説明

削岩機

【課題】削孔時の打撃力に耐え得る二重管構造の注入管により、削孔と連続して2液混合タイプの固結剤の先端部での混合・吐出を行うことが出来、更に、注入管を軽量に保つとともに、移動可能な重機に適用でき、注入管継ぎ足し時の作業効率の良い削岩機を提供する。
【解決手段】内管21と外管20の二重管構造の注入管8と、注入管8の先端に取り付けて混合流体を先端より吐出する削孔ビット9と、注入管8の基端部に接続する二重管スイベル10と、打撃力を供給するドリフター6と二重管スイベル10との間に接続してドリフター6の動力を注入管8に伝達するシャンクロッド11とを備え、内管21には、径方向の衝撃を吸収するスペーサーラバー22を取り付け、また、流路用透孔を有する鍔23を設け、鍔23に係合させて長手方向の衝撃を吸収するショックアブソーバー24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立て抗やトンネル・シールド工事で湧水の防止を目的として、2種類の注入材を注入するのに使用する削岩機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削時に切羽鏡部前方の掘削領域を長尺にわたって補強する手段として、鋼管等の管状補強材を用いた注入式長尺先受工法(AGF工法)や注入式鏡補強工法が知られており、この工法においては、ドリルジャンボを使用するのが一般的である。
【0003】
すなわち、周面に多数の貫通小孔を設けた鋼管あるいはFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)や高強度塩化ビニール等の樹脂管などよりなる管状補強材を切羽鏡部の外周から斜めに或いは鏡面から水平方向にそれぞれ前方地山に向かって打設するもので、例えば通常山岳トンネルで用いているドリルジャンボ等を用い、上記管状補強材の内部に中空の削孔ロッドを収容した、いわゆる二重管削孔方式によって削孔を施すと同時にその削孔内に上記管状補強材を順次挿入していく。そして所定の深さまで削孔し且つ管状補強材を挿入したところで、その管状補強材内の削孔ロッドを回収する。
【0004】
次いで、上記管状補強材の内部に固結材を注入することによって、その固結材を補強材周面の貫通小孔から上記削孔内およびその周囲の地山内に浸出させて、地山を補強(改良)するもので、上記の固結材としては通常、速硬性のウレタン系樹脂が用いられている。
【0005】
しかし、湧き水が著しい場合には、このような速硬性の固結剤を使用する場合であっても、削孔ロッドの回収をしている間に水が漏れてしまい、湧き水を止めることができないという問題がある。
【0006】
このような湧水を止めるためには、削孔後、削孔ロッドの回収を行わずに固結剤を注入することにより、削孔から固結剤注入までのタイムラグを少なくすることが有効であり、以下の特許文献において、削孔から固結剤の注入までのタイムラグを少なくできる技術が記載されている。
【特許文献1】特開平9−184391号公報
【0007】
図6を参照して薬注装置70の構成を説明すると、薬注ドリル72は、本体71の上部に設置されると共に、注入管ロッド73を回転する回転用モータ74と、注入管ロッド73を伸縮する推進用モータ75とにより構成される。薬注ドリル72の下方には注入管ロッド73が装着され、この注入管ロッド73を挿通しているボールバルブ76が本体71内に固定されており、注入管ロッド73先端には先端部カッタ77が設置されている。
【0008】
注入管ロッド73は、端部にロッド連結部73aを有するロッド部73bと、このロッド部73bの外部を覆い、かつ端部にスペーサ管連結部73cを有するスペーサ管73dとで形成される長さLの単位注入管ロッド73eを、前記各ロッド連結部73aおよびスペーサ管連結部73cにて連結することにより、その長さを調整することができる。
【0009】
