説明

制電性長繊維不織布

【課題】高伸度を有し成型性、耐磨耗性に優れ、緩衝材、電子部品トレイ、キャリアテープ等の用途に好適に利用できる熱成型性に優れた制電性長繊維不織布を提供する。
【解決手段】熱可塑性長繊維からなる不織布であって、該繊維の複屈折率が0.025以下であり、制電性物質を3〜30wt%含有していることを特徴とする制電性不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性長繊維不織布に関するものである。さらに詳しくは高伸度を有し成型性、耐磨耗性に優れ、緩衝材、電子部品トレイ、キャリアテープ等の用途に好適に利用できる熱成型性に優れた制電性長繊維不織布を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の制電性不織布は、不織布表面に制電性物質を存在させる方法が一般的であり、そのために、コーティングによる制電性物質の付与や繊維の鞘芯構造により鞘部に制電性物質を含有したものであった。特許文献1には、多層構造を構成する長繊維層の少なくとも1層は、導電性繊維を主成分とする鞘芯構造繊維からなる制電性長繊維不織布が開示されている。
鞘芯構造繊維を用いる場合、紡糸条件の複雑化、鞘部と芯部の相溶性の考慮等実際に生産する上で問題が多い。
また、成型品に関しては、鞘部と芯部の伸度の違いにより成型範囲が限定されることや鞘部だけが制電性物質含有なため成型後鞘部が非常に薄くなり成型後も制電性を維持することは難しい。
特許文献2には、導電性高分子をコーティングした導電性積層体が開示されている。しかしながら、コーティングによる制電性物質の付与では剤の転移が生じやすい。また接着剤の使用により風合いが著しく硬くなったり、通気性が著しく低下したり、成型による追従性がなく成型後の制電性が低下するなど問題点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−105664号公報
【特許文献2】特開平11-300903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、制電性、熱成形性に優れ、成型加工後も制電性を維持し、成型加工特性が良好な制電性高伸度不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、不織布を構成する熱可塑性長繊維の複屈折率が特定範囲であり、制電性物質を特定量含有することで、熱成型性及び制電性に優れ、熱による一体成型が可能であり、成型加工後も制電性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下の通りである。
【0006】
(1)熱可塑性長繊維からなる不織布であって、該繊維の複屈折率が0.025以下であり、制電性物質を3〜30wt%含有していることを特徴とする制電性不織布。
(2)前記熱可塑性長繊維がポリエステル系長繊維であることを特徴とする上記(1)記載の制電性不織布。
(3)前記熱可塑性長繊維不織布において、100℃での伸度が300%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の制電性不織布。
【0007】
(4)前記不織布の表面抵抗値が10〜1013Ω/□であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の制電性不織布。
(5)不織布が2層以上からなる多層構造を有し、その少なくとも表面層が上記(1)〜(4)のいずれかに記載の制電性不織布層であることを特徴とする多層構造の制電性不織
布。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の制電性不織布を、熱成型で一体加工して得られることを特徴とする成型体。
(7)前記成型体において、成型加工後の表面抵抗値が10〜1013Ω/□であることを特徴とする上記(6)に記載の成型体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の制電性長繊維不織布は、制電性物質を繊維自体に含有させ不織布を形成しているため、成型時においても、制電性繊維が成形変形に充分に追従するため、成型体の制電性を保持することができる。また制電性物質を繊維に添加することにより、制電性と共に、繊維の非晶性が高まり、繊維とその繊維からなる不織布の伸度が向上する。また非晶性が高くなることによって、非晶部分が多くなり熱圧着時の熱セットが容易になり表面の毛羽が抑えられ耐磨耗性が良くなる。したがって、本発明の不織布は、制電性と共に高伸度を有し成型性、耐磨耗性に優れ、緩衝材、電子部品トレイ、キャリアテープ等の用途に好適に利用できる熱成型性に優れた制電性長繊維不織布を提供することができる。特に制電性繊維からなる不織布であることから、耐静電気性、耐防塵性、剤の乗り移り防止等の点から電子材料を収納する成型容器が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における長繊維不織布を構成する繊維としては、熱可塑性長繊維であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン−6、ナイロン−66、共重合ナイロンなどのポリアミド系繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの繊維が用いられる。
【0010】
