説明

削減熱量算出装置及び流量算出方法

【課題】削減熱量を算出するための流量を、流量センサからの出力に応じて高精度かつ応答性よく算出する手法を提供する。
【解決手段】削減熱量算出装置における流量算出部54fは、流量センサからの検出信号に基づいて、パルスの立ち上がりエッジをトリガーとして時間計測を開始し、所定の計測時間Tn内に現れる立ち上がりエッジに応じて、パルスの個数に相当するエッジ数Ceをカウントする。つぎに、流量算出部54fは、計測時間Tnの最後にカウントされた最終パルスを対象として、最終パルス一周期分のうち計測時間Tnの終了後に残存する端数パルスに関する時間T2を計測する。そして、流量算出部54fは、カウントされたエッジ数Ceと、計測時間Tnに端数パルスに関する時間T2を加算した加算時間(Tn+T2)とに基づいて、単位時間あたりのパルス数を演算することにより、流量Qを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削減熱量算出装置及び流量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響の顕在化などを背景に、自然エネルギー、特に、太陽エネルギーの利用が推進されており、例えば、太陽熱給湯システムなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような太陽熱エネルギーの利用拡大を期待するために、例えばグリーン熱証書といったように、太陽熱給湯システムにより削減できた熱量の環境価値を証書化する仕組みが構築されている。熱量の証書化にあたっては熱量を計量することが求められるが、計量器の要件としては、法定計量器である積算熱量計であることが定められている。
【0003】
ところで、この法定計量器は、高価であるとともに、検定による使用期限が義務付けられており、これが太陽熱給湯システムの耐用年数と異なっていることもあり、普及促進の弊害となっていた。そこで、計量検定を取得していない安価な流量センサを利用して流量を算出し、これに基づいて熱量を計量することで、システム全体のコストダウンを図る手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−279144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法によれば、流量センサの出力に応じて流量を算出するものの、特に低流量域では、算出される流量の精度が低くなってしまう場合がある。そのため、計量検定を取得したものと同等の精度で流量を算出することが望まれていた。この点、1回の流量算出に要する時間を十分に確保することで、算出精度の向上を図ることとはできるものの、流量を得るための算出周期が長期化する傾向となり、応答性に劣るという問題を招来する可能性がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、削減熱量を算出するための流量を、流量センサからの出力に応じて高精度かつ応答性よく算出する手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、第1温度センサ及び第2温度センサからの信号値並びに流量センサの出力に応じて算出された流量に基づき、太陽熱温水器の加熱によって給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置を提供する。ここで、削減熱量算出装置は、パルス一周期に対応する所定の出力変化をトリガーとして時間計測を開始するとともに、所定の計測時間内に現れる出力変化に応じてパルスの個数をカウントするパルス数計測手段と、計測時間の最後にカウントされた最終パルスを対象として、当該最終パルス一周期分のうち計測時間の終了後に残存する端数パルスを計測する端数パルス計測手段と、カウントされたパルスの個数と端数パルスとに基づいて単位時間あたりのパルス数を演算することにより、液体の流量を算出する演算手段とを有する。
【0008】
ここで、第1の発明において、端数パルス計測手段は、端数パルスを、当該端数パルスに関する時間として計測しており、演算手段は、カウントされたパルスの個数と、計測時間に端数パルスに関する時間を加算した加算時間とに基づいて、単位時間あたりのパルス数を演算することが好ましい。あるいは、端数パルス計測手段は、端数パルスを、最終パルスにおける端数パルスの割合として計測しており、演算手段は、カウントされたパルスの個数と、端数パルスの割合と、計測時間とに基づいて、単位時間あたりのパルス数を演算してもよい。
【0009】
また、第1の発明において、パルス数計測手段は、パルス一周期に対応する所定の出力変化として、パルスの立ち上がりエッジを判断することが好ましい。
【0010】
