制音構造体
【課題】空調用室外機の騒音に対して、大掛かりな工事を必要としない簡易な方法で、屋外において吸排気の圧損や吸水の問題が生じず、良好な防音効果が得られる制音構造体の提供を目的とする。
【解決手段】吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体51を、遮蔽板55と、遮蔽板55の平面部の空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材10とで構成し、膜振動吸音部材10は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、複数のセルの開口部を覆うようにシート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとで形成し、表面シートは、シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分ではシート成形体に非固定とした。
【解決手段】吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体51を、遮蔽板55と、遮蔽板55の平面部の空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材10とで構成し、膜振動吸音部材10は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、複数のセルの開口部を覆うようにシート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとで形成し、表面シートは、シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分ではシート成形体に非固定とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用室外機の外周に設けられる制音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、空調用室外機による騒音問題について環境基本法に基づき早急な対策が必要とされている。特に業務用エアコン室外機の複数台集中設置による騒音は大きいため、隣接するビル・住宅など都市部で苦情件数が多く発生しており、室外機の騒音問題が訴訟に発展する事例も見うけられる。
【0003】
空調用室外機の騒音対策として、グラスウールやウレタンフォームなどの既存の多孔質吸音材を使用して防音フードを作成する方法がある。しかし、多孔質吸音材は降雨等により吸水すると吸音効果が大幅に低下する問題がある。そのため、多孔質吸音材が吸水しないような複雑なカバー構造や、多孔質吸音材に対する防水加工が必要になり、その結果、吸音性が損なわれる問題があった。更に、グラスウールやウレタンフォームなどの多孔質吸音材は、対応周波数が高周波のみに限定され、中周波以下の吸音のためには厚みを例えば50mmと厚いものにする必要があるため、吸気・排気の圧損を考慮すると防音フードが大きくなったり、防音設計が益々難しくなったりする。
【0004】
そのため、従来は、騒音対策したい方向中心に、鉄骨下地に鋼板やコンクリートを設置した遮音壁で室外機を囲うことによって遮音する方法が主流であった。
しかし、遮音壁で室外機を囲う方法では、費用と工期の面で問題があるばかりでなく、遮音壁は騒音を吸音することなく反射し、遮音壁の無い方向では音波が集中してむしろ騒音が大きくなるため、方向によっては更に騒音問題が悪化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−117531号公報
【特許文献2】特開平05−172099号公報
【特許文献3】特開平11−316089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、空調用室外機の騒音に対して、大掛かりな工事を必要としない簡易な方法で、屋外において吸排気の圧損や吸水の問題を生じず、良好な防音効果が得られる制音構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体において、前記制音構造体は、遮蔽板と、前記遮蔽板の平面部の前記空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記膜振動吸音部材は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルの開口部を覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされ、前記膜振動吸音部材が、前記シート成形体の側で前記遮蔽板の平面部に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記空調用室外機の吸気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記吸気用開口部の一部または全面に対向し、かつ支持部により前記空調用室外機から離れて支持され、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項の発明において、前記空調用室外機の排気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または5の発明において、前記遮蔽板の内面に邪魔板が前記空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、前記邪魔板の排気用開口部側の面に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の制音構造体。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、制音構造体が、遮蔽板と、遮蔽板の平面部に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなるため、大掛かりな工事を必要としない簡易な方法で、屋外において吸排気の圧損や吸水の問題を生じず、良好な防音効果が得られる。
請求項2の発明によれば、膜振動吸音部材が屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、複数のセルの開口部を覆うようにシート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、表面シートは、シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分ではシート成形体に非固定とされた構造のため、中周波域での吸音性が良好となり、膜振動吸音部材と遮蔽板とにより、中周波を含めた広い周波数に渡って良好な防音効果が得られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、制音構造体が吸気用気体の流路を塞ぐことがないため、吸気能力を維持して防音することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、空調用室外機の排気用開口部に設けられる制音構造体の遮蔽板が、排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、遮蔽板の内側に膜振動吸音部材が配置されているため、排気による騒音を遮蔽板と膜振動吸音部材とで効果的に抑えることができる。また、ダクト形状をした遮蔽板の平面部分に膜振動吸音部材を取り付けることができるため、膜振動吸音部材の取り付けが容易であり、膜振動吸音部材を曲面形状に成形する必要がないことから、膜振動吸音部材の成形が容易になる。
【0016】
請求項5の発明によれば、空調用室外機の排気用開口部に設けられる制音構造体の遮蔽板が、排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなるため、より多くの膜振動吸音部材を排気用開口部の近傍に配置することができ、膜振動吸音部材による吸音性を高め、防音性を高めることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、ダクト形状の遮蔽板の内面に邪魔板が空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、邪魔板の排気用開口部側の面に膜振動吸音部材が配置されているため、邪魔板の排気用開口部側の面に配置されている膜振動吸音部材に音を直接入射させて吸音することができ、防音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】制音構造体が取り付けられる空調用室外機の一実施形態の図である。
【図2】制音構造体の一実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図3】吸気用開口部側の制音構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】排気用開口部側の制音構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】排気用開口部側の制音構造体の一実施形態について保護ネットを外した状態の斜視図である。
【図6】排気用開口部側の制音構造体の6−6断面図である。
【図7】膜振動吸音部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】膜振動吸音部材の8−8断面図である。
【図9】膜振動吸音部材を分解して示す斜視図である。
【図10】シート成形体の10−10断面図である。
【図11】制音構造体の別の実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図12】制音構造体の更に別の実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図13】騒音レベルの測定結果を示すグラフ1である。
【図14】騒音レベルの測定結果を示すグラフ2である。
【図15】騒音レベルの測定結果を示すグラフ3である。
【図16】騒音レベルの測定結果を示すグラフ4である。
【図17】騒音レベルの測定結果を示すグラフ5である。
【図18】騒音レベルの測定結果を示すグラフ6である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態の制音構造体について説明する。本発明の制音構造体は、吸気用開口部と排気用開口部を備え、内部に音源(ファン、コンプレッサー等)を有する公知の空調用室外機、例えば、図1に示す空調用室外機100の外周に取り付けられる。図示の空調用室外機100は、左側面101に左側吸気用開口部106、右側面102に右側吸気用開口部107、背面103に背面吸気用開口部108が設けられ、また上面104に排気用開口部109が設けられている。符号105は空調用室外機100の正面である。前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108及び排気用開口部109は、それぞれ通気性を有する保護ネットで覆われている。
【0020】
前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108には、図2に示すように吸気用開口部側制音構造体51、61、71がそれぞれ設けられ、また前記排気用開口部109には排気用開口部側制音構造体81が設けられる。
【0021】
