説明

剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材

【課題】
硬化性に優れ、硬化後は、紙やプラスチックフィルム等の各種基材に、優れた剥離性とスベリ性を有し、かつ、粘着性物質の粘着特性を低下させることのない硬化皮膜を表面に形成した基材を提供する。
【解決手段】
(A)(A-1)粘度5〜1,000mPa・sであり、分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖されたアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンと(A-2)粘度1,000〜10,000mPa・sであり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたヘキセニル基含有ジオルガノポリシロキサンとの混合物、(B)一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび(C)白金系触媒からなり、実質的に有機溶剤を含有しないことを特徴とする剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材に関し、詳しくは、各種紙材,ラミネート紙,合成樹脂フィルム,金属箔などの各種基材の表面に粘着性物質に対する剥離性の硬化皮膜を形成し得る、無溶剤型の剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンを主成分とする硬化性シリコーン組成物は、その硬化皮膜が粘着性物質に対して剥離性を示すため、粘着テープや粘着シートの剥離ライナーとして使用されている。ところがこの種の組成物には、用途によっては剥離性に加えて、紙同士、プラスチックフィルム同士あるいは紙−プラスチックフィルム相互間や、紙とプラスチックフィルムと人間の手との間でのスベリ性が要求される場合が多い。そのため、従来、このような特性を備えた剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物として、有機溶剤溶液タイプや水性エマルジョンタイプなどのシリコーン組成物が数多く提案されている。しかしながら、前者の有機溶剤溶液タイプは、離型性、スベリ性、硬化特性に優れるものの、多量の有機溶剤を必要とするため大気汚染や作業者の健康に悪影響をおよぼし、さらに溶剤回収装置に多額の費用がかかる等の問題点があった。また、後者の水性エマルジョンタイプは、皮膜形成のために高温・長時間の加熱が必要であり、生産性が低いという欠点があった。加えて、乳化が困難であることから高分子量のオルガノポリシロキサンを使用しにくく、また、乳化剤等を使用するため、得られた硬化皮膜の諸特性が有機溶剤溶液タイプに比べて劣るという欠点があった。
【0003】
一方、有機溶剤や水を用いない無溶剤型の剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物として、例えば25℃における粘度が50〜4000mPa・sのビニル基含有ジオルガノポリシロキサン、1分子中に少なくともケイ素原子に結合した水素原子を3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金系触媒および活性抑制剤からなる組成物が提案されている(特公昭52-47485号公報参照)。しかし、この組成物の硬化皮膜は、上記したような有機溶剤溶液タイプの皮膜に比べてスベリ性が悪く、このため用途が限定されるという欠点があった。また、分子鎖両末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたビニル基含有ポリシロキサン100〜50重量部とジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたビニル基含有ポリシロキサン0〜50重量部の混合物、メチルハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒からなる無溶剤型のシリコーン組成物も知られている(特開平7-258606号公報参照)。この組成物はスベリ性がやや向上するものの十分とは言えず、硬化性も低いため、用途によっては満足できるものではなかった。例えば、この組成物をクラフトテープの剥離剤として使用すると、スベリ性が十分ではないためテープをダンボール等に貼りつけるときにテープと手との間の摩擦抵抗が大きくなり、その結果、手を傷つけたり、テープ圧着に力が入らなくて感圧接着剤がダンボールに密着せず経時的に剥離するといった問題点があった。尚、スベリ性を改善するために、ジメチルシロキサンオイル,ポリエーテル変性シリコーンオイル,界面活性剤,ワックスなどを添加する方法も試みられているが、硬化皮膜表面にこれら添加剤の一部がマイグレートすることにより、粘着剤の接着力が低下するという欠点があった。
【特許文献1】特公昭52-47485号公報
【特許文献2】特開平7-258606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは上記欠点を解消するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、硬化性に優れ、硬化後は、紙やプラスチックフィルム等の各種基材に、優れた剥離性とスベリ性を有し、かつ、粘着性物質の粘着特性を低下させることのない硬化皮膜を形成し得る剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)下記(A-1)成分99〜90重量部と (A-2)成分1〜10重量部との混合物 100重量部、
(A-1)25℃における粘度が5〜1,000mPa・sであり、分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基含有量が全有機基の0.2〜10.0モル%である直鎖状ジオルガノポリシロキサン
(A-2) 25℃における粘度が1,000〜10,000mPa・sであり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖に少なくとも2個のけい素原子に結合したヘキセニル基を有し、ヘキセニル基含有量が全有機基の0.05〜0.5モル%である直鎖状ジオルガノポリシロキサン
(B)25℃における粘度が1〜1,000mPa・sであり、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 3〜50重量部、
および
(C)白金系触媒 触媒量
からなり、実質的に有機溶剤を含有しないことを特徴とする剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明組成物について詳細に説明する。
本発明組成物の主成分である(A-1)成分は、分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基含有量が全有機基の0.2〜10.0モル%である直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。このような(A-1)成分としては、一般式:
【化1】

