説明

制振装置

【課題】軸受装置においてアキシアル方向の振動を効率良く低減させて、前記装置の動作性能を向上させることができる制振装置を得る。
【解決手段】回転軸3を支持した転がり軸受7の外輪7bの側面に当接するように、転がり軸受7の外輪7bを支持するハウジング9に荷重付与手段23を配置し、前記荷重付与手段23がアキシアル方向の振動荷重として予圧をかけて前記転がり軸受7の制振を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受が装備されている装置の振動を低減させることができる制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受が装備されている装置(以下、軸受装置と呼称する)では、動作性能を向上させるために、転がり軸受に予圧を付与することが行われており、予圧を付与する手段、あるいは予圧を検出する手段として、圧電素子を使用したものが種々開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、軸受装置では、例えば回転軸に連結される歯車によって回転軸が振動する。この回転軸の振動は、転がり軸受を介して転がり軸受の外輪を支持するハウジングに伝達されて、共振を招いたり、共振による騒音の増加を招くなど、軸受装置の動作性能を低下させる原因となる。
【0004】
そこで、軸受装置内の転がり軸受に接触して装備され、転がり軸受に伝達される回転軸からの振動を検出する振動検出センサと、回転軸の振動との共振部位に設置されて振動検出センサの検出振動から決定される位相の振動荷重を共振部位に加えることで制振を行う加振用アクチュエータとを備えた構成とし、振動検出センサや加振用アクチュエータに圧電素子を採用した防振装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−202023号公報
【特許文献2】特開平05−026235号公報
【特許文献3】特開2005−344836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献1,2に記載の技術は、圧電素子を予圧を付与するアクチュエータとして作動させたり、あるいは予圧を検出するセンサとして使用するにとどまり、軸受装置として転がり軸受が支承している回転軸の振動を抑止する制振機能がない。
そのため、回転軸の振動が、転がり軸受を収容しているハウジングに転がり軸受を介して伝達され、前述したように回転軸から離れているハウジングに共振を生じさせたり、共振による騒音の増加を招くなどの虞があった。
【0007】
一方、上記の特許文献3に記載の技術を利用すると、ハウジングの共振を低減させたり、共振による騒音の増加を低減できる可能性がある。
しかし、特許文献3に記載の防振装置の場合は、加振用アクチュエータとしての圧電素子が配備される共振部位は、振動検出センサとしての圧電素子が配備される振動発生位置から離れている。互いに離れた部位の振動は、その振動伝達経路の途中の部材の影響で、振動特性にかなりの差異が生じてしまう可能性があり、離れた部位からの検出信号による制振では、十分な制振効果を発揮できない可能性が高い。
【0008】
更に、上記の特許文献3に記載の技術では、加振用アクチュエータとしての圧電素子や振動検出センサとしての圧電素子は、いずれも転がり軸受の外輪の外周面に接触させていて、転がり軸受のラジアル方向の振動を検出対象、制御対象としている。
【0009】
しかし、回転軸に発生する振動は、例えば回転軸に係合する歯車列等からの伝達荷重の変動等で、アキシアル方向(スラスト方向)の振動荷重が発生することが少なくない。そして、このアキシアル方向の振動荷重は、剛性の向上や回転精度の向上のために転がり軸受に付与されるアキシアル方向の予圧の変動を招くため、転がり軸受に性能を低下させる振動を招き易い。
従って、軸受装置に使用される転がり軸受の動作性能を向上させるには、ラジアル方向の振動の制振よりも、アキシアル方向の振動の制振を図る方がより高い効果を望める。ところが、前述した特許文献3の技術は、ラジアル方向の振動の制振を対象としているため、十分な制振効果が得られない虞があった。
【0010】
更に、アクチュエータとして使用される圧電素子は、稼働中の発熱により過昇温になると、動作性能が低下してしまう。しかし、前述の特許文献3の技術では、圧電素子の発熱に対する対策がなく、安定した制振性能の維持についても、不安があった。
【0011】
また、上記の何れの特許文献の場合も、圧電素子を、センサあるいはアクチュエータの何れかに用途を固定して連続稼働させるため、軸受装置の稼働中はアクチュエータとして適用される圧電素子が常時発熱を続ける。そのため、圧電素子を冷却する手段を装備する等の工夫を怠った場合に、圧電素子が性能低下を招く過昇温状態に陥る虞があり、冷却手段の装備のために軸受装置のコストが高額化する虞があった。
【0012】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、軸受装置の振動を効率良く低減させて、動作性能を向上させることができる制振装置を提供することである。また、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、圧電素子に対する冷却手段を装備せずに連続稼働させても、圧電素子が性能低下を招く過昇温状態に陥ることがなく、安定した制振性能を維持することができる制振装置を提供することである。更に、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、転がり軸受の外輪外周面におけるガタつきやフレッチング摩耗等を防止することのできる制振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は下記構成により達成される。
(1)回転軸を支持した転がり軸受の外輪の側面に当接するように、前記転がり軸受の外輪を支持するハウジングに荷重付与手段を配置し、前記荷重付与手段が前記外輪にアキシアル方向の振動荷重をかけることを特徴とする制振装置。
【0014】
(2)上記(1)に記載の制振装置において、前記荷重付与手段として圧電素子を用いたことを特徴とする制振装置。
【0015】
(3)上記(1)に記載の制振装置において、前記荷重付与手段として磁歪素子を用いたことを特徴とする制振装置。
【0016】
(4)上記(2)に記載の制振装置において、前記荷重付与手段として、アキシアル方向の振動荷重を作用させる圧電素子に、アキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材を組み合わせたことを特徴とする制振装置。
【0017】
(5)上記(3)に記載の制振装置において、前記荷重付与手段として、アキシアル方向の振動荷重を作用させる磁歪素子に、アキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材を組み合わせたことを特徴とする制振装置。
【0018】
(6)上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の制振装置において、前記外輪が内周に嵌合し、前記ハウジングに外周が嵌合する筒状のスリーブを備えたことを特徴とする制振装置。
【0019】
(7)上記(6)に記載の制振装置において、前記スリーブと前記ハウジングとの間を封止するOリングを備え、且つ、前記スリーブ及び前記ハウジングのそれぞれの摺動面には潤滑剤を塗布したことを特徴とする制振装置。
【0020】
(8)上記(6)又は(7)に記載の制振装置において、前記スリーブをラジアル方向に加振する加振機能を備えた第2の荷重付与手段を備え、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段は前記スリーブ又は前記ハウジングに伝わる回転軸の振動を検出する振動検出機能を有していることを特徴とする制振装置。
【0021】
(9)上記(8)に記載の制振装置において、前記第2の荷重付与手段を、前記スリーブと前記外輪との間に設けたことを特徴とする制振装置。
【0022】
(10)上記(8)又は(9)に記載の制振装置において、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が前記転がり軸受の外輪の振動を検出する際には、これらの前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が振動検出動作によって発電した電気を蓄え、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が前記転がり軸受の外輪に振動を印加する際には、蓄えている電気で前記荷重付与手段と前記第2の荷重付与手段とを加振動作させる蓄電回路を備えたことを特徴とする制振装置。
【0023】
(11)上記(8)乃至(10)の何れか一つに記載の制振装置において、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段を、前記スリーブの周方向に等間隔で配置される3箇所以上の複数箇所に装備したことを特徴とする制振装置。
【0024】
(12)上記(8)乃至(11)の何れか一つに記載の制振装置において、前記スリーブは、軸方向の一端が前記ハウジングに固定されると共に、自由端となっている他端側に前記外輪を支持する外輪嵌合部が設けられ、
前記第2の荷重付与手段は、前記自由端側で前記スリーブと前記ハウジングとの間に設けられ、前記スリーブの自由端側を撓み変位させることでラジアル方向の加振荷重を前記転がり軸受に付与することを特徴とする制振装置。
【0025】
(13)上記(2)又は(4)又は(6)乃至(12)の何れか一つに記載の制振装置において、前記圧電素子を、前記転がり軸受の周方向に複数配置して振動荷重を付与するアクチュエータとして用い、予圧又は振動を検出するセンサとしても用いることを特徴とする制振装置。
【0026】
(14)上記(13)に記載の制振装置において、前記転がり軸受に対向したハウジングの周状の側壁面には、その周方向の複数箇所に設定した複数の素子配置部のそれぞれに前記圧電素子を組み付けると共に、前記複数の素子配置部を第1の選択配置部と第2の選択配置部とにグループ分けし、
