説明

剛性支持体を有する膣内デバイス、作製方法、およびその使用

本発明は、剛性支持体を有する膣内デバイス、作製方法、およびその使用に関する。本デバイスは、(a) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する剛性支持体と、(b) マトリックスと、(c) マトリックス中に分散している活性薬剤とを含み、支持体とマトリックスとは隣接しており、かつデバイスは輪状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、剛性支持体を有する膣内デバイス、膣内デバイスを作製する方法、およびその使用の方法に関する。膣内デバイスは、(a) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する剛性支持体と、(b) マトリックスと、(c) マトリックス中に分散している活性薬剤とを含み、支持体とマトリックスとは隣接しており、かつデバイスは輪状である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膣内送達は、活性薬剤投与の方法として既に使用されている。いくつかの場合では、膣内送達は、肝臓中での初回通過効果を回避しながら活性薬剤の良好な吸着を与える。結果として、膣内送達は、多くの種類の活性薬剤を投与するための有効な方法と考えられている。膣内投与される活性薬剤は、膣組織を通じて直接拡散することで局所的効果または全身的効果を与え、それによりホルモン機能障害、炎症、感染症、疼痛および失禁などの膣管および/または泌尿生殖器管の内側および外側での数多くの状態を処置することができる。
【0003】
例えば膣内リング、子宮内デバイスおよび膣内ペッサリーの使用などの膣内薬物送達のいくつかの方法が当技術分野において存在する(例えば米国特許第4,823,814号(特許文献1); 第4,607,630号(特許文献2); 第4,553,972号(特許文献3); 第4,286,587号(特許文献4); および第4,249,531号(特許文献5)を参照)。これらの方法のうち、膣内リングが、容易に挿入および除去可能な活性薬剤を送達するための多用途で快適な方法を与える。
【0004】
増加した物理的完全性、安全性および快適性を有する、活性薬剤を膣管および/または泌尿生殖器管に送達可能な改善された膣内デバイスが、当技術分野において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,823,814号
【特許文献2】米国特許第4,607,630号
【特許文献3】米国特許第4,553,972号
【特許文献4】米国特許第4,286,587号
【特許文献5】米国特許第4,249,531号
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
本発明は、剛性支持体とマトリックスとを有する膣内デバイスに関する。本発明はまた、活性薬剤を対象に送達するための膣内デバイスであって、マトリックス中に分散している活性薬剤をさらに有し得る膣内デバイスに関する。いくつかの態様では、本発明は(a) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する剛性支持体と、(b) マトリックスと、(c) マトリックス中に分散している活性薬剤とを含む、膣内デバイスであって、支持体とマトリックスとが隣接しておりかつデバイスが輪状である、膣内デバイスに関する。
【0007】
本発明は、(i) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する支持体を鋳型中に配置する工程、ならびに(ii) その中に分散している活性薬剤を有するマトリックスを鋳型に加える工程を含む、剛性支持体とマトリックスとを有する膣内デバイスを作製する方法であって、支持体とマトリックスとが隣接しておりかつデバイスが輪状である、方法に関する。本発明はまた、本方法により作製されるデバイスに関する。
【0008】
本発明は、本発明の膣内デバイスを女性に投与する段階を含む避妊の方法に関する。本発明はまた、本発明の膣内デバイスを女性に投与する段階を含むホルモン補充治療の方法に関する。
【0009】
いくつかの態様では、支持体は約20〜約80のショアA硬度を有する。いくつかの態様では、支持体は約1MPa〜約100MPaの引張強度を有する。いくつかの態様では、支持体は約20〜約80のショアA硬度および約1MPa〜約100MPaの引張強度を有する。
【0010】
いくつかの態様では、支持体は金属、合金、プラスチック、その複合体またはその組み合わせを含む。いくつかの態様では、プラスチックは熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックを含む。いくつかの態様では、プラスチックはポリアルキレン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロンまたはその組み合わせを含む。いくつかの態様では、ポリアルキレンは高密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン、高密度ポリブチレンまたはその組み合わせである。いくつかの態様では、ポリアルキレンは高密度ポリエチレンである。
【0011】
いくつかの態様では、マトリックスはポリシロキサン、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロンまたはその組み合わせを含む。いくつかの態様では、マトリックスはポリシロキサン、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその組み合わせである。
【0012】
いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも50%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも95%を包囲する。いくつかの態様では、デバイスは2つ以上のマトリックスを含む。
【0013】
いくつかの態様では、活性薬剤はステロイドホルモン、抗コリン薬、麻酔薬、その組み合わせまたはその誘導体である。いくつかの態様では、活性薬剤はプロゲステロン、エストロゲン、オキシブチニン、リドカイン、ダナゾール、エトノゲストレル、エチニルエストラジオールまたはその組み合わせである。
【0014】
いくつかの態様では、活性薬剤をインサイチューで24時間当たり約0.01mg〜約10mgの平均速度でデバイスより放出する。いくつかの態様では、活性薬剤をインサイチューで24時間当たり約1mg〜約100mgの平均速度でデバイスより放出する。いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックス中25℃で過飽和させる。
【0015】
いくつかの態様では、デバイスは膣リングである。いくつかの態様では、デバイスは約40mm〜約70mmの外径を有する。いくつかの態様では、デバイスは約10mm〜約60mmの内径を有する。いくつかの態様では、デバイスは約1mm〜約8mmの断面直径を有する。いくつかの態様では、支持体は約0.5mm〜約4mmの断面直径を有する。いくつかの態様では、デバイスは約800mm2〜約2000mm2の表面積を有する。いくつかの態様では、デバイスは外側シースをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】シリコーンポリマーマトリックスを有する膣リング(a)の上面図および断面図を示すものであり、(b)は外径を表し、(c)は断面直径を表す。
【図2】剛性支持体を有する膣リングの上面図および断面図を示すものであり、(b)はシリコーンポリマーマトリックスを表し、(c)は医療用HDPEの剛性支持体を表す。
【図3】剛性支持体と2つのマトリックスとを有する膣リングの上面図および断面図を示すものであり、(A)は医療用HDPEの剛性支持体を表し、(B)は第1のポリマーマトリックスを表し、(C)は第1のマトリックスを包囲する第2のポリマーマトリックスを表す。
【図4】剛性支持体とリングの別々のセグメントを構成する2つのマトリックスとを有する膣リングの上面図を示すものであり、(A)は医療用HDPEの剛性支持体を表し、(B)は支持体の一部分を包囲する第1のポリマーマトリックスを表し、(C)は支持体の異なる部分を包囲する第2のポリマーマトリックスを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、剛性支持体を有する膣内デバイス、膣内デバイスを作製する方法、およびその使用の方法に関する。
【0018】
本開示全体を通じて、割合、比率などのすべての表現は、特記なき場合は「重量比」である。本明細書で使用する「重量比」は、「質量比」という用語と同義であり、本明細書で定義の比率または割合が体積、厚さまたは何らかの他の尺度よりもむしろ重量に従って得られるということを示す。
【0019】
本明細書で使用する「約」という用語は、百分率または他の数量との組み合わせで使用する場合、その百分率または他の数量のプラスまたはマイナス10%を意味する。例えば、「約80%」という用語は80%プラスまたはマイナス8%を包含する。
【0020】
膣内デバイス
