説明

制電性布帛および衣料

【課題】制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛であって、優れた制電性を有する制電性布帛、および該制電性布帛を用いてなる衣料を提供する。
【解決手段】制電剤を含む制電性ポリマーからなる芯成分と、制電剤を含む制電性ポリマーまたは制電剤を含まないポリマーからなる鞘成分とで構成される芯鞘型複合繊維を用いて布帛を得た後、必要に応じてカレンダー加工などの加熱処理などを施すことにより、芯成分に含まれる制電剤を鞘成分にブリードアウトさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛であって、優れた制電性を有する制電性布帛、および該制電性布帛を用いてなる衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維などの合成繊維を用いた布帛は一般的に静電気を蓄積し易い性質を持ち、衣類のまとわりつきなど着用者に不快感を与えることがある。そして、その対策として、芯成分が制電剤を含む制電性ポリマーにより形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、前記芯鞘型複合繊維において、芯鞘型複合繊維の製糸性を向上させるため、制電性ポリマーにより形成された芯成分が非制電性ポリマーからなる鞘成分で覆われており、制電性布帛の制電性が十分には発現されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−106390号公報
【特許文献2】特開2006−104617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛であって、優れた制電性を有する制電性布帛、および該制電性布帛を用いてなる衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む布帛に特定の加熱処理を施すことにより、芯成分に含まれる制電剤が鞘成分にブリードアウト(しみ出し)し制電剤が繊維表面に露出することにより、優れた制電性を奏することを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「芯成分と鞘成分とで形成される芯鞘型複合繊維を含む布帛であって、前記芯鞘型複合繊維において、芯成分および鞘成分に制電剤が含まれることを特徴とする制電性布帛。」が提供される。
【0008】
その際、前記鞘成分に含まれる制電剤が、芯成分に含まれる制電剤がブリードアウトしたものであることが好ましい。また、前記ブリードアウトがカレンダー加工によるものであることが好ましい。また、前記芯成分が、芳香族ポリエステル100重量部に対して(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部および(b)有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有してなる制電性ポリエステルで形成されてなることが好ましい。また、前記芯鞘型複合繊維の単糸繊度が1.5dtex以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の制電性布帛において、布帛が織物であり、かつカバーファクター(CF)が1400以上であることが好ましい。
ただし、カバーファクター(CF)は下記式により算出される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0010】
また、布帛に撥水加工が施されていることが好ましい。また、布帛の摩擦耐電圧が3000V以下であることが好ましい。また、布帛の通気度が10cc/cm・sec以下であることが好ましい。また、布帛の撥水性が4級以上であることが好ましい。また、下記に定義する花粉脱落性が70%以上であることが好ましい。
【0011】
タテ10cm、ヨコ10cmの大きさに裁断したシートを、同サイズの、表面が平らなステンレス製平板に貼り付けた後、試料をビニールボックス内に配置し、1gの擬似花粉(石松子)をエアブラシにて噴霧し均一に飛散させた。飛散5分後に擬似花粉が均一に付着した試料を取り出し、デジタルカメラ顕微鏡システム(商品名:NYpixS2スーパーシステム、マイクロネット社製)で100倍に拡大し画面上の擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。次いで、シートを貼り付けた該平板を上下逆さにした状態で、高さ5cmより15gのおもりを該平板に落下させ、デジタルカメラ顕微鏡システムで擬似花粉付着数を測定した場所と同一の場所での残存擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。そして、次式で花粉脱落性(%)を求める。
花粉脱落性(%)=100−((残存擬似花粉付着数)/(擬似花粉付着数)×100)