前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71は、図3に示すように支持部52、62、72と、遮蔽板55、65、75と、前記遮蔽板55、65、75の吸気用開口部側(遮蔽板の内側)に設けられた複数の膜振動吸音部材10とよりなる。
【0022】
前記支持部52、62、72は、前記遮蔽板55、65、75を前記空調用室外機100の外面から離して取り付け、前記遮蔽板55、65、75が前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108を塞がないようにするものである。図示の例では、前記支持部52、62、72は、遮蔽板55、65、75の幅方向両縁から前記空調用室外機100側へ立設された脚で構成され、前記遮蔽板55、65、75とは反対側の端部54、64、74が、前記空調用室外機100へボルト及び金具等の固定部品(図示せず)で固定される。更に、前記背面吸気用開口部108に取り付けられる吸気用開口部側制音構造体71の前記支持部72については、開口73が複数形成されている。なお、前記支持部52、62、72は、前記遮蔽板55、65、75の縁に溶接等により設けられ、あるいは遮蔽板55、65、75の縁から屈曲して延設される。また、前記支持部52、62、72によって生じる前記空調用室外機100の外面と前記遮蔽板55、65、75との間隔は、適宜設定される。
【0023】
前記遮蔽板55、65、75は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属板からなり、屋外での耐久性の点からZAM鋼板(高耐食性溶融メッキ鋼板)、SUS304などが好ましく使用でき、平板状に形成されている。また、前記遮蔽板55、65、75は、対応する吸気用開口部の一部または全面に対向する大きさとされ、対応する吸気用開口部に対向するように、前記空調用室外機100の外面から離れた位置に前記支持部52、62、72で支持される。一方、前記支持部52、62、72は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属板からなり、屋外での耐久性の点からZAM鋼板(高耐食性溶融メッキ鋼板)、SUS304などが好ましく使用でき、前記遮蔽板55、65、75を空調用室外機100の外面から離れた位置に保持することができるサイズで構成されている。
【0024】
前記膜振動吸音部材10は、非吸水性樹脂からなる。具体的には、図7〜図9に示すように、非通気かつ非透水性のシート成形体11と非通気かつ非透水性の表面シート21とよりなり、前記シート成形体11の側で前記遮蔽板の平面部において空調用室外機の音源側(すなわち、前記平面部において空調用室外機の吸気用開口部側あるいは排気用開口部側になる平面部の内面)に取り付けられる。なお、図示の膜振動吸音部材10は、平面視形状が略正方形からなるが、他の形状であってもよい。
【0025】
前記シート成形体11は、図9及び図10からも理解されるように、一枚の非通気かつ非透水性のシートを複数箇所で屈曲させて形成した一面を開口部とした凹部からなるセル(室)13を、片面側に複数有するものである。非通気かつ非透水性のシートとしては、樹脂、セラミック、金属等が挙げられるが、特に安価で成形性の優れた樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などである。また、前記シート成形体11用のシートとしては、厚みが2mm程度までのシート(フイルムと称されるものを含む)を使用できるが、薄すぎると前記シート成形体11の強度低下を生じるばかりでなく、シート成形体11の膜振動が表面シート21の膜振動よりも優先(有効に効力を発揮)されるようになるので、1mm程度の厚みにしてシート成形体11の膜振動を抑え、前記表面シート21の膜振動を優先(有効に効力を発揮)させて低周波数領域での吸音率を向上させるのが好ましい。
【0026】
前記セル13の開口部14(図10に示す)の形状は、図示の例では、平面形状が四角からなるが、これに限られるものではなく、三角、六角、八角などの多角形からなるものや、円形などからなるものなどが挙げられる。特に、前記セル13は、強度や成形のし易さの点から、平面形状が四角形、六角形のものが好ましい。前記セル13の平面サイズは、小さすぎても大きすぎても吸音率が低下するため、一辺あるいは径が5〜75mmの大きさが好ましい。また、前記セル13の高さは、低すぎると吸音率が低下し、高すぎると前記シート成形体11の強度低下を生じることから、5〜50mmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は10〜30mmである。更に、前記セル13の配置は、図示の例は、複数のセル13が列と行を構成するように縦横に配置されているが、これに限るものではない。
【0027】
更に、本実施形態のシート成形体11は、セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16の縁から前記セルの開口部側表面15とは反対側へ屈曲して形成された外周側面17を有し、更に前記外周側面17の端部(開口部側表面15とは反対側端部)から外方へ屈曲したフランジ部18を有している。前記外周側面17は、前記シート成形体11の側部外周を包囲するスカート状となっている。前記外周側面17の存在により前記シート成形体11の膜振動を抑えることができ、前記表面シート21の膜振動による吸音率の向上を図ることができる。また、前記フランジ部18は、後述する表面シート21のフランジ部24と共に前記膜振動吸音部材10の取付部として用いることができ、接着剤、両面テープ、面ファスナーばかりでなく、リベット、ねじ、ピン、ビス等で前記遮蔽板に固定することにより、膜振動吸音部材10を容易に遮蔽板に取り付けることができる。
【0028】
前記シート成形体11の成形は、例えば、樹脂製の一枚のシートから真空成型、型込め成形、圧着成形などにより容易に行うことができる。特に、成形作業性及び成形品質の点から真空成型が最も好ましい。
【0029】
前記表面シート21は、非通気かつ非透水性のシートからなり、前記複数のセル13の開口部14を覆うように前記シート成形体11におけるセルの開口部側表面15に積層されている。本実施形態の表面シート21は、平板状の本体部22と、前記本体部22の周縁から屈曲して形成された側部23と、前記側部23の先端から外向きに形成されたフランジ部24とよりなる。前記表面シート21の本体部22は前記シート成形体11におけるセル13の開口部側表面15を覆い、また前記側部23は前記シート成形体11の外周側面17に外側から重なり、前記フランジ部24は前記シート成形体11のフランジ部18に重なる。
【0030】
前記表面シート21を構成する非通気かつ非透水性のシートは、多孔質でない一般樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などによる面状板材(シート)、フイルムなどからなる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などからなる面状板材(シート)、フイルムなどで構成される。
【0031】
前記表面シート21は、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率は高くなるが、ピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、膜振動がし難くなって吸音率が低くなる。そのため、好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。この範囲であれば空調用室外機のモータやファンによって発生する特定のピーク周波数に対して効果的に吸音することができ、防音性を高めることができる。なお、前記表面シート21の膜振動を、前記シート成形体11の膜振動より優先(有効に効力を発揮)させるためには、前記シート成形体11を構成するシートの厚みと同等あるいは薄めのシートで前記表面シート21を構成するのが好ましい。
【0032】
前記表面シート21は、前記シート成形体11おけるセルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16でシート成形体11に固定され、複数のセル13における隣り合うセル間の部分19では前記シート成形体11に固定されていない。前記シート成形体の外周部16では前記表面シート21が前記シート成形体の外周部16に密着しており、これによって前記シート成形体の外周部16で包囲される部分は、前記シート成形体11と表面シート21の間が閉鎖空間とされている。
【0033】
前記セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16で前記表面シート21とシート成形体11を閉じて、前記シート成形体11と表面シート21の間を閉鎖空間とすることが重要であり、前記セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16で、前記表面シート21の固定が全く行われていなかったり、部分的にしか行われていなかったりする(すなわち部分的に開放されている)場合には、前記表面シート21の膜振動による低周波数領域における吸音が十分できず、吸音領域が高周波域へシフトするようになる。但し、表面シート21がシート成形体の外周部16でシート成形体11に完全に固定されていなくても、前記表面シート21とシート成形体の外周部16が密着するようにしてシート成形体11と表面シート21の間をピーク周波数が高周波側にシフトしない程度に実質的に閉鎖空間とすることができればよい。
【0034】
なお、前記シート成形体11の外周部16への表面シート21の固定は、前記シート成形体の外周部16に表面シート21が密着した状態にあり、それによって前記外周部16で表面シート21の移動が阻止される状態をいい、接着等によって前記表面シート21が前記外周部16に固着された状態に限られない。即ち、前記表面シート21のシート成形体11への固定方法は、接着・粘着、溶着、融着、圧着など公知の接合方法の中から、何れか一つあるいは複数の方法で行えばよい。前記接着・粘着には、接着剤や粘着剤を用いる方法、両面接着テープやビニルテープなどを用いる方法などがある。また、溶着や融着には、高周波または超音波融着などがある。また、圧着はシート同士の凹凸、嵌め込み、寸法・傾斜差などによる係合でもよいし、係合治具を用いてもよい。
【0035】
前記シート成形体11の複数のセル13における隣り合うセル間の部分19、すなわちセル間の山部についても前記表面シート21をシート成形体11に固定すると、前記表面シート21の膜振動による低周波数領域における吸音が十分できず、吸音領域が高周波域へ大きくシフトするようになる。なお、前記表面シート21がセル間の山部に固定されずに圧力がかかるだけでも、固定したのと同様に膜振動による吸音が抑制されるので、セル間の山部の高さは、外周よりも幾分低くして(表面シート21とセル間の山部との間に隙間を設けて)も良い。
【0036】
また、前記表面シート21と前記シート成形体11との非固定部分は、100mm角以上確保するのが好ましく、更に好ましくは150mm角以上である。前記非固定部分が100mm角以上になると、前記表面シート21の膜振動が十分に行われるようになって低周波数領域での吸音性が向上するようになる。従って、前記膜振動部材10のサイズは、前記表面シート21が固定される外周部16を除いて、少なくとも100mm角以上であることが好ましい。
前記膜振動吸音部材10の全体厚みは、5〜50mm、好ましくは10〜30mmであるのが好ましい。5mm未満の場合は吸音率が低くなり、一方、50mmを超えると強度低下となる。
