説明

制震ビーム及び該制震ビームを有する門型ビーム

【課題】地震時における電柱の振動を抑制する。
【解決手段】制震ビーム1は、立設された1対の電柱2に架設される。制震ビーム1は、ビーム材11と、ビーム材11を電柱2に剛接合する接合部3と、ビーム材11と電柱2との間に斜設されるダンパー4とを備える。門型ビームは、線路をはさんで立設された1対の電柱2と、電柱2に架設された制震ビーム1とを有する。これにより、電柱2が振動するとき、ダンパー4が伸縮されて振動のエネルギーを吸収するので、地震時における電柱2の振動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時における電柱の振動を抑制するための制震ビーム、及び該制震ビームを有する門型ビームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図15に示されるように、鉄道の電車線路において電柱2(電化柱)が設けられている。電柱2は、電車線21及びき電線22等を支持又は引き留めるものであり、複線区間では線路の両側に立設される。電柱2には、コンクリート柱が、鋼管柱と比べると低コストであるので、多く用いられている。地震が発生した際、高架橋7上の電柱2は、盛土や切取等の土構造物上の電柱と比べて、作用する地震動が大きくなることがある。このため、山陽新幹線の高架区間では、兵庫県南部地震をモデルとするレベル2(L2)地震を想定し、地震により発生するモーメントが許容モーメントを超えるコンクリート柱には、耐震補強が実施されている。この想定では、電車線によってコンクリート柱の振動が約半分の大きさに低減されることを考慮している。耐震補強として、例えば、コンクリート柱における柱基部近傍を鉄板で囲む構造が知られている。しかしながら、高架橋によっては、コンクリート柱の柱基部周囲のスペースが狭い等の理由により、このような耐震補強が実施困難なコンクリート柱がある。
【0003】
また、鉄道の電車線路において、線路をはさんで立設された1対の電柱に固定ビームを架設した門型ビームが知られている(例えば、特許文献1参照)。門型ビームは、ビームを架設しない単独の電柱と比べると、地震時における電柱の振動が小さくなると考えられる。しかしながら、このような従来の門型ビームは、耐震補強として十分であるかは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−295420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであり、地震時における電柱の振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制震ビームは、立設された1対の電柱に架設されるものであって、ビーム材と、前記ビーム材を電柱に剛接合する接合部と、前記ビーム材と電柱との間に斜設されるダンパーとを備えることを特徴とする。
【0007】
この制震ビームにおいて、前記ビーム材に固定された長尺状の斜材を有し、前記ダンパーは、前記斜材を介して前記ビーム材に斜設されることが好ましい。
【0008】
この制震ビームにおいて、前記ダンパーは、摩擦履歴型ダンパーであることが好ましい。
【0009】
この制震ビームにおいて、前記摩擦履歴型ダンパーは、発生する抵抗力が加振速度の0.1乗に略比例することが好ましい。
【0010】
本発明の門型ビームは、線路をはさんで立設された1対の電柱と、前記電柱に架設された前記制震ビームとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電柱が振動するとき、ダンパーが伸縮されて振動のエネルギーを吸収するので、地震時における電柱の振動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る制震ビームの正面図。
【図2】同制震ビームにおけるダンパーの平面図。
【図3】同ダンパーの正面図。
【図4】同ダンパーにおける変位に対する抵抗力の履歴曲線を示す図。
【図5】同制震ビームを有する門型ビームの正面図。
【図6】同制震ビームのダンパーにおける抵抗力の速度依存の近似式のグラフ。
【図7】同ダンパーを有する門型ビームのシミュレーションにおけるモデルを示す正面図。
【図8】同シミュレーションにおける入力地震波形を示す図。
【図9】同シミュレーションにおける門型ビームの変形の一例を示す斜視図。
【図10】同シミュレーションにおけるダンパー変位とダンパー角度との関係を示すグラフ。