また、第2の発明は、供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、第1温度センサ及び第2温度センサからの信号値並びに流量センサの出力に応じて算出された流量に基づき、太陽熱温水器の加熱によって給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置において、流量センサの出力に応じて流量を算出する流量算出方法を提供する。この場合、流量算出方法は、液体の流量に応じたパルスを出力する流量センサの出力に基づいて、パルス一周期に対応する所定の出力変化をトリガーとして時間計測を開始する第1のステップと、所定の計測時間内に現れる出力変化に応じてパルスの個数をカウントする第2のステップと、計測時間の最後にカウントされた最終パルスを対象として、当該最終パルス一周期分のうち計測時間の終了後に残存する端数パルスを計測する第3のステップと、カウントされたパルスの個数と端数パルスとに基づいて単位時間あたりのパルス数を演算する第4のステップと、単位時間あたりのパルス数に基づいて、液体の流量を算出する第5のステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端数パルスを考慮することにより、単位時間あたりのパルス数を高い分解能で求めることができる。これにより、単位パルスの重みの影響を受けることなく、液体の流量を精度よく算出することができる。また、計測時間には、一周期相当のパルスが一つ以上含まれていればよいため、検出に要する時間は短くても足り、また、このようにした場合であっても、単位パルスの重みが影響するといった事態もない。これにより、削減熱量を算出するための流量を高精度かつ応答性よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる削減熱量算出装置5を含む太陽熱給湯システム1の構成を模式的に示す説明図
【図2】削減熱量算出装置5の構成を示すブロック図
【図3】削減熱量算出装置5のMPU51の構成を機能的に示す説明図
【図4】本実施形態にかかる流量算出に関する一連の手順を示すフローチャート
【図5】本実施形態にかかる流量算出処理を模式的に示す説明図
【図6】従来手法による流量算出処理を模式的に示す説明図
【図7】変形例に係る削減熱量算出装置を含む太陽熱温水システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態にかかる削減熱量算出装置5を含む太陽熱給湯システム1の構成を模式的に示す説明図である。太陽熱給湯システム1は、水道管11と、冷水管12と、温水管13と、混合水管14と、加熱水管15とを備えている。さらに、太陽熱給湯システム1は、太陽熱温水器2と、混合弁3と、給湯器4とを備えている。
【0014】
水道管11は、台所、洗面所、風呂、トイレ等の住宅用水道器具の各々に水を供給するものである。また、水道管11は、分岐されており、分岐箇所に冷水管12が接続されている。冷水管12は、水道管11を介して流れてくる冷水を太陽熱温水器2まで導くものである。
【0015】
太陽熱温水器2は、集熱器21と熱媒配管22と貯湯槽23とを有している。集熱器21は、日当たりの良い住宅の屋根などに設置され太陽熱を取り込んで熱媒を温めるものである。また、熱媒配管22は、集熱器21と貯湯槽23とを接続するものであり内部に熱媒が流れる構成となっている。熱媒は熱媒配管22を介して集熱器21と貯湯槽23とを循環する。貯湯槽23は、冷水管12からの冷水を導入すると共に、熱媒配管22を通じて流れてくる暖められた熱媒により冷水を加熱して予熱温水とし、貯湯しておくものである。
【0016】
温水管13は、貯湯槽23からの予熱温水を給湯器4側に供給するための配管である。この温水管13の終端には混合弁3が設置されており、温水管13からの予熱温水は混合弁3の温水流入口31から混合弁3に供給される。また、冷水管12は接続点Aにて分岐しており、冷水管12からの冷水は混合弁3の冷水流入口32を介して混合弁3に供給可能となっている。混合弁3は、後述の如く流入する予熱温水と冷水とを混ぜて混合水とする。
【0017】
混合水管14は、混合弁3の混合水流出口33と給湯器4とを接続する配管であり、混合水はこの配管14を介して混合弁3から給湯器4に供給される。なお、本実施形態において混合弁3は、混合水の温度が所定の温度となるように、温水と冷水との混合割合を自動的に調整する自動温度調節機能付湯水混合弁であるが、混合弁3の構成はこれに限られるものではない。
【0018】
給湯器4は、例えば、ガスバーナと熱交換器とを備えており、利用者等によって定められた温度の加熱水(即ち、湯)を生成するものである。この給湯器4は、住宅に設けられた給湯器用リモコン等と接続されており、給湯器用リモコン等から受信する制御信号に基づいて、例えば、電源オン、電源オフ、及び、生成する湯の温度が設定される。
【0019】
