説明

前高血圧の個体及び/又はメタボリックシンドロームの個体において血圧を降下させるための方法

ヒトを含む哺乳動物にブドウ抽出物を含む栄養補助食品を投与することによる、メタボリックシンドローム及び/又はメタボリックシンドロームを伴う疾患を予防及び/又は治療する方法に関する。本発明は、ブドウ抽出物を含む栄養補助食品をヒトを含む哺乳動物に投与することによる、前高血圧を治療及び/又は予防する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体を参照によって本明細書に取り込む、2005年9月28日に出願の米国仮特許出願第60/721,720号の優先権の利益を享受する。
【0002】
本発明は、メタボリックシンドローム及び/又はメタボリックシンドロームを伴う疾患の予防及び/又は治療方法に関する。本発明は、前高血圧の治療及び/又は予防方法にも関する。これらの方法は、前高血圧を有する個体、あるいはメタボリックシンドローム及び/又はメタボリックシンドロームを伴う疾患を有する個体を治療するために有効なブドウ抽出物を含む栄養補助食品を、ヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む。
【背景技術】
【0003】
血圧は、動脈壁に対して血流によって生じる力である。正常な血圧は、心臓収縮期に120であり、心臓拡張期に80であると解されている。高血圧は、140以上の心臓収縮期の血圧の上昇並びに/あるいは90以上の心臓拡張期の血圧の上昇によって特徴付けられる疾患である。高血圧には、例えば血管狭窄による全末梢血管抵抗における増大、又は心拍出量における増大のいずれか、あるいはそれらの双方が存在する。血圧は流量×抵抗に等しいため、これらの状態が血圧における上昇を生じさせる。ストレス、食生活及び生活スタイル、並びに腎臓病、ホルモン障害、及び循環障害を含む、高血圧に寄与し得る多数の因子が存在する。治療を受けていない高血圧患者には、左心室不全、心筋梗塞、脳出血、又は腎不全に対する大きなリスクがある。高血圧は、脳梗塞及び冠状動脈硬化症についてのリスク因子でもある。現在では、高血圧患者は、利尿薬、β−ブロッカー、ACEインヒビター、アンジオテンシンアンタゴニスト、カルシウムチャンネルブロッカー、α−ブロッカー、α−β−ブロッカー、神経系インヒビター、並びに血管拡張剤の使用を含む薬剤療法によって治療されている。
【0004】
前高血圧の個体は、120から139mmHgの心臓収縮期の血圧を有するか又は81から89mmHgの間の心臓拡張期の血圧を有する個体として分類される。この分類は、Seventh Report of the Joint National Committee on Prevention,Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Pressure (JNC 7),page 87,NIH Publication No.04−5230に基づくものである。前高血圧の個体は典型的には、薬剤療法によって治療されていないが、その代わりに健康的な生活スタイルのための提案が与えられている。これらの提案は、健康的な体重の維持;運動;果物、野菜、及び低脂肪の食事を重要視した健康的な食事計画に従うこと;低ナトリウムの食事を選択及び作ること;アルコール飲料を可能な限り適度にすることを含む。健康的な生活スタイルを身に付けることは、多くの場合において、異常な血圧の予防及び調節の双方において効果的な最初の一歩である。
【0005】
多数の高血圧患者がインスリン耐性である。インスリンはグルコースの組織への取り込みを刺激するものであり、その様な機能は個体間で大きく異なる。インスリン耐性があると、組織はインスリンの作用に応答する機能が低減する。インスリン耐性を補うために、膵臓はより多くのインスリンを分泌する。そのため、インスリン耐性を有する個体は、高い血漿インスリン濃度を有する。異常な血圧がインスリン耐性の程度に関連している証拠が存在する。インスリン耐性が発生する正確な経路は不明であるが、遺伝、食事、及び運動のレベルが役割を担っていると解されている。
【0006】
「シンドロームX」、「インスリン耐性シンドローム」、又は「死のカルテット」とも称される「メタボリックシンドローム」は、心臓血管疾患、脳梗塞、及び/又はII型糖尿病についてのリスク因子の蓄積によって特徴付けられる。メタボリックシンドロームは、腹腔内脂肪の蓄積及びインスリン耐性を生じさせるストレスホルモンであるコルチゾールの過剰生産によって生じる可能性がある。薬剤療法は、現在、メタボリックシンドロームを有する個体については推奨されていない。メタボリックシンドロームを特徴付けるリスク因子は、腹腔内における脂肪組織の量の増大(腹部肥満)、インスリン発症のリスクの増大を伴うインスリン耐性、高インスリン血症、高レベルの血中脂肪、血圧の増大、血清脂質の上昇を含む。National Cholesterol Education Adult Treatment Panel(ATP III)は、下表のリスク因子の少なくとも3つを有する個体をメタボリックシンドロームであると定義した。
【0007】
【表1】

