説明

前立腺ガン細胞の増殖の阻害方法

【課題】本発明は、前立腺ガン細胞の、例えばアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)細胞の増殖を阻害または低減する方法であって、前記細胞にPLA2阻害物質を投与する工程を含む方法に関する。
【解決手段】一実施形態において、PLA2阻害物質は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基またはその他の種類のsPLA2タンパク質における同等のアミノ酸残基から本質的に構成されているペプチド、に由来する、立体配置的に束縛された分子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺ガン細胞の増殖を阻害する方法に関し、例えば、前立腺ガンの治療法における前立腺ガン細胞の増殖阻害に関連する。具体的には、本発明は、アンドロゲン非依存性の前立腺ガン細胞の増殖を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺ガンは男性にしばしば発生し、現在ではガン関連の死因としては2番目に高頻度であって、発病率も増大しつつある。ガンが前立腺内に限られている患者の治療については、前立腺切除術が有効である。ガン細胞が、増殖にアンドロゲンをやはり必要としているものの、既に前立腺の外へ転移している症例においては、アンドロゲン除去療法が用いられる。しかし、今までのところ、転移性のアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)に対しては、有効な治療法がなかった。
【0003】
我々の、前立腺ガンの病因に関する理解は限られており、また、他のある種のガンとはちがって、前立腺ガンの病因解明においては、これまでほとんど進展がみられていない。これまで、家族性前立腺ガンの原因遺伝子を明らかにする努力がなされてきている。少なくとも7箇所の染色体座位が報告されているが、前立腺ガンの原因となる遺伝子については、まだ全ての座位では同定されていない。遺伝的に受け継がれる疾病素因は、症例のうち5-10%でしか見出されないが、生殖細胞系の変異を特定することによって、散発性の症例を説明することができるかもしれない。いずれの形態も、組織病理学的な特徴については互いに共通な点を有しているからである。研究者の大多数は、散発性前立腺ガンにおける体細胞性の欠損に注目してきた。古典的な細胞遺伝学的研究を固形腫瘍に適用することには問題があり、また、これまでに、一貫した染色体の変化は確認されていない。コンパラティブ・ゲノミック・ハイブリダイゼーションおよびヘテロ接合性の欠失の解析によって、ゲノムDNAにおける獲得および損失の双方が明らかにされているが、関連する遺伝子の大多数は依然として未知である。前立腺ガンにおいて、他の悪性疾患への関連が知られている各種のガン遺伝子および腫瘍抑制遺伝子における変異や欠失の頻度は、顕著に低い。定常状態でのmRNAレベルを正常な前立腺とガン性の前立腺とで比較する技法を用いることで、ある一連の遺伝子が、前立腺ガンの組織または細胞株において高発現または低発現のいずれかであることが、既に明らかにされている。現在、プロテオミクス法および組織アレイ法が利用されつつあるが、十分な数の標本において、タンパク質レベルで特徴的に発現していると実証された遺伝子は、まだ比較的少数である。特徴的に発現していた遺伝子の、前立腺ガンの惹起あるいは進行における意義に関する直接の証拠も乏しい。結果的に、理解は急速に進展してはいるが、得られた新しい知見の、前立腺ガンによる死亡率および前立腺ガンの罹患率の抑制への応用は遅れている現状である。
【0004】
疫学的研究による新たな証拠は、前立腺ガンになるリスクと脂肪の総摂取量との間に強い関連があることを示している(非特許文献1参照)。しかし、食餌の脂質と前立腺ガン発生との、生化学的な関連は、不明のままである。以前の研究により、アラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ (COX) 代謝産物およびリポキシゲナーゼ(LOX) 代謝産物の両者、プロスタグランジン(PG)、およびヒドロキシエイコサテトラエン酸類(HETEs) が、それぞれ、前立腺ガンの形成および/または進行に寄与することが明らかにされている。これら物質は、in vitroでも動物モデルにおいても、腫瘍細胞の増殖、運動性、浸潤および転移の促進、ならびに血管新生の誘導に関与している。興味深いことに、標識されたアラキドン酸からのPG合成およびHETE合成が、悪性の場合において顕著に増加している一方で、悪性の前立腺組織におけるアラキドン酸のレベルは、良性の(BPH)前立腺組織におけるそれよりも低い。しかし、アラキドン酸の動員酵素である、ホスホリパーゼA2 (PLA2)およびアシルCoA−脂肪性 リゾホスファチジルコリン アシルトランスフェラーゼの活性もそれぞれ増大していて、COXあるいはLOX経路によるアラキドン酸の変化率が増大したことを示唆している。
【0005】
PLA2は、生体膜リン脂質のsn-2位における加水分解反応を触媒して、脂肪酸およびリゾリン脂質を遊離させる、広大かつ多岐に渡る酵素ファミリーに属する。PLA2酵素はその出所および細胞での分布にしたがって分類される(例えば、分泌型PLA2酵素(sPLA2s)や、細胞質型PLA2酵素(cPLA2s))。拡大しつつあるPLA2酵素スーパーファミリーの、分類および特徴付けについての総説が、SixおよびDennisにより著されている(非特許文献2)。
【0006】
sPLA2-IIAは、前立腺ガンにおいて増加する(非特許文献3)。sPLA2-IIA発現の増大は、患者の5年生存率と反比例の関係であった(Graff et al., 2001)。さらに、sPLA2-IIA に対応(1p35-ter)などのsPLA2 遺伝子の染色体座位は、前立腺ガン感受性遺伝子座のひとつであるCAPBと重複していた(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kolonel et al., 1999 J. Natl Cancer Inst. 91: 414
【非特許文献2】Six and Dennis (2000) Biochim. Biophys. Acta 1488:1-19
【非特許文献3】Graff et al., 2001, Clin. Cancer Res. 7: 3857-3861; Jiang et al., 2002, Am. J. Pathol. 160: 667-671
【非特許文献4】Nwosu et al., 2001, Human Mol. Genet. 10: 2313-2318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでのところ、sPLA2-IIAが、前立腺腫瘍形成と関連することを示す証明は存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は今回、アンドロゲン除去療法を受けた被験者における免疫組織化学法により、IIAタイプの分泌型ホスホリパーゼA2 (sPLA2-IIA)が、アンドロゲン非依存性の腫瘍細胞において、良性の腺におけるよりも増加していること、これに対して細胞質型ホスホリパーゼA2 -α(cPLA2-α) のレベルは変化していないことを示した。
【0010】
我々はまた、前立腺ガン細胞をsPLA2-IIA処理すると、この細胞の増殖が強力に増大すること、そして、この増殖効果は、sPLA2-IIA酵素に対する選択的阻害物質またはcPLA2-α酵素に対する選択的阻害物質のいずれを投与しても、阻止されることを見出した。
【0011】
このことは、前立腺ガン細胞の増殖においてPLA2が直接的な役割をもつことの実証を、初めて提供するものである。また、このクラスに属する酵素が、前立腺ガンの治療に関して、治療上の重要な標的であることを明らかにするものである。
【0012】
したがって本発明は、第一の態様において、前立腺ガン細胞の増殖を阻害または低減する方法であって、前記細胞に対してPLA2阻害物質を投与する工程を含む方法、を提供する。
【0013】
第二の態様において、本発明は、前立腺ガンを治療する方法であって、治療を要する患者にPLA2阻害物質を投与する工程を含む方法、を提供する。
【0014】
上記第一および第二の態様の好ましい実施形態において、前立腺ガン細胞はアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)細胞である。
【0015】
本発明の上記第一および第二の態様によると、前記PLA2阻害物質は、PLA2酵素のいずれをも阻害し得る。好ましくは、前記PLA2阻害物質は、1B, IIA, IID, IIE, IIF, III, IV, V, およびXというPLA2酵素の群から選択される1種類の酵素を阻害することが好ましい。
【0016】
ある実施形態において、前記PLA2阻害物質はcPLA2-αの阻害物質である。例えば、この阻害物質は、ピロリジン-1すなわちWO 00/27824に記載のような置換ピロリジン、WO 99/15493に記載のような9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン誘導体、JP12119292に記載のようなアザロマイシン系阻害剤、WO 98/25893に記載のようなアリルスルホンアミド、WO 98/05637に記載のようなインドール-2-カルボン酸誘導体、WO 98/08818, WO 99/43651, WO 99/43654, WO 99/43672などに記載のようなインドール誘導体、JP12038380に記載のような3-スルファニル-プロパン-1,2-ジオール誘導体、WO 00/34254に示されているような複素環式化合物、または、WO 97/05135 やWO 98/33797に記載のようなオキサゾリジンジオンやチアゾリジンジオンの誘導体であってよい。
【0017】