加熱水管15は、給湯器4と給湯側であるシャワー口等とを接続する配管である。給湯器4にて暖められた加熱水は、この加熱水管15を介して利用者等に供給されることとなる。
【0020】
以上の構成により、太陽熱給湯システム1は、水道管11からの冷水を太陽熱を利用した太陽熱温水器2によって予熱温水とし、これを給湯器4に供給するので給湯器4にて使用される燃料費や排出される二酸化炭素量等を削減することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る削減熱量算出装置5について説明する。削減熱量算出装置5は、太陽熱温水器2の利用によって削減された熱量を算出して積算表示するものであって、第1温度センサ51と、第2温度センサ52と、流量センサ53と、演算表示器54と、家内表示器55とを備えている。なお、削減熱量算出装置5は、熱量に加えて、ガス料金や二酸化炭素排出量を算出して積算表示する機能を備えていてもよい。
【0022】
第1温度センサ51は、冷水管12に配置され、太陽熱温水器2により加熱される前の水温、すなわち冷水の温度を検出するものである。第2温度センサ52は、温水管13に配置され、太陽熱温水器2により加熱されてから給湯器4に供給されるまでの配管内(すなわち温水管13内)の予熱温水の温度を検出するものである。
【0023】
流量センサ53は、温水管13に配置され、太陽熱温水器2から給湯器4に供給された予熱温水の流量を検出するものである。流量センサ53は、例えば羽根車式のものであり、予熱温水が流れてくることにより羽根車が回転し、この回転数に応じた数のパルスを出力する構成となっている。なお、以下において流量センサ53は羽根車式のものとして説明するが、これに限らず、流量センサ53は他の構成のものであってもよい。
【0024】
演算表示器54は、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量や二酸化炭素量を演算して積算表示する機能を有したものである。なお、表示機能に関しては、家内表示器55にも搭載されており、削減された熱量や二酸化炭素量は、演算表示器54及び家内表示器55に表示されることとなる。
【0025】
図2は、本実施形態に係る演算表示器54を示す構成図である。図2に示すように、演算表示器54は、マイクロプロセッサ(MPU)54aを備えている。MPU54aは、予め定められたプログラムに従って動作するものであり、CPU54a1と、ROM54a2と、RAM54a3とを備えている。
【0026】
CPU54a1は、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを実行するものである。ROM54a2は、CPU54a1にて実行するプログラム等を格納した読み出し専用のメモリである。RAM54a3は、各種のデータを格納すると共にCPU54a1の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリである。
【0027】
また、本実施形態においてROM54a2には、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量、燃料費及び二酸化炭素量を算出するためのプログラムが格納されている。このため、このプログラムを実行するCPU54a1は、削減された燃料費や二酸化炭素量を算出することとなる。
【0028】
さらに、削減熱量算出装置5は、メモリ部54bと、表示部54cと、インタフェース部54dとを備えている。
【0029】
メモリ部54bは、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能な記録媒体であり、CPU54a1の処理作業に必要な各種格納エリアを有する電気的消去/書き換え可能なメモリ(EEPROM)等が用いられる。
【0030】
表示部54cは、LCD、LED等が用いられ、例えば、削減熱量算出装置5の本体部に利用者等が目視可能に設けられている。この表示部54cは、CPU54a1により算出された削減熱量、削減二酸化炭素量、及び削減燃料費等の各種表示を行う。なお、本実施形態において表示部54cは、野外に設置された削減熱量算出装置5の本体部に設けられているが、これに限らず、家内表示器55のように家内に設けられてもよい。
【0031】
インタフェース部54dは、第1及び第2温度センサ51,52や流量センサ53と電気的に接続されており、各種センサ51〜53とMPU54aとの交信を可能としたものである。
【0032】
図3は、図1及び図2に示した演算表示器54の機能ブロック図である。図3に示すように、演算表示器54は、相関データ記憶部54eと、流量演算部54fと、削減熱量算出部54gとを備えている。
【0033】
