説明

制酸・緩下用水分散液およびそのための錠剤

【課題】 経管投与が可能な酸化マグネシウム粒子を含有する水分散液およびそのための錠剤を提供すること。
【解決手段】 平均二次粒子径が0.5〜10μである酸化マグネシウム粒子を1〜30重量%含有する経管投与するための制酸・緩下用水分散液およびその分散液を調剤するための酸化マグネシウム粒子を含む錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム粒子を含有する水分散液であって、経管栄養チューブにより投与するための制酸・緩下用水分散液および該水分散液の投与方法に関する。さらに本発明は、前記水分散液を調製するための酸化マグネシウム粒子を含有する錠剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害患者に薬剤を投与する場合、重度であれば、経管投与が選択されることがある。経管投与時に使用される薬剤が錠剤であれば、粉砕する必要があるが、この粉砕調剤は、製剤の物理化学的安定性、薬物動態、薬効、副作用、感覚器への影響が指摘されており、また、調剤業務の煩雑化、調剤者への健康被害など問題点が多かった。そこで、錠剤を粉砕することなく、水に崩壊・懸濁させ、その分散液を経管栄養チューブにより投与する方法が提案された。酸化マグネシウムは、制酸剤や緩下剤として、主に細粒剤で提供されてきたが、経管栄養チューブを閉塞させることが指摘されている。経管栄養チューブの閉塞を防止するため、細粒剤を乳鉢ですりつぶす予製が行われているが、酸化マグネシウムは微粉末にしづらいことや乳鉢へ薬剤が固着するといった問題があり、調剤者の負担となっていた。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0003】
経管栄養チューブにより閉塞することなく投与できる酸化マグネシウム粒子含有水分散液およびそのための酸化マグネシウム粒子含有錠剤が提供される。特にこの錠剤は投与時に水中に必要量を添加することによって水分散液を調剤でき、そのまま経管投与できる利点がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、細粒剤や散剤などの計量調剤よりも簡便な計数調剤が可能な錠剤を使用することができかつ、水に崩壊・懸濁させた状態で経管栄養チューブによりスムースに、経管投与可能な酸化マグネシウム錠剤および水分散液を提供することにある。
【0005】
本発明の第2の目的は、水に懸濁した酸化マグネシウム粒子分散液であって、経管栄養チューブによる投与において分散液がチューブ内で閉塞を起さずスムースに経管栄養チューブ内を流動することができる酸化マグネシウム粒子分散液を提供することにある。
【0006】
本発明の第3の目的は、投与時において、錠剤から水分散液の調製が簡単でかつ速やかに実施できる経管栄養チューブによる投与のための酸化マグネシウム錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の研究によれば、平均二次粒子径が特定範囲の微粒子の酸化マグネシウムから形成された水分散液は経管栄養チューブによって、閉塞を起すことなくスムースに投与できること、また前記特定範囲の微粒子の酸化マグネシウム、特定の結合剤および崩壊剤を一定の割合で含有する錠剤は水中に速やかに崩壊し、得られた水分散液は経管栄養チューブによって閉塞することなく投与できることを見出し本発明に到達した。
【0008】
かくして本発明によれば、下記(イ)〜(ハ)の制酸・緩下用水分散液、経管栄養チューブにより投与する方法および前記水分散液を調製するための錠剤が提供される。
(イ)レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである酸化マグネシウム粒子を1〜30重量%含有する水分散液よりなることを特徴とする経管栄養チューブにより投与するための制酸・緩下用水分散液。
(ロ)レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである酸化マグネシウム粒子を1〜30重量%含有する水分散液をヒトに経管栄養チューブにより投与することを特徴とする制酸・緩下用水分散液の投与方法。
(ハ)水に分散した水分散液として経管栄養チューブにより投与するための酸化マグネシウム粒子を含有する制酸・緩下用錠剤であって、該錠剤は下記(i)〜(iii)の要件を満足することを特徴とする錠剤。
(i)酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである。
(ii)錠剤は、酸化マグネシウム粒子の含有割合が88〜97重量%である。
