説明

制酸剤として用いられる混合金属コンパウンド

本発明は胃酸の中和又は緩衝作用を有する医薬の製造における混合金属コンパウンドの使用を提供し、ここで、混合金属コンパウンドは、鉄(III)、及びアルミニウムから選択される少なくとも一つの三価の金属、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、(A)混合金属コンパウンドは式(I):MII1−aIIIn−.zHO(I)で表され、ここでMIIは少なくとも一つが二価の金属であり;MIIIは少なくとも一つが三価の金属であり;An−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;2+a=2b+Σcn、Σcn<0.9a、及びzは2以下であり、及び/又は、(B)混合金属コンパウンドは、(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤を含む顆粒状物質の形態で提供されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制酸剤として用いられるコンパウンドの使用に関する。さらに胃酸が有害に作用する状態又は疾患、例えば、消化性潰瘍、消化不良、胸やけ、胃酸過多又は胃酸の逆流の治療のために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
胃における二つの主な分泌物は、塩酸及びペプシン(プロテアーゼ)であり、いずれもタンパク消化に関わる。塩酸は食品中の粒子状の物質の溶解に関わり、ペプシンの活性の至適pHを提供する。しばしば起こる、胃酸及びペプシンレベルの上昇は胃粘膜を悪化させ、結果として粘膜細胞を消化し、消化性潰瘍を引き起こす。消化性潰瘍は、(胃潰瘍においては)胃又は(十二指腸潰瘍においては)十二指腸の粘膜が胃の酸に曝されることにより起こる粘膜の穿孔である。胃腸の塩酸が、潰瘍の神経に達すると中枢神経系への痛みのシグナルが伝わる。胃酸は、食道の潰瘍も引き起こすことがある。
【0003】
制酸剤は、中和反応、すなわち、胃酸を緩衝し、pHを上げて胃の酸性度を下げることにより消化性潰瘍の症状を緩和する。制酸剤は、胸やけ(胃からの塩酸が食道に入ることで起こる)も緩和する。ヒドロタルサイト(MgAl)制酸剤もプレイルらによって報告され、粘膜の保護ペプシンの活動を抑制し、胃粘液ゲルと似た性質を有することにより粘膜を保護することができると考えられている。
【0004】
制酸剤の例としては、Al(OH)、Mg(OH)、炭酸カルシウム及びMgAlヒドロタルサイトがある。制酸剤は、効果的ではあるが新たな問題も生じている。
【0005】
ある制酸剤は、pHが7よりも上昇することにより胃の中でタンパク質消化を停止させ、ペプシンを不可逆的に不活性化することが知られている。消化されなかったタンパク質は、消化管において、ガス、膨満及び便秘を含む多くの問題を引き起こす。食物が存在すると、胃のpH及びガストリンのレベルを上昇させ、ペプシンを不可逆的に不活性化する。結果的に食物とある種の制酸剤の組合せでは、胃が空になりpHが下がる前に、胃のpHが7を突然超え、pHが再び下がる。胃潰瘍の治療に用いられる化合物は、効果的な酸緩衝剤であるだけでなく、胃のpHの突然の変化を回避できるものであるべきである。さらに、制酸剤はペプシンを抑制しなければならないが、不可逆的に不活性化するほどであってはならない。
【0006】
制酸剤のさらなる問題は、胃には「生物学的スイッチ」又はフィードバック機構が存在するために「胃酸リバウンド効果」を引き起こすことがある点である。例えば、胃のpHが高くなるとホルモンであるガストリンが刺激され、酸分泌を促進し、胃酸濃度が上昇する。結果的にこれがポジティブフィードバックループにつながり、制酸剤の使用へとつながる。これは制酸剤の最も速い作用であり、突然pHが上がることと関係がある(通常pH5より上)。
【0007】
酸の過剰(通常、pH3より下)は、潰瘍を悪化させることも知られている。痛みは酸が潰瘍の、さらされた神経に触れると起こる。結果的に、食物なしの場合、制酸剤は胃のpHを最適な範囲である3−4.5の間に緩衝し、食物とともにであってもpH7を超えないように緩衝する。
【0008】
特定の制酸剤も問題も引き起こすことが知られている。
−水酸化マグネシウムは緩下作用を有することが知られており、かなりの量のマグネシウムを分泌し、胃の高pH値への突然の変化につながる(例えば、pH7より上)。
−高濃度の炭酸を含む制酸剤の通常の使用により、アルカローシスを引き起こすことがある(通常、炭酸ベースの制酸剤、例えば炭酸カルシウム、により引き起こされる)。
−MgFe又はMgAlヒドロタルサイトは炭酸を含んでいるが、通常、CaCO(600g、CO/kg)又はMgCO(710g、CO/kg)よりも低い濃度(<100g、CO/kg)である。
−MgAlヒドロタルサイトは、胃酸リバウンド効果を回避できると考えられており、粘膜保護作用が報告されている。しかし、アルミニウムベースの制酸剤からのAl3+の吸収が問題である。Alの蓄積は人体に有毒なレベルに達するおそれがある。
−ある種の制酸剤は、多くナトリウムを含んでおり、減塩食療法を受けている者には避けるべきである。
【0009】
ヒドロタルサイト型の素材は二重の作用を持つため好ましい。胃酸はヒドロタルサイトと陰イオン交換中和反応を起こし迅速に反応し、塩化物を生成するとの仮説がある。鉱物はさらに生理的溶液とゆっくり反応し、鉱物骨格が分解し、長期の緩衝作用を提供する。この二重作用が急性消化不良を迅速に改善し、消化不良の再発に必要となる持続的作用を発揮する。
【0010】
ヒドロタルサイトの結晶子又は粒子の表面積の増加は反応速度の増加をもたらすと考えられる。結晶子が大きくなると粒子の大きさも大きくなり、酸によって水酸化物イオンが攻撃されヒドロタルサイトが溶解するまでの時間が長期化する。また、小さな粒子はより速やかに食物を通して分散する。それゆえ緩衝能は結晶子及び粒子の大きさの両方に依存する。
【0011】
錠剤の崩壊は制酸剤を含む錠剤に重要な因子である。制酸剤は血液中に吸収されることを意図しておらず、むしろ局所的に胃腸管において作用し、無機固体製剤として投与されることが目的とされている。これらの例においては、錠剤の崩壊には、制酸剤の粒子の表面積が増加したものであることを要する。表面積の増加は、通常、錠剤をかみ砕くことにより得られる。
【0012】
MgAlヒドロタルサイトを錠剤化すると、錠剤を圧縮するため、有効表面積が減少し、酸中和能及び速度が顕著に低下する。
【0013】
結果として、今のところ、ヒドロタルサイトは、チュアブル錠剤又は液体懸濁剤としてのみ市販されている。MgAlヒドロタルサイトは、タルシッドプラスの錠剤又は液体、アルトラシト、タリダット及びアルタシドプラスの液体として市販で入手可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
チュアブル錠剤及び液体懸濁剤は胃における滞留時間は他の投与形態、例えば非チュアブル錠剤よりも短い傾向にある。制酸剤の効果は非常に大きく胃内容物排泄速度に依存する。空腹で服用すると、制酸剤で中和できるのは30−60分間しかない。これに対して、食物と一緒に摂取した場合、2−3時間も保護作用が持続する。しかし、いくつかの制酸剤は、食物の存在下では、制酸機能と競合する薬物−食物相互作用のために、食物と一緒では働かない。
【0015】
ヒドロタルサイトの散剤は、通常、特に細かい粒子の散剤の場合に流動性は小さい;しかし、より粗い粒子の方が制酸作用を阻害した(表1参照)。流動性の小さい散剤は、粘着性があり、ハウスナー比が高く、中程度から高度の壁面摩擦角をもち、圧粉する場合に顕著なせん断強さをもっていることが多い。流動性が小さいという性質により、特に工業スケールで、ヒドロタルサイト素材を高用量の投与ユニットとして要する場合に、カプセルの充填や錠剤の製造に困難が生じる。
【0016】
制酸剤のチュアブル錠剤はチョークのようで、苦く、金属の味といった不快な味がし、これらの素材の性質のために砂をかむような、乾燥した、渋い味がする。チュアブル錠は歯科的な問題も引き起こし、活性成分を味マスクすることはより困難となる。さらに、患者は錠剤を一様には噛まないため制酸剤の効果に多様性が出る。液体懸濁剤は保存及び簡便さにおいて不利であり、持ち運びにくい。加えて、活性成分のこれらの投与形態では急速に送達がなされるが、代わりに胃酸リバウンド効果を引き起こしやすい。
【0017】
口の中で溶解せず胃で溶解する制酸剤の錠剤をコーティングすることが提案された。しかし、多くのコーティングは小腸で溶解するが胃ではなく、それゆえ制酸剤を誤った部位に送達する。更に、胃で溶解するコーティングが用いられたとしても、胃内容の排出に伴い制酸剤が排出される前に、胃酸中和に十分な時間があるといえるほど溶解速度は速くない。一方、溶解が速すぎた場合には、初期の胃酸pHが急速に上がりすぎ、いわゆる酸のリバウンド効果を引き起こす。
【0018】
受容体アンタゴニスト又はプロトンポンプ阻害剤は、数時間以上にわたり胃における酸の生産を阻害することができる。しかし、これらの薬物は、血液を介して全身に行き渡るので、より重大な副作用が起こりうるというリスクがある。一般的には、H受容体又はプロトンポンプ阻害剤アンタゴニストは、より副作用の低い制酸剤に変わることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
それゆえ、本発明の一つ目の態様としては、胃酸の中和又は緩衝作用を有する医薬の製造において混合金属コンパウンドの使用を提供することであり、ここで混合金属コンパウンドは、鉄(III)、及びアルミニウムから選択される少なくとも一つの三価の金属であり、及び、
マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される少なくとも一つの二価の金属であるものを含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される。
【0020】
本発明の二つ目の態様としては、胃酸が有害に作用する状態又は疾患の治療に用いる医薬の製造において混合金属コンパウンドの使用を提供することであり、ここで混合金属コンパウンドは、鉄(III)及びアルミニウムの中から選択される少なくとも一つの三価の金属であり、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムの中から少なくとも一つの二価の金属であるものを含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される。
【0021】
