説明

削孔装置

【課題】ウエイトハンマを付勢するばねを設け、ウエイトハンマの落下による打撃力とばねの付勢力との加重された打撃力で被打撃物(チャックピース)を打撃して削孔する貫通型ドリルヘッドを採用し、小型でも大きな打撃力が発生し、大きな削孔径の削孔も可能であり、軽量、小型でも掘削効率の高い削孔装置を提供する。
【解決手段】貫通型ドリルヘッド3は、削孔ロッド9を把持するチャック機構10、削孔ロッドに回転力を与える駆動機構11および削孔ロッドに打撃力を与える打撃機構12を内蔵する。打撃機構は、削孔ロッドが貫通する中空のウエイトハンマ19がスピンドル13と同心上に摺動自在に設けられ、さらにウエイトハンマに付勢力を付与するばね20と、回転することによって原位置からウエイトハンマを係止して前記ばねの付勢力が増大する方向に移動させると共に所定位置で係止を解除する係止爪22が設けられた回転体21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貫通型ドリルヘッドを備える削孔装置に関し、特に、貫通型ドリルヘッドは、ウエイトハンマに該ウエイトハンマを付勢するばねを設け、ウエイトハンマの落下(重力)による打撃力とばねの付勢力との加重された打撃力で被打撃物(チャックピース)を打撃する打撃機構を内蔵する削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通型ドリルヘッドは、削孔ロッドがドリルヘッドの中を貫通し、回転力、給進力及び打撃力(衝撃力)の伝達は、削孔ロッドを把持したチャック機構を介して行なうものである。貫通型ドリルヘッドは、削孔ロッドがドリルヘッドの中を貫通するので、チャック機構の開閉とドリルヘッドの進退(前後進)の繰り返しで削孔でき、リーダ長の長さに関係なく、即ち、リーダが短くても長い削孔ロッドが使用できる。従来の貫通型ドリルヘッドでは、スピンドルを打撃するものがほとんどである(例えば、特許文献1参照)。
このようにスピンドルおよびスピンドルの外側におけるドリルヘッドの部分を打撃するのでは、打撃力(衝撃力)はスピンドルを介しチャック機構からドリルロッドに伝達されるため、途中で打撃エネルギーが減衰され打撃効率が悪い課題がある。
また、スピンドルやドリルヘッドの他の部分を打撃するのでは打撃による衝撃がドリルヘッド内の装置や部品に直接伝達され、ドリルヘッド内の装置や部品が破壊されやすく、また故障の原因にもなる課題がある。
【0003】
そこで、本発明者は、このような課題を解決する削孔装置として、スピンドルに設けたチャックピースを中空ピストンでスピンドル内において打撃するものを提供した(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2784454号公報
【特許文献2】特開2001−123783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の削孔装置は、打撃に中空パーカッションシリンダの中空ピストンを使用するため、次のような課題がある。
(1)中空パーカッションシリンダでは、中空ピストンの作動に油圧を使用するため、油圧回路等を設ける構成となり、構造が複雑となるし、高価となる。
(2)中空パーカッションシリンダや油圧ポンプ等が必要となり、設備費用が嵩む。
(3)打撃力は、中空パーカッションシリンダの中空ピストンの打撃で生ずるため、1回の打撃で大きな打撃力は望めない。そこで、中空ピストンでの打撃回数を多くして、削孔することになるが、それでは打撃で生ずる騒音の発生が多くなるし、打撃による衝撃数が多くなりドリルヘッド内の装置や部品が破壊されやすく、また、故障の原因にもなる。
【0005】
この発明は、このような課題に鑑み提案されたものであり、その目的は、ウエイトハンマに該ウエイトハンマを付勢するばねを設け、ウエイトハンマの落下による打撃力とばねの付勢力との加重された打撃力で被打撃物(チャックピース)を打撃して削孔する貫通型ドリルヘッドを採用し、小型でも大きな打撃力が発生し、大きな削孔径の削孔も可能であり、軽量、小型でも掘削効率の高い削孔装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、この発明の削孔装置は、ベースマシンに起倒自在に立設されたリーダに、給進装置によりリーダに沿って進退するスライドテーブルが摺動自在に設けられ、このスライドテーブルには貫通型ドリルヘッドが固設され、このドリルヘッドは、削孔ロッドを把持するチャック機構、削孔ロッドに回転力を与える駆動機構及び削孔ロッドに打撃力を与える打撃機構を内蔵し、チャック機構で把持した削孔ロッドに回転力、打撃力および給進力を与える削孔装置において、
