説明

剥離処理剤

【課題】環境問題がなく、常温またはそれ以下の温度でゲル化や増粘がなく、溶液安定性、塗工性、ハンドリング性に優れた工業的に有用なアルキル尿素系またはアルキルカーバメート系すなわち非シリコーン系の剥離処理剤を提供する。
【解決手段】ポリエチレンイミンまたはビニルアルコール系重合体とモノイソシアネートとをイソシアネート基/活性水素の当量比0.6〜0.95/1.0で反応させ、さらにこれにジイソシアネートをイソシアネート基/残存活性水素の当量比2.0/1.0で反応させ、またさらにこれにジアルキルアミンを残存イソシアネート基/活性水素の当量比1.0/1.0で反応させて得られる化合物からなる、剥離処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境問題がなく、溶液安定性、塗工性などに特に優れたアルキル尿素系またはアルキルカーバメート系すなわち非シリコーン系の剥離処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンイミンまたはポリビニルアルコールと、炭素数が8〜28の脂肪族基を有するアルキルイソシアネートとを付加反応させたアルキル尿素系またはアルキルカーバメイト系の剥離処理剤は、非シリコーン系剥離処理剤として知られている。例えば、特許文献1には、アルキル尿素系剥離処理剤が開示されている。特許文献2には、アルキルカーバメイト系剥離処理剤などが開示されている。これらの非シリコーン系剥離処理剤は、シリコーン系剥離処理剤に比べて、剥離抵抗は大きいが、加熱によるシリコーン成分の飛散や粘着層への移行がなく、また塗工性に優れるなどの利点があるため、各種粘着シート、たとえば包装用テープ、結束用テープ、マスキングテープ、シリコーン成分を嫌う電子部品用テープなどに幅広く使用されている。
これらの剥離処理剤は、一般にプラスチック粘着テープ・フィルムに、また粘着和紙などの背面処理剤として使用されている。剥離処理剤は通常、基材に塗布(1g以下/m)して使用されるが、その場合は、予めベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶剤に1〜5%濃度で加温溶解して塗布し、さらに塗布後に溶剤を加熱蒸発させている。ベンゼン、トルエンなど芳香族系有機溶剤はVOC規制対象溶剤でもあり、環境上問題となっている。さらに、これらの溶剤に溶解した剥離処理剤溶液は常温以下ではゲル化や粘度上昇が起こり、使用前に加温溶解する必要があり、作業時間の延長、煩雑さを強いられ、ハンドリング性にも問題を抱えている。この問題を解決する試みとして、特許文献3には、アルキルカーバメート系剥離処理剤をトルエン等の芳香族系有機溶剤とエタノールまたは/およびn−プロパノールとの混合溶剤を用いる方法が提案されている。しかし、この方法でも、常温以下でゲル化および増粘は避けられるものの、環境に好ましくない芳香族系有機溶剤を主成分とする混合溶剤であり、また10℃以下の温度では充分な流動性が保持できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−295332号公報
【特許文献2】特公平2−7988号公報
【特許文献3】特開2000−119608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のアルキル尿素系またはアルキルカーバメート系剥離処理剤では、使用する際に有害な芳香族系有機溶剤に溶解して使用されるため、また、その溶液が常温またはそれ以下の温度でゲル化や増粘を生じるため、環境問題および塗工性やハンドリング性の改善が切望されている。
このような事情に鑑み、本発明は、環境問題がなく、常温またはそれ以下の温度でゲル化や増粘がなく、溶液安定性、塗工性、ハンドリング性に優れた工業的に有用なアルキル尿素系またはアルキルカーバメート系すなわち非シリコーン系の剥離処理剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来公知技術の上記問題を解決して、前記目的を達成するため、本発明は次の(1)〜(5)に示すものである。
【0006】
(1)ポリエチレンイミンまたはビニルアルコール系重合体とモノイソシアネートとをイソシアネート基/活性水素の当量比0.6〜0.95/1.0で反応させ、さらにこれにジイソシアネートをイソシアネート基/残存活性水素の当量比2.0/1.0で反応させ、またさらにこれにジアルキルアミンを残存イソシアネート基/活性水素の当量比1.0/1.0で反応させて得られる化合物からなること、を特徴とする剥離処理剤。
(2)前記ビニルアルコール系重合体が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである、前記(1)の剥離処理剤。
