制震建物


【課題】ラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体が鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接するように並立され、両構造体が前記の間隔部分を相互に短スパン梁若しくは境界梁等に代わる連結手段である回転式摩擦ダンパーユニットで連結して構築した制震建物を提供する。
【解決手段】梁材30の両側に一対の回転式摩擦ダンパー3A、3Bを連結してなる回転式摩擦ダンパーユニット3が、鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接し並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11の間隔部分2の鉛直方向に間隔を開けて複数配置され、回転式摩擦ダンパーユニット3の両側に位置する回転式摩擦ダンパー3A、3Bの端部6aを、並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11と緊結して構築されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体が鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接するように並立され、両構造体が前記の間隔部分を相互に短スパン梁若しくは境界梁等に代わる連結手段である回転式摩擦ダンパーユニットで連結して構築した制震建物の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の耐震設計法としては、建物の躯体を構成する柱、梁、壁などを地震力に抵抗する耐震要素とし、これらの各耐震要素に一定の強度、剛性を付与する設計法により、例えば中小の地震には各耐震要素の剛性で抵抗し、中以上の大地震に対してはいずれかの耐震要素が降伏して地震入力を吸収し減衰して建物の倒壊を防ぐ技術的思想が採用されている。
その一例として、ラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体が鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接するように並立する場合に、両構造体を前記の間隔部分で相互に短スパン梁若しくは境界梁等により連結した制震建物が知られている。
しかし、上記の耐震設計法は、中小規模の地震に対しては各耐震要素の剛性が大きすぎたり、部材寸法と重量が大きすぎるという不経済性が発生しやすい。あるいは逆に、中規模以上の大地震に対しては耐震要素の降伏応力が小さすぎ、建物倒壊の危険を招く懸念があるなど、設計の自由度が制限される問題点が知られている。
【0003】
上記問題点の解決を目的として、下記の特許文献1に開示された発明「柔剛混合構造」は、建物のコア部をRC造の連層壁で構成すると共に該連層壁の中央部に上下方向に連続する隙間部を設け、この隙間部に水平に鉄骨梁(ダンパー)を配置して、その両端を連層壁へ埋設し連結した構成が提案されている。前記の鉄骨梁は、普通鋼材又は極低降伏点鋼材からなるものとし、前記連層壁が形成する上下方向の隙間部へ、上下方向に所定の間隔を開けて複数配置されている。
したがって、上記鉄骨梁(鋼材ダンパー)の種類、材質、形状および配置の位置などを連層壁の剛性、耐力に応じて選択、調製することにより、躯体を構成する柱や梁などは大地震時においても弾性的挙動の範囲内に納まる設計法が可能となり、耐震性に優れた建物構造を設計する自由度があると説明している。
また、特許文献1の発明は、ダンパーとして、上記鉄骨梁(鋼材ダンパー)のほかに、履歴減衰型ダンパーや粘性減衰型ダンパーを適用可能であるとも説明している(段落番号0008の5行〜10行目)。
【0004】
一方、下記の特許文献2には、建物の免震化手段として、免震層へ、水平方向に回転させる態様で回転式摩擦ダンパーを設置した免震建物が提案されている。
【特許文献1】特許第3807065号(特開平11−172953号)公報
【特許文献2】特開2006−161362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された「柔剛混合構造」は、ダンパーとして鉄骨梁(鋼材ダンパー)のほか、履歴減衰型ダンパーや粘性減衰型ダンパーを適用可能であると説明しているが、その耐震性の作用原理は、大規模な地震が発生して連層壁が変形した際に、内蔵された鉄骨梁が剪断及び/又は曲げ降伏することによって地震エネルギーを吸収し、ラーメン架構は地震時の変形に応じて弾性的挙動をすることにより変形に追従するもの(同公報の段落番号0013の5行以下の記載)と認められる。