好ましくは、耐熱特性の点から、ポリエステル系繊維素材であり、特に、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。繊維としては、単独でもよく、又2種以上の繊維を積層して用いることもできる。繊維の断面形状としては、丸型、及び扁平型、C型、Y型、V型などの異形断面などが用いられる。
本発明において、ポリエステル系繊維の未延伸繊維からなる不織布が好ましい態様である。ポリエステル系繊維の未延伸繊維は、結晶化度が低く、延伸性が良好であり、高伸度、高展伸が可能である。
【0011】
本発明のポリエステル系未延伸繊維からなる不織布としては、紡糸速度1000〜3500m/min
の低紡糸速度の低結晶性、低配向性のポリエステル系繊維が、特に好ましく用いられる。この様な、特性のポリエステル系繊維では、その後の、熱延伸加工するに、適正である。
上記不織布の伸度は、100〜600%が好ましく、より好ましくは150〜500%であり、このように高伸度であると、熱延伸加工特性が向上する。
上記不織布を構成する繊維の伸度は、100〜600%が好ましく、より好ましくは150〜500%であり、このように高伸度であると、熱延伸加工特性が向上する。
上記不織布を構成する繊維は、低配向性繊維であることが好ましく、熱により、繊維表面の融着が起こりやすいという特徴を有する。その結果、上記原料不織布を加熱すると、加熱雰囲気中で、繊維の交絡点において、繊維の表面同士が互いに、点状で融着接合を生じ、点状で接着し、その接合頻度を大きくすることができる。さらに、通常の熱圧着に比べて、弱い接合であり、小さな応力で、均一な延伸加工ができるため、大きな展伸を伴う熱成形に適する。
本発明の不織布の伸度は、100〜500%が好ましく、より好ましくは150〜400%であり、こ
のように不織布自体が高伸度であると、熱延伸加工特性が格段に向上する。
【0012】
本発明の不織布において、100℃における伸度は、好ましくは300%以上であり、より好ましくは600〜1500%であり、特に好ましくは800〜1200%であり、この範囲であると、熱プレスによる成型特性が良好となり、一体成型が可能となる。
一体成型における展開比は0.2〜1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、0.2〜0.8の範囲である。成型展開比は20cm×20cmの試料片を成型機にセットし、熱風温度150℃で予熱して、直径12cmの成型金型で熱プレスを実施した時の成型体の深さを測定し、成型体の深さを成型シートの直径で割った、次式(1)で定義される値である。
展開比=成型体の深さ/成型前シートの直径 (1)

即ち、一体成型における展開比は、シート状物をコップ形状に熱成形した場合の、径と成形深さの割合を示すものであり、成形の度合いを示す指標であり、通常、展開比が1の場合、実質の延伸倍率は、約5倍程度となる。
【0013】
更に、目的に応じて、他の樹脂、又は難燃剤、無機充填剤、柔軟剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤などの1種又は2種以上添加してもよい。
本発明の不織布を構成する繊維において、複屈折率(Δn)が0.025以下が必要であり、より好ましくは、0.003〜0.020であり、特に好ましくは0.005〜0.015である。複屈折率(Δn)がこの範囲であると、繊維の伸度が大きく、成形性が良好であり、更に、不織布の熱圧着性が向上し、表面毛羽たちが少なく、耐磨耗性が改善される。
複屈折率が0.025より大きいと繊維の結晶性が高く、繊維の伸度が低下し、成型性が悪くなる。また熱接着時の熱セットが困難となり、表面の毛羽の抑制が困難となる。複屈折率が0.003よりも小さくなると、熱圧着時、熱収縮が生じ、また繊維が熱圧着ロールの熱により溶解し、ロールに取られてしまうため不織布を生産することが困難となる。
本発明では、繊維の複屈折率(Δn)をこの範囲にする上において、繊維自体を低速で紡糸することによる繊維分子の配向抑制効果と、制電性物質をポリマーに適量含有して紡糸することによる繊維分子の配向抑制効果が重要である。
【0014】
また不織布を構成する繊維の繊度について制限はなく、通常の長繊維不織布に使用される繊維の繊度は、生産性や風合いの点から、通常0.5〜30デシテックス(dtex)が好ましく、より好ましくは1〜20デシテックスである。
また制電性物質は、熱可塑性長繊維に3〜30重量%含有することが必要であり、より好ましくは5〜20重量%の含有率である。
制電性物質の含有量が3%未満の場合、制電性効果が低く、30重量%より多いと熱圧着時収縮が起こり、不織布の採取が困難となる。
【0015】
本発明で用いる制電性物質は、熱可塑性エラストマ−や導電性カーボンが用いられる。より好ましくは、熱可塑性エラストマ−が用いられ、さらに好ましくはポリエーテルエステルアミドブロックポリマーが用いられる。添加方法は特に制限はなく、ドライブレンドによる添加方法でもマスターバッチ化し、その後ドライブレンドでも使用目的に応じて選択することが好ましい。
本発明の制電性不織布の表面抵抗値は、温度20.5℃、湿度63%下で表面抵抗値が10〜1013Ω/□が好ましく、より好ましくは表面抵抗値が10〜1012Ω/□である。表面抵抗値がこの範囲であると、ホコリが付着しない制電性のレベルである。
本発明の制電性不織布は単層でも2層以上からなる多層構造を有してもよく、その少なくとも表面層が制電性不織布層であることを特徴とする。
