説明

刺激応答性化合物、刺激応答性化合物重合体、アクチュエータおよび刺激応答性化合物の製造方法

【課題】変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物、刺激応答性化合物重合体およびそれを用いたアクチュエータを提供すること、また、刺激応答性化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の刺激応答性化合物は、ビチオフェンと、前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、液晶性官能基は、重合性官能基を有していることを特徴とする。重合性官能基は、ビニル基またはアクリル基であるのが好ましい。液晶性官能基は、複数の環構造を有しているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激応答性化合物、刺激応答性化合物重合体、アクチュエータおよび刺激応答性化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野やマイクロマシン分野等において、小型のアクチュエータの必要性が高まっている。
従来のアクチュエータは、イオン交換膜を用いたものが主流であり(例えば、特許文献1参照)、これは、イオンの移動により材料が収縮・膨潤するもので、イオンの拡散速度により動作が支配されるため、高速応答化には課題が多い。また、アクチュエータの動作に方向性を持たせる方法が無く、高効率で動作させるためにも異方的な動きを実現できるものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−224027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、その一態様において変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物、刺激応答性化合物重合体およびそれを用いたアクチュエータを提供するものである。また、刺激応答性化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の刺激応答性化合物は、回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、重合性官能基を含むことを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
【0006】
本発明の刺激応答性化合物では、前記ユニットAはビチオフェンを含み、
前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは1,3−ベンゾジチオーリル基を含み、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性官能基を含むことを特徴とすることが好ましい。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
【0007】
本発明の刺激応答性化合物は、ビチオフェンと、
前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、
前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、
液晶性官能基は、重合性官能基を有していることを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
【0008】
本発明の刺激応答性化合物では、前記重合性官能基は、ビニル基またはアクリル基であることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体の運動性を高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
【0009】
本発明の刺激応答性化合物では、前記液晶性官能基は、複数の環構造を有していることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
本発明の刺激応答性化合物では、前記複数の環構造のうち1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合していることが好ましい。
これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつより円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
【0010】
本発明の刺激応答性化合物では、前記重合性官能基は、酸素原子またはメチレン基を介して液晶性官能基に結合していることが好ましい。
これにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体の運動性をさらに高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
本発明の刺激応答性化合物では、前記ビチオフェンと前記液晶性官能基とは、アルキレン基を介して結合していることが好ましい。
これにより、液晶性官能基の運動性(配向性)を向上させることができ、刺激応答性化合物の変形(駆動)の方向性をより一定なものとすることができる。
【0011】
本発明の刺激応答性化合物重合体は、本発明の刺激応答性化合物が、前記重合性官能基により重合していることを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物重合体を提供することができる。
本発明の刺激応答性化合物重合体では、前記刺激応答性化合物が2重結合またはシクロヘキサンを介して重合していることが好ましい。
これにより、変形の方向性を保持しつつ、構成する刺激応答性化合物の運動性(配向性)が向上させることができ、変形率をより高いものとすることができる。
本発明のアクチュエータは、本発明の刺激応答性化合物重合体を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能なアクチュエータを提供することができる。
【0012】
本発明の刺激応答性化合物の製造方法は、回転軸として機能する結合を有するユニットAの第1の結合部位に第1のユニットBが配置され、前記ユニットAの第2の結合部位に第2のユニットBが配置された化合物を合成する工程と、
液晶性を有し、重合性官能基を含む第1のユニットCおよび第2のユニットCを合成する工程と、
