説明

削孔装置

【課題】低所から高所まで削孔を行うことを可能とし、かつ、安全かつ安価に複数箇所での削孔を同時に行うことを可能とした削孔装置を提供する。
【解決手段】走行台車10と、走行台車10の前端部と後端部にそれぞれ設置されたブーム20と、各ブーム20の先端に設置されたドリル30と、を備えた削孔装置1であって、ブーム20は、先端部22の上下左右への移動が可能となるように基部21が走行台車10に設置されており、ブーム20の先端には、ドリル30を取り付けるためのドリル取付軸31が設置されていて、ドリル30はドリル取付軸31を回転軸として回転自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物について、せん断耐力が不足しているため、耐震補強を行う場合がある。トンネルやボックスカルバート等の地中構造物に対する耐震補強工事は、構造物の外面から行うことが困難なため、内空から補強を行う必要がある。
【0003】
このような地中構造物に対する耐震補強方法として、内空側から補強部材挿入孔を削孔した後、この補強部材挿入孔にせん断補強部材(例えばせん断補強鉄筋等)を配置することにより行う場合がある。
【0004】
大断面トンネル等、高所を含む地中構造物の補強部材挿入孔の削孔は、例えば特許文献1に示すように、高所作業車の昇降自在な荷台に設置されたハンマードリルを利用して行う。
【0005】
これにより、高所での削孔作業を安全に行うことが可能であるとともに、高所作業車自体が走行することでハンマードリル等の装置の移動も容易に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−343743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、高所作業車の荷台は走行手段の上に設置されているため、ハンマードリルを高所作業車に設置した状態では、トンネルの側壁部分等の低い箇所に対する削孔作業を行うことができない。そのため、低い壁面の削孔作業には、別途ハンマードリルを固定するための架台を配置する必要があった。
【0008】
また、高所作業車の荷台では、限られたスペースしか確保できないため、同時に複数の削孔作業を行うことが困難であった。そのため、大断面トンネル等、補強部材挿入孔を多数形成する必要がある場合には、複数の高所作業車を配置することなどにより、工期短縮を図っていた。ところが、作業スペースが限られるトンネル内において、複数の高所作業車を個々に移動させることは手間が係るとともに、複数の高所作業車を配置することにより費用が嵩むという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、低所から高所まで削孔を行うことを可能とし、かつ、安全かつ安価に複数箇所での削孔を同時に行うことを可能とした削孔装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、走行台車と、前記走行台車の前端部と後端部にそれぞれ設置されたブームと、前記各ブームの先端に設置されたドリルと、を備えた削孔装置であって、前記ブームは、先端部の上下左右への移動が可能となるように基端部が前記走行台車に設置されていることを特徴としている。
【0011】
かかる削孔装置は、2本のブームにそれぞれドリルが取り付けられているため、2箇所での削孔作業を同時に行うことができる。 また、走行台車を備えているため、装置の移動を簡易に行うことを可能としている。
【0012】
また、ブームが上下左右に移動するため、走行台車を据え付けた状態で広範囲の施工を可能としている。さらに、ブームを上下に移動させることで低所から高所までの削孔が可能である。
【0013】
削孔装置は、前記ブームの先端に前記ドリルを取り付けるためのドリル取付軸が設置されており、前記ドリルが、前記ドリル取付軸の軸心を中心に回転自在に取り付けられているものであってもよい。
【0014】
かかる削孔装置によれば、ドリルがドリル取付軸回りに回転することで、当該ドリルをブーム先端よりも低い位置に配置することを可能としている。したがって、より低い箇所に対する削孔が可能となる。
【0015】
削孔装置のブームが、伸縮自在であれば、より広範囲の施工を行うことが可能となる。
【0016】
さらに、削孔装置のブームの先端部を、他方のブームの基端部側に配置することを可能に構成すれば、ブームを走行台車から張り出さずまたは張り出し長さを短くした状態で収納することができるため、移動時や未使用時における削孔装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の削孔装置は、低所から高所まで削孔を行うことを可能とし、かつ、安全かつ安価に複数箇所での削孔を同時に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る削孔装置を示す側面図である。
【図2】同削孔装置の平面図である。