別の実施形態において、前記PLA2阻害物質はsPLA2-IIAの阻害物質である。例えば、この阻害物質は、JP8325154に記載のような安息香酸、JP9110835に記載のような6-アザ-スピロ-[4,5]-デカン誘導体、WO 00/00220あるいはWO 95/19959で挙げられているような脂肪酸アミド誘導体、WO 97/35567で挙げられているような(アリルスルホンアミドフェノキシ) 安息香酸、WO 97/38966で挙げられているような脂肪酸誘導体、JP0045740で挙げられているようなテトロン酸、WO 98/05332で挙げられているような二窒素複素環式化合物、WO 00/71118で挙げられているようなオキサジアジンあるいはチオキサジアジンの誘導体、WO 98/24437で挙げられているようなスルホニルアミノピラゾール、EP 839806, EP 950657, EP 952149 あるいはWO 00/07590に記載の (インドール-3-イル)アセトアミド系阻害剤、EP 675110, WO 98/37069, WO 99/59999, WO 99/51605, WO 00/07591, WO 00/37358あるいはWO 00/00201で挙げられているような(インドール-3-イル) オキソアセトアミド類、または、WO 99/21545, WO 99/21546あるいはWO 99/21559で挙げられているような各種誘導体であってよい。
【0018】
特に好ましい実施形態において、PLA2阻害物質は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基またはその他の種類のsPLA2タンパク質における同等のアミノ酸残基から本質的に構成されているペプチド、に由来する、立体配置的に束縛された分子である。
【0019】
立体配置的に束縛された前記分子は、好ましくはペプチドであり、さらに好ましくは環状ペプチドである。
【0020】
ある好ましい実施形態において、立体配置的に束縛されたペプチドは、下記式:
A1-A2-A3-A4-A5
(式中、A1はF、Y、W、または2Napであり、A2はLまたはIであり、A3はSまたはTであり、A4はF、Y、W、または2Napであり、A5はRまたはKである。)
の構造を有する環状ペプチドである。
【0021】
本発明の、さらに好ましい実施形態において、前記ペプチドは、cFLSYK、cFLSYRおよびc(2NapA)LS(2NapA)Rからなる群より選ばれる。
【0022】
ここで用いられる場合、「cFLSYK」という語は「環状FLSYK」を意味し、「cFLSYR」は「環状FLSYR」を意味し、「c(2NapA)LS(2NapA)R」は「環状(2Nap)LS (2Nap)R」を意味する。「2NapA」という語は、2-ナフチルアラニンの省略形である。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、上記のペプチドはD-アミノ酸を含有し、本発明の第一の態様におけるペプチドの逆方向に相当する配列を有する。
【0024】
ある好ましい実施形態において、本発明の方法は、sPLA2-IIAの阻害物質をcPLA2-αの阻害物質と併せて投与することを包含する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、前立腺ガン治療用の薬の製造における、PLA2阻害物質の使用を提供する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、前立腺ガン治療用の薬の製造における、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基またはその他の種類のsPLA2タンパク質における同等のアミノ酸残基から本質的に構成されているペプチド、に由来する、立体配置的に束縛された分子の使用を提供する。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、被験者において前立腺ガンまたはその転移を検出する方法であって、
前記被験者に由来する被験試料において発現しているPLA2 mRNAのレベルを測定する工程;および
(i)で測定されたPLA2 mRNAの前記レベルを、健康なまたは正常な個体に由来する対照試料において発現しているPLA2 mRNAのレベルと比較する工程
を含み、
(i)による被験試料のPLA2 mRNAのレベルが、正常または健康な個体に由来する前記対照試料でのレベルに比して高いことによって、前記被験者におけるガン細胞の存在が示される方法を提供する。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、被験者において前立腺ガンまたはその転移を検出する方法であって、
前記被験者に由来する被験試料におけるPLA2ポリペプチドのレベルを測定する工程;および
(i)で測定されたPLA2ポリペプチドの前記レベルを、健康なまたは正常な個体に由来する対照試料におけるPLA2ポリペプチドのレベルと比較する工程
を含み、
(i)による被験試料の前記PLA2ポリペプチドのレベルが、健康なまたは正常な個体に由来する前記対照試料でのレベルに比して高いことによって、前記被験者におけるガン細胞の存在が示される方法を提供する。
【0029】
さらに別の態様において、本発明は、被験者の前立腺ガンに対する疾病素質を評価する方法であって、前記被験者のPLA2遺伝子において、多型または後成的変化が存在するかを確認する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、sPLA2-IIAタンパク質の発現に対する、アンドロゲン除去療法の効果について示す図である。事前にアンドロゲン除去療法を施された(N=25)または施されていない(N=50)、前立腺切除術を受けた被験者の、術後に採取した前立腺組織について、sPLA2-IIAタンパク質の発現を、免疫組織化学法を上記「材料と方法」の項で記述したように行って検討した。A.アンドロゲン除去療法を受けていない被験者からの隣接切片を示す。正常な腺が示されている。B.アンドロゲン除去療法を受けた被験者からの隣接切片を示す。正常な組織および腫瘍性組織の双方を呈している。左側はヘマトキシリンおよびエオジン染色像であり、右側は抗sPLA2-IIA抗体を用いた染色像である。拡大率は40倍である。C.アンドロゲン除去療法を受けた(+)または受けていない(-)患者由来の、正常な(白四角)または腫瘍性の(黒四角)組織におけるsPLA2-IIA発現を、3点の等級(1; 陽性組織0 - 33%、2; 陽性組織33 - 66%および3; 陽性組織>66%)にしたがって等級付けして示した。*;カイ2乗検定による、アンドロゲン除去療法の施されていない良性の腺に対するP < 0.05を示す。
【図2】図2は、外来性にsPLA2-IIAを添加することの、前立腺ガンの成長に対する効果について示す図である。LNCaP細胞を、5% FCS含有RPMIで培養し、(A)sPLA2-IIAの濃度のみを低濃度から順に割り振った(黒棒)またはsPLA2-IIAの不活性型変異体H48Qの濃度を低濃度から順に割り振った培地中で、また(B)sPLA2-IIAの濃度を固定し、sPLA2-IIA阻害物質であるcFLSYRの濃度を低濃度から順に割り振った培地中で、72時間処理した。未処理の対照細胞と比較した細胞数を、MTS分析を上記「材料と方法」の項で記述したように行うことで測定した。データは、未処理の細胞を100%として規格化した、4連の測定値の、平均値 ± 標準偏差である。刺激されていない細胞のOD495は、sPLA2-IIAについて0.29 ± 0.06であり、図2のAに示したsPLA2-IIA変異型の試験において0.24 ± 0.03であり、図2のBにおいて0.24 ± 0.03であった。*は、一元配置分散分析による、刺激されていない対照に対するP < 0.05を示す。示されているデータは、3回の独立した試験の代表例である。(C)LNCaP細胞を、上記と同様に培養し、sPLA2-IIA阻害物質cFLSYR(100 nM)の存在下(実線)または非存在下(点線)で、sPLA2-IIA(1 nM)による刺激を72時間行った。細胞(1×106個)を、上記「材料と方法」の項で記述したようにヨウ化プロピジウムで処理した後、フローサイトメトリーにより分析した。統計分析は、試料あたり10,000事象に対して実施した。示されているデータは、3回の独立した試験の代表例である。
【図3】図3は、cPLA2-αを阻害することの、sPLA2-IIA依存性増殖に対する効果を示す図である。LNCaP細胞を、5% FCS含有RPMIで培養し、低濃度から順に割り振った、cPLA2-α選択的阻害物質であるピロリジン-1の存在下(斜線棒)または非存在下(黒棒)で、sPLA2-IIA(1 nM)による刺激を72時間行った。MTS分析を上記「材料と方法」の項で記述したように行って、細胞数を測定した。データは、未処理の対照細胞(100%)(白棒)に対する割合で表された、4連の測定値の平均値 ± 標準偏差である。未処理の細胞のOD495は、0.33 ± 0.03であった。ピロリジン-1(5 uM)のみが存在した場合、OD495は、0.38 ± 0.04であった。*は、一元配置分散分析による、刺激されていない対照に対するP < 0.05を示す。
【図4】図4は、sPLA2-IIAを阻害することの、未刺激の前立腺ガン細胞に対する効果を示す図である。(A)内因性のsPLA2-IIA mRNA発現を、5% FCS含有RPMI中で培養された、3種類の未刺激の前立腺ガン細胞株(LNCaP, DU145およびPC-3)において、RT-PCR法を利用して評価した。HPRTを、RNAの完全性および添加の適正さについてのポジティブコントロールとして用いた。(B)細胞を5% FCS含有RPMI中で培養し、次いで、sPLA2-IIA阻害物質であるc(2Nap)LS(2Nap)Rの存在下または非存在下で72時間の処理を行った。そして、MTS分析を上記「材料と方法」の項で記述したように行って、細胞数を測定した。データは、未処理の対照細胞(100%)に対する割合で表された、4連の測定値の平均値 ± 標準偏差である。黒棒で示したLNCaPについて、未処理の細胞のOD495は0.50 ± 0.03であり;領域空白の棒線で示したDU145について、未処理の細胞のOD495は0.73 ± 0.05であり;斜線入り棒線で示したPC-3について、未処理の細胞のOD495は0.66 ±0.01であった。*は、一元配置分散分析による、未処理の対照に対するP < 0.05を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
別途定義されていない限り、本明細書等において用いられている技術用語および科学用語はすべて、当該技術分野における(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術、または生化学における)通常の技術を有する者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。分子的、遺伝的および生化学的な手法(一般的には、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 、および、 Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc. およびその全文について“Current Protocols in Molecular Biology”を参照されたい。ここでは、これら文献は、参照のために記載したものである。)、ならびに化学的手法に関しては、標準的な手法が用いられている。
