説明

副甲状腺ホルモン様ポリペプチド

新規の副甲状腺ホルモンポリペプチド及びそれらの生物学的に活性な断片を、これらをコードする核酸分子とともに開示する。特に、魚類(例えば、日本のフグ(トラフグ))に由来する副甲状腺ホルモンポリペプチド及び生物学的に活性な断片(及び核酸分子をコードする)を開示する。このようなポリペプチド及び断片は、異常なカルシウム恒常性に関連した病気(例えば、骨減少症、パジェット病、骨肉腫、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、乾癬及び他の皮膚に関連した病気)の治療に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副甲状腺ホルモン及びそのフラグメントに関する。より具体的には、本発明は、副甲状腺ホルモン核酸配列及び非哺乳類に由来するポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、男性及び女性の両方に影響を与える、高齢者の能力障害の一番の原因である。骨粗鬆症は、骨の全体量を減らし、脆さをもたらす進行性の病気である。骨におけるこれらの変化は、臀部及び脊椎を含む荷重を負担する骨の特発骨折をもたらしうる。この病気によって引き起こされる脆さが増すことと組み合わさって、これらの骨折は、病気に苦しむ患者に、多大な身体的及び精神的な負担をもたらしうる。閉経後に発症する骨粗鬆症は、一般的に、更年期に特徴的なエストロゲンのレベルが減少することによって引き起こされる。エストロゲンのレベルが減少することによって、古い骨の吸収と新しい骨の形成の間のバランスの崩れが増して、骨のターンオーバーを加速することになる。このことによって、荷重を負担する骨が、細くなり、孔が増し、骨梁が減少することとなる。骨粗鬆症は、また、ステロイド使用、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症及びクッシング症候群を含む他の病気の発症と関連している。
【0003】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、副甲状腺によって産生され、カルシウムの恒常性の主な調節因子である。PTHの主な標的細胞は、骨及び腎臓に存在する。血清カルシウムが標準的なレベルを下回る場合、副甲状腺はPTHを放出し、骨カルシウムの再吸収、尿細管におけるカルシウムの腎臓再吸収の増加によって、及び、カルシウムの吸収を増すための腸でのPTHの間接的な作用を介することによって、カルシウムレベルが増す。低いレベルで連続的に投与したPTHによって骨からカルシウムが放出するにもかかわらず、その同じ低い投与量で、断続的に注入する場合に骨増殖が促進される。それゆえ、骨粗鬆症の治療における潜在的な役割が示唆されている。
【0004】
ヒトPTH(hPTH)は、副甲状腺細胞で、115アミノ酸のプロ副甲状腺ホルモン前駆体の形態で合成される。このホルモン前駆体のうち25アミノ酸が切断されてプロ副甲状腺ホルモンが生じ、その後、更に6アミノ酸が切断されて、84アミノ酸からなるhPTHの成熟した形態となる。hPTHの活性の大部分は、N末端の1から34アミノ酸に存在する。
【0005】
PTHの効果を伝達するのに関与する細胞内経路が解明された。腎臓及び副甲状腺細胞ラインにおいて、PTHは、アデニル酸シクラーゼ(AC)、プロテインキナーゼA(PKA)、ホスホリパーゼC(PLC)及びプロテインキナーゼC(PKC)の活性化、サイクリックAMP(cAMP)、イノシトール三リン酸(IP3)、ジアシルグリセロール及び増加した細胞内遊離カルシウム(Ca2+)のようなセカンドメッセンジャーの産生を含む、複数の平行した細胞内のシグナル伝達応答を誘発する。PLCの活性化によって、膜結合PKCの活性が刺激される。様々なグループが、AC/PKAシグナル伝達の活性化のための構造的決定要因は、PLC又はPKCの活性化に必要なものとは異なり、それらはそれぞれPTHのN末端及びC末端ドメイン(1-34)内に存在すると考えている。特に、hPTH(29-32)領域が、重大なPKC活性化ドメインとして同定された。骨生育の増殖(すなわち、骨粗鬆症の治療に有用な効能)は、このペプチド配列のAC活性を増すことができる能力と連結していることも証明されている。ネイティブなhTHP(1-34)配列は、これらの活性を全て有していることが示された。
【0006】
現在、構造的には関連しているが異なる種のPTH受容体が3つクローニングされている。それらは、PTH-1R及びPTH-2R、並びに、3番目のPTH受容体である、ゼブラフィッシュのPTH3Rである(Juppner, et al. Receptors for Parathyroid Hormone and Parathyroid Hormone-related Peptide: Exploration of Their Biological Importance. In Bone, Vol 25 No. 1, July 1999:87-90)。これらのうち最初のもの、哺乳類のPTH-1Rは、骨と腎臓細胞の両方から単離され、内因性のPTH-1Rが欠損した細胞内で非相同的に発現させた場合、PTH(1-34)又は副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)(1-36)の複合的なシグナル応答を伝達することが示されている。哺乳類のPTH-2Rの役割は未だ解明されていない。この受容体は、PTHによって特異的に活性化され、PTHrPによっては活性化されない。PTH分子の特異的な領域が結合及びシグナル伝達特性をもたらしていることを決定するための以前からの試みは、主に、複合的なin vivoバイオアッセイ、一般的にげっ歯類の組織培養液、単離した細胞膜又は細胞ラインを用いて行われてきた。異なるPTH-PTHrP受容体をコードする3つのcDNAが、ゼブラフィッシュから単離された。これらの推定上の受容体のうちの2つは、PTH1R及びPTH2Rの魚の相同体であるように思われたが、3番目は、新規の受容体タンパク質をコードしていた(Rubin, et al, J Biol Chem, 274: 28185-28190(1999), Rubin and Juppner, Isolation and characterization of a novel parathyroid hormone-related peptide (PTHrPrp)-selective receptor and the homolog of the mammalisan Parathyroid Hormone (PTH/PTHrP) Receptor (PTH1R) from Zebrafish. In Danks, J., Dacke, C., Flik, G., and Gay. C, Calcium Metabolism: Comparative Endocrinology. Bristol: BioScientifica. 1999: 1-6)。
【特許文献1】米国特許4,698,328
【特許文献2】米国特許4,761,406
【非特許文献1】Juppner, et al. Receptors for Parathyroid Hormone and Parathyroid Hormone-related Peptide: Exploration of Their Biological Importance. In Bone, Vol 25 No. 1, July 1999:87-90
【非特許文献2】Rubin, et al, J Biol Chem, 274: 28185-28190(1999), Rubin and Juppner, Isolation and characterization of a novel parathyroid hormone-related peptide (PTHrPrp)-selective receptor and the homolog of the mammalisan Parathyroid Hormone (PTH/PTHrP) Receptor (PTH1R) from Zebrafish.