次に、薬注装置70の作用について説明する。不図示のトンネル掘進機が障害物に遭遇すると、その位置に相当する地上の位置に薬注装置70を運搬し、回転用モータ74により注入管ロッド73を回転すると共に、推進用モータ75により注入管ロッド73に推力を与えると、注入管ロッド73先端に設置された先端部カッタ77により地面78が掘削される。先端部カッタ77により長さLだけ地面78を掘削すると、推進用モータ75により注入管ロッド73を長さLだけ収縮させ、そのスペースに単位注入管ロッド73eを連結した後長さLだけ地面78を掘削する。
【0010】
そして、図示しない薬液注入管から注入管ロッド73を介して土質改良材を注入して、地山を改良していた。すなわち、注入管ロッド73先端の先端部カッタ77により掘削した後、注入管ロッド73を引き抜きつつ薬液を注入するので、掘削から薬液注入までのタイムラグが無い。
【0011】
なお、注入管ロッドとして二重管を用いるとともに2種類の薬液の混合により固まる固結材を使用して、2種類の薬液を分けて注入して注入管の先端部で混合させる技術も公知であり、この場合には2液の混合の後、より短時間に固まる固結剤を使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の薬液装置は回転力と推進力のみで掘削を行うものであり、更に打撃力を付加した場合に比べて削孔能力は劣る。また、トンネル工事においては上下左右方向の削孔を行うが、特許文献1の薬液装置は移動手段を持たないため、図7に示すように、施工箇所に移動する際には注入架台や単管足場、高所作業車などの作業架台の上に乗せて昇降・横行を行う必要がある。
【0013】
ところで、トンネル工事においてはドリルジャンボなどの移動可能な重機を使用することが一般的であり、これらの重機に搭載する削岩機であって回転力と推進力に打撃力を付加して大きな削孔能力が得られるものに、注入管として二重管を採用した前記技術を適用する場合には、以下の問題点がある。
【0014】
回転力と推進力のみの場合に比べて打撃力を付加した場合には、薬液の注入管に大きな衝撃が加わるところ、注入管が二重管構造の場合には打撃の振動により内管が外管に衝突して破損してしまう可能性が高い。このため、強い衝撃にも耐えられるよう注入管壁を厚くすると、注入管が大口径になるとともに重量も増す。このため、重機が備えるブーム装置により移動可能に支持するガイドシェルに二重管構造の注入管を有する削岩機を搭載した場合、ブーム装置及びガイドシェルが重みに耐えきれない。
【0015】
また、注入管を継ぎ足す際の作業効率の観点から、二重管構造の注入管は内管と外管を別途継ぎ足していくのではなく、内管と外管が一体になっていることが好ましいが、内管と外管を溶接により固定すると、削孔時の打撃による振動によって溶接部分にひびが入り、耐久性に欠ける。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、削孔時の打撃力に耐え得る二重管構造の注入管により、回転力と推進力に付加する打撃力により高い削孔能力を維持しつつ、削孔と連続して2液混合タイプの固結剤の先端部での混合・吐出を行うことが出来、更に、注入管を大口径とすることなく軽量に保つとともに、ドリルジャンボ等の移動可能な重機に適用でき、注入管の継ぎ足し時の作業効率の良い削岩機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ドリルジャンボ等の移動可能な重機が備えるブーム装置により移動可能に支持するガイドシェルに搭載し、推力と回転力と打撃力とを供給するドリフターを備える削岩機において、内管及び外管の二重管構造を有する注入管と、注入管の先端に取り付けて混合流体を先端の吐出孔より吐出する削孔ビットと、注入管の基端部に接続する二重管スイベルと、二重管スイベルとドリフターとの間に接続してドリフターの動力を注入管に伝達するシャンクロッドとを備え、内管には、径方向の衝撃を吸収する第1の弾性部材を取り付け、また、鍔を設け、この鍔に係合させて長手方向の衝撃を吸収する第2の弾性部材を設け、さらに、鍔には流路用透孔を形成したことを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、第1及び第2の弾性部材の緩衝作用により内管が保護され、注入管を削孔時の打撃力に耐え得るものとすることができるから、回転力と推進力に打撃力を付加してより高い削孔能力を維持しつつ、二重管構造の注入管により削孔と連続して2液混合タイプの固結剤の先端部での混合・吐出を行うことが出来、作業効率が良い。なお、鍔には流路となる隙間を設けたから、内管と外管との間を流れる流体の流路を確保することができる。