【0008】
しかしながら、World Health Organizationは、糖尿病/インスリン耐性、並びに以下のリスク因子:臀部に対する腰の高い比率;高トリグリセリド又は低HDLコレステロール;高血圧;及び高尿中アルブミン排泄率の少なくとも2つを有する個体をメタボリックシンドロームであると定義している。
【0009】
メタボリックシンドロームに関連する疾患は、II型糖尿病、異常βリポタンパク血症、心筋梗塞、脳梗塞、及び動脈硬化症、並びに一般的なインスリン耐性、腹内脂肪の蓄積によって生じる腹部肥満、血中血清脂質及びグルコースの上昇、心臓拡張期及び/又は心臓収縮期の血圧の上昇、及び高血圧を含む、これらの疾患のリスク因子を含む。
【0010】
前高血圧を有する個体及びメタボリックシンドロームを有する個体の治療は、健康的な体重を維持すること、運動をすること、並びに健康的な食事計画に従うことを含む、健康的な生活スタイルを採用するように努められている。これらの個体に対して薬剤療法が推奨されていないことから、血圧の降下及びインスリン耐性の低下において有効な補助療法として個体に使用される、ブドウ抽出物を含む栄養補助食品が必要とされている。
【0011】
ブドウ種子は、約5〜8重量%のフラボノイドを含有する。フラボノイドは、植物に広範に分布している食事性ポリフェノール化合物の重要な群を構成する。4000を超える化学的に独特なフラボノイドが、植物起源、例えば、果物、野菜、マメ、ナッツ、種子、ハーブ、スパイス、花、並びに茶、ココア、ワイン、及びブドウジュースのような飲料において同定されている。
【0012】
ブドウ種子についてのフラボノイドの用語は、フラバン−3−オールの単量体、具体的には、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、並びに(−)−エピカテキン3−ガレートを示す。化学的に結合した2つ以上のフラバン−3−オール単量体は、プロアントシアニジン又はオリゴマー性プロアントシアニジン(「OPC」)と称され、プロシアニジン及びプロデルフィニジンを含む。2つのモノマーを含有するOPCは二量体と称され、3つのモノマーは三量体と称され、4つのモノマーは四量体と称され、5つのモノマーは5量体と称される。実施上、オリゴマーは2から7の鎖長(二量体から七量体)を有するが、ポリマーは、7より長い鎖長を有する成分を表わす。慎重に検討された結果、ポリマー及び縮合したタンニンを含む、2つ以上のモノマーを含有する全てのプロアントシアニジンとしてOPCを定義することが、Grape Seed Method Evaluation Committee(National Nutritional Foods Association)の統一された見解である。かくして、ブドウ種子抽出物中のオリゴマーは、例えば、二量体及び三量体を含み、前記ポリマーは16もの単位を有し得るという証拠がある。
【0013】
以下は、プロアントシアニジンの典型的な構造であり、エピカテキン−ガレート伸長単位及び末端単位を示す。前記伸長単位は、例えば、エピカテキン(2)及びエピガロカテキン(3)結合基によって表わされている。一方で、末端単位はエピカテキンガレート(4)の基によって表わされている。
【0014】
【化1】

