説明

制振装置

【課題】摩擦ダンパーの制振性能を維持し、性能を発揮する方向も限定されない制震装置の提供
【解決手段】制振装置100は、第1プレート110と、第1プレート110に少なくとも一部が対向した第2プレート112と、摩擦部材114と、粘弾性体121〜124とを備えている。摩擦部材114は、第1プレート110と第2プレート112とが対向している部位において、第1プレート110と第2プレート112との間に挟まれた柱状の部材であり、第1プレート110と第2プレート112とに面接触している。粘弾性体121〜124は、第1プレート110と第2プレート112との間に配置され、第1プレート110と第2プレート112とに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の揺れを低減することを目的として、履歴特性を生かして、建物に揺れを生じさせるエネルギを吸収する制振装置がある。かかる制振装置は、例えば、特開平11−269984号公報に開示されている。同公報で開示されている制振装置は、摩擦ダンパーとも称されており、建物に揺れを生じさせるエネルギを摩擦力を利用して吸収する。
【0003】
同公報で開示されている制振装置は、滑り板と、2枚の摩擦板と、付勢手段としての皿ばねと、ボルトナットとを備えている。滑り板は2枚の摩擦板で挟まれている。2枚の摩擦板および滑り板にはボルトが通されている。ここで滑り板には長穴が形成されており、ボルトは当該長穴に通されている。このため、滑り板は摩擦板に対して、長穴に沿って動き得る。ボルトには、摩擦板を付勢する皿ばねを通し、ナットで締め付ける。かかるボルトナットの締め付け力によって、摩擦板と滑り板との圧接力を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−269984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平11−269984号公報では、ボルトナットの締め付け力によって、摩擦板と滑り板との圧接力を得ている。ボルトナットは、例えば、外部からの振動によって緩む場合があり、長期的に締め付け力を維持できない。このため、摩擦ダンパーの制振性能を維持できない。また、特開平11−269984号公報では、摩擦ダンパーの可動域は、ボルトを装通させるべく、滑り板に長穴を加工している。この場合、滑り板は、長穴が加工された方向に沿って移動するので、摩擦ダンパーが効果的に制振性能を発揮する方向が限定的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制振装置は、第1プレートと、第1プレートに少なくとも一部が対向した第2プレートと、摩擦部材と、粘弾性体とを備えている。摩擦部材は、第1プレートと第2プレートとが対向している部位において、第1プレートと第2プレートとの間に挟まれた柱状の部材であり、第1プレートと第2プレートとに面接触している。粘弾性体は、第1プレートと第2プレートとの間に配置され、第1プレートと第2プレートとに取り付けられている。
【0007】
かかる制振装置では、摩擦部材の移動方向は制約されない。このため、効果的に制振性能を発揮する方向が限定されない。また、第1プレートと第2プレートとが摩擦部材を挟む圧接力は、振動が生じても緩むことがなく、制振性能がより安定して維持される。
【0008】
ここで、粘弾性体は、第1プレートと第2プレートとが対向している部位において、摩擦部材の周りに複数配置されていてもよい。また、摩擦部材と粘弾性体との間に隙間が設けられていてもよい。また、第1プレートおよび第2プレートと、粘弾性体とは、加硫接着されていてもよい。また、粘弾性体の上端及び下端に、粘弾性体よりも幅の広いフランジが取り付けられており、第1プレートおよび第2プレートと粘弾性体との間に、当該フランジを介在させていてもよい。また、摩擦部材は、柱状の部材であり、第1プレートと第2プレートとに接して滑る端部の縁の角が取り除かれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る制振装置を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る制振装置の第1プレートを一部破断した状態を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る制振装置の使用状態を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る制振装置の使用状態を示す正面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る制振装置の使用状態を示す断面図。
