説明

前立腺癌のためのバイオマーカー

本発明は、患者の前立腺癌の状態を認定するのに有用な、タンパク質に基づくバイオマーカーであるプロテインCインヒビター(PCI)を提供する。特に、本発明のバイオマーカーは、被検者のサンプルを前立腺癌又は非前立腺癌として分類するのに有用である。このバイオマーカーは、DELDI質量分析によって検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年9月19日出願の米国仮特許出願第60/718,843号の優先権を主張し、その内容の全てを参照として明確に本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、前立腺癌の検出に重要なバイオマーカーを提供する。このマーカーは、前立腺癌患者の血清タンパク質の特性を、SELDI分析を用いて、健常者のものから識別すすることによって同定された。本発明は、バイオマーカーを前立腺癌の状態を認定するのに用いるバイオマーカーのシステム及び方法に関する。本発明はまた、公知のタンパク質、プロテインCインヒビター(PCI)としてバイオマーカーを同定する。
【背景技術】
【0003】
前立腺腫瘍は、男性において最も一般的な癌である。2002年において、男性の189,000人の新規癌患者が見込まれており、そして30,200人がこの疾患で死亡すると予想されている。このような状況では、前立腺だけに癌がある場合の前立腺癌の早期発見は、前立腺全摘出術(手術)による治療を実施する最も良い状況である。PSAは、効果的な腫瘍マーカーであると考えられ、そしてどの点から見ても臓器特異的であるが、これは癌特異的ではない。前立腺癌の男性と良性の前立腺疾患の男性でのPSA濃度には、かなりの重複があり、PSAは、臓器特定の前立腺癌の男性(手術が有効である)と、臓器非特定の前立腺癌の男性(手術が有効ではない)とを識別することができない。従って、PSAは、前立腺全摘手術のために患者を選択するのに有効ではない。
【0004】
これまで、前立腺癌の早期発見及び診断は、直腸内触診(DRE)、前立腺特異的抗原(PSA)の測定、経直腸的超音波断層法(TRUS)、及び経直腸的針生検(TRNB)に頼っている。現在、DREと組み合わせた血清PSAの測定が、前立腺癌の検出及び診断に用いられる主要な手段である。
【0005】
市販のPSAアッセイは、通常キットで売られており、そして地域又は特定の検査室で実施されるアッセイである。しかしながら、前立腺特異的抗原(PSA)及び前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)は、治療及び診断する能力に限界があり、例えば、PSAレベルは、良性の前立腺肥大(BPH)を含む、非前立腺癌患者の場合にかなりの率で陽性であって、前立腺癌の存在と必ずしも良い相関を示していない。更に、PSAの測定値は、前立腺の体積に関連していて、転移の段階を示唆しているものではない。
【0006】
これらのキットは、前立腺癌の早期発見のための現在の方策の一翼を担っている。しかしながら、直腸内触診(DRE)が陰性である状況下で、やや異常なPSA値(4〜10ng/ml)に直面した場合に、問題が起きる。そのような所見がある個体のたった20〜30%が、生検で腫瘍が実証されるであろう(Kantoff and Talcott, 8(3) Hematol. Oncol Clinics N Amer 555 (1994))。従って、PSA検査の陽性適中率を上げる方策の開発が重要となっている。現在、このような方策は、年齢調整した正常範囲を確立すること、0から総量までのPSAの比率を測定すること、前立腺の質量(密度)を補正すること、及びPSA値の変化率を計算することを含む(「Kantoff and Talcott, 8(3) Hematol. Oncol Clinics N Amer 555 (1994)」及び「Brawer, 45 CA-A Cancer J Clinicians 148 (1995))。これらのそれぞれの方策が貢献しているにも関わらず、PSAが陽性でDREが陰性の患者を如何に取り扱うかについて相当な不確実性が残っている。
【0007】
更に、PSAの高レベルの検出が、BPH及び前立腺炎の患者のかなり多くの比率(25〜86%)で検出可能であるが(Gao et al., 1997, Prostate 31:264-281)、またその他の悪性でない疾患及び幾人かの正常の男性にも検出されるので、PSAは、疾患に特異的なマーカーではなく、またこのマーカーの診断特異性を有意に限定する因子でもない。例えば、4〜10ng/mlの範囲の血清PSAの上昇がBPHで観察され、そしてより高い値が、前立腺炎、特に急性前立腺炎で観察される。この場合、BPHは、男性に極めて一般的な疾患である。更に状況を混乱させることは、血清PSAの上昇が、DREから何ら疾患の徴候がないにも関わらず観察されるという事実であり、またその逆もまた同様に観察される。加えて、今はPSAが前立腺に特異的ではないことが認識されつつある(概説については、Gaoらの前出文献を参照されたい)。
【0008】
進行した前立腺癌の管理において、より信頼性がありそして有益な病期診断方法及び予測方法が、また必要とされている。現状の前立腺腫瘍の臨床的病期診断は、腫瘍が前立腺皮膜の境界内にある(局所内だけにある)のか又はそれを越えて広がっている(局所進行性)のか判定するのに、血清PSA測定及び経直腸的超音波ガイド生検を組み合わせた経直腸的試験に頼っているが、これらの技術はいずれも疾患の進展を予測するのに信頼性があるとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、前立腺癌を特異的に同定できる、前立腺癌を良性肥大と区別できる、PSAレベルが低くても前立腺癌を同定できる、そして疾患の病期を同定できる、ことの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特異的なバイオマーカーを測定して前立腺癌の状態を判定するのに有用な、感度が良く迅速に測定できる方法及びキットを提供する。患者サンプルのこのマーカーの測定結果は、診断医がヒト癌であると推定する診断又は陰性であるとの診断(例えば、正常又は病気がない)と関連付けることができるような情報をもたらす。このマーカーは、分子量及び公知のタンパク質、プロテインCインヒビター(「PCI」)と同一であることによって特徴付けられる。このマーカーは、種々の分別技術、例えば、質量分析と組み合わせたクロマトグラフィーによる分離、固定化抗体を用いるタンパク質捕獲、又は通常の免疫測定を用いて、サンプルのその他のタンパク質から分離することができる。好ましい態様では、この分離方法は、表面増強レーザー脱離イオン化(「SELDI」)質量分析を含み、ここでは質量分析プローブの表面が、マーカーと結合する吸着剤からなっている。
【0011】
本発明は、(a)被検者の生体サンプルのPCIバイオマーカーを測定すること、そして(b)測定結果を前立腺癌の状態、特にグリーソンスコア(Gleason Score)と関連付けることを含んでなる、被検者の前立腺癌の状態を認定する方法を提供する。ある特定の方法では、測定段階が、サンプルのマーカーの存在又は非存在を検出することを含んでなる。その他の方法では、測定段階が、サンプルのマーカーの量を定量することを含んでなる。その他の方法では、測定段階が、サンプルのバイオマーカーのタイプを認定することを含んでなる。
【0012】
ある特定の態様では、本発明は、血清PSAレベルが上昇している男性で、前立腺癌の患者と良性の前立腺疾患の患者の識別を判定することができる。このような患者の多くは、診断的にグレーゾーンである、総量PSAに対する血清無しの比率が10〜20%(又はコンプレックスでの総量PSAに対する比率が同等の範囲)である。開示したバイオマーカーは、この範囲にある癌の検出を改善する可能性を有している。
【0013】
本発明は、測定段階が、血液又は尿の被検者サンプル又は血液/尿の誘導体を用意すること、サンプルのタンパク質を陰イオン交換樹脂上で分画すること、そしてPCIを含有する分画を、このタンパク質バイオマーカーと結合する捕獲剤を包含する基質の表面上の分画から採取すること、を含んでなる。血液の誘導体は、例えば、血清又は血漿である。好ましい態様では、基質は、IMAC銅表面を含んでなるSELDIプローブであって、タンパク質バイオマーカーがSELDIによって検出される。その他の態様では、基質は、PCIを結合する生体親和性試薬を含んでなるSELDIプローブであって、タンパク質バイオマーカーがSELDIによって検出される。その他の態様では、PCIを結合する生体親和性試薬を含んでなるマイクロタイタープレートであって、タンパク質バイオマーカーが免疫測定によって検出される。
【0014】
ある特定の態様では、方法は、前記方法で判定された状態に基づいた治療を被検者に実施することを更に含んでなる。例えば、本発明方法の結果が決定的でないか、又は状態の確認が必要とする理由がある場合には、医者は追加の検査を指示することができる。また、状態が手術が妥当であることを示す場合には、患者を手術する予定を決めることができる。同様に、検査の結果が陽性である場合、例えば、状態が前立腺癌の末期である場合、又は状態が他の深刻である場合には、更なる処置は保証されないであろう。更に、結果が、治療の成功を示す場合には、さらなる治療は必要ないであろう。
【0015】
本発明は、PCIバイオマーカーを被検者の治療後に再び測定するような方法も提供する。このような例では、被検者の治療を実施する段階を、その後繰り返し、そして/又は得られた結果に基づいて修正する。好ましい態様では、治療後にPCIを、単独で又はC4aと組み合わせて測定して、再発の可能性を判断する。
【0016】
「前立腺癌の状態」という用語は、患者の疾患の状態を示す。前立腺癌の状態のタイプの例は、これらに限定されないが、被検者に癌のリスク、疾患の有無、患者における疾患の段階、及び疾患の治療の有効性を含む。その他の状態及びそれぞれの状態の程度は、当該技術分野で公知である。
【0017】
ある好ましい態様では、方法は、被検者サンプルの少なくとも1つの既知のマーカー(本明細書では「マーカーX」と称する)を測定して、少なくとも1つのマーカーXの測定結果及びPCIの測定結果を前立腺癌の状態と関連付けることを含んでなる。ある特定の態様では、PCIマーカーに加えて、1つのマーカーXのみを測定し、一方その他の態様では、1つ又はそれ以上のマーカーXを測定する。
【0018】
マーカーXの例は、これらに限定されないが、Ca4、APOCl、BRCAl、CHGA、CHGB、CLU、COL1A1、COL6A1、EGF、ERBB2、ERK8、FGF1、FGF10、FGF11、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GNRH1、IGF1、IGF2、IGFBP3、IGFBP6、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、IL24、INHA、INSL3、INSL4、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、MMP2、MMP9、MSMB、NTN4、ODZ1、PAP、PLAU、PRL、PSAP、SERPINA3、SHBG、TGFA、TIMP3、VEGF及びマーカーのタンパク変異体(例えば、切断形態、イソ型)を包む、公知の前立腺癌バイオマーカーを包含する。
【0019】
本発明のPCIマーカーは、1つ又はそれ以上の観点で特徴付けることができる。特に、一態様では、このマーカーは、本明細書で特定化された条件下で、特にマススペクトル分析で測定した時の分子量で特徴付けられる。その他の態様では、マーカーは、大きさ(領域を含む)及び/又はマーカーのスペクトルピークの形状、隣接ピークの近接性、大きさ及び形状を含む特徴等のような、マーカーのマススペクトル特性の特徴によって特徴付けることができる。更なるその他の態様では、マーカーは、親和結合特性、特に、特定条件下でのIMAC銅吸着剤への結合能によって特徴付けることができるが、その他の金属、例えばニッケルも用いることができる。好ましい態様では、本発明のマーカーは、このような態様、すなわち、分子量、マススペクトル特性、及びIMAC−Cu吸着剤結合のそれぞれで特徴付けることができる。
【0020】
本明細書に開示されているマーカーの質量値に関しては、スペクトル機器の質量精度が、開示されている分子量の約+/−0.15パーセント以内であると考えられている。また、機器の精度変動をそのように認識すると、スペクトルによる質量測定は、約400〜1000m/dm(mは質量であり、そしてdmはピークの高さの中間点のピーク幅である)の分解限界内で変化する。マススペクトル機器及びその操作に関連する、このような質量精度及び分解能の差異は、マーカーの質量開示における、「約」という用語の使用に反映されている。質量精度及び分解能の差異及びそれによる本明細書に開示されているマーカーに関する「約」という用語の意味は、性別、遺伝子型及び/又は被検者の民族性、及び特定の癌又はその原発部位若しくはその段階に起因して存在するようなマーカーの変異体をも包含するように意図されている。
【0021】
本発明は、(a)被検者のサンプルのPCIバイオマーカーを測定すること、そして(b)測定結果を前立腺癌の状態と関連付けることを含んでなる、被検者の前立腺癌の状態を認定する方法を更に提供する。ある特定の方法では、測定段階は、サンプルにおけるマーカーの存在又は非存在を検出することを含んでなる。その他の方法では、測定段階が、サンプルのマーカーの量を定量することを含んでなる。
【0022】
診断検査の精度は、受信者動作特性曲線(Receiver Operating Characteristic curve)(「ROC曲線」)によって特徴付けられる。ROCは、診断検査の異なった可能なカットポイント(cutpoint)についての、偽陽性比率に対する真陽性比率のプロットである。ROC曲線は、検出感度と特異性の関係を示す。従って、感度の増大は、特異性の減少を伴う。曲線が左軸の方に近づいてROC空間の頂点に近づくほど、検査の精度が上がる。反対に、曲線がROCグラフの45度斜線に到達するまで近づくほど、検査の精度が下がる。ROCの下部面積は、検査精度の尺度である。検査の精度は、検査が被検群を疑わしい疾患の有無の2つのグループにいかに良く分けているか、によって決まる。曲線の下部面積(「AUC」と称する)が1であることは完璧な検査を示し、一方面積が0.5であることは有用性の低い検査を示す。従って、本発明のバイオマーカー及び診断方法は、0.50以上のAUCを有し、より好ましい検査は0.60以上のAUCを有し、より好ましい検査は0.70以上のAUCを有する。
【0023】
PCIバイオマーカーを測定する好ましい方法は、バイオチップアレイの使用を含む。本発明において有用なバイオチップアレイは、タンパク質及び核酸アレイを含む。1つ又はそれ以上のマーカーを、このバイオチップアレイ上に捕獲し、レーザーイオン化して、マーカーの分子量を測定する。マーカーは、例えば、総イオン電流に対して正規化した閾値強度に対するマーカーの分子量により分析する。好ましくは、対数変換を用いて、ピーク強度の範囲を減少させ、測定されるマーカーの数を限定する。
【0024】
本発明の好ましい方法では、PCIバイオマーカーの測定結果を前立腺癌の状態と関連付ける段階が、ソフトウェア分類アルゴリズムによって実施される。データは、好ましくは、バイオチップアレイ上に固定化した被検者サンプルで、バイオチップアレイをレーザーイオン化して、質量/電荷比のシグナル強度を測定することによって作成される。このデータをコンピュータで読み込み可能な形式に変換し、そして前立腺癌患者に存在するマーカーを示すシグナル及び非癌被検者の対照に不足しているシグナルを検出するために、ユーザー入力パラメータに従って、データを分類するアルゴリズムを実行する。
【0025】
好ましくは、バイオチップの表面は、例えば、イオン性であり、陰イオン性であり、固定化ニッケルイオンからなり、陽イオン及び陰イオンの混合物からなり、又は1つ又はそれ以上の抗体、1本鎖又は2本鎖の核酸、タンパク質、ペプチド又はその断片で、アミノ酸プローブ又はファージを表示するライブラリーからなる。
【0026】