【非特許文献3】Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed, TE Creighton, WH Freeman and Company, New York, 1993
【非特許文献4】Wold, F, Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs 1-12 in Posttranslational Covalent Modification of Proteins, BC Johnson, Ed, Academic Press, New York, 1983
【非特許文献5】Seifter et al, “Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”, Methods in Enzymology 182: 626-646 (1990)
【非特許文献6】Rattan et al, “Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging”, Ann NY Acad Sci, 663: 48-62 (1992)
【非特許文献7】Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989)
【非特許文献8】Davix et al, Basic Methods in Molecular Biology (1986)
【非特許文献9】Kohler et al, Eur J Immunol, 6: 11-19 (1976)
【非特許文献10】Thompson et al., Nucleic Acid Res, 22: 4673-4680 (1994)
【非特許文献11】Henikoff and Henikoff, Proc Natl Acad Sci USA, 98: 10915-10919 (1992)
【非特許文献12】Forrest et al, Calcif Tissue Int, 37: 52-56 (1985)
【非特許文献13】Houssami et al, Endocrine J, 2: 127-134 (1994)
【非特許文献14】Danks et al, Gen Comp Endocrinol, 92: 201-212 (1993)
【非特許文献15】Ingleton et al, Gen Comp Endocrinol 98: 211-218 (1995)
【非特許文献16】Danks et al, J Pathol, 161: 27-33 (1993)
【非特許文献17】McKee et al, Endocrinol, 122: 3008-3010 (1988)
【非特許文献18】Gensure et al, J Biol Chem, 276: 28650-28658 (2001)
【非特許文献19】Gardella et al, Endocrinol, 132: 2024-2030 (1993)
【非特許文献20】Gardella et al, J Biol Chem, 271: 19888-19893 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
hPTH及びhPTHの特定のアナログは、骨粗鬆症の治療に有効な骨の増殖を刺激することが知られている。hPTH(1-84)及びhPTH(1-34)が骨粗鬆症及びヒトでの他の病気を治療するための有用な候補であるにもかかわらず、高カルシウム血症のような幾つかの関連する問題が存在する。それゆえ、hPTHの生物学的活性を付与するが、最小の又は少ない臨床上の副作用を示すhPTHのバリアントを同定又は生成することの持続的な要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、哺乳類の主な高カルシウム血症ホルモンであるが、今まで、系統樹における両生類より前の生き物に存在するとは考えられていなかった。それは、両生類が明確な副甲状腺を有する最初の生き物であるからである。本出願人は、トラフグ(Fugu rubripes)から、哺乳類のカルシウム代謝及び恒常性に重要な臨床的役割を担う可能性があるポリペプチドを単離した。
【0009】
従って、第一の態様として、本発明は、実質的に単離したポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片を供給する。前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも45%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。
【0010】
第二の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片をコードする単離した核酸分子を供給する。
【0011】
第三の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物的に活性な断片をコードする核酸分子を含むリコンビナント宿主を供給する。
【0012】
第四の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、又は、第二の態様の核酸分子を、そして任意に医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物を供給する。
【0013】
第五の態様として、本発明は、患者の異常なカルシウムの恒常性に関連した病気を治療する方法を供給する。前記方法は、患者に、治療に効果的な量で、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、第二の態様の核酸分子、又は、第四の態様の医薬組成物を投与することを含む。
【0014】
第六の態様として、本発明は、PTH受容体の変化した又は過度の作用により生じる病気を治療する方法を供給する。前記方法は、患者に、治療に効果的な量で、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、第二の態様の核酸分子、又は、第四の態様の医薬組成物を投与することを含む。
【0015】
第七の態様として、本発明は、患者に、効果的な量で、適切に検出可能な標識でラベルした第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を投与すること、及び、前記患者の骨への前記ポリペプチド又は生物学的に活性な断片の取り込みを求めることを含む、骨形成、骨吸収及び/又は骨再形成の速度を調べる方法を供給する。
【0016】
第八の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片に特異的に結合する抗体を供給する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本出願人は、トラフグからPTH様遺伝子を単離し、配列を求めた。
【0018】