【図7】第1プレートと摩擦部材との間、および、第2プレートと摩擦部材との間に一定の摩擦力のみが作用する場合の履歴ループ。
【図8】粘弾性体の弾性反力のみが作用する場合の履歴ループ。
【図9】加振装置を示す図。
【図10】本発明の一実施形態に係る制振装置の履歴ループ。
【図11】制振装置の部材を示す図。
【図12】制振装置の製造工程を示す図。
【図13】制振装置の製造工程を示す図。
【図14】制振装置の変形例を示す断面図。
【図15】制振装置の変形例を示す断面図。
【図16】制振装置の変形例を示す断面図。
【図17】制振装置の変形例を示す断面図。
【図18A】制振装置の変形例を示す平面図。
【図18B】図18のB−B断面図である。
【図18C】図18のC−C断面図である。
【図19A】制振装置の変形例を示す平面図。
【図19B】図19のB−B断面図である。
【図19C】図19のC−C断面図である。
【図20A】制振装置の変形例を示す平面図。
【図20B】図20のB−B断面図である。
【図20C】図20のC−C断面図である。
【図21A】制振装置の変形例を示す平面図。
【図21B】図21のB−B断面図である。
【図21C】図21のC−C断面図である。
【図22】制振対象となる対向した一対の部材の変形例を示す正面図。
【図23】図22のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る制振装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、同じ作用を奏する部材、部位には、適宜に同じ符号を付している。
【0011】
≪制振装置100≫
図1は、制振装置100を示す斜視図である。制振装置100は、図1に示すように、第1プレート110と、第2プレート112と、摩擦部材114と、粘弾性体121〜124とを備えている。図2は、当該制振装置100において、仮想的に第1プレート110を部分的に破断した状態を示す図である。
【0012】
≪第1プレート110、第2プレート112≫
この実施形態では、第1プレート110と第2プレート112は、それぞれ所要の強度を備えた長方形の鋼板部材である。第2プレート112は、図1に示すように、第1プレート110に少なくとも一部が対向するように配置されている。この実施形態では、第1プレート110と第2プレート112は、平面視において十字に交差しており、それぞれ中間部が対向している。対向した中間部を除く、第1プレート110と第2プレート112の両側部に、それぞれ取付孔131〜134が形成されている。
【0013】
≪摩擦部材114≫
摩擦部材114は、図3に示すように、柱状の部材であり、第1プレート110と第2プレート112とが対向している部位において、第1プレート110と第2プレート112との間に挟まれている。摩擦部材114は、第1プレート110と第2プレート112とに面接触している。この実施形態では、摩擦部材114は、第1プレート110を支持し得る所要の機械強度を有した、柱状の部材(この実施形態では、概ね四角柱の部材)である。摩擦部材114は、図1に示すように、第1プレート110と第2プレート112とが平面視において概ね十字に交差した部位の中央部に、配置されている。
【0014】
≪粘弾性体121〜124≫
粘弾性体121〜124は、第1プレート110と第2プレート112との間に配置され、第1プレート110と第2プレート112とに取り付けられている。この実施形態では、粘弾性体121〜124は、第1プレート110と第2プレート112とが対向している部位において、摩擦部材114の周りに複数(この実施形態では、4つ)配置されている。粘弾性体121〜124は、摩擦部材114の四方を囲むように配置されている。また、摩擦部材114と粘弾性体121〜124との間には、隙間が設けられている。
【0015】
≪制振装置100の使用例≫
図3は、制振装置100の使用状態を示す断面図(図1のIII−III断面)である。ここで、制振装置100は、制振対象となる対向した一対の部材210、220の間に配置されている。制振装置100の第1プレート110は、制振対象となる対向した一対の部材210、220のうち上側の部材210に取り付けられている。制振装置100の第2プレート112は、制振対象となる対向した一対の部材210、220のうち下側の部材220に取り付けられている。
【0016】
