説明

前立腺がんを検出する方法

【課題】前立腺がんを検出するための他の診断方法と一致したメチル化遺伝子の調査、および、これらの方法を用いるためのキットの提供。
【解決手段】尿サンプルで、S100遺伝子のみ;GSTP1遺伝子、APC遺伝子、および、RARβ2遺伝子からなる群から選択される更にもう1個の遺伝子のみ;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;のメチル化状態を検出することを含む、尿サンプルにおける前立腺がんを検出するための方法、およびキット。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は、他の診断方法と一致したメチル化遺伝子の調査、および、これらの方法と共に用いるためのキットに関する。
【0002】
高等真核生物では、DNAは、CpGジヌクレオチド中グアノシンの5’端側に位置するシトシンでのみメチル化される。この修飾は、特に、遺伝子プロモーター領域に位置するCpG豊富な区域(CpGアイランド)を伴う場合、遺伝子発現に対して重要な制御効果を有する。通常非メチル化であるCpGアイランドの異常なメチル化は、不死化され、かつ形質転換された細胞において頻繁な事象であり、そのことは、特定の腫瘍抑制遺伝子、もしくは特定のヒトのがんの改善に別様に関連する遺伝子の転写不活性化に関連してきた。
【0003】
多くの可能性のあるメチル化マーカーが、近年明らかにされてきた。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione S-transferases)(GST)は、発現する遺伝子のメチル化状態が、前立腺がんに対して重要な予後価値および診断価値を有することができる典型的なタンパク質である。そのタンパク質は、化学的反応性のある親電子分子をグルタチオンに結合することによって、親電子性の発がん物質を不活化することを含む細胞内解毒反応を触媒する(C. B. Pickett他、Annu. Rev. Blocbern.、第58巻第743頁、1989年;B. Coles他、CRC Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol.、第25巻第47頁、1990年;T. H. Rushmore他、J. Biol. Chem.、第268巻第11475頁、1993年;参照)。ヒトGSTは、異なる遺伝子座にあるいくつかの異なる遺伝子によってコードされており、α、μ、π、および、θと呼ばれる4つのファミリーに分類されてきた(B. Mannervik他、Biochem. J.、第282巻第305号、1992年参照)。エピジェネティックな変化の結果GSTP1の発現が減少することは、しばしば、前立腺がんおよび肝がんに関係している。
【0004】
S100タンパク質は特に腫瘍形成にかかわるカルシウム結合タンパク質である。そのファミリーには、S100A2、S100A4、S100A5、S100A6、S100A8、S100A9、および、S100A11が含まれ、そのタンパク質はすべて、正確には役割は定かではないが、腫瘍発生に何らかの関係があることが示されてきた。前立腺がん発生では、S100A6[カルサイクリン(calcylin)]の発現が明らかに低下している。乳がん、肺がん、および、前立腺がんでは、S100A2は同様に、低下した発現を示すことがわかってきた。このことは遺伝子プロモーターの過剰メチル化のためであると信じられているが、非悪性前立腺上皮組織およびBPH(前立腺肥大症)においても過剰メチル化が観察されるため、状況は明らかではない。
【0005】
サンプル収集およびサンプル準備は、エピジェネティックな検査において重要な要素である。いずれのサンプル源にもその問題がある。罹患組織から直接に採取された生検サンプルでさえ、罹患細胞が不均一に分布しているために、偽陰性の結果を示す可能性が存在することが知られている。尿は、他の見込みのある多くのサンプルより、あまり侵襲的でなく採取可能であるため、望ましいサンプルである。尿に放出された前立腺がん細胞の数と濃度は、多くの要因によって、極めて変動的でありうる。その要因とは、例えば、尿が収集される際に、前立腺マッサージにしたがって収集されるかどうかということ、ならびに、核酸分解酵素の存在と影響、および、その影響を最小化する試薬と方法である。
【0006】
尿サンプルの前立腺がん検査がいくつか提示されてきたが、実際にこのような検査を実現することは難しいということが証明されてきた。まず、このような検査の根拠は、泌尿器系への腫瘍または病変由来のがん細胞の脱落(shedding)であると考えられている。このプロセスについては、実際にはほとんどのことが知られていない。分析対象の濃度も、患者が水和される度合いといった広範囲の生理学的要因と環境要因に応じて、他のサンプル、例えば組織生検および、さらには血清サンプルにおけるより、かなり劇的に変動する可能性が高いように思われる。核酸分解酵素の存在、および、核酸に影響を与えることのできる他のさまざまな物質の存在を考慮すると、基質における分析対象の安定性もあまり理解されていない。他の多くの尿解析のためのサンプル準備では、沈降物と呼ばれている沈降させたサンプルを用いる。これがメチル化マーカーに対して意味のあることなのかどうかは、先験的には想定できないことである。
【0007】
患者準備や前処理の選択も、あまりよく理解されていない。直腸内触診(digital rectal examinations)(DRE)は、医者が解剖学的な異常に気付くような、前立腺の健康を決定するための標準的な診断方法である。これまでDREの結果は、生検または他の診断方法もしくは治療方法が必要であるかどうかを決定するために用いられてきた。DREまたは関連した前立腺マッサージといった方法が、その後の診断方法で検出することができるように細胞を排出させるかどうか、そして、どの程度排出させるかということは不明確であった。DREおよび指による直腸マッサージ(digital rectal massage)ならびにそれらが実施される時間は、方法的にかなり異なることがありうるが、この分野における未知のものの一覧を更に付け加えた。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明に係る一態様において、患者の前立腺がんを特徴付けるための方法は、収集して3日以内の尿において、GSTP1のメチル化、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子を解析することを含む。その解析は、GSTP1のメチル化程度が所定の値を超えているならば、前立腺がんに対して陽性であり、メチル化程度が所定の値を超えていなければ、前立腺がんに対して陰性であるとみなされる。
【0009】
本発明に係る別の態様において、患者の前立腺がんを特徴付けるための方法は、収集して3日以内の尿において、GSTP1のメチル化、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子、および、S100遺伝子を解析することを含む。GSTP1の標準化された値は、GSTP1メチル化の解析値をS100メチル化の解析値と比較することで決定される。その解析は、標準化されたメチル化の解析値が所定の値を超えているならば、前立腺がんに対して陽性であり、解析値が所定の値を超えていなければ、前立腺がんに対して陰性であるとみなされる。
【0010】
本発明に係る更に他の態様において、患者の前立腺がんを特徴付けるための方法は、ネステッドPCR反応(nested PCR reaction)として実行される、GSTP1のメチル化、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子を解析することを含む。その解析は、GSTP1のメチル化程度が所定の値を超えているならば、前立腺がんに対して陽性であり、メチル化程度が所定の値を超えていなければ、前立腺がんに対して陰性であるとみなされる。
【0011】
本発明に係る更に他の態様において、以下の遺伝子パネルに係るメチル化が検出される。
a. GSTP1、APC
b. GSTP1、APC、S100A2
c. GSTP1、RARβ2
d. GSTP1、RARβ2、S100A2
パネルは対照遺伝子を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る更に他の態様において、メチル化状態は定量リアルタイムPCRによって決定される。
【0013】