その他の好ましい態様では、マーカーの1つ又はそれ以上は、レーザー脱離/イオン化質量分析を用いて測定される。測定は、そこに付着させた吸着剤を包含する質量分析計で使用するように適合させたプローブを用意すること、被検者のサンプルを吸着剤と接触させること、そしてプローブからのマーカーを脱離及びイオン化すること、質量分析計で脱離/イオン化したマーカーを検出することを含んでなる。
【0027】
レーザー脱離/イオン化質量分析は、付着している吸着剤を包含する基質を用意すること、被検者のサンプルをこの吸着剤と接触させること、付着した吸着剤を含有する質量分析計と使用するよう適合させたプローブ上に基質を載せること、そしてプローブからのマーカーを脱離及びイオン化して、質量分析計で脱離/イオン化したマーカーを検出することを含むことが好ましい。
【0028】
吸着剤は、例えば、疎水性のもの、親水性のもの、イオン性のもの、又はニッケルのような金属キレート吸着剤、又は抗体、1本鎖又は2本鎖のオリゴヌクレオチド、アミノ酸、タンパク質、ペプチド又はその断片であってよい。
【0029】
本発明の方法は、このような方法に適している何れのタイプの患者サンプル、例えば血液、血清及び血漿でも実施することができる。
【0030】
本発明は、(a)PCIバイオマーカーに結合する捕獲剤、及び(b)バイオマーカーを包含する容器を含む、キットも提供する。好ましい態様では、捕獲剤は、バイオマーカーに結合する。捕獲剤は何れのタイプの試薬であってもよいが、当該試薬がSELDIプローブであることが好ましい。捕獲剤は、その他の公知のバイオマーカー、例えばマーカーXにも結合することができる。ある好ましい態様では、キットは、第1の捕獲剤が結合しないバイオマーカーと結合する第2の捕獲剤を更に包含する。
【0031】
本発明のあるキットでは、捕獲剤が、固定化金属キレート(「IMAC」)を含んでなる。
【0032】
本発明のあるキットは、洗浄後に他のバイオマーカーと比べて、バイオマーカーの捕獲剤との結合の保持を選択的に可能とする洗浄溶液を更に包含する。
【0033】
本発明は、(a)PCIバイオマーカーに結合する第1捕獲剤、及び(b)捕獲剤をバイオマーカーの測定に使用するための使用説明書を包含する、キットも提供する。これらのあるキットでは、捕獲剤が、抗体を包含する。更に、あるキットは、捕獲剤が付着しているか又は付着可能なMSプローブを更に包含する。あるキットでは、捕獲剤が、IMCを包含する。キットは、洗浄後に他のバイオマーカーと比べて、バイオマーカーの捕獲剤との結合の保持を選択的に可能とする洗浄溶液も含むこともできる。好ましくは、キットは、前立腺癌の状態の測定にキットを使用するための書面による使用説明書を包含し、この使用説明書が、検査サンプルを捕獲剤と接触させること、そして捕獲剤に保持される1つ又はそれ以上のバイオマーカーを測定することを提供する。
【0034】
キットは、抗体、1本鎖又は2本鎖のオリゴヌクレオチド、アミノ酸、タンパク質、ペプチド又はその断片である、捕獲剤も提供する。
【0035】
キットを用いるタンパク質バイオマーカーの測定は、質量分析又はELISAのような免疫測定によるものである。
【0036】
前立腺癌の検出のための精製タンパク質及び/又は更なる診断アッセイのための抗体の作成も提供される。精製タンパク質は、PCIの精製ペプチドを含む。本発明は、検出可能な標識を更に含んでなるこの精製ペプチドも提供する。
【0037】
その他の態様では、経膣超音波、陽電子放出断層撮影(PET)又は単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)画像のような非侵襲性の医用画像技術が、癌、冠動脈疾患及び脳疾患の検出に特に有用である。ドップラー流の超音波、PET及びSPECT画像は、器官及び組織の化学的作用を示し、一方、X線、CT及びMRIのようなその他の画像技術は、主に構造を示す。流れの超音波、PET及びSPECT画像は、前立腺癌のような疾患の進行を認定及び観察するのにますます有用になってきている。
【0038】
本明細書で開示されているPCIペプチドバイオマーカー又はその断片は、PET及びSPECT画像の適用において使用することができる。PET又はSPECT適用のための適当なトレーサー残渣(tracer residues)で修正した後、腫瘍タンパク質と相互作用するPCIバイオマーカーを前立腺癌患者中のバイオマーカーの蓄積を画像化するために用いることができる。
本発明のその他の態様を以下に記載する。
【0039】
(発明の詳細な説明)
(1.序文)
バイオマーカーは、1つの表現型状態(例えば、疾患を有している)の被検者から得られるサンプルに、別の表現型状態(例えば、疾患を有していない)と比べて、異なって存在する有機生体分子である。異なった群においてバイオマーカーの平均値(又は中間値)の発現レベルが統計的に有意性があるように計算される場合、バイオマーカーは、異なった表現型状態の間で異なって存在している。統計的有意性の一般的な検定は、特に、t検定、ANOVA、クラスカル・ウォリス、ウィルコクソン、マンホイットニー及びオッズ比を含む。単独又は組合わせたバイオマーカーは、被検者が1つの表現型状態か又は別の表現型状態に属するという相対的なリスクの判定を提供する。従って、これらは、疾患(診断)、薬剤(テラノスティック)の治療効果、及び薬剤の毒性のためのマーカーとして有用である。
【0040】
(定義)
他に規定されない場合、本明細書で用いる技術及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有している。以下の引例は、本発明で用いられている多くの用語の一般的な定義を、当業者に提供している(「Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994)」、「The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker et al., 1988)」、「The Glossary of Genetics, 5th ed., R. Rieger et al., (eds.), Springer Verlag (1991)」及び「Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)」)。本明細書で用いる以下の用語は、他に特に規定されない場合、それらの本来の意味を有している。
【0041】
本明細書で用いる「前立腺の疾患」、「前立腺疾患」、又は「前立腺の症状」は、これらに限定されないが、前立腺肥大症(BPH)、前立腺炎、前立腺上皮内腫瘍(PIN)及び癌を含む、前立腺の疾患又は症状の何れかを示す。
【0042】
本明細書で用いる「前立腺癌」は、これらに限定されないが、腺癌、小細胞未分化腫瘍及び粘液性(膠様)癌を含む、前立腺の悪性疾患の何れかを示す。
【0043】
本明細書で用いる「転移性前立腺癌」及び「転移性疾患」という用語は、局所リンパ節又は遠隔部位まで広がっている前立腺癌を意味し、AUAシステムで段階Dの疾患及びTNMシステムでの段階TxNxM+を含むことを意味している。局所進行性前立腺癌の場合のように、転移性疾患の患者には一般に手術が適用されず、ホルモン(アンドロゲン除去)療法が好ましい治療様式となる。転移性前立腺癌の患者は、最終的に、治療開始から12〜18ヶ月以内にアンドロゲン不応性状態に進行し、これらの患者のほぼ半分がその後6ヶ月以内に死亡する。前立腺癌転移の最も一般的な部位は、骨である。前立腺癌の骨転移は、結局、特徴的に溶骨性よりも造骨性である(すなわち、正味の骨形成をもたらす)。骨転移は、最も高い頻度で脊椎に、次いで大腿、骨盤、胸郭、頭蓋骨及び上腕骨に見られる。その他の一般的な転移部位は、リンパ節、肺、肝臓及び脳を含む。転移前立腺癌は一般的に、直視下又は腹腔鏡下の骨盤内リンパ節郭清、全身放射性核種スキャン、骨格X線検査、及び/又は骨病変生検によって診断される。
【0044】
本明細書で用いる「局所進行性前立腺癌」及び「局所進行性疾患」という用語は、前立腺皮膜を通過して広がっている前立腺癌を意味し、そしてこれは米国泌尿器学会(AUA)システムにおいて段階Cの疾患、Whitmore−Jewettシステムにおいて段階C1〜C2の疾患、そしてTNM(腫瘍、リンパ節、転移)システムにおいて段階T3〜T4及びN+の疾患を意味する。一般に、局所進行性疾患の患者には手術が推奨されず、これらの患者は、臨床的に限局性の(臓器に限定)前立腺癌を有する患者に比べて実質的に好ましくない転帰を有する。局所進行性疾患は、前立腺の側縁を超える硬化の明白な証拠、又は前立腺基部上の非対称若しくは硬化によって臨床的に同定される。局所進行性前立腺癌は、腫瘍が前立腺皮膜に侵入若しくは浸透しているか、外科的な境界まで伸長しているか、又は精嚢に侵入しているかについて、徹底的な前立腺切除の後に生理学的に診断される。
【0045】
本明細書で用いる「腫瘍の段階」又は「腫瘍の進行」は、腫瘍の種々の臨床段階を示す。腫瘍の臨床段階は、医学の分野で定着している多種のパラメーターによって定義される。このパラメーターの幾つかは、形態、腫瘍の大きさ、患者の体内へ転移している程度等を含む。
【0046】
「グリーソン段階付けシステム(Gleason Grading System)」は、前立腺癌の段階を付けるシステムである。グリーソン段階付けシステムは、組織サンプル中の2つの最も大きい面積の癌のそれぞれに対して段階を当てる。段階の範囲は、1〜5で、1は悪性が最も少なく、そして5は最も悪性である。例えば、段階3は転移が殆ど無いが、段階4若しくは段階5では、転移が通常にある。次いで、2つの段階を合計してグリーソンスコアを作る。2〜4のスコアは低い段階、5〜7は中間の段階、そして8〜10は高い段階であると考えられる。グリーソンスコアが低い腫瘍は通常、患者の生存中に多大な脅威を与えないほど、ゆっくり生育する。
【0047】
血清セリンプロテアーゼインヒビターである「プロテインCインヒビター」(PCI)は、抗凝固酵素、活性プロテインC(APC)、及び凝固酵素であるトロンビン及びXa因子を包む、幾つかのプロテアーゼを抑制し、そして精漿中に高濃度で存在する。
【0048】
「C4a」は、ClがC4をC4a及びC4bに分裂させた場合に形成される小断片である。アナフィラトキシンとして、C4aは即時型過敏症を引き起こすが、C3a又はC5aよりも低い活性を有している。
【0049】
「気相イオン分光計」は、気相のイオンを検出する装置を示す。気相イオン分光計は、気相のイオンを供給するイオン源を含む。気相イオン分光計は、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、及び総イオン電流測定器を含む。「気相イオン分光分析」は、気相イオン分光計を用いて気相のイオンを検出することを示す。
【0050】
「質量分析計」は、気相イオンの質量対電荷比に変換できる、パラメータを測定する気相イオン分光計である。質量分析計は通常、イオン源及び質量分析器を含む。質量分析計の例は、飛行時間型、磁場型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、電場分析器及びこれらの複合型である。
「質量分析」は、質量分析計を用いて気相のイオンを検出することを示す。
【0051】
「レーザー脱離質量分析計」は、検体を脱離、揮発、及びイオン化する手段としてレーザーのエネルギーを用いる質量分析計を示す。
【0052】
「タンデム型質量分析計」は、イオン混合物中のイオンを含む、イオンのm/zベースの識別又は測定の二つの連続段階を実施することが可能な何れかの質量分析計を示す。この語句は、イオンのm/zベースの識別又は測定の二つの連続段階を実施することが可能な、隣接して並んでいる2つの質量分析器を有する質量分析計を含む。この語句は更に、イオンのm/zベースの識別又は測定の二つの連続段階を時間並列的に実施することが可能な、単一の質量分析器を有する質量分析計を含む。従って、この語句は明確に、Qq−TOF質量分析計、イオントラップ質量分析計、イオントラップ−TOF質量分析計、TOF−TOF質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、電場−磁場質量分析計、及びこれらの組み合わせを含む。
【0053】
「質量分析器」は、気相イオンの質量対電荷比に変換できるパラメータを測定する手段を含んでなる質量分析計の副機器を示す。飛行時間型の質量分析計では、質量分析器は、イオン光学系の機器、飛行管及びイオン検出器からなっている。
【0054】
「イオン源」は、気相のイオンを供給する気相イオン分光計の副機器を示す。一態様では、イオン源を、離脱/イオン化段階を経由して供給する。そのような態様は一般に、イオン化エネルギー源(例えば、レーザー脱離/イオン化源)に呼び出し可能に関連付ける、常圧又は減圧下での気相イオン分光計の検出器と相互に伝達できるように、プローブを位置的にはめ込むプローブ接合部を包含する。
【0055】
固相の検体を脱離/イオン化するためのイオン化エネルギーの形態は、例えば:(1)レーザーエネルギー、(2)高速原子(高速原子衝撃で用いられる)、(3)放射性核種のβ崩壊によって発生する高エネルギー粒子(プラズマ脱離で用いられる)、及び(4)一次イオンが生成する二次イオン(二次イオン質量分析で用いられる)を含む。固相の検体用のイオン化エネルギーの好ましい形態は、レーザー(レーザー脱離/イオン化で用いられる)、特に、窒素レーザー、Nd−Yagレーザー及びその他のパルス状レーザー源である。
【0056】
「フルエンス」は、呼び出し可能な画像の単位面積当たりに供給されたエネルギーを示す。レーザーのような、高フルエンス源は、約1mJ/mm〜50mJ/mmを供給できる。一般には、サンプルをプローブの表面上に置き、プローブをプローブ接合部にはめ込んで、プローブの表面をイオン化エネルギーで攻撃する。このエネルギーは、検体分子を表面から気相へ脱離して、それらをイオン化する。
【0057】
検体用のその他のイオン化エネルギー形態は、例えば、(1)気相の中性物質(neutrals)をイオン化する電子;(2)気相、固相又は液相の中性物質からイオン化を誘発する強力な電場;及び(3)イオン化粒子又は電場と、気相、固相又は液相の中性物質の化学的イオン化を誘発する中性化学物質とを組み合わせて適用するエネルギー源を含む。
【0058】
「固体担体」は、捕獲剤で誘導体化できるか、それともこれに結合できる固体物質を示す。固体担体の例示には、プローブ、マイクロタイタープレート及びクロマトグラフィー用の樹脂が含まれる。
【0059】
本発明に関連する「プローブ」は、気相イオン分光計(例えば、質量分析計)のプローブ接合部にはめ込み、そしてイオン化するために検体にイオン化エネルギーを提供し、そして質量分析計のような気相イオン分光計に導入するのに、適合するデバイスを示す。「プローブ」は一般に、検体がイオン化エネルギー源に提示される、サンプルの提示表面を包含する固体基質(柔らかいものか堅いもの)からなっている。
【0060】
「表面増強レーザー脱離/イオン化」又は「SELDI」は、気相イオン分光計のプローブ接合部にはめ込まれているSELDIプローブの表面上に検体が捕獲される、脱離/イオン化気相イオン分光計(例えば、質量分析計)の方法を示す。「SELDI MS」では、気相イオン分光計が質量分析計である。SELDI技術は、例えば、米国特許第5,719,060号(Hutchens and Yip)及び米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip)に記載されている。
【0061】
「表面増強親和性捕獲」又は「SEAC」は、吸着表面を包含するプローブ(「SEACプローブ」の使用を含むSELDIの変法である。「吸着表面」は、吸着剤(「捕獲剤」又は「親和性試薬」とも称する)を結合する表面を示す。吸着剤は、検体(例えば、標的のポリペプチド又は核酸)を結合することができる何れかの物質である。
【0062】
「クロマトグラフィー用吸着剤」は、一般にクロマトグラフィーで用いられる物質を示す。クロマトグラフィー用の吸着剤は、例えば、イオン交換物質、金属キレート化剤(例えば、ニトリロ酢酸又はイミノ二酢酸)、固定化金属キレート、疎水的相互作用吸着剤、親水的相互作用吸着剤、染料、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単純な糖及び脂肪酸)及び混合形態の吸着剤(例えば、疎水性引力/静電反発力の吸着剤)を含む。
【0063】
