説明

剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルム

本発明は、剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルム、これを製造するための方法、これを使用する接合方法、これを使用して共に接合された基体を含むアッセンブリ、および前記フィルムの硬化生成物に関する。また事前に塗布された材料も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルム、前記フィルムを製造するための方法、前記フィルムを利用する接合方法、前記フィルムを使用して共に接合された基体を含むアッセンブリおよび前記フィルムの硬化生成物に関する。また、本発明は、事前に塗布された材料、例えば、事前に塗布されたフィルム単独または担体基体上の事前に塗布されたフィルムも含む。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のために転写可能な硬化性フィルムを提供することは望ましい。そのような転写可能な硬化性フィルムは、先行技術のように多くの形態で提供され、多くの様々な化学に基づく。
【0003】
国際公開第WO86/01816号公報は、フィラメント含有支持部材を開示し、そのフィラメンはαシアノアクリレートで湿らされる。この文献は、シアノアクリレートに付随する低い粘度の問題およびシアノアクリレートに付随する取り扱いの問題を議論している。シアノアクリレートはゲルとして形成され、次いで支持部材に塗布されてシアノアクリレートはフィラメントによって吸収される。
【0004】
田岡化学工業株式会社による特開平04−008781号公報のWPIXアブストラクトは、接合目的で支持ベース材料上に導入された接着剤の層の転写を開示している。この接着剤はαシアノアクリレートであると記載されている。この接着剤は液体形態であると記載されている。
【0005】
欧州特許公開EP0566093号公報は、熱伝導性電気的に絶縁された感圧接着剤を開示している。テープ上のポリマーはシアノアルキルアクリレートを含む。また、転写テープも記載されている。
【0006】
上記の最新技術が存在するにもかかわらず、代替物を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項および下に説明される製造品に関する。より具体的には、本発明は、剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルム、前記フィルムを製造するための方法、前記フィルムを利用する接合方法、前記フィルムを使用して共に接合された基体を含むアッセンブリおよび前記フィルムの硬化生成物に関する。
【0008】
転写可能な硬化性非液体フィルムは剥離基体上に提供され、このフィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される。
【0009】
本発明に対して適用される用語、非液体は、ゲルを含まない。すなわち、非液体は、室温で非流動性および自己支持を意味することが意図される。特に、本発明の非液体フィルムを形成するための組成物は、薄いコヒーレント・フィルムを形成することが可能なものである。
【0010】
電子欠損オレフィン成分は、フィルムの主要な硬化成分であることが理解されよう。また、本発明のフィルムは充分な領域(比較的大きな領域)であって、接合のために有用であることも理解されよう。特に、フィルム形成に限定されたフィルム、例えば、繊維状基体の繊維に生じるようなものは、本発明が意味する範囲内のフィルムではない。
【0011】
従って、本発明の製造品は、剥離基体上に与えられる代替の転写可能な硬化性非液体フィルム組成物を提供する。1つの特定のフィルムは、シアノアクリレート接着剤化学を基にすることができる。
【0012】
本発明の部材は、インスタント反応性ウオームメルトまたはホットメルト接着剤用途において好適に使用できる。転写可能な硬化性非液体シアノアクリレート系フィルムは特に望ましい。なぜなら、例えば、転写可能なフィルムの形態にある硬化性組成物は、現在のシアノアクリレート組成物よりも容易に取り扱うことができるからであり、それは通常、低粘度液体またはゲルとしてボトルまたはチューブに入れて供給される。本発明の部材は従って、不注意な接着剤の漏出および皮膚接着に関わる問題を回避することができる。また、本発明の利点としては、蒸気放出の削減が挙げられる。また、本発明は、硬化性フィルムを大きい面積の表面に均一に塗布することを可能にする。本発明のフィルムは、例えば、従来の液体またはゲルのシアノアクリレートに比べて、比較的厚いボンドライン形成するために利用されうる。
【0013】
特に、本発明の非液体フィルムは、プロパルギル、ネオペンチル、もしくはアダマンチルエステルの少なくとも1種である電子欠損オレフィン成分、または、ジエステルを含む電子欠損オレフィン成分、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの電子欠損オレフィン成分を含む。
【0014】
電子欠損成分は、シアノアクリレートエステル、メチリデンマロネートエステルまたはシアノペンタジオネートエステルおよびそれらの組合せからなる群より選択されてよい。
【0015】
電子欠損オレフィン成分は、シアノアクリレート、特に、2−シアノアクリレートを含むことが好適である。
【0016】
本発明の硬化性成分はシアノアクリレートであることが好適であり、アルキルエステル2−シアノアクリレート(α−シアノアクリレート)、アルコキシアルキルエステル2−シアノアクリレート、ジシアノアクリレートまたはアダマンチルアルコールシアノアクリレートから選択されてよい。
【0017】
【化1】

シアノアクリレートとしては、上記構造の2−シアノアクリレートが挙げられ構造中、Rは、C−C16アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、アリル、アダマンチルおよびハロアルキル基から選択され得る。アルキルエステル2−シアノアクリレート化合物、例えば、メチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート、n−ブチル2−シアノアクリレート、イソブチル2−シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、プロパルギルシアノアクリレートおよびβ−メトキシエチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、プロパルギルシアノアクリレート、β−メトキシエチルシアノアクリレートおよびそれらの組合せは、本発明の組成物の硬化性成分として適切に使用されてよい。