本発明の三つ目の態様としては、胃酸の中和又は緩衝のための混合金属コンパウンドの使用を提供することであり、ここで混合金属コンパウンドは、鉄(III)及びアルミニウムの中から選択される少なくとも一つの三価の金属を含み、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムの中から少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される。
【0022】
本発明の四つ目の態様としては、胃酸が有害に作用する病態又は疾患の治療に使用するための混合金属コンパウンドを提供することであり、ここで混合金属コンパウンドは、鉄(III)及びアルミニウムの中から選択される少なくとも一つの三価の金属を含み、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムの中から少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される。
【0023】
本明細書中「顆粒」とは、本発明における「顆粒状物質」と等価である。
【0024】
驚いたことに、本発明における混合金属コンパウンドは以下の一つ又はそれ以上の性質を持つ制酸剤として提供されることがわかった。
−非チュアブル錠の形態
−高活性な構成成分
−アルミニウムの放出をしない又は放出を減少させること
−マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、又は炭酸イオンの放出を減少させること
−胃のpHを過剰に酸性又はアルカリ性にせずに維持すること(至適pHであるpH3−4.5に緩衝する)
−胃酸リバウンド効果を起こさない又は減少させること
−食物と又は食物なしに摂取できること
−食物の消化を停止しないこと
−粘膜を保護すること
−低ナトリウム含量であること(すなわち、1錠又は10ml投与量あたり1mmolより少ないナトリウム含量であること)
−急速に胃から消失しないこと
−迅速な作用の発現、高い緩衝能及び長い作用持続
−より小さい錠剤の供給
【0025】
本発明の顆粒の使用における水分含量は顆粒中の非−化学結合した水の量として表される。それゆえ、この水の非−化学結合は、化学結合した水を除く。化学結合した水は構造内水分子とも言う。
【0026】
非−化学結合した水の含量は赤外線バランスによって決定される。水分含量決定は、ザトリウスMA30電子水分計を75℃にセットし、赤外線バランスを自動終点決定によって測定した。ザトリウス電子水分計は、105℃のオーブンで一定重量になるまで乾燥する。非−化学結合した水が蒸発し、顆粒の重量パーセントとして計算される。
【0027】
本発明の一つの目的は、本明細書に記載した顆粒状物質を含んだ耐水カプセルを含む顆粒状物質が経口投与のユニットとして提供されることである。
【0028】
本発明の一つの目的は、本明細書に記載した顆粒状物質を圧粉した錠剤を含む顆粒状物質が経口投与のユニットとして提供されることである。好ましくは、錠剤は耐水コーティングで覆われていることである。
【0029】
顆粒状物質の好ましい製剤方法、及び更なる好ましい投与ユニットはWO2007088343に記載されている。
【0030】
本発明において使用される耐水カプセルとしては、硬ゼラチンカプセルが適している。耐水カプセルとする際、耐水とは、40℃、相対湿度75%中で4週間保存した場合に、投与ユニット(すなわち、発明の最初の目的の顆粒を含んでいるカプセル)の水の取り込みの変化が、湿度の変化の10%よりも小さく、より好ましくは5%よりも小さいことである。そのようなカプセル剤は、顆粒の保存において水分含量を安定化するのに役立つ。
【0031】
本発明の錠剤の使用においては、保存している錠剤に水分が錠剤に入り込むこと又は錠剤からの水分の喪失を防ぐため、好ましくは耐水コーティングがされていることである。しかし、錠剤の耐水コーティングは、患者の消化管において混合金属コンパウンドが効果を発揮するよう、服用後適切な時間の後、崩壊しなければならない。耐水とは、4週間40℃、相対湿度75%で保存した場合、コーティングした錠剤の重量に対し、水分含量の変化が好ましくは10%よりも低く、より好ましくは5%よりも低いことである。好ましくは、耐水とは、12ヶ月25℃、相対湿度65%で保存した場合、コーティングした錠剤の重量に対し、水分含量の変化が10%よりも低く、より好ましくは5%よりも低いことである。更に好ましくは、耐水とは、12ヶ月30℃、相対湿度65%で保存した場合、コーティングした錠剤の重量に対し、水分含量の変化が10%よりも低く、より好ましくは5%よりも低いことである。好ましくは、耐水とは、6ヶ月40℃、相対湿度75%で保存した場合、コーティングした錠剤の重量に対し、水分含量の変化が10%よりも低く、より好ましくは5%よりも低いことである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は食物及び制酸剤の存在下における胃酸のpHの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
議論したとおり、本発明は胃酸の中和又は緩衝作用を有する医薬の製造における混合金属コンパウンドの使用を提供し、ここで、混合金属コンパウンドは、鉄(III)、及びアルミニウムから選択される少なくとも一つの三価の金属、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される。
それぞれのアニオンのcの値は、式2+a=2b+Σcnを満たすような電荷を中和するのに必要な値である。
【0034】
一つの好ましい態様として、混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO(I)
であり、ここで、MIIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であることである。
【0035】
式(I)のコンパウンドは、通常、層状複水酸化物、ヒドロタルサイト又はパイロオーライト構造を含む出発物質を、200℃ないし600℃で加熱することで得られるが、好ましくは、加熱は250℃ないし500℃で行われることである。
【0036】
式(I)のコンパウンドは、通常、層状複水酸化物構造を含む出発物質を、200℃ないし600℃で加熱することで得られるが、好ましくは、加熱は250℃ないし500℃で行われることである。
【0037】
出発物質は、好ましくは式(II):
II1−xIII(OH)n−.mHO (II)
のコンパウンドであり、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
x=Σny
0<x≦0.4、
0<y≦1、及び
0<m≦10
である。
【0038】
式(I)において、zは2以下であることが適切であるが、より好ましくは1.8以下であることであり、更に好ましくは1.5以下であることである。zは1以下でもよい。
【0039】
式(I)において、aは、0.2ないし0.4である。式(I)においては、aは<0.3である。aは0.1ないし0.4でもよく、好ましくは0.2ないし0.45である。好ましくはaは0.1ないし0.34であり、好ましくは0.2ないし0.34である。
【0040】
式(I)において、bは、1.5以下であることが適切であるが、好ましくは1.2以下であることである。bは、好ましくは0.2よりも大きいことであり、より好ましくは0.4よりも大きいことであり、更に好ましくは0.6よりも大きいことであり、最も好ましくは、0.9よりも大きいことである。
【0041】
aが≦0.3である場合、Σcn<0.7aであることが好ましい。それゆえ、式(I)においては、0.03a<Σcn<0.7aは、一つの態様である。式(I)のさらなる態様としては、0.03a<Σcn<0.5aがある。
【0042】
それぞれのアニオンのcの値は、式2+a=2b+Σcnの電荷を中和するのに必要な値である。
【0043】
一つの好ましい態様としては、混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤を含むことである。それぞれのアニオンのcの値は、式2+a=2b+Σcnを満たすような電荷を中和するのに必要な値である。
【0044】
顆粒状物質の形態で提供される混合金属コンパウンドは、好ましくは式(III):
II1−xIII(OH)n−.mHO (III)
のコンパウンドであり、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.4、
0<y≦1、及び
0≦m≦10である。
【0045】
一つの好ましい態様としては、0<x≦0.4である。一つの好ましい態様としては、0.1<x≦0.4であり、例えば、0.2<x≦0.4、又は0.3<x≦0.4、0.4であることである。x=[MIII]/([MII]+[MIII])において、ここで[MII]は式Iのコンパウンドに対するMIIのモル数の値であり、[MIII]は式Iのコンパウンドに対するMIIIのモル数の値であることは理解できるであろう。
【0046】
一つの好ましい態様としては、0<y≦1である。好ましくは、0<y≦0.8である。好ましくは、0<y≦0.6である。好ましくは、0<y≦0.4である。好ましくは、0.05<y≦0.3である。好ましくは、0.05<y≦0.2である。好ましくは、0.1<y≦0.2である。好ましくは、0.15<y≦0.2である。
【0047】
一つの好ましい態様としては、0≦m≦10である。好ましくは、0≦m≦8である。好ましくは、0≦m≦6である。好ましくは、0≦m≦4である。好ましくは、0≦m≦2である。好ましくは、0.1≦m≦2である。好ましくは、0.5≦m≦2である。好ましくは、1≦m≦2である。好ましくは、1≦m≦1.5である。好ましくは、1≦m≦1.4である。好ましくは、1.2≦m≦1.4である。好ましくは、mは約1.4である。
【0048】
好ましくは、0<x≦0.4、0<y≦1及び0≦m≦10である。
【0049】
それぞれの好ましいx、y及びmの値を組み合わせることが好ましい。それゆえ、以下の表に挙げられたそれぞれの値のあらゆる組み合わせが特にここで開示され、本発明として提供される。
【表1】

【0050】
上述の式(III)において、Aが1より多くのアニオンを表す場合、それぞれの価数(n)は変化する。「Σny」は、それぞれのアニオンのモル数にそれぞれの価数をかけたものの合計である。
【0051】
結晶子の大きさ
【0052】
式(II)又は(III)の散剤の結晶子の大きさは粉末X線結晶回折(XRD)の半値巾で測定し、シェラーの式と呼ばれる式を用いて計算した(装置による広がりの因子は考慮しなかった)。半値巾とは、結晶子の平均の大きさの関数である。
【0053】
式(II)又は(III)の結晶子の大きさは、好ましくは200Åよりも小さいこと、より好ましくは175Åよりも小さいこと、さらに好ましくは150Åよりも小さいこと、最も好ましくは100Åよりも小さいことである。