【0037】
前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71は、吸気時の騒音を膜振動吸音部材10により主に吸気騒音と同等な中周波の部分で吸音し、また遮蔽板55、65、75によって外部へ音が伝わるのを抑えることができるため、全騒音レベルOA(オーバーオール)値を効率よく低減できるので良好な防音効果が得られる。しかも、前記膜振動吸音部材10が非吸水性(非透水性)のため、屋外でも良好な防音効果が得られる。
【0038】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81は、図4〜図6に示すように、遮蔽板85が前記排気用開口部109の外周を囲む3面以上、好ましくは6面以上のダクト形状(筒形状)からなり、前記遮蔽板85の内側に前記膜振動吸音部材10が複数配置されている。前記遮蔽板85は、前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71の遮蔽板55、65、75と同様の材質からなる。前記ダクト形状からなる遮蔽板85は、空調用室外機側の端部に前記空調用室外機100への取付部82が設けられている。前記取付部82は排気用開口部側82aが開口した箱状からなり、前記排気用開口部側82aとは反対側の面82bに連通用開口部82cが形成され、該連通用開口部82cの周囲に前記ダクト形状の遮蔽板85が立設される。前記連通用開口部82cを介して取付部82内とダクト形状の遮蔽板85内が連通している。前記取付部82は、図示しない金具、例えばL字金具を用いて前記空調用室外機100の上面104(図1の上面図に示す)に取り付けられる。なお、前記ダクト形状の遮蔽板85の先端には、ゴミの進入を防ぐために保護ネット99が取り付けられている。前記保護ネット99の網目は、通気性の低下が少ない粗さとなっている。
【0039】
図6に示すように、前記ダクト形状の遮蔽板85の内面には、金属板等からなる邪魔板87、91が空調用室外機の排気方向Aへ傾斜して設けられ、前記邪魔板87、91の排気用開口部側の面88、92に、前記膜振動吸音部材10が配置固定されている。前記邪魔板87、91は、前記ダクト形状の遮蔽板85における対向する内面84a、84bにそれぞれ設けられ、かつ対向する一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87の延長線Bと交差するように、他方の遮蔽板内面84bに設けられた邪魔板91の排気用開口部側の面92が位置するようにされている。
【0040】
前記排気用開口部側制音構造体81によれば、排気時の騒音が遮蔽板85の内面の膜振動吸音部材10により主に排気騒音と同等な中周波の部分で吸音され、また遮蔽板85によって外部へ音が伝わるのを抑えることができるため、全騒音レベルOA(オーバーオール)値を効率よく低減できるので良好な防音効果が得られる。しかも、前記膜振動吸音部材10が非吸水性(非透水性)のため、屋外でも良好な防音効果が得られる。
【0041】
更に、ダクト形状の遮蔽板85の内面に邪魔板87、91が設けられているため、邪魔板87、91の排気用開口部側の面88、92に配置されている膜振動吸音部材10に音を直接入射させて吸音することができ、邪魔板87、91が無い場合に比べて防音性をより高めることができる。
【0042】
しかも、対向する一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87に排気気体が衝突して邪魔板87に設けられている膜振動吸音部材10で吸音され、また、前記一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87によって他方の遮蔽板内面84bへ誘導された排気騒音の音波は、他方の遮蔽板内面84bに設けられた邪魔板91に衝突して邪魔板91に設けられている膜振動吸音部材10で吸音されるため、より効果的に防音することができる。
【0043】
図11には、他の実施形態の制音構造体について前記空調用室外機100への取り付け状態を示す。図11に示す実施形態では、図1に示した空調用室外機100における左側面101の左側吸気用開口部106、右側面102の右側吸気用開口部107、背面103の背面吸気用開口部108をそれぞれ覆うように、吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aが設けられ、また空調用室外機100における上面104の排気用開口部109を覆うように排気用開口部側制音構造体81Aが設けられる。
【0044】
前記吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aは、遮蔽板55A、65A、75Aと支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3と、複数の前記膜振動吸音部材10とで構成される。
【0045】
前記支持部a1、a2、a3は、前記遮音板55A、65A、75Aの上端から屈曲形成された上側支持部であり、前記支持部b1、b2、b3及びc1、c2、c3は、前記遮音板55A、65A、75Aの幅方向両端から屈曲形成された側部支持部である。前記遮蔽板55A、65A、75Aと前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3とにより構成されるそれぞれの形状は、前記空調用室外機100の吸気用開口部側と下面が開口した箱状である。前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3により、前記遮蔽板55A、65A、75Aを前記空調用室外機100から離して保持し、前記遮蔽板55A、65A、75Aが前記吸気用開口部側を塞がないようにする。
【0046】
本実施形態の吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aでは、前記遮音板55A、65A、75Aの内面と前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3の内面との両方に、前記膜振動吸音部材10が複数設けられる。その結果、より多くの膜振動吸音部材10を空調用室外機における吸気流路に配置することができるようになり、吸音・防音効果を一層高めることができる。
【0047】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81Aは、上面が前面側で高くなるように傾斜すると共に前面の上部に開口部89Aを有し、かつ底面が開口したダクト状の遮蔽板85Aと、前記ダクト状の遮蔽板85Aの内面に設けられた複数の前記膜振動吸音部材10とからなり、前記ダクト状の遮音板85Aにおける下端で前記空調用室外機100の上面に取り付けられる。なお、前記ダクト状の遮蔽板85Aの内面に設けられている膜振動吸音部材10は、図11においては前記開口部89Aを通して外部からから視認できる膜振動吸音部材10のみが図示されているが、実際は前記開口部89Aを通して視認できない位置を含む遮蔽板85Aの内面全体に渡って複数設けられている。
【0048】
図12に示す更に他の実施形態では、図1に示した空調用室外機100における左側面101の左側吸気用開口部106、右側面102の右側吸気用開口部107、背面103の背面吸気用開口部108をそれぞれ覆うように、吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bが設けられ、また空調用室外機100における上面104の排気用開口部109を覆うように排気用開口部側制音構造体81Bが設けられる。
【0049】
前記吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bは、遮蔽板55B、65B、75Bと支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3と、複数の前記膜振動吸音部材10とで構成され、図11に示した実施形態における前記吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aと同様の構成からなる。
【0050】
前記支持部d1、d2、d3は、前記遮音板55B、65B、75Bの上端から屈曲形成された上側支持部であり、前記支持部e1、e2、e3及びf1、f2、f3は、前記遮音板55B、65B、75Bの幅方向両端から屈曲形成された側部支持部である。前記遮蔽板55B、65B、75Bと前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3とにより構成されるそれぞれの形状は、前記空調用室外機100の吸気用開口部側と下面が開口した箱状である。前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3により、前記遮蔽板55B、65B、75Bを前記空調用室外機100から離して保持し、前記遮蔽板55B、65B、75Bが前記吸気用開口部側を塞がないようにする。
【0051】
本実施形態の吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bでは、前記遮音板55B、65B、75Bの内面と前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3の内面との両方に、前記膜振動吸音部材10が複数設けられる。その結果、より多くの膜振動吸音部材10を空調用室外機における吸気流路に配置することができるようになり、吸音・防音効果を一層高めることができる。
【0052】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81Bは、上面が背面側で高くなるように傾斜すると共に背面の上部に開口部89Bを有し、かつ底面が開口したダクト状の遮蔽板85Bと、前記ダクト状の遮蔽板85Bの内面に設けられた複数の前記膜振動吸音部材10とからなり、前記ダクト状の遮音板85Bにおける下端で前記空調用室外機100の上面に取り付けられる。なお、前記ダクト状の遮蔽板85Bの内面に設けられている膜振動吸音部材10は、図12においては前記開口部89Bを通して外部からから視認できる膜振動吸音部材10のみが図示されているが、実際は前記開口部89Bを通して視認できない位置を含む遮蔽板85Bの内面全体に渡って複数設けられている。
【0053】
本発明の制音構造体は、空調用室外機の吸気用開口部と排気用開口部の両方に必ず設ける必要はなく、吸気用開口部と排気用開口部の何れか一方にのみ設けてもよく、その場合でも雨等に影響を受けることなく良好な防音効果が得られる。また、前記膜振動吸音部材は、直接遮蔽板に取り付けるのに代えて、予め金属基板に膜振動吸音部材をシート成形体側で取り付け、金属基板を遮蔽板に固定することで膜振動吸音部材を遮蔽板に取り付けるようにしてもよい。また、排気用開口部側制音構造体における遮蔽板のフード形状は、真っ直ぐな筒状のものに限られず、例えばエルボ状に屈曲したものであってもよい。
【実施例】
【0054】
比較例1 <ブランク:室外機のみ、グラフ1〜6>
三菱電機製業務用エアコン「PUHY−P280CM−E1」において、パソコン制御にて暖房運転FOC=80 F1=120に設定して室内、室外温度をほぼ一定になるよう管理のもと運転状態を安定させ、室外機の1m高、正面(前面、吸い込み面のないパネル側)1m、3m、5m、後面(背面、吸込み面側)1mにおいて、リオン製騒音計NL22(周波数分析機能付き)にて10秒間のLAeq(等価騒音レベル)を5回測定し、大きく外れているデータを除いて平均して全騒音レベル・OA値及び各周波数(1/3オクターブバンド中心周波数)の値を得た。結果を表1及びグラフ1〜6(図13〜図18)の基準値として示す。表1より、吸込み面が開口している後面の方が約4dB騒音レベルが高く、また正面において距離が離れるほど静かになることがわかる。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例2 <フードによる遮音効果(比較例1との比較、グラフ1)>