【0019】
また、これら第1及び第2の弾性部材は外管から内管にかかる衝撃を吸収するという構造状、外管に対する内管の位置を適正に保つことができるから、内管を外管内の適正位置にセットした状態で取り扱うことができ、注入管継ぎ足し時の作業効率を良くすることができる。更に、注入管を大口径とすることなく軽量に保つことにより、ドリルジャンボ等の移動可能な重機に適用可能なものとすることができる。
【0020】
請求項2記載の発明は、第2の弾性部材は前記鍔を挟んで両端を外管内の係止部に係止するコイルバネであり、前記係止部の一方は外管内壁面の拡径段部であり、他方は外管に嵌め込むことにより外管と一体となって注入管を連結する連結管の縁であることを要旨とするものである。
【0021】
請求項2記載の本発明によれば、コイルバネを第2の弾性部材として用いるから、流体の流路を確保するために別途孔やスリットを設けなくてもよく、第2の弾性部材を容易に実現できる。なお、コイルバネは単一のものを用いてその間に鍔を挟むようにしても良いし、2つに分離したものを用いて鍔の長手方向両側に各々配置しても良い。そしてコイルバネを外管と外管に嵌め込むことにより外管と一体となって注入管を連結する連結管との間で保持するようにしたから、コイルバネを容易に装填することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、削孔ビットの吐出孔内に逆止弁を設けたことを要旨とするものである。
【0023】
請求項3記載の本発明によれば、注入管の着脱時に、地山からの湧水により注入管内部に水や砂が逆流することを防ぐことができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、二重管スイベルとシャンクロッドの双方の接続面に対峙して設けた直状溝に挿入して、双方の位置ズレを防止する緩み止めピンを設け、二重管スイベルの高圧流体入口に接続する流入管を保持するスイベルカバーをドリフターに固定することを要旨とするものである。
【0025】
請求項4記載の本発明によれば、二重管スイベルとシャンクロッドの双方の接続面に設けた溝に挿入する緩み止めピンにより、削孔時の打撃による振動が二重管スイベル及びシャンクロッドに加わっても双方の位置がずれるのを防止して、双方の接続が緩むのを防止することができる。また、二重管スイベルの高圧流体入口に接続する流入管を保持するスイベルカバーをドリフターに固定したから、削孔時の打撃による振動が二重管スイベルに加わっても、スイベルの高圧流体入口が動いて薬液が漏れてしまうことがない。
【0026】
請求項5記載の発明は、内管の内壁面を強酸に対する耐腐蝕性材料により構成するとともに、内管及び外管の各接続部位にOリングを設けて密閉することを要旨とするものである。
【0027】
請求項5記載の本発明によれば、内管の内壁面を強酸に対する耐腐蝕性材料により構成するから、2種類の薬液のうち強酸性の薬液を内管内に注入しても内管が腐蝕することなく、削孔時の打撃による振動が加わっても内管に亀裂が入るなどの破損が起こり難くなる。これにより、内管内の液が漏れて内管外の薬液と混ざってしまうことを防止することができる。また、内管及び外管の各接続部位にOリングを設けて密閉するから、注入管内での液漏れによる2液の混合をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の削岩機は、削孔時の打撃力に耐え得る二重管構造の注入管により、回転力と推進力に付加する打撃力により高い削孔能力を維持しつつ、削孔と連続して2液混合タイプの固結剤の先端部での混合・吐出を行うことが出来、更に、注入管を大口径とすることなく軽量に保つとともに、ドリルジャンボ等の移動可能な重機に適用でき、注入管の継ぎ足し時の作業効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の削岩機をドリルジャンボに搭載した1実施形態を示す全体側面図、図2は同上平面図である。