【0032】
本明細書全体を通して「を含む(comprise)」の語、または、“comprises”や“comprising”等の変化形は、ある記述された成分、整数もしくは工程、または、成分、整数もしくは工程の集合を含むことを意味し、その他のいかなる成分、整数および工程、ならびに、成分、整数および工程の集合をも除外しないと理解してよい。
【0033】
・PLA2酵素
本発明の方法には、いかなるPLA2酵素を標的とする工程も包含される。拡大しつつあるPLA2酵素スーパーファミリーの、分類および特徴付けについての総説が、SixおよびDennis,(2000) Biochim. Biophys. Acta 1488:1-19で公表されており、本願発明の各方法は、ここで示された全ての酵素を標的にするよう企図している。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、PLA2酵素は、sPLA2-IIAまたはcPLA2-αである。また、好ましくは、PLA2酵素はヒト酵素である。
【0035】
ヒトsPLA2-IIAの核酸配列およびタンパク質配列を、配列番号1および3において、それぞれ示した。ヒトcPLA2-αの核酸配列およびタンパク質配列を、配列番号2および4において、それぞれ示した。
【0036】
・PLA2阻害物質
タンパク質系またはペプチド系の阻害物質
一実施形態において、ペプチド系の各種PLA2阻害物質は、化学的にまたはリコンビナントに、(例えば配列番号3または4の)PLA2配列から導き出されたオリゴペプチド(およそ10-25 アミノ酸長)として合成される。上記に代わり、天然の、またはリコンビナント生産されたPLA2を消化することによって、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシンなどのタンパク質分解酵素を用いた消化によって、PLA2断片を生産することもできる。タンパク分解の切断部位を同定するために、コンピュータ分析を、(市販のソフトウェア、例えばMacVector, Omega, PCGene, Molecular Simulation, Inc.を使用して)利用することができる。このような、タンパク分解または合成による断片は、アミノ酸残基を、部分的または完全にPLA2の機能を阻害するのに必要なだけ何個でも含んでいてよい。好ましい断片としては、長さとして少なくとも5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 100個またはそれ以上の個数のアミノ酸長を含むものがあげられる。
【0037】
タンパク質系またはペプチド系の阻害物質はまた、PLA2の優性阻害型変異体であってもよい。「優性阻害型変異体」という語は、天然の状態に対し変異を施されたPLA2ポリペプチドであって、PLA2が通常に相互作用するタンパク質と相互作用して、その結果、内生した天然型PLA2による相互作用を妨害するものを意味する。
【0038】
抗PLA2抗体
本発明において用いる「抗体」という語は、PLA2のある抗原決定基に対する結合能を有するような、完全な分子およびその断片、例えばFab、F(ab')2、およびFvを包含する。これらの抗体断片は、当該抗体に対応する抗原に対し、選択的に結合するようなある能力を保持しており、以下のとおり定義される。
【0039】
(1)Fabは、抗体分子のうち1価の抗原結合部位を含む断片であって、抗体分子全体をパパイン酵素で分解することにより、1個の完全なL鎖、およびH鎖1個の一部を生成させることで生産され得る断片である;
【0040】
(2)Fab'は、1個の抗体分子の断片であって、抗体分子全体をペプシンで処理した後に還元処理を行い、1個の完全なL鎖、および、対応するH鎖の一部を生成させることで得られる断片である;なお、もとの抗体分子1個あたり、2個のFab'が得られる;
【0041】
(3)(Fab')2は、抗体分子全体を、上記の酵素であるペプシンで処理し、引き続いての還元処理を行わないことで得られる抗体断片である;なお、F(ab)2は、2個のFab'断片が2個のジスルフィド結合で互いに結び付いている、Fab'の2量体である;
【0042】
(4)Fv、すなわち、L鎖の可変領域と、2本の鎖として発現したH鎖の可変領域とを含む、遺伝子改変により得られる断片として定義される断片;および
【0043】
(5)単鎖抗体(“SCA”)すなわち、L鎖の可変領域と、H鎖の可変領域とを含み、これらが、遺伝的に融合された一本鎖分子などの適当なポリペプチドリンカーによって連結されている、遺伝子改変により得られる分子として定義される断片。
【0044】
これらの断片を作製する手法は、本技術分野において知られている。(例えば、Harlow および Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)、を参照されたい。なお、ここでは参照のために言及した。)
【0045】
本発明における抗体は、完全なPLA2 またはその断片を免疫抗原として用いることにより、調製することができる。動物を免疫するためのペプチドとして、cDNAの翻訳または化学合成に由来するものを用いることができる。所望の場合はペプチドを精製およびキャリアタンパク質に結合させる。このような、ペプチドに対し化学的にカップリングされて一般に利用される、キャリア物質には、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、および破傷風トキソイドが包含される。カップリングの施されたペプチドを、その後、動物(例えばマウスやウサギ)の免疫に使用することができる。
【0046】
所望に応じて、ポリクローナル抗体をさらに精製してもよい。例えば、対応する抗体の産生を引き起こすペプチドを結合した基体により、結合および溶出を行うことによって、精製を行うことができる。当業者は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を、精製および/または濃縮するための、免疫学分野において一般的な種々の技術について知識を有しているであろう。(例えば、Coligan, et al., Unit 9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1991,を参照されたい。ここでは参照のために言及した。)
【0047】
モノクローナル抗体は、連続継代性培養細胞株のかたちで、抗体分子の産生を供給できるような技術のいずれを用いても、調製することができる。このような技術として、例えば、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法や、EBV-ハイブリドーマ法等がある(Kohler et al. Nature 256, 495-497, 1975; Kozbor et al., J. Immunol. Methods 81, 31-42, 1985; Cote et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 2026-2030, 1983; Cole et al., Mol. Cell Biol. 62, 109-120, 1984)。
【0048】
本技術分野において知られている各種手法によって、PLA2 に対する結合性を示す抗体を同定し、抗体発現ライブラリーから単離することが可能である。例えば、PLA2 への結合性を示す抗体の結合ドメインを同定および単離する手法として、バクテリオファージをベクターとする系があげられる。このベクター系は、大腸菌内のマウス抗体レパトアから(Huse, et al., Science, 246:1275-1281, 1989)、あるいはヒトの抗体レパトアから(Mullinax, et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 87:8095-8099, 1990)、 Fab 断片のコンビナトリアルライブラリーを発現させるために利用されてきた。この方法論を、前もって選択されたリガンドに対して結合性を有するモノクローナル抗体を発現したハイブリドーマ細胞株に適用することもできる。所望のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマは、本技術分野における通常の技術的手段を有する者にとってよく理解される技術を用いた、様々な手法で生産することができ、このような手法についてここでは繰り返さない。これら技術の詳細は、例えばMonoclonal Antibodies-Hybridomas: A New Dimension in Biological Analysis, Roger H. Kennettら編, Plenum Press, 1980;およびU.S. 4,172,124, 等の文献において記述されている。なお、これら文献は参照のために組み込んだ。
【0049】
さらに、「ヒト化された」抗体の種々の組み合わせをもったキメラ抗体分子を生産する方法が、本技術分野において知られており、このような方法には、マウス可変領域をヒト定常領域と連結する手法(Cabily, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3273, 1984)や、マウス抗体の相補性決定領域(CDRs)を、ヒト抗体分子フレームワークに継ぎ合わせる手法(Riechmann, et al., Nature 332:323, 1988)が包含される。
【0050】
アンチセンス化合物
「アンチセンス化合物」という語は、PLA2 mRNA分子の少なくとも一部に相補的であって (Izant and Weintraub, Cell 36:1007-15, 1984; Izant and Weintraub, Science 229(4711):345-52, 1985)、たとえばmRNA翻訳などの、転写後の事象を妨害する能力を有するDNAまたはRNA分子を包含する。PLA2をコードするmRNAのうち少なくとも15個の連続したヌクレオチドに対して相補的な、アンチセンスオリゴマーが好ましい。このようなものは、合成が容易であるとともに、標的となるPLA2産生細胞に導入される際、これより大きな分子よりも問題を引き起こしにくいからである。アンチセンス法の使用は、本技術分野においてよく知られている(Marcus-Sakura, Anal. Biochem. 172: 289, 1988)。好ましいアンチセンス核酸は、配列番号3または4で示されているアミノ酸配列をコードする配列のうち、少なくとも15個の連続したヌクレオチドに対して相補的な核酸配列を含むものである。