つまり、鉄骨梁が剪断及び/又は曲げ降伏することで地震エネルギーを吸収する作用に耐震性能を依存していることが明らかで、鉄骨梁が剪断及び/又は曲げ降伏をする以前の弾性的挙動の範囲内、換言すれば、中小以下の地震に対しては制震作用を期待できないことが明らかである。
【0006】
本発明の目的は、制震架構に回転式摩擦ダンパー(回転式摩擦ダンパーユニット)を採用することにより、地震応答によりラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体が大なり小なりの変形を生ずる限り、その変形を利用して地震エネルギーの吸収、減衰作用を効率行わしめることができ、地震の規模の大小にかかわらず、必要な制震機能を発揮する制震建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明に係る制震建物は、
ラーメン構造体1又は耐震壁付きラーメン構造体11が鉛直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立され、両構造体が前記の間隔部分を相互に短スパン梁若しくは境界梁等で連結される制震建物において、
梁材30の両側に一対の回転式摩擦ダンパー3A、3Bを連結してなる回転式摩擦ダンパーユニット3が、短スパン梁若しくは境界梁等に代わる連結手段として、前記鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接し並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11の前記間隔部分2の鉛直方向に間隔を開けて複数配置され、前記回転式摩擦ダンパーユニット3の両側に位置する回転式摩擦ダンパー3A、3Bの端部6aを、並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11と緊結して構築されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した制震建物において、
上記回転式摩擦ダンパー3A、3Bは、共通な回転軸34の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアーム31、32で構成され、前記ダンパーアーム31、32はプレート材で構成され、前記二方向のダンパーアーム31、32の回転軸34回りの側面の相互間に摩擦パッド33が挟まれ、前記回転軸34の両端部へ締結したナット37の加圧力が前記摩擦パッド33とダンパーアーム31、32との接触面へ面圧力として付与されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した制震建物において、
上記回転式摩擦ダンパーユニット3は、上記共通な回転軸34の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアーム31、32で構成された回転式摩擦ダンパー3A、3Bの一方のダンパーアーム32を中間に位置する梁材30と緊結して同梁材30の両側に対をなす二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bが連結された構成であり、前記二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bそれぞれの他方のダンパーアーム31の端部が、並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11と緊結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の制震建物は、鉛直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立する二つのラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11が、地震応答により、剪断変形が卓越する剪断変形モード又は/及び曲げ変形が卓越する曲げ変形モードの変形を発生すると、これら並立する二つの構造体1、1又は11、11を連結した回転式摩擦ダンパーユニット3を構成する両側二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bが、その中間に位置する剛体としての梁材30を挟んで二次元的に屈曲する変形をし、各回転式摩擦ダンパー3A、3Bの二方向のダンパーアーム31、32に相対的な回転変位を与える。こうしたダンパーアーム31、32の相対的な回転変位に伴い、両者間の摩擦パッド33に一定大きさの摩擦力が発生して地震エネルギーを吸収し減衰する。