【0015】
ポリフェノール化合物をブドウ抽出物として商業的に使用するためには、これらの化合物は、より濃縮された形態でブドウから分離されなければならない。ポリフェノール化合物をブドウ全体、ブドウ搾りかす、及びブドウ種子から抽出し、精製し、濃縮する一般的な方法は、参照によって本明細書に取り込む米国特許第6、544、581号に開示されている。
【特許文献1】米国特許第6、544、581号
【非特許文献1】Seventh Report of the Joint National Committee on Prevention,Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Pressure (JNC 7),page 87,NIH Publication No.04−5230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、メタボリックシンドローム及び/又はメタボリックシンドロームを伴う疾患を予防及び/又は治療する方法を提供する。この方法は、有効量のブドウ抽出物を含む栄養補助食品を、治療する必要があるヒトを含む動物に投与する工程を含む。特に、本発明において使用するブドウ抽出物は効果的に、メタボリックシンドロームを有する個体において、血圧を降下させ、且つ、酸化LDLコレステロールを低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、約5から15重量%の単量体、約5から20重量%の二量体、約3から10重量%の三量体、約2から10重量%の四量体、及び約2から10重量%の五量体を有するブドウ抽出物を含む栄養補助食品を投与する工程を含む、哺乳動物においてメタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する方法も提供する。単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体を含む低分子量フェノール化合物の全量は、約25から50重量%の間、好ましくは約25から40重量%の間、より好ましくは約30から40重量%の間、更に好ましくは約25から35重量%の間である。フェノール化合物の全量は、約80重量%以上、好ましくは約90重量%以上である。
【0018】
本発明は、前高血圧を予防及び/又は治療する方法も提供する。この方法は、有効量のブドウ抽出物を含む栄養補助食品を、治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む。特に、本発明の方法において使用するブドウ抽出物は効果的に、前高血圧の個体における血圧を降下させる。
【0019】
本発明は、約5から15重量%の単量体、約5から20重量%の二量体、約3から10重量%の三量体、約2から10重量%の四量体、及び約2から10重量%の五量体を有するブドウ抽出物を含む栄養補助食品を投与する工程を含む。単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体を含む低分子量フェノール化合物の全量は、約25から50重量%の間、好ましくは約25から40重量%の間、より好ましくは約30から40重量%の間、並びに更に好ましくは約25から35重量%の間である。フェノール化合物の全量は、約80重量%以上、好ましくは約90重量%以上である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
用語「有効量」は、個体においてインスリン耐性を増大させるような副作用を有すること無く、少なくとも約2%、好ましくは少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約8%まで、前高血圧を有する個体又はメタボリックシンドロームを有する個体における心臓収縮期及び/又は心臓拡張期のいずれか又は双方を低減させるのに十分なブドウ抽出物の量を意味する。しかしながら、適当な臨床的評価項目は、前高血圧を有する個体又はメタボリックシンドロームを有する個体における120mmHg未満の心臓収縮期の血圧である。本発明において使用するブドウ抽出物は、血圧降下に加え、メタボリックシンドロームを有する患者において酸化LDLコレステロールを低減させることも示された。LDLコレステロールの増大は、アテローム性動脈硬化症のリスク因子であると認識されている。酸化修飾されたLDLが病理プロセスの発達を開始することの強力な証拠が存在する。かくして、酸化LDLの濃度を低下させることは、メタボリックシンドロームを有する個体においてアテローム性動脈硬化症を縮小及び/又は予防して良い。
【0021】
本発明で使用すべきブドウ抽出物は、順相高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)によって測定すると、約5から15重量%の単量体、約5から20重量%の二量体、約4から10重量%の三量体、約2から10重量%の四量体、及び約2から10重量%の五量体のフェノール分析結果を有する。本発明において使用するブドウ抽出物は、Folin Ciocalteu法で測定すると、全体で約80重量%以上、好ましくは約90重量%以上のフェノール化合物も含む。本発明において使用するブドウ抽出物は、チオ開裂反応後に逆相HPLCで測定すると、約2重量%以下、より好ましくは約1重量%未満のエピカテキン−ガレート末端単位も含む。本発明において使用するブドウ抽出物は、チオ開裂反応後に逆相HPLCで測定すると、約12重量%以下、好ましくは約8重量%以下、より好ましくは約5重量%以下のエピカテキン−ガレート伸長単位も含む。
【0022】
本発明において使用するブドウ抽出物は、下記のように米国特許第6,544,581号に開示されている熱水抽出法を改良することによって製造されて良い。一般的には、米国特許第6,544,581号に開示されているような熱水抽出法は、以下の工程を含む。工程(1)では、乾燥又は新鮮なブドウ種子を、大半のポリフェノールを抽出するのに十分な時間に亘って熱水で加熱する。140から212°Fの温度が使用されて良く、好ましくは160から212°F、より好ましくは180から212°F、更に好ましくは190から212°Fであり、約1から6時間の期間に亘る。加熱時間は、使用する温度との関係で変化して良い。一般的には、より低い温度ではより長い抽出時間が必要とされる。工程(2)では、ブドウ種子の水による粗抽出物を、金属ふるい上で脱水することによって、使用した種子から分離して良い。次いで、抽出物を冷却し、任意の適切な市販のペクチン分解酵素、例えば、Novo Nordisk製のPectinex(登録商標) Ultra SP−Lで約50から200ppmの濃度において処理して細胞壁成分を破砕して良い。好ましくは、種子の水による抽出物は、80から120°Fの温度で二時間に亘って酵素処理されて良い。代替的には、種子の水による抽出物は、約40から50°Fで7から14日間以上に亘って酵素処理されて良い。工程(3)では、結果として得られた不透明な種子抽出物を酸、好ましくは無機酸、より好ましくは硫酸によって約1.5から2.5のpHまで酸性化して、約1時間から約2日間まで反応させた。酸性化した抽出物を数週間までに亘って冷却し、タンパク質及び他のポリサッカリドを含む高分子を凝集させて良い。次いで、冷却した酸性化抽出物を、ケイソウ土を使用して濾過し、透明な種子抽出物を得て良い。他の濾過助剤、例えば、パーライトを使用しても良い。
【0023】
米国特許第6,544,581号の工程(2)は、本発明において使用するブドウ抽出物を製造するために、約80から120°Fの温度で4から5日の期間に亘って種子の水による抽出物を酵素処理することによって改良されて良い。いずれの理論に繋げることも意図しないが、この工程の特定の温度範囲において米国特許第6,544,581号で使用されている期間よりも長い期間は、結果として得られる新規ブドウ抽出物を生じさせると解される。酵素処理の時間は、使用する温度に応じて変化して良い。一般的には、より低い温度では、より長い処理時間が必要とされる。かくして、種子抽出物は、約60から80°Fの温度において2週間以上の期間まで酵素処理をされて良い。
【0024】
代替的には、本発明において使用するブドウ抽出物は、以下の工程によって製造されて良い。米国特許第6,544,581号の工程(1)の抽出後又は工程2のペクチナーゼ処理後において、抽出物を細菌学的な寒天プレート上に塗布して良い。インキュベートすると、多数の種類の酵母、細菌、及び/又は真菌が出発物質に依存して存在する可能性がある。生きている培養菌を混合物として単離して良い。一度単離すると、前記混合物は、その後の抽出及び/又はペクチナーゼ酵素治療工程において使用されて良い。例えば、種子の水による抽出物は、任意の適切な市販のペクチン分解酵素で処理して、酵母、細菌、及び/又は真菌の単離された混合物と組み合わせて良い。組み合わせた混合物は、1から10日、好ましくは約2から5日の期間に亘って約70から100°Fの温度において静置する。酵素処理の時間は、使用する温度及び接種菌数に応じて変化して良い。結果として得られる不透明な種子抽出物は、上述のように適切な酸で1.5〜2.5のpHまで酸性化して、約1時間から約2日間に亘って反応させて良い。酸性化した抽出物を冷却して、数日間保存し、タンパク質及びポリサッカリドを凝集させて良い。次いで、冷却した酸性化抽出物は、珪藻土を用いて濾過して、透明な種子抽出物を得て、更に米国特許第6,544,581号による処理をして血圧降下及び酸化LDLの低減に適切な精製ブドウ抽出物を製造して良い。
【0025】
酵母、細菌、及び/又は真菌の混合物を必要とする方法によって製造したブドウ抽出物と、米国特許第6,544,581号の方法によって製造したブドウ抽出物中の没食子酸の量をHPLCによって比較した。その様な分析は、米国特許第6,544,581号のブドウ抽出物中には約50から150ppmの間の値から、前記混合物を使用する本発明において使用するブドウ抽出物では約400から1500ppmの間の値に増大することを示した。没食子酸における増大は、エピカテキン−ガレート末端及び伸長単位がプロシアニジンから脱エステル化されていることを示す。いずれの理論に繋げることを意図しないが、酵母、細菌、及び/又は真菌の混合物は、ブドウ抽出物を基質として使用して、増殖し、タンナーゼ酵素活性を生じ、プロシアニジンの脱エステル化及び没食子酸の放出を生じさせる。その様なものとして、生きた酵母、細菌、及び/又は真菌の混合物の使用は、約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下のエピカテキン−ガレート末端単位並びに約12重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは約5重量%以下
のエピカテキン−ガレート伸長単位を有する本発明において使用するブドウ抽出物を生じさせる。
【0026】
1つの実施態様では、本発明のブドウ抽出物は、以下の工程によって製造されて良い。米国特許第6,544,581号の工程(1)の抽出又は工程(2)のペクチナーゼ処理後に、任意の適切な市販の真菌タンナーゼ酵素、例えば、タンニンアシルヒドロラーゼ(EC3.1.1.20)を約5から1000ppmの間の濃度で添加して良い。使用するタンナーゼの濃度に依存して、前記混合物を約1時間から約2日間、好ましくは1から2日間に亘って、又は末端単位が約2%以下、好ましくは約1%以下に低減し、伸長単位が約8%以下、好ましくは約5%以下に低減するまで反応させて良い。十分な反応時間の後に、抽出物は1.5から2.5のpHまで酸性化して、40から60°Fのより温度の低い保存条件下でタンパク質及びポリサッカリドを凝集させて良い。抽出物を濾過して、米国特許第6,544,581号に従って更に処理して、血圧降下特性を有するブドウ抽出物を製造して良い。
【0027】
本発明で使用するブドウ抽出物は、カプセル剤、錠剤、粉末剤、液剤、ゲル剤、懸濁剤、クリーム剤、パスタ剤、ゲル剤、坐剤、及び経皮パッチ剤等を含む栄養補助食品に製剤化されて良い。例えば粉末剤又は液剤の形態の栄養補助食品は、栄養価のある薬、食品、及び/又は飲料に添加され、機能性の栄養価のある薬、食品、及び/又は飲料製品を形成して良い。栄養補助食品は、例えば、ミルク、ジュース、水のような消費可能な液体又は消費可能なゲルと混合するための粉末剤、あるいは他の食品又は飲料に混合するためのシロップとして製剤化されて良い。本発明の栄養補助食品は、他の食品又は飲料と共に製剤化されて、所定量の補助食品、例えば単一提供用のバー(Single−serving bar)を提供することもできる。本発明において使用されるブドウ抽出物を含んで良い典型的な食品は、酪農食品、例えば、ヨーグルト、シリアル、パン、スナック食品、フルーツジュース、及び他のソフトドリンクを含む。香味剤、バインダー、タンパク質、複合糖質、ビタミン、及びミネラルなどが必要に応じて添加されて良い。好ましくは、前記ブドウ抽出物は、経口投与用に製剤化される。
【0028】
本発明において使用する栄養補助食品は、毎日の投与又は必要に応じて投与することが意図される。前高血圧を有する個体又はメタボリックシンドロームを有する個体における栄養補助食品の予防量又は治療量の大小は、治療する疾患の重度及び治療経路で変化するであろう。投与量及びおそらく投与頻度も、個体の年齢、体重、及び応答によって変化するであろう。一般的には、一日の全投与量は、本明細書に開示する疾患については、約50mgから約1000mgの重量のブドウ抽出物が一回又は分割して経口又は経皮投与、好ましくは経口投与される。好ましい経口の1日の投与量の範囲は、約50mgから約500mg、より好ましくは約150mgから約300mgのブドウ抽出物の重量(つまり、賦形剤及び担体を除く)である。例えば、カプセル剤又は錠剤は、150mg又は300mgのいずれかの投与量で製剤化されて良く、飲料は50mgのブドウ抽出物を用いて製剤化されて良い。その様な投与計画は、好ましくは少なくとも1ヶ月、より好ましくは6ヶ月以上に亘って維持される。
【0029】
本発明で使用する栄養補助食品は、製薬学的に許容される担体、賦形剤、ビタミン、ミネラル、及び/又は他の栄養との混合物中において、従来の様式(例えば、湿式造粒又は乾式造粒)で製剤化されて良い。代表的な担体及び賦形剤は、固体の経口製剤(例えば、粉末剤、カプセル剤、及び錠剤)の場合には、デンプン、糖、マイクロクリスタリンセルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダー、及び崩壊剤などを含むが、それらに限らない。
【0030】
任意の適切な投与経路を使用して、本発明の栄養補助食品が個体に投与されて良い。適切な経路は、例えば、経口、経直腸、非経口、静脈内、局所、経皮、皮下、及び筋肉内を含む。任意の投与経路を使用して、有効量の本発明の方法に係るブドウ抽出物が個体に提供されて良いが、錠剤、カプセル剤、又は粉末剤のような固体の投与形態を伴う経口投与が好ましい。ブドウ抽出物が、機能性の栄養価のある薬、食品、又は飲料における使用のために製剤化されることも好ましい。
【0031】
本発明において使用するブドウ抽出物は、利尿剤、β−ブロッカー、ACEインヒビター、アンジオテンシンアンタゴニスト、カルシウムチャンネルブロッカー、α−ブロッカー、α−βブロッカー、神経系インヒビター、血管拡張剤、及び抗酸化剤を含むがそれらに限らない他の活性薬剤と併用しても良い。
【0032】
1.ブドウ抽出物の特性
近年、ブドウ種子ポリフェノールの使用が心臓収縮期の血圧を降下させず、高血圧の個体においてビタミンCと組み合わされる際に心臓収縮期の血圧を実際には上昇させることが報告された。Wart et al.,”The combination of vitamin C and grape−seed polyphenols increases blood pressure:a randomized,double−blind placebo controlled trial,”Journal of Hypertension 2005;23:427−434参照。いずれかの理論に繋げることを意図しないが、ブドウ抽出物のフェノール分析結果が、それらの血圧降下における有効性にとって重量であると解される。Wardの研究において評価されたブドウ種子抽出物は、Folin Ciocalteu法で測定すると全体で50.6%のフェノール化合物であり、チオ開列反応後の逆相HPLCによって測定すると11.2%のエピカテキン−ガレート末端単位及び11.8%のエピカテキン−ガレート伸長単位であり、順相HPLCで測定すると、7.3%の単量体、4.4%の二量体、2.0%の三量体、1.9%の四量体、及び1.1%の五量体であり、単量体から五量体までの全体で16.7%であるというフェノール分析結果を有するVinlife(登録商標)であった。
【0033】
市販のブドウ種子抽出物は、各種の単量体及びプロアントシアニジンを含有する。幾つかの市販の抽出物の逆相HPLCによるフェノール分析結果は表1に記載しており、順相HPLCによる測定結果を表2に記載している。これらの分析から、本発明において使用するブドウ抽出物(現在、Polyphenolics,IncによってMegaNatural(登録商標)−BPとして製造されている)は、他のブドウ種子抽出物とは区別される3つの特徴を有する:
1.Folin Ciocalteu法によって測定すると約80重量%超、より好ましくは約90重量%超のフェノール化合物全体の量を有する事によって決定されるような高い純度;
2.多量、例えば、約25から50重量%の間の単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体である低分子量フェノール化合物;
3.微量又は存在しない、例えば、約2%未満、好ましくは約1%未満の末端単位におけるエピカテキン−ガレート、並びに少量、例えば、約12%未満、好ましくは約5%未満の伸長単位におけるエピカテキン−ガレート。
【0034】
また、いずれかの理論に繋げることを意図しないが、ブドウ抽出物のフェノール分析結果は、個体における前高血圧又はメタボリックシンドロームの治療又は予防における有効性にとって重要であると解される。特に、低分子量化合物がより多く存在すると共に、本発明において使用するブドウ抽出物の末端単位におけるエピカテキン−ガレートが存在しないこと並びに伸長単位におけるエピカテキン−ガレートが少量であることは、血管拡張の増大に寄与し、下記のようなメタボリックシンドローム及び前高血圧を有する個体の臨床試験で血圧降下に寄与すると解される。
【0035】
単量体、オリゴマー、ポリマーの割合を測定する逆相HPLC法
ブドウ抽出物の逆相HPLCを使用して、280nmのピークエリアに基づいて単量体、オリゴマー、及びポリマーの割合を測定することができる。
【0036】
【表2】