【0030】
図1及び図2に示すように、ドリルジャンボ1は、一般に、自走式ベースマシン2の前方に起伏自在のブーム装置3を備え、その先端に配置するガイドシェル4上に削岩機5を搭載したマシンであり、削岩機5は油圧ドリフター6の先端に、複数の中継ぎロッドを介してその先端に各種ビットを取り付け、各ビットにより切羽の削孔作業を行うものである。なお、ドリルジャンボ1の移動手段は図示するようにホイールを使用する他、クローラを使用することもできる。
【0031】
削岩機5は、不図示の推進機構と回転機構と打撃機構を有するドリフター6と、ドリフター6にアタッチメントとして取り付ける二重管複相注入削孔システムにより構成する。二重管複相注入削孔システムは、注入管(中継ぎロッド)8、注入管8の先端に取り付ける削孔ビット9、注入管8に高圧流体を供給する二重管スイベル10、及び、ドリフター6と二重管スイベル10の間を接続してドリフター6の動力を二重管スイベル10を介して注入管8及び削孔ビット9に伝達するシャンクロッド11により構成する。
【0032】
次に、二重管複相注入削孔システムの各構成要素について、図3及び図4を参照して説明する。注入管8は外管20と内管21の二重管構造になっており、最初に地山に打ち込む注入管(ファーストチューブ)8bの先端にはファーストノズル13を介して削孔ビット9を取り付ける。削孔ビット9はビット先端30の中央に、注入管8より流入する高圧水や固結剤を吐出する吐出孔31を備える。なお、ファーストノズル13と削孔ビット9を一体型にしても良い。
【0033】
注入管8は、基端側を二重管スイベル10に取り付ける。また、2番目以降に地山に打ち込む注入管(インジェンクションチューブ)8aは、連結管としてのロッドカップリング12により連結して前の注入管8に継ぎ足していく。
【0034】
図4を参照して、まず、注入管について、詳細に説明する。外管20は口径65mmの鋼製であり、外管20の基端側内周面及び先端側内周面はロッドカップリング12やファーストノズル13を嵌着するため拡径しており、更に螺子山20a及び20bが切られている。なお、後述の鍔23及びショックアブソーバー24を収容するため、先端側内周面は基端側内周面に比べて拡径距離をより長くする。
【0035】
また、ロッドカップリング12の両端側外周面及びファーストノズル13の基端部側外周面には、外管20に螺合する螺子山12b及び13bを切る。ロッドカップリング12およびファーストノズル13の外管20との結合面には、周方向に沿ってOリング25aを取り付け、密閉性を高める。
【0036】
内管21は口径57mmのステンレス製であり、内管21の基端側(図中左側)寄りには、外管20と内管21との間の距離を埋めて内管21の位置を外管20の中心に保つゴム製のスペーサーラバー22を取り付ける。また、内管21の先端側(図中右側)にはステンレス製の鍔23を溶接して固定し、鍔23を挟んでステンレス製コイルバネのショックアブソーバー24を配置する。
【0037】
ショックアブソーバー24の外径は、外管20中央部の内径及びロッドカップリング12の基端側の縁12aの内径よりも小さく設定する。これにより、図3に示すように、外管20の拡径段部20cとロッドカップリング12の縁12aとの間でショックアブソーバー24を保持することができる。ファーストノズル13の基端部側の縁13aの内径も同様に設定することにより、ファーストチューブ8bとファーストノズル13との間においても同様にショックアブソーバー24を保持することができる。
【0038】
ここで、注入管8の連結時において、ロッドカップリング12及びファーストノズル13に内管21を挿入することから、ロッドカップリング12及びファーストノズル13は外管20の一部として機能するものであり、ロッドカップリングの縁12a及びファーストノズルの縁13aは拡径段部20cと同様にショックアブソーバー24の係止部として働く。