第1プレート110と第2プレート112は、例えば、それぞれ取付孔131〜134を通したネジ(図示省略)によって、上下の部材210、220に固定するとよい。ここで、制振対象となる対向した一対の部材210、220は、例えば、図4および図5に示すように、建物300の柱311、312と上下の梁321、322とで囲まれた略矩形の空間において、柱311、312の間に配置されている。一対の部材210、220のうち、一方の部材210は上側の梁321に取り付けられ、他方の部材220は下側の梁322に取り付けられた部材である。さらに、図示例では、図5に示すように、一方の部材210は、板状の部材であり、上側の梁321の底面の中央部から下方に延びている。他方の部材220は、2枚の板状の部材であり、下側の梁322の上面から、一方の部材210の両側面にそれぞれ対向するように上方に延びている。制振装置100は、かかる一方の部材210の両側面において対向した一対の部材210、220の間に、それぞれ取り付けられている。
【0017】
図6は、対向した一対の部材210、220が相対的にせん断方向に移動した状態を示す断面図である。図6に示すように、対向した一対の部材210、220が相対的にせん断方向に移動すると、この制振装置100の第1プレート110と第2プレート112は、それに応じて相対的にせん断方向に動く。第1プレート110と第2プレート112がせん断方向に相対的に動くと、摩擦部材114は、第1プレート110と第2プレート112の少なくとも一方に対して滑る。
【0018】
さらに、第1プレート110と第2プレート112がせん断方向に相対的に動くと、第1プレート110と第2プレート112とに取り付けられた粘弾性体121〜124は、それぞれ引っ張られる。また、粘弾性体121〜124は引っ張られると弾性反力が作用する。かかる粘弾性体121〜124が引っ張られると、その弾性反力によって第1プレート110と第2プレート112とが摩擦部材114を挟む力(圧接力)が高くなる。第1プレート110と第2プレート112とが摩擦部材114を挟む力が高くなると、第1プレート110と摩擦部材114との間、および、第2プレート112と摩擦部材114との間に作用する摩擦力が高くなる。
【0019】
≪制振装置100の履歴ループ≫
ところで、第1プレート110と第2プレート112がせん断方向の変位に対して、第1プレート110と摩擦部材114との間、および、第2プレート112と摩擦部材114との間に一定の摩擦力のみが作用する場合には、例えば、図7に示すような履歴ループを描く。また、粘弾性体121〜124の弾性反力のみが作用する場合には、図8に示すような履歴ループを描く。ここで、履歴ループを示す図中の「x」はせん断変位を示し、「F」はせん断荷重を示している。
【0020】
ここで履歴ループは、図9に示すように、せん断方向に相対的に振動する一対の取付部材410、420を有する加振装置400によって検出される。かかる加振装置400は、一対の取付部材410、420に変位を付与するアクチュエータ431と、せん断方向の変位量を測定する変位計432と、せん断方向の変位に伴う荷重を測定する荷重計433とを備えている。アクチュエータ431は、加振装置400によって制御される。変位計432と、荷重計433の測定データは、加振装置400に記憶される。測定対象となる制振装置100は、一対の取付部材410、420の間に取り付けられる。
【0021】
加振装置400は、アクチュエータ431によって一対の取付部材410、420をせん断方向に変位させつつ、制振装置100に付与したせん断方向の変位に伴って生じる荷重を測定する。これにより、制振装置100の履歴ループを得る。かかる履歴ループで囲まれた面積は、制振装置100がせん断変形によって吸収するエネルギに概ね相当する。なお、この実施形態では、一対の取付部材410、420の間に、2つの制振装置100が線対称に配置されている。これにより、せん断変位に対する制振装置100の抗力によって、一対の取付部材410、420に回転方向に力が作用するのを防止している。
【0022】
上記制振装置100では、第1プレート110と第2プレート112がせん断方向の変位が大きくなるにつれて、粘弾性体121〜124の弾性反力が大きくなる。このため、一定の摩擦力のみが作用する場合における図7に示すような履歴ループと、粘弾性体121〜124の弾性反力のみが作用する場合における図8に示すような履歴ループとを、合成した場合よりも大きな履歴ループを形成し得る。
【0023】