【0037】
試料調製:
0.1gのブドウ抽出物を正確に秤量して100mLの容量フラスコに入れた。その試料を少量のメタノール(≦5mL)に溶解して、必要な場合には超音波処理した。18Megaohm waterで満たした。インジェクションの前に、試料を遠心分離(14,000rpm,10分)するか、又は0.45μMガラスフィルターで濾過する。単量体、オリゴマー、及びポリマーの重量%の検出は、標準物質の濃度及びピークエリアに基づく。
【0038】
チオ開列反応後のHPLC分析に基づくプロアントシアニジンの末端及び伸長単位の測定方法
チオ開列は、ブドウ抽出物中のプロアントシアニジンの平均分子サイズ(重合度)及び基本構造を測定する方法である。与えられる情報は、体内における栄養吸収について、ブドウ抽出物の生物学的な特性を示す可能性がある。
【0039】
チオ開列試薬:
0.2N HClを含有するメタノール中の5%フェニルメタンチオール(ベンジルメルカプタン)。
【0040】
条件:
0.1%ブドウ抽出物のメタノール溶液を、等量のチオ開列試薬と混合して、攪拌し、90℃で2分間に亘って加熱する。水を添加して反応を停止する。次いで、反応生成物を14000rpmで2分間に亘って遠心分離する。上清をHPLCによって直接分析する。
【0041】
【表3】