前記第1の選択配置部における圧電素子を、予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、前記第2の選択配置部の圧電素子は、振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させ、
且つ、各素子配置部の圧電素子は、前記アクチュエータとして作動するアクチュエータ動作時期と、前記センサとして作動するセンサ動作時期とが交互に来るように制御されることを特徴とする制振装置。
【0027】
(15)上記(13)に記載の制振装置において、前記転がり軸受に対向したハウジングの周状の側壁面には、その周方向の複数箇所に設定した複数の素子配置部のそれぞれに前記圧電素子を組み付けると共に、前記複数の素子配置部を第1の選択配置部と第2の選択配置部と第3の選択配置部とにグループ分けし、
前記第1の選択配置部における圧電素子を、予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、前記第2の選択配置部の圧電素子は、振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させ、前記第3の選択配置部の圧電素子は非作動状態に維持し、
且つ、各素子配置部の圧電素子は、前記アクチュエータとして作動するアクチュエータ動作時期と、前記センサとして作動するセンサ動作時期と、前記非作動状態に維持する非作動時期とが順に来るように制御されることを特徴とする制振装置。
【0028】
(16)上記(14)又は(15)に記載の制振装置において、1つの素子配置部に複数個の圧電素子が積層状態に装備されている場合に、その1つの素子配置部内の複数個の圧電素子の内、一部の圧電素子は前記センサとして、また、残りの圧電素子は前記アクチュエータとして作動することを特徴とする制振装置。
【0029】
(17)上記(13)乃至(16)の何れか一つに記載の制振装置において、アクチュエータとして作動する圧電素子や、センサとして作動する圧電素子が、前記ハウジングの周状の側壁面上で線対称の配置となるように、前記素子配置部の配置を設定していることを特徴とする制振装置。
【0030】
(18)上記(2)又は(4)又は(6)乃至(17)の何れか一つに記載の制振装置において、前記圧電素子として積層型圧電素子を用いると共に、前記積層型圧電素子の電極の外周を覆う被膜に、20W/mK以上の高熱伝導率を持つ絶縁材料で形成した高熱伝導絶縁被膜を使用したことを特徴とする制振装置。
【0031】
(19)上記(2)又は(4)又は(6)乃至(17)の何れか一つに記載の制振装置において、前記圧電素子として積層型圧電素子を用いると共に、前記積層型圧電素子の積層した電極の外周を覆う被膜を、樹脂製絶縁被膜の上に20W/mK以上の高熱伝導率を持つ高熱伝導被膜を積層した複層構造被膜を使用したことを特徴とする制振装置。
【0032】
(20)上記(1)乃至(17)の何れか1つに記載の制振装置において、前記荷重付与手段を収容する前記ハウジング又は前記スリーブの付与手段収容部には、該付与手段収容部に連通する連通路から冷却用流体を供給して前記荷重付与手段を冷却する冷却手段を装備したことを特徴とする制振装置。
【0033】
(21)上記(20)に記載の制振装置において、前記冷却用流体として潤滑油が使用されると共に、前記連通路の一部に、前記転がり軸受の外輪と前記ハウジング又は前記スリーブと外輪又は前記スリーブと前記ハウジングとの接触部を臨む開口が備えられ、前記潤滑油が前記接触部を潤滑することを特徴とする制振装置。
【0034】
(22)上記(1)乃至(17)の何れか一つに記載の制振装置において、前記荷重付与手段を収容する前記ハウジング又は前記スリーブの付与手段収容部と前記荷重付与手段との間の隙間に、熱伝導性に優れた潤滑剤を充填したことを特徴とする制振装置。
【0035】
(23)上記(22)に記載の制振装置において、前記付与手段収容部を有して前記外輪の端面に対向するハウジング又は前記スリーブの端面部に、熱伝導性に優れた前記潤滑剤を塗布すると共に、前記端面部に塗布された前記潤滑剤が前記転がり軸受の内輪側に流出しないように前記端面部と前記外輪の端面との間に挟持される第2のOリングを設けたことを特徴とする制振装置。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る制振装置では、転がり軸受の外輪の側面に当接された荷重付与手段が、転がり軸受に作用している予圧が変動しないように、また、回転軸から転がり軸受の外輪に伝達されるアキシアル方向の振動を相殺するように、外輪の側面にアキシアル方向の振動荷重として予圧をかけることで、回転軸側から転がり軸受に伝達されるアキシアル方向の振動を効率良く低減でき、さらに、予圧の変動による転がり軸受の性能低下も防止することもできる。
また、転がり軸受を支持しているハウジングの共振の根源となる転がり軸受自体の振動を低減させるため、ハウジングの共振部位に振動減衰用のアクチュエータを配置する従来の防振装置と比較すると、より直接的に効率良く振動を低減させることができ、共振等による騒音の増加が生じないように軸受装置の動作性能を向上させることができる。
【0037】
また、本発明に係る制振装置では、ハウジングと転がり軸受の外輪との間に介在するスリーブによって外輪とハウジングとの間の傾き角が緩和される。また、スリーブの摺動面に塗布される潤滑油によって、摺動面の摩擦が軽減される。そのため、転がり軸受の外輪外周面におけるガタつきやフレッチング摩耗等を防止することができる。
【0038】
また、本発明に係る制振装置では、例えば、第1の選択配置部に選定されてセンサとして作動する圧電素子が検出するシャフト及び転がり軸受の振動を相殺するように、第2の選択配置部に選定されてアクチュエータとして作動する圧電素子により転がり軸受に振動荷重を付与させることで、シャフト側の振動を低減させる。これにより、シャフト側の振動が、転がり軸受を収容しているハウジングに転がり軸受を介して伝達されることを防止することができる。
また、グループ分け処理時に、第2の選択配置部に選定する圧電素子の数量を軸受装置の稼働状態に応じて変更することで、軸受装置の振動状態の変化に柔軟に対応することができる。
また、各素子配置部の圧電素子は、グループ分け処理のやり直しによって、作動時の負荷が大きく発熱が生じ易いアクチュエータ動作時期と、比較的に作動時の負荷が小さく発熱が生じにくいセンサ動作時期とを交互に行い、センサ動作時期にアクチュエータ動作時期における昇温を冷ますことができるため、圧電素子に対する冷却手段を装備せず連続稼働させても、圧電素子が過昇温状態に陥って性能低下を招くことを回避することができ、安定した制振性能を維持することができる。また、冷却手段の省略により、装置コストを低減させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る制振装置の第1の実施の形態の要部の縦断面図である。
【図2】図1に示した制振装置の拡大図である。
【図3】図2の制振装置により制振させる原理の説明図である。
【図4】(a)は図2に示した制振装置の実施例1の縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図5】(a)は図2に示した制振装置の実施例2の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【図6】本発明に係る制振装置の第2の実施の形態の要部の縦断面図である。
【図7】図6に示した制振装置の拡大図である。
【図8】(a)は図7に示した制振装置の実施例3の縦断面図、(b)は(a)のC−C矢視図である。
【図9】図7に示した制振装置の他の実施例の要部の拡大断面図である。
【図10】本発明に係る第3の実施の形態の要部拡大断面図である。
【図11】図10に示した制振装置の実施例4の要部の拡大断面図である。
【図12】本発明に係る第4の実施の形態の要部拡大断面図である。
【図13】図12に示した制振装置の実施例5の要部の拡大断面図である。
【図14】図12に示した制振装置の実施例6の要部の拡大断面図である。
【図15】図12に示した制振装置の実施例7の要部の拡大断面図である。
【図16】図12に示した制振装置の実施例8の要部の拡大断面図である。
【図17】本発明に係る制振装置の第5の実施の形態の要部の断面図である。
【図18】図17の軸受装置における素子配置部を示すハウジング側壁面の正面図である。
【図19】本発明に係る制振装置の第6の実施の形態の要部の断面図である。
【図20】本発明に係る第7の実施の形態における素子配置部を示すハウジング側壁面の正面図である。
【図21】本発明に係る第8の実施の形態における素子配置部を示すハウジング側壁面の正面図である。
【図22】本発明に係る制振装置の第9の実施の形態の要部の拡大断面図である。
【図23】図22に示した荷重付与手段の拡大断面図である。
【図24】図23に示した積層型圧電素子の被膜の構成説明図である。
【図25】本発明に係る制振装置の第10の実施の形態の要部の拡大断面図である。
【図26】本発明に係る制振装置の第11の実施の形態の要部の拡大断面図である。
【図27】図26に示した付与手段収容部と連通路との説明図である。
【図28】(a)は図26に示した第11の実施の形態の制振装置の実施例11の縦断面図、(b)は(a)のD−D矢視図である。
【図29】(a)は図26に示した第11の実施の形態の制振装置の実施例12の縦断面図、(b)は(a)のE−E矢視図である。
【図30】本発明に係る第12の実施の形態の要部拡大断面図である。
【図31】図30に示した付与手段収容部の横断面形状を示し、熱伝導性に優れた潤滑剤が充填されている状態を示す説明図である。
【図32】図30に示した制振装置の実施例13の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る制振装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1に示した軸受装置1は、中央部にロータ2が装備された回転軸3の一端に回転力出力用の歯車(はすば歯車)5が装備されたモータ主軸で、回転軸3の両端部が転がり軸受7,8を介してモータケースであるハウジング9に回転自在に支持されている。