即ち、回転式摩擦ダンパーユニット3は、従前の短スパン梁若しくは境界梁等とは異なり、両側二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bそれぞれの二方向のダンパーアーム31、32に相対的な回転変位が与えられるかぎり、同回転変位の大小に拘わらず、摩擦パッド33に一定大きさの摩擦力を発生して、相対的な回転変位量に比例する大きさの地震エネルギーを吸収し減衰するから、並立するラーメン構造体1又は耐震壁付きラーメン構造体11の地震応答を軽減して制震効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
梁材30の両側に一対の回転式摩擦ダンパー3A、3Bを連結してなる回転式摩擦ダンパーユニット3を、短スパン梁若しくは境界梁等に代わる連結手段として、鉛直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11の前記間隔部分2の鉛直方向に間隔を開けて複数配置し、前記回転式摩擦ダンパーユニット3の両側に位置する回転式摩擦ダンパー3A、3Bの端部6aを、並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11と緊結して制震架構を構築する。
【0012】
上記回転式摩擦ダンパー3A、3Bは、共通な回転軸34の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアーム31、32で構成する。前記ダンパーアーム31、32はプレート材で構成し、前記二方向のダンパーアーム31、32の回転軸34回りの側面の相互間に摩擦パッド33を挟ませ、前記回転軸34の両端部へ締結したナット37の加圧力を前記摩擦パッド33とダンパーアーム31、32との接触面へ面圧力として付与する。
上記回転式摩擦ダンパーユニット3は、上記共通な回転軸34の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアーム31、32で構成された回転式摩擦ダンパー3A、3Bの一方のダンパーアーム32を、中間に位置する梁材30と緊結して同梁材30の両側に対をなす二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bと連結した構成である。前記二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bそれぞれの他方のダンパーアーム31の端部を、並立するラーメン構造体1、1又は耐震壁付きラーメン構造体11、11と緊結する。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
先ず図1A、Bに示した制震建物は、二つの純ラーメン構造体1、1が鉛直方向に連続する間隔2を開けて隣接するように並立する場合に、前記の間隔部分2において構造体1、1を相互に連結する手段として、図2A、Bに示す構成の回転式摩擦ダンパーユニット3が使用されている。即ち、前記回転式摩擦ダンパーユニット3が、前記間隔部分2の鉛直(上下)方向に間隔を開けて複数配置され、対をなす両側の回転式摩擦ダンパー3A、3Bの端部を、並立する二つの純ラーメン構造体1、1と緊結して制震架構が構築されている。
したがって、図2B中に細線で例示したようにせん断変形が卓越するせん断変形モードが支配的な地震応答の建物について、図2A、Bに示す構成の回転式摩擦ダンパーユニット3による制震作用で前記の地震応答を低減し減衰する構成である。
図1B中に示す符号8は、前記回転式摩擦ダンパーユニット3の設置位置よりも少し上方の位置に、隣接する二つの純ラーメン構造体1、1を連絡するべく設けた跳ね出しスラブである。
【0014】
上記回転式摩擦ダンパーユニット3の具体的な構成を図2A、Bに拡大して示した。
上記したように間隔2を開けて隣接し並立する二つの純ラーメン構造体1、1を相互に連結する回転式摩擦ダンパーユニット3は、中間位置に軸力を負担可能な梁材30を備え、同梁材30の両側に、一対をなす二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bを対称的配置に連結した構成とされている。
前記梁材30は、並立する二つの純ラーメン構造体1、1の間隔2の大きさに応じてその長さが調整される材で、回転式摩擦ダンパーユニット3が負担する設計荷重の軸力に耐える構造であれば、RC造又はSRC造であるか、又は単なる鉄骨造であるかの別を問わない。