更に他の態様において、本発明はメチル化核酸の検出のために有用なキットである。そのキットは、1個もしくはそれ以上の容器を含み;第1の容器は、非メチル化シトシンを修飾する試薬を含むものであり、第2の容器は、CpGを含む核酸の増幅を始動させる(primes)試薬であって、修飾されたメチル化核酸を非メチル化核酸と区別する、試薬を含むものである。そのキットは前立腺がんを有する疑いのある患者に対して解析を実施するための使用説明書を含む。
【0014】
本発明に係るさらに他の態様において、キットは、別々の構成要素を有する反応容器を含む。その容器は、プライマーが最初に保管され、そして、そのキットを使用する間、メチル化状態が適切に検査できるように、設定された配列にしたがって、プライマーを反応チャンバー中に染み出させるものである。そのプライマーはネステッドな増幅反応を実施するためのものであることができる。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
本発明に係る尿に基づく解析は、好ましくは、結果を決定するにはあいまいな、もしくは、結果を決定するには難しいPSA(前立腺特異抗原)解析を受けた患者に対して実施される(最も好ましくは、2.5〜4.0ng/mLである)。本発明の解析を用いる陰性の結果(他の診療上の指標がない場合)は、生検法を伴うような、より侵襲的な検査の患者を斟酌することができる。ゆえに、このように最も包括的な観点では、本発明に係る1つの方法は、まず、PSA検査を患者に対して実施し、それから、2.5〜4.0ng/mLと解析されたPSA濃度を有するこれらの患者に対して、以下のとおり、より十分に説明された解析を実行することを含む。
【0016】
本発明に係る解析は、メチル化状態が前立腺がんと相互に関係する、特定の遺伝子に対応する核酸の過剰メチル化を検出する。このような遺伝子のメチル化状態が前立腺がんについての情報を提供し、そして、その配列が、その遺伝子もしくはその相補体(complement)のコード部分、その遺伝子もしくはその相補体の代表部分、その遺伝子もしくはその相補体のプロモーター、すなわち制御配列、その遺伝子もしくはその相補体の存在を示す配列、または、その遺伝子もしくはその相補体の全長配列である場合、核酸はメチル化状態が前立腺がんと相互に関係する遺伝子に対応する。本明細書において、このような核酸はマーカーと呼ばれる。マーカーは以下の遺伝子にのみ対応する。その遺伝子は、GSTP1(配列番号17)、APC(プロモーター:配列番号18、遺伝子:配列番号19)、RARβ2(配列番号20)、S100A2(配列番号21)である。他の目的配列には、解析の対照として有用な構成遺伝子を含む。例えば、それらはβアクチン(配列番号22と23)、および、PTGS2(プロモーター:配列番号24、遺伝子:配列番号25)である。
【0017】
過剰メチル化を検出するための解析は、MSP(メチル化特異的PCR)、および、制限エンドヌクレアーゼ分析のような技術を含む。プロモーター領域は、このような過剰メチル化分析を検出するための、特に顕著な標的である。GSTP1のプロモーター領域の配列分析によると、ヌクレオチドのおよそ72%がCGであり、約10%がCpGジヌクレオチドであることが明らかになった。
【0018】
本発明は、尿または尿道洗浄における、マーカーの特定領域のメチル化状態を決定することを含む。それによって、前立腺がんと関連するDNAが、増幅され、検出される。マーカーによってコードされるタンパク質の濃度低下(すなわち、転写不足)は、しばしば、プロモーターのような特別な領域の過剰メチル化の結果であり、このような領域が過剰メチル化されているかどうか決定することは望ましいことである。このことはGSTP1遺伝子の場合において、そして、〔発明の概要〕中に示したパネルにおいて、最もはっきりと分かる。特定のマーカー領域特異的な核酸プローブまたはレポーターが、マーカー遺伝子のメチル化領域の存在を検出するために用いられる。過剰メチル化領域は、異常組織由来のサンプルにおいて、正常組織と比較して統計的に有意な程度にメチル化されている。
【0019】
以上に述べたように、尿は、本発明の解析を実施する基質である。最も好ましくは、尿は前立腺マッサージの後に収集され、沈降されるまで4℃で保管される。最も好ましくは、4時間以内に沈降される。
【0020】
前立腺マッサージは、本発明に係るメチル化分析と組み合わされて実施される場合、最善には以下のとおり実施される。前立腺細胞の十分な数が放出されるのを確実にするために、基部から頂端までの表面、および、各小葉に対する側線から中心線までの表面を押し下げるのに十分なほど、腺をしっかり押さえる。このマッサージ法は、20秒またはそれ以下の間、実施するのが最も好ましい。
【0021】
本発明に係る、プライマー/プローブまたはレポーター試薬のうちいくつかは、マーカー遺伝子の発現制御配列のメチル化を検出するために用いられる。これらは、核酸配列の転写、および、いくつかの場合には、核酸配列の翻訳を制御する核酸配列である。このように、発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAを適切に翻訳するための遺伝子の正しい読み枠の維持、および、停止コドンにかかわる配列を含むことができる。
【0022】
GSTP1プロモーターは最も好ましいマーカーである。グルタチオン−S−トランスフェラーゼタンパク質を産生するために遺伝子の転写を指示しうるのは、ポリヌクレオチド配列である。そのプロモーター領域は、上流、すなわち構造遺伝子の5’端側に位置している。それは、プロモーターに依存した遺伝子発現を、細胞型特異的に、組織特異的に、または、外部シグナルもしくは試薬によって誘導されるように、制御可能にするのに十分である要素を含んでもよい。このような要素は、ポリヌクレオチド配列の5’端または3’端領域に位置されてもよい。
【0023】
本発明に係る1つの方法は、核酸に結合する試薬と、マーカーを含んでいる標的細胞を接触させることを含む。標的細胞構成要素は、タンパク質のまったくない純DNAを産出する細胞溶解、および、(カラムもしくは溶液に基づく)精製によって、尿から抽出されたDNAのような核酸である。その試薬には、PCRまたはMSP反応を始動させ、精査し、かつ、標的配列を検出する構成要素を含む。このような試薬は、それら自身のレポーター断片と組み合わされるか、または、結合されたプライミング配列を含む。これらの断片は、例えば、スコーピオン試薬(Scorpion reagents)、または、スコーピオンレポーター(Scorpion reporters)と呼ばれるものであり、Whitcombe他に対する米国特許第6,326,145号、および、同第6,270,967号に記載されている(参照により全体を本明細書に組み入れる)。同じものではないが、「プライマー(primer)」と「プライミング配列(priming sequences)」は、本明細書において、核酸配列の増幅を始動させる分子もしくは分子の一部について述べるために用いられてもよい。
【0024】
メチル化のパターンを検出する感度の高い1つの方法は、メチル化感受性酵素の使用とポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)(PCR)とを組み合わせることを含む。DNAを酵素で消化した後、DNAの分裂がメチル化によって妨げられる場合のみ、PCRは制限部位に隣接するプライマーから増幅するだろう。本発明に係るPCRプライマーは、GSTP1の転写開始部位から、ゲノム位置番号M24485(Genbank)にしたがって、およそ−71〜+59bpの間にあるプロモーター領域および転写領域を標的として設計される。
【0025】
本発明に係る方法は、核酸を含む標本に非メチル化シトシンを修飾する物質(agent)を接触させること;CpG特異的オリゴヌクレオチドプライマーによって、その標本におけるCpGを含む核酸を増幅すること;および、メチル化核酸を検出すること;を含む。好ましい修飾は、非メチル化シトシンをメチル化シトシンと区別するだろう他のヌクレオチドに、その非メチル化シトシンを置換することである。好ましくは、その物質は非メチル化シトシンをウラシルへ修飾するものであり、そして、その物質は亜硫酸水素ナトリウムである。しかしながら、非メチル化シトシンを修飾するが、メチル化シトシンを修飾しない他の物質も用いることができる。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)修飾は、最も好ましいものである。そして、それはすぐにシトシンの5,6−二重結合に反応するが、メチル化シトシンにはほとんど反応しない。シトシンは亜硫酸水素イオンと反応し、脱アミノ化に対して感受性があるスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを生じさせる。スルホン基はアルカリ条件下で除去することができ、その結果ウラシルを形成する。ウラシルは、Taqポリメラーゼによってチミンとして認識され、それゆえに結果産物は、PCRにおいて、開始テンプレートで5−メチルシトシンが生じた場所にのみ、シトシンを含むことになる。スコーピオンレポーター、および、スコーピオン試薬、ならびに、他の検出システムも、このやり方で処理することで、同様に修飾種を非修飾種と区別する。