(iii)水中における崩壊時間が10秒以下である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明における経管栄養チューブにより投与するための制酸・緩下用水分散液は、酸化マグネシウム粒子を水中に1〜30重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の濃度で含んでいる。かかる水分散液中の酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μm、好ましくは1〜7μmである。
【0011】
本発明における前記水分散液は酸化マグネシウム粒子の平均二次粒子が小さく分散性にも優れているので、経管栄養チューブ中をスムースに流下し、閉塞することはない。ここでチューブは、通常経管栄養チューブとして利用されているものであり、その内径が1.0〜6.0mmの範囲であり、成人用として内径が2.7〜4.0mmのものが一般的に使用されている。最もよく使用されているものは内径が約2.7mmのものである。本発明の水分散液は、かかる経管栄養チューブを使用し、患者の体内(食道や胃内)に供給されるがチューブ内で、閉塞を起すことはなく、僅かな水の量により必要な量の酸化マグネシウム粒子を投与することが可能となる。すなわち、経管栄養チューブにより酸化マグネシウム粒子(MgO)を制酸・緩下用として投与する場合、水20mLが使用される。従ってMgO2gを1回で投与するときはMgO濃度10w/v%となる。またMgOを3〜4g投与するときはMgO濃度15〜20w/v%となる。さらにMgO6gを投与するときはMgO濃度は30w/v%となる。このような種々のMgO濃度であっても内径約2.7mmのチューブの使用によってスムースに閉塞することなく投与することができる。一方内径4.0mmのチューブを使用する場合にはMgO濃度が40w/v%とあっても閉塞を起すことはない。
【0012】
経管投与を実施する上で、水分散液を調剤する際、一定量の酸化マグネシウム粒子を計量し水(例えば20mL)に加えることもできる。この方法は、酸化マグネシウム粒子の調製(微粉末化)、計量、水への添加および分散液という工程を経なければならず、実際の医療現場では調剤者に過度の負担を要していた。
【0013】
本発明者の研究によれば調剤の段階で酸化マグネシウムを粒末として取り扱うことなく錠剤の形態で経管投与可能な分散液を容易にかつ速やかに調剤できる方法が見出された。すなわち、本発明によれば下記(i)〜(iii)の要件を満足する酸化マグネシウム粒子含有の錠剤が経管投与のための水分散液用の調剤用として提供される。
(i)酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである。
(ii)錠剤は、酸化マグネシウム粒子の含有割合が88〜97重量%である。
(iii)水中における崩壊時間が10秒以下である。
【0014】
前記(i)〜(iii)の要件を満足する錠剤は、水中にて速やかに崩壊して酸化マグネシウム粒子の水分散液を調剤でき、そのまま経管投与できる。この錠剤を使用すると、一個の錠剤中の酸化マグネシウム粒子の含有量は予め決められているので、その必要量を錠剤の数に基いて水に加えるという簡単な方法で水分散液を調剤することができる。
【0015】
すなわち、錠剤の使用は、酸化マグネシウム粒子(微粉末)の調製や保管、計量および水分散液という煩雑な作業は不必要となる。
【0016】
次に水分散液に使用される酸化マグネシウム粒子含有の錠剤について具体的に説明する。
【0017】
錠剤はレーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μm、好ましくは1〜7μmの酸化マグネシウム粒子が使用される。
前記錠剤は、この粒子径を有する酸化マグネシウム粒子を使用し、後述する特定の結合剤と崩壊剤とを組合せることによって、得ることができ、得られた錠剤は、水中における崩壊時間が短く10秒以下である。錠剤中の酸化マグネシウム粒子が88重量%〜97重量%、好ましくは89重量%〜96重量%、特に好ましくは90重量%〜95重量%の高含有割合であることが望ましい。
【0018】
打錠化に供する酸化マグネシウム粒子は、粉末状でよく、また顆粒状のいずれでもよいが、顆粒状の方が打錠機の摩耗防止効果に優れ、しかもより高含有量の錠剤を得ることができる。
【0019】
酸化マグネシウム粒子は通常水酸化マグネシウム粒子を焼成して得られるが、レーザー回折散乱法による平均2次粒子径が1〜10μmの水酸化マグネシウムを700〜1,000℃で焼成した酸化マグネシウム粒子を、錠剤にした場合、従来の酸化マグネシウム粒子のように硬くなく、打錠機を摩耗しない利点がある。
【0020】
錠剤に使用される結合剤は結晶セルロース、またはデンプン(例えばトウモロコシデンプン)であり、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシスターチナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルピロリドンである。これら崩壊剤は2種以上組み合わせてもよい。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムまたはカルボキシスターチナトリウムが好ましく、特にクロスカルメロースナトリウムまたはカルボキシスターチナトリウムは、従来の崩壊剤と比べて、極めて少量で崩壊するのでその配合量を減らすことができ、さらに経時的変化が非常に少なく、安定性に優れた錠剤を得ることができる。最も好ましい崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。