【0018】
電子欠損オレフィン成分は、好適には、プロパルギル、ネオペンチル、またはアダマンチルシアノアクリレートもしくはジシアノアクリレートおよびそれらの組合せを含む。
【0019】
本発明の組成物において使用されてよい他の望ましい硬化性シアノアクリレート(CAs)としては、アルコキシアルキル2−シアノアクリレート化合物、例えば、アルコキシアルキル鎖中に多重結合を有するアルコキシアルキル2−シアノアクリレート化合物、例えば、論文「有機化学:官能基で置換された2−シアノアクリレートの合成(Organic Chemistry,Synthesis of functionally substituted 2−cyanoacrylates)」(Russian Chem.Bull.(43)4,1994,595−598)に開示されている、3−エトキシプロペン2−シアノアクリレート、プロポキシプロパ−1−エン2−シアノアクリレート、3−イソプロポキシプロパ−1−エン、3−ブトキシプロパ−1−エン2−シアノアクリレート、3−(2−エトキシエトキシ)プロパ−1−エン、ビニルアセテート2−シアノアクリレート、プロパ−1−イル2−シアノアクリレート、3−エトキシプロパ−1−イン2−シアノアクリレート、1,1,2トリクロロブタ−1−エン2−シアノアクリレートおよび1−(ビニルオキシ)アセトン2−シアノアクリレートが挙げられ、それらの内容の全部は参照により本明細書に組みこまれる。
【0020】
ジシアノアクリレート接着剤化合物は、硬化性成分として適切に採用されてよい。例えば、ジシアノアクリレート化合物、例えば、エチレングリコール2,2’−ジシアノアクリレート、ネオペンチルグリコール2,2’−ジシアノアクリレートおよび多くの他のポリエチレングリコール2,2’−ジシアノアクリレートは、英国特許GB1,048,906号公報に開示され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。本発明で使用されてよい追加のジシアノアクリレートは、Gololobovらの論文「ビス(2−シアノアクリレート)モノマーの絶対的な合成.I.アントラセン付加物経由[Unequivocal Synthesis of Bis(2−Cyanoacrylate)Monomers.I.Via Anthracene Adducts]」(Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,Vol.16,2475−2507)、「ビス(2−シアノアクリレート)の合成への新規アプローチ[A novel approach to the synthesis of bis(2−cyanoacrylates)]」(Russian Chemical Bulletin,Vol.4,No.4,1995,760−761)および「2−シアノアクリロイルクロリッドおよび2−ブテン−および2−ブタイン−1,4−ジオールからのビス(2−シアノアクリレート)の合成[Synthesis of bis(2−cyanoacrylates)from 2−cyanoacryloyl chloride and 2−butene− and 2−butyne−1,4−diols]」(Russian Chemical Bulletin, Vol.45,No.9,1996,2172−2176)に開示され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。ジシアノアクリレートの例として望ましくは、2−ブテン−1,4−ジオールビス(2−シアノアクリレート)、2−ブチン−1,4−ジオールビス(2−シアノアクリレート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(2−シアノアクリレート)、1,8−オクタンジオール−ビス(2−シアノアクリレート)および略語として「ビス−A/EGBCA」によって表すことができるエチレングリコールビス(9,10−ジヒドロ−9,10−エンド−エタノアントラセン−11−シアノ−11−カルボキシレート)が挙げられる。
【0021】
例えば、欧州特許EP0470722号B1公報に開示されているもの(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)のようなα-シアノアクリレートは、本発明の組成物中の硬化性成分として好適に採用されてよい。具体的な例としては、メチルα−シアノアクリレート、エチルα−シアノアクリレート、プロピルα−シアノアクリレート、アリルα−シアノアクリレート、プロパルギルα−シアノアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルα−シアノアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルα−シアノアクリレート、2−メトキシエチルα−シアノアクリレートおよび2−エトキシエチルα−シアノアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。特に適しているのは、白化防止特性に加えて、高い温度ででも優れた接着剤特性を有するネオペンチルα−シアノアクリレートである。
【0022】
代替のシアノアクリレートの例としては、1−アダマンチルメタノール2−シアノアクリレートおよび1,10−デカンジオールビス−2−シアノアクリレート(Russian Chemical Bulletin,Vol.45,No.9,1996,2172−2176)が挙げられるが、これらに限定されず、本発明でそれらのいずれかが使用されてよい。
【0023】
有用なメチリデンマロネートとしては、下の構造:
【0024】
【化2】

の範囲内のものが挙げられ、ここで、これに関連してRおよびRは、各々独立して、C1−16アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリルまたはハロアルキル基から選択される。
【0025】
