説明

前赤血球段階のマラリアのポリペプチド分子

【課題】前赤血球段階に特異的な新規ポリペプチド分子、および抗マラリアワクチンの活性成分としてのそれらの使用、あるいは該疾病の診断方法の提供。
【解決手段】ポリペプチド(I)を除く、特定な配列からなる、LSA-3抗原を表すアミノ酸配列のアミノ酸を少なくとも10個連続して含有するポリペプチド分子。−RDELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQVNDDIFNSLVKSVQQEQQHNVEE−VEESVEENDEESVEENVEENVENNDDGSVASSVEESIASSVDESIDSSIE−ENVAPTVEEIVAPTVEEIVAPSVVEKCAPSVEESPATSPEESPAEMLKER(729S)(I)

【発明の詳細な説明】
【技術の開示】
【0001】
ヒトにマラリアを引き起こす原因となる寄生虫は、ヒト宿主内で様々な形態を示し、体内の部位によって異なる抗原を発現する。人体中でのライフサイクルにおける、これらの寄生虫の形態学的差異および抗原的差異によって、肝臓内での発育および血液内での発育という異なる段階を定義することが可能となる。媒介動物である蚊によって注入される、感染性の形態であるスポロゾイトは、宿主の肝臓内で急速にシゾントに変化し、その後、赤血球に感染する。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の肝臓内への局在は、この発育段階に特異的な、一群の抗原の発現となって現れ、通常本疾病に感染した場合、きわめて高い免疫原性を示す状態となる。実験的に、極めて強力な殺菌性の免疫をヒトに誘導し得るのは、現在では、臨床的所見がみられない本段階に対してのみであり、肝細胞に侵入して発育することはできるが、本疾病の血液段階にまでは到達できないような放射線照射したスポロゾイトを注射することによって誘導される。それ故、発明者は、これら2つの前赤血球段階に対して、努力の大部分を集中してきた。しかし、生物学的試料を得るのが困難、あるいは不可能でさえあるため、これらの段階は、研究が最も困難な段階でもあり、それ故、最も理解されていない。唯一のインビトロモデルは極めて低い収量しか与えず、使用に限界があり、値段も高価なチンパンジーが、現在でも最も好適な動物モデルである。
【0002】
本発明者は、前赤血球段階の抗原についての手がかりを得るために、本疾病が風土病であるような地域に25年間居住している者であって、常にクロロキンによる予防を行ってきた人々の血清を用いた。これらの人々は全て、感染した蚊に継続的に刺されていたが、完全な血液感染には至らなかった。このように、彼らの血清は、本質的に、前赤血球段階に対して誘導された抗体を含んでいるが、これは3つの段階の寄生虫に対する免疫蛍光、およびウェスタンブロッティングによって確認された。
【0003】
ラムダファージgt11(ロザリオ(V. Rosario)の「Science」 212、1981、1037-1038ページ;およびタイソングら(Thaithong)の「Transactions of Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene」、1984、78:242-245ページ)の中の発現ベクター中に構築した、熱帯熱マラリア原虫の寄生性クローンのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするためにこれらの血清を用いることによって、前赤血球段階のポリペプチド、とりわけEP A-0 ,407,230に記載されているSALSA(スポロゾイト肝臓段階抗原;sporozoite liver stage antigen)ポリペプチド、およびWO 92/13884に記載されているLSA-1(肝臓段階抗原;liver stage antigen)が見出された。本発明は、前赤血球段階に特異的な新規ポリペプチド分子、および抗マラリアワクチンの活性成分としてのそれらの使用、あるいは該疾病の診断方法におけるそれらの使用に関する。
【0004】
本発明は、本発明者がLSA-3と称される抗原およびその断片の特別な性質を実証した結果であり、それらは、以下の理由によって、抗マラリアワクチン産生用の候補物質として、非常に有望であると思われる:
a)チンパンジーを免疫化するために、寄生虫の同一発育段階における他の抗原(LSA-1など)とともに、LSA-3の一部を用いると、両分子またはLSA-3のみに応答している動物の血液中には寄生虫が存在せず、肝臓内の寄生虫がかなり減少し、且つ細胞免疫に関する応答の指標である単球が活発に動員されている徴候を示し;
b)本疾病が風土病である地域では、スポロゾイトによる天然感染から免れている者と、彼らの抗LSA-3抗体に関する応答との間には、極めて明確な相関が観察され;
c)放射線照射したスポロゾイトを注射して免疫化されたボランティア8人のうち、スポロゾイト感染が起こらなかった4人には、LSA-3に対して誘導された抗体が各人に見出されているが、血液感染が生じた残りの4人のボランティアには、何れも抗体は見出されていない;
d)既述したWO 92/13884中のペプチドDG729に対して産生された抗体は、マウスモデルでの探索を十分に可能にする、マウスの寄生虫「P. yoelii」のスポロゾイトおよび肝臓段階のものと交叉反応をする。インビトロでは、DG729で免疫精製したヒトの抗体は、極めて低濃度でも、「P. yoelii」のスポロゾイトがマウス肝細胞中に侵入するのを阻止する。インビボでは、DG729で免疫化されたマウスは、「P. yoelii」のスポロゾイトによる感染から、完全にまたは部分的に免れる;
e)最後に、いくつかのエピトープ、特に分子の非反復部位中のエピトープは、単球によるインターフェロンγの分泌を刺激し、該伝達物質によって、寄生虫の肝臓内での発育を阻害することが可能となる(メロウクら(Mellouk S. et al.)、The Jour. Of Immun. 139、4192-4195、1987);
f)LSA-3の中で(リポ)ペプチドNR2に相当する領域の配列が、27サンプルで分析された:実験室の株(NF54, K1, Palo Alto, T9/96)が4つ、マダガスカル分離株が3つ、ビルマ分離株が3つ、ブラジル分離株が5つ、象牙海岸からの分離株が7つ、タイ分離株が5つである。分析された300塩基の中には突然変異は見られず、すなわち1以上のB、Th、およびCTLエピトープが含まれる、免疫学的に重要な本領域は100%保存されていた;
g)クローンT9/96から入手し得る配列(630アミノ酸)の疎水性クラスタープロットによって、抗原の構造、特にREペプチドの構造に関する情報、とりわけ該REペプチドをデザインし、且つ1以上の主要Bエピトープを含有する中央反復領域に関する情報が得られた。(ガボリオットら(Gaboriot et al.)、(1987):疎水性クラスター分析:アミノ酸配列を比較、分析するための、効率的な新方法、FEBS Letters、224:149-155);この方法から、α-ヘリックス構造を形成する傾向が、非常に強いことが予想される。該反復領域は、バリンおよびイソロイシン残基の間に、酸性残基またはプロリン残基が交互に存在するという、顕著な規則性を示す。該ヘリックスの表面に、疎水性基が配置されているということは、該分子の全体に沿った、一定の方向に従って、疎水性境界が、あるヘリックス表面から別の表面へ徐々にシフトしていることを想起せしめ、クローンDG729のペプチド配列のHCP(hydrophobic cluster plot)を図示する図4bに見られるように、おそらくコイル-コイル構造またはパッケージングに関わっている;
h)LSA-3抗原に対する免疫応答が極めて多岐にわたるということを実証した後、我々は、肝臓中の寄生虫周辺に局在し得るという、応答性細胞(responder cell)の能力について分析した。組換え抗原で免疫化したマウスでは、10μmのポリスチレンビーズに吸収させた各ペプチドを門脈内注射することによって、48時間後には、抗原(寄生虫を模倣している)周囲へリンパ球が集中し、その後5日目には、マクロファージ系に属する細胞によって、強力な補強が起こるのが観察される。
【0005】
これらの性質は全て(このうちのいくつかは、後述する実験中で、詳細に示される)、LSA-3抗原が良好な抗原性および免疫原性を表すということを示している。
【0006】
