説明

前立腺癌に関連した遺伝子及びポリペプチド

本願は、前立腺癌において発現が著しく上昇する新規ヒト遺伝子CCDC4を提供する。その遺伝子及びその遺伝子によりコードされたポリペプチドは、例えば、前立腺癌の診断において、疾患に対する薬物を開発するための標的分子として、および前立腺癌の細胞増殖を減弱するため、使用され得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より詳細には癌治療および癌診断の分野に関する。特に、本発明は、前立腺癌と関係のある新規遺伝子B3537(CCDC4)によってコードされる新規ポリペプチドに関する。さらに、本発明は新規遺伝子CCDC4に関する。本発明の遺伝子およびポリペプチドは、例えば、前立腺癌の診断に、疾患に対する薬剤を開発するための標的分子として、および、前立腺癌の細胞増殖を減弱させるために、用いることができる。なお、本願は、2004年3月23日出願の米国仮出願第60/555,810号に基づく優先権を主張し、この内容は参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
前立腺癌は西洋諸国の男性に最も多い癌の一つである(Gronberg, Lancet 361: 859-64 (2003))。先進国では、西洋式の食事の普及および高齢者人口の増加のために前立腺癌の発生率が着実に増加している。前立腺特異抗原(PSA)に関する血清検査による早期診断は、治癒手術の機会を提供するとともに前立腺癌の予後を著しく改善させている。しかし、前立腺全摘出術による治療を受けた患者の最大30%は癌を再発する(Hanら、J Urol 166: 416-9 (2001))。最も再発性の高い癌または最も進行した癌はアンドロゲン除去療法に対して好反応を示すが、これは前立腺癌の増殖が初期段階ではアンドロゲン依存的であるためである。しかし、この治療法によって治療された患者の大半は最終的にはアンドロゲン非依存性疾患へと進行し、その時点でこの治療法には反応を示さなくなる。前立腺癌の最も重大な臨床的問題は、アンドロゲン非依存性前立腺癌が他のいかなる治療法にも反応しないことである(Gronberg, Lancet 361: 859-64 (2003))。このため、前立腺癌に対してアンドロゲン除去療法以外の新たな治療法を確立することは、前立腺癌の管理にとって切実な課題である。
【0003】
cDNAマイクロアレイ技術は、正常細胞および悪性細胞における遺伝子発現の包括的プロファイル、ならびに悪性細胞および対応する正常細胞における遺伝子発現を比較する能力を提供した(Okabeら、Cancer Res 61: 2129-37 (2001);Kitaharaら、Cancer Res 61: 3544-9 (2001);Linら、Oncogene 21: 4120-8 (2002);Hasegawaら、Cancer Res 62: 7012-7 (2002))。このアプローチは癌細胞の複雑な性質を理解することを可能にし、発癌の機序を解明する一助となる。腫瘍において脱制御される遺伝子の同定は、個々の癌のより正確で間違いのない診断、および新規な治療標的の開発につながる可能性がある(BienzおよびClevers、Cell 103: 311-20 (2000))。腫瘍の基礎をなす機序を全ゲノム的な観点から解明するため、ならびに診断および新規治療薬の開発のための標的分子を探索するために、本発明者らは、23040種の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイを用いて腫瘍細胞の発現プロファイルを分析してきた(Okabeら、Cancer Res 61: 2129-37 (2001);Kitaharaら、Cancer Res 61: 3544-9 (2001);Linら、Oncogene 21: 4120-8 (2002);Hasegawaら、Cancer Res 62: 7012-7 (2002))。
【0004】
発癌の機序を明らかにする目的で計画された研究により、抗腫瘍薬の分子標的を同定することは既に容易である。例えば、Ras(その活性化は翻訳後ファルネシル化に依存する)が関係する増殖シグナル伝達経路を阻害するために当初開発されたファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)は、動物モデルにおけるRas依存性腫瘍の治療に有効であった(Heら、Cell 99: 335-45 (1999))。抗癌剤と、癌原遺伝子受容体HER2/neuに拮抗目的とした抗HER-2モノクローナル抗体トラスツズマブ(trastuzumab)を併用したヒトに対する臨床試験が実施されており、乳癌患者の臨床効果および全般的な生存率の改善が達成されている(Linら、Cancer Res 61: 6345-9 (2001))。bcr-abl融合タンパク質を選択的に不活性化するチロシンキナーゼ阻害剤STI-571は、bcr-ablチロシンキナーゼの構成的活性化が白血球のトランスフォーメーションに決定的な役割を果たす、慢性骨髄性白血病の治療を目的として開発された。これらの種類の薬剤は、特定の遺伝子産物の発癌活性を抑制する目的で設計されている(Fujitaら、Cancer Res 61: 7722-6 (2001))。このため、癌細胞で高頻度に上方制御される遺伝子産物は、新規抗癌剤を開発するための標的候補として役立つ可能性がある。実際に、癌の増殖および進行を引き起こす作用を有する発現異常分子を標的とする新規薬剤は、ある種の癌に対して有効であることが証明されている。このような薬剤には、乳癌に対するハーセプチン(Herceptin)、CMLに対するグリベック(Glivec)(STI571)および非小細胞肺癌に対するイレッサ(Iressa)(ZD1839)が含まれる。
【0005】
いくつかの分子は前立腺癌で過剰発現することが知られており、これらは前立腺癌の治療標的またはマーカーとして同定されている(Xuら、Cancer Res 60: 6568-72 (2000);Luoら、Cancer Res 62: 2220-6 (2002))。しかし、それらの大部分は他の主要臓器でも高度に発現される。したがって、これらの分子を標的とする薬剤は、癌細胞に対して毒性を持つと考えられるが、他の臓器の正常に増殖している細胞に対しても悪影響を及ぼすと考えられる。
【0006】
CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)は、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識して、腫瘍細胞を溶解することが示されている。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが免疫学的アプローチを用いて発見されている(Boon、Int J Cancer 54: 177-80 (1993);Boonおよびvan der Bruggen、J Exp Med 183: 725-9 (1996);van der Bruggenら、Science 254: 1643-7 (1991);Brichardら、J Exp Med 178: 489-95 (1993);Kawakamiら、J Exp Med 180: 347-52 (1994))。発見されたTAAのいくつかは現在、免疫療法の標的として臨床開発の段階にある。これまでに発見されたTAAには、MAGE(van der Bruggenら、Science 254: 1643-7 (1991))、gp100(Kawakamiら、J Exp Med 180: 347-52 (1994))、SART(Shichijoら、J Exp Med 187: 277-88 (1998))およびNY-ESO-1(Chenら、Proc Natl Acad Sci USA 94: 1914-8 (1997))が含まれる。一方、腫瘍細胞において特異的に過剰発現されることが示された遺伝子産物は、細胞性免疫応答を誘導する標的として認識されることが示されている。このような遺伝子産物には、p53(Umanoら、Brit J Cancer 84: 1052-7 (2001))、HER2/neu(Tanakaら、Brit J Cancer 84: 94-9 (2001))、CEA(Nukayaら、Int J Cancer 80: 92-7 (1999))などが含まれる。
【0007】
TAAに関する基礎研究および臨床研究の著しい進歩にもかかわらず(Rosenbegら、Nature Med 4: 321-7 (1998);Mukherjiら、Proc Natl Acad Sci USA 92: 8078-82 (1995);Huら、Cancer Res 56: 2479-83 (1996))、結腸直腸癌を含む腺癌の治療のための候補となるTAAの数は非常に限られている。癌細胞で大量に発現されると同時にその発現が癌細胞に限定されるTAAは、免疫治療の標的として有望な候補になると考えられる。さらに、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘発する新たなTAAの同定は、様々な種類の癌におけるペプチドワクチン接種の臨床使用を促すと考えられる(Boonおよびcan der Bruggen、J Exp Med 183: 725-9 (1996);van der Bruggenら、Science 254: 1643-7 (1991);Brichardら、J Exp Med 178: 489-95 (1993);Kawakamiら、J Exp Med 180: 347-52 (1994);Shichijoら、J Exp Med 187: 277-88 (1998);Chenら、Proc Natl Acad Sci USA 94: 1914-8 (1997);Harris、J Natl Cancer Inst 88: 1442-5 (1996);Butterfieldら、Cancer Res 59: 3134-42 (1999);Vissersら、Cancer Res 59: 5554-9 (1999);van der Burgら、J Immunol 156: 3308-14 (1996);Tanakaら、Cancer Res 57: 4465-8 (1997);Fujieら、Int J Cancer 80: 169-72 (1999);Kikuchiら、Int J Cancer 81: 459-66 (1999);Oisoら、Int J Cancer 81: 387-94 (1999))。
【0008】
ある一定の健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)がペプチド刺激を受けると、ペプチドに反応して著しいレベルのIFN-γを産生するが、51Cr放出アッセイでHLA-A24またはHLA-A0201拘束的な様式で腫瘍細胞に対して細胞障害性を及ぼすことはほとんどないと繰り返し報告されている(Kawanoら、Cancer Res 60: 3550-8 (2000);Nishizakaら、Cancer Res 60: 4830-7 (2000);Tamuraら、Jpn J Cancer Res 92: 762-7 (2001))。しかし、HLA-A24およびHLA-A0201はどちらも日本人に多いHLAアレルであり、白人集団でも同様である(Dateら、Tissue Antigens 47: 93-101 (1996);Kondoら、J Immunol 155: 4307-12 (1995);Kuboら、J Immunol 152: 3913-24 (1994);Imanishiら、Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference Oxford University Press、Oxford、1065 (1992);Williamsら、Tissue Antigens 49: 129 (1997))。このため、これらのHLAによって提示される癌の抗原ペプチドは、日本人および白人集団の癌の治療に特に有用な可能性がある。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は通常、ペプチドを高濃度で用いて、抗原提示細胞(APC)の表面に、これらのCTLを効果的に活性化すると考えられる特異的ペプチド/MHC複合体を高レベルに生じさせることによって起こることが知られている(Alexander-Millerら、Proc Natl Acad Sci USA 93: 4102-7 (1996))。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明者らは、前立腺癌のメカニズムを開示し、これらの腫瘍の治療のための新規の診断マーカー及び/又は薬物標的を同定するため、レーザーマイクロビーム顕微解剖と組み合わせたゲノムワイドのcDNAマイクロアレイを使用して、前立腺癌における遺伝子の発現プロファイルを分析した。先行研究において、ゲノムワイドのcDNAマイクロアレイとレーザー顕微解剖を組み合わせることにより、前立腺癌細胞(PRC)及び非浸潤性前駆細胞(PIN)の正確な発現プロファイルが実施された。浸潤性PRCの発現プロファイルを、正常前立腺上皮又は非浸潤性前駆体PINと比較することにより、本発明者らは、浸潤性PRC及び前駆体PINの両方において共通してアップレギュレートされる遺伝子88個及びダウンレギュレートされる遺伝子207個を同定した。本発明において、本発明者らは、一つのESTに注目し、前立腺癌細胞において過剰発現される新規の遺伝子CCDC4を同定した。
【0010】
その結果として、CCDC4が、前立腺癌細胞において特異的に過剰発現される遺伝子として同定された。本発明者らは、siRNAによるCCDC4のノックダウン効果が、前立腺癌細胞の増殖を減弱すること、そして、この分子が、前立腺癌の新規治療法のための薬物設計の標的となる可能性を有することを示す。
【0011】
CCDC4は、コイルドコイル・ドメインを含む530アミノ酸タンパク質をコードする。ノーザンブロット分析により、CCDC4の発現は、精巣及び前立腺に制限されていることが示された。
【0012】
多くの抗癌薬が、癌細胞のみならず、正常に増殖する細胞に対しても毒性である。しかしながら、CCDC4の正常な発現が精巣及び前立腺に限定されているという事実のため、CCDC4の発現を抑制する薬剤は、他の器官に有害な影響を与えず、従って、前立腺癌の治療又は予防のために都合よく使用され得る。
【0013】
従って、本発明は、前立腺癌の診断マーカーの候補として、そして診断及び有効な抗癌剤のための新規治療方法を開発するために役に立つ有望な可能性のある標的である、単離された遺伝子CCDC4を提供する。さらに、本発明は、この遺伝子によりコードされたポリペプチド、並びにそれらの作製及び使用を提供する。より具体的には、本発明は、前立腺癌細胞において発現が上昇する新規のヒト・ポリペプチドCCDC4又はその機能的等価物を提供する。
【0014】
好ましい態様において、CCDC4ポリペプチドは、配列番号:1のオープン・リーディング・フレームによりコードされた530アミノ酸タンパク質又は配列番号:3のオープン・リーディング・フレームによりコードされた437アミノ酸タンパク質を含む。CCDC4ポリペプチドは、好ましくは、配列番号:2(Gene Bankアクセッション番号:AB126828)又は4(GeneBankアクセッション番号:AB126829)に示されたアミノ酸配列を含む。本願は、CCDC4ポリヌクレオチド配列、又は配列番号:1もしくは3に示された配列と少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%相補的なポリヌクレオチド配列の少なくとも一部からコードされた単離されたタンパク質も提供する。
【0015】
本発明は、前立腺癌の大多数において、対応する非癌性前立腺管上皮と比較して、発現が著しく上昇する新規のヒト遺伝子CCDC4をさらに提供する。単離されたCCDC4遺伝子は、配列番号:1又は3に記載されるようなポリヌクレオチド配列を含む。特に、CCDC4 cDNAは、1593ヌクレオチドのオープン・リーディング・フレームを含有している8763ヌクレオチド(配列番号:1)、又は1314ヌクレオチドのオープン・リーディング・フレームを含有している8692ヌクレオチド(配列番号:3)を含む。本発明は、CCDC4タンパク質又はその機能的等価物をコードするのであれば、配列番号:1又は3に示されたポリヌクレオチド配列とハイブリダイズし、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%それらと相補的であるポリヌクレオチドをさらに包含する。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号:1又は3の配列によりコードされたCCDC4の縮重変異体及び対立遺伝子変異体である。
【0016】
本明細書で用いる場合、単離された遺伝子とは、その構造が、どの天然のポリヌクレオチドの構造とも同一でなく、別個の遺伝子3つを上回る範囲の天然のゲノムポリヌクレオチドのいかなる断片の構造とも同一でない、ポリヌクレオチドのことである。このため、この用語には、例えば(a)自然下で生物のゲノム中に存在し、天然のゲノムDNA分子の部分配列を有するDNA、(b)結果として生じる分子がどの天然のベクターまたはゲノムDNAとも同一でないような様式で、ベクター中または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み入れられたポリヌクレオチド、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生じた断片または制限断片などの独立した分子、および(d)ハイブリッド遺伝子の部分である組換えヌクレオチド配列、すなわち融合ポリペプチドをコードする遺伝子、が含まれる。
【0017】
したがって、1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドまたはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。単離されたポリヌクレオチドは、配列番号:1または3に示されたヌクレオチド配列と少なくとも60%同一なヌクレオチド配列を含むことが好ましい。単離された核酸分子は、配列番号:1または3に示されたヌクレオチド配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であることがより好ましい。単離されたポリヌクレオチドが、参照配列、例えば配列番号:1または3よりも長いか長さの等しい場合には、参照配列の完全長との比較が行われる。単離されたポリヌクレオチドが参照配列よりも短い、例えば配列番号:1または3よりも短い場合には、同じ長さ(相同性の算出に必要なループは除外して)の参照配列のセグメントとの比較が行われる。
【0018】
本発明はまた、CCDC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を用いて宿主細胞のトランスフェクションまたは形質転換を行うこと、およびそのポリヌクレオチド配列を発現させることによる、タンパク質の産生方法も提供する。加えて、本発明は、CCDC4タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、およびCCDC4タンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有する宿主細胞も提供する。このようなベクターおよび宿主細胞は、CCDC4タンパク質の産生のために用いることができる。
【0019】
CCDC4タンパク質を特異的に認識する結合剤も、本願により提供される。例えば、結合剤は、CCD4タンパク質に対して作製された抗体であってもよい。又は、結合剤は、そのタンパク質に特異的なリガンド、又はそのタンパク質と特異的に結合する合成ポリペプチドであってもよい(例えば、WO2004044011参照)。CCDC4遺伝子のアンチセンス・ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスDNA)、リボザイム、及びsiRNA(低分子干渉RNA)も提供される。
【0020】
本発明はさらに、前立腺癌の診断のための方法であって、対象由来の生物学的試料における遺伝子の発現レベルを決定する段階、CCDC4遺伝子の発現レベルを正常試料における発現レベルと比較する段階、および、試料におけるCCDC4遺伝子の高い発現レベルにより、対象が前立腺癌に罹患していること、またはそれを発症するリスクのあることが示されるとして定義する段階を含む方法を提供する。
【0021】
さらに、前立腺癌の治療または予防のための化合物のスクリーニング方法も本発明によって提供される。本方法は、CCDC4ポリペプチドを被験化合物に接触させる段階、およびCCDC4ポリペプチドと結合する、またはその生物学的活性を変化させる被験化合物を選択する段階を含む。
【0022】
本発明はさらに、前立腺癌の治療または予防のための化合物のスクリーニング方法であって、被験化合物を、CCDC4ポリペプチドを発現する細胞に、またはレポーター遺伝子の上流にCCDC4の転写調節領域を含むベクターが導入された細胞に接触させる段階、およびCCDC4ポリペプチドの発現レベルを抑制する被験化合物を選択する段階を含む方法も提供する。
【0023】
本出願はまた、前立腺癌の治療または予防のための薬学的組成物も提供する。薬学的組成物は、例えば抗癌剤であってよい。薬学的組成物は、それぞれ配列番号:1および3に提示および記載されたCCDC4ポリヌクレオチド配列のアンチセンスS-オリゴヌクレオチド、siRNA分子またはリボザイムの少なくとも一部分を含むことができる。適したsiRNAは、配列番号:8を標的とする。したがって、本発明のsiRNAは配列番号:8のヌクレオチド配列を含む。これを本発明による前立腺癌の治療または予防のための標的として選択することが好ましい。薬学的組成物は、前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療または予防のための化合物に関する本スクリーニング方法によって選択された化合物を含むものであってもよい。
【0024】
薬学的組成物の作用経路は、前立腺癌などの癌細胞の増殖を阻害するものであることが望ましい。薬学的組成物は、ヒトおよび家畜を含む、哺乳動物に対して適用することができる。
