説明

前立腺肥大抑制ならびに男性ホルモン様作用抑制剤

【課題】 前立腺肥大抑制作用ならびに男性ホルモン様作用抑制作用を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することにある。
【解決手段】 cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする前立腺肥大抑制ならびに男性ホルモン様作用抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前立腺肥大抑制および男性ホルモン様作用抑制を目的とした組成物、及び該組成物を含む飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺は男性ホルモン依存的に肥大することが知られている。60歳を過ぎたころから前立腺は肥大し、半数以上の男性が夜間頻尿、放尿力の低下などの症状を訴えるようになり、高齢の男性にとっては深刻な問題になっている。現在、前立腺の改善食材としてノコギリヤシ、カボチャの種子エキス、医薬品としてはα1−ブロッカー、抗アンドロゲン剤が用いられているが、選択肢が少ないため新たな前立腺肥大を抑制する食品や医薬品の開発が望まれている。
【0003】
cycloeucalenoneは化1に示される物質である。本発明以前の時点で、cycloeucalenoneが前立腺肥大を抑制するという報告はまったく無い。また、男性ホルモン様作用を抑制するという報告もまったく無い。
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前立腺肥大抑制作用および男性ホルモン様作用抑制を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体に顕著な前立腺肥大抑制作用ならびに男性ホルモン様作用抑制作用があることを見出した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする前立腺肥大抑制組成物。
(2)cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする男性ホルモン様作用抑制組成物。
(3)上記(1)(2)に記載の組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする前立腺肥大抑制組成物ならびに男性ホルモン様作用抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に関わるcycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体は、合成物または天然抽出物からの精製により得たものを用いてもよく、これらを含む天然抽出物を用いることもできる。これらを含む天然物の例としてはバナナの果皮が挙げられる。
【0008】
本発明に関わる前立腺肥大抑制剤ならびに男性ホルモン様作用抑制剤を製造するには、上記の方法で製造したcycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体、またはバナナの皮の成分を用いることができ、常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせて製剤化すればよい。本発明に関わる前立腺肥大抑制剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳化剤等の液剤、凍結乾燥剤等があげられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、でんぷん、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルでんぷん、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。本発明に関わる前立腺肥大抑剤において、cycloeucalenoneの投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択、決定されるが、例えば、一日当たり0.01−100g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【0009】
本発明に関わるcycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体は、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品等として用いることができる。機能性食品としては、例えば、cycloeucalenoneに適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した状態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この飲食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子など)に添加して使用したり、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲物に添加して使用してもよい。かかる食品の形態における本発明のcycloeucalenoneの摂取量は、年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、例えば、一日当たり0.01−100g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0010】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0011】
実施例1 cycloeucalenoneの前立腺肥大抑制作用
cycloeucalenoneの前立腺肥大抑制効果を調べるために以下の実験を行った。7週齢雄ddYマウス(n=5)の精巣を摘出して、バナナの果皮から単離したcycloeucalenone(0.5mg/kg)を0.2mlの蒸留水に溶かしたものを経口投与した。同時に男性ホルモンとしてプロピオン酸テストステロン(2.0mg/kg)を0.1mlのコーン油に溶解させたものを腹腔内投与した。これを一日一回、2週間行い最終投与の翌日に解剖して、前立腺の短径と長径の大きさを測定した。その結果を表1に示す。また同時に精嚢腺を摘出して重量を測定した。その結果を表2に示す。ここでA群(コントロール)は精巣摘出したものにプロピオン酸テストステロンのみ投与、B群は精巣摘出したものにプロピオン酸テストステロンとcycloeucalenoneを投与したものである。
それぞれの値は平均値±標準誤差を示す。有意差検定はstudentのt−testによって行った。***はコントロールに対しp<0.005を示す。
【表1】