【0026】
本発明において、標本のCpGを含む核酸の増幅のために用いられるプライマーは、(例えば、亜硫酸水素塩で)修飾後、未処理のDNAと、メチル化DNAと、非メチル化DNAとを特に区別する。メチル化特異的PCR(methylation specific PCR)(MSPCR)において、非メチル化DNAのためのプライマーまたはプライミング配列は、好ましくは、メチル化DNAにおいて保持されているCと区別するために、3’CG対においてTを有するものであり、相補鎖はアンチセンスプライマーとして設計される。非メチル化DNAのためのMSPプライマーまたはプライミング配列は、通常、配列中に比較的わずかなCまたはGを含むものである。そのCはセンスプライマー中には存在しないものであるだろうし、Gはアンチセンスプライマー中には存在しないものであるだろうからである。[CはU(ウラシル)へ修飾され、これは、増幅産物中ではT(チミジン)として増殖される。]
【0027】
本発明に係るプライマーは、多型遺伝子座において、顕著な数の核酸の重合の特異的な開始を提供するために十分な長さの、オリゴヌクレオチド、および、適当な配列である。適当なプローブもしくはレポーターにさらされたならば、増幅された配列はメチル化状態と、それから診断情報を明らかにする。
【0028】
好ましいプライマーは、プライマー伸張産物の合成を開始することができる、最も好ましくは、8個もしくはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド、または、リボヌクレオチドである。それは実質的に多型遺伝子座鎖と相補的である。合成を実行する環境条件は、ヌクレオシド三リン酸、および、DNAポリメラーゼのような重合物質、ならびに、適切な温度およびpHの存在を含む。プライマーまたはプライミング配列のプライミング断片は、好ましくは、増幅における最大効率のために一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。二本鎖である場合、プライマーは伸張産物の準備に用いる前に、まずその鎖を分離する処理がなされる。プライマーは重合を誘導する試薬の存在下で、伸張産物の合成を始動させるのに十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、バッファー、カチオン、および、ヌクレオチド組成物のような要因に依存するだろう。オリゴヌクレオチドプライマーは、最も望ましくは、約12〜20のヌクレオチドを含む。しかしながら、好ましくは周知の設計ガイドラインまたは設計ルールにしたがって、そのプライマーは、より多くの、または、より少ないヌクレオチドを含んでもよい。
【0029】
プライマーは、増幅されるためにゲノム遺伝子座の各鎖と実質的に相補的に設計され、前述したように、適当なGもしくはCヌクレオチドを含む。このことは、重合のための物質が機能することができる条件下で、それぞれの鎖とハイブリダイズするために、プライマーが十分に相補的でなければならないということを意味する。別の言葉で言えば、プライマーは、ゲノム遺伝子座にハイブリダイズし、かつその増幅を可能にするために、5’端および3’端に隣接する配列と十分な相補性を有するべきである。
【0030】
プライマーは増幅過程において用いられる。すなわち、反応ステップの数と比較して、より多量の標的遺伝子座を生成する反応(好ましくは、酵素的な連鎖反応)を伴う。最も好ましい実施形態において、反応は指数関数的により多量の標的遺伝子座を生成する。このような反応にはPCR反応を含む。一般的に、1つのプライマーはその遺伝子座のマイナス(−)鎖と相補的であり、その他のものはプラス(+)鎖と相補的である。酵素[例えば、DNAポリメラーゼI(クレノウ)の大きな断片、および、ヌクレオチド]による伸張が後に続く、変性した核酸に対するプライマーのアニーリングは、結果的に標的遺伝子座配列を含んだ新たに合成された+鎖および−鎖を生ずる。連鎖反応の産物は、採用された特異的なプライマー端に対応する末端を有する別々の二本鎖核酸である。
【0031】
プライマーはあらゆる適当な方法、例えば、自動化された方法を含む従来のホスホトリエステル法、および、ホスホジエステル法を用いることで、準備されうる。このように自動化された1つの実施形態において、ジエチルホスホラミダイト(diethylphosphoramidites)が開始材料として用いられ、Beaucage他によって説明されたように合成されてもよい(Tetrahedron Letters、第22巻第1859頁〜第1862頁、1981年参照)。改良された固体担体におけるオリゴヌクレオチドの合成方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0032】
尿もしくは尿道洗浄により採取された、精製された核酸標本もしくは精製されていない核酸標本は、標的遺伝子座(例えば、CpG)を含む特異的な核酸配列を含んでいる場合、もしくは、その核酸配列を含んでいる疑いがある場合には、いずれも開始核酸として利用することができる。このように、そのプロセスには、例えば、DNA、もしくは、メッセンジャーRNAを含むRNAを採用してもよい。DNAまたはRNAは、一本鎖または二本鎖でもよい。RNAがテンプレートとして用いられる場合、そのテンプレートをDNAへ逆転写するために最適な、酵素、および/または、条件が利用されるだろう。その上、それぞれの1つの鎖を含むDNA−RNAハイブリッドを利用してもよい。核酸の混合液も採用してもよい。あるいは、本発明において述べてきた増幅反応によって生成された核酸が、同じプライマー、もしくは、異なったプライマーを用いて利用されてもよい。増幅された特異的な核酸配列、すなわち標的遺伝子座が、より大きな分子の区画であってもよいし、あるいは、特異的な配列が核酸全体を構成するように、最初は別々の分子として存在することができる。
【0033】
もし抽出されたサンプルが不純であるならば、サンプルの細胞、流動体、組織、もしくは、動物細胞膜を開裂するために、そして、核酸の鎖を露出し、かつ/もしくは、分離するために、効果的な試薬量によって、増幅の前に処理されうる。鎖を露出し、分離するための、この溶解と核酸変性のステップは、増幅をかなり容易に起こさせるだろう。
【0034】
サンプルの標的核酸配列が2つの鎖を含むならば、テンプレートとして用いうる前に、核酸の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、分離ステップとして、もしくは、プライマー伸張産物の合成と同時に、のいずれかで、もたらすことが可能である。この鎖分離は、物理的な、化学的な、もしくは、酵素的な手段を含む、さまざまな適切な変性条件を用いることで達成することができる。核酸鎖を分離する1つの物理的な方法は、変性するまでその核酸を加熱することを伴う。一般的な熱変性には、10分までの間、約80〜105℃の範囲の温度を伴ってもよい。鎖分離はまた、ヘリカーゼとして知られる酵素類由来の酵素、すなわち、酵素RecAによって誘導されてもよい。その酵素は、ヘリカーゼ活性を有し、リボATPの存在下でDNAを変性させることが知られている。ヘリカーゼを用いた核酸の鎖分離に適切な反応条件は、Kuhn Hoffmann-Berlingによって説明されている(CSH-Quantitative Biology、第43巻第63頁、1978年参照)。RecAを用いるための技術はC. Raddingによって概説されている(Ann. Rev. Genetics、第16巻第405〜437頁、1982年参照)。これらの技術の改良もまた、いまや周知である。
【0035】