【0051】
核酸触媒
「核酸触媒」という語は、ある特定の基質を特異的に認識して、この基質の化学的修飾を触媒するような、DNA分子もしくはDNAを含有した分子 (本技術分野において「DNA酵素(DNAzyme)」としても知られている)、または、RNAもしくはRNAを含有した分子(「RNA酵素(ribozyme)」としても知られている)を意味する。核酸触媒中の核酸塩基は、A, C, G, T またはUであってもよいし、これら塩基の誘導体であってもよい。これら塩基の誘導体は、本技術分野においてよく知られている。
【0052】
典型的には、核酸触媒は、標的核酸を特異的に認識するアンチセンス配列、および、核酸を開裂させる酵素活性部位(ここでは「触媒ドメイン」とも称する)を有している。特異性を達成する目的において、好ましいRNA酵素およびDNA酵素は、配列番号3または4で示されているアミノ酸配列をコードする配列のうち、少なくとも約12-15個の連続したヌクレオチドに対して相補的な核酸配列を含む。
【0053】
本発明において特に有用なRNA酵素のタイプは、ハンマーヘッド型RNA酵素(Haseloff and Gerlach 1988, Perriman et al., 1992)、および、ヘアピン型RNA酵素(Shippy et al., 1999)である。
【0054】
本発明におけるRNA酵素、および該RNA酵素をコードするDNAは、本技術分野においてよく知られている手法を用いて化学的に合成することができる。RNAポリメラーゼプロモーター、例えば、T7 RNAポリメラーゼやSP6 RNAポリメラーゼに対するプロモーターに、操作可能に連結された、(転写によってRNA分子を生成するような)DNA分子から、RNA酵素を調製することもできる。したがって、本発明においては、本発明のRNA酵素をコードするような、核酸分子すなわちDNAまたはcDNAも提供される。ベクターが、DNA分子に操作可能に連結されたRNAポリメラーゼプロモーターをも含む場合、RNAポリメラーゼおよびヌクレオチドと一緒にインキュベーションすることによって、RNA酵素をin vitroで生産することもできる。別の実施形態として、DNAを発現カセットベクターまたは転写カセットベクターに挿入してもよい。合成後に、RNA酵素を安定化する能力を有し、RNA酵素をRNA分解酵素抵抗性となすようなDNA分子へのライゲーションを行ってRNA分子に修飾を施すことができる。また、リポソームによる輸送系へ適用するために、RNA酵素を修飾してホスホチオ(phosphothio)アナログとなすことも可能である。また、この修飾によって、RNA酵素はエンドヌクレアーゼ活性に対し抵抗性を有するものとなる。
【0055】
RNA阻害物質
dsRNAは、ある特定のタンパク質の産生を特異的に阻害するために、特に有用なものである。理論により制限されることを求めるわけではないが、DoughertyおよびParksにより (1995年)、dsRNAによってタンパク質産生を低減し得るメカニズムについてのモデルが提唱されている。このモデルは、近年、Waterhouseらによって(1998年)、修正および展開されている。この技術は、関心を寄せている遺伝子のmRNA、この場合はPLA2タンパク質をコードするmRNA、と本質的に同一な配列を含むdsRNA分子の存在を必要とする。都合のよいことに、このようなdsRNAを、組換えベクターまたは宿主細胞における単一の翻訳領域によって産生させることができる。この領域では、センス配列とアンチセンス配列とが、無関係な配列に隣接しており、これによって、センス配列とアンチセンス配列とがハイブリダイズして、この無関係な配列がループ構造を形成しているようなdsRNA分子の形成が可能となる。PLA2を標的とする適切なdsRNA分子の設計および生産は、十分に当業者の能力の範囲内であり、Dougherty およびParks (1995), Waterhouse et al. (1998), WO 99/32619, WO 99/53050, WO 99/49029,およびWO 01/34815を考慮に入れればなおさらのことである。
【0056】
ここで用いられる用語「スモール干渉RNA」および「RNAi」は、特異的にある遺伝子産物を標的とし、その結果、無発現または低形質の表現型をもたらすような相補的二重鎖RNA (dsRNA)を意味する。より具体的には、このdsRNAは、PLA2 をコードする標的RNAに由来する短いヌクレオチド配列を2個含んでおり、これらヌクレオチド配列が互いにアニーリング可能であるという自己相補性を有していて、標的遺伝子の発現をおそらく転写後レベルで阻害する。RNAi分子についてはFire et al., Nature 391, 806-811, 1998,で記述されており、また Sharpにより、Genes & Development, 13, 139-141, 1999で概説されている。
【0057】
低分子阻害物質
PLA2を抑制する低分子阻害物質は、Lehr (2001) Expert Opin. Ther. Patents (2001) 11 (7):1123-1136,およびHansford et al (2003) Chem. Biochem. 4:181-185.に記載されている。
【0058】
ペプチドおよびペプチドアナログ類
好ましい実施形態において、本発明の方法は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基またはその他の種類のsPLA2タンパク質における同等のアミノ酸残基から本質的に構成されているペプチド、に由来する、立体配置的に束縛された分子を投与する工程を含む。
【0059】
一般に、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基に言及することは、その他の種類のsPLA2タンパク質、例えばsPLA2-IIAの相同分子種など、における同等の残基への言及を包含すると解釈される。
【0060】
「立体配置的に束縛された分子」という語は、立体配置的に束縛されたペプチド、ならびに、立体配置的に束縛されたペプチドアナログおよび誘導体を意味する。
【0061】
したがって、本発明における立体配置的に束縛された分子は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74残基から本質的に構成されているペプチド、およびそのアナログもしくは誘導体を包含する。
【0062】
「アナログ」という語は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質における70から74残基のように存在する自然発生型のアルファ‐アミノ酸に対して、化学的に類似した構造を有する分子を示す。具体例として、gem-ジアミノアルキル基またはアルキルマロニル基を含有する分子が包含される。
【0063】
「誘導体」という語は、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74残基のように存在する自然発生型のアルファ‐アミノ酸中の、1個以上の側鎖が修飾されているアルファ-アミノ酸を包含する。したがって例えば、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74残基において存在する自然発生型アミノ酸を、対応するD-アミノ酸やN-メチルアミノ酸などの、コードされていないまたは修飾された様々なアミノ酸で、置換することができる。その他の修飾として、ヒドロキシル、チオール、アミノ、およびカルボキシル基を、化学的に類似した各種置換基で置換することなどが挙げられる。
【0064】
本発明は、立体配置的に束縛された、生物学的に活性なヒトsPLA2-IIAペプチド (アミノ酸残基70から)の擬ペプチド、の使用を包含する。擬ペプチドはすなわち、上記ペプチドの活性を擬態し、そのことによって、前立腺ガン細胞のsPLA2-IIA 依存性増殖を阻害する能力を示すようなアナログおよび誘導体である。これら擬ペプチドは、三次元形状および生物活性の双方について、ここで記述されているsPLA2-IIAペプチド自体と、実質的に同一であることが好ましい。実質的同類とは、ペプチド中の、sPLA2-IIA酵素と反応する置換基どうしの幾何学的位置関係が保存されていることを意味すると同時に、その擬ペプチドが、前立腺ガン細胞のsPLA2-IIA 依存性増殖を阻害することを意味する。
【0065】
擬ペプチドは、あるペプチドの生物活性を擬態する分子であるが、化学的特性については、もはやペプチド性ではない。厳密な定義によれば、擬ペプチドとは、ペプチド結合(すなわち、アミノ酸間のアミド結合)をまったく含有していない分子のことをいう。しかし、擬ペプチドという用語は、特性について完全なペプチド性ではない分子、たとえばシュード(pseudo-)ペプチド、セミペプチドおよびペプトイド(peptoids)などを示すために使用されることがある。完全にペプチド性であるか部分的にペプチド性であるかに関わらず、本発明の方法において使用できる擬ペプチドでは、反応性の化学的部位の空間的配置が、該擬ペプチドの元にあたるペプチドの活性基の三次元配置に、非常に類似している。このようの活性部位の幾何学的類似の結果として、上記擬ペプチドは、上記ペプチドの生物活性と類似した生物学的システムに対して効果を有する。
【0066】
ある特定のペプチドの、ペプチド自体でなく擬態物を用いることには、明らかな利点がある。というのは、ペプチドは一般に、望ましくない二つの特性:(1)生物学的利用能が低いこと;および (2)作用の持続時間が短いこと、をしめすからである。擬ペプチドは、これら主要な二つの障害を回避する手段を提供し、このことは、この分子が経口投与で有効かつ作用を長時間持続するのに十分な程度に小さいためである。擬ペプチドによれば、コストをかなり節減し、また患者の服薬率を相当に向上させることもでき、このことは、擬ペプチドが、ペプチドの腸管外投与とは違って経口的に投与可能なためである。さらには、擬ペプチドは生産においてペプチドよりもはるかに安価である。
【0067】
