副甲状腺ホルモンを低減する治療剤
副甲状腺ホルモンレベルを低減させる活性を有する化合物が記載されている。一実施形態では、化合物は、サブユニットの連続した配列X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7で構成され、X1サブユニットはチオール含有部分を含み、X2〜X7サブユニットの電荷の分布により所望の活性がもたらされる。副甲状腺機能亢進症、骨疾患および/または高カルシウム血障害を治療する化合物を使用する方法も記載されており、具体的には、血漿PTHおよび血清カルシウムを低減させる方法が提供される。化合物は、例えば:原発性、二次性もしくは三次性の副甲状腺機能亢進症;悪性腫瘍の高カルシウム血症;転移性の骨疾患;または骨粗鬆症を有する被験体を治療するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/229,695号、2009年10月28日に出願された米国仮特許出願第61/255,816号、および2010年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/313,635号の利益を主張する。これらの出願の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(配列表、表、またはコンピュータプログラムへの言及)
配列表は、「632008017WO00seqlist.txt」 (85,400バイト)という名前で、2010年7月29日に作製され、テキストファイルの形でEFSにより電子的に提出されている。その内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
本主題は、副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを減少させる活性を持つ化合物、その化合物を含む薬学的組成物、および、これらに限定されないが、高カルシウム血症もしくは副甲状腺機能亢進症を治療すること、またはin vivoでPTHレベルを調節することを含めた治療方法におけるそのような化合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
カルシウムの恒常性は、それによって体が適切なカルシウムレベルを維持する機構である。このプロセスは高度に制御されていて、カルシウムの骨における吸収、輸送、貯蔵、他の組織における沈着、および排出の間の複雑な相互作用に関与する。PTHは、循環しているカルシウムレベルの制御因子であり、骨吸収のプロセスを通じて骨からのカルシウムの放出を増強すること;尿細管からのカルシウムの再吸収を増加させること;および、ビタミンDの活性型である1,25−(OH)2ビタミンDの産生を増加させることによって腸におけるカルシウムの吸収を増強することによって、血液中のカルシウムの濃度を増加させるように機能する。PTHは、リンの腎臓からの排出も刺激し、骨からの放出を増加させる。
【0005】
PTHの分泌は、副甲状腺細胞の表面上のいくつかの細胞型によって発現され、細胞外のカルシウムイオン(Ca2+)の濃度のわずかな変動を検出し、PTHの分泌を変化させることによって応答するGタンパク質共役受容体である、カルシウム感知受容体(CaSR)によって制御される。Ca2+によってCaSRが活性化されることにより、数秒から数分に、小胞輸送が阻害されることによってPTHの分泌が阻害され、このプロセスは、受容体のプロテインキナーゼC(PKC)リン酸化によって調節され得る。CaSRは、骨芽細胞および腎臓においても発現され、そこで腎臓のCa2+排出を制御する。
【0006】
さらに、PTHは、リンの恒常性を制御する。PTHは、GI管の細胞の頂端膜(刷子縁膜)および側底膜の両方における副甲状腺ホルモン受容体1(PTHR1)を刺激する。PTHR1が刺激されることにより、刷子縁膜上の腎臓Na+/ホスフェート(NaPi−IIa)共輸送体の内部移行による減少の結果としてホスフェート(Pi)の尿中排出が増加する。
【0007】
PTHは、骨における骨芽細胞および破骨細胞の制御にも関与する。PTHは、骨吸収および腎臓におけるカルシウムの再吸収を増加させることによって、循環しているCa2+を増加させる。PTHにより骨芽細胞が刺激されてRANKリガンド(RANKL)が産生し、それがRANK受容体に結合し、破骨細胞が活性化され、骨吸収の増加および血清Ca2+の増加につながる。オステオプロテゲリン(OPG)は、RANKLに対するおとり受容体であり、骨吸収を遮断する。骨粗鬆症は、破骨細胞による骨吸収および骨芽細胞による骨形成のプロセス間の不均衡によって引き起こされる。
【0008】
ヒトの体は、およそ1kgのカルシウムを含有し、その99%が骨に存在する。正常状態下で、循環しているカルシウムイオン(Ca2+)は、約9〜10mg/dL(すなわち、2.25〜2.5mmol/L;約600mg)のレベルにしっかりと維持されている。およそ1gの、元素のカルシウム(Ca2+)が毎日経口摂取されている。この量のうち、およそ1日当たり200mgが吸収され、1日当たり800mgが排出される。さらに、およそ1日当たり500mgが骨吸収によって放出される、または骨中に沈着する。1日当たり約10gのCa2+が腎臓を通して濾過され、その約200mgが尿中に現れ、残りは再吸収される。
【0009】
高カルシウム血症は、血液中のカルシウムレベルの上昇である。急性高カルシウム血症は、胃腸の症状(食欲不振、悪心、嘔吐);腎臓の症状(多尿症、多飲多渇症)、神経筋の症状(うつ病、錯乱、昏迷、昏睡)および心臓の症状(徐脈、第1度房室の)を招く可能性がある。慢性高カルシウム血症は、胃腸の症状(消化不良、便秘、膵炎);腎臓の症状(腎結石症、腎石灰症)、神経筋の症状(衰弱)および心臓の症状(高血圧ブロック(hypertension block)、ジギタリス感受性)も伴う。心臓のリズムの異常が、結果として生じ得、QT間隔短縮およびT波拡大というEKG所見により、高カルシウム血症が示唆される。高カルシウム血症は無症候性であり得、症状は一般的には高カルシウムレベル(12.0mg/dLまたは3mmol/l)で起こる。重篤な高カルシウム血症(15〜16mg/dLまたは3.75〜4mmol/lを超える)は、医学的救急とみなされる:これらのレベルにおいて、昏睡および心停止が、結果として生じ得る。
【0010】
高カルシウム血症は、副甲状腺機能亢進症によって頻繁に引き起こされ、過剰な骨吸収および血清カルシウムレベルの上昇につながる。原発性孤発性副甲状腺機能亢進症(primary sporadic hyperparathyroidism)では、単独の副甲状腺腫によってPTHが過剰産生される;一般的ではないが、多発性腺腫またはびまん性副甲状腺過形成も原因であり得る。PTHの分泌が増加することは、Ca2+およびホスフェート(Pi)の放出を伴う骨吸収の正味の増加につながる。また、PTHは腎臓におけるCa2+の再吸収を増強し、ホスフェート(Pi)の再吸収を阻害し、その結果、血清カルシウムが正味増加し、ホスフェートが減少する。
【0011】
二次性副甲状腺機能亢進症は、Ca2+レベルの循環レベルが減少することによってPTHの分泌が刺激されると起こる。二次性副甲状腺機能亢進症の1つの原因は、多嚢胞性腎疾患または慢性腎盂腎炎における慢性腎不全などの慢性腎不全(慢性腎疾患またはCKDとも称される)、または血液透析患者における慢性腎不全などの慢性腎不全(末期腎疾患またはESRDとも称される)である。不十分なカルシウム摂取、GI障害、腎不全、ビタミンD欠乏症、および腎性高カルシウム尿症から生じる低カルシウム血症に応答して過剰なPTHが産生され得る。三次性副甲状腺機能亢進症は、長期にわたる二次性副甲状腺機能亢進症および高カルシウム血症の後に起こり得る。
【0012】
悪性腫瘍は非PTH媒介性高カルシウム血症の一般的な原因である。悪性腫瘍の高カルシウム血症は、珍しいが重篤な癌の合併症であり、癌患者の10%〜20%に影響を及ぼしており、充実性腫瘍および白血病のどちらとも一緒に起こり得る。この状態は突然発症し、極めて不良な予後を有し、生存期間中央値はたった6週間である。増殖因子(GF)は、腫瘍細胞における副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の産生を制御する。腫瘍細胞が自己分泌GFによって刺激されてPTHrPの産生が増加し、それが骨吸収の増強につながる可能性がある。骨転移性の腫瘍細胞もPTHrPを分泌する可能性があり、それにより骨が再吸収され得、追加的なGFが放出され、それが今度はパラ分泌的に作用してPTHrP産生をさらに増強する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、例えば、in vivoでPTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを調節する活性を持つ化合物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、式
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
を含む化合物が提供され、式中、X1はチオール含有基を含むサブユニットであり;X5はカチオン性サブユニットであり;X6は非カチオン性サブユニットであり;X7はカチオン性サブユニットであり;X2、X3およびX4のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つは、それぞれ独立して、カチオン性サブユニットであり;化合物は、副甲状腺ホルモン濃度を減少させる活性を有する。一実施形態では、副甲状腺ホルモン濃度の低下は、処置前の被験体における血液中または血漿中の副甲状腺ホルモン濃度と比較した、化合物で処置した被験体における血液中または血漿中の副甲状腺ホルモン濃度の低下である。別の実施形態では、副甲状腺ホルモン濃度の低下は、ヒスタミン応答なく実現される。
【0015】
別の実施形態では、X3およびX4は、非カチオン性であり、一方X1、X5、X6およびX7はカチオン性である。
【0016】
一実施形態では、X1サブユニットはチオール含有アミノ酸残基である。別の実施形態では、X1サブユニットのチオール基は有機チオール含有部分である。
【0017】
別の実施形態では、X1サブユニットがチオール含有アミノ酸残基である場合、それはL−システイン、D−システイン、グルタチオン、n−アセチル化システイン、ホモシステインおよびペグ化システインからなる群から選択される。
【0018】
さらに別の実施形態では、有機チオール含有部分は、チオールアルキル部分またはチオアシル部分、例えば3−メルカプトプロピルまたは3−メルカプトプロピオニルなど、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオベンジル、またはチオプロピルから選択される。さらに別の実施形態では、有機チオール含有部分はメルカプトプロピオン酸である。
【0019】
さらに別の実施形態では、X1サブユニットはアセチル基、ベンゾイル基、ブチル基、またはアセチル化されたベータアラニンなどの別のアミノ酸を含むように化学的に修飾されている。
【0020】
さらに別の実施形態では、X1サブユニットはチオール部分を含み、X1サブユニットは第2のチオール部分に共有結合によってつながっている。
【0021】
別の実施形態では、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7はアミノ酸残基の連続した配列(本明細書では(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)、配列番号1と称される)または有機化合物サブユニット(非アミノ酸残基)の配列で構成される。
【0022】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、L−アミノ酸残基の連続した配列、D−アミノ酸残基の連続した配列、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の混合物の連続した配列、またはアミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の混合物である。
【0023】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、細胞膜を通る輸送を促進するための化合物に連結されている。別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、組織の1つ以上の層の内部への、またはそれを通る配列の送達を増強する化合物に連結されている。
【0024】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、長さが8〜50アミノ酸残基、8〜40アミノ酸残基、8〜30アミノ酸残基または8〜20アミノ酸残基のアミノ酸残基の配列内に含有される。さらに別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、長さが8〜19アミノ酸残基、8〜18アミノ酸残基、8〜17アミノ酸残基、8〜16アミノ酸残基、8〜15アミノ酸残基、8〜14アミノ酸残基、8〜13アミノ酸残基、8〜12アミノ酸残基、8〜11アミノ酸残基、8〜10アミノ酸残基、または8〜9アミノ酸残基のアミノ酸残基の配列内に含有される。
【0025】
別の実施形態では、X3サブユニットはカチオン性アミノ酸残基である。
【0026】
別の実施形態では、X2サブユニットは非カチオン性アミノ酸残基であり、別の実施形態では、X4サブユニットは非カチオン性アミノ酸残基である。一実施形態では、非カチオン性アミノ酸残基はD−アミノ酸である。
【0027】
別の実施形態では、X3およびX4はカチオン性D−アミノ酸残基である。
【0028】
別の実施形態では、X5サブユニットはD−アミノ酸残基である。
【0029】
別の態様では、任意の当該記載の化合物における連続した配列は、X1サブユニット内のチオール含有基を介して、第2の連続した配列に共有結合で結合している。例えば、第2の連続した配列は、連続した配列と同一であってよい(二量体が形成される)、または、連続した配列が細胞膜を通って移動するのを促進する部分に結合している場合にそうであるように、非同一であってよい。
【0030】
別の態様では、ペプチドcarrrar(配列番号2)で構成されるコンジュゲートが提供され、ここでペプチドはそのN末端残基においてCys残基とコンジュゲートしている。
【0031】
一実施形態では、ペプチドは、N末端、C末端、またはその両方において化学的に修飾されている。
【0032】
別の実施形態では、ペプチドのN末端はアセチル化によって化学的に修飾されており、C末端はアミド化によって化学的に修飾されている。
【0033】
別の実施形態では、コンジュゲートはAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。
【0034】
別の態様では、本明細書に記載の化合物を被験体に提供する、被験体における二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を治療する方法が企図される。種々の実施形態では、被験体は慢性腎疾患または他の状態に罹患した被験体であってよい。
【0035】
別の態様では、本明細書に記載の化合物を被験体に提供する、被験体における副甲状腺ホルモンを減少させる方法が企図される。
【0036】
別の態様では、本明細書に記載の化合物のいずれかに一致する化合物を、第2の作用剤と組み合わせて提供することを含む治療レジメンが提供される。
【0037】
一実施形態では、第2の治療剤は、ビタミンD、ビタミンD類似体またはシナカルセト塩酸塩である。
【0038】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、配列の任意の1つ以上が特許請求の範囲から個々に除外または除去されることが企図される。ある特定の実施形態では、配列番号162〜182の任意の1つ以上で識別されるペプチドが、個々に、または任意の組み合わせで、特許請求された化合物、組成物および方法から排除される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)において、ラットにAc−crrrr−NH2(配列番号4、ひし形)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5、黒四角)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、三角形)、Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)、または生理食塩水の対照(×記号)を投薬したときの、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図2A】図2Aは、ヒトCaSRを安定なトランスフェクトされたHEK−293細胞系として発現させたときのin vitro細胞アッセイにおいてヒトCaSRを活性化する化合物の能力の尺度としての、nMを単位とした、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、四角)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29、三角形)の化合物濃度に応じたIP1濃度のグラフである。
【図2B】図2Bは、配列番号26で識別されるペプチド(Ac−carrrar−NH2)(四角)および配列番号29で識別されるペプチド(Ac−arrrar−NH2)(ひし形)をin vivo投与すると、PTH濃度が低下したことを示す図である。ペプチドを正常なスプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラットに、配列番号29については9mg/kg、および配列番号26については0.5mg/kgの用量で、IVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した(破線)。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。結果は、群の平均±標準偏差(SD)として示され、PTHはベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。
【図3】図3は、正常なスプラーグドーリーラットにおいて、さまざまな化合物をIVボーラス投与した後のヒスタミンの放出を比較した棒グラフである。化合物Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)を等モルのIVボーラス用量2.1μmol/kgで投薬し、投薬する前(投薬前)、投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。
【図4】図4は、正常なスプラーグドーリーラットに2つの化合物をIVボーラス投与した後のヒスタミンの放出を比較した棒グラフである。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、網掛けされた棒)およびAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、白抜きの棒)を3mg/kgで投薬し、投薬する前(ゼロ時間)および投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。
【図5】図5は、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、ひし形)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8、四角)、Ac−crarrrr−NH2(配列番号9、三角形)、Ac−crrarrr−NH2(配列番号10、×記号)、Ac−crrrarr−NH2(配列番号11、*記号)、Ac−crrrrar−NH2(配列番号12、丸)またはAc−crrrrra−NH2(配列番号13、+記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した正常なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図6A】図6Aは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、黒四角)、Ac−craarrr−NH2(配列番号24、×記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した健康なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図6B】図6Bは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、黒四角)、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、ひし形)、Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28、×記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した健康なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図7】図7は、正常なスプラーグドーリーラットに1mg/kg(ひし形)、0.5mg/kg(四角)、0.3mg/kg(三角形)、および0.1mg/kg(×記号)の用量でIVボーラスとして投与した化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)についての、時間に応じた血液中の副甲状腺ホルモンレベルの減少を示す図である。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラス(丸)を対照として使用した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。
【図8】図8は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)、急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。ラットに、3mg/kg(ひし形)、1mg/kg(三角形)、0.5mg/kg(四角)および0.3mg/kg(×記号)の用量の化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)または生理食塩水(四角)をIVボーラスによって投与した;図8中の破線は投薬前のベースラインPTHレベルを示している。
【図9】図9は、生理食塩水(×記号)、または化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、白抜きのひし形)、およびAc−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きの四角)を1mg/kgで30分間のIV注入によって静脈内投薬したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。投薬する前、投薬の16時間後および24時間後に血漿PTHレベルを評価した。
【図10】図10は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)における、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。ラットに、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、四角、*記号)およびAc−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号146、三角形、ひし形)を、0.3mg/kg(四角、三角形)および0.5mg/kg(*、ひし形)の用量でIVボーラスによって投与した。
【図11】図11は、マイクロポアによって促進した経皮送達によってAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、2匹の動物、四角および三角形)で、または経皮送達によって生理食塩水(ひし形)で処置したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図12】図12は、マイクロポアによって促進した経皮送達によってAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図13】図13は、正常なスプラーグドーリーラットにおける、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間IV注入している間、およびその後の平均PTH(ベースラインに対するパーセントとして)のグラフである。化合物を1μg/kg/時間(四角)、3μg/kg/時間(丸)、および10μg/kg/時間(三角形)の速度で注入した。
【図14A】図14Aは、急性腎不全の1K1Cラットモデルにおける、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間IV注入している間、およびその後のPTH(ベースラインに対するパーセントとして)を示す図である。ラットに、30μg/kg/時間(ひし形)および100μg/kg/時間(四角)の投薬速度で静脈内注入した。
【図14B】図14Bは、図14Aの通りに処置した1K1Cモデルのラットについての、血清カルシウムをmg/dLの単位で示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本主題は、本明細書に含まれる好ましい実施形態および実施例の以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【0041】
I.定義
本出願の範囲内では、別段の指定のない限り、本出願の用語の定義および技法の実例は、いくつかの周知の参考文献、例えば:Sambrook、J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);Goeddel、D.編、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、CA(1991年);「Guide to Protein Purification」Deutshcer、M.P.編、Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1989年);Innisら、PCR Protocols:A guide to Methods and Applications、Academic Press、San Diego、CA(1990年);Freshney、R.I.、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第2版、Alan Liss、Inc. New York、NY(1987年);Murray、E.J.編、Gene Transfer and Expression Protocols、109〜128頁、The Humana Press Inc.、Clifton、NJおよびLewin、B.、Genes VI、Oxford University Press、New York(1997年)などのいずれかにおいて見ることができる。
【0042】
本明細書で使用される単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、別段の指定のない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「a(1つの)」モジュレーターペプチドは、1つ以上のモジュレーターペプチドを包含する。
【0043】
本明細書で使用される化合物は、化合物を被験体に投与すると、血漿副甲状腺ホルモン(PTH)が、化合物を投与する前の血漿PTH濃度と比較して低減する場合に、「副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性」または「PTHを低減させる活性」を有する。一実施形態では、PTHレベルの減少は、化合物を投与した1時間後に、化合物を投与する前のPTHレベルよりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%低いことである。
【0044】
本明細書で使用される、「ヒスタミン応答がないこと」または「ヒスタミン応答の欠如」は、本明細書に記載のアッセイにおいてin vitroで測定したところ、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、または3倍未満のヒスタミンの増加をもたらす化合物の用量を意味する。倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベルおよび化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。
【0045】
本明細書で使用される、「アミノ酸」は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を指す。20種の天然に存在するアミノ酸(L−異性体)は接頭辞「L−」を持つ(アキラルであるグリシン以外)3文字コード、また大文字の1文字コードで示される:アラニン(「L−Ala」または「A」)、アルギニン(「L−Arg」または「R」)、アスパラギン(「L−Asn」または「N」)、アスパラギン酸(「L−Asp」または「D」)、システイン(「L−Cys」または「C」)、グルタミン(「L−Gln」または「Q」)、グルタミン酸(「L−Glu」または「E」)、グリシン(「Gly」または「G」)、ヒスチジン(「L−His」または「H」)、イソロイシン(「L−Ile」または「I」)、ロイシン(「L−Leu」または「L」)、リジン(「L−Lys」または「K」)、メチオニン(「L−Met」または「M」)、フェニルアラニン(「L−Phe」または「F」)、プロリン(「L−Pro」または「P」)、セリン(「L−Ser」または「S」)、トレオニン(「L−Thr」または「T」)、トリプトファン(「L−Trp」または「W」)、チロシン(「L−Tyr」または「Y」)およびバリン(「L−Val」または「V」)。L−ノルロイシンおよびL−ノルバリンは、それぞれ(NLeu)および(NVal)と表すことができる。キラルである19種の天然に存在するアミノ酸は、接頭辞「D−」を持つ3文字コードまたは小文字の1文字コードで示される対応するD−異性体を有する:アラニン(「D−Ala」または「a」)、アルギニン(「D−Arg」または「r」)、アスパラギン(「D−Asn」または「a」)、アスパラギン酸(「D−Asp」または「d」)、システイン(「D−Cys」または「c」)、グルタミン(「D−Gln」または「q」)、グルタミン酸(「D−Glu」または「e」)、ヒスチジン(「D−His」または「h」)、イソロイシン(「D−Ile」または「i」)、ロイシン(「D−Leu」または「l」)、リジン(「D−Lys」または「k」)、メチオニン(「D−Met」または「m」)、フェニルアラニン(「D−Phe」または「f」)、プロリン(「D−Pro」または「p」)、セリン(「D−Ser」または「s」)、トレオニン(「D−Thr」または「t」)、トリプトファン(「D−Trp」または「w」)、チロシン(「D−Tyr」または「y」)およびバリン(「D−Val」または「v」)。D−ノルロイシンおよびD−ノルバリンは、それぞれ(dNLeu)および(dNVal)と表すことができる。「アミノ酸残基」は、多くの場合、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の単量体サブユニットに関して使用され、「アミノ酸」は、多くの場合、遊離分子に関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は互換的に使用され、文脈に応じてペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の遊離分子または単量体サブユニットを指す場合がある。
【0046】
2つのアミノ酸配列のパーセント「相同性」またはパーセント「同一性」を決定するために、最適に比較する目的で配列を位置合わせする(例えば、一方のポリペプチドの配列に、他方のポリペプチドと最適に位置合わせするためのギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位のアミノ酸残基を比較する。一方の配列における位置を、他方の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基が占める場合に、それらの分子はその位置において同一である。本明細書で使用されるアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」に相当する。したがって、2つの配列間のパーセント配列同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、パーセント配列同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)。2つのポリペプチド配列間のパーセント配列同一性は、Vector NTI ソフトウェアパッケージ(Invitrogen Corporation、5791 Van Allen Way、Carlsbad、CA 92008)を使用して決定することができる。ギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を、2つのポリペプチドのパーセント同一性を決定するために使用する。他のパラメータは全て初期設定に設定する。
【0047】
「カチオン性アミノ酸」は、例えば側鎖、または「R基」が、生理的なpHでプロトンを受け取って正に荷電し得るアミン官能基または他の官能基、例えばグアニジン部分またはイミダゾール部分などを含有するアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を意味する。カチオン性アミノ酸残基としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン、およびホモアルギニンが挙げられる。
【0048】
「カチオン性サブユニット」は、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するサブユニットを意味する。
【0049】
本明細書で使用される、「保存されたアミノ酸置換」は、選択されたポリペプチドまたはタンパク質の活性または三次構造物に顕著な変化をもたらさない置換である。そのような置換は、一般には、選択されたアミノ酸残基を同様の物理化学的性質を有する異なるアミノ酸残基と交換することを含む。アミノ酸およびアミノ酸残基を物理化学的性質によってグループ化することは、当業者に公知である。例えば、天然に存在するアミノ酸の中で、同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されており、それらとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される、「化学的架橋」は、2つ以上の分子の共有結合を指す。
【0051】
ペプチドまたはペプチド断片は、それが少なくとも1つの、親ペプチドまたは親ポリペプチドの5つのアミノ酸残基、より好ましくは8つのアミノ酸残基の連続した配列と同一または相同であるアミノ酸配列を有する場合に、親ペプチドまたは親ポリペプチドに「由来する」。
【0052】
本明細書で使用される、「副甲状腺機能亢進症」という用語は、別段の指定のない限り、原発性の、二次性の、および三次性の副甲状腺機能亢進症を指す。
【0053】
「皮内の」という用語は、本明細書に記載の治療方法では、治療有効量のカルシウム模倣化合物を皮膚に塗布して化合物を角質層の下の皮膚の層に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
【0054】
本明細書で使用される、「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、組換えDNA技法によって産生された場合は、細胞材料の一部を、または、化学的に合成された場合は、化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、それが天然に生じた、または組換えによって産生された細胞の細胞構成成分の一部から分離されているポリペプチド調製物を包含する。ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が組換えによって産生される場合、培地を実質的に含まない、すなわち、培地が、ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満に相当することも好ましい。「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、ポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されているポリペプチド調製物を包含する。一実施形態では、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、約30%未満の(乾燥重量で)化学的前駆体または他の化学物質、好ましくは約20%未満の化学的前駆体または他の化学物質、より好ましくは約15%未満の化学的前駆体または他の化学物質、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆体または他の化学物質、および最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または他の化学物質を有するポリペプチド調製物を包含する。好ましい実施形態において、単離されたポリペプチド、またはその生物学的に活性な部分は、ドメインポリペプチドを得たのと同じ生物体由来の汚染ポリペプチドを欠いている。
【0055】
本明細書で使用される「高分子」は、一般には約900ダルトンを超える分子量を有するペプチド、ポリペプチド、タンパク質または核酸などの分子を指す。
【0056】
「非カチオン性アミノ酸」は、例えば、側鎖、または「R基」が中性(中性極性および中性非極性)のアミノ酸残基および酸性のアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で電荷を有さない、または正味の負電荷を有するアミノ酸残基を意味する。非カチオン性アミノ酸としては、炭化水素アルキル部分または芳香族部分であるR基を持つ残基(例えば、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン);中性の、極性R基を持つ残基(アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン);または中性の、非極性R基を持つ残基(グリシン、メチオニン、プロリン、バリン、イソロイシン)が挙げられる。酸性のR基を持つ非カチオン性アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0057】
「ポリマー」は、共有結合によってつながった、2つ以上の同一のサブユニットまたは同一でないサブユニットの直鎖を指す。
【0058】
本明細書で使用される、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、そのサイズにかかわらず、ペプチド結合によって連結したアミノ酸残基の鎖でできている任意のポリマーを指す。「タンパク質」は、多くの場合、比較的大きなポリペプチドに関して使用され、および「ペプチド」は、多くの場合、小さなポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。したがって、簡単にするために、「ペプチド」という用語を本明細書で使用するが、ある場合には、当技術分野では同じポリマーを「ポリペプチド」と称することもある。別段の指定のない限り、ペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の順に示されている。
【0059】
本明細書で使用される「チオール含有基」または「チオール含有部分」は、硫黄−水素結合(−SH)を含み、生理的条件下で別のチオールと反応してジスルフィド結合を形成することができる官能基を意味する。別のチオールとジスルフィド結合を形成することができるチオールは、本明細書では「反応性チオール」と称される。好ましい実施形態では、チオール含有基は化合物の主鎖から6原子未満離れている。より好ましい実施形態では、チオール含有基は構造物(−SH−CH2−CH2−C(O)−O−)−を有する。
【0060】
本明細書で使用される、「低分子」は、有機分子などの高分子以外の分子を指し、一般には1000ダルトン未満の分子量を有する。
【0061】
本明細書で使用される、「被験体」は、ヒト被験体または動物被験体を指す。
【0062】
「サブユニット」は、2つ以上の他の単量体単位につながってポリマー化合物を形成している単量体単位を意味し、サブユニットはポリマー化合物の要素の最も短い繰り返しパターンである。例示的なサブユニットはアミノ酸であり、それが連結すると、ポリマー化合物、例えば当技術分野でペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と称されるポリマー化合物が形成される。
【0063】
本明細書で使用される、「治療有効量」は、所望の治療効果をもたらすために必要な量である。例えば、高カルシウム血症の被験体において血清カルシウムを低下させるための方法では、治療有効量は、血清カルシウムレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。カルシウムは総カルシウムまたはカルシウムイオンとして測定することができる。別の例として、in vivoにおけるPTHを低減させるための方法では、治療有効量は、PTHレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。
【0064】
本明細書で使用される、「経皮的な」という用語は、本明細書に記載の治療方法では、治療有効量のカルシウム模倣剤を皮膚に塗布して化合物を体循環に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
【0065】
別段の指定がない限り、本明細書で言及される全ての文書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
II.化合物
一態様では、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7のサブユニットの配列を含む化合物が提供され、X1はチオール基を含むサブユニットであり;X5はカチオン性サブユニットであり;X6は非カチオン性サブユニットであり;X7はカチオン性サブユニットであり;X2、X3およびX4のうちの少なくとも2つは、独立して、カチオン性サブユニットである。化合物は、被験体の血液中の副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを減少させる活性および/またはカルシウムレベルを減少させる活性を有する。副甲状腺ホルモンレベルの減少は、下に例示する通り、被験体における血漿中PTH濃度または血中PTH濃度が、化合物で処置する前の血漿中PTH濃度または血中PTH濃度と比較して低減することを意味する。一実施形態では、化合物により、投薬後1時間以内に、投薬する前の血漿PTHと比較して少なくとも50%の血漿PTH濃度の低下が実現される。化合物は、ペプチドによって例証されるが、当業者は、本明細書に記載の構造と活性の関連性についての試験に基づいて所望の活性を有する非ペプチド性化合物を設計することができることを理解されたい。
【0067】
本明細書で使用される副甲状腺ホルモンまたはPTHは、副甲状腺によって産生される84アミノ酸のペプチドおよびその分解生成物である。全長PTH(残基1〜84からなり、時には「インタクト」なPTHまたは「生物活性」PTHと称される)に加えて、タンパク質分解および他の代謝経路によって生成したさまざまなPTH断片が血液中に存在する。インタクトなPTH分子のアミノ末端の1〜34領域は生物学的に活性である。分子のこの領域は、PTHが標的組織の副甲状腺ホルモン受容体に結合することを可能にするアミノ酸配列を含有する。インタクトなPTH分子の中間およびカルボキシ末端の35〜84領域は、生物学的に不活性であるが、免疫学的反応性を保有すると考えられている。PTH7〜84は、1〜84PTHの効果と反対の効果を発揮すると考えられている。さまざまな分解生成物を含めたPTHのレベルを測定するために、さまざまなアッセイが開発されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれるSouberbielleら、Kidney International、77巻:93〜100頁(2010年)によって概説されている。一実施形態では、本明細書で定義されるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物は、インタクトな生物活性型のPTH(1〜84)を検出する検証されたPTH定量化方法および当技術分野で公知である市販のキットを使用して確認される(例えば、本明細書の実施例3を参照されたい)。
【0068】
最初の試験では、4〜7個のカチオン性(例えばアルギニン)サブユニットを含有する化合物を生成し、ベースラインのPTH値および生理食塩水で処置した動物と比較してPTHを低減させるそれらの能力について試験した。詳細には、急性腎不全の1K1Cモデルを、腎機能障害環境においてPTHを低減させる活性を特徴づけることに使用するために確立した。1K1Cモデルは実施例1Aに記載されており、試験のために合成された化合物としては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、(iv)Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)および(v)生理食塩水の対照を含めた。
【0069】
実施例1Bに記載の通り、配列番号4、配列番号5、配列番号6および配列番号7として識別される化合物を、それぞれ30分間IV注入することによって1K1Cモデル動物に投与した。図1は、血漿PTHレベルの低下を投薬前の(ベースライン)レベルに対するパーセントとして示している。3mg/kgで投薬した4つの化合物の全てにより、血漿PTHの有意な降下がもたらされたが、PTH低下についての効力および持続時間における差異により、正味の正電荷とPTHを低減させる活性の間の関連性が示唆される。例えば、6つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを持つ化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6;三角形)では、それぞれ4つのカチオン性(アルギニン)サブユニットおよび5つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを含有する化合物Ac−crrrr−NH2(配列番号4;ひし形)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5;四角)と比較して、有効性ならびに作用の持続時間が増加した。驚いたことに、6つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを持つ化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6;三角形)では、7つのカチオン性(アルギニン)残基を持つ化合物Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)と比較して作用の持続時間が増加し、これは化合物の活性または効力がただ単に化合物のカチオン性電荷の増加に相関するのではないことが示唆されている。すなわち、7つのカチオン性サブユニット(アルギニン残基)を持つ化合物Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)により、それよりもカチオン性残基が少ない化合物と同様のPTHの最初の降下がもたらされたが、投薬後24時間を超えるとAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5)よりも有効でなかった。これらの後者2つの化合物により、24時間の時点で、それぞれ約40%および60%の平均のPTH低下がもたらされた。PTHの低下の程度およびPTHの持続時間はどちらも、治療を必要とする患者のための最適な治療的な利益を得るための重要な判断基準である。本試験における化合物は同じmg/kg用量で投与されたが、分子量が異なるので、実際に投薬された各化合物のモル数は異なることに留意するべきである。したがって、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)は、モル当たりベースでAc−crrrr−NH2(配列番号4)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5)よりも有意に強力であった。
【0070】
さらなる試験を行って化合物の構造と活性の関連性を探究した。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、サブユニットのX2位〜X7位のそれぞれにおいてアルギニン残基をアラニン残基と逐次的に交換することによって修飾した。化合物を、ヒトカルシウム感知受容体を発現するHEK293細胞を使用して例示的な化合物の活性を測定した、実施例2に記載のin vitroでのヒトカルシウム感知受容体(CaSR)アッセイにおいて特徴づけた。理論に束縛されることを望むものではないが、当該記載の化合物によってin vivoでPTHが低減する機構は、副甲状腺において発現され、PTHの分泌を制御するCaSRの活性化によると考えられる。CaSRの活性化は、細胞内のカルシウムおよびイノシトール−3−リン酸(IP3)の増加およびその後の イノシトール−1−リン酸(IP1)の蓄積につながる。したがって、このin vitroアッセイでは、IP1の生成を50%低下させるための化合物の最大半量の有効濃度を決定した(EC50)。同じ化合物を、それらのPTHを低減させる活性を決定するためにも、実施例3に記載の通りin vivoで試験した。表1に結果が示されている。表1の「生理食塩水の対照に対する%PTH AUC(1〜4時間)」という表題がついた列の数字は、生理食塩水で処置した対照ラットに由来するPTH AUCに対するパーセントとしての、4時間にわたるPTHの曲線下面積(AUC)における低下として活性を定義している。例えば、AUC(処置された化合物)/AUC(生理食塩水の対照)×100が0と等しいと、イソフルラン(IF)で麻酔した正常なラットに単回IV投与した後4時間にわたってPTHを完全に抑制する(検出不可能なレベルまで)高度に活性なPTH低減性化合物を示すことになる。対照的に、AUC(処置された化合物)/AUC(生理食塩水の対照)×100の値が100以上であれば、不活性な化合物を示すことになる。
【0071】
【表1】
*太字のフォントは、カチオン性アミノ酸(配列番号6のD−アルギニン)のD−アラニン置換を示す。