【図3】同削孔装置のドリルを示す図であって、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図4】同削孔装置の運搬時の状況を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る削孔装置1は、図1に示すように、走行台車10と、走行台車10の前端部と後端部にそれぞれ設けられたブーム20と、ブーム20の先端に設置されたドリル30と、を備えている。
【0021】
走行台車10は、走行体11と荷台12とを備えて構成されている。
本実施形態では、走行体としてクローラ式のものを使用するが、走行体の形式は限定されるものではなく、例えばタイヤ式であってもよい。
【0022】
荷台12には、前後にそれぞれブーム20,20が設置されている。
また、図2に示すように、荷台12の前端部および後端部の左右にそれぞれアウトリガー13が設置されている。
【0023】
本実施形態では、荷台12に発電機14を設置し、ブーム20やドリル30への電力を供給することを可能に構成する。
【0024】
ブーム20,20は、荷台12の前後に設置されており、伸縮自在に構成されている。
図1に示すように、各ブーム20は、基部21において縦方向に回転することで、その先端部22が上下方向に移動する。
また、ブーム20は、基部21において横方向(水平方向)の回転が可能となるように荷台12に設置されている。
【0025】
ブーム20は、複数(本実施形態では3本)の筒状部材を主体として構成されており、筒状部材をシリンダー状に重ね合わせることで、伸縮自在に構成されている(図1参照)。なお、ブーム20の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0026】
ブーム20の先端部22は、図1に示すように、ブーム20の軸心に対して上下方向に回転可能に設置されている。これにより、トンネル内壁面に対するドリル30の削孔角度を調整することができる。
【0027】
ブーム20の先端部22には、図1に示すように、ドリル30を取り付けるためのドリル取付軸31が設置されている。
ドリル取付軸31は、ブーム20の先端部に固定された縦軸23を介してブーム20に設置されている。
【0028】
ドリル30は、補強部材挿入孔を削孔する手段であって、本実施形態ではハンマードリルにより構成する。ドリル30は、ロッド32を回転させつつ支持レール33に沿って前後に摺動することで、削孔を行う。なお、ドリル30の構成は限定されるものではない。
【0029】
本実施形態では、図3(a)および(b)に示すように、支持レール33の左右を把持するように配設された摺動部材30aによりドリル30を支持レール33に沿って移動させるものとするが、摺動部材30aの構成は限定されるものではない。
【0030】
支持レール33は、図3(a)に示すように、回転支持部材34、支持台35、ジャッキ36、上下角調整部材37を介してドリル取付軸31に取り付けられている。
【0031】
回転支持部材34は、図3(a)および(b)に示すように、ドリル取付軸31の外周に回転自在に取り付けられた部材である。
【0032】
回転支持部材34がドリル取付軸31の外周囲に沿って回転することで、ドリル30は回転支持部材34の軸心を中心に回転する。これにより、ドリル30(ロッド32)をブーム20の先端部22の上下左右に配置することが可能となる。
【0033】
支持台35は、上下角調整部材37および支柱38を支持する板状の台座であって、回転支持部材34にジャッキ36を介して取り付けられている。
支持台35の上面には、第一スライドレール35aが形成されており、ジャッキ36の基部36aに摺動可能に取り付けられている。これにより支持台35のドリル取付軸31に対する左右(図3(a)において紙面裏表)の微調整が可能となっている。
【0034】
ジャッキ36は、図3(a)および(b)に示すように、伸縮可能に構成された部材であって、支持レール33の上下方向の微調整を行う。
【0035】
ジャッキ36は、基部36aが支持台35の上面に形成された第一スライドレール35aに係合されるとともに、軸部36bが支持台35を貫通して回転支持部材34に固定されている。
【0036】
軸部36bが伸縮することで、支持レール33の上下方向の微調整が行われ、基部36aが第一スライドレール35aに沿って摺動することで、支持台35の左右方向の微調整が可能となっている。
なお、ジャッキ36の構成等は限定されるものではない。
【0037】
支持台35の後部には、上下角調整部材37が立設されている。上下角調整部材37は、支持レール33と支持台35との間に介設されたシリンダー状の部材であって、上下に伸縮可能に構成されている。
上下角調整部材37が伸縮することで、支持レール33がその先端部を軸に回転し、上下角の微調整が行われる。
【0038】
また、上下角調整部材37は、支持台35の上面に形成された第二スライドレール35bにより、左右方向の移動が可能となるように支持台35に連結されている。
上下角調整部材37が第二スライドレール35bに沿って左右に移動することで、支持レール33の左右角の微調整が可能となっている。
【0039】
支柱38は、図3(a)に示すように、支持レール33の先端部を支持する部材であって、支持台35の先端部に固定されている。
支持レール33は、支持レール33の先端部に設置された球面支持部材33aを介して支柱38に支持されている。