また、本発明によれば、前記の制電性布帛を用いてなる衣料が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛であって、優れた制電性を有する制電性布帛、および該制電性布帛を用いてなる衣料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明で用いる芯鞘型複合繊維において、芯成分が、制電剤を含む制電性ポリマーにより形成されている。繊維が、制電剤を含む制電性ポリマー単独から形成される場合は、製糸性が低下するため本発明から除外する。
【0014】
ここで、芯成分を形成するポリマーとしては制電剤を含むポリマーであれば特に限定されない。例えば、特開2006−104617号公報に記載されたものでもよいが、芳香族ポリエステル100重量部に対して(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部および(b)有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有してなる制電性ポリエステルであると、優れた制電性が得られ好ましい。
【0015】
ここで、前記芳香族ポリエステルとしては、二官能性芳香族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体との反応により得られる重合体を対象とする。
【0016】
ここでいう二官能性芳香族カルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、2,5―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルジカルボン酸、3,3′―ビフェニルジカルボン酸、4,4′―ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′―ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2―ビス(フェノキシ)エタン―4,4′―ジカルボン酸、2,5―アントラセンジカルボン酸、2,6―アントラセンジカルボン酸、4,4′―p―フェニレンジカルボン酸、2,5―ピリジンジカルボン酸、β―ヒドロキシエトキシ安息香酸、p―オキシ安息香酸等をあげることができ、特にテレフタル酸が好ましい。
【0017】
これらの二官能性芳香族カルボン酸は2種以上併用してもよい。なお、少量であればこれらの二官能性芳香族カルボン酸とともにアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸の如き二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き二官能性脂環族カルボン酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸等を1種または2種以上併用することができる。
【0018】
また、ジオール化合物としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2―メチル―1,3―プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等およびそれらの混合物等を好ましくあげることができる。また、少量であればこれらのジオール化合物と共に両末端または片末端が未封鎖のポリオキシアルキレングリコールを共重合することができる。
【0019】
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールを使用することができる。
【0020】
具体的な好ましい芳香族ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン―1,2―ビス(フェノキシ)エタン―4,4′―ジカルボキシレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート・デカンジカルボキシレート等のような共重合ポリエステルをあげることができる。なかでも機械的性質、成形性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0021】
かかる芳香族ポリエステルは任意の方法によって合成される。例えばポリエチレンテレフタレートついて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段反応、次いでその生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段の反応とによって容易に製造される。
【0022】
