説明

剥離剤及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法

【課題】プレスロールに付与することにより、安定した製造が可能な機能性組成物、及びそれを用いた剥離性向上方法を提供する。
【解決手段】湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与して用いられ、下記一般式(1)で表される化合物を2質量%以上含有することを特徴とする機能性組成物である。


[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜30の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。但し、pとrとの和が6〜30の整数であり、前記p,q,rは同時に0とはならない。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を製造するための抄紙工程は、一般に水中にパルプが分散された液を抄紙用の網(ワイヤー)に載せ、余分な水を自然落下させることにより湿紙とするワイヤーパートと、湿紙を一対のプレスロール間に通し、フェルトを介してプレスロールで押圧することにより、湿紙中の水分をフェルトに移行させ、これにより湿紙を脱水するプレスパートと、プレスパートを通過した湿紙を、加熱されたドラムに接触させることで乾燥させ、紙とするドライヤーパートと、紙をスプールと呼ばれる棒に巻き取るリールパートと、を有する。
【0003】
ところが、従来のプレスパートにおいては、プレスロールを高速で回転させるために、湿紙がプレスロールにより押圧される点(以下「押圧点」という。)を通過した後、プレスロールから剥離されずに付着したままプレスロールが回転してしまう場合がある。
【0004】
具体的には、図5に示すように、湿紙は押圧点Pにて押圧され、プレスロール表面から剥離して搬送される。
湿紙がプレスロール表面から剥離されないでいると、湿紙に過大な張力がかかり、紙クセが悪くなったり、断紙するという事態が生じる。
【0005】
一方、上記プレスパートにおいては、一般に湿紙に接触する側のプレスロールに、該プレスロールの表面に付着した異物を除去するためのドクターブレードが接触するように配置される。
【0006】
ところが、プレスロールが高速で回転するために、ドクターブレードとプレスロールとの摩擦により、ドクターブレードのプレスロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレードとプレスロールとの間に空隙が生じる場合がある。このことは、ドクターブレードがカーボン製である場合、特に顕著に認められる。
【0007】
この場合、プレスロール表面上の異物が十分に除去されなくなるため、湿紙が異物と一緒にプレスロールにより押圧され、湿紙に穴があく等の不具合が生じる。
これらのことから、従来の抄紙工程においては安定した製造ができないという問題がある。
【0008】
これらの問題に対し、プレスロールに薬剤を付与する方法が提案されている。
例えば、製紙工程中、湿紙の脱水部のプレスパートにおいて、所定の成分を有効成分とするストーンロール汚れ防止剤をストーンロール又はフェルトの表面に注ぐことによって、湿紙のストーンロールからの剥離が顕著に改善され、しいては、生産性が向上するストーンロールからの湿紙の剥離性の改善方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0009】
また、多量の水分を含んだ湿紙を一対のプレスロール間に挟んで該湿紙を脱水するとともに、該プレスロールにドクターブレードを圧接させて該プレスロールの付着物の除去を行う抄紙プレス工程において、所定の構造を有するフッ素有機化合物を該プレスロールに付着させるドクターブレードの摩耗防止方法が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−217787号公報
【特許文献2】特開2005−273026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の方法によれば、湿紙のプレスロールに対する剥離性は改善されるものの十分とはいえない。
また、ドクターブレードの磨耗抑制についても不十分である。
【0011】
一方、特許文献2記載の方法によれば、ドクターブレードの摩耗は比較的抑制できるものの、湿紙のプレスロールに対する剥離性が不十分である。
【0012】
したがって、上記特許文献1又は2記載の方法は、湿紙のプレスロールに対する剥離性、及びドクターブレードの潤滑性、の両方を満足できるものではない。
すなわち、上記特許文献1又は2記載の方法では、上記剥離性を維持できないため、断紙したり、上記潤滑性が不十分であるためドクターブレードが磨耗し、異物を十分に除去できない傾向にある。
このため、上記特許文献1又は2記載の方法では、安定した製造は困難である。
【0013】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プレスロールに付与することにより、安定した製造が可能な機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の機能性組成物は、湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与して用いられ、下記一般式(1)で表される化合物を2質量%以上含有することを特徴とする。
【化1】

[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜30の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。但し、pとrとの和が6〜30の整数であり、前記p,q,rは同時に0とはならない。]
【0015】
この機能性組成物を湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与すると、湿紙のプレスロールへの剥離性が向上する。
これにより、たとえプレスロールが高速で回転した場合であっても、湿紙がスムーズに剥がれ、紙に過大な張力がかからないので断紙が抑制される。
【0016】
このことに加え、プレスロールの表面の潤滑性が向上することから、ドクターブレードのプレスロールとの摩擦による磨耗が抑制される。
したがって、ドクターブレードとプレスロールとの摩擦により、ドクターブレードのプレスロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレードとプレスロールとの間に空隙が生じることが抑制される。
【0017】
また、ドクターブレードの磨耗が抑制されるため、プレスロール表面上の異物が十分に除去され、湿紙に穴が空く等の不具合の発生を抑制できる。
さらに、ドクターブレードの磨耗が抑制されるため、ドクターブレードの交換の頻度を少なくすることができる。
【0018】
よって、本発明の機能性組成物によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できる。このため、安定した製造が可能となる。