図12に示したZAM鋼板1.0mm厚による排気用開口部側制音構造体81Bから膜振動吸音部材10を除去した四角柱形状で上面に傾斜面を有する防雪仕様の吹出しフード、及び図12に示した吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bから膜振動吸音部材10を除去した吸込みフードを、比較例1の業務用エアコン室外機に装着した。なお、吹出しフードは背面側へ吹出し、正面1mにて、比較例1と同様に測定してOA値及び各周波数の騒音値を得た。図13のグラフ1に比較例1と比較したグラフを示す。比較例2は、吹出しフード及び吸い込みフードの遮音効果により、比較例1よりも1.4dB減音した。
【0057】
実施例1 <吸音材とフード遮蔽の効果(比較例1,2との比較、グラフ1,2)>
図7〜図9に示したような膜振動吸音部材10として、イノアックコーポレーション製膜振動吸音部材“ミッドシーン”P700(700Hz中心対応、195×195×16.5mmH、表面シートの面密度0.55)を、比較例2の防雪仕様吹出しフードおよび吸込みフード両方の内面全面にわたるように、リベットにて角隅部4点を留めて複数個配置して図12の排気用開口部側制音構造体81B(防雪仕様吹出しフード)、及び吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71B(吸込みフード)を作成し、比較例1の業務用エアコン室外機に装着した。なお、膜振動吸音部材10の個数は、防雪仕様吹出しフード(排気用開口部側制音構造体81B)については42個、吸込みフードの吸気用開口部側制音構造体51B、61Bについては各30個、吸込みフードの吸気用開口部側制音構造体71Bについては36個である。比較例1と同様に正面1mにて測定した結果、フードによる遮音効果と膜振動吸音部材による吸音効果の総和としての総防音効果として、実施例1では比較例1との差である5.6dBの減音効果が得られた。また、膜振動吸音部材単体の吸音効果としては、実施例1は比較例2との差である4.2dBの効果が得られた。周波数分析結果を図13のグラフ1に示すが、フードだけの比較例1に対し、実施例1ではメインピークの630Hz付近を中心に大きく減音し、膜振動吸音部材単体の効果が明らかである。
同様にして、実施例1は、後面1mでは、防音効果として4.8dBの効果が得られ、図14のグラフ2に示すように、メインピーク800Hz付近を中心に大きく減音した。
【0058】
実施例2、比較例3 <防雪フード正面吹出し(実施例1、比較例1,2との比較、グラフ1,2)>
比較例3では、比較例2の防雪仕様吹出しフードを、図11の排気用開口部側制音構造体81Aのように正面側へ吹出すように装着した。比較例3の正面1mでは、吹出しフードによる正面側へ音波が集中したことにより−3.2dBと悪化した。比較例3のフード内に膜振動吸音部材を取付けた実施例2(図11の排気用開口部側制音構造体81A)では、フードによって悪化した騒音レベルを抑えて、総防音効果としては1.1dBの減音となった。図13のグラフ1から、実施例2ではメインピークの630〜800Hz付近を中心に大きく減音したことがわかる。
一方後面(背面)では、実施例2は吹出しフードの遮音効果も大きいために防音効果8.4dBと大きな効果が得られ、図14のグラフ2からも実施例2では後面吹出しの実施例1より大きく減音していることが確認できる。
【0059】
実施例3 <標準仕様上部開口吹出しフード(比較例1との比較、グラフ3)>
図2、図4〜6に示した最上面が開口している排気用開口部側制音構造体81において邪魔板を無くした排気用開口部側制音構造体(八画柱状の標準仕様吹出しフード(邪魔板87、91無し)を比較例1の業務用エアコン室外機に装着し、比較例1と同様に測定した。なお、排気用開口部側制音構造体に設けた膜振動吸音部材の個数は46個である。図15のグラフ3に示すように、実施例3では正面1mの総防音効果は比較例1に対して2.2dBであった。
【0060】
実施例4 <邪魔板の効果(実施例3、比較例1との比較、グラフ3)>
実施例3の膜振動吸音部材付きの吹出しフード内に、排気方向に対して傾斜するように2枚の邪魔板を取付け、各邪魔板には室外機側へ膜振動吸音部材を4個ずつ取り付けて、図2、図4〜6に示した排気用開口部側制音構造体81を形成し、実施例3と同様に比較例1の業務用エアコン室外機に装着し、比較例1と同様に測定した。なお、邪魔板以外に排気用開口部側制音構造体81に設けた膜振動吸音部材の個数は、実施例3と同一である。図15のグラフ3に示すように、実施例4では正面1mの総防音効果は3.0dBと、邪魔板のない実施例3より総防音効果が向上した。音波が邪魔板にあたることで吸音効率が向上することがわかる。
【0061】
実施例5 <膜振動吸音部材による影響(実施例4、比較例1との比較、グラフ4)>
膜振動吸音部材をイノアックコーポレーション製“ミッドシーン”P500(500Hz中心対応、195×195×17mmH、表面シートの面密度0.90)とした以外は、実施例4と同様とした。膜振動吸音部材の個数は実施例4と同一である。図16のグラフ4のように、実施例5では、やや低周波側に防音効果がシフトし、やや減音効率が低下した。吸音メインピークが、騒音メインピークにより近いミッドシーンP700を用いた実施例4の方が、より効率よく減音できることがわかる。
【0062】
比較例4 <膜振動吸音部材による影響:グラスウール(実施例4,5との比較、グラフ4)>
膜振動吸音部材に変えて吸音材としてグラスウール(マグ・イゾベール製、BS3225−GC3、25mm厚、32kg/m3)を用いた以外は、実施例4と同様とした。図16のグラフ4のように、比較例4では、高周波側に大きく防音効果がシフトして減音効率が低下した。多孔質系の吸音材は、吸音メインピークが高周波側にあり、騒音メインピークと解離しているため、減音効率が良くないことがわかる。
【0063】
実施例6 <吸込みフード横面の効果(実施例4、比較例1との比較、グラフ3)、距離減音効果(比較例1との比較、グラフ6)>
実施例4に加え、図2、3に示した吸気用開口部側制音構造体51、61(吸込みフード)を、比較例1の業務用エアコン室外機における両横部に装着した。膜振動吸音部材の個数は、吸気用開口部側制音構造体51、61のそれぞれについて12個である。その結果、図15のグラフ3に示すように、実施例6では正面1mの防音効果は5.1dBと大幅に向上し、横面の防音対策が強化できた。なお、正面3m、5mにおいても、図18のグラフ6のように、実施例6では比較例1に対し、それぞれ3.6dB、4.0dBと防音効果があった。
【0064】
実施例7 <後面での吸込みフード後の効果(実施例6、比較例1との比較、グラフ5)>
実施例6において、図2、3の吸気用開口部側制音構造体71B(吸込みフード)を、さらに業務用エアコン室外機における背面部に装着して実施例7とした。吸気用開口部側制音構造体71Bにおける膜振動吸音部材の個数は18個である。背面部に吸気用開口部側制音構造体71Bを設けていない実施例6においては、背面の吸込み部がオープンなため、後面1.0mでの防音効果は0.7dBと低かったが、実施例7では、背面にも吸気用開口部側制音構造体71B(吸込みフード)を装着した結果、図17のグラフ5のように、5.2dBと大きな効果が得られた。
【0065】
なお、本実施例において、膜振動吸音部材は、セルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルを覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされた例を示したが、変更例として以下のようであっても良い。
【0066】
(変更例1) 前記シート成形体を用いず、表面シートを屈曲により凸部からなる立体形状に成形し、凸部形成表面シートの外周部を、直接、遮蔽板に対して前記記載の方法により固定してもよい。この場合、強度面から凸部の表面の大きさが100×100mm以下が好ましく、そのため吸音するメインピークは高周波側に移動する。室外機の音源から発せられる騒音に高い周波数の騒音が含まれている場合には、本変更例の膜振動吸音部材を使用したり、また実施例と本変更例の膜振動吸音部材を併用することで、吸音性能を向上することができる。本変更例においても膜振動吸音部材の全体厚みは5〜50mm、好ましくは10〜30mmとすることができ、面密度は0.05〜2.0kg/m2とすることが好ましい。
【0067】
(変更例2)
変更例1における凸部形状は平面視で矩形、丸、多角形でもよく、また複数であっても良く、また厚みも適宜設定されてよい。例えば、195×195mmの範囲に4行×4列の16個の矩形上凸部を厚み25mmとなるように設ける例があげられ、また、195×195mmの範囲にさらに細かく6行×6列の36個の矩形状凸部を厚み15mmとなるように設ける例が挙げられる。凸部が小さく複数となることで、より高周波側の音域に対して有効となり、また、表面積が増大するため吸音率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 膜振動吸音部材
11 シート成形体
13 セル
14 セルの開口部
15 シート成形体のセルの開口部側表面
16 セルの開口部側表面におけるシート成形体の外周部
19 セル間の部分
21 表面シート
51、51A,51B、61、61A、61B、71、71A、71B 吸気用開口部側制音構造体
55、55A、55B、65、65A、65B、75、75A、75B 吸気用開口部側制音構造体の遮蔽板
81、81A、81B 排気用開口部側制音構造体
52、62、72、a1、a2、a3、b1、b2、b3、c1、c2、c3、d1、d2、d3、e1、e2、e3、f1、f2、f3 支持部
85、85A、85B 排気用開口部側制音構造体の遮蔽板
87、91 邪魔板
100 室外機
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用室外機の外周に設けられる制音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、空調用室外機による騒音問題について環境基本法に基づき早急な対策が必要とされている。特に業務用エアコン室外機の複数台集中設置による騒音は大きいため、隣接するビル・住宅など都市部で苦情件数が多く発生しており、室外機の騒音問題が訴訟に発展する事例も見うけられる。
【0003】
空調用室外機の騒音対策として、グラスウールやウレタンフォームなどの既存の多孔質吸音材を使用して防音フードを作成する方法がある。しかし、多孔質吸音材は降雨等により吸水すると吸音効果が大幅に低下する問題がある。そのため、多孔質吸音材が吸水しないような複雑なカバー構造や、多孔質吸音材に対する防水加工が必要になり、その結果、吸音性が損なわれる問題があった。更に、グラスウールやウレタンフォームなどの多孔質吸音材は、対応周波数が高周波のみに限定され、中周波以下の吸音のためには厚みを例えば50mmと厚いものにする必要があるため、吸気・排気の圧損を考慮すると防音フードが大きくなったり、防音設計が益々難しくなったりする。
【0004】
