説明

前立腺癌の進行を予防または減退させるのに有効な組成物

前立腺癌の進行を予防または減退させる緑茶抽出物およびザクロ抽出物を活性成分として有する組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌の進行を予防または減退させるのに有効な組成物に関連する。
【0002】
とくに、本発明は組成物に関連し、この組成物は、前立腺がんの進行を予防または減退させるのに有効な、緑茶またはザクロ抽出物の活性成分を有する。
【背景技術】
【0003】
前立腺癌は、哺乳類、とくに西洋諸国のヒトの男性に最も一般的な癌である(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
種々の要因、例えば未知の病因論、変化しやすい病理学、内分泌因子との錯綜した関係性、および未分化進行がこの疾患の複雑性に関与する。
【0005】
ウィスコンシン州マディソンのウィスコンシン大学およびオハイオ州クリーブランドのケース・ウエスタン・リザーブ大学からの研究者チームは、ヒト前立腺癌に関するマウスモデルの前立腺腫瘍細胞におけるインスリン様成長因子(IGF−1)で前駆される分子の代謝経路を調節調整する緑茶ポリフェノール(GTP)の役割を立証した。これらの観察は、IGF−1のレベルがどのように増加したら前立腺癌、乳癌、肺癌および大腸癌等いくつかの癌発生リスクを高めることに関連するかの研究で重要である。緑茶ポリフェノールは、前立腺癌マウスモデルの血清における血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の量を抑制することによって腫瘍の進展を最小限にする。VEGFの減退は、IGF−1レベルのGTPで誘発される抑制による結果と考えられる。VEGFは、腫瘍を進展させる栄養分を運搬する新生血管の形成および発達させる機能を有する。VEGFの量を減退させることによって、GTPは栄養分の流入および腫瘍成長支援を最小限にするよう作用する。
【0006】
臨床的癌研究において、非特許文献2はザクロ抽出物が前立腺癌の進行の予防または減退に有効であることを報告した。
【0007】
非特許文献3は、リコピンが前立腺癌の進行の予防または減退に有効であることを報告した。
【0008】
特許文献1(国際公開第00/57892号)は、セレノアが前立腺癌の治療に有効であることを報告した。
【0009】
特許文献2(国際公開第03/035635号)は、イソフラボノイド誘導体が前立腺癌の治療に有効であることを報告した。
【0010】
特許文献3(国際公開第04/091602号)は、L−カルニチンが循環器疾患の治療に有効であることを報告した。
【0011】
ヒトにおけるセレンは、グルタチオンペルオキシダーゼ等の抗酸化酵素の減退に対する共同因子として機能する微量(痕跡)元素栄養分である。食物のセレンは、ナッツ、穀物、肉、魚および卵から得られる。「栄養的癌予防プロジェクト」(NPC)は、制御されたランダムな癌予防試験であり、1312人の患者に対して最長10年間にわたりセレンまたはプラシーボを毎日200μg服用させた。この研究において、前立腺癌の発症および前立腺癌進行に関して統計的に有意な減退が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第00/57892号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/03535号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/091602号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cancer Statistics 1997, CA Cancer J. Clin. 1997; 47; 5-27
【非特許文献2】pp 4018-4026 and Clinical Cancer Research Vol. 12, 4018-4026, July 1 , 2006
【非特許文献3】Prostate Cancer and Prostatic Diseases (2002) 5, 6- 12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
緑茶およびザクロ抽出物の抗発癌効果は既に既知であるが、上述の先行技術はどれも前立腺癌の進行を予防または減退するためにこれらの2つの活性成分を組み合わせて使用することに関しては陳述も提案もしていない。
【0015】