本発明者は、それぞれの段階における分子発現の特異性を確認して、明らかにすることができた;スポロゾイトでは、数種の株および分離株に表面免疫蛍光を行うことによって、発現を確認した。ウェスタンブロット(またはイムノブロット)分析によれば、LSA-3分子は、分子量200,000ダルトンのタンパク質であると思われる。スポロゾイトのメッセンジャーRNAは、ノーザンブロット分析ができるほど十分な量は得られず、リバースPCR実験によって、LSA-3がこの段階で発現していることを確認した。被感染肝細胞では、該タンパク質の反復領域および非反復領域に対する抗体を用いた免疫蛍光、および電子顕微鏡によって、寄生虫の寄生虫移動用液胞(parasitophorous vacuole)内にLSA-3が観察された。
【0007】
729Sと表示されるLSA-3断片は、非反復部位中に含まれ、NRIおよびNRIIと表示されるペプチド、並びに反復部位中に含まれる729Rの3つのペプチドとともに、WO 92/13884出願中に記載されている。しかしながら、この文献では、上述した特性について、あるいはワクチンとしての使用において非常に優れた性質を示す可能性がある、これらの断片に含まれるまたは結合される、さらに長いもしくは短い、他のLSA-3断片については言及していない。
【0008】
本発明の主題は、以下のポリペプチド:
−RDELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQVNDDIFNSLVKSVQQEQQHNVEE
−VEESVEENDEESVEENVEENVENNDDGSVASSVEESIASSVDESIDSSIE−
ENVAPTVEEIVAPTVEEIVAPSVVEKCAPSVEESVAPSVEESVAEMLKER
(729S)
−RDELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQVNDDIFNSLVKSVQQEQQHN
−DELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQ, (NRI)
−LEESQVNDDIFSNSLVKSVQQEQQHNV, (NRII)
−VESVAPSVEESVAPSVEESVAENVEESV. (729RE)
を除く、図2に示されている配列認識番号2で表され、LSA-3を表示しているアミノ酸配列のうち、少なくとも10の連続したアミノ酸を含有するポリペプチド分子である。
【0009】
本発明による他の分子には、少なくとも20または50の連続したアミノ酸が含まれる。
【0010】
これ以後常に、この1群のポリペプチドおよびLSA-3分子を「本発明のポリペプチド」という。
【0011】
実験結果、および種々の熱帯熱マラリア原虫分離株間での非反復配列の比較により、肝臓段階の寄生虫の等価な抗原間では、少なくとも70%の相同性が存在することが示されている。従って、K1のアミノ酸140〜159、またはT9/96のアミノ酸23〜42間に存在する以下の配列:
Leu Leu Ser Asn Ile Glu Glu Pro Lys Glu Asn Ile Ile Asp Asn Leu Leu Asn Asn Ile (CT1)
と少なくとも70%以上の相同性を示すペプチド分子と同様に、先に明示した分子の何れかと少なくとも70%以上の相同性を示すペプチドは全て本発明の一部を成す。
【0012】
図3に図示されている配列と少なくとも70%の相同性を示すポリペプチド分子は、同様に本発明の一部を成す。図3は、T9/96中のLSA-3の一部を図示する:該熱帯熱マラリア原虫分離株のDNAは、制限酵素で消化した後、ラムダgt11中にクローニングされ、先に既述したように、該分離株の遺伝子ライブラリーを構築することが可能となる。
【0013】
リシン架橋を介した共有結合によって、飽和脂質残基または不飽和脂質残基と結合しているLSA-3から生じるポリペプチドからなる化合物(さらに具体的には、脂質残基がパルミトイル、パルミチル、またはオレイルである場合)も本発明の一部である。このように、既に前述したNRI、NRII、729RE、およびCT1ペプチドに、リシン架橋を介してC16またはC18残基を結合させた。これらの化合物のために用いた合成法は、ブルゴール(Bourgault)の「Journal of Immunology」、149、3416(1992)、およびルーア(Rouaix)の「Vaccine」、12、1209(1994)に記載されている。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのポリペプチド分子または上記の化合物を含む、免疫原性組成物、およびこれらの免疫原性組成物を含むワクチンにも及ぶ。他の免疫原性エピトープ、特にLSA-1、SALSA、およびSTARPは、EP A-0407230およびWO 92/13884の中で、既に記述されている。有利には、本発明によるワクチン組成物は、LSA-3から生じる免疫原性ペプチドの混合物、およびLSA-1、SALSAまたはSTARPから生じるペプチドまたは抗原の混合物を含め;さらに、特に有利な混合物は、脂質残基に結合した、または結合していないNRI、NRIIもしくは完全なLSA-3の他に、脂質残基に結合した、または結合していないSALSA-1、SALSA-2もしくはSALSA抗原からなる混合物である。
【0015】
上記の定義に相当するポリペプチド分子、およびポリペプチドLSA-3、CT1、NRI、NRII、または729REと少なくとも70%の相同性を示すポリペプチド分子は全て、他のペプチド配列、または異なる段階の熱帯熱マラリア原虫の別の抗原から生じる配列と相同的に、あるいは非相同的に組み合わせてもよい。
【0016】
70%の配列相同性とは、配列が知られている、または配列を知り得る、任意の分離株のうちの1つに対する配列相同性を意味するのであって、分離株の集合間全体での相同性を意味しているのではないことを明確に理解しなければならない。実際に、これまで見てきたように、さらに図4に表示されているように、該反復領域を構成しているテトラペプチド(VEES、VEEN、VEEI、VAPS、VAPTなど)は、極めてよく保存されているのに対して、分離株T9/96とK1のブロック2の反復部位間では、長さの相違が明白であり、LSA-3の中央反復領域(図4のブロック2)は、異なる回数の反復配列を示し、分離株間の差異の原因となる。対照的に、ブロック1の反復配列は、2つの分離株間で完全に保存されている。このように、ある分離株と別の分離株の間には、ブロック2に本質的な違いがあることを念頭におき、ブロック2の反復配列を除いた LSA-3抗原に対して、異なる分離株間での70%相同性という定義を適用する。
【0017】
本発明は、本発明のポリペプチド分子を特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体にも及ぶ。
【0018】
本発明によるこれらの分子は、診断法を実施するのに用いてもよく、熱帯熱マラリア原虫の感染の存在を検出し得るキットを作成するのに用いてもよい;該方法は、上記の抗原のうちの1つを問題となっている人の体液と接触させて、標準的な血清学的方法を実施することによる、循環している特異的抗体のアッセイ、または対応する抗原によって抗体を得るための標準的方法で取得した、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体を用いる抗原アッセイ法のうちの何れかであり得る。本発明の診断用品または診断キット中には、生じた抗原/抗体複合体の検出を可能にする試薬が存在する。該試薬はラベルを有することもでき、あるいはラベルされた試薬によって、順次認識することもできる。抗原試験または血清学的試験のうち何れを実施するかによって、該キットは、本発明の抗体または抗原の何れかを具備する。
【0019】
本発明は、前記ヌクレオチド配列とは非相同的な核酸中に挿入された、本発明のポリペプチドをコードする全てのヌクレオチド配列および本発明のヌクレオチド配列を1以上含む全ての組換え核酸にも及ぶ。
【0020】
LSA-3またはLSA-3の免疫原性断片をコードしている核酸配列、および以下の定義:
(a)図1の配列認識番号1に図示されているようなヌクレオチド鎖のつながり、または
(b)図2の配列認識番号2に図示されているようなヌクレオチド鎖のつながり、または
(c)図1または図2のものと、70%以上の相同性を示す鎖のつながり、または
(d)(a)、(b)、または(c)で示されているものと相補的なヌクレオチド鎖のつながり
