説明

剛性、衝撃強さおよび破断点伸び率の良好なバランスならびに低い熱収縮を有するポリオレフィン組成物

A) A1) 結晶性プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを50〜70重量%;およびA2) C4-C10 α-オレフィンを15〜35重量%含む、エチレンと一以上のC4-C10 α-オレフィンとの一以上のコポリマーを30〜50重量%;含むポリマーブレンド(ここで、該ポリマーブレンド(A)は、10 g/10分以上のMFR値、8重量%以上のC4-C10 α-オレフィン全含量および1.3〜2 dl/gの室温でのキシレン可溶性画分の極限粘度値を有し、(A1)および(A2)の量はポリマーブレンドの全重量に対するものである);ならびに、任意に、B) 90ポイント以下の硬度値(ショアーA、ASTM D-2240)を有し、A2)とは異なる弾性ポリマーを1〜15重量%;および/またはC) 無機充填剤を0.5〜20重量%(ここで、任意の成分(B)および(C)の量は組成物の全重量に対するものである)
を含む、曲げ弾性率、アイゾッド衝撃強さおよび破断点伸び率の改善されたバランスを示すポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性の熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。特に、本発明は、曲げ弾性率、アイゾッド衝撃強さおよび破断点伸び率の改善されたバランスを示す、プロピレンポリマー成分およびエチレンとC4-C10 α-オレフィンとの一以上のコポリマーを含む組成物に関する。
【0002】
上記の性質に加えて、本発明の組成物は、低い度合の熱収縮を示す。この性質は、該組成物から得られる最終製品への高い寸法安定性を与える。
したがって、その機械的および物理的性質のため、本発明のポリオレフィン組成物には、とりわけ自動車の分野での適用(例えばバンパーおよびサイドストリップ)が見出される。
【背景技術】
【0003】
WO 00/26295に、線熱膨張率の低い値および良好な機械的性質を有するポリオレフィン組成物が記載されており、それは5〜15の多分散性インデックスおよび(ASTM-D 1238、コンディションLによる)80〜200 g/10分の溶融流量を有する幅広い分子量分布のプロピレンポリマーを40〜60重量%と、エチレンを少なくとも65重量%含む、一部キシレン-可溶のオレフィンポリマーラバーを40〜60重量%とを含み、そのポリオレフィン組成物の室温でのキシレン可溶部分の極限粘度(IVS)と該プロピレンポリマーの極限粘度(IVA)との間の比IVS/IVAが2〜2.5の範囲にある。
【0004】
これらの組成物は、典型的には650〜1000 MPaの曲げ弾性率を有する。
米国仮出願第60/496579号に対応する欧州特許出願第03018013号に、1000 MPaより大きい、特に1100 MPaより大きい曲げ弾性率を有し、全ての機械的性質の良好なバランスおよび熱収縮の低い値をなお維持する、ポリオレフィン組成物が記載されており、それは:
(A) 5〜15の多分散性インデックスおよび20〜78 g/10分の溶融流量を有する、幅広い分子量分布のプロピレンポリマーを60〜85重量%;および
(B) エチレンを少なくとも65重量%含む、一部キシレン-可溶のオレフィンポリマーラバーを15〜40重量%
含む。
【0005】
その組成および種々の成分の割合に関するその他の特徴と組み合わせて、特定のプロピレンポリマーおよびエチレン/α-オレフィンコポリマーを選択することにより、熱収縮性の非常に低い値を有し、特に、大きな曲げ弾性率値で特徴付けられるポリマー組成物を得ることができることが見出された。
【0006】
かくして、本発明は:
A) A1) ホモポリマーまたはコポリマーが50〜200 g/10分、好ましくは55〜180 g/10分、特に100〜180 g/10分のMFR値(230℃、2.16 kg)、および室温(約25℃)でのキシレン可溶性画分含量7重量%以下を有する、結晶性プロピレンホモポリマー、または5重量%までのエチレンおよび/もしくはC4-C10 α-オレフィンを含むコポリマーを50〜70重量%、好ましくは50〜65重量%、より好ましくは52〜65重量%;および
A2) C4-C10 α-オレフィンを15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%含む、エチレンと一以上のC4-C10 α-オレフィンとの一以上のコポリマーを30〜50重量%、好ましくは35〜50重量%、より好ましくは35〜48重量%
含むポリマーブレンド