【図11】同シミュレーションにおけるダンパー累積吸収エネルギー量とダンパー角度との関係を示すグラフ。
【図12】(a)は加振実験における本発明の実施例の正面図、(b)は同実験における比較例の正面図、(c)は同実験における別の比較例の正面図。
【図13】同実験における実施例及び比較例の配置を示す平面図。
【図14】同実験における本加振の入力波形を示す図。
【図15】従来の高架橋上の門型ビームの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る制震ビームを図1乃至図4を参照して説明する。図1に示されるように、制震ビーム1は、立設された1対の電柱2に架設されるものである。電柱2は、制震ビーム1の構成要素ではない。制震ビーム1は、ビーム材11と、ビーム材11を電柱2に剛接合する接合部3と、ダンパー4とを備える。ダンパー4は、ビーム材11と電柱2との間に斜設される。
【0014】
ビーム材11は、線路上空を横断して電柱2の頂部近傍に架設される剛性の高い梁部材であり、本実施形態では鋼管である。ビーム材11を鋼材を組み合わせたトラスとしてもよい。
【0015】
接合部3は、一対の略半円筒状の挟持部材31、32を有する。各々の挟持部材31、32は、突き合せ部分にフランジを有する。一方の挟持部材31は、ビーム材11が固定されており、固定部分に補強リブを有する。電柱2を両方の挟持部材31、32で囲み、フランジ同士をボルト締結することによって電柱2が挟持部材31、32で挟持される。
【0016】
ダンパー4は、振動のエネルギーを吸収するものである。制震ビーム1は、ビーム材11の下部に溶接された長尺状の斜材12を有する。斜材12は、鋼管であり、ビーム材11に対してダンパー4と同じ角度を成す。斜材12の下端近傍は、鋼管から成る縦部材13によってビーム材11に固定される。ダンパー4は、斜材12を介してビーム材11に斜設される。斜材12及び縦部材13は、トラスとしてもよい。
【0017】
図2及び図3に示されるように、ダンパー4は、ダンパー本体41と、二山クレビス42、43とを有する。一方の二山クレビス42は、ダンパー本体41の一端にピン接合され、ビーム材11側、すなわち斜材12に取り付けられる。他方の二山クレビス43は、ダンパー本体41の他端にピン接合され、電柱2を挟持する部材によって電柱2に取り付けられる。
【0018】
ダンパー4は、本実施形態では、摩擦履歴型ダンパーであり、ダンパー本体41内にある充填材の流動抵抗力によって振動のエネルギーを吸収する。図4に示されるように、摩擦履歴型ダンパーは、初期のストロークで抵抗力を発生し、変位に対する抵抗力の履歴曲線が略長方形である。ダンパー4が吸収するエネルギーは、抵抗力を変位で積分した値、すなわち履歴曲線で囲まれる面積となる。摩擦履歴型ダンパーは、履歴曲線が略長方形であるので、エネルギー吸収率が高い特性を有する。ダンパー4は、摩擦履歴型ダンパーに限定されるものではなく、例えば、オイルダンパー、粘弾性ダンパー等であってもよい。
【0019】
上記のように構成された制震ビーム1において、1対の電柱2がビーム材11と平行に同位相で振動するとき、ダンパー4が伸縮されて振動のエネルギーを吸収するので、地震時における電柱2の振動が抑制される(図1参照)。1対の電柱2は、ビーム材11及び接合部3によって接合されるので、ビーム材11と平行な逆位相では、ほとんど振動しない。なお、電柱2に生じるビーム材11に直交する方向の振動、すなわち電柱2が支持する電車線に沿った方向の振動は、電車線によって低減される。また、接合部3がビーム材11と電柱2とを剛接合することによってラーメン構造が形成されるので、地震時における電柱2の振動が小さくなる。ダンパー4は、斜材12を介してビーム材11に斜設されるので、斜材12の長さの設定によって、ダンパー4の抵抗力がビーム材11に作用する位置を調整することができる。
【0020】
図5は、制震ビーム1を用いて構成した門型ビームを示す。この門型ビーム5は、制震ビーム1と、線路をはさんで立設された1対の電柱2とを有する。電柱2は、コンクリート柱である。電柱2には、電車線21を支持する可動ブラケット23が取り付けられている。き電線を架空式で設ける場合、門型ビーム5は、制震ビーム1上に、き電線(図示せず)を吊下するためのやぐら24を有する。き電線を地中ケーブルとする場合等においては、やぐら24は省略される。
【0021】