成型体の形状について特に制限はなく、半円形、円柱形、四角形等、使用目的に応じて選択することが好ましい。
【0016】
本発明の制電性不織布は、目付について特に制限はなく、通常の目的に使用される目付が10〜300g/m程度であるため、使用目的に応じて選択することが好ましく、場合によってこの範囲から外れてもよい。また積層構造について特に制限はなく、制電性長繊維で構成される繊維層が単層でも成型性に優れた層と制電性に優れた層との積層、または少なくとも1層は制電性長繊維を主成分として構成されている2層以上の積層された多層構造を有する。積層方法は特に制限はなく、熱圧着により積層する方法、接着剤を用い積層する方法、ニードルパンチやスパンレースで積層する方法等がある。
【0017】
以下に、本発明の不織布の製法を説明する。
本発明における長繊維不織布の製造は、従来公知のスパンボンド法が好ましく用いられる。本発明の不織布の熱圧着方法について、2段階で熱圧着を行う。まず少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、ロール温度30〜120℃、好ましくは50〜100℃の温度にて線圧50〜1000N/cm、好ましくは200〜700N/cmの下で熱圧着することにより仮熱圧着不織布が得られる。次いで、フェルトカレンダーロールを用いて、ロール温度80〜150℃、好ましくは100〜140℃の温度にて熱圧着することにより本発明不織布が得られる。
【0018】
本発明の特徴は、成型加工後も優れた制電性を示すことである。本発明の不織布において、成型前の表面抵抗値は10〜1013Ω/□の範囲であり、成型後も変化なく10〜1013Ω/□の範囲である。熱成型における表面抵抗値の低下はなく、成型加工の展開比を大きくしても、制電性の低下は見られない。通常、制電性を有する不織布は、成型性が悪く、成型性に優れた不織布は、制電性が低く、両方を満足する不織布は難しい。本願発明が成型後も優れた制電性を有する理由は、制電性物質を未延伸糸である繊維自体に練り込み、繊維自体が高伸度で制電性を有するためであると推定している。
本発明の不織布において、耐磨耗性が良好であり、学振摩擦機で加重250g、回数50回摩耗しても、殆ど毛羽立ちがない。通常、制電性不織布は、制電材が繊維表面付着されており、耐磨耗性が低下しやすい。
しかしながら、本発明においては、繊維自体の結晶性が低く押えられ、さらに制電性物質の添加により、繊維の非晶性がさらに向上しており、その結果、不織布の熱圧接時の熱セット性が改善され、不織布表面の毛羽立ちが抑えられ、耐磨耗性が良くなる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお測定法は下記のとおりに行った。
(1)繊度(dtex:デシテックス):適当な本数の繊維を採取し100cmの重量を測定し、下記の式で算出する。
繊度(dtex)=重量(g)/繊維の本数×10000
(2)糸伸度:適当な本数の繊維を採取し、引張試験機で、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/minで5回測定し平均値を求める。
(3)布引張伸度:幅3cm、長さ20cm試料を切り取り、引張試験機で、つかみ間隔10cm、引張速度30cm/minで縦方向5箇所測定し平均値で求める。
(4)熱時伸度:幅3cm、長さ10cm試料を切り取り、引張試験機で、つかみ間隔2cm、引張速度20cm/min、温度100℃下で縦方向5箇所測定し平均値を求める。
【0020】
(5)復屈折率(Δn):偏光顕微鏡を使用して、干渉縞法によって繊維の側面から観察した平均屈折率の分布を測定することができる。この方法は円形断面を有する繊維に適用
できる。繊維の屈折率は繊維軸に対して平行な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n||と、繊維軸に対し垂直な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n⊥によって特徴づけられ、複屈折率はΔn=(n||−n⊥)で表わされる。
繊維に偏光を照射すると、互いに直角に振動する2つの偏光に分かれる。繊維は軸の方向によって屈折率が異なるため2つの光の進む距離に差が生じる。これがレタデーションであり、Rで表わされ、繊維断面の直径をd0とすると、複屈折率と次式の関係がある。
R=d0(n||−n⊥)
繊維は光学的にフラットなスライドガラス及びカバーガラスを使用し、繊維に対して不活性な封入剤中に浸漬される。この封入剤中に数本の繊維を浸漬し、単糸が互いに接触しないようにする。さらに繊維は、その繊維軸が偏光顕微鏡の光軸及び干渉縞に対して垂直となるようにすべきである。この干渉縞のパターンを測定し、レタデーションを求め、繊維の複屈折率を測定し、10点の平均値を測定する。
【0021】
(6)制電性(表面抵抗値):温度20.5℃、湿度63%下で表面抵抗値測定器を用い
て8cm×8cmの試料片5枚を測定し、5枚の平均値を測定する。
表面抵抗値1012Ω/□以下:動的な状態でホコリが付着しない
表面抵抗値1013〜1012Ω/□:静的な状態でホコリが付着しない
表面抵抗値1013Ω/□以上:ホコリが付着する
(7)耐摩耗性(級):学振摩擦機で加重250g、回数50回摩耗して目視判定する。
A級:殆ど毛羽立ちがない
B級:少し毛羽立ちがあるが目立たない