【0041】
本実施の形態の場合、転がり軸受7,8は、内輪7a,8aと外輪7b,8bとの間に球状の転動体7c,8cが組み込まれた玉軸受であるが、玉軸受の代わりに、円錐ころ軸受が使用されることもある。
【0042】
図1において、回転軸3の左端側を支持している転がり軸受7の内輪7aは、回転軸3上の段差部3aと回転軸3に螺合したベアリングナット11とで挟まれて軸線方向の位置決めがなされている。また、転がり軸受7の外輪7bは、外周がハウジング9の第1の外輪保持孔13の内周面に嵌合している。
【0043】
図1において、回転軸3の右端側を支持している転がり軸受8の内輪8aは、回転軸3に嵌合した円筒状のカラー15と回転軸3に螺合したベアリングナット17とで挟まれて軸線方向の位置決めがなされている。また、転がり軸受8の外輪8bは、外周がハウジング9の第2の外輪保持孔19の内周面に嵌合すると共に転がり軸受7側の側面8dが外輪保持孔19内の段差19aに当接して、転がり軸受7側に移動不可に位置決めされている。
【0044】
歯車5は、不図示のキー溝に嵌合するキーによって、回転軸3に対して相対回転不可に回転軸3に取り付けられている。
回転時には、伝達トルクの変動等に応じて、図中に矢印で示すように、アキシアル方向(軸線方向)の振動荷重P1を発生する。
【0045】
本発明の第1の実施の形態の制振装置21は、回転軸3の左端側を支持した転がり軸受7の外輪7bの側面に当接するように、外輪7bを支持したハウジング9に荷重付与手段23を配置していて、荷重付与手段23が外輪7bにアキシアル方向の振動荷重をかけることによって、転がり軸受7の制振を行う。
【0046】
更に詳述すると、本実施の形態の荷重付与手段23には、印加される電圧に応じて図2に矢印Kで示すアキシアル方向に伸縮が可能な圧電素子を使用している。そして、この荷重付与手段23が外輪7bにアキシアル方向の振動荷重P3を加えることで、歯車5から回転軸3に進入する振動荷重P1と逆向きの振動荷重P2を回転軸3の左端側に作用させることで、転がり軸受7の制振を行う。
振動荷重は、アキシアル方向に与圧を付与する与圧荷重であっても良い。
また、転がり軸受の外輪が回転する場合には、転がり軸受7の内輪7aの側面に荷重付与手段23を当接させて、内輪7aに振動荷重を付与しても良い。
【0047】
図3は、荷重付与手段23が加える振動荷重で転がり軸受7が制振される原理を示したものである。(a)は回転軸3から転がり軸受7に入力する振動荷重の波形、(b)は荷重付与手段23が付与する振動荷重の波形で、(a)の波形とは逆位相の波形になっている。(a)の波形と(b)の波形とが合成されると、(c)に示すように、振動が相殺されて振動のない理想状態になる。
【0048】
以上に説明した制振装置21では、転がり軸受7の外輪7bの側面に当接した荷重付与手段23が、転がり軸受7に作用している振動荷重が変動しないように、また、回転軸3から転がり軸受7の外輪7bに伝達されるアキシアル方向の振動を相殺するように、外輪7bの側面にアキシアル方向の振動荷重をかけることで、回転軸3側から伝達されるアキシアル方向の振動を効率良く低減でき、さらに、振動荷重の変動による転がり軸受7の性能低下も防止することもできる。
そして、上記制振装置21は、モータによる駆動装置、歯車を使用した動力伝達装置、自動車用変速機等における軸受に適用できる。
【0049】
また、転がり軸受7を支持しているハウジング9の共振の根源となる転がり軸受7自体の振動を低減させるため、ハウジングの共振部位に振動減衰用のアクチュエータを配置する従来の防振装置と比較すると、より直接的に効率良く振動を低減させることができ、共振等による騒音の増加が生じないように軸受装置1の動作性能を向上させることができる。
【0050】
また、上記制振装置21では、荷重付与手段23として圧電素子を用いている。
そのため、転がり軸受7の外輪7bに作用させるアキシアル方向の振動荷重は、圧電素子に印加する電圧を制御することで容易に任意値に調整でき、例えば、荷重付与手段23に使っている圧電素子と同種の圧電素子を振動検出センサとして使って外輪7bに作用する振動の検出を行い、検出信号と逆位相の電圧信号を荷重付与手段23としての圧電素子に入力することで、転がり軸受7に発生している振動を相殺することができ、転がり軸受7の振動を効率良く、且つ容易に低減することができる。
【0051】
上記の第1の実施の形態の制振装置21では、回転軸3の左端側を支持した転がり軸受7に振動荷重をかけるとしたが、本発明は、回転軸3の右端側を支持している転がり軸受8に振動荷重をかけたり、あるいは、両方の軸受に振動荷重をかけるようにしても良く、振動荷重を作用させる軸受位置および数を制限するものではない。
【0052】
更に上記実施の形態の具体的な実施例を、以下に示す。
【実施例1】
【0053】
図4は上記第1の実施の形態の実施例1を示している。
この実施例1の場合は、転がり軸受7は、外輪7bの外周が緊密嵌合する筒部25aと外輪7bの一側面が当接する鍔部25bとを備えてハウジング9の外輪保持孔13に嵌合するブッシュ25と、該ブッシュ25に嵌合した外輪7bの他側面を押さえてねじ26によりブッシュ25に締結されるリテーナ27とを介して、ハウジング9に支持されている。
【0054】
圧電素子である荷重付与手段23は、図4(b)に示すように、外輪7bと同心の円周28上の3箇所に等間隔に並ぶように、ハウジング9に埋設装備されている。
ハウジング9に埋設された各荷重付与手段23には、リテーナ27の鍔部27aが当接していて、荷重付与手段23の出力する振動荷重はリテーナ27を介して外輪7bに伝達されるようになっている。
【0055】
この実施例1のように、圧電素子の発生する振動荷重をリテーナ27の鍔部27aを介して転がり軸受7に伝達する構成の場合は、装備した圧電素子の数量が比較的に少なくても、外輪7bに印加する振動荷重は、外輪7bの周方向に均等化することができ、装備する荷重付与手段23の数量を少なく抑える場合に有効である。
【実施例2】
【0056】
図5は上記第1の実施の形態の実施例2を示している。
この実施例2において、実施例1と共通の部位には、実施例1と同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
この実施例2の場合は、荷重付与手段23が、外輪7bと同心に配置された大径のリング状の圧電素子で、荷重付与手段23の出力する振動荷重がリテーナ27を介して外輪7bに伝達される点、及び、転がり軸受7の外輪7bがブッシュ25及びリテーナ27を介してハウジング9に固定されている点は実施例1と共通である。
【0057】
この実施例2のようにリング状の圧電素子を使った場合は、単一の圧電素子でも、外輪7bに付与する振動荷重を周方向に均一化することができる。
【0058】
なお、上記の第1の実施の形態では、荷重付与手段23に圧電素子を用いていた。しかし、荷重付与手段23には、圧電素子の代わりに、磁歪素子を用いてもよい。
【0059】
荷重付与手段23に磁歪素子を用いた場合は、転がり軸受7の外輪7bに作用させるアキシアル方向の振動荷重は、磁歪素子に印加する磁界を制御することで容易に任意値に調整でき、例えば、荷重付与手段23に使っている磁歪素子と同種の磁歪素子を振動検出センサとして使って外輪7bに作用する振動の検出を行い、検出信号と逆位相の磁界信号を荷重付与手段23としての磁歪素子に入力することで、転がり軸受7に発生している振動を相殺することができ、転がり軸受7の振動を効率良く、且つ容易に低減することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明に係る制振装置の第2の実施の形態が装備された軸受装置の要部の縦断面図である。
図6に示した軸受装置1Aは、第1の実施の形態に示した転がり軸受7の制振を改良した制振装置21Aで行うようにしたもので、第1の実施の形態と共通の構成については、同番号を付して説明を省略する。
【0061】
この第2の実施の形態の制振装置21Aの場合は、外輪7bの側面にアキシアル方向の振動荷重を付与する荷重付与手段23Aが、第1の実施の形態の荷重付与手段23と同様に、外輪7bの側面に対向するハウジング9の側面に埋設装備されている。
但し、この第2の実施の形態の荷重付与手段23Aは、図7に示すように、アキシアル方向の振動荷重を作用させる圧電素子31に、常時略一定の大きさのアキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材33を組み合わせた構成になっている。
【0062】
弾発部材33としては、例えば圧縮コイルばねや、板ばねなどの一般的なばね部材の他に、例えば合成ゴムなどの弾性部材を利用することも可能である。
【0063】
図7に示した制振装置21Aでは、圧電素子31に組み合わせた弾発部材33がアキシアル方向の略一定の大きさの荷重を転がり軸受7の外輪7b側面に作用させるために、転がり軸受7に作用させる予圧を適正値に維持させ易い。
【0064】
また、転がり軸受7に作用させるアキシアル方向の荷重の一部を弾発部材33が担うため、荷重付与手段23Aとしての圧電素子31が発生する荷重を低減させて、稼働時における負担の軽減により圧電素子31の寿命を延ばすことができる。
【0065】
また、圧電素子31が発生する荷重に弾発部材33の荷重を加算した合算荷重が転がり軸受7に作用するため、大きな振動荷重をかけることも可能になり、より大きな振動の制振も可能になる。
【実施例3】
【0066】
図8は上記第2の実施の形態の実施例3を示している。
この実施例3において、図4に示した実施例1と共通の部位には、実施例1と同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
この実施例3は、第2の実施の形態において荷重付与手段23Aを構成している圧電素子31や弾発部材33の配置を明確にしたものである。
この実施例3では、3個の圧電素子31と3個の弾発部材33とが、外輪7bと同心に位置される円周28上の6箇所にそれぞれ等間隔に並ぶように、ハウジング9に埋設装備されている。