上記のように構成された門型ビーム5は、地震時における電柱2の振動が制震ビーム1によって抑制される。制震ビーム1は、耐震補強用の鉄板で囲む高さ範囲よりも高い位置に架設されるので、鉄板で囲む耐震補強が実施困難な電柱の耐震補強に用いることができる。電柱2の振動が制震ビーム1によって抑制されるので、やぐら24の振動が低減され、き電線の振動が低減される。
【0022】
本実施形態の制震ビーム1におけるダンパー4のビーム材11に対する角度(ダンパー角度)について、数値シミュレーションを行った。このシミュレーションを図6乃至図11を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のダンパー4は、速度V=0.1m/sで加振したとき、定格抵抗力Fr=50kNを発生し、速度V=0.3m/sで加振したとき、定格抵抗力Frより12%大きな抵抗力を発生する。図6に示されるように、ダンパー4の抵抗力F[kN]は、速度V[m/s]の0.1乗に比例する速度依存式、F=aV0.1で近似される。aは、定格抵抗力Frとそのときの速度Vより決められる定数であり、ビンガム定数と呼ばれる。本シミュレーションでは、速度依存を考慮した解析を行うことができる動的解析ソフトを使用し、ダンパー4についてF=aV0.1の速度依存式に基づくモデルを採用した。ダンパー4の特性は、これに限定されるものではない。
【0024】
本シミュレーションにおける門型ビーム5のモデルを図7に示す。電柱2は、高さ9mのコンクリート柱とした。2本の電柱2の間隔は、8.5mとした。電柱2の頂部(柱天端近傍)に制震ビーム1を架設した。制震ビーム1のビーム材11は、水平とした。ダンパー4は、斜材12を介してビーム材11に斜設した。ダンパー4による抵抗力は、電柱2から中央側に4mの位置においてビーム材11に作用する。ダンパー4は、ビーム材11に対して角度θ[°]を成す。本シミュレーションでは、角度θは可変とした。また、ダンパー4の有無による影響を比較するため、ダンパー4を設けない門型ビームについてもシミュレーションを行った。ダンパーなしの条件では、ビーム材11と電柱2との間にブレースを剛接合した。ブレースは、ビーム材11と角度θを成す。
【0025】
上記のように構成された門型ビーム5のモデルに、地震波形を入力し、ビーム材11に平行なX方向に加振するシミュレーションをした。図8に示されるように、入力地震波形は、レベル2(L2)地震の地震動とした。
【0026】
この地震波形を入力した際の門型ビーム5の変形の一例を図9に示す。この例は、ダンパーなし、ビーム材11とブレース14との成す角度θが30°の条件におけるシミュレーション結果である。地震波形を入力しないときの門型ビーム5の形状を一点鎖線、地震波形を入力して最大変形したときの門型ビーム5の形状を実線で示している。1対の電柱2の柱天端が同じ方向に変位している。
【0027】
図10は、門型ビーム5のダンパー4の変位[m]を示す。角度θが10°乃至45°のとき、ダンパー4に変位が生じた。角度θが30°のとき、ダンパー4の変位が最大となった。ダンパー4は、この変位によって抵抗力を発生し、振動のエネルギーを吸収する。
【0028】
図11は、門型ビーム5のダンパー4の累積吸収エネルギー量[kJ]を示す。角度θが20°乃至45°のとき、ダンパー4が顕著に振動のエネルギーを吸収した。角度θが30°のとき、ダンパー4の累積吸収エネルギー量が最大となった。
【0029】
このように、「ダンパーあり」の場合、地震時にダンパー4が振動のエネルギーを吸収するので、電柱2の振動が減衰することになる。「ダンパーなし」の場合、ブレースは、振動のエネルギーを吸収しない。本シミュレーションによれば、ダンパー4の累積吸収エネルギー量の計算結果から、ダンパー4は、ビーム材11に対して20°乃至45°の角度を成すことが好ましく、特に30°が好ましい。ダンパー角度は、この角度範囲に限定されるものではない。
【0030】
本発明の実施例としての門型ビーム、及び比較例としての門型ビーム、単独の電柱について加振実験を行った。この加振実験を図12乃至図14を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例として、図12(a)に示されるように、制震ビーム1を有する門型ビーム5を製作した。電柱2として、外形40cm、長さ10mのプレストレストコンクリート柱(10−40−T11B)を使用した。プレストレストコンクリート柱は、緊張線材によってコンクリート部材にプレストレスをかけたコンクリート柱である。使用されている鉄筋は、直径9mm緊張線材が69.86kg、直径9.2mmの非緊張線材が11.484kg、直径3mmの用心鉄筋が14.982kgである。コンクリートの体積は0.629mである。電柱2の質量は、1,660kgである。この電柱2の部材特性を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