梁材30の両側に対称的配置に連結された二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bの構成は共通しており、回転軸34の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアーム31、32を主要部として構成されている。前記二方向のダンパーアーム31、32は鋼板等の広幅なプレート材で構成されている。該二方向のダンパーアーム31、32は互い違いの配置とされ、回転軸34回りの側面の相互間に摩擦パッド33が挟み込まれている。前記回転軸34には、両端にねじ切りしたボルト構造の軸材が使用され、前記摩擦パッド33との接触面へ一定大きさの面圧力を恒常的に付与する弾性体として図示例では皿バネ35を介在させた上で、前記回転軸34の両端へねじ込んだナット37で、前記ダンパーアーム31、32と摩擦パッド33との接触面間に設計大きさの面圧力を加えた構成とされている。
【0015】
上記のように、ナット37の締結力により発生した面圧力の大きさが、二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bにおいて、二方向のダンパーアーム31、32が相対的な回転変位を生じた際に発生する摩擦力の大きさを決定する。よって、前記ナット37により加える締結力、及び皿バネ35の圧力が摩擦パッド33とダンパーアーム31、32の接触面へ平均して作用するように、回転軸34の両端部に摩擦パッド33とほぼ同径の座金36が使用されている。因みに、前記摩擦パッド33としては、例えばアラミド繊維に真鍮や鉄などの金属繊維を編み込んだ摩擦繊維を、熱硬化性樹脂で接着して平板状に固めた、いわゆるブレーキパッドなどが好適に使用される。
また、図2A、Bに示した実施例の回転式摩擦ダンパー3A、3Bは、図2Aが分かりやすいように、二方向のダンパーアーム31、32がそれぞれ、地震力を受けて座屈を生じないように、構造物1、1と緊結する側(両外側)のダンパーアーム31は、間隔を開けて配置した2枚のプレート材で構成され、反対側(梁材30と緊結する側)のダンパーアーム32は、前記外側のダンパーアーム31とは互い違いに配置した3枚のプレート材で構成されている。そして、各ダンパーアーム31、32は、各々の相互間に摩擦パッド33を挟んで効率良く摩擦力を発生する構成とされている。
したがって、各回転式摩擦ダンパー3A、3Bが発生する摩擦力の大きさ(初期値)は、回転軸34へ締結したナット37の締め付けトルクの大きさに比例するものとして、設置時に広範囲に精度良く確実に設定することができる。
上記二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bはそれぞれ、梁材30と緊結する側のダンパーアーム32の先端ベース板6aを、梁材30を貫通する配置で予め埋設して用意したアンカーボルト5aを利用し、ダブルナット5cにより緊結して回転式摩擦ダンパーユニット3が構成されている。
【0016】
上記構成の回転式摩擦ダンパーユニット3は、図2A、Bに示した構成で、上記図1Bに示したように並立する二つの純ラーメン構造体1、1の連結に使用し制震架構が構築されている。即ち、柱1aと梁1b、および桁材1c等で構成された純ラーメン構造体1、1が垂直方向に連続する若干の間隔2を開けて隣接し並立する場合に、前記の間隔部分2を形成する両隣りの柱1a、1aにおける各階の梁位置近傍の外側面に、間隔部分2の方へ若干突き出る取り付け座1dを設けると共に、前記取り付け座1dには予めアンカーボルト5を埋設して用意する。その上で、取り付け座1dのアンカーボルト5へ、回転式摩擦ダンパーユニット3における両側の回転式摩擦ダンパー3A、3Bの両外側のダンパーアーム31の先端ベース板6aをダブルナット5cにより緊結して連結が行われている。
かくして、図1Bのように並立する二つの純ラーメン構造体1、1は、回転式摩擦ダンパーユニット3の中間に位置する梁材30と、その両側に対称的に配置された二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bとが一直線状に延びた配置形態で連結されている。したがって、隣接する二つの純ラーメン構造体1、1が、地震応答として、図1B中に細線で例示したせん断変形が卓越するせん断変形モードの変形を生ずると、二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bを構成する二方向のダンパーアーム31、32には、太線の模擬線イで例示したように二次元の相対的な回転変位が付与され、上述した摩擦力による制震作用が奏される。
【0017】
即ち、図1に示す実施例の制震建物が、地震応答として、隣接する二つの純ラーメン構造体1、1に図1B中に細線で例示した剪断変形を発生すると、二つの純ラーメン構造体1、1の変形にしたがい、各回転式摩擦ダンパーユニット3における二つのダンパーアーム31、32に相対的な回転変位が伝達され、その回転変位に比例する摩擦力で抵抗しつつ地震エネルギーを吸収して制震効果を発揮するのである。