チャック機構は、回転可能な筒状のスピンドルにチャックピースが設けられ、このチャックピースがスピンドル内を貫通する削孔ロッドの外周を把持する構成としてなり、
削孔ロッドに回転力を与える駆動機構は、前記スピンドルに伝動機構を介してモータが連結され、スピンドル内を貫通しチャックピースで把持した削孔ロッドを、モータで駆動するスピンドルの回転で回転駆動させる構成としてなり、
打撃機構は、削孔ロッドが貫通する中空のウエイトハンマが、前記スピンドルと同心上に摺動自在に設けられ、このウエイトハンマの全部又は一部が、前記スピンドル内で内周面に沿って進退し、前記削孔ロッドを把持するチャックピースを軸方向に打撃する構成であって、該ウエイトハンマに付勢力を付与するばねと、回転することによって原位置から前記ウエイトハンマを係止して前記ばねの付勢力が増大する方向に移動させると共に所定位置で係止を解除する係止爪が設けられた回転体とを具備し、回転体の回転でウエイトハンマを係止してばねの付勢力が増大する方向に移動させ、所定位置で係止を解除することによってウエイトハンマがその重力とばねの付勢力とによって原位置方向に移動し、ウエイトハンマの重力とばねの付勢力との加重された打撃力により削孔ロッドを把持したチャックピースを打撃する構成としてなることを特徴とする。
【0007】
これにより貫通型ドリルヘッドでありながら、被打撃物であるチャックピースを、ウエイトハンマの重力とばねの付勢力との加重された打撃力で打撃することができる。従って、垂直方向だけでなく斜め方向の削孔も可能となる。また、ウエイトハンマは回転体の回転で持ち上げ、落下の作動を行うことができる。
また、削孔ロッドをチャック(把持)しているチャックピースを直接打撃するので、打撃力が削孔ロッドに伝達されるまでに打撃エネルギーの減衰がほとんどなく打撃効率がきわめてよい。
また、削孔ロッドをチャックしているチャックピースを直接打撃するので、ドリルヘッド内部の装置や部品に打撃エネルギーが直接伝達しない。従って、打撃によるドリルヘッドの装置や部品の破壊が防止されるし、故障もなくなるものである。
【0008】
また、この発明の削孔装置の前記スピンドルは、ウエイトハンマの全部又は一部が位置する内径を径大部とし、ウエイトハンマの全部又は一部は、そのスピンドル内径の径大部に配設されてスピンドルの内周面に沿って摺動し、削孔ロッドを把持するチャックピースを軸方向に打撃するよう設けられていることを特徴とする。
これにより前記作用の他にウエイトハンマがスピンドルの内周面と同一面か、内周面より引っ込んだ位置で進退することとなるため、貫通された削孔ロッドの通過に邪魔にならないし、削孔ロッドと接触しないので故障の原因にもならず、また、ウエイトハンマの動きもスムーズとなる。
【0009】
また、この発明の削孔装置の前記チャックピースは、削孔ロッドに打撃力と給進力を伝達する打撃・給進用チャックピースと、削孔ロッドに回転力を伝達する回転伝達用チャックピースとで構成されていることを特徴とする。
これにより前記作用効果の他に打撃力、給進力および回転力の削孔ロッドへの伝達をより確実とすることができる。
【0010】
また、この発明の削孔装置の前記回転体の係止爪は、回転体の胴部より径方向に外出して設けられ、ウエイトハンマの回転体の係止爪が係止する部分は切欠きされた切欠部に形成され、回転体の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置してウエイトハンマを係止し、ばねの付勢力が増大する方向に移動させることを特徴とする。
これにより前記作用効果の他に回転体の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置して(即ち、切込部に入り込んで)ウエイトハンマを係止するようになっているので、その分、回転体をウエイトハンマ側(ドリルヘッドの中心側)に寄せることが可能となり、小型化が可能となる。
【0011】
さらに、この発明の削孔装置の前記回転体の係止爪は、回転体の胴部の両端に、径方向に外出して設けられ、ウエイトハンマの回転体のそれぞれの係止爪が係止する部分はそれぞれ切欠きされた切欠部に形成され、回転体の両端の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置しウエイトハンマの一部を両側から挟む格好でウエイトハンマを係止し、ばねの付勢力が増大する方向に移動させることを特徴とする。