次に、(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテルとしては、ポリエステルに実質的に不溶性のものであれば、単一のオキシアルキレン単位からなるポリオキシアルキレングリコールであっても、二種以上のオキシアルキレン単位からなる共重合ポリオキシアルキレングリコールであってもよい。かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテルの具体例としては、分子量が4000以上のポリオキシエチレングリコール、分子量が1000以上のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、分子量が2000以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合体、分子量4000以上のトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物、分子量3000以上のノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、並びにこれらの末端OH基に炭素数が6以上の置換エチレンオキサイドが付加した化合物があげられ、なかでも分子量が10000〜100000のポリオキシエチレングコール、及び分子量が5000〜16000の、ポリオキシエチレングリコールの両末端に炭素数が8〜40のアルキル基置換エチレンオキサイドが付加した化合物が好ましい。
【0023】
かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物の配合量は、前記芳香族ポリエステル100重量部に対して0.2〜30重量部の範囲であることが好ましい。0.2重量部より少ないときは親水性が不足して充分な制電性を呈することができないおそれがある。一方30重量部より多くしてももはや制電性の向上効果は認められず、かえって得られる組成物の機械的性質を損うようになる上、該ポリエーテルがブリードアウトし易くなるため溶融成形時チップのルーダーへのかみこみ性が低下して、成形安定性も悪化するようになるおそれがある。
【0024】
次に、(b)有機イオン性化合物としては、例えば下記一般式(I)、(II)で示されるスルホン酸金属塩及びスルホン酸第4級ホスホニウム塩を好ましいものとしてあげることができる。
【0025】
RSOM (I)
式中、Rは炭素原子数3〜30のアルキル基又は炭素原子数7〜40のアリール基、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。上記式(I)においてRがアルキル基のときはアルキル基は直鎖状であっても又は分岐した側鎖を有していてもよい。MはNa、K、Li等のアルカリ金属又はMg、Ca等のアルカリ土類金属であり、なかでもLi、Na、Kが好ましい。かかるスルホン酸金属塩は1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。好ましい具体例としてはステアリルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。
【0026】
RSOPR (II)
式中、Rは上記式(I)におけるRの定義と同じであり、R1 、R2 、R3 及びR4 はアルキル基又はアリール基でなかでも低級アルキル基、フェニル基又はベンジル基が好ましい。かかるスルホン酸第4級ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。好ましい具体例としては炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラフェニルホスホニウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。
【0027】
かかる有機のイオン性化合物は1種でも、2種以上併用してもよく、その配合量は、芳香族ポリエステル100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲が好ましい。0.05重量部未満では制電性向上の効果が小さく、10重量部を越えると組成物の機械的性質を損なうようになる上、溶融成形時のチップのルーダーかみこみ性が低下して、成形安定性も悪化するようになる。
【0028】
前記芯鞘型複合繊維の鞘成分を形成するポリマーとしては制電剤を含むポリマーであれば特に限定されないが、前記の芳香族ポリエステルに、前記のような制電剤が含まれるものが好ましい。その際、鞘成分を形成するポリエステルに含まれる制電剤の含有量は芯成分よりも小さいことが好ましい。特に、前記鞘部に含まれる制電剤が、芯部に含まれる制電剤が加熱処理などにより鞘部にブリードアウトしたものであると、製糸性を損わずに優れた制電性が得られ好ましい。特に、芯部に含まれる制電剤がブリードアウトし制電剤が繊維表面に露出していると特に優れた制電性が得られ好ましい。なお、前記芯鞘型複合繊維の芯成分および/または鞘成分には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて着色防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、着色剤抗菌剤、マイナスイオン発生剤等を添加してもよい。
【0029】
前記芯成分と鞘成分との面積比は(芯成分:鞘成分)10:90〜65:35の範囲にすることが好ましい。芯成分の面積比が10:90より小さい場合には加熱処理を施しても、制電剤が繊維表面に露出しないおそれがある。逆に、65:35よりも大きくなる場合は、10%以上のアルカリ減量を施した場合に、部分的に芯成分の制電性ポリマーが溶出し、制電性能が低下するおそれがある。
【0030】