**イソフルラン(isofluorane)で麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0072】
表1において、正常なラットにおける単回のIV投与後にin vivoで測定したところ、パーセントPTHが検出限界を下回るまで、または本質的にゼロにまで減少したことによって証明されるように、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8)およびAc−crrarrr−NH2(配列番号10)が、かなり強力であった。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の2位、3位、4位または7位におけるカチオン性(アルギニン)残基を置換することにより、in vitroでの効力がおよそ2分の1損失した。化合物Ac−crrrarr−NH2(配列番号11)を生じる5位における置換により、in vitroでの効力が5分の1〜10分の1低下したが、in vivoでのパーセントPTH AUCの45%の低下は、臨床療法のために十分に活性であり得る。驚いたことに、6位においてカチオン性アルギニン残基を無電荷の(アラニン)残基に置換することにより、実際に効力が改善された。データにより、異なる位置におけるカチオン性残基および無電荷の残基は、全てが同等なのではなく、化合物の構造が変化した結果として活性に変化があることが例示されている。
【0073】
化合物の構造の変化に応じた活性の変化の影響をさらに評価するために、2つのカチオン性(アルギニン)残基を無電荷の(アラニン)残基と交換した、2重のアミノ酸置換を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の別の系列の類似体を生成し、効力について試験した。表2にデータが示されている。化合物のこの系列は配列番号4(4つのカチオン性残基)と同じ正味のカチオン性電荷を有するにもかかわらず、驚いたことに、一部は生理食塩水の対照に対する%PTH AUCが非常に低く非常に活性であるが(配列番号26)、他は不活性である(例えば、配列番号14)ことは注目に値する。予想外に、このことは、電荷の位置ならびに総カチオン性電荷もPTHの低下に対する化合物の効力に影響を及ぼし得ることを示唆している。表2に示されているデータは表1に示されているデータと一致し、このことは、PTHを低減させる活性のために、配列番号6のカチオン性残基は5位および7位には不可欠であるが、6位には必要ないことを示唆している。
【0074】
【表2】
*太字のフォントは、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)におけるそれぞれのカチオン性アミノ酸(D−アルギニン)のD−アラニン置換を示す。
**イソフルラン(isofluorine)で麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0075】
表2のデータは、活性に影響を及ぼす構造的な変化を例示している。一実施形態では、化合物はAc−caarrrr−NH2(配列番号22)であり、別の実施形態では、化合物はAc−craarrr−NH2(配列番号24)である。
【0076】
さらなる構造と活性の関連性についての試験を、実施例4に記載の通り、ヒトカルシウム感知受容体を発現するHEK293細胞におけるin vitro細胞アッセイを使用して行った。ペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)の、ヒトCaSRを活性化する能力を、IP3の産生を反映するイノシトールモノホスフェート(IP1)の蓄積を測定することによって確認した。IP3の産生は、重要な細胞シグナル伝達の二次メッセンジャーであり、その産生はCaSR活性化の直接の下流の帰結である。IP3の産生後のIP1の蓄積は、アッセイで使用した細胞を、IP1をイノシトールに変換する酵素を阻害する塩化リチウム(LiCl2)で処理することによって得ることができる。実施例4に記載の試験では、例示的な化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)の存在下でIP1の蓄積を測定した。図2Aに結果が示されている。
【0077】
IP1の濃度は、y軸においてnM単位で報告されており、配列番号26または配列番号29の化合物の濃度は、x軸においてM単位で報告されている。配列番号29にN末端のD−システイン残基がないことにより、CaSRを活性化する化合物の能力が配列番号26と比較して劇的に低下した。すなわち、ペプチドAc−carrrar−NH(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)は、N末端のD−システインが存在するか、または存在しないかによってのみ異なるので、化合物の効力は、N末端のシステイン残基を排除することによって顕著に低下した。
【0078】
化合物のX1サブユニットにおけるチオール含有基(例えば、化合物がN末端残基上のペプチドである特定の実施形態において)の寄与についても、in vivo試験において調査した。配列番号26として識別されるペプチド(Ac−carrrar−NH2)および配列番号29として識別されるペプチド(Ac−arrrar−NH2)の、PTHを低減させる活性を、実施例4の手順に従ってin vivoで評価した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。結果が図2Bに示されている。見られるように、0.5mg/kg用量のペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)(四角)により、投薬の4時間後までにPTHの血中濃度が検出不可能なレベルまで減少した。対照的に、チオール含有基を持つN末端残基を欠くペプチド、Ac−arrrar−NH2(配列番号29)、ひし形では、実質的により高い用量(すなわち9mg/kg)においてさえもPTH濃度を低下させなかった。
【0079】
化合物のX1サブユニットにおけるチオール含有基の構造と活性の関連性を、異なるX1サブユニットを有する化合物を調製することによってさらに分析した。表3に示されている化合物を、正常なラットにおいて、PTHを低下させる活性についてin vivoで試験した。
【0080】
【表3】
*太字のフォントは、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)における、それぞれのチオール含有残基(D−システイン)の置換を示す。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0081】
表3のデータは、チオールを含有するX1サブユニットは変更してよいことを例示している。N末端残基内に以下を持つ化合物を試験した−D−システイン(cys)、D−ペニシラミン(dPen)、d−ホモシステイン(dHcy)およびメルカプトプロピオン酸(Mpa)。さらに、天然アミノ酸または非天然アミノ酸、例えばベータアラニンなどを、N末端のチオール含有残基とコンジュゲートすることができる。データは、カチオン性化合物、例えばX1サブユニット内に異なるチオール含有基を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)などにより、in vivoでPTHを有効に低下させることを例示している。N末端システイン残基を、チオール基を含有しないメチオニンと置換した結果、in vivoでPTHを低減させる活性が非常に乏しい化合物が生じた(データは示していない)。
【0082】
上記の試験に基づいて、サブユニットX1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の連続した配列からなる化合物であって、X1がチオール含有基を含むサブユニットである化合物は、副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性を有する。一実施形態では、X1サブユニットのチオール含有基は、チオール含有アミノ酸残基および有機チオール含有部分からなる群から選択される。別の実施形態では、チオール含有基は、生理的なpHおよび温度の下で別のチオール基と反応することができる。チオール含有残基がアミノ酸残基である特定の実施形態では、X1サブユニットは、システイン、グルタチオン、メルカプトプロピオン酸、n−アセチル化されたシステインおよびペグ化システインのいずれか1つであってよい。チオール含有基が、チオール含有基を持つ有機低分子などの非アミノ酸残基サブユニットである実施形態では、X1サブユニットは、3−メルカプトプロピル残基もしくは3−メルカプトプロピオニル残基などのチオールアルキル部分またはチオアシル部分であってよい。一実施形態では、チオールはホモシステインではない。
【0083】
したがって、また別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は「副甲状腺ホルモンレベルを減少させる臨床的活性」を有し、これは、化合物を被験体に投与すると、対応する、ビヒクルで処置した対照の被験体のPTH AUCと比較して、投与後4時間にわたる累積PTHの曲線下面積(PTH AUC)によって測定した場合に、血漿副甲状腺ホルモンを低減させることを意味する。血漿PTH濃度は、例えば、生物活性のあるインタクトなPTH1〜84を検出する市販のELISAキットを使用して測定する(特定のキットに関しては実施例3を参照されたい)。副甲状腺ホルモンレベルを減少させる臨床的活性を持つ化合物により、PTH AUCは、対応する、ビヒクルで処置した対照の被験体のPTH AUCと比較して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%低下する。
【0084】
上記の試験、および下記の他の試験により、本明細書に記載の化合物の別の実施形態が例示されており、X1サブユニットは、一部の実施形態では、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、ブチル基、アセチル化ベータアラニンなどの天然アミノ酸または非天然アミノ酸を含むように、化学修飾などによって化学的に修飾されていてよい、または別のチオール部分に共有結合によって連結される。ペプチド治療法は、ペプチダーゼの攻撃を受けやすい可能性がある。エキソペプチダーゼは、一般には、ペプチドまたはタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端からアミノ酸残基を切断する非特異的な酵素である。アミノ酸配列の内部を切断するエンドペプチダーゼは、同様に非特異的であり得る;しかし、エンドペプチダーゼは特定のアミノ配列(認識部位)を認識することが多く、その部位で、またはその近くでペプチドを切断する。したがって、化合物を、タンパク質分解から保護するために修飾することが意図されている。
【0085】
ペプチドをタンパク質分解から保護する1つの方法は、ペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端を化学的に修飾すること、またはそれに「キャップ形成すること」を伴う。本明細書で使用される、「化学的に修飾された」または「キャップ形成された」という用語は、ブロック基を共有結合性の修飾によって化合物の1つの末端または両末端に導入することを指すために互換的に使用される。適切なブロック基は、ペプチドの生物活性を減少させることなくペプチドの末端にキャップを形成するために役立つ。当該記載の化合物のアミノ末端またはカルボキシ末端、またはその両方に位置する、チオール含有サブユニットを含む任意の残基を化学的に修飾することができる。
【0086】
好ましい実施形態では、化合物のアミノ末端をアセチル化によって化学的に修飾してN−アセチルペプチド(本明細書の構造物または式では「Ac−」と表すことができる)をもたらす。好ましい実施形態では、当該記載のペプチドのカルボキシ末端を、アミド化によって化学的に修飾して、C末端に第一級カルボキサミド(本明細書のペプチドの配列、構造物または式では「−NH2」と表すことができる)をもたらす。好ましい実施形態では、アミノ末端とカルボキシ末端の両方を、それぞれアセチル化およびアミド化によって化学的に修飾する。しかし、他のキャップ形成基が可能である。例えば、アミノ末端を、アセチル基、ベンゾイル基などの基を用いて、もしくは、アセチル基でキャップ形成されたベータアラニンなどの天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いてアシル化することによって、または、ベンジル基もしくはブチル基などの基を用いてアルキル化することによって、または、スルホニル化してスルホンアミドを形成することによって、キャップ形成することができる。同様に、カルボキシ末端をエステル化することができる、または第二級アミド、およびアシルスルホンアミドなどに変換することができる。一部の実施形態では、アミノ末端またはカルボキシ末端は、ポリエチレングリコール(PEG)部分を結合させるための部位を含んでよい、すなわち、アミノ末端またはカルボキシ末端は、適切に官能性をもたせたPEGを用いた反応によって化学的に修飾することができる。
【0087】
ペプチドをエンドペプチダーゼから保護することは、一般には、ペプチドのエンドペプチダーゼ認識部位を同定し、それをペプチドから排除することを伴う。プロテアーゼ認識部位は、当業者に周知である。したがって、潜在的なエンドプロテアーゼ認識部位を同定し、次にその部位を、認識部位内のアミノ酸配列を変更することによって排除することが可能である。認識配列内の残基を移動または除去して認識部位を破壊することができる。好ましくは、同定されたプロテアーゼ認識部位を含むアミノ酸の1つ以上を用いて保存置換を作製する。
【0088】
A.追加的な構造と活性の関連性についての試験
化合物の治療的活性に対する、化合物の各サブユニットの性質の影響をさらに評価するために、追加的な構造活性試験を行った。これらの試験を、ここで実施例5を参照しながら説明する。
【0089】
D−アミノ酸残基を置換したL−アミノ酸残基を有する一連の化合物を、PTH低減性足場Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)に基づいて調製した。実施例5に記載の通り化合物を被験体に投与し、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価し、1時間、2時間、3時間および4時間の時点におけるPTH濃度値の合計を、同時点における生理食塩水の対照のAUCによって正規化し、100を掛けたものとしてAUCを算出した。表4に結果が示されている。
【0090】
【表4】
*イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0091】
表4に示されている例示的な化合物を、AcおよびNH2の名称で示されるように、N末端およびC末端の両方において化学的に修飾した。全てのサブユニットがD−アミノ酸残基である7つのサブユニットの配列carrrar(配列番号3)を、一度に1つのサブユニットをL−アミノ酸で交換することによって修飾した。X1サブユニットは、括弧付きの名称(C)で示される、ジスルフィド結合によってL−Cys残基とコンジュゲートしたD−Cys残基(または配列番号34のL−Cys残基)であった。表4のPTHを低減させるin vivoデータは、ArgおよびAlaのキラリティーが化合物の活性に影響を及ぼすことを示している。一実施形態では、少なくともX4として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットがD−アミノ酸残基サブユニットである、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の配列の化合物が意図されている。別の実施形態では、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである。好ましい実施形態では、X3として識別されるサブユニット、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである。最も好ましい実施形態では、X2として識別されるサブユニット、X3として識別されるサブユニット、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである、ならびにサブユニットX1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7の全てが、D−アミノ酸残基サブユニットである。
【0092】
他の試験では、全てL−アミノ酸を有するペプチドを全てD−アミノ酸で置換することにより、試験されたペプチドのin vitro活性は低下しないことも見いだされた;実際に、全体がD−アミノ酸で構成されるペプチドはCaSRの活性化に対する効力を増強すると思われる。特定の位置におけるカチオン性(アルギニン)残基のいくつかが、システイン残基と比較して、CaSRに対する活性への影響を最も少なくして無電荷の(アラニン)残基で置換することができることも示された。
【0093】
構造とCaSRに対する活性との間の関連性をさらに特徴づけるために、異なる数(4〜8個)のアルギニン残基を持つ種々のカチオン性ペプチド(その全てがN末端システインを含有した)を、HEK−293 in vitro細胞アッセイを使用して試験した。カチオン性サブユニットの数と化合物の効力との間に直接相関が見られ、効力は、CaSRを活性化する能力によって証明される。カチオン性(例えばアルギニン)サブユニットの数を5つから4つに減らすことにより、効力が最もシフトし(>10倍)、このことは、これらの正味の電荷を有する化合物の間に活性の屈曲点があり得ること、サブユニットX5におけるカチオン性サブユニットが、活性のために好ましいことを示唆している。したがって、X5がカチオン性サブユニットである、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の構造の化合物が考えられている。ある特定の実施形態では、X1は生理的条件下で別のチオール基と反応することができるチオール基を含むサブユニットである(「反応性チオール」は、pH7.4および体温の生理的条件下で別のチオールと反応するチオールを意味する(例えば、システインとシステイン))。
【0094】
予想外に、6つのカチオン性残基を持つAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)が、in vivoで評価した場合、8つのカチオン性残基を有するAc−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)よりも大きく長い活性を示した。これは、このin vitro細胞アッセイにおいて、CaSRを活性化することにおいて配列番号41の方が強力であったという知見と対照的である。理論に束縛されることを望むものではないが、Ac−crrrrrrrr−NH2(配列番号6441は、その細胞浸透性特性によって細胞内に取り込まれ、したがってCaSRの活性部分の近傍から除去されることが予想されるので、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のin vivoにおける優れた性能は、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の薬物動態的性質が優れていることに由来し得ると考えられる。
【0095】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の構造と活性の関連性をさらに探究するために、カチオン性(アルギニン)残基のいくつかを、無電荷の(アラニン)残基と交換した。X2位のサブユニットおよびX4位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を交換することにより、CaSRの活性化におけるin vitroでの効力が顕著に低下している化合物(配列番号15)が生じることが見いだされた。対照的に、X2位のサブユニットおよびX6位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を交換することにより、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)で見られた効力の大半を保持する化合物(配列番号26)が生じた。これらの結果により、化合物における荷電残基の位置が効力に寄与することが示唆され、一部の実施形態では、ペプチドの総正電荷の寄与よりもよりまさる場合がある。ある特定の位置におけるカチオン性(アルギニン)残基、例えばX5位のサブユニットも、効力に不均衡に寄与することは明らかである。
【0096】
CaSRの活性化に対するペプチドの効力を著しく増強するN末端システインが存在することが見いだされた。CaSRは、ホモ二量体受容体として機能する大きな細胞外ドメインを持つ7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体である。細胞外ドメインには18個のシステイン残基があり、そのいくつかは、多型分析または変異性分析によって、受容体の活性のために重要であることが示されている。特に注目すべきなのは、細胞外ドメインのループ2領域の129位および131位のシステインである。129位および131位のシステインは、受容体複合体の2つの単量体間に、密接な立体配置または妨げられた立体配置で分子間ジスルフィド架橋を形成すると考えられている。129位のシステインの変異により、ループ2領域の完全な欠失を含めたいくつもの他の変異でそうなるのと同様に、CaSRが活性化される。当該記載の化合物のN末端システイン残基によってもたらされる効力の増強は、CaSRの細胞外ドメイン内のシステイン残基の1つ以上の特異的な相互作用に起因する可能性がある。
【0097】
アミノ酸置換のキラリティーの、in vitroにおけるCaSRの活性に対する影響をさらに評価するために、さまざまな位置においてL−アミノ酸またはアキラルのアミノ酸(グリシン)の置換を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の一連の類似体を生成し、CaSRに対する効力について試験した。試験した類似体としては、Ac−cGrrrGr−NH2(配列番号42)、(ii)Ac−cArrrAr−NH2(配列番号43)、および(iii)Ac−CaRrRaR−NH2(配列番号44)を含めた。前述の類似体の全てが、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)よりも顕著に低い効力を有し、配列番号44(3種の類似体のうち最も強力)については10倍の差異から、配列番号43(3種の類似体のうち最も強力でない)については2000倍超の差異までにわたった。配列番号6の2位および6位のカチオン性D−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)を無電荷のD−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)と交換したAc−carrrar−NH2(配列番号26)は、活性の変化がずっと少なかった(約3倍の差異)。したがって、驚いたことに、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の全てのD−アミノ酸残基を2つ以上のL−アミノ酸残基で遮ることにより、効力が顕著に低下することが見いだされた。遮っている残基が無電荷のアキラルのアミノ酸残基(グリシン残基)である場合、それが無電荷のL−アミノ酸残基(L−アラニン残基)である場合と比較して効力が80倍超減少したことも、驚くべきことであった。
【0098】
Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2つの無電荷のD−アミノ酸残基(D−アラニン残基)をそれらのL−対応物と交換すること(配列番号43)により、効力が600倍超減少したが、一方、Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2つの無電荷のD−アミノ酸残基(D−アラニン残基)を無電荷のアキラルのアミノ酸残基(グリシン残基)と交換すること(配列番号42)による効力の低下は8倍未満であったこと;およびAc−carrrar−NH2(配列番号26)の3つのカチオン性D−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)をそれらのL−対応物と交換すること(配列番号44)により、効力の差異は4倍未満であったことも驚くべきことであった。
【0099】
さまざまなペプチドおよびコンジュゲートの活性をヒトCaSRに対して試験した。これらの試験は、ヒトCaSRを発現するHEK293細胞におけるIP1の産生を測定することによって行った。表5にEC50値が示されている。各ペプチドを、8種の異なる濃度において2連で試験して用量反応曲線を確立した。曲線の当てはめを、GraphPad Prismを使用して実施した。表5において、および本明細書全体を通して、大文字で提供される残基はL−アミノ酸であり、一方小文字はD−アミノ酸を示す。「Ac」はアセチルキャップ形成基を示し、「NH2」はアミドキャップ形成基を示し、「Ac−bAla」はアセチル化ベータアラニンであり、「GSH」は還元型グルタチオンを示し、「GS」は酸化型グルタチオンを示し、「PEG」はポリエチレングリコールを指し、「PEG2」および「PEG5」は、それぞれ2kDaおよび5kDaのポリエチレングリコール部分を指し、「Mpa」はメルカプトプロピオン酸を指す。括弧でくくられた基は、基または部分が前のサブユニットまたはアミノ酸残基の側鎖に結合していることを示す。
【0100】
【表5−1】
【0101】
【表5−2】
【0102】
【表5−3】
構造と活性の関連性についての別の試験において、ペプチドの効力に対する非カチオン性アミノ酸の寄与を、ペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)およびペプチドAc−crrarar−NH2(配列番号153)のさまざまな位置において置換された、さまざまなD−アミノ酸残基またはグリシンを持つ一連のペプチド(表6)、または立体障害型の非天然アミノ酸を持つ一連のペプチド(表7)を調製することによって評価した。ペプチドを、正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。下の表に結果が示され、1)Ac−carrrar−NH2ペプチド(配列番号26)の6位にはアラニン、グリシンまたはセリンなどの小さなアミノ酸が好ましいこと、および2)Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2位のアラニンは、置換に対してはるかに許容的であり、疎水性の天然アミノ酸(例えばD−Val、D−Leu)、芳香族天然アミノ酸(例えばD−Phe)、または極性の天然アミノ酸(例えばD−Ser、D−Gln)、ならびに非天然の、かさのある疎水性アミノ酸(例えばdNle、dNva)で置換することができるが、酸性のアミノ酸では置換することができないこと、および3)Ac−crrarar−NH2(配列番号25)ペプチドの4位のアラニン残基も置換に対して非常に許容的であり、ほとんどの種類の天然アミノ酸(ならびに非天然の、かさのある疎水性アミノ酸(例えばdNle、dNva)に適応させることができるが、二次高次構造に影響を及ぼすアミノ酸、すなわちグリシンまたはプロリンまたは酸性の側鎖を持つアミノ酸に対しては許容的でないことを示している。
【0103】
【表6−1】
【0104】
【表6−2】
*太字のフォントは、Ac−carrrar−NH2(配列番号6)またはAc−crrarar−NH2(配列番号25)のアラニン残基のそれぞれの置換を示す。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0105】
【表7】
*太字のフォントは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26)またはAc−crrarar−NH2(配列番号25)のアラニン残基のそれぞれの置換を示す。Sar=非天然アミノ酸であるサルコシン;Nma=N−メチルアラニン;AiB=アミノイソ酪酸;dNva=D−ノルバリン;dNle=D−ノルロイシン
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0106】
【表8】
*括弧内に示されている太字のフォントは、それぞれのチオール含有コンジュゲート基を示す。GS=酸化型グルタチオン;dHcy=D−ホモシステイン;Mpa=メルカプトプロピオン酸;PEG=ポリエチレングリコール。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
***化合物を、10mg/kg(ペグ化されていないペプチド0.5mg/kgに対するおよその当量モル濃度)で投薬した
****化合物を、20mg/kg(ペグ化されていないペプチド0.5mg/kgに対するおよその当量モル濃度)で投薬した。
【0107】
B.ヒスタミン応答および構造と活性の関連性についての試験
ポリカチオン性化合物は、活性な生体アミンであるヒスタミンの放出を誘発することが文献において報告されている。Churchら、J. Immunol.、128巻(5号):2116〜2121頁(1982年);Lagunoffら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、23巻:331〜51頁(1983年)を参照されたい。ヒスタミンの放出は、Gαi依存的に起こる肥満細胞および好塩基球の活性化の結果であると考えられている。Aridorら、J. Cell Biol.、111巻(3号):909〜17頁(1990年)を参照されたい。この生理学的反応を低下させること、または排除することはとりわけ、カチオン性ペプチドカルシウム模倣薬のSHPTの治療に対する治療限界を改善するために望ましい。
【0108】
本明細書に記載の化合物をin vivo投与すると誘導されるヒスタミンの放出について評価するために試験を行った。実施例6に記載の最初の試験では、正常なスプラーグドーリーラットにIVボーラスまたは注入によって投薬することを使用してさまざまな化合物に関連するヒスタミンの放出を評価した。化合物に関連するヒスタミンの放出に対する正味の正電荷の影響を評価するために、実施例6に記載の手順に従って、4〜7個のカチオン性(アルギニン)残基を含有するペプチドを生成し、in vivoでヒスタミンの放出を誘発するそれらの能力について試験した。試験したペプチドとしては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および(iv)Ac−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)を含めた。
【0109】
図3に示されているように、各ペプチドの当量モル数を正常なラットにIVボーラスによって投与したとき、配列番号41(8つのアルギニン残基)が最も大きなヒスタミンの誘導を示した。配列番号6(6つのアルギニン残基)、配列番号5(5つのアルギニン残基)、および配列番号4(4つのアルギニン残基)を含めた、それよりもArg残基が少ない他の化合物も同様に、ヒスタミンレベルにおいてスパイクをもたらしたが、配列番号41と比較して程度が低かった。配列番号6、配列番号5および配列番号4では、それらのヒスタミンの放出活性において穏やかな応答が生成した(ベースラインの約2〜3倍超)。しかし、配列番号5および配列番号4は、血漿PTHを低減させることに関して配列番号6よりも効力が弱かった。
【0110】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のPTHを低下させる活性は、ヒスタミン応答の欠如を伴ったので、PTHを低減させる活性を犠牲にすることなくヒスタミン応答をさらに減少させることが可能かどうかを評価するために、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)に基づいて追加的な評価を行った。下記のデータに示されるように、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のカチオン性(アルギニン)残基の、非カチオン性(アラニン)残基での置換を実施して全体的に正味の電荷が低下し、電荷密度が低下した一連の類似体を作製した。これらの類似体のうち、Ac−cararrr−NH2(配列番号15)およびAc−carrrar−NH2(配列番号26)はどちらも、ラットにIVボーラスによって投与されたときにヒスタミン応答が欠如していた。重要なことに、これらの2つのペプチドはそれらの強力なカルシウム模倣性を保持し、正常なラットおよび腎機能障害を持つラットの両方においてPTHの分泌を低下させることができた。
【0111】
配列番号6として識別される化合物Ac−crrrrrr−NH2(2.1μモル/kg=2.3mg/kg)は、正常なラットにおいて、IVボーラスによって投薬した(1分未満にわたって与えた)とき、配列番号41での6〜9倍と比較して、ベースラインを約2〜3倍超える観察可能なヒスタミン応答を誘発した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)によって誘発されるヒスタミンの放出は、投薬の5分後にピークに達し、15分後にベースラインレベルまで戻った(図3)。荷電したサブユニットの数を、ペプチドあたりのアルギニン残基を5つ、および4つにさらに減らすことにより(それぞれ配列番号5および配列番号4)、それよりも長いオリゴアルギニンペプチドと比較してヒスタミン応答がさらに低下した;しかし、ヒスタミンにおけるベースラインを超える2〜3倍の増加が、IVボーラス投薬の5分後に、まだ観察された(図3)。これらの結果は、ペプチドの正味の電荷と付随するヒスタミンの放出との間の関連性を示唆している。アルギニンが7つよりも少ないアルギニンに富むペプチドは、細胞に侵入するそれらの能力がかなり限定されていることも注目に値し、これは、ヒスタミンの放出を誘発するためには細胞への浸透は必要ないことを示唆している。
【0112】
PTH低減性化合物であるAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)に関連するヒスタミンの放出を、in vivoで評価した。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は以下の構造を有する:
【0113】
【化1】
このコンジュゲート構造物は、本明細書ではAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号273と表され、化合物のX1サブユニット(ここではD−Cys残基)のチオール含有残基にCys−Cysジスルフィド結合によって連結しているL−Cys残基が式中の括弧内に置かれている。この表示法を、括弧付きの部分が第2のチオール含有基に連結していることを示すために、全体にわたって使用する。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)と比較して、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は、X2位のサブユニットおよびX6位のサブユニットにおいて無電荷の(アラニン)残基で置換した2つのカチオン性(アルギニン)残基を有する。さらに、X1位のD−Cys残基はL−Cys残基とコンジュゲートしている。
【0114】
これらの2つの化合物を、イソフルランで麻酔したラット(スプラーグドーリー)に3mg/kgで静脈内(IV)ボーラス投与によって投与した(1分未満にわたって与えた)。血液を、投薬する前、および投薬の5分後、15分後、および30分後に抜き取った。ヒスタミン濃度を測定し、図4に投薬前の血中ヒスタミン濃度に対する血中ヒスタミン濃度における倍数変化が示されている。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、白い棒)によりヒスタミン応答が誘導され、それは、投薬の5分後のデータ点において観察され、そこでヒスタミンレベルにおいて7倍の増加が観察された。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、網掛けされた棒)により、投薬の5分後、10分後および15分後のデータ点においてヒスタミンレベルが投薬前(ゼロ時間)のヒスタミンレベルと比較して増加しなかったことに見られるように、明白なヒスタミン応答は誘導されなかった。
【0115】
化合物の構造とヒスタミンの放出との間の関連性をさらに評価するために、一連の化合物を調製し、ラットの腹膜肥満細胞を使用するin vitroアッセイにおいて、ヒスタミンの誘導を誘発するそれらの能力について評価した。このアッセイでは、化合物を10μMで、SDラットの腹膜洗浄で単離された細胞と一緒に37℃で15分間インキュベートする。インキュベートした後、細胞の培地を採取し、ヒスタミンを決定する。表9にデータが示されている。
【0116】
【表9−1】
【0117】
【表9−2】
【0118】
【表9−3】
化合物の構造とヒスタミンの放出との間の関連性をさらに評価するために、一連の化合物を調製し、in vivoアッセイにおいて、ヒスタミンの誘導を誘発するそれらの能力について評価した。表10にデータが示されている。
【0119】
【表10】
したがって、および本明細書において前記されているPTHのデータおよびヒスタミンのデータを考慮して理解することができるように、一実施形態では、ヒスタミン応答なしでの被験体におけるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物が意図されている。ある特定の実施形態では、ヒスタミン応答がないこととは、本明細書に記載のアッセイにおいてin vitroで測定した、産生したヒスタミンの増加が10倍未満、より好ましくは8倍未満、さらにより好ましくは5倍未満、およびいっそうより好ましくは3倍未満である化合物の用量を意味し、ここで倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベル、および化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。特定の実施形態では、ヒスタミン応答は、正常なスプラーグドーリーラットの腹膜洗浄で単離されたラットの腹膜肥満細胞を使用するin vitroアッセイにおいて決定し、ここで倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベル、および化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。本明細書で行った試験では、ヒスタミンの放出についてのin vitroでの評価を、ヘパリン(5u/mL)を含有する冷たいHBSS+25mMのHEPES、pH7.4を使用する腹膜洗浄によって単離された単離ラット腹膜肥満細胞を使用して実施した。細胞を刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中で2回洗い、96ウェルプレート(106/ウェル)で、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中10μMの化合物と一緒に37℃で15分間インキュベートした。細胞の上清を、ヒスタミンEIAキット(Cayman#589651)を使用してヒスタミンについて分析した。
【0120】
別の実施形態では、臨床的なヒスタミン応答なしに被験体におけるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物が意図されている。本明細書で使用される、「臨床的なヒスタミン応答」がないこととは、本明細書に記載の化合物の治療有効量を、投薬完了の5分〜10分後または治療の間に測定したところ血漿中ヒスタミンまたは血中ヒスタミンの臨床的に有害な増加を生じさせずに、被験体に投与することを意味する。例えば、所望の治療効果をもたらすために必要な化合物を被験体にボーラス投与によって投与する(本明細書で使用される「ボーラス」は、1分以内にわたって投与することを意味する)場合、投薬完了の5分〜10分後に生じる血漿中ヒスタミンまたは血中ヒスタミンの増加は、投薬前のレベルを超えて15倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍未満である。
【0121】
上記の試験から理解することができるように、一実施形態では、化合物は、3〜35個のアミノ酸残基の配列を含み、複数の正に荷電したアミノ酸残基サブユニットが配列内に存在する。一部の実施形態では、当該記載の化合物は5〜25個のサブユニットを含み、好ましい実施形態では、各サブユニットはアミノ酸残基である。他の実施形態では、当該記載の化合物は6〜12個のサブユニットを含む。さらに他の実施形態では、当該記載の化合物は3〜9個のアミノ酸サブユニットを含む。代替の実施形態では、当該記載の化合物は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、または35個のサブユニットを含む。
【0122】
当該記載の化合物のサブユニットは、一実施形態では、独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸、またはそれらの類似体から選択され、L−立体配置またはD−立体配置のいずれかを有してよい(アキラルであるグリシンは除く)。グリシン、脂肪族残基であるアラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシン、プロリン、ヒドロキシル残基であるセリンおよびトレオニン、酸性残基であるアスパラギン酸およびグルタミン酸、アミド残基であるアスパラギンおよびグルタミン、塩基性残基であるリジンおよびアルギニン、ヒスチジン、芳香族残基であるフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン、ならびに硫黄含有残基であるメチオニンおよびシステインは全て、当該記載の化合物において使用することが意図されている。正に荷電したサブユニットの数、およびそれらの密度は、PTHを低下させるための化合物の効力に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、正に荷電したサブユニットは、1つ以上の他のサブユニット(「分離サブユニット」)によって分離されている。一実施形態では、分離サブユニットはアラニン残基である。一部の実施形態では、分離サブユニットのキラリティーが化合物の効力に影響を及ぼす。
【0123】
当該記載の化合物の正に荷電したアミノ酸残基は、配列内で繰り返されるL−立体配置またはD−立体配置のいずれか(例えば、L−アルギニン)を有する特定の天然残基または非天然残基、またはその類似体であってよい、または、L−立体配置またはD−立体配置のいずれかを有する種々の天然残基または非天然残基、またはその類似体であってよい。一部の実施形態では、化合物は、3〜20個の正に荷電したアミノ酸残基、6〜12個の正に荷電したアミノ酸残基、3〜9個の正に荷電したアミノ酸残基で構成されるペプチドである。一部の実施形態では、ペプチドは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の正に荷電したアミノ酸残基を含む。
【0124】
一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、天然アミノ酸から選択される。一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸から選択される。一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、アルギニン、リジン、ヒスチジン、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン、およびホモアルギニンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基はアルギニン残基である。
【0125】
一部の実施形態では、化合物はペプチドであり、単一の連続的なペプチド鎖またはペプチドストランドである。他の実施形態では、化合物は分枝のペプチドである。さらに他の実施形態では、ペプチドは1つ以上のチオール含有部分とコンジュゲートしている(それぞれ、「チオール含有コンジュゲート基」または「コンジュゲート基」)。好ましい実施形態では、およびただ単に例示として、ペプチド化合物はCysコンジュゲート基に、(−S−S−)ジスルフィド結合によってコンジュゲートしている(例えば−Cys−Cys−)。本明細書で使用される、「化合物」という用語は、そのようなペプチドおよびそのようなコンジュゲートの両方を包含するものとする。
【0126】
化合物は、一般には1つ以上のチオール部分、好ましくは1つ以上の反応性チオール部分を含む。チオール基を有するサブユニットとしては、チオール基を有する非アミノ酸化合物およびチオール基を持つアミノ酸が挙げられる。チオール含有サブユニットのチオール基は、コンジュゲートした形態(例えば、コンジュゲート基へのジスルフィド結合によって)またはコンジュゲートしていない形態(すなわち、還元型チオールとして)であってよい。好ましい実施形態では、チオール基がコンジュゲートしていない形態またはコンジュゲートした形態のいずれかである場合、チオール含有基とジスルフィド結合を形成することができる。チオール含有残基は、アミノ末端、カルボキシ末端、またはどこか他の位置を含めた、ペプチド鎖に沿った任意の位置に位置してよい。好ましい実施形態では、チオール含有残基またはサブユニットは、アミノ末端に位置してよい。他の実施形態では、チオール含有残基またはサブユニットは、カルボキシ末端またはペプチド配列の内部に位置してよい。
【0127】
いくつかの代表的なチオール含有残基の例としては、限定することなく、システイン、メルカプトプロピオン酸、ホモシステイン、およびペニシラミンが挙げられる。チオール含有残基がキラル中心を含有する場合、その残基はL−立体配置またはD−立体配置で存在し得る。好ましい実施形態では、チオール含有残基は、システインである。
【0128】
一部の実施形態では、化合物のX1位のチオール含有サブユニットとチオール含有コンジュゲート基との間の架橋結合は、化合物の生物学的活性型を得るために、in vivoにおいてシステインなどの他のチオール含有コンジュゲート基で切断可能かつ/または交換可能であってよい(例えば、ジスルフィド結合を還元することによって)。このように、コンジュゲートは、化合物のプロドラッグとして機能し得る。コンジュゲート基は、当該記載の化合物の物理化学的性質、薬物動態的性質および/または薬力学的性質を改変するためにも使用することができる(例えば、薬物動態を増強するためにジスルフィド結合によって大きなペグ化部分とコンジュゲートさせる)。
【0129】
一部の実施形態では、化合物は、アミノ酸配列(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号155)で構成されるペプチドであり、ここで(Xaa1)はチオール含有アミノ酸残基であり、(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端、C末端、またはその両方において修飾されていてよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端およびC末端の両方において、それぞれアセチル化およびアミド化によって修飾される。
【0130】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号156)を含み、ここで(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0131】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号157)を含み、ここで(Xaa2)、(Xaa3)および(Xaa4)は、独立して、任意のアミノ酸残基であり(しかし好ましい実施形態では、独立して、D−Ala、D−Val、D−Leu、D−NorValおよびD−NorLeuからなる群から選択される)、(Xaa5)および(Xaa7)は独立して、任意のカチオン性アミノ酸残基であり(しかし好ましい実施形態では、独立して、D−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択される)、(Xaa6)は非カチオン性アミノ酸残基である(好ましい実施形態では、D−Ala、D−Val、D−Leu、D−NorValおよびD−NorLeuからなる群から選択される)。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0132】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号158)を含み、ここで(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0133】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(D−Ala)−(Xaa3)−(Xaa4)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号159)を含み、ここで(Xaa3)は任意のカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa7)は任意のカチオン性アミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0134】
一部の実施形態では、ペプチドはアミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(D−Ala)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号160)を含み、ここで(Xaa2)、(Xaa3)および(Xaa7)は独立して、任意のカチオン性アミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0135】
別の実施形態は、ペプチド結合によって連結したアミノ酸の配列を含むカルシウム模倣ペプチドであり、ここで配列は、5〜10個のアミノ酸残基を含み、配列はアミノ末端、カルボキシ末端、少なくとも1つのチオール含有残基、および3〜9個の正に荷電した残基を含む。一実施形態では、少なくとも1つのチオール含有残基はシステイン残基である。別の態様では、システイン残基はペプチドのアミノ末端に配置されている。ある特定の実施形態では、システイン残基は、L−Cys残基、D−Cys残基、またはL−ホモCys残基もしくはD−ホモCys残基である。他の実施形態では、ペプチドのアミノ酸残基は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸である。
【0136】
およそ7つのサブユニットを含むペプチド模倣分子であって、少なくとも1つのサブユニットが、チオール部分、好ましくは反応性チオール部分を含有し、他のサブユニットが複数の非カチオン性サブユニットであり、そして1〜4個の正に荷電したサブユニット由来であるペプチド模倣分子も、特許請求された化合物の範囲内に包含される。そのようなペプチド模倣分子は、サブユニットのうちの2つ以上の間の非ペプチド結合を含んでよい。上記の化合物のさまざまな特徴は、概ねペプチド模倣分子にあてはまる。例えば、上記の通り、分子を構築するために使用するサブユニットは、天然に存在するアミノ酸または非天然側鎖を持つ残基であってよく、モジュールの末端は、上記のようにキャップ形成されていてよい、またはキャップ形成されていなくてよい。同様に、分子のアミノ酸残基は、L−アミノ酸残基またはD−アミノ酸残基であってよい。同様に上記の通り、チオール含有残基は、上記のチオール含有部分のいずれかを持つ還元型または酸化型の形態であってよい。
【0137】
多くのペプチド模倣の枠組みおよびそれらを合成するための方法が、開発されてきた(Babine、R. E.;Bender、S. L.、Chem. Rev.、97巻:1359頁、1997年;Hanessian、S.ら.、Tetrahedron、53巻:12789頁、1997年;Fletcher、M. D.;Cambell、M. C.、Chem. Rev.、98巻:763頁、1998年);Peptidomimetics Protocols;Kazmierski W.M.編;Methods in Molecular Medicine Series、23巻;Humana Press、Inc.;Totowa、N.J.(1999年)。