本発明は、剛性支持体とマトリックスとを有する膣内デバイスに関する。本発明はまた、活性薬剤を対象に送達するための膣内デバイスであって、マトリックス中に分散している活性薬剤をさらに有し得る膣内デバイスに関する。本発明はさらに、(a) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する剛性支持体と、(b) マトリックスと、(c) マトリックス中に分散している活性薬剤とを含む、膣内デバイスであって、支持体とマトリックスとが隣接しておりかつデバイスが輪状である、膣内デバイスに関する。
【0021】
本明細書で使用する「膣内デバイス」とは、女性の膣、子宮頸部または子宮を例えば含む対象の膣管および/または泌尿生殖器管に対して活性薬剤の投与または適用を施す物体を意味する。
【0022】
いくつかの態様では、デバイスは形状が輪状である。本明細書で使用する「輪状」とは、リングの形状、リングに関連する形状またはリングを形成する形状を意味する。本発明での使用に好適な輪状の形状としては環、長円、楕円、トロイドなどが挙げられる。いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスは膣リングである。
【0023】
本発明で使用する「隣接する」とは、近接していることを意味し、材料間の直接接触を含意していてもそうでなくてもよい。いくつかの態様では、支持体とマトリックスとは接触している。いくつかの態様では、支持体とマトリックスとは中間の介在する材料、例えばフィルム、層、バリア、シースなどを有する。
【0024】
本明細書で使用する「剛性支持体」とは、膣内デバイスに物理的完全性を付加する、デバイスの一部分を意味する。いくつかの態様では、支持体は圧縮および変形に耐性がある。いくつかの態様では、「剛性の」は、支持体を含む材料の硬度および引張強度に関して定義することができる。
【0025】
膣内デバイスは、特定の硬度を有する剛性支持体を含む。本明細書で使用する「硬度」とは、機械強度、剛性および耐摩耗性と十分に相関する、圧縮、圧入、引っ掻きおよび変形に対する材料の耐性の測定値を意味する。例えば、エラストマーおよびプラスチックの公知の好ましい硬度試験法はショア硬度試験である。プラスチック材料試料の「ショア硬度」値は、デュロメーターとして知られる装置により測定可能であり、したがってデュロメーター硬度としても知られる。硬度値はデュロメーター圧子の足を試料に侵入させることで決定することができる。圧子が試料に完全に侵入する場合、0の読取値が得られ、侵入が生じない場合、100の読取値が得られる。デュロメーターは、使用するばね力および圧子の幾何形状に応じて、異なるやり方で硬度を測定することができる。いくつかのショア硬度スケール、例えばショアAスケールおよびショアDスケールを使用することができる。「ショアA硬度」は、ゴムまたはプラスチックなどの弾性材料の相対硬度に関するものであり、当技術分野で公知の各種方法および機器を使用して決定することができる。いくつかの態様では、ショアAデュロメーターを使用する。いくつかの態様では、ショアA硬度は、ASTM D-2240-91に記載の標準的試験法に従って、最大値指示器付きのショア「A型」デュロメーター(ニューヨーク州フリーポートShore Instrument and Manufacturing Company, Inc.より入手可能)を使用して決定することができる。
【0026】
本発明の膣内デバイス上の剛性支持体は様々なショアA硬度値を有し得る。いくつかの態様では、剛性支持体は少なくとも約20、または約20〜約200、または約30〜約150、または約40〜約100、または約50〜約80、または約20〜約60、または約60〜約120、または約70〜約120、または約80〜約120のショアA硬度を有する。
【0027】
いくつかの態様では、剛性支持体は様々な引張強度を有する。本明細書で使用する「引張強度」とは、材料を破壊または破断するために必要な軸方向に適用される力の量の、材料の断面積に対する比を意味する。本明細書で使用する「破壊力」という用語は、試験片が破壊前に耐え得る最大力のことである。そこで引張強度は、破断時点での材料に対する応力を表すものであり、破壊力を断面積で割って計算することができる。引張強度は、単位面積当たりの力の単位、例えば平方メートル当たりのニュートン(N/m2)またはパスカル(Pa)で測定される。引張強度値は当技術分野で公知の方法および機器を使用して決定することができる。例えば、引張強度は、ASTM D638-98に記載の標準的試験法に従って、例えば引張試験機(カリフォルニア州ハンチントンビーチUnited Testing Systems, Inc.より入手可能)を使用して決定することができる。
【0028】
様々な引張強度を有する剛性支持体を有する膣内デバイスを本発明で使用することができる。いくつかの態様では、剛性支持体は少なくとも約1MPa、または約1MPa〜約200MPa、または約5MPa〜約150MPa、または約10MPa〜約100MPa、または約20MPa〜約75MPa、または約25MPa〜約50MPa、または約1MPa〜約25MPa、または約15MPa〜約100MPa、または約35MPa〜約100MPa、または約50MPa〜約100MPaの引張強度を有する。
【0029】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスは、少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有するか、または約20〜約200のショアA硬度および約1MPa〜約200MPaの引張強度を有するか、または約20〜約100のショアA硬度および約1MPa〜約150MPaの引張強度を有するか、または約20〜約80のショアA硬度および約1MPa〜約100MPaの引張強度を有するか、または約60〜約120のショアA硬度および約15MPa〜約100MPaの引張強度を有するか、または約70〜約120のショアA硬度および約35MPa〜約100MPaの引張強度を有するか、または約80〜約120のショアA硬度および約50MPa〜約100MPaの引張強度を有する、支持体を有する。
【0030】
本発明の膣内デバイスは可撓性であり得る。本明細書で使用する「可撓性」とは、損害または破壊を受けずに曲がるかまたは応力およびひずみに耐える、固体または半固体の能力を意味する。例えば、本発明のデバイスは、例えば指圧を使用する(例えば指を使用してデバイスの相対する外側面より圧力を適用する)ことなどにより変形または屈曲させ、圧力の除去によりその元の形状に戻すことができる。本発明の膣内デバイスの可撓性は、ユーザーの快適性の増大、さらには膣管に対する投与および/または膣管からのデバイスの除去の容易化に有用である。
【0031】
剛性支持体を有する膣内デバイスは、剛性支持体を有さない膣内デバイスに比べて増加した物理的完全性を有する。いくつかの態様では、増加した物理的完全性は、破壊、断裂、破断、および膣内デバイスからの活性薬剤の漏出の実例の減少により、活性薬剤の投与中のより高い安全性プロファイルを実現することができる。いくつかの態様では、増加した物理的完全性は、活性薬剤の投与中のより一貫した放出プロファイルを実現することができる。
【0032】
本発明の膣内デバイスに使用される材料は、膣管中での配置に好適であり、すなわち、無毒であり、さらに対象において非吸収性であり得る。いくつかの態様では、材料は活性薬剤と適合性がある。いくつかの態様では、材料は、膣内投与に好適に成形可能であり得る。
【0033】
いくつかの態様では、本発明の支持体は、膣内デバイスの物理的完全性を増加させる任意の材料より作製することができる。いくつかの態様では、支持体は、膣内デバイスに剛性を付加する任意の材料を含む。いくつかの態様では、例えば支持体は金属、合金、プラスチック、その複合体またはその組み合わせであり得る。材料の剛性に様々な要因、例えば材料のサイズ、材料の形状、材料の量、材料の厚さなどが影響を与え得るということを、当業者は認識するであろう。
【0034】
本明細書で使用する「合金」とは、2つ以上の金属からまたは金属および非金属から構成される物質を意味する。好適な金属または合金としては、非合金および合金のチタン、モリブデン、クロム、コバルト、タングステン、アルミニウム、ニオブ、マンガン、鉄もしくはバナジウム、その組み合わせまたはその酸化物が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、合金はチタン合金、コバルト合金またはステンレス鋼合金である。
【0035】
本明細書で使用する「プラスチック」とは、数多くの有機合成または加工熱可塑性または熱硬化性ポリマーのいずれかを意味する。好適なプラスチックポリマーとしては、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL-ラクチド-e-カプロラクトン)といったポリヒドロキシ酸、およびポリウレタンポリマーが挙げられるがそれに限定されない。
【0036】