ハウジング9に埋設された各圧電素子31及び弾発部材33には、リテーナ27の鍔部27aが当接していて、荷重付与手段23Aの出力する振動荷重はリテーナ27を介して外輪7bに伝達されるようになっている。
【0067】
このように、荷重付与手段23Aを構成する圧電素子31と弾発部材33とは、互いに周方向に離間して配置するようにしても良い。
更に、図9に示すように、圧電素子31と弾発部材33とを直列に並べて装備するようにしても良い。
【0068】
なお、本発明に係る制振装置では、外輪7bの側面にアキシアル方向の振動荷重を付与する荷重付与手段として、振動荷重を作用させる磁歪素子に、常時略一定の大きさのアキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材を組み合わせた構成としても良い。この構成は、第2の実施の形態における圧電素子31の代わりに磁歪素子を使用した構成である。
【0069】
このように荷重付与手段が磁歪素子に弾発部材を組み合わせた構成の場合は、弾発部材が略一定の大きさのアキシアル方向の荷重を転がり軸受7の外輪側面に作用させるために、転がり軸受に作用させる予圧を適正値に維持させ易い。
また、転がり軸受に作用させるアキシアル方向の荷重の一部を弾発部材が担うため、荷重付与手段としての磁歪素子が発生する荷重を低減させて、稼働時における負担の軽減により磁歪素子の寿命を延ばすことができる。
また、磁歪素子が発生する荷重に弾発部材の荷重を加算した合算荷重が転がり軸受に作用するため、転がり軸受により大きな振動荷重をかけることも可能になり、より大きな振動の制振も可能になる。
【0070】
[第3の実施の形態]
図10は、本発明に係る制振装置の第3の実施の形態の要部拡大断面図である。
この第3の実施の形態の制振装置21Eは、図2に示した第1の実施の形態の制振装置21の一部を改良したもので、圧電素子を使った荷重付与手段23が装着されているハウジング9Eと、回転軸3Eに内輪7aが固着した転がり軸受7の外輪7bとの間に、円筒状のスリーブ71を設けたものである。図2の制振装置21の部品と対応する部品には、制振装置21と同じ番号、あるいは添え字Eを追加した番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
【0071】
この第3の実施の形態の制振装置21Eについて更に詳しく説明すると、スリーブ71は、転がり軸受7の外輪7bが内周に嵌合し、ハウジング9Eの外輪保持孔13に外周が嵌合する筒状である。スリーブ71の外周面は、荷重付与手段23による加振によって外輪保持孔13上を摺動する摺動面71aである。荷重付与手段23の加振によるスリーブ71の外輪保持孔13上の摺動が振動として転がり軸受7の外輪7bに伝わる。また、スリーブ71は、図10に示したように、2つの転がり軸受7を嵌合保持し得る部位として、2つの転がり軸受7を所定の離間距離L1で収容する長さL2を有している。従って、スリーブ71は、軸線方向の長さが、図4等に示したブッシュ25よりもかなり大きく設定されている。そのため、ブッシュ25を使用した制振装置の場合と比較すると、外輪7bとハウジング9(外輪保持孔13)との間の傾き角が緩和される。
【0072】
上記のようにスリーブ71を設けたことで、外輪7bとハウジング9(外輪保持孔13)との間の傾き角が緩和され、荷重付与手段23による加振による外輪7bの摺動時におけるガタつきを軽減することができる。
【実施例4】
【0073】
図11は上記第3の実施の形態の実施例4の要部の拡大断面図である。
この実施例4の制振装置21Fは、図10に示した制振装置21Eの一部を改良したもので、スリーブ71の摺動面71aに、周方向に1周するシール溝72を形成して、該シール溝72に、Oリング74を装着している。このOリング74は、スリーブ71とハウジング9Eとの間を封止している。
【0074】
更に、この実施例4の制振装置21Fでは、スリーブ71及びハウジング9Eのそれぞれの摺動面には、潤滑剤(グリース)75を塗布している。
なお、制振装置21Fにおいて、図10に示した制振装置21Eと共通の構成については、同番号を付して説明を省略する。
【0075】
この実施例4の制振装置21Fでは、図10に示した制振装置21Eの作用・効果に加えて、次の作用・効果を得ることができる。
まず、ハウジング9Eとスリーブ71との間に介在するOリング74が、所定の弾性力を持つ緩衝材として機能して、ハウジング9Eとスリーブ71との衝突を抑止するため、制振装置21Eよりも更にガタつきを軽減することができる。
【0076】
また、このOリング74は、ハウジング9E及びスリーブ71のそれぞれの摺動面で発生する摩耗粉が摺動面から外部に流出することを抑止し、摩耗粉による周囲の汚損を防止することができる。
【0077】
更に、実施例4の制振装置21Fの場合は、ハウジング9E及びスリーブ71の摺動面に塗布された潤滑剤75が、スリーブ71の摺動時におけるハウジング9Eとスリーブ71との間の摩擦(擦れ)を軽減し、フレッチング摩耗やフレッチング疲労の発生を防止することができる。
【0078】
[第4の実施の形態]
図12は、本発明に係る制振装置の第4の実施の形態の要部拡大断面図である。
この第4の実施の形態の制振装置21Jは、図10に示した第3の実施の形態の制振装置21Eの一部を改良したもので、第2の荷重付与手段81が追加装備されている。
【0079】
第2の荷重付与手段81は、圧電素子あるいは磁歪素子等を使用したもので、転がり軸受7とハウジング9Eとの間に装備される円筒状のスリーブ71Jをラジアル方向に加振する加振機能と、スリーブ71Jのラジアル方向の加振荷重を検出する振動検出機能とを備えている。
【0080】
本実施形態の場合、スリーブ71Jは、ハウジング9Eの外輪保持孔13の内側に挿入される円筒部82aと、円筒部82aの一端に鍔状に設けられたフランジ部82bとを備えている。
スリーブ71Jは、フランジ部82bをハウジング9Eの端面に当接することで、軸方向の位置決めがなされている。
【0081】
第2の荷重付与手段81は、円筒部82aとハウジング9Eとの間に設けられていて、円筒部82aを介して、外輪7bに対するラジアル方向の加振、外輪7bのラジアル方向の振動検出を行う。
【0082】
具体的には、第2の荷重付与手段81が例えば圧電素子で形成されている場合、当該第2の荷重付与手段81は、円筒部82aを介して伝達される外輪7bのラジアル方向の振動荷重に応じた出力電圧の変化で、スリーブ71Jのラジアル方向の加振荷重を検出(振動検出)する。また、第2の荷重付与手段81は、検出されるスリーブ71Jのラジアル方向の振動が相殺されて、スリーブ71Jからハウジング9Eにラジアル方向の振動が伝わらないように、スリーブ71Jに振動を印加する。
【0083】
また、スリーブ71Jのフランジ部82bには、外輪7bの端面に当接するように、荷重付与手段23が設けられている。この荷重付与手段23は、外輪7bに対して、アキシアル方向の加振、及びアキシアル方向の振動検出を行う。
具体的には、荷重付与手段23が例えば圧電素子で形成されている場合、当該荷重付与手段23は、外輪7bのアキシアル方向の振動荷重に応じた出力電圧の変化で、スリーブ71Jのアキシアル方向の加振荷重を検出(振動検出)する。また、荷重付与手段23は、検出される外輪7bのアキシアル方向の振動が相殺されて、外輪7bからハウジング9Eにアキシアル方向の振動が伝わらないように、外輪7bに振動を印加する。
【0084】
この第4の実施の形態の制振装置21Jにおいて、荷重付与手段23や第2の荷重付与手段81が、振動検出センサとして振動検出機能を発揮する動作、及びアクチュエータとして加振機能を発揮する動作は、後述する図17乃至図21に示す制振装置21P〜21Sにおける技術が利用される。
具体的には、一つの荷重付与手段の動作を、振動検出センサとして作動する状態、及びアクチュエータとして作動する状態に、交互に切り替える技術、更に、複数の荷重付与手段は、振動検出センサとして作動するグループと、アクチュエータとして作動するグループとのグループ分けされ、振動検出動作と加振動作を同時に実施可能にした技術、更に、各グループの荷重付与手段は、スリーブ71Jの横断面上での配置が線対称の配置にする技術、などが適用されている。
【0085】
このような制振装置21P〜21Sにおける技術の適用は、以下の各実施の形態や実施例においてもなされている。
【0086】
以上に説明した第4の実施の形態の制振装置21Jでは、転がり軸受7に発生しているアキシアル方向及びラジアル方向のそれぞれの方向の振動を相殺することができるため、アキシアル方向の振動の相殺のみを図っていた第3の実施の形態の制振装置21Eと比較して、さらに、転がり軸受7に対する振動低減を図ることができる。
【実施例5】
【0087】
図13は、図12に示した制振装置の実施例5の要部の拡大断面図である。
この実施例5の制振装置21Kは、図12に示した制振装置21Jの一部を改良したものである。具体的には、第2の荷重付与手段81を、スリーブ71Jの円筒部82aと転がり軸受7の外輪7bとの間に設けている。
また、スリーブ71Jは、円筒部82aの一端に鍔状に設けられているフランジ部82bがねじ部材84によりハウジング9Eに固定されている。
【0088】
この実施例5の制振装置21Kの場合は、第2の荷重付与手段81が外輪7bに直接接触していて、外輪7bのラジアル方向の振動を第2の荷重付与手段81が直に検出することができ、また、第2の荷重付与手段81による加振力も直に外輪7bに伝達されるため、転がり軸受7の振動を抑制する際の応答性を向上させることができる。
【実施例6】
【0089】
図14は、図12に示した制振装置の実施例6の要部の拡大断面図である。
この実施例6の制振装置21Lは、図12に示した制振装置21Jの一部を改良したものである。具体的には、図12に示した制振装置21Jに蓄電回路86を追加装備した構成を成している。
【0090】
蓄電回路86は、ハウジング9Eと転がり軸受7との間に介在するスリーブ71Jのフランジ部82bに固定された基板87上に、蓄電用のコンデンサ88と、該コンデンサ88を荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81に電気接続する回路89とを備えている。