【0019】
このように、この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、上述したような効果が得られる理由については、定かではないが、水の表面張力が低下するため、プレスロール表面に湿紙の接着力を低下させた皮膜が形成されるためではないかと推測される。
なお、要因はこれに限定されない。
【0020】
上記機能性組成物において、pとrとの和が6〜20の整数であることが好ましく、Rが炭素数12〜15の炭化水素基であり、pとrとの和が8〜20の整数であることがより好ましい。
【0021】
上記機能性組成物において、水溶性ポリマーを更に含有することが好ましい。
この場合、上記機能性組成物をプレスロールに付与すると、水溶性ポリマーが一般式(1)で表される化合物と共に、プレスロール表面に皮膜化されるため、プレスロールを長期間用いた場合であっても、湿紙のプレスロールへの高い剥離性が維持できる。
【0022】
上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記一般式(2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が30質量%以上であることが好ましい。
【化2】

この場合、ドクターブレードとプレスロールとの間の摩擦がより低減されるため、ドクターブレードの摩耗がより抑制される。
【0023】
上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの混合比が質量比で1:0.1〜1:10であることが好ましい。
この場合、上記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの混合比が質量比で上記範囲であると、より均一な皮膜が形成される。
【0024】
上記機能性組成物において、プレスロールが、表面に付着した異物を除去するためのドクターブレードを備えていることが好ましい。
【0025】
上記機能性組成物が、湿紙のプレスロールからの剥離性を向上させる剥離剤であることが好ましい。
また、上記機能性組成物が、ドクターブレードとプレスロールとの潤滑性を向上させる磨耗抑制剤であることが好ましい。
【0026】
これらの場合、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を確実に向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を確実に抑制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
【0027】
本発明の湿紙の剥離性向上方法は、上述した機能性組成物を用いることを特徴とする。
本発明によれば、上述した機能性組成物を用いるため、機能性組成物を湿紙に接触するプレスロールに付与することにより、湿紙の剥離性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できるため、安定した製造が可能となる機能性組成物、及びそれを用いた剥離性向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
本発明の機能性組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【化3】

【0031】
ここで、式(1)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜30の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。
但し、pとrとの和が6〜30の整数であり、前記p,q,rは同時に0とはならない。
【0032】
上記炭素数10〜16の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基、フェニル基又はナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
炭素数が10未満であると、表面張力が高くなり、皮膜が十分に形成されない傾向にあり、炭素数が16を超えると、水中に均一に分散されにくくなるため、プレスロール表面に均一に付着されない傾向にある。
【0033】
また、本発明の機能性組成物は、一般式(1)で表される化合物において、炭素数が異なる化合物を2種類以上含んでいてもよい。
なお、上記炭素数は12〜15の炭化水素基であることがより好ましい。
【0034】
上記置換基としては、フェニル基又はナフチル基等のアリール基、ハロゲン基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、エステル基、スルホニル基、ニトロ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
なお、上記炭化水素基は置換基を有していないものであることが好ましい。
【0035】
上記pとrとの和は水への相溶性の観点から6〜30の整数であることが好ましく、6〜20の整数であることがより好ましく、8〜20の整数であることが更に好ましく、9〜16の整数であることが一層好ましい。
【0036】
また、qは0〜2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
すなわち、qが0であるときは、下記一般式(3)で表される化合物となる。
【化4】

【0037】
これらの中でも、上記一般式(1)で表される化合物が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテルであることが更に好ましい。
【0038】
上記機能性組成物を湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与すると、湿紙のプレスロールへの剥離性が向上する。
これにより、たとえプレスロールが高速で回転した場合であっても、湿紙がスムーズに剥がれ、紙に過大な張力がかからないので断紙が抑制される。
【0039】
このことに加え、プレスロールの表面の潤滑性が向上することから、ドクターブレードのプレスロールとの摩擦による磨耗が抑制される。
したがって、ドクターブレードとプレスロールとの摩擦により、ドクターブレードのプレスロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレードとプレスロールとの間に空隙が生じることが抑制される。
【0040】
よって、この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できる。
このため、安定した製造が可能となる。
【0041】
上記一般式(1)で表される化合物において、本発明の機能性組成物は水溶性ポリマーを更に含有することが好ましい。
この場合、上記機能性組成物をプレスロールに付与すると、水溶性ポリマーが一般式(1)で表される化合物と共に、プレスロール表面に皮膜化されるため、プレスロールを長期間用いた場合であっても、湿紙のプレスロールへの高い剥離性が維持できる。