【表2】

【0012】
表1の結果より、コントロールに対してcycloeucalenoneは男性ホルモンによる前立腺の肥大を顕著に抑制することが示された。表2の結果より、コントロールに対してcycloeucalenoneは精嚢腺重量の増加を抑制することが示された。この結果からcycloeucalenoneは前立腺肥大抑制作用を有することが示唆された。
【0013】
実施例2 ステロール誘導体の前立腺肥大抑制作用
ステロール誘導体の前立腺肥大抑制効果を調べるために以下の実験を行った。7週齢雄ddYマウス(n=5)の精巣を摘出して、市販のcampesterol、stigmasterol、β−sitosterol、およびバナナの果皮から単離したcycloeucalenone(各0.6mg/kg)を0.2mlの蒸留水に溶かしたものを経口投与した。同時に男性ホルモンとしてプロピオン酸テストステロン(2.0mg/kg)を0.1mlのコーン油に溶解させたものを腹腔内投与した。これを一日一回、2週間行い最終投与の翌日に解剖して、精嚢腺を摘出して重量を測定した。その結果を%表示したものを表2に示す。ここでのコントロールは、精巣摘出したマウスにプロピオン酸テストステロンを投与したものである。
それぞれの値は平均値±標準誤差を示す。有意差検定はstudentのt−testによって行った。*および***はコントロールに対してp<0.05およびp<0.005を示す。
【表3】

【0014】
表3の結果より、コントロールに対して各種ステロール誘導体は男性ホルモンによる前立腺の肥大を顕著に抑制することが示された。この結果からステロール誘導体は、前立腺肥大抑制作用を有することが示唆された。
【0015】
実施例3 cycloeucalenoneの男性ホルモン様作用抑制作用
バナナの葉に含まれるステロール誘導体のうち最も含有量の高いcycloeucalenoneを単離し、男性ホルモン様作用抑制作用すなわち抗アンドロゲン作用を有することを調べるために以下の実験を行った。アンドロゲン依存的に増殖することが知られているヒト前立腺ガン由来LNCaP細胞にアンドロゲンを添加し、一定期間培養することで増殖した細胞数の割合を調べた。アンドロゲンの非存在下で7日間培養した場合、細胞数は1.5倍程度に増加するが、アンドロゲンとしてテストステロン(T)2mg/ml添加では約3倍程度にまで増加する。生細胞数はMTT処理により細胞内に生じたホルマザン色素を吸光度計で測定(550nm)することにより算出した。サンプルをアンドロゲンと同時に添加した際の細胞増殖率の変化により、サンプルの抗アンドロゲン作用を評価した。結果を表4に示したとおり、サンプルとしてcycloeucalenone(6μg/ml)を添加した場合には、細胞の増力率を有意に抑制したことから、cycloeucalenoneには抗アンドロゲン様作用があることが示された。男性ホルモン依存性脱毛は男性ホルモン抑制作用すなわち抗アンドロゲン作用により抑制できることが知られていることから、抗アンドロゲン作用を有するcycloeucalenoneが男性ホルモン依存性脱毛の抑制剤としても使用可能であることが明らかである。
【表4】

【0016】
cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体の前立腺肥大抑制作用は,その化学構造がテストステロンに類似することからテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素5αリダクターゼの阻害によることが容易に推定できる。該酵素の阻害作用を有する化合物は,既存の男性ホルモン作用抑制剤として男性型脱毛症の改善剤としても利用されていることからcycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体またはこれを含む組成物もこれらの作用を有する飲食物、動物飼料、化粧品または医薬品としても応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明により、cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする前立腺肥大抑制組成物ならびに男性ホルモン様作用抑制組成物及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする前立腺肥大抑制組成物。
【請求項2】
cycloeucalenoneをはじめとするステロール誘導体を含有することを特徴とする男性ホルモン作用抑制組成物。
【請求項3】
上記(1)、(2)に記載の組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品。

【公開番号】特開2011−207861(P2011−207861A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91748(P2010−91748)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(500094015)株式会社 ヒロインターナショナル (4)
【Fターム(参考)】