【0138】
コンジュゲート
一部の実施形態では、化合物は、化合物のチオールとコンジュゲート基由来のチオールとの間のジスルフィド結合によって、チオール含有コンジュゲート基と化学的に架橋している。チオール含有コンジュゲート基は、システインなどの低分子、またはシステイン残基を含有するポリペプチドなどの高分子であってよい。適切なチオール含有コンジュゲート基の例としては、システイン、グルタチオン、チオアルキル、チオベンジルなどの部分、メルカプトプロピオン酸、N−アセチル化システイン、システアミド、N−アセチルシステアミド(N−acetylcysteamide)、ホモシステイン、ペニシラミン、およびポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾(「ペグ化」と称される)チオール、例えばペグ化システインなど、または化合物の複製物(すなわち、ジスルフィド結合によって連結されたホモ二量体を形成するための)が挙げられる。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、システインである。他のシステインホモログも、単独で、または大きなコンジュゲート基に含まれるかのいずれかで、チオール含有コンジュゲート基として使用することが意図されている。同様に、システイン、ホモシステイン、およびシステアミド(cysteamide)の立体異性体は、チオール含有部分として使用するのに適している。コンジュゲート基を使用して、医薬製品の化学的安定性および、したがって貯蔵寿命を改善することができる。ある特定の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一であり(すなわち、コンジュゲートは二量体である)、それは予想外にシステインなどの異種性のコンジュゲート基と比較して非常に良好な化学的安定性を示した。理論に束縛されることなく、おそらく、チオール含有コンジュゲート基とペプチドが同一である場合、任意の不均化(例えば、コンジュゲート基をスクランブルすること)により、元の二量体化合物が再構成される。対照的に、システインなどの異種性のコンジュゲート基を用いて化合物を不均化することにより、ペプチドのホモ二量体とシスチン(システイン−システインホモ二量体)と残りの親化合物の形成が導かれ得る。ペプチドのホモ二量体(すなわち、コンジュゲート基とペプチドが同一である)は、体循環内の還元型システインが高濃度なので、in vivoでシステインがコンジュゲートした形態のペプチドに変換されることになる。
【0139】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号155)を含むペプチドとのジスルフィドコンジュゲートであって、(Xaa1)がチオール含有部分を持つアミノ酸残基であり、(Xaa2)が非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号155のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0140】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号156)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa2)が非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号156のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0141】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(L−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号183)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号183のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0142】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(D−Cys)−(D−Ala)−(Xaa3)−(Xaa4)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号161)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号161のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0143】
III.使用方法
一態様では、本明細書に記載の化合物を投与することによって、副甲状腺機能亢進症、骨疾患および/または他の高カルシウム血障害を予防、治療または改善するための方法が意図されている。上で例示した通り、化合物は、標的組織もしくは複数の標的組織、または被験体におけるPTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを減少させる活性を有する。ある特定の実施形態では、当該記載の化合物は、該化合物の治療有効量をそのような治療を必要とする被験体に投与すると、PTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを減少させることができる。使用方法を、ここで実施例3および実施例8〜11を参照しながら説明する。
【0144】
実施例3を再度参照して、および表1に関して上記の通り、カチオン性(アルギニン)残基を非カチオン性残基(アラニン)と逐次的に交換した一連の化合物をラットに投与した。図5は、血中PTHを低下させる各化合物の能力の時間プロファイルおよびさまざまな化合物の作用の持続時間を示している。図5では、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、ひし形)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8、四角)およびAc−crrarrr−NH2(配列番号10、×記号)およびAc−crrrrar−NH2(配列番号12、丸)が、投薬前のベースラインに対するパーセントPTHが本質的にゼロにまで減少したことによって証明されるようにin vivoにおいて強力であり、それらにより、PTHの血中濃度が少なくとも4時間、減少したままであったという効力の持続時間がもたらされた。化合物Ac−crarrrr−NH2(配列番号9、三角形)、Ac−crrrarr−NH2(配列番号11、*記号)およびAc−crrrrra−NH2(配列番号13、+記号)により、ベースラインに対するパーセントPTHが約2〜3時間にわたって減少し、その後PTHの血中濃度は増加し始めた。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の5位または7位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を置換することは、PTHを低減させる活性の持続時間に強い影響を与えた。
【0145】
2重のアミノ酸置換を含有する一連の化合物についてのPTH低下のプロファイルも評価した。上記の表2に記載されている選択された化合物を、正常なラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与し、投薬前のPTHの血中レベルと比較したPTHの低下を評価した。図6A〜6Bにデータが示されており、そこで化合物は以下の通り識別される:Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、丸)、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、ひし形、図6B)、Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28、×記号、図6B)。
【0146】
化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の効力をさらに評価するために、別の試験を行った。化合物を、実施例2で詳述したように、正常なラットに、1mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、および0.1mg/kgの用量で静脈内投与した。投薬する前、およびその後4時間にわたって血漿PTHレベルを評価した。図7は結果を示し、PTHの血中濃度が、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。単回のIVボーラス投与後に用量に関連したPTHの低下が観察され、最高用量の1mg/kg(ひし形)でPTHの低下が最大であり、0.5mg/kg(四角)、0.3mg/kg(三角形)、および0.1mg/kg(×記号)が続いた。生理食塩水の対照は丸記号で示されている。これに見られるように、ペプチドを治療有効用量で投与すると、投薬する前(「ベースライン」)のPTHの濃度と比較して50%を超えるPTHの低下が実現される。詳細には、ペプチドを、0.1mg/kgを超える用量で投与すると、IV投与の1時間後にベースラインのPTH濃度の90%未満までPTH濃度が低下した。配列番号3で識別されるペプチドのこれらの用量によっても、50%未満の曲線下面積(AUC)が実現された。ここで、AUCは、1時間、2時間、3時間および4時間の時点におけるPTH濃度値の合計として算出し、同時点における生理食塩水の対照のAUCによって正規化し、100を掛けた。
【0147】
同じ化合物を、腎不全の被験体(ラット)においても試験した。この試験では、腎機能障害環境においてPTHを低減させるその化合物の活性を特徴づけるために、急性腎不全の1K1Cモデルを使用して化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を評価した。モデルは、実施例1Aに記載されている。化合物を、腎に障害をきたした動物(ラット)に、3mg/kg(n=2)、1mg/kg(n=5)、0.5mg/kg(n=6)および0.3mg/kg(n=5)の用量でボーラス投与として静脈内投与した。動物の対照群に、生理食塩水を投薬した。投薬する前、およびその後数時間にわたって、血漿PTHレベルを評価した。図8は結果を示し、生理食塩水で処置した動物(四角)で、開始時のPTHレベルと比較してPTH濃度が増加した。さまざまな用量の配列番号3において、PTH低下の持続時間および程度に対する用量依存的な影響が観察された。最低用量の0.3mg/kg(×記号)で処置した動物で、最も早い時点でのPTHの低下、および投薬後1時間〜24時間にわたるPTHの増加が示されている。3mg/kg(ひし形)、1mg/kg(三角形)および0.5mg/kg(四角)の用量レベルにより、15時間超にわたってPTHの血中濃度の低下がもたらされ、最高用量については、24時間超にわたってPTHの血中濃度の低下がもたらされた。
【0148】
アラニンアミノ酸残基によって例証されるように、カチオン性サブユニットを無電荷のサブユニットで置換することの影響を評価するための別の試験において、腎不全の被験体という状況において、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の類似体を生成し、1K1Cモデル動物において、1mg/kgを単回静脈内投与した後、PTHを低減させるその能力について試験した。試験した類似体Ac−carrrar−NH2(配列番号26)では、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のX2位およびX6位のカチオン性サブユニットを、無電荷のアミノ酸で置換した。
【0149】
図9に示されているように、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きの四角)は、試験した用量(1mg/kg)においてAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、白いひし形)に等価な活性を示し、24時間を超える同様の長期の作用の持続時間を伴う。無電荷のサブユニット置換を有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の類似体は、活性を保持することが見いだされ、実際に、配列番号6として識別される化合物よりも優れたin vivoにおける効力および作用の持続時間を有する。化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)では、配列番号6として識別される化合物に対して、X2位およびX6位におけるD−Arg残基をD−Ala残基で置換した。
【0150】
重要なことに、上記の通り、化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の投与には、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および他の同様の化合物をより高用量(>1mg/kg)でIVボーラスによって投与した際に見られる、望ましくない副作用であるヒスタミンの放出は伴わなかった。配列番号26で識別される化合物を用いるとヒスタミンの放出が顕著に弱まることにより、IVボーラスによって投与した後の所望のPTHを低減させる活性と望ましくないヒスタミン誘導活性との間の治療限界が増大する。したがって、好ましい実施形態では、in vivoにおいてヒスタミン応答なくPTH濃度を低下させる活性を有する化合物が提供される。したがって、一実施形態では、PTHを減少させる活性を有する化合物が提供され、化合物を被験体、ヒトまたは他の被験体に投与すると、投薬後1時間以内にPTHレベルが投薬前のレベルの50%を下回るまで減少する。特定の実施形態では、PTHを減少させる顕著な活性を有する化合物は、正常なラットに投与すると、IVボーラスによって投薬した後1時間以内に、PTHレベルが投薬前のレベルの50%を下回るまで減少する化合物を意味する。
【0151】
実施例8で詳述した別の試験において、コンジュゲートの形態の化合物は、X1位のチオール含有サブユニットがジスルフィド結合によってL−Cys残基に連結していた。これらの化合物は、以下の構造を有する:
【0152】
【化2】
本明細書で使用される表示法では、X1サブユニットのチオール含有部分に連結している化合物は、括弧付きで識別され、これらの例示的なコンジュゲートでは、(C)で示される化合物L−CysはX1サブユニットのチオール含有部分に連結している:Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)およびAc−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)。これらの化合物を、急性腎不全の動物(1K1Cモデル)に、0.3および0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与し、その結果が図10に示されている。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は四角(0.3mg/kg、n=5)、および*記号(0.5mg/kg、n=6)で表され、化合物Ac−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)は、三角形(0.3mg/kg、n=8)およびひし形(0.5mg/kg、n=7)で表される。このin vivoにおける配列番号3を用いた用量反応では、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)と非常に類似した用量依存的なPTHの低下が示されている。
【0153】
本明細書に記載のin vivo試験のいくつかでは、X1サブユニットのチオールがジスルフィド結合によって別のサブユニットと架橋しているコンジュゲート形態の化合物を含めた化合物を、30分間のIV注入で投与した。しかし、それよりも短い注入(例えば、<5分間)またはIVボーラスによる送達により、一般には、それよりも長い30分間の注入に匹敵するPTHの薬力学的な低下がもたらされることに留意するべきである。皮下ボーラス投与も、生成するPTHの最初の降下は小さいが、持続性のPTH低下を示す、IV経路で見られたプロファイルと同様の有効な送達経路であることが証明された。図11に示されているように、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)も、マイクロポアによって促進した(例えば、角質層のマイクロポレーション(microporation))経皮送達によって投与し、それをモニターした数時間にわたって血漿PTHの低下が実証された。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)も、マイクロポレーション後に経皮的経路によって投与し、その結果、数時間にわたって血漿PTHが低下した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の経皮送達により、当該記載の化合物を臨床的に送達するための付加的な選択肢がもたらされる。
【0154】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の活性に対する投与経路の影響を評価するために、腎不全の被験体という状況では、1K1Cモデルのラットに、1mg/kgのペプチドを皮下(SC)ボーラスまたは30分間のIV注入のいずれかで与えた。どちらの投与経路でも、24時間超にわたって血漿PTHレベルが有効に低下した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)をIV注入によって送達すると、PTHレベルがベースラインから80〜90%急速に下がった。投薬の16時間後までに、PTHレベルは上昇し始めたが、なおベースラインから約80%低下していた。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)をSCボーラスによって送達すると、PTHレベルはベースラインの約40%まで穏やかな最初の降下を示したが、ペプチドをIV経路によって送達した場合と同様の低下の持続時間を示した。投薬の24時間後、いずれかの経路によって投薬された動物におけるPTHレベルは部分的に元に戻った(rebounded)が、どちらもなお、ベースラインから約40〜60%に低下したPTHレベルを示した。結果により、この投与経路により、PTH低下の有効性および持続時間に関してIV投与と同様のプロファイルがもたらされ、したがって臨床的に投薬するための代替路がもたらされることが示された(データは示していない)。
【0155】
したがって、好ましい実施形態では、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を有する被験体を、血漿PTHレベルおよび/またはカルシウムを低下させるために当該記載の化合物を使用して処置する。中程度に重篤な副甲状腺機能亢進症を持つ無処置のSHPT患者は多くの場合、ベースラインの循環しているインタクトなPTHレベル300pg/ml超を有し、600pg/mLを超え得るレベルを有する。好ましい実施形態では、PTHレベルの減少を、処置前のベースラインレベルを下回るインタクトなPTHの減少として測定する。別の実施形態では、所望のPTHの減少とは、米国腎臓財団または腎障害および腎不全の治療における他の専門家によって確立された一般に認められているガイドライン中の血漿PTHレベルをもたらすことである。
【0156】
別の態様では、治療有効量の当該記載の化合物を投与することを含む、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症および/または骨疾患を治療するための方法が提供される。別の実施形態では、被験体を、当該記載の化合物を1つ以上の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて用いて治療することができる。
【0157】
別の態様では、当該記載の化合物を、PTHまたはPTHの作用を低下させるのに有効な量で投与する。一部の実施形態では、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のベースラインレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%または30%低下する。特定の実施形態では、血漿PTHは、投与した10時間後において少なくとも20%低下する。好ましい実施形態において、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のベースラインレベルから15%〜40%、好ましくは20%〜50%、より好ましくは30%〜70%低下する。
【0158】
別の態様では、当該記載の化合物を、血清カルシウムまたはカルシウムの作用を減少させるのに有効な量で投与する。一部の実施形態では、血清カルシウムは、ポリカチオン性ペプチドを投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下する。一部の好ましい実施形態では、血清カルシウムは、投与した10時間後において少なくとも5%低下する。一部の好ましい実施形態では、血清カルシウムは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のレベルから5%〜10%、好ましくは5%〜20%低下する。
【0159】
別の態様では、治療を必要とする被験体において副甲状腺機能亢進症および/または高カルシウム血症を治療するための方法であって、当該記載の化合物の治療有効量を投与し、それによってPTHおよび/またはカルシウムを低下させることを含む方法が提供される。
【0160】
血清カルシウム、骨代謝およびPTHの間の関連性に基づいて、当該記載の化合物は、副甲状腺機能亢進症に加えて、さまざまな形態の骨疾患および/または高カルシウム血症を治療するために有益であると考えられる。当該記載の化合物は、非経口的に投与することができ、チトクロムP450によって代謝されず胃腸の有害作用を伴わないことがあり、かつ血漿PTHおよびカルシウムをより有効に低下させることができるので、現在の治療剤と比較して有利な点を有し得る。
【0161】
上記の通り、当該記載の方法は、単独で、または1つ以上の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて使用することができる。そのような他の治療的に有効な作用剤としては、これらに限定されないが、アレンドロネートおよびリセドロネートなどの再吸収抑制ビスホスホネート剤;αvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬;ホルモン補充療法において使用される結合型エストロゲン、例えば、PREMPRO(商標)、PREMARIN(商標)およびENDOMETRION(商標)など;選択的なエストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336,156(Pfizer)およびラソフォキシフェンなど;カテプシン(cathespin)K阻害剤;ビタミンD療法;ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール);CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、HECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびCytochromaから開発された中のCTA−018、CTAP201およびCTAP101として公知の類似体など;Sensipar(登録商標)(シナカルセト)などの他のカルシウム模倣薬;II型ナトリウム依存性ホスフェートトランスポーターファミリーの阻害剤、SLC34(2つの腎臓アイソフォームであるNaPi−IIaおよびNaPi−IIc、ならびに腸のNaPi−IIbトランスポーターを含む);フォスファトニン(phosphatonin)(FGF−23、sFRP4、MEPEまたはFGF−7を含む);低用量PTH治療(エストロゲンあり、またはなし);カルシトニン;RANKリガンドの阻害剤;RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン(osteoprotegrin);アデノシンアンタゴニスト(adensosine antagonist);およびATPプロトンポンプ阻害剤を用いた治療が挙げられる。
【0162】
一実施形態では、当該記載の化合物を、PTHレベルおよび血清カルシウムレベルの両方を減少させるために十分な用量で投与する。別の実施形態では、当該記載の化合物を、血清カルシウムレベルに重大に影響を及ぼすことなくPTHを減少させるために十分な用量で投与する。別の実施形態では、当該記載の化合物を、血清カルシウムレベルに重大に影響を及ぼすことなくPTHを増加させるために十分な用量で投与する。
【0163】
製剤
当該記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはキャリアを含む薬学的組成物が提供される。そのような薬学的組成物を調製する方法は、一般には当該記載の化合物をキャリアおよび、必要に応じて、1つ以上のアクセサリー成分と結びつけるステップを含む。当該記載の化合物および/またはそれを含む薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化することができる。一般には、製剤は、当該記載の化合物を液体キャリアまたは細かく分割された固体キャリア、またはその両方に結びつけ、次いで、必要であれば、産物を形づくることによって均一かつ密接に調製する。
【0164】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つ以上の当該記載の化合物を、糖、アルコール、アミノ酸、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されたレシピエントの血液との等張性を製剤に与える溶質または懸濁剤または増粘剤を含有してよい、1つ以上の薬学的に許容できる滅菌の等張性の水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用する直前に滅菌の注射可能な溶液もしくは分散液中に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含む。
【0165】
本発明の薬学的組成物に利用することができる適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散物の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0166】
これらの薬学的組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有してよい。当該記載の化合物に対する微生物の作用の予防は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤(agents to control tonicity)などを組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収時間の延長を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる作用剤を含めることによってもたらすことができる。
【0167】
場合によっては、薬物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性材料または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。このとき、薬物の吸収速度はその溶解速度に左右され、その溶解速度は同様に、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、油状のビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって実現される。
【0168】
例えば、当該記載の化合物は、固形の薬物を液体で再構成することによって作製された液剤の形態でヒトに送達することができる。この溶液は、注入液、例えば注射用水、0.9%塩化ナトリウム注射液、5%ブドウ糖注射液および乳酸リンゲル注射液などでさらに希釈することができる。再構成され、希釈された液剤は、最大効力を送達するために4〜6時間以内に使用することが好ましい。あるいは、当該記載の化合物は、錠剤またはカプセルの形態でヒトに送達することができる。
【0169】
注射可能なデポ剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に当該記載の化合物をマイクロカプセル封入したマトリクスを形成することによって作製する。ポリマーに対する薬物の比率、および利用した特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤は、薬物を体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに閉じ込めることによっても調製される。
【0170】
当該記載の化合物を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、単独で、または例えば、0.1%〜99%(より好ましくは、10%〜30%)の活性成分を薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて含有する薬学的組成物として、与えることができる。他の実施形態では、薬学的組成物は、0.2〜25%、好ましくは0.5〜5%または0.5〜2%の活性成分を含有してよい。これらの化合物は、療法のために、ヒトおよび他の動物に、例えば、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入または皮下注入を含めた任意の適切な投与経路によって投与することができる。これらの化合物は、急速に(<1分以内)ボーラスとして、または長期間にわたって(数分間、数時間または数日間にわたって)さらにゆっくりと投与することができる。これらの化合物は、毎日または何日にもわたって、連続的に、または断続的に送達することができる。一実施形態では、化合物は、経皮的に(例えば、パッチ、マイクロニードル、マイクロポア、軟膏剤、マイクロジェットまたはナノジェットを使用して)投与することができる。
【0171】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和物の形態で使用することができる当該記載の化合物、および/またはその薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化される。
【0172】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態に対する所望の治療反応を実現するために有効なある量の活性成分を得るために、患者に対して有毒になることなく変更してよい。
【0173】
選択される投薬レベルは、利用される特定の当該記載の化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、利用されている特定の化合物が排出または代謝される速度、吸収の速度および程度、治療の持続時間、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、重量、状態、全体的な健康および以前の病歴、および医学の分野で周知の同様の因子を含めた種々の因子に左右される。
【0174】
当技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物中に利用される当該記載の化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで徐々に投与量を増加させることができる。
【0175】
一般に、当該記載の化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすために有効な最低用量である化合物の量になる。そのような有効量は、一般に、上記の因子に左右される。一般に、患者に対する当該記載の化合物の静脈内用量、筋肉内用量、経皮用量、脳室内用量および皮下用量は、示した効果のために使用する場合、1時間当たり体重1キログラム当たり約1μg〜約5mgにわたる。他の実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約2.5mgにわたる。さらなる実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約1mgにわたる。
【0176】
望ましい場合には、当該記載の化合物の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で、必要に応じて、単位剤形で別々に投与される、2つの、3つの、4つの、5つの、6つの、またはそれを超える副用量(sub−dose)として投与することができる。一実施形態では、当該記載の化合物を1日当たり1回用量として投与する。さらなる実施形態では、化合物を連続的に、静脈内経路または他の経路を介して投与する。他の実施形態では、化合物を毎日よりも少ない頻度で、例えば、2〜3日ごと、週に1回以下の頻度の透析治療と併せて投与する。
【0177】
この治療を受けている被験体は、一般に、霊長類、特にヒト、ならびに他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなど;ならびに家禽および愛玩動物を含めた、それを必要とする任意の動物である。
【0178】
当該記載の化合物は、それとして、または薬学的に許容されるキャリアと混合して投与することができ、抗菌性剤、例えばペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチドなどと併せて投与することもできる。したがって、連結的療法(conjunctive therapy)は、最初に投与した活性化合物の治療効果が、次の活性化合物が投与されたときに完全には消失していないようなやり方で、活性化合物を逐次的に投与すること、同時に投与すること、および別々に投与することを含む。
【0179】
開示の化合物の投与経路
これらの化合物は、治療のために、任意の適切な投与経路によってヒトおよび他の動物に投与することができる。本明細書で使用される投与「経路」という用語は、これらに限定されないが、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入もしくは皮下注入、眼内注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、気管内投与、脂肪内(intraadiposal)投与、関節内投与、くも膜下腔内投与、硬膜外投与、吸入、鼻腔内投与、舌下投与、頬側投与、直腸内投与、膣内投与、槽内投与および局所投与、経皮投与、または局所送達による投与(例えばカテーテルまたはステントによる)を含むものとする。
【0180】
体に薬物を経皮的に送達することは、生物学的に活性な物質を被験体に全身送達するため、特に、タンパク質およびペプチドなどの経口的な生物学的利用能が乏しい物質を送達するために、望ましく、かつ都合のよい方法である。送達の経皮的経路は、物質が体内に侵入するのに対する有効な関門としての機能を果たす皮膚の角質層外層に浸透することができる小さな(例えば、約1,000ダルトン未満の)親油性化合物、例えば、スコポラミンおよびニコチンで特に成功している。角質層の下は、生存表皮であり、それは血管を含有しないが、いくつかの神経を有する。さらに深部は真皮であり、それは、血管、リンパ管および神経を含有する。角質層関門を横断する薬物は、一般に、吸収および全身への分布のために、真皮内の毛細血管に拡散することができる。
【0181】
経皮送達における科学技術的な進歩は、タンパク質およびペプチドなどの、親水性の高分子量の化合物を、皮膚を横断して送達することの当技術分野における必要性に取り組むことに焦点が置かれてきた。1つの手法は、化学的方法または物理的方法を使用して角質層を破壊して角質層によってもたらされる関門を弱めることを伴う。低侵襲の技法を使用して皮膚内にミクロン寸法の輸送経路(マイクロポア)(特に、角質層内のマイクロポア)を創出することを伴う皮膚マイクロポレーション技法は、ごく最近の手法である。皮膚(角質層)内にマイクロポアを創出するための技法としては、熱マイクロポレーションまたは熱アブレーション、マイクロニードルアレイ、フォノフォレーシス、レーザーアブレーションおよび高周波アブレーションが挙げられる(PrausnitzおよびLanger(2008年)Nat. Biotechnology 11巻:1261〜68頁;Aroraら、Int. J. Pharmaceutics、364巻:227頁(2008年);Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年);Meidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年))。
【0182】
上記の通り、PTHの分泌は、副甲状腺細胞の細胞表面で発現されるCaSRによって制御される。したがって、CaSRを活性化するために、作用剤または化合物を副甲状腺細胞に送達しなければならない。カルシウム模倣剤の経皮送達は、角質層をわたる送達を実現し、副甲状腺細胞に到達する全身曝露をもたらさなければならない。今まで、当技術分野では、治療的な利益のために十分な量、具体的には、PTHを減少させるため、かつ/または高カルシウム血症の治療、減弱、緩和および/または軽減のために十分な量でカルシウム模倣化合物を経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。
【0183】
カルシウム模倣薬に加えて、1,25−(OH)2ビタミンD3類似体が、慢性腎疾患および末期腎疾患に伴う副甲状腺機能亢進症の患者に対して最も一般的に使用される治療薬である。ビタミンD類似体は、腸における食餌性カルシウムの吸収を促進することによって作用し、PTHの合成および分泌を阻害することによってPTHレベルを低下させる。ビタミンDの静脈内送達および経口送達が治療的に使用されてきたが、今まで、当技術分野では、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)などを、治療的な利益のために十分な量で、具体的には副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるために十分な量で経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。さらに、当技術分野では、カルシウム模倣剤を、ビタミンD類似体と組み合わせて(別々の製剤として、または共製剤(co−formulation)としてのいずれかで)、治療的な利益のために十分な量で、具体的にはPTHを減少させるために十分な量で経皮送達によって同時投与することによって、副甲状腺機能亢進症に罹患している患者に有効な治療がもたらされるかどうかは実証されていない。
【0184】
カルシウム模倣剤は、副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるため、および/または高カルシウム血症を治療するために局所送達または全身送達するために、角質層、および/または表皮の他の層を横断して投与することができる。一実施形態では、マイクロポレーションによってカルシウム模倣剤を送達する。マイクロポレーションのためのいくつもの技法1つのいずれも意図されており、そのいくつかが簡単に説明されている。
【0185】
マイクロポレーションは、角質層を突破して、本明細書に記載のカルシウム模倣剤を皮膚の表面を通して、かつ皮膚基底層および/または血流の内部に送達するために、機械的な手段および/または外部駆動力によって実現することができる。
【0186】
第1の実施形態では、マイクロポレーション技法は、皮膚の特定の領域の角質層を、基底表皮を著しく傷つけることなく角質層を切除するために十分な波長のパルスレーザー光、パルス幅、パルスエネルギー、パルス数、およびパルス繰り返し数を使用して切除することである。次いで、カルシウム模倣剤を切除領域に塗布する。レーザー誘起応力波(LISW)と称される別のレーザーアブレーションマイクロポレーション技法は、強力なパルスレーザーによって生成する広帯域、単極かつ圧縮性の波を伴う。LISWは、組織と相互作用して角質層内の脂質を破壊し、それにより角質層の内部に細胞間チャネルが一過性に創出される。角質層内のこれらのチャネル、またはマイクロポアにより、カルシウム模倣剤が侵入することが可能になる。
【0187】
ソノフォレーシスまたはフォノフォレーシスは、超音波エネルギーを使用する、別のマイクロポレーション技法である。超音波は、20KHzを超える周波数を保有する音波である。超音波は、連続的に、またはパルス状でのいずれかで適用することができ、さまざまな周波数および強度の範囲で適用することができる(Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年))。
【0188】
別のマイクロポレーション技法は、マイクロニードルアレイの使用を伴う。マイクロニードルのアレイは、被験体の皮膚領域に適用した場合、角質層に穴をあけ、神経を著しく刺激する深さ、または毛細血管を穿刺する深さまでは浸透しない。したがって患者は、カルシウム模倣剤を送達するマイクロポアを生成するためにマイクロニードルアレイを適用した際、不快感または痛みを感じない、またはわずかしか感じない。
【0189】
中空または充実したマイクロニードルで構成されるマイクロニードルアレイであって、カルシウム模倣剤を、ニードルの外面にコーティングすることまたは中空のニードルの内部から分配することができるマイクロニードルアレイが意図されている。マイクロニードルアレイの例は、例えば、Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年)およびMeidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年)に記載されている。第1世代のマイクロニードルアレイは、外側に治療剤をコーティングした充実したシリコンマイクロニードルで構成されていた。ニードルのマイクロアレイを皮膚に押しつけ、約10秒後に取り除くと、ニードル上の作用剤の体内への浸透が容易に実現された。第2世代のマイクロニードルアレイは、充実したまたは中空のシリコン、ポリカーボネート、チタンまたは他の適切なポリマーのマイクロニードルで構成され、治療用化合物の液剤でコーティングされている、または治療用化合物の液剤で満たされていた。新しい世代のマイクロニードルアレイは、生分解性ポリマーから調製され、治療剤でコーティングしたニードルの先端部分が角質層内にとどまり、ゆっくりと溶解する。
【0190】
マイクロニードルは、金属、セラミックス、半導体、有機物、ポリマーおよび複合物を含めた種々の材料から構築することができる。構築物の例示的な材料としては、薬学的グレードのステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、スズ、クロム、銅、パラジウム、白金、これらの金属または他の金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、およびポリマーが挙げられる。代表的な生分解性ポリマーとしては、乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−co−グリコリド、およびポリ(エチレングリコール)との共重合体、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)が挙げられる。代表的な非生分解性ポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0191】
マイクロニードルは、まっすぐな軸または先細の軸を有してよい。一実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基部末端において最大であり、基部の遠位末端点まで先細になる。マイクロニードルは、まっすぐな(先細でない)部分および先細の部分の両方を含む軸を有するように製作することもできる。該ニードルは、先細の末端を全く有さなくてもよい、すなわち単に先端部分がとがっていない円柱または先端部分が平らな円柱であってよい。実質的に均一な直径を有するが、1点に向けて先細になっていない中空のマイクロニードルは、本明細書では「マイクロチューブ」と言及される。本明細書で使用される、「マイクロニードル」という用語は、別段の指定のない限り、マイクロチューブおよび先細のニードルの両方を包含する。
【0192】
電気穿孔は、皮膚にマイクロポアを創出するための別の技法である。この手法では、角質層の内部に一過性の、浸透性の細孔を創出するために、マイクロ秒またはミリ秒の長さの高圧の電気パルスの印加を使用する。
【0193】
他のマイクロポレーション技法は、皮膚にマイクロチャネルを創出するために電波の使用を含む。熱アブレーションは、分子量が大きい化合物の経皮的な送達を実現するためのさらに別の手法である。
【0194】
出願人らは、低用量のカルシウム模倣剤を、SHPTを治療するために長期間にわたって治療的に投与することができることを発見した。これは、現在通用している他のカルシウム模倣薬(例えば、シナカルセト塩酸塩)の必要用量と著しく異なる。
【0195】
本明細書に記載の化合物を経皮送達することが、実施例9〜10に記載の試験において実証された。最初の試験では、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、ラットに、皮膚の狭い領域に1.0mmのダーマローラーを適度な圧力下で5回通過させることによってマイクロポレーションして、経皮的に投与した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)または生理食塩水のいずれかの液剤をマイクロポレーションした皮膚の領域に置いた。4時間の期間にわたって血液を抜き取り、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図11に結果が示されており、そこでは生理食塩水で処置した動物(ひし形)および試験化合物で処置した2匹の動物(四角、三角形)について、血漿PTHが投薬前のベースラインに対するパーセントとして示されている。これらのデータは、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、ダーマローラーを使用した経皮的経路(この場合、マイクロポアによって促進した経皮送達)によって、全身的に、十分な量で送達して、試験した約4時間にわたって、ベースラインから有効に、かつ顕著にPTHレベルを低下させることができることが示されている。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)により、急性腎不全の1K1Cラットモデルならびに正常なラット(データは示していない)において、短いIV注入によって投与するとベースラインから有効にPTHレベルを低下させることが示されたことに留意するべきである。
【0196】
別の試験では、実施例10に記載の化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットに、経皮パッチを使用して、マイクロポアによって促進した経皮送達で投与した。生理食塩水中Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の10%液剤(重量で)を含有する経皮パッチ系をマイクロポレーションした領域一面に置き、約30時間、適所に放置した。ラットから、約30時間にわたって定期的に血液を抜き取り、血漿試料を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図12に結果が示されている。驚いたことに、これらのデータは、マイクロポアによって促進した経皮送達により、腎臓の機能が正常なラットにおいて、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を十分な持続性で送達して、30時間超にわたる顕著で長時間のPTH低下をもたらすことが実現され得ることが実証されている。これらのデータは、パッチを使用した、コンジュゲートAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)のマイクロポレーションによって促進した経皮送達により、治療の間に血液をペプチドに十分に曝露させて、30時間超にわたってベースラインからの顕著で持続性のPTH低下をもたらすことが実現され得ることを実証している。これらのデータは、経皮パッチを毎日を基本としてまたはそれより長い日数を基本として送達することにより、治療を必要とする透析患者および非血液透析患者の両方を治療することが可能になることを実証している。例えば、腎移植患者におけるCKD(第4期)、原発性副甲状腺機能亢進症および二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は、一般にはIV薬を用いた治療をされないが、毎日の経皮パッチにより、マイクロポレーションによって促進した経皮送達を介して容易に処置することができた。
【0197】
化合物の投与経路をさらに評価するために、別の試験を行った。実施例11に記載の通り、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットおよび腎不全のラットに、非常に低用量のIV注入によって投与して、注入、経皮パッチ系または顕著なPTH低下を実現するための他の持続性送達手段によって投与する必要がある最低用量を同定した。健康なラットに、非常に低用量(1μg/kg/時間、3μg/kg/時間、および10μg/kg/時間)のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間にわたって静脈内注入した。血液試料を、投薬する前(プレ)、ならびに注入開始の2時間後、4時間後、6時間後(注入終了;EOIの直前)および8時間後(EOIの2時間後)に取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。驚いたことに、図13に示されているデータは、非常に低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(1μg/kg/時間(四角)、3μg/kg/時間(丸)、および10μg/kg/時間(三角形))を6時間にわたって注入することが、注入の間にベースラインからの顕著なPTH低下をもたらすのに有効であることを実証している。これらのデータは、低用量を連続的に送達することが、はるかに高用量を単回のボーラスとして送達することと同じくらい有効であり得る(またはそれよりも有効でさえあり得る)ことを示している。
【0198】