これにより前記作用効果の他に、回転体の係止爪は、ウエイトハンマの一部を両側から挟む格好で係止して持ち上げ、落下させるので、ウエイトハンマが軸廻りに回転したり、位置の乱れがなく、精度のよい作動が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の削孔装置によれば、次のような効果を奏する。
(1)打撃力としてウエイトハンマの自由落下による重力とばねの付勢力が加重される。従って、大きな打撃力を付与できると共に、打撃力を、ウエイトハンマの重量及び持ち上げの高さ(落下させる高さ)だけでなく、ばねでもコントロールできる。ウエイトハンマの自由落下より落下スピードが速くなるので打撃回数をふやすことができるし、削孔効率を向上させることができる。
【0013】
(2)回転体の回転でウエイトハンマの持ち上げ、落下を行うので、落下距離を小さくできるし構造を簡単にできるので、小型化が可能となる。しかも、回転体の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置して(切欠部に入り込んで)ウエイトハンマを係止するようになっているので、その分回転体をウエイトハンマ側(ドリルヘッドの中心側)に寄せることが可能となり、一層小型化が可能となる。
(3)回転体の回転でウエイトハンマの持ち上げ、落下を行うので、所定時間内の打撃回数の増減の調整が容易となるし、回転体の1回転でウエイトハンマでの打撃回数を複数とすることができるし、回転体の回転速度でも打撃回数の調整ができるので、ウエイトハンマの落下スピードが速くなるのと相俟って打撃回数を増やすことができる。
【0014】
(4)回転体の回転でウエイトハンマの持ち上げ、落下を行うし、ウエイトハンマはばねの付勢力で付勢されて落下するので、打撃のタイミングを合わせやすい。
(5)ウエイトハンマにはばねの付勢力が作用するので、打撃力は垂直方向だけでなく斜め方向にも付与することができる。
(6)打撃力、回転力および給進力を選択的に付与できるし、打撃力の大きさの増減、打撃回数、回転数、等の調整が可能である。
(7)回転体の係止爪は、ウエイトハンマの一部を両側から挟む格好で係止して持ち上げ、落下させるので、ウエイトハンマが軸廻りに回転したり、位置の乱れがなく、精度のよい作動が可能となる。
【0015】
(8)削孔ロッドをチャック(把持)しているチャックピースを直接打撃するので、打撃力が削孔ロッドに伝達されるまでに打撃エネルギーの減衰がほとんどなく打撃効率がきわめてよい。
(9)また、削孔ロッドをチャックしているチャックピースを直接打撃するので、ドリルヘッド内部の装置や部品に打撃エネルギーが直接伝達しない。従って、打撃によるドリルヘッドの装置や部品の破壊が防止されるし、故障もなくなるものである。
(10)打撃がスピンドルの内部で行われるので、打撃による騒音が外部に漏れ難く、騒音公害もほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態を示す削孔装置の正面図、図2は図1A部の要部を示す斜視図、図3は図1A部の要部を示す断面図である。
【0017】
この発明の削孔装置は、ベースマシン1にリーダ2が起倒自在に立設され、このリーダ2に貫通型ドリルヘッド3(以下、ドリルヘッドと略称する。)が摺動自在に設けられて構成される。本例においてはベースマシン1としてクローラタイプを示しているが、これは載置式であってもよい。リーダ2は、下部走行体4上に旋回可能に設けられたベース本体5に、各種シリンダ6を介して起倒自在に立設されている。ベース本体5には、パワーユニットやコントロールボックス等が設けられる。また、ベース本体5には、アウトリガー(図示省略)が設けられ、作業時にベースマシン1を安定して支持するようになっている。
リーダ2には、スライドテーブル7がリーダ2に沿って摺動自在に設けられ、このスライドテーブル7にドリルヘッド3が固設される。このスライドテーブル7には、給進装置8が連結され進退される。この給進装置8としては、油圧シリンダ又は駆動モータからのスプロケットを介して駆動伝達されるフィールドチェーン等を例示することができる。
【0018】
前記ドリルヘッド3は、図2および図3に示すように削孔ロッド9を把持するチャック機構10、削孔ロッド9に回転力を与える駆動機構11および削孔ロッド9に打撃力を与える打撃機構12を内蔵する。従って、チャック機構10で把持した削孔ロッド9には、駆動機構11で回転力が付与され、打撃機構12で打撃力が付与され、給進装置8で給進力が付与される。