「生体特異的吸着剤」は、生体分子、例えば核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖類、脂質、ステロイド、又はこれらの複合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質複合体)を包含する吸着剤を示す。場合によっては、生体特異的吸着剤は、多タンパク質複合体、生体膜又はウィルスのような、高分子構造であってもよい。生体特異的吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質及び核酸である。生体特異的吸着剤は一般に、クロマトグラフィー用の吸着剤よりも、標的検体に対してより高い特異性を有している。SELDIで使用するための吸着剤の更なる例は、米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip、"Use of retentate chromatography to generate difference maps", May 1, 2001)中に見い出すことができる。
【0064】
いくつかの態様では、SEACプローブが、最適な吸着剤を提供するのに修飾できる、事前活性化表面として提供される。例えば、ある特定のプローブは、生体分子を共有結合によって結合できる活性部位を提供する。エポキシド及びカルボジイミダゾールは、抗体又は細胞受容体のような生体特異的吸着剤を共有結合するのに有用な反応部位である。
【0065】
「吸着」は、検体の吸着剤又は捕獲剤との検出可能な非共有結合を示す。
【0066】
「表面増強ニート脱離(Neat Desorption)」又は「SEND」は、プローブの表面に化学的に結合するエネルギー吸収分子を包含するプローブ(「SEND」プローブ)の使用を含むSELDIの変法である。「エネルギー吸収分子」(「EAM」)は、レーザー脱離/イオン化源からエネルギーを吸収してその後検体分子と接触して、検体分子の脱離及びイオン化に寄与する分子を示す。この語句は、MALDIで用いられ、しばしば「マトリックス」と呼ばれる分子を含み、そして桂皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA])、シアノ−ヒドロキシ−桂皮酸(「CHCA」)及びジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、ヒドロキシアセトフェノン誘導体、更にその他のものも明確に含む。SELDIで用いられるEAMsも包含する。SENDは更に、米国特許5,719,060号及び2002年9月4日出願の、米国特許出願第60/408,255号(Kitagawa, "Monomers and Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes")に記載されている。
【0067】
「表面増強光解離性付着及び放出」又は「SEPAR」は、SELDIの変法であって、これは、検体と共有結合できる表面に付着している部分を有し、次いで光、例えばレーザーに曝露した後にその部分の光解離性結合を切断して検体を放出するプローブを使用することを含む。SEPARは更に、米国特許第5,719,060号に記載されている。
【0068】
「溶出液」又は「洗浄液」は、試薬、特に溶液を示し、これは検体の吸着剤表面への吸着に作用又は修飾し、そして/又は結合していない物質を表面から除去するために用いられる。溶出液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズム(chaotropism)の程度、洗浄力及び温度によって決めることができる。
【0069】
「検体」は、検出するのが望ましいサンプルの何れかの化合物を示す。この用語は、サンプルの単一の成分又は複数の成分を示すことができる。
【0070】
親和性捕獲プローブの吸着表面に吸着しているサンプルの「複雑度」は、吸着している異なったタンパク質種の数を意味する。
【0071】
「分子結合パートナー」及び「特異結合パートナー」は、分子の対、特に特異的な結合を示す生体分子の一般的な対を示す。分子結合パートナーは、これらに限定されないが、受容体とリガンド、抗体と抗原、ビオチンとアビチン、及びビオチンとストレプトアビジンを含む。
【0072】
「モニタリング(観察)」は、連続的に変化するパラメーターにおける記録の変化を示す。
【0073】
「バイオチップ」は、吸着剤が付着する一般的に平面な表面を有する固体基質を示す。しばしば、バイオチップの表面は複数のアドレス可能部分を含み、この部分のそれぞれは、そこに結合する吸着剤を有している。バイオチップは、プローブ接合部にはめ込むように適合できて、それによってプローブとして機能することができる
【0074】
「タンパク質バイオチップ」は、ポリペプチドの捕獲に適合するバイオチップを示す。多くのタンパク質バイオチップが、当該技術分野で記載されている。これらは、例えば、「Ciphergen Biosystems(Fremont, CA)」、「Packard BioScience Company(Meriden, CT)」、「Zyomyx(Hayward, CA)」及び「Phylos(Lexington, MA)」によって製造されたタンパク質バイオチップを含む。このようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許及び特許出願に記載されている(米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip, "Use of retentate chromatography to generate difference maps"、May 1, 2001)、国際出願公開第WO99/51773号(Kuimelis and Wagner, "Addressable protein arrays", October 14, 1999)、米国特許第6,329,209号(Wagner et al., "Arrays of protein-capture agents and methods of use thereof", December 11, 2001)及び国際出願公開第WO00/56934号(Englert et al., "Continuous porous matrix arrays", September 28, 2000)。
【0075】
Ciphergen Biosystem社のタンパク質バイオチップは、アドレス可能部分でそこにクロマトグラフィー用吸着剤又は生体特異的吸着剤が結合できる表面を包含する。Ciphergen ProteinChip(登録商標)アレイは、NP20、H4、H50、SAX−2、WCX−2、CM−10、IMAC−3、IMAC−30、LSAX−30、LWCX−30、IMAC−40、PS−10、PS−20及びPG−20を含む。これらのタンパク質バイオチップは、細長い一片の形態でアルミニウム基質を包含する。細長い一片の表面は、二酸化ケイ素で被覆されている。
【0076】
NP−20バイオチップの場合は、二酸化ケイ素が親水性タンパク質を捕獲するための親水性吸着剤として機能する。
【0077】
H4、H50、SAX−2、WCX−2、CM−10、IMAC−3、IMAC−30、PS−10及びPS−20バイオチップは、バイオチップの表面に物理的に付着するか、又はシランを介してバイオチップの表面に共有結合する、官能性の架橋ポリマーをヒドロゲル形態で、更に包含する。H4バイオチップは、疎水性結合のためにイソプロピル官能基を有する。H50バイオチップは、疎水性結合のためにノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタアクリレートを有する。SAX−20バイオチップは、陰イオン交換のために4級アンモニウム官能基を有する。WCX−2及びCM−10バイオチップは、陽イオン交換のためにカルボシレート官能基を有する。IMAC−3及びIMAC−30バイオチップは、キレート化によってCu++及びNi++のような遷移金属イオンを吸着するニトリロ酢酸官能基を有する。これらの固定化金属イオンは、配位結合によるペプチド及びタンパク質の吸着を可能にする。PS−10バイオチップは、タンパク質上の基と反応して共有結合できる、カルボイミダゾール官能基を有する。PS−20バイオチップは、タンパク質と共有結合するためのエポキシド官能基を有する。PSシリーズのバイオチップは、抗体、受容体、レクチン、ヘパリン、プロテインA、ビオチン/ストレプトアビジン等のような生体特異的吸着剤を、サンプルからの検体を特異的に捕獲するように機能するチップの表面に、結合するのに有用である。PG−20は、プロテインGが付着するPS−20チップである。LSAX−30(陰イオン交換)、LWCX−30(陽イオン交換)及びIMAC−40(金属キレート)のバイオチップは、その表面に官能性のラテックスビーズを有する。このようなバイオチップは更に、国際出願公開第WO00/66265号(Rich et al., "Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer", November 9, 2000)、同第WO00/67293号(Beecher et al., "Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer", November 9, 2000)、米国特許出願第US20030032043A1号(Pohl and Papanu, "Latex Based Adsorbent Chip", July 16, 2002)及び米国特許出願第60/350,110号(Um et al., "Hydrophobic Surface Chip", November 8, 2001)に記載されている。
【0078】
バイオチップ上に捕獲して、検体を、例えば、気相イオン分光分析法、光学的な方法、電気化学的な方法、原子間力顕微鏡法及び高周波測定法から選ばれる各種の検出方法で検出することができる。気相イオン分光分析法は、本明細書に記載されている。特に興味深いのは、質量分析及び、特にSELDIの使用である。光学的な方法は、例えば、蛍光発光、ルミネッセンス、ケミルミネッセンス、吸光度、反射率、透過率、複屈折又は屈折率の測定(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー法、格子結合器導波法又は干渉分光法)を含む。光学的な方法は、顕微鏡法(共焦点及び非共焦点の両方)、画像方法及び非画像方法を含む。多種の形式の免疫測定(例えば、ELISA)は、固相に捕獲した検体を検出するための一般的な方法である。電気化学的な方法は、電圧測定及び電流測定方法を含む。高周波測定法は、多極共鳴分光法(multipolar resonance spectroscopy)を含む。
【0079】
本発明に関連する「マーカー」は、対照の被検者(例えば、陰性診断又は癌が検出されなかった人、正常又は健常被検者)から得た比較サンプルに比べて、ヒトの癌を有する患者から得たサンプルに特異的に存在する、ポリペプチド(特に明確な分子量の)を示す。「バイオマーカー」という用語は、用語「マーカー」と同じ意味で使われる。
【0080】
「測定」という用語は、サンプルのマーカーの有無を検出すること、サンプルのマーカーを定量すること、及び/又はサンプルのバイオマーカーの性質を認定することを含む方法を意味する。測定は、これに限定されないが、DELDI及び免疫想定を含む、当該技術分野で公知である方法及び更に本明細書に記載の方法によって実施することができる。適切な方法は何れも、本明細書に記載の1つ又はそれ以上のバイオマーカーを検出及び測定するために使用することができる。これらの方法は、これらに限定されないが、質量分析(例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析)、表面プラズモン共鳴、偏光解析法及び原子間力顕微鏡法を含む。
【0081】
「検出」は、検出する対象物の有無又はその量を確認することを示す。
【0082】
「特異的に存在する」という語句は、対照の被検者に比べてヒト癌を有する患者から得られるサンプルに存在するマーカーの量及び/又は発生頻度の差異を言う。例えば、本明細書に記載されている幾つかのマーカーが、対照の被検者のサンプルに比べて癌患者のサンプルに高いレベルで存在する。それとは反対に、本明細書に記載するその他のマーカーが、対照の被検者のサンプルに比べてヒト癌患者のサンプルに低いレベルで存在する。また、マーカーは、対照の被検者のサンプルに比べてヒト癌患者のサンプルに高い頻度又は低い頻度で検出される、ポリペプチドであってもよい。マーカーは、量、頻度又は両方の点から見て、特異的に存在することができる。
【0083】
1つのサンプルのポリペプチドの量が、別のサンプルのポリペプチドの量より統計的有意に異なっていれば、2つのサンプルの間にポリペプチドが特異的に存在している。例えば、別のサンプルに存在するポリペプチドよりも、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、又は少なくとも約1000%多くそれが存在するか、又は1つのサンプルでそれが検出できるが別のサンプルでは検出できないならば、2つのサンプルの間にポリペプチドが特異的に存在することになる。
【0084】
或いは又は更に、前立腺癌患者のサンプルでポリペプチドを検出する頻度が対照サンプルよりも統計的有意に高いか又は低いならば、2組のサンプルの間にポリペプチドが特異的に存在する。1つのセットのサンプルのプリペプチドが、別のセットのサンプルよりも、例えば、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、又は少なくとも約1000%の高い頻度又は低い頻度で検出されるならば、2つのセットのサンプルの間にポリペプチドが特異的に存在することになる。
【0085】
「診断」は、病態、すなわち前立腺癌の存在又は性質を確認することを意味する。診断方法で、その検出感度及び特異性が異なる。診断アッセイの「検出感度」は、検査で陽性を示す病人の割合(「真陽性」の割合)である。アッセイで検出されない病人は、「偽陽性」である。病気はなく且つ検査で陰性の被検者は、「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、「1−偽陽性比率」であり、「偽陽性」比率は、検査で陽性であるが病気ではないヒトの割合として定義される。特定の診断方法は、症状の確定診断を提供できないが、この方法が診断に役立つ明確な徴候を示すならばそれで十分である。
【0086】
マーカーの「検査量」は、検査するサンプルに存在するマーカーの量を示す。検査量は、絶対量(例えば、μg/ml)又は相対量(例えば、シグナルの相対強度)の何れであってもよい。
【0087】
マーカーの「診断量」は、前立腺癌の診断と合致する被検者サンプルのマーカーの量を示す。診断量は、絶対量(例えば、μg/ml)又は相対量(例えば、シグナルの相対強度)の何れであってもよい。
【0088】
マーカーの「対照量」は、マーカーの検査量に対して比較される量又は量の範囲の何れかであってよい。例えば、マーカーの対照量は、前立腺癌ではないヒトのマーカーの量であってよい。対照量は、絶対量(例えば、μg/ml)又は相対量(例えば、シグナルの相対強度)の何れであってもよい。
【0089】
本明細書で用いる「感度」という用語は、特定疾患の患者の割合である。例えば、PCa/HC群では、本発明のマーカーは、約98%の感度を有する。バイオマーカーのパネルは、103人の前立腺癌患者からの101人が前立腺癌を有すると正確に分類した(すなわち、101/103=98%)。
【0090】
本明細書で用いる「特異性」という用語は、特定疾患を有すると正確に同定された患者の割合である(すなわち、正常又は健常な被検者)。例えば、特異性は、正常で健常な被検者と比べた特定疾患の被検者数として計算される。
【0091】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を示し、本明細書では同じ意味で使われている。この用語は、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の類縁体又は模倣体であるアミノ酸重合体に、さらに天然のアミノ酸重合体にも適用される。ポリペプチドは、例えば糖残基の付加による糖タンパク質の形成のように、修飾することができる。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、糖タンパク質、更に非糖タンパク質も含む。