【0054】
通常、小さい結晶子は、結晶をそれ以上大きく成長させないことによって得られる。これは、通常、熱水による成長過程を行わないことにより行われる(例えば、反応懸濁液を熱するか長時間放置するか、いずれかにより行われる)。
【0055】
好ましくは式(I)のコンパウンドは、式(II)のコンパウンドの成長させなかった形態ものであることである。
【0056】
顆粒
【0057】
本発明において使用される顆粒は、混合金属コンパウンドに対する重量として少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは70%、最も好ましくは少なくとも75%含まれていることである。
【0058】
本発明において顆粒は、非−化学結合した水を含まない混合金属コンパウンドに対し、3ないし12重量%であり、好ましくは5ないし10重量%であることである。
【0059】
顆粒の残りは、混合金属コンパウンドの薬学的に許容される担体を含んでもよく、主として、賦形剤又は賦形剤の混合物であり、ここで賦形剤とはそれにより顆粒のバランスを保つものである。それゆえ、顆粒は、47重量%以下の賦形剤を含んでいる。好ましくは、顆粒は5ないし47重量%の賦形剤を含むことであり、より好ましくは、10ないし47重量%の賦形剤を含むこと、更に好ましくは、15ないし47重量%の賦形剤を含むことである。
【0060】
混合金属コンパウンドは、顆粒状物質の形態で提供される。理想的には、結晶水は15重量%よりも少ないことである。好ましくは、結晶水は10重量%よりも少ないことである。
【0061】
顆粒の大きさ
【0062】
篩によって測定し、顆粒の重量に対して少なくとも90%が1180μmより小さい直径を持つことが適切である。
【0063】
好ましくは、篩によって測定し、顆粒の重量に対して少なくとも50%の顆粒が710μmより小さい直径を持つことである。
【0064】
より好ましくは、少なくとも50重量%の顆粒の直径が106ないし1180μmであり、より好ましくは、106ないし500μmであることである。
【0065】
更に好ましくは、少なくとも70重量%の顆粒が106ないし1180μmであり、より好ましくは、106ないし500μmであることである。
【0066】
好ましくは、顆粒の平均粒径は200ないし400μmであることである。
【0067】
大きい顆粒はpH緩衝作用が遅い(表1)。直径106μmよりも小さい粒子の割合が多すぎると、顆粒の流動性が乏しくなるという問題に直面する。好ましくは、少なくとも50重量%の顆粒が篩による測定で、106μmよりも大きい直径を有することである。より好ましくは少なくとも80重量%である。
【0068】
顆粒の内容物
【0069】
顆粒に含まれる適切な賦形剤は、標準的な固体希釈剤、例えば、乳糖、デンプン又はタルクだけでなく動物性又は植物性タンパク質から得られた物質、例えば、ゼラチン、デキストリン及びダイズ、小麦及びオオバコの種子のタンパク質;ゴム、例えば、アカシア、グアー、寒天、及びキサンタン;多糖類;アルギン酸塩;カルボキシメチルセルロース;カラギナン;デキストラン;ペクチン;合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;ポリペプチド/タンパク質又は多糖複合体、例えば、ゼラチン−アカシア複合体;糖類、例えば、マンニトール、デキストロース、乳糖、ガラクトース及びトレハロース;環状糖類、例えば、シクロデキストリン;無機塩類、例えば、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び珪酸アルミニウム;2ないし12の炭素を有するアミノ酸、例えば、グリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン及びL−フェニルアラニンがある。
【0070】
賦形剤という用語は、ここでは補助的な成分、例えば、錠剤の構造化剤(structurant)又は接着剤、崩壊剤又は膨潤剤が含まれる。
【0071】
錠剤の適切な構造化剤には、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルトデクトリン(kaltodectrin)、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルギン酸ナトリウム及び水素添加植物油が含まれる。
【0072】
適切な崩壊剤には、架橋された崩壊剤が含まれる。例えば、適切な崩壊剤には、架橋されたカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋されたヒドロキシプロピルセルロース、高分子量ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメチルメタクリル酸、架橋されたポリビニルピロリドン(PVP)及び高分子量ポリビニルアルコールが含まれる。
【0073】
架橋されたポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られている。例えば、BASF社のコリドン CL−M(登録商標))は、本発明の錠剤の使用に特に好ましい賦形剤である。本発明の錠剤の顆粒として適切なのは、1ないし15重量%の架橋されたポリビニルピロリドンであり、好ましくは、架橋されたポリビニルピロリドンは1ないし10重量%、より好ましくは2ないし8重量%の間にあることである。好ましくは、架橋されたポリビニルピロリドンは、顆粒化される前のd50平均粒径が50μmよりも小さいことである(すなわち、いわゆるB型架橋されたPVP)。そのような素材はミクロ化したクロスポビドンとしても知られている。この段階の架橋されたポリビニルピロリドンにおいて、錠剤はよい崩壊性を有するが、他のいくつかの賦形剤に比べてpHの緩衝作用が小さいことがわかった。好ましい架橋されたポリビニルピロリドンの大きさは、錠剤の崩壊として用いられた場合に、砂利のようでなくなり、堅さが減少することである。
【0074】
錠剤中の顆粒において使用される他の好ましい賦形剤には、α化デンプンがある(予備α化デンプンとしても知られる)。好ましくは、顆粒中に5ないし20重量%のα化デンプンを含み、より好ましくは10ないし20%、更に好ましくは12ないし18重量%を含むことである。この段階のα化デンプンは、使用されている錠剤の崩壊を妨げることなく持続性及び粘着性が改善する。α化デンプンは、適切に完全にα化され、水分を1ないし15重量%有し、平均粒径は100ないし250μmである。適切な素材としては、ライカタブ(登録商標)−完全にα化されたロケッテ社のトウモロコシデンプンがある。
【0075】
α化デンプン及びクロスポビドンを含む賦形剤の組み合わせは、本発明の顆粒から様々な形状、良好で均一な顆粒及び良好な崩壊特性を有する、確実に圧縮された錠剤を供給することができるので、特に好ましい。
【0076】
顆粒は保存剤、湿潤剤、抗酸化剤、界面活性剤、発泡剤、着色剤、香味料、pH調節剤、甘味料又は矯味剤を含んでいてもよい。適切な着色剤には、赤、黒及び黄色、酸化鉄及びFD&C染料、例えば、エリス&エベラルド社の青色2号及び赤色40号がある。適切な香味料には、ミント、ラズベリー、リコリス、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キャラメル、バニラ、サクランボ及びブドウ風味及びこれらの組み合わせがある。適切なpH調節剤には、炭酸水素ナトリウム(例えば、炭酸水素ナトリウム)、クエン酸、酒石酸、塩酸及びマレイン酸がある。適切な甘味料には、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチンがある。適切な矯味剤には、炭酸水素ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包摂化合物及び吸着剤がある。適切な湿潤剤には、ラウリル硫酸ナトリウム及びドクサートナトリウムがある。適切な発泡剤には、炭酸ナトリウム及びクエン酸の混合物がある。
【0077】
顆粒化
【0078】
顆粒化は以下のステップ:
i)混合金属コンパウンドを一つ以上の賦形剤とともに混合し、均一な混合物を得る、
ii)適切な液体を均一な混合物に加え、造粒機で混合して湿潤顆粒を得る、
iii)任意に湿潤顆粒をスクリーンにかけ、スクリーンの大きさよりも大きい顆粒を取り除く、
iv)湿潤顆粒を乾燥させて乾燥顆粒を得る、
v)乾燥顆粒を製粉化する及び/又は篩にかける、
を含む工程により行われる。
【0079】
適切な顆粒化は、湿潤顆粒によって、以下のステップ:
i)混合金属コンパウンドを適切な賦形剤ともに混合し、均一な混合物を得る、
ii)適切な液体を均一な混合物に加え、造粒機で混合して湿潤顆粒を得る、
iii)任意に湿潤顆粒をスクリーンにかけ、スクリーンの大きさよりも大きい顆粒を取り除いてもよい、
iv)顆粒を乾燥する、
v)製粉化する及び篩にかける、
を含む工程により行われる。
【0080】
顆粒化に適切な液体は、水、エタノール及びその混合物である。水が、顆粒化の液体として好ましい。
【0081】
顆粒は、前述した方法により、投与ユニットとしての錠剤形成に用いる前、又はカプセル剤に封入する前に、望む湿潤度まで乾燥する。
【0082】
滑沢剤
【0083】
顆粒から錠剤を打錠する間に滑沢剤又は流動促進剤が顆粒の周り及び間に分散するようにするため、顆粒を構成成分として錠剤化する前に、顆粒を滑沢剤又は流動促進剤と混合しておくことが好ましい。
【0084】
通常、必要とされる最適な滑沢剤の量は、滑沢剤の粒子の大きさ及び顆粒の有効表面積の大きさによる。適切な滑沢剤には、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウム及びそれらの混合物が含まれる。滑沢剤は、顆粒の細かく分断された形態で加えられる。それは通常、直径150μmよりも小さいものが100%であることであり、好ましくは38μmより小さいものが98%であり、最も好ましくは40μmよりも大きい粒子が存在しないことである(通常、篩により確認する)。滑沢剤の表面積は、通常、1−10m/gであり、好ましくは6−10m/gであることである。滑沢剤は、顆粒の0.1ないし1.0%で加えられるのが適切であり、好ましくは0.1ないし0.4%であり、より好ましくは、顆粒の重量の0.2ないし0.3%であることである。低い割合の場合には、打錠機に粘着したり打錠機を詰まらせたりするのに対し、高い割合の場合には、錠剤の崩壊を妨げる。滑沢剤には脂肪酸塩が用いられ、例えば、ステアリン酸カルシウム及び/又はマグネシウムがある。好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選択されるものがある。いくつかの滑沢剤、例えば脂肪酸は、錠剤のコーティング層に穴が開いたり、完全性が失われることがある。これは、コーティング層の乾燥中に滑沢剤が部分的に溶けていることから起こると考えられている。それゆえ、滑沢剤は融点が55℃よりも高いことが望ましい。