【0040】
支持レール33の先端部には、図3(a)に示すように、ロッドガイド39が固定されており、削孔時のロッド32のブレを抑止するように構成されている。
【0041】
ドリル30は、前記の構成により上下、左右、上下角、左右角の微調整が可能に構成されており、広範囲に、速やか、かつ、正確にセットされることが可能に構成されている。なお、ドリル30の構成は、限定されるものではない。
【0042】
ドリル取付軸31は、縦軸23を回転軸として横方向の回転が自在となるように設置されている(図2参照)。つまり、ドリル取付軸31は、ブーム20の軸心に対して、横方向に回転することが可能に設置されている。
【0043】
図1に示すように、ブーム20の基部21には、操作部40が配置されている。操作部40は、ブーム20の伸縮回転の操作や、ドリル30の方向修正や削孔の操作を行うものである。
【0044】
作業員は、走行台車10の荷台11上において、操作部40を操作することで、所定の位置における補強部材挿入孔の削孔を行うことができる。
【0045】
また、削孔装置1は、ブーム20により大きく広範囲にドリル30を移動させることができ、また、ドリル30の先端位置の微調整を正確に行うことができるため、補強部材挿入孔の削孔を広範囲に、速やか、かつ、正確に行うことができる。
【0046】
削孔装置1は、前後に配設されたブーム20,20を介して同時に削孔を行うことができるため、大断面トンネル等において、トンネル周方向に左右同時に施工を行うことができる。
【0047】
また、ブーム20やドリル30の操作を、走行台車10の架台11上で行うことを可能としているため、作業員の高所作業を必要とせず、作業員の安全性が確保されている。
【0048】
ドリル30は、ドリル取付軸31を中心に回転可能に設置されているため、図1に示すように、ブーム20の先端部22よりも低い位置に配置できる。そのため、トンネルの側壁(脚部)に対する削孔も可能である。
【0049】
また、ドリル30は、ドリル取付軸31を介して、ブーム20の軸心に対して横方向の回転が可能に設置されているため、図1に示すように、走行台車10の走行方向の削孔(図1における右側のブーム20に設置されたドリル30)が可能であるとともに、走行台車10の走行方向に交差する方向の削孔(図1における左側のブーム20に設置されたドリル30)を行うことが可能である。
【0050】
削孔装置1は、図4(a)および(b)に示すように、ブーム20を回転させて、走行台車10の反対側端部(他のブーム20の基部側端部)にドリル30を配置させることで、コンパクトに収納することが可能となる。
【0051】
ブーム20をコンパクトに収納することで、削孔装置1を運搬しやすくなる。また、供用中の鉄道トンネルや道路トンネル等、作業時間が限定される現場において、作業時間外の仮置き場所の省スペース化が可能となる。
【0052】
走行台車10は、アウトリガー13を備えているため、走行台車10の安定した状態で据え付けることを可能としている。
【0053】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0054】
例えば、前記実施形態では、トンネル周方向に対して、補強部材挿入孔を削孔する場合について説明したが、トンネル軸方向に対して複数の補強部材挿入孔を削孔する場合に本発明の削孔装置を利用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 削孔装置
10 走行台車
20 ブーム
21 基部
22 先端部
30 ドリル
31 ドリル取付軸
40 操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、
前記走行台車の前端部と後端部にそれぞれ設置されたブームと、
前記各ブームの先端に設置されたドリルと、を備えた削孔装置であって、
前記ブームは、先端部の上下左右への移動が可能となるように基部が前記走行台車に設置されていることを特徴とする、削孔装置。
【請求項2】
前記ブームの先端には、前記ドリルを取り付けるためのドリル取付軸が設置されており、
前記ドリルが、前記ドリル取付軸を回転軸として回転自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の削孔装置。
【請求項3】
前記ブームが、伸縮自在であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の削孔装置。
【請求項4】
前記ブームの先端部を、他方のブームの基部側に配置することが可能に構成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の削孔装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270508(P2010−270508A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123593(P2009−123593)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】