相関データ記憶部54eは、流量センサ53から得られた出力(本実施形態ではパルス数)と流量との相関データを記憶したものである。具体的に相関データ記憶部54eは、流量センサ53から得られたパルス数から流量を算出するための算出式を相関データとして記憶している。
【0034】
流量算出部54fは、流量センサ53から出力が得られた場合に、相関データ記憶部54eにより記憶された相関データに基づいて、予熱温水の流量Qを算出するものである。
【0035】
削減熱量算出部54gは、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量、二酸化炭素量、及び燃料費等の各種削減熱量を算出するものである。具体的に削減熱量算出部54gは、流量算出部54fにより算出された流量Qと、第1温度センサ51により検出された冷水の温度と、第2温度センサ52により検出された予熱温水の温度とから、削減された熱量を算出する。また、削減熱量算出部54gは、削減熱量と給湯効率や燃料単価とから削減燃料費を算出する。同様に、削減熱量算出部54gは、削減熱量と給湯効率や単位燃料当たりの二酸化炭素発生量とから、削減二酸化炭素量を算出する。
【0036】
本実施形態の特徴の一つは、流量算出部54fによる流量Qに関する流量算出方法にあり、以下、その詳細な動作内容について説明する。流量算出部54fは、これを機能的に捉えた場合、パルス数計測手段54f1と、端数パルス計測手段54f2と、演算手段54f3とを有している。パルス数計測手段54f1は、パルス一周期に対応する所定の出力変化をトリガーとして時間計測を開始するとともに、所定の計測時間内に現れる出力変化に応じてパルスの個数をカウントする。端数パルス計測手段54f2は、前述の計測時間の最後にカウントされた最終パルスを対象として、当該最終パルス一周期分のうち計測時間の終了後に残存する端数パルスを計測する。演算手段54f3は、カウントされたパルスの個数と端数パルスとに基づいて単位時間あたりのパルス数を演算することにより、予熱温水の流量Qを算出する。
【0037】
図4は、本実施形態にかかる流量算出に関する一連の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、所定の周期で呼び出され、MPU51(流量算出部54f)によって実行される。
【0038】
まず、ステップ1(S1)において、流量算出部54fは、流量センサ53からの検出信号のモニタリングを開始し、パルスの立ち上がりエッジがあったか否かを判断する。本実施形態では、流量算出部54fが、パルス一周期に対応する所定の出力変化としてパルスの立ち上がりエッジを利用するため、本ステップ1により、立ち上がりエッジの有無が判断される。このステップ1において肯定判定された場合、すなわち、パルスの立ち上がりエッジがあった場合には、ステップ2(S2)に進む。一方、ステップ1において否定判定された場合、すなわち、パルスの立ち上がりエッジがない場合には、再度ステップ1の判断を行う。
【0039】
ステップ2(S2)において、流量算出部54fは、第1のタイマT1をスタートし、時間計測を開始する。すなわち、このステップ2により、1番目に現れたパルスの立ち上がりエッジをトリガーとして、第1のタイマT1による時間計測が開始される。
【0040】
ステップ3(S3)において、流量算出部54fは、モニタリング中の検出信号においてパルスの立ち上がりエッジが現れた場合には、それをエッジ数としてカウントする。なお、ステップ1において判断された立ち上がりエッジを当該エッジ数に含めることとし、エッジ数をカウントするカウンタの初期値は「1」とする。そして、このステップ3において立ち上がりエッジが判断された場合には、当該カウンタが「1」だけインクリメントされる。
【0041】
ステップ4(S4)において、流量算出部54fは、第1のタイマT1による計測時間が、予め規定された計測時間Tnに到達したか否かを判断する。このステップ4において肯定判定された場合、すなわち、第1のタイマT1が計測時間Tnに到達した場合には、ステップ5(S5)に進む。一方、ステップ4において否定判定された場合、すなわち、第1のタイマT1が計測時間Tnに到達していない場合には、ステップ3の処理に戻る。
【0042】
ステップ5において、流量算出部54fは、第2のタイマT2をスタートし、時間計測を開始する。すなわち、このステップ5では、第1のタイマT1が計測時間Tnに到達したことをトリガーとして、第2のタイマT2による時間計測が開始される。
【0043】
ステップ6(S6)において、流量算出部54fは、流量センサ53からの検出信号をモニタリングし、パルスの立ち上がりエッジがあったか否かを判断する。このステップ6において肯定判定された場合、すなわち、パルスの立ち上がりエッジがあった場合には、ステップ7(S7)に進む。一方、ステップ6において否定判定された場合、すなわち、パルスの立ち上がりエッジがない場合には、再度ステップ6の判断を行う。