【0019】
チャック機構10は、回転可能な筒状のスピンドル13にチャックピース14が設けられ、このチャックピース14がスピンドル13内を貫通する削孔ロッド9の外周を把持する構成となっている。
スピンドル13は、削孔ロッド9が貫通する中空円筒状であって、ヘッド本体3a内に回転可能で一定距離の進退が可能に取付けられる。このスピンドル13の下方には、復元用のばね23が配設され、打撃により移動した後には外力が取り除かれると元の位置に復帰する構成となっている。このばね23は緩衝の役目も担う。本例では、ばね23として板ばねを例示している。チャックピース14は、このスピンドル13に中心に向かって進退可能に設けられ、スピンドル13内を貫通する削孔ロッド9を把持する構成となっている。チャックピース14は、1箇所でもよいが、通常はスピンドル13の円周方向に、所定の間隔をおいて複数が設けられる。例えば、スピンドル13の円周方向に120度の間隔で3個が設けられ、削孔ロッド9は円周上の3箇所で把持される。チャックピース14の進退駆動は従来公知の手段が採用できる。例えば、チャックピース14の外側の傾斜面14aに、油圧でクサビ片を進退させチャックピースを進退させる構成を例示できる。
なお、チャックピース14は、スピンドル13に上下の位置を異にして、削孔ロッド9に打撃力と給進力を伝達する打撃・給進用チャックピースと、削孔ロッド9に回転力と伝達する回転伝達用チャックピースとを設ける構成としてもよい。このようにすると、チャックピース14を機能に対応した構成とすることができるし、チャックピース14の機能低下の発生も少なくなり、打撃力、給進力および回転力の削孔ロッド9への伝達をより確実とすることができるので好ましい。
【0020】
削孔ロッド9に回転力を与える駆動機構11は、スピンドル13にスピンドルギア15がスプライン結合16して設けられ、このスピンドルギア15にモータ17の駆動軸に設けたギア18が噛合され、モータ17の駆動によりギア18、15の伝動機構を介してスピンドル13を回転する構成となっている。
スピンドルギア15は、スピンドル13の外周にスプライン結合16して設けられているので、両者は相対移動が可能となっている。従って、スピンドル13が進退する移動をしてもスピンドルギア15は、ギア18との噛合位置を維持することができる。
スピンドル13内を貫通する削孔ロッド9は、スピンドル13に設けたチャックピース14に把持されているので、モータ17の駆動によりギア18、15の伝動機構を介してスピンドル13を回転させることによって削孔ロッド9に回転力を伝達させることができ、それにより回転駆動させることができる。
【0021】
打撃機構12は、削孔ロッド9が貫通する中空のウエイトハンマ19が、前記スピンドル13と同心上に摺動自在に設けられ、このウエイトハンマ19の下方が前記スピンドル13内に嵌入し前記スピンドル13内で内周面に沿って進退し、前記削孔ロッド9を把持するチャックピース14を軸方向に打撃する構成であって、さらにウエイトハンマ19に付勢力を付与するばね20と、回転することによって原位置から前記ウエイトハンマ19を係止して前記ばね20の付勢力が増大する方向に移動させると共に所定位置で係止を解除する係止爪22が設けられた回転体21とを具備し、回転体21の回転でウエイトハンマ19を係止してばね20の付勢力が増大する方向に移動させ、所定位置で係止を解除することによってウエイトハンマ19がその重力とばね20の付勢力とによって原位置方向に移動し、ウエイトハンマ19の重力とばね20の付勢力の加重された打撃力により削孔ロッド9を把持したチャックピース14を打撃する構成となっている。
【0022】
ウエイトハンマ19は。中心が削孔ロッド9の貫通する中空となっており、前記スピンドル13の直上にスピンドル13と同心的に配設され、削孔ロッド9は、スピンドル13およびウエイトハンマ19を貫通してセットできる構成となっている。従って、スピンドル13とウエイトハンマ19は、貫通した削孔ロッド9を軸心に上下に配設された格好となる。このウエイトハンマ19の下方は、前記スピンドル13内に嵌入し前記スピンドル13内で内周面に沿って進退し、前記削孔ロッド9を把持するチャックピース14を軸方向に打撃する構成となっている。従って、スピンドル13は、ウエイトハンマ19の下方が嵌入され内周面に沿って進退する位置の内径を径大部13a(図3参照)とし、ウエイトハンマ19のスピンドル13内に嵌入された部分は、そのスピンドル13の内径の径大部13aに位置して配設しスピンドル13の内周面に沿って摺動し、削孔ロッド9を把持するチャックピース14を軸方向に打撃するようにすると、ウエイトハンマ19の中空内周面がスピンドル13の内周面と同一面か、内周面より引っ込んだ位置で進退することとなるため、貫通された削孔ロッドの通過に邪魔にならないし、削孔ロッド9と接触しないので故障の原因にもならず、また、ウエイトハンマの動きもスムーズとなるので好ましい。