【0039】
そして再び図4に示すように、内管21の鍔23より更に先端側に、内径が内管21の外径と等しい大きさの管を溶接または螺子止めにより取り付けることにより、先端側の注入管の内管を嵌着できる拡径部位21aを設ける。なお、最初に地山に打ち込むファーストチューブ8bの内管21は拡径部位21aは不用であるが、ファーストノズル13内に挿入する分、余分に長くする。更に、内管21の基端部側の外周にOリング25bを取り付けて密閉性を高める。
【0040】
また、スペーサーラバー22と鍔23にはそれぞれ切り欠き22b及び切り込み23bを設けて、流体の流路を確保する。なお、22a、23aは内管21が貫通する貫通穴である。
【0041】
次に、削孔ビットについて説明する。削孔ビット9は図3及び図4に示すように、吐出孔31内に、ボール32a、スプリング32b、吐出孔31内壁面に固定してスプリング32bの先端側を保持するリング状又は格子状のストッパー32c、ボール32aの基端側に隣接して吐出孔31内壁面に固定し、ボール32aの直径より小さい内径を有するストッパーリング32dからなる逆止弁32を備える。なお、固結剤の薬液による腐蝕を防ぐため、これらは全てステンレス製とする。
【0042】
これは、流体が先端に向かって流れる場合には、流体の押圧力によりボール32aが先端側へ押されて移動してスプリング32bが縮み、ストッパーリング32dとボール32aとの間に隙間ができるので流体が通過することができる一方、外部から湧水などの流体が流入しようとした場合には、ボール32aは流体の押圧力により基端部側へ移動してストッパーリング32dに押しつけられ、ストッパーリング32dとボール32aとの間の隙間が塞がれて流体が通過することができなくなるというものである。
【0043】
次に、二重管スイベル10とシャンクロッド11付近の構成について図3を参照して説明する。外部が静止した状態で内部だけが回転する二重管スイベル10は、内管21内に高圧流体を供給する第1の流体入口16と、内管21と外管20との間に高圧流体を供給する第2の流体入口17とを備え、二重管スイベル10の先端側外周面には注入管8の外管20に螺合する螺子山10bを切り、更に基端側内周面にはシャンクロッド11と螺合する螺子山10aを切る。また、注入管8との接続部位となる先端側外周面には、螺子山10bよりも基端側にOリング25aを取り付け、密閉性を高める。
【0044】
更に、基端側内周面の螺子部分よりも基端側に、図中奥行き方向に延びる直条溝15aを上下2箇所に設ける。
【0045】
シャンクロッド11は基端側をドリフター6に接続するスプライン軸であり、先端側外周面に螺子山11bを切るとともに、二重管スイベル10に連結した際に二重管スイベル10側の直条溝15aと対応する位置に、図中奥行き方向に延びる直条溝15bを上下2箇所に形成する。なお、11aはスプライン歯である。
【0046】
そして、対峙する両直条溝15a、15bで形成するスペースに緩み止めピン15を挿入する。
【0047】
スイベルカバー14は支柱14bと支柱14b上側より横方向に延びる横板14aからなるL字型の部材であり、支柱14bをドリフター6(図3において不図示)のシャンクロッド11装着部のカバーにボルトにより固定する。なお、横板14aの長さは、水ポンプ又は薬注ポンプからの高圧流体を供給する流入管(不図示)を流体入口16、17に取り付けて削孔を行う際、ドリフター6が付与する推進力によって二重管スイベル10が先端方向へ移動する距離よりも長く設定する。
【0048】
次に、使用方法及び動作について説明する。ドリルジャンボ1をトンネル内の施工場所へと移動して、ガイドシェル4上に削岩機5をセットし、ドリルジャンボ1が備える水ポンプより高圧水を二重管スイベル10の流体入口16、17から供給して削孔ビット9の吐出孔31より吐出しながら、ドリフター6が付与する推力と回転力と打撃力により削孔ビット9で削孔して、注入管8をトンネルの切羽鏡部の外周から斜めに或いは鏡面から水平方向にそれぞれ前方地山に向かって打ち込んでいく。このとき、上から下へと順に打ち込んでいく。