本発明において、前記芯鞘型複合繊維の単糸繊度は1.5dtex以下(好ましくは0.1〜1.2dtex)であることが好ましい。該単糸繊度が1.5dtex以下であると、後記のように加熱処理などを施した際に、芯成分に含まれる制電剤が鞘成分にブリードアウトし繊維表面に露出しやすく好ましい。
【0031】
また、単糸繊維の断面形状としては、丸断面形状で同心円状に芯鞘構造を有していることが好ましい。かかる芯鞘型複合繊維の総繊度、フィラメント数としては、風合いのソフトの点で総繊度33〜140dtex、フィラメント数50〜150の範囲が好ましい。また、繊維形態としては、マルチフィラメント(長繊維)であることが好ましい。また、芯鞘型複合繊維には仮撚捲縮加工が施されていることが好ましい。仮撚捲縮加工が施されていない場合は、制電性布帛の風合いが硬くなるおそがある。
【0032】
前記芯鞘型複合繊維は、例えば下記の製造方法により製造することができる。すなわち、島成分用ポリマー(制電剤を含む制電性ポリマー、好ましくは前記のような制電剤を含むポリエステル)と海成分用ポリマー(制電剤を含むポリマーでもよいが、制電剤を含まないポリマー(例えばポリエステル)が好ましい。)とを用いて常法の芯鞘型複合繊維用口金を用いて芯鞘型未延伸糸を溶融紡糸した後、常法により延伸して延伸糸としてもよいし、紡出時の吐出速度と引き取り速度の比(引き取り速度/吐出速度、以降ドラフトと記す)を100以上、800未満の範囲で引き取った未延伸糸を仮撚加工してもよい。ここで、ドラフトが100以下の場合は芯成分による制電性能の発現が不十分になり、ドラフトが800以上の場合には制電性能は発現するものの、紡糸性が低下するおそれがある。従ってこの範囲で口金吐出孔径、紡糸速度を適宜設定すればよいが、吐出径をΦ0.1〜0.3mm、紡糸速度2000〜4500m/min、特に2500〜3500m/minの範囲で溶融紡糸すると、容易にかつ効率よく得られるので好ましい。
【0033】
該未延伸糸(未延伸マルチフィラメント)を仮撚加工する場合、その方法については特に限定されないが、例えば(1)仮撚具:3軸フリクションデイスクタイプ、(2)仮撚温度:170〜300℃、(3)加工倍率:1.4〜2.4、(4)仮撚数:(15000〜35000)/(仮撚糸繊度(dtex))1/2回/m、より好ましくは(20000〜30000)/(仮撚糸繊度(dtex))1/2回/mであることが好ましい。その際、空気交絡処理は延伸仮撚加工と別の工程で行ってもよいが、延伸仮撚加工装置にインターレースノズルを設置して延伸仮撚加工直前に施すのが好ましい。このことにより毛羽発生を抑制し取り扱い性に好影響をもたらすことができ、更に、熱セット仮撚後糸条に空気交絡を施すことで完璧に混繊交絡を均一化、糸長方向均一効果から、制電性を有し且つ高級感を発現させることができる。次に、交絡処理が施された未延伸糸は、例えば2段式ヒーターを備えた延伸仮撚加工機に掛けて、捲縮を有する仮撚加工糸とする。
【0034】
かくして得られた仮撚捲縮加工糸の捲縮率としては、3〜30%の範囲内であることが好ましい。該捲縮率が3%より小さいと制電撥水織物の風合いが硬くなるおそれがある。逆に、該捲縮率が30%よりも大きいと、制電性が低下するおそれがある。
【0035】
次いで、前記芯鞘型複合繊維(延伸糸または仮撚捲縮加工糸)を用いて常法により布帛を織編成する。ここで、布帛に含まれる芯鞘型複合繊維の重量割合は30重量%以上であることが好ましい。布帛に他の繊維が含まれる場合、かかる他の繊維としては、通常のポリエステルからなるポリエステル繊維が好ましい。
【0036】
また、布帛の組織は特に限定されず、通常の方法で製編織されたものでよい。例えば、織組織としては、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。編物の場合は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。また、製編織方法も通常の織編機(例えば、通常のウオータージェットルームやエアージェットルーム)を用いた通常の方法でよい。
【0037】
次いで、前記鞘成分に制電剤が含まれない場合には、前記の布帛に加熱処理を施すことにより、芯鞘型複合繊維の芯成分を形成する制電性ポリマーに含まれる制電剤を、鞘成分にブリードアウトさせ繊維表面に露出させる。
【0038】
ここで、前記加熱処理としては、カレンダー加工またはエンボス加工(特に好ましくはカレンダー加工による加圧加熱加工が好ましい)。その際、カレンダー加工の条件としては、温度130℃以上(より好ましくは140〜195℃)、線圧8000〜20000N/cmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
かかる加熱処理により、芯鞘型複合繊維の芯成分を形成する制電性ポリマーに含まれる制電剤が繊維表面に露出する。なぜ加熱処理により制電剤が繊維表面に露出するのかはまだ明らかにされていないが、加熱処理の際の熱により分子運動が激しくなり、その結果、成分を形成する制電性ポリマーに含まれる制電剤が繊維表面に露出するのではないかと推定している。
【0040】