【0021】
前記結合剤は、錠剤中1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%配合され、また崩壊剤は1〜3.5重量%、好ましくは1〜3重量%配合される。
【0022】
錠剤中の崩壊剤の配合量を少なくすることができるので、結果として酸化マグネシウム粒子の含有割合を高くすることができる。前述したように、前記崩壊剤は経時変化が極めて少なく、錠剤化後も長時間その崩壊性が低下することなく安定性に優れた錠剤が提供される。すなわち、錠剤後、40℃の温度かつ75%の相対湿度(RH)の条件下で6ヶ月間保持した場合でも、錠剤の水中での崩壊時間は10秒以下の特性を保持している。
【0023】
酸化マグネシウム粒子単味では乾式造粒時に高圧力で圧縮しなければ成形されない粉末を、前記添加剤(結合剤および崩壊剤)と共に配合した混合末にすることにより、低圧力で錠剤に成形可能となる。高圧力で成形した顆粒は堅く、これを用いて製錠すると錠剤の黒ずみ、打錠斑の発生の他にキャッピングや機械部品の摩耗が激しいが、下記の如き酸化マグネシウム粒子、結合剤および崩壊剤の組合せにより低圧力で錠剤に成形でき、しかも錠剤の黒ずみや打錠斑の発生は起らない。
【0024】
錠剤の大きさおよび形状は、通常の経口用の錠剤と特に変わるものではない。直径は5〜12mm、好ましくは6〜10mm、特に好ましくは6〜9mmが適当である。また厚みは2〜6mm、好ましくは2〜5mm、特に好ましくは2.5〜4.5mmが適当である。さらに一錠当りの重量は100〜1,000mg、好ましくは150〜800mg、最も好ましくは200〜600mgが望ましい。
【0025】
前述した酸化マグネシウム粒子を含有する錠剤は、水中における崩壊時間が極めて短く、通常10秒以下、好適条件下では9秒以下で水中に崩壊する。
【0026】
従って経管投与する場合には、その投与しようとする時に適当な量の水または温水(例えば20mL)に必要とする数の錠剤を加えて水分散液を調剤することができる。得られた水分散液は、経管栄養チューブを通してスムースに患者に投与される。
【0027】
次に経管栄養チューブおよび制酸・緩下用としての用法について簡単に説明する。
【0028】
経管栄養チューブの太さは、一般的に1.0〜6.0mmであるが、成人では2.7〜4.0mm程度のものがよく使用される。太い口径のチューブは、長期間留置すると鼻腔、咽頭、食道、胃などのチューブが当たる部分の粘膜に潰瘍が生じ、嚥下に悪影響を与えたり、胃内に流入した栄養剤が逆流して誤嚥性肺炎を起こしたりする危険性がある。細いチューブを使用することにより患者の不快感は著しく減少し、安全性も向上する。それゆえ、チューブとしては約2.7mmの内径のものがより好ましい。
【0029】
酸化マグネシウム粒子を含む水分散液の制酸剤または緩下剤としての用法は、例えば1日MgOとして2gを食前又は食後3回に分服、又は、就寝前に1回である。2gを就寝前に1回服用する場合、水20mLに懸濁させると、MgO濃度は10w/v%となる。また、重度の便秘症に対しては3〜4gの大量投与も行われるが、このとき水20mLに懸濁させるとMgO濃度は15〜20w/v%である。該錠剤は、より好ましい内径2.7mmの経管栄養チューブを使用するとき、水20mLに懸濁させると、少なくとも1回6gは投与可能であり、酸化マグネシウムのMgO濃度としては30w/v%となる。また、内径4.0mmの経管栄養チューブを使用するとき、水20mLに懸濁させると、少なくとも1回8gは投与可能であり、酸化マグネシウムのMgO濃度としては40w/v%となる。
【0030】
経管投与を行う上においては、短時間に水に崩壊するほうが好ましい。わずかな水で崩壊する該錠剤は、日局一般試験法 崩壊試験により試験を行うとき、崩壊時間は10秒以下である。経管投与法において、崩壊時間の規定はないが、短いほうが望ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例および比較例を示して本発明を更に詳述する。
【0032】
実施例1
(1)処方例1
酸化マグネシウム粒子 330mg(88%)
結晶セルロース 23mg(6.1%)
トウモロコシデンプン 7mg(1.9%)
クロスカルメロースナトリウム 11mg(2.9%)
ステアリン酸カルシウム 4mg(1.1%)
375mg
(2)錠剤の製造方法
