説明

剥離および封止可能な装置、ICシート、ICシートの巻物およびICチップの作製方法

【課題】 薄膜集積回路の封止の際の製造効率の悪化を防止し、損傷や破壊を防止することを課題とする。また、基板からの薄膜集積回路の剥離および剥離した薄膜集積回路の封止を効果的に行い、製品の歩留まりを向上させることを課題とする。
【解決手段】 薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、基板から薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、薄膜集積回路を第2のシート材と第3のシート材で挟み込み、薄膜集積回路を封止するラミネート手段とを有するラミネート装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に設けられた薄膜集積回路を剥離および封止可能な装置(ラミネート装置)に関する。また、本発明は、封止した複数の薄膜集積回路を含むICシートに関する。また、本発明は、封止した複数の薄膜集積回路を含むICシートが巻き取られた巻物に関する。また、本発明は、薄膜集積回路を封止したICチップの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有価証券や商品の管理など、自動認識が必要なあらゆる分野を対象に、非接触でデータの授受が行えるICチップ搭載カードや、ICチップ搭載タグの必要性が高まっている。ICチップを搭載したカードは、カード内部のループアンテナを介して外部の機器とデータの読み書きをするようになされる。また、ICチップを搭載したカードは、磁気記録方式によりデータを記録する磁気カードに比べて記憶容量が大きく、セキュリティ性に優れているため、最近では様々な分野への利用できる形態が提案されている。(例えば、特許文献1)
【0003】
一般的にICチップはシリコンウェハから形成されるが、近年、より低コスト化を図るために、ガラス基板上に設けられた薄膜集積回路を用いたICチップ(ICタグ、IDタグ、RFタグ(Radio Frequency)、RFID、無線タグ、電子タグとも呼ばれる)の技術開発が進められている。このような技術では、ガラス基板上に設けられた薄膜集積回路は、完成後に支持基板であるガラス基板から分離する必要がある。そこで、支持基板上に設けられた薄膜集積回路を分離する方法として、これまで様々な技術が考えられている。
【0004】
例えば、支持基板上に設けられた薄膜集積回路を剥がす方法として、非晶質シリコン(またはポリシリコン)からなる剥離層を設け、基板を通過させてレーザ光を照射して非晶質シリコンに含まれる水素を放出させることにより、空隙を生じさせて支持基板を分離させる技術がある(特許文献2参照)。また、他にも薄膜集積回路と支持基板の間に珪素を含む剥離層を設けて、当該剥離層をフッ化ハロゲンを含む気体を用いて除去することにより、薄膜集積回路を支持基板から分離する技術がある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−260580号公報
【特許文献2】特開平10−125929号公報
【特許文献3】特開平8−254686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板上に複数の薄膜集積回路を形成した場合に、剥離層を除去すると複数の薄膜集積回路は個々に基板から分離される。分離した後の複数の薄膜集積回路をラミネート処理等によってそれぞれ別々に封止すると、製造効率が悪化してしまう。また、一旦分離した薄膜集積回路は薄くて軽いため、損傷や破壊が生じないように封止するのは非常に困難である。
【0006】
また、製品の生産効率を考えた場合、一連の装置を用いて基板に設けられた薄膜集積回路の剥離と剥離した薄膜集積回路の封止を連続して行う。一般的に、ラミネート処理等による封止は、封止後の強度や信頼性を考慮して、例えばホットメルトフィルム等の接着力が強いフィルムを用いて行う。そのため、基板からの薄膜集積回路の剥離も同時に接着力の強いフィルムを用いて行うと、基板にまでフィルムが接着して薄膜集積回路の剥離がうまく行えない場合が生じる。その結果、製品の歩留まりが悪化するという問題が生じる。また、逆に、接着力の弱いフィルムを用いて薄膜集積回路の剥離および封止を行った場合、基板からの薄膜集積回路の剥離は効果的に行うことができるが、封止された薄膜集積回路の信頼性において問題が生じる。
【0007】
そのため本発明は、上記問題を鑑み、薄膜集積回路の封止の際の製造効率の悪化を防止し、損傷や破壊を防止することを課題とする。また、基板からの薄膜集積回路の剥離および剥離した薄膜集積回路の封止を効果的に行い、製品の歩留まりを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の剥離および封止可能な装置は、薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、基板から薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、薄膜集積回路を第2のシート材と第3のシート材で挟み込み、薄膜集積回路を封止する封止手段とを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の剥離および封止可能な装置の他の構成として、薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、第1のシート材が巻きつけられた第1の供給用ローラーと、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、基板から薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、第2のシート材が巻きつけられた第2の供給用ローラーと、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、第3のシート材が巻きつけられた第3の供給用ローラーと、薄膜集積回路を第2のシート材と第3のシート材で挟み込み、薄膜集積回路を封止する封止手段と、封止された薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の剥離および封止可能な装置の他の構成として、薄膜集積回路が複数設けられた基板と、第1のシート材が巻き付けられた第1の供給用ローラーと、基板の一方の面と第1のシート材とが対向するように基板を固定し、且つ基板と第1のシート材とが接着するように基板を移動させる固定移動手段と、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、基板から薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、第2のシート材が巻き付けられた第2の供給用ローラーと、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、第3のシート材が巻き付けられた第3の供給用ローラーと、薄膜集積回路の一方の面に接着する第3のシート材が巻き付けられた第3の供給用ローラーと、薄膜集積回路を第2のシート材と第3のシート材により封止する封止手段と、封止された薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴としている。
【0011】
上記構成を有する剥離および封止可能な装置において、封止手段は、少なくとも対向して設けられた2つのローラーを有することを特徴としている。また、2つのローラーの一方または両方は加熱手段を有していてもよい。また、封止手段は、対向して設けられた2つのローラーの間に薄膜集積回路を通過させると共に、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行うことにより、薄膜集積回路を封止することができる。
【0012】
また、本発明の剥離および封止可能な装置の他の構成として、薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、第1のシート材が巻きつけられた第1の供給用ローラーと、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、基板から薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、第2のシート材が巻きつけられた第2の供給用ローラーと、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、薄膜集積回路の一方の面に、樹脂を加熱溶融状態で押し出しながら供給する手段と、薄膜集積回路を第2のシート材と樹脂により封止する封止手段と、封止された薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴としている。この場合、封止手段は、少なくとも対向して設けられた2つのローラーを有し、2つのローラーの一方または両方が冷却手段を有していてもよい。さらに、封止手段は、対向して設けられた2つのローラー間の間に薄膜集積回路を通過させると共に、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行うことにより、薄膜集積回路を封止することができる。
