説明

削岩装置および削岩装置の制御方法

複数のアクチュエータユニット(2aないし4b)、ユーザインタフェース制御部(6)、およびユーザインタフェース制御部(6)へ接続され削岩装置(1)の各機能を制御する少なくとも1つの操作手段(7ないし9)を備え、さらに各アクチュエータユニット(2aないし4b)ごとに、ユーザインタフェース制御部(6)の制御の下に接続されユーザインタフェース制御部(6)より与えられる制御信号に従ってアクチュエータユニット(2aないし4b)の作動を制御する制御要素を備えた削岩装置、ならびに削岩装置の制御方法。削岩装置のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素が故障すると、他のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する必要がなければ、前記他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素を接続して最初のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【先行技術】
【0001】
本発明は、複数のアクチュエータユニット、ユーザインタフェース制御部、およびユーザインタフェース制御部へ接続されて削岩装置の各機能を制御する少なくとも1つの操作手段を備え、さらに各アクチュエータユニットごとに、ユーザインタフェース制御部の制御の下に接続されてユーザインタフェース制御部から与えられる制御信号に従ってアクチュエータユニットの動作を制御する制御要素を備えた削岩装置に関するものである。本発明はさらに、削岩装置の制御方法に関するものであり、削岩装置は、複数のアクチュエータユニット、制御部、および制御部へ接続されて削岩装置の各機能を制御する少なくとも1つの操作手段を備え、さらに各アクチュエータユニットごとに、制御部の制御の下に接続されて制御部から与えられる制御信号に従ってアクチュエータユニットの動作を制御する制御要素を備えている。
【0002】
削岩装置は現在、電子的に制御され、多くの場合、理論制御もしくはコンピュータ制御による。実際上、典型的には分散制御方式が用いられ、削岩機、ブームなどのアクチュエータは、特定の機能を制御する個別の制御ユニットを有する別々の制御可能なアクチュエータユニットである。これらの方式は、各アクチュエータもしくはアクチュエータ組立体がそれ自身の制御ユニットとなるように構成され、例えば削岩装置が複数のブームを有する場合、各ブームもしくは特定のアクチュエータユニットごとにそれ自身の制御ユニットを有している。
【0003】
今日、制御系も、発生し得る故障を検出してそれを報告することができる診断機能も含んでいる。したがって制御系は、制御ユニットもしくは制御ユニットのIOユニットが機能するか否かを報告することが可能である。今日では、故障ユニットは、必ず交換してから、その制御するアクチュエータを再使用可能にする必要がある。
【0004】
従来技術の方式に関する問題は、故障を検出すると、故障ユニットを修理し、もしくは交換するまで、削岩装置全体の作動が中断されることにある。これによって費用のかかる中断ばかりでなく、作業も遅延も生じる。
【発明の簡単な説明】
【0005】
本発明は、制御要素の故障により生じる問題を回避もしくは減少させることが可能な削岩装置および方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の削岩装置は、アクチュエータの制御要素が故障すると、他のアクチュエータユニットの制御要素を接続することで、前記他のアクチュエータユニットを制御する必要がない場合に最初のアクチュエータユニットを制御する手段を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の方法は、アクチュエータユニットの制御要素が故障すると、他のアクチュエータユニットを制御する必要がない場合に後者のアクチュエータユニットの制御要素によって故障アクチュエータユニットを制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の態様は、故障ユニットを修理もしくは交換するまで一時的に、第2の同様なユニットの対応する制御ユニットによって故障ユニットの動作を管理することである。したがって、例えばブーム制御用の制御ユニットが故障すると、第2のブームが制御中でなければ、そのブームの制御ユニットを用いて、代用することができる。このようにして故障状態では、1つの制御ユニットが同時に複数のブームを制御することができ、これは単に、制御し使用中の各ブームを制御するように交互に制御ユニットを接続することによって行なわれる。本発明の実施例によれば、このような制御ユニットの代用は単に、その制御系に属しているユーザインタフェースを介して行なうことができる。本発明の第2の実施例によれば、この代用は、故障した制御ユニットを一時的に迂回させることのできる別個の保守ユニット、および代わりに機能している制御ユニットを用いて行なうことができる。本発明の他の実施例によれば、制御系は、故障した制御ユニットを自動的に交換し、またはその交換を自動的に促す手段を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
次に、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図1】削岩装置の模式図である。
【図2】図1の削岩装置の制御系をブロック図で示す模式図である。
【図3a】および
【図3b】図2の制御系の制御接続状態の故障状態を示す図である。
【図4】図2の制御系の故障状態における第2の制御接続状態を示す図である。
【図5】図2の制御系の他のタイプの故障状態における制御接続状態を示す図である。
【図6】故障状態において別個の保守ユニットを用いる場合の図2の制御系の制御接続状態を示す図である。
【発明にいくつかの実施例の詳細な説明】
【0010】
図1は、キャリア1と、キャリア1に対してそれ自体公知の方式で回転可能に取り付けられたブーム2aおよび2bとを有する削岩装置の模式図である。ブーム2aおよび2bのそれぞれの端部は、可動式削岩機4aおよび4bを載置した送りビーム3aおよび3bを有している。これら自体は公知のものであり、これらの動作も公知であり、当業者には明らかであるため、これらを詳細に説明する必要はない。それぞれのアクチュエータを備えたブームと、それぞれのアクチュエータを備えた削岩機は、別個のアクチュエータユニットである。アクチュエータユニット2aないし4bはさらに、ブーム、送りビーム、削岩機のみならず、動力部、ジャッキおよびユーザインタフェースなど装置の制御に用いる他のアクチュエータであってもよい。