いくつかの態様では、剛性支持体のプラスチックは熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックであり得る。本明細書で使用する「熱可塑性ポリマー」とは、ポリマーに特徴的な温度範囲を通じて加熱により軟化可能でありかつ冷却により硬化可能であるポリマーのことである。軟化状態では、熱可塑性ポリマーは流動成形または押出しにより成形することができる。好適な熱可塑性ポリマー材料としては熱可塑性オレフィンブレンド、架橋ポリマー、共重合体、ブロック共重合体およびその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、本発明での使用に好適な熱可塑性ポリマーとしてはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、テフロン、アクリル、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体が挙げられるがそれに限定されない。
【0037】
熱可塑性エラストマーポリマーを本発明の剛性支持体において使用することができる。本明細書で使用する「熱可塑性エラストマーポリマー」とは、ゴム様の弾性を発生させるための加硫を必要とせずに周囲温度で弾性および弾力性を有する任意の材料のことである。好適な熱可塑性エラストマー材料としてはポリウレタン、ポリエステル、ポリアルキレンおよびその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、熱可塑性エラストマー材料は熱可塑性オレフィンブレンド、アイオノマー、ブロック共重合体またはその組み合わせであり得るがそれに限定されない。いくつかの態様では、熱可塑性エラストマー材料はスチレン-エチレン-ブチレン変性ブロック共重合体である。
【0038】
本発明のいくつかの態様では、剛性支持体は熱硬化性プラスチックポリマーを含む。本明細書で使用する「熱硬化性プラスチックポリマー」とは、熱の影響下で共有結合性で熱安定性の網目の形成を通じて不可逆的に成形される任意の材料のことである。好適な熱硬化性プラスチック材料としては架橋ポリマー、共重合体、ブロック共重合体およびその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。
【0039】
本発明のいくつかの態様では、ポリマー材料はエラストマー、例えばシリコーン共重合体(熱硬化型)を例えば含む熱硬化性エラストマーである。例えば、本発明の膣内デバイスは、各種の触媒または架橋剤を含み得るシリコーンポリマーを使用して製造することができる。そのようなシリコーン化合物、触媒および架橋剤は当技術分野で公知である。例えば米国特許第4,888,074号を参照。シリコーン組成物は、架橋剤の存在の有無にかかわらず架橋可能な任意の有機シリコーン化合物を含み得る。
【0040】
いくつかの態様では、プラスチックはポリアルキレン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロンまたはその組み合わせであり得る。
【0041】
いくつかの態様では、ポリアルキレンは高密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン、高密度ポリブチレンまたはその組み合わせであり得る。いくつかの態様では、支持体のポリアルキレンは高密度ポリエチレンであり得る。本明細書で使用する「高密度ポリエチレン」(HDPE)とは、エチレンの実質的に線形で半晶質のポリマーを含む材料を意味する。いくつかの態様では、HDPEはホモポリマーである。いくつかの態様では、HDPEはコモノマーをさらに含む。本明細書で使用する「高密度」という用語は、約0.8〜約10g/cm3の密度を有する材料を意味する。いくつかの態様では、本発明のデバイスの剛性支持体の密度は0.8〜10g/cm3、0.8〜8g/cm3、0.8〜6g/cm3、0.8〜4g/cm3、0.8〜2g/cm3、1〜8g/cm3、1〜4g/cm3、1〜2g/cm3または2〜6g/cm3であり得る。いくつかの態様では、本発明のデバイスの剛性支持体の密度は約0.85g/cm3、約0.88g/cm3、約0.90g/cm3、約0.92g/cm3、約0.94g/cm3、約0.96g/cm3または約0.98g/cm3であり得る。いくつかの態様では、HDPEは、ジョージア州ニューナンPorexより得られるMEDPOR(登録商標)生体材料であり得る。密度測定値は、ASTM D1505に記載の標準的試験法に従って決定することができる。
【0042】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスはマトリックスを含む。本明細書で使用する「マトリックス」とは、活性薬剤の分散に適合性がありかつ好適である固体、半固体またはゲルの媒体を意味する。いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックス中に均一に分散している。本明細書で使用する「均一な」とは、全体を通じて成分の実質的に一様な分布を有する組成物、例えば膣内デバイスマトリックスを意味する(すなわち、本発明の膣内デバイスマトリックスは組成勾配または多層積層構造を有さない)。
【0043】
いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックス中に不均一に分散している。本明細書で使用する「不均一な」とは、全体を通じて成分の実質的に一様な分布を有さない組成物、例えば膣内デバイスマトリックスを意味する(すなわち、本発明の膣内デバイスマトリックスは組成勾配または多層積層構造を有し得る)。したがって、「不均一混合物」とは、成分が実質的に一様に分布していない2つ以上の成分の組成物を意味する(すなわち、実質的に異なる量のいずれかの成分を伴う混合物のセグメント、領域または区域が存在し得る)。
【0044】
いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックスとは相互作用しないかまたは複合体を形成しない。いくつかの態様では、マトリックスをその機械特性および物理特性(例えば材料中の活性薬剤の溶解性)により選択することができる。いくつかの態様では、デバイスは2つ以上のマトリックスを含む。例えば、いくつかの態様では、デバイスは2つ、3つまたは4つのマトリックスを含む。いくつかの態様では、第2のマトリックスは第1のマトリックスを包囲する。例えば図3を参照。いくつかの態様では、膣内デバイスは形状が輪状であり、第1のマトリックスおよび第2のマトリックスは輪状デバイスの別々のセグメントを構成する。例えば図4を参照。いくつかの態様では、2つ以上のマトリックスが存在する場合、活性薬剤は各マトリックスに、または任意的には1つのマトリックスにのみ存在する。
【0045】
いくつかの態様では、マトリックスはエラストマーである。本明細書で使用する「エラストマー」とは、ポリマーまたはポリマーの混合物が架橋を経る際に形成される非晶質ポリマー網目を意味する。各ポリマーはモノマー単位より構成され、これらは一緒に結合してポリマーを形成する。モノマー単位は炭素、水素、酸素、ケイ素、ハロゲンおよびその組み合わせを含み得る。
【0046】
いくつかの態様では、マトリックスはポリシロキサン、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロンまたはその組み合わせを含む。
【0047】
いくつかの態様では、マトリックスはポリシロキサン、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその組み合わせである。
【0048】
本明細書で使用する「ポリシロキサン」とは、線状配列または環状配列のいずれかでの交互のケイ素原子および酸素原子を、通常は各ケイ素原子に結合している1個または2個の有機基と共に含有する、各種化合物のいずれかを意味する。例えば、ポリシロキサンとしては置換ポリシロキサン、ならびにジアリールポリシロキサンおよびジアルキルポリシロキサンなどのジオルガノポリシロキサンが挙げられる。いくつかの態様では、ポリシロキサンは、式Iで示されるシロキサン単位を含み、

式中、Xは1〜200であり得るものであり、Yは1〜200であり得るものであり、Zは1〜300であり得るものであり、R1、R2、R3、R4およびR5は(C1〜6)アルキル、アミノ(C1〜6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜6)アルキル、ハロアルキル、シアノ(C1〜6)アルキル、チオ(C1〜6)アルキル、カルボキシ(C1〜6)アルキル、アリール(C1〜6)アルキル、(C1〜6)アルコキシ(C1〜6)アルキル、(C2〜6)アルケニル、アミノ(C3〜10)アルケニル、ヒドロキシ(C3〜10)アルケニル、ハロ(C2〜6)アルケニル、シアノ(C2〜6)アルケニル、チオ(C3〜10)アルケニル、カルボキシ(C3〜10)アルケニル、アリール(C2〜6)アルケニル、(C2〜6)アルキニル、(C1〜6)ヘテロアルキル、(C2〜6)ヘテロアルケニル、(C2〜6)ヘテロアルキニル、(C1〜6)アルコキシ、(C3〜10)アルケニルオキシ、(C1〜6)アルキレンジオキシ、アミノ(C2〜6)アルコキシ、ヒドロキシ(C2〜6)アルコキシ、ハロ(C1〜6)アルコキシ、シアノ(C1〜6)アルコキシ、チオ(C1〜6)アルコキシ、カルボキシ(C2〜6)アルコキシ、アリール(C1〜6)アルコキシ、(C1〜6)アルコキシ(C2〜6)アルコキシ、ハロ(C1〜6)アルコキシ(C2〜6)アルコキシ、モノ(C1〜6)アルキルアミノ、ジ(C1〜6)アルキルアミノ、(C1〜6)アルキルカルボニルアミノ、(C2〜6)アルケニルカルボニルアミノ、(C6〜14)アリールカルボニルアミノ、(C1〜6)アルコキシカルボニルアミノ、(C6〜10)アリールオキシカルボニルアミノ、(C1〜6)アルキルカルボニル、(C2〜6)アルケニルカルボニル、(C6〜10)アリールカルボニル、(C1〜6)アルコキシカルボニル、(C6〜14)アリールオキシカルボニル、(C1-6)アルキルスルホニルアミノ、(C2〜6)アルケニルスルホニルアミノおよび(C6〜14)アリールスルホニルアミノからなる群より独立して選択することができる。いくつかの態様では、R1、R2、R3またはR4のうち少なくとも1つはハロアルキルである。