(ここで、該ポリマーブレンド(A)は、10 g/10分以上、好ましくは15 g/10分以上のMFR値、7重量%以上、好ましくは8重量%以上、特に8重量%〜15重量%、より好ましくは8重量%〜14重量%、特に9重量%〜14重量%のC4-C10 α-オレフィン全含有量、および1.3〜2 dl/g、好ましくは1.5〜2 dl/gの室温でのキシレン可溶性画分の極限粘度値を有し、(A1)および(A2)の量はポリマーブレンドの全重量に対するものである);ならびに任意に、
【0007】
B) 90ポイント以下、好ましくは88ポイント以下、より好ましくは80ポイント以下の硬度値(ショアーA、ASTM D-2240)を有する、A2)とは異なる弾性ポリマーを1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%;および/または
C) 無機充填剤を0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%
(ここで、任意の成分(B)および(C)の量は組成物の全重量に対するものである)
を含む組成物に関する。
【0008】
本発明の組成物が任意の成分(B)のみを含むとき、(A)の量は99〜85重量%、好ましくは98〜90重量%であり;それが任意の成分(C)のみを含むとき、(A)の量は99.5〜80重量%、好ましくは99.5〜90重量%であり;それが(B)および(C)の両方を含むとき、(A)の量は98.5〜65重量%、好ましくは97.5〜80重量%であることは、上記の定義から明らかである。
「コポリマー」の用語は、一種以上のコモノマーを含むポリマーを含むことも明らかである。
【0009】
前記のように、本発明の組成物は、それらが前記の性質(特に、曲げ弾性率、耐衝撃性、破断点伸び率および収縮)の高いバランスと関連した比較的高いMFR値を有するので、特に射出−成形法を用いて、種々の最終製品または半製品に容易に変換され得る。
【0010】
本発明の組成物のその他の好ましい特徴は:
− 25重量%〜35重量%のエチレン全含量;
− 700〜1200 MPaの曲げ弾性率;
− 23℃で60 KJ/m2 〜「非破断」のアイゾッド値;
− 0.4〜1.2%の収縮;
− 室温でのキシレン可溶性画分:40重量%以下、より好ましくは35重量%以下
である。
【0011】
一般的に、ポリマーブレンド(A)の延性/脆性転移温度は、-30℃以下、好ましくは-40℃より低い。
本発明の組成物は、好ましくは、例えば10〜60 g/10分、特に25〜60 g/10分のような10 g/10分以上または25 g/10分以上のMFR値を有する。
【0012】
前記のように、室温でのキシレン可溶成分(A1)の量は、7重量%以下、好ましくは5重量%以下である。キシレン-可溶物のそのような値は、93%以上、好ましくは95%以上のアイソタクチック指数に相当する。
【0013】
典型的には、成分(A2)は、室温で一部キシレンに溶ける。室温でキシレンに溶ける成分(A2)の画分の含量は、好ましくは約50〜87重量%、より好ましくは60〜80重量%である。
成分(A1)および(A2)のためのC4-C10 α-オレフィンの例は、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンを含み、1-ブテンと一緒であるのが特に好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、成分(B)および(C)が存在するとき、成分(B)および(C)とポリマーブレンド(A)とを機械的に混合することによって製造され得る。そのようなポリマーブレンド(A)は、最初の工程以外の各工程において、先の工程で形成されたポリマーおよび用いられた触媒の存在下に操作され、成分(A1)および(A2)が別々の連続した工程で製造される、少なくとも二つの連続工程を含む連続重合により順に製造され得る。触媒は最初の工程でのみ加えられるが、その活性は連続工程全てでなお活性なままである。
【0015】
連続またはバッチで可能な重合は、以下の既知の方法で行なわれ、液相下、不活性希釈剤の存在もしくは非存在下、または気相下、または液−気混合法により操作される。気相で重合を行なうのが好ましい。
【0016】
重合工程に関係する反応時間、圧力および温度は重要ではないが、温度が50〜100℃であれば最良である。圧力は大気圧またはそれより高くできる。
分子量の調節は、既知の調節剤、特に水素を用いて行なわれる。
ポリマーブレンド(A)は、少なくとも二つの連結された重合ゾーンで行なわれる気相重合法によっても製造され得る。このタイプの方法は、欧州特許出願第782 587号に示されている。
【0017】