のうちの1つに対応する核酸配列は、本発明の一部を成す。
【0021】
「LSA-3をコードする」という表現は、図1の配列認識番号1で図示されている遺伝子および図2の配列認識番号2で図示されているcDNAの両者を意味するものとして理解される。
【0022】
とりわけ本発明は、本発明のヌクレオチド配列の前にプロモーター(特に誘導性なプロモーター)が置かれ、プロモーターの調節下で、前記配列の転写を行うことが可能であり、場合によっては、その後ろに転写終結シグナルをコードしている配列が続いているような組換え核酸に関する。
【0023】
本発明は、図3の配列認識番号3に図示されているクローンT9/96から生じるコーディング配列にも及ぶ。
【0024】
該配列中では、ヌクレオチド67〜126の間にCT1断片が存在し、679断片はヌクレオチド206から始まり、729RE断片はヌクレオチド547〜630の間に存在する。
【0025】
最後に、本発明は、特に本発明のヌクレオチド配列をクローニングするためにおよび/または該配列にコードされているポリペプチドを発現させるために用いられ、複製に不可欠ではない部位のうちの1つに、先に定義したような組換え核酸を含有することによって特徴付けられる全ての組換えベクターに及ぶ。
【0026】
上記のベクターの例としては、プラスミド、コスミド、ファージまたはウイルスを挙げることができるかもしれない。
【0027】
このように、本発明は、特にNo.I-1573としてCNCMに寄託されたプラスミドpK1.2.に関する。
【0028】
また、本発明の主題は、上記の型の組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換させ、次に、このようにして形質転換した宿主細胞を培養し、培養液からポリペプチドを回収することによって、本発明のポリペプチドを調製する方法でもある。
【0029】
このように、本発明は、先に定義したような組換えベクターによって形質転換され、且つ本発明によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする制御要素を具備する、全ての宿主細胞に関する。
【0030】
同様に、本発明は、PCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)手法、またはLCR、CPR、ERA、SPA、NASBAなどのような現段階で公知の、他の何れかの方法によって、本発明のヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列を合成するために用いることができるDNA(またはRNA)プライマーにも及ぶ。
【0031】
本発明は、本発明によるペプチド配列をコードするヌクレオチド配列の先頭10〜25個のヌクレオチドと同一もしくは相補的な約10〜25個のヌクレオチド、または前記配列の末端の10〜25個のヌクレオチドと同一の約10〜25個のヌクレオチドからなることを特徴とする、全てのDNAまたはRNAプライマーに関する。
【0032】
このように、本発明は、以下のステップ:
−場合によっては、適切に選択した2つのDNAプライマーを用いて、標準的手法によって、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の量を予め増幅するステップと、
−適切な培養液中で、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を具備する、本発明による核酸を含むベクターによって、予め形質転換させた宿主細胞を培養するステップと、且つ
−上記培養液から、前記形質転換された宿主細胞によって産生されたポリペプチドを回収するステップ
とを具備する、本発明のポリペプチドを調製する方法にも及ぶ。
【0033】
本発明によるDNAまたはRNAプライマーの例としては、以下の配列ペアを挙げることができる:
S1: GTGATGAACTTTTTAATGAATTATTAAA (配列認識番号4)
S2: TGTTGTTCTTGTTGAACACTTTTTACTAA (配列認識番号5)
図1に図示されているLSA-3/K1遺伝子上での、これらの位置は、それぞれ695〜722および829〜799(逆方向に読まれる)であり、
あるいはぺア:
6.1: GGTATCGAACTGAGGAAATAAAGG(配列認識番号6)
6.2: CATAGCAGGAACATCAACATCCAC(配列認識番号7)
それぞれ、6.1の位置は2668〜2692および6.2の位置は3456〜3433(逆方向に読まれる)である。
【0034】
配列認識番号4、5、6および7に関する情報は、本明細書の最後に詳述されている。
本発明のペプチドは、ペプチド合成の標準的手法によって、調製してもよい。該合成は、均質な溶液中または固相中で行ってもよい。例えば、ブンシュ(E. Wunsch)編集の、「有機化学の方法(Methods in Organic Chemistry)」、第15-IおよびIIと題する著作(チーメ(Thieme)、シュツットガルト、1994)の中で、ホーベン−ウェイル(Houben-Weyl)が記述している均質溶液中での合成手法、あるいは「固相ペプチド合成」(J. Am. Chem. Soc., 45, 2149-2154)と題する論文中で、メリーフィールド(R.D. Merrifield)が記述している手法を用いることができるであろう。
【0035】
本発明は、上記のモノマーペプチドの、水溶性オリゴマーにも及ぶ。
オリゴマー化によって、本発明によるモノマーペプチドの免疫原性を増強せしめることが可能となる。このような数に関する情報を限定と解してはならないが、これらのオリゴマーは、例えば、2〜10個のモノマー単位を含有し得る。
【0036】
オリゴマー化を行うために、ペプチドの分野で通常用いられている、任意のポリマー化手法を使用することができ、所望の免疫原性を持たせるために、該ポリマー化は、必要な数のモノマーモチーフを含有するオリゴマーまたはポリマーが得られるまで行う。
【0037】
モノマーをオリゴマー化またはポリマー化する方法は、モノマーとグルタルアルデヒドのような重合剤との反応からなる。
【0038】
また、別のオリゴマー化方法または結合方法として、例えば、ホモまたはヘテロの2価性結合用試薬の存在下で、モノマー単位中の末端カルボキシル官能基およびアミン官能基を介して、該モノマー単位を連続的に結合せしめるような方法を用いることも可能である。
【0039】
また、本発明は、担体分子およびペプチドの間に存在する各々と相補的な反応性の基を介して、とりわけ免疫原性を増大することができる生理学的に受容可能な無毒性の担体分子(天然または合成の)に、本発明によるペプチド(または前記オリゴマー)を共有結合させることによって得られた化合物にも関する。本発明による化合物を含む組成物に含まれる担体分子または高分子支持体の例としては、破傷風トキソイド、オボアルブミン、血清アルブミン、ヘモシアニン、ツベルクリンのPPD(精製タンパク質誘導体;purified protein derivative)などのような天然のタンパク質が挙げられよう。
【0040】
合成高分子支持体としては、例えば、ポリリシンまたはポリ(D-L-アラニン)-(L-リシン)が挙げられよう。
【0041】
炭水化物支持体または脂質支持体の例としては、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸、好ましくは、オレイルまたはパルミトレイルのようなC16またはC18のものが挙げられよう。
【0042】
限定するものではないが、最後に、本発明による抗原もしくはペプチドは、従来の支持体に結合させること、このような支持体(特にラテックスもしくはポリスチレンの小球またはビーズ支持体)上に吸着させること、あるいはTy1粒子中に取り込ませることができる。
【0043】
フランツおよびロバートソンら(Frantz and Robertson)の「Infect. and Immunity」、33、193-198 (1981)、カウフマン(P.E. Kauffman)の「応用および環境微生物学(Applied and Environmental Microbiology)」(1981、10月)、42巻、4号、611-614ページに記載されているような、ペプチドおよび適当な担体分子を用いる、本来公知の方法によって、本発明の化合物を合成することができる。
【0044】