従来のシアノアクリレートモノマー含有組成物は、通常、低いまたは中間の粘度および迅速な重合を示す液体またはゲルであり、すなわち、大きな領域の接合に適していない。そのような組成物はそれ自体で、フィルムのような柔軟性基体のために転写可能な硬化性組成物として使用するには適していない。なぜなら、それらは低いまたは中間の粘度を有するので基体から流れ去る傾向がある考えられるためである。それらは通常、コヒーレントフィルムを形成することができないであろう。この問題に対応するために、硬化性成分の固体形態のモノマーを使用することが望ましい。これはフィルムに所望のコヒーレンスを与える。追加の成分、例えば、フィルム形成成分および/または液体シアノアクリレートのような液体硬化性成分は、フィルムの形成に役立つようにシアノアクリレートに添加されてよい。フィルム形成成分は、本組成物のあらゆる液体成分を固体化するのに実質的に役立つ。このことは組合わされた材料の全体の粘度を上げ、組合わされた材料が転写基体上に保持されることが可能になる。フィルム形成成分は、少なくとも1種の弾性添加物成分でありうるフィルム形成剤を含んでいてよい。ネオペンチルシアノアクリレートのような固体シアノアクリレートが使用された場合、硬化性成分はそれが塗布された後に基体上に留まるので、フィルム形成剤を添加する必要性はより少ない。固体および液体シアノアクリレートの混合物を含む組成物が使用される場合、存在する液体硬化性成分の濃度に対して補うために適した量のフィルム形成成分が組成物に添加されてよい。
【0026】
特に、例えば、塗布による結晶性質が理由で非コヒーレントフィルムを形成できる固体単量体の材料に対して、フィルム形成成分は、適した構造を提供するかまたはコヒーレントフィルムを与えるために骨格を作る。コヒーレントフィルムは、フィルム形成成分と共硬化剤との組合せによって達成されうる。
【0027】
フィルム形成成分としては、例えばフィルム形成剤が挙げられ、本発明の組成物で使用できる弾性添加物成分としては、例えば、コポリマー状エチレンアクリルエラストマー、天然ゴムまたは置換ポリエチレンのような合成ゴム、ポリビニルブチラール樹脂のような樹脂およびクロロスルホン化ポリエチレン合成ゴム(CSM)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のための添加物として適切に使用されてよい他の合成ゴムとしては、KALAR(登録商標)、DPR(登録商標)、ISOLENE(登録商標)およびKALENE(登録商標)のブランド名で、Royal Elastomers(New Jersey、米国)から市販品が入手できるブチルゴム製品のような部分的に交差架橋ブチルゴム化合物が挙げられる。
【0028】
また、エチレンアクリルエラストマーは、これらの種類のエラストマーが耐熱性および耐流動性を有するので、望ましく使用されてよい。一般的に、これらの種類のエラストマーは、住宅およびガスケットシールなどのような柔軟な用途で使用されることが多い。本発明の転写可能な硬化性非液体フィルム組成物において有利に使用することができるエチレンアクリル弾性材料の例としては、エチレンアクリルエラストマーが挙げられる。かつてより、そのような市販品で入手可能な製品は、DuPont Corporationから入手可能なVamac(登録商標)である。そのようなエラストマー添加物を使用すると、本発明の転写可能な硬化性非液体フィルムに様々な度合いの柔軟性が与えられ、同時に満足すべき非液体形態がもたらされるが、それは硬化性フィルム組成物中に存在する添加物の量によって決まる。そのようなエラストマーを含む本発明のフィルム組成物は適して望ましい。なぜなら、柔軟性である転写可能な硬化性非液体フィルムは、使用する必要がある場合、壊れやすいフィルムよりは容易に剥離基体上に提供され、容易に剥離基体から転写されうるからである。
【0029】
ポリビニルブチラール樹脂は、望ましくは本発明の転写可能な硬化性非液体フィルム組成物に添加されてよい。この種の樹脂は、接着剤接合効率を高め、接着剤材料に光学的透明度を加え、多くの表面への接着力を高め、その上、望ましい度合いの柔軟性を維持しつつ増強された強靱性を有する転写可能な硬化性非液体フィルムをもたらすので有用である。そのようなブチラール樹脂の1つの例は、Kreglinger Europe N.V.(Antwero、ベルギー)から入手できるButvar(登録商標)である。
【0030】
クロロスルホン化ポリエチレン合成ゴム(CSM)は、本発明の硬化性フィルム組成物において適切に使用されうる。適したCSM組成物の例としては、商品名Hypalon(登録商標)でDuPont Corporationから販売されるものまたはToso−CSM(登録商標)でTosoh Europe B.V.(Amsterdam、オランダ)から入手できるものに対応するクロロスルホン化合成ゴムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの材料は、フィルム組成物に強化された特性、例えば、耐化学性、極端な温度に対する耐久性を与え、UV光老化および劣化に対して防御することが望ましい。
【0031】
非液体フィルムは、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を含むことが望ましい。非液体である1つのそのような電子欠損オレフィン成分は、ネオペンチル2−シアノアクリレートである。
【0032】
非液体フィルムは、それ自体液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を少なくとも1種の他のフィルム形成成分との組合せで含むことが適切であり、ここでこの組合せは非液体である。適した液体電子欠損オレフィン成分としては、Henkel Ireland Limited(Dublin24、アイルランド)から入手できる商業品のLoctite(登録商標)401およびLoctite(登録商標)480が挙げられる。非液体である1つのそのような電子欠損オレフィン成分は、ネオペンチル2−シアノアクリレートである。
【0033】
非液体フィルムは、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分、および/またはそれ自体液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分および少なくとも1種のフィルム形成成分、を含むことが好適であり、ここでこの組合せは非液体である。適した液体電子欠損オレフィン成分としては、シアノアクリレート、例えば、商業的にHenkel Ireland Limited(Dublin24、アイルランド)によるLoctite(登録商標)401が挙げられる。非液体である1つのそのような電子欠損オレフィン成分は、ネオペンチル2−シアノアクリレートである。フィルム形成成分のような適した共成分は、本明細書のほかの場所で考察される。硬化性フィルムは、他の基体(それに対しては硬化性フィルムが剥離可能である)との接触で接合するために形成されうる。あるいは、剥離されたフィルムは、事前に塗布された形態(他の基体に転写され、その後いつでも接合できる状態)で提供されうる。後に、必要に応じて硬化を開始することができる。例えば、熱または光のような外部刺激は、硬化を誘導することが望ましい場合には、適用されてよい。