【0025】
本発明はさらに、本発明によって提供される薬学的組成物を用いて前立腺癌を治療または予防するための方法を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、CCDC4ポリペプチドを投与する段階を含む、癌の治療または予防のための方法を提供する。CCDC4ポリペプチドの投与により、抗腫瘍免疫が誘導されると考えられる。したがって、本発明は、CCDC4ポリペプチドを投与する段階を含む、抗腫瘍免疫を誘導するための方法、ならびにCCDC4ポリペプチドを含む、癌の治療または予防のための薬学的組成物も提供する。
【0027】
本発明の上記の概要および以下の詳細な説明はいずれも好ましい態様のものであって、本発明または本発明のその他の代替的な態様を制限するものではないことが理解される必要がある。
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書で用いる「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」という用語は、別に特記する場合を除き、「少なくとも1つの」を意味する。
【0029】
前立腺癌の機序を明らかにするため、ならびにこれらの腫瘍の治療および/または予防のための新規診断マーカーおよび/または薬剤標的を同定するために、本発明者らは、ゲノム全体のcDNAマイクロアレイとレーザーマイクロビーム顕微解剖を併用して、前立腺癌における遺伝子の発現プロファイルを分析した。その結果、前立腺癌細胞において特異的に過剰発現されるCCDC4が同定された。さらに、低分子干渉RNA(siRNA)のトランスフェクションによるCCDC4遺伝子の発現抑制により、癌細胞の著しい増殖抑制が引き起こされた。これらの所見は、CCDC4が癌細胞に発癌活性を与えること、ならびにこれらのタンパク質の活性の阻害が前立腺癌などの増殖性疾患の治療および予防のための有望な戦略となりうることを示唆する。
【0030】
CCDC4
本発明により、類似した配列を有する2つの遺伝子が同定され、CCDC4変異型をコードする。変異型のcDNAは、長い型が1593ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含む8763ヌクレオチド(配列番号:1)からなり、短い型が1314ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含む8692ヌクレオチド(配列番号:3)からなる。これらのオープンリーディングフレームは、それぞれ530アミノ酸のタンパク質および437アミノ酸のタンパク質をコードする。
【0031】
したがって、本発明は、配列番号:2または4のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、これらの遺伝子によってコードされる実質的に純粋なポリペプチドのほか、その機能的等価物も、それらがCCDC4タンパク質をコードする範囲で含む。CCDC4と機能的に等価なポリペプチドの例には、例えば、ヒトCCDC4タンパク質に対応する他の生物の相同タンパク質のほか、ヒトCCDC4タンパク質の変異体が含まれる。
【0032】
本発明において、「機能的に等価な」という用語は、対象ポリペプチドが、CCDC4タンパク質のように細胞増殖を促進するとともに、癌細胞に発癌活性を付与する活性を有することを意味する。対象ポリペプチドが細胞増殖活性を有するか否かは、対象ポリペプチドをコードするDNAを細胞に導入し、それぞれのポリペプチドを発現させ、細胞の増殖の促進またはコロニー形成活性の増加を検出することによって判定される。このような細胞には、例えば、NIH3T3、COS7およびHEK293が含まれる。
【0033】
所定のタンパク質と機能的に等価なポリペプチドを作製するための方法は当業者に周知であり、これにはタンパク質に変異を導入する既知の方法が含まれる。例えば、当業者は、ヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドを、これらのタンパク質のアミノ酸配列に部位特異的突然変異誘発法によって適切な変異を導入することによって作製することができる(Hashimoto-Gotohら、Gene 152: 271-5 (1995);ZollerおよびSmith、Methods Enzymol 100: 468-500 (1983);Kramerら、Nucleic Acids Res. 12: 9441-9456 (1984);KramerおよびFritz、Methods Enzymol 154: 350-67 (1987);Kunkel、Proc Natl Acad Sci USA 82: 488-92 (1985);Kunkel、Methods Enzymol 85: 2763-6 (1988))。アミノ酸変異は自然下でも起こりうる。その結果生じる変異ポリペプチドがヒトCCDC4タンパク質と機能的に同等であるという前提で、1つまたは複数のアミノ酸が変異したヒトCCDC4タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質が本発明のポリペプチドに含まれる。このような変異体において変異させるアミノ酸の数は一般に10アミノ酸またはそれ未満、好ましくは6アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは3アミノ酸またはそれ未満である。
【0034】
変異タンパク質、またはある特定のアミノ酸配列の1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/もしくは付加によって改変されたアミノ酸配列を有するタンパク質である改変タンパク質は、元の生物学的活性を保つことが知られている(Markら、Proc Natl Acad Sci USA 81: 5662-6 (1984);ZollerおよびSmith、Nucleic Acids Res 10: 6487-500 (1982);Dalbadie-McFarlandら、Proc Natl Acad Sci USA 79: 6409-13 (1982))。
【0035】
変異させるアミノ酸残基は、アミノ酸側鎖の特性が保存される別のアミノ酸に変異させることが好ましい(保存的アミノ酸置換として知られる方法)。アミノ酸側鎖の特性の例には、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および、以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖がある:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);水酸基含有側鎖(S、T、Y);硫黄原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);および芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。括弧内の文字はアミノ酸の一文字略号を示すことに注意されたい。
【0036】
ヒトCCDC4タンパク質のアミノ酸配列に1つまたは複数のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドの一例は、ヒトCCDC4タンパク質を含む融合タンパク質である。融合タンパク質とは、ヒトCCDC4タンパク質と他のペプチドまたはタンパク質との融合物のことであり、これは本発明に含まれる。融合タンパク質は、本発明のヒトCCDC4タンパク質をコードするDNAを他のペプチドまたはタンパク質をコードするDNAとフレームが合致するように連結し、この融合DNAを発現ベクターに挿入して、それを宿主において発現させるといった当業者に周知の技法によって作製しうる。本発明のタンパク質と融合させるペプチドまたはタンパク質には制限はない。
【0037】
本発明のタンパク質と融合させるペプチドとして用いうる既知のペプチドには、例えば、FLAG(Hoppら、Biotechnology 6: 1204-10 (1988))、6個のHis(ヒスチジン)残基を含む6xHis、10xHis、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc断片、VSP-GP断片、p18HIV断片、T7タグ、HSVタグ、Eタグ、SV40T抗原断片、lckタグ、α-チューブリン断片、Bタグ、プロテインC断片などが含まれる。本発明のタンパク質と融合させうるタンパク質の例には、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、インフルエンザ凝集素(HA)、免疫グロブリン定常領域、β-ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)などが含まれる。
【0038】
融合タンパク質は、上に考察したように融合ペプチドまたはタンパク質をコードする市販のDNAと、本発明のポリペプチドをコードするDNAとを融合させ、作製された融合DNAを発現させることによって作製しうる。
【0039】
機能的に等価なポリペプチドを単離するための当技術分野で知られた代替的な方法には、例えば、ハイブリダイゼーション法を用いる方法がある(Sambrookら、「Molecular Cloning」第2版、9.47-9.58、Cold Spring Harbor Lab. Press (1989))。当業者は、ヒトCCDC4タンパク質をコードするDNA配列(すなわち、配列番号:1または3)の全体または部分に対して高い相同性を有するDNAを容易に単離して、単離されたDNAからヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドを単離することができる。本発明のポリペプチドには、ヒトCCDC4タンパク質をコードするDNA配列の全体または部分とハイブリダイズするDNAによってコードされ、そしてヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、ヒト由来のタンパク質に対応する哺乳動物相同体(例えば、サル、ラット、ウサギ、およびウシの遺伝子によってコードされるポリペプチド)が含まれる。ヒトCCDC4タンパク質をコードするDNAに対して高度に相同なcDNAを動物から単離する際には、精巣または前立腺からの組織を用いることが特に好ましい。
【0040】
ヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件は、当業者によって慣行的に選択されうる。例えば、30分間またはそれ以上にわたる68℃でのプレハイブリダイゼーションを「Rapid-hyb緩衝液」(アマシャムライフサイエンス(Amersham LIFE SCIENCE))を用いて行い、標識したプローブを添加した上で、1時間またはそれ以上にわたって68℃で加温することによって、ハイブリダイゼーションを行ってもよい。それに続く洗浄段階は、例えば、低ストリンジェント条件下で行いうる。低ストリンジェント条件とは、例えば、42℃、2X SSC、0.1%SDS、または好ましくは50℃、2X SSC、0.1%SDSのことである。より好ましくは、高ストリンジェント条件を用いる。高ストリンジェント条件とは、例えば、室温の2X SSC、0.01%SDS中での20分間の洗浄を3回行った後に、37℃の1x SSC、0.1%SDS中での20分間の洗浄を3回行い、50℃の1x SSC、0.1%SDS中での20分間の洗浄を2回行うことである。しかし、温度および塩濃度などのいくつかの要因はハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼすと考えられ、当業者は必要なストリンジェンシーを得るためにこれらの要因を適切に選択することができる。
【0041】
ハイブリダイゼーションの代わりに、遺伝子増幅法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を、ヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするDNAを、タンパク質をコードするDNAの配列情報(配列番号:1または3)に基づいて合成したプライマーを用いて単離するために用いることもできる。
【0042】
上記のハイブリダイゼーション技術又は遺伝子増幅技術によって単離されたDNAによりコードされたヒトCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドは、通常、ヒトCCDC4タンパク質のアミノ酸配列との高い相同性を有している。「高い相同性」とは、典型的には、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列と参照配列との間の40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%、90%、93%、95%、98%、99%以上の相同性をさす。相同率(同一率とも呼ばれる)は、典型的には、二つの最適に整列化された配列間で実施される。比較のための配列の整列化の方法は、当技術分野において周知である。配列の最適な整列化及び比較は、例えば、「Wilbur and Lipman,Proc Natl Acad Sci USA 80:726-30(1983)」のアルゴリズムを使用して実施され得る。
【0043】
本発明のポリペプチドは、その産生のために用いる細胞もしくは宿主または用いる精製方法に応じて、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、または形態に関して差異を有する。しかし、それが本発明のヒトCCDC4タンパク質のポリペプチドと同等な機能を有する限り、それは本発明の範囲に含まれる。
【0044】
本発明のポリペプチドは、当業者に周知の方法により、組換えタンパク質として調製することもでき、または天然タンパク質として調製することもできる。組換えタンパク質は、本発明のポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号:1または3のヌクレオチド配列を含むDNA)を適切な発現ベクターに挿入し、そのベクターを適切な宿主細胞に導入して抽出物を入手した上で、抽出物をクロマトグラフィー、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、もしくは本発明のタンパク質に対する抗体を固定したカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーにかけることによって、または上述のカラムの複数を組み合わせることによってポリペプチドを精製することにより、調製することができる。
【0045】
同様に、本発明のポリペプチドを宿主細胞(例えば、動物細胞および大腸菌)の内部でグルタチオン-S-トランスフェラーゼタンパク質との融合タンパク質として、または多数のヒスチジンを追加した組換えタンパク質として発現させる場合には、発現した組換えタンパク質をグルタチオンカラムまたはニッケルカラムを用いて精製することができる。また、本発明のポリペプチドをc-myc、多数のヒスチジン、またはFLAGで標識したタンパク質として発現させる場合には、それぞれc-myc、His、またはFLAGに対する抗体を用いてそれを検出して精製することができる。
【0046】
融合タンパク質を精製した後に、必要に応じてトロンビンまたは第Xa因子で切断することにより、目的のポリペプチド以外の領域を除去することも可能である。
【0047】
天然のタンパク質は、当業者に知られた方法によって、例えば、下記のCCDC4タンパク質と結合する抗体を結合させたアフィニティーカラムを、本発明のポリペプチドを発現する組織または細胞の抽出物と接触させることによって単離することができる。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
【0048】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの部分(partial)ペプチドも含む。部分ペプチドは、本発明のポリペプチドに対して特異的なアミノ酸配列を有し、少なくとも7アミノ酸、好ましくは8アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは9アミノ酸またはそれ以上からなる。部分ペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体を作製するために、本発明のポリペプチドと結合する化合物をスクリーニングするために、および本発明のポリペプチドの阻害物質をスクリーニングするために、用いることができる。
【0049】
本発明の部分ペプチドは、遺伝子操作により、既知のペプチド合成方法により、または本発明のポリペプチドを適切なペプチダーゼで消化することにより、作製可能である。ペプチド合成のためには、例えば、固相合成または液相合成を用いうる。
【0050】
本発明はさらに、上述のCCDC4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドは、上記のように本発明のポリペプチドのインビボもしくはインビトロでの産生のために用いることができ、または本発明のタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的異常に起因する疾患に対する遺伝子治療のために用いることもできる。mRNA、RNA、cDNA、ゲノムDNA、化学合成されたポリヌクレオチドを含む、本発明のポリヌクレオチドのいかなる形態を、それが本発明のポリペプチドをコードする限りは、用いることができる。本発明のポリヌクレオチドには、所定のヌクレオチド配列を含むDNAのほかに、その縮重配列も、結果として生じるDNAが本発明のポリペプチドをコードする限りは、含まれる。
【0051】
本発明のポリヌクレオチドは、当業者に知られた方法によって作製することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを発現する細胞からcDNAライブラリーを作製し、本発明のDNA(例えば、配列番号:1または3)の部分配列をプローブとして用いてハイブリダイゼーションを行うことによって作製することができる。cDNAライブラリーは、例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning」、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載された方法によって作製しうる;または、市販のcDNAライブラリーを用いてもよい。cDNAライブラリーは、本発明のポリペプチドを発現する細胞からRNAを抽出し、本発明のDNA(例えば、配列番号:1または3)の配列に基づいてオリゴDNAを合成し、オリゴDNAをプライマーとして用いてPCRを行い、そして本発明のタンパク質をコードするcDNAを増幅することによって作製することもできる。
【0052】
さらに、得られたcDNAのヌクレオチドのシークエンシングを行うことにより、cDNAによりコードされる翻訳領域を慣行的に決定し、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を容易に得ることができる。その上、得られたcDNAまたはその部分を用いてゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
【0053】
より具体的に述べると、mRNAをまず、本発明の対象ポリペプチドが発現される細胞、組織、または臓器(例えば、精巣または前立腺)から調製する。mRNAの単離には既知の方法を用いうる;例えば、全RNAはグアニジン超遠心(Chirgwinら、Biochemistry 18: 5294-9 (1979))またはAGPC法(ChomczynskiおよびSacchi、Anal Biochem 162: 156-9 (1987))によって調製しうる。さらに、mRNAをmRNA精製キット(Pharmacia)などを用いて全RNAから精製してもよい。または、mRNAをQuickPrep mRNA精製キット(Pharmacia)によって直接精製してもよい。
【0054】
得られたmRNAは、逆転写酵素を用いてcDNAを合成するために用いられる。cDNAは、AMV逆転写酵素第一鎖cDNA合成キット(生化学工業(Seikagaku Kogyo))などの市販のキットを用いて精製しうる。または、本明細書に記載のプライマー等、5'-Ampli FINDER RACEキット(Clontech)、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる5'-RACE法(Frohmanら、Proc Natl Acad Sci USA 85: 8998-9002 (1988);Belyavskyら、Nucleic Acids Res 17: 2919-32 (1989))に従って、cDNAの合成および増幅を行うこともできる。
【0055】
所望のDNA断片をPCR産物から調製し、ベクターDNAと連結する。この組換えベクターを大腸菌などの形質転換に用い、選択したコロニーから所望の組換えベクターを調製する。所望のDNAのヌクレオチド配列を、ジデオキシヌクレオチド鎖終結法(dideoxynucleotide chain termination)などの従来の方法によって検証する。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を、発現のために用いる宿主におけるコドン使用頻度を考慮に入れることにより、より効率的に発現されるように設計することもできる(Granthamら、Nucleic Acids Res 9: 43-74 (1981))。本発明のポリヌクレオチドの配列を、市販のキットまたは従来の方法によって改変することもできる。例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドもしくは適切なポリヌクレオチド断片の挿入、リンカーの付加、または開始コドン(ATG)および/もしくは終止コドン(TAA、TGAまたはTAG)の挿入によって配列を改変することができる。
【0057】