本発明の核酸は、化学的方法または他の方法の何れかによって調製し得る。
最大200までのヌクレオチド(または2重鎖の核酸の場合には200bp)が含まれる、本発明の核酸を調製するための適切な方法は、以下のステップ:
−「生物有機化学(Bioorganic Chemistry) 4」、274-325ページ(1986)に記載されている、自動化されたβ-シアノエチルフォスフォールアミダイト法を用いるDNA合成、
−そのようにして得られた核酸を、適切なベクター中にクローニングし、適切なプローブでハイブリダイゼーションすることによって、該核酸を回収する
を具備する。
【0045】
200ヌクレオチド以上の長さの核酸を化学的に調製する方法は、WO 92/13884に既述されている。
【0046】
また、本発明は、LSA-3遺伝子に特異的な、増幅用プライマーを1以上含有し、熱帯熱マラリア原虫に感染する可能性のある者に、該遺伝子または該mRNAが存在することを検出し得る診断キットに関する。
【0047】
本発明は、経口、眼内もしくは鼻内投与形態を構築するのに適した、固形もしくは液状の薬学的に受容できる賦形剤(excipients)、または直腸投与用の投与形態を構築するのに適した賦形剤、あるいは膣内投与用のゼラチン性賦形剤が配合された本発明による産物が1以上存在する、薬学的組成物またはワクチン組成物にも及ぶ。また、粘膜、特に眼粘膜、鼻粘膜または肺粘膜への投与に適した、本発明による化合物を1以上含有する、等張性液状組成物にも関する。さらに、本発明によるワクチン組成物は、有利には、ワクチンの投与を容易にする、ポリビニルピロリドンのような賦形剤を含む。ポリビニルピロリドンの代わりに、別の種類のアジュバント(本用語に対して、以前から用いられてきた古典的な意味、すなわち、医薬品の吸収をさらに素早くすることができる物質、または体内での、医薬品の作用を促進することができる物質の意)を全て用いることができる。後者の種類の、他のアジュバントの例としては、カルボキシメチルセルロース、水酸化アルミニウム、およびホスフェート、サポニンまたは当業者に周知の、この種の他のアジュバント全てを挙げることもできる。最後に、必要ならば、これらは免疫学的アジュバント、特にムラミルペプチド型のアジュバントを含む。
【0048】
また、本発明は、薬学的に受容できる賦形剤(vehicle)とともに、先に明記したポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を活性成分として1以上含む薬学的組成物に関する。
【0049】
最後に、本発明は、上述の如きペプチド分子もしくはオリゴマーを単独で注射することによって、熱帯熱マラリア原虫に感染する可能性がある者を免疫化する方法、あるいは前記の者が引き続き感染するのを防ぐことができる別の種類の分子とともに注射することによって、熱帯熱マラリア原虫に感染する恐れのある者を免疫化する方法に及ぶ;ポリペプチドまたは抗原性分子、または天然もしくは組換えリポペプチドは、単独で、またはラテックスもしくはポリスチレンの小球またはビーズに、吸着または結合させて用いる。
【0050】
本発明のさらなる特質は、寄生虫の前赤血球段階の他の抗原と比較した、本発明の分子の特別な性質を示す以下の図による説明を行っている実施例中でも明らかになるであろう。
【実施例】
【0051】
実施例1:LSA-3遺伝子のクローニングおよび配列決定
1)配列決定
連続的に予防処置を受けた宣教師(missionary)の血清を用いて、寄生虫クローンT9/96から得られた遺伝子ライブラリーの初期スクリーニングを行うことによって、我々は、熱帯熱マラリア原虫のサイクルにおけるスポロゾイトおよび/または肝臓段階で発現される分子に対応するクローンを120単離することができた。クローン729Sをプローブとして用いて、ファージラムダgt10中へクローニングされた巨大EcoRI断片を含有する、既に上述したタイ株K1のゲノムライブラリーをスクリーニングした。該遺伝子ライブラリーから、遺伝子全体を含有する6.85kbの挿入断片を精製し、配列および特性決定をするために、pUC18プラスミドに再クローニングした。熱帯熱マラリア原虫は、ゲノムのA:T塩基が非常に多く(80%)、使用できる制限部位が希少であるため、およびプラスミドベクター中に挿入する場合、ある種の断片のクローニングが不安定あるいは不可能でさえあるために、このアプローチは多くの場合困難である。
【0052】
遺伝子の構造は、図4に図示されており、以下の特性:
a)疎水性シグナルペプチドをコードする3’末端のミニエキソン1;
b)コンセンサススプライシング供与部位と受容部位の間に含まれる、短いイントロン(168塩基対);
c)1.8kbの組織化された領域をコードし、アミノ酸4個のブロック7つの配置、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)型の固定を行う領域に相当するかもしれない3’疎水性領域から成り立っている、5kbの第2のエキソン
を示す。
【0053】
LSA-3の反復配列の大部分および1kbの3’非反復部分のうちの一部を含有する、クローン679を配列決定することによって、LSA-3の多型性を詳細に調べた。該断片の配列のヌクレオチド207〜1890が、図3に図示されている。
【0054】
K1株の反復は、以下の通り:
ブロック 1:(aa223) VEEK VEES VEEN DEES VEEN VEEN VEEN DDGS VASS VEES IASS VDES IDSS IEEN (aa278)
【0055】
ブロック 2:(aa279) VAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVEEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVEEN
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEESVAPT VEEIVAPS VEESVAPS VEESVAEN (aa818)
【0056】
ブロック3
(aa1537) DEDI EEDV EEDI EEDI EEDK VEDI DEDI DEDI GEDK DEVI (aa1576)
【0057】
1991年2月5日の特許出願第FR 91/01286号に従って決定したクローンT9/96中の反復は、以下の通り:
ブロック 1:VEEK VEES VEEN DEES VEEN VEEN VEEN DDGS VASS VEES IASS VDES IDSS IEEN
ブロック 2:VAPT VEEIVAPT VEEIVAPS VVESVAPS VEESVAPS
VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPS
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPT VEESVAPT VEEIVAPT VEESVAPT VEEIVVPS VEESVAPS
VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN VEESVAEN
VEEIVAPS VEEIVAPT
VEESVAEN
【0058】
LSA-3遺伝子のエキソン2は、図4に示されているように3ブロックに分割することができる、2つの反復領域を含む。
【0059】
−ブロック1は、連続した14個のテトラペプチドをコードしている。該ブロックは、T9/96およびK1の間で、アミノ酸および核酸が100%保存されている。ブロック2の中には、テトラペプチドVEESおよびVEENのみが見出されるはずである。
【0060】
−ブロック2は、K1では、基本となる7つのテトラペプチドまたはモチーフ(VEES、VVES、VEEN、VEEI、VAEN、VAPS、VAPT)のうちの2つを組み合わせることによって形成される、種々のオクタペプチドの連なりに相当する127のテトラペプチドをコードしている。これらのオクタペプチドの反復回数および配置は、モチーフによって異なり、クローンK1.2に特異的であると思われる。実際に、クローンT9/96では、ブロック2(53テトラペプチド)は、同一の、基本となる7つのテトラペプチド(およびK1中には存在しない第8のモチーフVVPS)からなるオクタペプチドの連なりにも当てはまるが、これらの反復回数および配置は異なっている。
【0061】