また、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性をより向上できると共に、ドクターブレードの磨耗をより抑制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
【0042】
上記水溶性ポリマーは、カチオン性、両性、又はノニオン性であることが好ましく、カチオン性又は両性であることがより好ましい。
これらの水溶性ポリマーは単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
なお、両性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体とアニオン性単量体とを重合させることにより得られる。
この場合、湿紙の剥離性がより向上するという利点がある。
【0043】
上記カチオン性水溶性ポリマーとしては、ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム、ジシアンジアミド−ホルムアルデヒド縮合物、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物等が挙げられる。
また、カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体と、ノニオン性単量体であるエチレン性二重結合を有するモノマーとを重合させることにより得られるポリマーであってもよい。
【0044】
上記重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体としては、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルクロリド塩等が挙げられる。
また、上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0045】
上記両性水溶性ポリマーとしては、カチオン性単量体である重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体と、アニオン性単量体である重合可能な官能基を有するカルボン酸誘導体とを重合させることにより得られるポリマーが挙げられる。
なお、上記カチオン性単量体とアニオン性単量体とを重合させる際には、上述したノニオン性単量体を同時に重合させてもよい。
【0046】
上記重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体は、上述したものと同様のものが用いられる。
また、上記重合可能な官能基を有するカルボン酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0047】
上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の含有割合は、機能性組成物全量に対して、2質量%以上であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。
この場合、確実に湿紙のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できる。
なお、含有割合が30質量%を超えると、効果が向上しなくなる。
【0048】
上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記一般式(2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が30質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。
【化5】

【0049】
エチレンオキサイド基の含有割合が30質量%未満であると、エチレンオキサイド基の含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜強度が不十分となる傾向にあり、エチレンオキサイド基の含有割合が90質量%を超えると、エチレンオキサイド基の含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜がプレスロールに十分に定着しない傾向にある。
【0050】
上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの混合比が質量比で1:0.1〜1:10であることが好ましく、1:0.25〜1:4であることがより好ましい。
【0051】
機能性組成物1に対する水溶性ポリマーの質量比が0.1未満であると、質量比が上記範囲にある場合と比較して、皮膜を十分に維持できなくなる傾向にあり、機能性組成物1に対する水溶性ポリマーの質量比が10を超えると、質量比が上記範囲にある場合と比較して、タック性が増加するため、剥離性が低下する傾向にある。
【0052】
本発明の機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましい。
この場合、機能性組成物をプレスロール表面上により均一に付与することができる。
【0053】
本発明の機能性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物、水溶性ポリマー以外にも、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、分散剤、粘度調整剤、固体潤滑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0054】
次に、上述した機能性組成物を用いた湿紙の脱水工程について説明する。
上記機能性組成物は、フェルトと、該フェルトを介して湿紙を押圧するための一対のプレスロールと、湿紙に接触する側のプレスロールに接触するドクターブレードと、を備える抄紙機に用いられる。
【0055】
図1は、本発明の機能性組成物が用いられる抄紙機のプレスパートの構成の一例を説明するための説明図である。
図1に示すように、プレスパート100は、第1プレス部Aと、第2プレス部Bとを備え、第1プレス部Aでは2箇所、第2プレス部Bでは1箇所で湿紙の脱水が行われる。
【0056】
第1プレス部Aにおいては、中心となるプレスロール10(以下「センターロール」という。)が備えられており、該センターロール表面の押圧点P1,P2で、湿紙を押圧できるように第1プレスロール11と、第2プレスロール12とが設けられている。
換言すると、センターロール10と第1プレスロール11とが押圧点P1で湿紙を押圧することができ、センターロール10と第2プレスロール12とが押圧点P2で湿紙を押圧することができるようになっている。
【0057】
一方、第2プレス部Bにおいては、上方のプレスロール15(以下「トップロール」という。)が備えられており、該トップロール15表面の押圧点P3で、湿紙を押圧できるように第3プレスロール13が設けられている。
換言すると、トップロール15と第3プレスロール13とが押圧点P3で湿紙を押圧することができるようになっている。
【0058】