【0034】
本発明のフィルムのフィルム部分は、コヒーレントの塊として剥離可能である(その後の硬化のため)。従ってこの材料は、フィルム形態を維持しながら基体から他の基体に任意に転写されうる。
【0035】
本発明のフィルムは接合特性を有し、所望の最終接合用途のために形成されうることが理解されよう。転写可能な硬化性非液体フィルム組成物および本発明の供給システムは、望ましくは、ラミネーション、製本、靴組立、パッケージ化、紙用途およびダイ付属品用途のような最終用途で使用されてよい。また、本発明の部材は、構造材料の製造において使用されてよく、例えば、シアノアクリレートテープは、ハニカム構造のような構造における空隙を充填または補うために使用されてよく、防音および断熱を含めた絶縁特性のような所望の特性を有する材料構造を提供することが理解されよう。また、本発明の部材は、創縫合、外科的縫合および外科的応用ならびに医療デバイス用途などを含めて医療用途において有用である。
【0036】
本発明の部材からのフィルムを剥離することによって接合されうる基体としては、金属または合金、ガラスおよびエナメル、木材、天然または合成織物、皮革、石、セラミック、プラスチック、紙または紙板、紙またはプラスチック、コンポジット、もしくは生体組織が挙げられる。
【0037】
本発明の部材は、柔軟性であってよい剥離基体を含むことが望ましい。特に望ましいのは柔軟性担体である剥離基体である。適した例は柔軟性シートおよび柔軟性テープである。
【0038】
硬化の度合いはフィルム中で起こりうるが、しかし、フィルムは充分に未硬化のままであり、それによって後の接合を生じることが理解されよう。一般的にこのことは、組成物が実質的に非硬化のままである可能性を意味する。
【0039】
剥離基体は、あらゆる望ましい種類のものであってよく、顕著な早期硬化が確実に生じないように硬化性成分と適合することができる。この理由で、基体は処理された表面であってよいことが理解されよう。
【0040】
剥離基体は、あらゆる望ましい種類のもの、例えば、プラスチック基体または紙基体もしくはシートであってよい。他の織物または不織布基体は必要に応じて使用されてよい。剥離システムは、基体サイズ、特に、大きい接合領域に適したサイズの範囲で提供されてよい。
【0041】
基体上に提供された転写可能な硬化性非液体フィルム組成物の形態中にあるシアノアクリレートは、シアノアクリレート由来の流涙および臭気が抑制されるという事実により有利である。
【0042】
本発明の部材は、ウェブの形態、例えば、スプール上に与えられたロールの形態で提供されてよい。本発明の部材は、比較的広く、例えば、ラミネート化配置を形成するのに適しうること、または比較的狭く、例えば、テープを形成するのに適しうることが理解されよう。
【0043】
本発明の部材は、例えば、硬化性の転写されたフィルムを使用して後に接合するためにある構成要素部分にフィルムを要望通り転写させる装置中に、(例えば、スプール上の)剥離基体が連続的に供給される、連続の供給方法で使用されうる。
【0044】
本発明の部材は、2つの異なる側面を含んでいてよく、各側面は硬化性生成物が提供され、少なくとも1つの側面上の硬化性生成物は硬化性非液体フィルムを含み、このフィルムは電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される。
【0045】
好適には、本発明の部材は、基体の各側面には硬化性生成物が提供され、かつ両側面上の硬化性生成物は硬化性非液体フィルムを含む剥離基体を含んでいてよく、このフィルムは電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される。あるいは、非剥離または異差剥離である二つの面を有する基体を提供することである。そのような場合、基体はフォーム層であってよい。そのような場合、フィルムは望ましくは、シアノアクリレートのような非液体材料のフォーム基体上に形成されてよい。フィルムは両側面上に形成されてよい。そのような場合、例えば、シリコーン処理されたポリエステルフィルムのような剥離被覆を使用して基体の両側面を保護することが望ましい。
【0046】
本発明の組成物によって形成されたフィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含んでいてよく、基体はフォーム材料である。
【0047】
剥離基体は、異差剥離基体であることが望ましく、それによって基体の一部、例えば、その1つの表面が優先的にフィルムを保持することができる。このことは、基体の一部が他の部分とは異なった剥離閾値を有する部材を提供することによって達成されうる。これは、フィルムが両部分と接触している場合でも、フィルムが所望の部分上に保持されうることを意味する。これは、本部材が折り重ねられまたはそれ自体が巻き付けられている場合、特に有用である。そのような場合、背中合わせの表面のように異なった表面は、折り重ねまたは巻き上げによって接触させることができ、フィルムはそれが優先的に保持される表面上に留まることが望ましい。それ故に、折り重ねまたは巻き上げは、連続した折り重ねまたは巻き上げの間の望まない汚染、または不要な接合が生じない。フィルムは目的とする表面に留まる。剥離基体の例としては、剥離被覆された紙および剥離被覆されたフィルム、例えば、異差剥離被覆された紙および異差剥離被覆されたフィルムが挙げられる。
【0048】
所望であれば、硬化性フィルムは光、熱または湿気のような環境条件から保護され、およびそれを望まない物理的接触から保護することができる。これはフィルムの望ましくない硬化を軽減する可能性がある。保護部材を使用して保護は達成されうる。保護部材はそれ自体、フィルムを覆う保護用の柔軟性部材であってよい。保護用の部材は、通常、剥離基体上にフィルムを優先的に保持することができる剥離部材であってよい。保護部材はシートまたはテープの形態を取ってよい。それはプラスチック材料または紙を含めてあらゆる他の適した材料から形成されてよい。所望であれば、保護部材は、確実にフィルムが優先的に保護部材から剥離される(剥離基体からは除去されない)ために剥離被覆されていてよい。例としては、剥離被覆された紙およびプラスチックフィルムが挙げられる。剥離材料は、UV硬化を可能にするまたは防ぐために、当業者によって選択され、要望通りUV透過性または非透過性であってよい。
【0049】