具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1または3のヌクレオチド配列を含むDNAを含む。
【0058】
さらに、本発明は、配列番号:1または3のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記の本発明のCCDC4タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドを提供する。当業者はストリンジェントな条件を適切に選択してよい。例えば、低ストリンジェント条件を用いることができる。より好ましくは、高ストリンジェント条件を用いる。これらの条件は上記のものと同じである。上記のハイブリダイズさせるDNAはcDNAまたは染色体DNAであることが好ましい。
【0059】
本発明はまた、ヒトCCDC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号:1または3)またはその相補鎖に対して相補的であって、少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明のCCDC4ポリペプチドをコードするDNAと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであることが好ましい。本明細書で用いる「特異的にハイブリダイズする」という用語は、他のタンパク質をコードするDNAとのクロスハイブリダイゼーションが、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、顕著には起こらないことを意味する。このようなポリヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードするDNAまたはその相補鎖と特異的にハイブリダイズする、プローブ、プライマー、ヌクレオチドおよびヌクレオチド誘導体(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイム)が含まれる。さらに、このようなポリヌクレオチドをDNAチップの作製のために利用することもできる。
【0060】
ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドが内部に導入されたベクターおよび宿主細胞も提供する。本発明のベクターは、宿主細胞において本発明のポリヌクレオチド、特にDNAを保存し、本発明のポリペプチドを発現させるために有用である。
【0061】
大腸菌が宿主細胞であって、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、またはXL1Blue)の内部で大量に増幅および産生させる場合には、ベクターは、大腸菌内で増幅させるための「ori」、および、形質転換された大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどの薬剤によって選択される薬剤抵抗性遺伝子)を有する必要がある。例えば、M13シリーズのベクター、pUCシリーズのベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどを用いることができる。さらに、上記のベクター同様、pGEM-T、pDIRECT、およびpT7も、cDNAのサブクローニングおよび抽出のために用いることができる。本発明のタンパク質の産生のためにベクターを用いる場合には、発現ベクターが特に有用である。例えば、大腸菌内で発現させようとする発現ベクターは、大腸菌内で増幅させるための上記の特徴を有する必要がある。JM109、DH5α、HB101、またはXL1Blueなどの大腸菌を宿主細胞として用いる場合には、ベクターは、大腸菌内で所望の遺伝子を効率的に発現しうるプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら、Nature 341: 544-6 (1989);FASEB J 6: 2422-7 (1992))、araBプロモーター(Betterら、Science 240: 1041-3 (1988))、T7プロモーターなどを有する必要がある。その点に関しては、例えば、pGEX-5X-1(Pharmacia)、「QIAexpressシステム」(Qiagen)、pEGFPおよびpET(この場合、宿主はT7RNAポリメラーゼを発現するBL21であることが好ましい)を上記のベクターの代わりに用いてもよい。さらに、ベクターは、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列をも含みうる。大腸菌の周辺質(periplasm)へのポリペプチド分泌を指令するシグナル配列の一例は、pelBシグナル配列(Leiら、J Bacteriol 169: 4379 (1987))である。ベクターを標的宿主細胞に導入するための手段には、例えば、塩化カルシウム法および電気穿孔法が含まれる。
【0062】
大腸菌以外に、例えば、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(Invitrogen)およびpEGF-BOS(Nucleic Acids Res 18(17): 5322 (1990))、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば、「Bac-to-BACバキュロウイルス発現系」(ギブコBRL(GIBCO BRL))、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えば、pMH1、pMH2)、動物ウイルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウイルス由来の発現ベクター(例えば、pZIpneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia発現キット」(Invitrogen)、pNV11、SP-Q01)、および枯草菌(Bacillus subtilis)由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)を、本発明のポリペプチドの産生のために用いることもできる。
【0063】
ベクターをCHO細胞、COS細胞またはNIH3T3細胞などの動物細胞内で発現させるためには、ベクターは、この種の細胞における発現のために必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulliganら、Nature 277: 108 (1979))、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら、Nucleic Acids Res 18: 5322 (1990))、CMVプロモーターなどを有する必要があるほか、形質転換体を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、薬剤(例えば、ネオマイシン、G418)によって選択される薬剤抵抗性遺伝子)を有することが好ましい。これらの特徴を備えた既知のベクターの例には、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、およびpOP13が含まれる。
【0064】
ポリペプチドの産生
さらに本発明は、本発明のポリペプチドを産生するための方法を提供する。ポリペプチドをコードする遺伝子を含む発現ベクターを保持している宿主細胞を培養することによりポリペプチドを調製してもよい。必要に応じて、本方法は、遺伝子を安定的に発現させるため、およびそれと同時に、細胞内の遺伝子のコピー数を増幅するために用いることもできる。例えば、相補的DHFR遺伝子を含むベクター(例えば、pCHO I)を、核酸合成経路が欠失したCHO細胞に導入した後に、メトトレキサート(MTX)によって増幅することができる。さらに、遺伝子の一過性発現の場合には、SV40の複製起点を含むベクター(pcDなど)を、SV40T抗原を発現する遺伝子を染色体上に含むCOS細胞に形質転換導入する方法を用いることができる。
【0065】
以上のようにして得られた本発明のポリペプチドは、宿主細胞の内部または外部(培地など)から単離して、実質的に純粋な均一なポリペプチドとして精製することができる。所定のポリペプチドに言及して本明細書で用いられる「実質的に純粋な」とは、そのポリペプチドが他の生体高分子から実質的に遊離していることを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量にして純度が少なくとも75%(例えば、少なくとも80、85、95または99%)である。純度は任意の適切な標準的方法により、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定しうる。ポリペプチドの単離および精製のための方法は何らかの特定の方法には限定されない;実際には任意の標準的な方法を用いうる。
【0066】
例えば、カラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動、透析、および再結晶化を適切に選択し、組み合わせて、ポリペプチドの単離および精製を行ってもよい。
【0067】
クロマトグラフィーの例には、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどが含まれる(「Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual」、Daniel R. Marshakら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。これらのクロマトグラフィーを、HPLCおよびFPLCなどの液体クロマトグラフィーによって行ってもよい。したがって、本発明は、以上の方法によって調製された高純度のポリペプチドを提供する。
【0068】
本発明のポリペプチドを、精製の前または後に適切なタンパク質修飾酵素でそれを処理することにより、随意に改変すること、または部分的に欠失させることも可能である。有用なタンパク質修飾酵素には、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、タンパク質キナーゼ、グルコシダーゼなどが非制限的に含まれる。
【0069】
抗体
本発明は、本発明のポリペプチドと結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの任意の形態で用いることができ、これにはウサギなどの動物を本発明のポリペプチドで免疫することによって得られる抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに遺伝子組換えによって作製されたヒト化抗体が含まれる。
【0070】
抗体を得るための抗原として用いられる本発明のポリペプチドは、任意の動物種に由来するものでよいが、好ましくはヒト、マウス、またはラットなどの哺乳動物、より好ましくはヒトに由来する。ヒト由来のポリペプチドは、本明細書に開示するヌクレオチドまたはアミノ酸配列から入手しうる。
【0071】
本発明によれば、免疫化抗原として用いるポリペプチドは、完全タンパク質でもよく、またはタンパク質の部分ペプチドでもよい。部分ペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドのアミノ(N)末端またはカルボキシ(C)末端断片を含みうる。
【0072】
本明細書において、抗体は、本発明のポリペプチドの完全長または断片のいずれかと反応するタンパク質として定義される。
【0073】
本発明のポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子を既知の発現ベクターに挿入し、その後に本明細書に記載したような宿主細胞の形質転換に用いてもよい。所望のポリペプチドまたはその断片を、任意の標準的な方法によって宿主細胞の内部または外部から回収し、後に抗原として用いることができる。または、ポリペプチドを発現する細胞全体もしくはその可溶化物、または化学合成したポリペプチドを抗原として用いてもよい。
【0074】
いかなる哺乳動物も抗原で免疫することができるが、細胞融合に用いる親細胞との適合性を考慮に入れることが好ましい。一般に、齧歯類(Rodentia)、ウサギ目(Lagomorpha)、または霊長類(Primate)の動物が用いられる。齧歯類の動物には、例えば、マウス、ラット、およびハムスターが含まれる。ウサギ目の動物には、例えばウサギが含まれる。霊長類の動物には、例えば、狭鼻猿類(Catarrhini)(旧世界サル)のサル、カニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、マントヒヒ(sacred baboon)およびチンパンジーが含まれる。
【0075】
動物を抗原で免疫するための方法は当技術分野で周知である。抗原の腹腔内注射または皮下注射は、哺乳動物の免疫化のための標準的な方法である。より具体的に述べると、抗原を希釈して適切な量のリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理食塩水などの中に懸濁させる。必要に応じて、抗原懸濁液を、フロイント完全アジュバントなどの適切な量の標準的アジュバントと混合して乳濁液とした上で哺乳動物に対して投与してもよい。その後に、適切な量のフロイント不完全アジュバントと混合した抗原の投与を4〜21日毎に数回行うことが好ましい。適切な担体を免疫化のために用いてもよい。上記のような免疫化の後に、血清を、所望の抗体の量の増加に関して標準的方法によって検討する。
【0076】
本発明のポリペプチドに対するポリクローナル抗体を、血清中の所望の抗体の増加に関して検討した免疫後の哺乳動物から血液を採取し、従来の任意の方法によって血液から血清を分離することによって調製することもできる。ポリクローナル抗体にはポリクローナル抗体を含む血清が含まれ、ポリクローナル抗体を含む画分を血清から単離することもできる。免疫グロブリンGまたはMは、本発明のポリペプチドのみを認識する画分から、例えば、本発明のポリペプチドを結合させたアフィニティーカラムを用いた上で、この画分をプロテインAカラムまたはプロテインGカラムを用いてさらに精製して、調製することができる。
【0077】
モノクローナル抗体を調製するためには、抗原で免疫した哺乳動物から免疫細胞を収集し、上記の通りに血清中の所望の抗体のレベル上昇について確かめた上で、細胞融合に供する。細胞融合に用いる免疫細胞は脾臓から入手することが好ましい。上記の免疫細胞と融合させるためのその他の好ましい親細胞には、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞、より好ましくは、薬剤による融合細胞の選択のための獲得特性を有する骨髄腫細胞が含まれる。
【0078】
上記の免疫細胞および骨髄腫細胞は、既知の方法、例えば、Milsteinら(GalfreおよびMilstein、Methods Enzymol 73: 3-46 (1981))の方法に従って融合させることができる。
【0079】
細胞融合によって結果として得られたハイブリドーマは、それらをHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む培地)などの標準的な選択培地中で培養することによって選択しうる。細胞培養は通常、HAT培地中で、所望のハイブリドーマを除く他のすべての細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な期間である、数日間から数週間にわたって続けられる。その後に、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞のスクリーニングおよびクローニングのために標準的な限界希釈を行う。
【0080】
ハイブリドーマ調製用に非ヒト動物を抗原で免疫する上記の方法に加えて、EBウイルスに感染したリンパ球などのヒトリンパ球を、ポリペプチド、ポリペプチド発現細胞、またはそれらの可溶化物によりインビトロで免疫することもできる。続いて、免疫後のリンパ球を、無限に分裂しうるU266などのヒト由来の骨髄腫細胞と融合させ、ポリペプチドと結合しうる所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる(特開昭63-17688号)。
【0081】
得られたハイブリドーマを続いてマウスの腹腔内に移植し、腹水を抽出する。得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、または本発明のポリペプチドを結合させたアフィニティーカラムによって精製しうる。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドの精製および検出のためだけでなく、本発明のポリペプチドのアンタゴニストの候補としても用いることができる。さらに、この抗体を、本発明のポリペプチドと関連のある疾患に対する抗体療法に適用することもできる。得られた抗体を人体に対して投与する場合には(抗体療法)、免疫原性を抑えるためにヒト抗体またはヒト化抗体が好ましい。
【0082】
例えば、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物は、ポリペプチド、ポリペプチド発現細胞、またはそれらの可溶化物から選択される抗原で免疫することができる。続いて、抗体産生細胞を動物から採取し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを得、そのハイブリドーマからポリペプチドに対するヒト抗体を調製することができる(国際公開公報第92-03918号、国際公開公報第93-2227号、国際公開公報第94-02602号、国際公開公報第94-25585号、国際公開公報第96-33735号、および国際公開公報第96-34096号を参照のこと)。
【0083】
または、免疫したリンパ球のような、抗体を産生する免疫細胞を、癌遺伝子によって不死化させ、モノクローナル抗体の調製に用いることもできる。
【0084】
このようにして得られるモノクローナル抗体は、遺伝子操作技術を用いて組換えにより調製してもよい(例えば、BorrebaeckおよびLarrick、「Therapeutic Monoclonal Antibodies」、MacMillan Publishers LTD(英国)より刊行(1990)、を参照)。例えば、抗体をコードするDNAを、抗体を産生するハイブリドーマまたは免疫リンパ球などの免疫細胞からクローニングして適切なベクターに挿入した上で、宿主細胞に導入し、組換え抗体を調製することができる。本発明はまた、上記のようにして調製した組換え抗体も提供する。
【0085】
さらに、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドの1つまたは複数と結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはH鎖およびL鎖由来のFv断片を適切なリンカーによって連結した一本鎖Fv(scFv)であってもよい(Hustonら、Proc Natl Acad Sci USA 85: 5879-83 (1988))。より具体的に述べると、パパインまたはペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって抗体断片を作製することもできる。または、抗体断片をコードする遺伝子を構築して発現ベクターに挿入した上で、適切な宿主細胞において発現させてもよい(例えば、Coら、J Immunol 152: 2968-76 (1994);BetterおよびHorwitz、Methods Enzymol 178: 476-96 (1989);PluckthunおよびSkerra、Methods Enzymol 178: 497-515 (1989);Lamoyi、Methods Enzymol 121: 652-63 (1986);Rousseauxら、Methods Enzymol 121: 663-9 (1986);BirdおよびWalker、Trends Biotechnol 9: 132-7 (1991)を参照されたい)。
【0086】
抗体を、ポリエチレングリコール(PEG)などの種々の分子と結合させることによって修飾することもできる。本発明は、このような修飾抗体を提供する。修飾抗体は抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。これらの修飾方法は当技術分野で慣例的である。
【0087】
または、本発明の抗体を、非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体の定常領域とのキメラ抗体として、または、非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、フレームワーク領域(FR)およびヒト化抗体由来の定常領域を含むヒト化抗体として得ることもできる。そのような抗体は、既知の技術に従い調製され得る。ヒト化は、齧歯動物のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより実施され得る(例えば、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988)参照)。従って、そのようなヒト化抗体は、全長より明らかに短いヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来する対応する配列により置換されたキメラ抗体である。
【0088】
ヒトのフレームワーク及び定常領域に加えヒトの可変領域を含む完全ヒト抗体も、使用され得る。そのような抗体は、当技術分野において既知の様々な技術を使用して作製され得る。例えば、インビトロの方法は、バクテリオファージ上に呈示されたヒト抗体断片の組換えライブラリーの使用を含む(例えば、Hoogenboom & Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991))。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活化されたマウスへ、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより作成され得る。このアプローチは、例えば、米国特許第6,150,584号、第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号に記載されている。