湿紙30は第1プレス部Aのセンターロール10と第1プレスロール11との間、センターロール10と第2プレスロール12との間を通過した後、第2プレス部Bのトップロール15と第3プレスロール13との間を通過するように配置されている。
【0059】
また、上記湿紙30が押圧点P1,P2,P3それぞれで押圧される際には、プレスロール間において湿紙30がフェルト21,22,23を介して押圧されるようになっている。
すなわち、フェルト21は、センターロール10と第1プレスロール11との間に配置されており、第1プレスロール11に接するようになっている。
また、フェルト22は、センターロール10と第2プレスロール12との間に配置されており、第2プレスロール12に接するようになっている。
さらに、フェルト23は、トップロール15と第3プレスロール13との間に配置されており、第3プレスロール13に接するようになっている。
【0060】
したがって、湿紙30が第1プレス部Aを通過する際には、センターロール10と接することになり、第2プレス部Bを通過する際には、トップロール15と接することになる。
なお、これらのフェルト21,22,23は、湿紙と共に移動可能となっており、湿紙を押圧したときに湿紙中の水分を吸収することができる。
【0061】
また、上記プレスパート100は、湿紙30に接触する側のプレスロール(センターロール10及びトップロール15)に接触するドクターブレード10a,15aを備えている。
すなわち、センターロール10はドクターブレード10aと、トップロール15はドクターブレード15aと接触している。
【0062】
これらのドクターブレード10a,15aはセンターロール10、トップロール15の表面に付着した湿紙30からの分離物等の異物を取り除くことができる。
また、上記プレスパート100は、湿紙30に接触する側のプレスロール(センターロール10及びトップロール15)に本発明の機能性組成物を付与するためのスプレーノズル10b,15bを備えている。
すなわち、上述した本発明の機能性組成物は、湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与して用いられる。
【0063】
かかるスプレーノズル10b,15bはいずれも、センターロール10及びトップロール15の回転方向R1,R2に対して、ドクターブレード10a,15aが設けられた位置よりも下流側に設けられる。
このようにスプレーノズル10b,15bをドクターブレード10a,15aよりも下流に設けることにより、剥離性皮膜の均一な形成と過剰分の機能性組成物を除去できるという利点がある。
【0064】
ここで、上記スプレーノズル10b,15bとしては、均等扇型ノズル、広角扇型ノズル、片扇型ノズル、空円錐ノズル、充円錐型ノズル、充角錐型ノズル、直進ノズル等が用いられる。
【0065】
湿紙30はプレスパート100に入ると、第1プレス部Aにて、センターロール10と第1プレスロール11とによりフェルト21を介して押圧点P1で押圧される。
そうすると、湿紙30中の水分がフェルト21に吸収されるため、湿紙30が脱水される。
【0066】
次いで、湿紙30は、センターロール10と第2プレスロール12とによりフェルト22を介して押圧点P2で押圧される。
そうすると、湿紙30中の水分がフェルト22に吸収されるため、湿紙30がより脱水される。
【0067】
そして、湿紙30はセンターロール10から剥離され、第2プレス部Bに搬送される。
このとき、湿紙30から分離した異物は、ドクターブレード10aにより除去される。
【0068】
第2プレス部Bに搬送された湿紙30は、トップロール15と第3プレスロール13とによりフェルト23を介して押圧点P3で押圧される。
そうすると、湿紙30中の水分がフェルト23に吸収されるため、湿紙30が更に脱水されることになる。
【0069】
そして、湿紙30はトップロール15から剥離され、図示しないドライヤーパートに送られ乾燥される。
なお、湿紙30から分離した異物は、ドクターブレード15aにより除去される。
【0070】
このようにして、上記プレスパート100においては、一対のプレスロール間にフェルトを介して湿紙を通過させることにより、該湿紙の脱水が行われる。
【0071】
また、上述した機能性組成物を、湿紙に接触するプレスロールに付与することにより、湿紙の剥離性を向上させることができる。
【0072】
さらに、上述した機能性組成物を、表面に付着した異物を除去するためのドクターブレードに接触したプレスロールに付与することにより、ドクターブレードの磨耗を抑制することができる。
【0073】
すなわち、上記機能性組成物は、湿紙のプレスロールからの剥離性を向上させる剥離剤、及び/又はドクターブレードとプレスロールとの潤滑性を向上させる磨耗抑制剤として機能させることができる。
【0074】
以上より、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を確実に向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を確実に抑制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
【0075】
また、湿紙をプレスロールから剥離させるために、湿紙の長さ方向に張力を加えて(以下「ドローをとる」という。)湿紙をプレスロール表面から引き剥がす場合、本発明の機能性組成物が付与されたプレスロールは、湿紙のプレスロールに対する剥離性が向上しているため、ドローを緩めることができる。
【0076】
したがって、ドローのとり過ぎによって湿紙端面が内側に縮んだり、断紙したりすることを抑制できる。
なお、湿紙端面が内側に縮むと、紙の組織自体に歪みが与えられるため、印刷紙として用いる場合、色ズレが発生する。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0078】
例えば、上記実施形態においては、湿紙30をプレスロール間に通過させる際に、一方の面をフェルトと接触させているが、湿紙30の両面にフェルトを接触させてもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、一対のプレスロールのうち、湿紙に接する一方のプレスロールがドクターブレードを備えているが、一対のプレスロールの両方がドクターブレードを備えていてもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
[機能性組成物の調製]
水80質量%中に、下記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:55質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=6、q=1、表面張力26.9mN/m)(以下便宜的に「化合物A」という。)10質量%と、カチオン性水溶性ポリマー10質量%とを加えることにより、機能性組成物を得た。
【化6】

【0082】
なお、上記カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比1:1となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