なお、制電剤が芯成分や鞘成分に含まれるかどうかは、例えば下記の方法により判定することができる。すなわち、前記芯鞘型複合繊維を、カチオン染料(ローダミンB、保土谷化学工業)5%owf、酢酸0.5g/Lで、50℃、40分染色を行ない、その後、水洗、0.5g/Lの酢酸溶液40℃で10分間洗浄を行い、再度水洗を行った後乾燥させ、芯鞘型複合繊維の横断面を、拡大光学写真撮影することにより判定することができる。また、制電剤が繊維表面に露出している場合は、染色されていることを測色装置により判定してもよい。その際、測色装置で測定してa*値が10以上の場合、制電剤が繊維表面に露出していると判定するとよい。
また、制電剤が芯成分や鞘成分に含まれるかどうか分析機器により直接測定してもよい。
【0041】
また、前記加熱処理の前および/または後に、布帛に撥水加工を施すことは好ましいことである。ここで、撥水加工としては通常のものでよい。例えば、特許第3133227号公報や特公平4−5786号公報に記載された方法が好適である。すなわち、撥水剤として市販のふっ素系撥水剤(例えば、旭硝子(株)製、アサヒガードLS−317)を使用し、必要に応じてメラミン樹脂、触媒を混合して撥水剤の濃度が3〜15重量%程度の加工剤とし、ピックアップ率50〜90%程度で、該加工剤を用いて織物の表面を処理する方法である。加工剤で織物の表面を処理する方法としては、パッド法、スプレー法などが例示され、なかでも、加工剤を織物内部まで浸透させる上でパッド法が最も好ましい。なお、前記ピックアップ率とは、加工剤の織物(加工剤付与前)重量に対する重量割合(%)である。
【0042】
また、前記加熱処理および/または撥水加工の、前および/または後において、常法のアルカリ減量加工、染色仕上げ加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0043】
かくして得られた制電性布帛に含まれる芯鞘型複合繊維において、芯成分だけでなく鞘成分にも制電剤が含まれるので優れた制電性を奏する。その際、布帛の摩擦耐電圧としては洗濯前で3000V以下(特に好ましくは1000V以下)であることが好ましい。また、布帛に含まれる芯鞘型複合繊維の単糸繊度が小さいので、布帛がソフトな風合いを呈する。特に、芯鞘型複合繊維が仮撚捲縮加工糸である場合には、布帛が特にソフトな風合いを呈する。
【0044】
また、かかる制電性布帛において、下記式により算出されるカバーファクター(CF)が1400以上(好ましくは1500〜3000)の織物であると、低通気性となりスポーツ衣料などとして好適に使用できるので好ましい。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
その際、布帛の通気度が10cc/cm・sec以下であることが好ましい。なお、布帛の通気度が10cc/cm・sec以下とするには、前記のように、織物のカバーファクター(CF)を大きくし、かつカレンダー加工を施すとよい。
【0045】
また、本発明の制電性布帛において、布帛の撥水性が4級以上であることが好ましい。なお、布帛の撥水性を4級以上とするには、前記のように布帛に撥水加工を施すとよい。
また、本発明の制電性布帛において、下記に定義する花粉脱落性が70%以上であると、スポーツ衣料などとして好適に使用することができ好ましい。なお、花粉脱落性が70%以上とするには、前記のようなカレンダー加工と撥水加工を施すとよい。
【0046】
<花粉脱落性評価>タテ10cm、ヨコ10cmの大きさに裁断したシートを、同サイズの、表面が平らなステンレス製平板に貼り付けた後、試料をビニールボックス内に配置し、1gの擬似花粉(石松子)をエアブラシにて噴霧し均一に飛散させた。飛散5分後に擬似花粉が均一に付着した試料を取り出し、デジタルカメラ顕微鏡システム(商品名:NYpixS2スーパーシステム、マイクロネット社製)で100倍に拡大し画面上の擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。次いで、シートを貼り付けた該平板を上下逆さにした状態で、高さ5cmより15gのおもりを該平板に落下させ、デジタルカメラ顕微鏡システムで擬似花粉付着数を測定した場所と同一の場所での残存擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。そして、次式で花粉脱落性(%)を求める。
花粉脱落性(%)=100−((残存擬似花粉付着数)/(擬似花粉付着数)×100)
【0047】
次に、本発明の衣料は前記の制電性布帛を用いてなる衣料である。かかる衣料は前記の制電性布帛を用いているので優れた制電性を有しかつソフトな風合いを呈する。また、前記のカレンダー加工および撥水加工を施している場合は、優れた花粉脱落性を有するので、花粉脱落性衣料として使用することもできる。
【実施例】
【0048】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0049】
(1)固有粘度
オルソ−クロルフェノールに溶解し、ウベローデ粘度管を用い、35℃で測定した。
【0050】
(2)複屈折率
光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
【0051】