ヒトsPLA2-IIAペプチドの70から74残基に基づき、同様の生物活性ひいては同様の効用を有する、適当な擬ペプチドは、容易に利用可能な技術を用いて開発することができる。よって、例えば、ペプチド結合を、当該擬ペプチドに元のペプチドと同様の構造をとらせて同様の生物活性をもたせるような非ペプチド結合と、置換してもよい。アミノ酸の化学基を、同様の構造を有する他の化学基で置換することによって、さらなる修飾を行うことも可能である。ヒトsPLA2-IIAの70から74残基に基づいたsPLA2-IIAペプチドを元にした擬ペプチドを開発するには、元のペプチドの三次構造をNMR分光法、結晶解析、および/またはコンピュータ利用の分子モデリングにより決定することが助けとなる。これらの技法は、元のペプチドよりも、作用力価および/または生物学的利用能および/または安定性、の高いアナログ/誘導体を開発するために役立つ(Dean, 1994, BioEssays, 16: 683-687; Cohen and Shatzmiller, 1993, J. Mol. Graph., 11: 166-173; Wiley and Rich, 1993, Med. Res. Rev., 13: 327-384; Moore, 1994, Trends Pharmacol. Sci., 15: 124-129; Hruby, 1993, Biopolymers, 33: 1073-1082; Bugg et al., 1993, Sci. Am., 269: 92-98)。
【0068】
ヒトsPLA2-IIAの70から74残基から本質的に構成されている、あるsPLA2-IIAペプチドの構造に関する情報を利用し、三次元データベースを検索して同様の構造を有する分子を同定することができる。これには例えばMACCS-3DあるいはISIS/3D (Molecular Design Ltd., San Leandro, CA)、ChemDBS-3D (Chemical Design Ltd., Oxford, U.K.)、および Sybyl/3DB Unity (Tripos Associates, St. Louis, MO)などのプログラムが用いられる。
【0069】
化学構造のデータベースは、Cambridge Crystallographic Data Centre (Cambridge, U.K.)、Chemical Abstracts Service (Columbus, OH)や、ACD-3D (Molecular Design Ltd)などの、多数の情報源から入手可能である。
【0070】
de novo設計用のプログラムとしては、Ludi (Accelrys)、Leapfrog (Tripos Associates)や、Aladdin (Daylight Chemical Information Systems, Irvine, CA)などが挙げられる。
【0071】
当業者には、擬ペプチドの設計において、これらデータベースを用いた設計または同定による構造のわずかな変更、あるいは化学構造の調整が必要となりうることが理解されるであろう。
【0072】
ヒトsPLA2-IIAの70から74アミノ酸残基に基づいたペプチド誘導体および擬ペプチド化合物について、ここで説明する解析を用いて、前立腺ガン細胞のsPLA2-IIA 依存性増殖を阻害する能力を有するかを確認する試験を行うことができる。ペプチド誘導体および擬ペプチドは、少なくとも90%の、好ましくは少なくともcFLSYRと同程度の、前立腺ガン細胞に対する増殖抑制活性を有することが好ましい。また、ペプチド誘導体および擬ペプチドは、sPLA2-IIAを特異的に阻害することが好ましい。
【0073】
本発明の方法において用いられる分子は、たとえばペプチドは、立体配置的に束縛されている。立体配置的な束縛とは、ペプチドが安定であり、三次元形態で好ましい立体配座をとっていることを意味する。立体配置的な束縛には、ペプチドにおけるある残基が、立体配置上の可動性を制限されていることなどの、局所的な束縛;一群の残基について立体配置上の可動性が制限されて、これら残基が何らかの二次的な構造単位を形成しているなどの、領域性の束縛;および、ペプチド全体の構造が問題となる全体的な束縛、が包含される。
【0074】
ペプチドの活性構造を、環化などの共有結合による修飾、または、ガンマ‐ラクタムもしくは他のタイプの架橋の組込みによって、安定化することができる。例えば、側鎖を主鎖に対して環化反応させて、互いに反応した部位の双方にL-ガンマ-ラクタム成分を作り出すことができる。一般的には、Hruby et al., 1992, “Applications of Synthetic Peptides,” in Synthetic Peptides: A User’s Guide: 259-345 (W. H. Freeman & Co.)を参照されたい。環化を達成するために、例えば、シスチン架橋の形成、それぞれの末端アミノ酸のうちアミノ末端基とカルボキシ末端基とのカップリング、Lys残基あるいは類縁の相同体のアミノ基を、Asp、Gluあるいは類縁の相同体のカルボキシ基とカップリングさせること、なども用いることができる。ポリペプチドのアルファ‐アミノ基と、リジン残基のイプシロン‐アミノ基との、ヨード酢酸無水物を用いたカップリングも採用できる。例えば、Wood and Wetzel, 1992, Int'l J. Peptide Protein Res. 39: 533-39を参照されたい。
【0075】
US 5,891,418に記載されている別の手法では、金属イオンと錯形成した骨格を、ペプチドの構造中に入れ込んでいる。典型的には、好ましい金属‐ペプチド骨格は、ある錯体形成金属イオンの配位圏に必要な、各々必要数の配位基にもとづいて形成されている。一般に、有効性を示す金属イオンの大多数において、配位数は4から6である。ペプチド鎖中の配位基の種類には、官能性としてアミン性、アミド性、イミダゾール性、グアニジノ性などの窒素原子; チオールまたはジスルフィドにおける硫黄原子;および官能性としてヒドロキシ、フェノール、カルボニル、カルボキシルなどの酸素原子が包含される。さらに、上記ペプチド鎖または各個のアミノ酸を化学的に変換して、例えばオキシム、ヒドラジノ、スルフヒドリル、フォスフェート、シアノ、ピリジノ、ピペリジノ、またはモルフォリノなどの配位基を含有させることもできる。
【0076】
さらなる手法として、二機能性の架橋物質を、例えば、N-スクシンイミジル 3-(2 ピリジルジチオ) プロピオネート、スクシンイミジル 6-[3-(2 ピリジルジチオ) プロピオンアミド] ヘキサノエート、スルフォスクシンイミジル 6-[3-(2 ピリジルジチオ) プロピオンアミド] ヘキサノエートなどを用いることができる(米国特許5,580,853を参照されたい)。
【0077】
上述したペプチドおよび誘導体を化学的に合成する技術については、上記引用文献中で記述されており、また、BorgiaおよびFields, 2000, TibTech 18: 243-251において総説がなされており、この総説に記載の引用文献中で詳細に説明されている。
【0078】
・診断方法
本発明はまた、ヒトおよび他の哺乳類において前立腺ガンを診断するための、核酸に基づいた方法およびタンパク質に基づいた方法を包含する。
【0079】
ここで用いられる「診断(diagnosis)」という語、および、例えば“diagnose”、“diagnosed”や“diagnosing”等の、ただしこれらだけに制限されない変化形は、臨床段階での初期の診断のみに制限されることはなく、臨床段階でのいかなる診断および予後をも包含すると解釈されるものとする。例えば、ここでいう「診断アッセイ」形態とは、患者の寛解を評価すること、または、例えば外科手術もしくは化学療法の後に、病気の再発あるいは腫瘍の再発を監視すること、または、初期腫瘍の転移の存在を判定することに、ひとしく関連する。ここでいうアッセイの使用もすべて、本発明に包含される。
【0080】
したがって、PLA2の発現を、RNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれでも、前立腺ガンを診断するために、または前立腺ガンの進行を監視する予後徴候として用いることができる。
【0081】
核酸に基づいた診断アッセイは、長さが少なくとも約20ヌクレオチドであって、PLA2をコードするRNAに特異的にハイブリダイズする、もしくはPLA2をコードするRNAからcDNAを増幅するプローブを用いた、試料におけるRNAレベルの検出または相対的な計量にもとづくことが好ましい。都合のよいことに、いかなる形態のハイブリダイゼーションアッセイも、試料中の、PLA2をコードするRNAを検出するために使用可能である。すなわち、例えばマイクロアレイ技術を利用した高処理スクリーニング系 、または通常のノーザンハイブリダイゼーション法、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法 (すなわちRT-PCR)が使用可能である。生体内の局在性の検出も利用でき、組織切片を用いて行うことができる。
【0082】
診断用イムノアッセイには、PLA2の少なくとも約5から10個の連続したアミノ酸残基を含むペプチド領域の一箇所のみに結合するような、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を包含する抗体、またはFab 断片、F(ab')2 断片もしくは scFv 断片、を利用することが適当である。
【0083】
本発明はさらに、ここで記述されているアッセイへの使用に適した、合成もしくはリコンビナントのペプチド、または抗体のいずれをも包含する。
【0084】
これら診断方法の好ましい実施形態において、PLA2はsPLA2-IIAまたはcPLA2-αである。
【0085】
別の態様において、本発明は、前立腺ガンに対する疾病素質を診断する方法に関する。
【0086】
したがって、本発明は一態様において、被験者の前立腺ガンに対する疾病素質を評価する方法であって、前記被験者のPLA2遺伝子において、多型または後成的変化が存在するかを確認する工程を含む方法を提供する。
【0087】
ある実施形態において、前記多型は、NCBIデータベースやCeleraデータベースのような公的または民間データベースにおいて既に同定されているPLA2多型である。
【0088】
本発明は、前立腺ガンに対する感受性を診断するための、核酸に基づいた方法およびタンパク質に基づいた方法を包含する。
【0089】