この制震作用と制震効果は、当該制震建物を構成する二つの隣接する純ラーメン構造体1、1を間隔部分2において相互間を連結した複数の回転式摩擦ダンパーユニット3が発生する摩擦力の総和として働くから、必要十分に大きな制震効果を発揮するのである。
【0018】
なお、図1Aは、当該制震建物は、隣接する二つの純ラーメン構造体1、1がコア部を構成する場合の実施例として示したが、この限りではない。極端な場合、純ラーメン構造で成る二つの建物が、相互間に垂直方向に連続する一定の間隔を開けて隣接し並立する場合にも、同様な制震架構を構成して実施することができる。
【実施例2】
【0019】
次に、図3に示した制震建物は、 ラーメン架構の面内に耐震壁9を付設して成る耐震壁付きラーメン構造体11、11が、やはり鉛直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立する場合に、その間隔部分2において、両隣の構造体11、11を、上記図2A、Bで説明した構成の回転式摩擦ダンパーユニット3を鉛直(上下)方向に間隔を開けて複数配置して連結し制震架構を構築した実施例を示す。その具体的な構成は、上記実施例1と大部分共通するので、その説明を援用して、更なる重複説明は省略する。
本実施例2の制震建物の場合も、その地震応答は、図3中に細線で例示したように、せん断変形が卓越するせん断変形モードの変形を生ずるので、上記実施例1と同様に、回転式摩擦ダンパーユニット3は、地震応答時には両側二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bを構成する二方向のダンパーアーム31、32が、太線の模擬線ロで例示したように二つの純ラーメン構造体11、11のせん断変形に応じて相対的な回転変位を伝達され、その回転変位に比例する摩擦力で抵抗しつつ地震エネルギーを吸収して制震効果を発揮するのである。
【実施例3】
【0020】
更に、図4に示した制震建物は、図3の実施例と同じく、 ラーメン架構の面内に耐震壁9を付設して成る耐震壁付きラーメン構造体11、11が、垂直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立する場合に、その間隔部分2において隣接する二つの構造体11、11を相互に上記構成の回転式摩擦ダンパーユニット3で連結して制震架構が構築されている。
但し、本実施例3の場合は、並立する耐震壁付きラーメン構造体11、11のアスペクト比が大きく、よって地震応答は細線で例示したように曲げ変形が卓越する曲げ変形モードの変形を生ずることが特徴である。
しかし、本実施例3の場合も、上記構成の回転式摩擦ダンパーユニット3は、垂直方向に連続する間隔2を開けて隣接し並立する間隔部分の鉛直方向にを開けて複数配置し、各回転式摩擦ダンパーユニット3の両側二つの回転式摩擦ダンパー3A、3Bそれぞれのダンパーアーム31の端部(先端ベース板6a)を、両隣りの耐震壁付きラーメン構造体11、11と図2A、Bに例示した構成態様で緊結して制震架構が構築されている。その具体的な構成は、大部分が上記実施例1、2と共通するので、その説明を援用する。
【0021】
図4に示した制震建物の地震応答は、図中に細線で例示したように曲げ変形が卓越する曲げ変形モードの変形を生ずるので、間隔部分2で両構造体11、11を連結する回転式摩擦ダンパーユニット3の上下方向の間隔は、図1Bおよび図3のそれがほぼ等間隔であるのに対して、図4の実施例では、曲げ変形が集中する上階部分の間隔を狭めて集中的に設置し、地震エネルギーの吸収、減衰の効果を高める構成としている。
【0022】
以上に本発明を実施例に基づいて説明したが、もとより、本発明の技術的範囲は実施例の構成に限定されるものではない。いわゆる当業者が必要に応じて行う設計変更や変形応用の範囲も包含することを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】A、Bは本発明に係る制震建物の実施例1を概念的に示した平面図と立面図である。
【図2】A、Bは回転式摩擦ダンパーユニットの実施例を制震建物への適用状態で示した平面図と正面図である。
【図3】本発明に係る制震建物の実施例2を概念的に示した立面図である。
【図4】本発明に係る制震建物の実施例3を概念的に示した立面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ラーメン構造体
11 耐震壁付きラーメン構造体
2 間隔部分
3 回転式摩擦ダンパーユニット
3A、3B 一対の回転式摩擦ダンパー
30 梁材
31、32 ダンパーアーム
33 摩擦パッド
34 回転軸
35 弾性体(皿バネ)
37 ナット