核酸の相補鎖が分離される際、その核酸がもともと二本鎖または一本鎖であったかどうかに関わらず、分離された鎖は更なる核酸鎖の合成のためのテンプレートとして、すぐに用いることができる。この合成は、プライマーのテンプレートへのハイブリダイゼーションが起こることを許容する条件下で実行される。概して合成は緩衝された水溶液の中で、好ましくはpH7〜9、最も好ましくはpH約8で起こる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーのモル過剰(ゲノム核酸の場合、通常はプライマー:テンプレートは、約10:1である)を、好ましくは、分離されたテンプレート鎖を含むバッファーに加える。発明のプロセスが診断的適用に用いられる場合、相補鎖の量がわからないかもしれない。そのため、相補鎖の量に対するプライマー量は、必ずしも確実に決定することができない。しかし実際問題として、増幅するべき配列が複雑な長い鎖の核酸鎖の混合液の中に含まれる場合、加えられるプライマーの量は、概して相補鎖(テンプレート)の量を超えてモル過剰であるだろう。そのプロセスの効率を改良するために、大きなモル過剰が好まれる。
【0036】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸、dATP、dCTP、dGTP、および、dTTPは、合成のための混合液に、プライマーと別々に、もしくは、プライマーとともに、適当量加えられる。そして、結果得られた溶液は、10分までの間、好ましくは、1〜4分間、約90〜100℃まで加熱される。この加熱期間の後、プライマーハイブリダイゼーションに好ましい室温まで、溶液を冷却することができる。冷却された混合液に、プライマー伸張反応をもたらすために適当な物質(「重合のための物質」)を加え、反応を本技術分野において既知の条件下で起こすことができる。重合のための物質は、耐熱性であるならば、他の試薬とともに加えられてもよい。この合成(すなわち、増幅)反応は、室温から重合のための物質がもはや機能しない温度までで起こってもよい。
【0037】
重合のための物質は、プライマー伸張産物の合成を達成するために機能するだろう、あらゆる化合物またはシステムであってよく、好ましくは酵素である。この目的のための適切な酵素は、例えば、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ変異体、逆転写酵素、および、他の酵素を含む。その他の酵素には、耐熱性酵素(例えば、変性を起こすために十分に上昇させられた温度にさらされた後も、プライマー伸張を行う酵素)が含まれる。好ましい物質は、Taqポリメラーゼである。適切な酵素は、各遺伝子座の核酸鎖に対して相補的なプライマー伸張産物を形成するために適当な方法で、ヌクレオチドの結合を促進するだろう。概して合成は、各プライマーの3’端で開始され、合成が終了するまで異なった長さの分子を生成しながら、テンプレート鎖に沿って5’端の方向に進行するだろう。しかし、上記と同じプロセスを用いて、5’末端で合成を開始しもう一方の方向へ進行するような、重合のための物質であってもよい。
【0038】
最も好ましくは、増幅方法はPCRによる。本発明に係るプライマーを用いてPCRで増幅された、メチル化遺伝子座または非メチル化遺伝子座が、その他の方法で同様に増幅される限り、その他の増幅方法もまた採用することができる。このような最も好ましい1つの実施形態において、解析はネステッドPCRとして実施される。ネステッドPCR法において、2段階またはそれ以上のポリメラーゼ連鎖反応がなされる。1段階目のポリメラーゼ連鎖反応において、特定の第1標的ヌクレオチド配列の5’端位置および3’端位置それぞれに隣接する上流プライマーおよび下流プライマーからなる、外側のオリゴヌクレオチドプライマー対が、その第1配列を増幅するために用いられる。続く段階において、同じく上流プライマーおよび下流プライマーからなる、内側の、すなわち、入れ子になったオリゴヌクレオチドプライマーの2番目の組が、より小さい第2標的ヌクレオチド配列を増幅するために用いられる。その第2標的ヌクレオチド配列は、第1標的ヌクレオチド配列の内側に含まれるものである。その上流および下流の内側プライマーは、その第2標的ヌクレオチド配列の5’端位置および3’端位置それぞれに隣接する。フランキングプライマーは、PCRプロセス中に増幅される二本鎖の標的ヌクレオチド配列の3’末端部分の断片と相補的である。
【0039】
1段階目のポリメラーゼ連鎖反応における増幅の標的とされる遺伝子領域の内側にある第1ヌクレオチド配列は、その5’端上流位置にある上流プライマー、および、その3’端下流位置にある下流プライマーに隣接する。第1標的ヌクレオチド配列、つまり、1段階目のポリメラーゼ連鎖反応の増幅産物は、予想された塩基対長を有する。その塩基対長は、外側プライマー対の上流プライマーおよび下流プライマーそれぞれの、5’端上流のハイブリダイゼーション位置と3’端下流のハイブリダイゼーション位置間の塩基対の距離によって決定されるものである。
【0040】
1段階目のポリメラーゼ連鎖反応の終わりに、結果として生じた混合液の一定分量は、2段階目のポリメラーゼ連鎖反応に持ち越される。このことは、好ましくは、Cepheidの「SMART CAP」装置のような、封がされた容器、すなわち密閉された容器中で自動的に実行される。この2段階目の反応において、1段階目の反応産物は、特異的な内側のプライマー、すなわち入れ子になったプライマーと組み合わされる。これらの内側プライマーは、第1標的ヌクレオチド配列の内側のヌクレオチド配列に由来し、そして、第1標的ヌクレオチド配列の内側の、より小さい第2標的ヌクレオチド配列に隣接する。この混合液は、最初の変性、アニーリング、および、伸張段階を受けるものであり、そして、前述のとおり、反復された変性、アニーリング、および、第2標的ヌクレオチド配列の伸張、すなわち複製を可能にするための、サーモサイクリング(thermocycling)が後に続く。この第2標的ヌクレオチド配列は、5’端上流位置の上流プライマー、および、3’端下流位置の下流プライマーに隣接する。第2標ヌクレオチド配列、つまり、2段階目のPCRの増幅産物はまた、予想された塩基対長を有する。その塩基対長は、内側プライマー対の上流プライマーおよび下流プライマーそれぞれの、5’端上流のハイブリダイゼーション位置と3’端下流のハイブリダイゼーション位置間の塩基対の距離によって決定されるものである。
【0041】
増幅産物は、参照により全体を本明細書に組み入れる、Mullis他に対する米国特許第4,683,195号に記載されているように、好ましくは、その産物特異的なプローブもしくはレポーターとともに、メチル化されたもの、もしくは、非メチル化のものとして同定される。ポリヌクレオチドを検出するためのプローブ、および、レポーターに係る分野における改良は、本分野の当業者には周知である。選択的に、核酸のメチル化パターンは、制限酵素消化、および、サザンブロット分析のような他の技術によって確認することができる。5’CpGメチル化を検出するために用いることができるメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの例は、SmaI、SacII、EagI、MspI、HpaII、BstUI、および、BssHIIを含む。
【0042】
本発明に係る他の態様において、メチル化率が用いられる。これは、得られたマーカーに係る増幅されたメチル化種の量と、増幅された参照マーカーの量、もしくは、増幅された非メチル化マーカー領域の量との間の割合を確定することで行われることが可能である。これは定量リアルタイムPCRを用いて行われるのが最善である。上記のように確定されるか、または、予め決められたカットオフもしくは閾値に係る割合は、過剰メチル化されたとみなされ、そして、がん(GSTP1の場合における前立腺がん)のような増殖性疾患を有することを示すとみなされる。既知の異常条件を有するサンプルと既知の正常条件を有するサンプルの、少なくとも2組のサンプルに対して用いられるような既知の方法にしたがって、カットオフが確定される。本発明に係る参照マーカーは、内部対照としても利用されうる。この参照マーカーは好ましくは、βアクチンのような、サンプルの細胞において構成的に発現する遺伝子である。
【0043】
確定されるか、もしくは、予め決められた値(カットオフ値もしくは閾値)は、率が用いられない本発明に係る方法においても確定され、用いられる。この場合、正常なサンプル、もしくは、がんが臨床上顕著でない(臨床上関連のある状態まで進行しないことが知られている、もしくは、活動的でない)サンプルにおけるメチル化量もしくはメチル化程度のような基準値と比較した、メチル化量もしくはメチル化程度に対して、カットオフ値が確定される。このようなカットオフは、メチル化率に基づいた方法において用いられる場合のように、周知の方法にしたがって確定される。