【0085】
錠剤
【0086】
本発明における使用のための錠剤は、顆粒を高圧下で打錠することができ、それにより包装及び分配中に扱うのに必要な圧砕強度をもつ錠剤を形成することができる。顆粒粉末混合物から形成された顆粒の使用により、ストレージホッパーから錠剤プレスへの流動性が改善され、続いて錠剤の加工の効率も上がる。本発明の錠剤において使用された混合金属コンパウンドは、前述したとおり、望ましい粒子の大きさでは通常、流動性に乏しい性質を持つ。本発明の錠剤は、錠剤の重量に対して50%以上の高度に混合金属コンパウンドを含むため、錠剤の形成の前に、混合金属コンパウンドを顆粒にしなければならない。細末は、ホッパー、粉箱又は金型内で固まったり「架橋」を形成しやすく、それゆえ、均一な重量又は均一な圧縮度の錠剤を得ることは容易ではない。満足のできる程度の粉末を圧縮できたとしても、空気が混入して圧縮されることもあり、排出の際に錠剤が割れてしまう。顆粒を用いることは、これらの問題を克服する。顆粒化の異なる利点としては、細末から錠剤を形成するよりもかさ密度を大きくすることができ、最終の錠剤の大きさを小さくし、患者のコンプライアンスを改善する可能性がある。
【0087】
本発明における錠剤の使用は円形であってもよいが、好ましくは一般に丸薬又は魚雷型(楕円の両凸面体型の錠剤としても知られている)の錠剤、すなわち、より大きな投与量を飲み込むのを補助するために細長い形を持つ。250mgの活性物質を含む小さい用量の錠剤は、通常は円形の錠剤であり、500mgの活性物質を含む大きい用量の錠剤は、通常は一般に丸薬又は魚雷型である。例えば、両端が丸い、片面が楕円形で直交する面が丸い、又は両端とも楕円形であるシリンダー型の形態がある。全体形状の一つ以上の部分が平らであるものも可能である。
【0088】
錠剤の形態に「腹巻き」のような形態がある場合、「腹巻き」の幅は2mm以上であることが好ましい。より小さい「腹巻き」では、錠剤の耐水コーティングの被覆が十分でない、又は、欠けたり、完全性が失われたりすることが知られている。
【0089】
本発明の錠剤の第二の特徴は、錠剤は好ましくは5ないし30kgfの堅さを持っているということである。ホーランドC50錠剤硬度計を用いて行った。
【0090】
耐水コーティング
【0091】
いったん顆粒から造粒されたら、耐水コーティングがされて提供されることが好ましい。
【0092】
耐水コーティングは、通常のあらゆる医薬品のコーティングプロセス及び装置を用いて行うことができる。例えば、錠剤はスプレイノズル又はガン、又は他のスプレー型又はディッピングによるコーティングパンを持つ流動床装置(例えば、「ウースター」タイプの流動床ドライヤー)(回転式、側面)、及び、スーパーセル錠剤コーティング装置(ニロ・ファーマ・システムズ社)を含む、より新しい技術によってコーティングされる。装置のバリエーションは、ノズルの大きさ、形、位置、及び空気の入口及び出口、空気の流れのパターン及び装備の程度による。熱風はスプレー化された錠剤を乾燥させるために用いられるが、これは継続的なスプレーを可能とし、同時に錠剤が乾燥されることを意味する。不連続又は断続的なスプレーも用いられるが、一般に長いコーティングサイクルを要する。ノズルの数及び位置は、コーティングの操作によって様々であり、ノズルは、好ましくは、流動床に垂直に、又はほとんど垂直に置かれることが好ましいが、必要であれば異なる向きであってもよい。コーティングパンは、複数の操作速度から選択された速度で回転していてもよい。その錠剤のコーティング組成物に適用できるあらゆる適切なシステムを用いうる。あらゆる錠剤がコーティングに適している。用語「錠剤」は、錠剤、ペレット又は丸薬を含む。好ましくは、通常、錠剤は効果的にコーティングされるのに、いくつかの錠剤の動きが生じるが、その際物理的及び化学的に十分に安定な形態にあることである。コーティングシステムとしては、例えば流動床において、例えば流動床ドライヤー又は側面に通気口のあるコーティングパン、それらの組み合わせ等である。錠剤は、例えば、表面を形成するためのサブコートなしに直接コーティングしてもよい。サブコート又はトップコートを用いてもよい。必要であれば、同じ又は類似のコーティング適用システムを最初又は二番目又はそれ以降のコーティングに用いてもよい。コーティングの組成物は物理的性質、例えば、溶解物質は溶解させ、不溶性物質は分散させて準備する。内容物の性質に基づいて混合のタイプも異なる。溶解性の素材に対しては低いせん断ミキサーが用いられ、不溶性の素材に対しては高いせん断ミキサーが用いられる。通常、コーティング製剤は、二つの部分、コロイドポリマー懸濁液、及び色素懸濁液又は溶液からなる(例えば、オキシドレッド又はキノリンイエロー)。これらは、別々に準備され、使用の前に混合される。
【0093】
コーティング剤が幅広く用いられる。例えば、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、ポリエチレングリコール、スチレン及びアクリレートの共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の共重合体、メタクリル酸及びエチルアクリレートの共重合体、メタクリレート及び三級アミノアルキルメタクリレートの共重合体、エチルアクリレートメチルメタクリレート及び4級アミノアルキルメタクリレートの共重合体、及びこれらの2つ以上の組み合わせである。好ましくは、メタクリル酸塩の共重合体、例えば、ブチル化メタクリレート共重合体(ユードラジットEPOとして、市販で入手可能。)。
【0094】
好ましくは、コーティング素材は、コーティングされた錠剤の0.05ないし10%の重量であり、好ましくは0.5ないし7%であることである。好ましくは、コーティング素材は、赤色酸化鉄(Fe)(乾燥重量に対し、コーティングされた1%以上、好ましくは2%以上)であり、コーティング素材に対して分散され、美しい外観の錠剤のコーティング層の均一な色彩を与える。
【0095】
保存時における錠剤の核への湿気による分解又は侵入から保護することに加え、耐水コーティング層は、口中で急速に崩壊することを防ぎ、錠剤が胃に達するまで崩壊を防ぐ役割もする。この目的も考慮すると、コーティング素材は、例えば、口中のようなアルカリ性溶液中では低溶解性で、中性又は酸性溶液中ではより溶解性が向上することが好ましい。好ましいコーティングポリマーは、メタクリレート共重合体、特に、ブチル化されたメタクリレート共重合体(ユードラジットEPOとして市販されている)である。好ましくは、コーティング層は、コーティングポリマー中、重量にして、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%を占めることである。
【0096】
コーティング錠の、水分による分解又は水分の取り込みは、顆粒中の非−化学結合した水の含量を測定したのと同様の上述した適切な方法で測定した。一連の新たに製造した錠剤は、上述したとおり、非−化学結合した水の含量の測定のために製造直後に行ったものもあれば、その他上述のように保存後に測定したものもある。
【0097】
カプセル剤
【0098】
本発明の二つめの態様の使用に適切なカプセル剤は、硬質ゼラチンカプセル剤であるが、他の適切なカプセルフィルムも使用できる。
【0099】
投与ユニットの使用
【0100】
0.1ないし500、好ましくは、1ないし200mg/kgで患者の体重に応じて混合金属コンパウンドを、好ましくは、望ましい結果を得るために毎日投与することである。しかし、患者の体重、患者の動物種及び薬物への個々の反応性又は製剤の種類又は時間又は薬物の適用される時間の間隔により、適宜上述した範囲と異なる用量を適用することが必要となる。特定の場合には、上述した最小用量よりも少なくても十分な効果がある場合もあり、一方その他の場合には、最大用量を超えることもある。大用量になると、複数の小用量の単回投与に分けることが望ましい。究極的には、投与量は指導医の決定に任せられるが、自己管理も重要である。食事前、1時間以内における投与が適切である。又は、食事とともに又は食事の後に投与してもよい。
【0101】
成人への投与のための錠剤は、通常本発明の、1mgないし5g、好ましくは、10mgないし2g、より好ましくは100mgないし1g、例えば、150mgないし750mg、200mgないし750mg、250mgないし750mgの混合金属コンパウンドが含まれている。
【0102】
好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも100mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも120mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも150mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも200mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも250mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、少なくとも300mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、500mgの混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、750mg未満であることであり、より好ましくは、700mg未満であることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、200mg(±20mg)の混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、250mg(±20mg)の混合金属コンパウンドを含んでいることである。好ましくは、本発明の投与ユニットは、300mg(±20mg)の混合金属コンパウンドを含んでいることである。投与ユニットが錠剤の場合、好ましい投与ユニットはコーティングを含んでいてもよい。
【0103】
錠剤は、容器にまとめて入っている、又は箔で裏打ちされたブリスター包装等で包装されており、例えば、患者への指導のために患者にそれぞれの投与分に、その週のうちの曜日の印が付けられていることである。
【0104】
金属及びアニオン
【0105】
上述したとおり、少なくとも一つの三価の金属が鉄(III)及びアルミニウムから選択され、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される。