で表されるジオルガノポリシロキサンが挙げられる。上式中、R1とR2はアルケニル基であり、ビニル基,ブテニル基,ヘキセニル基,オクテニル基,デセニル基が例示される。これらの中でも、ビニル基またはヘキセニル基が好ましい。R3はアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、メチル基,エチル基,ブチル基等のアルキル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が例示される。xは1以上の整数であり、yは0以上の整数であるが、0≦y/(x+y)≦0.20となる範囲であることが好ましい。(x+y)は25℃における粘度が5〜1,000mPa・sとなるような値であり、好ましくは50〜600mPa・sの範囲となるような値である。このような(A-1)成分としては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体,両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体が例示される。(A-1)成分としては、このようなオルガノポリシロキサンの1種を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0007】
(A-2)成分は本発明組成物の硬化皮膜にすべり性を付与する成分であり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、ヘキセニル基含有量が全有機基の0.05〜0.5モル%である直鎖状のヘキセニル基含有ジオルガノポリシロキサンである。このような(A-2)成分としては、
【化2】

で表される両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体が挙げられる。上式中、R2はヘキセニル基である。wは6≧w≧2を満たす正の整数であり、zはR2の含有量が全有機基の0.05〜0.5モル%となるような数である。これは、wが2未満だと硬化皮膜表面に(A-2)成分の一部がブリードアウトして粘着剤の接着力が低下し、6を越えるとスベリ性が低下してしまうためである。(z+w)は25℃における粘度が1,000〜10,000mPa・sとなるような値であり、好ましくは3,000〜8,000mPa・sとなるような値である。これは、(A-2)成分の粘度が1,000mPa・s未満だとスベリ性が発現せず、10,000mPa・sを越えると組成物の粘度が上昇して塗工性が低下するためである。
【0008】
(A)成分は上記(A-1)成分99〜90重量部と(A-2)成分1〜10重量部との混合物であり、(A-1)成分94〜98重量部と(A-2)成分6〜2重量部を混合することが好ましい。
【0009】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用する成分である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有し、その結合位置は特に限定されない。水素原子以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基;ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基のような脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基が挙げられる。本成分の25℃における粘度は1〜1,000mPa・sである。本成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して3〜50重量部の範囲である。これは、本成分の配合量が3重量部未満であると本発明組成物の硬化が不十分になり、また、50重量部を越えると硬化皮膜の剥離抵抗値が経時的に変化するためである。
【0010】
(C)成分の白金系触媒は、本発明組成物の硬化を促進するための触媒であり、白金黒,白金担持シリカ,白金担持活性炭等の白金および塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,塩化白金酸とオレフィンとの錯体,塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物が例示される。本成分の配合量は触媒量であればよく、好ましくは(A)成分と(B)成分の合計量に対して、白金金属量が1〜1,000ppm となるような量である。
【0011】