【0091】
蓄電回路86は、転がり軸受7の外輪7bの振動を検出する際には、これらの荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81が、振動検出動作によって発電した電気を蓄える。更に、蓄電回路86は、荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81が転がり軸受7の外輪7bに振動を印加する際には、蓄えている電気で荷重付与手段23と第2の荷重付与手段81とを加振動作させる。
【0092】
この実施例6の制振装置21Lでは、荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81が振動検出時に発電した電力を蓄電して、荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81が加振動作する際の駆動電力とするため、外部からのエネルギー供給を行わずして、転がり軸受7の制振が可能になる。
【実施例7】
【0093】
図15は、図12に示した制振装置の実施例7の要部の拡大断面図である。
この実施例7の制振装置21Mは、図12に示した制振装置21Jや図14に示した制振装置21Lにおける荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81の配置を工夫したものである。
具体的には、この実施例7の制振装置21Mは、荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81を、スリーブ71Jの周方向に等間隔(120°間隔)で配置される3箇所に装備している。
【0094】
ラジアル方向の振動検出及び加振を行う第2の荷重付与手段81の配置が、例えば、周方向に180°間隔となる2箇所のみに装備した場合には、2つの第2の荷重付与手段81の対向方向に直交する方向の振動は検出することができない。
しかし、この実施例7に示した配置では、外輪7bの周囲の全方向に対して振動による変位を検出することができ、また、検出した任意方向の振動を相殺する加振を行うことが可能になる。
【0095】
なお、荷重付与手段23及び第2の荷重付与手段81の配置は、図示例の3箇所に限定するものではない。例えば、スリーブ71Jの周方向に等間隔に配置される3箇所以上の複数箇所に設定することも可能である。
【実施例8】
【0096】
図16は、図12に示した制振装置の実施例8の要部の拡大断面図である。
この実施例8の制振装置21Nは、図12の制振装置21Jの一部を改良したもので、ハウジング9Eと外輪7bとの間に介在するスリーブ71Jは、円筒部82aが、ハウジング9Eに形成された外輪保持孔13の内奥の深くまで、延びている。また、円筒部82aの一端に鍔状に設けられたフランジ部82bは、ねじ部材84によりハウジング9Eに固定されている。
即ち、この実施例8の制振装置21Nの場合、スリーブ71Jは、軸方向の一端であるフランジ部82bがハウジング9Eに固定されている。
【0097】
そして、ラジアル方向の振動の検出及び加振を行う第2の荷重付与手段81は、スリーブ71Jの自由端側で当該スリーブ71Jとハウジング9Eとの間に設けられ、スリーブ71Jの自由端側を撓み変位させることでラジアル方向の加振荷重を転がり軸受7に付与する。
【0098】
この実施例8の制振装置21Nでは、第2の荷重付与手段81の配置が外輪7bの直近になるため、ラジアル方向の振動の検出動作や加振動作における応答性を向上させることができる。
【0099】
[第5の実施の形態]
図17は、本発明に係る制振装置の第5の実施の形態の要部の断面図である。
図17に示した軸受装置1Bは、回転軸3を転がり軸受7により回転自在に支持している。
転がり軸受7は、内周部が回転軸3に嵌合した内輪7aと、外周部がハウジング9Bに嵌合した外輪7bと、内輪7aと外輪7bとの間に装備される複数個の転動体7cとを備えている。
【0100】
内輪7aの内側面7axには、回転軸3に突設されたストッパ11Bが当接して、図17の矢印A方向への移動が規制されている。
また、外輪7bの外側面7byは、本発明の第5の実施の形態の制振装置21Pにより、前記矢印Aで示したアキシアル方向の振動荷重が付与される。
【0101】
この第5の実施の形態の制振装置21Pは、転がり軸受7の外輪7bの外側面7byに対向したハウジング9Bの周状の側壁面9Baに、6個の圧電素子23Bを装備したものである。
【0102】
本発明に係る制振装置21Pを構成する側壁面9Baには、図18に示すように、その周方向の6箇所に素子配置部P1〜P6が設定されている。各素子配置部P1〜P6は、周方向に等間隔で配置されている。
そして、各素子配置部P1〜P6に1つずつ、転がり軸受7の外側面7byに当接するように圧電素子23Bが組み付けられている。
【0103】
本実施の形態の制振装置21Pの場合、6箇所の素子配置部P1〜P6を、それぞれ3個の素子配置部から構成される第1の選択配置部G1と第2の選択配置部G2とにグループ分けしている。
【0104】
本実施の形態の場合、図18に示したように、第1の選択配置部G1には素子配置部P2,P4,P6が割り当てられ、第2の選択配置部G2には素子配置部P1,P3,P5が割り当てられている。
【0105】
そして、第1の選択配置部G1における圧電素子23Bを、転がり軸受7に作用する予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、第2の選択配置部G2の圧電素子23Bは、回転軸3及び転がり軸受7の振動がハウジング9Bに伝わらないように、転がり軸受7の外側面7byに振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させて、軸受装置1Bの制振を行う。
【0106】
そして、本実施の形態の制振装置21Pでは、各素子配置部P1〜P6の圧電素子23Bは、第1の選択配置部G1の圧電素子に選定されてアクチュエータとして作動させられるアクチュエータ動作時期と、第2の選択配置部G2の圧電素子に選定されてセンサとして作動させられるセンサ動作時期とが交互に来るように、各素子配置部P1〜P6を第1の選択配置部G1と第2の選択配置部G2との2つのグループにグループ分けするグループ分け処理を適時やり直す。
なお、このグループ分けの処理は必須ではないが、制御演算の処理量が低減する効果を期待できる。
【0107】
更に、本実施の形態の制振装置21Pでは、アクチュエータとして作動する圧電素子23Bの配置や、センサとして作動する圧電素子23Bの配置が、ハウジング9Bの側壁面9Ba上で線対称の配置となるように、素子配置部P1〜P6の配置を設定している。
具体的には、図18に示した例では、6個の素子配置部P1〜P6は、周方向に等間隔で配置されており、第1の選択配置部G1はその内の3個の素子配置部P2,P4,P6を選定することでセンサの配置を線対称の配置にしており、第2の選択配置部G2は残りの3個の素子配置部P1,P3,P5を選定することでアクチュエータの配置を線対称の配置にしている。
【0108】
以上に説明した第5の実施の形態の制振装置21Pでは、例えば、第1の選択配置部G1に選定された素子配置部P2,P4,P6に配置されてセンサとして作動する圧電素子23Bが検出する回転軸3及び転がり軸受7の振動を相殺するように、第2の選択配置部G2に選定された素子配置部P1,P3,P5の圧電素子23Bにより転がり軸受7の側面に振動荷重を付与させることで、回転軸3側の振動を低減させることができる。そして、これにより、回転軸3側の振動が、転がり軸受7を収容しているハウジング9Bに転がり軸受7を介して伝達されることを防止することができる。
従って、転がり軸受7が装備されている軸受装置1Bの振動を低減させることができ、振動に起因した騒音を軽減するなど、軸受装置1Bの動作性能を向上させることができる。
【0109】
また、グループ分け処理時に、例えば第1の選択配置部G1として2個の圧電素子を選定し、第2の選択配置部G2として4個の圧電素子を選定するなど、第2の選択配置部G2に選定する圧電素子23Bの数量を転がり軸受7が装備されている装置の稼働状態に応じて変更することで、転がり軸受7が装備されている装置の振動状態の変化に柔軟に対応することができる。
【0110】
また、各素子配置部P1〜P6の圧電素子23Bは、グループ分け処理のやり直しによって、作動時の負荷が大きく発熱が生じ易いアクチュエータ動作時期と、比較的に作動時の負荷が小さく発熱が生じにくいセンサ動作時期とを交互に行い、センサ動作時期にアクチュエータ動作時期における昇温を冷ますことができるため、圧電素子23Bに対する冷却手段を装備せずに連続稼働させても、圧電素子23Bが過昇温状態に陥って性能低下を招くことを回避することができ、安定した制振性能を維持することができる。また、冷却手段の省略により、装置コストを低減させることもできる。
【0111】
更に、本実施の形態の制振装置21Pでは、アクチュエータとして作動する圧電素子23Bの配置や、センサとして作動する圧電素子23Bの配置が、ハウジング9Bの周状の側壁面9Ba上で線対称の配置となるように、各素子配置部P1〜P6の配置を設定している。
【0112】
そのため、本実施の形態の制振装置21Pでは、各圧電素子23Bから転がり軸受7に作用する反力が対称軸の両側で等しくなって、転がり軸受7に曲げ荷重や捩り荷重が作用することを防止でき、転がり軸受7に対して安定した制振動作を行うことができる。
【0113】
また、本発明に係る制振装置において、1つの素子配置部に配置する圧電素子の数量は、1つに限らない。1つの素子配置部に複数個の圧電素子を積層状態に装備することも可能である。
そして、1つの素子配置部に複数個の圧電素子を装備した場合には、それらの複数個の圧電素子をすべてアクチュエータとして作動させることによって、より強力な振動荷重を確保することもできる。
【0114】
また、1つの素子配置部に複数個の圧電素子が装備されている場合に、複数個の圧電素子の内の一部はセンサとして作動させ、残りはアクチュエータとして作動させるような設定も可能である。この場合に、複数個の圧電素子が装備されている素子配置部は、第1の選択配置部G1と第2の選択配置部G2とに共用される。