そのため、従来は、騒音対策したい方向中心に、鉄骨下地に鋼板やコンクリートを設置した遮音壁で室外機を囲うことによって遮音する方法が主流であった。
しかし、遮音壁で室外機を囲う方法では、費用と工期の面で問題があるばかりでなく、遮音壁は騒音を吸音することなく反射し、遮音壁の無い方向では音波が集中してむしろ騒音が大きくなるため、方向によっては更に騒音問題が悪化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−117531号公報
【特許文献2】特開平05−172099号公報
【特許文献3】特開平11−316089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、空調用室外機の騒音に対して、大掛かりな工事を必要としない簡易な方法で、屋外において吸排気の圧損や吸水の問題を生じず、良好な防音効果が得られる制音構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体において、前記制音構造体は、遮蔽板と、前記遮蔽板の平面部の前記空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記膜振動吸音部材は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルの開口部を覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされ、前記膜振動吸音部材が、前記シート成形体の側で前記遮蔽板の平面部に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記空調用室外機の吸気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記吸気用開口部の一部または全面に対向し、かつ支持部により前記空調用室外機から離れて支持され、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項の発明において、前記空調用室外機の排気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または5の発明において、前記遮蔽板の内面に邪魔板が前記空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、前記邪魔板の排気用開口部側の面に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の制音構造体。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、制音構造体が、遮蔽板と、遮蔽板の平面部に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなるため、大掛かりな工事を必要としない簡易な方法で、屋外において吸排気の圧損や吸水の問題を生じず、良好な防音効果が得られる。
請求項2の発明によれば、膜振動吸音部材が屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、複数のセルの開口部を覆うようにシート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、表面シートは、シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分ではシート成形体に非固定とされた構造のため、中周波域での吸音性が良好となり、膜振動吸音部材と遮蔽板とにより、中周波を含めた広い周波数に渡って良好な防音効果が得られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、制音構造体が吸気用気体の流路を塞ぐことがないため、吸気能力を維持して防音することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、空調用室外機の排気用開口部に設けられる制音構造体の遮蔽板が、排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、遮蔽板の内側に膜振動吸音部材が配置されているため、排気による騒音を遮蔽板と膜振動吸音部材とで効果的に抑えることができる。また、ダクト形状をした遮蔽板の平面部分に膜振動吸音部材を取り付けることができるため、膜振動吸音部材の取り付けが容易であり、膜振動吸音部材を曲面形状に成形する必要がないことから、膜振動吸音部材の成形が容易になる。
【0016】
請求項5の発明によれば、空調用室外機の排気用開口部に設けられる制音構造体の遮蔽板が、排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなるため、より多くの膜振動吸音部材を排気用開口部の近傍に配置することができ、膜振動吸音部材による吸音性を高め、防音性を高めることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、ダクト形状の遮蔽板の内面に邪魔板が空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、邪魔板の排気用開口部側の面に膜振動吸音部材が配置されているため、邪魔板の排気用開口部側の面に配置されている膜振動吸音部材に音を直接入射させて吸音することができ、防音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】制音構造体が取り付けられる空調用室外機の一実施形態の図である。
【図2】制音構造体の一実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図3】吸気用開口部側の制音構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】排気用開口部側の制音構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】排気用開口部側の制音構造体の一実施形態について保護ネットを外した状態の斜視図である。
【図6】排気用開口部側の制音構造体の6−6断面図である。
【図7】膜振動吸音部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】膜振動吸音部材の8−8断面図である。
【図9】膜振動吸音部材を分解して示す斜視図である。
【図10】シート成形体の10−10断面図である。
【図11】制音構造体の別の実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図12】制音構造体の更に別の実施形態について空調用室外機への取り付け状態を示す図である。
【図13】騒音レベルの測定結果を示すグラフ1である。
【図14】騒音レベルの測定結果を示すグラフ2である。
【図15】騒音レベルの測定結果を示すグラフ3である。
【図16】騒音レベルの測定結果を示すグラフ4である。
【図17】騒音レベルの測定結果を示すグラフ5である。
【図18】騒音レベルの測定結果を示すグラフ6である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態の制音構造体について説明する。本発明の制音構造体は、吸気用開口部と排気用開口部を備え、内部に音源(ファン、コンプレッサー等)を有する公知の空調用室外機、例えば、図1に示す空調用室外機100の外周に取り付けられる。図示の空調用室外機100は、左側面101に左側吸気用開口部106、右側面102に右側吸気用開口部107、背面103に背面吸気用開口部108が設けられ、また上面104に排気用開口部109が設けられている。符号105は空調用室外機100の正面である。前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108及び排気用開口部109は、それぞれ通気性を有する保護ネットで覆われている。
【0020】
前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108には、図2に示すように吸気用開口部側制音構造体51、61、71がそれぞれ設けられ、また前記排気用開口部109には排気用開口部側制音構造体81が設けられる。
【0021】
前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71は、図3に示すように支持部52、62、72と、遮蔽板55、65、75と、前記遮蔽板55、65、75の吸気用開口部側(遮蔽板の内側)に設けられた複数の膜振動吸音部材10とよりなる。
【0022】
前記支持部52、62、72は、前記遮蔽板55、65、75を前記空調用室外機100の外面から離して取り付け、前記遮蔽板55、65、75が前記左側吸気用開口部106、右側吸気用開口部107、背面吸気用開口部108を塞がないようにするものである。図示の例では、前記支持部52、62、72は、遮蔽板55、65、75の幅方向両縁から前記空調用室外機100側へ立設された脚で構成され、前記遮蔽板55、65、75とは反対側の端部54、64、74が、前記空調用室外機100へボルト及び金具等の固定部品(図示せず)で固定される。更に、前記背面吸気用開口部108に取り付けられる吸気用開口部側制音構造体71の前記支持部72については、開口73が複数形成されている。なお、前記支持部52、62、72は、前記遮蔽板55、65、75の縁に溶接等により設けられ、あるいは遮蔽板55、65、75の縁から屈曲して延設される。また、前記支持部52、62、72によって生じる前記空調用室外機100の外面と前記遮蔽板55、65、75との間隔は、適宜設定される。
【0023】
前記遮蔽板55、65、75は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属板からなり、屋外での耐久性の点からZAM鋼板(高耐食性溶融メッキ鋼板)、SUS304などが好ましく使用でき、平板状に形成されている。また、前記遮蔽板55、65、75は、対応する吸気用開口部の一部または全面に対向する大きさとされ、対応する吸気用開口部に対向するように、前記空調用室外機100の外面から離れた位置に前記支持部52、62、72で支持される。一方、前記支持部52、62、72は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属板からなり、屋外での耐久性の点からZAM鋼板(高耐食性溶融メッキ鋼板)、SUS304などが好ましく使用でき、前記遮蔽板55、65、75を空調用室外機100の外面から離れた位置に保持することができるサイズで構成されている。
【0024】
前記膜振動吸音部材10は、非吸水性樹脂からなる。具体的には、図7〜図9に示すように、非通気かつ非透水性のシート成形体11と非通気かつ非透水性の表面シート21とよりなり、前記シート成形体11の側で前記遮蔽板の平面部において空調用室外機の音源側(すなわち、前記平面部において空調用室外機の吸気用開口部側あるいは排気用開口部側になる平面部の内面)に取り付けられる。なお、図示の膜振動吸音部材10は、平面視形状が略正方形からなるが、他の形状であってもよい。
【0025】