PLA2遺伝子における多型は、点変異(すなわち一塩基多型(SNP))、欠失および/または挿入であってよい。このような多型の検出は、PLA2遺伝子由来のDNA断片を分離して塩基配列解析を行うことで行ってもよいし、あるいは、個体からmRNAを分離して、これからDNAを(例えばRT-PCRで)合成して塩基配列解析に供することで行ってもよい。多型の検出はまた、識別用のオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーション法や、識別用のオリゴヌクレオチドプローブを用いた増幅法によっても行うことができる。適切な方法として、ゲノムDNAのサザン分析;制限酵素分解による直接的な変異解析;RNAのノーザン分析; 変性高速液体クロマトグラフィ(DHPLC); 遺伝子単離および塩基配列解析; 遺伝子増幅産物を用いた、アレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション; エキソントラッピング法, シングル・ベース・エクステンション(SBE);または、PLA2タンパク質の解析などが挙げられる。
【0090】
ある実施形態において、後成的な変化は、被験者のPLA2遺伝子における異常メチル化、または、被験者のPLA2遺伝子近隣における、内在レトロウィルスプロモーターもしくは転移因子プロモーターの挿入である。
【0091】
・治療剤のスクリーニング方法
また、本発明には、前立腺ガンの治療に有効な治療剤を明らかにする各種方法も包含される。
【0092】
したがって、第一の態様において、本発明は、前立腺ガンの増殖を低減または阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物の存在下および非存在下でのPLA2活性を測定する工程を含み、該化合物の存在下でPLA2活性が低減されることによって、該化合物が前立腺ガン細胞の増殖を低減または阻害することが示される方法を提供する。
【0093】
別の態様において、本発明は、前立腺ガンの増殖を低減または阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物の存在下および非存在下でのPLA2発現レベルを測定する工程を含み、該化合物の存在下でPLA2発現が低減されることによって、該化合物が前立腺ガン細胞の増殖を低減または阻害することが示される方法を提供する。
【0094】
この態様のうち、さらに一実施形態において、この方法は、PLA2を発現させる能力を有する翻訳系を候補化合物に曝露する工程、および、該化合物の存在下におけるPLA2の発現レベルを、該化合物が存在しない以外は同様の条件下で得られるレベルと比較する工程を含む。前記翻訳系は、無細胞翻訳系であってよい。また、前記翻訳系は真核または原核細胞を含んでいてもよい。
【0095】
さらに別の態様において、本発明は、前立腺ガンの増殖を低減または阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物がPLA2基質へのPLA2の結合を調節する能力を測定する工程を含み、該化合物の存在で基質へのPLA2の結合レベルが変化することによって、該化合物が前立腺ガン細胞の増殖を低減または阻害することが示される方法を提供する。
【0096】
これらスクリーニング方法の好ましい実施形態において、PLA2はsPLA2-IIAまたはcPLA2-αである。
【0097】
・治療方法
我々は、前立腺ガン細胞への外来性sPLA2-IIAの投与が、細胞増殖を刺激することを示した。また、PLA2阻害物質の投与が、sPLA2-IIA介在の細胞増殖を阻害することを示した。従って、PLA2阻害物質を、細胞において前立腺ガン細胞の増殖を阻害または低減するために用いることができ、特に、前立腺ガンの細胞のような、高いsPLA‐IIA活性を有する細胞において用いることができる。
【0098】
PLA2阻害物質は、前立腺ガン、とりわけAIPCに対して、治療上に用いることができる。ここで用いられる「治療上に」という語は、予防的投与および治療的投与の双方を意味している。よって、PLA2阻害物質を、ハイリスクの患者に、前立腺ガンの可能性および/または重症度を減らす目的で投与してもよいし、既に前立腺ガンを呈している患者に投与してもよい。
【0099】
上述したペプチド、アナログおよび低分子阻害物質は、各種成分と組み合わせて組成物とすることが好ましい。好ましくは、この組成物を、薬剤として許容される担体または希釈剤と組み合わせて、(ヒト用あるいは動物用などの)医薬製剤を製造する。適当な担体および希釈剤としては、リン酸緩衝食塩水などの等張食塩水、水、ドライパウダー、ミセル等が挙げられる。この製剤の投与は、本技術分野で知られているいかなる手段によっても行うことができる。輸送方式として、直接注射、局所的輸送(例えば、噴霧による経鼻輸送または点鼻) や、経口輸送などが挙げられるが、これらに限定はされない。よってこの製剤を、とりわけ、局所、非経口、筋内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮投与用に調剤することができる。
【0100】
典型的には、各ペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の投与量は0.01から30 mg/kg体重であり、好ましくは0.1から10 mg/kgであり、さらに好ましくは0.1から1 mg/kg体重である。
【0101】
記載した投与経路および投与量は、目安にすぎない。熟練した従事者であれば、個別の患者あるいは条件のいずれに対しても、最適な投与経路および投与量を容易に決定できるからである。
【0102】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに説明する。この実施例は例証のみを意図したものであり、限定的なものではない。
【実施例】
【0103】
・材料と方法
細胞株および培養:細胞株LNCaP、DU145およびPC3を、American Type Culture Collection (Rockville, MD)から購入した。すべての細胞培養物を、LNCaPは5% FBS含有の、DU145およびPC3は10% FBS含有のRPMI 1640中で、37℃、5% CO2の加湿環境中で維持した。アンドロゲン添加を伴う実験については、細胞を、フェノールレッドを含有せず、炭ろ過された同濃度のFBSを含有するRPMI 1640中で培養した。本項で説明する実施例について、LNCaPでは継代数が30から45の間、DU145では65から80の間、PC3では25から40の間の細胞を使用した。
【0104】
試薬:sPLA2-IIAを、記載のように、ヒトsPLA2-IIAを発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞株(5A2)に由来する培養上清からイムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製した(Bidgood, M.J. et al. J. Immunol. (2000) 165:2790-2797)。sPLA2-IIAの不活性型変異体であるH48QをコードするcDNA を、標準的な分子的手法を用い、オリゴヌクレオチド介在の部位特異的変異誘発によって構築した。このcDNAを、チャイニーズハムスター卵巣細胞において、ヒト メタロチオネインプロモーターによる制御下で発現させた。H48Qを、この細胞株由来の培養上清から、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。純度の確認は、銀染色したSDSゲルにおける一本のバンドの存在確認、および、アミノ末端のペプチド配列解析によって行った。精製されたタンパク質において、放射標識大腸菌アッセイ(Church, W.B. et al. (2001), J. Biol. Chem. 276:33156-33614)による確認を行うと、酵素活性は検出されなかった。変異型タンパク質およびsPLA2-IIAのいずれも、ELISA法(Smith, G.M. et al., Br. J. Rheumatol. (1992) 31: 175)で定量した。sPLA2-IIA阻害物質(Church, W.B.ら)を、Fmoc (N-(9-フルオロエニル)メトキシカルボニル) 固相化学法を用いて、樹脂からの切り離しより前に側鎖保護基を除去することなく合成した。ペプチドの環化を、標準的なペプチド合成活性化および化学的カップリングを用いて、脱保護よりも前に行った(Auspep, Melbourne)。cPLA2 阻害物質であるピロリジン-1は、Michael Gelb博士のご厚意により入手した。
【0105】
試験において使用した抗体としては、ポリクローナル 抗sPLA2-IIa抗体(160502, Cayman Chemicals)、我々が産生させたモノクローナル 抗sPLA2-IIA抗体 4A1 (Smith, G.M. ら)、および抗cPLA2 ポリクローナル抗体(SC-438, Santa Cruz)があげられる。
【0106】
細胞増殖アッセイ:細胞を、FBS含有RPMI 0.1 mlと共に、96ウェルプレートのウェルあたり1 × 104 個ずつ蒔いた。密度70-80%に達した(約48時間)のち、培地を、種々の処理剤を含むものと、3日ごとに交換した。処理の後、MTSアッセイ(CellTiter 96(登録商標) AQueous Assay; Promega, Madison, WI)を用いて生細胞数を測定した。手短にいうと、20 ulのMTS溶液を各ウェルに加え、細胞を1時間インキュベートした。490 nmにおける吸光度を、ELISAマイクロプレートリーダーを用いて測定した。各試験は4連で行い、少なくとも3回繰り返して行った。
【0107】
フローサイトメトリー解析:細胞を、25 mlフラスコに、上述した条件で蒔いた。トリプシン処理および細胞数測定という処理を行ったのち、LNCaP細胞(1×106個)を1 mL PBSに希釈し、0.2 mL 0.4 % Triton X-100を加えて、5分間、R/T、50μlのヨウ化プロピジウム(50 μg/mL)溶液および20 μLのRNA分解酵素(10 mg/mL)の存在下でインキュベートした。細胞あたりDNA量を、FACScaliburフローサイトメーターおよび CellQuestソフトウェア (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いたフローサイトメトリーによって測定した。統計分析は、試料あたり10,000事象に対して実施した。
【0108】