C級:毛羽立ちが目立つ
(8)成型展開比:20cm×20cmの試料片を成型機にセットし、熱風温度150℃で予熱して、直径12cmの成型金型で熱プレスを実施した時の成型体の深さを測定し、下記の式で展開比を算出する。
展開比=成型体の深さ/成型前シートの直径
(9)成型体の表面抵抗値:成型体を展開し、温度20.5℃、湿度63%下で表面抵抗
値測定器を用いて8cm×8cmの試料片5枚を測定し、5枚の平均値を測定する。
【0022】
(実施例1〜3)
制電性物質としてポリエーテルエステルアミドブロックポリマーを用い、固有粘度0.75のポリエチレンテレフタレートに対し、含有率が5wt%(実施例1)、10wt%(実施例2)、20wt%(実施例3)の制電性物質を、吐出量0.9g/min・H、溶融温度300℃で紡出し、紡糸口金から牽引用エアーサッカーまでの距離を950mmとして、紡出糸状を紡糸速度1,800m/minで金網上に捕集して均一なウェブを取り出した。上記ウェブ(構成する繊維の性能;繊度5dtex、円形断面、ウェブ目付50g/m)を一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、部分熱圧着を行った。この時のエンボスロール凸部の単位面積が2mm、圧着面積比率18%であり、上、下ロール温度70℃の下でロール線圧400N/cmにて部分圧着した。次にこの不織布をフェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度105℃、加工速度15m/min)で熱処理を行い、本発明の不織布を得た。
得られた不織布を成型機にセットし、熱風温度150℃で予熱して、直径12cmの成型金型で熱プレスを実施し、本発明の不織布成型体を得た。
【0023】
(比較例1)
比較例1は制電性物質が含有していないポリエチレンテレフタレートを用いて実施例1と同様の方法で不織布と成型体を得た。
(比較例2) 比較例2は制電性物質が含有していないポリエチレンテレフタレート(円形断面、2dtex)を実施例と同様の方法で紡糸速度4,500m/minで紡糸し、得られた不織布ウェブを実施例と同様のエンボスロールで上、下ロール温度235℃、ロ
ール線圧40kg/cmで部分圧着したものを示す。また比較例2の不織布は糸・布伸度ともに低く成型時に不織布が破れてしまい、成型体を得ることができなかった。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示したように、本発明の実施例の制電性不織布は制電性物質の添加量が増えるにつれ制電性も向上し、成型後も制電性が変化することはなかった。また制電性物質の添加量が増えるにつれ非晶性が高くなり、糸・布伸度は向上した。100℃の時の伸度も制電性物質の添加により向上し、熱プレスによる成型性が良いことを示す。耐摩耗性についても制電性物質の添加量が増えるにつれ非晶性が向上し、熱圧接時の熱セットが容易になり表面の毛羽が抑えられ耐磨耗性が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の制電性長繊維不織布は、制電性物質を繊維自体に含有させ不織布を生成しているため繊維の非晶性が高くなり繊維とその繊維からなる不織布の伸度が向上し、成型性に優れる。また非晶性が高くなることによって非晶部分が多くなり熱圧着時の熱セットが容易になり表面の毛羽が抑えられ耐磨耗性に優れ、緩衝材、電子部品トレイ、キャリアテープ等の用途に好適に利用できる制電性長繊維不織布であるといえる。特に制電性繊維からなる不織布であることから、耐静電気性、耐防塵性、剤の乗り移り防止等の点から電子材料を収納する成型容器が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性長繊維からなる不織布であって、該繊維の複屈折率が0.025以下であり、制電性物質を3〜30wt%含有していることを特徴とする制電性不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性長繊維がポリエステル系長繊維であることを特徴とする請求項1記載の制電性不織布。
【請求項3】
前記熱可塑性長繊維不織布において、100℃での伸度が300%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制電性不織布。
【請求項4】
前記不織布の表面抵抗値が10〜1013Ω/□であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制電性不織布。
【請求項5】
不織布が2層以上からなる多層構造を有し、その少なくとも表面層が請求項1〜4のいずれかに記載の制電性不織布層であることを特徴とする多層構造の制電性不織布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制電性不織布を、熱成型で一体加工して得られることを特徴とする成型体。
【請求項7】
前記成型体において、成型加工後の表面抵抗値が10〜1013Ω/□であることを特徴とする請求項6に記載の成型体。

【公開番号】特開2009−256815(P2009−256815A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104239(P2008−104239)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】