(3)前記モノイソシアネートが、炭素数8〜28のアルキルモノイソシアネートである、前記(1)または(2)の剥離処理剤。
(4)前記ジイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートである、前記(1)〜(3)のいずれかの剥離処理剤。
(5)前記ジアルキルアミンが、アルキル基1つにつき炭素数2〜28のジアルキルアミンである、前記(1)〜(4)のいずれかの剥離処理剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の剥離処理剤は、従来の芳香族系有機溶剤は勿論、環境問題がない脂肪族炭化水素系有機溶剤にも容易に溶解し、かつ常温以下の温度でもゲル化、増粘が起こらず、従って溶解が容易で、溶液安定性がよく、塗膜厚みの調整など塗工性やハンドリング性に優れたアルキル尿素系またはアルキルカーバメート系すなわち非シリコーン系の剥離処理剤で、また剥離性能もよいため、各種粘着シート、たとえば包装用テープ、結束用テープ、マスキングテープ、シリコーン成分を嫌う電子部品用テープなど、幅広く利用できる工業的に有用な剥離処理剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の剥離処理剤は、ポリエチレンイミンまたはビニルアルコール系重合体とモノイソシアネートとをイソシアネート基/活性水素の当量比0.6〜0.95/1.0で反応させ、さらにこれにジイソシアネートをイソシアネート基/残存活性水素の当量比2.0/1.0で反応させ、またさらにこれにジアルキルアミンを残存イソシアネート基/活性水素の当量比1.0/1.0で反応させて得られる化合物からなる。
【0009】
ポリエチレンイミンは、一般式;−(NH−CHCH)n−で示される重合体であり、数平均分子量800〜25000のものが好ましい。
【0010】
ビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを好適に例示することができる。
ポリビニルアルコールはポリビニルアセテートをけん化することにより得られるが、そのけん化度は70〜100モル%であることが好ましく、さらに数平均分子量は100〜5000であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールとは、エチレン、プロピレン、不飽和カルボン酸またはそのエステル等のコモノマーで共重合変性されたビニルアルコール系重合体や、これをさらにウレタン化、アセタール化の後変性を行ったものなどであり、数平均分子量800〜2500のものが好ましい。
【0011】
モノイソシアネートとしては、それぞれ直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルカジニエル基、ハロゲン置換アルキル基などを有するモノイソシアネートであり、炭素数8〜28のアルキル基を有するアルキルモノイソシアネートが好ましい。
具体的には、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、これらの任意の混合物などである。これらのうち、剥離性能などを考慮すると、オクタデシルイソシアネートが好適である。
【0012】
ジイソシアネートとしては、ヘキサンメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、これらの任意の混合物などである。これらのうち、工業的観点から、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネート、更にヘキサンメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0013】
ジアルキルアミンとしては、アルキル基1つにつき炭素数2〜28(すなわち全炭素数4〜56)のジアルキルアミンが好ましく、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘプチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジセチルアミン、ジオクタデシルアミン、これらの任意の混合物などである。これらのうち、剥離処理剤の所要の融点や脂肪族炭化水素溶剤への溶解性、溶液安定性を考慮すれば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘプチルアミン、ジヘキシルアミンまたはジオクチルアミンが好ましい。
【0014】