RT-PCR:LNCaP、DU145またはPC-3細胞から、Trizol試薬(LifeTechnologies, Inc.)を用いて、細胞の全RNAを分離した。第一鎖cDNAを、5μgのRNAから、cDNA予備増幅システム (Life Technologies, Inc.)で、SuperScript II逆転写酵素およびオリゴ(dT)プライマーを用いて合成した。これを、Amplitaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer Life Sciences, Boston, MA) を使用した標準的なPCR反応における鋳型として用いた。増幅産物を、MetaPhorアガロース(FMC BioProducts, Rockland, ME)を材料とした2% TAEアガロースゲル上で解析し、UV照射下で撮像した。25および100 bpのDNAラダー(Life Technologies, Inc.)を、大きさの基準として用いた。プライマーは、GenBankデータベース(National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD)に蓄積されたヒトsPLA2-IIA mRNA (NM_000300.2)に基づいて設計され、その構造は以下:
フォワード: 5'-TTTGTCACCCAAGAACTCTTAC-3', リバース: 5'-GGGAGGGAGGGTATGAGA-3'
であった。
【0109】
組織:正常な前立腺は、脳死状態の臓器提供者から、以前に記述されているように(Chetcuti et al., (2001) Cancer Research, 61:6331-6334)入手した。良性前立腺過形成の組織を、経尿道的前立腺切除術から入手した。ガン組織は、前立腺全摘出術から入手した。被験者からはインフォームド・コンセントを得た。また、研究手順はCentral Sydney Area Health Service Ethics Review Committeeにより認可を受けた。
【0110】
免疫組織化学法:前立腺組織(正常、良性過形成およびガン性)を、いずれも10%ホルムアルデヒド溶液中、<24時間で固定し、パラフィン包埋した。組織切片 (5μm)を、1%ヤギ血清中に溶解された適当な一次抗体を共存させマイクロウェーブによる抗体賦活化処理に供した後、1時間、37℃の条件でインキュベートした。二次抗体として、ビオチン化 ヤギ抗ウサギまたはマウスIgG 抗体を、1% 通常ヤギ血清で1/200に希釈して用いた。アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体系 (Vector Laboratories)を用いてシグナルを増幅し、DAB液状発色基質系(Dako)を用いて可視化した。切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。各試料について、アイソタイプおよび試験に対するネガティブコントロール試験を、それぞれ、一次抗体に替えてウサギIgGまたは1%ヤギ血清を用いることで行った。
【0111】
画像解析:イムノペルオキシダーゼ染色は、免疫後IgGを使用した場合の濃度が、免疫前IgG使用(アイソタイプコントロール)、およびIgGなし(試験コントロール)の場合で観察された濃度よりも明らかに高いときに、陽性かつ特異的であるとみなした。特異的な染色を、免疫陽性の正常またはガン性上皮細胞の割合に応じて、記載のように等級付けした(Kommoss, 1989 Anal. Quant. Cytol. Histol. 11:298-306)。簡潔にいうと、陽性染色された正常またはガン性上皮細胞のスライドあたり割合を、三つのグループに分類した: グループ1, 0-33%; グループ2, 34-66%;およびグループ3, 67-100%。ゼロは、特異的染色を呈する細胞がなかったことを示す。
【0112】
統計分析:統計分析には、Number Cruncher Statistical System (NCSS, Kaysville, UT)を使用した。データの分析を、一元配置分散分析および相関係数によって適切なように行った。両側P値<0.05のとき、有意であるとした。
【0113】
・実施例1:sPLA2-IIAは前立腺ガン細胞において誘導され、AIPCにおいて恒常的に活性化している。
我々は、Serial Analysis of Gene Expression (SAGE)のデータベースを検索し、前立腺ガンにおける各種PLA2酵素の定常状態mRNAレベルをそれぞれ確認した。SAGEに用いたcDNAライブラリーは、それぞれ、PR317正常前立腺、PR317前立腺ガンであり(www.ncbi.nlm.nih.gov/SAGE)、いずれも顕微解剖された前立腺組織に由来して得られたものである。我々は、sPLA2-IIA mRNAレベルが、前立腺ガンにおいて正常前立腺の22倍高く、一方、他のものは、前立腺のライブラリーでは発現されていないか、ガンにおいて変化が認められないことを明らかにした。SAGEの結果を裏付け、また、発現解析をアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)まで拡張するために、我々は、前立腺全摘出術を受ける以前に3か月間のアンドロゲン除去療法を受けていた患者の前立腺組織におけるsPLA2-IIA発現を、免疫組織化学法によって調べた。アンドロゲン除去療法後も検体に残存しているガン細胞が、AIPCに最も近いと考えられた。ただし、これらは前立腺内に限られていた。対照として、アンドロゲン除去療法を受けることなく前立腺全摘出術を受けた患者からのガン検体を利用した。免疫組織化学法には2種類の抗体を用い、いずれの場合も同様の発現パターンが示された。対照群においては、(N=50)、ガン細胞に隣接した良性の腺において弱く不均一な染色が認められ(図1のAおよびC)、ガン細胞において非常に強い染色が認められた (図1のC)。アンドロゲン除去群においては(N=25)、良性の腺の染色はなくなり、一方AIPC細胞はsPLA2-IIA発現を維持していた(図1のB およびC)。我々はまた、sPLA2-IIA対応の染色の程度は、腫瘍の悪性度および術後のPSAレベルと明らかに関連していることを明らかにした(データ非表示)。sPLA2-IIAの染色体座位(1p35.1-36)が、前立腺ガン感受性遺伝子座であるCAPB (Gibbs et al (1999) Am. J. Hum. Genet. 64:776-787)と重複していることも明らかになった。cPLA2-αの免疫組織化学染色については、アンドロゲンの状態に関わらず、正常細胞とガン細胞とで差異は認められなかった(データ非表示)。
【0114】
アンドロゲン除去後の良性の腺においてsPLA2-IIAの発現がなかったことは、sPLA2-IIA遺伝子の発現にアンドロゲンが必要であることを示唆している。このことを検証するために、我々は、MatInspector Release 5.3 (Genomatix)を用いてsPLA2-IIA遺伝子の5’‐隣接領域を探索し、-546から-527のアンドロゲン応答エレメント(ARE)、GAGGTAAATGGTATTCTC を見出した。次に、我々は、アンドロゲン応答性のヒト前立腺ガン細胞株であるLNCaPを、種々の量のアンドロゲンで処理し、sPLA2-IIAのmRNAおよびタンパク質のレベルをRT-PCRおよびELISAにより測定した(データ非表示)。実際に、1 nM アンドロゲン処理後に、sPLA2-IIA 転写産物レベルの上昇が認められた。これに対し、3 kb のゲノムDNA中、cPLA2-α遺伝子の5-隣接領域において、AREは認められなかった。アンドロゲンによる処理は、cPLA2-αのmRNAおよびタンパク質のレベルに対して影響を及ぼさなかった(データ非表示)。併せて鑑みると、これらの結果は、sPLA2-IIAの発現は通常アンドロゲンに依存しcPLA2-αの発現は依存しないこと、および、AIPCでは、sPLA2-IIAの発現が、まだ明らかでないメカニズムを経てアンドロゲン非依存性になることを示している。
【0115】
・実施例2:前立腺ガン細胞におけるsPLA2-IIAの発ガン作用。
前立腺ガン細胞の増殖に対するsPLA2-IIAの生物学的関連を調べるために、LNCaP細胞を、添加量を低濃度から順に割り振ったリコンビナントのヒトsPLA2-IIAで処理し、細胞増殖を観察した。LNCaPは、アンドロゲン受容体とPSAの両方を発現する唯一の、入手可能な前立腺ガン細胞株である。3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメチルフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム (MTS)アッセイで測定すると、外来性に添加されたsPLA2-IIAは、1 nMもの少量で、一貫してかつ添加量依存性に、LNCaP細胞の増殖を促進した(図2のA)。これに対し、sPLA2-IIAの不活性型変異タンパク質であるH48Qを添加しても、未処理の細胞と比較して促進された結果は示されず(図2のA)、よって、上述の増殖促進効果には酵素活性が不可欠であることが示された。
【0116】
我々は以前、ヒトsPLA2-IIAが、未変性のsPLA2-IIAタンパク質の70から74残基を含むペンタペプチド配列 (70FLSYK74)によって、添加量依存性に阻害されることを示した(Tseng, A., et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:23992-23998)。線状ペプチド配列に固有の屈曲性のために、in vitroの活性分析において、阻害の程度は弱かった。我々は最近、2種類の新規環状ペプチドを設計した(Church, W.B. et al.)。これらは、cFLSYR、ならびに、そのFおよびYが2-ナフチルアラニンで置換された環状ペプチド(c(2NapA)LS(2NapA)R)である。いずれも、効力が線状ペプチドよりも顕著に向上していた。外来性sPLA2-IIAの、前立腺ガン細胞数に対する強い促進効果は、sPLA2-IIA阻害物質 cFLSYRによって、試験した全濃度において完全に阻止された(図2のB)。
【0117】
我々は次に、sPLA2-IIAが、LNCaP細胞の分布に対して、細胞周期の各種段階においてどのように作用するかを確認する目的で、フローサイトメトリー分析を行った。sPLA2-IIAを含有した培地中では、未処理の細胞と比較して、G1期にあるLNCaP細胞の割合が、74%から62%に減少し、これに対応して、G2/M期の細胞が増加していた(図2のC)。sPLA2-IIAおよびその阻害物質(cFLSYR)の双方が存在する条件では、G1およびG2期の細胞の比率は、基礎レベルまで回復した(図2のC)。これらの結果により、前立腺ガン細胞における、sPLA2-IIA酵素活性の生物学的な重要性が立証され、また、sPLA2-IIA誘導性の細胞増殖が、少なくとも部分的には、G1期からG2/M期へ移行する細胞の比率が増加することに起因すると説明される。