急性腎不全のラット1K1Cモデルにおいて、PTHを低減させる効果をさらに評価した。1K1Cモデルラットに、低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(30μg/kg/時間および100μg/kg/時間)を6時間にわたって静脈内注入した。血液試料を、投薬する前(プレ)、ならびに注入開始の2時間後、4時間後、6時間後(注入終了;EOIの直前)、8時間後(EOIの2時間後)および24時間後に取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図14Aに示されているデータは、低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)をIV注入することにより、ベースラインのPTHレベルが400〜1100pg/mL超であると認めることができる腎不全のモデルである1K1Cモデルにおいて、PTHがベースラインレベルから顕著に低下することを実証している。驚いたことに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間、低用量でIV注入(ひし形、30μg/kg/時間および四角、100μg/kg/時間)することにより、約24時間にわたってPTHをベースラインから低下させることができた。1K1Cラットモデルにおけるこの劇的なPTH低下と一致して、図14Bは、この急性腎不全における血清カルシウムのデータをプロットした棒グラフを示し、これらは、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を低用量でIV注入した後の対応する血清カルシウムの低下を示している。これらのデータは、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)が、約24時間にわたって低用量を注入または送達(例えば経皮送達によって)した後にPTHおよびカルシウムを低下させることができる非常に強力なカルシウム模倣化合物であることを実証している。これらのデータは、カルシウム模倣剤をIV注入によって、またはマイクロポアによって促進した経皮送達によって低用量で持続的に送達することが、毎日以下の頻度を基本とした患者に対する有効な治療であり得るという結論をさらに支持する。
【0199】
併用療法
上記の通り、使用方法は、単独で、または高カルシウム血症および/または骨疾患を治療するための他の手法と組み合わせて使用することができる。そのような他の手法としては、これらに限定されないが、ビスホスホネート剤、インテグリン遮断薬、ホルモン補充療法、選択的なエストロゲン受容体モジュレーター、カテプシンK阻害剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えばZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)など、抗炎症剤、低用量PTH療法(エストロゲンあり、またはなし)、カルシウム模倣薬、ホスフェート結合剤、カルシトニン、RANKリガンドの阻害剤、RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン、アデノシンアンタゴニスト、およびATPプロトンポンプ阻害剤などの作用剤を用いた治療が挙げられる。
【0200】
一実施形態では、併用療法では、ビタミンDまたはビタミンD類似体をカルシウム模倣剤と組み合わせて使用する。ビタミンDはカルシウムの吸収に役立ち、カルシウムおよびリン(phosphorous)の正常な血中レベルを維持するように機能する。PTHは、腸におけるカルシウムの吸収を、ビタミンDの活性型である1,25−(OH)2ビタミンDの産生を増加させることによって増強するように働く。PTHは、腎臓からのリンの排出も刺激し、骨からの放出を増加させる。
【0201】
上記の通り、二次性副甲状腺機能亢進症は、活性なビタミンDホルモンのレベルが不十分であることに関連する副甲状腺ホルモン(PTH)の上昇を特徴とする。二次性副甲状腺機能亢進症(hyperparathryoidism)の治療において、ビタミンDまたはビタミンD類似体を使用して、上昇したPTHレベルを低下させることができる。一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびビタミンD類似体を含む薬学的組成物を包含する。
【0202】
一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)を含む薬学的組成物を包含する。パリカルシトールは、ビタミンDの代謝活性型であるカルシトリオールの合成類似体である。Zemplarの推奨初回用量は、ベースラインであるインタクトな副甲状腺ホルモン(iPTH)レベルに基づく。ベースラインのiPTHレベルが500pg/mL以下の場合は、1日用量は1μgであり、「1週間に3回」用量(多くて1日おきで投与される)は2μgである。ベースラインのiPTHが500pg/mLを超える場合は、1日用量は2μgであり、「1週間に3回」用量(1日おき以下で投与される)は4μgである。その後、投薬は、血清カルシウムおよび血清リンをモニターしながら、個別化し、血清血漿iPTHレベルに基づかなければならない。パリカルシトールは、米国特許第5,246,925号および米国特許第5,587,497号に記載されている。
【0203】
別の実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびCALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)を含む薬学的組成物を包含する。カルシトリオールはビタミンDの代謝活性型である。CALCIJEX(登録商業)(経口)に対して推奨される初回投与量は1日当たり0.25μである。この量は、4〜8週間おきに、1日当たり0.25μgずつ増加させることができる。正常なカルシウムレベル、またはほんのわずかだけ低下したカルシウムレベルが、1日おきに0.25μgの投与量に応答し得る。透析を受けている患者に対しては、CALCIJEX(登録商業)(IV)の推奨初回用量は、1週間当たり3回、1日おきに0.02μg/kg(1〜2μg)である。この量は、2〜4週間ごとに0.5〜1μgずつ増加させることができる。カルシトリオールは、米国特許第6,051,567号および米国特許第6,265,392号および米国特許第6,274,169号に記載されている。
【0204】
一実施形態では、カルシウム模倣剤およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)を含む薬学的組成物が提供される。ドキセルカルシフェロールは、in vivoにおいて代謝的活性化を受けて、天然に存在する、ビタミンDの生物学的活性型である1α,25−ジヒドロキシビタミンD2を形成する、ビタミンDの合成類似体である。HECTOROL(登録商標)の推奨初回用量は、毎週3回、透析時に(およそ1日おきに)10μgの投与である。初回用量は、必要に応じて、血中iPTHを150〜300pg/mLの範囲に低減させるように、調整するべきである。用量は、iPTHが50%低減されない場合、および標的範囲に到達できない場合は、8週間間隔で2.5μgずつ増加させることができる。HECTOROLの最大の推奨用量は、1週間に3回、透析時に20μg、1週間当たり合計60μgの投与である。ドキセルカルシフェロールは、米国特許第5,602,116号および米国特許第5,861,386号および米国特許第5,869,473号および米国特許第6,903,083号に記載されている。
【0205】
組み合わせレジメンにおいて利用するための療法(治療法または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療法および/または手順と、実現される所望の治療効果との適合性を考慮にいれる。利用する療法により、同じ障害に対して所望の効果を実現することができる(例えば、発明の化合物は、同じ障害を治療するために使用される別の作用剤と同時に投与することができる)、または、異なる効果を実現することができる(例えば、任意の有害作用の制御)ことも理解されよう。本明細書で使用される、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与される追加的な治療剤は、「治療されている疾患または状態に適している」ことが公知である。
【0206】
本明細書で定義した本発明の併用治療は、前記治療の個々の構成成分を同時に、逐次的に、または別々に投与することとして実現することができる。
【0207】
化合物またはその薬学的に許容される組成物は、埋め込み型の医療用デバイス、生物侵食性(bio−erodible)ポリマー、埋め込み型ポンプ、および坐剤をコーティングするためにも組成物に組み込むことができる。したがって、別の態様では、上で概説されているような当該記載の化合物を含む、埋め込み型デバイスをコーティングするための組成物、および埋め込み型デバイスをコーティングするために適したキャリアが意図されている。さらに別の態様では、上で概説されている化合物を含む組成物、および前記埋め込み型デバイスをコーティングするのに適したキャリアでコーティングされた埋め込み型デバイスが包含される。
【0208】
適切なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型デバイスの一般的な調製は、米国特許番号第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは、一般には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、エチレン酢酸ビニル、ならびにそれらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、多糖(polysaccaride)、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適切な保護膜によりさらに覆って、組成物に制御放出特性を与えることができる。
【0209】
治療の有効性を決定するための潜在的な臨床マーカー
当該記載の治療方法の有効性の決定は、種々の方法によって決定することができる。
【0210】
血清カルシウムの正常なレベルは、8.8mg/dL〜10.4mg/dL(2.2mmol/L〜2.6mmol/L)の範囲内である。ある特定の場合では、治療の有効性は、これらに限定されないが、血清総カルシウムおよび血清カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、およびマグネシウムを含めた、カルシウムに関連する血清および尿のマーカーを測定することによって決定することができる。
【0211】
他の場合では、有効性は、骨塩密度(BMD)を測定することによって、または、血清中または尿中の、骨形成および/または骨吸収についての生化学的マーカーを測定することによって決定することができる。潜在的な骨形成マーカーとしては、これらに限定されないが、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、およびN末端I型プロコラーゲンプロペプチドが挙げられる。潜在的な骨吸収マーカーとしては、これらに限定されないが、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼが挙げられる。
【0212】
他の場合では、有効性は、投薬前の(ベースライン)レベルと比較したパーセントPTH低下によって、および/または患者に有益であると一般に認められている(例えば、米国腎臓財団によって確立されたガイドライン)望ましいPTHレベルの実現によって決定することができる。さらに他の場合では、有効性は、副甲状腺機能亢進症疾患に関連する副甲状腺過形成における低下を測定することによって決定することができる。
【0213】
当該記載の治療方法を、治療を必要とする被験体に施すと、治療方法により、例えば、血清総カルシウム、血清カルシウムイオン、血中総カルシウム、血中カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、血中PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、マグネシウム、骨塩密度(BMD)、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、N末端I型プロコラーゲンプロペプチド、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼの1つ以上を測定したところ、効果がもたらされることが予想される。効果は、予防的治療ならびに現存する疾患の治療も含む。
【0214】
生物学的に有効な分子は、共有結合または非共有結合性の相互作用で、当該記載のペプチドに作動可能に連結していてよい。特定の実施形態では、作動可能に連結した生物学的に有効な分子は、連結した分子の一部分として化合物に性質を付与することによって、当該記載の化合物の薬物動態を変化させ得る。生物学的に有効な分子によって当該記載の化合物に付与され得る性質のいくつかとしては、これらに限定されないが、化合物が体内の離れた場所に送達されること;化合物の活性が体の所望の場所に集中し、他の場所でのその効果が低下すること;化合物を用いた治療の副作用が低下すること;化合物の浸透性が変わること;化合物の生物学的利用能または体への送達速度が変わること;化合物を用いた治療の効果の長さが変わること;化合物のin vitroにおける化学的安定性が変化すること;化合物のin vivoにおける安定性、半減期、クリアランス、吸収、分布および/または排出が変化すること;化合物の効果の開始速度および減衰速度が変化すること;化合物が効果を有することが可能になることによって許容作用(permissive action)がもたらされることが挙げられる。
【0215】
別の態様では、当該記載の化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートさせることができる。選択されたPEGは、任意の都合のよい分子量のものであってよく、直鎖状または分枝状であってよく、必要に応じて、リンカーによってコンジュゲートすることができる。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(kDa)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約40kDaにわたる。あるいは、使用するPEG部分は、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDaであってよい。
【0216】
当該記載の化合物は、化合物上の任意の位置に位置する適切なアミノ酸残基を通じてPEGとコンジュゲートさせることができる。当該記載の化合物は、必要に応じて、PEGがコンジュゲートされた、例えば、リジンなどの追加的なアミン含有残基を含めた追加的なアミノ酸残基を含有してよい。
【0217】
ペグ化ペプチドにより、コンジュゲートされたペプチドの血清半減期が増加することが当技術分野で公知である。ペグ化ペプチドを形成するための種々の方法が当技術分野で公知である。例えば、PEG部分は、アミノ末端に、カルボキシ末端に、または特許請求されたペプチドの側鎖によって、必要に応じて連結基の存在によって連結させることができる。他の実施形態では、PEG部分はシステインなどのチオール含有アミノ酸の硫黄に連結させることができる、または、リジンなどのアミン含有アミノ酸の側鎖に結び合わせることができる。
【0218】
PEG基は、一般に、PEG部分の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン チオール、エステル、またはカルボン酸基)を通じて、当該記載の化合物のアミノ末端、カルボキシ末端、または側鎖の位置に位置してよい当該記載の化合物の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン、エステル、酸基またはチオール基)に、アシル化またはアルキル化によって当該記載の化合物に結合する。合成ペプチドのペグ化を調製するための1つの手法は、溶液中でコンジュゲート結合によって、それぞれが他方に対して相互に反応性である官能基を有するペプチドとPEG部分を結合させることからなる。ペプチドは、従来の液相合成技法または固相合成技法を使用して容易に調製することができる。ペプチドとPEGをコンジュゲートすることは、一般には、水相で行い、逆相HPLCによってモニターすることができる。ペグ化ペプチドは、当業者に公知の標準の技法を使用して容易に精製し、特徴づけることができる。
【0219】
1つ以上の個々の当該記載の化合物のサブユニットは、特定の側鎖または末端残基と反応することが公知のさまざまな誘導体化剤で修飾することもできる。例えば、リジニル(lysinyl)残基およびアミノ末端残基を、リジニル残基またはアミノ残基の電荷を逆転させる無水コハク酸または他の同様のカルボン酸の無水物と反応させることができる。他の適切な試薬としては、例えば、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサール;ピリドキサールリン酸;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4,−ペンタンジオン;およびトランスアミナーゼによって触媒されるグリオキサル酸との反応が挙げられる。アルギニル残基は、従来の作用剤、例えば、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって修飾することができる。
【0220】
さらに、当該記載の化合物は、生物分析的なELISA測定用の抗体を開発するため、ならびに免疫原性を評価するために有用な免疫原性残基を提供する非カチオン性残基を含むように修飾することができる。例えば、当該記載の化合物は、チロシン残基および/またはグリシン残基を組み込むことによって修飾することができる。チロシル残基の特異的な修飾は、チロシル残基に分光標識を導入することに関して特に興味深い。非限定的な例としては、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応が挙げられる。最も一般的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル誘導体および3−ニトロ誘導体を形成する。
【0221】
当該開示の化合物を含むキット
本発明は、本発明の治療レジメンを実行するためのキットも提供する。そのようなキットは、治療有効量の、CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を、薬学的に許容される形態で、単独で、または薬学的に許容される形態の他の作用剤と組み合わせて含む。好ましい薬学的形態としては、滅菌生理食塩水、ブドウ糖溶液、緩衝溶液、滅菌水、または他の薬学的に許容される滅菌流体と組み合わせた当該記載の化合物が挙げられる。あるいは、組成物は、抗菌剤または静菌剤を含んでよい。あるいは、組成物は、凍結乾燥または乾燥されていてよい。この場合、キットは、注射用溶液を形成するための、薬学的に許容される溶液、好ましくは滅菌された溶液をさらに含んでよい。別の実施形態では、キットは、組成物を注射するための、好ましくは滅菌形態に包装されたニードルまたはシリンジをさらに含んでよい。他の実施形態では、キットは、組成物を被験体に投与するための指示手段をさらに含む。指示手段は、折込み書面、オーディオテープ、視聴覚テープ、または組成物を被験体に投与することについて指示する任意の他の手段であってよい。
【0222】
一実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;および(ii)使用するための指示手段を含む。別の実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載の化合物を含有する第1の容器、および(ii)希釈または再構成するための、薬学的に許容されるビヒクルを含有する第2の容器を含む。
【0223】
別の実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;(ii)抗高カルシウム血症剤を含有する第2の容器;および(iii)使用するための指示手段を含む。
【0224】
一実施形態では、抗高カルシウム血症剤は、ビスホスホネート剤、ホルモン補充治療剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール);CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、低用量PTH(エストロゲンあり、またはなし)、ならびにカルシトニンからなる群から選択される作用剤である。
【0225】
関連する態様では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造品を提供する。例えば、本発明は、単独の、または他の作用剤と組み合わせた有効量の当該記載のペプチド、および本明細書に記載の疾患を治療するための使用について示す指示手段を含む製造品を提供する。
【実施例】
【0226】
以下の実施例は、本明細書に記載の化合物および方法を例示するために提供され、本明細書に記載の化合物および方法を限定するために提供されるのではない。当業者は、本明細書に記載の主題の真の主旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな改変を行うことができる。
【0227】
(実施例1)
PTHを低減させる活性を持つカチオン性化合物
腎不全のモデル
急性腎不全のラットモデル(1K1Cモデルとも称される)を開発して末期腎疾患に関連するSHPTの病態をシミュレートした。このモデルは、腎機能の欠如に関連する副甲状腺機能亢進症(hyper parathyroidsm)、詳細には血漿PTHの顕著な上昇および血清カルシウムの低下の病理学的特性を示す。このモデルを開発したことにより、腎機能障害を持ち、PTHが上昇した被験体の状況において当該記載の化合物をさらに特徴づけることが可能になった。このモデルにおける典型的なベースラインのPTHレベルは、平均約450pg/mLであった。
【0228】
急性腎不全の1K1Cモデルについて、1つの腎臓を除去し、その後、残りの腎臓を45分間の虚血および48時間の再灌流に曝露させた。続く、残りの腎臓に対する虚血/再灌流(I/R)傷害により、重大な壊死および腎不全が生じる。I/R侵襲後24〜48時間超にわたって血清クレアチニンレベルが上昇した(データは示していない)。同様に、生じた腎機能障害に起因して、総PTHレベルが、約100pg/mLのI/R傷害前のレベルから劇的に増加する。I/R後48時間までに、血漿PTHレベルが約450pg/mLまで上昇し(約5倍に増加)、ある場合には、約1200pg/mLの高さまで到達する。この血清クレアチニンおよび血清PTHの再現性のある増加により、ESRD患者で見られる生理を模倣する頑強なモデルがもたらされた。
【0229】
SHPTの治療のために、PTHを低減させるために使用する認可されたカルシウム模倣剤であるシナカルセト塩酸塩(SENSIPAR(登録商標))を、急性腎不全の1K1Cモデルにおいて試験した。シナカルセトを30mg/kgで経口投与することにより、最大6時間にわたって、およそ50%、PTHが顕著に低減した。この結果は、シナカルセトについての公開された前臨床データと一致し(Nemethら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、308巻(2号):627〜35頁(2004年))、急性腎不全の1K1Cモデルがこの適応症に対するカルシウム模倣薬の活性を評価する適切なモデルであることを検証している。
【0230】
この試験で使用したプロトコールは以下の通りである。雄のスプラーグドーリーラットをCharles River Laboratories(Hollister、CA;依頼した注文重量250〜275g)から購入した。被験物を用いて試験するために、それぞれ薬物を投与するため、および血液を抜き取るために動物の大腿静脈および頸静脈に予めカニューレを挿入した。動物を、一定の12時間の明/12時間の暗サイクルで、食物および水をいつでも自由に摂ることができる、温度制御された環境で維持した。動物を用いる全ての実験手順は、IACUCガイドラインに従って実施した。
【0231】
ペントバルビタールナトリウム(5.2%、0.4mL/ラット)を腹腔内(IP)注射することにより、全身麻酔を誘導し、維持した。45分間の腎臓虚血を受けた動物に対して、追加的なペントバルビタールナトリウム(5.2%、0.1mL/ラット)のIP注射を与えて麻酔の水準を維持した。正常なラットにおいて、化合物を投与した後に、PTHを測定するための血液試料採取を連続的なイソフルラン麻酔下で行った。
【0232】
全部の手順に清潔、無菌的な技法を使用した。ラットを麻酔した後、手術の前に腹部を電気バリカンで剃毛し、70%アルコール溶液で皮膚を清潔にした。
【0233】
モデル開発試験のために、血液を抜き取るためのPE−10チューブを用いて左大腿静脈にカニューレ挿入した。両方の腎臓を開腹術によって露出させた。2重の2〜0絹製縫合糸を用いて右腎茎および尿管を結紮した後に、右腎摘出術を実施した。右茎において出血していないことを確認した後、左腎動脈を慎重に切開し、微小血管クリップを用いてクランプして左腎の全体的な虚血を誘導した。全体的な白色〜灰色の色の変化(白化(blanching))を観察することによって腎臓虚血を確認した。腹部器官の温度維持を助けるために腹部の切り口を一時的にガーゼで覆った。指定された虚血期間である45分後、クリップを取り除き、赤色の全体的な回復が観察されたら、左腎動脈の流れが回復したとみなした。腹部の切り口を、2〜0絹製縫合糸を用いて層に閉じた。次いで、動物を麻酔から回復させた。体温(36〜37.5℃)および体重を含めた生理学的パラメータを、手順全体を通して測定した。ヒートパッド直腸プローブフィードバックシステム(heat pad rectal probe feedback system)を使用して体温をモニターし、維持した。
【0234】
1K1Cの外科手術(I/R傷害)のおよそ48時間後、動物にさまざまな化合物を投薬して血漿中のPTHおよびカルシウムに対する効果を測定した。ほとんどの場合、被験物はIV注入によって投与したが(5分、10分または30分の注入時間)、一部の試験では、化合物はIVボーラスまたは皮下(SC)ボーラス注射によって投与した。薬物を投与し、血液を抜き取るために、動物を、イソフルランで麻酔した。
【0235】
試験の過程全体を通して、血液試料を定期的に採取した。血清試料を、カルシウムレベルについて分析し、血漿試料を、PTHについて分析した。個々のラットについてのベースラインのPTH値の範囲に起因して、全てのデータを投薬前の(ベースライン)レベルに対して正規化する。血清クレアチニンを、BioAssay Systems(Hayward、Ca)、カタログ番号DICT−500から市販されているキットを使用して測定した。分析は、製造者の説明書に従って実施した。
【0236】
B.腎不全モデルにおける化合物の試験
以下の配列を有する化合物を、腎不全モデルにおいて試験するために調製した:Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、n=4、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、n=4、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、n=7、Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)、n=4、および生理食塩水の対照、n=2。ペプチドを、3mg/kgの用量で、30分間のIV注入によって動物に投与した。投薬する前にベースラインである投薬前のPTH血漿濃度を決定するために血液試料を抜き取った。図1に、以下の通り結果が示されている:Ac−crrrr−NH2(配列番号4、ひし形)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5、四角)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、三角形)、およびAc−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)。
【0237】
(実施例2)
ヒトカルシウム感知受容体を発現しているHEK−293におけるin vitro細胞アッセイ
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、T25フラスコ中に、フラスコ当たり細胞2百万個で播種し、5%のCO2中、37℃で一晩インキュベートした。その翌日、これらの細胞を、lipofectamine2000トランスフェクション試薬を使用してヒトCaSR受容体でトランスフェクトした。トランスフェクトした24時間後、細胞を、384ウェルプレート中に、細胞8,000個/ウェルで播種した。トランスフェクトした48時間後にアッセイを行った。ある場合では、EC50値を、ヒトカルシウム感知受容体で安定にトランスフェクトしたHEK293細胞におけるイノシトールモノホスフェートの産生を測定することによって決定した(表1参照)。
【0238】
細胞培養培地をウェルから吸引し、28μLの1×刺激緩衝液(10mMのHepes、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、4.2mMのKCl、146mMのNaCl、5.5mMのグルコース、50mMのLiCl、pH7.4)と交換した。細胞を、さまざまな濃度の化合物と一緒に(最高濃度として1mMまたは300μM、さらに1/2logの段階希釈物)、反応が終結する前に37℃で1.5時間インキュベートした。Cisbio IP−One Tbキット(621PAPEC)を使用し、製造者の説明書に従って細胞におけるIP1の産生を決定した。簡単に述べると、化合物とのインキュベーションを、溶解緩衝液中のD2標識したIP1およびクリプテート標識した抗IP1を逐次的に加えることによって終結させ、そして、さらに室温で60分間インキュベートした。プレートを、314nmの励起で、620nmおよび668nmにおいて読み取った。トランスフェクトしていない293細胞を、陰性対照として使用した。
【0239】
668nmおよび620nmにおける蛍光比を決定した。IP1濃度を、既知濃度のIP1標準物質を使用して検量線(Graph Pad Prism ver.4を用いて作成した)から算出した。EC50を、Prismソフトウェアにおいて非線形回帰の曲線の当てはめを使用して、蛍光比OD(668nm)/(OD620nm)値に基づいて算出した。
【0240】
ペプチドおよびコンジュゲートを、ABI自動合成機において0.25mmol規模の固相化学反応によって調製した。Fmoc−アミノ酸(4eq、Anaspec)をRink−アミド樹脂(NovaBioChem)に逐次的に結び合わせることを、HBTU/DIEA活性化を使用して実現した。組み立てられたペプチドを、TFAカクテル(フェノール(5%)、トリイソプロピルシラン(2.5%)および水(2.5%);樹脂1グラム当たり10mL)を用いて切断し、ジエチルエーテルを用いた沈澱によって単離した。C18 HPLCによって精製した後、最終産物を、適切な画分を凍結乾燥することによってTFA塩の形態で単離し、HPLC(純度>95%)およびLC−MS(MWを確認した)によって特徴づけた。
【0241】
(実施例3)
カチオン性サブユニットを持つ化合物のin vivo投与
ペプチドを、イソフルランで麻酔した正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量で静脈内投与した。ラットの対照群を生理食塩水で処置した。投薬する前、および4時間にわたって毎時、血液を抜き取った。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。血漿中のPTHの濃度を、生物活性のあるインタクトなPTH1〜84を検出するELISA(Immutopics International カタログ番号60−2700)によって測定し、1〜4時間を含めたデータ点について、AUCについての累積曲線下面積を算出した。パーセントPTH低下を次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0242】
(実施例4)
構造と活性の関連性についての試験:in vivo活性
本明細書において配列番号26として識別される被試験ペプチド(Ac−carrrar−NH2)、および配列番号29として識別される被試験ペプチド(Ac−arrrar−NH2)を、CaSRでトランスフェクトしたHEK293細胞を使用して、実施例2の手順に従ってin vitroで試験した。ペプチドを、正常なスプラーグドーリーラットに、配列番号29については9mg/kg、および配列番号26については0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与することによってin vivoでも試験した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。血漿(K2EDTA)PTHレベルを、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に評価した。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。図2A〜2Bに結果が群の平均±標準偏差(SD)として示されている。図2Bでは、PTHがベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。
【0243】
(実施例5)
構造と活性の関連性についての試験:D−アミノ酸サブユニットおよびL−アミノ酸サブユニット
D−アミノ酸残基を置換したL−アミノ酸残基を有する一連の化合物を調製した。化合物を、正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。血漿(K2EDTA)PTHレベルを、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に評価し、上記の通りAUCを算出した。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。上記の表4に結果が示されている。
【0244】
(実施例6)
構造と活性の関連性についての試験:ヒスタミンの放出
化合物に関連するヒスタミンの放出に対する正味の正電荷の影響を評価するために、4つ〜7つのカチオン性(アルギニン)残基を含有するペプチドを生成し、in vivoでヒスタミンの放出を誘発するそれらの能力について試験した。試験したペプチドとしては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および(iv)Ac−crrrrrrrr−NH2;配列番号41)を含めた。
【0245】
雄のスプラーグドーリーラットを入手し(Charles River)、それぞれ薬物を注入するため、および血液を抜き取るために、大腿静脈および頸静脈に予めカニューレを挿入した。全てのIV薬物治療を、麻酔(イソフルラン)下で行った。動物に、0.5mLの総容積で1分間のIVプッシュ(IV push)によって投薬した。IVボーラスの5分後、15分後および30分後に血液試料を取得してヒスタミンを分析するための血漿(K2EDTA)試料を生成した。30分間のIV注入試験のために、注入終了時に試料を取得した。ある場合には、急性腎臓虚血の1K1Cモデルのラットを使用した。
【0246】
各血液抜き取りの後、失われた体積を元に戻すために等体積の生理食塩水を注射した。各時点で、血清採取を容易にするために予めコーティングしたEDTAシリンジを使用しておよそ0.2mLの血液を取り出した。
【0247】
ヒスタミンのELISAを、Histamine Enzyme Immunoassay(EIA)キット(カタログ番号A05890、SPI−BIO、Montigny le Bretonneux、France)を使用して、希釈した血漿に対して実施した。ヒスタミンEIAキットは、40pg/mL〜5,500pg/mLの範囲内のヒスタミンを検出する誘導体化−増幅競合酵素免疫測定法(derivitization−amplified competitive enzyme immunoassay)である。試料を、製造者のプロトコールに従って2連で分析した。
【0248】
凍結乾燥したペプチド(TFA塩)を秤量し、記録された質量をペプチド含有量に対して調整した。溶液を、材料をノーマルセーラインに溶解させることによって調製して所望のペプチド濃度を生成した。ある場合では、ペプチド間の比較を可能にするために、ペプチドのモル濃度を調整した。ペプチドを、モルベース当たりで配列番号41と等価な用量(すなわち、0.7μモル/ラット)で、1分間のIVボーラスによってIVボーラスによって投与し、投薬する前(投薬前)、投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。データは群の平均(n=2)±SDとして示されている。ヒスタミンの放出は、投薬前(ベースライン)レベルからの倍数変化として示されている。図3に結果が示されている。データは群の平均(n=2)±SDとして示されている。
【0249】
(実施例7)
構造と活性の関連性についての試験:ヒスタミンの放出
ヒスタミンの放出についてin vitroで評価するために、単離されたラットの腹膜肥満細胞を、ヘパリン(5u/mL)を含有する冷たいHBSS+25mMのHEPES、pH7.4を使用して腹膜洗浄を実施することによって単離した。細胞を、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中で2回洗い、96ウェルプレート(106/ウェル)で、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中10μMの化合物と一緒に、37℃で15分間インキュベートした。細胞の上清を、ヒスタミンEIAキット(Cayman#589651)を使用してヒスタミンについて分析した。表10にデータが示されている。
【0250】
ヒスタミンの放出についてin vivoで評価するために、化合物を、イソフルランで麻酔した正常なラットに、2mg/kgのIVボーラスによって投薬した(1分未満にわたって投与した)。化合物を投与した5分後に血漿ヒスタミンを測定した(CaymanヒスタミンEIA#589651)。表11にデータが示されている。
【0251】
本明細書、特に表10〜11で使用される略語をここで要約する。
【0252】
【化3】
(実施例8)
構造と活性の関連性についての試験:in vivo活性
化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)と比較するために、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を調製した。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)では、X1位のチオール含有サブユニットが、ジスルフィド結合によってL−Cys残基とコンジュゲートしている。2つの化合物を、急性腎不全の1K1Cモデルの動物に、0.3mg/kgおよび0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与した。投薬する前、および投薬後24時間にわたって定期的に血漿PTHレベルを評価した。図10に結果が示されており、示されているデータは群の平均±SEMであり、急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおける、時間を単位とした時間の関数として、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は、四角(0.3mg/kg、n=5)および*記号(0.5mg/kg、n=6)で表され、化合物Ac−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)は三角形(0.3mg/kg、n=8)およびひし形(0.5mg/kg、n=7)で表されている。
【0253】
(実施例9)
カルシウム模倣剤の、マイクロポアによって促進した経皮送達
カルシウム模倣剤(calicimimetic agent)の全身送達を評価するために、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、CD無毛ラットに、レザバーを使用して経皮的に投与した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、生理食塩水中10%溶液として、1.0mmのダーマローラーを適度な圧力下で5回通過させることによってマイクロポレーションしたCD(登録商標)無毛ラットの背部のおよそ1cm2の領域に塗布した。ポリスチレンチャンバー(I.D.9.5mm)を、マイクロポレーションした皮膚の領域一面に接着して、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の溶液または生理食塩水溶液のいずれかが塗布される薬物レザバーを創出した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の10%溶液を、2匹のラット上のレザバーチャンバーに投与し、生理食塩水溶液単独を、1匹のラット上のレザバーチャンバーに投与した。レザバーをテープで覆って蒸発を予防した。4時間の期間にわたって血液を抜き取り、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図11に結果が示されている。
【0254】
(実施例10)
マイクロポアによって促進した経皮パッチによるカルシウム模倣剤の持続性送達
カルシウム模倣剤の全身送達をさらに評価するために、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットに、経皮パッチを使用して経皮的に投与した。正常なラットを、マイクロニードルアレイおよび経皮パッチ系で処置した。スプラーグドーリーラット(約350g)の背部柔皮の狭い面積につき、バリカンを使用して毛を刈り、皮膚の領域を、14×14アレイ(約1cm2)のマイクロニードル(約0.5mm)を使用してマイクロポレーションした。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の生理食塩水中10%溶液(重量で)を含有する経皮パッチ系を、マイクロポレーションした領域一面に置き、約30時間にわたって適所に放置した。30時間にわたって定期的にラットから血液を抜き取り、血漿試料を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図12に結果が示されている。
【0255】
(実施例11)
カルシウム模倣剤の注入
カルシウム模倣化合物のPTHを低減させる効果をさらに評価するために、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットおよび腎不全のラットに非常に低用量のIV注入によって投与して、注入、経皮パッチ系または顕著なPTH低下を実現するための他の持続性送達手段によって投与する必要がある最低用量を同定した。正常なスプラーグドーリーの雄のラット(250〜300g)に、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、1μg/kg/時間、3μg/kg/時間、および10μg/kg/時間の投薬速度で6時間にわたって静脈内注入した。投薬する前、2時間、4時間、6時間(注入終了;EOIの直前)および8時間(EOIの2時間後)において血液試料を取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図13にデータが示されており、6時間にわたって、1μg/kg/時間で処置したラット(四角)、3μg/kg/時間で処置したラット(ひし形)、および10μg/kg/時間で処置したラット(三角形)が、注入の間に、ベースラインからの顕著なPTH低下をもたらすのに有効であった。
【0256】
急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおいて同様の試験を行った。1K1Cモデルラットに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号273を、30μg/kg/時間および100μg/kg/時間の投薬速度で、6時間にわたって静脈内注入した。投薬する前(プレ)、2時間、4時間、6時間(注入終了;EOIの直前)、8時間(EOIの2時間後)および24時間において血液試料を取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図14Aにデータが示されており(30μg/kg/時間、ひし形、および100μg/kg/時間、四角)、および、図14Bに該動物についての血清カルシウムが示されている。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/229,695号、2009年10月28日に出願された米国仮特許出願第61/255,816号、および2010年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/313,635号の利益を主張する。これらの出願の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(配列表、表、またはコンピュータプログラムへの言及)
配列表は、「632008017WO00seqlist.txt」 (85,400バイト)という名前で、2010年7月29日に作製され、テキストファイルの形でEFSにより電子的に提出されている。その内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
本主題は、副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを減少させる活性を持つ化合物、その化合物を含む薬学的組成物、および、これらに限定されないが、高カルシウム血症もしくは副甲状腺機能亢進症を治療すること、またはin vivoでPTHレベルを調節することを含めた治療方法におけるそのような化合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
カルシウムの恒常性は、それによって体が適切なカルシウムレベルを維持する機構である。このプロセスは高度に制御されていて、カルシウムの骨における吸収、輸送、貯蔵、他の組織における沈着、および排出の間の複雑な相互作用に関与する。PTHは、循環しているカルシウムレベルの制御因子であり、骨吸収のプロセスを通じて骨からのカルシウムの放出を増強すること;尿細管からのカルシウムの再吸収を増加させること;および、ビタミンDの活性型である1,25−(OH)2ビタミンDの産生を増加させることによって腸におけるカルシウムの吸収を増強することによって、血液中のカルシウムの濃度を増加させるように機能する。PTHは、リンの腎臓からの排出も刺激し、骨からの放出を増加させる。
【0005】
PTHの分泌は、副甲状腺細胞の表面上のいくつかの細胞型によって発現され、細胞外のカルシウムイオン(Ca2+)の濃度のわずかな変動を検出し、PTHの分泌を変化させることによって応答するGタンパク質共役受容体である、カルシウム感知受容体(CaSR)によって制御される。Ca2+によってCaSRが活性化されることにより、数秒から数分に、小胞輸送が阻害されることによってPTHの分泌が阻害され、このプロセスは、受容体のプロテインキナーゼC(PKC)リン酸化によって調節され得る。CaSRは、骨芽細胞および腎臓においても発現され、そこで腎臓のCa2+排出を制御する。
【0006】
さらに、PTHは、リンの恒常性を制御する。PTHは、GI管の細胞の頂端膜(刷子縁膜)および側底膜の両方における副甲状腺ホルモン受容体1(PTHR1)を刺激する。PTHR1が刺激されることにより、刷子縁膜上の腎臓Na+/ホスフェート(NaPi−IIa)共輸送体の内部移行による減少の結果としてホスフェート(Pi)の尿中排出が増加する。
【0007】
PTHは、骨における骨芽細胞および破骨細胞の制御にも関与する。PTHは、骨吸収および腎臓におけるカルシウムの再吸収を増加させることによって、循環しているCa2+を増加させる。PTHにより骨芽細胞が刺激されてRANKリガンド(RANKL)が産生し、それがRANK受容体に結合し、破骨細胞が活性化され、骨吸収の増加および血清Ca2+の増加につながる。オステオプロテゲリン(OPG)は、RANKLに対するおとり受容体であり、骨吸収を遮断する。骨粗鬆症は、破骨細胞による骨吸収および骨芽細胞による骨形成のプロセス間の不均衡によって引き起こされる。
【0008】
ヒトの体は、およそ1kgのカルシウムを含有し、その99%が骨に存在する。正常状態下で、循環しているカルシウムイオン(Ca2+)は、約9〜10mg/dL(すなわち、2.25〜2.5mmol/L;約600mg)のレベルにしっかりと維持されている。およそ1gの、元素のカルシウム(Ca2+)が毎日経口摂取されている。この量のうち、およそ1日当たり200mgが吸収され、1日当たり800mgが排出される。さらに、およそ1日当たり500mgが骨吸収によって放出される、または骨中に沈着する。1日当たり約10gのCa2+が腎臓を通して濾過され、その約200mgが尿中に現れ、残りは再吸収される。
【0009】
高カルシウム血症は、血液中のカルシウムレベルの上昇である。急性高カルシウム血症は、胃腸の症状(食欲不振、悪心、嘔吐);腎臓の症状(多尿症、多飲多渇症)、神経筋の症状(うつ病、錯乱、昏迷、昏睡)および心臓の症状(徐脈、第1度房室の)を招く可能性がある。慢性高カルシウム血症は、胃腸の症状(消化不良、便秘、膵炎);腎臓の症状(腎結石症、腎石灰症)、神経筋の症状(衰弱)および心臓の症状(高血圧ブロック(hypertension block)、ジギタリス感受性)も伴う。心臓のリズムの異常が、結果として生じ得、QT間隔短縮およびT波拡大というEKG所見により、高カルシウム血症が示唆される。高カルシウム血症は無症候性であり得、症状は一般的には高カルシウムレベル(12.0mg/dLまたは3mmol/l)で起こる。重篤な高カルシウム血症(15〜16mg/dLまたは3.75〜4mmol/lを超える)は、医学的救急とみなされる:これらのレベルにおいて、昏睡および心停止が、結果として生じ得る。
【0010】
高カルシウム血症は、副甲状腺機能亢進症によって頻繁に引き起こされ、過剰な骨吸収および血清カルシウムレベルの上昇につながる。原発性孤発性副甲状腺機能亢進症(primary sporadic hyperparathyroidism)では、単独の副甲状腺腫によってPTHが過剰産生される;一般的ではないが、多発性腺腫またはびまん性副甲状腺過形成も原因であり得る。PTHの分泌が増加することは、Ca2+およびホスフェート(Pi)の放出を伴う骨吸収の正味の増加につながる。また、PTHは腎臓におけるCa2+の再吸収を増強し、ホスフェート(Pi)の再吸収を阻害し、その結果、血清カルシウムが正味増加し、ホスフェートが減少する。
【0011】
二次性副甲状腺機能亢進症は、Ca2+レベルの循環レベルが減少することによってPTHの分泌が刺激されると起こる。二次性副甲状腺機能亢進症の1つの原因は、多嚢胞性腎疾患または慢性腎盂腎炎における慢性腎不全などの慢性腎不全(慢性腎疾患またはCKDとも称される)、または血液透析患者における慢性腎不全などの慢性腎不全(末期腎疾患またはESRDとも称される)である。不十分なカルシウム摂取、GI障害、腎不全、ビタミンD欠乏症、および腎性高カルシウム尿症から生じる低カルシウム血症に応答して過剰なPTHが産生され得る。三次性副甲状腺機能亢進症は、長期にわたる二次性副甲状腺機能亢進症および高カルシウム血症の後に起こり得る。
【0012】