従って、第一の態様として、本発明は、実質的に単離したポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片を供給する。前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも45%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。
【0019】
本出願で用いられている単語「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾したペプチド結合によってお互いが結合した2以上のアミノ酸を含む、任意のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、すなわちペプチドイソスター(peptide isosteres)を指す。このような「ポリペプチド」は、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができ、翻訳後のプロセッシングのような天然の工程、又は、この業界の当業者に良く知られた化学的な修飾方法のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列を含むことができる。修飾は、このようなポリペプチドの、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及び/又はアミノ又はカルボキシ末端を含む、どの部位でも生じる事ができる。同じタイプの修飾が、このようなポリペプチドの複数の部位において、同じ頻度で又は異なる頻度で存在することができることは明らかであろう。更には、このようなポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含むことができる(例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed, TE Creighton, WH Freeman and Company, New York, 1993; Wold, F, Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs 1-12 in Posttranslational Covalent Modification of Proteins, BC Johnson, Ed, Academic Press, New York, 1983; Seifter et al, "Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors", Methods in Enzymology 182: 626-646 (1990); Rattan et al, "Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging", Ann NY Acad Sci, 663: 48-62 (1992)を参照せよ)。本出願で用いられている単語「ポリペプチド」に含まれているペプチド、ポリペプチド及びタンパク質は、この業界の当業者に良く知られた方法を用いて合成した適切な材料、この業界の当業者に良く知られたリコンビナント方法によって産生した適切な材料から単離することができ、又は、別の方法としては適した市販の材料から入手することができる。
【0020】
本発明に含まれる生物学的に活性な断片は、配列番号1で示したアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸が欠失しているが、配列番号1で示したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特有な少なくとも1つの生物学的活性を保持している断片を含む。例えば、この断片は、アデニル酸シクラーゼ活性のためのアッセイに用いた時には、アデニル酸シクラーゼを活性化することができ、cAMPの蓄積をもたらすことができる(例えば、本願明細書の実施例1に記載されているアッセイ)。
【0021】
好ましい実施態様においては、本発明は、実質的に単離したポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片を供給する。前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも55%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。より好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも65%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。更に好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも75%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。更により好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。
【0022】
更に好ましい実施態様においては、本発明の生物学的に活性な断片は、配列番号1のアミノ酸1-34における配列と少なくとも65%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。前記生物学的に活性な断片は、配列番号1のアミノ酸1-34における配列と、より好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは95%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。
【0023】
より好ましい実施態様においては、本発明の生物学的に活性な断片は、配列番号1のアミノ酸7-34における配列と少なくとも65%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。前記生物学的に活性な断片は、配列番号1のアミノ酸7-34における配列と、より好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは95%の配列が一致するアミノ酸配列を含む。
【0024】
本出願で用いられている単語「配列が一致」は、最も高いオーダーのマッチが得られるように配列をアライメントしたアミノ酸配列の一致の程度の測定を指し、これは、例えば、BLAST、BLASTN、FASTA(Atshul et al, J Molec Biol, 215: 403 (1990))のようなコンピュータープログラムを利用した方法又は公知の方法を用いて計算することができる。
【0025】
本発明の生物学的に活性な断片の最も好ましい実施態様においては、生物学的に活性な断片は、配列番号1のアミノ酸1-34又は7-34の配列に実質的に対応するアミノ酸配列からなる。
【0026】
更には、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、部位1にスレオニンを有する(すなわちThr 1)アミノ酸配列を含む。
【0027】
好ましくは、N末端にスレオニンを含むポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、硬骨魚類種又は軟骨魚類種に由来する。