さらに、腫瘍の化学療法に利用できる他の活性成分があり、また他の侵襲的な治療であって、癌性前立腺の除去または腫瘍を収縮させるよう設計した放射性シードの留置等の前立腺癌に対する侵襲的治療があるが、患者にとって伝統的な低毒性の治療薬の添加物または補完物として有効な組成物を服用することがより望ましく、それは前立腺癌に対する抗発癌剤として機能する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的の一つは、緑茶抽出物およびザクロ抽出物の活性成分を有する相乗効果的組成物である。
【0017】
上述の組成物は、さらに、リコピン、セレン、亜鉛、セレノア、イソフラボノイド誘導体およびL−カルニチンを有するものとする。
【0018】
本発明のさらなる目的は、
(a)活性成分として、25〜800mg、好ましくは125および250mgの服用量緑茶抽出物
(b)活性成分として、服用量が25〜800mg、好ましくは40,125および250mgの服用量ザクロ抽出物
(c)服用量が0.03〜30.0mg、好ましくは1.25および5mgのリコピン
(d)服用量が8.2〜500μg、好ましくは55および82.5μgのセレン
(d)服用量が1〜200mg、好ましくは20mgの服用量亜鉛
(e)服用量が10〜400mg、好ましくは160および320mgのセレノア
(f)服用量が10〜500mg、好ましくは100mgのイソフラボノイド誘導体(大豆イソフラボン)および
(g)服用量が50〜500mg、好ましくは200mgのL−カルニチン
を有する組成物を得るにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、前立腺癌の進行を予防または減退する上述した組成物の使用方法を得るにある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、前立腺癌の進行を予防または減退する薬剤を調合する上述した組成物の使用方法を得るにある。
【0021】
本発明のさらなる目的は、前立腺癌の進行を予防または減退する栄養補助食品を調合する上述した組成物の使用方法を得るにある。
【0022】
本発明の組成物は、さらに、コエンザイム、ミネラル物質、抗酸化剤、ビタミンおよび前立腺癌の治療に有効な薬剤を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下は本発明をさらに説明するための非制限的な実施形態を示す。
【実施例1】
【0024】
以下において報告した実験として、ヒト前立腺癌細胞株LNCaPおよびPC3(American Type Culture Collection Rockville, MDから入手した)を用いた。
【0025】
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを追加したRPMI 1640培地(Life Technologies, Rockville, MD)において培養した。細胞は、37°Cで空気中濃度5%のCO2を含む加湿環境において培養した。両方の細胞培養セットは、10cm組織培養フラスコにおいて80%まで密集成長し、1:8に分裂した。細胞を96細胞プレートに置き、実験に用いる前に付着させて60〜70%まで密集成長させた。
【0026】
試験管内細胞成長に対する効果
LNCaPおよびPC3細胞の培養セットを、緑茶抽出物(PBS中40μg/ml)、ザクロ抽出物(PBS中40μg/ml)またはその組み合わせ(緑茶抽出物およびザクロ抽出物の両方)のいずれかによって完全な細胞培地を含む10ウェルにおいて処理した。対照実験として使用する細胞は、完全な細胞培地における同量のPBSで培養した。リコピン(5mmol/L)、セレン(30ng/ml)、亜鉛(10μg/ml)、セレノア(10μg/ml)、および大豆イソフラボン(10μg/ml)の効果も、細胞培養にそれらを単独で、または緑茶抽出物およびザクロ抽出物と組み合わせて加えることによって試験した。細胞の細胞増殖は、37°Cで検査薬ありまたはなしで24時間培養後3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)比色分析を用いて測定した。MTT(5ng/ml)をすべてのウェルに加え、さらに2時間培養した。その後、プレートを500×gで5分間4°Cの温度下において遠心分離した。MTT溶液を注意深く吸引することによってウェルから除去し、緩衝DMSO(0.1ml)を各ウェルに加え、プレートを15分間振動させた。吸光度を540nmの波長でマイクロプレートリーダー上において測定した。各化合物のみおよび組み合わせのそれぞれの細胞成長効果を、細胞生存の割合(パーセンテージ)として分析し、この細胞生存は、未処理の対照実験細胞が完全に生存し自由に成長することができる細胞とみなすものである。
【0027】
得られた結果を以下の表1〜4において報告する。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