【0106】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム、鉄、亜鉛、及びカルシウムから選択されることである。
【0107】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属が鉄、亜鉛及びカルシウムから選択されることである。
【0108】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム、亜鉛、及び、カルシウムから選択されることである。
【0109】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム、鉄、及びカルシウムから選択されることである。
【0110】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム、鉄、及び、亜鉛から選択されることである。
【0111】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム及びカルシウムから選択されることである。
【0112】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム及び鉄から選択されることである。
【0113】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属がマグネシウム及び亜鉛から選択されることである。
【0114】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属が鉄及び亜鉛から選択されることである。
【0115】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属が鉄及びカルシウムから選択されることである。
【0116】
一つの好ましい態様としては、少なくとも一つの二価の金属が亜鉛及びカルシウムから選択されることである。
【0117】
一つの好ましい態様としては、三価の金属が少なくとも鉄(III)であることである。一つの好ましい態様としては、三価の金属が鉄(III)だけであることである。
【0118】
一つの好ましい態様としては、三価の金属が少なくともマグネシウムであることである。一つの好ましい態様としては、三価の金属がマグネシウムのみであることである。
【0119】
式(I)において、aは好ましくは0.2ないし0.4である。aが0.4を超える場合、Mg(OH)層の量が低下するため、制酸剤の活性が落ちる。aが0.4を超える、又は0.2よりも小さい場合、混合金属は単金属の混合物の中に崩壊する。0.2よりも小さい場合、Mg(OH)の割合が高すぎて、緩下剤作用を起こすことが多くなる。aが0.4を超える、又は0.2よりも小さい場合、コンパウンドは至適pHであるpH3−4.5の間に緩衝されない。
【0120】
市販される水酸化マグネシウム錠は、錠剤に対する重量にして約280gマグネシウム/kgのマグネシウムを含んでいるのに対し、混合金属コンパウンド2は、錠剤に対する重量にして約136gマグネシウム/kgのマグネシウムを含んでいる。
【0121】
式(III)において、式(I)について述べたのと同様の理由で、xは0.2ないし0.4であることが好ましい。
【0122】
一つの好ましい態様としては、混合金属コンパウンドは少なくとも水酸化物イオン及び炭酸アニオンの中の一つを含んでいることである。
【0123】
式(I)、(II)及び(III)中、二価の金属及び/又はMIIは、好ましくはMg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ca(II)、La(II)及びNi(II)から選択されることである。これらの中ではMgが特に好ましい。
【0124】
式(I)、(II)及び(III)中、三価の金属及び/又はMIIIは、好ましくはMn(III)、Fe(III)、La(III)、Al(III)、Ni(III)及びCe(III)から選択されることである。ここで(II)とは、金属が二価の状態にあること、及び(III)とは、金属が三価の状態にあることを言う。
【0125】
n−は、好ましくは一つ以上の炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、オキソ酸アニオン(例えば、硝酸アニオン、硫酸アニオン)、金属複合体アニオン(例えば、ヘキサシアノ鉄酸イオン)、ポリオキソ金属酸アニオン、有機アニオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン及びそれらの混合物の中の一つ以上から選択されることが好ましい。これらの中では炭酸アニオンが、特に好ましい。
【0126】
コンパウンドは好ましくは、アルミニウム金属をコンパウンドに対する重量にして、200g/kg未満のアルミニウムを含んでいることであり、より好ましくは100g/kg未満であること、更に好ましくは50g/kg未満であることである。
【0127】
より好ましくは、低いレベルのアルミニウム、例えば、10g/kg未満、好ましくは5g/kg未満のアルミニウムしか含まれないことである。
【0128】
更に好ましくは、コンパウンドはアルミニウム(Al)非含有であることである。用語「アルミニウム非含有」に関して、用語「アルミニウム非含有」とは、1g/kg未満、より好ましくは500mg/kg未満、更に好ましくは200mg/kg未満、最も好ましくは120mg/kg未満のアルミニウム元素をコンパウンド中の重量として含むことである。
【0129】
コンパウンドは、鉄(III)及び、少なくともマグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムの中の一つを含んでいることが適切であり、より好ましくは少なくともマグネシウム、ランタニウム及びセリウムの中の一つを含んでいることであり、最も好ましくはマグネシウムを含んでいることである。
【0130】
好ましくは、100g/kg未満のカルシウムを含んでいることであり、より好ましくは50g/kg未満であり、更に好ましくは25g/kg未満のカルシウム元素をコンパウンド中の重量として含むことである。
【0131】
より好ましくは、低レベルのカルシウム、例えば、10g/kg未満、好ましくは5g/kg未満のカルシウムしか含まないことである。
【0132】
更に好ましくは、コンパウンドはカルシウム非含有であることである。用語「カルシウム非含有」に関して、用語「カルシウム非含有」とは、1g/kg未満、より好ましくは500mg/kg未満、更に好ましくは200mg/kg未満、最も好ましくは120mg/kg未満のカルシウムをコンパウンド中の重量として含むことである。
【0133】
通常、高レベルの炭酸、例えば、CaCO又はMgCOを含む通常の投与量の制酸剤は、高レベルの炭酸を供給し(それぞれ600g/kg及び710g/kg)、アルカローシスを引き起こすことがある。本混合金属コンパウンドは、100g/kg未満しか供給しない。本コンパウンド中、炭酸は、好ましくは600g/kg未満であり、より好ましくは200g/kg未満であり、更に好ましくは100g/kg未満を含むことである。コンパウンド(II)の材料は、コンパウンド(I)を加熱処理することで得られるが、通常、少量の炭酸しか含まない。
【0134】
好ましくは、コンパウンドはカルシウムを含まず、及びアルミニウムを含まないことである。
【0135】
顆粒及び最終投与ユニットを形成する他のあらゆる素材を含む最終投与ユニットも、全体として、上述の定義したアルミニウム非含有であり、及び/又は、好ましくはカルシウム非含有であることである。
【0136】
好ましくは、混合金属コンパウンドは、層状複水酸化物(LDH)といったいくつかの素材を含むことである。より好ましくは式(I)の混合金属コンパウンドは層状複水酸化物であることである。ここで、用語「層状複水酸化物」は、二つの異なる種類の金属カチオンを主層に含み、層間ドメインにアニオン種を含む合成又は天然の層状水酸化物のことを指す。このようなコンパウンドの広いファミリーは、より知られている層間ドメインにカチオン種を含有する陽イオン性粘土に対して、陰イオン性粘土とも呼ばれる。LDHは、対応する[Mg−Al]ベースの鉱物のポリタイプの一つを参照して、ヒドロタルサイト様コンパウンドとしても報告されている。
【0137】
特に好ましい混合金属コンパウンドは、少なくとも一つの炭酸イオン及び水酸化物イオンを含む。
【0138】
II及びMIIIとして特に好ましいコンパウンドは、それぞれマグネシウム及び鉄(III)である。
【0139】
混合金属コンパウンド又はコンパウンドは、例えば、WO99/15189に記載されているとおり、溶液からの共沈の後、遠沈又は濾過し、続いて、乾燥、製粉及び/又は篩という手順で製造される。続いて混合金属コンパウンドは、湿潤顆粒化プロセスの一部として、再度湿潤させ、生成した顆粒を流動床で乾燥させた。流動床における乾燥の程度は、最終錠剤に望ましい水分含量によって調節される。
【0140】
二つの共沈方法、すなわち一つは、二つ目のアルカリ溶液の添加を制御することにより、反応液のpHが一定に維持される低過飽和の方法、又はもう一つは、反応容器にすでに入っているアルカリ溶液に、混合金属溶液を加えていくことにより反応液のpHが継続的に変化する高過飽和の方法がある。混合金属コンパウンドの代わりに、M(OH)及び/又はM(OH)層といった単金属コンパウンドの形成を避けることができるため沈殿生成は、pHが一定であることが好ましい。
【0141】
混合金属コンパウンドの他の製造方法も可能である。例えば、チャオらにより報告された分離核生成及び熟成過程による方法(Zhao Y, et al.(2002) Chem Mater 14: 4286)、又は、尿素加水分解、誘導加水分解法、オキシド塩法、ゾルゲル法、電気合成、そのまま(in situ)MIIの酸化、ソフト化学法、又は細かく分割し念入りに混合した単金属塩を固体−固体反応が起こる温度まで加熱して、混合金属コンパウンドを生成させる方法がある。
【0142】
さらに、よく結晶化した層を製造するために、混合金属コンパウンドの熟成過程を促進するために、例えば、熱水、電磁波、超音波といった異なる合成後の熱処理ステップを用いたが、成長させず、小結晶子の大きさを保つためには熟成は必要ない。加えて、混合金属コンパウンドを反応媒体から分離する方法には、様々な方法が可能である。加えて、最終生成物を処理するために異なる乾燥又は製粉プロセスを用いてもよい。
【0143】
式(II)の混合金属コンパウンドは、式中zの値を減少させ、炭酸の量を減少させるために200℃より高温でか焼した。この場合、か焼の後、混合金属コンパウンドを顆粒にする前に、顆粒の望ましい非−化学結合した水の含量とするために、水を加えることが必要である。
【0144】