(3)捲縮率
仮撚加工糸サンプルに0.044cN/dtexの張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作成した。該カセの一端に、0.0177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの2個の荷重を負荷し、1分間経過後の長さS0(cm)を測定した。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理した。沸水処理後0.0177cN/dtexの荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥し、再び0.0177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さを測定しS1(cm)とした。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去し、1分間経過後の長さを測定しS2とし、次の算式で捲縮率を算出し、10回の測定値の平均値で表した。
捲縮率(%)=[(S1−S2)/S0]×100
【0052】
(4)仮撚加工糸の強度、伸度
JIS L―1013―75に準じて測定した。
【0053】
(5)風合い
試験者3人が官能評価により下記の3段階に評価した。3級:ソフトでしなやかな感触がある。2級:ややソフト感が乏しいが反撥性は感じられる。1級:カサカサした触感あるいは硬い触感である。
【0054】
(6)摩擦帯電圧測定法
初期(洗濯前)と洗濯20回後の試験片について、試験片を回転させながら摩擦布で摩擦し、発生した帯電圧を測定した。L1094帯電性試験方法B法(摩擦帯電圧測定法)に従った。
【0055】
(7)通気度
JIS L1096−8.27.1A法により測定した。
【0056】
(8)撥水性
JIS L1092−6.2(スプレー法)により測定した。
【0057】
(9)芯成分と鞘成分について制電剤の有無を調べるテスト
試料を、カチオン染料(ローダミンB、保土谷化学工業)5%owf、酢酸0.5g/Lで、50℃、40分染色を行なった。その後、水洗、0.5g/Lの酢酸溶液40℃で10分間洗浄を行い、再度水洗を行った後、乾燥させた。次いで、試料に含まれる芯鞘型複合繊維について、横断面の拡大光学写真を撮影し制電剤の有無を判定した。
【0058】
(10)花粉脱落性評価
タテ10cm、ヨコ10cmの大きさに裁断したシートを、同サイズの、表面が平らなステンレス製平板に貼り付けた後、試料をビニールボックス内に配置し、1gの擬似花粉(石松子)をエアブラシにて噴霧し均一に飛散させた。飛散5分後に擬似花粉が均一に付着した試料を取り出し、デジタルカメラ顕微鏡システム(商品名:NYpixS2スーパーシステム、マイクロネット社製)で100倍に拡大し画面上の擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。次いで、シートを貼り付けた該平板を上下逆さにした状態で、高さ5cmより15gのおもりを該平板に落下させ、デジタルカメラ顕微鏡システムで擬似花粉付着数を測定した場所と同一の場所での残存擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。そして、次式で花粉脱落性(%)を求める。
花粉脱落性(%)=100−((残存擬似花粉付着数)/(擬似花粉付着数)×100)
【0059】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)および整色剤として酢酸コバルト4水塩0.013部(テレフタル酸ジメチルに対して0.01モル%)をエステル交換反応缶に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下で4時間かけて140℃から220℃まで昇温し、反応缶中に生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。エステル交換反応終了後、反応混合物に安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)、および消泡剤としてジメチルポリシロキサンを0.024部加えた。次に、10分後に、反応混合物に三酸化アンチモン0.041部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを留去しながら240℃まで昇温し、その後、反応混合物を重合反応缶に移した。次いで1時間40分かけて760mmHgから1mmHgまで減圧するとともに240℃から280℃まで昇温して重縮合反応せしめた後、下記化学式
【化1】

(ただし、jは18〜28の整数で平均21、Pは平均値として100、mは平均値として5である)で表される水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルを4部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2部、真空下で添加し、さらに240分間重縮合反応せしめ、次いで酸化防止剤としてチバカイギー社製イルガノックス1010を0.4部真空下で添加し、その後さらに30分間重縮合反応を行なった。重合反応工程で、制電剤を添加し、芯成分用ポリマー(チップ)を得た。このポリマーの固有粘度は0.657、軟化点258℃、得られたチップを常法により乾燥した。