悪性腫瘍は非PTH媒介性高カルシウム血症の一般的な原因である。悪性腫瘍の高カルシウム血症は、珍しいが重篤な癌の合併症であり、癌患者の10%〜20%に影響を及ぼしており、充実性腫瘍および白血病のどちらとも一緒に起こり得る。この状態は突然発症し、極めて不良な予後を有し、生存期間中央値はたった6週間である。増殖因子(GF)は、腫瘍細胞における副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の産生を制御する。腫瘍細胞が自己分泌GFによって刺激されてPTHrPの産生が増加し、それが骨吸収の増強につながる可能性がある。骨転移性の腫瘍細胞もPTHrPを分泌する可能性があり、それにより骨が再吸収され得、追加的なGFが放出され、それが今度はパラ分泌的に作用してPTHrP産生をさらに増強する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、例えば、in vivoでPTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを調節する活性を持つ化合物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、式
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
を含む化合物が提供され、式中、X1はチオール含有基を含むサブユニットであり;X5はカチオン性サブユニットであり;X6は非カチオン性サブユニットであり;X7はカチオン性サブユニットであり;X2、X3およびX4のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つは、それぞれ独立して、カチオン性サブユニットであり;化合物は、副甲状腺ホルモン濃度を減少させる活性を有する。一実施形態では、副甲状腺ホルモン濃度の低下は、処置前の被験体における血液中または血漿中の副甲状腺ホルモン濃度と比較した、化合物で処置した被験体における血液中または血漿中の副甲状腺ホルモン濃度の低下である。別の実施形態では、副甲状腺ホルモン濃度の低下は、ヒスタミン応答なく実現される。
【0015】
別の実施形態では、X3およびX4は、非カチオン性であり、一方X1、X5、X6およびX7はカチオン性である。
【0016】
一実施形態では、X1サブユニットはチオール含有アミノ酸残基である。別の実施形態では、X1サブユニットのチオール基は有機チオール含有部分である。
【0017】
別の実施形態では、X1サブユニットがチオール含有アミノ酸残基である場合、それはL−システイン、D−システイン、グルタチオン、n−アセチル化システイン、ホモシステインおよびペグ化システインからなる群から選択される。
【0018】
さらに別の実施形態では、有機チオール含有部分は、チオールアルキル部分またはチオアシル部分、例えば3−メルカプトプロピルまたは3−メルカプトプロピオニルなど、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオベンジル、またはチオプロピルから選択される。さらに別の実施形態では、有機チオール含有部分はメルカプトプロピオン酸である。
【0019】
さらに別の実施形態では、X1サブユニットはアセチル基、ベンゾイル基、ブチル基、またはアセチル化されたベータアラニンなどの別のアミノ酸を含むように化学的に修飾されている。
【0020】
さらに別の実施形態では、X1サブユニットはチオール部分を含み、X1サブユニットは第2のチオール部分に共有結合によってつながっている。
【0021】
別の実施形態では、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7はアミノ酸残基の連続した配列(本明細書では(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)、配列番号1と称される)または有機化合物サブユニット(非アミノ酸残基)の配列で構成される。
【0022】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、L−アミノ酸残基の連続した配列、D−アミノ酸残基の連続した配列、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の混合物の連続した配列、またはアミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の混合物である。
【0023】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、細胞膜を通る輸送を促進するための化合物に連結されている。別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、組織の1つ以上の層の内部への、またはそれを通る配列の送達を増強する化合物に連結されている。
【0024】
別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、長さが8〜50アミノ酸残基、8〜40アミノ酸残基、8〜30アミノ酸残基または8〜20アミノ酸残基のアミノ酸残基の配列内に含有される。さらに別の実施形態では、アミノ酸残基の連続した配列は、長さが8〜19アミノ酸残基、8〜18アミノ酸残基、8〜17アミノ酸残基、8〜16アミノ酸残基、8〜15アミノ酸残基、8〜14アミノ酸残基、8〜13アミノ酸残基、8〜12アミノ酸残基、8〜11アミノ酸残基、8〜10アミノ酸残基、または8〜9アミノ酸残基のアミノ酸残基の配列内に含有される。
【0025】
別の実施形態では、X3サブユニットはカチオン性アミノ酸残基である。
【0026】
別の実施形態では、X2サブユニットは非カチオン性アミノ酸残基であり、別の実施形態では、X4サブユニットは非カチオン性アミノ酸残基である。一実施形態では、非カチオン性アミノ酸残基はD−アミノ酸である。
【0027】
別の実施形態では、X3およびX4はカチオン性D−アミノ酸残基である。
【0028】
別の実施形態では、X5サブユニットはD−アミノ酸残基である。
【0029】
別の態様では、任意の当該記載の化合物における連続した配列は、X1サブユニット内のチオール含有基を介して、第2の連続した配列に共有結合で結合している。例えば、第2の連続した配列は、連続した配列と同一であってよい(二量体が形成される)、または、連続した配列が細胞膜を通って移動するのを促進する部分に結合している場合にそうであるように、非同一であってよい。
【0030】
別の態様では、ペプチドcarrrar(配列番号2)で構成されるコンジュゲートが提供され、ここでペプチドはそのN末端残基においてCys残基とコンジュゲートしている。
【0031】
一実施形態では、ペプチドは、N末端、C末端、またはその両方において化学的に修飾されている。
【0032】
別の実施形態では、ペプチドのN末端はアセチル化によって化学的に修飾されており、C末端はアミド化によって化学的に修飾されている。
【0033】
別の実施形態では、コンジュゲートはAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である。
【0034】
別の態様では、本明細書に記載の化合物を被験体に提供する、被験体における二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を治療する方法が企図される。種々の実施形態では、被験体は慢性腎疾患または他の状態に罹患した被験体であってよい。
【0035】
別の態様では、本明細書に記載の化合物を被験体に提供する、被験体における副甲状腺ホルモンを減少させる方法が企図される。
【0036】
別の態様では、本明細書に記載の化合物のいずれかに一致する化合物を、第2の作用剤と組み合わせて提供することを含む治療レジメンが提供される。
【0037】
一実施形態では、第2の治療剤は、ビタミンD、ビタミンD類似体またはシナカルセト塩酸塩である。
【0038】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、配列の任意の1つ以上が特許請求の範囲から個々に除外または除去されることが企図される。ある特定の実施形態では、配列番号162〜182の任意の1つ以上で識別されるペプチドが、個々に、または任意の組み合わせで、特許請求された化合物、組成物および方法から排除される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)において、ラットにAc−crrrr−NH2(配列番号4、ひし形)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5、黒四角)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、三角形)、Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)、または生理食塩水の対照(×記号)を投薬したときの、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図2A】図2Aは、ヒトCaSRを安定なトランスフェクトされたHEK−293細胞系として発現させたときのin vitro細胞アッセイにおいてヒトCaSRを活性化する化合物の能力の尺度としての、nMを単位とした、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、四角)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29、三角形)の化合物濃度に応じたIP1濃度のグラフである。
【図2B】図2Bは、配列番号26で識別されるペプチド(Ac−carrrar−NH2)(四角)および配列番号29で識別されるペプチド(Ac−arrrar−NH2)(ひし形)をin vivo投与すると、PTH濃度が低下したことを示す図である。ペプチドを正常なスプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラットに、配列番号29については9mg/kg、および配列番号26については0.5mg/kgの用量で、IVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した(破線)。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。結果は、群の平均±標準偏差(SD)として示され、PTHはベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。
【図3】図3は、正常なスプラーグドーリーラットにおいて、さまざまな化合物をIVボーラス投与した後のヒスタミンの放出を比較した棒グラフである。化合物Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)を等モルのIVボーラス用量2.1μmol/kgで投薬し、投薬する前(投薬前)、投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。
【図4】図4は、正常なスプラーグドーリーラットに2つの化合物をIVボーラス投与した後のヒスタミンの放出を比較した棒グラフである。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、網掛けされた棒)およびAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、白抜きの棒)を3mg/kgで投薬し、投薬する前(ゼロ時間)および投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。
【図5】図5は、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、ひし形)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8、四角)、Ac−crarrrr−NH2(配列番号9、三角形)、Ac−crrarrr−NH2(配列番号10、×記号)、Ac−crrrarr−NH2(配列番号11、*記号)、Ac−crrrrar−NH2(配列番号12、丸)またはAc−crrrrra−NH2(配列番号13、+記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した正常なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図6A】図6Aは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、黒四角)、Ac−craarrr−NH2(配列番号24、×記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した健康なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図6B】図6Bは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、黒四角)、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、ひし形)、Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28、×記号)を0.5mg/kgのIVボーラスによって投薬した健康なラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図7】図7は、正常なスプラーグドーリーラットに1mg/kg(ひし形)、0.5mg/kg(四角)、0.3mg/kg(三角形)、および0.1mg/kg(×記号)の用量でIVボーラスとして投与した化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)についての、時間に応じた血液中の副甲状腺ホルモンレベルの減少を示す図である。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラス(丸)を対照として使用した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。
【図8】図8は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)、急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。ラットに、3mg/kg(ひし形)、1mg/kg(三角形)、0.5mg/kg(四角)および0.3mg/kg(×記号)の用量の化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)または生理食塩水(四角)をIVボーラスによって投与した;図8中の破線は投薬前のベースラインPTHレベルを示している。
【図9】図9は、生理食塩水(×記号)、または化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、白抜きのひし形)、およびAc−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きの四角)を1mg/kgで30分間のIV注入によって静脈内投薬したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。投薬する前、投薬の16時間後および24時間後に血漿PTHレベルを評価した。
【図10】図10は、急性腎不全のラット(1K1Cモデル)における、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。ラットに、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、四角、*記号)およびAc−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号146、三角形、ひし形)を、0.3mg/kg(四角、三角形)および0.5mg/kg(*、ひし形)の用量でIVボーラスによって投与した。
【図11】図11は、マイクロポアによって促進した経皮送達によってAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、2匹の動物、四角および三角形)で、または経皮送達によって生理食塩水(ひし形)で処置したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図12】図12は、マイクロポアによって促進した経皮送達によってAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)で処置したラットにおける、時間を単位とした時間に応じた、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとしての副甲状腺ホルモンレベルのグラフである。
【図13】図13は、正常なスプラーグドーリーラットにおける、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間IV注入している間、およびその後の平均PTH(ベースラインに対するパーセントとして)のグラフである。化合物を1μg/kg/時間(四角)、3μg/kg/時間(丸)、および10μg/kg/時間(三角形)の速度で注入した。
【図14A】図14Aは、急性腎不全の1K1Cラットモデルにおける、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間IV注入している間、およびその後のPTH(ベースラインに対するパーセントとして)を示す図である。ラットに、30μg/kg/時間(ひし形)および100μg/kg/時間(四角)の投薬速度で静脈内注入した。
【図14B】図14Bは、図14Aの通りに処置した1K1Cモデルのラットについての、血清カルシウムをmg/dLの単位で示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本主題は、本明細書に含まれる好ましい実施形態および実施例の以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【0041】
I.定義
本出願の範囲内では、別段の指定のない限り、本出願の用語の定義および技法の実例は、いくつかの周知の参考文献、例えば:Sambrook、J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);Goeddel、D.編、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、CA(1991年);「Guide to Protein Purification」Deutshcer、M.P.編、Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1989年);Innisら、PCR Protocols:A guide to Methods and Applications、Academic Press、San Diego、CA(1990年);Freshney、R.I.、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第2版、Alan Liss、Inc. New York、NY(1987年);Murray、E.J.編、Gene Transfer and Expression Protocols、109〜128頁、The Humana Press Inc.、Clifton、NJおよびLewin、B.、Genes VI、Oxford University Press、New York(1997年)などのいずれかにおいて見ることができる。
【0042】
本明細書で使用される単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、別段の指定のない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「a(1つの)」モジュレーターペプチドは、1つ以上のモジュレーターペプチドを包含する。
【0043】
本明細書で使用される化合物は、化合物を被験体に投与すると、血漿副甲状腺ホルモン(PTH)が、化合物を投与する前の血漿PTH濃度と比較して低減する場合に、「副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性」または「PTHを低減させる活性」を有する。一実施形態では、PTHレベルの減少は、化合物を投与した1時間後に、化合物を投与する前のPTHレベルよりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%低いことである。
【0044】
本明細書で使用される、「ヒスタミン応答がないこと」または「ヒスタミン応答の欠如」は、本明細書に記載のアッセイにおいてin vitroで測定したところ、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、または3倍未満のヒスタミンの増加をもたらす化合物の用量を意味する。倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベルおよび化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。
【0045】
本明細書で使用される、「アミノ酸」は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を指す。20種の天然に存在するアミノ酸(L−異性体)は接頭辞「L−」を持つ(アキラルであるグリシン以外)3文字コード、また大文字の1文字コードで示される:アラニン(「L−Ala」または「A」)、アルギニン(「L−Arg」または「R」)、アスパラギン(「L−Asn」または「N」)、アスパラギン酸(「L−Asp」または「D」)、システイン(「L−Cys」または「C」)、グルタミン(「L−Gln」または「Q」)、グルタミン酸(「L−Glu」または「E」)、グリシン(「Gly」または「G」)、ヒスチジン(「L−His」または「H」)、イソロイシン(「L−Ile」または「I」)、ロイシン(「L−Leu」または「L」)、リジン(「L−Lys」または「K」)、メチオニン(「L−Met」または「M」)、フェニルアラニン(「L−Phe」または「F」)、プロリン(「L−Pro」または「P」)、セリン(「L−Ser」または「S」)、トレオニン(「L−Thr」または「T」)、トリプトファン(「L−Trp」または「W」)、チロシン(「L−Tyr」または「Y」)およびバリン(「L−Val」または「V」)。L−ノルロイシンおよびL−ノルバリンは、それぞれ(NLeu)および(NVal)と表すことができる。キラルである19種の天然に存在するアミノ酸は、接頭辞「D−」を持つ3文字コードまたは小文字の1文字コードで示される対応するD−異性体を有する:アラニン(「D−Ala」または「a」)、アルギニン(「D−Arg」または「r」)、アスパラギン(「D−Asn」または「a」)、アスパラギン酸(「D−Asp」または「d」)、システイン(「D−Cys」または「c」)、グルタミン(「D−Gln」または「q」)、グルタミン酸(「D−Glu」または「e」)、ヒスチジン(「D−His」または「h」)、イソロイシン(「D−Ile」または「i」)、ロイシン(「D−Leu」または「l」)、リジン(「D−Lys」または「k」)、メチオニン(「D−Met」または「m」)、フェニルアラニン(「D−Phe」または「f」)、プロリン(「D−Pro」または「p」)、セリン(「D−Ser」または「s」)、トレオニン(「D−Thr」または「t」)、トリプトファン(「D−Trp」または「w」)、チロシン(「D−Tyr」または「y」)およびバリン(「D−Val」または「v」)。D−ノルロイシンおよびD−ノルバリンは、それぞれ(dNLeu)および(dNVal)と表すことができる。「アミノ酸残基」は、多くの場合、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の単量体サブユニットに関して使用され、「アミノ酸」は、多くの場合、遊離分子に関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は互換的に使用され、文脈に応じてペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の遊離分子または単量体サブユニットを指す場合がある。
【0046】
2つのアミノ酸配列のパーセント「相同性」またはパーセント「同一性」を決定するために、最適に比較する目的で配列を位置合わせする(例えば、一方のポリペプチドの配列に、他方のポリペプチドと最適に位置合わせするためのギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位のアミノ酸残基を比較する。一方の配列における位置を、他方の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基が占める場合に、それらの分子はその位置において同一である。本明細書で使用されるアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」に相当する。したがって、2つの配列間のパーセント配列同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、パーセント配列同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)。2つのポリペプチド配列間のパーセント配列同一性は、Vector NTI ソフトウェアパッケージ(Invitrogen Corporation、5791 Van Allen Way、Carlsbad、CA 92008)を使用して決定することができる。ギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を、2つのポリペプチドのパーセント同一性を決定するために使用する。他のパラメータは全て初期設定に設定する。
【0047】
「カチオン性アミノ酸」は、例えば側鎖、または「R基」が、生理的なpHでプロトンを受け取って正に荷電し得るアミン官能基または他の官能基、例えばグアニジン部分またはイミダゾール部分などを含有するアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を意味する。カチオン性アミノ酸残基としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン、およびホモアルギニンが挙げられる。
【0048】
「カチオン性サブユニット」は、生理的なpH(7.4)で正味の正電荷を有するサブユニットを意味する。
【0049】
本明細書で使用される、「保存されたアミノ酸置換」は、選択されたポリペプチドまたはタンパク質の活性または三次構造物に顕著な変化をもたらさない置換である。そのような置換は、一般には、選択されたアミノ酸残基を同様の物理化学的性質を有する異なるアミノ酸残基と交換することを含む。アミノ酸およびアミノ酸残基を物理化学的性質によってグループ化することは、当業者に公知である。例えば、天然に存在するアミノ酸の中で、同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されており、それらとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される、「化学的架橋」は、2つ以上の分子の共有結合を指す。
【0051】
ペプチドまたはペプチド断片は、それが少なくとも1つの、親ペプチドまたは親ポリペプチドの5つのアミノ酸残基、より好ましくは8つのアミノ酸残基の連続した配列と同一または相同であるアミノ酸配列を有する場合に、親ペプチドまたは親ポリペプチドに「由来する」。
【0052】
本明細書で使用される、「副甲状腺機能亢進症」という用語は、別段の指定のない限り、原発性の、二次性の、および三次性の副甲状腺機能亢進症を指す。
【0053】
「皮内の」という用語は、本明細書に記載の治療方法では、治療有効量のカルシウム模倣化合物を皮膚に塗布して化合物を角質層の下の皮膚の層に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
【0054】
本明細書で使用される、「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、組換えDNA技法によって産生された場合は、細胞材料の一部を、または、化学的に合成された場合は、化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、それが天然に生じた、または組換えによって産生された細胞の細胞構成成分の一部から分離されているポリペプチド調製物を包含する。ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が組換えによって産生される場合、培地を実質的に含まない、すなわち、培地が、ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満に相当することも好ましい。「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、ポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されているポリペプチド調製物を包含する。一実施形態では、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、約30%未満の(乾燥重量で)化学的前駆体または他の化学物質、好ましくは約20%未満の化学的前駆体または他の化学物質、より好ましくは約15%未満の化学的前駆体または他の化学物質、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆体または他の化学物質、および最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または他の化学物質を有するポリペプチド調製物を包含する。好ましい実施形態において、単離されたポリペプチド、またはその生物学的に活性な部分は、ドメインポリペプチドを得たのと同じ生物体由来の汚染ポリペプチドを欠いている。
【0055】
本明細書で使用される「高分子」は、一般には約900ダルトンを超える分子量を有するペプチド、ポリペプチド、タンパク質または核酸などの分子を指す。
【0056】
「非カチオン性アミノ酸」は、例えば、側鎖、または「R基」が中性(中性極性および中性非極性)のアミノ酸残基および酸性のアミノ酸残基の場合のように、生理的なpH(7.4)で電荷を有さない、または正味の負電荷を有するアミノ酸残基を意味する。非カチオン性アミノ酸としては、炭化水素アルキル部分または芳香族部分であるR基を持つ残基(例えば、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン);中性の、極性R基を持つ残基(アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン);または中性の、非極性R基を持つ残基(グリシン、メチオニン、プロリン、バリン、イソロイシン)が挙げられる。酸性のR基を持つ非カチオン性アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0057】
「ポリマー」は、共有結合によってつながった、2つ以上の同一のサブユニットまたは同一でないサブユニットの直鎖を指す。
【0058】
本明細書で使用される、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、そのサイズにかかわらず、ペプチド結合によって連結したアミノ酸残基の鎖でできている任意のポリマーを指す。「タンパク質」は、多くの場合、比較的大きなポリペプチドに関して使用され、および「ペプチド」は、多くの場合、小さなポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複および変動する。したがって、簡単にするために、「ペプチド」という用語を本明細書で使用するが、ある場合には、当技術分野では同じポリマーを「ポリペプチド」と称することもある。別段の指定のない限り、ペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の順に示されている。
【0059】
本明細書で使用される「チオール含有基」または「チオール含有部分」は、硫黄−水素結合(−SH)を含み、生理的条件下で別のチオールと反応してジスルフィド結合を形成することができる官能基を意味する。別のチオールとジスルフィド結合を形成することができるチオールは、本明細書では「反応性チオール」と称される。好ましい実施形態では、チオール含有基は化合物の主鎖から6原子未満離れている。より好ましい実施形態では、チオール含有基は構造物(−SH−CH2−CH2−C(O)−O−)−を有する。
【0060】
本明細書で使用される、「低分子」は、有機分子などの高分子以外の分子を指し、一般には1000ダルトン未満の分子量を有する。
【0061】
本明細書で使用される、「被験体」は、ヒト被験体または動物被験体を指す。
【0062】
「サブユニット」は、2つ以上の他の単量体単位につながってポリマー化合物を形成している単量体単位を意味し、サブユニットはポリマー化合物の要素の最も短い繰り返しパターンである。例示的なサブユニットはアミノ酸であり、それが連結すると、ポリマー化合物、例えば当技術分野でペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と称されるポリマー化合物が形成される。
【0063】
本明細書で使用される、「治療有効量」は、所望の治療効果をもたらすために必要な量である。例えば、高カルシウム血症の被験体において血清カルシウムを低下させるための方法では、治療有効量は、血清カルシウムレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。カルシウムは総カルシウムまたはカルシウムイオンとして測定することができる。別の例として、in vivoにおけるPTHを低減させるための方法では、治療有効量は、PTHレベルを少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下させるために必要な量である。
【0064】
本明細書で使用される、「経皮的な」という用語は、本明細書に記載の治療方法では、治療有効量のカルシウム模倣剤を皮膚に塗布して化合物を体循環に送達し、このようにして所望の治療効果を実現することを意味する。
【0065】
別段の指定がない限り、本明細書で言及される全ての文書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
II.化合物
一態様では、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7のサブユニットの配列を含む化合物が提供され、X1はチオール基を含むサブユニットであり;X5はカチオン性サブユニットであり;X6は非カチオン性サブユニットであり;X7はカチオン性サブユニットであり;X2、X3およびX4のうちの少なくとも2つは、独立して、カチオン性サブユニットである。化合物は、被験体の血液中の副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを減少させる活性および/またはカルシウムレベルを減少させる活性を有する。副甲状腺ホルモンレベルの減少は、下に例示する通り、被験体における血漿中PTH濃度または血中PTH濃度が、化合物で処置する前の血漿中PTH濃度または血中PTH濃度と比較して低減することを意味する。一実施形態では、化合物により、投薬後1時間以内に、投薬する前の血漿PTHと比較して少なくとも50%の血漿PTH濃度の低下が実現される。化合物は、ペプチドによって例証されるが、当業者は、本明細書に記載の構造と活性の関連性についての試験に基づいて所望の活性を有する非ペプチド性化合物を設計することができることを理解されたい。
【0067】
本明細書で使用される副甲状腺ホルモンまたはPTHは、副甲状腺によって産生される84アミノ酸のペプチドおよびその分解生成物である。全長PTH(残基1〜84からなり、時には「インタクト」なPTHまたは「生物活性」PTHと称される)に加えて、タンパク質分解および他の代謝経路によって生成したさまざまなPTH断片が血液中に存在する。インタクトなPTH分子のアミノ末端の1〜34領域は生物学的に活性である。分子のこの領域は、PTHが標的組織の副甲状腺ホルモン受容体に結合することを可能にするアミノ酸配列を含有する。インタクトなPTH分子の中間およびカルボキシ末端の35〜84領域は、生物学的に不活性であるが、免疫学的反応性を保有すると考えられている。PTH7〜84は、1〜84PTHの効果と反対の効果を発揮すると考えられている。さまざまな分解生成物を含めたPTHのレベルを測定するために、さまざまなアッセイが開発されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれるSouberbielleら、Kidney International、77巻:93〜100頁(2010年)によって概説されている。一実施形態では、本明細書で定義されるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物は、インタクトな生物活性型のPTH(1〜84)を検出する検証されたPTH定量化方法および当技術分野で公知である市販のキットを使用して確認される(例えば、本明細書の実施例3を参照されたい)。
【0068】
最初の試験では、4〜7個のカチオン性(例えばアルギニン)サブユニットを含有する化合物を生成し、ベースラインのPTH値および生理食塩水で処置した動物と比較してPTHを低減させるそれらの能力について試験した。詳細には、急性腎不全の1K1Cモデルを、腎機能障害環境においてPTHを低減させる活性を特徴づけることに使用するために確立した。1K1Cモデルは実施例1Aに記載されており、試験のために合成された化合物としては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、(iv)Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)および(v)生理食塩水の対照を含めた。
【0069】
実施例1Bに記載の通り、配列番号4、配列番号5、配列番号6および配列番号7として識別される化合物を、それぞれ30分間IV注入することによって1K1Cモデル動物に投与した。図1は、血漿PTHレベルの低下を投薬前の(ベースライン)レベルに対するパーセントとして示している。3mg/kgで投薬した4つの化合物の全てにより、血漿PTHの有意な降下がもたらされたが、PTH低下についての効力および持続時間における差異により、正味の正電荷とPTHを低減させる活性の間の関連性が示唆される。例えば、6つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを持つ化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6;三角形)では、それぞれ4つのカチオン性(アルギニン)サブユニットおよび5つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを含有する化合物Ac−crrrr−NH2(配列番号4;ひし形)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5;四角)と比較して、有効性ならびに作用の持続時間が増加した。驚いたことに、6つのカチオン性(アルギニン)サブユニットを持つ化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6;三角形)では、7つのカチオン性(アルギニン)残基を持つ化合物Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)と比較して作用の持続時間が増加し、これは化合物の活性または効力がただ単に化合物のカチオン性電荷の増加に相関するのではないことが示唆されている。すなわち、7つのカチオン性サブユニット(アルギニン残基)を持つ化合物Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)により、それよりもカチオン性残基が少ない化合物と同様のPTHの最初の降下がもたらされたが、投薬後24時間を超えるとAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5)よりも有効でなかった。これらの後者2つの化合物により、24時間の時点で、それぞれ約40%および60%の平均のPTH低下がもたらされた。PTHの低下の程度およびPTHの持続時間はどちらも、治療を必要とする患者のための最適な治療的な利益を得るための重要な判断基準である。本試験における化合物は同じmg/kg用量で投与されたが、分子量が異なるので、実際に投薬された各化合物のモル数は異なることに留意するべきである。したがって、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)は、モル当たりベースでAc−crrrr−NH2(配列番号4)およびAc−crrrrr−NH2(配列番号5)よりも有意に強力であった。
【0070】
さらなる試験を行って化合物の構造と活性の関連性を探究した。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、サブユニットのX2位〜X7位のそれぞれにおいてアルギニン残基をアラニン残基と逐次的に交換することによって修飾した。化合物を、ヒトカルシウム感知受容体を発現するHEK293細胞を使用して例示的な化合物の活性を測定した、実施例2に記載のin vitroでのヒトカルシウム感知受容体(CaSR)アッセイにおいて特徴づけた。理論に束縛されることを望むものではないが、当該記載の化合物によってin vivoでPTHが低減する機構は、副甲状腺において発現され、PTHの分泌を制御するCaSRの活性化によると考えられる。CaSRの活性化は、細胞内のカルシウムおよびイノシトール−3−リン酸(IP3)の増加およびその後の イノシトール−1−リン酸(IP1)の蓄積につながる。したがって、このin vitroアッセイでは、IP1の生成を50%低下させるための化合物の最大半量の有効濃度を決定した(EC50)。同じ化合物を、それらのPTHを低減させる活性を決定するためにも、実施例3に記載の通りin vivoで試験した。表1に結果が示されている。表1の「生理食塩水の対照に対する%PTH AUC(1〜4時間)」という表題がついた列の数字は、生理食塩水で処置した対照ラットに由来するPTH AUCに対するパーセントとしての、4時間にわたるPTHの曲線下面積(AUC)における低下として活性を定義している。例えば、AUC(処置された化合物)/AUC(生理食塩水の対照)×100が0と等しいと、イソフルラン(IF)で麻酔した正常なラットに単回IV投与した後4時間にわたってPTHを完全に抑制する(検出不可能なレベルまで)高度に活性なPTH低減性化合物を示すことになる。対照的に、AUC(処置された化合物)/AUC(生理食塩水の対照)×100の値が100以上であれば、不活性な化合物を示すことになる。
【0071】
【表1】
*太字のフォントは、カチオン性アミノ酸(配列番号6のD−アルギニン)のD−アラニン置換を示す。
**イソフルラン(isofluorane)で麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0072】
表1において、正常なラットにおける単回のIV投与後にin vivoで測定したところ、パーセントPTHが検出限界を下回るまで、または本質的にゼロにまで減少したことによって証明されるように、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8)およびAc−crrarrr−NH2(配列番号10)が、かなり強力であった。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の2位、3位、4位または7位におけるカチオン性(アルギニン)残基を置換することにより、in vitroでの効力がおよそ2分の1損失した。化合物Ac−crrrarr−NH2(配列番号11)を生じる5位における置換により、in vitroでの効力が5分の1〜10分の1低下したが、in vivoでのパーセントPTH AUCの45%の低下は、臨床療法のために十分に活性であり得る。驚いたことに、6位においてカチオン性アルギニン残基を無電荷の(アラニン)残基に置換することにより、実際に効力が改善された。データにより、異なる位置におけるカチオン性残基および無電荷の残基は、全てが同等なのではなく、化合物の構造が変化した結果として活性に変化があることが例示されている。
【0073】
化合物の構造の変化に応じた活性の変化の影響をさらに評価するために、2つのカチオン性(アルギニン)残基を無電荷の(アラニン)残基と交換した、2重のアミノ酸置換を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の別の系列の類似体を生成し、効力について試験した。表2にデータが示されている。化合物のこの系列は配列番号4(4つのカチオン性残基)と同じ正味のカチオン性電荷を有するにもかかわらず、驚いたことに、一部は生理食塩水の対照に対する%PTH AUCが非常に低く非常に活性であるが(配列番号26)、他は不活性である(例えば、配列番号14)ことは注目に値する。予想外に、このことは、電荷の位置ならびに総カチオン性電荷もPTHの低下に対する化合物の効力に影響を及ぼし得ることを示唆している。表2に示されているデータは表1に示されているデータと一致し、このことは、PTHを低減させる活性のために、配列番号6のカチオン性残基は5位および7位には不可欠であるが、6位には必要ないことを示唆している。
【0074】
【表2】
*太字のフォントは、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)におけるそれぞれのカチオン性アミノ酸(D−アルギニン)のD−アラニン置換を示す。
**イソフルラン(isofluorine)で麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0075】
表2のデータは、活性に影響を及ぼす構造的な変化を例示している。一実施形態では、化合物はAc−caarrrr−NH2(配列番号22)であり、別の実施形態では、化合物はAc−craarrr−NH2(配列番号24)である。
【0076】
さらなる構造と活性の関連性についての試験を、実施例4に記載の通り、ヒトカルシウム感知受容体を発現するHEK293細胞におけるin vitro細胞アッセイを使用して行った。ペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)の、ヒトCaSRを活性化する能力を、IP3の産生を反映するイノシトールモノホスフェート(IP1)の蓄積を測定することによって確認した。IP3の産生は、重要な細胞シグナル伝達の二次メッセンジャーであり、その産生はCaSR活性化の直接の下流の帰結である。IP3の産生後のIP1の蓄積は、アッセイで使用した細胞を、IP1をイノシトールに変換する酵素を阻害する塩化リチウム(LiCl2)で処理することによって得ることができる。実施例4に記載の試験では、例示的な化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)の存在下でIP1の蓄積を測定した。図2Aに結果が示されている。
【0077】
IP1の濃度は、y軸においてnM単位で報告されており、配列番号26または配列番号29の化合物の濃度は、x軸においてM単位で報告されている。配列番号29にN末端のD−システイン残基がないことにより、CaSRを活性化する化合物の能力が配列番号26と比較して劇的に低下した。すなわち、ペプチドAc−carrrar−NH(配列番号26)およびAc−arrrar−NH2(配列番号29)は、N末端のD−システインが存在するか、または存在しないかによってのみ異なるので、化合物の効力は、N末端のシステイン残基を排除することによって顕著に低下した。
【0078】
化合物のX1サブユニットにおけるチオール含有基(例えば、化合物がN末端残基上のペプチドである特定の実施形態において)の寄与についても、in vivo試験において調査した。配列番号26として識別されるペプチド(Ac−carrrar−NH2)および配列番号29として識別されるペプチド(Ac−arrrar−NH2)の、PTHを低減させる活性を、実施例4の手順に従ってin vivoで評価した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。結果が図2Bに示されている。見られるように、0.5mg/kg用量のペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)(四角)により、投薬の4時間後までにPTHの血中濃度が検出不可能なレベルまで減少した。対照的に、チオール含有基を持つN末端残基を欠くペプチド、Ac−arrrar−NH2(配列番号29)、ひし形では、実質的により高い用量(すなわち9mg/kg)においてさえもPTH濃度を低下させなかった。
【0079】
化合物のX1サブユニットにおけるチオール含有基の構造と活性の関連性を、異なるX1サブユニットを有する化合物を調製することによってさらに分析した。表3に示されている化合物を、正常なラットにおいて、PTHを低下させる活性についてin vivoで試験した。
【0080】
【表3】
*太字のフォントは、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)における、それぞれのチオール含有残基(D−システイン)の置換を示す。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0081】
表3のデータは、チオールを含有するX1サブユニットは変更してよいことを例示している。N末端残基内に以下を持つ化合物を試験した−D−システイン(cys)、D−ペニシラミン(dPen)、d−ホモシステイン(dHcy)およびメルカプトプロピオン酸(Mpa)。さらに、天然アミノ酸または非天然アミノ酸、例えばベータアラニンなどを、N末端のチオール含有残基とコンジュゲートすることができる。データは、カチオン性化合物、例えばX1サブユニット内に異なるチオール含有基を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)などにより、in vivoでPTHを有効に低下させることを例示している。N末端システイン残基を、チオール基を含有しないメチオニンと置換した結果、in vivoでPTHを低減させる活性が非常に乏しい化合物が生じた(データは示していない)。
【0082】
上記の試験に基づいて、サブユニットX1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の連続した配列からなる化合物であって、X1がチオール含有基を含むサブユニットである化合物は、副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性を有する。一実施形態では、X1サブユニットのチオール含有基は、チオール含有アミノ酸残基および有機チオール含有部分からなる群から選択される。別の実施形態では、チオール含有基は、生理的なpHおよび温度の下で別のチオール基と反応することができる。チオール含有残基がアミノ酸残基である特定の実施形態では、X1サブユニットは、システイン、グルタチオン、メルカプトプロピオン酸、n−アセチル化されたシステインおよびペグ化システインのいずれか1つであってよい。チオール含有基が、チオール含有基を持つ有機低分子などの非アミノ酸残基サブユニットである実施形態では、X1サブユニットは、3−メルカプトプロピル残基もしくは3−メルカプトプロピオニル残基などのチオールアルキル部分またはチオアシル部分であってよい。一実施形態では、チオールはホモシステインではない。
【0083】