−ブロック3は、ブロック1およびブロック2のテトラペプチドとは別の、10個の縮退した(degenerate)テトラペプチドの連なりからなる。該ブロックは、K1株においてのみ配列決定された。しかし、クローンT9/96および数種類の他の実験室株を用いたPCRによって得た予備的結果は、該領域中にサイズの多型性が存在しないことを示している。
【0062】
エキソン2の非反復領域は、とりわけ良く保存されている。実際に、ブロック1の5’末端の315bpおよび、ブロック2の3’末端の763bpに対して、T9/96およびK1間の配列比較を行うことができた。核酸の相同性は、99.4%であり、アミノ酸の相同性は、98.6%である。
【0063】
熱帯熱マラリア原虫のクローンT9/96から得られたクローン679の配列および分離株K1から得られた対応するLSA-3の配列との比較は、遺伝子が良く保存されていることを示しており、最も顕著な相違は、反復領域で観察され、該領域では、アミノ酸4個のブロックは良く保存されているが、数と構成が異なっている。
【0064】
これに対し、非反復5’部位および3部位は、極めて良く保存されているようであり、既にBおよびTエピトープが同定されている5’領域では、100%に達する相同性を示している。
【0065】
DNA増幅、特に、反復領域の周囲を除くLSA-3遺伝子全体にわたる8対のプライマーを用いて、種々の熱帯熱マラリア原虫株のPCR増幅を行うことによって、全てのゲノムが同様のサイズのPCR産物を与えることが示され、LSA-3抗原が良く保存されていることを示唆している。
【0066】
低ストリンジェンシー(stringency)で、反復領域および非反復領域中から選ばれた種々のLSA-3プローブを異なる種のプラスモジウム(Plasmodium)のDNAとハイブリダイズしたが、チンパンジーの寄生虫である「P.reichenowi」以外には、LSA-3と相同性を有する遺伝子は、全く同定されず、この種が熱帯熱マラリア原虫と非常に近縁関係にあることが確認された。
【0067】
驚くべきことに、「P.yoelli」中に見出されたLSA-3と類似の抗原は、スポロゾイトの表面において、抗729S断片抗体と明瞭な免疫交叉反応を示すが、ヌクレオチド配列のレベルでは保存されていないように思われる。最後に、LSA-3の配列とデータベースとの比較からは、反復領域中のモチーフのうちのいくつかが、「Staphylococcus xylosis」遺伝子の反復と極めてよく似ている他、熱帯熱マラリア原虫の2つの抗原であるRESAおよびPf.11.1(両者ともに、寄生虫の血液段階において発現される)と極度に類似している以外には、既知の分子との相同性は認められなかった。この相同性は、本質的には、これらの抗原中およびLSA-3の反復中の多量の「Glu-Glu」配列によるものである。
【0068】
2)クローニング
挿入配列DG729およびK1株のエキソン2の別の領域を原核細胞性発現ベクターpGEX(インビトロゲン社(InVitrogen Corp、サンディエゴ、アメリカ)が販売しているベクター)中にクローニングした。該ベクターは、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)のグルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合タンパク質を産生し、グルタチオン-アガロースビーズに対する親和性によって、該組換えタンパク質を容易に精製することが可能となる。これらのベクターから発現されるペプチドは:
−全LSA-3タンパク質に対しては:RECタンパク質
−または、729S断片に対しては:729PGEX
と表示する。
【0069】
他の断片、特に1-5 3NSREP、3NFREP、5NRおよび5SNREP断片をクローニングする試みにより、クローニングに関する困難、または免疫化実験のために十分量のタンパク質を産生および精製することに関する困難の何れかが生じた。
【0070】
分子の抗原性を分析するのに十分な量の対応する組換えポリペプチドを産生および精製することが可能であったのは、断片729、NNおよび3PCのみであった。
【0071】
実施例2;免疫化されたチンパンジーの、低用量または高用量の試験的感染からの防御
2.1. 同一の発育段階にある寄生虫の別の抗原とともに、LSA-3の一部で予め免疫化を行い、且つポイントa)で上述した効果が現れているチンパンジーのダークを、2〜3年後、同一組み合わせの抗原に相当するペプチドおよび組換えタンパク質で再び免疫化した。低用量(2×104スポロゾイト)の試験的感染、次に高用量(5×106)の試験的感染に対して、このチンパンジーが保護されていることが再度明らかになる。最初の試験期間と同様に、ごく少数の検出可能なシゾント周囲へのリンパ球−単球浸潤(局所的防御を示している)とともに、高用量での試験後、肝臓内に検出されるシゾントの数が顕著に減少するのが観察されている。
【0072】
2.2. チンパンジー(ゲルダ)の部分的防御:
別のチンパンジー(下記の実施例7および8にて記載されている動物)をLSA-3抗原単独、すなわちリポペプチドNR2の次に、3つの総計がLSA-3分子の95%をカバーし、且つラテックス小球に吸着されている組換えタンパク質(GST-729、GST-NN、GST-3PC)で免疫化した。この動物は、極微量の血中寄生虫血症を示し、試験的感染後の肝臓シゾントの数が対照に比べて90%減少しているので、高用量(8×106スポロゾイト)での試験的感染に対して、部分的に保護されていることが明らかである。
【0073】
2.3. チンパンジー(ヌリア)の部分的防御:
LSA-3抗原の一部のみ、すなわち、ペプチドの組み合わせ、リポペプチドの組み合わせ、次に組み換えタンパク質の組み合わせ(これらはLSA-3分子の95%に相当し、モンタニド(Montanide)ISA-51(SEPPIC、オルセー河岸(Quai d’Orsay)75、フランス)中に乳化されている)によって免疫化されたチンパンジーは、中用量(1×105スポロゾイト)での試験的感染に対して、部分的に保護されていることが明らかである。実際に、4匹の対照(前赤血球抗原LSA-1、SALSAまたはSTARPで免疫化されたチンパンジー、および免疫化していない対照動物1匹)に比べて、この動物は、血中への寄生虫の出現が非常に遅く、血中寄生虫症の最高値が低く、寄生虫血症の減少が早い(3日に対して24時間)。これらの結果は、試験的感染によって該動物に引き起こされた肝臓型の数が著しく減少していることの反映であり、ゲルダで得た結果と一致するものである。本件に関しては、肝臓型の検査は行わなかった。
【0074】
2.4. チンパンジーデミ(Demi)、カーリアン(Karlien)およびアイリス(Iris)におけるBおよびT免疫原性:
ペプチドLSA-3-NR1、-REおよびリポペプチド-NR2、-CT1とともに、各動物に対して、他の前赤血球抗原(LSA-1、SALSAまたはSTARP)に相当するペプチドで免疫化した3匹のチンパンジーは、3匹とも
−ペプチドNR1、NR2、およびRE上に存在するBエピトープに対する高度の液性応答:抗体は、ペプチドおよび組換え体を認識するのみならず、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイトおよび肝臓段階への免疫蛍光によって評価する場合、寄生虫上のネイティブ分子に対して強度の陽性である(ただし、赤血球段階については陰性である);
−4つのLSA-3ペプチド、並びに熱帯熱マラリア原虫および「Plasmodium yoelii」(まだ特性が明らかになっていない、LSA-3の相同体を有する)のスポロゾイト表面に存在するネイティブTエピトープに対する、高度かつ特異的なリンパ増殖応答:
を示す。
【0075】
ネイティブ抗原に関するBおよびT応答は:
a)合成分子が実際にそれらを代表的するものであることを証明し;
b)感染時に、既往性2次免疫応答が得られるという見込みが十分にあることをそれらが意味する;事実、これは試験時のチンパンジー(ヌリア)において観られたことである
ので重要なポイントとなる。LSA-1およびSTARPのような、他の抗原については、同一の2次免疫応答が得られなかったという事実によって、この観察の重要性は増大する。
【0076】
2.5.ヨザルにおける免疫原性:
2つのペプチドLSA-3-NR1および-RE、並びに2つのリポペプチド-NR2および-CT1で免疫化した後、LSA-3分子の95%に相当し、上記の小球に吸着せしめた組換えタンパク質で再度刺激したヨザル(Aotus trivirgatus)は、これらのペプチド自身に存在するTエピトープに対する、高度且つ特異的なリンパ増殖応答を示す。