【0083】
(実施例2)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:59質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=7、q=1、表面張力27.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0084】
(実施例3)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:62質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=8、q=1、表面張力27.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0085】
(実施例4)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:65質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=9、q=1、表面張力27.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0086】
(実施例5)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:75質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=15、q=1、表面張力27.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0087】
(実施例6)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:77質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=16、q=1、表面張力27.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0088】
(実施例7)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:79質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=17、q=1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0089】
(実施例8)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:82質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=20、q=1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0090】
(実施例9)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:82質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)の炭化水素、p+r=21、q=1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0091】
(実施例10)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:70質量%、Rは炭素数9(直鎖ノニル)の炭化水素、p+r=10、q=1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0092】
(実施例11)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:67質量%、Rは炭素数10(分岐デシル)及び炭素数12(直鎖ドデシル)の炭化水素の混合物、p+r=10、q=1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0093】
(実施例12)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:62質量%、Rは炭素数12(直鎖ドデシル)の炭化水素、p+r=7、q=0、表面張力27.8mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0094】
(実施例13)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:66質量%、Rは炭素数12(直鎖ドデシル)の炭化水素、p+r=8、q=0、表面張力28.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0095】
(実施例14)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:70質量%、Rは炭素数12(直鎖ドデシル)の炭化水素、p+r=10、q=0、表面張力31.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0096】
(実施例15)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:81質量%、Rは炭素数12(直鎖ドデシル)の炭化水素、p+r=18、q=0、表面張力39.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0097】
(実施例16)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:64質量%、Rは炭素数13(直鎖トリデシル)の炭化水素、p+r=8、q=0、表面張力27.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0098】
(実施例17)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:69質量%、Rは炭素数13(直鎖トリデシル)の炭化水素、p+r=10、q=0、表面張力27.9mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0099】
(実施例18)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:73質量%、Rは炭素数13(直鎖トリデシル)の炭化水素、p+r=12、q=0、表面張力31.3mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0100】
(実施例19)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:82質量%、Rは炭素数13(直鎖トリデシル)の炭化水素、p+r=20、q=0、表面張力36.3mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0101】