【0011】
図1に示す削岩装置のブーム2aおよび2b、送りビーム3a、3b、ならびに削岩機4aおよび4bのさまざまな構成要素と、これらの相対的位置および方向は、制御装置によってそれ自体公知の方法で制御されるが、その一実施例を図2において一例をもって詳細に説明する。
【0012】
図2は、図1による削岩装置の制御装置の一実施例を例示的かつ概略的に示す。制御装置は、それ自体公知のデータバス5、例えばCAN(Controller Area Network)データバス技術に基づくバスにより相互接続された複数のさまざまな制御装置を有している。
【0013】
第1の制御部はユーザインタフェース制御部6であり、これにさまざまな操作手段が接続され、それらを使ってユーザは指示を入力して制御装置の動作を制御する。これらの操作手段には1つ以上の操作装置7が含まれてよく、それらのうちの1つだけを一例としてここに示す。操作手段にはさらに、キーボード8、およびユーザインタフェース6がユーザに対して必要な情報を表示するディスプレイ9が含まれていてもよい。
【0014】
さらに、制御装置は、2つのブーム制御ユニット10aおよび10bと、2つの穿孔制御ユニット11aおよび11bとを有している。ブーム制御ユニット10aもしくは10bのうちの一方と、一方の穿孔制御ユニット11aもしくは11bは、それぞれ一方の穿孔ブーム2aもしくは2bを制御するはずの制御部組立体12aおよび12bをそれぞれ形成し、これらの両方とも、それぞれ自身のアクチュエータユニット、すなわち穿孔ブーム2aもしくは2bと、関連する第2のアクチュエータユニット、すなわち削岩機4aもしくは4bとを制御する。別個のシステム制御部13を設けて、制御装置により形成されている系全体を制御してもよい。
【0015】
各ブーム制御ユニット10aおよび10bと各穿孔制御ユニット11aおよび11bはそれぞれ、制御されるアクチュエータの本数に応じて1つ以上のIOユニットを有するが、本実施例では各制御ユニットごとに3つある。IOユニットIO11ないしIO43は同様に、それらのアクチュエータの制御に必要な構成要素、例えば圧流体弁14aおよび14bや、または他の構成要素、アクチュエータもしくはセンサ15を制御する。
【0016】
特許請求の範囲では、制御ユニット10a、10b、11aおよび11bと、IOユニットIO11ないしIO43は一般的に制御要素と称している。したがって制御要素とは、制御ユニットのみ、IOユニットのみ、または両方を意味している。
【0017】
制御装置は、ユーザインタフェース制御部6が必要に応じて制御コマンドをデータバス5を通して他のユニットへ送り、そのユニットでは、コマンドに定義された命令に従ってコマンドを実行するよう機能する。各ユニットは、制御を実行する1つ以上のコンピュータを有し、こうして制御装置は、データバス5を通して相互接続された複数のコンピュータ、ならびに他の構成要素およびIOユニットで構成される。
【0018】
図3aは、ブーム2aを制御するブーム制御ユニット10aが故障している状態を示す。これは、ブーム制御ユニット10aに描かれたバツ印で示す。この状態で当然、ブーム2aは、ブーム制御ユニット10bによって通常のように制御されるが、これは、ブームが所望の位置に配置されて停止し、他の動作を妨害することなくそこに残ることができるまでである。これを破線矢印aで模式的に示す。この後、図3bに示す方法で、ブーム制御ユニット10bが接続されてブーム2aを制御する。これによってブーム2aは、ブーム制御ユニット10aの故障にもかかわらず所望の位置へ動かすことができる。これを破線矢印bで模式的に示す。ブーム2aを制御して所望の位置へ移すと、ブーム制御ユニット10bは再び、制御ブーム2bへ接続することができる。
【0019】
図4は、図3aと同様にブーム制御ユニット10aが故障している状態を示す。この代替実施例は、同じブーム2aの穿孔制御ユニット10aを用いてブーム2aを制御するが、これは、作動の正しい位置に移して停止できるまでである。これを破線矢印cで模式的に示す。この後、穿孔制御ユニット11aを接続して、通常のように穿孔を制御する。穿孔制御ユニット11aは、穿孔後、ブーム2aを再び新たな穿孔位置へ移動させる際に、用いられる。
【0020】
図5は、穿孔制御ユニット11aのIOユニットIO22が故障してアクチュエータ弁14bが制御不能な状態を示す。穿孔制御ユニット11aに属するIOユニットIO21がそれ自身のアクチュエータを制御する必要がなければ、IOユニットIO22に代わってそのIOユニットIO21を用いてアクチュエータ弁14bを制御することができる。図5は、この制御を行なって穿孔制御ユニット11aを利用可能にする場合を示す。破線dは制御接続状態を模式的に示す。
【0021】
図6は、図3aと同様にブーム制御ユニット10aが故障している状態を示す。この代替実施例は、別個の保守ユニット16を用いてブーム2aを制御するが、保守ユニット16は、別個の接続17を通して、例えばデータバス5へ接続される。そこで、故障ブーム制御ユニット10aと置き換わり、他のアクチュエータの制御ユニットを使用する必要がない。制御信号の経路が破線矢印eで模式的に示されている。
【0022】
図面を使用して上述した方式は、分散配置された各ユニットにおいてさまざまな汎用バスを通してアクチュエータを制御することで実現されている。したがって、各アクチュエータに必要な制御ユニットおよびIOユニットの制御は、ユニット固有のアドレスに、またこれらのアドレスを使って各ユニットに個別に与えられるコマンドを実行することに基づいている。
【0023】