【0023】
回転体21の係止爪22は、回転体21の胴部21aより径方向(放射方向)に外出して設けられ、ウエイトハンマ19の回転体21の係止爪22が係止する部分は切欠きされた切欠部19aに形成され、回転体21の係止爪22は、ウエイトハンマ19の切欠部19aに位置して(即ち、切欠部19aに入り込んで)ウエイトハンマ19を係止するようになっている。回転体21にはモータ(図示省略)が連結されて回転駆動される。
また、ウエイトハンマ19に付勢力を付与するばね(本例では圧縮ばね)20は、図3に示すようにウエイトハンマ19とヘッド本体3aの天板3bとの間に設けられている。
【0024】
従って、回転体21を回転させると、回転体21の係止爪22がウエイトハンマ19の切欠部19aを係止して、下方から上方に持ち上げる。この時、圧縮ばね20はウエイトハンマ19により圧縮され付勢力が増大する。そして、回転体21の係止爪22が回転して上死点を通過すると、係止爪22とウエイトハンマ19の切欠部19aとの係止が外れるから、ウエイトハンマ19は自重とばね20の付勢力により落下し、被打撃物としてのチャックピース14を打撃する。この打撃力はウエイトハンマ19の自重とばね20の付勢力との加重されたものとなる。
【0025】
この図2および図3では、係止爪22は回転体21に180°の間隔をおいて2個設けられているので、回転体21の半回転で1回の打撃数となり、1回転で2回の打撃数となる。従って、ばね20のばね力を一定とすれば、所定時間内の打撃数は、回転速度によって決定できる。また、回転体21の係止爪22の設ける数を増減することによって、同じ回転速度であっても打撃数は増減できる。例えば、回転体21に係止爪22が1個の場合には、1回転で1回の打撃数であり、回転体21に係止爪22を120°間隔で3個設けると、回転体の1回転で3回の打撃数を得ることができる。このようなドリルヘッド3では、ウエイトハンマ19にばね20の付勢力が働くので、垂直方向だけでなく、斜め方向の打撃力も付与することができる。
【0026】
なお、ウエイトハンマ19は、ヘッド本体3a内に回転不可であって軸方向に摺動自在に装着するのが、ウエイトハンマ19の持ち上げ、落下時に回転しないので好ましい。
また、回転体21の係止爪22は、図4に示すように回転体21の胴部21aの両端に、径方向(放射方向)に外出して設け、ウエイトハンマ19の回転体21のそれぞれの係止爪22、22が係止する部分は、それぞれ切欠きされた切欠部19a、19aに形成し、回転体21の両端の係止爪22は、ウエイトハンマ19の切欠部19aに位置し(即ち、切欠部19aに入り込んで)ウエイトハンマ19の一部19b(図4参照)を両側から挟む格好でウエイトハンマ19を係止し、ばね20の付勢力が増大する方向に移動させる構成とすると、ウエイトハンマ19の軸廻りの回転を防止できるし、位置ずれが生じないので好ましい。このように回転体21に設ける係止爪22は、単数でも複数でもよく、また、係止爪14を備える回転体21も単数でも複数でもよい。これに対応しウエイトハンマ19の切欠部19aも増減されるし、切欠部11aを設ける位置も変化する。
【0027】
以上の説明から理解できる通り、この発明の削孔装置によれば、チャック機構10は、スピンドル13内を貫通する削孔ロッド9をチャックピース14で把持するので、モータ17の駆動によりギア18、15を介してスピンドル13、チャックピース14を介して削孔ロッド9に伝達することができ、これにより削孔ロッド9を回転することができる。また、ドリルヘッド3は、リーダ2に沿って摺動するスライドテーブル7に固着され、スライドテーブル7には給進装置8が連結されているので、この給進装置8でスライドテーブル7を進退させることによってドリルヘッド3も進退させることができる。従って、削孔ロッド9はドリルヘッド3に内蔵されたチャック機構10で把持されているので、給進装置8の給進力をスライドテーブル7、ドリルヘッド3を介し削孔ロッド9に伝達することができ、これにより削孔ロッド9を進退させることができる。