説明

前田モデルIV

【課題】窪地を埋め戻した後、内湾に住む多品種の生物による生態系連鎖の水質浄化能力を再生する方策を提供する。
【解決手段】消波・根固め効果が河川護岸工事で立証されている繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込むことで、本来なぎさで行われていた生態系の連鎖を促す水中環境を作り、壊滅状態の多品種の生物が生育可能な環境へ変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込む製品
【背景技術】
【0002】
全国の内湾には、土砂採取によってできた浚渫窪地が多数存在し、この窪地には、生活排水や工業排水が淀み、生活排水や工業排水から発生する硫化水素水の貧酸素状態が危険な濃度となっており、窪地及び周辺海域の底生動物が死滅したり、潮流や風向きに誘発されて窪地の水が海水面に浮遊して発生する「青潮」の漁業への影響が問題視されている。現在、陸域における排水処理や流入水の規制などの対策や、内湾の水質浄化能力を再評価する研究成果から干潟や藻場の保全・再生が検討されているが、長い時間を要する方策のみならず急ぎ窪地を埋め戻す重要性が指摘されるようになってきた。窪地を埋め戻すについては、埋め戻す材料の考察の他、埋め戻した後の平滑な海底において、従前の細砂底と埋め戻し材との接点や埋立岸壁前で起こる砕波と引き波に因る洗掘窪地が新に発生する弊害が予測でき、それを緩和し、同時に潮下帯(浅海域)に生態系蘇生を促す方策を行う緊急性が要求されている。
【発明の開示】

【発明が解消しようとする課題】
[窪地の埋め戻し後の内湾の水質浄化能力向上]
内湾に住む多品種の生物による生態系連鎖の水質浄化能力は、古来からの内海の埋立行為も含め、長い時間をかけて補正しながら、人と自然の共生が保たれてきたが、昭和30年代以降の高度成長による内海の開発スピードは、自然界の補正能力が追いつかず生態系が再生不能に近い状況になってきている。この現象を早くから専門家が指摘しながらも、国民が理解したのは、壊滅的な症状を目の当たりに見た、開発後50年を経ての今日である。今は、この50年間蓄積してきた技術ストックから、壊滅的な症状を急ぎ手当てするのが急務と考える。本発明は、繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込むことで、本来なぎさで行われていた生態系の連鎖を促す水中環境を作り、壊滅状態の生物が再生可能な環境へと変えることである。
【課題を解決するための手段】
[人工あまも場 例4t/基 基準形]
繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込む。炭素繊維製擬似あまもは、繊維製蛇篭の底面センターから約1800mm上の網目に約5mmの炭素繊維の組紐、約1000mmの長さで50本束を30箇所、約300mmピッチで円周を回る様に織り込み、その上段300mm上の網目に約5mmの炭素繊維の組紐、約700mmの長さで50本束を20箇所、約400mmピッチで円周を回る様に織り込み、その上段300mm上の網目に約5mmの炭素繊維の組紐、約400mmの長さで50本束を15箇所、約550mmピッチで円周を回る様に織り込み、その上段300mm上の網目に約5mmの繊維の組紐、約200mmの長さで50本束を10箇所、約900mmピッチで円周を回る様に織り込んでおくと、中込材を詰めて蛇篭を据えた時上面に75株のあまも場が完成する。このあまも場は、大型海草の胞子が海を漂う秋口までに設置を完了させれば翌年の春には自然界の藻場の形成が可能となる。
[人工なぎさを形成]
水際線にある岩場は、寄せる波に洗われ岩肌を削られていたが、現在人工的に海に構築されている土木構造物は、昭和50年代から構築した消波提に代表されるように、構築後30年を経て砕波と引き波の洗掘から、基礎構造下の砂が吸い出され本体の土木構造を破壊するに至っている。この現象は、河口域に生活の場を広げた結果、洪水対策で河川の水位調整をするために建設したダムにより、陸域の砂礫を海に流さず堰き止めることとなり、水際線を痩せさせて、自然界にも影響を及ぼしている。この自然界の連鎖が、自然のなぎさを海側で洗掘させ、なぎさ水域の減少によって藻場が極端に減少してきた。藻場の役割は、生態系連鎖の棲家のみならず、なぎさの砂礫を舞い上げたり吸い出したりする波の運動をしなやかに和らげる役割も担っていた。繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込むことにより、人工藻場を形成することは、なぎさの水域の保全となり、しいては自然な藻場の育成を促し、更に海側の洗掘の進出を阻止する役割を担うことが可能となる。
【発明の効果】
[日本の海水域の保全]海は、日本の四方にあって、古来より日本人の共通の心の財産であり、文化と文明を育んできたが、高度経済成長の時代にあって、文明の域でこの50年間は大いに活躍してきた。この50年間目に見える活躍の影で、目に見えない影響が進み、今たくさんの問題が顕著に見えてきた。これからは、持続可能な時代へ変化させる必要があり、文化の域で海が活躍することを求められている。人工あまも場と人工なぎさの形成は、本来海が持っている姿を取り戻すために、極端に痛んだ場所に現在のストックされた技術で保全する役割を担うことである。
【特許を実施するための最良の形態】
[なぎさ水域における設置]水際線にある、自然界のあまも成育水域すべて。極端に痛んだ場所としては、浚渫窪地と洗掘窪地の埋め戻し後の周辺浅海域。
【実施例】
なし
【産業上の利用可能性】
[炭素繊維製擬似あまも]炭素繊維の生態系との相性は、既に研究室からフィールド実験で確認されているが、炭素繊維を製作している業界の提案から更なる生態系と相性のよい形態の改良を含め技術革新の一端を担う可能性が期待できる。
[都市近海の漁業]人工あまも場や自然の藻場の形成は、近海漁業の生産性を高め、豊かな海の恵みを国民にもたらす可能性が期待される。
[海上工事]海上の工事については、現行の海洋工事に従事する技術保持企業が請負うことで実行可能であるが、更なる近自然工法の新たな技術革新につながる。

〔符号の説明〕
なし
〔書類名〕図面
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消波・根固め効果も河川護岸丁事で立証されている繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込む製品
【請求項2】
繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込む製品に中詰め材(コンクリート塊等)を充填して消波・根固めブロックを作り、潮下帯(浅海域)に投下して人工あまも場を創設し、閉鎖性海域の生態系蘇生を促す人工のなぎさを形成する工法
【請求項3】
繊維製蛇篭に炭素繊維製擬似あまも(海草)を組み込む製品に中詰め材(コンクリート塊)を充填して消波・根固めブロックを作り、埋立岸壁前の潮下帯(浅海域)に沈床防波堤として設置して人工あまも場を創設し、砕波と引き波による洗掘を和らげる工法

【公開番号】特開2010−101143(P2010−101143A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287130(P2008−287130)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(508263523)株式会社エコイーゼル (5)
【Fターム(参考)】