以上の記載および図面では、本発明を例示のみによって説明したが、本発明は決してこれに限定されることない。本発明の本質は、削岩装置におけるアクチュエータの故障した制御ユニットもしくはIOユニットを一時的に他の制御ユニットもしくはIOユニットで代用することが可能であり、したがって削岩装置は、故障ユニットを修理し、または新品と交換するまで使用し続けることできることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクチュエータユニット(2aないし4b)、ユーザインタフェース制御部(6)、および該ユーザインタフェース制御部(6)へ接続され削岩装置(1)の機能を制御する少なくとも1つの操作手段(7ないし9)を備え、さらに各アクチュエータユニット(2aないし4b)ごとに、前記ユーザインタフェース制御部(6)の制御の下に接続され該ユーザインタフェース制御部(6)より与えられる制御信号に従って前記アクチュエータユニット(2aないし4b)の作動を制御する制御要素を備えた削岩装置において、該装置は、アクチュエータユニット(2aないし4a)の制御要素が故障すると、他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素を接続して、該他のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する必要のないときは、第1のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する手段を含むことを特徴とする削岩装置。
【請求項2】
請求項1に記載の削岩装置において、他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の同様の制御要素を故障した制御要素に代わって接続して前記アクチュエータユニット(2aないし4b)を制御することを特徴とする削岩装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の削岩装置において、前記制御要素を接続して他のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する手段は、制御装置のオペレーティングシステムに対応するコンピュータプログラムの一部であることを特徴とする削岩装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の削岩装置において、前記制御要素を接続して他のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する手段は、制御装置へ接続可能な別個の保守ユニットであることを特徴とする削岩装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の削岩装置において、前記制御要素は制御ユニット(10a、10b;11a、11b)であり、該制御ユニットは、特定のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御するようプログラムされ、故障した制御ユニットは、同様のアクチュエータユニットを制御するようプログラムされた制御ユニットで一時的に代用することを特徴とする削岩装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の削岩装置において、前記制御要素は、前記制御ユニット(10aないし11b)に対応するIOユニット(IO11ないしIO43)であることを特徴とする削岩装置。
【請求項7】
複数のアクチュエータユニット(2aないし4b)、制御部(6)、および該制御部(6)へ接続され削岩装置(1)の機能を制御する少なくとも1つの操作手段(7ないし9)を備え、さらに各アクチュエータユニット(2aないし4b)ごとに、前記制御部(6)の制御の下に接続され該制御部(6)より与えられる制御信号に従って前記アクチュエータユニット(2aないし4b)の作動を制御する制御要素を備えた削岩装置の制御方法において、アクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素が故障すると、該アクチュエータユニット(2aないし4b)は、他のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御する必要のない場合、該他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素で制御することを特徴とする削岩装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、通常は前記故障した制御要素で制御されていた前記アクチュエータユニット(2aないし4b)は、他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の同様の制御要素で制御することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、前記他の制御要素を制御する前記他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素の前記接続は、制御装置のオペレーティングシステムに対応するコンピュータプログラムによって行なうことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の方法において、前記他の制御要素を制御する前記他のアクチュエータユニット(2aないし4b)の制御要素の前記接続は、制御装置へ接続された別個の保守ユニットにより行なうことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかに記載の方法において、前記制御要素が特定のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御するようプログラムされた制御ユニット(10a、10b;11a、11b)である場合、同様のアクチュエータユニット(2aないし4b)を制御するようプログラムされた制御ユニット(10a、10b;11a、11b)を用いて前記故障した制御ユニット(10a、10b;11a、11b)を一時的に代替えすることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500490(P2010−500490A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523311(P2009−523311)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050438
【国際公開番号】WO2008/017732
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(506286478)サンドビク マイニング アンド コンストラクション オサケ ユキチュア (70)
【氏名又は名称原語表記】SANDVIK MINING AND CONSTRUCTION OY
【Fターム(参考)】