【0092】
「免疫測定」は、抗原(例えば、マーカー)に特異的に結合する抗体を用いるアッセイである。免疫測定は、抗原を単離する、標的にする、及び/又は定量するための特定の抗体の特異的な結合性の使用によって特徴付けられる。
【0093】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子(複数を含む)又はその断片によって実質的にコードされ、エピトープ(例えば、抗原)に特異的に結合してこれを認識する、ポリペプチリガンドである。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ及びラムダ軽鎖定常領域遺伝子、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー重鎖定常領域遺伝子、及び多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、又は各種のペプチダーゼで消化されて作成された多くの良く特徴付けられる断片として存在する。これは、例えば、Fab’及びF(ab)’断片を含む。本明細書で用いる「抗体」という用語は、全抗体の修飾によって作成されたか、又は組み換えDNA手法を用いてデノボ合成されたかの何れかの抗体断片も含む。これは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は単鎖抗体も含む。抗体の「Fc」タンパク質は、1つ又はそれ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH、CH及びCHを包含するが、重鎖可変領域を含んでいない、免疫グロブリン重鎖の部分を示す。
【0094】
タンパク質又はペプチドを参照する場合、抗体に「特異的に(又は選択的に)結合する」又は「〜と特異的に(又は選択的に)免疫反応する」は、タンパク質及びその他の生物製剤の外来集団にそのタンパク質の存在を決定できるような結合反応を示す。従って、所定の免疫測定条件下で、特定された抗体は、少なくともバックグラウンドの2倍の量で特定なタンパク質と結合し、サンプルに存在するその他のタンパク質とは有意な量で実質的に結合しない。このような条件下での抗体への特異結合は、特定タンパク質への特異性について選択された抗体を必要とする。例えば、ラット、マウス又はヒトのような特定の種からのマーカー「X」に産生されるポリクロナール抗体は、マーカー「X」と特異的に免疫反応して、マーカー「X」の多形変異体及び対立遺伝子以外のその他のタンパク質とは反応しない、そのようなポリクローナル抗体のみを得るために選択することができる。この選択は、他の種からマーカー「X」分子と架橋結合する抗体を引き取ることによって実施することができる。各種の免疫想定形式は、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために用いることができる。例えば、固相のELISA免疫測定法が、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために、よく用いられる(特異的免疫反応を判定するために用いることができる、免疫測定の形式及び条件の記述については、例えば、「Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Mannual (1988)」を参照されたい)。一般に特異的または選択的反応は、少なくともバックグラウンドの2倍のシグナル又はノイズで、そしてより一般的には、バックグラウンドの10〜100倍であろう。
【0095】
「被検者治療の実施」は、前立腺癌の状態を判定した後の臨床医及び医師の行動を示す。例えば、本発明の方法の結果が決定的でないか、又は状態の確認が必要である理由がある場合には、医師はさらなる検査を指示できる。また、状態が手術が好ましいことを示唆する場合には、医師は患者を手術する予定を決めることができる。同様に、状態が否定的、例えば、前立腺癌の末期である場合又は状態が深刻である場合には、さらなる処置は保証されないであろう。更に、結果が治療が成功したことを示す場合には、更なる治療は必要ないであろう。
【0096】
(2.前立腺癌のバイオマーカー)
(2.1バイオマーカー)
本発明は、前立腺癌患者に、特に正常(非前立腺癌)に対して前立腺癌に、特異的に存在存在するポリペプチドベースのバイオマーカー、PCIを提供する。このバイオマーカーは、質量分析で測定される分子量、質量対電荷比によって、飛行時間型質量分析におけるそれらのスペクトルピークの形状によって、そしてそれらの吸着体表面への結合特性によって特徴付けられる。これらの特性は、特定の検出されたバイオマーカーが本発明のバイオマーカーであるかを判定するための1つの方法を提供する。これらの特性は、バイオマーカーの固有の特性を示し、生体分子を識別する方法において処理限界を示さない。
【0097】
バイオマーカーは、Ciphergen Biosystems Inc.(Fremont, CA) のProteinChipアレイ(「Ciphergen」)を使用するSELDI技術を用いて発見された。血清サンプルの集団を、前立腺癌の診断被検者及び正常な診断被検者から集めた。これらのサンプルを、陰イオン交換クロマトグラフィーで分画した。分画したサンプルに、SELDIバイオチップを適用してサンプルのポリペプチドのスペクトルを、Ciphergen PBSII質量分析計上で飛行時間型質量分析によって作成した。こうして得られたスペクトルを、Ciphergen Biosystems Inc.のBiomarker Wizard and Biomarker Pattern Softwareを用いるCiphergen Express(登録商標)Data Manager Softwareによって分析した。各群のマススペクトルを散布図で分析した。各タンパク質集団について、前立腺癌群と対照群を比較するために、マンホイットニー検定を用いて分析し、2群間で有意差(p<0.0001)があるタンパク質を選択した。この方法は、実施例により詳細に記載されている。
【0098】
このようにして発見されたバイオマーカーは、PCIである。「ProteinChip分析」の欄は、バイオマーカーが見い出されたクロマトグラフィーの分画、バイオマーカーが結合するバイオチップの型、及び洗浄条件を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
本発明のバイオマーカーは、質量分析で測定されるような質量電荷比によって特徴付けられる。質量電荷比は、Ciphergen Biosystems Inc.のPBSII質量分析計で作成されるマススペクトルから決定できる。この機器は、約±0.15パーセントの質量精度を有する。また、この機器は、約400〜100m/dm(ここにおいて、mは質量であり、dmはピークの高さの中間点のピーク幅である)の質量分解能を有する。バイオマーカーの質量電荷比は、Biomarker Wizard(登録商標)software(Ciphergen Biosystems Inc.)を用いて測定した。Biomarker Wizardは、PBSIIによって測定された、全ての分析スペクトルから同じピークの質量電荷比を集め、その集団中の最大と最小の質量電荷比を取って、2で割ることによって、バイオマーカーに質量電荷比を割り当てる。従って、示されている質量は、これらの記述を反映している。
【0101】
本発明のバイオマーカーは、飛行時間型質量分析におけるそれらのスペクトルピークの形状によって更に特徴付けられる。バイオマーカーに相当するピークを表すマススペクトルを図8に示す。
【0102】
本発明のバイオマーカーは、クロマトグラフ表面上の結合特性によって更に特徴付けられる。殆どのバイオマーカーは、pH4の100mM酢酸ナトリウムで洗浄した後に、陽イオン交換吸着剤(例えば、Ciphergen(登録商標)WCX ProteinChip(登録商標)アレイ)に結合する。
【0103】
本発明のバイオマーカーは、質量電荷比、結合特性及びスペクトルの形状によって特徴付けられるので、特別な同定を認識せずに質量分析で検出することができる。しかしながら、必要により、その同定が決定されないバイオマーカーを、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列を測定して同定することができる。例えば、バイオマーカーを、トリプシン又はV8プロテアーゼのような、多くのの酵素によってペプチド解析することができ、そして消化断片の分子量は、多種の酵素で産生された消化断片の分子量と一致する配列をデータベースで検索するのに用いることができる。また、タンパク質のバイオマーカーは、タンデムMS技術を用いて、配列決定することができる。この方法では、タンパク質は、例えばゲル電気泳動で単離される。バイオマーカーを含むバンドを切り出して、タンパク質をプロテアーゼで消化させる。第1質量分析計で、個々のタンパク質断片を分離する。次いでこの断片を衝突誘起冷却を実施し、ペプチドを断片にしてポリペプチドラダーを作成する。次いでポリペプチドラダーを、タンデムMSの第2質量分析計で分析する。ポリペプチドラダーを構成する成分の質量の違いが、配列中のアミノ酸を同定する。全タンパク質をこの方法で配列決定することができる、又は断片の配列は、データベース検索で同一の候補物質を見い出すことができる。
【0104】
バイオマーカーを検出するために好ましい生体供給源は、血清である。しかしながら、その他の態様では、バイオマーカーは、血漿又は尿から検出することができる。
【0105】
本発明のバイオマーカーは、ポリペプチドである。従って、本発明は、このポリペプチドを単離形態で提供する。バイオマーカーは、尿又は血清のような、生体液から単離することができる。それらの質量及び結合特性の両方をベースに、当該技術分野で公知の何れかの方法によって単離することができる。例えば、ポリペプチドを含有するサンプルを、本明細書に記載のように、クロマトグラフ分別にかけて分離することができ、そして例えば、アクリルアミド電気泳動によって更に分離することができる。バイオマーカーの同定についての知識で、それを免疫親和性クロマトグラフィーによって分離することも可能となる。
【0106】
(3.バイオマーカー及びタンパク質の異なる形態)
タンパク質は、しばしば複数の異なった形態でサンプルに存在する。これらの形態は、翻訳前又は翻訳後の修飾のどちらか又は両方の結果として生成される。翻訳前の修飾形態は、対立遺伝子多型、スプライス変異体及びRNA編集形態を含む。翻訳後の修飾形態は、タンパク分解の切断(例えば、シグナル配列又は親タンパク質断片の切断)、グリコシル化、リン酸化、脂質化、酸化、メチル化、システイン化、スルホン化及びアセチル化がもたらした形態を含む。
【0107】
サンプルのタンパク質を検出又は測定する場合、タンパク質の異なった形態を識別できるかは、違いの性質及び検出又は測定するのに用いる方法によって決まる。例えば、モノクローナル抗体を用いる免疫測定は、抗原決定基を含むタンパク質の全形態を検出できてて、これらを識別できない。しかしながら、タンパク質上の異なった抗原決定基に対する2つの抗体を用いるサンドイッチ免疫測定法は、両方の抗原決定基を含む全形態のタンパク質を検出できて、1つの抗原決定基のみを含む形態のものを検出できない。
【0108】
診断アッセイでは、タンパク質の形態を識別できないことは、用いる特定な方法によって検出される形態がどのような特定形態であっても同程度に良いバイオマーカーであるときには殆ど影響がない。しかしながら、タンパク質の特定な形態(又は、特定な形態の小集団)が、特定な方法で一緒に検出される異なった形態の一群よりもより良いバイオマーカーである場合は、このアッセイの能力に満足できないことになる。この場合は、タンパク質の形態を識別して、タンパク質の望ましい形態(複数を含む)を特異的に検出及び測定するアッセイ方法が有用である。検体の異なった形態を識別すること、又は検体の特定な形態を特異的に検出することを、検体を「分割すること」と言う。
【0109】
質量分析は、質量分析によって分割できる異なった形態が、異なった質量を特異的に有するので、タンパク質の異なった形態を分割するための強力な手法となる。従って、タンパク質の1つの形態が、バイオマーカーの別な形態よりも、疾患に対して優れたバイオマーカーであるならば、質量分析は、通常の免疫測定が形態を識別できずそして有用なバイオマーカーを特異的に検出できない場合、有用な形態を特異的に検出及び測定することができる。
【0110】
1つの有用な手法は、質量分析を免疫測定と組み合わせることである。まず、生体特異的捕獲剤(例えば、抗体、アプタマー、又はバイオマーカー及びそれの他の形態を認識するAffibody)を、目的のバイオマーカーを捕獲するために使用する。好ましくは、生体特異的捕獲剤は、ビーズ、プレート、膜又はアレイのような、固相に結合されている。結合していない物質を洗い流した後、捕獲された検体を、質量分析で検出及び/又は測定する。(この方法も、タンパク質に結合するか、又はそれともそれ自体がバイオマーカーである抗体によって認識される、タンパク質相互作用剤(interactors)の捕獲をもたらす。) 一般的なMALDI又はSELDIのような、レーザー脱離法、及びエレクトロスプレーイオン化を含む、多くの形態の質量分析が、タンパク質の形態を検出するために有用である。
【0111】
従って、本明細書において、特定のタンパク質を検出すること又は特定のタンパク質の量を測定することについて述べる場合には、タンパク質を、タンパク質の多種の形態に分割するか又は分割しないで、検出及び測定することを意味する。例えば、「CPI」の段階は、サンプルのタンパク質の多種の形態を区別しない方法、更に幾つかの形態をその他の形態と区別する方法、又はタンパク質の特定な形態を測定する方法によって、CPIを測定することを含む。
【0112】
(4.前立腺癌に対するバイオマーカーの検出)
本発明のバイオマーカーは、何れかの適切な方法で検出することができる。この目的を達成するために利用できる検出パラダイムは、光学的方法、電気化学的方法(電圧測定及び電流測定手法)、原子間力顕微鏡法、及び高周波測定法、例えば多極共鳴分光法を含む。顕微鏡法(共焦点及び非共焦点の両方)に加えて、光学的方法の実例は、蛍光発光、ルミネッセンス、ケミルミネッセンス、吸光度、反射率、透過率、複屈折又は屈折率の測定(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー法、格子結合器導波法又は干渉分光法)である。
【0113】
一態様では、サンプルを、バイオチップの方法によって分析する。バイオチップは、一般に固体の基質から成り、そして一般に、捕獲剤(吸着剤又は親和性試薬とも呼ばれる)が付着する平面な表面を有する。しばしば、バイオチップの表面は、複数のアドレス可能な部分を含み、この部分のそれぞれが、そこに結合する捕獲剤を有している。
【0114】
タンパク質バイオチップは、ポリペプチドの捕獲に適合しているバイオチップである。多くのタンパク質バイオチップが当該技術分野で記載されている。これらは、例えば、Ciphergen Biosystem Inc.(Fremont, CA)、Zyomyx(Hayward, CA)、Invitrogen(Carlsbad, CA)、Biacore(Uppsala, Sweden)及びProcognia(Berkshire, UK)によって製造されたタンパク質バイオチップを含む。このようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許及び特許出願公開に記載されている(米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip)、米国特許第6,537,749号(Kuimelis and Wagner)、米国特許第6,329,209号(Wagner et al.)、PCT国際出願公開第WO00/56934号(Englert et al.)、PCT国際出願公開第WO03/048768号(Boutell et al.)及び米国特許第5,242,828号(Bergstrom et al.)。
【0115】
(4.1 質量分析による検出)