【0118】
・実施例3:sPLA2-IIAの発ガン作用にはcPLA2-α活性が必要である。
近年、エイコサノイド産生に対するsPLA2の作用を説明するために、2種類のモデルが提唱されている(Murakami, M., Kudo, I. (2002) J. Biochem. 131:285-292)。一つは、膜リン脂質の直接開裂である。このモデルでは、sPLA2が形質膜リン脂質に直接結合し、遊離されたアラキドン酸が、エイコサノイド産生の基質となる。リゾリン脂質および/またはアラキドン酸代謝による産物エイコサノイドが、カルシウム動員を介して、内生cPLA2-αの間接的な活性化を制御する。ここで増強されたcPLA2-α活性が、今度は、結果としてエイコサノイド産生を増強する。第二のモデルは、細胞表面GPI結合型ヘパラン硫酸プロテオグリカン受容体を介した、細胞内エイコサノイド経路の、間接的な調節である。内部移行したsPLA2が、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ制御のリン酸化を介したcPLA2-α活性化を経由して、直接または間接的に、下流の酵素系にアラキドン酸を供給する。
【0119】
sPLA2-IIA誘導性の細胞増殖が、cPLA2-αに依存しているかを確認するために、LNCaP細胞を、一定の有効量のsPLA2-IIA (1 nM)の存在下または非存在下で、種々の添加量の、cPLA2選択的阻害物質であるピロリジン-1(Ghomashchi, F. et al. (2001) Biochim. Biophys. Acta Biomembranes 2:160-166)で処理した。cPLA2-αを遮断すると、sPLA2-IIA誘導性の細胞増殖は完全に消失し(図3)、cPLA2-α活性がsPLA2-IIA誘導性の細胞増殖に必要であることが証明される。sPLA2-IIAの非存在下では、cPLA2-α阻害物質は、細胞増殖に対して、影響を及ぼさなかった。このことは、LNCaP細胞において、cPLA2-αが独立的に細胞増殖を促進するわけではないことを示唆する(図3の説明を参照)。
【0120】
・実施例4:sPLA2-IIA阻害物質は、内因性の増殖を抑制する。
我々による、AIPCにおいては増殖を促進するsPLA2-IIAが恒常的に発現しているという知見に基づいて、我々は、sPLA2-IIA の、AIPC治療の標的としての可能性に注目した。我々は、PLA2阻害物質を用いると、COX阻害物質を単独で用いるよりもよい成果が得られると推論する。後者はプロスタグランジンの産生しか抑制しないからである。
【0121】
内生のsPLA2-IIAを遮断することのの、細胞増殖に対する効果を試験するために、我々は、まず、sPLA2-IIA mRNAの基礎レベルを、3種類のヒト前立腺ガン細胞株において確認した。阻害物質の一般的な毒性の可能性もまた拡張するために、アンドロゲン非依存性の細胞株であるPC-3およびDU145を、実験に含めた。sPLA2-IIAをコードするmRNAは、LNCaP およびPC-3と違ってDU-145においては検出されなかった(図4のA)。我々は、次に、個々の阻害物質、cFLSYRおよびc(2Nap)LS(2Nap)Rの、細胞増殖に対する効果を、ある範囲の添加量(1-100 nM)にわたって試験した。LNCaPおよびPC-3細胞の増殖が顕著に減少し、最小有効量は、いずれの阻害物質についても1 nMであった(図4のB)。これに対し、どちらの阻害物質も、DU145に対しては効果を及ぼさなかった。これは、おそらく内生sPLA2-IIAの欠如のためであろう。このように、少量で有効であること、および、内生のsPLA2-IIAを含有する細胞株に対してのみ特異的に有効であることは、非特異的な細胞毒性では、阻害効果を説明し難いということを示している。
【0122】
要約すると、常態ではアンドロゲン誘導性であるsPLA2-IIA 遺伝子発現が、アンドロゲン非依存性前立腺ガンにおいては恒常的に活性化されている。外来性に添加されたsPLA2-IIAは、前立腺ガン細胞の増殖を、その酵素反応生成物およびcPLA2を介して促進する。AIPCを含む前立腺ガンについて、sPLA2阻害物質によって、より良い治療成果の達成が期待できる。
【0123】
ここまで本明細書において言及されている文献はすべて、参照の記載によってその全体が組み込まれている。上述した本発明の方法およびシステムの様々な改良例および変形例が、本発明の範囲および思想から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。ここまで、本発明を、特定の好ましい実施形態と関連付けて説明してきたが、特許請求の範囲に記載された発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されないものと理解する。さらには、分子生物学あるいは関連分野における知識を有する者にとって明らかとなるような、本発明を実施するための上述の手段に関する種々の改変は、本発明の範囲内であるとみなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺ガン細胞の増殖を阻害または低減する方法であって、前記細胞に対してPLA2阻害物質を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前立腺ガンを治療する方法であって、治療を要する患者にPLA2阻害物質を投与する工程を含む方法。
【請求項3】
前立腺ガン細胞がアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)細胞である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
PLA2阻害物質がcPLA2-αの阻害物質である請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
PLA2阻害物質がsPLA2-IIAの阻害物質である請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
PLA2阻害物質が、ヒトsPLA2-IIAタンパク質の70から74アミノ酸残基またはその他の種類のsPLA2タンパク質における同等のアミノ酸残基から本質的に構成されているペプチド、に由来する、立体配置的に束縛された分子である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
立体配置的に束縛された前記分子が、環状分子である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
立体配置的に束縛された前記分子が、環状ペプチドまたはその誘導体である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
立体配置的に束縛されたペプチドが、下記式:
A1-A2-A3-A4-A5
(式中、A1はF、Y、W、または2Napであり、A2はLまたはIであり、A3はSまたはTであり、A4はF、Y、W、または2Napであり、A5はRまたはKである。)
の構造を有する環状ペプチドである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドが、cFLSYK、cFLSYRおよびc(2NapA)LS(2NapA)Rからなる群より選ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
cPLA2-αの阻害物質をsPLA2-IIAの阻害物質と併せて投与する請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
被験者において前立腺ガンまたはその転移を検出する方法であって、
前記被験者に由来する被験試料において発現しているPLA2 mRNAのレベルを測定する工程;および
(i)で測定されたPLA2 mRNAの前記レベルを、健康なまたは正常な個体に由来する対照試料において発現しているPLA2 mRNAのレベルと比較する工程
を含み、
(i)による被験試料のPLA2 mRNAのレベルが、健康なまたは正常な個体に由来する前記対照試料でのレベルに比して高いことによって、前記被験者におけるガン細胞の存在が示される方法。
【請求項13】
被験者において前立腺ガンまたはその転移を検出する方法であって、
前記被験者に由来する被験試料におけるPLA2ポリペプチドのレベルを測定する工程;および
(i)で測定されたPLA2ポリペプチドの前記レベルを、健康なまたは正常な個体に由来する対照試料におけるPLA2ポリペプチドのレベルと比較する工程
を含み、
(i)による被験試料の前記PLA2ポリペプチドのレベルが、健康なまたは正常な個体に由来する前記対照試料でのレベルに比して高いことによって、前記被験者におけるガン細胞の存在が示される方法。
【請求項14】
被験者の前立腺ガンに対する疾病素質を評価する方法であって、
前記被験者のPLA2遺伝子において、多型または後成的変化が存在するかを確認する工程を含む方法。
【請求項15】
前立腺ガン細胞がアンドロゲン非依存性前立腺ガン(AIPC)細胞である請求項12ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
PLA2がcPLA2-αである請求項12ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
PLA2がsPLA2-IIAである請求項12ないし14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−140503(P2011−140503A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45395(P2011−45395)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【分割の表示】特願2004−566682(P2004−566682)の分割
【原出願日】平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願人】(504449192)
【Fターム(参考)】