【0044】
本発明に係る最も好ましい実施形態において、MSP、もしくは、他の適切な方法によって得られたGSTP1メチル化値は、同じ方法を用いて決定されたS100A2メチル化値で標準化される。標準化された値は、実施例7に示されるようなGSTP1値から、S100A2解析値を差し引くことによって得られる。(Ct値を目的遺伝子に対するコピー数に変換し、そのコピー数を、同じ方法で得られたβアクチンに対するコピー数で割ることで得られる)メチル化率を生成するような、他の標準化方法も用いることができる。標準化された値を用いる場合、まず、そのカットオフが最適な感度および特異度を生ずる訓練群を生成することによって、そして、その後、独立の確認群においてそのカットオフを確認することによって、そのカットオフ値は決定される。
【0045】
本発明に係る方法およびキットは、多重解析(multiplexing)のためのステップおよび試薬を含むことができる。すなわち、1個より多いマーカーを同時に解析することが可能である。しかし、本発明の一部としては、以下のマーカーのみが解析される。そのマーカーとは、GSTP1、RAR−β2、APC、および、S100A2であり、βアクチンのような内部対照とともに解析される。
【0046】
マーカーと関連する遺伝子の転写レベルが低下することは、しばしばポリヌクレオチド配列の過剰メチル化、および/もしくは、発現制御配列(例えば、プロモーター配列)に係る特定の要素の結果である。そのため、それらの配列に適合するように作成されたプライマーが準備された。したがって、本発明は、特定の区域のメチル化、好ましくは、マーカーの発現制御領域、すなわちプロモーター領域内でのメチル化を検出することによって、細胞増殖疾患を検出する方法、もしくは、それらを診断する方法を提供する。これらの区域におけるメチル化を検出するために有用なプローブは、このような診断方法または予後方法において有用である。
【0047】
本発明に係るキットは、それらのキットすべてが少なくとも1個のプライマーもしくはプローブ、すなわち検出分子(例えば、スコーピオンレポーター)を含むならば、種々の構成要素で形成されることが可能である。1つの実施形態において、そのキットは、過剰メチル化マーカー断片を増幅し、検出するための試薬を含む。選択的に、そのキットは、サンプルから核酸を抽出するためのサンプル準備試薬、および/もしくは、物品(例えばチューブ)を含む。
【0048】
好ましいキットにおいて、1チューブMSPのために必要な試薬は、例えば、対応するPCRプライマーセット、Taqポリメラーゼのような耐熱性DNAポリメラーゼ、および、加水分解プローブもしくは分子指標のような適切な検出試薬を含む。選択的に好ましいキットにおいて、検出試薬はスコーピオンレポーター、もしくは、スコーピオン試薬である。単一染料プライマー(single dye primer)、もしくは、二本鎖DNA特異的な蛍光染料(例えば、エチジウムブロマイド)も用いることができる。プライマーは、好ましくは、高濃度を生ずる量である。そのキットにおける更なる材料は、適切な反応チューブもしくはバイアル、典型的には選択的にマグネシウムを含むワックスビーズであるバリア組成物(barrier composition);dNTPのような必要なバッファーおよび試薬;対照の核酸、および/もしくは、任意の更なるバッファー、化合物、補因子、イオン性成分、タンパク質および酵素、ポリマー、ならびに、MSP反応に用いてもよい同様のもの;を含んでもよい。選択的にそのキットは核酸抽出試薬および材料を含む。
【0049】
〔実施例1〕
サンプル準備およびMSPCR
前立腺サンプルは既知の臨床転帰を有する患者から採取した。
【0050】
メチル化解析を以下のように実施した。ゲノムDNAを市販の亜硫酸水素ナトリウム変換試薬キット(sodium bisulfite conversion reagent kit)(Zymo Research、米国カリフォルニア州オレンジ郡)を用いて修飾した。この処理は非メチル化DNAにおけるすべてのシトシンをウラシルに変換し、一方、メチル化DNAにおける、グアニンに先行しないシトシンのみをウラシルに変換した。(CpGジヌクレオチドにおいて)グアニンに先行するすべてのシトシンがシトシンのままであった。その解析を以下のとおり十分に説明する。
【0051】
a.沈降:沈降した尿サンプルを以下のとおり採取した。
尿を入れた50mLファルコンチューブを、VRX Sorvall遠心分離機で、3000G、+4℃、10分間遠心分離した。上澄みを、ペレットの上部に〜5mL残して、取り除いた。その後、残った上澄みを(1mLチップを用いて)廃棄するために、チューブを再度遠心沈殿(3000G、5分間)させた。その後、尿沈降物を20mLの冷PBS(4℃)ですすぎ、再度遠心沈殿(3000G、5分間)させ、残りの上澄みを吸引した。サンプルをその後−20℃で保管した。
【0052】
b.細胞溶解およびDNA抽出:
それから、沈降物中の細胞を以下のとおり溶解した。尿細胞ペレットを含む各サンプルに、700μLの細胞溶解溶液を加えた。その後、溶解物を2.0mL微量遠心チューブに移し、溶解物に3μLのタンパク質分解酵素K溶液(20mg/mL)を加え、25回反転混和し、そして、1時間〜一晩の間、55℃でインキュベーションした。
【0053】
20℃(ヒートブロック)で10分間静置することで、サンプルを室温まで冷却した。その後、溶解物に300μLのタンパク質沈降溶液を加え、高速度で20秒間激しく撹拌した。サンプルを氷浴中に5分間静置し、16000回転/分で5分間遠心分離した。沈降したタンパク質は固いペレットを形成した。その後、その沈降ステップをくり返し、上澄みを新しい2.0mLチューブに移した。
【0054】
その後、DNAを含む上澄みを清潔な2.0mL微量遠心チューブに移し、そして、900μLの100%イソプロパノール、および、2μLのグリコーゲン20mg/mLを入れた清潔な2.0mL微量遠心チューブに上澄みが再度移された状態で、遠心分離をくり返した(16000回転/分、3分間)。サンプルをやさしく50回反転混和し、ロッカー上で少なくとも10〜15分間室温に保ち、その後−20℃まで冷却した。そのサンプルをその後、16000回転/分で5分間遠心分離した。それからDNAは小さな白いペレットとして可視化された。上澄みを1mLピペットで除去し、サンプルを16000回転/分で60秒間遠心分離した。残った上澄みを100μLピペットで除去した。DNAペレットを洗浄するために、900μLの70%エタノールを加え、チューブを10回反転し、その後、16000回転/分で1分間、別の遠心分離を行った。エタノールを1mLピペットで廃棄し、その後、16000回転/分で60秒間、別の遠心分離を行った。残った上澄みを100μLピペットで廃棄し、サンプルを10〜15分間風乾した。
【0055】
乾燥サンプルに45μLのLoTEバッファーを加え、1100回転/分で振動させて、65℃、1時間インキュベーションし、そして、1100回転/分で振動させて、20℃、一晩インキュベーションすることで、DNAを再び水和した。明確にラベルされたチューブ中で、DNAを−80℃で保管した。
【0056】
c.亜硫酸水素修飾:
それから、ZymoResearchのEZ−DNAメチル化キット(EZ-DNA methylation kit)(カタログ番号D5001)を用いて、DNAサンプルを以下のとおり修飾した。
【0057】
最終的なM−洗浄バッファー(M-Wash buffer)を作るために、M−洗浄バッファー濃縮物(M-Wash buffer Concentrate)に24mLの無水エタノールを加えた。45μLのDNAサンプルに5μLのM−希釈バッファー(M-Dilution Buffer)を直接加えた。この混合液をピペッティングにより上下させて混和し、その後、簡単に遠心した後、ヒートブロック上で、37℃、15分間、1100回転/分で振動させてインキュベーションした。インキュベーション中に、750μLのベーカー水(Baker Water)と210μLのM−希釈バッファーを加えることで、CT変換試薬を準備した。その後、全体で10分間、2分ごとに1分間撹拌することによって混和した。上記のインキュベーション後、100μLの準備したCT変換試薬を(簡単に遠心した後)各サンプルに加え、その後軽く撹拌し、簡単に遠心した。その後、サンプルを、70℃、3時間、アルミホイルで覆われた(1100回転/分で振動する)ヒーティングブロック上でインキュベーションした。
【0058】