本発明の組成物は、さらに1種以上の他の成分を含んでいてよい。
【0050】
下記は、本発明の組成物の形成で利用されてよい追加成分の限定的、例示的なリストである。あらゆる追加成分は、特にフィルムと混合可能であることが理解されよう。特に、あらゆる追加成分は不要な硬化を誘導してはいけない。あらゆる所望の組合せで使用されてよい提案された追加成分としては、
(a)シリカ、粘土、タルクなどの1種以上を含むもののようなフィラー成分、
(b)湿潤剤成分、
(c)アクリル、スチリル、アクリロニトリル、エポキシ、オキセタンまたはビニルエーテル官能性モノマーまたは樹脂を含むもののような追加の反応性成分、
(d)熱、光化学およびレドックス硬化システムを含むもののような硬化システム(例えば、上の(c)のための)、および
(e)安定剤成分(例えば、硬化性成分のための、および/または上の(c)のための)、例えば、硫黄ジオキシド、フッ化水素、窒素オキシド、リン酸、亜リン酸、三フッ化ボロン、塩化第二錫、塩化第二鉄、スルホン、芳香族スルホン酸を含むもの、
が挙げられる。追加の(通常、非反応性)成分としては、
(f)磁気特性、蛍光性、または放射線不透過性または放射線検出可能性のような追加の機能性を有することができる、染料および顔料を含めた着色剤、
(g)活性剤および他の共配合物成分を含めて、製剤処方で使用されるもののような他の添加物、
(h)フィラーとして追加的に機能しうる電気伝導性および/または熱伝導性粒子、
が挙げられる。
【0051】
本発明の転写可能な硬化性非液体フィルム組成物は、さらに、様々な変動する物理的特性を有する接着剤を提供する様々な添加物成分(例えば、上で記載されたもの)を含んでいてよく、特定の用途の要求によって決まる。異なった添加物または異なった添加物の組合せは、本発明の接着剤フィルム組成物において使用するために選択されてよく、所望の接着剤用途によって決まることが理解されよう。
【0052】
(a)において記載されたフィラー成分の例としては、例えば、シリカ、石英、アルミナ、カルシウム、粘土、タルクおよびある種のアクリレート成分とともにポリカーボネートおよび他のポリマー粉末のような他の無機フィラー材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(c)に記載された追加の反応性成分の例としては、例えば、アクリル酸モノマーおよびアクリル酸エステル誘導体、スチリル、アクリロニトリル、エポキシ、オキセタンおよびビニルエーテルモノマーまたは樹脂成分ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
適したアクリル成分(アクリレート、メタクリレートなど)および誘導体の例としては、3,3,5トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、アクリレートエステル、アクリルモノマー、アルコキシル化ラウリルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、エトキシ化ヒドロキシエチルメタクリレート、エトキシ化ヒドロキシエチルメタクリレート、エトキシ化ノニルフェノールメタクリレート、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、金属モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、プロポキシル化アリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、1,12ドデカンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、C12−C14アルキルメタクリレート、C16−C18アルキルアクリレート、C16−C18アルキルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタアクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリルエステル、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート、金属ジアクリレート、変性金属ジアクリレート、単官能酸エステル、3官能酸エステル、3官能メタクリレートエステル、プロポキシル化グリセリルトリアセテート、シクロへキシルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシ−ブチルアクリレート、ローレルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチリトリグルコールメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、第4級N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、脂環式ジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノキシド、n−ヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、脂環式アクリレートジアセル、シロキサンメタクリレート、2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルファミド)エチルアクリレート、2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルファミド)エチルメタクリレート、メタクリロイルオキシアルキル官能性アルコキシシラン、メチルグリシジルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、反応性、硬化速度などを高めるために、本発明の接着剤組成物に添加されてよく、さらに組成物の透過性および破損抵抗を高めることができる。
【0055】