(実施例20)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:57質量%、Rは炭素数14(直鎖テトラデシル)及び炭素数15(直鎖ペンタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=8及び9の混合物、q=1、表面張力32.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0102】
(実施例21)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:59質量%、Rは炭素数14(直鎖テトラデシル)及び炭素数15(直鎖ペンタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=9、q=1、表面張力32.5mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0103】
(実施例22)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:64質量%、Rは炭素数14(直鎖テトラデシル)及び炭素数15(直鎖ペンタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=11、q=1、表面張力34.0mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0104】
(実施例23)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:67質量%、Rは炭素数14(直鎖テトラデシル)及び炭素数15(直鎖ペンタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=13、q=1、表面張力35.0mN/m)を用いたこと以外は実施例14と同様にして機能性組成物を得た。
【0105】
(実施例24)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:70質量%、Rは炭素数14(直鎖テトラデシル)及び炭素数15(直鎖ペンタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=15、q=1、表面張力37.0mN/m)を用いたこと以外は実施例14と同様にして機能性組成物を得た。
【0106】
(実施例25)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:61質量%、Rは炭素数16(直鎖ヘキサデシル)の炭化水素、p+r=10、q=1)を用いたこと以外は実施例14と同様にして機能性組成物を得た。
【0107】
(実施例26)
化合物Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:60質量%、Rは炭素数16(直鎖ヘキサデシル)及び炭素数18(直鎖オクタデシル)の炭化水素の混合物、p+r=10、q=1)を用いたこと以外は実施例14と同様にして機能性組成物を得た。
【0108】
(実施例27)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、両性水溶性ポリマーを用いたこと以外は実施例23と同様にして機能性組成物を得た。
なお、上記両性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、アニオン性単量体であるメタクリル酸と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比5:2:3となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
【0109】
(実施例28)
化合物Aの添加量を2質量%としたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0110】
(実施例29)
化合物Aの添加量を30質量%としたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0111】
(比較例1)
化合物Aの代わりに、塩化アルキルジメチルベンザルコニウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0112】
(比較例2)
化合物Aを用ないこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0113】
(比較例3)
化合物Aの添加量を1質量%としたこと以外は実施例1と同様にして機能性組成物を得た。
【0114】
(評価方法)
図1に示す抄紙機のプレスパートにおいて、上記実施例1〜29及び比較例1〜3で得られた機能性組成物をセンターロール(プレスロール)に付与し、湿紙の剥離性及びドクターブレードの摩耗性を調査した。なお、試験で使用した実機の稼働条件は次の通りである。
抄造品種:コート紙
坪量:44g/m
紙幅:5m
センターロールの回転速度:1100m/min
センターロールの材質:セラミック溶射ロール
ドクターブレードの材質:カーボン
ドクターブレードの線圧:350g/cm
トップロールの回転速度:1140m/min
トップロールの材質:セラミック溶射ロール
機能性組成物の付与量:25cc/min
センターロールへの水の付与量:50L/min
【0115】
[実機剥離性]
図2は、実機剥離性試験を説明するための説明図である。
図2に示すように、機能性組成物を付与しない状態においては、所定速度S1でプレスロールを稼動させると、湿紙30は離脱点T1で剥離する。
一方、各機能性組成物を付与した状態においては、同じ速度S1でプレスロールを稼動させると、湿紙30は離脱点T2で剥離する。
なお、稼働中では離脱点が上下に振れているので、その振れの中心となる位置を離脱点とする。
【0116】
次いで、各機能性組成物を付与した状態において、稼動速度を落としていく。
そうすると、ドローを取る際の力が弱まり、離脱点T2は徐々に離脱点T1の方向に移行する。
そして、離脱点T2と離脱点T1とが一致したときの速度S2を測定する。
この速度S1と速度S2との差を剥離性の大きさとした。
得られた結果を表1に示す。
【0117】
[磨耗性]
また、各機能性組成物を付与した状態において、2週間実機を稼働させた場合のドクターブレードの摩耗量を一日当たりに換算して測定した。
結果を表1に示す。
なお、水(ブランク)のみを付与した場合の磨耗量を100として、各実施例の磨耗性を規格値(ブランクに対する相対値)で示す。
【0118】
[湿紙剥離性]
次に、本発明の機能性組成物の効果を示す補助試験として、湿紙の剥離性試験を行った。
その方法を、図を用いて以下説明する。
【0119】
図3の(A)及び(B)は、湿紙剥離性試験を説明するため説明図である。
図3に示すように、セラミックス溶射板51の上面の全面に水で2000倍に希釈した各機能性組成物を5cc付与した。
【0120】