【0013】
本発明の剥離および封止可能な装置において、第1および第2の剥離手段は、ローラーを有することを特徴としている。さらに、第2の剥離手段は、少なくとも対向して設けられた2つのローラーを具備し、2つのローラーの一方または両方に加熱手段が備わっていてもよい。また、第2の剥離手段は、対向して設けられた2つのローラーの間に薄膜集積回路を通過させると共に、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行うことにより、薄膜集積回路を封止することができる。
【0014】
また、第1のシート材は、少なくとも一方の面に接着面を有することを特徴としている。また、第2のシート材と第3のシート材はラミネートフィルムであることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、封止された複数の薄膜集積回路をシート状にすることで、その取り扱いを容易にするICシートを提供する。本発明のICシートは、複数の薄膜集積回路の各々を表裏から封止した第2のシート材と第3のシート材の2つのシート材からなる。
【0016】
また、本発明は、2つのシート材によって封止された複数の薄膜集積回路を含むICシートを巻き取ることで、その取り扱いを容易にするICシートの巻物を提供する。本発明のICシートの巻物は、第2のシート材と第3のシート材の2つのシート材によって表裏から複数の薄膜集積回路の各々を封止することによって得られたICシートが巻き取られたものである。
【0017】
上記構成を有するICシートまたはICシートの巻物において、複数の薄膜集積回路の各々は、複数の薄膜トランジスタと、アンテナとして機能する導電層を有することを特徴とする。また、複数の薄膜集積回路の各々は、規則的に配列することを特徴とする。
【0018】
本発明のICチップの作製方法は、絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、基板上に薄膜集積回路を複数形成し、薄膜集積回路の境界に開口部を形成して、剥離層を露出させ、開口部にフッ化ハロゲンを含む気体または液体を導入して剥離層を除去し、薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させることにより、基板から薄膜集積回路を剥離し、薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させることにより、第1のシート材から薄膜集積回路を剥離し、薄膜集積回路の一方の面を第3のシート材に接着させ、薄膜集積回路を第2のシート材と第3のシート材により封止することを特徴としている。また、基板上に、前記薄膜集積回路として、複数の薄膜トランジスタと、アンテナとして機能する導電層を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の剥離および封止可能な装置を用いることによって、基板上に設けられた複数の薄膜集積回路の剥離・封止・回収を連続して行うことができるため、製造効率を向上させて、製造時間を短縮することができる。また、本発明では、基板からの薄膜集積回路の剥離を、封止に用いるフィルムより接着が弱いものを用いて行うため、効果的に剥離を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0021】
本発明は、基板に設けられた薄膜集積回路を剥離し、当該剥離した薄膜集積回路を封止する工程を連続して行う剥離および封止可能な装置を提供する。そのため、本発明では、基板上に設けられた複数の薄膜集積回路を第1のシート材に接着させて剥離し、続いて第1のシート材に接着した薄膜集積回路を第2のシート材に接着させて再度剥離を行い、その後、第2のシート材が接着している面と反対側の面に第3のシート材を接着させて、封止手段によって第2のシート材と第3のシート材で薄膜集積回路を封止する。つまり、本発明では、一連の剥離・封止の工程において、薄膜集積回路の剥離を2回行う。
【0022】
第1のシート材は、基板に設けられた薄膜集積回路を剥離するために用い、第2のシート材は第1のシート材から薄膜集積回路を剥離し、第3のシート材と共に薄膜集積回路を封止するラミネートフィルムとしての役割を有する。これは、封止に用いるラミネートフィルムを用いて、基板に設けられた薄膜集積回路を剥離しようとした場合、粘着力が強いため、薄膜集積回路だけでなく基板にまで接着して剥離が効果的に行えなくなるためである。従って、本発明では、粘着力の弱い粘着剤を有する面を具備した第1のシート材を用いて基板上に設けられた薄膜集積回路の剥離を行い、一旦第1のシート材に接着した薄膜集積回路をラミネートフィルム等からなる第2のシート材に再度剥離する。
【0023】
なお、本発明において、第2または第3のシート材に用いるラミネートフィルムとは、ラミネート処理等の封止処理に用いることができればどのようなフィルムでもよく、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸メチル、ナイロン、ポリカーボネート等の材料を用いることができる。また、第2または第3のシート材は、一方の面に接着面を有していてもよく、接着面は、熱硬化樹脂性樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤、光硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、樹脂添加剤等の接着剤を塗布したものを用いることができる。
【0024】
また、本発明は、複数の薄膜集積回路を封止してシート状にしたICシートや、複数薄膜集積回路を含むICシートが巻き取られたICシートの巻物も含まれる。
【0025】
また、本発明は、基板上に剥離層を介して薄膜集積回路を形成し、その後剥離層を除去することによって、基板から薄膜集積回路を剥離・封止することによって、ICチップを作製することができる。
【0026】
以下に、基板に設けられた薄膜集積回路の剥離・封止を連続して行う剥離および封止可能な装置、封止した複数の薄膜集積回路を含むICシート、ICシートが巻き取られた巻物およびICチップの作製方法に関して図面を用いて具体的に説明を行う。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、基板からの薄膜集積回路の剥離と、剥離した薄膜集積回路の封止の工程を連続して行う剥離および封止可能な装置の主な形態に関して以下に説明する。
【0028】
本実施の形態で示す剥離および封止可能な装置は、図1に示すように、薄膜集積回路13が複数設けられた基板12を搬送する搬送手段11と、第1のシート材18が巻き付けられた第1の供給用ローラー14と、基板12から薄膜集積回路13を第1のシート材18に接着させて剥離するローラー16を備えた第1の剥離手段51と、第2のシート材19が巻き付けられた第2の供給用ローラー15と、第1のシート材18から薄膜集積回路13を第2のシート材19に接着させて剥離するローラー24、28を備えた第2の剥離手段52と、第1のシート材18を回収する回収用ローラー21と、第3のシート材23を供給する第3の供給用ローラー22と、薄膜集積回路13を第2のシート材19と第3のシート材23により封止する封止手段17と、封止された薄膜集積回路13を巻き取る回収用ローラー20とを有する。
【0029】
図1に示す装置では、まず第1の供給用ローラー14から供給された第1のシート材18がローラー16を備えた第1の剥離手段51によって、搬送手段11により搬送される基板12上の薄膜集積回路13に接着し、基板12から薄膜集積回路13を剥離する。その後、剥離された薄膜集積回路13は、第1のシート材18に接着されてローラー28の方向に流れていく。また、第2の供給用ローラー15から供給される第2のシート材19がローラー24の方向に流れていく。
【0030】
そして、第2のシート材19がローラー24、28を備えた第2の剥離手段52によって、第1のシート材18に接着されて搬送されてきた薄膜集積回路13の他方の面に接着し、第1のシート材18から薄膜集積回路13を剥離する。なお、第2の剥離手段は、第1のシート材18に接着された薄膜集積回路を第2のシート材19に接着する際に、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行う。その後、剥離された薄膜集積回路13は、第2のシート材19に接着されて封止手段17の方向に流れていく。また、第3の供給用ローラー22から供給される第3のシート材23が封止手段17の方向に流れていく。
【0031】
封止手段17では、第3のシート材23に、第2のシート材に接着されて搬送されてきた薄膜集積回路13の他方の面(第2のシート材が19が接着した面と反対側の面)を接着させると共に、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行う。その後、封止された薄膜集積回路13は、回収用ローラー20の方向に流れていき、回収用ローラー20に巻き付いていく。