【0115】
[第6の実施の形態]
図19は、本発明に係る制振装置の第6の実施の形態を示している。
この第6の実施の形態の制振装置21Qは、図17に示した制振装置21Pの一部を改良したものである。改良した点は、1つの素子配置部に2つの圧電素子23Bを積層状態に装備して、その一方の圧電素子23Bはセンサとして作動させ、他方の圧電素子23Bはアクチュエータとして作動させるようにしている。
側壁面9Ba上での素子配置部の装備数や、軸受装置1Bの構成は第5の実施の形態の場合と共通であり、共通の構成については、同番号を付して説明を省略する。
【0116】
この第6の実施の形態の制振装置21Qの場合は、1つの素子配置部が、第1の選択配置部G1及び第2の選択配置部G2のそれぞれに重複して選定可能なため、例えば、ハウジング9Bの周状の側壁面9Ba全体での素子配置部の配備数が6個でも、第1及び第2のそれぞれの選択配置部G1,G2をそれぞれ4個の素子配置部で構成するなど、第1及び第2のそれぞれの選択配置部G1,G2をより多数の素子配置部で構成することができる。
そのため、例えば転がり軸受7上の振動分布に対応してアクチュエータの配置を調整するなど、アクチュエータやセンサの配置設定の自由度を向上させて、更に制振性能を向上させることができる。
【0117】
また、本発明に係る制振装置において、ハウジング9Bの側壁面9Baに設定する素子配置部の数量は、上記実施の形態の数量に限らない。第1の選択配置部G1及び第2の選択配置部G2にそれぞれ複数個の素子配置部を割り当てることができ、また、第1の選択配置部G1を構成する素子配置部の配置や第2の選択配置部G2を構成する素子配置部の配置を線対称の配置にできるならば、4以上の任意の複数個に設定することができる。
【0118】
[第7の実施の形態]
図20は、本発明に係る制振装置の第7の実施の形態におけるハウジング9Bの側壁面9Ba上での素子配置部の配置を示したものである。
この第7の実施の形態の制振装置21Rにおけるハウジング9Bの側壁面9Baには、図示のように、9個の素子配置部P1〜P9を周方向に均等の間隔で配置している。
この場合に、図示のように、第1の選択配置部G1には、6個の素子配置部P2,P3、P5,P6,P8,P9を選定し、第2の選択配置部G2には3個の素子配置部P1,P4,P7を選定することで、各選択配置部G1,G2における素子配置部の配置を線対称の配置としている。
【0119】
図20に示した第7の実施の形態の制振装置21Rは、第5の実施の形態の制振装置21Pと比較すると、素子配置部の装備数量が増えている分、各選択配置部G1,G2により多くの数量の圧電素子を割り当てることができ、転がり軸受7の外側面7byへ加える振動荷重を、回転軸3側の振動分布に合わせて微調整して、より効率良く制振することが可能になる。
【0120】
なお、図20に示した第7の実施の形態の制振装置21Rにおいて、各選択配置部G1,G2に選定する素子配置部の配置や数量は,シャフト側の振動状況に応じて、図示例と異なる形態に変更しても良い。
【0121】
[第8の実施の形態]
図21は、本発明に係る制振装置の第8の実施の形態における素子配置部の配置状態を示している。
この第8の実施の形態の制振装置21Sは、図20に示した制振装置21Rの場合と同様に、転がり軸受7の側面に対向するハウジング9Bの周状の側壁面9Baに、9個の素子配置部P1〜P9を周方向に均等の間隔で配置している。
【0122】
この第8の実施の形態の制振装置21Sは、図20に示した制振装置21Rを改良したもので、その周方向の9箇所に設定した素子配置部P1〜P9のそれぞれに、転がり軸受7の側面に当接するように圧電素子23Bを組み付けると共に、上記の9箇所の素子配置部P1〜P9を、それぞれ3個の素子配置部から構成される第1の選択配置部G1と第2の選択配置部G2と第3の選択配置部G3との3つのグループにグループ分けしている。
【0123】
各選択配置部G1,G2,G3を構成する素子配置部の配列が、グループ毎に、側壁面9Ba上で線対称の配置となるように、この図示例では、第1の選択配置部G1には素子配置部P2,P5,P8を割り当て、第2の選択配置部G2には素子配置部P1,P4,P7を割り当て、第3の選択配置部G3には素子配置部P3,P6,P9を割り当てている。
【0124】
そして、この第8の実施の形態の制振装置21Sでは、第1の選択配置部G1における圧電素子23Bを、転がり軸受7に作用している予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、第2の選択配置部G2の圧電素子23Bは、転がり軸受7が支持している回転軸3及び転がり軸受7の振動がハウジング9Bに伝わらないように、転がり軸受7の側面に振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させ、更に、第3の選択配置部G3の圧電素子23Bは非作動状態に維持して、転がり軸受7が装備されている軸受装置の制振を行う。
【0125】
また、この第8の実施の形態の制振装置21Sでは、各素子配置部P1〜P6の圧電素子23Bは、第1の選択配置部G1の圧電素子23Bに選定されてアクチュエータとして作動させられるアクチュエータ動作時期と、第2の選択配置部G2の圧電素子23Bに選定されてセンサとして作動させられるセンサ動作時期と、第3の選択配置部G3の圧電素子23Bに選定されて非作動状態に維持される非作動時期とが順に来るように、各素子配置部P1〜P9を第1の選択配置部G1と第2の選択配置部G2と第3の選択配置部G3とにグループ分けするグループ分け処理を適時やり直す。
【0126】
この第8の実施の形態の制振装置21Sでは、ハウジング9Bの側壁面9Ba上の複数の素子配置部を2つのグループにグループ分けしていた第5の実施の形態の場合の作用・効果に加えて、更に次の作用・効果を得ることができる。
【0127】
即ち、第8の実施の形態の制振装置21Sでは、各素子配置部P1〜P9の圧電素子23Bは、グループ分け処理のやり直しによって、作動時の負荷が大きく発熱が生じ易いアクチュエータ動作時期と、比較的に作動時の負荷が小さく発熱が生じにくいセンサ動作時期と、センサ動作時期よりも更に発熱が生じにくい非作動時期とを順に行い、非作動時期では第5の実施の形態の制振装置21Pよりも更に効率良く圧電素子23Bのアクチュエータ動作時期における昇温を冷ますことができる。
【0128】
従って、圧電素子23Bに対する冷却手段を装備せずに連続稼働させても、圧電素子23Bが過昇温状態に陥って性能低下を招くことをより確実に回避することが可能になり、より安定した制振性能を維持することができる。また、冷却手段の省略により、装置コストを低減させることもできる。
【0129】
[第9の実施の形態]
図22は、本発明に係る制振装置の第9の実施の形態の要部の拡大断面図である。
この第9の実施の形態の制振装置21Bは、外輪7bの側面にアキシアル方向の振動荷重を作用させる荷重付与手段となる圧電素子として、積層型圧電素子35を用いている。
また、この第9の実施の形態で使用する積層型圧電素子35は、図23に示すように、積層した電極37の外周を覆う被膜に、20W/mK以上の高熱伝導率を持つ絶縁材料で形成した高熱伝導絶縁被膜38を使用している。
【0130】
従来の一般の積層型圧電素子の場合は、積層した電極37の外周を覆う被膜は、絶縁性の高分子樹脂材料で形成されていて、その熱伝導率が0.1〜0.4W/mKであるので、本実施の形態で使用する高熱伝導絶縁被膜38は従来の被膜よりも遙かに熱伝導率が高い。
【0131】
この第9の実施の形態の制振装置21Bでは、圧電素子として積層型圧電素子35を用いたことで、単層の圧電素子を使用する場合と比較して、より大きな振動荷重を転がり軸受7に作用させることができ、制振できる振動の幅が広い高性能な制振性を得ることができる。
【0132】
また、積層型圧電素子35を用いて高負荷を可能にした分、圧電素子の発熱量が大きくなることが考えられるが、本実施の形態の制振装置21Bに使用している積層型圧電素子35は、積層した電極37の外周を覆う被膜として、20W/mK以上の高熱伝導率を持つ高熱伝導絶縁被膜38を使っているため、圧電素子に優れた放熱性を確保することができ、また放熱不足によって圧電素子が過昇温状態となって性能が低下することを防止することができ、優れた制振性能を安定維持することができる。
【実施例9】
【0133】
絶縁被膜38の具体的な実施例としては、高熱伝導率を持つ絶縁材料として、ファインセラミックス(窒化アルミニウム AIN、熱伝導率 300W/mK)を使用したもの、あるいは、熱伝導率が20〜40W/mK となる新型の高熱伝導率樹脂を使用したものを挙げることができる。
【0134】
なお、本発明の制振装置に使用する積層型圧電素子に使用する絶縁被膜としては、図24に示すように、従来品と同品質の樹脂製絶縁被膜41の外面上に20W/mK以上の高熱伝導率を持つ高熱伝導被膜42を積層した複層構造被膜44を使用するようにしても良い。
【0135】
積層した電極の外周を図24の複層構造被膜44で覆った積層型圧電素子を用いる場合も、図23の積層型圧電素子35を使用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
即ち、単層の圧電素子を使用する場合と比較して、より大きな振動荷重を転がり軸受に作用させることができ、制振できる振動の幅が広い高性能な制振性を得ることができる。
また、積層型圧電素子を用いて高負荷を可能にした分、圧電素子の発熱量が大きくなることが考えられるが、積層した電極の外周を覆う被膜として、樹脂製絶縁被膜の上に20W/mK以上の高熱伝導率を持つ高熱伝導被膜を積層した複層構造被膜44を使用しているため、圧電素子に優れた放熱性を確保することができ、放熱不足によって圧電素子が過昇温状態となって圧電素子の性能が低下することを防止することができ、優れた制振性能を安定維持することができる。
【実施例10】
【0136】
絶縁被膜44の具体的な実施例としては、高熱伝導被膜42として、銀(420W/mK )の薄膜を積層したもの、銅(398W/mK )の薄膜を積層したもの、金(320W/mK )の薄膜を積層したもの、カーボンナノチューブ(2000W/mK )を使用したものを挙げることができる。