平均2次粒子径が6.50μmの酸化マグネシウムの粒子39.6kg、結晶セルロース2.76kg、トウモロコシデンプン0.84kg、クロスカルメロースナトリウム1.32kgをコンテナー型混合機にて混合後、ロール成形型乾式造粒機にてロール圧力5MPaで造粒した成形物をオシレーター式粉砕機にて顆粒を製した。本顆粒40.81kgとステアリン酸カルシウム0.44kgをコンテナー型混合機にて混合し打錠用顆粒と成し、直径9mm、13R杵を36本装着したロータリー型打錠機にて、打錠圧9kNで製錠し、1錠あたり重量375mg、厚み4.8mmの酸化マグネシウム錠剤を得た。
【0033】
実施例2
(1)処方例2
酸化マグネシウム粒子 255mg(89.5%)
結晶セルロース 15mg(5.3%)
トウモロコシデンプン 5mg(1.8%)
クロスカルメロースナトリウム 7mg(2.5%)
ステアリン酸カルシウム 3mg(1.1%)
285mg
(2)錠剤の製造方法
平均2次粒子径が6.50μmの酸化マグネシウムの粒子38.25kg、結晶セルロース2.25kg、トウモロコシデンプン0.75kg、クロスカルメロースナトリウム1.05kgをコンテナー型混合機にて混合後、ロール成形型乾式造粒機にてロール圧力5MPaで造粒した成形物をオシレーター式粉砕機にて顆粒を製した。本顆粒40.89kgとステアリン酸カルシウム0.435kgをコンテナー型混合機にて混合し打錠用顆粒と成し、直径8mm、12R杵を36本装着したロータリー型打錠機にて、打錠圧7.5kNで製錠し、1錠あたり重量285mg、厚み4.5mmの酸化マグネシウム錠剤を得た。
【0034】
比較例1
(1)処方例3
酸化マグネシウム粒子 330mg(88%)
結晶セルロース 23mg(6.1%)
トウモロコシデンプン 7mg(1.9%)
クロスカルメロースナトリウム 11mg(2.9%)
ステアリン酸カルシウム 4mg(1.1%)
375mg
(2)錠剤の製造方法
平均2次粒子径が170μmの酸化マグネシウムの粒子33.0kg、結晶セルロース2.3kg、トウモロコシデンプン0.7kg、クロスカルメロースナトリウム1.1kgをコンテナー型混合機にて混合後、さらにステアリン酸カルシウム0.4kgを添加し、同機で混合し、打錠用顆粒とした。これを直径9mm、13R杵を36本装着したロータリー型打錠機にて、打錠圧9kNで製錠し、1錠あたり重量375mg、厚み4.2mmの酸化マグネシウム錠剤を得た。
【0035】
比較例2
1錠中、酸化マグネシウムを330mg含有する市販の医療用医薬品の酸化マグネシウム錠剤A錠を用いた。この錠剤は、比較例1の酸化マグネシウム粒子を主に用いて製造されたものである。
比較例3
3錠中、酸化マグネシウムを1g含有する市販の一般用医薬品の酸化マグネシウム錠剤B錠を用いた。この錠剤は、比較例1の酸化マグネシウム粒子を主に用いて製造されたものである。
【0036】
比較例4
3錠中、酸化マグネシウムを1g含有する市販の一般用医薬品の酸化マグネシウム錠剤C錠を用いた。この錠剤は、比較例1の酸化マグネシウム粒子を用いて製造されたものである。
【0037】
比較例5
医療用医薬品用として市販の酸化マグネシウム細粒を用いた。この細粒の粒度分布を以下の測定方法により試験し、平均粒子径を求めたところ、246.26μmであった。
装置:エンデコッツ製オクタゴン
使用ふるい(網目の間):500、355、180、150、106μm
試験条件:振動強度5、篩時間5分、接続10秒、停止2秒、フライアビレーター5分
試料約30mLをふるいおよび受器を重ね合わせた容器の上段のふるいにいれ、上ぶたをした後、装置にセットする。上記の条件で試験した後、各々のふるいおよび受器の残留物の重量を0.01g単位まで量る。粒度分布の大きい粒子から積算し、50重量%積算値の粒子の粒径を平均粒子径とする。
【0038】
試験方法
試験方法1−崩壊懸濁試験
錠剤の場合、ディスペンサーのピストン部を抜き取り、ディスペンサー内に錠剤をそのまま6錠入れて、ピストンを戻し、ディスペンサーに55℃の温湯20mLを吸い取り、筒先の蓋をして5分間自然放置する。5分後にディスペンサーを手で90度15往復横転し、崩壊・懸濁の状況を観察する。5分後に崩壊しない場合、さらに5分後放置後、同様の操作を行う。
散剤の場合は、55℃の温湯20mLを入れたビーカーに2.0gの散剤を入れて10分間自然放置した後、スパーテルで右20回、左20回、右20回と円を描くように撹拌し懸濁状況を観察する。
結果を表1に示す。
【0039】
試験方法2−通過性試験
得られた懸濁液をディスペンサーに吸い取り、内径2.7mmの経管栄養チューブの注入端より約2〜3mL/秒の速度で注入し、通過性を観察する。結果を表1に示す。
【0040】
試験方法3−崩壊試験
日本薬局方一般試験法崩壊試験法により、崩壊時間の測定を行った。結果を表2に示す。
表1および2に示す結果の通り、比較例1〜5のように、主に細粒を用いた錠剤では内径2.7mmの経管栄養チューブによる経管投与は困難である。その理由として、実施例1と比較例1〜5では酸化マグネシウムの粒子径が大きく異なっていることが考えられる。
【0041】