したがって、また別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は「副甲状腺ホルモンレベルを減少させる臨床的活性」を有し、これは、化合物を被験体に投与すると、対応する、ビヒクルで処置した対照の被験体のPTH AUCと比較して、投与後4時間にわたる累積PTHの曲線下面積(PTH AUC)によって測定した場合に、血漿副甲状腺ホルモンを低減させることを意味する。血漿PTH濃度は、例えば、生物活性のあるインタクトなPTH1〜84を検出する市販のELISAキットを使用して測定する(特定のキットに関しては実施例3を参照されたい)。副甲状腺ホルモンレベルを減少させる臨床的活性を持つ化合物により、PTH AUCは、対応する、ビヒクルで処置した対照の被験体のPTH AUCと比較して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%低下する。
【0084】
上記の試験、および下記の他の試験により、本明細書に記載の化合物の別の実施形態が例示されており、X1サブユニットは、一部の実施形態では、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、ブチル基、アセチル化ベータアラニンなどの天然アミノ酸または非天然アミノ酸を含むように、化学修飾などによって化学的に修飾されていてよい、または別のチオール部分に共有結合によって連結される。ペプチド治療法は、ペプチダーゼの攻撃を受けやすい可能性がある。エキソペプチダーゼは、一般には、ペプチドまたはタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端からアミノ酸残基を切断する非特異的な酵素である。アミノ酸配列の内部を切断するエンドペプチダーゼは、同様に非特異的であり得る;しかし、エンドペプチダーゼは特定のアミノ配列(認識部位)を認識することが多く、その部位で、またはその近くでペプチドを切断する。したがって、化合物を、タンパク質分解から保護するために修飾することが意図されている。
【0085】
ペプチドをタンパク質分解から保護する1つの方法は、ペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端を化学的に修飾すること、またはそれに「キャップ形成すること」を伴う。本明細書で使用される、「化学的に修飾された」または「キャップ形成された」という用語は、ブロック基を共有結合性の修飾によって化合物の1つの末端または両末端に導入することを指すために互換的に使用される。適切なブロック基は、ペプチドの生物活性を減少させることなくペプチドの末端にキャップを形成するために役立つ。当該記載の化合物のアミノ末端またはカルボキシ末端、またはその両方に位置する、チオール含有サブユニットを含む任意の残基を化学的に修飾することができる。
【0086】
好ましい実施形態では、化合物のアミノ末端をアセチル化によって化学的に修飾してN−アセチルペプチド(本明細書の構造物または式では「Ac−」と表すことができる)をもたらす。好ましい実施形態では、当該記載のペプチドのカルボキシ末端を、アミド化によって化学的に修飾して、C末端に第一級カルボキサミド(本明細書のペプチドの配列、構造物または式では「−NH2」と表すことができる)をもたらす。好ましい実施形態では、アミノ末端とカルボキシ末端の両方を、それぞれアセチル化およびアミド化によって化学的に修飾する。しかし、他のキャップ形成基が可能である。例えば、アミノ末端を、アセチル基、ベンゾイル基などの基を用いて、もしくは、アセチル基でキャップ形成されたベータアラニンなどの天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いてアシル化することによって、または、ベンジル基もしくはブチル基などの基を用いてアルキル化することによって、または、スルホニル化してスルホンアミドを形成することによって、キャップ形成することができる。同様に、カルボキシ末端をエステル化することができる、または第二級アミド、およびアシルスルホンアミドなどに変換することができる。一部の実施形態では、アミノ末端またはカルボキシ末端は、ポリエチレングリコール(PEG)部分を結合させるための部位を含んでよい、すなわち、アミノ末端またはカルボキシ末端は、適切に官能性をもたせたPEGを用いた反応によって化学的に修飾することができる。
【0087】
ペプチドをエンドペプチダーゼから保護することは、一般には、ペプチドのエンドペプチダーゼ認識部位を同定し、それをペプチドから排除することを伴う。プロテアーゼ認識部位は、当業者に周知である。したがって、潜在的なエンドプロテアーゼ認識部位を同定し、次にその部位を、認識部位内のアミノ酸配列を変更することによって排除することが可能である。認識配列内の残基を移動または除去して認識部位を破壊することができる。好ましくは、同定されたプロテアーゼ認識部位を含むアミノ酸の1つ以上を用いて保存置換を作製する。
【0088】
A.追加的な構造と活性の関連性についての試験
化合物の治療的活性に対する、化合物の各サブユニットの性質の影響をさらに評価するために、追加的な構造活性試験を行った。これらの試験を、ここで実施例5を参照しながら説明する。
【0089】
D−アミノ酸残基を置換したL−アミノ酸残基を有する一連の化合物を、PTH低減性足場Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)に基づいて調製した。実施例5に記載の通り化合物を被験体に投与し、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価し、1時間、2時間、3時間および4時間の時点におけるPTH濃度値の合計を、同時点における生理食塩水の対照のAUCによって正規化し、100を掛けたものとしてAUCを算出した。表4に結果が示されている。
【0090】
【表4】
*イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0091】
表4に示されている例示的な化合物を、AcおよびNH2の名称で示されるように、N末端およびC末端の両方において化学的に修飾した。全てのサブユニットがD−アミノ酸残基である7つのサブユニットの配列carrrar(配列番号3)を、一度に1つのサブユニットをL−アミノ酸で交換することによって修飾した。X1サブユニットは、括弧付きの名称(C)で示される、ジスルフィド結合によってL−Cys残基とコンジュゲートしたD−Cys残基(または配列番号34のL−Cys残基)であった。表4のPTHを低減させるin vivoデータは、ArgおよびAlaのキラリティーが化合物の活性に影響を及ぼすことを示している。一実施形態では、少なくともX4として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットがD−アミノ酸残基サブユニットである、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の配列の化合物が意図されている。別の実施形態では、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである。好ましい実施形態では、X3として識別されるサブユニット、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである。最も好ましい実施形態では、X2として識別されるサブユニット、X3として識別されるサブユニット、X4として識別されるサブユニット、X5として識別されるサブユニット、X6として識別されるサブユニットおよびX7として識別されるサブユニットが、D−アミノ酸残基サブユニットである、ならびにサブユニットX1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7の全てが、D−アミノ酸残基サブユニットである。
【0092】
他の試験では、全てL−アミノ酸を有するペプチドを全てD−アミノ酸で置換することにより、試験されたペプチドのin vitro活性は低下しないことも見いだされた;実際に、全体がD−アミノ酸で構成されるペプチドはCaSRの活性化に対する効力を増強すると思われる。特定の位置におけるカチオン性(アルギニン)残基のいくつかが、システイン残基と比較して、CaSRに対する活性への影響を最も少なくして無電荷の(アラニン)残基で置換することができることも示された。
【0093】
構造とCaSRに対する活性との間の関連性をさらに特徴づけるために、異なる数(4〜8個)のアルギニン残基を持つ種々のカチオン性ペプチド(その全てがN末端システインを含有した)を、HEK−293 in vitro細胞アッセイを使用して試験した。カチオン性サブユニットの数と化合物の効力との間に直接相関が見られ、効力は、CaSRを活性化する能力によって証明される。カチオン性(例えばアルギニン)サブユニットの数を5つから4つに減らすことにより、効力が最もシフトし(>10倍)、このことは、これらの正味の電荷を有する化合物の間に活性の屈曲点があり得ること、サブユニットX5におけるカチオン性サブユニットが、活性のために好ましいことを示唆している。したがって、X5がカチオン性サブユニットである、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7の構造の化合物が考えられている。ある特定の実施形態では、X1は生理的条件下で別のチオール基と反応することができるチオール基を含むサブユニットである(「反応性チオール」は、pH7.4および体温の生理的条件下で別のチオールと反応するチオールを意味する(例えば、システインとシステイン))。
【0094】
予想外に、6つのカチオン性残基を持つAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)が、in vivoで評価した場合、8つのカチオン性残基を有するAc−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)よりも大きく長い活性を示した。これは、このin vitro細胞アッセイにおいて、CaSRを活性化することにおいて配列番号41の方が強力であったという知見と対照的である。理論に束縛されることを望むものではないが、Ac−crrrrrrrr−NH2(配列番号6441は、その細胞浸透性特性によって細胞内に取り込まれ、したがってCaSRの活性部分の近傍から除去されることが予想されるので、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のin vivoにおける優れた性能は、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の薬物動態的性質が優れていることに由来し得ると考えられる。
【0095】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の構造と活性の関連性をさらに探究するために、カチオン性(アルギニン)残基のいくつかを、無電荷の(アラニン)残基と交換した。X2位のサブユニットおよびX4位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を交換することにより、CaSRの活性化におけるin vitroでの効力が顕著に低下している化合物(配列番号15)が生じることが見いだされた。対照的に、X2位のサブユニットおよびX6位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を交換することにより、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)で見られた効力の大半を保持する化合物(配列番号26)が生じた。これらの結果により、化合物における荷電残基の位置が効力に寄与することが示唆され、一部の実施形態では、ペプチドの総正電荷の寄与よりもよりまさる場合がある。ある特定の位置におけるカチオン性(アルギニン)残基、例えばX5位のサブユニットも、効力に不均衡に寄与することは明らかである。
【0096】
CaSRの活性化に対するペプチドの効力を著しく増強するN末端システインが存在することが見いだされた。CaSRは、ホモ二量体受容体として機能する大きな細胞外ドメインを持つ7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体である。細胞外ドメインには18個のシステイン残基があり、そのいくつかは、多型分析または変異性分析によって、受容体の活性のために重要であることが示されている。特に注目すべきなのは、細胞外ドメインのループ2領域の129位および131位のシステインである。129位および131位のシステインは、受容体複合体の2つの単量体間に、密接な立体配置または妨げられた立体配置で分子間ジスルフィド架橋を形成すると考えられている。129位のシステインの変異により、ループ2領域の完全な欠失を含めたいくつもの他の変異でそうなるのと同様に、CaSRが活性化される。当該記載の化合物のN末端システイン残基によってもたらされる効力の増強は、CaSRの細胞外ドメイン内のシステイン残基の1つ以上の特異的な相互作用に起因する可能性がある。
【0097】
アミノ酸置換のキラリティーの、in vitroにおけるCaSRの活性に対する影響をさらに評価するために、さまざまな位置においてL−アミノ酸またはアキラルのアミノ酸(グリシン)の置換を含有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の一連の類似体を生成し、CaSRに対する効力について試験した。試験した類似体としては、Ac−cGrrrGr−NH2(配列番号42)、(ii)Ac−cArrrAr−NH2(配列番号43)、および(iii)Ac−CaRrRaR−NH2(配列番号44)を含めた。前述の類似体の全てが、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)よりも顕著に低い効力を有し、配列番号44(3種の類似体のうち最も強力)については10倍の差異から、配列番号43(3種の類似体のうち最も強力でない)については2000倍超の差異までにわたった。配列番号6の2位および6位のカチオン性D−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)を無電荷のD−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)と交換したAc−carrrar−NH2(配列番号26)は、活性の変化がずっと少なかった(約3倍の差異)。したがって、驚いたことに、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の全てのD−アミノ酸残基を2つ以上のL−アミノ酸残基で遮ることにより、効力が顕著に低下することが見いだされた。遮っている残基が無電荷のアキラルのアミノ酸残基(グリシン残基)である場合、それが無電荷のL−アミノ酸残基(L−アラニン残基)である場合と比較して効力が80倍超減少したことも、驚くべきことであった。
【0098】
Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2つの無電荷のD−アミノ酸残基(D−アラニン残基)をそれらのL−対応物と交換すること(配列番号43)により、効力が600倍超減少したが、一方、Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2つの無電荷のD−アミノ酸残基(D−アラニン残基)を無電荷のアキラルのアミノ酸残基(グリシン残基)と交換すること(配列番号42)による効力の低下は8倍未満であったこと;およびAc−carrrar−NH2(配列番号26)の3つのカチオン性D−アミノ酸残基(D−アルギニン残基)をそれらのL−対応物と交換すること(配列番号44)により、効力の差異は4倍未満であったことも驚くべきことであった。
【0099】
さまざまなペプチドおよびコンジュゲートの活性をヒトCaSRに対して試験した。これらの試験は、ヒトCaSRを発現するHEK293細胞におけるIP1の産生を測定することによって行った。表5にEC50値が示されている。各ペプチドを、8種の異なる濃度において2連で試験して用量反応曲線を確立した。曲線の当てはめを、GraphPad Prismを使用して実施した。表5において、および本明細書全体を通して、大文字で提供される残基はL−アミノ酸であり、一方小文字はD−アミノ酸を示す。「Ac」はアセチルキャップ形成基を示し、「NH2」はアミドキャップ形成基を示し、「Ac−bAla」はアセチル化ベータアラニンであり、「GSH」は還元型グルタチオンを示し、「GS」は酸化型グルタチオンを示し、「PEG」はポリエチレングリコールを指し、「PEG2」および「PEG5」は、それぞれ2kDaおよび5kDaのポリエチレングリコール部分を指し、「Mpa」はメルカプトプロピオン酸を指す。括弧でくくられた基は、基または部分が前のサブユニットまたはアミノ酸残基の側鎖に結合していることを示す。
【0100】
【表5−1】
【0101】
【表5−2】
【0102】
【表5−3】
構造と活性の関連性についての別の試験において、ペプチドの効力に対する非カチオン性アミノ酸の寄与を、ペプチドAc−carrrar−NH2(配列番号26)およびペプチドAc−crrarar−NH2(配列番号153)のさまざまな位置において置換された、さまざまなD−アミノ酸残基またはグリシンを持つ一連のペプチド(表6)、または立体障害型の非天然アミノ酸を持つ一連のペプチド(表7)を調製することによって評価した。ペプチドを、正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に血漿PTHレベルを評価した。下の表に結果が示され、1)Ac−carrrar−NH2ペプチド(配列番号26)の6位にはアラニン、グリシンまたはセリンなどの小さなアミノ酸が好ましいこと、および2)Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の2位のアラニンは、置換に対してはるかに許容的であり、疎水性の天然アミノ酸(例えばD−Val、D−Leu)、芳香族天然アミノ酸(例えばD−Phe)、または極性の天然アミノ酸(例えばD−Ser、D−Gln)、ならびに非天然の、かさのある疎水性アミノ酸(例えばdNle、dNva)で置換することができるが、酸性のアミノ酸では置換することができないこと、および3)Ac−crrarar−NH2(配列番号25)ペプチドの4位のアラニン残基も置換に対して非常に許容的であり、ほとんどの種類の天然アミノ酸(ならびに非天然の、かさのある疎水性アミノ酸(例えばdNle、dNva)に適応させることができるが、二次高次構造に影響を及ぼすアミノ酸、すなわちグリシンまたはプロリンまたは酸性の側鎖を持つアミノ酸に対しては許容的でないことを示している。
【0103】
【表6−1】
【0104】
【表6−2】
*太字のフォントは、Ac−carrrar−NH2(配列番号6)またはAc−crrarar−NH2(配列番号25)のアラニン残基のそれぞれの置換を示す。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0105】
【表7】
*太字のフォントは、Ac−carrrar−NH2(配列番号26)またはAc−crrarar−NH2(配列番号25)のアラニン残基のそれぞれの置換を示す。Sar=非天然アミノ酸であるサルコシン;Nma=N−メチルアラニン;AiB=アミノイソ酪酸;dNva=D−ノルバリン;dNle=D−ノルロイシン
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0106】
【表8】
*括弧内に示されている太字のフォントは、それぞれのチオール含有コンジュゲート基を示す。GS=酸化型グルタチオン;dHcy=D−ホモシステイン;Mpa=メルカプトプロピオン酸;PEG=ポリエチレングリコール。
**イソフルランで麻酔した正常なラットにおける、0.5mg/kgをIV投与した後のPTH低下−投与の1時間後、2時間後、3時間後および4時間後にPTHを測定し、累積AUCを算出した。PTHのデータを次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
***化合物を、10mg/kg(ペグ化されていないペプチド0.5mg/kgに対するおよその当量モル濃度)で投薬した
****化合物を、20mg/kg(ペグ化されていないペプチド0.5mg/kgに対するおよその当量モル濃度)で投薬した。
【0107】
B.ヒスタミン応答および構造と活性の関連性についての試験
ポリカチオン性化合物は、活性な生体アミンであるヒスタミンの放出を誘発することが文献において報告されている。Churchら、J. Immunol.、128巻(5号):2116〜2121頁(1982年);Lagunoffら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、23巻:331〜51頁(1983年)を参照されたい。ヒスタミンの放出は、Gαi依存的に起こる肥満細胞および好塩基球の活性化の結果であると考えられている。Aridorら、J. Cell Biol.、111巻(3号):909〜17頁(1990年)を参照されたい。この生理学的反応を低下させること、または排除することはとりわけ、カチオン性ペプチドカルシウム模倣薬のSHPTの治療に対する治療限界を改善するために望ましい。
【0108】
本明細書に記載の化合物をin vivo投与すると誘導されるヒスタミンの放出について評価するために試験を行った。実施例6に記載の最初の試験では、正常なスプラーグドーリーラットにIVボーラスまたは注入によって投薬することを使用してさまざまな化合物に関連するヒスタミンの放出を評価した。化合物に関連するヒスタミンの放出に対する正味の正電荷の影響を評価するために、実施例6に記載の手順に従って、4〜7個のカチオン性(アルギニン)残基を含有するペプチドを生成し、in vivoでヒスタミンの放出を誘発するそれらの能力について試験した。試験したペプチドとしては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および(iv)Ac−crrrrrrrr−NH2(配列番号41)を含めた。
【0109】
図3に示されているように、各ペプチドの当量モル数を正常なラットにIVボーラスによって投与したとき、配列番号41(8つのアルギニン残基)が最も大きなヒスタミンの誘導を示した。配列番号6(6つのアルギニン残基)、配列番号5(5つのアルギニン残基)、および配列番号4(4つのアルギニン残基)を含めた、それよりもArg残基が少ない他の化合物も同様に、ヒスタミンレベルにおいてスパイクをもたらしたが、配列番号41と比較して程度が低かった。配列番号6、配列番号5および配列番号4では、それらのヒスタミンの放出活性において穏やかな応答が生成した(ベースラインの約2〜3倍超)。しかし、配列番号5および配列番号4は、血漿PTHを低減させることに関して配列番号6よりも効力が弱かった。
【0110】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のPTHを低下させる活性は、ヒスタミン応答の欠如を伴ったので、PTHを低減させる活性を犠牲にすることなくヒスタミン応答をさらに減少させることが可能かどうかを評価するために、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)に基づいて追加的な評価を行った。下記のデータに示されるように、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のカチオン性(アルギニン)残基の、非カチオン性(アラニン)残基での置換を実施して全体的に正味の電荷が低下し、電荷密度が低下した一連の類似体を作製した。これらの類似体のうち、Ac−cararrr−NH2(配列番号15)およびAc−carrrar−NH2(配列番号26)はどちらも、ラットにIVボーラスによって投与されたときにヒスタミン応答が欠如していた。重要なことに、これらの2つのペプチドはそれらの強力なカルシウム模倣性を保持し、正常なラットおよび腎機能障害を持つラットの両方においてPTHの分泌を低下させることができた。
【0111】
配列番号6として識別される化合物Ac−crrrrrr−NH2(2.1μモル/kg=2.3mg/kg)は、正常なラットにおいて、IVボーラスによって投薬した(1分未満にわたって与えた)とき、配列番号41での6〜9倍と比較して、ベースラインを約2〜3倍超える観察可能なヒスタミン応答を誘発した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)によって誘発されるヒスタミンの放出は、投薬の5分後にピークに達し、15分後にベースラインレベルまで戻った(図3)。荷電したサブユニットの数を、ペプチドあたりのアルギニン残基を5つ、および4つにさらに減らすことにより(それぞれ配列番号5および配列番号4)、それよりも長いオリゴアルギニンペプチドと比較してヒスタミン応答がさらに低下した;しかし、ヒスタミンにおけるベースラインを超える2〜3倍の増加が、IVボーラス投薬の5分後に、まだ観察された(図3)。これらの結果は、ペプチドの正味の電荷と付随するヒスタミンの放出との間の関連性を示唆している。アルギニンが7つよりも少ないアルギニンに富むペプチドは、細胞に侵入するそれらの能力がかなり限定されていることも注目に値し、これは、ヒスタミンの放出を誘発するためには細胞への浸透は必要ないことを示唆している。
【0112】
PTH低減性化合物であるAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)およびAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)に関連するヒスタミンの放出を、in vivoで評価した。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は以下の構造を有する:
【0113】
【化1】
このコンジュゲート構造物は、本明細書ではAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号273と表され、化合物のX1サブユニット(ここではD−Cys残基)のチオール含有残基にCys−Cysジスルフィド結合によって連結しているL−Cys残基が式中の括弧内に置かれている。この表示法を、括弧付きの部分が第2のチオール含有基に連結していることを示すために、全体にわたって使用する。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)と比較して、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は、X2位のサブユニットおよびX6位のサブユニットにおいて無電荷の(アラニン)残基で置換した2つのカチオン性(アルギニン)残基を有する。さらに、X1位のD−Cys残基はL−Cys残基とコンジュゲートしている。
【0114】
これらの2つの化合物を、イソフルランで麻酔したラット(スプラーグドーリー)に3mg/kgで静脈内(IV)ボーラス投与によって投与した(1分未満にわたって与えた)。血液を、投薬する前、および投薬の5分後、15分後、および30分後に抜き取った。ヒスタミン濃度を測定し、図4に投薬前の血中ヒスタミン濃度に対する血中ヒスタミン濃度における倍数変化が示されている。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、白い棒)によりヒスタミン応答が誘導され、それは、投薬の5分後のデータ点において観察され、そこでヒスタミンレベルにおいて7倍の増加が観察された。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、網掛けされた棒)により、投薬の5分後、10分後および15分後のデータ点においてヒスタミンレベルが投薬前(ゼロ時間)のヒスタミンレベルと比較して増加しなかったことに見られるように、明白なヒスタミン応答は誘導されなかった。
【0115】
化合物の構造とヒスタミンの放出との間の関連性をさらに評価するために、一連の化合物を調製し、ラットの腹膜肥満細胞を使用するin vitroアッセイにおいて、ヒスタミンの誘導を誘発するそれらの能力について評価した。このアッセイでは、化合物を10μMで、SDラットの腹膜洗浄で単離された細胞と一緒に37℃で15分間インキュベートする。インキュベートした後、細胞の培地を採取し、ヒスタミンを決定する。表9にデータが示されている。
【0116】
【表9−1】
【0117】
【表9−2】
【0118】
【表9−3】
化合物の構造とヒスタミンの放出との間の関連性をさらに評価するために、一連の化合物を調製し、in vivoアッセイにおいて、ヒスタミンの誘導を誘発するそれらの能力について評価した。表10にデータが示されている。
【0119】
【表10】
したがって、および本明細書において前記されているPTHのデータおよびヒスタミンのデータを考慮して理解することができるように、一実施形態では、ヒスタミン応答なしでの被験体におけるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物が意図されている。ある特定の実施形態では、ヒスタミン応答がないこととは、本明細書に記載のアッセイにおいてin vitroで測定した、産生したヒスタミンの増加が10倍未満、より好ましくは8倍未満、さらにより好ましくは5倍未満、およびいっそうより好ましくは3倍未満である化合物の用量を意味し、ここで倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベル、および化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。特定の実施形態では、ヒスタミン応答は、正常なスプラーグドーリーラットの腹膜洗浄で単離されたラットの腹膜肥満細胞を使用するin vitroアッセイにおいて決定し、ここで倍数変化は、化合物と一緒にインキュベートする前のヒスタミンレベル、および化合物と一緒に15分間インキュベートした後のヒスタミンレベルに基づいて決定する。本明細書で行った試験では、ヒスタミンの放出についてのin vitroでの評価を、ヘパリン(5u/mL)を含有する冷たいHBSS+25mMのHEPES、pH7.4を使用する腹膜洗浄によって単離された単離ラット腹膜肥満細胞を使用して実施した。細胞を刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中で2回洗い、96ウェルプレート(106/ウェル)で、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中10μMの化合物と一緒に37℃で15分間インキュベートした。細胞の上清を、ヒスタミンEIAキット(Cayman#589651)を使用してヒスタミンについて分析した。
【0120】
別の実施形態では、臨床的なヒスタミン応答なしに被験体におけるPTHレベルを減少させる活性を有する化合物が意図されている。本明細書で使用される、「臨床的なヒスタミン応答」がないこととは、本明細書に記載の化合物の治療有効量を、投薬完了の5分〜10分後または治療の間に測定したところ血漿中ヒスタミンまたは血中ヒスタミンの臨床的に有害な増加を生じさせずに、被験体に投与することを意味する。例えば、所望の治療効果をもたらすために必要な化合物を被験体にボーラス投与によって投与する(本明細書で使用される「ボーラス」は、1分以内にわたって投与することを意味する)場合、投薬完了の5分〜10分後に生じる血漿中ヒスタミンまたは血中ヒスタミンの増加は、投薬前のレベルを超えて15倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍未満である。
【0121】
上記の試験から理解することができるように、一実施形態では、化合物は、3〜35個のアミノ酸残基の配列を含み、複数の正に荷電したアミノ酸残基サブユニットが配列内に存在する。一部の実施形態では、当該記載の化合物は5〜25個のサブユニットを含み、好ましい実施形態では、各サブユニットはアミノ酸残基である。他の実施形態では、当該記載の化合物は6〜12個のサブユニットを含む。さらに他の実施形態では、当該記載の化合物は3〜9個のアミノ酸サブユニットを含む。代替の実施形態では、当該記載の化合物は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、または35個のサブユニットを含む。
【0122】
当該記載の化合物のサブユニットは、一実施形態では、独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸、またはそれらの類似体から選択され、L−立体配置またはD−立体配置のいずれかを有してよい(アキラルであるグリシンは除く)。グリシン、脂肪族残基であるアラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシン、プロリン、ヒドロキシル残基であるセリンおよびトレオニン、酸性残基であるアスパラギン酸およびグルタミン酸、アミド残基であるアスパラギンおよびグルタミン、塩基性残基であるリジンおよびアルギニン、ヒスチジン、芳香族残基であるフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン、ならびに硫黄含有残基であるメチオニンおよびシステインは全て、当該記載の化合物において使用することが意図されている。正に荷電したサブユニットの数、およびそれらの密度は、PTHを低下させるための化合物の効力に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、正に荷電したサブユニットは、1つ以上の他のサブユニット(「分離サブユニット」)によって分離されている。一実施形態では、分離サブユニットはアラニン残基である。一部の実施形態では、分離サブユニットのキラリティーが化合物の効力に影響を及ぼす。
【0123】
当該記載の化合物の正に荷電したアミノ酸残基は、配列内で繰り返されるL−立体配置またはD−立体配置のいずれか(例えば、L−アルギニン)を有する特定の天然残基または非天然残基、またはその類似体であってよい、または、L−立体配置またはD−立体配置のいずれかを有する種々の天然残基または非天然残基、またはその類似体であってよい。一部の実施形態では、化合物は、3〜20個の正に荷電したアミノ酸残基、6〜12個の正に荷電したアミノ酸残基、3〜9個の正に荷電したアミノ酸残基で構成されるペプチドである。一部の実施形態では、ペプチドは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の正に荷電したアミノ酸残基を含む。
【0124】
一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、天然アミノ酸から選択される。一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸から選択される。一部の実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基は、独立して、アルギニン、リジン、ヒスチジン、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン、およびホモアルギニンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、正に荷電したアミノ酸残基はアルギニン残基である。
【0125】
一部の実施形態では、化合物はペプチドであり、単一の連続的なペプチド鎖またはペプチドストランドである。他の実施形態では、化合物は分枝のペプチドである。さらに他の実施形態では、ペプチドは1つ以上のチオール含有部分とコンジュゲートしている(それぞれ、「チオール含有コンジュゲート基」または「コンジュゲート基」)。好ましい実施形態では、およびただ単に例示として、ペプチド化合物はCysコンジュゲート基に、(−S−S−)ジスルフィド結合によってコンジュゲートしている(例えば−Cys−Cys−)。本明細書で使用される、「化合物」という用語は、そのようなペプチドおよびそのようなコンジュゲートの両方を包含するものとする。
【0126】
化合物は、一般には1つ以上のチオール部分、好ましくは1つ以上の反応性チオール部分を含む。チオール基を有するサブユニットとしては、チオール基を有する非アミノ酸化合物およびチオール基を持つアミノ酸が挙げられる。チオール含有サブユニットのチオール基は、コンジュゲートした形態(例えば、コンジュゲート基へのジスルフィド結合によって)またはコンジュゲートしていない形態(すなわち、還元型チオールとして)であってよい。好ましい実施形態では、チオール基がコンジュゲートしていない形態またはコンジュゲートした形態のいずれかである場合、チオール含有基とジスルフィド結合を形成することができる。チオール含有残基は、アミノ末端、カルボキシ末端、またはどこか他の位置を含めた、ペプチド鎖に沿った任意の位置に位置してよい。好ましい実施形態では、チオール含有残基またはサブユニットは、アミノ末端に位置してよい。他の実施形態では、チオール含有残基またはサブユニットは、カルボキシ末端またはペプチド配列の内部に位置してよい。
【0127】
いくつかの代表的なチオール含有残基の例としては、限定することなく、システイン、メルカプトプロピオン酸、ホモシステイン、およびペニシラミンが挙げられる。チオール含有残基がキラル中心を含有する場合、その残基はL−立体配置またはD−立体配置で存在し得る。好ましい実施形態では、チオール含有残基は、システインである。
【0128】
一部の実施形態では、化合物のX1位のチオール含有サブユニットとチオール含有コンジュゲート基との間の架橋結合は、化合物の生物学的活性型を得るために、in vivoにおいてシステインなどの他のチオール含有コンジュゲート基で切断可能かつ/または交換可能であってよい(例えば、ジスルフィド結合を還元することによって)。このように、コンジュゲートは、化合物のプロドラッグとして機能し得る。コンジュゲート基は、当該記載の化合物の物理化学的性質、薬物動態的性質および/または薬力学的性質を改変するためにも使用することができる(例えば、薬物動態を増強するためにジスルフィド結合によって大きなペグ化部分とコンジュゲートさせる)。
【0129】
一部の実施形態では、化合物は、アミノ酸配列(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号155)で構成されるペプチドであり、ここで(Xaa1)はチオール含有アミノ酸残基であり、(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端、C末端、またはその両方において修飾されていてよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端およびC末端の両方において、それぞれアセチル化およびアミド化によって修飾される。
【0130】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号156)を含み、ここで(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0131】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号157)を含み、ここで(Xaa2)、(Xaa3)および(Xaa4)は、独立して、任意のアミノ酸残基であり(しかし好ましい実施形態では、独立して、D−Ala、D−Val、D−Leu、D−NorValおよびD−NorLeuからなる群から選択される)、(Xaa5)および(Xaa7)は独立して、任意のカチオン性アミノ酸残基であり(しかし好ましい実施形態では、独立して、D−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択される)、(Xaa6)は非カチオン性アミノ酸残基である(好ましい実施形態では、D−Ala、D−Val、D−Leu、D−NorValおよびD−NorLeuからなる群から選択される)。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0132】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号158)を含み、ここで(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)はD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)は非カチオン性残基であり、(Xaa7)は任意のアミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0133】
一部の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列(D−Cys)−(D−Ala)−(Xaa3)−(Xaa4)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号159)を含み、ここで(Xaa3)は任意のカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa4)は任意のカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa7)は任意のカチオン性アミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0134】
一部の実施形態では、ペプチドはアミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(D−Ala)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号160)を含み、ここで(Xaa2)、(Xaa3)および(Xaa7)は独立して、任意のカチオン性アミノ酸残基である。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。
【0135】
別の実施形態は、ペプチド結合によって連結したアミノ酸の配列を含むカルシウム模倣ペプチドであり、ここで配列は、5〜10個のアミノ酸残基を含み、配列はアミノ末端、カルボキシ末端、少なくとも1つのチオール含有残基、および3〜9個の正に荷電した残基を含む。一実施形態では、少なくとも1つのチオール含有残基はシステイン残基である。別の態様では、システイン残基はペプチドのアミノ末端に配置されている。ある特定の実施形態では、システイン残基は、L−Cys残基、D−Cys残基、またはL−ホモCys残基もしくはD−ホモCys残基である。他の実施形態では、ペプチドのアミノ酸残基は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸である。
【0136】
およそ7つのサブユニットを含むペプチド模倣分子であって、少なくとも1つのサブユニットが、チオール部分、好ましくは反応性チオール部分を含有し、他のサブユニットが複数の非カチオン性サブユニットであり、そして1〜4個の正に荷電したサブユニット由来であるペプチド模倣分子も、特許請求された化合物の範囲内に包含される。そのようなペプチド模倣分子は、サブユニットのうちの2つ以上の間の非ペプチド結合を含んでよい。上記の化合物のさまざまな特徴は、概ねペプチド模倣分子にあてはまる。例えば、上記の通り、分子を構築するために使用するサブユニットは、天然に存在するアミノ酸または非天然側鎖を持つ残基であってよく、モジュールの末端は、上記のようにキャップ形成されていてよい、またはキャップ形成されていなくてよい。同様に、分子のアミノ酸残基は、L−アミノ酸残基またはD−アミノ酸残基であってよい。同様に上記の通り、チオール含有残基は、上記のチオール含有部分のいずれかを持つ還元型または酸化型の形態であってよい。
【0137】
多くのペプチド模倣の枠組みおよびそれらを合成するための方法が、開発されてきた(Babine、R. E.;Bender、S. L.、Chem. Rev.、97巻:1359頁、1997年;Hanessian、S.ら.、Tetrahedron、53巻:12789頁、1997年;Fletcher、M. D.;Cambell、M. C.、Chem. Rev.、98巻:763頁、1998年);Peptidomimetics Protocols;Kazmierski W.M.編;Methods in Molecular Medicine Series、23巻;Humana Press、Inc.;Totowa、N.J.(1999年)。
【0138】
コンジュゲート
一部の実施形態では、化合物は、化合物のチオールとコンジュゲート基由来のチオールとの間のジスルフィド結合によって、チオール含有コンジュゲート基と化学的に架橋している。チオール含有コンジュゲート基は、システインなどの低分子、またはシステイン残基を含有するポリペプチドなどの高分子であってよい。適切なチオール含有コンジュゲート基の例としては、システイン、グルタチオン、チオアルキル、チオベンジルなどの部分、メルカプトプロピオン酸、N−アセチル化システイン、システアミド、N−アセチルシステアミド(N−acetylcysteamide)、ホモシステイン、ペニシラミン、およびポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾(「ペグ化」と称される)チオール、例えばペグ化システインなど、または化合物の複製物(すなわち、ジスルフィド結合によって連結されたホモ二量体を形成するための)が挙げられる。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、システインである。他のシステインホモログも、単独で、または大きなコンジュゲート基に含まれるかのいずれかで、チオール含有コンジュゲート基として使用することが意図されている。同様に、システイン、ホモシステイン、およびシステアミド(cysteamide)の立体異性体は、チオール含有部分として使用するのに適している。コンジュゲート基を使用して、医薬製品の化学的安定性および、したがって貯蔵寿命を改善することができる。ある特定の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一であり(すなわち、コンジュゲートは二量体である)、それは予想外にシステインなどの異種性のコンジュゲート基と比較して非常に良好な化学的安定性を示した。理論に束縛されることなく、おそらく、チオール含有コンジュゲート基とペプチドが同一である場合、任意の不均化(例えば、コンジュゲート基をスクランブルすること)により、元の二量体化合物が再構成される。対照的に、システインなどの異種性のコンジュゲート基を用いて化合物を不均化することにより、ペプチドのホモ二量体とシスチン(システイン−システインホモ二量体)と残りの親化合物の形成が導かれ得る。ペプチドのホモ二量体(すなわち、コンジュゲート基とペプチドが同一である)は、体循環内の還元型システインが高濃度なので、in vivoでシステインがコンジュゲートした形態のペプチドに変換されることになる。
【0139】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(Xaa1)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号155)を含むペプチドとのジスルフィドコンジュゲートであって、(Xaa1)がチオール含有部分を持つアミノ酸残基であり、(Xaa2)が非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がカチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号155のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0140】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(D−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号156)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa2)が非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号156のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0141】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(L−Cys)−(Xaa2)−(Xaa3)−(Xaa4)−(Xaa5)−(Xaa6)−(Xaa7)(配列番号183)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa2)は非カチオン性アミノ酸残基であり、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa5)がD−Arg、L−Arg、D−LysおよびL−Lysからなる群から選択され、(Xaa6)が非カチオン性残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号183のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0142】
一部の実施形態では、本教示は、チオール含有コンジュゲート基とアミノ酸配列(D−Cys)−(D−Ala)−(Xaa3)−(Xaa4)−(D−Arg)−(D−Ala)−(Xaa7)(配列番号161)を含むペプチドとのコンジュゲートであって、(Xaa3)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa4)が任意のアミノ酸残基であり、(Xaa7)が任意のアミノ酸残基であるコンジュゲートを含む。ペプチドは、N末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、ペプチドは、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、D−Cys、L−Cys、D−Cysを含有するペプチド、およびL−Cysを含有するペプチドからなる群から選択される。チオール含有コンジュゲート基がアミノ酸またはペプチドである場合、それはN末端キャップ、C末端キャップ、またはその両方を有してよい。好ましい実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、N末端キャップおよびC末端キャップの両方を有する。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基は、それ自体が、配列番号161のアミノ酸配列を含むペプチドである。一部の実施形態では、チオール含有コンジュゲート基とペプチドは同一である(すなわち、コンジュゲートは二量体である)。
【0143】
III.使用方法
一態様では、本明細書に記載の化合物を投与することによって、副甲状腺機能亢進症、骨疾患および/または他の高カルシウム血障害を予防、治療または改善するための方法が意図されている。上で例示した通り、化合物は、標的組織もしくは複数の標的組織、または被験体におけるPTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを減少させる活性を有する。ある特定の実施形態では、当該記載の化合物は、該化合物の治療有効量をそのような治療を必要とする被験体に投与すると、PTHレベルおよび/またはカルシウムレベルを減少させることができる。使用方法を、ここで実施例3および実施例8〜11を参照しながら説明する。
【0144】