詳細には、上記の方法は、触媒の存在下、反応条件下に前記重合ゾーンに一以上のモノマーを供給し、該重合ゾーンからポリマー物質を回収することを含む。この方法において、成長するポリマー粒子は、速い流動化条件(fast fluidisation conditions)下に該重合ゾーン(上昇管)の一つ(第一)を通って上方へ流れ、該上昇管を去り、もう一つ(第二)の重合ゾーン(下降管)へ入り、それを通って、重力の作用下、密度が高められた形態で下方へ流れ、該下降管を去り、上昇管に再導入され、そのようにして、上昇管と下降管の間でポリマーの循環が確立される。
【0018】
下降管において、固体の密度が高い値に達してポリマーの嵩密度に近づく。このようにして、圧力のプラスの獲得が流れの方向に沿って得られ、それゆえ、特別な機械的手段の助けなしで、ポリマーを上昇管に再導入することが可能となる。このようにして、「ループ」循環が設定され、それは、二つの重合ゾーンの間での圧力のバランスおよび系中に導入される損失水頭(head loss)によって定義される。
【0019】
一般的に、上昇管の速い流動化条件は、該上昇管に関連モノマーを含む気体混合物を供給することにより確立される。気体混合物の供給は、適切な場合には気体分配手段の使用により、該上昇管へのポリマーの再導入箇所より下で行なうことが好ましい。上昇管への移動気体の速度は、操作条件下の移動速度より大きく、好ましくは2〜15 m/秒である。
【0020】
一般的に、上昇管を去るポリマーおよび気体混合物は、固体/気体分離ゾーンに運ばれる。固体/気体分離は、慣用の分離手段を用いて行なわれ得る。
この分離ゾーンから、ポリマーは下降管に入る。分離ゾーンを去る気体混合物は、圧縮され、冷却され、適切な場合は、構成モノマーおよび/または分子量調節剤の添加を伴い、上昇管へ移送される。
【0021】
二つの重合ゾーン間のポリマー循環の制御は、機械的バルブのような固体の流れを制御するのに適した手段を用いて、下降管を去るポリマー量を測定することによって行われ得る。
温度のような操作パラメータは、気相オレフィン重合法における通常の温度、例えば50〜120℃である。
【0022】
この方法は、0.5〜10 MPaの間、好ましくは1.5〜6 MPaの間の操作圧力下に行なわれ得る。
有利には、一以上の不活性気体は、不活性気体の分圧の合計が、好ましくは気体の全圧力の5〜80%の間であるような量に重合ゾーン中で維持される。不活性気体は、例えば窒素またはプロパンであり得る。
【0023】
種々の触媒が、該上昇管のいずれかの箇所で上昇管に供給される。しかしながら、それらは下降管のいずれかの箇所でも供給され得る。触媒は、あらゆる物理的状態であり得、それゆえ、固体または液体状態のどちらかの触媒が用いられ得る。
【0024】
上記の重合は、好ましくは、立体特異的なチーグラー-ナッタ触媒の存在下に行なわれる。該触媒の必須成分は、活性形のマグネシウムハライドに両方が担持された、少なくとも一つのチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物と電子供与性化合物とを含む固形触媒成分である。もう一つの必須成分(助触媒)は、アルミニウムアルキル化合物のような有機アルミニウム化合物である。
外部電子供与体が任意に加えられる。
【0025】
本発明の方法で一般的に用いられる触媒は、93%以上、好ましくは95%以上のアイソタクチック指数を有するポリプロピレンを製造することができる。前記の特徴を有する触媒は、特許文献でよく知られており;米国特許第4,399,054号および欧州特許第45977号に記載されている触媒が特に有利である。
【0026】
前記の触媒中に用いられる固形触媒成分は、電子供与体(内部供与体)として、エーテル、ケトン、ラクトン、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物、ならびにモノ-およびジカルボン酸のエステルよりなる群から選択される化合物を含む。
特に好適な電子供与性化合物は、ジイソブチル、ジオクチル、ジフェニルおよびベンジルブチル フタレートのようなフタル酸エステルである。
【0027】
特に好適なその他の電子供与体は、式:
【化1】

(式中、RIおよびRIIは同一または異なって、C1-C18アルキル、C3-C18シクロアルキルまたはC7-C18アリール基であり;RIIIおよびRIVは同一または異なって、C1-C4アルキル基である)
の1,3-ジエーテルであるか;または2位の炭素原子が、5、6もしくは7の炭素原子からなり、かつ2もしくは3の不飽和を含む環式または多環式構造に属する、1,3-ジエーテルである。
【0028】
このタイプのエーテルは、欧州特許出願第361493号公報および第728769号公報に記載されている。
該ジエーテルの代表例は、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0029】
上記の触媒成分の製造は、種々の方法に従って行なわれる。