前記ユニットAの第3の結合部位に前記第1のユニットCを結合させ、前記ユニットAの第4の結合部位に前記第2のユニットCを結合させる工程と、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応により結合することを特徴とする。
これにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の刺激応答性化合物重合体の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
【図2】本発明の刺激応答性化合物重合体を用いたアクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】電圧印加により変形したアクチュエータの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《刺激応答性化合物》
まず、本発明の刺激応答性化合物の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の刺激応答性化合物は、ビチオフェン(ユニットA)と、当該ビチオフェンの2つのα位(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基(第1のユニットBおよび第2のユニットB)と、ビチオフェンの2つのβ位(ユニットAの第3の結合部位および第4の結合部位)に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基(第1のユニットCおよび第2のユニットC)とを有しており、具体的には、下記式(1)で表すことができる。式中、Rは、液晶性官能基を示す。
【0015】
【化1】

【0016】
刺激応答性化合物とは、刺激によって、分子の形状を変形(変位)させる機能を有する化合物のことを指し、具体的には、アクチュエータやマイクロポンプ等の駆動部を構成する化合物である。
ビチオフェンは、回転軸として機能する結合を有しており、当該結合を軸に回転可能となっている基である。ビチオフェンを有することにより、刺激応答性化合物は、変形(変位)可能となっている。
【0017】
ビオフェンの2つのα位には、上記式(1)に示すように、1,3−ベンゾジチオーリル基が結合している。また、1,3−ベンゾジチオーリル基は、1,3−ベンゾジチオーリル基同士で酸化還元反応によって結合を形成する基である。言い換えると、外部から電子の受け取る(還元される)ことによって結合を形成する基である。また、外部に電子を放出する(酸化される)ことで結合を解除する基である。
【0018】
刺激応答性化合物が1,3−ベンゾジチオーリル基を有することにより、反応条件を調整することで、1,3−ベンゾジチオーリル基同士の結合状態と非結合状態とを可逆的にかつ容易に進行させることができる。また、反応性が高いため、刺激応答性化合物は、より円滑で、かつ低電圧で変形が可能となる。
また、ビオフェンの2つのβ位には、液晶性を有する液晶性官能基(式中、Rで表される官能基)が結合している。液晶性を有することにより、液晶性官能基は、液晶の配向技術を用いることにより、一定の配向性を示す。これにより、刺激応答性化合物は、その駆動に一定の方向性を有するものとなる。
【0019】
液晶性官能基としては、液晶性を示す基であれば特に限定されず、複数の環構造を有する基、例えば、複数のフェニル基をエステル基で連結したもの、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものが挙げられる。中でも特に、高い液晶性を示すことから、上記式(1)中のRで示したような、ベンゼン環若しくはシクロヘキサン環が直接連結したものを用いるのが好ましい。
【0020】
液晶性官能基としては、特に、複数の環構造のうちの1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合した基を用いるのが好ましい。これにより、液晶性官能基の配向時における運動性能をより高いものとすることができ、配向への移行の速度がより早くなる。その結果、刺激応答性化合物は、より速くかつやり円滑に変形(変位)が可能となり、さらに低電圧で駆動するものとなる。
【0021】
また、液晶性官能基は、重合性官能基を有している。この重合性官能基によって、刺激応答性化合物が重合させることができる。その結果、より分子鎖の長い刺激応答性化合物重合体を形成することができる。また、このように分子鎖を長くすることにより、後に詳述するように、分子の変形(変位)の度合いを大きくすることができ、より強い力(応力)で駆動させることが可能となる。
重合性官能基としては、特に限定されないが、ビニル基またはアクリル基であるのが好ましい。これにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体をより容易に得ることができる。また、得られる刺激応答性化合物重合体の運動性を高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
【0022】
また、重合性官能基は、液晶性官能基に、酸素またはメチレン基を介して結合しているのが好ましい。このような構成とすることにより、刺激応答性化合物を重合して得られる刺激応答性化合物重合体の運動性をさらに高いものとすることができ、変形の度合い(変形率)をより高いものとすることができる。
また、液晶性官能基は、ビチオフェンと、アルキレン基を介して結合しているのが好ましい。これにより、液晶性官能基の運動性(配向性)を向上させることができ、刺激応答性化合物の変形(駆動)の方向性をより一定なものとすることができる。
このような液晶性官能基の具体例としては、以下のようなものが挙げることができる。
【0023】
【化2】

【0024】
以上説明したように、本発明の刺激応答性化合物は、軸回転可能なビチオフェン(ユニットA)と、ビチオフェンのα位(ユニットAの第1の結合部位および第2の結合部位)に結合し、酸化還元反応により結合を形成する2つの1,3−ベンゾジチオーリル基(第1のユニットBおよび第2のユニットB)と、ユビチオフェンのβ位(ユニットAの第3の結合部位および第4の結合部位)に結合した2つの重合性の液晶性官能基(第1のユニットCおよび第2のユニットC)とを有している点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物を提供することができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0025】