【0089】
以上のようにして得られた抗体を均一になるまで精製してもよい。例えば、抗体を、一般的なタンパク質に対して用いられる分離法および精製法に従って分離および精製することができる。例えば、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および等電点電気泳動など(しかし、これらには限定されない)を適切に選択・組み合わせることにより、抗体を分離および単離することができる(「A Laboratory Manual」、HarlowおよびDavid Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。プロテインAカラムおよびプロテインGカラムはアフィニティーカラムとして用いうる。用いられるプロテインAカラムの例には、例えば、ハイパーD、POROSおよびセファロースF.F.(Pharmacia)が含まれる。
【0090】
クロマトグラフィーの例には、アフィニティークロマトグラフィーを除いて、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどが含まれる(「Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual」、Daniel R. Marshakら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。クロマトグラフィーの手順を、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって行うこともできる。
【0091】
本発明の抗体の抗原結合活性を測定するには、例えば、吸光度、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、酵素免疫アッセイ法(EIA)、放射免疫アッセイ法(RIA)および/または免疫蛍光検査法を用いうる。ELISAの場合には、本発明の抗体をプレート上に固定化し、本発明のポリペプチドをプレートに対して添加した後に、抗体産生細胞の培養上清または精製抗体といった所望の抗体を含む試料を添加する。続いて、一次抗体を認識し、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識された二次抗体を添加し、プレートをインキュベートする。次に、洗浄の後に、p-ニトロフェニルリン酸などの酵素基質をプレートに添加して、試料の抗原結合活性を評価するために吸光度を測定する。C末端断片またはN末端断片といったポリペプチドの断片を、抗体の結合活性を評価するための抗原として用いてもよい。BIAcore(Pharmacia)を、本発明による抗体の活性の評価に用いてもよい。
【0092】
以上の方法は、本発明の抗体を本発明のポリペプチドを含むと想定される試料に対して曝露させ、抗体およびポリペプチドによって形成された免疫複合体を検出または測定することにより、本発明のポリペプチドの検出または測定を可能にする。
【0093】
本発明によるポリペプチドの検出または測定の方法はポリペプチドを特異的に検出または測定することが可能であるため、本方法はポリペプチドが用いられる種々の実験に有用と思われる。
【0094】
アンチセンスポリヌクレオチド、低分子干渉RNA、およびリボザイム
本発明は、配列番号:1または3のヌクレオチド配列の内部のいずれかの部位とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1または3のヌクレオチド配列のうち少なくとも約15個の連続したヌクレオチドに対するものであることが好ましい。上記の少なくとも15個の連続したヌクレオチド中に1つの開始コドンを含む、上記のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、さらに好ましい。
【0095】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体または修飾産物もアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いることができる。このような修飾産物の例には、メチルホスホネート型またはエチルホスホネート型などの低級アルキルホスホネート修飾物、ホスホロチオエート修飾物、およびホスホロアミデート修飾物が含まれる。
【0096】
本明細書で用いる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、DNAまたはmRNAの特定領域を構成するものに対応するヌクレオチドが完全に相補的であるものだけでなく、1つまたは複数のヌクレオチドにミスマッチがあるものも、そのDNAまたはmRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号:1または3のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズしうる限りは含まれる。
【0097】
このようなポリヌクレオチドは、「少なくとも約15個の連続したヌクレオチド配列の領域」内に、少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上、より好ましくは約90%またはそれ以上、さらにより好ましくは約95%またはそれ以上の相同性を有するものとして含まれる。相同性の決定には本明細書に述べるアルゴリズムを用いうる。相同性の決定には当技術分野で知られたアルゴリズムを用いることができる。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体または修飾産物を本発明におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いることもできる。このような修飾産物には、メチルホスホネート型またはエチルホスホネート型などの低級アルキルホスホネート修飾物、ホスホロチオエート修飾物およびホスホロアミデート修飾物が含まれる。
【0098】
このようなアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするDNAの単離もしくは検出のためのプローブとして、または増幅用のプライマーとして有用である。
【0099】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAと結合し、その転写または翻訳を阻害して、mRNAの分解を促進し、本発明のポリペプチドの発現を阻害して、それによってポリペプチドの機能を阻害することにより、本発明のポリペプチドを産生する細胞に対して作用する。
【0100】
本発明はまた、配列番号:1または3のヌクレオチド配列のセンス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含む、低分子干渉RNA(siRNA)も含む。より具体的に述べると、CCDC4の発現を抑制するためのこの種のsiRNAには、配列番号:8のヌクレオチド配列を標的とするものが含まれる。
【0101】
「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を指す。siRNAを細胞に導入するためには、RNAを転写するための鋳型としてDNAを用いることを含む、標準的な技法が用いられる。siRNAは、ヒトCCDC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号:1または3)のセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、例えばヘアピンのように、単一の転写物(二本鎖RNA)が標的遺伝子由来のセンス配列および相補的アンチセンス配列の両方を有するように構築される。
【0102】
標的細胞におけるsiRNAのCCDC4に対応する転写物との結合は、細胞によるタンパク質産生の低下をもたらす。オリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写物と同じ長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、約19〜約25ヌクレオチド長である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、約75、約50、約25ヌクレオチド長未満である。癌細胞の増殖を阻害するCCDC4 siRNAオリゴヌクレオチドの例には、配列番号:8を含有している標的配列が含まれる。さらに、siRNAの阻害活性を増強するため、ヌクレオチド「u」が標的配列のアンチセンス鎖の3'末端に付加され得る。付加される「u」の数は、少なくとも2個、一般的には約2〜約10個、好ましくは約2〜約5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で単鎖を形成する。
【0103】
CCDC4 siRNAは、mRNA転写物と結合することができる形態で細胞へ直接導入される。これらの態様において、本発明のsiRNA分子は、典型的には、アンチセンス分子について既に記載されたようにして修飾される。その他の修飾も可能であり、例えば、コレステロールと接合したsiRNAは、改良された薬理学的特性を示した(Song et al.Nature Med.9:347-351(2003))。又は、CCDC4 siRNAをコードするDNAは、ベクター内に存在する。
【0104】
ベクターは、例えば、両鎖の(DNA分子の転写による)発現を可能にする様式で、機能的に連結された制御配列が、CCDC4配列に隣接するよう、CCDC4標的配列を発現ベクターへクローニングすることにより作製される(Lee,N.S.,Dohjima,T.,Bauer,G.,Li,H.,Li,M.-J.,Ehsani,A.,Salvaterra,P.,and Rossi,J.(2002)ヒト細胞におけるHIV-1 rev転写物を標的とした低分子干渉RNAの発現(Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells)Nature Biotechnology 20:500-505)。CCDC4 mRNAに対してアンチセンスのRNA分子は、第一のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3'末端のプロモーター配列)により転写され、CCDC4 mRNAに対するセンス鎖であるRNA分子は、第二のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'末端のプロモーター配列)により転写される。センス鎖及びアンチセンス鎖は、インビボでハイブリダイズし、CCDC4遺伝子のサイレンシングのためのsiRNA構築物を生成させる。又は、二つの構築物が、siRNA構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖を作出するために利用される。クローニングされたCCDC4は、単一の転写物が標的遺伝子からのセンス配列及び相補アンチセンス配列の両方を有している、二次構造、例えば、ヘアピンを有している構築物をコードし得る。
【0105】
さらに、ヘアピン・ループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列が、センス配列とアンチセンス配列との間に位置していてもよい。従って、本発明は、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有するsiRNAも提供する。式中、[A]は、CCDC4遺伝子からのmRNA又はcDNAと特異的にハイブリダイズする配列に対応するリボヌクレオチド配列である。好ましい態様において、[A]は、配列番号:1又は3のヌクレオチド1666〜1684(配列番号:8)の配列に対応するリボヌクレオチド配列である。[B]は、約3〜約23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、かつ[A']は、[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である。ループ配列は、好ましくは3〜23ヌクレオチド長を有する任意の配列からなり得る。ループ配列は、例えば、以下の配列からなる群より選択され得る(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。本発明のsiRNAにおいて、ヌクレオチド「u」が、siRNAの阻害活性を増強するために、[A']の3'末端に付加され得る。付加される「u」の数は、少なくとも約2個、一般的には約2〜約10個、好ましくは約2〜約5個である。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列も、活性siRNAを提供する(Jacque,J.-M.,Triques,K.,and Stevenson,M.(2002)RNA干渉によるHIV-1複製のモジュレーション(Modulation of HIV-1 replication by RNA interference)Nature 418:435-438)。
CCC、CCACC、又はCCACACC:Jacque,J.M.,Triques,K.,and Stevenson,M. RNA干渉によるHIV-1複製のモジュレーション(Modulation of HIV-1 replication by RNA interference)Nature,Vol.418:435-438(2002);
UUCG:Lee,N.S.,Dohjima,T.,Bauer,G.,Li,H.,Li,M.-J.,Ehsani,A.,Salvaterra,P.,and Rossi,J.(2002)ヒト細胞におけるHIV-1 rev転写物を標的とした低分子干渉RNAの発現(Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells)Nature Biotechnology 20:500-505.;Fruscoloni,P.,Zamboni,M.,and Tocchini-Valentini,G.P.アフリカツメガエル胚胞における活性による二本鎖RNAのエキソヌクレアーゼによる分解(Exonucleolytic degradation of double-stranded RNA by an activity in Xenopus laevis germinal vesicles)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(4):1639-1644(2003);及び
UUCAAGAGA:Dykxhoorn,D.M.,Novina,C.D.,and Sharp,P.A.メッセンジャーの不活化:遺伝子発現のサイレンシングをもたらす短いRNA(Killing the messenger:Short RNAs that silence gene expression)Nature Reviews Molecular Cell Biology 4:457-467(2002)。
【0106】
例えば、本発明のヘアピン構造を有する好ましいsiRNAは、下に示されるものである。以下の構造において、ループ配列は、CCC、UUCG、CCACC、CCACACC、及びUUCAAGAGAからなる群より選択され得る。好ましいループ配列は、UUCAAGAGAである(DNAにおいては「ttcaagaga」)。
gaugguucugcagcaccac-[B]-guggugcugcagaaccauc(配列番号:8の標的配列用)
【0107】
発現は、CCDC4配列に隣接する同一または異なる制御配列によって、時間的もしくは空間的に独立して調節され得る。siRNAは、例えば、低分子核RNA(snRNA)U6由来のRNAポリメラーゼIII転写単位又はヒトH1 RNAプロモーターを含有しているベクターへCCDC4遺伝子鋳型をクローニングすることにより細胞内で転写される。ベクターを細胞へ導入するため、トランスフェクション増強剤が使用され得る。FuGENE(Rochediagnostices)、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen)、オリゴフェクタミン(Oligofectamine)(Invitrogen)、及びヌクレオフェクター(Nucleofector)(Wako pure Chemical)が、トランスフェクション増強剤として有用である。
【0108】
siRNAのヌクレオチド配列は、アンビオン社(Ambion)のウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手しうるsiRNA設計用のコンピュータプログラムを用いて設計することができる。siRNAに関するヌクレオチド配列は、コンピュータプログラムにより、以下のプロトコールに基づいて選択される。
【0109】
siRNA標的部位の選択:
1.目的の転写物のAUG開始コドンから開始して、AAジヌクレオチド配列に関して下流へとスキャンする。各AAおよび3'末端に隣接した19ヌクレオチドの出現率をsiRNA標的の可能性がある部位として記録する。Tuschlら((Targeted mRNA degradation by double-stranded RNA in vitro. Genes Dev 13(24): 3191-7(1999))は、siRNAを5'および3'非翻訳領域(UTR)ならびに開始コドン付近(75塩基内)の領域に対しては設計しないように推奨しており、これは、これらの領域には調節タンパク質の結合部位が多く含まれる可能性があるためである。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
2.標的の可能性がある部位をヒトゲノムデータベースと比較し、他のコード配列と明らかな相同性を有するどの標的領域も検討から除外する。相同性検索はBLASTを用いて行うことができ、これはNCBIのサーバー:www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/上にある。
3.合成用の適格な標的配列を選択する。アンビオン社では、遺伝子の全長に沿っていくつかの標的配列を評価用に選択することができる。
【0110】
CCDC4 mRNAの様々な部分のオリゴヌクレオチド及びそれに相補的なオリゴヌクレオチドは、標準的な方法に従い、(例えば、PC3又はDU145前立腺癌細胞系を使用して)腫瘍細胞におけるCCDC4の産生を減少させる能力に関してインビトロで試験された。候補組成物の非存在下において培養された細胞と比較して、候補siRNA組成物と接触した細胞におけるCCDC4遺伝子産物の低下が、CCDC4特異的抗体又はその他の検出戦略を使用して検出される。次いで、インビトロでの細胞に基づくアッセイ又は無細胞アッセイにおいてCCDC4の産生を減少させる配列が、細胞増殖に対する阻害効果に関して試験される。インビトロでの細胞に基づくアッセイにおいて細胞増殖を阻害する配列は、悪性新生物を有する動物における減少したCCDC4産生及び減少した腫瘍細胞増殖を確認するため、ラット又はマウスにおいてインビボで試験される。
【0111】
本発明には、標的配列の核酸配列、例えば、配列番号:1又は3のヌクレオチド1666〜1684(配列番号:8)を含む二本鎖分子が含まれる。本発明において、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であり、センス鎖は配列番号:8に対応するリボヌクレオチド配列を含み、アンチセンス鎖は該センス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、該センス鎖及び該アンチセンス鎖は互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、該二本鎖分子は、CCDC4遺伝子を発現している細胞へ導入された場合、該遺伝子の発現を阻害する。本発明において、単離された核酸がRNA又はその誘導体である場合には、塩基「t」がヌクレオチド配列における「u」と交換されるべきである。本明細書において使用されるように、「相補的な」という用語は、核酸分子のヌクレオチド単位間のワトソン・クリック型又はフーグスティーン(Hoogsteen)型の塩基対形成をさし、「結合」という用語は、二つの核酸もしくは化合物又は会合した核酸もしくは化合物、又はそれらの組み合わせの間の物理学的もしくは化学的な相互作用、を意味する。
【0112】
相補核酸配列は、適切な条件の下でハイブリダイズし、ミスマッチをほとんど又は全く含有していない安定的な二重鎖を形成する。さらに、本発明の単離されたヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションにより二本鎖ヌクレオチド又はヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、そのような二重鎖は、10個のマッチに対し1個のミスマッチしか含有していない。二重鎖の鎖が完全に相補的である、特に好ましい態様において、そのような二重鎖はミスマッチを含有していない。核酸分子は、(配列番号:1に関しては)8763ヌクレオチド長又は(配列番号:3に関しては)8692ヌクレオチド長未満である。例えば、核酸分子は、500、200、又は75ヌクレオチド長未満である。本発明には、本明細書に記載された核酸のうちの一つ以上を含有しているベクター、及びベクターを含有している細胞も含まれる。本発明の単離された核酸は、CCDC4に対するsiRNA又はsiRNAをコードするDNAのために有用である。核酸が、siRNA又はそれらのコーディングDNAのために使用される場合、センス鎖は、好ましくは約19ヌクレオチドより長く、より好ましくは約21ヌクレオチドより長い。
【0113】