【0049】
いくつかの態様では、R1〜R4のうち少なくとも1つはモノ-ハロアルキル、ジ-ハロアルキルまたはトリ-ハロアルキルであり得る。いくつかの態様では、ハロアルキルはブロモアルキル、クロロアルキル、フルオロアルキルまたはヨードアルキルであり得る。いくつかの態様では、ハロアルキルはトリフルオロアルキルである。いくつかの態様では、ハロアルキルはトリフルオロエチル、トリフルオロプロピルまたはトリフルオロブチルである。いくつかの態様では、ハロアルキルはジフルオロエチル、ジフルオロプロピルまたはジフルオロブチルである。
【0050】
いくつかの態様では、Xは1〜90、10〜80または20〜70である。いくつかの態様では、Xは1〜10、1〜5または1〜3である。いくつかの態様では、Yは1〜90、10〜80または20〜70である。いくつかの態様では、Yは1〜10、1〜5または1〜3である。いくつかの態様では、Zは10〜250、50〜200または75〜150である。当業者が認識するように、XおよびYの値は各Zサブユニットにおいて変動する可能性がある。したがって、例えば、第1のZサブユニットにおいて、Xは3である可能性があり、Yは4である可能性があり、第2のZサブユニットにおいて、Xは10である可能性があり、Yは2である可能性がある。
【0051】
いくつかの態様では、R1はトリフルオロプロピルであり; R2、R3およびR4は独立してC1〜C3アルキルであり; R5はビニルであり; Xは1〜2であり; Yは1〜2であり; Zは100〜200である。いくつかの態様では、本発明のポリシロキサンはトリフルオロプロピルメチルジメチルポリシロキサンである。
【0052】
いくつかの態様では、剛性支持体はデバイスの内周または外周上に存在し得る。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも50%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも60%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも70%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも80%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも90%を包囲する。いくつかの態様では、マトリックスは支持体の表面積の少なくとも95%を包囲する。いくつかの態様では、剛性支持体はマトリックスに完全に包囲され、すなわち、マトリックスは支持体の表面積の約100%を包囲する。
【0053】
本明細書で使用する「包囲表面積」とは、支持体を取り囲むマトリックスの面積を意味し、例えば、支持体の表面積の70%が包囲される場合は、支持体の表面積の30%が外部環境、例えば女性の膣、子宮頸部または子宮に露出される。
【0054】
本明細書で使用する「活性薬剤」とは、薬物、タンパク質、ホルモン、ビタミン、栄養補助品、または疾患もしくは任意の他の医学的状態の処置、緩和、治癒もしくは予防における使用が意図される任意の他の物質を意味する。いくつかの態様では、活性薬剤を対象に投与することで、対象における状態またはその症状を処置することができる。例えば、いくつかの態様では、活性薬剤は、対象における1つもしくは複数の状態またはその症状を処置するために投与される医薬化合物中の一構成成分である。
【0055】
本発明の膣内デバイスを使用することで1つまたは複数の活性薬剤を送達することができる。いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックス中に分散している。いくつかの態様では、活性薬剤は剛性支持体中に分散している。いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックスおよび剛性支持体中に分散している。
【0056】
本発明での使用に好適な活性薬剤は、局所的効果を有する活性薬剤、および膣管または泌尿生殖器管より離れた地点で作用する全身作用型の活性薬剤を含む。本発明での使用に好適な活性薬剤としては鎮痛薬、抗炎症薬、ホルモン薬、抗菌薬、麻酔薬、抗骨粗鬆症薬、抗コリン薬、ステロイドホルモン、酵素およびその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。
【0057】
いくつかの態様では、活性薬剤はステロイドホルモン、抗コリン薬、麻酔薬、その組み合わせまたはその誘導体である。ステロイドホルモンはエストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン、テストステロン、その誘導体またはその組み合わせを例えば含み得る。
【0058】
本明細書で使用する「エストロゲン」とは、女性の二次性徴の発達を刺激しかつ女性の生殖器系の成長および維持を促進する各種天然または合成化合物のいずれか、または天然エストロゲンの生理的効果を模倣する任意の他の化合物を意味する。本発明での使用に好適なエストロゲンは、子宮環境中で活性エストロゲン化合物に変換可能な化合物も含む。例えば、いくつかの態様では、結合型エストロゲンを本発明の膣内デバイスより投与することができる。本明細書で使用する「結合型」という用語は、エストロゲンの硫酸エステル、グルクロニドエステルまたは混合硫酸-グルクロニドエステルを意味する。本発明での使用に好適なエストロゲンは、エストロゲンの薬学的に好適な塩形態も含む。いくつかの態様では、塩はナトリウム塩、カリウム塩または2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(トリス)塩であり得る。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なエストロゲンは、ホルモン補充治療(HRT)レジメンに有用であり得る。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なエストロゲンは、それを必要とする対象における骨粗鬆症の処置に有用であり得る。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なエストロゲンは、避妊薬として有用であり得る。
【0059】
本発明での使用に好適なエストロゲンとしては、例えばエストラジオール(17β-エストラジオール)、17α-エストラジオール、エストリオール、エストロン、ならびにそれらのエステル、例えばエストラジオール17β-シピオネート、エストラジオール17-プロピオネート、エストラジオール3-ベンゾエートおよびピペラジンエストロンスルフェートを例えば含む、これらの化合物の酢酸エステル、硫酸エステル、吉草酸エステルまたは安息香酸エステルなどの、エストロゲン活性を有する天然および合成化合物; エチニルエストラジオール; 結合型エストロゲン(天然および合成); アゴニスト抗エストロゲン薬; ならびに選択的エストロゲン受容体モジュレーターが挙げられるがそれに限定されない。
【0060】
好適なエストロゲンのプロドラッグも本発明のデバイスにおいて使用することができる。本明細書で使用する「プロドラッグ」とは、公知の直接作用性薬物の誘導体であって、薬物に比べて強化された送達特性および治療価値を有しかつ酵素プロセスまたは化学プロセスにより活性薬物に変換される誘導体を意味する。エストロゲンプロドラッグの例としては、酢酸エストラジオール(インビボで17β-エストラジオールに変換される)およびメストラノール(インビボでエチニルエストラジオールに変換される)が挙げられるがそれに限定されない。
【0061】
いくつかの態様では、エストロゲンはエストラジオール、エストリオール、メストラノール、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロールまたはその組み合わせである。
【0062】
本明細書で使用する「プロゲスチン」とは、プロゲストーゲン、プロゲステロン物質、または、プロゲステロン活性を有する合成ステロイドを含む、プロゲステロン活性を一般に有するステロイド分野における任意の薬学的に許容される物質を意味する。本発明での使用に好適なプロゲスチンは天然起源または合成起源のものであり得る。プロゲスチンはシクロ-ペンタノフェナントレン核を一般に有する。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なプロゲスチンは、ホルモン補充治療(HRT)レジメンに有用であり得る。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なプロゲスチンは、避妊薬として有用であり得る。