すなわち、液晶性官能基によって複数の刺激応答性化合物分子が配向した(並んだ)状態で存在することができ、その揃った状態で電圧等を印加して1分子内の1,3−ベンゾジチオーリル基同士が酸化還元反応により結合する(架橋する)。このように、液晶性官能基の配向性(液晶性)と1,3−ベンゾジチオーリル基の結合性とを利用することで、下記式(2)の左に示す状態から、下記式(2)の右に示す状態へと確実に変形(変位)することができる。これにより、液晶性官能基によって分子の変形に一定の方向性を持たせつつ、1,3−ベンゾジチオーリル基の酸化還元反応による結合でその変形の度合いを大きくすることができる。また、液晶性官能基の配向と1,3−ベンゾジチオーリル基同士の結合は、低い電圧で進行するので、低電圧で、大きな変形(変位)が可能となる。
また、刺激応答性化合物は重合性官能基を有しているので、変形率が高く、かつ、方向性のある変形が可能な刺激応答性化合物重合体を容易に形成することができる。
【0026】
【化3】

【0027】
《刺激応答性化合物重合体》
次に、刺激応答性化合物重合体について説明する。
図1は、本発明の刺激応答性化合物重合体の酸化還元反応前後の分子構造を説明するための図である。
刺激応答性化合物重合体は、上述した刺激応答性化合物が重合性官能基によって重合して得られるものである。
【0028】
刺激応答性化合物が重合することにより、酸化された状態では、図1の上に示される構造のように長い分子が伸びた状態で存在することとなる。そして、そこへ電圧を印加し、電子を与えて還元すると、図1の下に示される構造のように、ビチオフェンを軸に回転し、隣接する1,3−ベンゾジチオーリル基同士が酸化還元反応により結合し、さらに、液晶性官能基が配向することにより、長い分子が折りたたまれた状態となる。このため、変形の度合い(変形率)を大きなものとすることができるとともに、その変形に方向性を持たせることができる。
このような刺激応答性化合物重合体において、構成する刺激応答性化合物は、2重結合またはシクロヘキサンを介して重合しているのが好ましい。これにより、変形の方向性を保持しつつ、構成する刺激応答性化合物の運動性(配向性)が向上させることができ、変形率をより高いものとすることができる。
【0029】
《アクチュエータ》
次に、上述した刺激応答性化合物重合体(刺激応答性化合物)を用いたアクチュエータについて詳細に説明する。
図2は、本発明の刺激応答性化合物重合体(刺激応答性化合物)を用いたアクチュエータの一例を模式的に示す断面図、図3は、電圧印加により変形したアクチュエータの一例を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、アクチュエータ100は、本発明の刺激応答性化合物重合体で構成された変形層10と、当該変形層10の両面に設けられた電極11とを有している。すなわち、アクチュエータ100は、変形層10を電極11で挟持した構造となっている。
変形層10は、上述した刺激応答性化合物重合体で構成されており、電圧を印加することで、変形する層である。
【0031】
電極11は、変形層10に電圧を印加する機能を有している。
また、電極11は、変形層10の変形に追従するために、屈曲性を備えている。
また、電極11の、変形層10と接する面には、ラビング処理等の配向処理が施されている。これにより、刺激応答性化合物重合体の液晶性官能基を好適に配向させることができる。また、これにより、変形層10の変形(膨張・収縮)に異方性を発現させることができる。
【0032】
このような電極11を構成する材料としては特に限定されないが、カーボンナノチューブを用いるのが好ましい。これにより、変形層10の変形により確実に追従することができる。
このような構造のアクチュエータ100において、電極11に電圧を印加すると、変形層10の一方の電極11と接している側では、酸化反応が進み膨張し、変形層10の他方の電極11と接している側では、還元反応が進み収縮する。その結果、図3に示すように、還元反応が生じた方向に屈曲する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例)
刺激応答性化合物を用いて、図2に示すようなアクチュエータを作成した。
アクチュエータは、刺激応答性化合物を溶媒に溶解させ、それをシャーレ上に塗布・乾燥し、乾燥物(変形層)を3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、変形層の両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
なお、刺激応答性化合物は以下のようにして合成したものを用いた。
【0034】
[ビチオフェンおよび1,3−ベンゾジチオーリル基が結合したヨウ素体の合成]
ブロモチオフェンを原料として亜鉛、ニッケルの触媒を用いた2量化、臭素化を行い、DMFによるアルデヒド基の導入(ホルミル化)を行った。
次に、アルデヒド基の保護を行い、臭素をヨウ素に変換した。
次に、脱保護を行い、酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、ビチオフェンおよび1,3−ベンゾジチオーリル基が結合したヨウ素体を得た。
【0035】
[液晶性官能基(1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸)の合成]
まず、2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた2,3−ジフルオロボロン酸に4−アルコキシ1−ブロモベンゼンをパラジウム触媒存在下反応させることにより、4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロベンゼンを得た。
【0036】
次に、得られた4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロボロン酸を得た。
次に、得られた4−(4−アルコキシフェニル)−2,3−ジフルオロボロン酸に1,4−ジブロモベンゼンをパラジウム存在下で反応させ、1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ベンゼンを得た。