エポキシド、オキセタン成分の例としては、グリシドール、スチレンオキシド、β−メチルエピクロロヒドリン、α−ピネンオキシド、長鎖アルキル基C12-C14を有するモノエポキシド、長鎖アルキル基C16−C18を有するモノエポキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、脂環式エポキシ樹脂、3−エチル−3−フェノキシメチル−オキセタン、ビス([1−エチル(3−オキセタニル)]メチル)エーテル、3−エチル−3−[(2−エチルキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−[(トリ−エトキシシリル1プロポキシ)メチル]オキセタン、オキセタニル−シルセスキオキサン、エピフルオロヒドリン、2−イソシアナトエチルメタクリレート、ビス(2,2,2−1フルオロエチル)マレエート、2−(N−ブチルペルフルオロオクタンスルファミド)エチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデシルアクリレート、1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデシルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。また、ベンジルアルコキサミンは、フィルム組成物中に含まれてよい。
【0056】
(d)に記載された硬化システムの例としては、例えば、熱、光化学およびレドックス硬化システムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
さらなる添加物材料、例えば、硫酸バリウムまたはヨウ素のような放射線学的造影剤は、本発明の組成物に添加されてよく、それによって接合材料は、例えば、X線、CT−スキャンなどのような医学的手技の間に同定されうる。
【0058】
本発明の組成物で適切に使用されてよい(e)に記載された安定剤成分の例としては、ヒドロキノン、ピロカテコール、レゾルシノールまたはそれらの誘導体、例えば、ヒドロキノンモノエチルエーテル、またはフェノール、例えば、ジ−t−ブチルフェノールまたは2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタン、およびスチレン化フェノールが挙げられる。例えば、酸性安定剤としては、硫酸、塩酸、スルホン酸、例えば、メタン、エタンまたは高級スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸またはポリリン酸、強酸のシリルエステル、例えば、トリアルキルクロロシラン、ジアルキルジクロロシラン、アルキルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリアルキルシリルスルホン酸、トリアルキルシリル−p−トルエンスルホネート、ビス−トリアルキルシリルスルフェートおよびトリアルキルシリルリン酸エステルが挙げられる。本発明の方法によって製造された電子欠損オレフィンを安定化するために使用されるいずれの安定剤もその量は、当業者にとって周知であり、上記方法で形成された電子欠損オレフィンから製造されて得られた組成物の特性によって変化してよい。
【0059】
追加の成分の例としては、例えば、着色剤、活性剤および/または電気伝導性および/または熱伝導性粒子が挙げられる。
【0060】
剥離基体は、少なくともフィルムが配置される基体の部分は酸性性質を有することが望ましい。このことは、酸の存在下でより安定な材料、例えば、シアノアクリレート材料のような電子欠損オレフィンにとっては重要である可能性がある。酸性の性質は堆積によって与えられうる。例えば、酸性の性質は、光カチオン開始剤からのカチオン性酸残基によって与えられ、例えば、ある種のスルホン酸基は、剥離被覆層中に存在しうる。
【0061】
そのような剥離被膜は、通常、硬化性フィルムと転写基体との接合を妨害することによって転写基体からの硬化性フィルムの剥離を促進できる表面変性剤または表面処理剤を含む。そのような剥離剤は、本発明の硬化性フィルムを転写基体から目的の部材に容易に転写できるようにする。そのような剥離被覆剤は、典型的にはシリコーン系物質またはそれらの混合物、例えば、官能化ポリシロキサンまたはカチオン性放射線硬化性シリコーンを含み、1つの例は、鎖中にランダム分布のエポキシ官能基を有するエポキシ官能化ポリジメチルシロキサンである。その材料は、非常に低い開始時の剥離値を有する剥離剤であると考えることができる。そのようなポリマーは、Rhodia(Paris、フランス)からブランド名、SILCOLEASE(登録商標)および特に、SILCOLEASE(登録商標)UV POLY205およびSILCOLEASE(登録商標)POLY206で市販品が入手可能である。
【0062】
非液体フィルムが、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を含む場合、その成分は、約39℃より高い融点を有することが望ましい。その成分は、フィルム形成剤と共に1種以上の他の液体成分と混合されてよく、それによって、全体の組合せはコヒーレントフィルムを形成する。
【0063】
本発明のあらゆる部材は、層間剥離層を含んでよいことが理解されよう。
【0064】
本発明の部材は、ラミネートのような層化材料を構築するのに必要なだけ何度も採用されうることが理解されよう。
【0065】
転写の後の硬化は、それが塗布される基体との接触で開始されうる。また、塗布圧力も硬化に対して寄与できる。また、光(例えば、UV)および熱硬化のような他の刺激も必要に応じて使用されてよい。
【0066】
光硬化が採用される場合、また、マスキングも選択的に硬化を誘導するために可能である。
【0067】
本発明の部材は梱包で提供されてよく、それは湿気のような環境の影響から保護する。フィルムが剥離層または追加の保護層によって保護される場合、例えば、ロール中に保護された場合、追加的または代替的にエッジ保護が提供されうる。
【0068】
他の態様では、剥離基体上に転写可能な硬化性非液体フィルムを含む部材を形成する方法が提供され、この方法は以下のステップ:
電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物の液体形態を剥離基体上に堆積するステップ、および
この堆積材料から非液体フィルムを形成するステップを含む。
【0069】
必要な場合、加熱または放射線を照射する追加の硬化ステップを採用して硬化を達成してよい。液体形態の堆積は、溶媒キャスティングまたは融解キャスティング、もしくは吹き付け塗りまたは押出しのような任意の適したキャスティング方法によって実施されてよい。適したキャスティング方法としては、スロット−ダイキャスティング、ロール式ナイフ塗布、グラビアおよびカーテン塗布が挙げられる。
【0070】
好適には、本方法は、任意に剥離材料を使用して非液体フィルムを保護する追加のステップを含んでいてよい。
【0071】
さらなる態様では、フィルムを剥離基体から転写するステップならびに第1の基体および第2の基体を共に接合させるステップを含む、第1および第2の基体を接合するための方法が提供される。
【0072】