【0032】
図1で示した剥離および封止可能な装置は、上記したように、第1のシート材18は、第1の供給用ローラーから供給され、第1の剥離手段が含むローラー16、ローラー28の順に流れて、回収用ローラー21に回収される。また、第1の供給用ローラー14とローラー16とローラー28は同じ方向に回転する。第2のシート材19は第2の供給用ローラー15から供給され、第2の剥離手段が含むローラー24、封止手段17が含むローラー25の順に流れて回収用ローラー20に回収される。また、第2の供給用ローラー15とローラー24とローラー25は同じ方向に回転する。第3のシート材23は第3の供給用ローラー22から供給され、封止手段17が含むローラー26を流れた後に回収用ローラー20に回収される。また、第3の供給用ローラー22とローラー26は同じ方向に回転する。
【0033】
搬送手段11は、薄膜集積回路13が複数設けられた基板12を搬送するものであり、図1ではローラー27を具備し、当該ローラー27が回転することで、基板12が搬送される。なお、搬送手段11は基板12を搬送できるものならどのような構成でもよく、例えばベルトコンベア、複数のローラーまたはロボットアーム等を用いてもよい。ロボットアームは、基板12をそのまま搬送したり、基板12がもうけられたステージを搬送する。また、搬送手段11は、第1のシート材18が移動する速度に合わせて、所定の速度で基板12を搬送する。
【0034】
第1の供給用ローラー14、第2の供給用ローラー15、第3の供給用ローラー22にはそれぞれ、第1のシート材18、第2のシート材19、第3のシート材23が巻き付けられている。第1の供給用ローラー14を所定の速度で回転することによって、第2の剥離手段が含むローラー28に向かって第1のシート材を所定の速度で流し、第2の供給用ローラー15および第3の供給用ローラー22をそれぞれ所定の速度で回転することによって、封止手段17に向かって第2のシート材19、第3のシート材23をそれぞれ所定の速度で流す。なお、第1の供給用ローラー14、第2の供給用ローラー15、第3の供給用ローラー22は、円柱状であり、樹脂材料、金属材料またはゴム材料等からなる。
【0035】
第1のシート材18は、可撓性のフィルムからなっており、少なくとも一方の面に粘着剤を有する面が設けてある。具体的には、ポリエステル等の基材として用いるベースフィルム上に粘着剤が設けてある。粘着剤としては、アクリル樹脂等を含んだ樹脂材料または合成ゴム材料からなる材料を用いることができる。また、第1のシート材18には粘着力が弱いフィルム(粘着力が、好ましくは0.01N〜1.0N、より好ましくは0.05N〜0.75N、さらにより好ましくは0.15N〜0.5N)を用いるのが好ましい。これは、基盤に設けられた薄膜集積回路を第1のシート材に接着した後に、再度、第2のシート材に薄膜集積回路を接着させ、当該第1のシート材を薄膜集積回路から剥離するためである。また、接着剤の厚さは、1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、より好ましくは10μm〜30μmにすることができる。また、ベースフィルムとしては、ポリエステル等のフィルムを用いて10μm〜1mm、好ましくは25μm〜200μm、より好ましくは50μm〜100μmで形成すると加工時に扱いやすく好ましい。
【0036】
また、第1のシート材として、上述した材料の他にも粘着剤にUV(紫外線)剥離フィルム、熱剥離フィルム等を用いることができる。UV(紫外線)剥離フィルムは、ベースフィルム上にUV(紫外線)を照射することによって粘着力が弱くなる樹脂材料からなる接着層が形成された構成となっている。熱剥離フィルムは、ベースフィルム上に加熱することによって粘着力が弱くなる樹脂材料からなる接着層が形成された構成となっている。
【0037】
粘着層の表面がセパレーターで保護されている場合は、使用する時に図1に示すようにセパレーター回収ローラー30を設け、使用時にセパレーター29を除去すればよい。また、基材として用いたベースフィルム上に帯電防止処理が施されたものを用いることもできる。セパレーターはポリエステル等のフィルムや紙等からなるが、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムで形成されている場合は、加工時に紙粉などが生じないため好ましい。
【0038】
第2のシート材19と第3のシート材23は、可撓性のフィルムからなっており、例えばラミネートフィルムや繊維質な材料からなる紙などに相当する。ラミネートフィルムは、ラミネート処理等の封止処理に用いることができるフィルム全般を指し、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸メチル、ナイロン、ポリカーボネート等の材料からなり、その表面にエンボス加工等の加工処理が施されていてもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、ホットメルト接着剤を用いて薄膜集積回路の封止を行うのが好ましい。ホットメルト接着材は、水や溶剤を含まず、室温では固体で不揮発性の熱可塑性材料からなり、溶融状態で塗布し冷却することにより物と物を接着する化学物質である。また、接着時間が短く、無公害、安全で衛生的、省エネルギーであり、低コストであるといった利点を有する。
【0040】
ホットメルト接着剤は常温で固体であるため、あらかじめフィルム状、繊維状に加工したもの、またはポリエステル等のベースフィルム上にあらかじめ接着層を形成してフィルム状にしたものを用いることができる。ここでは、ポリエチレンテレフタレートからなるベースフィルム上にホットメルトフィルムを形成したシート材を用いる。ホットメルトフィルムは、ベースフィルムよりも軟化点の低い樹脂からなっており、加熱することによってホットメルトフィルムのみが溶融してゴム状になり接着し、冷却すると硬化する。また、ホットメルトフィルムとして、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系、ポリエステル系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系、ポリオレフィン系等を主成分としたフィルムを用いることができる。
【0041】
また、第2のシート材19と第3のシート材23の一方または両方は、一方の面に接着面を有していてもよい。接着面は、熱硬化樹脂性樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤、光硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、樹脂添加剤等の接着剤を塗布したものを用いることができる。
【0042】
また、第2のシート材19と第3のシート材23の一方または両方は、透光性を有していてもよい。また、第2のシート材19と第3のシート材23の一方または両方に、封止する薄膜集積回路13を保護するために、静電気をチャージすることでその表面を導電性材料によりコーティングしてもよい。また、第2のシート材19と第3のシート材23の一方または両方に、保護膜として炭素を主成分とする薄膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)や、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性材料によりコーティングしてもよい。
【0043】
第1の剥離手段51は、少なくともローラー16を備え、薄膜集積回路13の一方の面を、第1のシート材18の一方の面に接着させて、基板12から薄膜集積回路13を剥離する。ローラー16が回転することによって、薄膜集積回路13が第1のシート材18に接着し、基板12から薄膜集積回路13が剥離される。従って、ローラー16は、薄膜集積回路13が設けられた側の基板12と対向するように設けられる。また、ローラー16は円柱状であり、樹脂材料、金属材料またはゴム材料等からなり、好ましくは柔らかい材料からなる。
【0044】
第2の剥離手段52は、少なくとも対向するローラー24、28を備え、第1のシート材18に接着した薄膜集積回路13を、第2のシート材19の一方の面に接着させて、第1のシート材18から薄膜集積回路13を剥離する。このとき、第2の供給用ローラー15からローラー24に向かって流れる第2のシート材19に、薄膜集積回路を接着させると共に、ローラー24とローラー28の間を通過する際に、ローラー24とローラー28の一方または両方を用いて、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行う。
【0045】
この処理を行うことによって、第1のシート材18に接着された薄膜集積回路13が第2のシート材19に接着する。加熱処理の方法としては、熱エネルギーを加えることができればどのような方法でもよく、例えばオーブン、電熱線のヒータ、オイル等の温媒、ホットスタンプ、サーマルヘッド、レーザ光、赤外線フラッシュ、熱ペン等を適宜選択して用いることができる。また、ローラー24とローラー28は円柱状であり、樹脂材料、金属材料またはゴム材料等からなり、好ましくは柔らかい材料からなる。
【0046】