【0049】
ロッドカップリング12により注入管8を継ぎ足しながら削孔を続け、10本ほど継ぎ足して約15m削孔する。注入管8を継ぎ足す際、削孔ビット9の逆止弁32により、土砂や水の逆流を防ぐことができるから、吐出孔31及び注入管8内に土砂が詰まることがない。
【0050】
また、スペーサーラバー22は内管21を外管20の径方向中心に保ち、ショックアブソーバー24は内管21を外管20内において長手方向の適正位置に保つとともに、これらスペーサーラバー22及びショックアブソーバー24は弾性部材であるから削孔時に外管20を介して内管21に加わる打撃力の衝撃を吸収してやわらげ、内管21の破損を防止する。
【0051】
また、削孔時の打撃力はシャンクロッド11と二重管スイベル10との接続部位にも加わるが、緩み止めピン15によりシャンクロッド11と二重管スイベル10とが互いに前後方向へずれたり、あるいは周方向へ回転するのを防ぐから、打撃による振動が加わっても連結の緩みを防止できる。これにより、シャンクロッド11はドリフター6が付与する推力と回転力と打撃力を確実に二重管スイベル10に伝えることができる。
【0052】
削孔が終ると、次に、二重管スイベル10に供給する流体を高圧水から固結剤の薬液に切り換えるため、水ポンプを薬注入ポンプに交換する。固結剤としては、例えば水ガラス系無機溶液型瞬結剤又は緩結剤、活性シリカ系溶液型の瞬結剤又は緩結剤等、公知のものを使用することができる。
【0053】
例えば水ガラス系無機溶液型瞬結剤の場合、内管21内を通るA液として珪酸ソーダ(JIS3号)80リットル、水120リットルの割合で薬液を配合し、内管21と外管20の間を通るB液として、硬化剤(商品名:アロンSR−80、東亜合成株式会社製)20kg、水193kgの割合で薬液を配合する。
【0054】
その他の固結剤を使用する場合であっても、強酸性の薬液をA液として第1の流体入口16より流入させるようにする。内管21はステンレス製なので強酸性の薬液が流れても酸化してさびることがなく、また、ステンレスを使用するのは内管21又は内管21の内壁面だけでよいので、内管21の外壁面及び外管20の材質としてより安価なものを選択することにより、注入管8の製作コストを抑えることが出来る。
【0055】
次に、注入管8を地山より引き抜きつつ、前記の固結剤の薬液を注入する。図3に示すように、A・Bそれぞれの薬液は接続部各所のOリング25a、25bにより、漏れて途中で混ざることなく注入管8の中を流れ、ファーストノズル13内でA・B両液が合流して混合され、削孔ビット9の吐出孔31より吐出されて、削孔によりできた孔の内部を充填するとともに地山に染み渡る。A液、B液は混合によりゲルタイム13秒で固結して地山を改良する。
【0056】
また、接続部各所のOリング25a、25bは薬液が外部にも漏れるのも防ぎ、スイベルカバー14により二重管スイベル10の流体入口16、17に接続する流入管がずれて薬液が外に漏れてしまうのを防ぐので、液漏れにより作業に支障をきたすのを防止することができる。
【0057】
なお、鏡面から水平方向に注入管8を打ち込む際の配列を示す図5において示すように、固結剤は削孔ビット9の直径よりも広がりをもって地山に浸透するので、改良径は削孔ビットの直径よりも大きくなる。このため、隣り合う改良径が少しずつ重なり合うようにして改良作業を行うようにする。例えば、削孔ビットの直径が65mmである場合に、改良径が約450mmであるとすると、削孔により形成した穴を中心とする直径450mmの円が重なり合うようにして改良作業を行う。
【0058】
このように、本実施例における削岩機5は削孔後にすぐに固結剤を注入することができるから、作業効率が良く、湧水が激しい施工箇所の地山改良においても好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の削岩機をドリルジャンボに搭載した1実施形態を示す全体側面図である。