表1,2,3および4において報告した結果は、本発明の組成物が単一の構成素に関して統計的に活性が高いことを示す。
【0033】
さらに、リコピン、セレンおよび亜鉛またはセレノア、大豆イソフラボンおよびL−カルニチンは、本発明の組成物の阻害活性を増加させない。
【実施例2】
【0034】
25mlの培養フラスコにおけるLNCaPおよびPC3細胞を、緑茶抽出物(PBS中40μg/ml)、ザクロ抽出物(PBS中40μg/ml)、セレン(10μg/ml)、大豆イソフラボン(10μg/ml)または緑茶抽出物プラスザクロ抽出物の組み合わせのいずれかで処理した。
【0035】
対照はPBSのみとした。処理は、付着させた後48時間後に開始した。細胞は、フローサイトメトリによって分析する前に最長72時間培養で成長させた。細胞は、10mMブロモデオキシウリジン(BrdU)を2時間緑茶抽出物およびザクロ抽出物で処理する前に同位体でラベル付けし、共に非同期で成長する細胞とした。その後、細胞を播種し、70%エタノールで固定し、0.1%HClで処理し、10分間90°Cで加熱し、ラベル付けDNAを露呈させた。細胞を抗BrdU共役FITC(Becton Dickinson)で染色し、ヨウ化プロピジウムで対向染色した。細胞サイクル分析を、LysisIIソフトウェアを用いてBecton−Dickinson FACScan上で行った。
【0036】
単一成分に対する本発明の組成物を用いて得たフローサイトメトリ分析の結果を以下の表において報告する。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
【表13】

【0046】
【表14】

【0047】
単独化合物の使用は、LNCaPおよびPC3細胞の両方の増殖における阻害を示す(表5〜8および10〜13参照)。表9および14において報告した結果は、本発明の組成物組み合わせがLNCaPおよびPC3細胞の両方における増殖の阻害に対する予期しなかった相乗効果をもたらすことを示す。72時間持続したS相において停止した細胞株は、LNCaPおよびPC3株に対してそれぞれ最大値60.9%および54.8%である。
【0048】
細胞分裂または成長停止への効果は、媒体で処理した対照実験において観察されなかった。
【実施例3】
【0049】
試験管内抗腫瘍活性
本発明による組み合わせの抗腫瘍活性を評価するため、固形腫瘍株LNCaP(ATCC)を用いた。
【0050】
細胞をヌードマウスにおいて5〜6回培養した。この株の固形癌フラグメント(3mm平方)を、nu−nuヌードマウス8週齢の雄マウス(NxGen Bioscience, San Diego, CA)の脇窩部の皮膚下に移植した。腫瘍を確実に取ったマウス(約20日後)をそれぞれ10匹の4群にランダムに振り分けた。動物群を、媒体、緑茶抽出物、ザクロ抽出物または緑茶抽出物およびザクロ抽出物の組み合わせで処理した。対照実験の群における動物は、水のみ飲み、連続する28日間に関して1日1回朝に飲用水に1%(w/v、リチウム入り)緑茶抽出物およびザクロ抽出物またはそれら組み合わせを服用させた。腫瘍の径を2週間に1回測定し、腫瘍体積を式0.5238L1L2Hを用いて計算し、L1は長径、L2は短径およびHは腫瘍の高さである。すべての動物は、対照実験の動物に対して1300mm前後に到達した後安楽死させ、それは約28日後であった。
【0051】
結果(平均およびSE)は、28日目の腫瘍体積が対照実験群において1305±87であったが、緑茶およびザクロ抽出物で試験した群において値はそれぞれ1026±98(p<0.05)および1011±91(p<0.05)であった。一方、組み合わせの処理(緑茶+ザクロ抽出物)においては腫瘍減退の明らかな相乗効果があり、623±112(p<0.001)であった。したがって、阻害は、緑茶(21.4%)およびザクロ(22.5%)のみと比較して組み合わせによって52.3%であった。
【0052】
得られた結果を表15において示し、本発明の組成物は単独構成素に対して統計的により活性が高いことを示す。
【0053】
【表15】

【0054】
本発明に従った栄養補助食品または薬剤は、製薬分野における操作者によく知られすでに臨床で用いられている活性成分から成り、それらの薬学毒物学的プロフィールは知られている。
【0055】
したがって、それらの調達は非常に容易であり、同じ理由でこれらは現在長く市場にありヒトまたは動物に服用させるのに適切である製品である。
【0056】
以下において、本発明による組成物の非限定的な実施例を報告する。
【0057】
組成物1
緑茶抽出物 250mg
ザクロ抽出物 250mg
組成物2
緑茶抽出物 250mg;
ザクロ抽出物 250mg;
リコピン 1.25mg;
セレン 82.5μg;