【0060】
一方、常法により、制電剤を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリマー(固有粘度0.60、鞘成分用ポリマー)を得た。
次いで、乾燥ポリマーを紡糸設備にて各々常法で溶融し、スピンブロックを通して、スピンパックに導入した。該スピンパックに組み込まれた円形吐出孔を72個穿設した紡糸口金(通常の芯鞘型繊維用紡糸口金)から、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ一つの糸条として集束し、3000m/minの速度で引き取り、複屈折率0.035の140dtex/72フィラメントのポリエステル未延伸糸を得た。
【0061】
該ポリエステル未延伸糸を、帝人製機製216錘建HTS−15Vに掛け、前段、後段とで、孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ60nL/minの流量で交絡度が50個/mとなるように空気交絡を施し、延伸倍率1.60、第1ヒーター(非接触タイプ)温度250℃の条件に設定し、直径60mm、厚み9mmのウレタンディスクを仮撚ディスクとして、走行角43度で仮撚数×(仮撚糸繊度(dtex))1/2が26000近傍となるように延伸仮撚を行い、速度800m/minでチーズ形状に巻き取り、84dtex/72フィラメント(平均単糸繊度1.17dtex)の制電芯鞘型複合繊維からなる仮撚捲縮加工糸(捲縮率15%、強度3.8cN/dtex)を得た。
【0062】
一方、制電剤を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリマー(固有粘度0.60)単独で用いること以外は上記と同様にして、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸84dtex/72フィラメントを得た。
次いで、通常のウオータージェットルームを使用し、前記ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸84dtex/72フィラメントを経糸に、一方、前記制電仮撚捲縮加工糸84dtex/72フィラメント(芯鞘型複合繊維)を緯糸として平組織にて生機織物を得て、次いで常法の染色工程にて染色した後、下記の処理液(加工剤)をパッドし、ピックアップ率70%で搾液し、130℃で3分間乾燥後170℃で45秒間熱処理を行った後、ロール温度160℃、11529N/cm(1176kgf/cm)の条件でカレンダー加工を行い、制電性布帛(カバーファクター1992)を得た。
【0063】
<加工剤組成>
・ふっ素系撥水剤 10.0wt%
(旭硝子(株)製、アサヒガードLS−317)
・メラミン樹脂 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスレジンM−3)
・触媒 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスアクセレレータACX)
・水 89.4wt%
【0064】
他方、染料を使用せずに同様の加工工程を施した制電性布帛を製造し、(制電剤の有無を調べる染色テスト)をしたところ、芯成分に含まれる制電剤が鞘成分にブリードアウトし、鞘成分にも制電剤が含まれていることが確認できた。また、海島型複合繊維の単繊維表面へ制電剤が露出しており、測色装置でa*値を測定したところ、a*値は10以上であった。
得られた制電性布帛において、初期(洗濯前)の撥水性が5級と撥水性にも優れていた。また、初期(洗濯前)の摩擦帯電圧が経540V、緯720V、洗濯20回後の摩擦帯電圧が経1200V、緯1500Vと大変優れた制電性を有しており、花粉脱落性は92%と大変優れたものであった。また、ソフトな風合い(3級)を呈するものであった。
次いで、該前記制電性布帛を用いてスポーツ衣料(ウインドブレーカー)を得た。その際、カレンダー加工および撥水加工を施した面が外気側になるよう縫製した。かかるスポーツ衣料(ウインドブレーカー)を着用したところ、静電気が発生せず、ソフトな風合いを呈するものであった。
【0065】
[比較例1]
実施例1において用いた芯成分用ポリマーのみを用いて、該ポリマー単独からなる制電仮撚捲縮加工糸84dtex/72フィラメントを得て、これ以外は実施例1と同様に実施した。
結果、製糸性が悪く安定生産不可なものであった。
【0066】
[比較例2]
実施例1において、制電仮撚捲縮加工糸の総繊度/フィラメントを110dtex/10フィラメント(単糸繊度11デシテックス)に変更すること以外は実施例1と同様に実施した。
得られた制電性布帛において、初期の撥水性が5級と撥水性に優れていた。花粉脱落性は84%と優れたものであったが、初期の摩擦帯電圧が経1100V、緯1300V、洗濯20回後の摩擦帯電圧が経1900V、緯3100Vと制電性が十分ではなく、また風合いが硬いものであった。