当該技術分野における通常の技術を有する者であれば理解できることであるが、式(I)においてzHOで示される水は非結合水の3ないし12%の部分を構成する(顆粒素材の重量に基づく)。当該技術分野における通常の技術を有するものであれば、通常の化学的手法に基づきzの値はすぐに決定できる。一旦本発明の素材が示されれば、非−化学結合した水の含量は、ここに記載する手順によりすぐに決定できる。
【0145】
混合金属コンパウンドとは、構造中に均一に分布する、少なくとも2つの異なる金属カチオンを含むコンパウンド中の原子構造を意味する。用語、混合金属コンパウンドとは、それぞれの結晶形が一つの金属カチオンのみを含む二つの結晶の塩の混合物を含まない。混合金属コンパウンドは通常、異なる単金属コンパウンドの溶液からの共沈によってでき、二つの異なる単金属塩のコンパウンドの単なる固体の物理的な混合物とは異なる。ここでは混合金属コンパウンドとは、一つのコンパウンド中に二つ以上の異なる金属種を含むコンパウンドだけでなく、同じ金属種の異なる価数の金属(例えば、鉄(II)及び鉄(III))を含むコンパウンドをも含む。
【0146】
混合金属コンパウンドは、アモルファス(非晶質)の素材を含んでいてもよい。アモルファスとは、素材が結晶相にあるが結晶子の大きさがX線結晶解析技術の検出限界よりも小さい、又は結晶相がある程度の結晶秩序を有するが、結晶の回折パターンとは異なる、及び/又は短距離秩序で真のアモルファスであるが、長距離秩序ではないものを含む。
【0147】
式(II)のコンパウンドは、好ましくは、結晶が大きく成長するのを避け、高い表面積を保ち、水酸化物イオン(OH−)の放出を促進するため、(i)スラリーの熟成は行わない(例えば、洗浄及び単離の前に、沈殿物のスラリーを加熱又は反応させない)又は(ii)熱水処理は行わない。熟成していない式(II)のコンパウンドは、好ましくは、合成後の経路において細かい粒子サイズに保たれていることである(もっとも、細かくなりすぎて流動性の問題が生じないようにすべきである)。
【0148】
式(I)又は(II)のコンパウンドの流動性を高めるため、通常大きな粒子が好ましいが、その代わりに有効表面積及び緩衝能が減少する。しかし、我々は式IIの反応液のスラリーの熟成を避け(これにより小さい結晶子の大きさを保つことで)、及び、式(I)又は(II)の粒子の大きさを大きくせず、湿潤顆粒プロセス(式(I)又は(II)を好ましい賦形剤と混合し、好ましい粒子の大きさの範囲内で顆粒化する)のみで、制酸剤の性質を保ち、錠剤化のプロセスにおける粉体に通常生じる流動性の問題を回避できることを発見した。
【0149】
さらなる態様
【0150】
本発明の一つの高度な態様は:
鉄(III)及びマグネシウムを含む混合金属コンパウンド、及びそれが顆粒状物質の形態で提供されることであり、ここで顆粒状物質は、
(i)顆粒状物質の重量をもとに、少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重量をもとに、3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重量をもとに、47重量%を超えない賦形剤の材料
を含む。
【0151】
本発明のさらなる態様は:
混合金属コンパウンドが、式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
であることであり、ここで、MIIはマグネシウムであり;
IIIは、鉄(III)であり;
n−は少なくとも一つのn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下である。
【0152】
疾患
【0153】
ここで議論したとおり、混合金属コンパウンドは、胃酸を中和又は緩衝するために用いられる。当該技術分野の通常の知識を有する者であれば、理解することができるが、そのような効果は、消化性潰瘍、胸やけ、胃酸過多、胃酸の逆流、消化不良、胃炎、ゾリンジャー・エリソン症候群又はそれらの組み合わせの予防及び治療に用いられる。本発明は、特に消化性潰瘍の予防及び治療に用いられる。
【0154】
本発明において、実施例について添付図面を参照しながら、更に詳しく述べる。
【実施例】
【0155】
コンパウンド1
水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの存在下、硫酸マグネシウム及び硫酸第二鉄の水溶液の反応により合成した。反応式は以下の通りである:
4MgSO+Fe(SO+12NaOH+XS NaCO−>MgFe(OH)12.CO.nHO+7NaSO+(XS−1)NaCOであった。過剰の(XS)炭酸ナトリウムを使用した。共沈は、WO99/15189の実施例3、方法1に示される方法、外気温下(15−25℃)、pH約10で、熟成は行わずに実施した(熟成しないとは、ここでは、さらなる結晶の成長を防ぎ、大きい表面積を維持するため、反応液のスラリーに追加の加熱処理のステップを含まないことと定義する)。生成した沈殿を濾過し、洗浄し、乾燥し、製粉し、その後、篩にかけすべての素材が106ミクロンよりも小さくなるようにした。共沈をMg:Fe=2:1の比で行い、組成式MgFe(OH)12.CO.4.6HOのコンパウンドを得た。これは、オキシド形の4MgO.Fe.CO.10.6HOとも表され、XRF(X線蛍光分光光度分析)により、MgO=28.3%(重量/重量)、Fe=28.7%であり、ここから、モル比はMg:Fe=1.9:1であることがわかった。分析による実際の分子式は、素材中に少量の硫酸が存在するため[Mg3.8Fe(OH)11.8][0.72(CO)0.16(SO).4.3HO]であった。コンパウンドの炭素含量は標準なLECO(炭素分析装置)で決定され、CO又はCOとして表される。硫酸含量は、XRFによって決定した。オキシド体の水分含量は、式HO=100%−(MgO+Fe+SO+CO)で決定された。XRDにより混合金属コンパウンドは、結晶性の乏しいヒドロタルサイト型の構造で存在する特徴を持ち、回折線の半値巾が2θ=0.67°であり、結晶子の大きさが150Åであることがわかった。非−化学結合した水の含量は、オーブンで105℃で一定の重量となるまで乾燥し、7.3%(重量/重量)であることがわかった。ナトリウム含量(NaOとして表される)が、0.05%(重量/重量)よりも少ないことがわかった。
【0156】
コンパウンド2
篩にかけられたコンパウンド1の粉末79.75%に15%アルファ化デンプン、5%ミクロ化されたクロスポビドン及び0.25%ステアリン酸マグネシウムを混合した乾燥した混合物を準備した(このステアリン酸マグネシウムは、乾燥した顆粒に加えるために別に保存しておいた)。乾燥した混合物は、顆粒混合機で混合した。粉末の混合物を、十分な水によって、流動床乾燥機で目標の5−7%(重量/重量)の湿潤度に顆粒化した。顆粒は続いて、425ミクロンの篩を通過するまで、高速ブレードミルによって製粉した。篩にかけられた顆粒は、篩にかけられた0.25%(重量/重量)ステアリン酸マグネシウム(これも0.425mmのメッシュの篩にかけられたもの)と混合され、錠剤用混合物とした(ステアリン酸マグネシウムは、これを篩にかけた直後に顆粒と混合した)。この錠剤用混合物は、double convex oblongパンチ及び型枠を用いてManesty F3 single station打錠機で、10ないし20kgFの特有の硬度となるよう打錠し、Holland C50錠剤硬度計で測定した。この錠剤は、錠剤中のMgO含量(XRFによる)から組成式MgFe(OH)12.CO.4.6HOで計算すると、活性成分を500mg含んでいたことになる。XRDにより、顆粒は、結晶しにくいヒドロタルサイト型の構造を特徴とする混合金属コンパウンドを含むことを示した。錠剤の非−化学結合した水の含量は、自動終点決定機能のあるザトリウスMA30赤外線バランス(75℃に設定)により測定し、5%(重量/重量)であることがわかった。
【0157】
コンパウンド3
粉末(コンパウンド1を106ミクロンより小さい篩にかけたもの)を、WO−A−2006/085079に従い500℃で30分熱処理した。非−化学結合した水の含量は、105℃のオーブンで一定重量になるまで乾燥し、1.1%(重量/重量)であると決定された。Fe=45%のモル比はMg:Fe=1.9:1であった。
【0158】
コンパウンド4
コンパウンド1の製造方法であるが、Mg:Feが3:1であるものを製造した。
【0159】
コンパウンド5
(106ミクロンよりも小さい篩に)かけられたものをPCT/GB2006/000452に従い500℃で30分間加熱処理した。
【0160】
コンパウンド6
水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの存在下、硫酸マグネシウム及び硫酸アルミニウム水溶液の反応により合成した。合成反応は以下の通りである:6MgSO+Al(SO.14HO+16NaOH+XS NaCO3−>[MgAl(OH)16CO.4HO]+9NaSO+(XS−1)NaCO+10HOであった。過剰量の炭酸ナトリウムを使用した。共沈は、外気温下(15−25℃)、約pH9.5−10で行った。溶液Aは金属塩からなり、及び、溶液Bは水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムからなる。溶液B中、NaOH及びNaCOのモル比は、4.3:1であった。両溶液を、蠕動ポンプを用いて45分以上かけて加えた。ここで蠕動ポンプは、溶液Aは6.9rpm及び溶液Bは5.6rpmとした。滴下速度は、pH9.5−10を保つように調節した。生成したスラリーは、熟成させなかった(熟成しないとは、スラリーを反応直後に、加熱処理等の追加の処理をせずに濾過することを言う。これにより、結晶サイズが小さく保たれる。)生成した沈殿は、濾過し、洗浄し、乾燥し、及び、106ミクロンよりも小さい粒子を得るため篩にかけた。生成物の組成は[MgAl(OH)16CO.4HO]であった。生成物はXRFでMgO=15%(重量/重量)及びAl=26%(重量/重量)、Mg:Alのモル比は、2.9:1であった。XRDにより、本コンパウンドは、ヒドロタルサイト型であることがわかった。
【0161】
コンパウンド7
コンパウンド6の粉末を顆粒化し、コンパウンド2の合成方法に従い、錠剤化した。この錠剤は、錠剤中のMgO含量(XRFによる)から組成式MgFe(OH)16.CO.4HOで計算すると、活性成分を500mg含んでいたことになる。
【0162】
コンパウンド8
コンパウンド2の製造方法に従い、しかしコーティングは以下の通りに行った。錠剤のコーティングは、熱風スプレーから供給される熱風を有する、300−400錠の核を設置できる回転バスケットで手動のスプレーガンを用いて行った。コーティング懸濁液は、錠剤の核に付着するのに十分な速度で、かつ、操作中に錠剤のコアが分解しないように十分低い速度で吹きつけた。