すなわち、上記制振装置100では、第1プレート110と第2プレート112のせん断方向の変位が大きくなるにつれて、粘弾性体121〜124の弾性反力が大きくなる。第1プレート110と第2プレート112とが摩擦部材114を挟む力が高くなり、第1プレート110と摩擦部材114との間、および、第2プレート112と摩擦部材114との間に作用する摩擦力が大きくなる。このため、制振装置100は、図10に示すような履歴ループAを描く。すなわち、制振装置100の履歴ループAは、図10に示すように、第1プレート110と第2プレート112とのせん断方向の変位の両端で摩擦力が高くなる。
【0024】
このため、制振装置100は、せん断変形のエネルギをより効果的に吸収することができる。また、制振対象となる上下の部材210、220(図3及び図6参照)の変位を、適切に抑えることができる。
【0025】
≪制振装置100の製造方法≫
以下、制振装置100の製造法を説明する。制振装置100の製造では、例えば、図11に示すように、第1プレート110と、第2プレート112と、摩擦部材114と、未加硫ゴム121a〜124aと、スペーサ141〜144とを用意する。
【0026】
この実施形態では、第1プレート110、第2プレート112、摩擦部材114は、少なくとも互いに滑る面にショットブラスト、化学的処理などによって、所要の表面粗さを得ておくとよい。
【0027】
また、未加硫ゴム121a〜124aは、加硫後に、粘弾性体121〜124(図1参照)になるブロック状の未加硫ゴムである。ここで、未加硫ゴム121a〜124aには、このような制振装置100に要する機能を奏する機能性ゴムが用いられる。かかる機能を奏する機能性ゴムは、例えば、天然ゴム又は合成ゴムをバンバリー、ニーダーなどで混練りすることによって得られる。
【0028】
スペーサ141〜144は、成型時に、制振装置100(図1参照)における摩擦部材114と粘弾性体121〜124との隙間を埋める部材である。この実施形態では、スペーサ141〜144は、摩擦部材114と粘弾性体121〜124との間隔に応じた厚さを有する矩形のブロック状の部材である。摩擦部材114と、未加硫ゴム121a〜124aとは、概ね同じ高さである。
【0029】
この実施形態では、まず、図12に示すように、摩擦部材114と、未加硫ゴム121a〜124aと、スペーサ141〜144とを所定の位置に組み合わせ、摩擦部材114に対する未加硫ゴム121a〜124aの位置を決める。スペーサ141〜144は、それぞれ摩擦部材114の側面に合わせる。この際、スペーサ141〜144うち、一のスペーサ(例えば、141)の一端が、他のスペーサ(例えば、144)の摩擦部材114の側面に合わせた側面に当たり、当該一のスペーサ(141)の他端(141a)が突出するように組み合わされている。これにより、摩擦部材114の上面、底面を除く4つの側面は、スペーサ141〜144によって囲まれている。
【0030】
未加硫ゴム121a〜124aは、摩擦部材114に対してスペーサ141〜144の外側に配置される。この実施形態では、スペーサ141〜144の外側において、摩擦部材114に対して所定位置に配置されている。この際、未加硫ゴム121a〜124aは、摩擦部材114に対するスペーサ141〜144の外側面と、スペーサ141〜144の突出した部分とに当てられている。
【0031】
かかる摩擦部材114と、未加硫ゴム121a〜124aと、スペーサ141〜144とが組み合わされたブロック(図12参照)を、図13に示すように、第1プレート110と第2プレート112とによって挟む。この際、未加硫ゴム121a〜124aは、第1プレート110と第2プレート112に確実に接触させる。また、この際、第1プレート110および第2プレート112と、未加硫ゴム121a〜124aとの間には接着剤を流し込む。スペーサ141〜144は、例えば、鉄やアルミニウムなどの金属または耐熱性を有する樹脂材料で構成するとよい。
【0032】
図13に示す状態で、未加硫ゴム121a〜124aを加硫すると、架橋反応が生じる。かかる架橋反応によって、未加硫ゴム121a〜124aは粘弾性体121〜124(図1参照)になる。また、未加硫ゴム121a〜124aは、第1プレート110と第2プレート112に接着される。未加硫ゴム121a〜124aを加硫後、スペーサ141〜144を抜く。この際、スペーサ141〜144は、それぞれ側面に露出した一端部141a〜144aを摘んで引き抜くとよい。
【0033】
これにより、図1に示すように、第1プレート110と第2プレート112とに、摩擦部材114を挟むことができる。さらに、第1プレート110と第2プレート112とに挟まれた摩擦部材114の周りにおいて、複数(図示例では、4つ)の粘弾性体121〜124を所定位置に配置することができるとともに、第1プレート110および第2プレート112に、粘弾性体121〜124を接着することができる。