【0077】
このようにして予め免疫化された、異なるチンパンジーのインビボでの応答に関しては、現段階までにテストされた全ての動物モデル、すなわち6/6のチンパンジー(異系交配されたもの)、1/1のヨザル、および免疫化された全てのマウス(>20)において、ペプチド型、リポペプチド型および組換え型のLSA-3の免疫原性(BおよびT)が優れていることを、該結果は強調している。アジュバントを何ら用いずに、皮下注射することによって、リポペプチド処方(ヒトに用いることができる)の結果が得られたことは特筆すべきことであるかもしれない。
【0078】
実施例3:CTLエピトープの同定
CTLsを同定するために用いた方法は、フィドックら(Fidock et al.)(1994)の「J. Immunol.」 153:190、またはボッティウスら(Bottius et al.)(1996)の「J. Immuol. 」156:2874-2884に記載されているものである。
【0079】
上記のチンパンジー、ダーク、ゲルダ、ヌリア、デミ、カーリアンおよびアイリスのPBMCsに対して細胞毒性テストを行うことによって、CTL(cytotoxic T lympnocyte)エピトープが、ペプチドNR2、REおよびCT1に同定された。
【0080】
ヒトでは、3つの異なるハプロタイプ(MHCクラスI-A2、-B8および-B53)に属し、該疾病が風土病である地域(ガンビア)に居住している人のPBMCsに基づいて、さらに8つのCTLエピトープ(それらのうち7つは、3’非反復領域中に位置している)を明らかにすることができた。さらに、B53のみに存在する、2つのCTLエピトープの配列を決定することによって、ケニアおよびガンビアからの数株において、ヌクレオチド配列およびペプチド配列が完全に保存されていることが実証された。
【0081】
我々は、合計11のCTLエピトープをLSA-3分子中に同定したが、これは相当な数であるといえる。さらに、アジュバントなしのリポペプチドNR2で免疫化した後に、5/6のチンパンジーは、ペプチドNR2に対してCTL応答を示したが、これは血縁関係にない動物に対する結果としては特筆すべきものである。さらに、ヌリアによって産生された抗体は、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイトの侵入に関しては、何ら阻害的活性を示さなかったので、観察された防御は、細胞性応答、特にCTLsに依存していると推測できるかもしれない。
【0082】
実施例4:種々のペプチドで免疫化する前および後の抗体力価の比較
4.1.免疫化された異なる動物において、種々のペプチドにより引き起こされた抗体応答の比較
用いた方法は、ベーアら(Behr et al.)(1992)の「J. Immunol.」149:3321中に記載されている方法である。
【0083】
反応性は、ELISA比、すなわち免疫化前の同一血清の光学密度を参照として免疫化後の血清を496nmで測定した光学密度として表示されている。第1カラムは免疫化された動物、第2カラムは動物に与えた免疫原、第3カラムは行った投与回数とともに、投与されたペプチドが付着している支持体を示している:RPは組換えタンパク質、RP/Bはラテックスビーズに吸着させた組換えタンパク質、Pはペプチド、およびLPはリポペプチドを表している。さらに、リポペプチドは生理的食塩水に入れて注射し、ペプチドおよび組換えタンパク質は、ラテックスビーズに吸着させるか、あるいはアジュバント(モンタニドISA-51)でエマルジョンとすることを指摘しなければならない。
【表1】

【0084】
4.2.得られた抗体の力価:
表IIは、異なる段階(スポロゾイト、肝臓、および血液)の熱帯熱マラリア原虫、「P.yoelii」、および齧歯類マラリア病原虫(P.berghei)の表面上にあるネイティブの抗原に対する、チンパンジーから得られた血清の、免疫蛍光による抗体力価を示す。
【表2】

【0085】
4.3.スポロゾイトの表面上に存在するネイティブの抗原または種々のペプチドの何れかを用いた、インビトロでの刺激後における、異なるチンパンジーのPBMCsのリンパ増殖応答。該応答は、LSA-3ペプチド(表III)による刺激後またはインビトロでのスポロゾイトによる刺激後の何れかにおいて、PBMCs(末梢血液細胞;peripheral blood cells)中へのトリチウムチミジンの取込によって測定した。
【表3】

【表4】

【0086】
リンパ増殖応答は、抗原存在下で得られたカウント数から抗原非存在下で得られたカウント数を差し引いた、分当たりのカウント(counts per minute)の計数値の差(デルタCPM)として示されている。図の括弧内は、刺激指数、すなわち抗原非存在下で得られたカウント数に対する、抗原存在下で得られたカウント数の比を示す。
【0087】
デルタCPMが1000以上であり、且つ刺激指数が3を超える場合に、結果を陽性であると考える。
【0088】
4.4.種々のペプチドで免疫化する前および後の、チンパンジーのヌリアの抗体応答の比較
図5は、ペプチド729NR1および729RE、並びにリポペプチド729NR2およびCT1で免疫化する前および後の、チンパンジーのヌリアの血清中に存在する免疫グロブリンの量を図示している。
【0089】
本実験は、R抗原はB免疫が優性であり、特にR抗原が脂質残基に抱合されている場合に優性であることを示している。
【0090】
図6は、リポペプチドを用いた場合、 ELISAで測定した抗ペプチド729NR2特異的抗体のレベルが、ペプチド729NRIIまたはリポペプチド729NRIIの何れかで免疫化されたマウス中で、 マウスの種には関係なく、顕著に増加することを示す。
【0091】
実施例5:放射線照射したスポロゾイトを注射することによって、LSA-1およびLSA-3抗原から生じるペプチドに対して防御された個体のPBMCのリンパ増殖
放射線照射したスポロゾイトの注射によって免疫化された、8人のボランティアのうち、スポロゾイトに感染していない4人のそれぞれから、抗-LSA-3抗体が見出されている;血液感染に至った、残り4人のボランティアでは全く見出されていない。
【0092】
さらに、防御された4人のうちで細胞を入手することができた唯一の人の場合、試験的感染から6ヶ月後にPBMCsを取り出し、LSA-1抗原およびLSA-3抗原から得られるペプチドの存在下でPBMCSをインキュベートした。
【0093】
図10は、放射線照射したスポロゾイトを注射することによって、LSA-1およびLSA-3抗原から生じるペプチドに対して防御された個体のPBMCのリンパ増殖の結果を図示している。
【0094】
3つのペプチドLSA-3(NR1、NR2およびRE)それぞれによって、かなりのリンパ増殖が観察されたが、LSA-1ペプチドでは何れも全く観察されなかった。ペプチドNR1で刺激した後のIFN-γ(100 IU/ml)の分泌が非常に高レベルであり、ペプチドNR2で刺激した後のレベルは、若干程度が低かった(IFN-γ:肝臓シゾゴニーを阻害する効果が最強のサイトカイン)。
【0095】
実施例6:マウスへのスポロゾイトの侵入に対する抗LSA-3ペプチド抗体の阻害効果
初代肝細胞培養、スポロゾイト、抗体および間接蛍光テストを調製するのに用いた技術は、メロウクらの「世界保健機構公報(Bulletin of the World Health Organization)」、68:52-59、1990に詳述されている。下表Vは、抗679断片抗体または他のペプチド由来の断片に対して得られた抗体のうちの何れかで行った免疫蛍光において得られた結果を比較している。左側のカラムは、「P. yoelii」に感染させたBalb/cマウスの肝細胞中で、培養48時間後に検出されるシゾントの数を示し、右側のカラムは、齧歯類マラリア病原虫に感染させた後の同一パラメーターを示す。
【表5】

【0096】
抗ペプチド679抗体が、48時間後に観察した肝細胞中のシゾントの数に対してほぼ完全な阻害効果を有することが明瞭である。同様に、図7は種々のペプチドで免疫化した後、完全なLSA-3に対して免疫精製することによって得た高度免疫血清により、肝細胞へのスポロゾイトの侵入が阻害されている様子を示している。
【0097】
マウスの防御に関しては、直径0.5μmのラテックスもしくはポリスチレン小球上に吸着させた組換え体または本発明に従って調製した抗原を用いて免疫化することによって、最良の結果が得られた:
−3/3のマウスが、最少感染用量の10倍の投与から防御されている
−3/3のマウスが、2回目の試験から防御されている
−2/3のマウスが、3回目の試験から防御されている
用いた小球は、直径0.50μmのポリビーズ(Polybead)(登録商標)ポリスチレン小球(Polysciences、Inc.)(ref.07307)であり、その上に組換え体またはペプチドが受動的に吸着されている。実際には、ネズミの場合、1回の注射当たり50μgの抗原を50μlの小ビーズと接触させている;吸着した抗原の正確な量は、測定していない。チンパンジーの場合には、200μgの抗原および200μlのビーズを用いて、同様の操作を行う。
【0098】
さらに、最近、組換えGST-3PC(アミノ酸869から3’末端の停止コドンまでの非反復3’領域に相当する)でマウスを免疫化することによって、免疫蛍光において、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイトと極めて強く反応する血清を得ることができた。この結果は、分子の該領域中に1または数個のBエピトープが存在することを初めて示したものである。
【0099】
実施例7:チンパンジーのゲルダでの、ペプチド729NRIIに対する細胞毒性試験
LSA-3抗原から生じるリポペプチド729NRIIで、静脈内ルートからチンパンジーのゲルダを免疫化した。4回目の注射から9日後に採血している。5μg/mlのペプチド729NRII(10U/mlの組換えIL-2を第3日目に添加)とともに、インビトロでPBMCsをインキュベートした。15日目に、濃度0.5μg/mlのPHAを用いて作られた自系芽球(autologous blasts)に対する細胞毒活性を調べた。該芽球は5μg/mlのペプチド729NRII、対照ペプチドすなわちRESAとともに、またはペプチドなしで一晩プレインキュベートした。ペプチドは、テスト(8時間)の間は添加していない。ウェルあたりの標的数は、5000である。
【0100】
5μg/mlの対照ペプチドまたはペプチド729NRI(同一の抗原から得られる)とともに、同一時間インキュベートしたゲルダからのPBMCsは、プレインキュベートした自系芽球、または上記ペプチドともにプレインキュベートした自系芽球の溶解をもたらさない。
【0101】
図8は、12〜0.03までのE/T比(エフェクター/標的)が得られた結果を示す。ペプチド729NRIIによって予め感作した標的細胞が、エフェクター細胞存在下において、溶解しているのが見られ、細胞毒性T型免疫応答が該抗原に特異的であることを示している。静脈内ルートから注射されたリポペプチドNRIIは、アジュバントなしで、特異的細胞毒性応答を引き起こし得る。
【0102】
実施例8:インターフェロンγ産生に対するペプチドNRIの影響
インターフェロンは、ヒト培養肝細胞中での熱帯熱マラリア原虫の発育を阻害する活性を有することが示されている(メロウクらの「The Journal of Immunology」、139巻、12号:41-92、41-95、1987)。本発明のペプチドを用いて得た結果は以下の通り:
ポリペプチドNR2で免疫化して、組換えDG729で追加免疫をしたチンパンジーのゲルダは、LSA-3ペプチド、特にペプチド729NRIの存在下で、高レベルのIFN-γを分泌することが可能なPBMCsを有する。本結果は、同一のタンパク質で免疫化したチンパンジーのダークで確認した。免疫化していない対照である、チンパンジーのブラムの血中には、LSA-3ペプチドに対するインターフェロンは全く見られない。
【0103】
(2)配列認識番号:4のための情報:
(i) 配列特性:
(A) 長さ:28塩基対
(B) 型:ヌクレオチド
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(ゲノミック)
(xi)配列の記載:配列認識番号:4:
GTGATGAACT TTTTAATGAA TTATTAAA
(2)配列認識番号:5のための情報:
(i) 配列特性:
(A) 長さ:29塩基対
(B) 型:ヌクレオチド
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(ゲノミック)
(xi)配列の記載:配列認識番号:5:
TGTTGTTCTT GTTGAACACT TTTTACTAA
(2)配列認識番号:6のための情報:
(i) 配列特性:
(A) 長さ:25塩基対
(B) 型:ヌクレオチド
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(ゲノミック)
(xi)配列の記載:配列認識番号:6:
GGTATCGAAA CTGAGGAAAT AAAGG
(2)配列認識番号:7のための情報:
(i) 配列特性:
(A) 長さ:24塩基対
(B) 型:ヌクレオチド
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(ゲノミック)
(xi)配列の記載:配列認識番号:7:
CATAGCAGGA ACATCAACAT CCAC
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A】図1は、6152塩基対のLSA-3遺伝子のゲノムDNA配列(配列認識番号1)を図示している;該DNAはクローンK1.2から得られ、該クローンはタイ分離株から得られた。
【図1B】図1Aの続き。
【図1C】図1Bの続き。
【図1D】図1Cの続き。
【図1E】図1Dの続き。
【図2A】図2は、LSA-3抗原のcDNA配列(配列認識番号2)およびポリペプチド配列を図示している。該DNA配列は、5361塩基対である。
【図2B】図2Aの続き。
【図2C】図2Bの続き。
【図2D】図2Cの続き。
【図2E】図2Dの続き。
【図2F】図2Eの続き。
【図2G】図2Fの続き。
【図2H】図2Gの続き。
【図2I】図2Hの続き。
【図3A】図3は、寄生虫クローンT9/96において配列決定された部位(1890塩基対)の配列(配列認識番号3)を示しており、上段はヌクレオチド配列、下段はペプチドの配列である。該クローンでは、CT1配列は、ヌクレオチド67と126の間に位置し、正確な意味でのDG679はヌクレオチド207から始まっている。729RE断片は、ヌクレオチド547と629の間に位置している。
【図3B】図3Aの続き。
【図3C】図3Bの続き。
【図3D】図3Cの続き。
【図4a】図4aは、反復配列および非反復配列、K1株およびT9/96株、後者から得られる679クローンおよび729クローンのイントロンおよびエキソンの相対的位置を模式的に図示している。
【図4b】図4bは、DG729クローンのペプチド配列中のHCP(hydrophobic cluster plot)を図示している。
【図5】図5は、種々のLSA-3ペプチドで免疫化する前および後の、チンパンジー(ヌリア;Nuria)の血清中に産生された免疫グロブリンの量を図示している。
【図6】図6は、ペプチドまたは対応するリポペプチドの何れかで免疫化した、様々な種のマウスの特異的抗体の力価を図示している。
【図7】図7は、種々のペプチドで免疫化した後に、完全なLSA-3に対して免疫精製して得た高度免疫血清によって、肝細胞へのスポロゾイトの侵入が阻害されている様子を示している。
【図8】図8は、T型免疫に関して、LSA-3から得られた抗原と他の2つの抗原を比較した結果を示している。
【図9】図9は、LSA-3分子から生じたペプチドで、チンパンジー(ゲルダ(Gerda)およびダーク(Dirk))中のインターフェロン-γが誘導されている様子を図示している。
【図10】図10は、放射線照射したスポロゾイトを注射することによって、LSA-1およびLSA-3抗原から生じるペプチドに対して防御された個体のPBMCのリンパ増殖を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図2に示されているアミノ酸配列のアミノ酸を連続して10以上含有するポリペプチド分子であって、以下のポリペプチド:
−RDELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQVNDDIFNSLVKSVQQEQQHNVEE
−VEESVEENDEESVEENVEENVENNDDGSVASSVEESIASSVDESIDSSIE−