封止手段17は、一方の面が第2のシート材19に接着した薄膜集積回路13が流れてくると、当該薄膜集積回路13の他方の面に第3のシート材23を接着させると共に、薄膜集積回路13を第2のシート材19と第3のシート材23により封止する。また、封止手段17は、互いに対向して設けられたローラー25とローラー26を有する。そして、第3の供給ローラー22からローラー26に向かって流れる第3のシート材23に、薄膜集積回路13の他方の面を接着させると共に、ローラー25とローラー26の間を通過する際に、ローラー25とローラー26を用いて、加圧処理と加熱処理の一方または両方を行う。この処理を行うことによって、薄膜集積回路13は、第2のシート材19と第3のシート材23によって封止される。
【0047】
封止手段17を構成するローラー25、26の一方または両方は、加熱手段を有する。加熱手段は、例えば、オーブン、電熱線のヒータ、オイル等の温媒、ホットスタンプ、サーマルヘッド、レーザ光、赤外線フラッシュ、熱ペン等を用いることができる。また、ローラー25とローラー26は、ローラー24と第2の供給用ローラー15と第3の供給用ローラー22の回転する速度に合わせて、所定の速度で回転する。また、ローラー25とローラー26は円柱状であり、樹脂材料、金属材料またはゴム材料等からなり、好ましくは柔らかい材料からなる。
【0048】
回収用ローラー20は、第2のシート材19と第3のシート材23により封止された薄膜集積回路13を巻き取ることで回収するローラーである。回収用ローラー20は、ローラー25とローラー26の回転する速度に合わせて、所定の速度で回転する。また、回収用ローラー20は、円柱状であり、樹脂材料、金属材料またはゴム材料等からなり、好ましくは柔らかい材料からなる。
【0049】
このように、図1に示した剥離および封止可能な装置によると、第1〜第3の供給用ローラー14、15、21、ローラー16、ローラー24、28、ローラー25、26および回収用ローラー20が回転することで、基板12上に設けられた複数の薄膜集積回路13を連続的に剥離・封止・回収することができる。従って、図1で示した装置は、量産性が高く、製造効率を向上させることができる。
【0050】
次に、上記とは異なる剥離および封止可能な装置の形態について図2を用いて説明する。
【0051】
図2に示す剥離および封止可能な装置は、基板12を固定・移動する手段33と、基板12の一方の面から薄膜集積回路13を剥離する第1の剥離手段51と、第1のシート材18が巻き付けられた第1の供給用ローラー14と、第2のシート材19が巻き付けられた第2の供給用ローラー15と、第1のシート材18に接着された薄膜集積回路13を剥離して第2のシート材19に接着させる第2の剥離手段52と、薄膜集積回路13を第2のシート材19と第3のシート材23により封止する封止手段17と、封止された薄膜集積回路13を巻き取る回収用ローラー20とを有する。図2に示す構成は、図1に示す構成に、固定移動手段33を新たに設けた構成となっている。
【0052】
図2に示す装置では、まず第1の供給用ローラー14から、ローラー16に向かって流れてきた第1のシート材18に、固定移動手段33により基板12が接着する。そして、ローラー16を備えた第1の剥離手段51によって第1のシート材18に薄膜集積回路13が接着し、基板12から薄膜集積回路13が剥離する。また、剥離された薄膜集積回路13が接着した第1のシート材18はローラー28の方向に流れていく。また、第2の供給用ローラー15から供給される第2のシート材19がローラー24の方向に流れていく。そして、その後は図1で示したように、薄膜集積回路13が封止される。
【0053】
固定移動手段33は、基板12の薄膜集積回路13が設けられた側の面(以下一方の面と呼ぶ)が第1のシート材18と対向するように基板12を固定する役割と、基板12の一方の面と第1のシート材18とを接着させるために基板12を移動させる役割とを有する。基板の移動は、固定移動手段33が移動することにより行われる。なお、固定移動手段33は、図示するように、基板12を1枚ずつ処理するものを用いてもよいし、円柱体や、角柱体の多面体からなるものを用いてもよい。円柱体や多面体のものを用いる場合は、その側面に基板12を固定させ、円柱体または多面体が回転することで、基板12を移動させる。
【0054】
このように、図2に示した剥離および封止可能な装置によると、固定移動手段33、第1〜3の供給用ローラー、ローラー16、ローラー24、28、ローラー25、26、回収用ローラー20が回転することで、基板12上の複数の薄膜集積回路13を連続的に剥離・封止・回収することができる。従って、図2の剥離および封止可能な装置を用いることによって、量産性を高め、製造効率を向上することができる。
【0055】
次に、上記とは異なる剥離および封止可能な装置の形態について図3を用いて説明する。
【0056】
図3に示す剥離および封止可能な装置は、基板12を搬送する搬送手段11と、基板12の一方の面から薄膜集積回路13を剥離する第1の剥離手段51と、第1のシート材18が巻き付けられた第1の供給用ローラー14と、第2のシート材19が巻き付けられた第2の供給用ローラー15と、第1のシート材18に接着された薄膜集積回路13を剥離して第2のシート材19に接着させる第2の剥離手段52と、第2のシート材19が接着した面と反対側の薄膜集積回路13の面に樹脂55を加熱溶融状態で押し出して、第2のシート材19と樹脂55により薄膜集積回路を封止する封止手段17と、封止された薄膜集積回路13を巻き取る回収用ローラー20とを有する。図3に示す構成は、図1に示す構成に、第3の供給用ローラー22と第3のシート材23がダイ54と樹脂55に置き換わった構成となっている。
【0057】
図3に示す装置では、基板12上に設けられた薄膜集積回路13を第1のシート材18で剥離し、第1のシート材に接着した薄膜集積回路13を第2のシート材19に接着させ、第2のシート材19に接着した薄膜集積回路13が封止手段17に向かって流れるところまでは、図1と同様に行うことができる。その後、図3では、第2のシート材19に接着した薄膜集積回路の他方の面(第2のシート材が接着した面と反対側の面)にダイ54から加熱溶融状態で押し出された樹脂55が供給される。続いて、圧着ローラー56と冷却ローラー57との間に導入された第2のシート材19と樹脂55を、圧着ローラー56と冷却ローラー57で加圧しながら冷却することによって、薄膜集積回路の他方の面に樹脂55を接着させると共に、第2のシート材19と樹脂55により薄膜集積回路13を封止する。最後に、封止された薄膜集積回路13は、回収用のローラー20の方向に流れていき、回収用ローラー20に巻き取られて回収される。
【0058】
図3に示す剥離および封止可能な装置の構成において、樹脂55には、熱可塑性樹脂を用いればよい。樹脂55に用いる熱可塑性樹脂は、軟化点の低いものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等のビニル系共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂等が挙げられる。なお、樹脂55は、ダイ54からの単層で押し出したものでもよいし、2層以上を共押し出ししたものでもよい。なお、第1のシート材18または第2のシート材19は、上述したいずれかの材料を用いることができる。
【0059】
このように、図3に示した剥離および封止可能な装置によると、搬送手段11、第1、第2の供給用ローラー14、15、ローラー16、ローラー24、28、圧着ローラー56、冷却ローラー57および回収用ローラー20が回転することで、基板12上に設けられた複数の薄膜集積回路13を連続的に剥離・封止・回収することができる。従って、図3で示した装置は、量産性が高く、製造効率を向上させることができる。
【0060】
次に、剥離および封止可能な装置の全体的な構成について図4を用いて説明する。ここでは、図1の構成を含む剥離および封止可能な装置の構成を例に挙げて説明する。
【0061】
カセット41は、基板供給用のカセットであり、薄膜集積回路13が複数設けられた基板12がセットされる。カセット42は、基板回収用のカセットであり、薄膜集積回路13が剥離された後の基板12が回収される。カセット41とカセット42の間には、搬送手段として複数のローラー43〜45が設けられており、当該ローラー43〜45が回転することで、基板12が搬送される。その後は、上述したように、薄膜集積回路13の剥離と封止が行われ、続いて、封止された薄膜集積回路13は、切断手段46により切断される。切断手段46は、ダイシング装置、スクライビング装置、レーザ照射装置(CO2レーザ照射装置等)等を用いたものである。上記の工程を経て、封止された薄膜集積回路13が完成する。
【0062】
なお、図1〜図3に示す上記の構成において、基板12上に設けられる薄膜集積回路13は、複数の素子からなる素子群とアンテナとして機能する導電層とを含む。しかしながら、本発明は、この構成に制約されない。
【0063】
基板12上に設けられる薄膜集積回路13は、素子群のみを含んでいてもよい。そして、アンテナとして機能する導電層を第2のシート材19または第3のシート材23に貼り付けておき、薄膜集積回路13が第2のシート材または第3のシート材に接着する際に、薄膜集積回路13が含む複数の素子と導電層とを接続させるようにしてもよい。