前記シート成形体11は、図9及び図10からも理解されるように、一枚の非通気かつ非透水性のシートを複数箇所で屈曲させて形成した一面を開口部とした凹部からなるセル(室)13を、片面側に複数有するものである。非通気かつ非透水性のシートとしては、樹脂、セラミック、金属等が挙げられるが、特に安価で成形性の優れた樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などである。また、前記シート成形体11用のシートとしては、厚みが2mm程度までのシート(フイルムと称されるものを含む)を使用できるが、薄すぎると前記シート成形体11の強度低下を生じるばかりでなく、シート成形体11の膜振動が表面シート21の膜振動よりも優先(有効に効力を発揮)されるようになるので、1mm程度の厚みにしてシート成形体11の膜振動を抑え、前記表面シート21の膜振動を優先(有効に効力を発揮)させて低周波数領域での吸音率を向上させるのが好ましい。
【0026】
前記セル13の開口部14(図10に示す)の形状は、図示の例では、平面形状が四角からなるが、これに限られるものではなく、三角、六角、八角などの多角形からなるものや、円形などからなるものなどが挙げられる。特に、前記セル13は、強度や成形のし易さの点から、平面形状が四角形、六角形のものが好ましい。前記セル13の平面サイズは、小さすぎても大きすぎても吸音率が低下するため、一辺あるいは径が5〜75mmの大きさが好ましい。また、前記セル13の高さは、低すぎると吸音率が低下し、高すぎると前記シート成形体11の強度低下を生じることから、5〜50mmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は10〜30mmである。更に、前記セル13の配置は、図示の例は、複数のセル13が列と行を構成するように縦横に配置されているが、これに限るものではない。
【0027】
更に、本実施形態のシート成形体11は、セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16の縁から前記セルの開口部側表面15とは反対側へ屈曲して形成された外周側面17を有し、更に前記外周側面17の端部(開口部側表面15とは反対側端部)から外方へ屈曲したフランジ部18を有している。前記外周側面17は、前記シート成形体11の側部外周を包囲するスカート状となっている。前記外周側面17の存在により前記シート成形体11の膜振動を抑えることができ、前記表面シート21の膜振動による吸音率の向上を図ることができる。また、前記フランジ部18は、後述する表面シート21のフランジ部24と共に前記膜振動吸音部材10の取付部として用いることができ、接着剤、両面テープ、面ファスナーばかりでなく、リベット、ねじ、ピン、ビス等で前記遮蔽板に固定することにより、膜振動吸音部材10を容易に遮蔽板に取り付けることができる。
【0028】
前記シート成形体11の成形は、例えば、樹脂製の一枚のシートから真空成型、型込め成形、圧着成形などにより容易に行うことができる。特に、成形作業性及び成形品質の点から真空成型が最も好ましい。
【0029】
前記表面シート21は、非通気かつ非透水性のシートからなり、前記複数のセル13の開口部14を覆うように前記シート成形体11におけるセルの開口部側表面15に積層されている。本実施形態の表面シート21は、平板状の本体部22と、前記本体部22の周縁から屈曲して形成された側部23と、前記側部23の先端から外向きに形成されたフランジ部24とよりなる。前記表面シート21の本体部22は前記シート成形体11におけるセル13の開口部側表面15を覆い、また前記側部23は前記シート成形体11の外周側面17に外側から重なり、前記フランジ部24は前記シート成形体11のフランジ部18に重なる。
【0030】
前記表面シート21を構成する非通気かつ非透水性のシートは、多孔質でない一般樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などによる面状板材(シート)、フイルムなどからなる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などからなる面状板材(シート)、フイルムなどで構成される。
【0031】
前記表面シート21は、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率は高くなるが、ピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、膜振動がし難くなって吸音率が低くなる。そのため、好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。この範囲であれば空調用室外機のモータやファンによって発生する特定のピーク周波数に対して効果的に吸音することができ、防音性を高めることができる。なお、前記表面シート21の膜振動を、前記シート成形体11の膜振動より優先(有効に効力を発揮)させるためには、前記シート成形体11を構成するシートの厚みと同等あるいは薄めのシートで前記表面シート21を構成するのが好ましい。
【0032】
前記表面シート21は、前記シート成形体11おけるセルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16でシート成形体11に固定され、複数のセル13における隣り合うセル間の部分19では前記シート成形体11に固定されていない。前記シート成形体の外周部16では前記表面シート21が前記シート成形体の外周部16に密着しており、これによって前記シート成形体の外周部16で包囲される部分は、前記シート成形体11と表面シート21の間が閉鎖空間とされている。
【0033】
前記セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16で前記表面シート21とシート成形体11を閉じて、前記シート成形体11と表面シート21の間を閉鎖空間とすることが重要であり、前記セルの開口部側表面15におけるシート成形体の外周部16で、前記表面シート21の固定が全く行われていなかったり、部分的にしか行われていなかったりする(すなわち部分的に開放されている)場合には、前記表面シート21の膜振動による低周波数領域における吸音が十分できず、吸音領域が高周波域へシフトするようになる。但し、表面シート21がシート成形体の外周部16でシート成形体11に完全に固定されていなくても、前記表面シート21とシート成形体の外周部16が密着するようにしてシート成形体11と表面シート21の間をピーク周波数が高周波側にシフトしない程度に実質的に閉鎖空間とすることができればよい。
【0034】
なお、前記シート成形体11の外周部16への表面シート21の固定は、前記シート成形体の外周部16に表面シート21が密着した状態にあり、それによって前記外周部16で表面シート21の移動が阻止される状態をいい、接着等によって前記表面シート21が前記外周部16に固着された状態に限られない。即ち、前記表面シート21のシート成形体11への固定方法は、接着・粘着、溶着、融着、圧着など公知の接合方法の中から、何れか一つあるいは複数の方法で行えばよい。前記接着・粘着には、接着剤や粘着剤を用いる方法、両面接着テープやビニルテープなどを用いる方法などがある。また、溶着や融着には、高周波または超音波融着などがある。また、圧着はシート同士の凹凸、嵌め込み、寸法・傾斜差などによる係合でもよいし、係合治具を用いてもよい。
【0035】
前記シート成形体11の複数のセル13における隣り合うセル間の部分19、すなわちセル間の山部についても前記表面シート21をシート成形体11に固定すると、前記表面シート21の膜振動による低周波数領域における吸音が十分できず、吸音領域が高周波域へ大きくシフトするようになる。なお、前記表面シート21がセル間の山部に固定されずに圧力がかかるだけでも、固定したのと同様に膜振動による吸音が抑制されるので、セル間の山部の高さは、外周よりも幾分低くして(表面シート21とセル間の山部との間に隙間を設けて)も良い。
【0036】
また、前記表面シート21と前記シート成形体11との非固定部分は、100mm角以上確保するのが好ましく、更に好ましくは150mm角以上である。前記非固定部分が100mm角以上になると、前記表面シート21の膜振動が十分に行われるようになって低周波数領域での吸音性が向上するようになる。従って、前記膜振動部材10のサイズは、前記表面シート21が固定される外周部16を除いて、少なくとも100mm角以上であることが好ましい。
前記膜振動吸音部材10の全体厚みは、5〜50mm、好ましくは10〜30mmであるのが好ましい。5mm未満の場合は吸音率が低くなり、一方、50mmを超えると強度低下となる。
【0037】
前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71は、吸気時の騒音を膜振動吸音部材10により主に吸気騒音と同等な中周波の部分で吸音し、また遮蔽板55、65、75によって外部へ音が伝わるのを抑えることができるため、全騒音レベルOA(オーバーオール)値を効率よく低減できるので良好な防音効果が得られる。しかも、前記膜振動吸音部材10が非吸水性(非透水性)のため、屋外でも良好な防音効果が得られる。
【0038】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81は、図4〜図6に示すように、遮蔽板85が前記排気用開口部109の外周を囲む3面以上、好ましくは6面以上のダクト形状(筒形状)からなり、前記遮蔽板85の内側に前記膜振動吸音部材10が複数配置されている。前記遮蔽板85は、前記吸気用開口部側制音構造体51、61、71の遮蔽板55、65、75と同様の材質からなる。前記ダクト形状からなる遮蔽板85は、空調用室外機側の端部に前記空調用室外機100への取付部82が設けられている。前記取付部82は排気用開口部側82aが開口した箱状からなり、前記排気用開口部側82aとは反対側の面82bに連通用開口部82cが形成され、該連通用開口部82cの周囲に前記ダクト形状の遮蔽板85が立設される。前記連通用開口部82cを介して取付部82内とダクト形状の遮蔽板85内が連通している。前記取付部82は、図示しない金具、例えばL字金具を用いて前記空調用室外機100の上面104(図1の上面図に示す)に取り付けられる。なお、前記ダクト形状の遮蔽板85の先端には、ゴミの進入を防ぐために保護ネット99が取り付けられている。前記保護ネット99の網目は、通気性の低下が少ない粗さとなっている。
【0039】
図6に示すように、前記ダクト形状の遮蔽板85の内面には、金属板等からなる邪魔板87、91が空調用室外機の排気方向Aへ傾斜して設けられ、前記邪魔板87、91の排気用開口部側の面88、92に、前記膜振動吸音部材10が配置固定されている。前記邪魔板87、91は、前記ダクト形状の遮蔽板85における対向する内面84a、84bにそれぞれ設けられ、かつ対向する一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87の延長線Bと交差するように、他方の遮蔽板内面84bに設けられた邪魔板91の排気用開口部側の面92が位置するようにされている。
【0040】
前記排気用開口部側制音構造体81によれば、排気時の騒音が遮蔽板85の内面の膜振動吸音部材10により主に排気騒音と同等な中周波の部分で吸音され、また遮蔽板85によって外部へ音が伝わるのを抑えることができるため、全騒音レベルOA(オーバーオール)値を効率よく低減できるので良好な防音効果が得られる。しかも、前記膜振動吸音部材10が非吸水性(非透水性)のため、屋外でも良好な防音効果が得られる。
【0041】
更に、ダクト形状の遮蔽板85の内面に邪魔板87、91が設けられているため、邪魔板87、91の排気用開口部側の面88、92に配置されている膜振動吸音部材10に音を直接入射させて吸音することができ、邪魔板87、91が無い場合に比べて防音性をより高めることができる。
【0042】