本発明組成物は、上記(A)成分〜(C)成分からなるものであるが、これらの成分に加えて、3−メチル−1−ブチン−3−オール,1−エチニル−1−シクロヘキサノール,フェニルブチノール,ベンゾトリアゾール等の硬化遅延剤、微粉末シリカ等の無機質充填剤,顔料,耐熱性添加剤,有機樹脂粉末,染料等の剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物の添加剤として公知とされる成分を添加配合することは、本発明の目的を損わない限り差し支えない。硬化遅延剤の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.01〜2.0重量部が好ましい。本発明組成物の25℃における粘度は、塗工性の面から50〜1,000mPa・sの範囲であることが好ましく、この粘度範囲であれば有機溶剤を使用せずに塗工することができる。
【0012】
本発明組成物は、上記(A)成分〜(C)成分を均一に混合することによって容易に製造することができる。この場合、(A)成分と(B)成分を混合した後、(C)成分、あるいは(C)成分と硬化遅延剤を加えて混合することが好ましい。
【0013】
以上のような本発明組成物は、これを各種紙材,ラミネート紙,合成樹脂フィルム等の各種基材の表面に塗工して硬化させることにより、これらの基材表面に粘着性物質に対する剥離性皮膜を形成し、さらにこの硬化皮膜は、すべり性に優れ、粘着性物質の粘着特性を低下させないという特徴を有する。加えて本発明組成物は実質的に有機溶剤を含有しないため、環境保全、作業環境改善等の観点から好ましいという利点を有する。また、本発明組成物は、上記(A)成分と(B)成分の配合比率を変化させることにより、低速度から高速度における剥離抵抗値をコントロールできるという利点を有する。これらのことから、本発明組成物は特にクラフトテープの剥離剤として有用である。また、剥離ライナ−以外にも剥離性塗料として使用することができる。
【実施例】
【0014】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度の値は、25℃において測定した値である。また、剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物の硬化皮膜の剥離抵抗値、動摩擦係数、シリコ−ン移行性および粘着性物質の残留接着率(%)の測定は下記の方法に従って行った。
○剥離抵抗値
剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を紙の表面に所定量塗工して硬化皮膜を形成させた。この皮膜表面に、アクリル系粘着剤[東洋インキ(株)製,商品名:オリバインBPS5127]を塗布し、これを温度70℃、2分間の条件で加熱乾燥した。次いでこれに貼合わせ紙を貼り合わせ、196.2mN/cm2の荷重をかけて、温度25℃、湿度60%の条件下で24時間放置した。次にテンシロンおよび高速剥離試験機を用いて、0.3m/分,100m/分の各速度において角度180度で貼合わせ紙を引張り、剥離に要した力(mN)を測定した。尚、試料幅はすべて2.5cmとした。
○動摩擦係数
剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を紙の表面に所定量塗工し硬化させて剥離紙を作成した。この剥離紙を高速剥離試験機の試料台の上に剥離面を表にして固定した。また、同様にして作成した剥離紙を5cm×5cm×1cmの試料ホルダーに剥離紙面が外側になるように巻きつけた上で固定して、試料台の上の剥離紙面上に1.962Nの荷重をかけて置いた。高速剥離試験機を用いて、10m/分の速度において試料ホルダーを引張り、このとき要した抵抗(N)を測定した。抵抗値から、次式に従って動摩擦係数を算出した。この値が小さいほどすべり性に優れている。
【化3】

○残留接着率
剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を紙の表面に所定量塗工して硬化皮膜を形成させた。この皮膜表面に、粘着テープ[日東電工(株)製,商品名:ニットーポリエステル粘着テープ31B]を貼合わせ、196.2mN/cm2の荷重をかけて70℃で20時間エージングした。次いで粘着テープをはがしてステンレス板に貼付け、196.2mN/cm2の荷重をかけて25℃で30分間放置した後、角度180度,速度0.3m/分の条件で粘着テープを引張り、剥離に要した力(mN)を測定した。また、ブランク試験として、テフロン(登録商標)シートに上記の粘着テ−プを上記と同様に貼合わせて、この粘着テープの剥離に要した力(mN)を上記と同様に測定した。これらの値から、次式に従って残留接着率(%)を算出した。
【化4】