コーティング懸濁液は、84%純水、0.8%ドデシル硫酸ナトリウム、8.08%メタクリル酸ブチル共重合体(ユードラジットEPO)、1.21%ステアリン酸、2.09%タルク、2.83%ステアリン酸マグネシウム、0.64%二酸化チタン、0.32%ベンガラを含む。コーティングは、コート後40℃で熱風を吹き付けて乾燥した。ユードラジットEPOフィルムコーティングは、約4.5%(重量/重量)で、滑らかな表面とするために行った。コーティング錠の崩壊時間を分解浴Copley DTG 2000 ISを用いて測定し、水中及び酸性下とも、30分以下であることがわかった。この錠剤は、錠剤中のMgO含量(XRFによる)から組成式MgFe(OH)12.CO.4.6HOで計算すると、活性成分を500mg含んでいたことになる。錠剤中の非−化学結合した水の含量は、自動終点決定機能のあるザトリウスMA30赤外線バランス(75℃に設定)により測定し、6%(重量/重量)であることがわかった。
【0163】
コンパウンド9
コンパウンド7の製造方法に従い、しかしコーティングは以下の通りに行った。錠剤のコーティングは、熱風スプレーから供給される熱風を有する、300−400錠の核を設置できる回転バスケットで手動のスプレーガンを用いて行った。コーティング懸濁液は、錠剤の核に付着するのに十分な速度で、かつ、操作中に錠剤のコアが分解しないように十分低い速度で吹きつけた。
コーティング懸濁液は、84%純水、0.8%ドデシル硫酸ナトリウム、8.08%メタクリル酸ブチル共重合体(ユードラジットEPO)、1.21%ステアリン酸、2.09%タルク、2.83%ステアリン酸マグネシウム、0.64%二酸化チタン、0.32%イエローオキサイドを含む。コーティングは、コート後40℃で熱風を吹き付けて乾燥した。ユードラジットEPOフィルムコーティングは、約4.5%(重量/重量)で、滑らかな表面を提供するために行った。コーティング錠の崩壊時間を分解浴Copley DTG 2000 ISを用いて測定し、水中及び酸性下とも、30分以下であることがわかった。
この錠剤は、錠剤中のMgO含量(XRFによる)から組成式MgAl(OH)12.CO.4.6HOで計算すると、活性成分を500mg含んでいたことになる。
【0164】
コンパウンド10
錠剤の核は、コンパウンド2の製造方法に従い、しかし、顆粒を高速回転装置によって製粉し篩を通過した1000ミクロンよりも小さい顆粒から製造した。続いて錠剤の核は、コンパウンド8に述べた方法でコーティングして得た。この錠剤は、錠剤中のMgO含量(XRFによる)から組成式MgFe(OH)12.CO.4.6HOで計算すると、活性成分を500mg含んでいたことになる。
【0165】
コンパウンド11
コンパウンド6を篩にかけ、106ミクロンよりも小さい顆粒を得、500℃で30分熱処理して得た。
【0166】
コンパウンド12
コンパウンド6を篩にかけ、106ミクロンよりも小さい顆粒を得、750℃で30分熱処理して得た。
【0167】
マクロソーブ(登録商標)
AlMg(OH)16CO.4HOの組成のヒドロタルサイトは、イネオスシリカ社(Ineos Silicas)において入手可能である。
【0168】
アルタサイトプラス
アルタサイトは、マクロソーブ(登録商標)と同じ組成のヒドロタルサイトで、水溶性のスラリーの形態で、市販で入手可能である。
【0169】
レニー(登録商標)、アルキャップ(Alucap, 登録商標)、タルシッド(Talcid, 登録商標)、ウルタシット(Ultacit, 登録商標)、タリダット(Talidat, 登録商標)及び水酸化マグネシウム(ブーツ(Boots))
すべて市販で入手可能な化合物である。
【0170】
方法1
酸中和能(ANC)は、以下の方法で測定した:
Grant OLS200攪拌機に設置した70mlの水(分析用)の入ったビーカーに、試験コンパウンドを加え、37℃とした。溶液の温度は、実験中37±3℃に維持した。マグネティックスターラーで攪拌を続け、30mlの1.0N塩酸を試験溶液に加えた。溶液は正確に15分攪拌した。溶液は、即時に滴定し、次の5分間以内に0.5N水酸化ナトリウムで安定的にpH3.5が得られるようにした(10ないし15秒)。718スタットチトリノを用いて滴定した。それぞれのコンパウンドは3回ずつ分析した。チュアブル錠は、まず乳鉢で砕き、すりつぶして、咀嚼過程をシミュレートした。この方法は、米国薬局方総則301条(USP general chapter301)に従い行った。式mEq/g=(30×NHCl)−(VNaOH×NNaOH)/gを試験物質に適用した。
【0171】
方法2
酸付加中のpHの最高値を測定するため、Grant OLS200攪拌機を170rpmでセットし、100mlの水を37℃に加熱した。水は0.1N HClを加え、あらかじめpH4に滴定しておいた。試験コンパウンドを溶液に加え、メトロームスタットチトリノ718 0.1N HClを3ml/秒で加えた。pH及び温度を30秒ごと、合計1800秒記録した。最高pH値はこの時間中に記録された。pH値は、VWR 6621759電極を有する典型的なpHメーターであるJenway3520pH測定器で測定した。この期間におけるpHの最高値を記録した。pH測定器は、すべての測定の前に室温(25℃)で、緩衝液を用いて補正した。
【0172】
この方法は、胃酸リバウンド効果の発生の指標となる。これは、制酸剤が迅速に作用し始めすぎることに関連し、それにより、本来であれば制酸剤の活性は、例えばpH5よりも低いことが好ましいにもかかわらず、pHが突然5よりも高く上昇なることにある(また、しかし、pHは、例えば、pH2よりも低下しすぎてはならず、これより低いと制酸剤が効かなくなる。)。この方法は、胃酸リバウンド効果の発生の指標となる。これは、制酸剤が迅速に作用し始めすぎることに関連し、それにより、本来であれば制酸剤の活性は、例えばpH5よりも低いことが好ましいにもかかわらず、pHが突然5よりも高く上昇することにある。
【0173】
方法3
食物存在下、インビトロでの胃腸管モデルにおけるpH緩衝能力を測定した。
【0174】
繰り返しの試験において(N=3又は4)、コントロール(制酸剤なし)、アルキャップ1カプセル(475mg活性成分を含有)、コンパウンド8 1錠、コンパウンド1 500mg(2粒のゼラチンカプセル剤として投与)、コンパウンド3の粉末 500mgを含む(2粒のゼラチンカプセル剤として投与)をそれぞれの試験において標準FDA食(胃腸管生理学のバイオアベイラビリティの研究に通常用いられ、最大の効果を与える米国食品医薬品局FDAがガイドラインに従い考案した食事)と混合した。コンパウンド1及び3は、それぞれ250mgの粉末の制酸剤を充填したゼラチンカプセルの形態で投与した。試験はTiny−TIM(オランダ応用科学研究機構(TNO))で行った。このモデルの詳細は、広く刊行されており、例えば、US5525305がある。これらの試験は、ヒトの代表的な胃腸管の標準的な生理的条件下で行われた。これらの条件は、胃排出及び小腸通過時間の薬力学、胃及び小腸のpH値、及び分泌物の構成及び活性も含む。胃のコンパートメントのpHを300分間(図1)測定した。
【0175】
このグラフからの結論は以下の通りである。
・好ましいコンパウンドはpHを約2時間緩衝する(食物のみであるコントロールとの比較による)。このモデルでは、胃排出は、2時間で約80%、3時間で95%、及び6時間で100%であった。それゆえ、このことから制酸剤は、長い持続性、例えば、約80%の胃内容物が排出されるまで制酸活性を持つことがわかった。
・好ましいコンパウンドは、食物の存在下でも緩衝能を有することである。市販に入手可能な制酸剤はAl(OH)に基づく制酸剤は、食物の存在下、緩衝能を示すと考えられない。
・食物の存在下胃のpHは突然変化せず、そのため胃酸リバウンド効果又はペプシンの不可逆的な不活性化は起こらない。
【0176】
方法4
錠剤の容積は、50mlの水の入ったメスシリンダーに5つの錠剤を入れて測定した。容積は、測定シリンダーに5錠を入れる前後の容積の変化を測定した。それぞれの錠剤の容積は、体積変化を5で割ることで計算した。容積の変化は、錠剤を測定シリンダーに入れた直後、すなわち、錠剤が水中で分解する前に測定した。
【表2−1】


















【表2−2】


この表からの結論は以下の通りである:
・MgFe HTは現在市販されている化合物(例えば、レニー)に匹敵する制酸剤の特性を有する。
・好ましいMgFe又はMgAl錠剤は、良好なANC 1値を得るために、砕いた形態で投与する必要がないことである。
・我々の好ましいMgFe又はMgAlコンパウンドにおいては砕いた錠剤と完全な錠剤で有意な差はない。これは、患者に、より均一な特性の制酸剤を提供できる利点を持つ(例えば、薬効は、どのように噛んだか、又は、噛んだかどうかに依存しにくい)。
・熱処理したMgFe又はMgAlヒドロタルサイトは制酸剤の特性を向上させる。
・熱処理に好ましい温度は、200及び500℃の間にあり、750℃以上になるとANC 1の効果が低下する。
・制酸剤の性質は、HT比に従い向上する。
・MgAl HTはMgFe HTよりもよい制酸剤の特性を持つ。しかし、MgFe HTはAlフリーであるという利点がある。
・現在制酸剤でHTベースのものは、チュアブル錠又は液体の投与形態で市販されているのみである。
【表3】


この表から得られる結論は以下の通りである:
このデータは、我々の好ましいコンパウンドが、至適pHであるpH3−4.5に緩衝し、胃のpHがpH5よりも上がることを妨げ、胃酸リバウンド効果を防いだ。
【表4】


この表から得られる結論は以下の通りである。
−MgAl又はMgFe混合金属コンパウンドを含む好ましい錠剤の形態は、現在市販されている薬剤と同様のANC値を得るのに、かみ砕く必要はないことがわかった。
−好ましい錠剤の形態は、より重量比にして効果的で、軽く、小さい錠剤で、市販されている薬剤と同様のANC値を持つことである。
−好ましい錠剤の形態は、市販の薬剤と異なり、50%ヒドロタルサイトを多く含むことである。
参考文献
【0177】
1) Synthesis and antacid property of Mg−Fe layered double hydroxide. Hirahara, Hidetoshi; Sawai, Yoshiyuki; Aisawa, Sumio; Takahashi, Satoshi; Umetsu, Yoshio; Narita, Eiichi. Department of Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Iwate University, Morioka, Japan. Nendo Kagaku (2002), 42(2), 70-76.