サンプルをその後簡単に遠心沈殿させ、氷上で10分間静置した。サンプルに400μLのM−結合バッファー(M-Binding buffer)を加え、ピペッティングにより上下させて混和した。2mL収集チューブの中に入れたZymo-Spin Column中に、上澄みすべてを充填した。そのチューブを最大速度で15〜30秒間遠心分離し、流出物を廃棄した。カラムに200μLのM−洗浄バッファーを加え、再び最大速度で15〜30秒間遠心分離し、再び流出物を廃棄した。
【0059】
200μLのM−脱スルホン化バッファー(M-Desulphonation Buffer)をカラムに加え、室温で15分間放置し、その後、最大速度で15〜30秒間遠心分離し、流出物を廃棄した。この手順を3回続け、最後の遠心分離ステップは30秒間継続された。カラムをその後、清潔な1.5mLチューブに入れ、そのチューブに50μLのM−溶出バッファー(M-elution buffer)を加えた。DNAを溶出するために、カラムをその後1分間室温で放置し、その後、最大速度で1分間遠心分離した。溶出したDNAを、「BT修飾」としてラベルし、−80℃で保管した。
【0060】
その後、以下のプライマーおよびプローブでMSPCR解析を設定した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
「SMARTCAP」チューブ(Cepheid)と「SMARTCYCLER」(Cepheid)PCR分析機とを用いて、ネステッドPCR反応を以下のとおり実行した。
【0064】
融解した試薬をそれぞれ簡単に撹拌して混和した。適当なCepheid SmartCap PCR反応チューブをラベルし、ラック中に置いた。各チューブについて新しいピペットチップを用いて、各チューブに5μLの1回目のPCRマスターミックスを加えた。再度各標本について新しいピペットチップで、5μLの標本をそれぞれのチューブに加え、その後、SmartCapを所定の場所には(in place)はめずに閉じた。「SMARTCYCLER」遠心分離機で30秒間、チューブを遠心分離して、「SMARTCYCLER」のふたが閉まった状態で「SMARTCYCLER」機器の中に順に置かれ、作業が開始された。Cepheid基準上のサイクリング条件を以下に示す(1回目のPCR)。
【0065】
実行が完了した後、チューブを取り除き、2回目のPCRを以下のとおり設定した。チューブのふたを開け、その後、15μLの2回目のPCRマスターミックスを「SMARTCAP」容器に最終量が25μLになるまで加えた。スパイクを挿入し、ふたを所定の場所にはめた。そのチューブを適切な回転子を備えた微量遠心機で30秒間遠心分離した。その後、以下に示すCepheid基準上のサイクリング条件(2回目のPCR)下で、内側のPCR反応を40サイクル実行した。その実行が完了した後、Cepheidチューブを取り除き、廃棄した。
【0066】
以下のサイクリングパラメーターを用いた。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
以下の個々の成分を用いて、SMARTCAPチューブ中に単一の4重反応ミックス(reaction mix for a single quadruplex)を準備した。
【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
PCRマスターミックスを以下のとおり準備した(外側のプライマーおよび内側のスコーピオンプローブ/プライマーミックス)。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
最終的な25μLの反応内容物は以下のとおりである。
【0076】
【表9】

【0077】
データを「SMARTCYCLER」分析機から出力する。
【0078】
データを所定の閾値を実施することで分析した。基準を<表1>に示す。
【0079】
【表10】

【0080】
結果が生成され、以下の解析効率特性、すなわち、%感度、%特異度、および、95%信頼区間として示された。それらは、1回のPCRフォーマットにおける2つの規定されたCtカットオフにおけるマーカーの組み合わせについて計算される。濃度曲線値下面積(area under the curve value)は、2つの統計ソフトウェアパッケージで実行されるROC曲線分析に基づいて計算された。単一マーカー分析に対しては、AUC値がMedCalcソフトウェアを用いて生成され、そして、複数のマーカーの異なる組み合わせに対しては、S+統計ソフトウェア上のロジスティック回帰モデルが適用された。
【0081】
カットオフ値は、がん患者と非がん患者との間のCt値の相対分布に基づいて設定された。メチル化マーカー群由来のCt値のうちのいずれか1つが、以下に規定されたカットオフである場合、たとえアクチンが「非試験」事例を示していても、そのサンプルをメチル化されたものとみなした。図は、本発明に係る種々の実施形態を例示するために、さまざまなパラメーター間で比較されたデータを示す。
【0082】
〔実施例2〕
サンプルの保管の影響およびパネル同定
実施例1で説明した方法を、GSTP1遺伝子、RARβ2遺伝子、および、APC遺伝子からのマーカーの組み合わせを含む、組合せ解析とともにくり返した。指示されたように、サンプル収集から3日以内、サンプル収集から5日以内、サンプル収集から16日以内に解析を実行した。<表2>に結果を示す。
【0083】
【表11】

【0084】
本実施例のためのサンプル群は(生の)尿全体サンプルであり、16日群については148個のサンプル(68個の既知のがん)、5日群については121個のサンプル(52の既知のがん)、3日群については73個のサンプル(30の既知のがん)から成った。驚くべきことに、GSTPおよびRARβ2の組み合わせは、既知の前立腺がんマーカーであるAPCがあるにも関わらず、GSTP、RARβ2、および、APCの組み合わせより、効率が良かった。この2個の遺伝子の組み合わせは、サンプルを3日かそれ以下の間保管した場合、他のいずれの場合よりも非常に効率が良かった。すべての検査を考慮すると、3日間保管したサンプルの陽性予測値は65.9%であり、対して、5日間保管したサンプルについては51.35%、16日間保管したサンプルについては47.22%であった。その後、新しいデータ群(N=73、既知のがん=30、既知の非がん=43)に対して、尿サンプル全体を用いて、そして、前述のとおり準備し3日間保管した沈降物を用いて、ROC曲線分析を実行した。個々のマーカーについて濃度曲線下面積を決定した。結果を<表3>にまとめる。
【0085】
【表12】

【0086】
GSTPそれ自体は、サンプルが(生の)尿全体の場合、ROC分析によって最も良い結果を得た。サンプルから沈降物を遠心沈殿することは、この同じ分析によって示したように、RARβマーカーの効率を驚異的に改善した。
【0087】
〔実施例3〕
前立腺マッサージ
尿に基づく解析に係る効率について、前立腺マッサージの効果を決定するために、2つの更なるサンプル群を検査し、分析した。第1のサンプル群において、20秒未満に限定した前立腺マッサージを施した患者から、36個のサンプル(20個の既知のがん)が得られた。他のサンプル群において、20秒を超える前立腺マッサージを施した患者から、77個のサンプル(30個の既知のがん)が得られた。いずれの場合においても、サンプルを5日またはそれ以下の間保管した。これらのサンプルについて実行したMSPCRの結果を<表4>にまとめる。
【0088】
【表13】

【0089】
前立腺マッサージを連続して20秒間未満で施す場合、最も良い結果がGSTP、RARβ、およびAPCを含むパネルから得られた。長時間のマッサージによって、より多くの細胞が放出し、少なくとも、特異度が増大するだろうと期待されるだろうために、このことは驚くべきことである。
【0090】
〔実施例4〕
直腸内触診
尿に基づく解析に係る効率について、正常な直腸内触診(DRE)に対する異常な直腸内触診に基づく選択の効果を決定するために、4つの更なるサンプル群を検査し、分析した。第1のサンプル群において、正常なDREを有する患者から、64個の尿全体のサンプル(23個の既知のがん)が得られた。第2のサンプル群において、異常なDREを有する患者から、33個の尿全体のサンプル(19個の既知のがん)が得られた。第3のサンプル群は、正常なDREを有することが示された48個の沈降サンプル(21個の既知のがん)を含み、第4のサンプル群は、異常なDREを有する患者由来の22個の沈降サンプル(8個の既知のがん)を含んだ。いずれの場合においても、サンプルを5日またはそれ以下の間保管された。これらのサンプル上で実行したMSPCRの結果を<表5>にまとめる。