【0042】
分析しようとするブドウ抽出物はメタノールに溶解し、等量のチオ開列試薬と混合して、90℃で2分間に亘って加熱した。放出された単位は、質量分析機によって同定し、上記の条件下におけるHPLCによって定量した。平均重合度は、末端単位に相当するカテキン、エピカテキン、及びエピカテキン−ガレートに対する全てのフラバン−3−オール単位(末端単位へのチオールエーテル付加化合物)のモル比を算出することによって測定した。エピカテキンガレート末端単位の割合は、カテキン、エピカテキン、及びエピカテキンガレートを含む末端単位の総モル数の和におけるエピカテキンガレートのモル比に基づいて測定した。エピカテキン−ガレート伸長単位の割合は、カテキン、エピカテキン、エピカテキン−ガレートチオエーテル付加化合物を含む伸長単位のチオエーテル付加化合物の総モル数の和におけるエピカテキンガレートチオエーテル付加物のモル比に基づいて測定した。フェノール化合物の総量は、Folin Ciocalteu法によってグラム没食子酸当量(GAE)で定量した。Folin Ciocalteu分析法のより詳細については、参照によって本明細書に組み込むWaterhouse,A.L.,Determination of Total Phenolics, in Current Protocols in Food Analytical Chemistry,|1.1.1−|1.1.8,Wrolstad,R.E.,Wiley,2001又はSingleton,V.L.;Orthofer,R.;Lamuela Raventos,R.M.”Analysis of total phenols and other oxidation substrates and antioxidants by means of Folin−Ciocalteu Reagent,”Methods in Enzymology 1999,299,152−178を参照。
【0043】
【表4A】

【表4B】

【0044】
プロアントシアニジンについての順相HPLC分析
プロアントシアニジンのHPLC分析:
オートサンプル/インジェクター、2対のポンプ、カラムヒーター、ダイオードアレイ検出器、経口検出器、及びデータ回収及び処理のためのHP ChemStationを備えたHP 1100 series HPLCによって、クロマトグラフィー分析を実施した。Phenomenex Luna Silica(2)columnによって、プロアントシアニジンオリゴマーの順相分離を実施した。
【0045】
【表5】