2) IN-A1-192168
3) Acid neutralization and bile acid binding capacity of hydrotalcite compared with other antacids: an in vitro study. Miederer, S.-E.; Wirtz, M.; Fladung, B. Department of Internal Medicine, Gastroenterology and Metabolism, University of Bonn, University of Bielefeld, Leverkusen, Germany. Chinese Journal of Digestive Diseases (2003), 4(3), 140-146.
4) Evaluation of buffering capacity and acid neutralizing−pH time profile of antacids. Lin, Mei-Shu; Sun, Pin; Yu, Hsiu-Ying. School of Pharmacy, College of Medicine, National Taiwan University, Taipei, Taiwan. Journal of the Formosan Medical Association (1998), 97(10), 704-710.
5) JP-A-10236960
6) Interaction of an aluminum-magnesium-containing antacid and gastrif mucus: possible contribution to the cytoprotective function of antacids. Grubel, P.; Bhaskar, K. R.; Cave, D. R.; Garik, P.; Stanley, H. E.; Lamont, J. T. Division of Gastroenterology, St. Elizabeth's Medical Center of Boston, Harvard Medical School, Boston University, Boston, MA, USA. Alimentary Pharmacology and Therapeutics (1997), 11(1), 139-145
7) EP-A-0638313
8) Antacid activity of calcium carbonate and hydrotalcite tablet: Comparison between in vitro evaluation using the 「artificial stomach-duodenum」 model and in vivo pH-metry in healthy volunteers. Vatier, J.; Ramdani, A.; Vitre, M. T.; Mignon, M. Cent. Hospitalier Univ. X. Bichat, Paris, Fr. Arzneimittel-Forschung (1994), 44(4), 514-18.
9) ES-A-2018952
10) CA-A-1198674
11) DE-A-3346943
12) The in vitro antacid and anti-pepsin activity of hydrotalcite. Playle A.C., Gunning
S.R. and Llewellyn. Pharm. Acta Helv. 49, Nr.9/10 (1974)
13) Acid neutralization capacity of Canadian antacid formulations. Can Med Assoc J. Vol.132, March 1,1985, pp 523-527
14) US 3650704
【0178】
上述中に述べられたすべての出版物及び特許及び特許出願は、ここに参考文献として組み込む。本発明の様々な変更及びバリエーションは、発明の範囲及び精神から離れることなく当該技術分野における通常の技術を有する者にとっては明らかである。本発明は特定の好ましい具体例に関連して記載されているが、本発明において請求の範囲に記載されたものは、そのような特定の具体例に過度に限定されるものではない。事実、本発明を遂行するための化学、生物又は関連分野の当該技術分野における通常の技術を有する者にとっては明らかであるが、本発明の態様の様々な変更は、以下の請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃酸の中和又は緩衝作用を有する医薬の製造における混合金属コンパウンドの使用
(ここで、混合金属コンパウンドは、鉄(III)、及びアルミニウムから選択される少なくとも一つの三価の金属、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで、
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤、
を含む顆粒状物質の形態で提供される)。
【請求項2】
請求項1記載の使用
(ここで、(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下
である)。
【請求項3】
式(I)においてzが1.8以下である請求項1又は2いずれか記載の使用。
【請求項4】
式(I)においてzが1.5以下である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項5】
式(I)においてaが0.1ないし0.4である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項6】
式(I)においてaが0.2ないし0.4である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項7】
式(I)においてaが0.2ないし0.34である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項8】
式(I)においてaが<0.3である請求項1ないし6のいずれか記載の使用。
【請求項9】
式(I)においてbが1.5以下である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項10】
式(I)においてbが1.2以下である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項11】
式(I)において0.03a<Σcn<0.7aである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項12】
式(I)において0.03a<Σcn<0.5aである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項13】
式(I)のコンパウンド、又は、層状複水酸化物構造を含む出発物質を、200℃ないし600℃で加熱することにより得られる式(I)のコンパウンドである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項14】
式(I)のコンパウンド、又は、層状複水酸化物構造を含む出発物質を、250℃ないし500℃で加熱することにより得られる式(I)のコンパウンドである請求項13記載の使用。
【請求項15】
請求項13又は14のいずれか記載の使用
(ここで、出発物質は式(II)のコンパウンド:
II1−xIII(OH)n−.mHO (II)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
x=Σny
0<x≦0.4、
0<y≦1、及び
0<m≦10
である)。
【請求項16】
前述の請求項いずれか記載の使用
(ここで、(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される)。
【請求項17】
請求項1又は16のいずれか記載の使用
(ここで、混合金属コンパウンドは式(III):
II1−xIII(OH)n−.mHO (III)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.4、
0<y≦1、及び
0≦m≦10
である)。
【請求項18】
式(III)において0<x≦0.4である請求項17記載の使用。
【請求項19】
式(III)において0.2<x≦0.4である請求項17記載の使用。
【請求項20】
式(III)においてxが<0.3である請求項17記載の使用。
【請求項21】
式(III)において0<y≦1である請求項17ないし20のいずれか記載の使用。
【請求項22】
式(III)において0≦m≦10である請求項17ないし21のいずれか記載の使用。
【請求項23】
混合金属コンパウンドが15重量%よりも少量の結晶表面で吸収した水を含む顆粒状物質の形態で提供される請求項17ないし22のいずれか記載の使用。
【請求項24】
混合金属コンパウンドが10重量%よりも少量の結晶表面で吸収した水を含む顆粒状物質の形態で提供される請求項23記載の使用。
【請求項25】
混合金属コンパウンドが1重量%よりも少量の結晶表面で吸収した水を含む顆粒状物質の形態で提供される請求項23記載の使用。
【請求項26】
賦形剤としてのアルファ化デンプンを、顆粒状物質の重さに基づき5ないし20重量%含む前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項27】
賦形剤としての架橋されたポリビニルピロリドンを、顆粒状物質の重さに基づき1ないし15重量%含む前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項28】
賦形剤に少なくともアルファ化デンプン及びクロスポビドンを含む請求項27記載の使用。
【請求項29】
顆粒状物質の重さに基づき90%の顆粒が、直径1180μmよりも小さい前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項30】
顆粒状物質が耐水カプセル中に充填されている前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項31】
滑沢剤が顆粒の間に提供されている前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項32】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、又はステアリン酸マグネシウムを含む請求項31記載の使用。
【請求項33】
顆粒状物質が耐水コーティングされている請求項1ないし29及び31、32いずれか記載の使用。
【請求項34】
耐水コーティングは少なくとも30重量%のメタクリル酸ブチル共重合体を含む請求項33記載の使用。
【請求項35】
少なくとも200mgの混合金属コンパウンドを含む投与ユニットで提供される混合金属コンパウンドである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項36】
三価の金属は少なくとも鉄(III)である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項37】
三価の金属は鉄(III)である前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項38】
二価の金属は少なくともマグネシウムである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項39】
三価の金属はマグネシウムである前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項40】
混合金属コンパウンドが、鉄(III)及びマグネシウムを含み、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される、前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項41】
混合金属コンパウンドが式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIがマグネシウムであり;
IIIが鉄であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下
である、前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項42】
少なくともヒドロキシル及び炭酸アニオンのいずれかを含む前述の請求項いずれか記載の使用。
【請求項43】
(A)混合金属コンパウンドが式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び
(B)混合金属コンパウンドが、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される、請求項1記載の使用。
【請求項44】
胃酸が有害に作用する病態又は疾患を治療する医薬の製造に使用するための混合金属コンパウンドの使用であって、該混合金属コンパウンドは、鉄(III)及びアルミニウムから選択される少なくとも一つの三価の金属を含み、及び、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタニウム及びセリウムから選択される少なくとも一つの二価の金属を含み、ここで、
(A)混合金属コンパウンドは式(I):
II1−aIIIn−.zHO (I)
で表され、ここで
IIは少なくとも一つが二価の金属であり;
IIIは少なくとも一つが三価の金属であり;
n−は少なくとも一つがn価のアニオンであり;
2+a=2b+Σcn、
Σcn<0.9a、及び
zは2以下であり、
及び/又は
(B)混合金属コンパウンドは、
(i)顆粒状物質の重さに基づき少なくとも50重量%の混合金属コンパウンド、
(ii)顆粒状物質の重さに基づき3ないし12重量%の非−化学結合した水、及び
(iii)顆粒状物質の重さに基づき47重量%以下の賦形剤
を含む顆粒状物質の形態で提供される、混合金属コンパウンドの使用。
【請求項45】
病態又は疾患が、消化性潰瘍、胸やけ、胃酸過多又は胃酸の逆流である請求項44記載の使用。
【請求項46】
病態又は疾患が消化性潰瘍である請求項44に記載の使用。
【請求項47】
請求項2ないし43いずれかの特性を有することにより特徴づけられる請求項44、45又は46のいずれか記載の使用。
【請求項48】
実施例を参照し、実質的に前述に記載した使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−534643(P2010−534643A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517482(P2010−517482)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002533
【国際公開番号】WO2009/016349
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(507272290)イネオス・ヘルスケア・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】INEOS HEALTHCARE LIMITED
【Fターム(参考)】