【0044】
ステップ7において、流量算出部54fは、タイマT2を停止し、タイマT2による時間計測を終了する。このステップ7では、計測時間の最後にカウントされた最終パルスの次に現れるパルスの立ち上がりエッジ、すなわち、最終パルスに関する一周期の終点をトリガーとして、第2のタイマT2による時間計測が終了する。すなわち、タイマT2により計測された時間は、最終パルス一周期分のうち計測時間Tnの終了後に残存する端数パルスに関する時間を示すこととなる。
【0045】
ステップ8(S8)において、流量算出部54fは、カウントされたエッジ数(パルス数)と、計測時間Tnと、端数パルスに関する時間T2とに基づいて、単位時間あたりのパルス数を算出する。具体的には、この単位時間あたりのパルス数は、カウントされたエッジ数を、計測時間Tnに端数パルスに関する時間T2を加算した加算時間(Tn+T2)で除算することにより算出される。
【0046】
ステップ9(S9)において、流量算出部54fは、単位時間あたりのパルス数に基づいて、予熱温水の流量Qを算出する。流量算出部54fは、相関データ記憶部54eが記憶する相関データ(例えば、単位時間あたりのパルス数と、流量との対応関係を規定したマップ又は演算式)を参照し、当該単位時間あたりのパルス数から流量Qを一義的に算出するといった如くである。
【0047】
このように本実施形態において、流量算出部54fは、図5に示すように、流量センサ53からの検出信号に基づいて、パルスの立ち上がりエッジをトリガーとして時間計測を開始する(パルス数計測手段54f1)。流量算出部54fは、所定の計測時間Tn内に現れる立ち上がりエッジに応じて、パルスの個数に相当するエッジ数Ceをカウントする(パルス数計測手段54f1)。つぎに、流量算出部54fは、計測時間Tnの最後にカウントされた最終パルス(例えば、図5に示す5番目のパルス)を対象として、最終パルス一周期分のうち計測時間Tnの終了後に残存する端数パルスに関する時間T2を計測する(端数パルス計測手段54f2)。そして、流量算出部54fは、カウントされたエッジ数Ceと、計測時間Tnに端数パルスに関する時間T2を加算した加算時間(Tn+T2)とに基づいて、単位時間あたりのパルス数を演算する(演算手段54f3)。これにより、流量算出部54fは、単位時間あたりのパルス数に基づいて、流量Qを算出する(演算手段54f3)。
【0048】
図6は、従来手法による流量算出の概念を示す説明図である。従来手法によれば、パルスの立ち上がりエッジをトリガーとして時間計測を開始すると、予め規定された一定時間Ts内に現れるパルスの立ち上がりエッジの数Cpをカウントする。そして、一定時間Tsと、カウントしたエッジ数(パルス数)Cpとに基づいて、単位時間あたりのパルス数を演算し、これにより、流量が算出される。
【0049】
流量センサから出力される検出信号(時系列的なパルス列)において、低流量域では高流量域と比較して、単位時間あたりに含まれるパルス数が少ないこととなる。そのため、前述の一定時間Tsを大きく確保しないと、単位パルスあたりの重みが増し、流量の算出精度が低下するという虞がある。例えば、1秒間に10個の単位パルスが出力される場合、一定時間Tsを10秒とした場合には、パルス一周期相当の単位パルスは、パルス全体の1%に相当するといった如くである。そのため、例えば、立ち上がりエッジをカウントした直後に一定時間Tsが終了した場合であっても、その立ち上がりエッジが単位パルス相当としてカウントされてしまうため、単位パルスの重みの影響が大きい低流量領域では、流量に誤差として反映されてしまう。この場合、一定時間Tsを長く設定することで、単位パルスの重みを抑制することも考えられるが、1回あたりの流量算出の周期が長くなり、応答性が低下するという問題が生じる。
【0050】
この点、本実施形態によれば、流量算出部54fが、端数パルスに関する時間T2を考慮することにより、単位時間あたりのパルス数を高い分解能で求めることができる。これにより、単位パルスの重みの影響を受けることなく、温水流量Qを精度よく算出することができる。また、本実施形態によれば、計測時間Tnには、単位パルスが一つ以上含まれていればよいため、検出に要する時間は短くても足り、また、このようにした場合であっても、単位パルスの重みが影響するといった事態もない。これにより、削減熱量を算出するための流量Qを、流量センサ53からの出力に基づいて高精度かつ応答性よく算出することができる。
【0051】
また、本実施形態において、流量算出部54fは、パルスの立ち上がりエッジを、パルス一周期に対応する出力変化としている。かかる手法によれば、パルス一周期を電気的な検出信号として適切に捉えることができるので、単位時間あたりのパルス数を精度よく求めることができる。
【0052】