さらに、打撃機構12は、削孔ロッド9が貫通する中空のウエイトハンマ19が、スピンドル13内において削孔ロッド9を把持したチャックピース14を、ウエイトハンマ19の重力とばね20の付勢力との加重された打撃力で打撃する構成となっているので、この打撃力はチャックピース14を介し削孔ロッド9に伝達することができる。従って、削孔ロッド9を、ドリルヘッド3を貫通し、その外周面をチャック機構10で把持して取付け、そこで、モータ17、給進装置8および打撃機構12を駆動(打撃機構12の駆動は、回転体21に連結された図示しないモータの駆動)すると、削孔ロッド9にはスピンドル13、チャック機構10を介してモータ17の回転、給進装置8での進退および打撃機構12の打撃が伝達される。即ち、給進装置8での進退は、給進および引抜きであるから、削孔ロッド9には、回転力、給進力、引抜力および打撃力を伝達することができる。これにより削孔ロッド9に回転、給進および打撃を与えて地盤を削孔することができる。
この時、モータ17の駆動を停止(OFF)してスピンドル13の回転を止め、打撃機構12だけの駆動でウエイトハンマ19だけを作動させウエイトハンマ19の打撃力と給進装置8の給進力だけを付与することも、また、打撃機構12の駆動を止め、モータ17の駆動によりスピンドル13だけを回転させ、回転力と給進力だけを付与することも可能である。
【実施例1】
【0028】
図5および図6は、この発明の削孔装置のドリルヘッドの実施例を示す断面図であり、図5は作動前、図6は作動途中を示し、図2および図3に示す実施の形態と同一構成要素には同一符号が付してある。
この実施例のドリルヘッド3は、削孔ロッド9を把持するチャック機構10、削孔ロッド9に回転力を与える駆動機構11および削孔ロッドに打撃力を与える打撃機構12を内蔵する。このドリルヘッド3が給進装置によりリーダに沿って進退するスライドテーブルに固設されていることはいうまでもない。
【0029】
チャック機構10は、回転可能な筒状のスピンドル13にチャックピース14が設けられ、このチャックピース14がスピンドル13内を貫通する削孔ロッド9の外周を把持する構成としてなり、
削孔ロッド9に回転力を与える駆動機構11は、スピンドル13に、スピンドルギア15,ギア18を介してモータ17が連結され、スピンドル13内を貫通しチャックピース14で把持した削孔ロッド9を、モータ17の駆動によるスピンドル13の回転で回転駆動させる構成としてなり、
打撃機構12は、削孔ロッド9が貫通する中空のウエイトハンマ19が、前記スピンドル13直上でスピンドル13と同心上に摺動自在に設けられ、このウエイトハンマ19の下方がスピンドル13内に挿入されスピンドル13内で内周面に沿って進退し、前記削孔ロッド9を把持するチャックピース14を軸方向に打撃する構成としてなる。
【0030】
前記打撃機構12は、さらにウエイトハンマ19に付勢力を付与する圧縮ばね20と、回転することによって原位置から前記ウエイトハンマ19を係止して前記ばね20の付勢力が増大する方向に移動させると共に所定位置で係止を解除する係止爪22が設けられた回転体21とを具備する。従って、回転体21の回転で係止爪22でウエイトハンマ19を係止して圧縮ばね20の付勢力が増大する方向に移動させ、所定位置で係止を解除することによってウエイトハンマ19がその自由落下による重力と圧縮ばね20の付勢力とによって原位置方向に移動し、ウエイトハンマ19の重力とばね20の付勢力との加重された打撃力により、削孔ロッド9を把持したチャックピース14を打撃する。
しかして、この図5および図6に示す実施例のドリルヘッド3においても、前記図1乃至図3に示したドリルヘッドと同様の作用をする。この図5および図6は、実施例としての具体例であるので、具体的な部材が表示されているが、図2および図3と対応して参照するとよく理解できる。
【0031】
なお、前記実施の形態および実施例は、この発明を制限するものではなく、この発明は要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態を示す削孔装置の正面図である。
【図2】図1A部の要部を示す斜視図である。
【図3】図1A部の要部を示す断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態を示すウエイトハンマと回転体の部分の分解斜視図である。
【図5】この発明の実施例を示すドリルヘッドの断面図で、作動前を示す。