次いで、セラミックス溶射板51上に湿紙30を載置し、湿紙30上にフェルト52を載置して積層体とした。
そして、この積層体を、金属製のプレスロール53により押圧し、湿紙30の全体が均一な圧力によって押圧されるように、積層体を水平方向に移動させた。
【0121】
これにより、湿紙30が脱水された。
なお、湿紙30の湿紙の重さに対する湿紙から水分を除去した部分の重さの割合(ドライネス)は約38%であった。
【0122】
次いで、湿紙30の端部にワイヤー付きフック54を取り付け、このワイヤー付きフック54を水平に移動可能な滑車に引掛け、ワイヤーの先端をロードセル55(株式会社共和電業製)に接続した。
【0123】
そして、滑車を移動させ、湿紙が実際に実機を離れる時の一定の角度(θ=15°)を保ちながらセラミック溶射板51から湿紙30を剥がした。
その時、ロードセル55が示した剥離力を測定した。
得られた結果を表1に示す。
なお、セラミック溶射板1に水(ブランク)のみを付与した場合の剥離力を100として、各実施例の剥離力を規格値(ブランクに対する相対値)で示す。
【0124】
[動摩擦力測定]
次に、本発明の機能性組成物が動摩擦力を低下させる効果を確かめる試験を行った。
図4は、動摩擦力測定試験を説明するため説明図である。
図4に示す通り、セラミックス溶射板1全面に水で2000倍に希釈した機能性組成物を5cc付与した。
【0125】
次いで、セラミック溶射板51と一定の角度(α=30°)で立てたカーボン製ドクターブレード56とロードセル55とをワイヤーで接続し、且つロードセル55とモーター57とをワイヤーで接続した。
【0126】
そして、モーター57でロードセル55を引っ張り、カーボン製ドクターブレード56がセラミック溶射板51を摺動する間にロードセル55が示す動摩擦力を測定した。
得られた結果を表1に示す。
なお、セラミック溶射板51に水のみを付与した場合の動摩擦力を100として、各実施例の動摩擦力を規格値(ブランクに対する相対値)で示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜29の機能性組成物によれば、比較例1〜3の機能性組成物と比較して、実機剥離性、磨耗性、湿紙剥離性、動摩擦力のいずれにおいても優れていることがわかった。
【0129】
このことから、本発明によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できるため、安定した製造が可能となる機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法を提供することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、本発明の機能性組成物が用いられる抄紙機のプレスパートの構成の一例を説明するための説明図である。
【図2】図2は、実施例における実機剥離性試験を説明するための説明図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例における湿紙剥離性試験を説明するため説明図である。
【図4】図4は、動摩擦力測定試験を説明するため説明図である。
【図5】図5は、プレスロールにおける湿紙の剥離性を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0131】
10…センターロール(プレスロール)
10a,15a,56…ドクターブレード
10b,15b…スプレーノズル
11,12,13,53…プレスロール
15…トップロール(プレスロール)
21,22,23,52…フェルト
30…湿紙
51…セラミックス溶射板
54…ワイヤー付きフック
55…ロードセル
57…モーター
100…プレスパート
A…第1プレス部
B…第2プレス部
P,P1,P2,P3…押圧点
Q…点
R1,R2…回転方向
T1,T2…離脱点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与して用いられ、下記一般式(1)で表される化合物を2質量%以上含有することを特徴とする機能性組成物。
【化1】

[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜30の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。但し、pとrとの和が6〜30の整数であり、前記p,q,rは同時に0とはならない。]
【請求項2】
前記pと前記rとの和が6〜20の整数であることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【請求項3】
前記Rが炭素数12〜15の炭化水素基であり、前記pと前記rとの和が8〜20の整数であることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【請求項4】
水溶性ポリマーを更に含有することを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記一般式(2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が30質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【化2】

【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物と、前記水溶性ポリマーとの混合比が質量比で1:0.1〜1:10であることを特徴とする請求項4記載の機能性組成物。
【請求項7】
前記プレスロールが、表面に付着した異物を除去するためのドクターブレードを備えていることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【請求項8】
前記湿紙の前記プレスロールからの剥離性を向上させる剥離剤であることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。
【請求項9】
前記ドクターブレードと前記プレスロールとの潤滑性を向上させる磨耗抑制剤であることを特徴とする請求項7記載の機能性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の機能性組成物を用いることを特徴とする湿紙の剥離性向上方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−190098(P2008−190098A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28884(P2007−28884)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【特許番号】特許第4002590号(P4002590)
【特許公報発行日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(594020802)株式会社メンテック (7)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】