【0034】
≪制振装置100の作用≫
以上、説明したように、制振装置100は、第1プレート110と、第2プレート112と、摩擦部材114と、粘弾性体121〜124を備えている。そして、第2プレート112は、第1プレート110に少なくとも一部が対向している。摩擦部材114は、第1プレート110と第2プレート112とが対向している部位において、第1プレート110と第2プレート112との間に挟まれている。さらに摩擦部材114は、第1プレート110と第2プレート112とに面接触している。粘弾性体121〜124は、第1プレート110と第2プレート112との間に配置され、第1プレート110と第2プレート112とに取り付けられている。
【0035】
制振装置100の第1プレート110と第2プレート112は、図3に示すように、それぞれ制振対象となる対向した一対の部材210、220に取り付けられる。図6に示すように、制振対象となる対向した一対の部材210、220がせん断方向に移動すると、これに応じて、制振装置100の第1プレート110と第2プレート112はせん断方向に動く。第1プレート110と第2プレート112がせん断方向に動くと、第1プレート110と第2プレート112の少なくとも一方に対して摩擦部材114が滑る。
【0036】
さらに、第1プレート110と第2プレート112がせん断方向に相対的に動くと、第1プレート110と第2プレート112とに取り付けられた粘弾性体121〜124は、それぞれ引っ張られる。また、粘弾性体121〜124は引っ張られると弾性反力の作用によって、第1プレート110と第2プレート112とが摩擦部材114を挟む力(圧接力)が高くなる。第1プレート110と第2プレート112とが摩擦部材114を挟む力が高くなると、第1プレート110と摩擦部材114との間、および、第2プレート112と摩擦部材114との間に作用する摩擦力が高くなる。
【0037】
このため、制振装置100の履歴ループでは、図10に示すように、せん断方向の変位の両端で荷重が高くなる。制振装置100は、せん断変形のエネルギをより効果的に吸収することができる。また、せん断方向の変位の両端で荷重が高くなるので、制振対象となる上下の部材210、220(図3及び図6参照)の変位を、適切に抑えることができる。
【0038】
また、粘弾性体121〜124は、図1に示すように、第1プレート110と第2プレート112とが対向している部位において、摩擦部材114の周りに複数(4つ)配置されている。このため、第1プレート110と第2プレート112のせん断変形の方向に影響を受けにくく、適切な荷重が生じる。さらに、この制振装置100によれば、摩擦部材114と粘弾性体121〜124との間に隙間が設けられている。このため、摩擦部材114と粘弾性体121〜124とが干渉しない範囲において、第1プレート110と第2プレート112とをせん断変位させることができる。
【0039】
また、この制振装置100では、第1プレート110および第2プレート112と、粘弾性体121〜124とは加硫接着されている。このため第1プレート110および第2プレート112と、粘弾性体121〜124との接着強度が強く、第1プレート110と第2プレート112とをせん断変位させた場合でも、第1プレート110および第2プレート112と、粘弾性体121〜124との接着が剥がれ難い。
【0040】
なお、図示は省略するが、摩擦部材114と、粘弾性体121〜124とが干渉しない範囲において、第1プレート110と第2プレート112のせん断変位が規制されるように、適当なストッパーを併設してもよい。
【0041】
以上、本発明の一実施形態に係る制振装置100を説明したが、上記実施形態に限定されない。
【0042】
例えば、第1プレート110、第2プレート112、摩擦部材114、および、粘弾性体121〜124の形状や材料の選択は、各部剤の機能を奏する上で支障のない範囲において、適宜に変更可能である。
【0043】
例えば、摩擦部材114に対する粘弾性体121〜124の位置や、数、粘弾性体121〜124の形状などは、上述した実施形態に限定されない。
【0044】
また、摩擦部材114は、概ね四角柱の部材であるが、四角柱の部材である必要はない。摩擦部材114は、円柱形状でもよいし、角柱形状でもよい。また、摩擦部材114は、柱状の部材であればよく、上側に対して下側が広くてもよいし、反対に、下側に対して上側が広くてもよい。
【0045】