【0063】
本発明での使用に好適なプロゲスチンとしては、例えばプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸クロルマジノン、ノルエチンドロン、酢酸シプロテロン、酢酸ノルエチンドロン、デソゲストレル、レボノルゲストレル、ドロスピレノン、トリメゲストン(trimegestone)、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエルゲストロミン、エトノゲストレル、ジエノゲスト、ゲストデン、メゲストロール、ならびに他の天然および/または合成ゲスターゲンなどの、プロゲステロン活性を有する天然および合成化合物が挙げられるがそれに限定されない。
【0064】
いくつかの態様では、プロゲスチンはプロゲステロン、エトノゲストレル、レボノルゲストレル、ゲストデン、ノルエチステロン、ドロスピレノンまたはその組み合わせである。
【0065】
好適なプロゲスチンのプロドラッグも本発明の膣内デバイスにおいて使用することができる。インビボでノルエチンドロンに変換される二酢酸エチノジオールが、本発明において使用可能なプロゲスチンプロドラッグの一例である。プロゲスチンプロドラッグのさらなる例としては、ノルゲスチメート(インビボでノルエルゲストロミンとしても知られる17-デアセチルノルゲスチメートに変換される)、デソゲストレル(インビボでエトノゲストレルとしても知られる3-ケトデソゲストレルに変換される)および酢酸ノルエチンドロン(インビボでノルエチンドロンに変換される)が挙げられるがそれに限定されない。
【0066】
いくつかの態様では、プロゲスチンはデソゲストレル、エトノゲストレル、ノルゲスチメートまたはその組み合わせである。
【0067】
いくつかの態様では、活性薬剤は修飾テストステロン、例えば、合成ステロイドエチステロンの誘導体である。いくつかの態様では、修飾テストステロンはダナゾールである。
【0068】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスは、プロゲスチンおよびエストロゲンなどの2つの活性薬剤を含有する。いくつかの態様では、膣内デバイスはエトノゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有する。いくつかの態様では、本発明での使用に好適なプロゲスチンとエストロゲンとの組み合わせは、避妊レジメンに有用であり得る。
【0069】
いくつかの態様では、2つ以上の活性薬剤が一緒にマトリックス中に分散している。いくつかの態様では、2つ以上の活性薬剤がマトリックス中の別々の区画内に分散している。
【0070】
本明細書で使用する「麻酔薬」とは、生命機能の損失なしに、脳への神経経路内の疼痛インパルスの通路を遮断しかつ身体の1つまたは複数の区域内の感覚の損失を誘導する、化合物のことである。本発明で使用される麻酔薬としてはリドカイン、アルチカイン、ベノキシネート、ブピバカイン、ジブカイン、メピビカイン(mepivicaine)、ネパイン(naepaine)、ピペロカイン、プロカイン、プリロカイン、テトラカインおよびその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、麻酔薬はリドカインである。
【0071】
本明細書で使用する「抗コリン薬」とは、中枢神経系および末梢神経系において神経伝達物質アセチルコリンを遮断する化合物のことである。本発明で使用される抗コリン薬としてはオキシブチニン、ベタネコール、プロピベリン、プロパンテリン、メチルベナクチジウム、スコポラミン、トルテロジン、トロスピウム、その組み合わせおよびその塩が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、抗コリン薬はオキシブチニンまたはその塩である。いくつかの態様では、抗コリン薬は塩酸オキシブチニンである。
【0072】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスは賦形剤をさらに含む。本明細書で使用する「賦形剤」とは、薬学的組成物の調剤に使用され、それ自体では一般にほとんどまたは全く治療価値を有さない、物質を意味する。その全体が参照により本明細書に組み入れられるHandbook of Pharmaceutical Excipients, Pharmaceutical Press 4th Ed. (2003)およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, 21st Ed. (2005)に列挙されているものを含む多種多様な薬学的に許容される賦形剤が本発明で使用可能であることを、当業者は認識するであろう。本明細書で使用する「薬学的に許容される」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触に好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答または他の可能な合併症を伴わず、妥当な損益比に相応している、化合物、材料および/または組成物を意味する。
【0073】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスのマトリックスは、その中に含有される活性薬剤の放出の速度を決定または制御する。本明細書で使用する「放出の速度」または「放出速度」とは、定義される期間にデバイスより放出する活性薬剤の量または濃度を意味する。
【0074】
ポリマー材料を使用することで、本発明の膣内デバイスからの活性薬剤の放出の速度を制御することができる。例えば、デバイスからの活性薬剤の放出の速度は、ポリマーマトリックスに存在する架橋の程度を制御することで制御可能である。高い架橋度により、ポリマーマトリックスからの活性薬剤の放出の速度が低下すると予想される。架橋度は、膣内デバイスの製造中に使用される架橋剤または触媒の量により制御することができる。例えば米国特許第6,394,094号を参照。いくつかの態様では、浸透強化剤をマトリックスに加えることで、マトリックスからの活性薬剤の放出の速度を増加させることができる。
【0075】
活性薬剤の放出の速度は、膣内デバイス中の活性薬剤の位置により制御することもできる。例えば、「コアおよびシース型」膣内デバイスでは、活性薬剤の位置、すなわちコアまたはシースにより、活性薬剤の放出の速度を調節または制御することができる。これらの態様では、膣デバイスのコア中の活性薬剤は、シース中の活性薬剤よりも低い、膣管中への放出の速度を有し得る。これは、コア中の活性薬剤が膣管に到達する前に必ずコアと外側シースとの両方を通じて拡散し、一方で外側シース中の活性薬剤が膣管に到達する前に必ず外側シースのみを通じて拡散するためである。いくつかの態様では、本発明のデバイスは外側シースをさらに含む。外側シースは活性薬剤の放出の速度を制御することができる。
【0076】
活性薬剤の放出の速度は、活性薬剤を前処理することで制御することもできる。例えば、活性薬剤が微粉化形態のステロイドホルモンである本発明の態様では、微粉化ステロイドホルモン粒子をコーティングするエチルセルロースなどのさらなる薬剤で微粉化ステロイドを前処理することができる。膣内デバイス(例えば膣リング)の製造中に前処理微粉化ステロイド粒子をポリマーマトリックスに組み入れる場合、ホルモンの放出の速度は未処理微粉化ステロイドの速度に比べて遅くなるかまたは減少する。
【0077】
活性薬剤の放出の速度は、例えば鉱油または脂肪酸エステルなどのさらなる薬剤または賦形剤をポリマーマトリックスに加えることで制御または調節することもできる。
【0078】
デバイスより放出する活性薬剤の量は、有資格の医療専門家が決定することができ、多くの要因、例えば活性薬剤、処置される状態、処置される対象の年齢および/または体重などに依存する。いくつかの態様では、活性薬剤をインサイチューで24時間当たり約0.01mg〜約10mg、またはインサイチューで24時間当たり約0.05mg〜約5mg、またはインサイチューで24時間当たり約0.1mg〜約1mgの平均速度でデバイスより放出する。いくつかの態様では、活性薬剤をインサイチューで24時間当たり約1mg〜約100mgまたはインサイチューで24時間当たり約5mg〜約50mgの平均速度でデバイスより放出する。
【0079】
いくつかの態様では、2つ以上の活性薬剤を、インサイチューで24時間当たり異なる速度でデバイスより放出することができる。例えば、エストロゲンをインサイチューで24時間当たり約0.01mg〜約0.1mgの平均速度でデバイスより放出することができ、プロゲスチンをインサイチューで24時間当たり約0.08mg〜約0.2mgの平均速度でデバイスより放出することができ、あるいは、エストロゲンをインサイチューで24時間当たり約0.1mg〜約1mgの平均速度でデバイスより放出することができ、プロゲスチンをインサイチューで24時間当たり約0.05mg〜約5mgの平均速度でデバイスより放出することができ、あるいは、エストロゲンをインサイチューで24時間当たり約0.05mg〜約5mgの平均速度でデバイスより放出することができ、プロゲスチンをインサイチューで24時間当たり約1mg〜約100mgの平均速度でデバイスより放出することができる。