○シリコーン移行性
剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を紙の表面に所定量塗工し硬化させて剥離紙を作成した。この剥離紙表面に、清浄なポリエステルフィルムを貼合わせ、プレスで981N/cm2の荷重をかけて、25℃で30分間放置した。次いで、ポリエステルフィルムをはがし取り、そのポリエステルフィルムの剥離紙と接触していた面にマジックインキ(登録商標)で線を書き、インキのはじきの程度を測定した。インキのはじきがなければシリコーン移行がないものとし、インキのはじきがあればシリコーン移行があるものとした。
【0015】
[実施例1]
粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位98モル%,メチルビニルシロキサン単位2モル%)20重量部と、粘度60mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン67.2重量部を混合して、粘度250mPa・sのビニル基含有ジオルガノポリシロキサン混合物(ビニル基含有量3.1モル%)を得た。次いでこれに、粘度7,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)3.5重量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン9重量部および1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3重量部を加えて、これらを均一に混合した。さらにこの混合物に、塩化白金酸と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯塩を白金金属量が100ppmとなるような量添加配合して、粘度270mPa・sの剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを150℃で30秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0016】
[比較例1]
実施例1において、粘度7,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)の代わりに、粘度7000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンを配合した以外は実施例1と同様にして、剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0017】
[比較例2]
実施例1において、粘度7,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)の代わりに、粘度7,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位98モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位2モル%)を配合した以外は実施例1と同様にして、剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0018】
[比較例3]
実施例1において、粘度7,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)の代わりに、粘度500mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.5モル%,メチルビニルシロキサン単位0.5モル%)を配合した以外は実施例1と同様にして、剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/ m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0019】
[実施例2]
粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%,メチルビニルシロキサン単位4モル%)83.7重量部に、粘度4,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)7.0重量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン9重量部および1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3重量部を加えて、これらを均一に混合した。次いでこれに、塩化白金酸と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯塩を白金金属量が100ppmとなるような量添加配合して、粘度400mPa・sの剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0020】
[実施例3]
実施例2において、粘度4,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.6モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.4モル%)の代わりに、粘度8,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.8モル%,メチルヘキセニルシロキサン単位0.2モル%)を配合した以外は実施例2と同様にして、粘度500mPa・sの剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0021】
[比較例4]
粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%,メチルビニルシロキサン単位4モル%)90.7重量部に、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン9重量部および1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3重量部を加えて、これらを均一に混合した。次いでこれに、塩化白金酸と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯塩を白金金属量が100ppmとなるような量添加配合して、剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を調製した。
得られた剥離性硬化皮膜形成用シリコ−ン組成物を、ポリエチレンラミネ−ト上質紙の表面に約1.0g/m2となるような量塗布し、次いで、これを130℃で20秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜の剥離抵抗値,動摩擦係数,シリコーン移行性および残留接着率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0022】


























【表1】

【0023】
[発明の効果]
本発明組成物は、上記(A)成分〜(C)成分からなり、特に(A)成分として(A-1)成分と(A-2)成分の混合物を使用しているので、硬化後、剥離性、すべり性に優れた皮膜を形成し、かつ、この剥離性硬化皮膜に粘着した粘着性物質の残留接着率を低下させることがないという特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(A-1)成分99〜90重量部と (A-2)成分1〜10重量部との混合物 100重量部、
(A-1)25℃における粘度が5〜1,000mPa・sであり、分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基含有量が全有機基の0.2〜10.0モル%である直鎖状ジオルガノポリシロキサン
(A-2)25℃における粘度が1,000〜10,000mPa・sであり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖に少なくとも2個のけい素原子に結合したヘキセニル基を有し、ヘキセニル基含有量が全有機基の0.05〜0.5モル%である直鎖状ジオルガノポリシロキサン
(B)25℃における粘度が1〜1,000mPa・sであり、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 3〜50重量部、
および
(C)白金系触媒 触媒量
からなり、実質的に有機溶剤を含有しないことを特徴とする剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物を硬化させてなる剥離性の硬化皮膜を表面に形成した基材。

【公開番号】特開2012−56316(P2012−56316A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218901(P2011−218901)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2000−400618(P2000−400618)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】