【0046】
全てのケースにおいて、カラムは、5mLの最初の移動相でインジェクションする間に再平衡した。カテキン標準物質を調製して分析し、試料中のプロアントシアニジン濃度を算出するための反応検量線を確立した。蛍光検出による単量体に対する二量体、三量体、四量体、及び五量体の相対応答係数は、R.L.Prior and L. Gu, ”Occurrence and biological significance of proanthocyanidins in American diet,”Phytochemistry 2005,66(18)2264−2280によって報告されており、カカオ豆から単離精製された標準物質を使用する。これらの応答係数を使用して、単量体に対する二量体、三量体、四量体、及び五量体を算出した。
【0047】
【表6A】

【表6B】

【0048】
表1及び2に記載の結果は、例えば単量体の割合(%)の異なる範囲を明らかにする異なる方法を用いて得られた。例えば、逆相HPLCを使用して、単量体、オリゴマー、及びポリマーのピークエリアに基づいて、これら3つの群の化合物の割合を測定した。没食子酸は単量体として含まれる。順相HPLCでは、カテキン及びエピカテキンを標準物質として使用して、ブドウ抽出物内の単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体の重量を測定した。R.L.Prior and L.Guによって報告された単量体に対する二量体、三量体、四量体、及び五量体の相対応答係数を使用して、二量体、三量体、四量体、及び五量体を算出した。
【0049】
2.メタボリックシンドロームを有する個体の血圧に対するブドウ抽出物の効果
本発明において使用するブドウ抽出物の血圧に対する効果を、メタボリックシンドロームであると診断された24人の個体において試験した。この試験には、同じ数の20から50歳の間の男性及び女性を含めた。メタボリックシンドロームは、National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel IIIによって規定された基準に基づいて診断した。各々の対象者は、以下の特徴:1)>110mg/dLの空腹時血糖、2)HDL(<40mg/dL[男性]及び<45mg/dL[女性])、3)血圧>130/85、及び4)腹部肥満(>102cm[男性]及び>88cm[女性])の少なくとも3つを示した。現在喫煙者であるか又は元喫煙者(3年未満)である場合;抗炎症剤又は抗高血圧剤を服用している場合;又は市販の抗酸化化合物を服用している場合には、個体を除外した。
【0050】
個体は、8人ごとの3つの群にブロックランダム化し、割り当てられた群に依存して以下のカプセル剤の1つを服用した:
第1群はプラセボカプセル剤を摂取した;
第2群は150mgブドウ抽出物を含有するカプセル剤を摂取した;
第3群は300mgブドウ抽出物を含有するカプセル剤を摂取した。
【0051】
個体には、十分なカプセル剤が与えられて、28日間に亘って一日一回同じ用量で摂取した。この期間の終わりに血圧を測定した。試験の開始時に12時間の期間に亘って自由行動下血圧測定を記録し、4週間後に再び記録した。その方法は非侵襲的であり、上腕に血圧計カフを設置することを含む。ベルトに巻いたFDAに認可された自動膨張機器に前記カフをつなげた。
【0052】
表3は、メタボリックシンドロームを有する患者の3つの群についての血圧のデータを示す。300mg及び150mgの本発明において使用するブドウ抽出物を毎日摂取した個体では、心臓拡張期及び心臓収縮期の双方の血圧における有意な降下が存在した。プラセボの群では、有意な変化は存在しなかった。
【0053】
【表7】

【0054】
基準血圧と血管収縮期及び血管拡張期の血圧の降下との間の関係は、図1及び2に示している。血圧は、mmHgで記載した。メタボリックシンドロームの診断は、上記のリスク因子(その1つが血圧)の3つの存在に基づくため、本試験では、個体を血圧についてブロックランダム化しなかった。その様なものとして、3つの群における平均血圧は類似していない(しかし、狭い範囲内で変化している)。
【0055】
本試験は、150mg及び300mgの1日の投与量における本発明のブドウ抽出物が、メタボリックシンドロームを有する個体における心臓収縮期及び心臓拡張期の双方の血圧を降下させることを示す。この血圧降下は、使用した抽出物の投与量の双方について統計的に有意であった。事実、ブドウ抽出物を使用して観察された血圧変化は、薬剤を使用する主な臨床試験において認められる変化に匹敵した。
【0056】
3.メタボリックシンドロームを有する個体における酸化LDLに対するブドウ抽出物の効果
本発明において使用するブドウ抽出物の酸化LDLに対する効果を、上述のメタボリックシンドロームであると診断された同じ24人の個体において試験した。酸化LDLの濃度は、試験の開始時に測定し、その4週間後に再び測定した。酸化LDLの濃度を測定するために、血液試料を各個体から回収し、分析した。
【0057】
3つの群についての酸化LDL濃度の変化を図3にまとめた。図3は、プラセボについて僅かな酸化LDLの減少を示し、150mgの本発明において使用するブドウ抽出物を摂取した個体について減少傾向を示し、300mgの本発明において使用するブドウ抽出物を摂取した個体について統計的に有意な減少(p<0.05)を示した。図4は、本試験で使用した300mgのブドウ抽出物を摂取した個体における酸化LDLにおける変化と酸化LDLの基準濃度との間の関係を表わす。回帰係数はR=0.52であった。図4は、開始時に高レベルの酸化LDLを有した個体における酸化LDL濃度のより大きな低減を示す。
【0058】
本試験は、150mg及び300mgの毎日の投与量における本発明のブドウ抽出物が、メタボリックシンドロームを有する個体における血漿中の酸化LDL濃度を低減することを示す。さらに、300mgの本発明において使用するブドウ抽出物を摂取した個体についての酸化LDL濃度における統計的に有意な低減が存在した。
【0059】
4.前高血圧を有する個体に対するブドウ抽出物の効果
本発明において使用するブドウ抽出物を、前高血圧であると診断された24人の個体に対して試験した。試験には、30から60歳の間の同じ数の男性及び女性を含めた。前高血圧は、Seventh Report of the Joint National Committee on Prevention,Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Pressureによって規定された基準に基づいて診断された。各々の対象者は、120から139mmHgの間の心臓収縮期の血圧及び/又は81から89mmHgの間の心臓拡張期の血圧を有した。現在の喫煙者又は元喫煙者(3年未満)である場合;抗炎症剤または抗高血圧剤を服用している場合;又は市販の抗酸化剤を服用している場合には、個体を除外した。
【0060】
個体は、12人の2つの群に性別についてブロックランダム化し、割り当てられた群に依存して、以下のカプセル剤の1つを服用した:
第1群はプラセボカプセル剤を摂取した;
第2群は300mg MegaNatural(登録商標)−BPを含有するカプセル剤を摂取した。
【0061】
個体は十分なカプセル剤を摂取して、8週間に亘って一日一回同じ用量で摂取した。その期間の終わりに、血圧を測定した。自由行動下血圧を試験の開始時に12時間に亘って記録し、8週後に再び記録した。この手法は非侵襲的なものであり、上腕に血圧計カフを設置することを含む。ベルトに巻いたFDAに認可された自動膨張機器に前記カフをつなげた。
【0062】
表4は、前高血圧を有する2つの群の個体についての血圧データを示す。2つの群の間の基準血圧は有意に異なる物ではなかった。本発明において使用するブドウ抽出物を毎日300mg摂取した個体では、心臓収縮期及び心臓拡張期の双方の血圧における有意な降下が存在したが、プラセボの群には有意な変化が存在しなかった。例えば、MegaNatural(登録商標)−BPを使用して治療した群における血管収縮期の血圧降下の平均は、7.2±2.5mmHgであったが、プラセボの群における心臓収縮期の血圧は0.03±1.5mmHg増大した。そのデータを以下にまとめる。値はmmHg(平均±SEM)で与える。
【0063】
【表8】