曲げひび割れ発生時の曲げモーメントMcは74.6kNmであり、このときの柱基部曲げ縁ひずみは圧縮353μst(マイクロストレイン)、引張353μstである。降伏時の曲げモーメントMyは157.7kNmであり、このときの柱基部曲げ縁ひずみは圧縮1268μst、圧縮2991μstである。圧縮縁のコンクリート歪が終局ひずみ到達時の曲げモーメントMuは228.0kNmであり、このときの柱基部曲げ縁ひずみは圧縮2795μst、引張7953μstである。
【0034】
電柱2の柱天端から下に3000mmの位置に模擬錘25を取り付けた。模擬錘25は、電柱2が支持する電車線等の荷重を模擬するものである。
【0035】
この電柱2を鋼製の円筒状の固定治具61に差し込み、固定治具61と電柱2との隙間にモルタルを注入した。固定治具61は、振動台6に固定されており、電柱2は固定治具61を介して振動台6に固定される。このような電柱2の固定は、山陽新幹線におけるモルタル詰めの投げ込み基礎を模擬したものである。電柱2の間隔は、3500mmとした。
【0036】
振動台6上に固定した2本の電柱2に制震ビーム1を架設した。制震ビーム1のビーム材11は、鋼管とした。ビーム材11の高さは、電柱2の柱天端から下に500mmの位置とした。ビーム材11には斜材12が溶接されており、斜材12と一方の電柱2との間にダンパー4を取り付けた。ダンパー4とビーム材11の成す角度は30°とした。ダンパー4は、定格抵抗力が50kNであり、シミュレーションで用いたダンパーと同じ特性を有する摩擦履歴型ダンパーとした。
【0037】
(比較例1)
比較例1として、図12(b)に示されるように、固定ビーム101を有する門型ビーム105を製作し、振動台6に固定した。固定ビーム101は、ビーム材11及び接合部3を有するが、ダンパー4及び斜材12を有しない。それ以外は、実施例と同様にした。
【0038】
(比較例2)
比較例2として、図12(c)に示されるように、ビームで補強しない単独の電柱2を振動台6に固定した。それ以外は、実施例と同様にした。
【0039】
(加振実験)
図13に示されるように、実施例の門型ビーム5、及び比較例1の門型ビーム105、比較例2の電柱2を振動台6上に配置し、同時に加振し、各種測定を行った。加振は、ビーム材11に平行な水平X方向の1次元加振とした。本加振の入力波形を図14に示す。この入力波形は、L2地震動(大規模地震動)で考慮する内陸型地震を対象とする弾性加速度応答スペクトル(Sp2)を有する。本加振における最大加速度は可変とした。実施した加振実験のうち代表的な3ケースについて主な実験データを表2に示す。なお、加速度の単位1Galは、SI単位では0.01m/sである。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示していないケースも含め、入力波形Sp2の350Gal入力までは電柱2に曲げひび割れが発生しないように、無補強である比較例2における柱基部の最大ひずみが、Mc時のひずみ(表1参照)を超えないように管理しながら加振を実施した。次に、L2地震を想定した設計波として、入力波形Sp2の2547Gal入力の加振を実施した。さらに、設計波よりも約2割増しの3000Gal入力の加振を実施した。
【0042】
(柱頂部の最大応答加速度)
設計波である入力波形Sp2の2547Gal入力で、比較例2は、電柱2の柱頂部の最大応答加速度が7139Galとなり、柱基部(振動台6から1.2m)の最大ひずみがMu時のひずみを超えた。比較例1は、6415Gal(比較例2の90%)、実施例は、4242Gal(比較例2の59%)であった。
【0043】
入力波形Sp2の3000Gal入力で、比較例1は、柱頂部の最大応答加速度が8123Galとなり、柱基部の最大ひずみがMu時のひずみを超えた。実施例は、5088Galであり、比較例1に対して63%に抑制された。比較例2は、2547Gal入力のときよりも加速度が低下したが、これは、2547Galの加振でMuに達したことから、電柱2が塑性化して剛性が低下したためと考えられる。
【0044】
(柱頂部の振動台に対する最大相対変位)