【0064】
(実施の形態2)
本実施の形態では、ICシート(ICフィルム、シート体、フィルム体とも呼ぶ)の構成について以下に説明する。
【0065】
図5に示すように、ICシートは、複数の薄膜集積回路13の各々を、表裏からから2つのシート材19、23によって挟み込んで封止したシート状ものである。これは、上記実施の形態1で示したように、複数の薄膜集積回路を表裏から第2のシート材19と第3のシート材23により挟み込んで封止することによって得られる。
【0066】
また、複数の薄膜集積回路13は、それぞれ複数の素子とアンテナとして機能する導電層を有している。さらに、基板に設けられた薄膜集積回路の剥離を効果的に行うことによって、複数の薄膜集積回路13の各々を規則的に配列させてシート状にすることが可能である(図5(A))。また、1枚のICシートをローラー状に巻き取ってもよいし、重ね合わせて折り畳むことも可能である(図5(B))。
【0067】
上記のように、一対のシート材により封止された複数の薄膜集積回路13を含むシート状のICシートは、出荷が容易であり、特に大量の薄膜集積回路13を作製する場合の出荷に有効である。また、複数の薄膜集積回路13は、個々が分断された状態であれば取り扱いが困難となるが、本実施の形態が提供するICシートは、シート状であるために取り扱いが容易であり、薄膜集積回路13の破壊や損傷を防止することができる。薄膜集積回路13を個々に取り出したい時には、その時にダイシング装置、スクライビング装置、レーザ照射装置(CO2レーザ照射装置等)等を用いて、切断すればよい。
【0068】
なお、本実施の形態は、上記の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0069】
(実施の形態3)
本実施の形態では、ICシートの巻物(巻き取りもの、巻体、巻体物、巻装体等とも呼ぶ)の構成について以下に説明する。
【0070】
図6に示すように、ICシートの巻物は、シート材が巻き取られたものであり、具体的には、複数の薄膜集積回路13をそれぞれ表裏から2つのシート材19、23によって挟み込んで封止されたものが、ローラー状に巻き取られたものである。これは、例えば実施の形態1で示したように、複数の薄膜集積回路を第2のシート材19と第3のシート材23により封止したシート状のものを回収する際にローラーで巻き取ることによって得られる。また、複数の薄膜集積回路13は、それぞれ複数の素子とアンテナとして機能する導電層を有している。さらに、複数の薄膜集積回路13の各々は規則的に配列している。
【0071】
上記のように、一対のシート材により封止された複数の薄膜集積回路13が巻き取られたICシートの巻物は出荷が容易であり、特に大量の薄膜集積回路13の出荷に有効である。また、一般に複数の薄膜集積回路13は、個々が分断された状態であれば取り扱いが困難となる。しかし、本実施の形態が提供するICシートの巻物は、シート状のものを巻き取ったものであるために取り扱いが容易であり、例えば図6(B)に示すように利用することができる。さらに、上記のように利用することによって、薄膜集積回路13の破壊や損傷を防止することができる。
【0072】
なお、本実施の形態は、上記の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0073】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明のICチップの作製方法について、図面を用いて以下に説明する。
【0074】
まず、基板100上に、剥離層101を形成する(図7(A))参照)。基板100としては、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板またはシリコン基板等の半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。また、基板100の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。なお、シリコン基板を用いるときは、剥離層101は設けなくてもよい。
【0075】
剥離層101は、珪素を含む層をスパッタリング法やプラズマCVD法等によって形成する。珪素を含む層とは、珪素を含む非晶質半導体膜、非晶質状態と結晶状態とが混在したセミアモルファス半導体膜、結晶性半導体膜等に相当する。また、他にも、剥離層101として金属を含む膜で形成してもよい。この場合、金属膜の表面に金属酸化物を形成すると好ましい。例えば、金属膜と金属酸化物としては、WとWOx、MoとMoOx、NbとNbOx、TiとTiOx(x=2、3)等を形成することができる。また、ここでは剥離層101を全面に形成しているが、選択的に形成してもよい。
【0076】
なお、本実施の形態では基板100上に直に剥離層101を形成しているが、基板100と剥離層101の間に下地膜を形成してもよい。下地膜は、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)(x、y=1、2・・・)等の酸素または窒素を有する絶縁膜の単層構造、またはこれらの積層構造を用いることができる。特に、基板からの汚染等が懸念される場合には、基板100と剥離層101間に下地膜を形成するのが好ましい。
【0077】
次に、剥離層101上に、下地用の絶縁膜102を形成する。絶縁膜102は、単層構造または積層構造で形成することができ、例えば第1の絶縁膜として酸化珪素、第2の絶縁膜として窒化酸化珪素膜、第3の絶縁膜として酸化窒化珪素膜からなる3層の積層構造で絶縁膜を形成することができる。
【0078】
次に、絶縁膜102上に素子群103を形成する。素子群103は、例えば、薄膜トランジスタ、容量素子、抵抗素子、ダイオード等を1つまたは複数形成する。図7では、素子群103として、GOLD構造の薄膜トランジスタを形成した例を示しているが、ゲート電極の側面にサイドウォールを形成してLDD構造とした薄膜トランジスタでもよい。
【0079】
次に、素子群103を覆うように、絶縁膜104を形成し、当該絶縁膜104上に、絶縁膜105を形成する。続いて、絶縁膜105上に、アンテナとして機能する導電層106を形成する。その後、導電層106上に、保護膜として機能する絶縁膜107を形成する。上記の工程を経て、素子群103と、導電層106とを含む薄膜集積回路108が完成する。
【0080】
絶縁膜104、105、107は、無機絶縁膜や有機絶縁膜を用いることができる。無機絶縁膜としては、CVD法により形成された酸化シリコン膜や酸化窒化珪素、またはSOG(Spin On Glass)法により塗布された酸化シリコン膜などを用いることができ、有機絶縁膜としてはポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリルまたはポジ型感光性有機樹脂、ネガ型感光性有機樹脂等の膜を用いることができる。また、アクリル膜と酸化窒化シリコン膜の積層構造を用いても良い。
【0081】
また、絶縁膜104、105、107は、シロキサン樹脂等のシロキサン材料で形成することができる。シロキサン材料は、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
【0082】
シロキサン材料は、その構造により、例えば、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマーなどに分類することができる。また、Si−N結合を有するポリマー(ポリシラザン)を含む材料で層間絶縁膜を形成してもよい。
【0083】
次に、薄膜集積回路108間に、剥離層101が露出するように、開口部111、112を形成する(図7(B))。開口部111、112は、マスクを用いたエッチングやダイシング等によって行う。このときの、上面図を図10(A)に示す。なお、図10(A)のA−Bの断面図が図7に対応している。
【0084】
続いて、剥離層101を除去するエッチング剤を開口部111、112に導入し、剥離層101を徐々に後退させて、剥離層101の一部113〜115を除いて除去する(図8(A)、図10(B))。エッチング剤としては、フッ化ハロゲンを含む気体または液体を使用する。例えばフッ化ハロゲンとして三フッ化塩素(ClF3)を用いることができる。
【0085】
なお、上述したように、本工程では、剥離層101を完全に除去せずに、薄膜集積回路108の下方に位置する剥離層の一部113〜115を残存させる。そのため、薄膜集積回路108が飛散してバラバラになることを防ぐことができ、剥離後も剥離前の配列を保つことができる。ただし、薄膜集積回路108が飛散する恐れがない場合には、剥離層101を完全に除去した後に剥離を行ってもよい。
【0086】