【0064】
本試験は、300mgの毎日の投与量で本発明のブドウ抽出物が、前高血圧を有する個体における心臓収縮期及び心臓拡張期の双方の血圧を降下することを示す。その血圧降下は統計的に有意である。事実、ブドウ抽出物を使用して認められた血圧における変化は、薬剤を使用する主な臨床試験において認められるものに匹敵した。
【実施例】
【0065】
本発明は、ブドウ抽出物の製造及び栄養補助食品の調製のための方法を開示する以下の実施例を参照することによって更に規定される。本実施例は、代表的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0066】
実施例1:ブドウ抽出物を製造するための方法
乾燥したブドウ種子を200°Fで2時間に亘って水で抽出し、その抽出物を金属ふるい上で種子から分離した。前記抽出物90から100°Fに冷却して、ペクチナーゼを200ppmの濃度で添加した。前記抽出物を2つの部分に分割した。第一の部分には、市販の真菌タンナーゼ酵素(タンニンアシルヒドロラーゼ,E.C3.1.1.20)を1000ppmの濃度で添加した。第二の部分には、50ppmの濃度でタンナーゼを添加した。本来の抽出物における没食子酸の残留濃度は18.9%の末端単位及び11.1%の伸長単位で117ppmであった。1000ppmのタンナーゼ酵素を用いた約2時間の処理の内に、没食子酸濃度は、0%の末端単位及び約5.5%の伸長単位で904ppmにまで上昇した。没食子酸が1%未満の末端単位及び6%未満の伸長単位で810ppmに達するには、50ppmのタンナーゼ酵素を使用する処理は約34時間を必要とした。約2日後に、双方の抽出物を1.5から2.5のpHまで酸性化して、40から60°Fの冷却保存条件下でタンパク質及びポリサッカリドを凝集させた。その抽出物を濾過して、米国特許第6,544,581号に従って更に処理して、血圧を降下し、酸化LDL濃度を低減するという特性を有するブドウ抽出物を製造した。
【0067】
実施例2:カプセル剤
MegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物(150mg又は300mg)をステアリン酸マグネシウム(各々3mg又は6mg)と乾燥混合し、(ゼラチン及び水からなる)硬ゼラチンカプセル剤に充填した。150mgの製剤において、ブドウ抽出物は90%以上のフェノールを有するか、又は150mgのブドウ抽出物あたりに135mgのフェノールを有する。300mgの製剤では、ブドウ抽出物は90%以上のフェノールを有するか、又は300mgのブドウ抽出物あたりに279mgのフェノールを有する。一日の投与量は、1日あたり1つのカプセル剤である。
【0068】
MegaNatural(登録商標)ブドウ抽出物は、飲料において使用される表4に示した賦形剤との混合物に製剤化した(成分は乾燥混合した)。最終的な飲料を調製するために、9.47gの乾燥混合物を500mLの冷水と組み合わせて、攪拌した。500mLで16カロリーを含有する。最終的な飲料は、100mgのMegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物及び120mgのビタミンCを1Lあたりに含有し、2200TEのORAC値を有するであろう。
【0069】
mmol Trolox(市販されていないトコフェロールの水溶性誘導体)当量(TE)/gで測定されるORACは、「酸素ラジカル吸収能」を意味する。これは、食品及び栄養補助食品における抗酸化活性を科学者が測定するための基準である。一食分の新鮮な又は新しく調理した果物及び野菜は、平均で600から800ORAC単位を示す。2000から5000ORAC単位/日を提供する食品又は栄養補助食品の摂取量を増大することが健康に有益であると示唆されている。
【0070】
【表9】

【0071】
実施例4:飲料
MegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物は、表5に示した賦形剤と共に飲料に製剤化した。それに従う飲料は、50mgのMegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物及び60mgのビタミンC(100% RDI)を8fl ozあたりに含有する。8fl ozでは、前記飲料は0カロリーであり、全体で0.15gの糖質を含有する。16fl ozでは、2200TEのORAC値を有するであろう。
【0072】
【表10】