【0137】
[第10の実施の形態]
図25は、本発明に係る制振装置の第10の実施の形態の要部の拡大断面図である。
この第10の実施の形態の制振装置21Cは、図2に示した第1の実施の形態の制振装置21の一部を改良したもので、圧電素子を使った荷重付与手段23を収容するハウジング9の付与手段収容部51には、該付与手段収容部51に連通する連通路53から荷重付与手段23に冷却用流体55を供給して荷重付与手段23を冷却する冷却手段57を装備している。
【0138】
本実施の形態の冷却手段57では、冷却用流体55として、転がり軸受7の潤滑にも適した潤滑油が使用されている。
更に、図25に示したように、連通路53の一部に、転がり軸受7の外輪7bの外周面とハウジング9との接触部61を臨む開口59が備えられ、荷重付与手段23を冷却する潤滑油が接触部61に滲むことで、該接触部61を潤滑する。
【0139】
更に、本実施の形態の場合、開口59は、転がり軸受7の内外輪間の隙間7eに連通する切り欠き部63を有している。
従って、連通路53より付与手段収容部51に供給された潤滑油を転がり軸受7の内外輪間を通して不図示の潤滑油循環手段に戻す、あるいは、回転軸3側から転がり軸受7に供給される潤滑油を、切り欠き部63を介して付与手段収容部51に流入させて潤滑油循環手段に戻す、という潤滑油の流れで荷重付与手段23の冷却を行うことができる。
【0140】
図25に示した制振装置21Cでは、荷重付与手段23を冷却する冷却手段57を装備したため、荷重付与手段23の昇温を抑止することができ、過昇温による動作性能の低下を防止することができる。
【0141】
また、荷重付与手段23によって転がり軸受7にアキシアル方向の振動荷重を付与した場合には、その振動で転がり軸受7の外輪7bとハウジング9との間に擦れが生じると、フレッチング摩耗やフレッチング疲労を招く虞がある。しかし、上記制振装置21Cでは、冷却用流体55として潤滑油が、連通路53の一部の開口59から外輪7bの外周面とハウジング9との接触部61に滲み込むため、外輪7bとハウジング9との間の擦れを緩和することができ、フレッチング摩耗やフレッチング疲労の発生を防止することができる。
【0142】
[第11の実施の形態]
図26は、本発明に係る制振装置の第11の実施の形態の要部の拡大断面図である。
この第11の実施の形態の制振装置21Dは、図25に示した第10の実施の形態の制振装置21Cの一部を改良したもので、荷重付与手段23を収容した付与手段収容部51Aに冷却用流体55を供給する冷却手段57Aが、付与手段収容部51Aに冷却用流体55を供給する第1の連通路53aと、付与手段収容部51Aから冷却用流体55を排出する第2の連通路53bとを個別に設けている。
なお、付与手段収容部51Aに、転がり軸受7の外輪7bの外周面とハウジング9との接触部61を臨む開口59が備えられ、荷重付与手段23を冷却する潤滑油が接触部61に滲むようにしていることは、第10の実施の形態の場合と同様である。
【0143】
また、荷重付与手段23として使う圧電素子は、図27に示すように、矩形断面をしていることが多い。この第11の実施の形態の制振装置21Dの場合、矩形断面の荷重付与手段23を収容する付与手段収容部51Aは、加工性を向上させることから、矩形の荷重付与手段23が内接する円形空間に形成されている。
円形空間の付与手段収容部51Aは、ドリル等を使った丸穴加工により比較的に簡単に形成することができ、加工コストを低減することができる。
【実施例11】
【0144】
図28は上記第11の実施の形態の実施例11を示している。
この実施例11は、図4に示した実施例1に図26の冷却手段57Aを追加したもので、図4の実施例1と共通の部位には、実施例1と同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
【実施例12】
【0145】
図29は上記第11の実施の形態の実施例12を示している。
この実施例12は、図5に示した実施例2に図26の冷却手段57Aを追加したもので、図5の実施例2と共通の部位には、実施例2と同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
【0146】
[第12の実施の形態]
図30は、本発明に係る制振装置の第12の実施の形態の要部拡大断面図である。
この第12の実施の形態の制振装置21Gは、図22に示した第9の実施の形態の制振装置21Bの一部を改良したもので、荷重付与手段である積層型圧電素子35を収容するハウジング9の付与手段収容部51と積層型圧電素子35との間の隙間に、熱伝導性に優れた潤滑剤76を充填している。
本実施形態の制振装置21Gの場合、付与手段収容部51と積層型圧電素子35との間の隙間に熱伝導性に優れた潤滑剤76を充填した点以外は、第9の実施の形態の制振装置21Bと同様の構成で良く、制振装置21Bと同様の構成については制振装置21Bと同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化する。
【0147】
ここに、荷重付与手段である積層型圧電素子35は、図31に示すように、矩形断面の複数の圧電素子を積層配置した構造(図23に示した構造)である。そして、付与手段収容部51は、積層型圧電素子35が内接する円形空間に形成されている。付与手段収容部51としての円形空間は、ドリル等を使った丸穴加工により形成されている。
【0148】
本実施形態の場合、熱伝導性に優れた潤滑剤76としては、熱伝導性に優れるグリースである熱伝導性グリースが使用されている。熱伝導性に優れた潤滑剤76は、積層型圧電素子35と付与手段収容部51との間の隙間に、熱伝導性の低い空気層が残らないように、充填されている。
【0149】
積層型圧電素子35は周囲から絶縁される必要があるので、熱伝導性に優れた潤滑剤76は、できれば、絶縁性を備えたものが望ましい。絶縁性のあるグリースとしては、シリコングリースや、コスモ石油から発売されているコスモサーマルグリースSFシリーズが知られている。
【0150】
しかし、積層型圧電素子35が絶縁性樹脂等の被膜によって覆われて、積層型圧電素子35自体に絶縁性が確保されている場合には、熱伝導性に優れた潤滑剤76に絶縁性を確保する必要はない。絶縁性は無いが熱伝導性に優れるグリースとしては、一般的なグリースに、金属粉(アルミナ、銅、銀など)やダイヤモンド粉等の熱伝導率が高い物質を混合して、熱伝導率を向上させたものを使用することができる。
【0151】
以上に説明した第12の実施の形態の制振装置21Gでは、回転軸3が高速回転される環境下では、積層型圧電素子35を高周波で作動させる必要があり、積層型圧電素子35の加振動作時における発熱量が増える。しかし、荷重付与手段である積層型圧電素子35と付与手段収容部51との間の隙間に熱伝導性に優れた潤滑剤76が充填されていて、積層型圧電素子35の加振動作時における発熱は、効率よくハウジング9に伝導される。そのため、積層型圧電素子35に対して優れた放熱性を確保することができる。従って、荷重付与手段である積層型圧電素子35が加振動作時の発熱で過度に昇温することを防止することができ、荷重付与手段の昇温による機能低下を防止することができる。
【0152】
なお、第12の実施の形態の制振装置21Gでは、荷重付与手段として積層型圧電素子35を使用したが、荷重付与手段には単層の圧電素子を使用することも可能である。また、荷重付与手段として、圧電素子の代わりに磁歪素子(又は積層磁歪素子)を使用することも可能である。
【実施例13】
【0153】
図32は、上記第12の実施の形態の実施例13の要部の拡大断面図である。
この実施例13の制振装置21Hは、図30に示した第12の実施の形態の制振装置21Gの一部を改良したものである。
具体的には、この実施例13の制振装置21Hでは、付与手段収容部51を有して転がり軸受7の外輪7bの端面に対向するハウジング9の端面部9aに、熱伝導性に優れた潤滑剤77を塗布すると共に、第2のOリング78を設けている。
【0154】
第2のOリング78は、ハウジング9の端面部9aに塗布された潤滑剤77が転がり軸受7の内輪7a(図30参照)側に流出しないように、端面部9aと外輪7bの端面との間に挟持されている。
【0155】
潤滑剤77は、積層型圧電素子35と付与手段収容部51との間の隙間に充填された熱伝導性に優れた潤滑剤76と同一の潤滑剤(即ち、熱伝導グリース)で良い。
【0156】
この実施例13の制振装置21Hでは、積層型圧電素子35と付与手段収容部51との間の隙間に充填された潤滑剤76や、端面部9aに塗布した潤滑剤77が、転がり軸受7の内輪7a側に流出することがない。
従って、潤滑剤76や潤滑剤77が転がり軸受7や回転軸3上の歯車5の潤滑に使用されている潤滑油等と性状が異なる場合でも、これらの潤滑剤76や潤滑剤77が転がり軸受7や歯車5側に流出して、潤滑性能に悪影響を及ぼすことがない。
【0157】
更に、端面部9aに塗布された潤滑剤77によって、ハウジング9への放熱面積が増大しているため、放熱性が第12の実施の形態の制振装置21Gの場合よりも更に改善され、荷重付与手段の昇温による性能低下を更に防止することができる。
【0158】
また、外輪7bに対する積層型圧電素子35の当接面や第2のOリング78の接触部における摩擦が、潤滑剤77によって軽減されるため、これらの部位におけるフレッチング摩耗やフレッチング疲労の発生が抑止される。
【0159】
上記の各実施の形態のうち、第5〜第8の実施の形態に示した圧電素子をアクチュエータとセンサとに使い分ける制振装置、第9〜第11の実施の形態において示した被膜、冷却油により冷却する制振装置、第12の実施の形態において示した熱伝導性に優れた潤滑材により冷却する制振装置については、第2の実施の形態の圧電素子と弾発部材とを用いる制振装置、或いは、第3の実施の形態のスリーブ付構造の制振装置、或いは、第4の実施の形態のラジアル方向に加振し、これを検出する制振装置にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0160】
1 軸受装置
2 ロータ
3 回転軸
5 歯車
7 転がり軸受
7a 内輪