例えば、MgCl2・nROH付加物(特に、長球形状の粒子の形態)(ここで、nは一般的には1〜3であり、ROHはエタノール、ブタノールまたはイソブタノールである)を、電子供与性化合物を含む過剰のTiCl4と反応させる。その反応温度は、一般的には80〜120℃である。次いで、固体を単離し、電子供与性化合物の存在下または非存在下に、再度TiCl4と反応させ、その後分離し、塩素イオンが完全に消失するまで、一定量の炭化水素で洗浄する。
【0030】
固形触媒成分において、チタン化合物は、Tiとして表され、一般的に0.5〜10重量%の量で存在する。固形触媒成分中に固定される電子供与性化合物の量は、マグネシウムジハライドに対して、一般的に5〜20モル%である。
固形触媒成分の製造に用いられ得るチタン化合物は、チタンのハライドおよびハロゲンアルコラートである。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0031】
前記の反応は、活性型のマグネシウムハライドの形成をもたらす。その他の反応は文献で既知であり、それは、マグネシウムカルボキシレートのようなハロゲン化物以外のマグネシウム化合物から出発し、活性型のマグネシウムハライドの形成をもたらす。
【0032】
助触媒として用いられるAl-アルキル化合物は、Al-トリエチル、Al-トリイソブチル、Al-トリ-n-ブチルのようなAl-トリアルキル、およびOもしくはN原子、またはSO4もしくはSO3基により互いに結合した二以上のAl原子を含む、直鎖状または環状のAl-アルキル化合物を含む。
該Al-アルキル化合物は、一般的にAl/Ti比が1〜1000であるような量で用いられる。
【0033】
外部供与体として用いられ得る電子供与性化合物は、アルキルベンゾエートのような芳香族の酸エステル、および特に少なくとも一つのSi-OR結合(ここで、Rは炭化水素基である)を含むシリコン化合物を含む。
【0034】
シリコン化合物の例は、(tert-ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH3)2、(フェニル)2Si(OCH3)2および(シクロペンチル)2Si(OCH3)2である。前記の式を有する1,3-ジエーテルも有利に用いられ得る。内部供与体がこれらのジエーテルの一つである場合には、外部供与体は省略され得る。
【0035】
本発明による製造法で用いられ得るその他の触媒は、USP 5,324,800およびEP-A-0 129 368に記載されているメタロセン-タイプの触媒であり;例えば、USP 5,145,819およびEP-A-0 485 823に記載されているような架橋されたビス-インデニルメタロセンが特に有利である。好適な触媒のもう一つのクラスは、EP-A-0 416 815(ダウ)、EP-A-0 420 436(エクソン)、EP-A-0 671 404、EP-A-0 643 066およびWO 91/04257に記載されているような、いわゆる拘束された幾何学的触媒である。これらのメタロセン化合物は、特に成分(A2)を製造するために用いられ得る。
【0036】
触媒は、少量のオレフィンと予備-接触され得る(予備重合)。
成分(B)は、好ましくは次の群:
1 C3-C10 α-オレフィンを少なくとも20重量%、好ましくは20〜70重量%(13C-NMR分析)含む、エチレンとC3-C10 α-オレフィンとのコポリマー;
2 15〜30重量%のメチルアクリレート単位を含み、1〜10 g/10分(ASTM D-1238)のMFRを有する、エチレン−メチルアクリレートコポリマー;
3 ブタジエン、ブチレン、エチレンおよびイソプレンから選択される少なくとも一つのコモノマーを含む、直鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和のスチレンブロックコポリマー;
4 エチレン/α-オレフィン/ジエン ターポリマー、特にエチレン-プロピレン-ジエン モノマー ラバー(EPDM);
5 20重量%〜60重量%の酢酸ビニルを含み、1 g/10分以上、好ましくは2〜30 g/10分の190℃/21.2N (ISO 1133)でのMFRを有する、エチレン/酢酸ビニル コポリマー
から選択される。
【0037】
弾性ポリマー1の好ましい例は:
(a) 20重量%〜45重量%の1-オクテン(13C-NMR分析)を有し、好ましくは0.89 g/mlより小さい密度(ASTM D-792による測定)を有する、エチレンと1-オクテンとの弾性コポリマー;
(b) 20重量%〜40重量%の1-ブテン(13C-NMR分析)を有し、好ましくは0.89 g/mlより小さい密度を有する、エチレンと1-ブテンとの弾性熱可塑性コポリマー
である。
【0038】
弾性コポリマー2の好ましい例は:
(c) 約20〜25重量%のメチルアクリレート単位を含み、1.5〜6 g/10分のMFRを有する、エチレン-メチルアクリレート コポリマー