【0091】
【表14】

【0092】
異常なDREを有する患者から選択されたサンプルで用いられたマーカーは、DRE陰性の患者における場合よりも、十分によく機能した。異常なDREを有する患者由来の尿全体のサンプルは、マーカーパネルがGSTPおよびAPCで構成された場合、最もよく沈降されたサンプルとほとんど同程度の感度および特異度を有すると解析された。単一マーカー解析(APC)は、異常なDREを有する沈降サンプルで最もよく機能したが、GSTP/APCパネルにはそれほど差が見られるわけではなかった。
【0093】
〔実施例5〕
PSA濃度
PSA濃度に基づいたサンプル選択の効果を決定するために、2つの更なるサンプル群を検査し、分析した。第1のサンプル群において、2.5〜4ng/mLのPSA値を有する患者から、52個の尿全体のサンプル(25個の既知のがん)が得られた。他のサンプル群において、4〜10ng/mLのPSA濃度を有する患者から、169個のサンプル(80個の既知のがん)が得られた。いずれの場合においても、尿収集および沈降法の両方で、サンプルを4℃、5日間以内で保管した。これらのサンプル上で実行したMSPCRの結果を、以下のとおり<表6>にまとめる。
【0094】
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する52個の被験物(25個のがん、および、27個の非がんの場合を含む)に対して、ロジスティック回帰モデルを用いた場合、58%感度と88%特異度を示した。また、以下のCtカットオフ(すなわち、GSTP=26、RAR=28、APC=25、および、非試験率=3.8%)を有する3個のマーカーを用いた場合、それぞれ、58%感度と81%の特異度を示した。4〜10ng/mLのPSA濃度を有する患者集団に対して、同じマーカー、および、Ctカットオフを用いたところ、感度/特異度特性は59/65%であった。2つのサンプルのt検定により、PSA濃度が2.5〜4ng/mLおよび4〜10ng/mLの範囲である2つの集団間の解析効率には、統計的に有意な差がないことを確認した(P=0.000)。結果を<表6>に示す。
【0095】
【表15】

【0096】
〔実施例6〕
より拡張的な多重解析
前立腺がん分析に有用であると知られている更なるマーカーを用いて、より拡張的な多重解析を実行した。解析の目的があいまいなPSA結果(臨床上用いられる2.5〜4ng/mL)を解決することであると仮定して、最大解析特異度が探索された。3日間保管した沈降サンプル上で、解析を実行した。(30個ががん症例由来であり、30個が非がんサンプル由来である)60個のサンプルの各々に対して、1回目のPCRを実行した。3個の4重反応を用いて、6つのマーカー(GST+RAR+APC+RASS+CDH1+PDLIM4)に対して生み出された尿沈降物によるデータは、CDH1、RASS、および、PDLIM4が、80%の特異度を維持するために値を追加しないということを示している。6個のマーカーをすべて含めることにより、解析の特異度が損なわれる(感度:44%、特異度:63%)。さらに、6個のマーカーを用いることは、単一チューブ解析フォーマットには適さない。結果を<表7>に示す。
【0097】
【表16】

【0098】
〔実施例7〕
S100A2を用いた結果の標準化
4個のマーカー(GSTP1、RARβ2、APC、および、S100A2)を用いて、尿サンプルを前述のMPCR反応で検査した。
【0099】
【表17】

【0100】
以上のデータは、3個のマーカーそれぞれの効率、および、20個のがんと10個の非がんを代表する組の組み合わせとしてのデータを示している。沈降に先行した尿サンプルの最適な保管時間がより少ないために、通常観察されるものより感度が低くなっている。
【0101】
その後、S100で同じサンプルを分析し、カットオフを生成するために、S100と目的遺伝子との間のΔCtが用いられた。データによると、RARβ2およびAPCでは改良された効率が見られるが、GSTP1では見られない。この差異のある効果が観察されたのは、RARβ2およびAPCの境界例を、ここではがんとしてはっきり割り当てることができ、感度が改善されたためである。このデータ群におけるGSTP1に対する境界例はまったくなかったが、これが、感度が変化しないままである理由である。
【0102】
【表18】

【0103】
〔実施の態様〕
(1)前立腺がんを検出する方法において、
ヒトから尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルが採取された後3日以内に、前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみのメチル化状態、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示す、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含み、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
(4)実施態様1に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
(5)前立腺がんを検出する方法において、
ヒトから尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルが採取された後3日以内に、前記尿サンプルで、S100遺伝子のみ;GSTP1遺伝子、APC遺伝子、および、RARβ2遺伝子からなる群から選択される更にもう1個の遺伝子のみ;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;のメチル化状態を決定することと、
を含み、
前記S100遺伝子のメチル化に係るCt値よりも低い、前記GSTP1遺伝子、APC遺伝子、もしくは、RARβ2遺伝子のメチル化に係るCt値が所定の値を超える場合、そのことは、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示す、方法。
(6)実施態様5に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含み、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
(7)実施態様5に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
(8)実施態様5に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
(9)前立腺がんを検出する方法において、
患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみ、RARβ1遺伝子のみ、APC遺伝子のみ、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
(10)実施態様9に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
【0104】
(11)実施態様9に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
(12)実施態様9に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
(13)実施態様9に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
(14)前立腺がんを検出する方法において、
異常なDREを有する患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみ、RARβ1遺伝子のみ、APC遺伝子のみ、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
(15)実施態様14に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
(16)実施態様14に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
(17)実施態様14に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