7ax 内側面
7b 外輪
7by 外側面
7c 転動体
7e 隙間
9,9B,9E ハウジング
9a 端面部
9Ba 側壁面
13 外輪保持孔
21 制振装置
21A、21B,21C,21D 制振装置
21E,21F,21G 制振装置
21H,21J,21K 制振装置
21L,21M,21N 制振装置
21P,21Q,21R 制振装置
21S 制振装置
23 荷重付与手段(圧電素子)
23A 荷重付与手段
23B 圧電素子
25 ブッシュ
27 リテーナ
27a 鍔部
31 圧電素子
33 弾発部材
35 積層型圧電素子
37 電極
38 絶縁被膜
41 樹脂製絶縁被膜
42 高熱伝導被膜
44 複層構造被膜
51,51A 付与手段収容部
53 連通路
53a 第1の連通路
53b 第2の連通路
55 冷却用流体
57 冷却手段
57A 冷却手段
59 開口
61 接触部
71 スリーブ
71J スリーブ
71a 摺動面
72 シール溝
74 Oリング
75 潤滑剤(グリース)
76 熱伝導性に優れた潤滑剤(熱伝導グリース)
77 熱伝導性に優れた潤滑剤(熱伝導グリース)
81 第2の荷重付与手段
82a 円筒部
82b フランジ部
86 蓄電回路
G1 第1の選択配置部
G2 第2の選択配置部
G3 第3の選択配置部
P1〜P9 素子配置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を支持した転がり軸受の外輪の側面に当接するように、前記転がり軸受の外輪を支持するハウジングに荷重付与手段を配置し、前記荷重付与手段が前記外輪にアキシアル方向の振動荷重をかけることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記荷重付与手段として圧電素子を用いたことを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記荷重付与手段として磁歪素子を用いたことを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項4】
前記荷重付与手段として、アキシアル方向の振動荷重を作用させる圧電素子に、アキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材を組み合わせたことを特徴とする請求項2に記載の制振装置。
【請求項5】
前記荷重付与手段として、アキシアル方向の振動荷重を作用させる磁歪素子に、アキシアル方向の荷重を作用させる弾発部材を組み合わせたことを特徴とする請求項3に記載の制振装置。
【請求項6】
前記外輪が内周に嵌合し、前記ハウジングに外周が嵌合する筒状のスリーブを備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項7】
前記スリーブと前記ハウジングとの間を封止するOリングを備え、且つ、前記スリーブ及び前記ハウジングのそれぞれの摺動面には潤滑剤を塗布したことを特徴とする請求項6に記載の制振装置。
【請求項8】
前記スリーブをラジアル方向に加振する加振機能を備えた第2の荷重付与手段を備え、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段は前記スリーブ又は前記ハウジングに伝わる回転軸の振動を検出する振動検出機能を有していることを特徴とする請求項6又は7に記載の制振装置。
【請求項9】
前記第2の荷重付与手段を、前記スリーブと前記外輪との間に設けたことを特徴とする請求項8に記載の制振装置。
【請求項10】
前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が前記転がり軸受の外輪の振動を検出する際には、これらの前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が振動検出動作によって発電した電気を蓄え、前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段が前記転がり軸受の外輪に振動を印加する際には、蓄えている電気で前記荷重付与手段と前記第2の荷重付与手段とを加振動作させる蓄電回路を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載の制振装置。
【請求項11】
前記荷重付与手段及び前記第2の荷重付与手段を、前記スリーブの周方向に等間隔で配置される3箇所以上の複数箇所に装備したことを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項12】
前記スリーブは、軸方向の一端が前記ハウジングに固定されると共に、自由端となっている他端側に前記外輪を支持する外輪嵌合部が設けられ、
前記第2の荷重付与手段は、前記自由端側で前記スリーブと前記ハウジングとの間に設けられ、前記スリーブの自由端側を撓み変位させることでラジアル方向の加振荷重を前記転がり軸受に付与することを特徴とする請求項8乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項13】
前記圧電素子を、前記転がり軸受の周方向に複数配置して振動荷重を付与するアクチュエータとして用い、予圧又は振動を検出するセンサとしても用いることを特徴とする請求項2又は4又は6乃至12の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項14】
前記転がり軸受に対向したハウジングの周状の側壁面には、その周方向の複数箇所に設定した複数の素子配置部のそれぞれに前記圧電素子を組み付けると共に、前記複数の素子配置部を第1の選択配置部と第2の選択配置部とにグループ分けし、
前記第1の選択配置部における圧電素子を、予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、前記第2の選択配置部の圧電素子は、振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させ、
且つ、各素子配置部の圧電素子は、前記アクチュエータとして作動するアクチュエータ動作時期と、前記センサとして作動するセンサ動作時期とが交互に来るように制御されることを特徴とする請求項13に記載の制振装置。
【請求項15】
前記転がり軸受に対向したハウジングの周状の側壁面には、その周方向の複数箇所に設定した複数の素子配置部のそれぞれに前記圧電素子を組み付けると共に、前記複数の素子配置部を第1の選択配置部と第2の選択配置部と第3の選択配置部とにグループ分けし、
前記第1の選択配置部における圧電素子を、予圧又は振動を検出するセンサとして作動させると共に、前記第2の選択配置部の圧電素子は、振動荷重を付与するアクチュエータとして作動させ、前記第3の選択配置部の圧電素子は非作動状態に維持し、
且つ、各素子配置部の圧電素子は、前記アクチュエータとして作動するアクチュエータ動作時期と、前記センサとして作動するセンサ動作時期と、前記非作動状態に維持する非作動時期とが順に来るように制御されることを特徴とする請求項13に記載の制振装置。
【請求項16】
1つの素子配置部に複数個の圧電素子が積層状態に装備されている場合に、その1つの素子配置部内の複数個の圧電素子の内、一部の圧電素子は前記センサとして、また、残りの圧電素子は前記アクチュエータとして作動することを特徴とする請求項14又は15に記載の制振装置。
【請求項17】
アクチュエータとして作動する圧電素子や、センサとして作動する圧電素子が、前記ハウジングの周状の側壁面上で線対称の配置となるように、前記素子配置部の配置を設定していることを特徴とする請求項13乃至16の何れか一つに記載の制振装置。
【請求項18】
前記圧電素子として積層型圧電素子を用いると共に、前記積層型圧電素子の電極の外周を覆う被膜に、20W/mK以上の高熱伝導率を持つ絶縁材料で形成した高熱伝導絶縁被膜を使用したことを特徴とする請求項2又は4又は6乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項19】
前記圧電素子として積層型圧電素子を用いると共に、前記積層型圧電素子の積層した電極の外周を覆う被膜を、樹脂製絶縁被膜の上に20W/mK以上の高熱伝導率を持つ高熱伝導被膜を積層した複層構造被膜を使用したことを特徴とする請求項2又は4又は6乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項20】
前記荷重付与手段を収容する前記ハウジング又は前記スリーブの付与手段収容部には、該付与手段収容部に連通する連通路から冷却用流体を供給して前記荷重付与手段を冷却する冷却手段を装備したことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項21】
前記冷却用流体として潤滑油が使用されると共に、前記連通路の一部に、前記転がり軸受の外輪と前記ハウジング又は前記スリーブと外輪又は前記スリーブと前記ハウジングとの接触部を臨む開口が備えられ、前記潤滑油が前記接触部を潤滑することを特徴とする請求項20に記載の制振装置。
【請求項22】
前記荷重付与手段を収容する前記ハウジング又は前記スリーブの付与手段収容部と前記荷重付与手段との間の隙間に、熱伝導性に優れた潤滑剤を充填したことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項23】
前記付与手段収容部を有して前記外輪の端面に対向する前記ハウジング又は前記スリーブの端面部に、熱伝導性に優れた前記潤滑剤を塗布すると共に、前記端面部に塗布された前記潤滑剤が前記転がり軸受の内輪側に流出しないように前記端面部と前記外輪の端面との間に挟持される第2のOリングを設けたことを特徴とする請求項22に記載の制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−223427(P2010−223427A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31556(P2010−31556)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】