【0028】
異なる種の副甲状腺ホルモン又は副甲状腺ホルモン様ポリペプチドに由来するハイブリッドアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片も、本発明が意図するものである。例えば、硬骨魚類種又は軟骨魚類種の副甲状腺ホルモン様ポリペプチド(例えばフグPTH)、並びに、ヒトの、及び/又は、他の哺乳類の、及び/又は、両類の副甲状腺ホルモンポリペプチドに由来するハイブリッドアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片である。このようなハイブリッドポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片は、好ましくは、N末端にスレオニンを含む。
【0029】
本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片のアミノ酸配列に関連して本出願で用いられている単語「実質的に対応する」は、完全に正確なアミノ酸配列だけでなく、そのアミノ酸配列の生物学的活性を実質的に減少させないマイナーな変異を含むことを意図する(例えば、アデニル酸シクラーゼ活性のためのアッセイに使用した場合に、ポリペプチド又は生物学的に活性な断片が、アデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPの蓄積をもたらすことができる能力を失わないような変異)。これらの変異は、1つ以上の保存アミノ酸の置換を含むことができる。予想される保存アミノ酸の置換は、G、A、V、I、L、M;D、E、N、Q;S、C、T;K、R、H;及びP、Nα-アルキルアミノ酸である。
【0030】
第二の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片をコードする単離した核酸分子を供給する。
【0031】
好ましい実施態様においては、前記核酸分子は、配列番号2で示されるヌクレオチド配列に実質的に対応するヌクレオチド配列又はそれらのフラグメントを含む。
【0032】
好ましい実施態様においては、第二の態様の核酸分子は、クローニングベクター又は発現ベクターに挿入される。
【0033】
本発明の使用のためのクローニングベクターは、プラスミド又はファージDNA又は宿主細胞内で自己複製できる他のDNAベクターを含む。クローニングベクターは、更に、クローニングベクターで形質転換した細胞を同定するのに適した(選択のための)選択マーカーを含むことができる。適したマーカーは、例えばテトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性をもたらすマーカーを含む。
【0034】
本発明の使用のための発現ベクターは、クローニングベクターに類似しているが、宿主への形質転換後にベクターへクローン化された遺伝子の発現を増すことができるベクターを含む。クローン化した遺伝子は、通常は、プロモーター配列のような特定の制御配列のコントロール下に置かれるであろう(すなわち、機能的に結合するであろう)。適したプロモーター配列は、構成的プロモーター配列と誘導的プロモーター配列の両方を含む。
【0035】
本出願で用いられている単語「核酸分子」は、一本鎖又は二本鎖となりうる任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを含み、それゆえ、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖及び二本鎖の領域が混合したDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域が混合したRNA、並びに、一本鎖又はより典型的には二本鎖の、又は、一本鎖及び二本鎖の領域が混合したDNA及びRNAを含むハイブリッド分子を含む。加えて、単語「核酸分子」は、また、1つ以上の修飾した塩基を含むDNA及びRNA、並びに、安定性のため又は他の理由のために修飾された主鎖を有するDNA及びRNAも含む。「修飾した」塩基は、例えば、トリチル化された塩基及びイノシンのような通常は存在しない塩基を含む。単語「核酸分子」は、また、たびたびオリゴヌクレオチドと呼称される、比較的短いポリヌクレオチドも含む。
【0036】
第三の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物的に活性な断片をコードする核酸分子を含むリコンビナント宿主を供給する。
【0037】
適したリコンビナント宿主は、例えば、クローニングベクター又は発現ベクターの中に前記核酸分子を含む、任意の原核宿主細胞又は真核宿主細胞だけでなく、宿主の染色体又はゲノムに望む核酸分子を含むように人工的に遺伝子を改変された、任意の原核宿主細胞又は真核宿主細胞を含む。適切な宿主細胞の代表的な例は、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトマイセス又は枯草菌のような細菌細胞;酵母細胞及びアスペルギルス細胞(Aspergillus cells)のような真菌細胞;ドロソフィアS2及びスポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)のような昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293及びボーズメラノーマ細胞のような動物細胞;及び植物細胞を含む(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989))。
【0038】
好ましいリコンビナント宿主は、本発明の核酸分子を含むクローニングベクター又は発現ベクターで形質転換された真核細胞である。より具体的には、本発明の核酸分子を含むクローニングベクター又は発現ベクターで形質転換されたリコンビナント哺乳類細胞が好ましい。
【0039】
適したリコンビナント宿主は、また、全ての胚細胞及び体細胞が本発明の核酸分子を含むトランスジェニック動物も含む。このようなトランスジェニック動物は、典型的には、脊椎動物、特に、ヒト以外の霊長類、マウス、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、モルモット、げっ歯類(例えばマウス及びラット)等であろう。
【0040】
宿主細胞への本発明の核酸分子の導入は、この業界の当業者に良く知られた方法によって行うことができる(例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質を介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、スクレープローディング(scrape loading)、 弾丸導入(ballistic introduction)及び感染を含む、Davix et al, Basic Methods in Molecular Biology (1986)及びSambrook et al, 1989のような多くの標準的な研究マニュアルに記載された方法)。
【0041】