好ましい態様では、本発明のバイオマーカーは、気相のイオンを検出する質量分析計を用いる方法である、質量分析によって検出される。質量分析計の例は、飛行時間型、磁場型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、電場分析器及びこれらの複合型である。
【0116】
更なる好ましい方法では、質量分析計は、レーザー脱離/イオン化質量分析計である。レーザー脱離/イオン化質量分析計では、検体は、質量分析プローブの表面に置くが、このプローブは、質量分析計のプローブ接合部をはめ込むように適合して、検体にイオン化するためのイオン化エネルギーを与えて、質量分析計に導入するデバイスである。レーザー脱離質量分析計は、検体を表面から脱着し、揮発し、そしてそれらをイオン化するために、次いでこれらを質量分析計のイオン光学部分で利用できるように、特に紫外線レーザー(しかし、赤外線レーザーも)からのレーザーエネルギーを利用する。
【0117】
SELDI
本発明で使用するための好ましい質量分析技術は、「表面増強レーザー脱離イオン化」又は「SELDI」に、例えば、米国特許第5,719,060号及び同第6,225,047号(両方とも、Hutchens及びYip)に記載されている。この技術は、脱離/イオン化気相イオン分析(例えば、質量分析)を言い、この分析では、検体(ここでは、1つ又はそれ以上のバイオマーカー)がSELDI質量分析プローブの表面上に捕獲されている。SELDIには、幾つかの変法がある。
【0118】
SELDIの1つの変法は、「親和性捕獲質量分析」と呼ばれている。これは、「表面増強親和性捕獲」又は「SEAC」とも呼ばれている。この変法には、物質と検体の間の非共有結合性の相互作用(吸着)を介して検体を捕獲する物質をプローブの表面に有している、プローブの使用が含まれる。この物質は、「吸着剤」、「捕獲剤」、「親和性試薬」又は「結合部分」と様々に呼ばれている。このようなプローブは、「親和性捕獲プローブ」と言い、そして「吸着剤表面」を有すると言うことができる。捕獲剤は、検体を結合できる何れの物質であってもよい。捕獲剤は、物理吸着又は化学吸着によってプローブ表面に付着する。ある特定の態様では、プローブは、その表面に既に吸着した捕獲剤を有している。その他の態様では、プローブは予め活性化されており、例えば、共有結合又は配位共有結合を形成する反応によって、捕獲剤を結合できる反応部位を含んでいる。エポキシド及びアクリル−イミダゾールは、抗体又は細胞受容体のようなポリペプチド捕獲剤に共有結合するのに有用な反応残基である。ニトリロ三酢酸及びイミノ二酢酸は、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互反応する金属イオンを結合するキレート剤として機能する、有用な反応性残基である。吸着剤は、一般にクロマトグラフィー用吸着剤及び生体特異的吸着剤として分類されるものである。
【0119】
「クロマトグラフィー用吸着剤」は、一般にクロマトグラフィーで用いられる物質を示す。クロマトグラフィー用の吸着剤は、例えば、イオン交換物質、金属キレート化剤(例えば、ニトリロ三酢酸又はイミノ二酢酸)、固定化金属キレート、疎水的相互作用吸着剤、親水的相互作用吸着剤、染料、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単純な糖及び脂肪酸)及び混合形態の吸着剤(例えば、疎水性引力/静電反発力の吸着剤)を含む。
【0120】
「生体特異的吸着剤」は、生体分子、例えば核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖類、脂質、ステロイド、又はこれらの複合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質複合体)を包含する吸着剤を示す。場合によっては、生体特異的吸着剤は、多タンパク質複合体、生体膜又はウィルスのような、高分子構造であってもよい。生体特異的吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質及び核酸である。生体特異的吸着剤は一般に、クロマトグラフィー用の吸着剤よりも、標的検体に対してより高い特異性を有している。SELDIで使用するための吸着剤の更なる例は、米国特許第6,225,047号に見い出すことができる。「生体選択的吸着剤」は、少なくとも10−8Mの親和性で検体と結合する吸着剤を示す。
【0121】
Ciphergen Biosystem Inc.によって作成されるタンパク質バイオチップは、そのアドレス可能部分に付着するクロマトグラフィー用又は生体特異的吸着剤を有する表面を含有している。Ciphergen ProteinChip(登録商標)アレイは、NP20(親水性);H4及びH50(疎水性);SAX−2、Q−10及びLSAX−30(陰イオン交換);WCX−2、CM−10及びLWCX−30(陽イオン交換);IMAC−3、IMAC−30及びIMAC−40(金属キレート);及びPS−10、PS−20(アシル−イミダゾール、エポキシドで表面を活性化)及びPG−20(アシル−イミダゾールを介してプロテインGと結合)を含む。疎水性のProteinChipアレイは、イソプロピル又はノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート官能基を有する。陰イオン交換ProteinChipアレイは、4級アンモニウム官能基を有する。陽イオン交換ProteinChipアレイは、カルボキシレート官能基を有する。固定化金属キレートProteinChipアレイは、銅、ニッケル、亜鉛及びガリウムのような遷移金属をキレート化して吸着する、ニトリロ三酢酸官能基を有する。前活性化ProteinChip アレイは、共有結合でタンパク質上の基と反応できる、アシル−イミダゾール又はエポキシド官能基を有する。
【0122】
このようなバイオチップは更に、米国特許第6,579,719号(Hunchens and Yip, "Retentate Chromatography", June 17, 2993)、同第6,897,072号(Rich et al., "Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer", May 24, 2005)、同第6,555,813号(Beecher et al., "Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer", April 29, 2003)、米国特許出願第US20030032043A1号(Pohl and Papanu, "Latex Based Adsorbent Chip" July 16, 2002)及びPCT国際出願公開第WO03/040700号(Um et al., "Hydrophobic Surface Chip", May 15, 2003)、米国特許出願第US2003/0218130A1号(Boschetti et al., "Biochip With Surfaces Coated With Polysaccharide-Based Hydrogels", April 14, 2003)及び米国特許第7,045,366号(Huang et al., "Photocrosslinked Hydrogel Blend Surface Coatings", May 16, 2006)に記載されている。
【0123】
一般に、吸着表面があるプローブは、サンプルに存在するかもしれないバイオマーカー(複数を含む)が吸着剤と結合するのに十分な時間、サンプルと接触させる。インキュベーション後に、基質を洗浄して結合していない物質を除去する。何れかの適切な洗浄溶液が用いられるが、好ましくは水性溶液が使用される。分子が結合を保持する程度は、洗浄力を調節してコントロールすることができる。洗浄液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、洗浄力及び温度によって決めることができる。プローブがSEAC及びSENDの両方の特性(本明細書に記載のような)を有していないならば、エネルギー吸収分子がバイオマーカーと結合する基質に適用される。
【0124】
基質に結合するバイオマーカーは、飛行時間型質量分析計のような、気相イオン分光計で検出される。バイオマーカーは、レーザーのようなイオン化源によってイオン化され、生成したイオンはイオン光学系の機器で集められ、次いで質量分析器が通過イオンを分散して分析する。次いで検出器が、検出イオンの情報を質量電荷比に変換する。バイオマーカーの検出は一般に、シグナル強度の検出を含み、バイオマーカーの数量及び質量の両方を測定することができる。
【0125】
SELDIの別の変法は、表面増強ニート脱離(SEND)であり、これは、プローブ(「SENDプローブ」)の表面に化学的に結合するエネルギー吸収分子を包含するプローブの使用を含む。「エネルギー吸収分子」(EAM)という用語は、レーザー脱離/イオン化源からエネルギーを吸収し、その後、接触する検体に脱離及びイオン化をもたらすことができる、分子を意味する。EAMの種類は、MALDIで用いられる分子を含み、しばしば「マトリックス」として示され、桂皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA])、シアノ−ヒドロキシ−桂皮酸(「CHCA」)及びジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、ヒドロキシアセトフェノン誘導体などが例である。ある特定の態様では、エネルギー吸収分子は、線状又は架橋結合重合体、例えば、ポリメタクリレートに組み込まれている。例えば、組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸とアクリル酸との共重合体であってよい。別の態様では、組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸、アクリル酸及び3−(トリ−エトキシ)シリルプロピルメタクリレートの共重合体である。その他の態様では、組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸とオクタデシルメタクリレートの共重合体(「C18 SEND」)である。SENDは、米国特許第6,124,137号及びPCT国際出願公開第WO 03/64594号(Kitagawa, "Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes", August 7, 2003)に記載されている。
【0126】
SEAC/SENDは、SELDIの変法であり、捕獲剤及びエネルギー吸収分子の両方がサンプル提示表面に付着されている。従って、SEAC/SENDのプローブは、外部マトリックスの利用を必要としないで、親和性による検体の捕獲及びイオン化/脱離が可能となる。C18 SENDバイオチップは、SEAC/SENDの変法であって、捕獲剤として機能するC18部分、そしてエネルギー吸収部分として機能するCHCA部分を包含する。
【0127】
SELDIの別な変法は、表面増強光解離性付着及び放出(SEPAR)と呼ばれていて、これは、検体と共有結合できる表面に付着する部分を有し、次いで光、例えばレーザーに曝露した後にその部分の光解離性結合を切断して検体を放出するプローブを使用することを含む(米国特許第5,719,060号を参照されたい)。SEPAR及びSELDIのその他の形態は、バイオマーカー又はバイオマーカーのプロファイルを検出するために、本発明に従って容易に適用される。
【0128】
その他の質量分析方法
別の質量分析方法では、バイオマーカーは、バイオマーカーを結合するクロマトグラフ特性を有するクロマトグラフィー用樹脂上に最初に捕獲される。本実施例では、これには、多種の方法が含まれる。例えば、バイオマーカーを、CMセラミックハイパーD F樹脂のような陽イオン交換樹脂上に捕獲し、樹脂を洗浄し、バイオマーカーを溶出し、そしてMALDIで検出することができる。また、この方法は、陽イオン交換樹脂に適用する前に、サンプルを陰イオン交換樹脂上で分画することによって、進めることができる。その他の選択肢では、陰イオン交換樹脂上で分画して、MALDIで直接検出することができる。更なる別の方法では、バイオマーカーを、バイオマーカーと結合する抗体を含有する免疫クロマトグラフィー用樹脂に捕獲し、樹脂を洗浄して結合していない物質を除去し、バイオマーカーを樹脂から溶出し、そして溶出されたバイオマーカーをMALDI又はSELDIによって検出する。
【0129】
データ分析
飛行時間型質量分析による検体の分析は、飛行時間スペクトルを生成する。最終的に分析された飛行時間スペクトルは、一般にサンプルに対するイオン化エネルギーの単一振動からのシグナルを示しているのではなく、むしろ多数の振動からのシグナルの合計を示している。これは、ノイズを減少させ、ダイナミック・レンジを増大させる。この飛行時間データは、次にデータ処理される。CipphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアでは、データ処理は一般に、TOF−to−M/Z変換してマススペクトルを作成し、ベースライン値を引き算して機器のオフセットを消去し、そしてフィルターにかけて高周波ノイズを減少させることを含む。
【0130】
バイオマーカーの脱離及び検出によって作成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて解析できる。コンピュータプログラムは、検出されたバイオマーカーの数を示し、そして検出されたバイオマーカーの各々のシグナルの強度及び測定された分子量を示すことができる。データ解析は、バイオマーカーのシグナル強度を測定する段階、そして所定の統計的分布から逸脱するデータを除去する段階を含むことができる。例えば、幾つかの基準と比べてそれぞれのピークの高さを計算することにより、観測されたピークを標準化することができる。この基準は、機器及びスケールのゼロ位置にセットされているエネルギー吸収分子のような化学物質によって生じるバックグラウンドのノイズであってよい。
【0131】
コンピュータは、得られたデータを、各種の表示フォーマットに変換することができる。標準的なスペクトルを表示できるが、1つの有用なフォーマットでは、ピークの高さ及び質量情報のみがスペクトル図に保持されて、明確な画像を生成し、ほぼ同一の分子量のバイオマーカーをより容易に見れるようにする。別の有用なフォーマットでは、2つ又はそれ以上のスペクトルを比較して、ユニークなバイオマーカー及びサンプル間で上方又は下方調節されるバイオマーカーを便利なように強調表示する。これらのフォーマットの何れかを用いて、特定のバイオマーカーがサンプルに存在するか否かを容易に判定することができる。
【0132】
解析は、一般に検体からのシグナルを示すスペクトルのピークを同定することを含む。ピークの選択は、視覚的に行うことができるが、CipphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアパッケージの一部であるソフトウェアで、ピークの検出を自動的に実施できる。一般に、このソフトウェアの機能として、選択された閾値以上のシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定し、ピークシグナルの中心のピークの質量を標識化する。一つの有用な適用では、多くのスペクトルを比較して、ある選択された割合のマススペクトルに存在する同一ピークを同定することができる。このソフトウェアの1つの応用では、種々のスペクトルに現れる全てのピークを規定の質量範囲内に集団化して、その質量(M/Z)集団の中点近辺にある全てのピークに質量(M/Z)を割り当てることができる。
【0133】
データを解析するために用いられるソフトウェアは、シグナルが本発明のバイオマーカーに対応するシグナルのピークを示すのか否かを判定する、シグナル分析に対するアルゴリズムを適用するコードを含んでいてよい。ソフトウェアで、観測されたバイオマーカーのピークに関するデータを、分類ツリー又はANN分析して、検査中の特定な臨床パラメータの状態を示唆するバイオマーカーピーク又はバイオマーカーピークの組み合わせが存在するか否かを判定する。データの解析は、サンプルの質量分析から、直接的又は間接的に得られる多くのパラメーターに「キーをつける」ことができる。これらのパラメータには、これらに限定されないが、1つ又はそれ以上のピークの有無、ピーク又はピーク群の形状、1つ又はそれ以上のピークの高さ、1つ又はそれ以上のピークの高さの対数、及びピーク高さデータのその他の計算操作が含まれる。