もっとも、パルス一周期に対応する出力変化は、パルスの立ち上がりエッジを用いずとも、パルスの立ち下がりエッジであってもよいし、パルス一周期のうち定義可能な任意の点であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、単位時間あたりのパルス数の演算において、端数パルスを考慮するために、端数パルスの時間T2としてこれを利用している。しかしながら、単位時間あたりのパルス数の演算は、カウントされたエッジの個数と、端数パルスとに基づいて行われれば足りる。例えば、まず、最終パルスの立ち上がりエッジから計測時間Tnの終了タイミングまでの第1の時間を計測し、この第1の時間と、端数パルスの時間T2とに基づいて、最終パルスに含まれる端数パルスの割合(端数パルスの時間T2/(第1の時間+端数パルスの時間T2))を演算する。そして、カウントされたエッジ数Ceから、最終パルスに含まれる端数パルスの割合を減算し、この減算値を計測時間Tnで除算することにより、単位時間あたりのパルス数を演算するといった如くである。
【0054】
なお、本実施形態に示す流量算出手法は、流量センサを用いて実際に流量を算出するシーンのみならず、例えば、流量センサの個体差を校正する校正時に利用することもできる。流量センサの校正時には、試験用の流路に流量センサを設置し、当該流路に規定の流量を流し、これに対応する流量センサからの出力に応じて流量を算出し、これを規定流量と比較することにより、校正データを得ることとなる。このような校正シーンにおいて、前述の流量算出の手法を適用することにより、流量を応答性よく算出することができ、また、これを精度よく検出することができる。これにより、一個の流量センサに関する適切な校正データを早期に得ることができるので、校正時における生産性の向上を図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態において第2温度センサ52及び流量センサ53は、以下のように配置されていてもよい。図7は、変形例に係る削減熱量算出装置5を含む太陽熱給湯システム1の構成図である。
【0056】
図7に示すように、第2温度センサ52及び流量センサ53は、混合弁3の下流側(より詳細には、混合弁3の下流側且つ給湯器4の上流側)に設けられていてもよい。この場合、流量センサ53は、予熱温水と冷水とが混合された混合水を検出対象水とし、この検出対象水の流量に応じた出力を行うこととなる。さらに、第2温度センサ52についても上記検出対象水の温度を検出することとなる。このように、図1に示した実施形態では太陽熱温水器2から供給される予熱温水を検出対象水とし、第2温度センサ52及び流量センサ53は、検出対象水である予熱温水の温度及び流量を検出していたが、特にこれに限らず、予熱温水と冷水とが混合された混合水を検出対象水として温度及び流量を検出してもよい。
【0057】
なお、補足すると、変形例のように構成したとしても、削減された熱量の算出については問題なく行うことができる。以下、具体的に説明する。まず、予熱温水が検出対象水の場合、予熱温水の流量がR1であり温度がT1であるとし、冷水の温度がT2であるとすると、削減された熱量は、(T1−T2)・R1に基づいて算出される。
【0058】
これに対して、混合水が検出対象水である場合、混合水の温度がT3であり流量がR3であるとすると、削減された熱量は、(T3−T2)・R3に基づいて算出される。ここで、T3={(T1・R1)+(T2・R2)}/(R1+R2)である。なお、R2は、予熱温水と混合された冷水の流量である。よって、R3=R1+R2である。
【0059】
そして、これら関係式からすると、(T3−T2)・R3は以下のようになる。すなわち、(T3−T2)・R3=T3・R3−T2・R3={(T1・R1)+(T2・R2)}−T2・R3={(T1・R1)+(T2・R2)}−T2・(R1+R2)=T1・R1−T2・R1=(T1−T2)・R1となる。よって、変形例のように構成したとしても、削減された熱量の算出については問題なく行うことができる。
【0060】
さらには、本実施形態と図7に示す変形例を組み合わせて、双方により削減された熱量を算出するようにしてもよい。
【0061】
以上、本実施形態では、太陽熱給湯システムを前提として、削減熱量算出装置を構成するMPUが、その一機能としての流量を算出する手法について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、太陽熱給湯システムへの適用のみならず、流路を流れる液体の流量を検出する手法として広く適用可能であり、前述した流量算出手法を実現する削減熱量算出装置及び流量算出方法そのものが本発明の一部として機能する。
【符号の説明】
【0062】
1 太陽熱給湯システム
13 温水管
2 太陽熱温水器
3 混合弁
4 給湯器
5 削減熱量算出装置
51 第1温度センサ
52 第2温度センサ
53 流量センサ
54 演算表示器
54e 相関データ記憶部