次に、薄膜集積回路108の一方の面を第1のシート材116に接着させる。そうすると、基板100から、薄膜集積回路108が剥離される(図8(A))。なお、上記したように、剥離層101の一部113〜115を残して物理的に基板100から薄膜集積回108を剥離する場合には、剥離層101に金属膜を形成するのが好ましい。例えば、WやMo等を剥離層として用いた場合には、WやMoの上に酸化珪素膜を形成した後に、熱処理等によってWやMoの表面にそれぞれWOxやMoOxが形成される。このように、金属酸化膜が形成されることによって、剥離層と酸化珪素膜の間で剥がれやすくなり、完全に剥離層を除去しなくても容易に基板と薄膜集積回路を剥離することが可能となる。なお、第1のシート材116は、可撓性のフィルムからなっており、少なくとも薄膜集積回路108と接する面に粘着剤が設けてある。例えば、ポリエステル等からなるベースフィルム上にアクリル樹脂等を含んだ粘着力が弱い粘着剤が設けてあるフィルムを用いることができる。
【0087】
次に、薄膜集積回路108の他方の面を第2のシート材117に接着させて、第1のシート材116から薄膜集積回路108を剥離する(図8(B))。
【0088】
次に、薄膜集積回路108の第2のシート材117に接着している面とは反対側の面に第3のシート材118を接着させると共に、薄膜集積回路108を第2のシート材117と第3のシート材118により封止する(図8(C))。そうすると、薄膜集積回路108は第2のシート材117と第3のシート材118により封止された状態となる。また、第2のシート材117と第3のシート材118は、可撓性のフィルムからなっており、例えばラミネートフィルムで形成することができる。具体的に、ここではポリエステル等のベースフィルム上にホットメルトフィルムが形成されたものを利用することができる。第2のシート材117と第3のシート材118を薄膜集積回路108に接着するときに、加圧処理または加熱処理の一方または両方を行うことによって、短時間で接着することができる。
【0089】
また、第2のシート材117、第3のシート材118として、静電気等を防止する帯電防止対策を施したフィルム(以下、帯電防止フィルムと記す)を用いることもできる。帯電防止フィルムとしては、帯電防止可能な材料を樹脂中に分散させたフィルム、及び帯電防止可能な材料が貼り付けられたフィルム等が挙げられる。帯電防止可能な材料が設けられたフィルムは、片面に帯電防止可能な材料を設けたフィルムであってもよいし、両面に帯電防止可能な材料を設けたフィルムであってもよい。さらに、片面に帯電防止可能な材料が設けられたフィルムは、帯電防止可能な材料が設けられた面をフィルムの内側になるように層に貼り付けてもよいし、フィルムの外側になるように貼り付けてもよい。なお、帯電防止可能な材料はフィルムの全面、あるいは一部に設けてあればよい。ここでの帯電防止可能な材料としては、金属、インジウムと錫の酸化物(ITO)、両性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を用いることができる。また、他にも帯電防止材料として、側鎖にカルボキシル基および4級アンモニウム塩基をもつ架橋性共重合体高分子を含む樹脂材料等を用いることができる。これらの材料をフィルムに貼り付けたり、練り込んだり、塗布したりすることによって帯電防止フィルムとすることができる。帯電防止フィルムで薄膜集積回路の封止を行うことによって、商品として取り扱う際に、外部からの静電気等によって薄膜集積回路に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
【0090】
続いて、薄膜集積回路108間の第2のシート材117と第3のシート材118を選択的にダイシング、スクライビングまたはレーザカット法により切断する。そうすると、封止されたICチップが完成する(図9(A)、(B))。
【0091】
上記の工程を経て完成した封止されたICチップは、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)とする。
【0092】
なお、シリコン基板を用いない場合の本発明のチップは絶縁基板上に形成された薄膜集積回路を用いるため、円形のシリコン基板から形成されたチップと比較して、母体基板形状に制約がない。そのため、チップの生産性を高め、大量生産を行うことができる。また、上記プロセスにおいて、剥離された基板は再利用することができる。その結果、ガラス等の基板を用いた薄膜集積回路の作製において、低コスト化を達成することができる。例えば、石英基板は平坦性に優れ、高耐熱性である等の利点を有しているが、原価が高いという問題があった。しかし、基板を再利用することによって、ガラス基板より原価の高い石英基板を用いた場合でも低コスト化を達成することができる。そのため、本実施の形態において、石英基板上に薄膜集積回路を形成して、薄膜集積回路の剥離後に再度石英基板を使用することによって、低コストでより特性の高い薄膜集積回路の形成が可能となる。
【0093】
また、本実施の形態で示したICチップは、シリコン基板からなるICチップと異なり、0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmの膜厚の半導体膜を能動領域として用いるため、非常に薄型となる。その結果、物品へ実装しても、薄膜集積回路の存在が認識しづらく、改ざん防止につながる。また、シリコン基板からなるICチップと比較して、電波吸収の心配がなく、高感度な信号の受信を行うことができる。さらにシリコン基板を有さない薄膜集積回路は、透光性を有する。その結果、様々な物品に応用することができ、例えば、物品の印字面に実装しても、デザイン性を損ねることがない。
【0094】
なお、本実施の形態は、上記の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【実施例1】
【0095】
本実施例では、上記実施の形態で示したIDチップの作製方法において、ゲート電極の作製方法に関して、図15、図16を用いて説明する。なお、特に断らない限り、上記実施の形態で示したものと同じ材料を用いて形成することができる。
【0096】
まず、基板200上に剥離層201を形成し、剥離層201上に絶縁膜202、203を介して半導体膜211、212を設ける。また、半導体膜211、212上には、ゲート絶縁膜213を形成する。その後、ゲート絶縁膜213上に第1の導電層951、第2の導電層952を積層して形成する。本実施例では、第1の導電層として窒化タンタル(TaN)を用い、第2の導電層としてタングステン(W)を用いて形成する。TaN膜、W膜は共にスパッタ法で形成すればよく、TaN膜はTaのターゲットを用いて窒素雰囲気中で、W膜はWのターゲットを用いて成膜すれば良い。
【0097】
なお、本実施例では第1の導電層951をTaN、第2の導電層952をWとしたが、これに限定されず、第1の導電層951と第2の導電層952は共にTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。さらに、その組み合わせも適宜選択すればよい。膜厚は第1の導電層951が20〜100nm、第2の導電層952が100〜400nmの範囲で形成すれば良い。また、本実施例では、2層の積層構造としたが、1層としてもよいし、もしくは3層以上の積層構造としてもよい。
【0098】
次に、フォトリソグラフィや液滴吐出法によって、第2の導電層952上に選択的にレジスト953を形成する(図15(A))。その後、O2(酸素)プラズマ処理等の公知のエッチング処理を行うことによって、レジスト953をエッチングすることによって、レジスト953を縮小させる(図15(B))。このように、縮小されたレジスト954をマスクとして第1の導電層951、第2の導電層952をエッチングすることによって、より小さい幅のゲート電極を形成することができる。つまり、通常のパターニングによって得られるレジスト953を用いてゲート電極を形成するより、幅が小さいゲート電極を形成することができる。このように、ゲート電極の構造を小さくすることにより、チャネル形成領域の幅が小さくなり、高速動作が可能となる。
【0099】
また、図15に示したゲート電極の作製方法とは異なる場合について図16を用いて説明する。
【0100】
まず、図15(A)に示したように、基板200上に剥離層201、絶縁膜202、203、半導体膜211、212、ゲート絶縁膜213、第1の導電層951、第2の導電層952を積層して形成し、選択的にレジスト953を形成する。続いて、レジスト953をマスクとして第1の導電層951、第2の導電層952をエッチングする(図16(A))。この工程により、第1の導電層951、第2の導電層952からなるゲート電極956が形成される。その後、エッチング方法を用いて、ゲート電極956をエッチングする。ゲート電極956上にはレジスト953が設けられているため、ゲート電極956の側面がエッチングされ、図16(B)に示すように、ゲート電極956より幅が小さいゲート電極957を形成することができる。
【0101】
本実施例に示した作製方法を用いることによって、フォトリソグラフィ法等によりパターニングして形成できる限界以上の微細なゲート電極を作製することが可能となる。さらに、ゲート電極を小さくすることによって、より微細な素子構造を設けることができる。そのため、同じ面積により多くの素子を造り込むことができるため、高性能な回路を形成することができる。また、従来の素子数と同様の構造で形成した場合に薄膜集積回路(ICチップ等)の小型化が可能となる。また、図15の方法と図16に示した方法を組み合わせてもよく、より微細なゲート電極を形成することができる。