ポリエチレンイミンまたはポリビニルアルコール系重合体とモノイソシアネートとの反応は、トルエン、キシレンなどの有機溶剤中で反応させるが、モノイソシアネートは水と反応して有機溶媒に難溶性のウレア体を副生するので、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール系重合体、また使用する有機溶剤の水分は除かなければならない。トルエン、キシレンは水と共沸するのでポリエチレンイミン、ビニルアルコール系重合体とも有機溶剤中で蒸留脱水した後に反応を行うのが好ましい。ポリエチレンイミンの−NH基とモノイソシアネートのイソシアネート基との反応速度は速く、反応は容易であるが、ポリビニルアルコール系重合体のなかにはトルエン、キシレンに溶解しないものがあるので、その場合はジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドのような極性溶剤を併用する。また、この際に、ウレタン化反応用触媒、たとえば有機錫化合物やアミン化合物などを使用してもよい。
使用する反応溶剤の量は特に限定しないが、反応物の粘度を考慮すれば、固形分15〜50質量%、更に20〜35質量%であることが好ましい。
また、ポリエチレンイミンまたはビニルアルコール系重合体の活性水素(−NH基または−OH基)に対するモノイソシアネートのイソシアネート基の比は、イソシアネート基/活性水素の当量比0.6〜0.95/1.0、好ましくは0.70〜0.80/1.0である。この当量比が0.6未満/1.0では有機溶剤への溶解性は向上するが、剥離性能が低下し、また0.95超/1.0では有機溶剤への溶解性向上は改善されず、本発明の目的を達成することができない。
反応温度は、ポリエチレンイミンとの反応の場合は50℃〜100℃、更に70℃〜90℃であることが好ましい。温度が低いと反応時間が長くなるし、また温度が高いと反応物が著しく着色する。反応時間は上記の温度で1〜5時間、更に2〜4時間であることが好ましい。
一方、ポリビニルアルコール系重合体の活性基は−OHであり、脂肪族系のモノイソシアネートに結合したイソシアネート基との反応はかなり遅いため、反応温度は100〜130℃、更に溶剤の沸点付近とするのが好ましい。反応時間は3〜7時間、通常は5〜6時間であることが好ましい。ウレタン化反応用触媒を併用する場合は数十ppm添加するのが良い。
なお反応物の酸化・着色を防止するため、反応は窒素などの不活性ガス中で行うのが好ましい。
【0015】
上記反応の生成物に対し、ジイソシアネートはイソシアネート基/残存活性水素(−NH基またはOH基)の当量比2.0/1.0で反応させる。反応温度は、ウレタン化反応における副反応(アロハネート化反応など)を抑えるため、温度30〜100℃、更に60〜80℃であるのが好ましい。反応時間は用いるジイソシアネートの反応速度によって変わるが、通常は2〜10時間である。たとえば、通常、反応性が高い芳香族ジイソシアネートの場合は2〜5時間、反応の遅い脂肪族ジイソシアネートの場合は6〜10時間とするが、ウレタン化反応用触媒を併用する場合は反応時間を短縮できる。
【0016】
上記反応の生成物に対し更に、ジアルキルアミンを残存イソシアネート基/活性水素の当量比1.0/1.0でキャップ反応させて目的の化合物を得るが、ジアルキルアミンの−NH基はイソシアネート基と容易に反応するので、反応温度、時間はジイソシアネートとの反応の場合とほぼ同条件で行うことができる。
【0017】
前記化合物(反応生成物)は反応溶剤に溶解した溶液状態にある。反応に使用したトルエンなどの溶剤の混入が問題ない用途では、そのまま所定濃度に希釈して使用できる。一方、溶剤のない剥離処理剤が必要となる場合は、反応生成物から前記化合物(反応生成物)を単離する必要がある。単離する方法は一般的な方法による。たとえば、アセトン、メタノール、水、或いはこれらの混合物中で前記化合物(反応生成物)を析出させ、ろ過、溶剤洗浄を行ったのち、常温ないし真空下に加温して残留溶剤を除き、粉末状態で取り出すことができる。粉末状態の前記化合物(反応生成物)は、用途などにより適切に溶剤を選定して使用される。
【0018】
本発明の剥離処理剤は、剥離面を有する基材、たとえば剥離シートでは基材の片面または両面に好適には有機溶剤の1〜5%溶液にして塗布される。有機溶剤としては、従来のトルエンやキシレンは勿論、VOC規制のない脂肪族系溶剤、たとえばヘキサンやオクタン、シクロヘキサンなど、或いはこれらの混合物があげられる。剥離シート基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロファン等のプラスチックフィルム、上質紙、クラフト紙、クレープ紙などがあげられる。またシート状以外の形状としては、直方体、四角柱、円柱、四角錐、球などがあげられ、またはその基材としては各種プラスチック、紙、無機物などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。剥離処理剤の塗布方法は特に限定されるものではないが、たとえば剥離処理剤の溶液をバーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布することができる。その後、基材の塗布面を乾燥させることにより、基材表面に剥離剤層が形成される。基材への塗布量は、たとえばバーコーターの種類、或いは剥離処理剤の溶液濃度を変えることによって調整できる。乾燥温度は基材の種類、剥離処理剤の種類によって選択されるが、通常は80〜150℃が好ましい。しかし特に限定されるものではない。