本発明のリコンビナント宿主は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片のリコンビナントの産生のために使用することができる。
【0042】
第四の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、又は、第二の態様の核酸分子を、そして任意に医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物を供給する。
【0043】
第五の態様として、本発明は、患者の異常なカルシウムの恒常性に関連した病気を治療する方法を供給する。前記方法は、患者に、治療に効果的な量で、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、第二の態様の核酸分子、又は、第四の態様の医薬組成物を投与することを含む。
【0044】
好ましくは、前記病気は、骨折、骨粗鬆症、パジェット病、(他の場所の原発腫瘍から派生した二次性腫瘍を含む)骨肉腫、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、乾癬及び他の皮膚に関連した病気を含む群から選択される。
【0045】
本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を含む医薬組成物は、カルシウム恒常性の変化に由来する様々な哺乳類の疾患の治療及び予防のために使用される。それゆえ、本発明の医薬組成物は、特に、ヒトの骨粗鬆症及び骨減少症の予防及び治療に適用される。
【0046】
更には、本発明の医薬組成物は、副甲状腺機能低下症の予防及び治療を含む、他の骨の病気の予防及び治療に適用される。
【0047】
より更には、本発明の医薬組成物は、骨折のためのアゴニストとしての、及び、高カルシウム血症のためのアンタゴニストとしての使用に適用される。
【0048】
高カルシウム血症及び低カルシウム血症のいくつかの形態は、PTH及びPTHrP及びPTH-1R、PTH-2R及び/又はPTH-3R受容体の間の相互作用に関連している。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルが異常に上昇する病気であり、たびたび、副甲状腺機能亢進症、骨粗鬆症、乳癌、肺癌及び前立腺癌、頭頸部癌及び食道癌、多発性骨髄腫、並びに副腎腫を含む他の病気と関連している。一方、低カルシウム血症は、血清カルシウムレベルが異常に低い病気であり、有効なPTHの不足に由来するであろう(例えば、副甲状腺の手術後)。
【0049】
典型的には、本発明の医薬組成物は、一日当たり体重1キログラムに対して約0.01と約100マイクログラムの活性量(すなわち、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片)で、より好ましくは、一日当たり体重1キログラムに対して0.05と25マイクログラムの活性量で、最も好ましくは、一日当たり体重1キログラムに対して約0.07と約1.0マイクログラムの活性量で、患者に投与するであろう。50キログラムのヒト女性患者では、活性量の一日の投与量は、それゆえ、約0.5から約500ミリグラム、より好ましくは、約2.5から約125ミリグラム、最も好ましくは、約3.5から約50ミリグラムであろう。ウマ、イヌ及びウシのような他の哺乳類においては、より多い投与量が必要であろう。この投与は、一日一回の投与を意図した医薬組成物において、一日複数回の投与を意図した医薬組成物において、又は、最も効果的な結果が得られるように放出の制御を意図した又は放出し続けることを意図した医薬組成物において、又はより好ましくは、一日当たり1回以上の(皮下、経皮、筋内、静脈経路のいずれかによって)注入により行われことができる。最も好ましくは、この投与は、経鼻吸入法を意図した医薬組成物において行われる。
【0050】
正確な投与量及び最も適切な投与方法の選択は、とりわけ、選択した活性物(すなわち、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片)の医薬特性、治療する病気又は疾患の種類及び重篤度、並びに、患者の身体的状況及び知力によって影響を受けるであろう。
【0051】
活性体(すなわち、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片)は、有害な副作用なく望む生物学的活性を保持する、医薬的に許容できる塩の形態で、本発明の医薬組成物中に存在することができる。このような塩の例は、(a) 例えば、塩酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機塩で形成される酸付加塩;及び、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等のような有機塩で形成される塩;(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム等のような多価金属陽イオンで形成される塩基付加塩;又は、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン又はエチレンジアミンから形成される有機陽イオンで形成される塩基付加塩;並びに、(c)(a)及び(b)の組み合わせ(例えば、タンニン酸亜鉛の塩等)である。
【0052】
前記したように、医薬組成物の1つの好ましい投与経路は、経鼻吸入法である。このような投与のための医薬組成物は、鼻の粘膜を通過する活性体の吸収を増すための酸性界面活性剤を含むことができる。適した酸性界面活性剤は、例えば、グリココール酸、コール酸、タウロコール酸、エトコール酸(ethocholic acid)、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デヒドロコール酸、グリコデオキシコール酸、シクロデキストリンを含む。このような酸性界面活性剤は、医薬組成物において、約0.2と約15重量%の間の範囲の、好ましくは約0.5と約4重量%の間の範囲の、最も好ましくは約2重量%の量で含まれることができる。
【0053】
PTHのように、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、特定の病態を治療するのに有用である他の薬と組み合わせて投与することができる。例えば、骨粗鬆症及び他の骨に関連する病気の治療のために、ポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、食事療法のカルシウム補充と、又は、ビタミンDアナログと組み合わせて投与することができる(米国特許4,698,328を参照せよ)。その代わりに、ポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、好ましくは周期的な治療方法を用いて、米国特許4,761,406に記載されているビスフォスフォネートと組み合わせて、又は、カルシトニン及びエストロゲンのような1つ以上の骨治療薬と組み合わせて、又は、ラロキシフェン(Raloxifene)及び他の関連する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)薬と組み合わせて投与することができる。