実施例3を再度参照して、および表1に関して上記の通り、カチオン性(アルギニン)残基を非カチオン性残基(アラニン)と逐次的に交換した一連の化合物をラットに投与した。図5は、血中PTHを低下させる各化合物の能力の時間プロファイルおよびさまざまな化合物の作用の持続時間を示している。図5では、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、ひし形)、Ac−carrrrr−NH2(配列番号8、四角)およびAc−crrarrr−NH2(配列番号10、×記号)およびAc−crrrrar−NH2(配列番号12、丸)が、投薬前のベースラインに対するパーセントPTHが本質的にゼロにまで減少したことによって証明されるようにin vivoにおいて強力であり、それらにより、PTHの血中濃度が少なくとも4時間、減少したままであったという効力の持続時間がもたらされた。化合物Ac−crarrrr−NH2(配列番号9、三角形)、Ac−crrrarr−NH2(配列番号11、*記号)およびAc−crrrrra−NH2(配列番号13、+記号)により、ベースラインに対するパーセントPTHが約2〜3時間にわたって減少し、その後PTHの血中濃度は増加し始めた。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の5位または7位のサブユニットにおいてカチオン性(アルギニン)残基を置換することは、PTHを低減させる活性の持続時間に強い影響を与えた。
【0145】
2重のアミノ酸置換を含有する一連の化合物についてのPTH低下のプロファイルも評価した。上記の表2に記載されている選択された化合物を、正常なラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与し、投薬前のPTHの血中レベルと比較したPTHの低下を評価した。図6A〜6Bにデータが示されており、そこで化合物は以下の通り識別される:Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きのひし形)、Ac−crrarar−NH2(配列番号25、白抜きの四角)、Ac−caarrrr−NH2(配列番号22、三角形)、Ac−crraarr−NH2(配列番号17、丸)、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3、ひし形、図6B)、Ac−c(C)rrarar−NH2(配列番号28、×記号、図6B)。
【0146】
化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の効力をさらに評価するために、別の試験を行った。化合物を、実施例2で詳述したように、正常なラットに、1mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、および0.1mg/kgの用量で静脈内投与した。投薬する前、およびその後4時間にわたって血漿PTHレベルを評価した。図7は結果を示し、PTHの血中濃度が、ベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。単回のIVボーラス投与後に用量に関連したPTHの低下が観察され、最高用量の1mg/kg(ひし形)でPTHの低下が最大であり、0.5mg/kg(四角)、0.3mg/kg(三角形)、および0.1mg/kg(×記号)が続いた。生理食塩水の対照は丸記号で示されている。これに見られるように、ペプチドを治療有効用量で投与すると、投薬する前(「ベースライン」)のPTHの濃度と比較して50%を超えるPTHの低下が実現される。詳細には、ペプチドを、0.1mg/kgを超える用量で投与すると、IV投与の1時間後にベースラインのPTH濃度の90%未満までPTH濃度が低下した。配列番号3で識別されるペプチドのこれらの用量によっても、50%未満の曲線下面積(AUC)が実現された。ここで、AUCは、1時間、2時間、3時間および4時間の時点におけるPTH濃度値の合計として算出し、同時点における生理食塩水の対照のAUCによって正規化し、100を掛けた。
【0147】
同じ化合物を、腎不全の被験体(ラット)においても試験した。この試験では、腎機能障害環境においてPTHを低減させるその化合物の活性を特徴づけるために、急性腎不全の1K1Cモデルを使用して化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を評価した。モデルは、実施例1Aに記載されている。化合物を、腎に障害をきたした動物(ラット)に、3mg/kg(n=2)、1mg/kg(n=5)、0.5mg/kg(n=6)および0.3mg/kg(n=5)の用量でボーラス投与として静脈内投与した。動物の対照群に、生理食塩水を投薬した。投薬する前、およびその後数時間にわたって、血漿PTHレベルを評価した。図8は結果を示し、生理食塩水で処置した動物(四角)で、開始時のPTHレベルと比較してPTH濃度が増加した。さまざまな用量の配列番号3において、PTH低下の持続時間および程度に対する用量依存的な影響が観察された。最低用量の0.3mg/kg(×記号)で処置した動物で、最も早い時点でのPTHの低下、および投薬後1時間〜24時間にわたるPTHの増加が示されている。3mg/kg(ひし形)、1mg/kg(三角形)および0.5mg/kg(四角)の用量レベルにより、15時間超にわたってPTHの血中濃度の低下がもたらされ、最高用量については、24時間超にわたってPTHの血中濃度の低下がもたらされた。
【0148】
アラニンアミノ酸残基によって例証されるように、カチオン性サブユニットを無電荷のサブユニットで置換することの影響を評価するための別の試験において、腎不全の被験体という状況において、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の類似体を生成し、1K1Cモデル動物において、1mg/kgを単回静脈内投与した後、PTHを低減させるその能力について試験した。試験した類似体Ac−carrrar−NH2(配列番号26)では、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)のX2位およびX6位のカチオン性サブユニットを、無電荷のアミノ酸で置換した。
【0149】
図9に示されているように、Ac−carrrar−NH2(配列番号26、白抜きの四角)は、試験した用量(1mg/kg)においてAc−crrrrrr−NH2(配列番号6、白いひし形)に等価な活性を示し、24時間を超える同様の長期の作用の持続時間を伴う。無電荷のサブユニット置換を有するAc−crrrrrr−NH2(配列番号6)の類似体は、活性を保持することが見いだされ、実際に、配列番号6として識別される化合物よりも優れたin vivoにおける効力および作用の持続時間を有する。化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)では、配列番号6として識別される化合物に対して、X2位およびX6位におけるD−Arg残基をD−Ala残基で置換した。
【0150】
重要なことに、上記の通り、化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)の投与には、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および他の同様の化合物をより高用量(>1mg/kg)でIVボーラスによって投与した際に見られる、望ましくない副作用であるヒスタミンの放出は伴わなかった。配列番号26で識別される化合物を用いるとヒスタミンの放出が顕著に弱まることにより、IVボーラスによって投与した後の所望のPTHを低減させる活性と望ましくないヒスタミン誘導活性との間の治療限界が増大する。したがって、好ましい実施形態では、in vivoにおいてヒスタミン応答なくPTH濃度を低下させる活性を有する化合物が提供される。したがって、一実施形態では、PTHを減少させる活性を有する化合物が提供され、化合物を被験体、ヒトまたは他の被験体に投与すると、投薬後1時間以内にPTHレベルが投薬前のレベルの50%を下回るまで減少する。特定の実施形態では、PTHを減少させる顕著な活性を有する化合物は、正常なラットに投与すると、IVボーラスによって投薬した後1時間以内に、PTHレベルが投薬前のレベルの50%を下回るまで減少する化合物を意味する。
【0151】
実施例8で詳述した別の試験において、コンジュゲートの形態の化合物は、X1位のチオール含有サブユニットがジスルフィド結合によってL−Cys残基に連結していた。これらの化合物は、以下の構造を有する:
【0152】
【化2】
本明細書で使用される表示法では、X1サブユニットのチオール含有部分に連結している化合物は、括弧付きで識別され、これらの例示的なコンジュゲートでは、(C)で示される化合物L−CysはX1サブユニットのチオール含有部分に連結している:Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)およびAc−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)。これらの化合物を、急性腎不全の動物(1K1Cモデル)に、0.3および0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与し、その結果が図10に示されている。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は四角(0.3mg/kg、n=5)、および*記号(0.5mg/kg、n=6)で表され、化合物Ac−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)は、三角形(0.3mg/kg、n=8)およびひし形(0.5mg/kg、n=7)で表される。このin vivoにおける配列番号3を用いた用量反応では、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)と非常に類似した用量依存的なPTHの低下が示されている。
【0153】
本明細書に記載のin vivo試験のいくつかでは、X1サブユニットのチオールがジスルフィド結合によって別のサブユニットと架橋しているコンジュゲート形態の化合物を含めた化合物を、30分間のIV注入で投与した。しかし、それよりも短い注入(例えば、<5分間)またはIVボーラスによる送達により、一般には、それよりも長い30分間の注入に匹敵するPTHの薬力学的な低下がもたらされることに留意するべきである。皮下ボーラス投与も、生成するPTHの最初の降下は小さいが、持続性のPTH低下を示す、IV経路で見られたプロファイルと同様の有効な送達経路であることが証明された。図11に示されているように、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)も、マイクロポアによって促進した(例えば、角質層のマイクロポレーション(microporation))経皮送達によって投与し、それをモニターした数時間にわたって血漿PTHの低下が実証された。化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)も、マイクロポレーション後に経皮的経路によって投与し、その結果、数時間にわたって血漿PTHが低下した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の経皮送達により、当該記載の化合物を臨床的に送達するための付加的な選択肢がもたらされる。
【0154】
Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の活性に対する投与経路の影響を評価するために、腎不全の被験体という状況では、1K1Cモデルのラットに、1mg/kgのペプチドを皮下(SC)ボーラスまたは30分間のIV注入のいずれかで与えた。どちらの投与経路でも、24時間超にわたって血漿PTHレベルが有効に低下した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)をIV注入によって送達すると、PTHレベルがベースラインから80〜90%急速に下がった。投薬の16時間後までに、PTHレベルは上昇し始めたが、なおベースラインから約80%低下していた。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)をSCボーラスによって送達すると、PTHレベルはベースラインの約40%まで穏やかな最初の降下を示したが、ペプチドをIV経路によって送達した場合と同様の低下の持続時間を示した。投薬の24時間後、いずれかの経路によって投薬された動物におけるPTHレベルは部分的に元に戻った(rebounded)が、どちらもなお、ベースラインから約40〜60%に低下したPTHレベルを示した。結果により、この投与経路により、PTH低下の有効性および持続時間に関してIV投与と同様のプロファイルがもたらされ、したがって臨床的に投薬するための代替路がもたらされることが示された(データは示していない)。
【0155】
したがって、好ましい実施形態では、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を有する被験体を、血漿PTHレベルおよび/またはカルシウムを低下させるために当該記載の化合物を使用して処置する。中程度に重篤な副甲状腺機能亢進症を持つ無処置のSHPT患者は多くの場合、ベースラインの循環しているインタクトなPTHレベル300pg/ml超を有し、600pg/mLを超え得るレベルを有する。好ましい実施形態では、PTHレベルの減少を、処置前のベースラインレベルを下回るインタクトなPTHの減少として測定する。別の実施形態では、所望のPTHの減少とは、米国腎臓財団または腎障害および腎不全の治療における他の専門家によって確立された一般に認められているガイドライン中の血漿PTHレベルをもたらすことである。
【0156】
別の態様では、治療有効量の当該記載の化合物を投与することを含む、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症および/または骨疾患を治療するための方法が提供される。別の実施形態では、被験体を、当該記載の化合物を1つ以上の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて用いて治療することができる。
【0157】
別の態様では、当該記載の化合物を、PTHまたはPTHの作用を低下させるのに有効な量で投与する。一部の実施形態では、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のベースラインレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%または30%低下する。特定の実施形態では、血漿PTHは、投与した10時間後において少なくとも20%低下する。好ましい実施形態において、血漿PTHは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のベースラインレベルから15%〜40%、好ましくは20%〜50%、より好ましくは30%〜70%低下する。
【0158】
別の態様では、当該記載の化合物を、血清カルシウムまたはカルシウムの作用を減少させるのに有効な量で投与する。一部の実施形態では、血清カルシウムは、ポリカチオン性ペプチドを投与した後少なくとも10時間にわたって、処置前のレベルから少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または25%低下する。一部の好ましい実施形態では、血清カルシウムは、投与した10時間後において少なくとも5%低下する。一部の好ましい実施形態では、血清カルシウムは、当該記載の化合物を投与した後少なくとも48時間にわたって、処置前のレベルから5%〜10%、好ましくは5%〜20%低下する。
【0159】
別の態様では、治療を必要とする被験体において副甲状腺機能亢進症および/または高カルシウム血症を治療するための方法であって、当該記載の化合物の治療有効量を投与し、それによってPTHおよび/またはカルシウムを低下させることを含む方法が提供される。
【0160】
血清カルシウム、骨代謝およびPTHの間の関連性に基づいて、当該記載の化合物は、副甲状腺機能亢進症に加えて、さまざまな形態の骨疾患および/または高カルシウム血症を治療するために有益であると考えられる。当該記載の化合物は、非経口的に投与することができ、チトクロムP450によって代謝されず胃腸の有害作用を伴わないことがあり、かつ血漿PTHおよびカルシウムをより有効に低下させることができるので、現在の治療剤と比較して有利な点を有し得る。
【0161】
上記の通り、当該記載の方法は、単独で、または1つ以上の他の治療的に有効な作用剤と組み合わせて使用することができる。そのような他の治療的に有効な作用剤としては、これらに限定されないが、アレンドロネートおよびリセドロネートなどの再吸収抑制ビスホスホネート剤;αvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬;ホルモン補充療法において使用される結合型エストロゲン、例えば、PREMPRO(商標)、PREMARIN(商標)およびENDOMETRION(商標)など;選択的なエストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336,156(Pfizer)およびラソフォキシフェンなど;カテプシン(cathespin)K阻害剤;ビタミンD療法;ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール);CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、HECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびCytochromaから開発された中のCTA−018、CTAP201およびCTAP101として公知の類似体など;Sensipar(登録商標)(シナカルセト)などの他のカルシウム模倣薬;II型ナトリウム依存性ホスフェートトランスポーターファミリーの阻害剤、SLC34(2つの腎臓アイソフォームであるNaPi−IIaおよびNaPi−IIc、ならびに腸のNaPi−IIbトランスポーターを含む);フォスファトニン(phosphatonin)(FGF−23、sFRP4、MEPEまたはFGF−7を含む);低用量PTH治療(エストロゲンあり、またはなし);カルシトニン;RANKリガンドの阻害剤;RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン(osteoprotegrin);アデノシンアンタゴニスト(adensosine antagonist);およびATPプロトンポンプ阻害剤を用いた治療が挙げられる。
【0162】
一実施形態では、当該記載の化合物を、PTHレベルおよび血清カルシウムレベルの両方を減少させるために十分な用量で投与する。別の実施形態では、当該記載の化合物を、血清カルシウムレベルに重大に影響を及ぼすことなくPTHを減少させるために十分な用量で投与する。別の実施形態では、当該記載の化合物を、血清カルシウムレベルに重大に影響を及ぼすことなくPTHを増加させるために十分な用量で投与する。
【0163】
製剤
当該記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはキャリアを含む薬学的組成物が提供される。そのような薬学的組成物を調製する方法は、一般には当該記載の化合物をキャリアおよび、必要に応じて、1つ以上のアクセサリー成分と結びつけるステップを含む。当該記載の化合物および/またはそれを含む薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化することができる。一般には、製剤は、当該記載の化合物を液体キャリアまたは細かく分割された固体キャリア、またはその両方に結びつけ、次いで、必要であれば、産物を形づくることによって均一かつ密接に調製する。
【0164】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つ以上の当該記載の化合物を、糖、アルコール、アミノ酸、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されたレシピエントの血液との等張性を製剤に与える溶質または懸濁剤または増粘剤を含有してよい、1つ以上の薬学的に許容できる滅菌の等張性の水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用する直前に滅菌の注射可能な溶液もしくは分散液中に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含む。
【0165】
本発明の薬学的組成物に利用することができる適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散物の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0166】
これらの薬学的組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有してよい。当該記載の化合物に対する微生物の作用の予防は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤(agents to control tonicity)などを組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収時間の延長を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる作用剤を含めることによってもたらすことができる。
【0167】
場合によっては、薬物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性材料または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。このとき、薬物の吸収速度はその溶解速度に左右され、その溶解速度は同様に、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、油状のビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって実現される。
【0168】
例えば、当該記載の化合物は、固形の薬物を液体で再構成することによって作製された液剤の形態でヒトに送達することができる。この溶液は、注入液、例えば注射用水、0.9%塩化ナトリウム注射液、5%ブドウ糖注射液および乳酸リンゲル注射液などでさらに希釈することができる。再構成され、希釈された液剤は、最大効力を送達するために4〜6時間以内に使用することが好ましい。あるいは、当該記載の化合物は、錠剤またはカプセルの形態でヒトに送達することができる。
【0169】
注射可能なデポ剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に当該記載の化合物をマイクロカプセル封入したマトリクスを形成することによって作製する。ポリマーに対する薬物の比率、および利用した特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤は、薬物を体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに閉じ込めることによっても調製される。
【0170】
当該記載の化合物を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、単独で、または例えば、0.1%〜99%(より好ましくは、10%〜30%)の活性成分を薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて含有する薬学的組成物として、与えることができる。他の実施形態では、薬学的組成物は、0.2〜25%、好ましくは0.5〜5%または0.5〜2%の活性成分を含有してよい。これらの化合物は、療法のために、ヒトおよび他の動物に、例えば、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入または皮下注入を含めた任意の適切な投与経路によって投与することができる。これらの化合物は、急速に(<1分以内)ボーラスとして、または長期間にわたって(数分間、数時間または数日間にわたって)さらにゆっくりと投与することができる。これらの化合物は、毎日または何日にもわたって、連続的に、または断続的に送達することができる。一実施形態では、化合物は、経皮的に(例えば、パッチ、マイクロニードル、マイクロポア、軟膏剤、マイクロジェットまたはナノジェットを使用して)投与することができる。
【0171】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和物の形態で使用することができる当該記載の化合物、および/またはその薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容できる剤形に製剤化される。
【0172】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態に対する所望の治療反応を実現するために有効なある量の活性成分を得るために、患者に対して有毒になることなく変更してよい。
【0173】
選択される投薬レベルは、利用される特定の当該記載の化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、利用されている特定の化合物が排出または代謝される速度、吸収の速度および程度、治療の持続時間、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、重量、状態、全体的な健康および以前の病歴、および医学の分野で周知の同様の因子を含めた種々の因子に左右される。
【0174】
当技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物中に利用される当該記載の化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで徐々に投与量を増加させることができる。
【0175】
一般に、当該記載の化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすために有効な最低用量である化合物の量になる。そのような有効量は、一般に、上記の因子に左右される。一般に、患者に対する当該記載の化合物の静脈内用量、筋肉内用量、経皮用量、脳室内用量および皮下用量は、示した効果のために使用する場合、1時間当たり体重1キログラム当たり約1μg〜約5mgにわたる。他の実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約2.5mgにわたる。さらなる実施形態では、用量は、1時間当たり体重1キログラム当たり約5μg〜約1mgにわたる。
【0176】
望ましい場合には、当該記載の化合物の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で、必要に応じて、単位剤形で別々に投与される、2つの、3つの、4つの、5つの、6つの、またはそれを超える副用量(sub−dose)として投与することができる。一実施形態では、当該記載の化合物を1日当たり1回用量として投与する。さらなる実施形態では、化合物を連続的に、静脈内経路または他の経路を介して投与する。他の実施形態では、化合物を毎日よりも少ない頻度で、例えば、2〜3日ごと、週に1回以下の頻度の透析治療と併せて投与する。
【0177】
この治療を受けている被験体は、一般に、霊長類、特にヒト、ならびに他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなど;ならびに家禽および愛玩動物を含めた、それを必要とする任意の動物である。
【0178】
当該記載の化合物は、それとして、または薬学的に許容されるキャリアと混合して投与することができ、抗菌性剤、例えばペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチドなどと併せて投与することもできる。したがって、連結的療法(conjunctive therapy)は、最初に投与した活性化合物の治療効果が、次の活性化合物が投与されたときに完全には消失していないようなやり方で、活性化合物を逐次的に投与すること、同時に投与すること、および別々に投与することを含む。
【0179】
開示の化合物の投与経路
これらの化合物は、治療のために、任意の適切な投与経路によってヒトおよび他の動物に投与することができる。本明細書で使用される投与「経路」という用語は、これらに限定されないが、皮下注射、皮下デポ剤、静脈内注射、静脈内注入もしくは皮下注入、眼内注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、気管内投与、脂肪内(intraadiposal)投与、関節内投与、くも膜下腔内投与、硬膜外投与、吸入、鼻腔内投与、舌下投与、頬側投与、直腸内投与、膣内投与、槽内投与および局所投与、経皮投与、または局所送達による投与(例えばカテーテルまたはステントによる)を含むものとする。
【0180】
体に薬物を経皮的に送達することは、生物学的に活性な物質を被験体に全身送達するため、特に、タンパク質およびペプチドなどの経口的な生物学的利用能が乏しい物質を送達するために、望ましく、かつ都合のよい方法である。送達の経皮的経路は、物質が体内に侵入するのに対する有効な関門としての機能を果たす皮膚の角質層外層に浸透することができる小さな(例えば、約1,000ダルトン未満の)親油性化合物、例えば、スコポラミンおよびニコチンで特に成功している。角質層の下は、生存表皮であり、それは血管を含有しないが、いくつかの神経を有する。さらに深部は真皮であり、それは、血管、リンパ管および神経を含有する。角質層関門を横断する薬物は、一般に、吸収および全身への分布のために、真皮内の毛細血管に拡散することができる。
【0181】
経皮送達における科学技術的な進歩は、タンパク質およびペプチドなどの、親水性の高分子量の化合物を、皮膚を横断して送達することの当技術分野における必要性に取り組むことに焦点が置かれてきた。1つの手法は、化学的方法または物理的方法を使用して角質層を破壊して角質層によってもたらされる関門を弱めることを伴う。低侵襲の技法を使用して皮膚内にミクロン寸法の輸送経路(マイクロポア)(特に、角質層内のマイクロポア)を創出することを伴う皮膚マイクロポレーション技法は、ごく最近の手法である。皮膚(角質層)内にマイクロポアを創出するための技法としては、熱マイクロポレーションまたは熱アブレーション、マイクロニードルアレイ、フォノフォレーシス、レーザーアブレーションおよび高周波アブレーションが挙げられる(PrausnitzおよびLanger(2008年)Nat. Biotechnology 11巻:1261〜68頁;Aroraら、Int. J. Pharmaceutics、364巻:227頁(2008年);Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年);Meidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年))。
【0182】
上記の通り、PTHの分泌は、副甲状腺細胞の細胞表面で発現されるCaSRによって制御される。したがって、CaSRを活性化するために、作用剤または化合物を副甲状腺細胞に送達しなければならない。カルシウム模倣剤の経皮送達は、角質層をわたる送達を実現し、副甲状腺細胞に到達する全身曝露をもたらさなければならない。今まで、当技術分野では、治療的な利益のために十分な量、具体的には、PTHを減少させるため、かつ/または高カルシウム血症の治療、減弱、緩和および/または軽減のために十分な量でカルシウム模倣化合物を経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。
【0183】
カルシウム模倣薬に加えて、1,25−(OH)2ビタミンD3類似体が、慢性腎疾患および末期腎疾患に伴う副甲状腺機能亢進症の患者に対して最も一般的に使用される治療薬である。ビタミンD類似体は、腸における食餌性カルシウムの吸収を促進することによって作用し、PTHの合成および分泌を阻害することによってPTHレベルを低下させる。ビタミンDの静脈内送達および経口送達が治療的に使用されてきたが、今まで、当技術分野では、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)などを、治療的な利益のために十分な量で、具体的には副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるために十分な量で経皮的に送達することができるかどうかは実証されていない。さらに、当技術分野では、カルシウム模倣剤を、ビタミンD類似体と組み合わせて(別々の製剤として、または共製剤(co−formulation)としてのいずれかで)、治療的な利益のために十分な量で、具体的にはPTHを減少させるために十分な量で経皮送達によって同時投与することによって、副甲状腺機能亢進症に罹患している患者に有効な治療がもたらされるかどうかは実証されていない。
【0184】
カルシウム模倣剤は、副甲状腺ホルモン(PTH)を減少させるため、および/または高カルシウム血症を治療するために局所送達または全身送達するために、角質層、および/または表皮の他の層を横断して投与することができる。一実施形態では、マイクロポレーションによってカルシウム模倣剤を送達する。マイクロポレーションのためのいくつもの技法1つのいずれも意図されており、そのいくつかが簡単に説明されている。
【0185】
マイクロポレーションは、角質層を突破して、本明細書に記載のカルシウム模倣剤を皮膚の表面を通して、かつ皮膚基底層および/または血流の内部に送達するために、機械的な手段および/または外部駆動力によって実現することができる。
【0186】
第1の実施形態では、マイクロポレーション技法は、皮膚の特定の領域の角質層を、基底表皮を著しく傷つけることなく角質層を切除するために十分な波長のパルスレーザー光、パルス幅、パルスエネルギー、パルス数、およびパルス繰り返し数を使用して切除することである。次いで、カルシウム模倣剤を切除領域に塗布する。レーザー誘起応力波(LISW)と称される別のレーザーアブレーションマイクロポレーション技法は、強力なパルスレーザーによって生成する広帯域、単極かつ圧縮性の波を伴う。LISWは、組織と相互作用して角質層内の脂質を破壊し、それにより角質層の内部に細胞間チャネルが一過性に創出される。角質層内のこれらのチャネル、またはマイクロポアにより、カルシウム模倣剤が侵入することが可能になる。
【0187】
ソノフォレーシスまたはフォノフォレーシスは、超音波エネルギーを使用する、別のマイクロポレーション技法である。超音波は、20KHzを超える周波数を保有する音波である。超音波は、連続的に、またはパルス状でのいずれかで適用することができ、さまざまな周波数および強度の範囲で適用することができる(Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年))。
【0188】
別のマイクロポレーション技法は、マイクロニードルアレイの使用を伴う。マイクロニードルのアレイは、被験体の皮膚領域に適用した場合、角質層に穴をあけ、神経を著しく刺激する深さ、または毛細血管を穿刺する深さまでは浸透しない。したがって患者は、カルシウム模倣剤を送達するマイクロポアを生成するためにマイクロニードルアレイを適用した際、不快感または痛みを感じない、またはわずかしか感じない。
【0189】
中空または充実したマイクロニードルで構成されるマイクロニードルアレイであって、カルシウム模倣剤を、ニードルの外面にコーティングすることまたは中空のニードルの内部から分配することができるマイクロニードルアレイが意図されている。マイクロニードルアレイの例は、例えば、Nandaら、Current Drug Delivery、3巻:233頁(2006年)およびMeidanら American J. Therapeutics、11巻:312頁(2004年)に記載されている。第1世代のマイクロニードルアレイは、外側に治療剤をコーティングした充実したシリコンマイクロニードルで構成されていた。ニードルのマイクロアレイを皮膚に押しつけ、約10秒後に取り除くと、ニードル上の作用剤の体内への浸透が容易に実現された。第2世代のマイクロニードルアレイは、充実したまたは中空のシリコン、ポリカーボネート、チタンまたは他の適切なポリマーのマイクロニードルで構成され、治療用化合物の液剤でコーティングされている、または治療用化合物の液剤で満たされていた。新しい世代のマイクロニードルアレイは、生分解性ポリマーから調製され、治療剤でコーティングしたニードルの先端部分が角質層内にとどまり、ゆっくりと溶解する。
【0190】
マイクロニードルは、金属、セラミックス、半導体、有機物、ポリマーおよび複合物を含めた種々の材料から構築することができる。構築物の例示的な材料としては、薬学的グレードのステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、スズ、クロム、銅、パラジウム、白金、これらの金属または他の金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、およびポリマーが挙げられる。代表的な生分解性ポリマーとしては、乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−co−グリコリド、およびポリ(エチレングリコール)との共重合体、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)が挙げられる。代表的な非生分解性ポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0191】
マイクロニードルは、まっすぐな軸または先細の軸を有してよい。一実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基部末端において最大であり、基部の遠位末端点まで先細になる。マイクロニードルは、まっすぐな(先細でない)部分および先細の部分の両方を含む軸を有するように製作することもできる。該ニードルは、先細の末端を全く有さなくてもよい、すなわち単に先端部分がとがっていない円柱または先端部分が平らな円柱であってよい。実質的に均一な直径を有するが、1点に向けて先細になっていない中空のマイクロニードルは、本明細書では「マイクロチューブ」と言及される。本明細書で使用される、「マイクロニードル」という用語は、別段の指定のない限り、マイクロチューブおよび先細のニードルの両方を包含する。
【0192】
電気穿孔は、皮膚にマイクロポアを創出するための別の技法である。この手法では、角質層の内部に一過性の、浸透性の細孔を創出するために、マイクロ秒またはミリ秒の長さの高圧の電気パルスの印加を使用する。
【0193】
他のマイクロポレーション技法は、皮膚にマイクロチャネルを創出するために電波の使用を含む。熱アブレーションは、分子量が大きい化合物の経皮的な送達を実現するためのさらに別の手法である。
【0194】
出願人らは、低用量のカルシウム模倣剤を、SHPTを治療するために長期間にわたって治療的に投与することができることを発見した。これは、現在通用している他のカルシウム模倣薬(例えば、シナカルセト塩酸塩)の必要用量と著しく異なる。
【0195】
本明細書に記載の化合物を経皮送達することが、実施例9〜10に記載の試験において実証された。最初の試験では、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、ラットに、皮膚の狭い領域に1.0mmのダーマローラーを適度な圧力下で5回通過させることによってマイクロポレーションして、経皮的に投与した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)または生理食塩水のいずれかの液剤をマイクロポレーションした皮膚の領域に置いた。4時間の期間にわたって血液を抜き取り、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図11に結果が示されており、そこでは生理食塩水で処置した動物(ひし形)および試験化合物で処置した2匹の動物(四角、三角形)について、血漿PTHが投薬前のベースラインに対するパーセントとして示されている。これらのデータは、化合物Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、ダーマローラーを使用した経皮的経路(この場合、マイクロポアによって促進した経皮送達)によって、全身的に、十分な量で送達して、試験した約4時間にわたって、ベースラインから有効に、かつ顕著にPTHレベルを低下させることができることが示されている。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)により、急性腎不全の1K1Cラットモデルならびに正常なラット(データは示していない)において、短いIV注入によって投与するとベースラインから有効にPTHレベルを低下させることが示されたことに留意するべきである。
【0196】
別の試験では、実施例10に記載の化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットに、経皮パッチを使用して、マイクロポアによって促進した経皮送達で投与した。生理食塩水中Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の10%液剤(重量で)を含有する経皮パッチ系をマイクロポレーションした領域一面に置き、約30時間、適所に放置した。ラットから、約30時間にわたって定期的に血液を抜き取り、血漿試料を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図12に結果が示されている。驚いたことに、これらのデータは、マイクロポアによって促進した経皮送達により、腎臓の機能が正常なラットにおいて、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を十分な持続性で送達して、30時間超にわたる顕著で長時間のPTH低下をもたらすことが実現され得ることが実証されている。これらのデータは、パッチを使用した、コンジュゲートAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)のマイクロポレーションによって促進した経皮送達により、治療の間に血液をペプチドに十分に曝露させて、30時間超にわたってベースラインからの顕著で持続性のPTH低下をもたらすことが実現され得ることを実証している。これらのデータは、経皮パッチを毎日を基本としてまたはそれより長い日数を基本として送達することにより、治療を必要とする透析患者および非血液透析患者の両方を治療することが可能になることを実証している。例えば、腎移植患者におけるCKD(第4期)、原発性副甲状腺機能亢進症および二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は、一般にはIV薬を用いた治療をされないが、毎日の経皮パッチにより、マイクロポレーションによって促進した経皮送達を介して容易に処置することができた。
【0197】
化合物の投与経路をさらに評価するために、別の試験を行った。実施例11に記載の通り、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットおよび腎不全のラットに、非常に低用量のIV注入によって投与して、注入、経皮パッチ系または顕著なPTH低下を実現するための他の持続性送達手段によって投与する必要がある最低用量を同定した。健康なラットに、非常に低用量(1μg/kg/時間、3μg/kg/時間、および10μg/kg/時間)のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間にわたって静脈内注入した。血液試料を、投薬する前(プレ)、ならびに注入開始の2時間後、4時間後、6時間後(注入終了;EOIの直前)および8時間後(EOIの2時間後)に取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。驚いたことに、図13に示されているデータは、非常に低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(1μg/kg/時間(四角)、3μg/kg/時間(丸)、および10μg/kg/時間(三角形))を6時間にわたって注入することが、注入の間にベースラインからの顕著なPTH低下をもたらすのに有効であることを実証している。これらのデータは、低用量を連続的に送達することが、はるかに高用量を単回のボーラスとして送達することと同じくらい有効であり得る(またはそれよりも有効でさえあり得る)ことを示している。
【0198】
急性腎不全のラット1K1Cモデルにおいて、PTHを低減させる効果をさらに評価した。1K1Cモデルラットに、低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)(30μg/kg/時間および100μg/kg/時間)を6時間にわたって静脈内注入した。血液試料を、投薬する前(プレ)、ならびに注入開始の2時間後、4時間後、6時間後(注入終了;EOIの直前)、8時間後(EOIの2時間後)および24時間後に取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図14Aに示されているデータは、低用量のAc−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)をIV注入することにより、ベースラインのPTHレベルが400〜1100pg/mL超であると認めることができる腎不全のモデルである1K1Cモデルにおいて、PTHがベースラインレベルから顕著に低下することを実証している。驚いたことに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を6時間、低用量でIV注入(ひし形、30μg/kg/時間および四角、100μg/kg/時間)することにより、約24時間にわたってPTHをベースラインから低下させることができた。1K1Cラットモデルにおけるこの劇的なPTH低下と一致して、図14Bは、この急性腎不全における血清カルシウムのデータをプロットした棒グラフを示し、これらは、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を低用量でIV注入した後の対応する血清カルシウムの低下を示している。これらのデータは、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)が、約24時間にわたって低用量を注入または送達(例えば経皮送達によって)した後にPTHおよびカルシウムを低下させることができる非常に強力なカルシウム模倣化合物であることを実証している。これらのデータは、カルシウム模倣剤をIV注入によって、またはマイクロポアによって促進した経皮送達によって低用量で持続的に送達することが、毎日以下の頻度を基本とした患者に対する有効な治療であり得るという結論をさらに支持する。
【0199】
併用療法
上記の通り、使用方法は、単独で、または高カルシウム血症および/または骨疾患を治療するための他の手法と組み合わせて使用することができる。そのような他の手法としては、これらに限定されないが、ビスホスホネート剤、インテグリン遮断薬、ホルモン補充療法、選択的なエストロゲン受容体モジュレーター、カテプシンK阻害剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えばZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)、CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)など、抗炎症剤、低用量PTH療法(エストロゲンあり、またはなし)、カルシウム模倣薬、ホスフェート結合剤、カルシトニン、RANKリガンドの阻害剤、RANKリガンドに対する抗体、オステオプロテゲリン、アデノシンアンタゴニスト、およびATPプロトンポンプ阻害剤などの作用剤を用いた治療が挙げられる。
【0200】
一実施形態では、併用療法では、ビタミンDまたはビタミンD類似体をカルシウム模倣剤と組み合わせて使用する。ビタミンDはカルシウムの吸収に役立ち、カルシウムおよびリン(phosphorous)の正常な血中レベルを維持するように機能する。PTHは、腸におけるカルシウムの吸収を、ビタミンDの活性型である1,25−(OH)2ビタミンDの産生を増加させることによって増強するように働く。PTHは、腎臓からのリンの排出も刺激し、骨からの放出を増加させる。
【0201】
上記の通り、二次性副甲状腺機能亢進症は、活性なビタミンDホルモンのレベルが不十分であることに関連する副甲状腺ホルモン(PTH)の上昇を特徴とする。二次性副甲状腺機能亢進症(hyperparathryoidism)の治療において、ビタミンDまたはビタミンD類似体を使用して、上昇したPTHレベルを低下させることができる。一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびビタミンD類似体を含む薬学的組成物を包含する。
【0202】
一実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびZEMPLAR(商標)(パリカルシトール)を含む薬学的組成物を包含する。パリカルシトールは、ビタミンDの代謝活性型であるカルシトリオールの合成類似体である。Zemplarの推奨初回用量は、ベースラインであるインタクトな副甲状腺ホルモン(iPTH)レベルに基づく。ベースラインのiPTHレベルが500pg/mL以下の場合は、1日用量は1μgであり、「1週間に3回」用量(多くて1日おきで投与される)は2μgである。ベースラインのiPTHが500pg/mLを超える場合は、1日用量は2μgであり、「1週間に3回」用量(1日おき以下で投与される)は4μgである。その後、投薬は、血清カルシウムおよび血清リンをモニターしながら、個別化し、血清血漿iPTHレベルに基づかなければならない。パリカルシトールは、米国特許第5,246,925号および米国特許第5,587,497号に記載されている。
【0203】
別の実施形態では、本発明は、カルシウム模倣剤およびCALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)を含む薬学的組成物を包含する。カルシトリオールはビタミンDの代謝活性型である。CALCIJEX(登録商業)(経口)に対して推奨される初回投与量は1日当たり0.25μである。この量は、4〜8週間おきに、1日当たり0.25μgずつ増加させることができる。正常なカルシウムレベル、またはほんのわずかだけ低下したカルシウムレベルが、1日おきに0.25μgの投与量に応答し得る。透析を受けている患者に対しては、CALCIJEX(登録商業)(IV)の推奨初回用量は、1週間当たり3回、1日おきに0.02μg/kg(1〜2μg)である。この量は、2〜4週間ごとに0.5〜1μgずつ増加させることができる。カルシトリオールは、米国特許第6,051,567号および米国特許第6,265,392号および米国特許第6,274,169号に記載されている。
【0204】
一実施形態では、カルシウム模倣剤およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)を含む薬学的組成物が提供される。ドキセルカルシフェロールは、in vivoにおいて代謝的活性化を受けて、天然に存在する、ビタミンDの生物学的活性型である1α,25−ジヒドロキシビタミンD2を形成する、ビタミンDの合成類似体である。HECTOROL(登録商標)の推奨初回用量は、毎週3回、透析時に(およそ1日おきに)10μgの投与である。初回用量は、必要に応じて、血中iPTHを150〜300pg/mLの範囲に低減させるように、調整するべきである。用量は、iPTHが50%低減されない場合、および標的範囲に到達できない場合は、8週間間隔で2.5μgずつ増加させることができる。HECTOROLの最大の推奨用量は、1週間に3回、透析時に20μg、1週間当たり合計60μgの投与である。ドキセルカルシフェロールは、米国特許第5,602,116号および米国特許第5,861,386号および米国特許第5,869,473号および米国特許第6,903,083号に記載されている。