【0080】
放出速度は、例えばUSP装置パドル2法を使用してインビトロで測定することができる。デバイスを0.05M SDSの500ml溶液中に37℃で、パドル速度を50rpmとして配置する。活性薬剤を当技術分野で公知の方法、例えばHPLCによりアッセイすることができる。
【0081】
本発明のいくつかの態様では、女性に対する投与後最大約1ヶ月間もしくは約30日間、女性に対する投与後最大約25日間、女性に対する投与後最大約21日間、女性に対する投与後最大約15日間、女性に対する投与後最大約10日間、女性に対する投与後最大約7日間、または女性に対する投与後最大約4日間、定常速度で活性薬剤を膣内デバイスより放出する。
【0082】
本明細書で使用する「定常速度」とは、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の70%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の60%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の50%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の40%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の30%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の20%を超える量、インサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の10%を超える量、またはインサイチューで24時間当たり放出される活性薬剤の量の5%を超える量が変動しない放出速度のことである。
【0083】
いくつかの態様では、活性薬剤は、24時間当たり約80μg〜約200μg、24時間当たり約90μg〜約150μg、24時間当たり約90μg〜約125μg、または24時間当たり約95μg〜約120μgのインサイチューでの活性薬剤の定常放出速度を有するプロゲスチンである。
【0084】
いくつかの態様では、活性薬剤は、24時間当たり約10μg〜約100μg、24時間当たり約10μg〜約80μg、24時間当たり約10μg〜約60μg、24時間当たり約10μg〜約40μg、24時間当たり約10μg〜約20μg、または24時間当たり約10μg〜約15μgのインサイチューでの活性薬剤の定常放出速度を有するエストロゲンである。
【0085】
いくつかの態様では、様々な濃度の活性薬剤が本発明の膣内デバイス中に存在する。いくつかの態様では、活性薬剤はマトリックス中25℃で過飽和する。本発明で使用する「過飽和した」とは、マトリックス中25℃で活性薬剤の飽和濃度を得るために必要な量の約1倍〜約10倍である活性薬剤の量を意味し得る。
【0086】
本発明のデバイスは、膣管中での配置に好適な任意のサイズであり得る。いくつかの態様では、デバイスは約40mm〜約70mm、約45mm〜約65mmまたは約50mm〜約60mmの外径を有する。本明細書で使用する「外径」とは、デバイスの中心を通過しかつその終点がデバイスの外周上にある、任意の直線セグメントを意味する。例えば図1パートbを参照。いくつかの態様では、外径とは、デバイスの中心を通過しかつその終点がデバイスの外周上にある、最長の直線セグメントのことである。
【0087】
いくつかの態様では、デバイスは約10mm〜約60mm、約10mm〜約50mm、約10mm〜約40mm、約20mm〜約40mm、約10mm〜約30mmまたは約10mm〜約20mmの内径を有する。本明細書で使用する「内径」とは、デバイスの中心を通過しかつその終点がデバイスの内周上にある、任意の直線セグメントを意味する。いくつかの態様では、内径とは、デバイスの中心を通過しかつその終点がデバイスの内周上にある、最長の直線セグメントのことである。
【0088】
既に記載の膣内デバイスは約5mm〜約10mmの断面直径を有していた。例えば米国特許第4,822,616号を参照。本発明の膣内デバイスのサイズは、既に記載のサイズを包含し得る。さらに、本発明の膣内デバイスはより小さい断面直径を有し得る。本明細書で使用する「断面直径」とは、デバイスの中心を通過しかつその終点がデバイスの外周上にある、最長の直線セグメントを意味する。例えば図1パートcを参照。いくつかの態様では、断面直径とは、支持体の中心を通過しかつその終点が支持体の外周上にある、最長の直線セグメントを意味する。いくつかの態様では、デバイスは約1mm〜約10mm、約1mm〜約8mm、約2mm〜約7mm、約3mm〜約7mm、約4mm〜約6.5mm、約5mm〜約6mmまたは約6mmの断面直径を有する。いくつかの態様では、デバイスは約1mm〜約6mm、約2mm〜約4mm、約3mm〜約5mmまたは約4mm〜約6mmの断面直径を有する。
【0089】
いくつかの態様では、支持体は約0.5mm〜約4mm、約0.5mm〜約3.5mm、約0.5mm〜約3mm、約1mm〜約4mm、約1.5mm〜約4mmまたは約2mm〜約3.5mmの断面直径を有する。
【0090】
いくつかの場合では、さらなる支持体を有さない膣内デバイスは、支持体を有する膣内デバイスに比べて減少した物理的完全性を有する。支持体を有さない膣内デバイスの断面直径を減少させることで、デバイスの物理的完全性はさらに減少し、これによりその使用が実行不可能になる。したがって、いくつかの態様では、本発明は、減少した断面直径を有するが剛性支持体を有する膣内デバイスであって、支持体を欠くデバイスに比べて同等かまたは大きい物理的完全性を有するデバイスに関する。
【0091】
本発明の膣内デバイスは様々な形状およびサイズであり得るものであり、したがって様々な表面積を有するデバイスが製造される。本明細書で使用する「表面積」とは、環境、例えば女性の膣、子宮頸部または子宮に露出するデバイスの全面積を意味する。いくつかの態様では、デバイスは約800mm2〜約2000mm2、約1000mm2〜約2000mm2、約1200mm2〜約2000mm2、約1400mm2〜約2000mm2または約1600mm2〜約2000mm2の表面積を有する。
【0092】
膣内デバイスを作製する方法
各種方法を使用して本発明の膣内デバイスを作製することができる。剛性支持体を有さない膣内デバイスを製造する各種手段は当技術分野で公知である。例えば米国特許第6,544,546号; 第6,394,094号; および第4,155,991号を参照。いくつかの態様では、本発明は、支持体の周囲にデバイスのマトリックスを成形することで膣内デバイスを作製する方法に関する。いくつかの態様では、本方法は(i) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する支持体を鋳型中に配置する工程、ならびに(ii) その中に分散している活性薬剤を有するマトリックスを鋳型に加える工程を含み、支持体とマトリックスとは隣接しておりかつデバイスは輪状である。
【0093】
本発明はまた、本方法により作製される膣内デバイスに関する。いくつかの態様では、マトリックスは、鋳型中に配置する前は加熱液体状態である。いくつかの態様では、加熱液体マトリックスは冷却により凝固する。いくつかの態様では、液体状態のマトリックスは触媒の添加により凝固する。いくつかの態様では、マトリックスを最初に成形し、次に剛性支持体のマトリックスに対する取り付けを、例えば支持体をマトリックスに挿入するかまたはそれをマトリックスの外側に取り付けることで行う。いくつかの態様では、接着剤を使用して剛性支持体をマトリックスに取り付ける。
【0094】
いくつかの態様では、圧縮成形を使用して本発明のデバイスを成形する。いくつかの態様では、実質的に均一な混合物を圧縮することで剛性支持体の周囲に圧縮マトリックスを成形することを、圧縮成形により、あるいはダイプレスの使用により、実現することができる。本明細書で使用する「圧縮した」とは、圧力下で圧縮化または融着した混合物を意味する。圧縮混合物は、圧縮前の混合物よりも大きい密度を有する。
【0095】
本発明で使用される実質的に均一な混合物は、圧縮に好適である実質的に均一な混合物を生じさせる、成分を混合する方法に熟練した当業者が認識する任意の方法を含む、成分を混合するための多種多様な方法を使用して調製することができる。そのような方法としては以下が挙げられるがそれに限定されない。
【0096】
乾式粉末ブレンディング: 潤滑剤が存在する場合はそれを除く乾燥成分を組み合わせて、好適な低剪断拡散型ミキサーまたは他の混合装置を使用して、実質的に均一な乾燥混合物を生じさせるために十分な期間、混合する。いくつかの態様では、最初の混合期間後に潤滑剤を加え、その後に、少なくとも第2の実質的に均一な乾燥混合物が形成されるまで再混合することができ、これを例えば圧縮プレスを使用して圧縮することで、本発明の圧縮膣内デバイスを成形することができる。
【0097】
あるいは、潤滑剤が存在する場合はそれを除く乾燥成分を順次組み合わせて、各成分を順次混合物に加えた後の、成分の実質的に均一な混合を実現するために十分な期間、混合する。成分の順次混合の後に、例えばCARVER(登録商標)実験室プレス(ニューヨーク州ニューヨークFred S. Carver, Inc.)を使用して実質的に均一な混合物を圧縮することで、圧縮膣内デバイスを成形することができる。いくつかの態様では、順次混合は幾何学的希釈を含む。