【0054】
第六の態様として、本発明は、PTH受容体の変化した又は過度の作用により生じる病気を治療する方法を供給する。前記方法は、患者に、治療に効果的な量で、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を、第二の態様の核酸分子、又は、第四の態様の医薬組成物を投与することを含む。
【0055】
第七の態様として、本発明は、患者に、効果的な量で、適切に検出可能な標識でラベルした第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を投与すること、及び、前記患者の骨への前記ポリペプチド又は生物学的に活性な断片の取り込みを求めることを含む、骨形成、骨吸収及び/又は骨再形成の速度を調べる方法を供給する。
【0056】
好ましい実施態様においては、ポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、放射線標識、蛍光標識、生物発光標識からなる群から選択される標識でラベルする。より好ましくは、ポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、99テクネチウムでラベルする。
【0057】
第八の態様として、本発明は、第一の態様のポリペプチド又は生物学的に活性な断片に特異的に結合する抗体を供給する。
【0058】
本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片は、この業界の当業者が良く知っている方法のいずれかによって、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体試薬の両方を産生するのに使用することができる。例えば、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片を単独で、又は、アジュバンド及び/又はキャリアタンパク質の存在下で、適した宿主動物を免疫することによって、抗体試薬を調製することができる。適した宿主の例には、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ヤギ及びウシが含まれる。モノクローナル抗体試薬の調製のために実施することができる方法は、Kohler et al, Eur J Immunol, 6: 11-19 (1976)によって示された方法を含む。
【0059】
本発明の特徴をより明確に理解するために、本発明の好ましい形態を、以下に示す非制限的な実施例を参照して記す。
【実施例】
【0060】
(実施例1) サカナ、トラフグにおける副甲状腺ホルモンの同定
〈材料及び方法〉
〈フグPTH(1-80)をコードするDNAクローンのポリメラーゼ連鎖反応及び自動配列決定〉
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのプライマーは、既知のPTHアミノ酸配列を用いて、Joint Genome Institute(http://www.jgi.doe.gov/programs/fugu.htm)から得た幾つかのプレリミナリーなデータからデザインした。前記データベースから得られたプレリミナリーな核酸配列をPCRによって確かめ、幾つもの誤りが求まった。修正した核酸配列で新たなPCRプライマーをデザインした;フォワードプライマー-[5’-CAGTGAGTGAAGTCCAGCTCA-3’](配列番号5)及びリバースプライマー-[5’-CTTCACTCCTGTGATTTGAGCA-3’](配列番号6)。トラフグから単離した約100ngのゲノムDNAでPCR増幅を行った。市販のキット(Ultra Clean PCR Clean-Up DNA Purification Kit, Geneworks, Adelaide, Australia)を用いてPCR生成物を精製し、ABI Prism BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer, Boston, USA)を使用してDNAの配列を求めた。
【0061】
ClustralW(Thompson et al., Nucleic Acid Res, 22: 4673-4680 (1994))を用いて複数の配列のアライメントを実施し、PrettyBox(Rick Westerman, Purdue University)で表示した。Gap(Henikoff and Henikoff, Proc Natl Acad Sci USA, 98: 10915-10919 (1992))を用いて、一致の割合及び類似の割合を計算した。
【0062】
〈合成ペプチド〉
Fastmoc 0.1 Dry Conditionsモニターと、Rink樹脂及びFmoc法を用いたApplied Biosystems 433Aペプトド合成機(Foster City, USA)を使用して、Rinkタンパク質フグPTH(1-34)のN末端領域及び様々なフラグメント(すなわち、フグPTH(1-26)、フグPTH(1-29)、フグPTH(1-34)、フグPTH(2-34)、フグPTH(1-32)及びフグPTH(7-34))だけでなく、フグPTHrP(1-34)のN末端を合成した。完成したペプチドを、同時に、樹脂から切断し、脱保護した(82.5%のトリフルオロ酢酸中で、5%フェノール、5%水、5%チオアニソール及び2.5%エタンジチオールからなるRegent K(Auspep, Parkville, Australia)で切断を行った)。樹脂から、20%(v/v)アセトニトリル及び0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中にペプチドを抽出し、乾燥させた。連続したイオン交換クロマトグラフィー(MacS)により、塩酸グアニジンが0Mから1Mになるようにグラジエントをかけて、20%(v/v)アセトニトリル(Mallinkrodt HPLC grade, St Louis, USA)及び0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸でペプチドを精製した。その後、フラクションを質量分析によりチェックしてプールした。分取低圧逆相クロマトグラフィー(25×400カラム、C18、250オングストローム、35から70マイクロメートルのAmicon樹脂)により、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸の存在下、アセトニトリルでグラジエントをかけて、プールしたサンプルを精製した。質量分析により、合成ペプチドの純度を確かめた(PerSephive Biosystems Voyager DE(Foster City, USA) with Data Explorer Software Version 4.0)。合成フグPTH(1-34)及びフグPTHrP(1-34)を、ナノスプレー質量分析(Applied Systems QSTAR pulsar, Foster City, USA)によって分析した。
【0063】
〈生物活性〉