【0134】
前立腺癌のバイオマーカーのSELDI検出についての一般的な手順
本発明のバイオマーカーの検出についての好ましい手順は以下の通りである。検査する生体サンプル、例えば、尿を、SELDI分析する前に、事前に分画することが好ましい。これはサンプルを単純化して、感度を高める。事前分画の好ましい方法は、サンプルを、Q HyperD(BioSepra, SA) のような陰イオン交換クロマトグラフィー物質と接触させることを含む。次いで、結合した物質を、pH9、pH7、pH5及びpH4の緩衝液を用いてpH段階溶出を実施する(実施例1−緩衝液リストを参照されたい)。バイオマーカーを含有する多数の画分を集める。
【0135】
検査するサンプル(好ましくは、事前分画した)を、次に陽イオン交換吸着剤(好ましくは、WCX ProteinChipアレイ(Cippergen Biosystems, Inc.))又はIMAC吸着剤(好ましくは、IMAC3ProteinChipアレイ (Cippergen Biosystems, Inc.))を含有する親和性捕獲プローブと接触させる(表1に示されているような)。結合していない分子を洗い流すが、バイオマーカーを保持できるような緩衝液で、プローブを洗浄する。それぞれのバイオマーカーに対して適切な洗浄液は、表1で同定される緩衝液である。バイオマーカーは、レーザー脱離/イオン化質量分析によって検出される。
【0136】
また、バイオマーカーを認識する抗体を入手できるならば、例えば、β2−ミクログロブリン、システイン、トランスフェリン、トランスサイレチン又はアルブミンの場合には、これらを、前活性化のPS10又はPS20ProteinChipアレイ(Cippergen Biosystems, Inc.) のような、プローブの表面に付着させることができる。これらの抗体は、バイオマーカーをサンプルからプローブの表面に捕獲することができる。次いで、バイオマーカーを、例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析によって検出することができる。
【0137】
(4.2 免疫測定による検出)
別の態様では、本発明のバイオマーカーは、免疫測定によって測定することができる。免疫測定には、バイオマーカーを捕獲するために、抗体のような、生体特異的な試薬が必要である。抗体は、当該技術分野で公知の方法によって、例えば、動物をバイオマーカーで免疫することによって作成することができる。バイオマーカーは、サンプルからその結合特性に基づいて単離することができる。また、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が公知であれば、このポリペプチドを合成し、当該技術分野で公知の方法で抗体を作成するのに用いることができる。
【0138】
本発明は、例えば、ELISAを含む、サンドイッチ免疫測定又は蛍光発光ベースの免疫測定を、さらにその他の免疫測定も含む通常の免疫測定を意図する。比濁法は、抗体が溶解している液相で実施するアッセイである。抗原の抗体への結合は、吸光度の変化をもたらし、この変化を測定する。SELDIベースの免疫測定では、バイオマーカーの生体特異的捕獲剤が、前活性化ProteinChipアレイのような、MSプローブの表面に付着している。そして、バイオマーカーはこの試薬によってバイオチップ上に捕獲され、捕獲されたバイオマーカーを質量分析によって検出する。
【0139】
(5.被検者の前立腺癌状態の判定)
(5.1.単一のマーカー)
本発明のバイオマーカーは、被検者の前立腺癌の状態を評価するための、例えば、前立腺癌を診断するための診断検査に用いることができる。「前立腺癌の状態」という語句は、非疾患を含む、疾患の識別できる徴候の何れかを含む。例えば、疾患の状態は、これらに限定されないが、疾患の有無(例えば、前立腺癌対非前立腺癌)、疾患の進行のリスク、疾患の段階(重症度)、疾患の進行(例えば、経時的な疾患の進行又は疾患の寛解)及び疾患の治療に対する効果及び応答を含む。この状態に基づいて、追加の診断検査又は治療処置又は計画を含む、更なる処置を指示することができる。
【0140】
診断検査が状態を正確に予測する能力は、一般に、アッセイの感度、アッセイの特異性、又は受信者動作特性(「ROC」)曲線の下部面積として測ることができる。感度は、検査で陽性であると予測されたもののうちの真の陽性の割合であり、一方特異性は、検査で陰性であると予測されたもののうちの真の陰性の割合である。ROC曲線は、(1−特異性)の関数として、検査の感度を提供する。ROC曲線の下部面積が大きいほど、検査の予測値が大きくなる。検査の有用性のその他の有用な測定値は、陽性適中率及び陰性適中率である。陽性適中率は、検査で陽性である人のうち、実際に陽性である人の割合である。陰性適中率は、検査で陰性である人のうち、実際に陰性である人の割合である。
【0141】
本発明のバイオマーカーは、異なる前立腺癌の状態間において、少なくともp≦0.05、p≦10−2、p≦10−3、p≦10−4又はp≦10−5の統計的差異を示す。これらのバイオマーカーを単独で、又は組み合わせて使用する診断検査は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%そして約100%の感度及び特異性を示す。
【0142】
PCIは、前立腺癌に特異的に存在するので、各々は前立腺癌の状態の判定を支援するのに個々に有用である。方法は、1番目に、本明細書に記載の方法、例えば、SELDIバイオチップ上に捕獲して質量分析で測定する方法を用いて被検者のサンプルの選択したバイオマーカーを測定すること、そして2番目に、測定結果を前立腺癌状態の陽性と陰性を識別する診断量又はカットオフ値と比較することを含む。診断量は、被検者が特定の前立腺癌状態を有するとして分類される、上か又は下のバイオマーカーの測定量を示す。例えば、バイオマーカーが、前立腺癌では正常者に比べて上方に調節されているならば、診断カットオフ値よりも高い測定値は、前立腺癌であるとの診断をもたらす。あるいは、バイオマーカーが、前立腺癌では正常者に比べて下方に調節されているならば、診断カットオフ値よりも低い測定値は、前立腺癌であるとの診断をもたらす。当該技術分野でよく理解されているように、アッセイにおいて特定の診断カットオフ値を調整することによって、診断医の優先度によって決まる診断アッセイの感度又は特異性を上げることができる。特定の診断カットオフ値を、例えば、異なった前立腺癌状態の被検者からの統計的に有意性がある数のサンプルのバイオマーカーの量を、本明細書で行ったように測定して、診断医の望む特異性及び感度のレベルに適合したカットオフ値を引くことによって、決定することができる。
【0143】
(5.2.疾患進行のリスクの判定)
一態様では、本発明は、被検者の疾患進行のリスクを判定する方法を提供する。バイオマーカーの量及び形態は、様々なリスクの段階、例えば高い、中程度、低い、によって特徴付けられる。疾患の進行リスクは、関連するバイオマーカー(複数を含む)を測定し、その後それらを分類アルゴリズムに付すか、又はそれらを特定のリスクレベルに関連するバイオマーカーの参照量及び/又は形態と比較することの何れかによって判定される。
【0144】
(5.3.疾患の段階の判定)
一態様では、本発明は、被検者における疾患の段階を判定する方法を提供する。疾患の段階の各々は、特徴的なバイオマーカーの量、又は一組のバイオマーカーの相対量(傾向)を有している。疾患の段階は、関連するバイオマーカー(複数を含む)を測定し、その後それらを分類アルゴリズムに付すか、又はそれらを特定のリスクレベルに関連するバイオマーカーの参照量及び/又は形態と比較することの何れかによって判定される。
【0145】
(5.4.疾患の経過(進行/寛解)の判定)
一態様では、本発明は、被検者における疾患の経過を判定する方法を提供する。疾患の経過は、疾患の進行(悪化)及び疾患の寛解(改善)を含む、疾患の経時的な変化を示す。経時的に、バイオマーカーの量又は相対量(例えば、傾向)は変化する。例えば、バイオマーカーPCIは、疾患の進行に伴って増加し、これに対してバイオマーカー「Z]は減少する。従って、疾患又は非疾患に対して増加するか又は減少するかの何れかの、これらのバイオマーカーの動向が、疾患の経過を示唆する。従って、この方法は、少なくとも2つの異なった時点、例えば第1回目及び第2回目における、被検者の1つ又はそれ以上のバイオマーカーを測定すること、及びもしあれば、量の変化を比較することを含む。疾患の経過は、これらの比較に基づいて判定される。
【0146】
(5.5.被検者の治療管理)
前立腺癌の状態を認定する方法のある特定の態様では、この方法は更に、この状態に基づく被検者治療を管理することを含んでなる。このような管理は、前立腺癌状態の判定に引き続き、医師又は臨床医の処置を含む。例えば、医師が前立腺癌と診断したならば、次に、治療薬の処方又は投与のような、いくつかの治療計画を伴うことになる。また、非前立腺癌の診断又は非前立腺癌の場合は、患者が罹っているかもしれない特定の疾患を判定する更なる検査を伴うことになる。同様に、診断検査が前立腺癌状態について不確定な結果をもたらすならば、追加の検査を指示されることになる。
【0147】
本発明の更なる態様は、例えば、技術者、医師又は患者へ、アッセイ結果、診断又はその両方を伝達することに関する。ある特定の態様では、アッセイ結果、診断又はその両方を当事者、例えば医師及び患者に伝達するためにコンピュータを用いることができる。幾つかの態様では、結果又は診断が伝達される国又は地域と異なった国又は地域で、アッセイを行うか又はアッセイ結果を解析してもよい。
【0148】
本発明の好ましい態様では、被検者におけるバイオマーカーの有無に基づく診断は、診断が得られた後、できるだけ速やかに被検者に伝達される。診断は、被検者を治療する医師によって、被検者に伝達されてもよい。また、診断は、被検者にEメールで送られてもよく又は被検者に電話で伝達されもよい。Eメール又は電話によって診断を伝達するのに、コンピュータを用いることができる。ある特定の態様では、診断検査の結果を含むメッセージを、電気通信分野の当業者によく知られているコンピューターのハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて、自動的に作成して被検者に送達してもよい。医療指向のコミュニケーションシステムの一例が、米国特許第6,283,761号に記載されている。しかしながら、本発明は特定のコミュニケーションシステムを用いる方法に限定されるものではない。本発明方法のある特定の態様では、サンプルの分析、疾患の診断、及びアッセイ結果又は診断の伝達を含む、方法の段階の全て又は幾つかを、異なった(例えば、外国の)地域で実施することができる。
【0149】
(5.6.医薬品の治療効果の判定)
別の態様では、本発明は、医薬品の治療効果を判定する方法を提供する。これらの方法は、薬剤の臨床治験を実施するのに、更には薬剤に対する患者の経過を観察するのにも有用である。治療又は臨床治験は、特定の治療計画での薬剤の投与を含んでいる。治療計画は、薬剤の単回投与又は時間をかける薬剤の複数投与を含んでいてよい。医師又は臨床研究者は、投与期間中の患者又は被検者に対する薬剤の効果を観察する。薬剤が症状に対して薬理学的な効果を有していれば、本発明のバイオマーカーの量又は相対量(例えば、傾向又は特徴)が、非疾患プロフィルの方向へ変化する。従って、治療の過程において、被検者中のこれらのバイオマーカーの量の経過を追うことができる。それにより、この方法は、薬剤の治療を受けている被検者の1つ又はそれ以上のバイオマーカーを測定すること、そしてバイオマーカーの量を被検者の疾患状態と関連付けることを含む。この方法の一態様は、薬剤治療の過程における少なくとも二つの異なる時点、例えば、1回目及び2回目におけるバイオマーカーのレベルを測定して、もしあれば、バイオマーカー量の変化を比較することを含む。例えば、薬剤投与の前と後、又は薬剤投与期間中の異なる二つの時点でバイオマーカーを測定することができる。治療の効果は、これらの比較に基づいて判定される。治療が有効であれば、バイオマーカーは正常の方向へ向かい、一方治療が無効であれば、バイオマーカーは疾患を示唆する方向へ向かうであろう。バイオマーカーは正常の方向へ向かい、一方治療が無効であれば、バイオマーカーは疾患を示唆する方向へ向かうであろう。
【0150】
(6.前立腺癌の状態を認定するための分類アルゴリズムの作成)
幾つかの態様では、「公知のサンプル」のようなサンプルを用いて作成したスペクトル(例えば、マススペクトル、又は飛行時間スペクトル)から誘導されたデータを、分類モデルを「トレーニング」するために用いることができる。「公知のサンプル」は、前もって分類されているサンプルである。スペクトルか誘導され、そして分類モデルを作成するために用いられるデータを、「トレーニングデータセット」と呼ぶことができる。一度作成されると、分類モデルは、未知サンプルを用いて作成されたスペクトルから誘導されるデータのパターンを認識することができる。次いで分類モデルを、未知サンプルを各クラスに分類するために用いることができる。これは、例えば特定の生体サンプルが、ある生体の条件(例えば、疾患対非疾患)に関連するか否かを予測する場合に有用である。
【0151】
分類モデルを作成するために用いられる「トレーニングデータセット」は、生データ又は前処理したデータを含むことができる。幾つかの態様では、生データを飛行時間スペクトル又はマススペクトルから直接得ることができ、そして上記のように、任意に「前処理」することができる。
【0152】
データの集団を、データに存在する目的パラメータに基づくクラスに分けるための、何れかの適切な統計的分類(又は「学習」)法を用いて、分類モデルを作成することができる。分類モデルは、教師付き又は教師なしのどちらかであってもよい。教師付き及び教師なしの分類処理の例は、「Jain, "Statistical Pattern Recognition: A Review", IEEE Transaction on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, January 2000」に記載されており、この教示は、参照として取り込まれている。
【0153】
教師付き分類では、公知カテゴリーの例を含むトレーニングデータが、それぞれの公知のクラスを規定する1つ又はそれ以上の関連性を学習する、学習メカニズムに提示される。新しいデータが、学習メカニズムに適用され、次いでこの学習した関連性を用いて新しいデータを分類する。教師付き分類処理の例は、直線回帰処理(例えば、重回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰、及び主成分回帰(PCR))、二分決定ツリー(例えば、CART−分類及び回帰ツリーのような、再帰的分配処理)、逆伝搬ネットワークのような人工神経ネットワーク、判別分析(例えば、ベイズ分類法又はフィッシャー分析法)、ロジスティック分類、及びサポートベクター分類(サポートベクタマシン)を含む。
【0154】
好ましい教師付き分類方法は、再帰的分配処理である。再帰的分配処理は、再帰的分配ツリーを用いて、未知のサンプルに由来するスペクトルを分類する。再帰的分配処理に関する更なる詳細は、Paulseらの米国特許出願第2002 0138208A1号(Method for analyzing mass spectra)に提供されている。
【0155】
その他の態様では、作り出される分類モデルを、教師なし学習法を用いて作成することができる。教師なし分類は、トレーニングデータが誘導される前分類されたスペクトルなしで、トレーニングデータセットにおける同一性に基づく分類を学習するように意図されている。教師なし学習方法は、クラスター解析を含む。クラスター解析は、データを、理想的には互いによく類似し、その他のクラスター成員とは全く似ていない、成員を有する「クラスター」又は群に分ける。次いで、データ項目間の距離を測定して、互いに近接するデータ項目をクラスター化する、距離測定基準を用いて同一性を測定する。クラスター化技術は、MacQueenのK平均アルゴリズム、及びKohonenの自己組織化マップアルゴリズムを含む。
【0156】