【0102】
なお、本実施例は、上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例2】
【0103】
本実施例では、上記実施例1とは異なるTFT層102の構成に関して図14を用いて説明する。
【0104】
図14は、図7に示した素子構造103の構造に、下部電極を加えた構造である。つまり、図14に示すように半導体膜311のチャネル領域が絶縁膜を介して下部電極513とゲート電極214の間に挟まれている構造519となっている。
【0105】
下部電極513は、金属または一導電型の不純物を添加した多結晶半導体で形成することができる。金属を用いる場合は、W、Mo、Ti、Ta、Alなどを用いることができる。また、下地絶縁膜として機能する窒化珪素膜514、酸化窒化珪素膜515が設けてあるが、この材料や積層順に限定されるものではない。
【0106】
このように、TFT層102の構造として下部電極を有するTFTを用いても良い。一般に、TFTのサイズが小さくなり、回路を動作させるクロック周波数が向上すると、集積回路の消費電力が増加する。従って、消費電力の増加を抑止するために、下部電極にバイアス電圧を印加する方法が有効である。このバイアス電圧を変化させることで、TFTのしきい値電圧を変化させることができる。
【0107】
nチャネル型TFTの下部電極に対して負のバイアス電圧の印加は、しきい値電圧を高めリークを減少させる。一方、正のバイアス電圧の印加は、しきい値電圧を下げ、チャネルに電流が流れやすくなり、TFTはより高速化、若しくは低電圧で動作する。また、pチャネル型TFTの下部電極に対して正のバイアス電圧の印加は、しきい値電圧を高めリークを減少させる。一方、負のバイアス電圧の印加は、しきい値電圧を下げ、チャネルに電流が流れやすくなり、TFTはより高速化、若しくは低電圧で動作する。このように下部電極に印加するバイアス電圧を制御することで、集積回路の特性を大きく向上させることができる。
【0108】
このバイアス電圧を使って、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのしきい値電圧をバランスさせることで集積回路の特性を改善することができる。このとき、消費電力を低減するために、電源電圧と下部電極に印加するバイアス電圧との両方を制御しても良い。また、回路がスタンバイモードの時は、大きく逆方向のバイアス電圧を与え、動作時についても負荷の小さいときは弱い逆方向バイアス、負荷の大きいときには、弱い順バイアス電圧を印加する。バイアス電圧の印加は制御回路を設けて、回路の動作状態若しくは負荷の状態により切り替え可能とすれば良い。このような手法で、消費電力やTFTの性能をコントローラーすることで、回路の性能を最大に発揮させることができる。
【0109】
なお、本実施例は上記実施の形態および実施例と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例3】
【0110】
本実施例では、本発明の作製方法を用いて作製される、ICチップの構成について説明する。
【0111】
図11(A)に、ICチップの一形態を斜視図で示す。920は集積回路、921はアンテナに相当し、アンテナ921は集積回路920に電気的に接続されている。922は基板、923はカバー材に相当し、集積回路920及びアンテナ921は、基板922とカバー材923の間に挟まれている。
【0112】
次に図11(B)に、図11(A)に示したICチップの、機能的な構成の一形態をブロック図で示す。
【0113】
図11(B)において、900はアンテナ、901は集積回路に相当する。また903は、アンテナ900の両端子間に形成される容量に相当する。集積回路901は、復調回路909、変調回路904、整流回路905、マイクロプロセッサ906、メモリ907、負荷変調をアンテナ900に与えるためのスイッチ908を有している。なおメモリ907は1つに限定されず、複数であっても良く、SRAM、フラッシュメモリ、ROMまたはFeRAMなどを用いることができる。
【0114】
リーダ/ライタから電波として送られてきた信号は、アンテナ900において電磁誘導により交流の電気信号に変換される。復調回路909では該交流の電気信号を復調し、後段のマイクロプロセッサ906に送信する。また整流回路905では、交流の電気信号を用いて電源電圧を生成し、後段のマイクロプロセッサ906に供給する。マイクロプロセッサ906では、入力された信号に従って各種演算処理を行なう。メモリ907にはマイクロプロセッサ906において用いられるプログラム、データなどが記憶されている他、演算処理時の作業エリアとしても用いることができる。
【0115】
そしてマイクロプロセッサ906から変調回路904にデータが送られると、変調回路904はスイッチ908を制御し、該データに従ってアンテナ900に負荷変調を加えることができる。リーダ/ライタは、アンテナ900に加えられた負荷変調を電波で受け取ることで、結果的にマイクロプロセッサ906からのデータを読み取ることができる。
【0116】
なおICチップは、必ずしもマイクロプロセッサ906を有している必要はない。また信号の伝送方式は、図11(B)に示したような電磁結合方式に限定されず、電磁誘導方式、マイクロ波方式やその他の伝送方式を用いても良い。
【0117】
このようにアンテナを有するICチップは、外部情報とのやり取りが可能であるため、無線メモリや無線プロセッサとして利用することができる。
【0118】
なお、本実施例は上記実施の形態および実施例と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例4】
【0119】
本実施の形態では、上記実施の形態または実施例で示した薄膜集積回路の用途に関して説明する。基板から剥離した薄膜集積回路はICチップ210として利用することができ、例えば、紙幣、硬貨、有価証券、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図12(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図12(B)参照)、DVDソフトやCDやビデオテープ等の記録媒体(図12(C)参照)、車やバイクや自転車等の乗り物類(図12(D)参照)、鞄や眼鏡等の身の回り品(図12(E)参照)、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に設けて使用することができる。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(単にテレビまたはテレビ受像器とも呼ぶ)および携帯電話機等を指す。
【0120】
なお、ICチップは、物品の表面に貼り付けたり、物品に埋め込んだりして物品に固定することができる。例えば、本なら紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類等にICチップを設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等にICチップを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類にICチップを設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。
【0121】
また、ICチップを物の管理や流通のシステムに応用することで、システムの高機能化を図ることができる。例えば、表示部294を含む携帯端末の側面にリーダ/ライタ295を設け、品物297の側面にICチップ296を設ける場合を考える(図13(A))。この場合、リーダ/ライタ295にICチップ296をかざすと、表示部294に品物297の原材料や原産地、流通過程の履歴等の情報が表示されるシステムになっている。また、別の例として、ベルトコンベアの脇にリーダ/ライタ295を設ける場合、ICチップ296が設けられた品物297の検品を簡単に行うことができる(図13(B))。
【0122】
なお、本実施例は上記実施の形態および実施例と自由に組み合わせて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の剥離および封止可能な装置を示す図。
【図2】本発明の剥離および封止可能な装置を示す図。
【図3】本発明の剥離および封止可能な装置を示す図。
【図4】本発明の剥離および封止可能な装置を示す図。
【図5】本発明のICシートを示す図。
【図6】本発明のICシートの巻物を示す図。
【図7】本発明のICチップの作製方法を示す図。
【図8】本発明のICチップの作製方法を示す図。
【図9】本発明のICチップの作製方法を示す図。
【図10】本発明の剥離方法を示す図。
【図11】本発明のICチップの上面を示す図。
【図12】本発明の薄膜集積回路を実装した物品を示す図。
【図13】本発明の薄膜集積回路を実装した物品を示す図。
【図14】本発明のICチップの断面を示す図。
【図15】本発明のICチップの断面を示す図。
【図16】本発明のICチップの断面を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、