である。
【0039】
弾性コポリマー3の好ましい例は:
(d) スチレンとイソプレンまたはブタジエンとの不飽和の直鎖状ブロックコポリマー、およびスチレンとエチレンおよびブチレンとの飽和の直鎖状ブロックコポリマー
である。
【0040】
弾性コポリマー4の好ましい例は:
(e) 50重量%〜80重量%のエチレンおよび1重量%〜15重量%のジエン、例えばブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエンおよびエチリデン-1-ノルボルネンを含み、α-オレフィンが好ましくはプロピレンであり、弾性ターポリマーに対する典型的な密度値が0.9 g/ml以下である、C3-C8 α-オレフィンの弾性ターポリマー
である。
【0041】
コポリマー(a)の具体例は、67重量%のエチレンおよび33重量%の1-オクテン(13C-NMR分析)を含み、ショアーAポイント75の硬度、11 g/10分のMFRおよびASTM D 792法による0.87 g/mlの密度を有するコポリマーである。
【0042】
コポリマー(a)のもう一つの具体例は、75重量%のエチレンおよび25重量%の1-オクテン(IR分析)を含み、ショアーAポイント75の硬度およびASTM D 792法による0.87 g/mlの密度ならびに1 g/10分のMFRを有するコポリマーである。
【0043】
コポリマー(b)の具体例は、77.9重量%のエチレンおよび22.1重量%の1-ブテン(13C-NMR分析、以下の注2を参照)を含み、ショアーAポイント85の硬度およびASTM D 792法による0.87 g/mlの密度を有するコポリマーである。
【0044】
コポリマー(c)の具体例は、20重量%のメチルアクリレートを有し、1.5〜2.5 g/10分のMFR、ショアーAポイント89の硬度およびASTM D 792法による0.945 g/mlの密度を有する、エチレン-メチルアクリレート コポリマーである。
【0045】
コポリマー(d)の具体例は、ショアーAポイント34の硬度を有する、クラトン(Kraton)D-1112として商品化されているスチレン-イソプレン-スチレン ブロックコポリマー(SIS);ショアーAポイント75の硬度を有する、クラトンG-1652として市販のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロックコポリマー(SEBS);およびショアーAポイント65の硬度を有する、クラトンG-1657として市販のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロックコポリマー(SEBS)である。それらは全てShellにより商品化されている。
【0046】
本発明の組成物中に用いられる無機充填剤(C)は、タルク、CaCO3、シリカ、珪灰石(CaSiO3)、粘土、珪藻土、酸化チタンおよび沸石である。タルクが好ましい。典型的には、無機充填剤は、0.1〜5 μmの範囲の平均直径を有する粒子状の形態である。
本発明の組成物は、抗酸化剤、光安定化剤、熱安定化剤および着色剤のような当分野で通常に用いられる添加剤も含み得る。
【0047】
前記のように、本発明の組成物は、成分(A)、(B)および(C)をブレンドすることにより製造され得る。密閉式混合機または押出機のような、成分を混合するのに備え付けられ、当分野で既知のあらゆる混合装置が用いられ得る。例えば、Banbury混合機または一軸スクリューBuss押出機または二軸スクリューMarisもしくはWerner型押出機が用いられ得る。
本発明は、該ポリオレフィン組成物から製造されるバンパーおよび計器盤のような最終製品も提供する。
【実施例】
【0048】
本発明の実例および利点が以下の実施例に記載される。これらの実施例は本発明を説明するだけであって、いかなる方法によっても本発明を限定する意図のものではない。
【0049】
次の分析方法が、ポリマー組成物を特徴付けるために用いられる。
溶融流量:ASTM-D 1238、コンディションL。
[η]極限粘度:テトラヒドロナフタレン中135℃で測定される。
エチレンおよびブテン含量:I.R.分光法。
曲げ弾性率:ISO 178。
降伏点引張強さ:ISO 527。
破断点引張強さ:ISO 527。
破断点および降伏点伸び率:ISO 527。
ノッチ付アイゾッド衝撃強さ:ISO 180/1A
アイゾッド値は23℃および-30℃で測定される。
【0050】
キシレン可溶性および不溶性画分