図14および図15は、変形例に係る制振装置100Aを示している。この制振装置100Aでは、摩擦部材114は、図14に示すように、第1プレート110と第2プレート112とに接して滑る上下の端部の縁114a、114bの角が取り除かれた柱状の部材でもよい。この場合、摩擦部材114は、上下の端部の縁114a、114bの角が取り除かれている(面取りされている)ので、図15に示すように、摩擦部材114と粘弾性体121〜124とが干渉しない範囲において、第1プレート110と第2プレート112とをより大きくせん断変位させることができる。
【0046】
また、上述した制振装置100では、第1プレート110および第2プレート112と、粘弾性体121〜124とが、加硫接着されている。第1プレート110および第2プレート112と、粘弾性体121〜124との結合は、必ずしも加硫接着によらない。例えば、図16に示すように、粘弾性体121〜124の上下に、加硫接着によって、それぞれフランジ151、152を取り付けておく。そして、当該フランジは、例えば、鋼板製とし、ボルトナットや溶接によって、第1プレート110および第2プレート112に結合するとよい。これにより、当該フランジ151、152を介在させた状態で、第1プレート110と第2プレート112とに、粘弾性体121〜124を取り付けることができる。
【0047】
かかるフランジ151、152は、粘弾性体121〜124よりも幅が広く、摩擦部材114が滑りうる領域に突出しているとよい。かかるフランジ151、152によって、第1プレート110と第2プレート112とに段差を設けることができる。そして、図17に示すように、当該フランジ151、152の縁151a、152aによって、摩擦部材114が滑りうる領域を規制することができる。また、この場合、当該フランジ151、152によって、摩擦部材114が粘弾性体121〜124に当たるのを防止することができる。これにより、粘弾性体121〜124の上端と下端が摩擦部材114によって押しつぶされるのをより確実に防止できる。
【0048】
また、制振装置100は、摩擦部材114と粘弾性体121〜124とが、干渉しても適切に機能し得る。かかる制振装置100は、数十年あるいは数百年に1度の大地震に対して、建物に作用する地震のエネルギを適切に吸収できればよく、この際、地震後に交換することを前提として設置してもよい。
【0049】
例えば、図18A〜図18Cは、変形例に係る制振装置100Bを示している。図18A〜図18Cに示された例では、例えば、第1プレート110と第2プレート112とが対向する領域の中央部に孔110a、112aを開け、当該110a、112aに通したボルト(図示省略)によって、第1プレート110と第2プレート112とが対向する領域の中央部に摩擦部材114Bを拘束する。そして、摩擦部材114Bを拘束した状態で、摩擦部材114Bの周りに粘弾性体126Bになる未加硫ゴムを配置するとよい。そして、当該未加硫ゴムを、第1プレート110と第2プレート112とに加硫接着させた後で、ボルトを取り除き、摩擦部材114Bの拘束を解くとよい。これにより、図18A〜図18Cに示されたように、第1プレート110と第2プレート112とで、摩擦部材114Bを挟むとともに、摩擦部材114Bを粘弾性体126Bで覆った制振装置100Bを製造できる。
【0050】
制振装置100Bでは、このように、摩擦部材114Bを覆うように粘弾性体126Bが設けられている。この場合、大地震に対してせん断変形が生じた場合には、摩擦部材114Bと粘弾性体126Bとが干渉することがあるが、建物に作用する地震のエネルギを適切に吸収できる。そして、地震後に、制振装置100Bの機能が低下している場合には、適宜に制振装置100Bを取り替えるとよい。
【0051】
なお、かかる制振装置100Bでは、摩擦部材114Bは、略矩形のブロックであるが、この場合においても、摩擦部材114Bの形状は、種々変更することができる。例えば、図19A〜図19C、図20A〜図20C、図21A〜図21Cは、制振装置の変形例を示している。
【0052】
図19A〜図19Cに示す制振装置100Cでは、摩擦部材114Cは、円柱形状のブロックであり、摩擦部材114Cを覆うように粘弾性体126Cが設けられている。このため、せん断変形に対して異方性がほとんどなくなる。
さらに、図20A〜図20Cに示す制振装置100Dでは、摩擦部材114Dは略円柱形状であるが、中間部が括れている。粘弾性体126Dは、摩擦部材114Dの中間部の括れ形状に沿って、内側に盛り上がっている。この場合、摩擦部材114Dは、粘弾性体126Dによって、第1プレート110と第2プレート112とが対向する領域の中央部により強く拘束される。また、第1プレート110と第2プレート112とのせん断変位に対して、摩擦部材114Dは転倒し難い。