試験方法4−本発明の錠剤の崩壊懸濁及び通過性試験適用可能量の測定
(1)ディスペンサーのピストン部を抜き取り、ディスペンサー内に任意の数の錠剤を入れて、ピストンを戻し、ディスペンサーに55℃の温湯20mLを吸い取り、筒先の蓋をして、錠剤が崩壊・懸濁するまで振り混ぜる。得られた懸濁液を内径2.7mmの経管栄養チューブの注入端より約2〜3mL/秒の速度で注入し、通過性を観察した。何錠まで経管栄養チューブを閉塞させずに投与が可能か調べた。
【0042】
実施例1の錠剤は、18錠まで経管投与が可能であった。
(2)経管栄養チューブの太さを内径6.0mmに変更し、他は(1)と同様の条件で試験を行った。
【0043】
実施例1の錠剤は、24錠まで経管投与が可能であった。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである酸化マグネシウム粒子を1〜30重量%含有する水分散液よりなることを特徴とする経管栄養チューブにより投与するための制酸・緩下用水分散液。
【請求項2】
該水分散液は、下記(i)〜(iii)の要件を満足する酸化マグネシウム粒子よりなる錠剤を水に分散させて得られたものである請求項1記載の制酸・緩下用水分散液。
(i)酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである。
(ii)錠剤は、酸化マグネシウム粒子の含有割合が88〜97重量%である。
(iii)水中における崩壊時間が10秒以下である。
【請求項3】
経管投与するための経管栄養チューブの内径が2.7〜4.0mmである請求項1記載の制酸・緩下用水分散液。
【請求項4】
該錠剤は、結合剤として、結晶セルロースまたはデンプンを1〜10重量%含有する請求項2記載の制酸・緩下用水分散液。
【請求項5】
該錠剤は、崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシスターチナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも一種を1〜3.5重量%含有する請求項2記載の制酸・緩下用水分散液。
【請求項6】
レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである酸化マグネシウム粒子を1〜30重量%含有する水分散液をヒトに経管栄養チューブにより投与することを特徴とする制酸・緩下用水分散液の投与方法。
【請求項7】
該水分散液は、下記(i)〜(iii)の要件を満足する酸化マグネシウム粒子よりなる錠剤を水に分散させて得られたものである請求項6記載の制酸・緩下用水分散液の投与方法。
(i)酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである。
(ii)錠剤は、酸化マグネシウム粒子の含有割合が88〜97重量%である。
(iii)水中における崩壊時間が10秒以下である。
【請求項8】
経管投与するための経管栄養チューブの内径が2.7〜4.0mmである請求項6記載の制酸・緩下用水分散液の投与方法。
【請求項9】
該錠剤は、結合剤として、結晶セルロースまたはデンプンを1〜10重量%含有する請求項7記載の制酸・緩下用水分散液の投与方法。
【請求項10】
該錠剤は、崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシスターチナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも一種を1〜3.5重量%含有する請求項7記載の制酸・緩下用水分散液の投与方法。
【請求項11】
水に分散した水分散液として経管栄養チューブにより投与するための酸化マグネシウム粒子を含有する制酸・緩下用錠剤であって、該錠剤は下記(i)〜(iii)の要件を満足することを特徴とする錠剤。
(i)酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmである。
(ii)錠剤は、酸化マグネシウム粒子の含有割合が88〜97重量%である。
(iii)水中における崩壊時間が10秒以下である。
【請求項12】
該錠剤は、結合剤として、結晶セルロースまたはデンプンを1〜10重量%含有する請求項11記載の錠剤。
【請求項13】
該錠剤は、崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシスターチナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも一種を1〜3.5重量%含有する請求項11記載の錠剤。


【公開番号】特開2006−22060(P2006−22060A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202726(P2004−202726)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】