【0019】
シート状基材に剥離処理剤を塗布した剥離シートは、感圧粘着シートや感圧粘着テープなどの塗布面粘着体の保護、保存のために好適に用いられる。すなわち、剥離面が該粘着剤の塗布面を保護するため粘着面に粘着され、使用時に剥離シートが感圧粘着体から引き剥がされ後、感圧粘着体が被着体に圧着される。
【実施例】
【0020】
以下、本発明について実施例などにより更に詳細に説明する。
実施例1
【0021】
還流冷却器、水分定量受器、温度計、滴下ロート、および撹拌・加温装置付の1L四つ口フラスコに、トルエン300ml、ポリエチレンイミン(商品名:「Lupasol 」WF−数平均分子量25000、BASF社製)12.0gを仕込み、窒素パージして撹拌しながら昇温、トルエン−水の共沸脱水により水分を除去した。脱水終了後、80℃においてオクタデシルイソシアネート(保土谷化学社製)59.0g(−NCO/−NH当量比=0.7/1.0)を20分間かけて滴下した。滴下終了後、80℃に保ち、さらに2時間反応させた。反応の終点はIR(赤外分光光度計)でイソシアネート基が消失してことで確認した。次に、温度80℃に維持し、トルエンジイソシアネート(ミリオネートTDI/T−100、日本ポリウレタン社製)14.9g(−NCO/残存−NH当量比=0.6/0.3)を加え、引続き80℃で2時間反応させた。これにジブチルアミン(試薬特級品)11.0g(残存−NCO/−NH当量比=0.3/0.3)を加え、80℃で2時間撹拌した。反応終了は上記同様にIRで確認した。反応終了液は、固形分約27質量%、淡黄色透明の粘性液体であった。これを40℃まで冷却し、予め用意した20℃のメタノール500ml中に撹拌下に注下して、結晶を析出させた。これをブッフナーろ過器にて、No.2−ろ紙にて吸引ろ過し、さらに300mlのメタノールで2回、結晶を洗浄した。この結晶を60℃の熱風乾燥機で3時間乾燥し、淡黄色粉末を得た。
乾燥結晶は、溶解性試験、溶液安定性試験、融点測定、剥離性能試験に供した。
実施例2
【0022】
実施例1におけるのと同様のフラスコを用い、同様の方法で、ポリエチレンイミン12.0gとオクタデシルイソシアネート59.0g(−NCO/−NH当量比=0.7/1.0)との反応液に、温度80℃でジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMDI/MT、日本ポリウレタン社製)21.4g(−NCO/残存−NH当量比=0.6/0.3)を加え、80℃で2時間反応させた。これにジステアリルアミン(商品名:「ファーミンD86」、花王社製)21.4g(残存−NCO/−NH当量比=0.3/0.3)を50%熱トルエン溶液で加え、80℃で2時間反応させた。反応終了液は、固形分約31質量%、淡黄色透明の粘性液体であった。これを40℃まで冷却し、用意した20℃のメタノール500ml中に撹拌下に注下して、結晶を析出させた。ろ過、洗浄、乾燥後、淡黄色粉末の結晶を得た。
乾燥結晶は、溶解性試験、溶液安定性試験、融点測定、剥離性能試験に供した。
実施例3
【0023】
実施例1におけるのと同様のフラスコを用い、トルエン300mlとポリビニルアルコール(商品名:「ゴーセノール」GL−05S、数平均分子量500、けん化度88モル%、日本合成化学社製)12.0gを仕込み、窒素パージ後に撹拌しながら昇温、トルエン−水の共沸脱水により水分を除去した。脱水終了後、ジメチルスルフォキシド;DMSO(試薬特級)を70g添加し、再度、共沸脱水で水分を除去した。次に、温度110〜115℃においてオクタデシルイソシアネート56.3g(−NCO/−OH当量比=0.7/1.0)を20分かけて滴下した。滴下終了後、115℃に保ち、さらに3時間反応させた。反応の終点はIR(赤外分光光度計)でイソシアネート基が消失したことで確認した。次に、温度80℃に維持し、トルエンジイソシアネート8.55g(−NCO/残存−OH当量比=0.36/0.18)を加え、引続き80℃で3時間反応させた。これにジブチルアミン6.3g(残存−NCO/−NH当量比0.18/0.18)を加え、80℃で3時間反応させた。反応終了は上記同様にIRで確認した。反応終了液は、固形分約24質量%、淡黄色透明の粘性液体であった。これを40℃まで冷却後、用意した20℃のアセトン500ml中に撹拌下に注下して、結晶を析出させた。これをブッフナーろ過器にて、No.2−ろ紙にて吸引ろ過、さらに300mlのアセトンで2回、結晶を洗浄した。この結晶を60℃の熱風乾燥機で3時間乾燥し、ほぼ白色の粉末を得た。