本発明のアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害し、従って、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制するのに有用である。また、本発明のアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む発現阻害剤は、本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害し得るという点で有用である。従って、本発明のアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む組成物は、前立腺癌の治療において有用である。哺乳動物細胞における発現を阻害するCCDC4 siRNAオリゴヌクレオチドの例には、配列番号:8を含有している標的配列が含まれる。さらに、siRNAの阻害活性を増強するため、ヌクレオチド「u」が、標的配列のアンチセンス鎖の3'末端に付加され得る。付加される「u」の数は、少なくとも約2個、一般的には約2〜約10個、好ましくは約2〜約5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で単鎖を形成する。
【0114】
同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む発現阻害物質も、それらが本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害しうるという点で有用である。このため、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む組成物は前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療に有用である。
【0115】
さらに、本発明は、本発明のCCDC4ポリペプチドの発現を阻害するリボザイムを提供する。
【0116】
一般に、リボザイムは大型リボザイムおよび小型リボザイムに分類される。大型リボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断する酵素として知られている。大型リボザイムとの反応後、反応した部位は5'リン酸基および3'ヒドロキシル基から構成される。大型リボザイムはさらに(1)グアノシンによる5'スプライス部位でのエステル交換反応を触媒するI群イントロンRNA;(2)ラリアット構造を介した二段階反応による自己スプライシングを触媒するII群イントロンRNA;および(3)加水分解によりtRNA前駆体を5'部位で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。一方、小型リボザイムは大型リボザイムと比較してサイズが小さく(約40bp)、RNAを切断して5'ヒドロキシル基および2'-3'サイクリックリン酸を生成する。ハンマーヘッド型リボザイム(Koizumiら、FEBS LErr 228: 225 (1988))およびヘアピン型リボザイム(Buzayan、Nature 323: 349 (1986);KikuchiおよびSasaki、Nucleic Acids Res 19: 6751 (1992))は小型リボザイムに含まれる。リボザイムの設計および構築のための方法は当技術分野で周知である(Koizumiら、FEBS Lett 228: 225 (1988);Koizumiら、Nucleic Acids Res17: 7059 (1989);KikuchiおよびSasaki、Nucleic Acids Res 19: 6751 (1992)を参照されたい)。このため、本発明のポリペプチドの発現を阻害するリボザイムを、それらの配列情報(配列番号:1または3)およびこれらの従来の方法に基づいて構築することも可能である。
【0117】
CCDC4遺伝子に対するリボザイムは、過剰発現されるCCDC4タンパク質の発現を阻害するため、本タンパク質の生物学的活性を抑制するために有用である。したがって、これらのリボザイムは前立腺癌の治療または予防において有用である。
【0118】
前立腺癌の診断
さらに、本発明は、本発明の遺伝子の発現レベルを診断マーカーとして利用して、前立腺癌などの細胞増殖性疾患を診断するための方法も提供する。
【0119】
この診断方法は、(a)本発明のCCDC4遺伝子の発現レベルを検出する段階、および(b)発現レベルの上昇を前立腺癌と関連づける段階を含む。
【0120】
生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルは、CCDC4遺伝子に対応するmRNA、またはCCDC4遺伝子によってコードされるタンパク質を定量することによって評価できる。mRNAの定量法は当業者に周知である。例えば、CCDC4遺伝子に対応するmRNAのレベルをノーザンブロット法またはRT-PCRによって評価することができる。CCDC4遺伝子の完全長ヌクレオチド配列は配列番号:1または3に示されているため、当業者であれば、CCDC4遺伝子を定量するためのプローブまたはプライマーのヌクレオチド配列を設計することができる。
【0121】
CCDC4遺伝子の発現レベルを、遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または量に基づいて分析することもできる。CCDC4タンパク質の量を決定するための方法は以下に示されている。例えば、免疫アッセイ法は、生物学的材料におけるタンパク質の決定に有用である。前立腺癌患者の試料においてマーカー遺伝子(CCDC4遺伝子)が発現される限り、タンパク質またはその活性を決定するための生物学的試料として、任意の生物学的材料を用いることができる。例えば、前立腺導管上皮をこのような生物学的試料として挙げることができる。しかし、血液および尿などの体液を分析することもできる。一方、CCDC4遺伝子によってコードされるタンパク質の活性の決定のためには、分析しようとするタンパク質の活性に応じて適した方法を選択することができる。
【0122】
生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルを評価し、正常試料(例えば、罹患していない対象から採取した試料)における発現レベルと比較する。このような比較によって標的遺伝子の発現レベルが正常試料における発現レベルよりも高いことが示された場合には、その対象は前立腺癌に罹患していると判断される。正常対象および対象に由来する生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルは同時に決定してもよい。または、発現レベルの正常範囲を、対照群から事前に採取した標本における遺伝子の発現レベルを分析することによって得た結果に基づき統計学的方法によって決定してもよい。対象試料を比較して得られた結果は正常範囲と比較し;その結果が正常範囲内に収まらない場合には、対象は前立腺癌に罹患している、または前立腺癌を発症するリスクがあると判断される。
【0123】
本発明においては、前立腺癌などの細胞増殖性疾患を診断するための診断薬も提供する。本発明の診断薬は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと結合する化合物を含む。本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、または本発明のポリペプチドと結合する抗体を、このような化合物として用いることが好ましい。
【0124】
前立腺癌の本診断方法は、対象における前立腺癌の治療の有効性を評価するために応用することもできる。本方法によれば、被験細胞集団などの生物学的試料を、前立腺癌に対する治療を受けている対象から入手する。評価のための方法は、前立腺癌の従来の診断方法に従って行うことができる。
【0125】
望まれるならば、治療前、治療中、および治療後のさまざまな時点で対象から生物学的試料を入手する。続いて、生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルを決定し、例えば、前立腺癌の状態が分かっている細胞(すなわち、癌細胞または非癌性細胞)を含む参照細胞集団から得た対照レベルと比較する。対照レベルの決定は治療を受けていない生物学的試料で行う。
【0126】
対照レベルが癌細胞を含まない生物学的試料に由来する場合には、対象由来の生物学的試料における発現レベルと対照レベルとの間に類似性があることは、治療が有効であることを意味する。対象由来の生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルと対照レベルとの間に差があることは、臨床的成果または予後があまり好ましくないことを意味する。
【0127】
「有効な(efficacious)」という用語は、治療によって、病理学的に上方制御される遺伝子(CCDC4遺伝子)の発現の低下、または前立腺癌細胞のサイズ、罹患率もしくは増殖能の低下が対象にもたらされることを指す。治療が予防的に適用される場合には、「有効な」とは、治療が前立腺癌の発生を遅延させること、または防止することを示す。前立腺癌の評価は標準的な臨床的プロトコールを用いて行うことができる。さらに、治療の有効性は、前立腺癌の診断または治療のための任意の既知の方法に則して判定される。
【0128】
さらに、前立腺癌の本診断方法は、被験細胞集団などの患者由来の生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルを対照レベルと比較することにより、前立腺癌を有する対象の予後の評価に適用することもできる。または、患者の予後を評価するために、患者由来の生物学的試料におけるCCDC4遺伝子の発現レベルを、疾患の諸病期の全体にわたって測定することもできる。
【0129】
正常対照レベルと比較してCCDC4遺伝子の発現レベルが高いことは、予後があまり好ましくないことを意味する。CCDC4遺伝子の発現レベルが低いことは、患者の予後がより好ましいことを意味する。
【0130】
化合物のスクリーニング
CCDC4遺伝子、この遺伝子によってコードされるタンパク質、またはこの遺伝子の転写調節領域を用いて、遺伝子の発現または遺伝子によってコードされるポリペプチドの生物学的活性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。このような化合物は前立腺癌の治療または予防のための調合薬として使用される。
【0131】
したがって、本発明は、本発明のポリペプチドを用いた前立腺癌を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法の1つの態様には、(a)被験化合物を本発明のポリペプチドと接触させる段階、(b)本発明のポリペプチドと被験化合物との結合活性を検出する段階、および(c)本発明のポリペプチドと結合する化合物を選択する段階が含まれる。
【0132】
スクリーニングに用いる本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチドでも天然のタンパク質でもよく、またはそれらの部分ペプチドでもよい。被験化合物と接触させる本発明のポリペプチドは、例えば、精製ポリペプチド、可溶性タンパク質、担体と結合した形態、または他のポリペプチドと融合した融合タンパク質でありうる。
【0133】
本発明のポリペプチドを用いて、タンパク質、例えば本発明のポリペプチドと結合するタンパク質をスクリーニングする方法としては、当業者に周知の多くの方法を用いることができる。このようなスクリーニングは、例えば、免疫沈降方法により、具体的には以下の様式で行うことができる。pSV2neo、pcDNAI、pcDNA3.1、pCAGGS、およびpCD8といった外来遺伝子用の発現ベクターに対して遺伝子を挿入することにより、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を宿主(例えば、動物細胞)などで発現させる。発現のために用いるプロモーターは一般に用いうる任意のプロモーターでよく、これには例えば、SV40初期プロモーター(Rigby、Williamson(編)、「Genetic Engineering」第3巻、Academic Press、London、83-141 (1982))、EF-1αプロモーター(Kimら、Gene 91: 217-23 (1990))、CAGプロモーター(Niwaら、Gene 108: 193-200 (1991))、RSV LTRプロモーター(Cullen、Methods in Enzymology 152: 684-704 (1987))、SRαプロモーター(Takebeら、Mol Cell Biol 8: 466 (1988))、CMV最初期プロモーター(SeedおよびAruffo、Proc Natl Acad Sci USA 84: 3365-9 (1987))、SV40後期プロモーター(GheysenおよびFiers、J Mol Appl Genet 1: 385-94 (1982))、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufmanら、Mol Cell Biol 9: 946 (1989))、HSV TKプロモーターなどが含まれる。外来遺伝子を発現させるための宿主細胞への遺伝子の導入は任意の方法に従って行うことができ、これには例えば、電気穿孔法(Chuら、Nucleic Acids Res 15: 1311-26 (1987))、リン酸カルシウム法(ChenおよびOkayama、Mol Cell Biol 7: 2745-52 (1987))、DEAEデキストラン法(Lopataら、Nucleic Acids Res 12: 5707-17 (1984);SussmanおよびMilman、Mol Cell Biol 4: 1642-3 (1985))、リポフェクチン法(Derijard、B Cell 7: 1025-37 (1994);Lambら、Nature Genetics 5: 22-30 (1993):Rabindranら、Science 259: 230-4 (1993))などがある。本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端に対する特異性が判明しているモノクローナル抗体のエピトープを導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として発現させることができる。市販のエピトープ-抗体系を用いることもできる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。例えばβ-ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)などとの融合タンパク質を、マルチクローニングサイトを用いることによって発現させうるベクターが市販されている。
【0134】
融合によって本発明のポリペプチドの性質を変えないように数個〜十数個のアミノ酸からなる小さなエピトープのみを導入することによって作製された融合タンパク質も報告されている。ポリヒスチジン(Hisタグ)、インフルエンザ凝集素HA、ヒトc-myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7タグ)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(HSVタグ)、Eタグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)などのエピトープ、およびそれらを認識するモノクローナル抗体を、本発明のポリペプチドと結合するタンパク質のスクリーニングのためのエピトープ-抗体系として用いることができる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
【0135】
免疫沈降の場合には、適切な界面活性剤を用いて調製した細胞可溶化物にこれらの抗体を添加することにより、免疫複合体を形成させる。免疫複合体は、本発明のポリペプチド、そのポリペプチドとの結合能があるポリペプチド、および抗体からなる。以上のエピトープに対する抗体を用いることに加えて、免疫沈降を本発明のポリペプチドに対する抗体を用いて行うこともでき、これらの抗体は上記の通りに調製することができる。
【0136】
免疫複合体は、抗体がマウスIgG抗体であれば、例えばプロテインAセファロースまたはプロテインGセファロースによって沈降させることができる。本発明のポリペプチドをGSTなどのエピトープとの融合蛋白質として作製する場合には、これらのエピトープと特異的に結合する基質、例えばグルタチオン-セファロース4Bを用いて、本発明のポリペプチドに対する抗体を用いる時と同じ様式で免疫複合体を形成させることができる。
【0137】
免疫沈降は、例えば、文献中に記載された方法に倣ってまたは従って行うことができる(HarlowおよびLane、「Antibodies」、511-52、Cold Spring Harbor Laboratory publications、New York (1988))。
【0138】
SDS-PAGEは免疫沈降したタンパク質の分析に一般に用いられており、結合したタンパク質は適切な濃度のゲルを用いてタンパク質の分子量によって分析することができる。本発明のポリペプチドと結合したタンパク質をクーマシー染色または銀染色などの一般的な染色法によって検出することは困難であるため、タンパク質に関する検出感度は、放射性同位体である35S-メチオニンまたは35S-システインを含む培養液中で細胞を培養し、細胞内のタンパク質を標識した上でタンパク質を検出することによって改善することができる。タンパク質の分子量がわかっている場合には、標的タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲルから直接精製して、その配列を決定することができる。
【0139】
ポリペプチドを用いる、本発明のポリペプチドと結合するタンパク質のスクリーニングのための方法として、例えば、ウエスト-ウエスタンブロット分析(Skolnikら、Cell 65: 83-90 (1991))を用いることができる。具体的には、本発明のポリペプチドと結合するタンパク質は、細胞、組織、臓器(例えば、精巣または前立腺などの組織)、または本発明のポリペプチドと結合するタンパク質を発現すると予想される培養細胞(例えば、PC3、DU145)から、ファージベクター(例えば、ZAP)を用いてcDNAライブラリーを作製し、タンパク質をLB-アガロース上で発現させ、発現したタンパク質をフィルター上に固定し、精製および標識がなされた本発明のポリペプチドを上記のフィルターと反応させ、かつ本発明のポリペプチドと結合したタンパク質を発現するプラークを標識によって検出することによって得ることができる。本発明のポリペプチドは、ビオチンとアビジンとの結合を利用することにより、または本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体、もしくは本発明のポリペプチドと融合したペプチドもしくはポリペプチド(例えば、GST)を利用することにより、標識しうる。放射性同位体または蛍光などを使用する方法を用いてもよい。
【0140】
または、本発明のスクリーニング方法のもう1つの態様において、細胞を利用する2-ハイブリッド系を用いることもできる(「MATCHMAKER 2-ハイブリッド系(MATCHMAKER Two-Hybrid system)」「哺乳動物MATCHMAKER 2-ハイブリッドアッセイキット(Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit)」「MATCHMAKER 1-ハイブリッド系(MATCHMAKER one-Hybrid system)」(Clontech);「HybriZAP 2-ハイブリッドベクター系(HybriZAP Two-Hybrid Vector System)」(Stratagene);参考文献「DaltonおよびTreisman、Cell 68: 597-612 (1992)」「FieldsおよびSternglanz、Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0141】
2-ハイブリッド系では、本発明のポリペプチドをSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて、酵母細胞で発現させる。本発明のポリペプチドと結合するタンパク質を発現すると予想される細胞から、ライブラリーが発現した場合にVP16またはGAL4転写活性化領域と融合させるように、cDNAライブラリーを作成する。続いてcDNAライブラリーを上記の酵母細胞に導入し、検出された陽性クローンからライブラリーに由来するcDNAを単離する(本発明のポリペプチドと結合するタンパク質を酵母細胞で発現させる場合には、この2つの結合によってレポーター遺伝子が活性化され、陽性クローンが検出されるようになる)。cDNAによってコードされるタンパク質は、以上のようにして単離したcDNAを大腸菌に導入してタンパク質を発現させることによって調製しうる。
【0142】
レポーター遺伝子としては、HIS3遺伝子のほかに、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などを用いることができる。
【0143】
本発明のポリペプチドと結合する化合物を、アフィニティークロマトグラフィーを用いてスクリーニングすることもできる。例えば、本発明のポリペプチドをアフィニティーカラムの担体上に固定化し、本発明のポリペプチドと結合しうるタンパク質を含む被験化合物をカラムに対して適用してもよい。本明細書における被験化合物は、例えば、細胞抽出物、細胞可溶化物などであってよい。被験化合物のローディング後に、カラムを洗浄し、本発明のポリペプチドと結合した化合物を調製することができる。
【0144】
被験化合物がタンパク質である場合には、得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析して、その配列に基づいてオリゴDNAを合成し、そのオリゴDNAを、タンパク質をコードするDNAを得るためのプローブとして用いて、cDNAライブラリーをスクリーニングする。
【0145】