設計波である入力波形Sp2の2547Gal入力で、比較例2は、柱頂部の振動台6に対する最大相対変位が56.7cmとなり、大きく変位した。比較例1は24.3cm(比較例2の43%)、実施例は24.7cm(比較例2の44%)であり、ともに良好な変位抑制効果を示し、両者の差は見られなかった。
【0045】
入力波形Sp2の3000Gal入力で、比較例2は、柱頂部の最大相対変位が63.2cm、比較例1は45.1cm(比較例2の71%)、実施例は30.2cm(比較例2の48%)であり、実施例の制震ビーム1による変位抑制効果が顕著となった。これは、3000Gal入力で、実施例は、柱基部の最大ひずみがMu時のひずみに至らなかったが、比較例1では、Mu時のひずみを大きく超えたことから、電柱2が塑性化したためと考えられる。
【0046】
(電柱の最大縁ひずみ)
入力波形Sp2の350Gal入力で、実施例、比較例1、比較例2は、いずれも電柱2の最大縁ひずみが柱全長に亘ってMc時のひずみを超えなかった。
【0047】
設計波である入力波形Sp2の2547Gal入力で、比較例2は、柱基部(振動台6から1.2m及び1.4m)の最大縁ひずみがMu時のひずみを超えた。実施例、比較例1は、柱基部の最大縁ひずみがMy時のひずみを超えたが、Mu時のひずみには至らなかった。
【0048】
入力波形Sp2の3000Gal入力で、比較例1は、柱基部の最大縁ひずみがMu時のひずみを超え、柱頂部の最大縁ひずみがMy時のひずみを超えた。実施例は、柱基部の最大縁ひずみがMu時のひずみを超えず、柱頂部の最大縁ひずみがMy時のひずみを超えなかった。
【0049】
(加振実験結果の評価)
制震ビーム1を有する実施例、及び固定ビームを有する比較例1は、設計波である入力波形Sp2の2547Gal入力に対し、コンクリート柱の応答が終局ひずみ(Mu)未満となり、兵庫県南部地震と同等レベルの地震に対して耐震性能を有することが確認された。制震ビーム1を有する実施例は、設計波を上回る入力波形Sp2の3000Gal入力に対しても、コンクリート柱の応答が終局ひずみ(Mu)未満となり、兵庫県南部地震のレベルを超える地震に対しても耐震性能を有することが確認された。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、制震ビーム1は、在来線の電柱2に架設してもよい。また、電柱2は、コンクリート柱に限定されず、例えば、山形鋼やみぞ形鋼を組み合わせて構成した組合せ柱(かご型鉄柱)であってもよく、鋼管柱であってもよい。鋼管柱等に制震ビーム1を架設することによって、耐震性能がさらに向上する。また、ダンパー4は、1対の電柱2の少なくとも1方の電柱2とビーム材11との間に斜設すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 制震ビーム
11 ビーム材
12 斜材
2 電柱
3 接合部
4 ダンパー
5 門型ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された1対の電柱に架設される制震ビームであって、
ビーム材と、
前記ビーム材を電柱に剛接合する接合部と、
前記ビーム材と電柱との間に斜設されるダンパーとを備えることを特徴とする制震ビーム。
【請求項2】
前記ビーム材に固定された長尺状の斜材を有し、
前記ダンパーは、前記斜材を介して前記ビーム材に斜設されることを特徴とする請求項1に記載の制震ビーム。
【請求項3】
前記ダンパーは、摩擦履歴型ダンパーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制震ビーム。
【請求項4】
前記摩擦履歴型ダンパーは、発生する抵抗力が加振速度の0.1乗に略比例することを特徴とする請求項3に記載の制震ビーム。
【請求項5】
線路をはさんで立設された1対の電柱と、
前記電柱に架設された請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の制震ビームとを有することを特徴とする門型ビーム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−39873(P2013−39873A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178087(P2011−178087)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【出願人】(391042380)八千代工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】