ペプチドのPTH様生物活性は、90%コンフルエンスまで増殖させたUMR106.01細胞(Forrest et al, Calcif Tissue Int, 37: 52-56 (1985))のサイクリックアデノシン3’,5’-一リン酸(cAMP)産生を測定することによって、アッセイした。アッセイする前に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で一度洗い、0.1%BSA及び1mMイソブチルメチルキサンチン(Sigma, St Louis, USA)を含む培地で20分間平衡化した。その後、細胞を、ホルモン不在下で、及び、順に濃度を増したホルモン存在下で、37℃で10分間刺激した。その後、細胞をPBSで一度洗い、cAMPを1.5ml酸性化エタノールで抽出した。サンプルを乾燥するまで濃縮し、アッセイバッファーで再溶解し、特異的なcAMP放射線免疫アッセイによってアッセイした(Houssami et al, Endocrine J, 2: 127-134 (1994))。
【0064】
〈イムノブロット〉
ヒトPTHrP(1-14)に対する7つの血清(R88、R1904、R1942、R87、R1348、R196、R212)を産生し、ヒトPTHrP(1-141)に対する1つの血清(R190)を産生した。hPTH(1-34) (BioGenex, San Ramon, USA)に対する抗PTHポリクローナル抗体を産生した。抗ヒトPTHrP血清は、硬骨魚類及び軟骨魚類から調製した組織を用いた免疫組織染色及びウェスタンブロッティングに使用することができた(Danks et al, Gen Comp Endocrinol, 92: 201-212 (1993); Ingleton et al, Gen Comp Endocrinol 98: 211-218 (1995))。抗ヒトPTH血清は、ヒト副甲状腺材料の免疫組織染色及びウェスタンブロッティングに使用することができた(Danks et al, J Pathol, 161: 27-33 (1993))。ニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell, Dassel, Germany)上に、端のポジティブコントロール(すなわち、ヒトPTHrP(1-34))にそって、10、25、50μgのフグPTHをスポットした。トリス緩衝食塩水、0.2%Tween、5%スキムミルク粉末(非特異的結合部位をブロックするため)を用いた最初の反応時間が終了後、ニトロセルロースメンブレンを一次ポリクローナル抗体と反応させ、その後、二次抗体(ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗ウサギ血清(Dako, Carpenteria, USA))と反応させた。反応の間に、シェーカーテーブル上で三回洗浄した。特異的なドットブロットを検出するために、BM chemiluminescence blotting system (Roche Applied Sciences, Mannheim, Germany)を使用した。
【0065】
〈結果〉
PCRによる増幅によって、図1において、フォワードプライマー及びリバースプライマーとともに示した核酸配列を有する244bpの生成物が得られた(図3も参照)。この配列の翻訳により、80からなるアミノ酸配列(図2)が得られ、フグPTH遺伝子のコード領域は、ニワトリPTH又はヒトPTHのいずれとも大変低い配列相同性を示すことがわかった。フグPTH及びニワトリPTHの間の配列一致性は36%、類似性は49%であった。ふぐPTHとヒトPTHの間の配列一致性は32%であるのに対して、類似性は44%であった(図4)。
【0066】
フグPTHrPとヒトPTHrPの間のアミノ酸配列一致性は53%であり、類似性は64%であった。N末端の34アミノ酸領域だけで考えてみると、フグPTH(1-34)は、ニワトリPTHと56%一致し、ヒトPTHと53%一致したが、類似性は、ニワトリPTHに対して68%であり、ヒトPTHと65%であった。フグPTHrPとヒトPTHrPのN末端領域の配列一致性は59%であるが、類似性は77%であった。これらの結果を表1に要約する(図4も参照せよ)。
【0067】
【表1】

【0068】
精製したフグPTH(1-34)は、分子量4,154.75Daであり、精製したフグPTHrPは、分子量4,126.4529Daであった。フグPTHrP(1-34)の完全にオートマチック化した合成により、ピペラジンによるAsp10の定量的アミド基転移がもたらされて67Da加わったが(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.details?DMID=67&AvsMass=67&Margin=0)、これはHis9のマニュアル添加によって克服した。
【0069】
合成ペプチドは、質量分析で純度を確認し、得られたトレースは一本の主要なピークを示し、このペプチドが必要な長さを有しており、90−95%の純度であることがわかった。
【0070】
フグPTH(1-34) (ID50=17±3.6nM, n=4)は、常に、フグPTHrP(1-34)(ID50=1.4±0.48nM, n=4)よりも低い効力で、容量依存的に、cAMP形成をもたらした(図5A)。フグPTH(1-34)は、ヒトPTH(1-34)、ヒトPTHrP(1-34)及びフグPTHrP(1-34)よりも効力が弱いが、フグPTH(1-34)の応答の最大値は、ヒトPTH、ヒトPTHrP又はフグPTHrPが最大の濃度で達した値よりも有意に大きかった。フグPTH(1-32)もcAMP形成をもたらすが、フグPTH(1-26)、フグPTH(1-29)、フグPTH(2-34)及びフグPTH(7-34)単独では、ほとんどcAMP形成をもたらないか、全くcAMP形成をもたらさなかった(図5B)。
【0071】
UMR106.01細胞を、100nMフグPTH(1-34)と最大投与量の10nMフグPTHrP(1-34)とともに培養したときには、アデニル酸シクラーゼ活性の更なる増加は見られず(データ示さず)、これは、この2つのペプチドは同じ受容体を介して作用するという仮説と一致した。
【0072】
ヒトPTHrP(7-34)の濃度を増していって、10nMフグPTH(1-34)、1nMヒトPTH(1-34)、0.5nMフグPTHrP(1-34)又は0.5nMヒトPTHrP(1-34)とともに培養させた場合、全てのテストしたペプチドでcAMP応答の部分的な阻害が明らかになり(データを示さず)(McKee et al, Endocrinol, 122: 3008-3010 (1988))、フグPTH(1-34)はPTH-1Rを介して作用する更なる証拠が得られた。
【0073】
更なる培養アッセイ(図5CからEで示す結果)において、フグPTH(1-34)(5nM及び100nM量)とフグPTH(1-29) (5nM及び500nM量)とを含む場合では、アデニル酸シクラーゼ活性の変化は観察されなかったのに対して、フグPTH(1-34)(100nM)とフグPTH(2-34)(500nM)とを含む場合、及び、フグPTH(1-34)(100nM)とフグPTH(7-34)(500nM)とを含む場合では増加していた(合計よりも大きくなったいた)。