しかも、対向する一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87に排気気体が衝突して邪魔板87に設けられている膜振動吸音部材10で吸音され、また、前記一方の遮蔽板内面84aに設けられた邪魔板87によって他方の遮蔽板内面84bへ誘導された排気騒音の音波は、他方の遮蔽板内面84bに設けられた邪魔板91に衝突して邪魔板91に設けられている膜振動吸音部材10で吸音されるため、より効果的に防音することができる。
【0043】
図11には、他の実施形態の制音構造体について前記空調用室外機100への取り付け状態を示す。図11に示す実施形態では、図1に示した空調用室外機100における左側面101の左側吸気用開口部106、右側面102の右側吸気用開口部107、背面103の背面吸気用開口部108をそれぞれ覆うように、吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aが設けられ、また空調用室外機100における上面104の排気用開口部109を覆うように排気用開口部側制音構造体81Aが設けられる。
【0044】
前記吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aは、遮蔽板55A、65A、75Aと支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3と、複数の前記膜振動吸音部材10とで構成される。
【0045】
前記支持部a1、a2、a3は、前記遮音板55A、65A、75Aの上端から屈曲形成された上側支持部であり、前記支持部b1、b2、b3及びc1、c2、c3は、前記遮音板55A、65A、75Aの幅方向両端から屈曲形成された側部支持部である。前記遮蔽板55A、65A、75Aと前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3とにより構成されるそれぞれの形状は、前記空調用室外機100の吸気用開口部側と下面が開口した箱状である。前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3により、前記遮蔽板55A、65A、75Aを前記空調用室外機100から離して保持し、前記遮蔽板55A、65A、75Aが前記吸気用開口部側を塞がないようにする。
【0046】
本実施形態の吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aでは、前記遮音板55A、65A、75Aの内面と前記支持部a1、b1、c1、a2、b2、c2、a3、b3、c3の内面との両方に、前記膜振動吸音部材10が複数設けられる。その結果、より多くの膜振動吸音部材10を空調用室外機における吸気流路に配置することができるようになり、吸音・防音効果を一層高めることができる。
【0047】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81Aは、上面が前面側で高くなるように傾斜すると共に前面の上部に開口部89Aを有し、かつ底面が開口したダクト状の遮蔽板85Aと、前記ダクト状の遮蔽板85Aの内面に設けられた複数の前記膜振動吸音部材10とからなり、前記ダクト状の遮音板85Aにおける下端で前記空調用室外機100の上面に取り付けられる。なお、前記ダクト状の遮蔽板85Aの内面に設けられている膜振動吸音部材10は、図11においては前記開口部89Aを通して外部からから視認できる膜振動吸音部材10のみが図示されているが、実際は前記開口部89Aを通して視認できない位置を含む遮蔽板85Aの内面全体に渡って複数設けられている。
【0048】
図12に示す更に他の実施形態では、図1に示した空調用室外機100における左側面101の左側吸気用開口部106、右側面102の右側吸気用開口部107、背面103の背面吸気用開口部108をそれぞれ覆うように、吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bが設けられ、また空調用室外機100における上面104の排気用開口部109を覆うように排気用開口部側制音構造体81Bが設けられる。
【0049】
前記吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bは、遮蔽板55B、65B、75Bと支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3と、複数の前記膜振動吸音部材10とで構成され、図11に示した実施形態における前記吸気用開口部側制音構造体51A、61A、71Aと同様の構成からなる。
【0050】
前記支持部d1、d2、d3は、前記遮音板55B、65B、75Bの上端から屈曲形成された上側支持部であり、前記支持部e1、e2、e3及びf1、f2、f3は、前記遮音板55B、65B、75Bの幅方向両端から屈曲形成された側部支持部である。前記遮蔽板55B、65B、75Bと前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3とにより構成されるそれぞれの形状は、前記空調用室外機100の吸気用開口部側と下面が開口した箱状である。前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3により、前記遮蔽板55B、65B、75Bを前記空調用室外機100から離して保持し、前記遮蔽板55B、65B、75Bが前記吸気用開口部側を塞がないようにする。
【0051】
本実施形態の吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bでは、前記遮音板55B、65B、75Bの内面と前記支持部d1、e1、f1、d2、e2、f2、d3、e3、f3の内面との両方に、前記膜振動吸音部材10が複数設けられる。その結果、より多くの膜振動吸音部材10を空調用室外機における吸気流路に配置することができるようになり、吸音・防音効果を一層高めることができる。
【0052】
一方、前記排気用開口部側制音構造体81Bは、上面が背面側で高くなるように傾斜すると共に背面の上部に開口部89Bを有し、かつ底面が開口したダクト状の遮蔽板85Bと、前記ダクト状の遮蔽板85Bの内面に設けられた複数の前記膜振動吸音部材10とからなり、前記ダクト状の遮音板85Bにおける下端で前記空調用室外機100の上面に取り付けられる。なお、前記ダクト状の遮蔽板85Bの内面に設けられている膜振動吸音部材10は、図12においては前記開口部89Bを通して外部からから視認できる膜振動吸音部材10のみが図示されているが、実際は前記開口部89Bを通して視認できない位置を含む遮蔽板85Bの内面全体に渡って複数設けられている。
【0053】
本発明の制音構造体は、空調用室外機の吸気用開口部と排気用開口部の両方に必ず設ける必要はなく、吸気用開口部と排気用開口部の何れか一方にのみ設けてもよく、その場合でも雨等に影響を受けることなく良好な防音効果が得られる。また、前記膜振動吸音部材は、直接遮蔽板に取り付けるのに代えて、予め金属基板に膜振動吸音部材をシート成形体側で取り付け、金属基板を遮蔽板に固定することで膜振動吸音部材を遮蔽板に取り付けるようにしてもよい。また、排気用開口部側制音構造体における遮蔽板のフード形状は、真っ直ぐな筒状のものに限られず、例えばエルボ状に屈曲したものであってもよい。
【実施例】
【0054】
比較例1 <ブランク:室外機のみ、グラフ1〜6>
三菱電機製業務用エアコン「PUHY−P280CM−E1」において、パソコン制御にて暖房運転FOC=80 F1=120に設定して室内、室外温度をほぼ一定になるよう管理のもと運転状態を安定させ、室外機の1m高、正面(前面、吸い込み面のないパネル側)1m、3m、5m、後面(背面、吸込み面側)1mにおいて、リオン製騒音計NL22(周波数分析機能付き)にて10秒間のLAeq(等価騒音レベル)を5回測定し、大きく外れているデータを除いて平均して全騒音レベル・OA値及び各周波数(1/3オクターブバンド中心周波数)の値を得た。結果を表1及びグラフ1〜6(図13〜図18)の基準値として示す。表1より、吸込み面が開口している後面の方が約4dB騒音レベルが高く、また正面において距離が離れるほど静かになることがわかる。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例2 <フードによる遮音効果(比較例1との比較、グラフ1)>
図12に示したZAM鋼板1.0mm厚による排気用開口部側制音構造体81Bから膜振動吸音部材10を除去した四角柱形状で上面に傾斜面を有する防雪仕様の吹出しフード、及び図12に示した吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71Bから膜振動吸音部材10を除去した吸込みフードを、比較例1の業務用エアコン室外機に装着した。なお、吹出しフードは背面側へ吹出し、正面1mにて、比較例1と同様に測定してOA値及び各周波数の騒音値を得た。図13のグラフ1に比較例1と比較したグラフを示す。比較例2は、吹出しフード及び吸い込みフードの遮音効果により、比較例1よりも1.4dB減音した。
【0057】
実施例1 <吸音材とフード遮蔽の効果(比較例1,2との比較、グラフ1,2)>
図7〜図9に示したような膜振動吸音部材10として、イノアックコーポレーション製膜振動吸音部材“ミッドシーン”P700(700Hz中心対応、195×195×16.5mmH、表面シートの面密度0.55)を、比較例2の防雪仕様吹出しフードおよび吸込みフード両方の内面全面にわたるように、リベットにて角隅部4点を留めて複数個配置して図12の排気用開口部側制音構造体81B(防雪仕様吹出しフード)、及び吸気用開口部側制音構造体51B、61B、71B(吸込みフード)を作成し、比較例1の業務用エアコン室外機に装着した。なお、膜振動吸音部材10の個数は、防雪仕様吹出しフード(排気用開口部側制音構造体81B)については42個、吸込みフードの吸気用開口部側制音構造体51B、61Bについては各30個、吸込みフードの吸気用開口部側制音構造体71Bについては36個である。比較例1と同様に正面1mにて測定した結果、フードによる遮音効果と膜振動吸音部材による吸音効果の総和としての総防音効果として、実施例1では比較例1との差である5.6dBの減音効果が得られた。また、膜振動吸音部材単体の吸音効果としては、実施例1は比較例2との差である4.2dBの効果が得られた。周波数分析結果を図13のグラフ1に示すが、フードだけの比較例1に対し、実施例1ではメインピークの630Hz付近を中心に大きく減音し、膜振動吸音部材単体の効果が明らかである。
同様にして、実施例1は、後面1mでは、防音効果として4.8dBの効果が得られ、図14のグラフ2に示すように、メインピーク800Hz付近を中心に大きく減音した。
【0058】
実施例2、比較例3 <防雪フード正面吹出し(実施例1、比較例1,2との比較、グラフ1,2)>
比較例3では、比較例2の防雪仕様吹出しフードを、図11の排気用開口部側制音構造体81Aのように正面側へ吹出すように装着した。比較例3の正面1mでは、吹出しフードによる正面側へ音波が集中したことにより−3.2dBと悪化した。比較例3のフード内に膜振動吸音部材を取付けた実施例2(図11の排気用開口部側制音構造体81A)では、フードによって悪化した騒音レベルを抑えて、総防音効果としては1.1dBの減音となった。図13のグラフ1から、実施例2ではメインピークの630〜800Hz付近を中心に大きく減音したことがわかる。
一方後面(背面)では、実施例2は吹出しフードの遮音効果も大きいために防音効果8.4dBと大きな効果が得られ、図14のグラフ2からも実施例2では後面吹出しの実施例1より大きく減音していることが確認できる。