【0205】
組み合わせレジメンにおいて利用するための療法(治療法または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療法および/または手順と、実現される所望の治療効果との適合性を考慮にいれる。利用する療法により、同じ障害に対して所望の効果を実現することができる(例えば、発明の化合物は、同じ障害を治療するために使用される別の作用剤と同時に投与することができる)、または、異なる効果を実現することができる(例えば、任意の有害作用の制御)ことも理解されよう。本明細書で使用される、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与される追加的な治療剤は、「治療されている疾患または状態に適している」ことが公知である。
【0206】
本明細書で定義した本発明の併用治療は、前記治療の個々の構成成分を同時に、逐次的に、または別々に投与することとして実現することができる。
【0207】
化合物またはその薬学的に許容される組成物は、埋め込み型の医療用デバイス、生物侵食性(bio−erodible)ポリマー、埋め込み型ポンプ、および坐剤をコーティングするためにも組成物に組み込むことができる。したがって、別の態様では、上で概説されているような当該記載の化合物を含む、埋め込み型デバイスをコーティングするための組成物、および埋め込み型デバイスをコーティングするために適したキャリアが意図されている。さらに別の態様では、上で概説されている化合物を含む組成物、および前記埋め込み型デバイスをコーティングするのに適したキャリアでコーティングされた埋め込み型デバイスが包含される。
【0208】
適切なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型デバイスの一般的な調製は、米国特許番号第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは、一般には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、エチレン酢酸ビニル、ならびにそれらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、多糖(polysaccaride)、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適切な保護膜によりさらに覆って、組成物に制御放出特性を与えることができる。
【0209】
治療の有効性を決定するための潜在的な臨床マーカー
当該記載の治療方法の有効性の決定は、種々の方法によって決定することができる。
【0210】
血清カルシウムの正常なレベルは、8.8mg/dL〜10.4mg/dL(2.2mmol/L〜2.6mmol/L)の範囲内である。ある特定の場合では、治療の有効性は、これらに限定されないが、血清総カルシウムおよび血清カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、およびマグネシウムを含めた、カルシウムに関連する血清および尿のマーカーを測定することによって決定することができる。
【0211】
他の場合では、有効性は、骨塩密度(BMD)を測定することによって、または、血清中または尿中の、骨形成および/または骨吸収についての生化学的マーカーを測定することによって決定することができる。潜在的な骨形成マーカーとしては、これらに限定されないが、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、およびN末端I型プロコラーゲンプロペプチドが挙げられる。潜在的な骨吸収マーカーとしては、これらに限定されないが、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼが挙げられる。
【0212】
他の場合では、有効性は、投薬前の(ベースライン)レベルと比較したパーセントPTH低下によって、および/または患者に有益であると一般に認められている(例えば、米国腎臓財団によって確立されたガイドライン)望ましいPTHレベルの実現によって決定することができる。さらに他の場合では、有効性は、副甲状腺機能亢進症疾患に関連する副甲状腺過形成における低下を測定することによって決定することができる。
【0213】
当該記載の治療方法を、治療を必要とする被験体に施すと、治療方法により、例えば、血清総カルシウム、血清カルシウムイオン、血中総カルシウム、血中カルシウムイオン、アルブミン、血漿PTH、血中PTH、PTHrP、ホスフェート、ビタミンD、マグネシウム、骨塩密度(BMD)、総アルカリホスファターゼ、骨アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、低カルボキシル化オステオカルシン、C末端I型プロコラーゲンプロペプチド、N末端I型プロコラーゲンプロペプチド、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリコシル−ガラクトシルヒドロキシリジン、ガラクトシルヒドロキシリジン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、I型コラーゲンN末端架橋テロペプチド、I型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、MMPによって生成されたI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド、骨シアロタンパク質、酸性ホスファターゼおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼの1つ以上を測定したところ、効果がもたらされることが予想される。効果は、予防的治療ならびに現存する疾患の治療も含む。
【0214】
生物学的に有効な分子は、共有結合または非共有結合性の相互作用で、当該記載のペプチドに作動可能に連結していてよい。特定の実施形態では、作動可能に連結した生物学的に有効な分子は、連結した分子の一部分として化合物に性質を付与することによって、当該記載の化合物の薬物動態を変化させ得る。生物学的に有効な分子によって当該記載の化合物に付与され得る性質のいくつかとしては、これらに限定されないが、化合物が体内の離れた場所に送達されること;化合物の活性が体の所望の場所に集中し、他の場所でのその効果が低下すること;化合物を用いた治療の副作用が低下すること;化合物の浸透性が変わること;化合物の生物学的利用能または体への送達速度が変わること;化合物を用いた治療の効果の長さが変わること;化合物のin vitroにおける化学的安定性が変化すること;化合物のin vivoにおける安定性、半減期、クリアランス、吸収、分布および/または排出が変化すること;化合物の効果の開始速度および減衰速度が変化すること;化合物が効果を有することが可能になることによって許容作用(permissive action)がもたらされることが挙げられる。
【0215】
別の態様では、当該記載の化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートさせることができる。選択されたPEGは、任意の都合のよい分子量のものであってよく、直鎖状または分枝状であってよく、必要に応じて、リンカーによってコンジュゲートすることができる。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(kDa)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約40kDaにわたる。あるいは、使用するPEG部分は、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDaであってよい。
【0216】
当該記載の化合物は、化合物上の任意の位置に位置する適切なアミノ酸残基を通じてPEGとコンジュゲートさせることができる。当該記載の化合物は、必要に応じて、PEGがコンジュゲートされた、例えば、リジンなどの追加的なアミン含有残基を含めた追加的なアミノ酸残基を含有してよい。
【0217】
ペグ化ペプチドにより、コンジュゲートされたペプチドの血清半減期が増加することが当技術分野で公知である。ペグ化ペプチドを形成するための種々の方法が当技術分野で公知である。例えば、PEG部分は、アミノ末端に、カルボキシ末端に、または特許請求されたペプチドの側鎖によって、必要に応じて連結基の存在によって連結させることができる。他の実施形態では、PEG部分はシステインなどのチオール含有アミノ酸の硫黄に連結させることができる、または、リジンなどのアミン含有アミノ酸の側鎖に結び合わせることができる。
【0218】
PEG基は、一般に、PEG部分の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン チオール、エステル、またはカルボン酸基)を通じて、当該記載の化合物のアミノ末端、カルボキシ末端、または側鎖の位置に位置してよい当該記載の化合物の反応性基(例えば、アルデヒド、アミン、オキシム、ヒドラジン、エステル、酸基またはチオール基)に、アシル化またはアルキル化によって当該記載の化合物に結合する。合成ペプチドのペグ化を調製するための1つの手法は、溶液中でコンジュゲート結合によって、それぞれが他方に対して相互に反応性である官能基を有するペプチドとPEG部分を結合させることからなる。ペプチドは、従来の液相合成技法または固相合成技法を使用して容易に調製することができる。ペプチドとPEGをコンジュゲートすることは、一般には、水相で行い、逆相HPLCによってモニターすることができる。ペグ化ペプチドは、当業者に公知の標準の技法を使用して容易に精製し、特徴づけることができる。
【0219】
1つ以上の個々の当該記載の化合物のサブユニットは、特定の側鎖または末端残基と反応することが公知のさまざまな誘導体化剤で修飾することもできる。例えば、リジニル(lysinyl)残基およびアミノ末端残基を、リジニル残基またはアミノ残基の電荷を逆転させる無水コハク酸または他の同様のカルボン酸の無水物と反応させることができる。他の適切な試薬としては、例えば、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサール;ピリドキサールリン酸;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4,−ペンタンジオン;およびトランスアミナーゼによって触媒されるグリオキサル酸との反応が挙げられる。アルギニル残基は、従来の作用剤、例えば、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって修飾することができる。
【0220】
さらに、当該記載の化合物は、生物分析的なELISA測定用の抗体を開発するため、ならびに免疫原性を評価するために有用な免疫原性残基を提供する非カチオン性残基を含むように修飾することができる。例えば、当該記載の化合物は、チロシン残基および/またはグリシン残基を組み込むことによって修飾することができる。チロシル残基の特異的な修飾は、チロシル残基に分光標識を導入することに関して特に興味深い。非限定的な例としては、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応が挙げられる。最も一般的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル誘導体および3−ニトロ誘導体を形成する。
【0221】
当該開示の化合物を含むキット
本発明は、本発明の治療レジメンを実行するためのキットも提供する。そのようなキットは、治療有効量の、CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を、薬学的に許容される形態で、単独で、または薬学的に許容される形態の他の作用剤と組み合わせて含む。好ましい薬学的形態としては、滅菌生理食塩水、ブドウ糖溶液、緩衝溶液、滅菌水、または他の薬学的に許容される滅菌流体と組み合わせた当該記載の化合物が挙げられる。あるいは、組成物は、抗菌剤または静菌剤を含んでよい。あるいは、組成物は、凍結乾燥または乾燥されていてよい。この場合、キットは、注射用溶液を形成するための、薬学的に許容される溶液、好ましくは滅菌された溶液をさらに含んでよい。別の実施形態では、キットは、組成物を注射するための、好ましくは滅菌形態に包装されたニードルまたはシリンジをさらに含んでよい。他の実施形態では、キットは、組成物を被験体に投与するための指示手段をさらに含む。指示手段は、折込み書面、オーディオテープ、視聴覚テープ、または組成物を被験体に投与することについて指示する任意の他の手段であってよい。
【0222】
一実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;および(ii)使用するための指示手段を含む。別の実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載の化合物を含有する第1の容器、および(ii)希釈または再構成するための、薬学的に許容されるビヒクルを含有する第2の容器を含む。
【0223】
別の実施形態では、キットは、(i)CaSRモジュレーターとしての活性を有する当該記載の化合物を含有する第1の容器;(ii)抗高カルシウム血症剤を含有する第2の容器;および(iii)使用するための指示手段を含む。
【0224】
一実施形態では、抗高カルシウム血症剤は、ビスホスホネート剤、ホルモン補充治療剤、ビタミンD療法、ビタミンD類似体、例えば、ZEMPLAR(商標)(パリカルシトール);CALCIJEX(登録商標)(カルシトリオール)、ONE−ALPHA(登録商標)(アルファカルシドール)およびHECTOROL(登録商標)(ドキセルカルシフェロール)、低用量PTH(エストロゲンあり、またはなし)、ならびにカルシトニンからなる群から選択される作用剤である。
【0225】
関連する態様では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造品を提供する。例えば、本発明は、単独の、または他の作用剤と組み合わせた有効量の当該記載のペプチド、および本明細書に記載の疾患を治療するための使用について示す指示手段を含む製造品を提供する。
【実施例】
【0226】
以下の実施例は、本明細書に記載の化合物および方法を例示するために提供され、本明細書に記載の化合物および方法を限定するために提供されるのではない。当業者は、本明細書に記載の主題の真の主旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな改変を行うことができる。
【0227】
(実施例1)
PTHを低減させる活性を持つカチオン性化合物
腎不全のモデル
急性腎不全のラットモデル(1K1Cモデルとも称される)を開発して末期腎疾患に関連するSHPTの病態をシミュレートした。このモデルは、腎機能の欠如に関連する副甲状腺機能亢進症(hyper parathyroidsm)、詳細には血漿PTHの顕著な上昇および血清カルシウムの低下の病理学的特性を示す。このモデルを開発したことにより、腎機能障害を持ち、PTHが上昇した被験体の状況において当該記載の化合物をさらに特徴づけることが可能になった。このモデルにおける典型的なベースラインのPTHレベルは、平均約450pg/mLであった。
【0228】
急性腎不全の1K1Cモデルについて、1つの腎臓を除去し、その後、残りの腎臓を45分間の虚血および48時間の再灌流に曝露させた。続く、残りの腎臓に対する虚血/再灌流(I/R)傷害により、重大な壊死および腎不全が生じる。I/R侵襲後24〜48時間超にわたって血清クレアチニンレベルが上昇した(データは示していない)。同様に、生じた腎機能障害に起因して、総PTHレベルが、約100pg/mLのI/R傷害前のレベルから劇的に増加する。I/R後48時間までに、血漿PTHレベルが約450pg/mLまで上昇し(約5倍に増加)、ある場合には、約1200pg/mLの高さまで到達する。この血清クレアチニンおよび血清PTHの再現性のある増加により、ESRD患者で見られる生理を模倣する頑強なモデルがもたらされた。
【0229】
SHPTの治療のために、PTHを低減させるために使用する認可されたカルシウム模倣剤であるシナカルセト塩酸塩(SENSIPAR(登録商標))を、急性腎不全の1K1Cモデルにおいて試験した。シナカルセトを30mg/kgで経口投与することにより、最大6時間にわたって、およそ50%、PTHが顕著に低減した。この結果は、シナカルセトについての公開された前臨床データと一致し(Nemethら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、308巻(2号):627〜35頁(2004年))、急性腎不全の1K1Cモデルがこの適応症に対するカルシウム模倣薬の活性を評価する適切なモデルであることを検証している。
【0230】
この試験で使用したプロトコールは以下の通りである。雄のスプラーグドーリーラットをCharles River Laboratories(Hollister、CA;依頼した注文重量250〜275g)から購入した。被験物を用いて試験するために、それぞれ薬物を投与するため、および血液を抜き取るために動物の大腿静脈および頸静脈に予めカニューレを挿入した。動物を、一定の12時間の明/12時間の暗サイクルで、食物および水をいつでも自由に摂ることができる、温度制御された環境で維持した。動物を用いる全ての実験手順は、IACUCガイドラインに従って実施した。
【0231】
ペントバルビタールナトリウム(5.2%、0.4mL/ラット)を腹腔内(IP)注射することにより、全身麻酔を誘導し、維持した。45分間の腎臓虚血を受けた動物に対して、追加的なペントバルビタールナトリウム(5.2%、0.1mL/ラット)のIP注射を与えて麻酔の水準を維持した。正常なラットにおいて、化合物を投与した後に、PTHを測定するための血液試料採取を連続的なイソフルラン麻酔下で行った。
【0232】
全部の手順に清潔、無菌的な技法を使用した。ラットを麻酔した後、手術の前に腹部を電気バリカンで剃毛し、70%アルコール溶液で皮膚を清潔にした。
【0233】
モデル開発試験のために、血液を抜き取るためのPE−10チューブを用いて左大腿静脈にカニューレ挿入した。両方の腎臓を開腹術によって露出させた。2重の2〜0絹製縫合糸を用いて右腎茎および尿管を結紮した後に、右腎摘出術を実施した。右茎において出血していないことを確認した後、左腎動脈を慎重に切開し、微小血管クリップを用いてクランプして左腎の全体的な虚血を誘導した。全体的な白色〜灰色の色の変化(白化(blanching))を観察することによって腎臓虚血を確認した。腹部器官の温度維持を助けるために腹部の切り口を一時的にガーゼで覆った。指定された虚血期間である45分後、クリップを取り除き、赤色の全体的な回復が観察されたら、左腎動脈の流れが回復したとみなした。腹部の切り口を、2〜0絹製縫合糸を用いて層に閉じた。次いで、動物を麻酔から回復させた。体温(36〜37.5℃)および体重を含めた生理学的パラメータを、手順全体を通して測定した。ヒートパッド直腸プローブフィードバックシステム(heat pad rectal probe feedback system)を使用して体温をモニターし、維持した。
【0234】
1K1Cの外科手術(I/R傷害)のおよそ48時間後、動物にさまざまな化合物を投薬して血漿中のPTHおよびカルシウムに対する効果を測定した。ほとんどの場合、被験物はIV注入によって投与したが(5分、10分または30分の注入時間)、一部の試験では、化合物はIVボーラスまたは皮下(SC)ボーラス注射によって投与した。薬物を投与し、血液を抜き取るために、動物を、イソフルランで麻酔した。
【0235】
試験の過程全体を通して、血液試料を定期的に採取した。血清試料を、カルシウムレベルについて分析し、血漿試料を、PTHについて分析した。個々のラットについてのベースラインのPTH値の範囲に起因して、全てのデータを投薬前の(ベースライン)レベルに対して正規化する。血清クレアチニンを、BioAssay Systems(Hayward、Ca)、カタログ番号DICT−500から市販されているキットを使用して測定した。分析は、製造者の説明書に従って実施した。
【0236】
B.腎不全モデルにおける化合物の試験
以下の配列を有する化合物を、腎不全モデルにおいて試験するために調製した:Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、n=4、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、n=4、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)、n=7、Ac−crrrrrrr−NH2(配列番号7)、n=4、および生理食塩水の対照、n=2。ペプチドを、3mg/kgの用量で、30分間のIV注入によって動物に投与した。投薬する前にベースラインである投薬前のPTH血漿濃度を決定するために血液試料を抜き取った。図1に、以下の通り結果が示されている:Ac−crrrr−NH2(配列番号4、ひし形)、Ac−crrrrr−NH2(配列番号5、四角)、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6、三角形)、およびAc−crrrrrrr−NH2(配列番号7、白抜きの四角)。
【0237】
(実施例2)
ヒトカルシウム感知受容体を発現しているHEK−293におけるin vitro細胞アッセイ
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、T25フラスコ中に、フラスコ当たり細胞2百万個で播種し、5%のCO2中、37℃で一晩インキュベートした。その翌日、これらの細胞を、lipofectamine2000トランスフェクション試薬を使用してヒトCaSR受容体でトランスフェクトした。トランスフェクトした24時間後、細胞を、384ウェルプレート中に、細胞8,000個/ウェルで播種した。トランスフェクトした48時間後にアッセイを行った。ある場合では、EC50値を、ヒトカルシウム感知受容体で安定にトランスフェクトしたHEK293細胞におけるイノシトールモノホスフェートの産生を測定することによって決定した(表1参照)。
【0238】
細胞培養培地をウェルから吸引し、28μLの1×刺激緩衝液(10mMのHepes、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、4.2mMのKCl、146mMのNaCl、5.5mMのグルコース、50mMのLiCl、pH7.4)と交換した。細胞を、さまざまな濃度の化合物と一緒に(最高濃度として1mMまたは300μM、さらに1/2logの段階希釈物)、反応が終結する前に37℃で1.5時間インキュベートした。Cisbio IP−One Tbキット(621PAPEC)を使用し、製造者の説明書に従って細胞におけるIP1の産生を決定した。簡単に述べると、化合物とのインキュベーションを、溶解緩衝液中のD2標識したIP1およびクリプテート標識した抗IP1を逐次的に加えることによって終結させ、そして、さらに室温で60分間インキュベートした。プレートを、314nmの励起で、620nmおよび668nmにおいて読み取った。トランスフェクトしていない293細胞を、陰性対照として使用した。
【0239】
668nmおよび620nmにおける蛍光比を決定した。IP1濃度を、既知濃度のIP1標準物質を使用して検量線(Graph Pad Prism ver.4を用いて作成した)から算出した。EC50を、Prismソフトウェアにおいて非線形回帰の曲線の当てはめを使用して、蛍光比OD(668nm)/(OD620nm)値に基づいて算出した。
【0240】
ペプチドおよびコンジュゲートを、ABI自動合成機において0.25mmol規模の固相化学反応によって調製した。Fmoc−アミノ酸(4eq、Anaspec)をRink−アミド樹脂(NovaBioChem)に逐次的に結び合わせることを、HBTU/DIEA活性化を使用して実現した。組み立てられたペプチドを、TFAカクテル(フェノール(5%)、トリイソプロピルシラン(2.5%)および水(2.5%);樹脂1グラム当たり10mL)を用いて切断し、ジエチルエーテルを用いた沈澱によって単離した。C18 HPLCによって精製した後、最終産物を、適切な画分を凍結乾燥することによってTFA塩の形態で単離し、HPLC(純度>95%)およびLC−MS(MWを確認した)によって特徴づけた。
【0241】
(実施例3)
カチオン性サブユニットを持つ化合物のin vivo投与
ペプチドを、イソフルランで麻酔した正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量で静脈内投与した。ラットの対照群を生理食塩水で処置した。投薬する前、および4時間にわたって毎時、血液を抜き取った。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。血漿中のPTHの濃度を、生物活性のあるインタクトなPTH1〜84を検出するELISA(Immutopics International カタログ番号60−2700)によって測定し、1〜4時間を含めたデータ点について、AUCについての累積曲線下面積を算出した。パーセントPTH低下を次式に従って算出した:AUC化合物処置/AUC生理食塩水対照×100。
【0242】
(実施例4)
構造と活性の関連性についての試験:in vivo活性
本明細書において配列番号26として識別される被試験ペプチド(Ac−carrrar−NH2)、および配列番号29として識別される被試験ペプチド(Ac−arrrar−NH2)を、CaSRでトランスフェクトしたHEK293細胞を使用して、実施例2の手順に従ってin vitroで試験した。ペプチドを、正常なスプラーグドーリーラットに、配列番号29については9mg/kg、および配列番号26については0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与することによってin vivoでも試験した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。血漿(K2EDTA)PTHレベルを、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に評価した。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。図2A〜2Bに結果が群の平均±標準偏差(SD)として示されている。図2Bでは、PTHがベースラインである投薬前の値に対するパーセントとして示されている。
【0243】
(実施例5)
構造と活性の関連性についての試験:D−アミノ酸サブユニットおよびL−アミノ酸サブユニット
D−アミノ酸残基を置換したL−アミノ酸残基を有する一連の化合物を調製した。化合物を、正常なスプラーグドーリーラットに、0.5mg/kgの用量でIVボーラスとして投与した。生理食塩水の静脈内(IV)ボーラスを対照として使用した。血漿(K2EDTA)PTHレベルを、投薬する前、ならびに投薬の1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に評価し、上記の通りAUCを算出した。ラットを、試験中イソフルラン麻酔下で維持した。上記の表4に結果が示されている。
【0244】
(実施例6)
構造と活性の関連性についての試験:ヒスタミンの放出
化合物に関連するヒスタミンの放出に対する正味の正電荷の影響を評価するために、4つ〜7つのカチオン性(アルギニン)残基を含有するペプチドを生成し、in vivoでヒスタミンの放出を誘発するそれらの能力について試験した。試験したペプチドとしては、(i)Ac−crrrr−NH2(配列番号4)、(ii)Ac−crrrrr−NH2(配列番号5)、(iii)Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)および(iv)Ac−crrrrrrrr−NH2;配列番号41)を含めた。
【0245】
雄のスプラーグドーリーラットを入手し(Charles River)、それぞれ薬物を注入するため、および血液を抜き取るために、大腿静脈および頸静脈に予めカニューレを挿入した。全てのIV薬物治療を、麻酔(イソフルラン)下で行った。動物に、0.5mLの総容積で1分間のIVプッシュ(IV push)によって投薬した。IVボーラスの5分後、15分後および30分後に血液試料を取得してヒスタミンを分析するための血漿(K2EDTA)試料を生成した。30分間のIV注入試験のために、注入終了時に試料を取得した。ある場合には、急性腎臓虚血の1K1Cモデルのラットを使用した。
【0246】
各血液抜き取りの後、失われた体積を元に戻すために等体積の生理食塩水を注射した。各時点で、血清採取を容易にするために予めコーティングしたEDTAシリンジを使用しておよそ0.2mLの血液を取り出した。
【0247】
ヒスタミンのELISAを、Histamine Enzyme Immunoassay(EIA)キット(カタログ番号A05890、SPI−BIO、Montigny le Bretonneux、France)を使用して、希釈した血漿に対して実施した。ヒスタミンEIAキットは、40pg/mL〜5,500pg/mLの範囲内のヒスタミンを検出する誘導体化−増幅競合酵素免疫測定法(derivitization−amplified competitive enzyme immunoassay)である。試料を、製造者のプロトコールに従って2連で分析した。
【0248】
凍結乾燥したペプチド(TFA塩)を秤量し、記録された質量をペプチド含有量に対して調整した。溶液を、材料をノーマルセーラインに溶解させることによって調製して所望のペプチド濃度を生成した。ある場合では、ペプチド間の比較を可能にするために、ペプチドのモル濃度を調整した。ペプチドを、モルベース当たりで配列番号41と等価な用量(すなわち、0.7μモル/ラット)で、1分間のIVボーラスによってIVボーラスによって投与し、投薬する前(投薬前)、投薬の5分後、15分後、および30分後に血漿ヒスタミンを測定した。データは群の平均(n=2)±SDとして示されている。ヒスタミンの放出は、投薬前(ベースライン)レベルからの倍数変化として示されている。図3に結果が示されている。データは群の平均(n=2)±SDとして示されている。
【0249】
(実施例7)
構造と活性の関連性についての試験:ヒスタミンの放出
ヒスタミンの放出についてin vitroで評価するために、単離されたラットの腹膜肥満細胞を、ヘパリン(5u/mL)を含有する冷たいHBSS+25mMのHEPES、pH7.4を使用して腹膜洗浄を実施することによって単離した。細胞を、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中で2回洗い、96ウェルプレート(106/ウェル)で、刺激緩衝液(HBSS+25mMのHEPES、pH7.4)中10μMの化合物と一緒に、37℃で15分間インキュベートした。細胞の上清を、ヒスタミンEIAキット(Cayman#589651)を使用してヒスタミンについて分析した。表10にデータが示されている。
【0250】
ヒスタミンの放出についてin vivoで評価するために、化合物を、イソフルランで麻酔した正常なラットに、2mg/kgのIVボーラスによって投薬した(1分未満にわたって投与した)。化合物を投与した5分後に血漿ヒスタミンを測定した(CaymanヒスタミンEIA#589651)。表11にデータが示されている。
【0251】
本明細書、特に表10〜11で使用される略語をここで要約する。
【0252】
【化3】
(実施例8)
構造と活性の関連性についての試験:in vivo活性
化合物Ac−carrrar−NH2(配列番号26)と比較するために、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を調製した。化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)では、X1位のチオール含有サブユニットが、ジスルフィド結合によってL−Cys残基とコンジュゲートしている。2つの化合物を、急性腎不全の1K1Cモデルの動物に、0.3mg/kgおよび0.5mg/kgの用量でIVボーラスによって投与した。投薬する前、および投薬後24時間にわたって定期的に血漿PTHレベルを評価した。図10に結果が示されており、示されているデータは群の平均±SEMであり、急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおける、時間を単位とした時間の関数として、化合物Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)は、四角(0.3mg/kg、n=5)および*記号(0.5mg/kg、n=6)で表され、化合物Ac−c(Ac−C)arrrar−NH2(配列番号141)は三角形(0.3mg/kg、n=8)およびひし形(0.5mg/kg、n=7)で表されている。
【0253】
(実施例9)
カルシウム模倣剤の、マイクロポアによって促進した経皮送達
カルシウム模倣剤(calicimimetic agent)の全身送達を評価するために、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、CD無毛ラットに、レザバーを使用して経皮的に投与した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)を、生理食塩水中10%溶液として、1.0mmのダーマローラーを適度な圧力下で5回通過させることによってマイクロポレーションしたCD(登録商標)無毛ラットの背部のおよそ1cm2の領域に塗布した。ポリスチレンチャンバー(I.D.9.5mm)を、マイクロポレーションした皮膚の領域一面に接着して、Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の溶液または生理食塩水溶液のいずれかが塗布される薬物レザバーを創出した。Ac−crrrrrr−NH2(配列番号6)の10%溶液を、2匹のラット上のレザバーチャンバーに投与し、生理食塩水溶液単独を、1匹のラット上のレザバーチャンバーに投与した。レザバーをテープで覆って蒸発を予防した。4時間の期間にわたって血液を抜き取り、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図11に結果が示されている。
【0254】
(実施例10)
マイクロポアによって促進した経皮パッチによるカルシウム模倣剤の持続性送達
カルシウム模倣剤の全身送達をさらに評価するために、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットに、経皮パッチを使用して経皮的に投与した。正常なラットを、マイクロニードルアレイおよび経皮パッチ系で処置した。スプラーグドーリーラット(約350g)の背部柔皮の狭い面積につき、バリカンを使用して毛を刈り、皮膚の領域を、14×14アレイ(約1cm2)のマイクロニードル(約0.5mm)を使用してマイクロポレーションした。Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)の生理食塩水中10%溶液(重量で)を含有する経皮パッチ系を、マイクロポレーションした領域一面に置き、約30時間にわたって適所に放置した。30時間にわたって定期的にラットから血液を抜き取り、血漿試料を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図12に結果が示されている。
【0255】
(実施例11)
カルシウム模倣剤の注入
カルシウム模倣化合物のPTHを低減させる効果をさらに評価するために、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、正常なラットおよび腎不全のラットに非常に低用量のIV注入によって投与して、注入、経皮パッチ系または顕著なPTH低下を実現するための他の持続性送達手段によって投与する必要がある最低用量を同定した。正常なスプラーグドーリーの雄のラット(250〜300g)に、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)を、1μg/kg/時間、3μg/kg/時間、および10μg/kg/時間の投薬速度で6時間にわたって静脈内注入した。投薬する前、2時間、4時間、6時間(注入終了;EOIの直前)および8時間(EOIの2時間後)において血液試料を取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図13にデータが示されており、6時間にわたって、1μg/kg/時間で処置したラット(四角)、3μg/kg/時間で処置したラット(ひし形)、および10μg/kg/時間で処置したラット(三角形)が、注入の間に、ベースラインからの顕著なPTH低下をもたらすのに有効であった。
【0256】
急性腎不全の1K1Cモデルのラットにおいて同様の試験を行った。1K1Cモデルラットに、Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号273を、30μg/kg/時間および100μg/kg/時間の投薬速度で、6時間にわたって静脈内注入した。投薬する前(プレ)、2時間、4時間、6時間(注入終了;EOIの直前)、8時間(EOIの2時間後)および24時間において血液試料を取得し、血漿を、PTHレベルについてELISAによって分析した。図14Aにデータが示されており(30μg/kg/時間、ひし形、および100μg/kg/時間、四角)、および、図14Bに該動物についての血清カルシウムが示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
(式中、
X1はチオール含有基を含むサブユニットであり;
X5はカチオン性サブユニットであり;
X6は非カチオン性サブユニットであり;
X7はカチオン性サブユニットであり;
X2、X3およびX4のうちの少なくとも2つは、独立して、カチオン性サブユニットである)
を含む化合物であって、
被験体における副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性を有する化合物。
【請求項2】
前記X1サブユニットのチオール基が、チオール含有アミノ酸残基および有機チオール含有部分からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記チオール含有アミノ酸残基が、システイン、グルタチオン、n−アセチル化システインおよびペグ化システインからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記有機チオール含有部分が、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオベンジル、およびチオプロピルから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記X1サブユニットが、アセチル基、ベンゾイル基、ブチル基、アセチル化ベータアラニンを含むように化学的に修飾されている、または、別のチオール部分に共有結合によってつながっている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7が、アミノ酸残基の連続した配列、有機化合物の連続した配列、またはそれらの混合物で構成される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、L−アミノ酸残基の連続した配列、D−アミノ酸残基の連続した配列、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の混合物の連続した配列、またはアミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の混合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7がアミノ酸残基の連続した配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、細胞膜を通る輸送を促進するための化合物とコンジュゲートしている、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、長さ8〜50アミノ酸残基の間のアミノ酸残基の配列内に含有される、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記X3サブユニットがカチオン性アミノ酸残基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
前記X2サブユニットが非カチオン性アミノ酸残基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
X4が非カチオン性アミノ酸残基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
前記非カチオン性アミノ酸残基がD−アミノ酸である、請求項12または請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
X3およびX4がカチオン性D−アミノ酸残基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項16】
X5がD−アミノ酸残基である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記式が、前記X1サブユニット内のチオール含有基を介して、第2の連続した配列に共有結合で結合している、請求項1から16までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記第2の連続した配列が前記式と同一である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記第2の連続した配列が、前記化合物が細胞膜を通って移動することを促進するペプチドである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
配列carrrar(配列番号2)を含むペプチドとコンジュゲート基とで構成されるコンジュゲートであって、該ペプチドが、そのN末端残基においてジスルフィド結合によって該コンジュゲート基に連結している、コンジュゲート。
【請求項21】
前記ペプチドが、N末端、C末端、またはその両方において化学的に修飾されている、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記N末端がアセチル化によって化学的に修飾されており、前記C末端がアミド化によって化学的に修飾されている、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、被験体における二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の治療において使用する組成物。
【請求項25】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、慢性腎疾患に罹患している被験体におけるSHPTにおいて使用する組成物。
【請求項26】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、被験体における副甲状腺ホルモンレベルを減少させることにおいて使用する組成物。
【請求項27】
経皮的に提供される、請求項24、25または26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび第2の治療剤を含む、治療レジメン。
【請求項29】
前記第2の治療剤がビタミンD、ビタミンD類似体またはシナカルセト塩酸塩である、請求項28に記載のレジメン。
【請求項1】
式:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
(式中、
X1はチオール含有基を含むサブユニットであり;
X5はカチオン性サブユニットであり;
X6は非カチオン性サブユニットであり;
X7はカチオン性サブユニットであり;
X2、X3およびX4のうちの少なくとも2つは、独立して、カチオン性サブユニットである)
を含む化合物であって、
被験体における副甲状腺ホルモンレベルを減少させる活性を有する化合物。
【請求項2】
前記X1サブユニットのチオール基が、チオール含有アミノ酸残基および有機チオール含有部分からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記チオール含有アミノ酸残基が、システイン、グルタチオン、n−アセチル化システインおよびペグ化システインからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記有機チオール含有部分が、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオベンジル、およびチオプロピルから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記X1サブユニットが、アセチル基、ベンゾイル基、ブチル基、アセチル化ベータアラニンを含むように化学的に修飾されている、または、別のチオール部分に共有結合によってつながっている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7が、アミノ酸残基の連続した配列、有機化合物の連続した配列、またはそれらの混合物で構成される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、L−アミノ酸残基の連続した配列、D−アミノ酸残基の連続した配列、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の混合物の連続した配列、またはアミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の混合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7がアミノ酸残基の連続した配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、細胞膜を通る輸送を促進するための化合物とコンジュゲートしている、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
アミノ酸残基の前記連続した配列が、長さ8〜50アミノ酸残基の間のアミノ酸残基の配列内に含有される、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記X3サブユニットがカチオン性アミノ酸残基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
前記X2サブユニットが非カチオン性アミノ酸残基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
X4が非カチオン性アミノ酸残基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
前記非カチオン性アミノ酸残基がD−アミノ酸である、請求項12または請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
X3およびX4がカチオン性D−アミノ酸残基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項16】
X5がD−アミノ酸残基である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記式が、前記X1サブユニット内のチオール含有基を介して、第2の連続した配列に共有結合で結合している、請求項1から16までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記第2の連続した配列が前記式と同一である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記第2の連続した配列が、前記化合物が細胞膜を通って移動することを促進するペプチドである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
配列carrrar(配列番号2)を含むペプチドとコンジュゲート基とで構成されるコンジュゲートであって、該ペプチドが、そのN末端残基においてジスルフィド結合によって該コンジュゲート基に連結している、コンジュゲート。
【請求項21】
前記ペプチドが、N末端、C末端、またはその両方において化学的に修飾されている、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記N末端がアセチル化によって化学的に修飾されており、前記C末端がアミド化によって化学的に修飾されている、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
Ac−c(C)arrrar−NH2(配列番号3)である、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、被験体における二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の治療において使用する組成物。
【請求項25】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、慢性腎疾患に罹患している被験体におけるSHPTにおいて使用する組成物。
【請求項26】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートを提供することを含む、被験体における副甲状腺ホルモンレベルを減少させることにおいて使用する組成物。
【請求項27】
経皮的に提供される、請求項24、25または26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の化合物または請求項20から23までのいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび第2の治療剤を含む、治療レジメン。
【請求項29】
前記第2の治療剤がビタミンD、ビタミンD類似体またはシナカルセト塩酸塩である、請求項28に記載のレジメン。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2013−500990(P2013−500990A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523061(P2012−523061)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043792
【国際公開番号】WO2011/014707
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507337968)カイ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】KAI PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043792
【国際公開番号】WO2011/014707
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507337968)カイ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】KAI PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】
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