【0098】
湿式造粒: 活性薬剤、増量剤および他の成分を液体媒体に溶解または懸濁させ、実質的に均一なペーストが形成されるまで高剪断混合装置を使用して混合する。次に実質的に均一なペーストを乾燥、粉砕および整粒することで実質的に均一な乾燥細粒または粉末を形成することができ、次にこれを乾燥粉末圧縮の技術分野の当業者に公知の方法および機器を使用して圧縮することで、本発明の圧縮膣内デバイスを成形することができる。
【0099】
任意の特定の理論に拘束されるものではないが、混合プロセスは混合物の塑性および弾性に基づいて最適化することができる。混合物の塑性および弾性は互いに実質的に逆相関している。したがって、混合物の塑性が増加するに従って、その弾性は低下する。圧縮中に、実質的に均一な混合物の塑性は、混合物を圧縮することで成形される形状を混合物が保持することを可能にする。圧縮膣内デバイスの構成成分は、迅速でコスト効率的な圧縮プロセスを使用してデバイスを製作することを可能にするように選択することができる。
【0100】
いくつかの態様では、本発明の方法は、圧縮膣内デバイスを硬化する(curing)工程をさらに含む。本明細書で使用する「硬化」とは、本発明の実質的に均一な圧縮組成物の凝固、硬化(harden)または架橋に有用なプロセスを意味する。硬化は、加熱、乾燥、結晶化、架橋、光硬化(例えば単色もしくは広帯域の紫外光、可視光もしくは赤外光に対する露出)またはその組み合わせを含み得る。
【0101】
処置方法
膣内デバイスは各種状態を処置するために使用することができる。本発明は、本発明の膣内デバイスを女性に投与する段階を含む避妊の方法に関し得る。
【0102】
本発明は、本発明の膣内デバイスを女性に投与する段階を含むホルモン補充治療の方法に関し得る。
【0103】
本明細書で使用する「女性」とは、家畜動物、動物園用動物、スポーツ用動物およびペットなどであるがそれに限定されない、ヒトおよび非ヒトを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。いくつかの態様では、女性はヒトの女性を意味する。
【0104】
本明細書で使用する「投与する」という用語は、本発明の膣内デバイスを女性の膣管および/または泌尿生殖器管と接触して配置することを意味する。
【0105】
「処置する」および「処置」という用語は、望まれない生理的状態、障害もしくは疾患を予防もしくは緩徐化(低減)するかまたは有益なもしくは所望の臨床的結果を得ることが目的である、治療的処置と予防的(prophylactic)、維持的または予防的(preventative)対策との両方を意味する。本発明において、有益なもしくは所望の臨床的結果としては、検出可能であれ検出不可能であれ、症状もしくは徴候の軽減; 状態、障害もしくは疾患の程度の減弱; 状態、障害もしくは疾患の状況の安定化(すなわち悪化しないこと); 状態、障害もしくは疾患の発生遅延または進行の緩徐化; 状態、障害もしくは疾患の状況の寛解、緩解(部分的であれ全面的であれ); または、状態、障害もしくは疾患の改良もしくは改善が挙げられるがそれに限定されない。処置は、過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を誘発することを含む。処置は、処置を受けない場合に予想される生存時間に比べて生存時間を延長することも含む。
【0106】
いくつかの態様では、本発明は、膣管および/または泌尿生殖器管に対する部位特異的薬物送達の方法、ならびに、活性薬剤が膣管および/または泌尿生殖器管に吸収され得る任意の疾患の処置に関し得る。いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスは、単独でまたは他の薬物または薬学的組成物との組み合わせで投与することができる。
【0107】
本発明の膣内デバイスは治療有効量の活性薬剤を含有する。「治療有効量」という用語は、対象において疾患または障害の1つまたは複数の症状を減弱させる(すなわち疾患または障害を処置する)活性薬剤の量を意味する。治療上有効であるために必要な活性薬剤の正確な治療投与量は、対象間で変動し得る(例えば対象の年齢、体重、性別、状態、処置される障害または疾患の性質および重症度などによって)。したがって、治療有効量は、事前に特定することはできず、各種手段、例えば用量設定を使用して介護者、例えば医師または他の医療提供者が決定することができる。適切な治療有効量は、動物モデルを例えば使用する日常的実験法により決定することもできる。
【0108】
いくつかの態様では、膣内デバイスは、状態もしくは障害の処置のために女性に避妊を施す方法として、または女性において避妊を施しかつ状態もしくは障害を処置する方法として、使用することができる。そのような状態および障害としては破綻出血; 不規則な消退出血; 月経性出血障害; 卵巣嚢腫、子宮筋腫(類線維腫)および/または多嚢胞性卵巣症候群に関連する症状; 多毛; 鉄欠乏性貧血; 月経障害; ざ瘡; 子宮内膜症; 子宮内膜がん; 卵巣がん; 良性乳房疾患; 感染症; 子宮外妊娠; 顎関節症; 月経随伴性症状; 非月経関連性の頭痛、悪心および/またはうつ病; 閉経期前後症状; 低エストロゲン症; 閉経期障害; ならびに骨密度の損失が挙げられるがそれに限定されない。
【0109】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを投与することで、避妊と状態または障害の処置との両方を必要とする女性において避妊を施しかつ状態または障害を処置することができる。女性は例えば出産年齢または閉経期前後であり得る。
【0110】
本明細書で使用する「閉経期前後の女性」とは、まだ確実には閉経に達していないが閉経に関連する症状を経験中である女性を意味する。「閉経周辺期」は、「閉経の時期の近く」を意味し、卵巣機能が低下して最終的に停止する最後の月経期間に先行する数年間を包含するものであり、症状および不規則な周期の存在を含み得る。本明細書で使用する「閉経期の女性」とは、確実に閉経に達しておりかつ閉経に関連する症状を経験中であり得る女性を意味する。閉経または閉経後とは、卵巣活動の損失後の月経の恒久的停止のことであり、一般的には約1年間の月経の不在として臨床的に定義される。閉経は、女性において自然に生じ得るか、または外科的もしくは化学的手段を例えば通じて人工的に誘導され得る。例えば、子宮摘出術を例えば通じて生じ得る卵巣の除去は、閉経に関連する症状をしばしば導く。
【0111】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、閉経期状態を処置することができる。本明細書で使用する「閉経期状態」とは、閉経、または月経の自然停止の期間に関連する状態を意味する。さらに、「閉経期状態」という用語は、閉経周辺期の、閉経後のもしくは卵巣摘出術を受けた女性、または薬学的化学組成物、例えば商標名LUPRONE(登録商標)として市販の酢酸リュープロリド(イリノイ州レイクフォレストTAP Pharmaceutical Products, Inc.)もしくは商標名ZOLADEX(登録商標)として市販の酢酸ゴセレリン(デラウェア州ウィルミントンAstraZeneca Pharmaceuticals)などのGnRHアゴニストによりその内因性性ホルモン産生が抑制されている女性に関連する状態に関し得る。
【0112】
各種の閉経期状態は当技術分野で公知である。閉経期状態としては、のぼせ、膣乾燥、性交中疼痛、感染症の危険性増加、排尿制御不能(例えば尿失禁)、尿路感染症の頻度増加、膣萎縮症、外陰萎縮症、のぼせおよび/または寝汗、疲労、感情変化(例えば気分変動および性的関心の変化)、睡眠障害(例えば不眠)、皮膚および頭髪の乾燥、顔ひげおよび体毛の成長増加、心疾患の危険性増加、関節における痛みおよび疼痛、頭痛、動悸(すなわち急速で不規則な心拍動)、膣のかゆみ、骨粗鬆症、骨減少症ならびに全身性のかゆみが挙げられるがそれに限定されない。
【0113】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、骨粗鬆症を処置することができる。本明細書で使用する「骨粗鬆症」とは、骨を脆弱にする骨質量および骨密度の低下を特徴とする状態を意味する。いくつかの態様では、骨粗鬆状態としては骨折、特に臀部または脊椎の骨折の危険性増加が挙げられる。
【0114】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、尿失禁を処置することができる。本明細書で使用する「尿失禁」とは、頻繁な排尿および/または制御されない排尿を生じさせる、膀胱制御の完全または部分的な損失を意味する。
【0115】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、膣感染症を処置することができる。本明細書で使用する「膣感染症」とは、膣、子宮頸部または子宮中またはその周囲での細菌またはウイルス感染症を意味する。膣感染症の症状としては、かゆみ、灼熱感、ひりひりする痛み、性交および/または排尿中疼痛が挙げられるがそれに限定されず、これらは膣分泌物を伴うことがある。