他方、染料を使用せずに同様の加工工程を施した制電性布帛を製造し、(制電剤の有無を調べる染色テスト)をしたところ、芯鞘型複合繊維の単繊維表面への制電剤の露出が確認できなかった。なお、a*値は10未満であった。
【0067】
[比較例3]
実施例1において、カレンダー加工を施さなかったこと以外は実施例1と同様に実施した。
得られた制電性布帛において、初期の撥水性が5級と撥水性に優れていた。花粉脱落性は86%と優れたものであったが、初期の摩擦帯電圧が経1500V、緯1800V、洗濯20回後の摩擦帯電圧が経1600V、緯2000Vと制電性が十分ではなかった。
他方、染料を使用せずに同様の加工工程を施した制電性布帛を製造し、(制電剤の有無を調べる染色テスト)をしたところ、芯鞘型複合繊維の単繊維表面への制電剤の露出が確認できなかった。なお、a*値は10未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、制電剤を含む制電性ポリマーにより芯成分が形成された芯鞘型複合繊維を含む制電性布帛であって、優れた制電性を有する制電性布帛、および該制電性布帛を用いてなる衣料が得られ、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分と鞘成分とで形成される芯鞘型複合繊維を含む布帛であって、前記芯鞘型複合繊維において、芯成分および鞘成分に制電剤が含まれることを特徴とする制電性布帛。
【請求項2】
前記鞘成分に含まれる制電剤が、芯成分に含まれる制電剤が鞘部にブリードアウトしたものである、請求項1に記載の制電性布帛。
【請求項3】
前記ブリードアウトがカレンダー加工によるものである、請求項1または請求項2に記載の制電性布帛。
【請求項4】
前記芯成分が、芳香族ポリエステル100重量部に対して(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部および(b)有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有するポリエステルで形成されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項5】
前記芯鞘型複合繊維の単糸繊度が1.5dtex以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項6】
布帛が織物であり、かつカバーファクター(CF)が1400以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の制電性布帛。
ただし、カバーファクター(CF)は下記式により算出される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項7】
布帛に撥水加工が施されている、請求項1〜6のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項8】
布帛の摩擦耐電圧が3000V以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項9】
布帛の通気度が10cc/cm・sec以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項10】
布帛の撥水性が4級以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の制電性布帛。
【請求項11】
下記に定義する花粉脱落性が70%以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の制電性布帛。
タテ10cm、ヨコ10cmの大きさに裁断したシートを、同サイズの、表面が平らなステンレス製平板に貼り付けた後、試料をビニールボックス内に配置し、1gの擬似花粉(石松子)をエアブラシにて噴霧し均一に飛散させた。飛散5分後に擬似花粉が均一に付着した試料を取り出し、デジタルカメラ顕微鏡システム(商品名:NYpixS2スーパーシステム、マイクロネット社製)で100倍に拡大し画面上の擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。次いで、シートを貼り付けた該平板を上下逆さにした状態で、高さ5cmより15gのおもりを該平板に落下させ、デジタルカメラ顕微鏡システムで擬似花粉付着数を測定した場所と同一の場所での残存擬似花粉付着数(n数=3)をカウントする。そして、次式で花粉脱落性(%)を求める。
花粉脱落性(%)=100−((残存擬似花粉付着数)/(擬似花粉付着数)×100)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の制電性布帛を用いてなる衣料。

【公開番号】特開2010−150732(P2010−150732A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82071(P2009−82071)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】