【図2】本発明の削岩機をドリルジャンボに搭載した1実施形態を示す平面図である。
【図3】二重管複相注入削孔システムにおける薬剤の流れ方を示す説明図である。
【図4】二重管複相注入削孔システムの各構成要素の分解断面図である。
【図5】鏡面から水平方向に注入管を打ち込む際の配列を示す説明図である。
【図6】従来の削岩機の一例を示す説明図である。
【図7】従来の削岩機の設置方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ドリルジャンボ 2 ベースマシン
3 ブーム装置 4 ガイドシェル
5 削岩機 6 ドリフター
8 注入管 8a インジェンクションチューブ
8b ファーストチューブ 9 削孔ビット
10 二重管スイベル
10a、10b、11b、12b、13b、20a、20b 螺子山
11 シャンクロッド 11a スプライン歯
12 ロッドカップリング 12a,13a 縁
13 ファーストノズル 14 スイベルカバー
14a 横板 14b 支柱
15 緩み止めピン 15a、15b 直条溝
16 第1の流体入口 17 第2の流体入口
20 外管 20c 拡径段部
21 内管 21a 拡径部位
22 スペーサーラバー 22a、23a 貫通孔
22b 切り欠き 23 鍔
23b 切り込み 24 ショックアブソーバ−
25a、25b Oリング 30 ビット先端
31 吐出孔 32 逆止弁
32a ボール 32b スプリング
32c ストッパー 32d ストッパーリング
70 薬注装置 71 本体
72 薬注ドリル 73 注入管ロッド
73a 連結部 73b ロッド部
73c スペーサ管連結部 73d スペーサ管
73e 単位注入管ロッド 74 回転用モータ
75 推進用モータ 76 ボールバルブ
77 先端部カッタ 78 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルジャンボ等の移動可能な重機が備えるブーム装置により移動可能に支持するガイドシェルに搭載し、推力と回転力と打撃力とを供給するドリフターを備える削岩機において、内管及び外管の二重管構造を有する注入管と、注入管の先端に取り付けて混合流体を先端の吐出孔より吐出する削孔ビットと、注入管の基端部に接続する二重管スイベルと、二重管スイベルとドリフターとの間に接続してドリフターの動力を注入管に伝達するシャンクロッドとを備え、内管には、径方向の衝撃を吸収する第1の弾性部材を取り付け、また、鍔を設け、この鍔に係合させて長手方向の衝撃を吸収する第2の弾性部材を設け、さらに、鍔には流路用透孔を形成したことを特徴とする削岩機。
【請求項2】
第2の弾性部材は前記鍔を挟んで両端を外管内の係止部に係止するコイルバネであり、前記係止部の一方は外管内壁面の拡径段部であり、他方は外管に嵌め込むことにより外管と一体となって注入管を連結する連結管の縁である請求項1記載の削岩機。
【請求項3】
削孔ビットの吐出孔内に逆止弁を設けた請求項1または請求項2記載の削岩機。
【請求項4】
二重管スイベルとシャンクロッドの双方の接続面に対峙して設けた直状溝に挿入して、双方の位置ズレを防止する緩み止めピンを設け、二重管スイベルの高圧流体入口に接続する流入管を保持するスイベルカバーをドリフターに固定する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の削岩機。
【請求項5】
内管の内壁面を強酸に対する耐腐蝕性材料により構成するとともに、内管及び外管の各接続部位にOリングを設けて密閉する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の削岩機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−63652(P2006−63652A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247715(P2004−247715)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】