表面プラスモン共鳴現象を利用するバイオセンサーを、結合した化合物の検出または定量のための手段として本発明に用いることもできる。このようなバイオセンサーを用いると、ごく微量のポリペプチドのみを用いて、標識を行わずに、本発明のポリペプチドと被験化合物との相互作用を表面プラスモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。このため、BIAcoreなどのバイオセンサーを用いて、本発明のポリペプチドと被験化合物との結合を評価することが可能である。
【0146】
本発明の固定化されたポリペプチドを合成化合物、または天然物バンク、またはランダムなファージペプチドディスプレイライブラリーに対して曝露させた場合に結合する分子をスクリーニングする方法、および、本発明のタンパク質と結合するタンパク質だけでなく化合物(アンタゴニストを含む)も単離するための、コンビナトリアル化学に基づくハイスループット技法を用いたスクリーニング方法(Wrightonら、Science 273: 458-64 (1996);Verdine、Nature 384: 11-13 (1996);Hogan、Nature 384: 17-9 (1996))は当業者に周知である。
【0147】
または、本発明は、
(a)被験化合物を本発明のポリペプチドに接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
(c)ポリペプチドの生物学的活性を被験化合物の非存在下で検出される生物学的活性と比較して抑制する化合物を選択する段階を含む、本発明のポリペプチドを用いた前立腺癌の治療または予防のための化合物のスクリーニング方法も提供する。
【0148】
本発明のCCDC4タンパク質は前立腺癌細胞の細胞増殖を促進する活性を有するため、この活性を指標として、本発明のタンパク質が有するこの活性を阻害する化合物をスクリーニングすることができる。
【0149】
任意のポリペプチドを、それがCCDC4タンパク質の生物学的活性を有する限り、スクリーニングのために用いることができる。このような生物学的活性には、ヒトCCDC4タンパク質の細胞増殖活性が含まれる。例えば、ヒトCCDC4タンパク質を用いることができ、これらのタンパク質と機能的に等価なポリペプチドを用いることもできる。このようなポリペプチドは細胞によって内因性に発現させても外因性に発現させてもよい。
【0150】
このスクリーニングによって単離された化合物は、本発明のポリペプチドのアンタゴニストの候補である。「アンタゴニスト」という用語は、本発明のポリペプチドとの結合によってその機能を阻害する分子のことを指す。さらに、このスクリーニングによって単離された化合物は、本発明のポリペプチドと分子(DNAおよびタンパク質を含む)とのインビボ相互作用を阻害する化合物の分子の候補でもある。
【0151】
本方法において検出しようとする生物学的活性が細胞増殖である場合には、実施例の項に記載したように、例えば、本発明のポリペプチドを発現する細胞を調製し、細胞を被験化合物の存在下で培養して、細胞増殖の速度を評価し、細胞周期などを測定し、さらにはコロニー形成活性を測定することにより、それを検出することができる。
【0152】
さらにもう1つの態様において、本発明は、前立腺癌の治療または予防のための化合物のスクリーニングのための方法を提供する。以上に詳細に考察した通り、CCDC4の発現レベルまたは活性を制御することにより、前立腺癌の発生および進行を制御することができる。このため、前立腺癌の治療または予防に用いうる可能性のある化合物を、CCDC4の発現レベルを指標として用いるスクリーニングによって同定することができる。本発明の状況において、このようなスクリーニングには、例えば、
a)被験化合物を、CCDC4を発現する細胞に接触させる段階;および
b)CCDC4の発現レベルを、被験化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して低下させる化合物を選択する段階が含まれていてもよい。
【0153】
CCDC4のうち少なくとも1つを発現する細胞には、例えば、前立腺癌から樹立された細胞株が含まれる;このような細胞を本発明の上記のスクリーニングのために用いることができる(例えば、PC3、DU145)。発現レベルは当業者に周知の方法によって評価できる。スクリーニングの方法において、CCDC4の発現レベルを低下させる化合物を、前立腺癌の治療または予防のために用いる候補物質として選択することができる。
【0154】
または、本発明のスクリーニング方法は、
a)被験化合物を、1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写調節領域および転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞と接触させる段階(この際、1つまたは複数のマーカー遺伝子はCCDC4である);
b)前記レポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を測定する段階;および
c)前記レポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を対照と比較して低下させる化合物を選択する段階を含みうる。
【0155】
適したレポーター遺伝子および宿主細胞は当技術分野で周知である。スクリーニングのために必要なレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写調節領域を用いることによって作製しうる。マーカー遺伝子の転写調節領域が当業者に知られている場合には、事前の配列情報を用いることによってレポーター構築物を作製することができる。マーカー遺伝子の転写調節領域がまだ同定されていない場合には、転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントを、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づいてゲノムライブラリーから単離することができる。
【0156】
タンパク質を結合させるために用いうる支持体の例には、アガロース、セルロース、およびデキストランなどの不溶性多糖類、ならびにポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびシリコンなどの合成樹脂が含まれる;以上の材料から作製された市販のビーズおよびプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサーチップなど)を用いることが好ましい。ビーズを用いる場合には、それらをカラムに充填してもよい。
【0157】
タンパク質は、化学的結合および物理的吸着などの慣行の方法に従って支持体に結合させることができる。または、タンパク質は、タンパク質を特異的に認識する抗体を介して支持体に結合させてもよい。さらに、アビジンおよびビオチンを利用して、タンパク質を支持体に結合させることもできる。
【0158】
タンパク質同士の結合は、緩衝液がタンパク質同士の結合を阻害しない限りは、例えばこれらに限定されないがリン酸緩衝液およびTris緩衝液の緩衝液中で行われる。
【0159】
本発明において、表面プラスモン共鳴現象を利用するバイオセンサーを、結合したタンパク質の検出または定量のための手段として用いることもできる。このようなバイオセンサーを用いると、ごく微量のポリペプチドのみを用いて、標識を行わずに、タンパク質同士の相互作用を表面プラスモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。
【0160】
または、CCDC4ポリペプチドを標識し、結合したタンパク質の標識を、結合したタンパク質の検出または測定に用いることもできる。具体的には、タンパク質の一方をあらかじめ標識した後に、標識したタンパク質を被験化合物の存在下でもう一方のタンパク質と接触させ、洗浄後、結合したタンパク質を標識によって検出または測定する。
【0161】
本方法におけるタンパク質の標識のためには、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)およびビオチン/アビジンなどの標識物質を用いることができる。タンパク質を放射性同位体で標識する場合には、検出または測定を液体シンチレーションによって行うことができる。または、酵素で標識したタンパク質は、呈色などの基質の酵素的変化を検出するために、酵素基質を添加して吸光光度計で検出または測定することもできる。さらに、蛍光物質を標識として用いる場合には、結合したタンパク質を蛍光光度計を用いて検出または測定することができる。
【0162】
抗体を本スクリーニングに用いる場合には、抗体を上記の標識物質のいずれかで標識し、標識物質に基づいて検出または測定を行うことが好ましい。または、標識物質で標識した二次抗体によって検出されるように、CCDC4またはアクチンに対する抗体を一次抗体として用いてもよい。さらに、本発明のスクリーニングにおいてタンパク質と結合した抗体は、プロテインGまたはプロテインAカラムを用いて検出または測定することもできる。
【0163】
または、本発明のスクリーニング方法のもう1つの態様において、細胞を利用する2-ハイブリッド系を用いることもできる(「MATCHMAKER 2-ハイブリッド系」「哺乳動物MATCHMAKER 2-ハイブリッドアッセイキット」「MATCHMAKER 1-ハイブリッド系」(Clontech);「HybriZAP 2-ハイブリッドベクター系」(Stratagene);参考文献「DaltonおよびTreisman、Cell 68: 597-612 (1992)」「FieldsおよびSternglanz、Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0164】
2-ハイブリッド系では、本発明のCCDC4ポリペプチドをSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて、酵母細胞において発現させる。
【0165】
レポーター遺伝子としては、HIS3遺伝子のほかに、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などを用いることができる。
【0166】
任意の被験化合物、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物の産物、海洋生物からの抽出物、植物抽出物、精製タンパク質または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物および天然化合物を本発明のスクリーニング方法に用いることができる。また、本発明の被験化合物を、(1)生物学的ライブラリー、(2)空間アドレスで参照しうる並列型の固相または液相ライブラリー、(3)デコンボルーションを要する合成ライブラリー法、(4)「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法、および(5)アフィニティークロマトグラフィーによる選別を用いた合成ライブラリー法を含む、当技術分野で知られたコンビナトリアルライブラリー法における数多くのアプローチのうち任意のものを用いて入手することもできる。アフィニティークロマトグラフィーによる選別を用いた生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子化合物ライブラリーに対して適用しうる(Lam(1997) Anticancer Drug Des. 12: 145)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当技術分野で見い出すことができる(DeWittら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909;Erbら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422;Zuckermannら(1994) J. Med. Chem. 37: 2678;Choら(1993) Science 261: 1303;Carellら(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059;Carellら(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061;Gallopら(1994) J. Med. Chem. 37: 1233)。化合物のライブラリーは、溶液中にある状態(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412)、またはビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号および第5,223,409号)、プラスミド(Cullら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865)もしくはファージ(ScottおよびSmith (1990) Science 249: 386;Delvin (1990) Science 249: 404;Cwirlaら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378;Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301;米国特許出願第2002103360号)の表面にある状態で提供することができる。
【0167】
本発明のスクリーニング方法によって単離された化合物は、例えば、前立腺癌などの細胞増殖性疾患に起因する疾患の治療または予防を目的として、本発明のポリペプチドの活性を阻害する薬剤の候補である。本スクリーニング方法によって得られた化合物の構造の一部が、付加、欠失および/または置換によって変換された化合物は、本発明のスクリーニング方法によって得られる化合物に含まれる。
【0168】
前立腺癌の治療または予防のための薬学的組成物
本発明は、本発明のスクリーニング方法によって選択された化合物の任意のものを含む、前立腺癌の治療または予防のための組成物を提供する。
【0169】
本発明のスクリーニング方法によって単離された化合物を、細胞増殖性疾患(例えば、前立腺癌)を治療するために、ヒトまたは他の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、チンパンジーに対して調合薬として投与する場合には、単離された化合物を直接投与してもよく、または既知の薬剤調製法を用いて剤形に製剤化してもよい。例えば、必要に応じて、薬剤を糖衣錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、およびマイクロカプセルとして経口投与することもでき、または水もしくは他の任意の薬学的に許容される液体との滅菌溶液もしくは懸濁液である注射剤の形態として非経口的に投与することもできる。例えば、化合物を、一般に認められる薬剤の実現のために必要な単位用量の形で、薬理学的に許容される担体または媒体、具体的には滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、媒質、保存料、結合剤などと混合することができる。これらの製剤における有効成分の量により、指定された範囲内にある適した投与量が得られる。
【0170】
錠剤およびカプセル剤に混合しうる添加剤の例には、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなどの結合剤;結晶セルロースなどの媒質;コーンスターチ、ゼラチンおよびアルギン酸などの膨潤剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味料;ペパーミント、冬緑油およびチェリーなどの香味剤がある。単位投与剤形がカプセル剤である場合には、油などの液体担体も上記の成分にさらに含めることができる。注射用の滅菌混合物は、通常の薬剤の実現に倣って、注射用の蒸留水などの媒体を用いて製剤化することができる。
【0171】
生理食塩水、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトールおよび塩化ナトリウムなどの佐剤を含むその他の等張液を、注射用の水溶液として用いることができる。これらは適した可溶化剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどの多価アルコール、Polysorbate 80(商標)およびHCO-50などの非イオン性界面活性剤などと組み合わせて用いることができる。
【0172】
ゴマ油またはダイズ油は油脂性液体として用いることができ、これらを可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと組み合わせて用いることもでき、さらにこれらをリン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液;塩酸プロカインなどの鎮痛薬;ベンジルアルコール、フェノールなどの安定剤;および抗酸化剤とともに製剤化することもできる。調製された注射剤は適したアンプルに充填することができる。
【0173】
本発明の医薬化合物を、例えば動脈内注射、静脈内注射、皮下注射として、および同じく鼻腔内投与、経気管支投与、筋肉内投与または経口投与として患者に対して投与するためには、当業者によく知られた方法を用いることができる。投与量および投与方法は患者の体重および年齢ならびに投与方法に応じて異なる;しかし、当業者は慣行的にそれらを選択しうる。前記化合物がDNAによってコードされうる場合には、DNAを遺伝子治療用のベクターに挿入し、治療を行うためにそのベクターを投与することができる。投与量および投与方法は患者の体重、年齢および症状に応じて異なるが、当業者はそれらを適切に選択しうる。
【0174】
例えば、症状によって若干の違いはあるものの、本発明のポリペプチドと結合してその活性を調節する化合物の投与量は、標準的な成人(体重60kg)に対して経口投与する場合、約0.1mg〜約100mg/日、好ましくは約1.0mg〜約50mg/日、より好ましくは約1.0mg〜約20mg/日である。
【0175】
標準的な成人(体重60kg)に対して注射剤の形態として非経口的に投与する場合には、患者、標的臓器、症状および投与方法に応じて若干の違いはあるものの、約0.01mg〜約30mg/日、好ましくは約0.1〜約20mg/日、より好ましくは約0.1〜約10mg/日の用量を静脈注射することが好都合である。同じく、他の動物の場合にも、体重60kgに換算した量を投与することが可能である。
【0176】
さらに、本発明は、CCDC4遺伝子の発現を阻害する有効成分を含む、前立腺癌の治療または予防のための薬学的組成物を提供する。このような有効成分には、CCDC4遺伝子に対するアンチセンスポリヌクレオチド、siRNAもしくはリボザイム、またはアンチセンスポリヌクレオチド、siRNAもしくはリボザイムの誘導体(例えば発現ベクター)が含まれる。
【0177】
これらの有効成分は、誘導体に対して不活性である適切な基材と混合することにより、リニメント剤または湿布剤などの外用製剤の形にすることができる。同じく、必要に応じて、添加剤、等張剤、溶解補助剤、安定剤、保存料、鎮痛薬などを添加することにより、それらを錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻薬および凍結乾燥製剤として製剤化することもできる。これらは通常の方法に従って調製可能である。
【0178】
有効成分は、罹患部位に対して直接外用することにより、またはそれが罹患部位に到達するように血管内に注入することにより、患者に対して投与される。持続性および膜透過性を高めるためにアンチセンス用封入剤を用いることもできる。封入剤の例には、リポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチンまたはこれらの誘導体が含まれる。
【0179】
本発明のこのような組成物の投与量は、患者の状態に従って適切に調整した上で、所望の量を用いることができる。例えば、0.1〜100mg/kg、好ましくは0.1〜50mg/kgの範囲の用量を投与することができる。
【0180】
本発明のもう1つの態様は、CCDC4遺伝子によってコードされるポリペプチドに対する抗体、またはそのポリペプチドと結合する抗体の断片を含む、前立腺癌の治療または予防のための組成物である。
【0181】
症状に応じて若干の違いはあるものの、前立腺癌を治療または予防するための抗体またはその断片の投与量は、標準的な成人(体重60kg)に対して経口投与する場合には、約0.1mg〜約100mg/日、好ましくは約1.0mg〜約50mg/日、より好ましくは約1.0mg〜約20mg/日である。
【0182】
標準的な成人(体重60kg)に対して、注射剤の形態として非経口的に投与する場合には、患者、疾患の症状および投与方法に応じて若干の違いはあるものの、約0.01mg〜約30mg/日、好ましくは約0.1〜約20mg/日、より好ましくは約0.1〜約10mg/日の用量を静脈注射することが好都合である。同じく、他の動物の場合にも、体重60kgに換算した量を投与することが可能である。
【0183】
前立腺癌の治療または予防のための方法
本発明は、対象における前立腺癌の治療または予防のための方法を提供する。治療用化合物を、前立腺癌に罹患した対象、またはそれを発症するリスクのある(もしくは感受性のある)対象に対して治療または予防目的で投与する。このような対象は、標準的な臨床的方法を用いて、またはCCDC4の発現レベルもしくは活性の異常を検出することによって同定される。予防目的の投与は、疾患または障害を予防するか、またはその進行が遅くなるように、疾患の顕在的な臨床症状が発現する前に行われる。
【0184】
治療方法は、CCDC4遺伝子の発現もしくは機能を低下させることを含む。これらの方法では、対象に対して、対象において過剰発現される遺伝子(CCDC4遺伝子)の一方または両方を低下させる化合物の有効量を投与する。投与は全身的でもまたは局所的でもよい。治療用化合物には、前立腺癌細胞に内因性に存在する遺伝子の発現レベルを低下させる化合物(すなわち、過剰発現される遺伝子の発現を下方制御する化合物)が含まれる。このような治療用化合物の投与により、対象において異常に過剰発現される遺伝子の作用が打ち消され、対象の臨床症状が改善されることが期待される。このような化合物は、上記の本発明のスクリーニング方法によって入手しうる。