次に、得られた1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ベンゼンにn−ブチルリチウムを作用させ、ホウ酸トリメチルで処理することにより、1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸を得た。
【0037】
[刺激応答性化合物の製造]
ビチオフェンおよび1,3−ベンゾジチオーリル基が結合したヨウ素体と、1−ブロモ−4−[4−(4−アルコキシフェニル−2,3−ジフルオロフェニル]ボロン酸とを、パラジウム触媒存在下カップリング反応を行った。
次に、反応によって得られた化合物を、酸触媒存在下、ベンゼンジチオールと反応させ2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)で処理し、4フッ化ホウ素を加え、刺激応答性化合物を得た。
【0038】
(比較例)
単層カーボンナノチューブ(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製「HiPco」、含有Fe量14重量%)(以下、SWNTともいう)25mg、5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製、低分子量直鎖アルコールと水(10%)混合溶媒)25ml、および試薬特級メタノール25mlを、ビーカーに秤量して混合した後、超音波洗浄器中で、超音波照射を10時間以上行い、SWNTとナフィオンの混合分散液を調製した。この分散液をガラス製のシャーレにキャストし、ドラフト中で一昼夜以上放置して溶媒を除去した。溶媒を除去した後、150℃で4時間、熱処理を行った。形成されたSWNTとナフィオンの複合体フィルムをシャーレから剥がした後、3cm×2cmの大きさに切り取り、走査電子顕微鏡の試料作成用スパッタマシンを用いて、複合体フィルムの両面に金をスパッタして接合し、アクチュエータを得た。条件は、片面当たり10mAで30分とした。
【0039】
(応答性の評価)
評価は、実施例および比較例のアクチュエータを1mm×15mmの短冊状に切り取った試験片の端3mmの部分を電極付きホルダーでつかんで、空気中で電圧5Vを加え、レーザー変位計を用いて、固定端から10mmの位置の変位を観測した。
その結果、本発明の刺激応答性化合物を用いたアクチュエータでは、大きく変位したが、比較例のアクチュエータは、変位の度合いが小さかった。
【符号の説明】
【0040】
100…アクチュエータ 10…変形層 11…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸として機能する結合を有するユニットAと、
前記ユニットAの第1の結合部位に配置された第1のユニットBと、
前記ユニットAの第2の結合部位に配置された第2のユニットBと、
前記ユニットAの第3の結合部位に配置された第1のユニットCと、
前記ユニットAの第4の結合部位に配置された第2のユニットCと、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応によって結合し、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性を有し、重合性官能基を含むことを特徴とする刺激応答性化合物。
【請求項2】
前記ユニットAはビチオフェンを含み、
前記第1のユニットBおよび前記第2のユニットBは1,3−ベンゾジチオーリル基を含み、
前記第1のユニットCおよび前記第2のユニットCは液晶性官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の刺激応答性化合物。
【請求項3】
ビチオフェンと、
前記ビチオフェンのα位に結合した2つの1,3−ベンゾジチオーリル基と、
前記ビチオフェンのβ位に結合した2つの液晶性を有する液晶性官能基とを有し、
液晶性官能基は、重合性官能基を有していることを特徴とする刺激応答性化合物。
【請求項4】
前記重合性官能基は、ビニル基またはアクリル基である請求項1ないし3のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
【請求項5】
前記液晶性官能基は、複数の環構造を有している請求項2ないし4のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
【請求項6】
前記複数の環構造のうち1つの環構造にハロゲン原子が1つ以上結合している請求項5に記載の刺激応答性化合物。
【請求項7】
前記重合性官能基は、酸素原子またはメチレン基を介して液晶性官能基に結合している請求項1ないし6のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
【請求項8】
前記ビチオフェンと前記液晶性官能基とは、アルキレン基を介して結合している請求項2ないし7のいずれかに記載の刺激応答性化合物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の刺激応答性化合物が、前記重合性官能基により重合していることを特徴とする刺激応答性化合物重合体。
【請求項10】
前記刺激応答性化合物が2重結合またはシクロヘキサンを介して重合している請求項9に記載の刺激応答性化合物重合体。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の刺激応答性化合物重合体を用いて製造されたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項12】
回転軸として機能する結合を有するユニットAの第1の結合部位に第1のユニットBが配置され、前記ユニットAの第2の結合部位に第2のユニットBが配置された化合物を合成する工程と、
液晶性を有し、重合性官能基を含む第1のユニットCおよび第2のユニットCを合成する工程と、
前記ユニットAの第3の結合部位に前記第1のユニットCを結合させ、前記ユニットAの第4の結合部位に前記第2のユニットCを結合させる工程と、
を含み、
前記第1のユニットBと前記第2のユニットBとは酸化還元反応により結合することを特徴とする刺激応答性化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162447(P2011−162447A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23811(P2010−23811)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】