6a 先端ベース板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体が鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接し並立され、両構造体が前記間隔部分を相互に短スパン梁若しくは境界梁等で連結される制震建物において、
梁材の両側に一対の回転式摩擦ダンパーを連結して成る回転式摩擦ダンパーユニットが、短スパン梁若しくは境界梁等に代わる連結手段として、前記鉛直方向に連続する間隔を開けて隣接し並立するラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体の前記間隔部分に鉛直方向に間隔をあけて複数配置され、前記回転式摩擦ダンパーユニットの両側に位置する回転式摩擦ダンパーの端部を並立するラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体と緊結して構築されていることを特徴とする、制震建物。
【請求項2】
回転式摩擦ダンパーは、共通な回転軸の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアームで構成され、前記のダンパーアームはプレート材で構成され、前記二方向のダンパーアームの回転軸回りの側面の相互間に摩擦パッドが挟まれ、前記回転軸の両端部へ締結したナットの加圧力が前記摩擦パッドとダンパーアームとの接触面へ面圧力として付与されていることを特徴とする、請求項1に記載した制震建物。
【請求項3】
回転式摩擦ダンパーユニットは、上記共通な回転軸の回りを相対的に回転する二方向のダンパーアームで構成された回転式摩擦ダンパーの一方のダンパーアームを中間に位置する梁材と緊結して同梁材の両側に対をなす二つの回転式摩擦ダンパーが連結された構成であり、前記二つの回転式摩擦ダンパーそれぞれの他方のダンパーアームの端部が、並立するラーメン構造体又は耐震壁付きラーメン構造体と緊結されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した制震建物。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【公開番号】特開2010−53615(P2010−53615A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
固定構造物 | 建築物 | 特定目的の建築物または類似の構築物;水泳または水遊び用の水槽またはプール;マスト;囲い;テントまたは天蓋一般 | 異状な外部の影響,例.戦争行為,地震,はげしい気候,に耐えるために適し,あるいは防護を備えた,建築物,建築物のグループまたは避難所 | 地震または地盤沈下に耐えるもの
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段 | ばね;緩衝装置;振動減衰手段 | 機構の振動防止 | 非回転機構,例.往復運動機構,の振動防止;回転機構と共に運動しない部材を用いる回転機構の振動防止
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段 | ばね;緩衝装置;振動減衰手段 | 振動減衰装置;緩衝装置 | 共に押しつけあう相対的に回転可能な摩擦表面をもつもの | 回転軸の方向にもつもの
【出願番号】特願2008−220821(P2008−220821)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店
【Fターム(参考)】
異常な外部の影響に耐えるための建築物 | 対象となる外部の影響 | 地震
異常な外部の影響に耐えるための建築物 | 対象構造物 | 構造物の形状 | 平面 | コア、耐力壁を有するもの
異常な外部の影響に耐えるための建築物 | 付加重錘以外の制振装置(ダンパ等) | ダンパの種類(付加重錘が付属する場合を含む) | 摩擦ダンパ | 摩擦板
異常な外部の影響に耐えるための建築物 | 制振装置の取付対象 | 取付対象部材 | 柱、梁に設けるもの
異常な外部の影響に耐えるための建築物 | 制振装置の取付対象 | 構造物内の設置位置 | 平面上の配置位置
防振装置 | エネルギー吸収手段の採用 | 摩擦減衰力によるもの
防振装置 | 樹脂材、複合減衰材、粘弾性材 | 複数材料が積層又は混合された振動減衰材 | 取付け部の構造
防振装置 | 特別なばねとダンパー | 摩擦式ダンパー | 回動摩擦によるもの
防振装置 | 防振要素による支持、取付けの形態 | 側部位置からの支持、取付け
防振装置 | 防振対象 | 建築物、構造物
振動減衰装置 | 発明対象 | 緩衝器自体の機能 | 振動防止に関するもの
振動減衰装置 | 摩擦緩衝器 | 回転形 | 接触面が軸に垂直又は傾いた方向
振動減衰装置 | 摩擦要素 | 摩擦面を弾性保持するもの | スプリング又は板ばね