生体情報の分類に用いるための学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開第WO01/31580号(Barnhill et al., "Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof")、米国特許出願第2002 0193950A1号(Gavin et al., "Method or analyzing mass spectra")、米国特許出願第2003 0004402A1号(Hitt et al., "Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data")、及び米国特許出願第2003 0055615A1号(Zhang and Zhang, "Systems and methods for processing biological expression data")に記載されている。
【0157】
分類モデルは、適切なデジタルコンピュータの何れかで作成し、用いることができる。適切なデジタルコンピューターは、Unix(登録商標)、Windows(登録商標)又はLinux(登録商標)ベースのオペレーティング・システムのような、標準又は特化したオペレーティングシステムを用いる、マイクロ、ミニ又は大型コンピューターを含む。使用されるデジタルコンピュータは、目的のスペクトルを作成する質量分析計と物理的に離れていてよく、又はこれは質量分析計と連結していてもよい。
【0158】
本発明の態様によるトレーニングデータセット及び分類モデルは、デジタルコンピュータによって実行されるか又は用いられるコンピュータコードによって統合されていてもよい。コンピューターコードは、光又は磁気デスク、スティック、テープ等を含む、コンピュータで読み込み可能な媒体中に保存でき、そしてC、C++、ビジュアルベーシックなどを含む、適切なコンピュータープログラミング言語に書き込むことができる。
【0159】
上記の学習アルゴリズムは、既に発見されているバイオマーカーに関する分類アルゴリズムを開発するため及び前立腺癌の新規なバイオマーカーを見出すための両方に対して有用である。また、分類アルゴリズムは、単一で又は組み合わせて用いられるバイオマーカーに対する診断値(例えば、カットオフ値)を提供することによって、診断検査に対するベースを作成する。
【0160】
(7.組成物)
別の態様では、本発明は、本発明のバイオマーカーに基づく組成物を提供する。
【0161】
一態様では、本発明は、本発明のバイオマーカーを精製した形態で提供する。精製したバイオマーカーは、抗体を産生する抗原としての有用性を有している。精製したバイオマーカーは、アッセイ処理における標準としての有用性も有する。本明細書で用いる「精製したバイオマーカー」は、その他のタンパク質及びペプチド、及び/又はバイオマーカーが見い出される生体サンプルから得られるその他の物質から、単離されるバイオマーカーである。バイオマーカーは、これらに限定されないが、機械的な分離(例えば、遠心分離)、硫酸アンモニウム沈殿、透析(分子ふるい透析を含む)、分子ふるい(サイズ排除)クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び金属キレートクロマトグラフィーを含む、当該技術分野で公知の何れかの方法を用いて精製することができる。このような方法は、何れかの適切なスケール、例えば、クロマトグラフィー用のカラムで、又はバイオチップ上で実施することできる。
【0162】
別の態様では、本発明、本発明のバイオマーカーに特異的に結合する、生体特異的な捕獲剤(精製形態であってもよい)を提供する。一態様では、生体特異的な捕獲剤は、抗体である。このような組成物は、検出アッセイ、例えば診断においてバイオマーカーを検出するのに有用である。
【0163】
別の態様では、本発明は、本発明のバイオマーカーに結合する生体特異的な捕獲剤を包含し、その捕獲剤が固相に結合する、製品を提供する。例えば、本発明は、生体特異的な捕獲剤で誘導体化された、ビーズ、チップ、膜、モノリス又はマクロタイタープレートを包含するデバイスを意図する。このような製品は、バイオマーカーの検出アッセイにおいて有用である。
【0164】
別の態様では、本発明は、本発明のバイオマーカーに結合する抗体のような、生体特異的な捕獲剤を包含する組成物(精製された形態であってもよい)を提供する。このような組成物は、バイオマーカーを精製するのに、又はバイオマーカーを検出するアッセイにおいて有用である。
【0165】
別の態様では、本発明は、吸着剤、例えばクロマトグラフィー用吸着剤又は生体特異的な捕獲剤が付着し、更に本発明のバイオマーカーが結合する、固体基質を包含する製品を提供する。一態様では、この製品は、質量分析用のバイオチップ又はプローブ、例えば、SELDIプローブである。このような製品は、バイオマーカーの精製又はバイオマーカーの検出に有用である。
【0166】
(8.前立腺癌のバイオマーカーの検出のためのキット)
別の態様では、本発明は、前立腺癌の状態を認定するためのキットを提供し、このキットは、本発明によるバイオマーカーを検出するために用いられる。一態様では、キットは、付着する捕獲剤を有するチップ、マイクロタイタープレート、ビーズ又は樹脂のような固体担体を包含し、ここに於ける捕獲剤は本発明のバイオマーカーを結合している。従って、例えば、本発明のキットは、ProteinChip(登録商標)アレイのような、SELDIための質量分析プローブを包含することができる。生体特異的な捕獲剤の場合、キットは、反応性表面を有する固体担体、及び生体特異的な捕獲剤を包含する容器も包含することができる。
【0167】
キットは、洗浄溶液又は洗浄溶液を作成するための説明書を包含することができ、そこでは、捕獲剤と洗浄溶液の組み合わせが、その後の、例えば質量分析による検出のために、バイオマーカー(複数を含む)を固体担体上に捕獲することを可能にする。キットは、各々が異なった固体担体上に存在する、多種多様なタイプの吸着剤を含有していてもよい。
【0168】
更なる態様では、このようなキットは、ラベル又は折り込みの形態で、適切な操作パラメータについての説明書を包含することができる。例えば、説明書は、サンプルを採取する方法、プローブの洗浄方法、又は検出する特定バイオマーカーについて、消費者に情報を与えることができる。
【0169】
更なる別の態様では、キットは、較正用の標準として用いられる、バイオマーカーのサンプルを有する1つ又はそれ以上の容器を包含することができる。
【0170】
(9.スクリーニングアッセイにおける前立腺癌のバイオマーカーの使用及び前立腺癌を治療する方法)
本発明の方法は、その他にも適用される。例えば、バイオマーカーを、インビトロ又はインビボでバイオマーカーの発現を調節する化合物をスクリーニングするために用いることができ、次いで、この化合物を患者における前立腺癌の治療又は予防に役立てることができる。別の例では、バイオマーカーを、前立腺癌の治療に対する応答を観察するために用いることができる。更なる別の例では、被検者が前立腺癌進行のリスクを有しているか否かを判定するための遺伝検討において、バイオマーカーを使用することができる。
【0171】
従って、例えば、本発明のキットは、タンパク質バイオチップ(例えば、Ciphergen H50 ProteinChipアレイ、例えばProteinChipアレイ)のような疎水性機能を有する固体基質、及び基質を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、更にチップ上の本発明のバイオマーカーを測定し、前立腺癌を診断するために測定結果を使用するための手順を提供する使用説明書も含むことができる。
【0172】
表1に挙げられている1つ又はそれ以上のバイオマーカーと相互作用する化合物を同定することによって、治療検査に適する化合物を最初にスクリーニングすることができる。一例としては、スクリーニングは、表1に挙げられているバイオマーカーを遺伝子組み換え技術よって発現すること、バイオマーカーを精製すること、及びバイオマーカーを基質に固定することを含んでいてもよい。次いでテスト化合物を、一般的には水性条件で基質と接触させ、そしてテスト化合物とバイオマーカーとの相互作用を、例えば塩濃度の作用での溶出速度を測定することにより測定する。ある特定のタンパク質は、表1のバイオマーカーを認識して切断する。この場合には、タンパク質は、標準的なアッセイ、例えばタンパク質のゲル電気泳動によって、1つ又はそれ以上のバイオマーカーの消化を観察して検出することができる。
【0173】
関連する態様では、表1のバイオマーカーの活性を抑制するテスト化合物の能力を、測定することができる。当業者は、特定のバイオマーカーの活性の測定に用いられる技術が、バイオマーカーの機能及び特性によって異なることを認識するであろう。例えば、適切な基質が入手可能であり、そして基質の濃度又は反応生成物の産生が容易に測定できるならば、バイオマーカーの酵素活性を測定することもできる。治療可能なテスト化合物の、所定のバイオマーカーの活性を抑制又は増大させる能力は、テスト化合物の存在下又は非存在下における触媒作用の速度を測定することによって、決定することができる。表1の1つ又はそれ以上のバイオマーカーの非酵素的(例えば、構造的)機能又は活性を妨害するテスト化合物の能力も、測定することができる。例えば、表1の1つ又はそれ以上のバイオマーカーを含む多種タンパク複合体の自己集合を、テスト化合物の存在下又は非存在下で、分光法によって測定することができる。また、バイオマーカーが非酵素的な転写増強剤であるなら、転写を増強するバイオマーカーの活性を妨害するテスト化合物を、テスト化合物の存在下又は非存在下におけるインビボ又はインビトロでのバイオマーカーによる転写のレベルを測定することによって同定することができる。
【0174】
表1のバイオマーカーの活性を調節できるテスト化合物を、前立腺癌又はその他の癌に罹っているか又は発症するリスクのある患者に投与することができる。例えば、特定のバイオマーカーの活性が、インビボで前立腺癌に関連するタンパク質の蓄積を防止するならば、特定のバイオマーカーの活性を増加させるテスト化合物の投与は、患者における前立腺癌のリスクを減少させることができる。逆に、バイオマーカーの増大した活性が、前立腺癌の発症に、少なくとも部分的に関与するならば、特定のバイオマーカーの活性を減少させるテスト化合物の投与は、患者における前立腺癌のリスクを減少させることができる。
【0175】
更なる態様では、本発明は、PCIの修飾体の増加したレベルに関連する前立腺癌のような、疾患の治療に有用な化合物を同定する方法を提供する。例えば、一態様では、細胞抽出物又は発現ライブラリーを、PCIの切断型を形成するための全長PCIの切断を触媒的に進める化合物を求めて、スクリーニングできる。このようなスクリーニングアッセイの一態様では、PCIの切断は、タンパク質が切断された場合に蛍光を出すがPCIが切断されていない場合には出さないままのフルオロフォアをPCIに付着させて、検出することができる。また、アミノ酸xとyの間のアミド結合が切断されないように修飾した全長PCIの異形体を、インビボで全長PCIをその位置で切断する細胞プロテアーゼを、選択的に結合又は「捕捉する」ために使用することができる。プロテアーゼ及びその標的をスクリーニングして、同定する方法は、科学文献、例えば、「Lopez-Ottin et al.(Nature Reviews, 3:509-519 (2002))に詳しく解説されている。
【0176】
更なる別の態様では、本発明は、切断型PCIの増大したレベルに関連する、疾患、例えば前立腺癌を治療する、又はその進行若しくは可能性を減少させるための方法を提供する。例えば、全長PCIを切断する1つ又はそれ以上のタンパク質が同定された後に、同定されたタンパク質の切断活性を抑制する化合物を求めて、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることができる。このような化合物を求める化学物質ライブラリーのスクリーニング方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、「Lopez-Otin et al. (2002)」を参照されたい。また、抑制化合物は、PCIの構造に基づいて理論的に表すことができる。
【0177】
PCIのN−末端切断は、PCIのプロテアーゼの抑制活性を減少させると考えられている。例えば、「Abrahamson et al. (Biochem. J. 273:621-626 (1991))」を参照されたい。従って、全長PCIの機能性を有する切断型PCIをもたらす化合物は、PCIの切断型に関連する、前立腺癌のような疾患を治療するのに有用であると思われる。従って、更なる態様では、本発明は、切断型PCIの標的プロテアーゼに対する親和性を増加させる化合物を同定する方法を提供する。例えば、全長PCIのプロテアーゼ抑制の活性を有する切断型PCIをもたらす能力について、化合物をスクリーニングすることができる。次いで、PCIの抑制活性、又はPCIと相互作用する分子の活性を調節できるテスト化合物を、被検者における前立腺癌の進行を遅延又は停止するそれらの能力についてインビボでテストすることができる。
【0178】
臨床レベルでは、テスト化合物のスクリーニングは、被検者がテスト化合物を投与される前後に、被検者からサンプルを得ることを含む。表1に挙げられているバイオマーカーのサンプルでのレベルを測定して、テスト化合物の投与後にバイオマーカーのレベルが変化するか否かを確認することができる。本明細書に記載のように、サンプルを質量分析によって分析するか、又はサンプルを当該技術分野で公知の何れかの適切な方法によって分析することができる。例えば、表1に挙げられているバイオマーカーのレベルを、バイオマーカーに特異的に結合する放射性又は蛍光性標識の抗体を用いるウェスタンブロットによって直接測定することができる。また、1つ又はそれ以上のバイオマーカーをコードするmRNAレベルの変化を測定して、そのテスト化合物の患者への投与と関連付けることができる。更なる態様では、1つ又はそれ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化を、インビトロの方法及び物質を用いて測定することができる。例えば、表1の1つ又はそれ以上のバイオマーカーを発現するか、又は発現できるヒト組織の培養細胞を、テスト化合物と接触させることができる。テスト化合物で治療された被検者を、治療によってもたらされる生理学的効果の何れかについてごく普通に検査することができる。特に、テスト化合物は、被検者における病気の可能性を減少させる能力について評価される。また、テスト化合物が既に前立腺癌であると診断されている被検者に投与される場合は、テスト化合物を、疾患の進行を遅延又は停止する能力についてスクリーニングすることができる。
(実施例)
【0179】
(10.1.実施例1.前立腺癌に関するバイオマーカーの発見)
本明細書に記載の実施例及び態様は、説明の目的のためだけであって、これらを考慮に入れた多種の修飾及び変更が、当業者に示唆されるであろう、そしてこれらが本願の精神及び範囲、及び添付の特許請求の範囲の中に含まれていることは認識されるであろう。本明細書で引用されている、全ての刊行物、特許及び特許出願を、その全てを参照として本明細書に取り込む。
【実施例1】
【0180】
プロテインCインヒビターの同定
3890Daのタンパク質は、CM10アレイを用いるQ画分6中に検出された。示された代表的なプロファイリングスペクトルは、公知の同定されたタンパク質を内部標準として用い再較正された。標的タンパク質の平均分子量(7つのスペクトルから)は、3890.23Daであると計算された(図1)。
【0181】
3890Daのタンパク質は、市販の血清の集団中に存在する(図1,スペクトル「C」)。重要なことには、臨床サンプルとは異なり、市販の血清では、殆ど血小板因子4がなく、その2+イオンが3890Daのタンパク質のイオンとまさに正確に重なっている。市販血清の1mlは、変性条件下で、陰イオン交換クロマトグラフィー(Q HyperD F)を用いて分別された。NP20アレイを用いた有機分画のプロファイルは、3890Daピークの存在を裏付けた(図2)。画分6は、逆相クロマトグラフィーを用いて更に分別された。3890Daのタンパク質は、RPCビーズから、40%のACNで溶出された(図3)。得られた調製液中にPF4が存在しないことが、3890Daピークが本物のタンパク質であって、2+イオンではないことを裏付けている(プロファイリング検討において、PF4の2+イオンが3890Daピークの強度に寄与するということを無視することはできないが)。