【図6】この発明の実施例を示すドリルヘッドの断面図で、作動途中を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 ベースマシン
2 リーダ
3 貫通型ドリルヘッド
3a ヘッド本体
7 スライドテーブル
8 給進装置
9 削孔ロッド
10 チャック機構
11 駆動機構
12 打撃機構
13 スピンドル
14 チャックピース
15 スピンドルギア
17 モータ
18 ギア
19 ウエイトハンマ
19a 切欠部
20 ばね(圧縮ばね)
21 回転体
22 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに起倒自在に立設されたリーダに、給進装置によりリーダに沿って進退するスライドテーブルが摺動自在に設けられ、このスライドテーブルには貫通型ドリルヘッドが固設され、このドリルヘッドは、削孔ロッドを把持するチャック機構、削孔ロッドに回転力を与える駆動機構及び削孔ロッドに打撃力を与える打撃機構を内蔵し、チャック機構で把持した削孔ロッドに回転力、打撃力および給進力を与える削孔装置において、
チャック機構は、回転可能な筒状のスピンドルにチャックピースが設けられ、このチャックピースがスピンドル内を貫通する削孔ロッドの外周を把持する構成としてなり、
削孔ロッドに回転力を与える駆動機構は、前記スピンドルに伝動機構を介してモータが連結され、スピンドル内を貫通しチャックピースで把持した削孔ロッドを、モータで駆動するスピンドルの回転で回転駆動させる構成としてなり、
打撃機構は、削孔ロッドが貫通する中空のウエイトハンマが、前記スピンドルと同心上に摺動自在に設けられ、このウエイトハンマの全部又は一部が、前記スピンドル内で内周面に沿って進退し、前記削孔ロッドを把持するチャックピースを軸方向に打撃する構成であって、該ウエイトハンマに付勢力を付与するばねと、回転することによって原位置から前記ウエイトハンマを係止して前記ばねの付勢力が増大する方向に移動させると共に所定位置で係止を解除する係止爪が設けられた回転体とを具備し、回転体の回転でウエイトハンマを係止してばねの付勢力が増大する方向に移動させ、所定位置で係止を解除することによってウエイトハンマがその重力とばねの付勢力とによって原位置方向に移動し、ウエイトハンマの重力とばねの付勢力との加重された打撃力により削孔ロッドを把持したチャックピースを打撃する構成としてなることを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
前記スピンドルは、ウエイトハンマの全部又は一部が位置する内径を径大部とし、ウエイトハンマの全部又は一部は、そのスピンドル内径の径大部に配設されてスピンドルの内周面に沿って摺動し、削孔ロッドを把持するチャックピースを軸方向に打撃するよう設けられていることを特徴とする請求項1記載の削孔装置。
【請求項3】
前記チャックピースは、削孔ロッドに打撃力と給進力を伝達する打撃・給進用チャックピースと、削孔ロッドに回転力を伝達する回転伝達用チャックピースとで構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の削孔装置。
【請求項4】
前記回転体の係止爪は、回転体の胴部より径方向に外出して設けられ、ウエイトハンマの回転体の係止爪が係止する部分は切欠きされた切欠部に形成され、回転体の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置してウエイトハンマを係止し、ばねの付勢力が増大する方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項5】
前記回転体の係止爪は、回転体の胴部の両端に、径方向に外出して設けられ、ウエイトハンマの回転体のそれぞれの係止爪が係止する部分はそれぞれ切欠きされた切欠部に形成され、回転体の両端の係止爪は、ウエイトハンマの切欠部に位置しウエイトハンマの一部を両側から挟む格好でウエイトハンマを係止し、ばねの付勢力が増大する方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−219940(P2006−219940A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35890(P2005−35890)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(505040051)株式会社エムズ (4)
【Fターム(参考)】