好適には、第1および第2の基体は、ラミネート構造の層を形成してよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明は、添付する図を参照して、下記の実施例から明確に理解されるであろう。図1は、実施例で形成された部材を示す。
【0074】
(発明の詳細な説明)
本発明の固体シアノアクリレートは、典型的には39℃以下で固体形態にあるシアノアクリレートである。そのような固体シアノアクリレートとしては、例えば、ネオペニルシアノアクリレートおよびプロパルギルシアノアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの固体シアノアクリレートは、国際特許出願PCT/IE07/000104号公報に開示された方法によって製造されてよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれ、および多くのイミニウム塩(それは、イオン性液体形態であってよい)の合成および用途、ならびにイミニウム塩を使用する2−シアノアクリレートを調製するための方法を開示している。
【0075】
本発明の組成物は、さらに液体シアノアクリレートを含んでいてよい。適した液体シアノアクリレートとしては、シアノアクリレート組成物のLoctite 401およびLoctite 480が挙げられるが、これらに限定されない。すべてのそのようなLoctite市販シアノアクリレート製品は、Henkel Ireland Limited(Dublin 24、アイルランド)から入手できる。
【0076】
本発明は、エチレン/アクリル酸エラストマー組成物のようなゴム材料をベースとするもの、例えば、エチレン/メチルアクリレートコポリマーをベースとするものを含めて、フィルム形成剤を使用する。そのようなゴムとしては、DuPont Corporationからブランド名VAMAC(登録商標)で市販されている入手可能なものが挙げられる。特に適したゴムは、0.5%メチルアクリレートおよび0.5%メチルアルコール添加物をそれぞれ有する99%エチレン/メチルアクリレートコポリマーを含むVamac(登録商標)MDである。ゴムは、適した溶媒に溶解してゴム溶液を形成してよい。本発明の例示的なゴム溶液は、14重量%の濃度でクロロホルムに室温で溶解されたVamac(登録商標)MRである。
【0077】
転写基体は、紙またはプラスチック基体であってよい。本明細書の実施例では、ポリエステルフィルムが使用された。ポリエステルフィルム基体は、両面がシリコン処理されている。
【0078】
あらゆる適したシート被覆デバイスが、基体上にフィルムを被覆するために使用されてよい。本明細書の実施例では、EC 200ドローダウン塗布器が使用された。
【0079】
実施例1:
ネオペンチルシアノアクリレートを固体形態で提供し、油浴中、約70−80℃で融解した。次いで融解化合物を、ドローダウン塗布器で適した基体上に単純に広げた。それは硬化性材料のコヒーレント均一フィルムを形成した。
【0080】
実施例2:
最初に、Vamac(登録商標)MR(3.90g、48重量%)、ネオペンチルシアノアクリレート(3.61g、41重量%)およびLoctite 401(0.92g、11重量%)をクロロホルム中で混合することによって被覆溶液を製造した。次いでこの被覆溶液を、自動ドローダウン塗布器によって剥離被覆されたシリコン処理ポリエステルフィルム上に広げた。溶媒を真空オーブン中で除去した。硬化性材料のコヒーレント均一フィルムを、ポリエステルフィルム上に残した。このフィルムを図1に見ることができる。
【0081】
実施例3:
Vamacゴム溶液(2.50g、40重量%)、ネオペンチルシアノアクリレート(3.50g、50重量%)およびLoctite 480(70mg、10重量%)をクロロホルム中で混合することによって被覆溶液を調製した。次いでこの被覆溶液を、自動ドローダウン塗布器によって剥離被覆されたシリコン処理ポリエステルフィルム上に広げた。溶媒を真空オーブン中で除去した。硬化性材料のコヒーレント均一フィルムを、ポリエステルフィルム上に残した。フィルムは均一で黒色であった。
【0082】
実施例4
実施例2の乾燥フィルムを、ガラス基体(顕微鏡スライド)に押し付けた。(第1の)ガラス基体に取り付けられたコヒーレント均一フィルムを残して、シリコン処理ポリエステルフィルムを剥離した。第2のガラス基体(顕微鏡スライド)を、第1の基体上のフィルムに押し付けた。グリーン強度が、アッセンブリを損傷のない状態に保った。次いでアッセンブリを加熱した(硬化を達成するため)。冷却するとガラスアセンブリは、基体の間で強い接合を形成した。基体を分離するために加圧すると、基体は破壊したが、接合は元の状態のままであった。図1を参照されたし。
【0083】
製造されたフィルムは、芯地としてワックス紙を使用し、およびロール端をホットメルトまたはポリカプロラクトンで被覆され、巻き上げた配置で数日貯蔵された後、良好な安定性を示した。
【0084】
本発明に関連して本明細書で用いる場合、用語「含む/含んでいる」および用語「有する/含めて」は、表明された特徴、整数、ステップまたは成分の存在を特定化するために使用されるが、しかし他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群の存在もしくは付加を除外しない。
【0085】
明確にするために別の実施形態との関連で記載されている本発明のある特徴は、また、単一の実施形態において組合せで提供されうることも理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態との関連で記載されている本発明の様々な特徴は、また、別々にまたは任意の適した従属の組合せで提供されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルムを含む部材であって、前記フィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される、部材。
【請求項2】
前記非液体フィルムが、シアノアクリルエステル、メチリデンマロネートエステルまたはシアノペンタジオネートエステルおよびそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を含む、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記非液体フィルムが、
プロパルギル、ネオペンチル、およびアダマンチルからなる群より選択されるエステル成分を含む電子欠損オレフィン成分;
ジエステルを含む電子欠損オレフィン成分;および
それらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を含む、請求項1または2に記載の部材。
【請求項4】
前記電子欠損オレフィン成分が、シアノアクリレート、特に、2−シアノアクリレートを含む、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項5】
前記電子欠損オレフィン成分が、プロパルギル、ネオペンチル、またはアダマンチルシアノアクリレートもしくはジシアノアクリレートおよびそれらの組合せを含む、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項6】
前記非液体フィルムが、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を含む、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項7】
前記非液体フィルムが、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分を少なくとも1種の他のフィルム形成成分との組合せで含み、ここで前記組合せは非液体である、請求項1記載の部材。
【請求項8】
前記非液体フィルムが、それ自体非液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分、それ自体液体である少なくとも1種の電子欠損オレフィン成分および少なくとも1種のフィルム形成成分を含み、ここで前記組合せは非液体である、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項9】
前記剥離基体が、柔軟性を有する、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項10】
前記剥離基体が、柔軟性担体である、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項11】
前記剥離基体が、柔軟性シートである、請求項9に記載の部材。
【請求項12】
前記剥離基体が、柔軟性テープである、請求項9に記載の部材。
【請求項13】
前記部材が、2つの異なる側面を有し、各側面に硬化性生成物が提供され、および少なくとも1つの側面上に硬化性非液体フィルムを含む硬化性生成物が提供され、前記フィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される、前記いずれかの請求項に記載の部材。
【請求項14】
各側面に硬化性生成物が提供され、および両側面上に硬化性非液体フィルムを含む前記硬化性生成物が提供され、前記フィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成される、請求項13に記載の部材。
【請求項15】
基体上に硬化性非液体フィルムを含む部材であって、前記フィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成され、前記基体はフォーム材料である、部材。
【請求項16】
剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルムを含む部材を形成するための方法であって、以下のステップ:
電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物の液体形態を剥離基体上に堆積するステップ、および
前記堆積された材料から非液体フィルムを形成するステップ
を含む方法。
【請求項17】
前記液体形態の堆積が、キャスティング、例えば、溶媒キャスティングまたは融解キャスティング、もしくは吹き付け塗りまたは押出し法によって実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、任意に剥離材料を使用して前記非液体フィルムを保護するステップを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記剥離基体からフィルムを転写するステップおよび転写フィルムを利用して第1の基体および第2の基体を共に接合するステップを含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の部材を使用して前記第1の基体を前記第2の基体に接合するための方法。
【請求項20】
前記第1および第2の基体が、ラミネート構造で層を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から15のいずれか1項に記載のフィルムの反応生成物。
【請求項22】
剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルムを含む部材であって、前記フィルムは、ネオペンチルまたはプロパルギルシアノアクリレートのような固体シアノアクリレートを含む組成物によって形成される、部材。
【請求項23】
剥離基体上の転写可能な硬化性非液体フィルムを含む部材であって、前記フィルムは、非液体シアノアクリレート、液体シアノアクリレートおよびフィルム形成剤を含む組成物によって形成される、部材。
【請求項24】
前記非液体シアノアクリレートが、ネオペンチルまたはプロパルギルシアノアクリレートである、請求項23に記載の部材。
【請求項25】
前記液体シアノアクリレートが、2−シアノアクリレートである、請求項23または24に記載の部材。
【請求項26】
前記フィルム形成剤が、エチレンアクリルエラストマーを含む、請求項23から25のいずれか1項に記載の部材。
【請求項27】
基体上で硬化性非液体フィルムを含み、熱で活性化可能な恒久的または剥離基体であって、前記フィルムは、電子欠損オレフィン成分である少なくとも1種の硬化性成分を含む組成物によって形成され、前記電子欠損オレフィン成分は非液体である、基体。
【請求項28】
実施例に関して本明細書に記載の部材。
【請求項29】
実施例に関して本明細書に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−501361(P2012−501361A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524369(P2011−524369)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061015
【国際公開番号】WO2010/023229
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】