【0185】
CCDC4遺伝子の発現を、遺伝子の発現を阻害するかそれに対して拮抗する核酸を対象に投与することを含む、当技術分野で知られたいくつかの方法のうちいずれかによって阻害することもできる。遺伝子の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはリボザイムを、遺伝子の発現を阻害するために用いることができる。
【0186】
上記に指摘した通り、CCDC4遺伝子のヌクレオチド配列に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CCDC4遺伝子の発現レベルを低下させるために用いることができる。詳細には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CCDC4遺伝子によってコードされるポリペプチドのいずれか、またはそれに対応するmRNAと結合し、それによって遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、および/または遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を阻害して、最終的にはCCDC4タンパク質の機能を阻害することによって作用すると思われる。
【0187】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその誘導体は、誘導体に対して不活性である適切な基材と混合することにより、リニメント剤または湿布剤などの外用製剤の形にして、本発明の前立腺癌の治療または予防のための方法に用いることができる。
【0188】
1つまたは複数の過剰発現される遺伝子の遺伝子産物を阻害する核酸には、CCDC4遺伝子をコードする核酸のセンス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸との組み合わせを含む、低分子干渉RNA(siRNA)も含まれる。そこからRNAが転写される鋳型DNAを含め、siRNAを細胞に導入するための標準的な技法を本発明の治療または予防に用いることができる。siRNAは、例えばヘアピンのように、単一の転写物が標的遺伝子由来のセンス配列および相補的アンチセンス配列の両方を有するように構築される。
【0189】
本方法は、CCDC4遺伝子の発現が上方制御されている細胞の遺伝子発現を抑制するために用いられる。標的細胞におけるsiRNAとCCDC4遺伝子の転写物との結合により、細胞によるCCDC4タンパク質の産生の低下が引き起こされる。
【0190】
1つまたは複数の過剰発現される遺伝子の遺伝子産物を阻害する核酸には、過剰発現される遺伝子(CCDC4遺伝子)に対するリボザイムも含まれる。
【0191】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドに対する抗体を用いる、前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療または予防のための方法を提供する。本方法によれば、本発明のポリペプチドに対する抗体の薬学的有効量を投与する。CCDC4タンパク質の発現は前立腺癌細胞で上方制御されている上に、これらのタンパク質の発現の抑制は細胞増殖活性の低下をもたらすため、抗体とこれらのタンパク質との結合により、細胞増殖性疾患の治療または予防が可能であると考えられる。このため、本発明のポリペプチドに対する抗体は、本発明のタンパク質の活性を低下させるのに十分な投与量(これは0.1〜約250mg/kg/日の範囲にある)で投与される。成人に対する用量の範囲は一般に約5mg 〜約17.5g/日であり、好ましくは約5mg 〜約10g/日、最も好ましくは約100mg 〜約3g/日である。
【0192】
または、腫瘍細胞に特異的な細胞表面マーカーと結合する抗体を薬物送達のためのツールとして用いることもできる。例えば、細胞障害物質と結合させた抗体を、腫瘍細胞を損傷させるのに十分な用量として投与する。
【0193】
本発明はまた、抗腫瘍免疫を誘導する方法であって、CCDC4タンパク質もしくはその免疫活性断片、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドもしくはその断片を投与する段階を含む方法にも関する。CCDC4タンパク質またはその免疫活性断片は、前立腺癌のような細胞増殖性疾患に対するワクチンとして有用である。場合によっては、タンパク質またはその断片を、T細胞受容体(TCR)と結合した形態、またはマクロファージ、樹状細胞(DC)もしくはB細胞などの抗原提示細胞(APC)によって提示された形態として投与することもできる。DCの抗原提示能力が高いことから、APCの中でDCを用いることが最も好ましい。
【0194】
本発明において、細胞増殖性疾患に対するワクチンとは、動物に接種した時に抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。一般に、抗腫瘍免疫には以下のような免疫応答が含まれる:
‐腫瘍に対する細胞障害性リンパ球の誘導
‐腫瘍を認識する抗体の誘導、および
‐抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
【0195】
このため、ある特定のタンパク質が、動物に接種した時にこれらの免疫応答を誘導する場合には、そのタンパク質は抗腫瘍免疫誘導作用を有すると判定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、宿主におけるタンパク質に対する免疫系の応答をインビボまたはインビトロで観察することによって検出しうる。
【0196】
例えば、細胞障害性Tリンパ球の誘導を検出するための方法はよく知られている。生体の内部に進入する外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によってT細胞およびB細胞に対して提示される。APCにより提示された抗原に対して抗原特異的な様式で応答したT細胞は、抗原による刺激のために細胞障害性T細胞(または細胞障害性Tリンパ球;CTL)に分化した後に増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、特定のペプチドによるCTL誘導は、そのペプチドをAPCによりT細胞に対して提示させ、CTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCにはCD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球およびNK細胞を活性化する作用もある。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞も抗腫瘍免疫において重要であるため、これらの細胞の活性化作用を指標として用いてペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用を評価することができる。
【0197】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いてCTLの誘導作用を評価するための方法は当技術分野で周知である。DCはAPCの中でも最も強いCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。この方法では、まず被験ポリペプチドをDCと接触させ、続いてこのDCをT細胞と接触させる。DCとの接触後に目的の細胞に対する細胞障害作用を有するT細胞が検出されれば、被験ポリペプチドが細胞障害性T細胞を誘導する活性を持つことが示される。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr標識した腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。または、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法もよく知られている。
【0198】
DC以外に、末梢血単核細胞(PBMC)をAPCとして用いてもよい。CTLの誘導は、PBMCをGM-CSFおよびIL-4の存在下で培養することによって増強されうることが報告されている。同様に、CTLは、PBMCをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下で培養することによっても誘導されることが示されている。
【0199】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された被験ポリペプチドは、DC活性化作用とそれに続くCTL誘導活性とを有するポリペプチドである。このため、腫瘍細胞に対するCTLを誘導するポリペプチドは腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドとの接触によって腫瘍に対するCTLを誘導する能力を獲得したAPCも腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示によって細胞障害性を獲得したCTLを腫瘍に対するワクチンとして用いることもできる。APCおよびCTLに起因する抗腫瘍免疫を用いた、腫瘍に対するこのような治療方法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0200】
一般に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合には、構造の異なる複数のポリペプチドを併用し、それらをDCと接触させることによってCTL誘導の効率が高まることが知られている。このため、DCをタンパク質断片で刺激する場合には、多くの種類の断片の混合物を用いることが有利である。
【0201】
または、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導を、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することもできる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、ポリペプチドで免疫した実験動物において誘導された場合、および腫瘍細胞の増殖がこのような抗体によって抑制された場合には、そのポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導する能力があると判定することができる。
【0202】
抗腫瘍免疫は本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導により、前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療および予防が可能になる。癌に対する治療法または癌の発症の予防は、癌細胞の増殖の阻害、癌の退縮、および癌の発症の抑制といった段階のいずれかを含む。癌を有する個体の死亡率の低下、血液中の腫瘍マーカーの減少、癌に付随する検出可能な症状の緩和なども癌の治療効果または予防効果として含まれる。このような治療効果および予防効果は統計学的に有意であることが好ましい。例えば、観測値で、細胞増殖性疾患に対するワクチンの治療効果または予防効果をワクチン投与を行わない対照と比較して、5%またはそれ未満は有意水準である。統計分析には、例えば、スチューデントのt検定、マン-ホイットニーのU検定またはANOVAを用いうる。
【0203】
免疫学的活性を有する上記のタンパク質、またはタンパク質をコードするベクターを、アジュバントと併用してもよい。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と同時に(または連続して)投与した場合に、そのタンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を指す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバンなどが含まれるが、これらには限定されない。さらに、本発明のワクチンを薬学的に許容される担体と適宜配合してもよい。このような担体の例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などが含まれる。さらに、ワクチンは必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存料、界面活性剤などを含んでもよい。ワクチンは全身的または局所的に投与される。ワクチン投与は単回投与によって行ってもよく、または多回投与による追加刺激を行ってもよい。
【0204】
APCまたはCTLを本発明のワクチンとして用いる場合に、腫瘍を、例えばエクスビボの方法によって治療または予防することができる。より具体的に述べると、治療法または予防法を受ける対象のPBMCを採取し、細胞をエクスビボでポリペプチドと接触させ、APCまたはCTLの誘導後に、細胞を対象に対して投与することができる。ポリペプチドをコードするベクターをPBMC中にエクスビボで導入することによってAPCを誘導することもできる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは投与前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷させる活性の高い細胞のクローニングおよび増殖を行うことにより、細胞免疫療法をさらに効率的に行うことができる。さらに、このようにして単離されたAPCおよびCTLは、細胞が由来する個体における細胞免疫療法のみならず、他の個体の同様の種類の腫瘍にも用いうる。
【0205】
さらに、CCDC4ポリペプチドの薬学的有効量を含む、前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療または予防のための薬学的組成物も提供する。薬学的組成物を抗腫瘍免疫をもたらすために用いることもできる。CCDC4の通常の発現は精巣および前立腺に限局している。このため、この遺伝子の抑制は他の臓器には有害な影響を及ぼさないと考えられる。したがって、CCDC4ポリペプチドは、細胞増殖性疾患、特に前立腺癌を治療するのに好ましい。さらに、癌細胞で特異的に発現されるタンパク質のペプチド断片はその癌に対する免疫応答を誘導することが判明しているため、CCDC4のペプチド断片を、前立腺癌などの細胞増殖性疾患の治療または予防のための薬学的組成物中に用いることもできる。本発明において、ポリペプチドまたはその断片は抗腫瘍免疫を誘導するのに十分な投与量で投与され、これは0.1mg〜10mg、好ましくは0.3mg〜5mg、より好ましくは0.8mg〜1.5mgの範囲である。投与は反復して行う。抗腫瘍免疫を誘導するには、例えば、1mgのペプチドまたはその断片を2週間毎に4回投与するとよい。
【0206】
さらに、CCDC4をコードするポリヌクレオチド、またはそれらの断片を、抗腫瘍免疫をもたらすために用いることができる。このようなポリヌクレオチドを、治療しようとする対象の内部でCCDC4またはそれらの断片を発現させるための発現ベクターに組み入れてもよい。したがって、本発明は、抗腫瘍免疫を誘導するための方法であって、CCDC4をコードするポリヌクレオチドまたはそれらの断片を、前立腺癌などの細胞増殖性疾患に罹患した、またはそれを発症するリスクのある対象に対して投与する方法を含む。
【0207】
以下の実施例は、本発明を例示するとともに、当業者によるその作成および使用を補助する目的で提示される。実施例はいかなる形でも本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0208】
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を持つ。本発明の実施または検討においては本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は以下に説明するものである。本明細書中に引用するいかなる特許、特許出願および刊行物も参照として本明細書に組み入れられる。
【0209】
発明を実施するための最良の態様
本発明は以下の実施例によって詳細に例示されるが、これらの実施例には限定されない。
(1)cDNAマイクロアレイおよびレーザーマイクロビーム顕微解剖
cDNAマイクロアレイスライドの作製についてはすでに記載されている(Onoら、Cancer Res 60: 5007-5011 (2000)。それぞれの発現プロファイルの分析に関して、本発明者らは、実験的な変動を少なくするために、23,040個のcDNAスポットを含むcDNAマイクロアレイスライドを2セットずつ用意した。簡潔に述べると、20例の前立腺癌組織からレーザーマイクロビーム顕微解剖により顕微解剖を行った前立腺癌細胞、PIN細胞、ならびに正常前立腺導管上皮から全RNAを精製した。マイクロアレイ実験を行うために十分なRNAを得るために、T7ポリメラーゼを用いてRNA増幅を行った。前立腺癌細胞および正常前立腺導管上皮由来の増幅RNAのアリコートを、それぞれCy5-dCTPおよびCy3-dCTP(Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK)を用いて逆転写により標識した。ハイブリダイゼーション、洗浄および検出は以前の記載の通りに行った(Onoら、(2000))。
【0210】
(2)新規遺伝子CCDC4(コイルドコイル・ドメイン含有4)の同定
ゲノムワイドのcDNAマイクロアレイにより、本発明者らは、一つのESTを表す一つのアップレギュレートされたスポット(組織内名称B3537)を同定した(ホモサピエンス(Homo sapiens)cDNA FLJ35632)。その他のESTの情報を、前立腺癌cDNAを使用したRACEにより得られた配列と組み合わせ、本発明者らは、新規遺伝子CCDC4を同定した。
【0211】
(3)ノーザンブロット分析
ヒト多組織ノーザンブロット(Clontech,Palo Alto,CA)に、B3537の[α-32P]dCTP標識PCR産物をハイブリダイズさせた。プライマー:5'-GTGACAAATCCATTGATCCTGA-3'(配列番号:5)及び5'-GAACACGTGGCATTCTAGAGGTA-3'(配列番号:6)を使用したRT-PCRにより、361bp PCR産物が調製された。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び洗浄は、供給元の推奨に従い実施された。−80℃で7日間、増感スクリーンを用いて、ブロットのオートラジオグラフィが実施された。
【0212】
RT-PCR分析によって、前立腺癌細胞におけるCCDC4の過剰発現が確証された(図1A)。ノーザンブロット分析(図1B)によって、この転写物が、およそ8.7kbであり、コイルドコイル・ドメインを有する530アミノ酸タンパク質(GeneBankアクセッション番号:AB126828)(配列番号:2)をコードする6個のエキソンからなっていることが証明された。長い型のC末端領域を欠いている短いアイソフォーム437アミノ酸タンパク質(GeneBankアクセッション番号:AB126829)(配列番号:4)をもたらすと予想される、一つのオルタナティブ・スプライシング型も同定された。この遺伝子は、ノーザンブロット分析(図1B)において示されたように、正常な精巣及び前立腺において制限的に発現されており、このことは、この分子のを標的とすることは正常なヒト器官に対してほとんど毒性をもたらさないことを示している。
【0213】
(4)siRNA発現構築物及びコロニー形成/MTTアッセイ
本発明者らは、標的遺伝子に対するRNAi効果のためsiRNA発現ベクター(psiU6BX)を使用した。遺伝子特異的配列(同配列の逆相補鎖から短いスペーサーTTCAAGAGA(配列番号:7)により分離された標的転写物に由来する19nt配列)及び終結シグナルとしての5個のチミジンの上流に、U6プロモーターがクローニングされ;さらに、ジェネテシン(Sigma)に対して耐性となるよう、neoカセットが組み込まれた。CCDC4のための標的配列は、5'-GATGGTTCTGCAGCACCAC-3'(配列番号:8)(si#1)、及び
陰性対照としての5'-GAAGCAGCACGACTTCTTC-3'(配列番号:9)(siEGFP)である。
【0214】
CCDC4 siRNAのために使用されたオリゴヌクレオチドは下記に示される。si#1は、以下の二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6BXベクターのBbsl部位へクローニングすることにより調製された。配列番号:1又は3のCCDC4核酸配列に関する対応するヌクレオチド位置は、下記に示される。オリゴヌクレオチドは、標的配列CCDC4のセンス・ヌクレオチド配列及びアンチセンス・ヌクレオチド配列の組み合わせである。si#1のヘアピン・ループ構造のヌクレオチド配列は、配列番号:10に示される(エンドヌクレアーゼ認識部位は各ヘアピン・ループ構造配列から排除される)。
si#1(配列番号:1又は3のヌクレオチド1666〜1684位/配列番号:8)
5'-caccgatggt tctgcagcac cacttcaaga gagtggtgct gcagaaccat c-3'(配列番号:11)
5'-aaaagatggt tctgcagcac cactctcttg aagtggtgct gcagaaccat c-3'(配列番号:12)
【0215】
前立腺癌細胞系PC3及びDU145が、10cm皿(5×105細胞/皿)へ播種され、製造業者の指示に従いリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、EGFP標的配列(EGFP)を含有しているpsiU6BX、及びCCDC4標的配列を含有しているpsiU6BXによりトランスフェクトされた。細胞は、1週間、500mg/mlジェネテシンにより選択され、トランスフェクションから48時間後に予備細胞が採集され、CCDC4に対するノックダウン効果を確証するためにRT-PCRにより分析された。RT-PCRのプライマーは上記と同じものであった。コロニー形成及び細胞数を評価するために、それぞれ、これらの細胞がギムザ溶液によって染色され、MTTアッセイも実施された。