2.5 gのポリマーおよび250 cm3 のキシレンを、冷蔵室および電磁撹拌機を備えたガラスフラスコ中に導入する。温度を溶媒の沸点まで30分で上昇させる。次いで、そのようにして得られた透明溶液を、還流撹拌下にさらに30分間保持する。次いで、密封したフラスコを氷水浴中に30分間保持し、さらに25℃の恒温水浴中に30分間保持する。そのようにして形成された固体を迅速濾紙で濾過する。100 cm3の濾液を、窒素気流下、加熱プレート上で加熱する、前もって秤量されたアルミ容器に注ぎ、蒸発により溶媒を除去する。次いで、一定重量が得られるまで、容器を真空下、80℃のオーブン中に保持する。次いで、室温でキシレンに可溶なポリマーの重量百分率を計算する。
【0051】
室温でキシレンに不溶なポリマーの重量パーセントが、ポリマーのアイソタクチック指数と見なされる。この値は、沸騰n-ヘプタンでの抽出により決定されるアイソタクチック指数に実質的に相当し、それが定義によりポリプロピレンのアイソタクチック指数と決められる。
【0052】
縦および横の熱収縮
100×200×2.5 mmのプラークを射出成形機「SANDRETTO serie 7 190」(190は締付力190トンを意味する)で成形する。
射出条件は:
溶融温度 = 250℃;
成形温度 = 40℃;
射出時間 = 8秒;
滞留時間 = 22秒;
スクリュー直径 = 55 mm
である。
【0053】
プラークは成形後48時間キャリパーにより測定され、収縮は:
【数1】

(ここで、200は、成形後すぐに測定された、流れ方向に沿ったプラークの(mmでの)長さであり;
100は、成形後すぐに測定された、流れ方向に交差するプラークの(mmでの)長さであり;
読み取り値は、関係する方向のプラークの長さである)
により与えられる。
【0054】
実施例1および2
重合に用いられる固形触媒成分は、欧州特許出願第674991号公報の実施例に記載された方法と類似の方法により製造される、約2.5重量%のチタンおよび内部供与体としてジイソブチルフタレートを含む、マグネシウムクロライドに担持された立体特異性の高いチーグラー-ナッタ触媒成分である。
【0055】
触媒系および予備重合処理
重合反応器に導入する前に、上記の固形触媒成分を、アルミニウムトリエチル(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)とTEAL/DCPMS重量比が約10に等しく、TEAL/Tiモル比が65に等しいような量で、-5℃で5分間接触させる。
次いで、第一の重合反応器に導入する前に、液体プロピレン中の懸濁状態を20℃で約20分間維持することにより、触媒系を予備重合に付す。
【0056】
重合
第一工程
第一の気相重合反応器中に、予備重合した触媒系、水素(分子量調節剤として使用)および気体のプロピレンを連続でかつ一定の流量で供給することにより、ポリプロピレンホモポリマー(成分(A1))を製造する。
重合条件は表Iに示される。
【0057】
第二工程
第一の反応器由来のポリプロピレンホモポリマーを連続気流中に排出し、未反応のモノマーを取り除いた後、水素、エチレンおよび気体のブテンの量的に一定な気流と一緒に、連続気流で、続く気相反応器中に導入する。
該反応器において、エチレン/ブテンコポリマー(成分(A2))を製造する。重合条件、反応物のモル比および得られるコポリマーの組成は表Iに示される。
【0058】
最後の反応器に存在するポリマー粒子を、反応モノマーおよび揮発性の物質を除くために蒸気処理に付し、次いで乾燥する。
次いで、ポリマー粒子を回転ドラム中に導入し、そこで、0.05重量%のパラフィン油ROL/OB 30(ASTM D 1298による20℃で0.842 kg/lの密度およびASTM D 97による-10℃の流れ点を有する)、0.15重量%のイルガノックス(Irganox)(登録商標)B 215(約34%のイルガノックス(登録商標)1010および66%のイルガホス(Irgafos)(登録商標)168から製造)および0.04重量%のDHT-4A(ヒドロタルサイト)と混合する。
【0059】
該イルガノックス1010は、2,2-ビス[3-[,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル-3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼン-プロパノエートであり、一方、イルガホス168はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである。
【0060】
次いで、ポリマー粒子を、窒素下、200〜250℃の溶融温度で、スクリュー押出機で押し出す。
表IIに示されるポリマー組成物に関する特徴は、そのようにして押し出されたポリマーについて行なわれた測定から得られる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例3および4
実施例1および2で製造されたポリマー組成物(以下、成分(A)という)を、成分(B)および(C)と表IIIに示した割合で、前記の条件下、押出しにより機械的に混合する。そのようにして得られた最終組成物の性質が表IIIに示される。