【0116】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、膣痛を処置することができる。本明細書で使用する「膣痛」とは、女性生殖管、例えば膣、子宮頸部または子宮、およびその組み合わせにおいて局在する疼痛を意味する。疼痛は、医学的状態および/または心理的困難が理由であり得る。医学的状態としては慢性疾患、軽度の不快、および投薬を挙げることができる。心理的原因は身体的または性的虐待に関連し得る。本明細書で使用する「腹痛」とは、胃、小腸、大腸または腸の領域での疼痛を意味する。
【0117】
いくつかの態様では、本発明の膣内デバイスを対象に投与することで、炎症を処置することができる。本明細書で使用する「炎症」とは、傷害または感染症の部位が様々な程度の疼痛、腫脹、熱、発赤、および/または機能損失を示す可能性がある傷害または感染症に対する身体の自然な応答を意味する。
【実施例】
【0118】
実施例1
医療用高密度ポリエチレン((HDPE)、MEDPOR(登録商標)生体材料、ジョージア州ニューナンPorex)をリング形状に成形することで、本発明の膣内リングの支持体を調製する。硬化のためにHDPEをGrieveオーブン(イリノイ州ラウンドレイクGrieve Corp.)に約90℃で約6時間移す。次にHDPEを室温に冷却してHDPE剛性支持体を得る。次にHDPEを鋳型中に配置する。
【0119】
エストロゲン、プロゲスチンおよびシリコーンポリマーの均一混合物の形成を、Ross DPM-4ミキサー(ニューヨーク州ホーポージCharles Ross & Sonが供給するRoss二重遊星形ミキサーおよびディスペンサー)中に成分を配置し、そこで約30分間またはエストロゲンおよびプロゲスチンがポリマーマトリックス全体を通じて実質的に均一に分布するまで成分を減圧下で混合および脱気することにより行うことで、本発明の膣内リングのマトリックスを調製する。次にこの混合物を触媒、例えば塩化メチルと混合することで重合プロセスを開始する。HDPE剛性支持体を含有する鋳型に触媒混合物を加えることで、混合物は鋳型を包囲する。次に混合物を硬化することで、HDPE剛性支持体を包囲するシリコーンマトリックスを有する膣内リングを形成する。
【0120】
鋳型を分解して膣内リングを除去し、リングをヒートシールホイルパウチ中に包装する。
【0121】
このプロセスにより約40mm〜約60mmの外径、約10mm〜約40mmの内径および約5mm〜約8mmの断面直径を有する膣内リングが得られる。膣内リングの支持体は約2mm〜約4mmの断面直径を有する。
【0122】
結語
本明細書に記載の各種態様またはオプションのすべてを、任意のおよびすべての変形において組み合わせることができる。本発明をそのいくつかの態様を参照して特に示しかつ説明したが、それらが限定ではなく例示のみを目的として提示されているものであり、本発明の精神および範囲より逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を本発明において行うことができるということを、当業者は理解するであろう。したがって、本発明の幅および範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物にのみ従って定義されるべきである。
【0123】
雑誌論文もしくは梗概、米国特許出願公開もしくは対応する外国特許出願、発行済み特許もしくは外国特許、または任意の他の文献を含む、本明細書で引用されているすべての文献は、引用文献中で提示されているすべてのデータ、表、図面および文章を含めて、それぞれ参照により本明細書に完全に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する剛性支持体と;
(b) マトリックスと;
(c) マトリックス中に分散している活性薬剤と
を含む、膣内デバイスであって、支持体とマトリックスとが隣接しておりかつデバイスが輪状である、膣内デバイス。
【請求項2】
支持体が約20〜約80のショアA硬度を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
支持体が約1MPa〜約100MPaの引張強度を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
支持体が約20〜約80のショアA硬度および約1MPa〜約100MPaの引張強度を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
支持体が金属、合金、プラスチック、その複合体、またはその組み合わせを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
プラスチックが熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックを含む、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
プラスチックがポリアルキレン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロン(登録商標)、またはその組み合わせを含む、請求項5記載のデバイス。
【請求項8】
ポリアルキレンが高密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン、高密度ポリブチレン、またはその組み合わせを含む、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
ポリアルキレンが高密度ポリエチレンを含む、請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
マトリックスがポリシロキサン、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、ダクロン、テフロン(登録商標)、またはその組み合わせを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
マトリックスがポリシロキサン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、またはその組み合わせである、請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
マトリックスが支持体の表面積の少なくとも95%を包囲する、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
2つ以上のマトリックスを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項14】
活性薬剤がステロイドホルモン、抗コリン薬、麻酔薬、その組み合わせ、またはその誘導体である、請求項1記載のデバイス。
【請求項15】
活性薬剤がプロゲステロン、エストロゲン、オキシブチニン、リドカイン、ダナゾール、エトノゲストレル、エチニルエストラジオール、またはその組み合わせである、請求項1記載のデバイス。
【請求項16】
膣リングである、請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
約40mm〜約70mmの外径を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項18】
約10mm〜約60mmの内径を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
支持体が約0.5mm〜約4mmの断面直径を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項20】
外側シースをさらに含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項21】
(i) 少なくとも約20のショアA硬度および少なくとも約1MPaの引張強度を有する支持体を鋳型中に配置する工程; ならびに
(ii) その中に分散している活性薬剤を有するマトリックスを鋳型に加える工程
を含む、剛性支持体とマトリックスとを有する膣内デバイスを作製する方法であって、
支持体とマトリックスとが隣接しておりかつデバイスが輪状である、方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法により作製される膣内デバイス。
【請求項23】
請求項14記載のデバイスを女性に投与する段階を含む避妊の方法。
【請求項24】
請求項14記載のデバイスを女性に投与する段階を含むホルモン補充治療の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530379(P2011−530379A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522987(P2011−522987)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/004607
【国際公開番号】WO2010/019226
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(507115698)テバ ウィメンズ ヘルス インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】