乾燥結晶は、溶解性試験、溶液安定性試験、融点測定、剥離性能試験に供した。
比較例1
【0024】
実施例1におけるのと同様のフラスコを用い、トルエン300mlとポリエチレンイミン12gを仕込み、窒素パージ後に撹拌しながら昇温、トルエン−水の共沸脱水により水分を除去した。脱水終了後、80℃においてオクタデシルイソシアネート59.0g(−NCO/−NH当量比=0.7/1.0)を20分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に保ち、さらに2時間反応させた。反応終了液を実施例1におけるのと同様に、メタノールで析出、結晶ろ過、洗浄、乾燥して淡黄色粉末を得た。
乾燥結晶は、溶解性試験、溶液安定性試験、融点測定、剥離性能試験に供した。
(試験方法)
【0025】
溶解性および溶液安定性は、n−ヘキサンとn−ヘプタンとトルエンを用いて実施した。溶解性は、剥離処理剤濃度5%で溶解温度、曇点を測定し、溶液安定性は、濃度10%にて常温および10℃の低温保冷庫に24時間保存して目視により状態観察を行った。
融点は、JISの融点測定方法(JIS K 0064キャピラリー法)によった。
剥離性能試験は、基材フィルムとして市販のコロナ処理ポリエステルフィルムを用い、粘着剤としては広範に使用されているゴム系、およびアクリル系粘着剤を用いて実施した。剥離処理剤の濃度を1%トルエン溶液とし、剥離処理剤0.1g/m付着するように基材フィルムに塗布し、乾燥後、この基材上に25mm幅の粘着テープを自重2kgのゴムローラーを2往復させて圧着して試験テープとし、常態(23℃、相対湿度65%)、および加熱60℃のそれぞれの恒温室にて、20g/cmの荷重を加えて24時間保ち、さらにそれを常態で2時間放置後に測定に供した。
剥離力および残存接着力の測定は、試験機:オートグラフ:AG−10kNX(島津製作所製)、180℃剥離−速度300mm/minの条件で、残存接着力は剥離力試験後のテープをSUS板に張り付け、2kgのゴムローラーを2往復してさせて圧着後、常態で2時間放置後に測定した。
【0026】
実施例1〜3および比較例1の剥離処理剤の試験結果をまとめて表1に示す。
表1から明らかなように、溶解性に差はないが、溶液安定性は比較例1(実用的に使用される例)が常温でもゲル化する。一方、本発明の実施例1〜3では常温、10℃でも溶液はゲル化することなく、安定性に優れていることが明らかである。また、本発明の実施例1〜3の剥離処理剤は、VOC規制がなく、環境問題のないヘキサンやヘプタンにも容易に溶解し、常温以下での安定性にも優れることは特筆できる。すなわち本発明の実施例1〜3の剥離処理剤溶液は、実際、加温せずに常温以下でも使用でき、特に冬季や寒冷地においての使用に好都合である。剥離性能も比較例1と遜色なく、幅広く利用できる有用な剥離処理剤であることが分かる。
【0027】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンイミンまたはビニルアルコール系重合体とモノイソシアネートとをイソシアネート基/活性水素の当量比0.6〜0.95/1.0で反応させ、さらにこれにジイソシアネートをイソシアネート基/残存活性水素の当量比2.0/1.0で反応させ、またさらにこれにジアルキルアミンを残存イソシアネート基/活性水素の当量比1.0/1.0で反応させて得られる化合物からなること、を特徴とする剥離処理剤。
【請求項2】
前記ビニルアルコール系重合体が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである、請求項1に記載の剥離処理剤。
【請求項3】
前記モノイソシアネートが、炭素数8〜28のアルキルモノイソシアネートである、請求項1または2に記載の剥離処理剤。
【請求項4】
前記ジイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離処理剤。
【請求項5】
前記ジアルキルアミンが、アルキル基1つにつき炭素数2〜28のジアルキルアミンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離処理剤。

【公開番号】特開2013−87239(P2013−87239A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230573(P2011−230573)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(598034247)アシオ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】