ENVAPTVEEIVAPTVEEIVAPSVVEKCAPSVEESVAPSVEESVAEMLKER
(729S)
−RDELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQVNDDIFNSLVKSVQQEQQHN
−DELFNELLNSVDVNGEVKENILEESQ, (NRI)
−LEESQVNDDIFSNSLVKSVQQEQQHNV, (NRII)
−VESVAPSVEESVAPSVEESVAENVESSV. (729RE)
を除くポリペプチド分子。
【請求項2】
請求項1に記載の分子であって、前記配列のアミノ酸を20以上連続して含有していることを特徴とする分子。
【請求項3】
請求項2に記載の分子であって、前記配列のアミノ酸を50以上連続して含有していることを特徴とする分子。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の分子のうちの1つと70%以上の相同性を示すポリペプチド分子。
【請求項5】
以下の配列:Leu Leu Ser Asn Ile Glu Glu Pro Lys Glu Asn Ile Ile Asp Asn Leu Leu Asn Asn Ile (CT1)
と70%以上の相同性を示すことを特徴とするポリペプチド分子。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載のポリペプチド分子であって、図3に図示されている配列と少なくとも70%の相同性を示すことを特徴とするポリペプチド分子。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチドを1以上および薬学的賦形剤を1以上含有することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項8】
他の免疫原成分に加えて、請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチド分子を含有する抗マラリアワクチン組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のワクチン組成物であって、さらに1以上のエピトープを含み、且つLSA-1、SALSAまたはSTARP分子からなる群から得られる分子を含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、2以上の免疫原を含み、第1の免疫原が、以下のポリペプチド:
−図2のポリペプチド、
−NRI、
−NRII
から選択され、第2の免疫原が、SALSA、SALSA I、およびSALSA IIからなる群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチド分子を特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体。
【請求項12】
熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性を有する個体中のマラリアをインビトロで診断する方法であって、組織または生体液に存在する可能性のある抗体と前記ポリペプチド分子との免疫反応を可能する条件下で、個体から得た組織または生体液を請求項1〜8の何れか1項に記載の分子と接触せしめることと、形成される可能性のある抗原/抗体複合体をインビトロで検出することを含んでなる方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、請求項1〜6の何れか1項に対応するポリペプチド分子、およびスポロゾイト段階の抗原、すなわち、LSA-1、SALSAまたはSTARPから得られる他の分子との混合物と組織または生体液を接触せしめることを特徴とする方法。
【請求項14】
熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性を有する個体中のマラリアをインビトロで診断する方法であって、生体組織に存在する可能性のある熱帯熱マラリア原虫に特異的なタンパク質と前記抗体との間のインビトロ免疫反応を可能にする条件下で、個体から得た組織または生体液を請求項11に記載の抗体と接触せしめることと、形成される可能性のある抗原/抗体複合体をインビトロで検出することを具備することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12または13の何れかに記載のインビトロマラリア診断用キットであって、
請求項1〜6の何れか1項に記載の分子を少なくとも1つまたは数個と、
反応に適した媒質を構成する試薬であって、免疫反応によって産生された抗原/抗体複合体の検出を可能にする試薬と
を具備することを特徴とし、特に上述のポリペプチド分子がラベルされていない場合、これらの試薬はラベルを有することができ、またはラベルされた試薬によって認識することができるような試薬であるキット。
【請求項16】
インビトロマラリア診断用キットであって:
−請求項11に記載の抗体と、
反応に適した媒質を構成する試薬であって、免疫反応によって産生された抗原/抗体複合体の検出を可能にする試薬と
を具備することを特徴とし、特に上述のポリペプチド分子がラベルされていない場合、これらの試薬はラベルを有することができ、または順次、ラベルされた試薬によって認識することができるような試薬であるキット。
【請求項17】
抗マラリアワクチンの調製における請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチド分子の使用。
【請求項18】
マラリア治療を目的とした医薬品を調製するための、請求項11に記載の1以上のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の使用。
【請求項19】
薬学的に受容できる賦形剤とともに、活性物質として請求項11に記載のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を1以上含有する薬学的組成物。
【請求項20】
以下の配列:
(a)図1の配列認識番号1に図示されているヌクレオチド鎖のつながり、または
(b)図2の配列認識番号2に図示されているヌクレオチド鎖のつながり、
(c)図1もしくは図2のものと70%以上の相同性を示す鎖のつながり、または
(d) (a)、(b)もしくは(c)に示されているものと相補的なヌクレオチド鎖のつながり
のうちの1つによって特徴付けられる核酸配列。
【請求項21】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチド分子をコードする配列を含有する請求項20に記載の核酸。
【請求項22】
請求項20または請求項21に記載のヌクレオチド配列をクローニングするための、および/または上述の配列によってコードされるポリペプチドを発現させるための組換えベクターであって、複製に不可欠でない部位のうちの1つに前記配列を含み、特に前記ベクターが、プラスミド型、コスミド型またはファージ型であるようなベクター。
【請求項23】
請求項22に記載のベクターであって、該ベクターが、No.I-1573でCNCMに寄託され、pK1.2.と称されるプラスミドであることによって特徴付けられるベクター。
【請求項24】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリペプチド分子および該分子を吸着させる支持体からなる化合物。
【請求項25】
請求項24に記載の化合物であって、該支持体がラテックスもしくはポリスチレンの小球またはビーズからなることを特徴とする化合物。
【請求項26】
マラリアに感染している、または感染している可能性のある個体を免疫化するための請求項24および25の何れか1項に記載の化合物の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−104(P2009−104A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139896(P2008−139896)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【分割の表示】特願平9−502711の分割
【原出願日】平成8年6月12日(1996.6.12)
【出願人】(596009674)アンスティテュ・パストゥール (23)
【Fターム(参考)】