(18)実施態様14に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
(19)前立腺がんを検出する方法において、
異常なDREを有する患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子、および、RARβ1遺伝子のみ;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
(20)実施態様19に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
【0105】
(21)実施態様19に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
(22)実施態様19に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
(23)実施態様19に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
(24)前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP1、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
(25)前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP1、RARβ1、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
(26)前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP、RARβ1、APC、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
(27)前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
S100A2遺伝子;GSTP、RARβ1、および、APCからなる群から選択される更にもう1個の遺伝子;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬、
を含む、キット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がんを検出する方法において、
ヒトから尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルが採取された後3日以内に、前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみのメチル化状態、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示す、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含み、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
【請求項5】
前立腺がんを検出する方法において、
ヒトから尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルが採取された後3日以内に、前記尿サンプルで、S100遺伝子のみ;GSTP1遺伝子、APC遺伝子、および、RARβ2遺伝子からなる群から選択される更にもう1個の遺伝子のみ;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;のメチル化状態を決定することと、
を含み、
前記S100遺伝子のメチル化に係るCt値よりも低い、前記GSTP1遺伝子、APC遺伝子、もしくは、RARβ2遺伝子のメチル化に係るCt値が所定の値を超える場合、そのことは、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示す、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含み、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
【請求項9】
前立腺がんを検出する方法において、
患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみ、RARβ1遺伝子のみ、APC遺伝子のみ、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
【請求項14】
前立腺がんを検出する方法において、
異常なDREを有する患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子のみ、RARβ1遺伝子のみ、APC遺伝子のみ、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
【請求項19】
前立腺がんを検出する方法において、
異常なDREを有する患者から尿サンプルを採取することと、
前記尿サンプルで、GSTP1遺伝子、および、RARβ1遺伝子のみ;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;のメチル化状態を決定することと、
を含み、
所定の値を超えるメチル化は、前立腺がんを示し、
このような所定の値を超えないメチル化は、前立腺がんの不存在を示し、
前記方法は、前記方法を実施する間は未開封のままである、単一の容器の中で実施される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
参照マーカーの存在を測定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、
前記ヒトのPSA濃度を決定するステップと、
2.5〜4ng/mLのPSA濃度を有する人々にのみ前記方法を実施するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法において、
前記遺伝子の前記メチル化状態は、ネステッドPCRを用いて決定され、
1回目のPCRが実施され、その後に、次回のPCRが続き、
前記次回のPCRを実施するためのプライマーおよびプローブは、前記1回目のPCRで増幅された配列の内側にある配列を対象とし、
前記尿サンプルは、前記1回目のPCRの実施に先行して、沈降物を形成するために遠心沈殿される、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法において、
前記尿サンプルの収集に先行して、前記ヒトは、約20秒間の前立腺マッサージを受ける、方法。
【請求項24】
前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP1、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
【請求項25】
前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP1、RARβ1、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
【請求項26】
前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
GSTP、RARβ1、APC、および、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子から本質的に成る遺伝子の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬と、
測定されたPSA濃度が2.5〜4ng/mLである患者への前記試薬の使用を指示する使用説明書と、
を含む、キット。
【請求項27】
前立腺がんを検出するための解析を実施するためのキットにおいて、
S100A2遺伝子;GSTP、RARβ1、および、APCからなる群から選択される更にもう1個の遺伝子;ならびに、1個もしくはそれ以上の対照遺伝子;の存在を検出するための核酸増幅試薬および検出試薬、
を含む、キット。

【公開番号】特開2009−22268(P2009−22268A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−103484(P2008−103484)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】