前記薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、前記基板から前記薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、
前記薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、前記第1のシート材から前記薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、
前記薄膜集積回路を前記第2のシート材と第3のシート材で挟み込み、前記薄膜集積回路を封止する封止手段とを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項2】
薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、
第1のシート材が巻きつけられた第1の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、前記基板から前記薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、
第2のシート材が巻きつけられた第2の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、前記第1のシート材から前記薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、
第3のシート材が巻きつけられた第3の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路を前記第2のシート材と前記第3のシート材で挟み込み、前記薄膜集積回路を封止する封止手段と、
封止された前記薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項3】
薄膜集積回路が複数設けられた基板と、
第1のシート材が巻き付けられた第1の供給用ローラーと、
前記基板の一方の面と前記第1のシート材とが対向するように前記基板を固定し、且つ前記薄膜集積回路と前記第1のシート材とが接着するように前記基板を移動させる固定移動手段と、
前記薄膜集積回路の一方の面を前記第1のシート材に接着させて、前記基板から前記薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、
第2のシート材が巻き付けられた第2の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、前記第1のシート材から前記薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、
前記薄膜集積回路の一方の面に接着する第3のシート材が巻き付けられた第3の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路を前記第2のシート材と前記第3のシート材により封止する封止手段と、
封止された前記薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項4】
薄膜集積回路が複数設けられた基板を搬送する搬送手段と、
第1のシート材が巻きつけられた第1の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させて、前記基板から前記薄膜集積回路を剥離する第1の剥離手段と、
第2のシート材が巻きつけられた第2の供給用ローラーと、
前記薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させて、前記第1のシート材から前記薄膜集積回路を剥離する第2の剥離手段と、
前記薄膜集積回路の一方の面に、樹脂を加熱溶融状態で押し出しながら供給する手段と、
前記薄膜集積回路を前記第2のシート材と前記樹脂により封止する封止手段と、
封止された前記薄膜集積回路を巻き取る回収用ローラーとを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記封止手段は、対向して設けられた2つのローラーを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記封止手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの一方または両方は加熱手段を有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記封止手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの間に前記薄膜集積回路を通過させると共に、加圧手段と加熱手段の一方または両方を行うことにより、前記薄膜集積回路の封止を行うことを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記封止手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの一方または両方は冷却手段を有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項9】
請求項4において、
前記封止手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの間に前記薄膜集積回路を通過させると共に、加圧手段と冷却手段の一方または両方を行うことにより、前記薄膜集積回路の封止を行うことを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記第1および第2の剥離手段は、ローラーを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記第2の剥離手段は、対向して設けられた2つのローラーを有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記第2の剥離手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの一方または両方は加熱手段を有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記第2の剥離手段は、対向して設けられた2つのローラーを有し、前記2つのローラーの間に前記薄膜集積回路を通過させると共に、加圧手段と加熱手段の一方または両方を行うことにより、前記第1のシート材に接着した前記薄膜集積回路を前記第2のシート材に接着することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項において、
前記第1のシート材は、少なくとも一方の面に接着面を有することを特徴とする剥離および封止可能な装置。
【請求項15】
複数の薄膜集積回路と、
前記複数の薄膜集積回路の各々を表裏から封止する2つのシート材を有し、
前記複数の薄膜集積回路の各々は、複数の薄膜トランジスタと、アンテナとして機能する導電層とを有することを特徴とするICシート。
【請求項16】
請求項15において、
前記複数の薄膜集積回路は、それぞれ規則的に配列することを特徴とするICシート。
【請求項17】
複数の薄膜集積回路の各々を表裏からそれぞれ封止した2つのシート材とが巻き取られており、
前記複数の薄膜集積回路の各々は、複数の薄膜トランジスタと、アンテナとして機能する導電層とを有することを特徴とするICシートの巻物。
【請求項18】
請求項17において、
前記複数の薄膜集積回路は、それぞれ規則的に配列することを特徴とするICシートの巻物。
【請求項19】
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、
前記基板上に薄膜集積回路を複数形成し、
前記薄膜集積回路の境界に開口部を形成して、前記剥離層を露出させ、
前記開口部にフッ化ハロゲンを含む気体または液体を導入して、前記剥離層を除去し、
前記薄膜集積回路の一方の面を第1のシート材に接着させることにより、前記基板から前記薄膜集積回路を剥離し、
前記薄膜集積回路の他方の面を第2のシート材に接着させることにより、前記第1のシート材から前記薄膜集積回路を剥離し、
前記薄膜集積回路の一方の面を第3のシート材に接着させ、
前記薄膜集積回路を前記第2のシート材と前記第3のシート材により封止することを特徴とするICチップの作製方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記基板上に、前記薄膜集積回路として、複数の薄膜トランジスタと、アンテナとして機能する導電層を形成することを特徴とするICチップの作製方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−66899(P2006−66899A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216756(P2005−216756)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】