【0182】
メチオニンは、中性/アルカリ性のpHで安定である。しかしながら、酸性pHでは、強く酸化される(CM10及びH50アレイプロファイリング、逆相クロマトグラフィー、ACN及びTFAの存在下でのカットオフ膜分別等)。Q画分6からの3890Daタンパク質が、濃縮中に徐々に酸化して(図3及び4)、候補バイオマーカーが1つのメチオニンを含有しているのを示唆することが観察された。
【0183】
SDS−PAGEの精製及びQ画分6(Q−Fr.6)の3890Daピークの直接配列決定の何れも、1mlの血清から濃縮した量では実現できなかった(図3)。本発明者の出発材料に関する最低見積もりでは、参照血清及び臨床サンプルの量は20mLである。
【0184】
pH3以下では、タンパク質をイオン交換樹脂に特異的に結合させて保持することができない(殆どの酸性の仮想タンパク質EEEEEEEEEE及びDDDDDDDDは、それぞれ、pI3.47及び3.08を有する)。過去のプロジェクトから得られた共通の見解は、画分6中で検出されるタンパク質は何れもタンパク質のPIが一致する他のQ画分中にも見い出される(そして、多くの場合はより多い量で)ことである。従って、Q画分を、CM10アレイを用いてプロファイルした。実際に、Qフロースルー(Q-Flow-through)中に、3890Daピークが明確に検出される(図5)。これは、RPCビーズから40%のACNによって、Q画分6「同胞」と殆ど同様に溶出される(図6)。Q−FTの3890Daタンパク質は、Q画分6の3890Daタンパク質と同様に、バイオマーカーが1つのメチオニンを含有しているのを示唆し、精製中に徐々に酸化する(図7)。
【0185】
3890Daタンパク質をQ−TOF MSMSで直接分析した(図8、9)。Mascot search engineを用いる直接データベース検索は成功しなかったので、Protein Prospector toolを用いて、MSMSデータを手作業で読み取った。最も強力なイオンを用いる不作為検索は、余計な候補をもたらした。しかしながら、血漿プロテインCインヒビターの天然C−末端ペプチドである、1つの特定候補が、手動選別基準に一番適合した。この基準は、(1)生理的関連性、(2)メチオニンの数、(3)インビボで生成されるペプチドの意義、(4)個々のイオンに対するm/z値誤差に関する説明、(5)分裂しやすいと予想される部位に基づくイオンの解釈、(6)b−及びy−イオンの対、などである(図9〜14)。
3890Daペプチドについての仮想の候補は、全血清及び抗プロテインCインヒビター抗体を用いて、ビーズベースの免疫測定によって直接確認した(図15)。
【0186】
(引例)
1. Suzuki, K. Protein C inhibitor. Methods Enzymol, 222: 385-399, 1993.
2. Glasscock, L. N., Rehault, S. M.,Gregory, C. W., Cooper, S. T., Jackson, T. P., Hoffman, M., and Church, F. C. Protein C inhibitor (plasminogen activator inhibitor-3) expression in the CWR22 prostate cancer xenograft. Exp Mol Pathol, 79: 23-32, 2005.
3. Suzuki, K., Deyashiki, Y., Nishioka, J., and Toma, K. Protein C inibitor: structure and function. Thromb Haemost, 61: 337-342, 1989.
4. Suzuki, K., Deyashiki, Y., Nishioka, J., Kurachi, K., Akira, M., Yamamoto, S., and Hashimoto, S. Characterization of a cDNA for human protein C inhibitor. A new member of plasma serine protease inhibitor superfamily. J Biol Chem, 262: 611-616, 1987.
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【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、PCIバイオマーカーについての代表的なプロファイリングマススペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図2】図2は、市販血清のPCIバイオマーカーについての代表的なプロファイリングマススペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図3】図3は、Q画分6のRPC分画を用いた代表的なプロファイリングスペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図4】図4は、RPCの40%画分、YM30ろ液及びNP20アレイを用いた代表的なプロファイリングスペクトルを示す。この図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図5】図5は、市販血清のQ画分及びCM10アレイを用いた代表的なプロファイリングマススペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図6】図6は、Qフロースルー(Flow-through)のQ画分及びCM10アレイを用いた代表的なプロファイリングマススペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図7】図7は、Q−FTの繰り返しPRCの1〜40%画分を用いた代表的なプロファイリングマススペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図8】図8は、3890Daタンパク質についての代表的なプロファイリングQ−TOFスペクトルを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図9】図9は、3889m/zイオンについてのMS/MSスペクトルの代表的なプロファイリングを示す。これらの図において、特定のマーカーのマススペクトルピークは、描かれているスペクトルに分子量で示されている。
【図10】図10は、タンパク質探索の検索入力の代表例である。
【図11A】図11は、データベースの検索結果の代表例である。
【図11B】図11は、データベースの検索結果の代表例である。
【図11C】図11は、データベースの検索結果の代表例である。
【図12】図12は、MS/MSデータの代表的な説明である。
【図13】図13は、PCIのアミノ酸配列の説明図である。
【図14】図14は、PCIの理論的な分子量の説明図である。
【図15】図15は、全血清及びヒツジ抗PCI抗体を用いた、ビーズベースの免疫測定結果の説明図である。
【図16】図16は、検出及び検証のための各施設のサンプルセット(Multicenter Sample Sets for Discovery and Validation)から得た代表的なデータである。
【図17】図17は、相関関係のネットワーク分析での発見(Discovery through Correlation Network Analysis)の説明図である。
【図18】図18は、グリーソンスコア、及び良性前立腺疾患と前立腺癌との識別のデータ相関性の説明図である。
【図19】図19は、前立腺癌再発のデータ相関性の説明図である。
【図20】図20は、再発検討のデータセットにおけるPCIの単独検証の説明図である。
【図21】図21は、再発者のサンプルの一部を訓練セットとして用いた、RRP前のPSA、PCI及びC4aの組み合わせの説明図である。
【図22】図22は、再発者のサンプルの一部を試験セットとしての訓練集合として用いた、RRP前のPSA、PCI及びC4aの組み合わせの説明図である。
【図23】図23は、グリーソンスコアが5〜7の前立腺癌患者を、グリーソンスコアが8及びそれ以上の患者から識別するPCIピークのROC分析のグラフによる説明図である。
【図24】図24は、前立腺癌を良性の前立腺疾患の患者から識別するPCIピークのROC分析のグラフによる説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被検者の生体サンプルのPCIバイオマーカーを測定すること、そして
(b)測定結果を前立腺癌の状態と関連付けること、
を含んでなる、被検者の前立腺癌の状態を認定する方法。
【請求項2】
前立腺癌の状態をグリーソンスコアで判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検者の同じ生体サンプルのバイオマーカーC4aも測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)被検者の生体サンプルのPCI及びC4aバイオマーカーを測定すること、そして
(b)測定結果を前立腺癌の再発と関連付けること、
を含んでなる、前立腺癌の再発の可能性を判定する方法。
【請求項5】
バイオマーカーをSELDIプローブの吸着剤表面上に捕獲すること、そして捕獲したバイオマーカーをレーザー脱離−イオン化質量分析で検出することによって、PCIバイオマーカーを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
PCIバイオマーカーを免疫測定で測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
サンプルが血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
関連付けを、ソフトウエア分類アルゴリズムによって実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前立腺癌の状態が、前立腺癌及び非前立腺癌から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前立腺癌の状態が、グリーソンスコアを用いて初期段階1〜後期段階5から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(c)被検者に、上記状態に基づいた治療を実施すること、
を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着剤がIMAC銅吸着剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記吸着剤が生体特異的吸着剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
測定結果が前立腺癌と関連付けられる場合、被検者へのPCI拮抗薬の投与を包含する治療を被験者に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(d)被検者の治療後に少なくとも1つのバイオマーカーを測定すること、そして測定結果を疾患の進行と関連付けること、
を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(a)被検者の生体サンプルのPCIバイオマーカーについて、第1回目の測定を行うこと、
(b)被検者の生体サンプルのPCIバイオマーカーについて、第2回目の測定を行うこと、そして
(c)第1回目の測定結果と第2回目の測定結果を比較すること、
を含んでなり、その比較測定結果が前立腺癌の経過を判定する、前立腺癌の経過を判定する方法。
【請求項17】
精製PCIを含んでなる、組成物。
【請求項18】
PCIに特異的に結合する生体特異的捕獲剤を含んでなる、組成物。
【請求項19】
生体特異的捕獲剤が抗体である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
生体特異的捕獲剤が固体担体に結合している、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
PCIに結合している生体捕獲剤を含んでなる、組成物。
【請求項22】
(a)PCIに結合する捕獲剤の少なくとも1つが付着している固体担体、及び
(b)PCIの検出に当該固体担体を使用するための使用説明書、
を含んでなる、キット。
【請求項23】
PCIの検出に当該固体担体を使用するための使用説明書を含んでなる、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
PCIの検出に当該固体担体を使用するための使用説明書を含んでなる、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
捕獲剤を包含する固体担体がSELDIプローブである、請求項21、22又は23の何れか一項に記載のキット。
【請求項26】
捕獲剤がIMAC銅吸着剤である、請求項21、22又は23の何れか一項に記載のキット。
【請求項27】
(c)PCIバイオマーカーを含有する容器、
を更に含んでなる、請求項21、22又は23の何れか一項に記載のキット。
【請求項28】
(c)免疫特異的クロマトグラフィー吸着剤、
を更に含んでなる、請求項21、22又は23の何れか一項に記載のキット。
【請求項29】
(a)PCIに結合する捕獲剤の少なくとも1つが付着している固体担体、及び
(b)PCIバイオマーカーを含有する容器、
を含んでなる、キット。
【請求項30】
(c)免疫特異的クロマトグラフィー吸着剤、
を更に含んでなる、請求項26に記載のキット。
【請求項31】
a.サンプルのPCIバイオマーカーの測定結果を包含する、サンプルのデータにアクセスするコード、及び
b.測定結果に応じてサンプルの前立腺癌状態を分類する、分類アルゴリズムを実行するコード、
を含んでなる、ソフトウェア製品。
【請求項32】
分類アルゴリズムが、バイオマーカーPCIの測定結果に応じてサンプルの前立腺癌状態を分類する、請求項31に記載のソフトウェア製品。
【請求項33】
分類アルゴリズムが、更に分子量の測定結果に応じてサンプルの前立腺癌状態を分類する、請求項31に記載のソフトウェア製品。
【請求項34】
バイオマーカーPCIを、質量分析又は免疫測定によって検出することを含んでなる、方法。
【請求項35】
被検者の生体サンプルのバイオマーカー(このバイオマーカーは、PCI及びC4aよりなる群から選ばれる)の関連性から判断される前立腺癌状態に関する診断結果を被検者に伝達することを含んでなる、方法。
【請求項36】
診断結果を、コンピュータ処理媒体を介して被検者に伝達する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(a)PCIをテスト化合物と接触させること、そして
(b)テスト化合物がPCIと相互作用するか否かを測定すること、
を含んでなる、PCIと相互作用する化合物を同定する方法。
【請求項38】
(a)細胞を、PCIの発現を抑制する小分子と接触させること、
を含んでなる、細胞のPCI濃度を調節する方法。
【請求項39】
被検者に、PCIの発現を抑制する小分子の治療有効量を投与すること、
を含んでなる、被検者の症状を治療する方法。
【請求項40】
前記症状が前立腺癌である、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2009−509169(P2009−509169A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532326(P2008−532326)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/036538
【国際公開番号】WO2007/035766
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】