保される。
【0058】
そして、油圧ダンパ32は、シリンダ32bの端部が上梁16の下面に固定された連結部材48に連結され、ピストンロッド32aの端部が中空部86の上端側面に固定された連結部材50に連結される。
【0059】
このように第4実施例の制振装置80では、中空部86のみが対角方向に設けられているため、構成が第3実施例のものよりも簡略化されており、その分油圧ダンパ32の設置スペースが広くなり、設計の自由度がより一層高められる。
【0060】
尚、上記実施の形態では、下梁14に伝達部材を固定する構成を一例として挙げたが、これに限らず、上梁16に伝達部材を固定する構成としても良い。
【0061】
さらに、上記実施の形態では、基礎12の上に下梁14が横架された、木造住宅の1階部分に制振装置を適用したものを示したが、これに限らず、上記実施の形態における上梁16を下梁として、2階部分に適用しても良い。
【0062】
さらに、上記実施の形態では、構造物として木造住宅に制振装置を取り付ける場合を一例として挙げたが、これに限らず、木造以外の住宅、例えば、軽量鉄骨を用いた構造物に適用しても構わない。
【0063】
また、上記実施の形態では、下部梁として、基礎12の上に横架された下梁14であるものを示したが、これに限らず、コンクリート等の基礎を下部梁として、この上に直接柱を立設させた構造物にも適用できる。
【0064】
さらに、上記実施の形態では、緩衝部材として油圧ダンパ36を用いたものを示したが、これに限らず、例えば、ゴム等の弾性部材や摺動抵抗により摩擦力を発生する摩擦ダンパ等を適用することもできる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、構造物の上梁と下梁と柱により形成される垂直な壁面空間の対角線上に設けられたブレースと、上梁または下梁の何れか一方に一端側が固定された伝達部材と、伝達部材を介して上梁と下梁との相対的な並行移動を緩和する緩衝部材とを備えた制振装置において、伝達部材が、ブレースを収納するようにブレースの長手方向に沿って形成された中空部を有し、他端側が上梁または下梁の手前で切断された自由端に形成され、自由端の近傍に緩衝部材が連結されたため、ブレースの中間部分の振幅を中空部によって規制することでブレースの振動による摺接音の発生を防止することができる。また、伝達部材を上梁または下梁の何れか一方に取り付ける構成とすることにより、構成の簡素化が図れると共に、及び緩衝部材を伝達部材に干渉しないように配置させることができる。
【0066】
また、上記請求項2の発明によれば、中空部の断面が上梁及び下梁の相対変位の際、内部でブレースの移動を所定範囲に制限するように移動方向に長細形状に形成されたため、ブレースの中間部分の振幅を中空部の長細形状によって規制することでブレースの振動による摺接音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる制振装置の第1実施例の取り付け状態を示す正面図である。
【図2】下梁14にA方向の加速度が入力された場合の動作を模式的に示す図である。
【図3】下梁14にB方向の加速度が入力された場合の動作を模式的に示す図である。
【図4】第2実施例の構成を示す正面図である。
【図5】第3実施例の構成を示す正面図である。
【図6】第4実施例の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
10,60,70,80 制振装置
12 基礎
14 下梁
16 上梁
18,20 柱
22 壁面空間
30,62,72,82 伝達部材
32 油圧ダンパ
34,36 ブレース
38,64,74 第1の中空部
40,66,76 第2の中空部
42 横架部材
44 ブラケット
84 板部
86 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上梁と下梁と柱により形成される垂直な壁面空間の対角線上に設けられたブレースと、前記上梁または前記下梁の何れか一方に一端側が固定された伝達部材と、該伝達部材を介して前記上梁と前記下梁との相対的な並行移動を緩和する緩衝部材とを備えた制振装置において、
前記伝達部材は、前記ブレースを収納するように前記ブレースの長手方向に沿って形成された中空部を有し、他端側が前記上梁または前記下梁の手前で切断された自由端に形成され、該自由端の近傍に前記緩衝部材が連結されたことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記中空部は、断面が前記上梁及び前記下梁の相対変位の際、内部で前記ブレースの移動を所定範囲に制限するように移動方向に長細形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−324286(P2004−324286A)
【公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−122122(P2003−122122)
【出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(000003056)トキコ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】