【0059】
実施例3 <標準仕様上部開口吹出しフード(比較例1との比較、グラフ3)>
図2、図4〜6に示した最上面が開口している排気用開口部側制音構造体81において邪魔板を無くした排気用開口部側制音構造体(八画柱状の標準仕様吹出しフード(邪魔板87、91無し)を比較例1の業務用エアコン室外機に装着し、比較例1と同様に測定した。なお、排気用開口部側制音構造体に設けた膜振動吸音部材の個数は46個である。図15のグラフ3に示すように、実施例3では正面1mの総防音効果は比較例1に対して2.2dBであった。
【0060】
実施例4 <邪魔板の効果(実施例3、比較例1との比較、グラフ3)>
実施例3の膜振動吸音部材付きの吹出しフード内に、排気方向に対して傾斜するように2枚の邪魔板を取付け、各邪魔板には室外機側へ膜振動吸音部材を4個ずつ取り付けて、図2、図4〜6に示した排気用開口部側制音構造体81を形成し、実施例3と同様に比較例1の業務用エアコン室外機に装着し、比較例1と同様に測定した。なお、邪魔板以外に排気用開口部側制音構造体81に設けた膜振動吸音部材の個数は、実施例3と同一である。図15のグラフ3に示すように、実施例4では正面1mの総防音効果は3.0dBと、邪魔板のない実施例3より総防音効果が向上した。音波が邪魔板にあたることで吸音効率が向上することがわかる。
【0061】
実施例5 <膜振動吸音部材による影響(実施例4、比較例1との比較、グラフ4)>
膜振動吸音部材をイノアックコーポレーション製“ミッドシーン”P500(500Hz中心対応、195×195×17mmH、表面シートの面密度0.90)とした以外は、実施例4と同様とした。膜振動吸音部材の個数は実施例4と同一である。図16のグラフ4のように、実施例5では、やや低周波側に防音効果がシフトし、やや減音効率が低下した。吸音メインピークが、騒音メインピークにより近いミッドシーンP700を用いた実施例4の方が、より効率よく減音できることがわかる。
【0062】
比較例4 <膜振動吸音部材による影響:グラスウール(実施例4,5との比較、グラフ4)>
膜振動吸音部材に変えて吸音材としてグラスウール(マグ・イゾベール製、BS3225−GC3、25mm厚、32kg/m3)を用いた以外は、実施例4と同様とした。図16のグラフ4のように、比較例4では、高周波側に大きく防音効果がシフトして減音効率が低下した。多孔質系の吸音材は、吸音メインピークが高周波側にあり、騒音メインピークと解離しているため、減音効率が良くないことがわかる。
【0063】
実施例6 <吸込みフード横面の効果(実施例4、比較例1との比較、グラフ3)、距離減音効果(比較例1との比較、グラフ6)>
実施例4に加え、図2、3に示した吸気用開口部側制音構造体51、61(吸込みフード)を、比較例1の業務用エアコン室外機における両横部に装着した。膜振動吸音部材の個数は、吸気用開口部側制音構造体51、61のそれぞれについて12個である。その結果、図15のグラフ3に示すように、実施例6では正面1mの防音効果は5.1dBと大幅に向上し、横面の防音対策が強化できた。なお、正面3m、5mにおいても、図18のグラフ6のように、実施例6では比較例1に対し、それぞれ3.6dB、4.0dBと防音効果があった。
【0064】
実施例7 <後面での吸込みフード後の効果(実施例6、比較例1との比較、グラフ5)>
実施例6において、図2、3の吸気用開口部側制音構造体71B(吸込みフード)を、さらに業務用エアコン室外機における背面部に装着して実施例7とした。吸気用開口部側制音構造体71Bにおける膜振動吸音部材の個数は18個である。背面部に吸気用開口部側制音構造体71Bを設けていない実施例6においては、背面の吸込み部がオープンなため、後面1.0mでの防音効果は0.7dBと低かったが、実施例7では、背面にも吸気用開口部側制音構造体71B(吸込みフード)を装着した結果、図17のグラフ5のように、5.2dBと大きな効果が得られた。
【0065】
なお、本実施例において、膜振動吸音部材は、セルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルを覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされた例を示したが、変更例として以下のようであっても良い。
【0066】
(変更例1) 前記シート成形体を用いず、表面シートを屈曲により凸部からなる立体形状に成形し、凸部形成表面シートの外周部を、直接、遮蔽板に対して前記記載の方法により固定してもよい。この場合、強度面から凸部の表面の大きさが100×100mm以下が好ましく、そのため吸音するメインピークは高周波側に移動する。室外機の音源から発せられる騒音に高い周波数の騒音が含まれている場合には、本変更例の膜振動吸音部材を使用したり、また実施例と本変更例の膜振動吸音部材を併用することで、吸音性能を向上することができる。本変更例においても膜振動吸音部材の全体厚みは5〜50mm、好ましくは10〜30mmとすることができ、面密度は0.05〜2.0kg/m2とすることが好ましい。
【0067】
(変更例2)
変更例1における凸部形状は平面視で矩形、丸、多角形でもよく、また複数であっても良く、また厚みも適宜設定されてよい。例えば、195×195mmの範囲に4行×4列の16個の矩形上凸部を厚み25mmとなるように設ける例があげられ、また、195×195mmの範囲にさらに細かく6行×6列の36個の矩形状凸部を厚み15mmとなるように設ける例が挙げられる。凸部が小さく複数となることで、より高周波側の音域に対して有効となり、また、表面積が増大するため吸音率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 膜振動吸音部材
11 シート成形体
13 セル
14 セルの開口部
15 シート成形体のセルの開口部側表面
16 セルの開口部側表面におけるシート成形体の外周部
19 セル間の部分
21 表面シート
51、51A,51B、61、61A、61B、71、71A、71B 吸気用開口部側制音構造体
55、55A、55B、65、65A、65B、75、75A、75B 吸気用開口部側制音構造体の遮蔽板
81、81A、81B 排気用開口部側制音構造体
52、62、72、a1、a2、a3、b1、b2、b3、c1、c2、c3、d1、d2、d3、e1、e2、e3、f1、f2、f3 支持部
85、85A、85B 排気用開口部側制音構造体の遮蔽板
87、91 邪魔板
100 室外機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体において、
前記制音構造体は、遮蔽板と、前記遮蔽板の平面部の前記空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなることを特徴とする制音構造体。
【請求項2】
前記膜振動吸音部材は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルの開口部を覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、
前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされ、
前記膜振動吸音部材が、前記シート成形体の側で前記遮蔽板の平面部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の制音構造体。
【請求項3】
前記空調用室外機の吸気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記吸気用開口部の一部または全面に対向し、かつ支持部により前記空調用室外機から離れて支持され、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制音構造体。
【請求項4】
前記空調用室外機の排気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の制音構造体。
【請求項5】
前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなることを特徴とする請求項4に記載の制音構造体。
【請求項6】
前記遮蔽板の内面に邪魔板が前記空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、前記邪魔板の排気用開口部側の面に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の制音構造体。
【請求項1】
吸気用開口部及び排気用開口部を備え、内部に音源を有する空調用室外機の外周に設けられる制音構造体において、
前記制音構造体は、遮蔽板と、前記遮蔽板の平面部の前記空調用室外機の音源側に取り付けられた非吸水性樹脂からなる膜振動吸音部材とよりなることを特徴とする制音構造体。
【請求項2】
前記膜振動吸音部材は、屈曲により形成され一面を開口部とした凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気かつ非透水性のシート成形体と、前記複数のセルの開口部を覆うように前記シート成形体に積層された非通気かつ非透水性の表面シートとよりなり、
前記表面シートは、前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に非固定とされ、
前記膜振動吸音部材が、前記シート成形体の側で前記遮蔽板の平面部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の制音構造体。
【請求項3】
前記空調用室外機の吸気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記吸気用開口部の一部または全面に対向し、かつ支持部により前記空調用室外機から離れて支持され、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制音構造体。
【請求項4】
前記空調用室外機の排気用開口部に設けられる前記制音構造体は、前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む3面以上のダクト形状からなり、前記遮蔽板の内側に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の制音構造体。
【請求項5】
前記遮蔽板が前記排気用開口部の外周を囲む6面以上のダクト形状からなることを特徴とする請求項4に記載の制音構造体。
【請求項6】
前記遮蔽板の内面に邪魔板が前記空調用室外機の排気方向へ傾斜して設けられ、前記邪魔板の排気用開口部側の面に前記膜振動吸音部材が配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の制音構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−88794(P2013−88794A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232527(P2011−232527)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(511014116)株式会社ヤブシタ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(511014116)株式会社ヤブシタ (2)
【Fターム(参考)】
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