54f 流量演算部
54f1 パルス数計測手段
54f2 端数パルス計測手段
54f3 演算手段
54g 削減熱量算出部
55 家内表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び前記太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、前記太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、前記太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、前記検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサからの信号値並びに前記流量センサの出力に応じて算出された流量に基づき、前記太陽熱温水器の加熱によって前記給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置において、
液体の流量に応じたパルスを出力する前記流量センサの出力に基づいて、パルス一周期に対応する所定の出力変化をトリガーとして時間計測を開始するとともに、所定の計測時間内に現れる前記出力変化に応じてパルスの個数をカウントするパルス数計測手段と、
前記計測時間の最後にカウントされた最終パルスを対象として、当該最終パルス一周期分のうち前記計測時間の終了後に残存する端数パルスを計測する端数パルス計測手段と、
前記カウントされたパルスの個数と前記端数パルスとに基づいて単位時間あたりのパルス数を演算することにより、前記液体の流量を算出する演算手段と
を有することを特徴とする削減熱量算出装置。
【請求項2】
前記端数パルス計測手段は、前記端数パルスを、当該端数パルスに関する時間として計測しており、
前記演算手段は、前記カウントされたパルスの個数と、前記計測時間に前記端数パルスに関する時間を加算した加算時間とに基づいて、前記単位時間あたりのパルス数を演算することを特徴とする請求項1に記載された削減熱量算出装置。
【請求項3】
前記端数パルス計測手段は、前記端数パルスを、前記最終パルスにおける端数パルスの割合として計測しており、
前記演算手段は、前記カウントされたパルスの個数と、前記端数パルスの割合と、前記計測時間とに基づいて、前記単位時間あたりのパルス数を演算することを特徴とする請求項1に記載された削減熱量算出装置。
【請求項4】
前記パルス数計測手段は、前記パルス一周期に対応する所定の出力変化として、パルスの立ち上がりエッジを判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された削減熱量算出装置。
【請求項5】
供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び前記太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、前記太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、前記太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、前記検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサからの信号値並びに前記流量センサの出力に応じて算出された流量に基づき、前記太陽熱温水器の加熱によって前記給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置において、前記流量センサの出力に応じて流量を算出する流量算出方法であって、
液体の流量に応じたパルスを出力する前記流量センサの出力に基づいて、パルス一周期に対応する所定の出力変化をトリガーとして時間計測を開始する第1のステップと、
所定の計測時間内に現れる前記出力変化に応じてパルスの個数をカウントする第2のステップと、
前記計測時間の最後にカウントされた最終パルスを対象として、当該最終パルス一周期分のうち前記計測時間の終了後に残存する端数パルスを計測する第3のステップと、
前記カウントされたパルスの個数と前記端数パルスとに基づいて単位時間あたりのパルス数を演算する第4のステップと、
前記単位時間あたりのパルス数に基づいて、液体の流量を算出する第5のステップと
を有することを特徴とする流量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−36712(P2013−36712A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174761(P2011−174761)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)