【0064】
添加される成分
1 エンゲージ8200:67重量%のエチレンおよび33重量%の1-オクテン(NMR分析)を含み、ショアーAポイント75の硬度および0.87 g/mlの密度を有するコポリマー、ダウケミカルより販売され、成分(B)として使用される;
2 ファビ(Fabi)タルクHTPウルトラ5c:約0.5 μmの平均粒子径(直径)を有する微粉にされたタルク粉末、成分(C)として使用される;
【0065】
3 HM05タルク:約2 μmの平均粒子径を有する微細タルク粉末、成分(C)として使用される;
4 イルガノックス(登録商標)B 225:約50%のイルガノックス(登録商標)1010および50%のイルガホス(登録商標)168から製造;
5 イルガノックス(登録商標)B 215:前記を参照;
6 CaSt:Caステアレート。
【0066】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) A1) ホモポリマーまたはコポリマーが、50〜200 g/10分の MFR値(230℃、2.16 kg)、および室温でのキシレン可溶性画分含量7重量%以下を有する、結晶性プロピレンホモポリマー、または5重量%までのエチレンおよび/もしくはC4-C10 α-オレフィンを含むコポリマーを50〜70重量%;および
A2) C4-C10 α-オレフィンを15〜35重量%含む、エチレンと一以上のC4-C10 α-オレフィンとの一以上のコポリマーを30〜50重量%
含むポリマーブレンド
(ここで、該ポリマーブレンド(A)は、10 g/10分以上のMFR値、7重量%以上のC4-C10 α-オレフィン全含量、および1.3〜2 dl/gの室温でのキシレン可溶性画分の極限粘度値を有し、(A1)および(A2)の量はポリマーブレンドの全重量に対するものである);ならびに任意に、
B) 90ポイント以下の硬度値(ショアーA、ASTM D-2240)を有する、A2)とは異なる弾性ポリマーを1〜15重量%;および/または
C) 無機充填剤を0.5〜20重量%
(ここで、任意の成分(B)および(C)の量は組成物の全重量に対するものである)
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
10〜60 g/10分のMFR値を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
成分B)が、
1) エチレンと、少なくとも20重量%のC3-C10 α-オレフィン(13C-NMR分析)を含む、C3-C10 α-オレフィンとのコポリマー;
2) 15〜30重量%のメチルアクリレート単位を含み、1〜10 g/10分のMFRを有するエチレン-メチルアクリレート コポリマー;
3) ブタジエン、ブチレン、エチレンおよびイソプレンから選択される少なくとも一つのコモノマーを含む、直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和のスチレンブロック コポリマー;
4) エチレン/α-オレフィン/ジエン ターポリマー;
5) 20重量%〜60重量%の酢酸ビニルを含み、1 g/10分以上の190℃/21.2N (ISO 1133)でのMFRを有するエチレン/酢酸ビニル コポリマー
よりなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
成分C)がタルクである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリマーブレンド(A)が、最初の工程以外の各工程において、先の工程で形成されたポリマーおよび用いられた触媒の存在下に操作され、成分(A1)および(A2)が別々の連続した工程で製造される、少なくとも二つの連続工程を含む、連続重合により製造され、成分(B)および(C)が存在するときは、成分(B)および(C)をポリマーブレンド(A)と機械的に混合することを含む、請求項1に記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む自動車バンパーおよびサイドストリップ。

【公表番号】特表2008−501829(P2008−501829A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526246(P2007−526246)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005881
【国際公開番号】WO2005/121240
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】