【0216】
RT-PCRにより、siRNA発現ベクターsi#1のトランスフェクションによるCCDC4 mRNAのノックダウン効果が確証されたが、siEGFPによる効果はなかった。コロニー形成アッセイは、RT-PCRによりCCDC4を効率的にノックダウンすることが確証されたsi#1によるトランスフェクションの後の細胞のコロニー数の劇的な減少を示した。MTTアッセイも、si#1によりトランスフェクトされた増殖細胞の劇的な減少を示した。これらの所見から、CCDC4がPRC細胞増殖にとって不可欠であり、CCDC4の分子的ターゲッティングが、新規のPRC療法を開発するための有望なアプローチであることが強く支持される。
【0217】
psiU6BX 3.0プラスミドの構築
siRNAをコードするDNA断片は、以下のプラスミド配列(配列番号:13)内に(-)と示されたヌクレオチド485〜490のギャップに挿入された。



【0218】
snRNA U6遺伝子は、RNAポリメラーゼIIIにより転写され、3'末端にウリジンを有する短い転写物を産生することが報告されている。プロモーター領域を含有しているsnRNA U6遺伝子のゲノム断片が、プライマーのセット、
5'-GGGGATCAGCGTTTGAGTAA-3'(配列番号:14)、及び
5'-TAGGCCCCACCTCCTTCTAT-3'(配列番号:15)
並びに鋳型としてのヒト胎盤DNAを使用したPCRにより、増幅された。産物が、精製され、供給元のプロトコル(Invitrogen)に従い、TAクローニング・キットを使用して、pCRプラスミド・ベクターへクローニングされた。プライマーのセット、5'-TGCGGATCCAGAGCAGATTGTACTGAGAGT-3'(配列番号:16)及び5'-CTCTATCTCGAGTGAGGCGGAAAGAACCA-3'(配列番号:17)を用いたPCRにより増幅されたsnRNA U6遺伝子を含有しているBamHI-XhoI断片が精製され、pcDNA3.1(+)プラスミドのヌクレオチド1257-56断片中へクローニングされた。ライゲートしたDNAが、プライマー
5'-TTTAAGCTTGAAGACTATTTTTACATCAGGTTGTTTTTCT-3'(配列番号:18)及び5'-TTTAAGCTTGAAGACACGGTGTTTCGTCCTTTCCACA-3'(配列番号:19)を用いたPCRの鋳型のため使用された。
産物はHindIIIにより消化され、続いて、psiU6BXベクター・プラスミドを作製するために自己ライゲートさせられた。対照として、5'-CACCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3'(配列番号:20)及び5'-AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3'(配列番号:21)の二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6BXベクターへBbsI部位においてクローニングすることにより、psiU6BX-EGFPが調製された。
【0219】
産業上の利用可能性
ヒト遺伝子CCDC4の発現は、非癌性の前立腺導管上皮と比較して前立腺癌において顕著に上昇している。したがって、これらの遺伝子は前立腺癌の診断マーカーとして好都合であり、それらによってコードされるタンパク質は前立腺癌の診断アッセイに役立つ。
【0220】
本発明者らは、新規タンパク質CCDC4の発現によって細胞増殖が促進され、一方、CCDC4遺伝子に対応する低分子干渉RNAによって細胞増殖が抑制されることも示した。これらの所見は、CCDC4タンパク質が発癌活性を誘発することを示した。このため、これらの新規腫瘍性タンパク質は抗癌剤の開発のための有用な標的となる。例えば、CCDC4の発現を阻止する作用物質、またはその活性を妨げる作用物質には、抗癌剤、特に前立腺癌の治療用の抗癌剤としての治療的有用性があると考えられる。このような作用物質の例には、CCDC4遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNAおよびリボザイム、ならびにCCDC4を認識する抗体が含まれる。
【0221】
本発明を、その特定の態様に言及しながら詳細に説明してきたが、発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を加えうることは当業者には明らかであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】1(A)は、半定量的PCRの結果を示す写真を示す。CCDC4は、ヒト前立腺癌組織から顕微解剖により採取された前立腺癌細胞において過剰発現されていた。1(B)は、CCDC4の正常成体組織における発現パターンを示すノーザンブロット分析の写真を示す。8.7kbの転写物CCDC4は、成体の精巣及び前立腺においてのみ制限的に発現されている。
【図2】siRNAにより前立腺癌細胞系PRC3における内因性CCDC4をノックダウンした効果を示す。2(A)は、RT-PCRの結果を示す写真である。この写真は、siRNA発現ベクターsi#1のトランスフェクションによる、CCDC4 mRNAのノックダウン効果を確証する。si#1は、CCDC4 mRNA配列に対して、siEGFPは、EGFP mRNA配列に対して、特異的に設計された。RNAはトランスフェクションから48時間後に採集され分析された。ACTBは入力cDNAを規準化するために使用された。2(B)は、コロニー形成アッセイの結果を示す写真である。この写真は、CCDC4を効率的にノックダウンすることがRT-PCRにより確証されたsi#1によるトランスフェクションから1週間後の、PRC3細胞のコロニー数の劇的な減少を示している。図2(C)は、MTTアッセイの結果を示す棒グラフである。このアッセイも、si#1によりトランスフェクトされた増殖細胞数の劇的な減少を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択される実質的に純粋なポリペプチド:
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)配列番号:2もしくは4のアミノ酸配列又は配列番号:2もしくは4と少なくとも約80%の相同性を有している配列を含むポリペプチド;及び
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドであって、配列番号:2又は4のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項2】
請求項1記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
請求項2記載のポリヌクレオチド又は請求項3記載のベクターを保持している宿主細胞。
【請求項5】
請求項1記載のポリペプチドを作製するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)請求項4記載の宿主細胞を培養する段階;
(b)宿主細胞にポリペプチドを発現させる段階;及び
(c)発現されたポリペプチドを収集する段階。
【請求項6】
請求項1記載のポリペプチドと結合する抗体。
【請求項7】
請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその相補鎖に相補的であり、かつ少なくとも15ヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス・ポリヌクレオチド又は低分子干渉RNA。
【請求項9】
請求項8記載の低分子干渉RNAにおいて、そのセンス鎖が標的配列として配列番号:8のヌクレオチド配列を含み、かつ75ヌクレオチド長未満である、低分子干渉RNA。
【請求項10】
前立腺癌を診断するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)生物学的試料中の配列番号:2又は4のアミノ酸配列をコードする遺伝子の発現レベルを検出する段階;及び
(b)発現レベルの上昇を疾患と関連付ける段階。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、発現レベルが、以下からなる群より選択される方法のいずれかにより検出される、方法;
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列をコードするmRNAを検出すること、
(b)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出すること、及び
(c)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的活性を検出すること。
【請求項12】
前立腺癌を治療又は予防するための化合物をスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)以下からなる群より選択されるポリペプチドと被験化合物を接触させる段階:
(1)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2もしくは4のアミノ酸配列又は配列番号:2もしくは4との少なくとも約80%の相同性を有している配列を含むポリペプチド;及び
(3)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドであって、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;
(b)ポリペプチドと被験化合物との間の結合活性を検出する段階;並びに
(c)ポリペプチドと結合する化合物を選択する段階。
【請求項13】
前立腺癌を治療又は予防するための化合物をスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)以下からなる群より選択されるポリペプチドと被験化合物を接触させる段階:
(1)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2もしくは4のアミノ酸配列又は配列番号:2もしくは4の少なくとも約80%の相同性を有している配列を含むポリペプチド;並びに
(3)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドであって、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
(c)被験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較してポリペプチドの生物学的活性を抑制する化合物を選択する段階。
【請求項14】
生物学的活性が細胞増殖活性である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前立腺癌を治療又は予防するための化合物をスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列を含む一つ以上のポリヌクレオチドを発現している細胞と被験化合物を接触させる段階;及び
(b)被験化合物の非存在下で検出された発現レベルと比較して配列番号:1又は3のヌクレオチド配列を含む一つ以上のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物を選択する段階。
【請求項16】
細胞が前立腺癌細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前立腺癌を治療又は予防するための化合物をスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)配列番号:1及び3からなる群より選択されるヌクレオチド配列のいずれかを含む一つ以上のマーカー遺伝子の転写制御領域及びその転写制御領域の調節下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞と被験化合物を接触させる段階、
(b)該レポーター遺伝子の発現レベル又は活性を測定する段階;並びに
(c)対照と比較して該レポーター遺伝子の発現レベル又は活性を低下させる化合物を選択する段階。
【請求項18】
薬学的に有効な量の、活性成分としての、以下からなる群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス・ポリヌクレオチド又は低分子干渉RNAと、薬学的に許容される担体とを含む、前立腺癌を治療又は予防するための組成物:
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;及び
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項19】
低分子干渉RNAが標的配列として配列番号:8のヌクレオチド配列を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
siRNAが、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有している、請求項19記載の組成物であって、
式中、
[A]は、配列番号:8のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、
[B]は3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、かつ
[A']は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、
組成物。
【請求項21】
トランスフェクション増強剤を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
薬学的に有効な量の、活性成分としての、以下からなる群より選択されるポリペプチドに対する抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、前立腺癌を治療又は予防するための組成物:
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;及び
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項23】
薬学的に有効な量の、活性成分としての、請求項12〜17のいずれか一項記載の方法により選択された化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、前立腺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項24】
以下からなる群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス・ポリヌクレオチド又は低分子干渉RNAを、薬学的に有効な量、投与する段階を含む、前立腺癌を治療又は予防するための方法:
(1)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;及び
(3)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項25】
siRNAが標的配列として配列番号:8のヌクレオチド配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
siRNAが、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有している、請求項25記載の方法であって、
式中、
[A]は、配列番号:8のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、
[B]は3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、かつ
[A']は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、
方法。
【請求項27】
組成物がトランスフェクション増強剤を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
以下からなる群より選択されるポリペプチドに対する抗体を、薬学的に有効な量、投与する段階を含む、前立腺癌を治療又は予防するための方法:
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;及び
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項29】
請求項12〜17のいずれか一項記載の方法により選択された化合物を、薬学的に有効な量、投与する段階を含む、前立腺癌を治療又は予防するための方法。
【請求項30】
(a)〜(c)からなる群より選択されるポリペプチド又はそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、薬学的に有効な量、投与する段階を含む、前立腺癌を治療又は予防するための方法:
(a)配列番号:2もしくは4またはそれらの断片のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;及び
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2もしくは4またはそれらの断片のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項31】
(a)〜(c)からなる群より選択されるポリペプチドを抗原提示細胞と接触させるか、又はそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくはそのポリヌクレオチドを含むベクターを抗原提示細胞へ導入する段階を含む、抗腫瘍性免疫を誘導するための方法:
(a)配列番号:2もしくは4またはそれらの断片のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2もしくは4またはそれらの断片のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2もしくは4またはそれらの断片のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド。
【請求項32】
抗原提示細胞を対象へ投与する段階をさらに含む、請求項31記載の抗腫瘍性免疫を誘導するための方法。
【請求項33】
薬学的に有効な量の、活性成分としての、(a)〜(c)からなる群より選択されるポリペプチド又はそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、薬学的に許容される担体とを含む、前立腺癌を治療又は予防するための薬学的組成物:
(a)配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの断片;
(b)一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、かつ/又は付加された配列番号:2又は4のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるタンパク質と等価な生物学的活性を有しているポリペプチド;
(c)配列番号:1又は3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、配列番号:2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドと等価な生物学的活性を有しているポリペプチド、またはそれらの断片。
【請求項34】
ポリヌクレオチドが発現ベクターに組み込まれている、請求項33記載の薬学的組成物。
【請求項35】
請求項1記載ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又は請求項1記載のポリペプチドと結合する抗体を含む診断剤。
【請求項36】
センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であって、センス鎖が配列番号:8に対応するリボヌクレオチド配列を含み、アンチセンス鎖が該センス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、該センス鎖及び該アンチセンス鎖が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、CCDC4遺伝子を発現している細胞へ導入された場合に、該遺伝子の発現を阻害する、二本鎖分子。
【請求項37】
センス鎖が配列番号:1からの約19〜約25個の連続したヌクレオチドを含む、請求項36記載の二本鎖分子。
【請求項38】
センス鎖が配列番号:8に対応するリボヌクレオチド配列からなる、請求項36記載の二本鎖分子。
【請求項39】
センス鎖とアンチセンス鎖とを連結する一本鎖リボヌクレオチド配列をさらに含む、請求項36記載の二本鎖分子において、単一リボヌクレオチド転写物がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む、二本鎖分子。
【請求項40】
請求項36記載の二本鎖分子をコードするベクター。
【請求項41】
二次構造を有する転写物をコードする、請求項40記載のベクターにおいて、転写物がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む、ベクター。
【請求項42】
転写物がセンス鎖とアンチセンス鎖とを連結する一本鎖リボヌクレオチド配列をさらに含む、請求項40記載のベクター。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−505601(P2008−505601A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524974(P2006−524974)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004860
【国際公開番号】WO2005/090398
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】