亜鉛 20mg
組成物3
緑茶抽出物 125mg;
ザクロ抽出物 125mg;
リコピン 5mg;
セレン 82.5μg;
亜鉛 20mg;
セレノア 160mg;
大豆イソフラボン 100mg
組成物4
緑茶抽出物 125mg;
ザクロ抽出物 40mg;
リコピン 5mg;
セレン 55μg;
亜鉛 20mg;
セレノア 320mg;
大豆イソフラボン 100mg
組成物5
緑茶抽出物 125mg;
ザクロ抽出物 125mg;
リコピン 5mg;
セレン 82.5μg;
亜鉛 20mg;
セレノア 160mg;
大豆イソフラボン 100mg;
L−カルニチン 200mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として緑茶抽出物およびザクロ抽出物を含む組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、さらに、リコピン、セレン、亜鉛、セレノア、大豆イソフラボンおよびL−カルニチンを含む組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、緑茶抽出物は25〜800mgの服用量で存在し;ザクロ抽出物は25〜800mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の組成物において、リコピンは0.03〜30.0mgの服用量で存在し、セレンは8.2〜500μgの服用量で存在し、亜鉛は1〜200mgの服用量で存在し、セレノアは10〜400mgの服用量で存在し、大豆イソフラボンは10〜500mgの服用量で存在し;L−カルニチンは50〜500mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物において、緑茶抽出物は250mgの服用量で存在し、ザクロ抽出物は250mgの服用量で存在し、リコピンは1.25mgの服用量で存在し、セレンは82.5μgで存在し、亜鉛は20mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項6】
請求項2に記載の組成物において、緑茶抽出物は125mgの服用量で存在し、ザクロ抽出物は125mgの服用量で存在し、リコピンは5mgの服用量で存在し、セレンは82.5μgで存在し、亜鉛は20mgの服用量で存在し、セレノアは160mgの服用量で存在し、大豆イソフラボンは100mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の組成物において、緑茶抽出物は125mgの服用量で存在し、ザクロ抽出物は40mgの服用量で存在し、リコピンは5mgの服用量で存在し、セレンは55μgで存在し、亜鉛は20mgの服用量で存在し、セレノアは320mgの服用量で存在し、大豆イソフラボンは100mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項8】
請求項2に記載の組成物において、緑茶抽出物は125mgの服用量で存在し、ザクロ抽出物は125mgの服用量で存在し、リコピンは5mgの服用量で存在し、セレンは82.5μgで存在し、亜鉛は20mgの服用量で存在し、セレノアは160mgの服用量で存在し、大豆イソフラボンは100mgの服用量で存在し、L−カルニチンは200mgの服用量で存在する、組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の組成物において、前立腺癌の進行を予防または減退させるための、組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の組成物の使用において、前立腺癌の進行を予防または減退させるための薬剤を調合する、組成物の使用。
【請求項11】
請求項1または2に記載の組成物の使用方法において、前立腺癌の進行を予防または減退させるための栄養補助食品を調合するための、組成物の使用方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の使用において、さらに、コエンザイム、ミネラル物質、抗酸化物質、ビタミンおよび前立腺癌を治療するのに有効な薬剤を含む、使用。

【公表番号】特表2011−529465(P2011−529465A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520438(P2011−520438)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059531
【国際公開番号】WO2010/012651
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】