さらに、図21A〜図21Cに示す制振装置100Eでは、摩擦部材114Eは略円柱形状であるが、第1プレート110と第2プレート112とに接して滑る端部の縁の角が取り除かれている(面取りされている)。この場合、摩擦部材114Eがせん断変位する場合に、摩擦部材114Eと粘弾性体126Eとの干渉を緩和することができる。このように摩擦部材の形状や大きさ、および、粘弾性体の形状や大きさは、種々変更することができる。
【0053】
また、制振装置100の配置例として、図4および図5に示すように、建物300の柱311、312と上下の梁321、322とで囲まれた略矩形の空間に設けられた間柱210、220(制振対象となる対向した一対の部材)の間に配置された例を挙げた。制振装置100の配置例は、これに限定されない。制振装置100は、例えば、図22および図23に示すように、建物300の柱311、312と上下の梁321、322とで囲まれた略矩形の空間において、斜めに取り付けられる一対のブレース材212、222(制振対象となる対向した一対の部材)の間に配置してもよい。図22および図23に示す例では、図23に示すように、一方のブレース材212は、板状の部材である。他方のブレース材222は、2枚の板状の部材であり、一方の部材212の両側面にそれぞれ対向している。制振装置100は、かかる一方の部材212の両側面において対向した一対の部材212、222の間に、それぞれ取り付けられている。
【0054】
また、図示は省略するが、制振対象となる対向した一対の部材は、建物の基礎と、基礎に水平に対向して配置された建物の土台でもよい。この場合、制振装置100は、建物の基礎と、基礎に水平に対向して配置された建物の土台との間に配置するとよい。
【符号の説明】
【0055】
100、100A〜100F 制振装置
110 第1プレート
112 第2プレート
114、114B〜114E 摩擦部材
114a、114b 摩擦部材の上下の端部の縁
121〜124 粘弾性体
121a〜124a 未加硫ゴム
126B〜126E 粘弾性体
131〜134 取付孔
141〜144 スペーサ
141a〜144a スペーサの一端部
151、152 フランジ
151a、152a フランジの縁
210、220 制振対象となる対向した一対の部材
212、222 ブレース材(制振対象となる対向した一対の部材)
300 建物
311、312 柱
321、322 梁
400 加振装置
410、420 一対の取付部材
431 アクチュエータ
432 変位計
433 荷重計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プレートと、
前記第1プレートに少なくとも一部が対向した第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとが対向している部位において、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に挟まれた柱状の部材であり、前記第1プレートと前記第2プレートとに面接触した摩擦部材と、
前記第1プレートと第2プレートとの間に配置され、前記第1プレートと前記第2プレートとに取り付けられた粘弾性体と
を備えた制振装置。
【請求項2】
前記粘弾性体は、前記第1プレートと前記第2プレートとが対向している部位において、前記摩擦部材の周りに複数配置されている、請求項1に記載された制振装置。
【請求項3】
前記摩擦部材と前記粘弾性体との間に隙間が設けられている、請求項1又は請求項2に記載された制振装置。
【請求項4】
前記第1プレートおよび第2プレートと、前記粘弾性体とは、加硫接着されている、請求項1から3までの何れか一項に記載された制振装置。
【請求項5】
前記粘弾性体の上端及び下端に、粘弾性体よりも幅の広いフランジが取り付けられており、前記第1プレートおよび第2プレートと前記粘弾性体との間に、当該フランジを介在させた、請求項1から3までの何れか一項に記載された制振装置。
【請求項6】
前記摩擦部材は、柱状の部材であり、前記第1プレートと前記第2プレートとに接して滑る端部の縁の角が取り除かれている、請求項1から5までの何れか一項に記載された制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−219570(P2012−219570A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88842(P2011−88842)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】