【0073】
実施例5:飲料
MegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物は、表6に示した賦形剤と共に飲料に製剤化した。それに従う飲料は、50mgのMegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物及び60mgのビタミンC(100% RDI)を8fl ozあたりに含有する。8fl ozでは、前記飲料は15カロリーであり、全体で4gの糖質を含有する。16fl ozでは、2200TEのORAC値を有するであろう。
【0074】
【表11】

【0075】
実施例6:ビタミン/ミネラル栄養補助食品
MegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物(150mg)は、表7に示した賦形剤と共に乾燥混合して、錠剤に押圧し、マルチビタミン/ミネラル栄養補助食品を形成した。1日の投与量は、1日あたり1つの錠剤であり、好ましくは食品と共に摂取する。
【0076】
【表12】

【0077】
実施例7:ビタミン/ミネラル栄養補助食品
MegaNatural(登録商標)−BPブドウ抽出物(150mg)は、表8に示した賦形剤及び下記の成分と共にV混合機で均一になるまで混合した。その混合物を775mg±2%の特定重量の錠剤に押圧し、マルチビタミン/ミネラル栄養補助食品を形成した。その錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性ガムの透明コーティングでスプレーコーティングして、乾燥させた。1日の投与量は、1日あたり1つの錠剤であった。表8の製剤についてのバッチサイズは、500,000の錠剤である。
【0078】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明において使用するブドウ抽出物で治療したメタボリックシンドロームを有する個体についての心臓収縮期の血圧降下と基準血圧との間の関係を示す。
【図2】図2は、本発明において使用するブドウ抽出物で治療したメタボリックシンドロームを有する個体についての心臓拡張期の血圧降下と基準血圧との間の関係を示す。
【図3】図3は、本発明において使用するブドウ抽出物で治療したメタボリックシンドロームを有する個体における酸化LDL濃度における変化を示す。
【図4】図4は、本発明において使用するブドウ抽出物を300mg与えた個体における基準酸化LDL濃度と酸化LDL濃度における変化との間の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧を降下させるための有効量で、ブドウ由来のポリフェノール抽出物を含む栄養補助食品を、メタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物においてメタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する方法。
【請求項2】
前記ポリフェノール抽出物が、約5から15重量%の間の単量体、約5から20重量%の間の二量体、約3から10重量%の間の三量体、約2から10重量%の間の四量体、及び約2から10重量%の間の五量体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体の全量が、約25から50重量%の間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出物が、フェノール化合物を全体で約80重量%以上含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出物が、約2重量%以下のエピカテキン−ガレート末端単位を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出物が、約12重量%以下のエピカテキン−ガレート伸長単位を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記栄養補助食品中の抽出物の量が、約50から1000mgの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記栄養補助食品が経口投与用に製剤化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記栄養補助食品が、錠剤、粉末剤、液剤、カプセル剤、及びゲル剤からなる群から選択される形態で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粉末剤が食品中で使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末剤が飲料製品中で使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
血圧を降下させるための有効量で、ブドウ由来のポリフェノール抽出物を含む栄養補助食品を、前高血圧を治療及び/又は予防する必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物において前高血圧を治療及び/又は予防する方法。
【請求項14】
前記ポリフェノール抽出物が、約5から15重量%の間の単量体、約5から20重量%の間の二量体、約3から10重量%の間の三量体、約2から10重量%の間の四量体、及び約2から10重量%の間の五量体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体の全量が、約25から50重量%の間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抽出物が、フェノール化合物を全体で約80重量%以上含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抽出物が、約2重量%以下のエピカテキン−ガレート末端単位を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抽出物が、約12重量%以下のエピカテキン−ガレート伸長単位を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記栄養補助食品中の抽出物の量が、約50から1000mgの間である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記栄養補助食品が経口投与用に製剤化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記栄養補助食品が、錠剤、粉末剤、液剤、カプセル剤、及びゲル剤からなる群から選択される形態で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記粉末剤が食品中で使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末剤が飲料製品中で使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
酸化LDLコレステロールを低減するための有効量で、ブドウ由来のポリフェノール抽出物を含む栄養補助食品を、メタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物においてメタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する方法。
【請求項26】
前記ポリフェノール抽出物が、約5から15重量%の間の単量体、約5から20重量%の間の二量体、約3から10重量%の間の三量体、約2から10重量%の間の四量体、及び約2から10重量%の間の五量体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記単量体、二量体、三量体、四量体、及び五量体の全量が、約25から50重量%の間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抽出物が、フェノール化合物を全体で約80重量%以上含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抽出物が、約2重量%以下のエピカテキン−ガレート末端単位を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抽出物が、約12重量%以下のエピカテキン−ガレート伸長単位を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記栄養補助食品中の抽出物の量が、約50から1000mgの間である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記栄養補助食品が経口投与用に製剤化されている、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記栄養補助食品が、錠剤、粉末剤、液剤、カプセル剤、及びゲル剤からなる群から選択される形態で投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記粉末剤が食品中で使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記粉末剤が飲料製品中で使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
約5から15重量%の単量体、約5から20重量%の二量体、約3から10重量%の三量体、約2から10重量%の四量体、及び約2から10重量%の五量体を有する、ブドウ由来のポリフェノール抽出物を含む栄養補助食品を、メタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物においてメタボリックシンドロームを治療及び/又は予防する方法。
【請求項38】
約5から15重量%の単量体、約5から20重量%の二量体、約3から10重量%の三量体、約2から10重量%の四量体、及び約2から10重量%の五量体を有する、ブドウ由来のポリフェノール抽出物を含む栄養補助食品を、前高血圧を治療及び/又は予防する必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物において前高血圧を治療及び/又は予防する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−510118(P2009−510118A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533734(P2008−533734)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/038344
【国際公開番号】WO2007/038768
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】