【0074】
イムノブロットにより、フグPTH(1-34)が、ヒトPTHrP(1-14)で調製されたウサギポリクローナル抗血清又はヒトPTH(1-34)で調製されたウサギポリクローナル抗血清のいずれとも交差反応を示さないことが示された(データを示さず)。
【0075】
〈考察〉
本実施例で同定されたフグPTHポリペプチドのN末端領域は、四足類PTHのN末端との相同体であり、哺乳類及び魚類のPTHrPとの相同体である。フグPTHの最初の34アミノ酸のうち18は、ヒトPTHのものと一致するが、フグPTHの最初の34アミノ酸のうち14は、フグPTHrPと一致する。フグPTHrPとヒトPTHrPの最初の34アミノ酸のうち20が一致するにもかかわらず、この領域のたった13のみが、フグPTHとフグPTHrPの間で一致する。このことは、単離した魚類の配列は、PTHrPよりもPTHにより似ていることを示唆する。フグPTHのアミノ酸配列においては、最初の34アミノ酸の後、ヒトPTH又はニワトリPTHのいずれとも顕著な相同性を有していない。
【0076】
生物アッセイデータは、ヒトPTH及びヒトPTHrPでの場合のように、PTH1Rを介したフグPTHの作用と一致する。PTH及びPTHrPアナログのPTH1Rへの架橋結合の多大な研究とともに、核磁気共鳴及びX線結晶学を用いた構造解析は、残基15と31の間の配列内の残基の参加を介して結合するPTH及びPTHrPモデルと一致する。フグPTH分子のN末端部分の多くの構造特性が存在し、これは、PTH1R相互作用として知られているものと無理なく一致する。光親和性架橋の研究により、PTH及びPTHrPがPTH1Rに結合するのに重要な特定の残基が同定された。残基Phe23、Leu24及びIle28は、受容体に近接し、Leu24の光標識により結合が10分の1に減少した(Gensure et al, J Biol Chem, 276: 28650-28658 (2001))。残基Phe23、Leu24及びIle28が、極性残基での置換によって耐えることができないという事実とともに(Gardella et al, Endocrinol, 132: 2024-2030 (1993); Gardella et al, J Biol Chem, 271: 19888-19893 (1996))、このことを考慮する場合、フグPTHは、他のPTH及びPTHrP相同体のものと一致する。更に、フグPTHのArg20及びLeu24は、全ての既知のPTH及びPTHrP配列を通しての厳格な保存と一致する。一方、残基Lys26、Gln29及びAsp30は、受容体結合に影響を与えることなく変異することができる(Gardella et al, 1993上記)。
【0077】
本実施例で示したフグPTH(1-34)の効力は、常に、ヒトPTH又はPTHrPの効力の約5分の1から10分の1に一致した。これは、フグPTH(1-34)のC末端部分における異なる配列がもたらす微妙な構造上の変化が原因であろう(例えば、残基26、27、29及び30は全て、他のPTH/PTHrP相同体におけるこの部位とは変化しているという事実がある)。哺乳類標的細胞のアデニル酸シクラーゼ活性のフグPTHの効力の減少は興味深いにもかかわらず、魚類での本当の標的であるもの、及びそのペプチドの効能を発見することが残されている。しかしながら、ゼブラフィッシュで見つかったPTH-3R(Rubin et al, 1993前記)においては、常に、ヒトPTHによる活性がヒトPTHrP又はフグPTHrPのいずれかの効能よりも20倍低いことは注目であろう。
【0078】
フグPTH(2-34)の効能は、フグPTH(1-34)よりも弱く、これは、フグPTH(1-34)ペプチドのN末端(すなわち、部位1)のスレオニンが、生物学的な活性を付与するのに重要な残基であることを示している。100nMフグPTH(1-34)を、500nMフグPTH(2-34)とともに培養したときに見られたcAMP応答は、これら2つのペプチドを別々にテストした場合の効果の合計よりも大きい。これは、フグPTH(1-34)にスレオニンを有しているために相乗的な効果が存在するであろうことを示している。対照的に、フグPTH(1-34)から2つのC末端アミノ酸を欠失させた場合、cAMP活性の刺激において最小の効果を有していた。
【0079】
免疫学的に、ヒトPTH又はヒトPTHrP抗血清は、たとえペプチド及び抗血清の濃度が高くても、フグPTH(1-34)を認識しない。フグPTHのN末端は、最も高度に保存されたポリペプチドの部位であるから、ヒトPTHrP、ヒトPTH及びウシPTHによって調製した任意の抗血清が、魚類の組織において魚類のPTH相同体の場所を見つけ出すことができる可能性は低い。フグPTHのN末端は、34アミノ酸のうち18アミノ酸しかヒトPTHと一致しておらず、部位1に、セリンの代わりにスレオニンを有しているという知見により、ヒトPTH又はPTHrPに対するポリクローナル抗血清との交差反応性が欠如していることが決定しているのであろう。
【0080】
理論によって拘束されるわけではなく、本実施例で得られた結果は、フグPTHが、ヒトPTHと異なる薬物動態を有しているであろうことが示される。これらの異なる薬物動態は、ヒト又は他の動物に投与した場合に、高カルシウム血症を引き起こす可能性が低く、又は他の副作用をもたらす可能性が低いことを意味している。更にその上、フグPTHとヒトPTHの間の差異により、例えばヒトPTHと比較して、投与したフグPTHポリペプチドによる免疫応答(アレルギー反応のような)が減少するであろう。
【0081】
(実施例2)ラットの骨にもたらすフグPTHの同化作用
〈材料及び方法〉
フグPTHの同化作用は、Sprague-Dawley雄ラット(週齢3−4歳)の骨で評価した。
【0082】
100gの体重に対して低投与量又は高投与量(3又は10μg)のフグPTH(1-34)を、30日間にわかって毎日ラットに皮下投与した。合成PTHペプチドを0.01M酢酸に溶かし、その後、毎日の注入物を、(Sprague-Dawley雄ラットに由来する)2%ラット血清と標準の食塩水で調製した。ラットの体重を一週間に二回測定し、PTH投与量を、それぞれの体重の増加に合わせた。
【0083】
以下の処理を行った群には12匹のラットからなる:コントロール、ヒトPTH(低投与量又は高投与量)及びフグPTH(低投与量又は高投与量)。ラットを窒息により安楽死させ、脛骨を取り出し、骨から大部分の筋肉を取り除いた。サンプルを、新たに調製した4%パラホルムアルデヒドへと移した。24時間固定し、その後、組織形態測定のために調製した70%エタノールへと移した。
【0084】
固定した脛骨にX線を照射し、メチルメタアクリレート樹脂で以下のように包埋した:脛骨から筋肉を落とし、その後、横に二等分し、水で冷やした低速のベンチソーを用いてそれぞれの側面を約2mmに整え、矢状生中線に平行に、包埋するための平らな表面を得た。固定した脛骨を、毎時間ごとに70%アセトン、90%アセトン及び100%アセトン(×2)によって、アセトン中で脱水した。脱水後、サンプルを、メチルメタアクリレート樹脂(85%メチルメタアクリレート、15%ジブチルフタレート、0.05%ベンゾイルパーオキシド)で、少なくとも3日間二回(最小でトータル6日間)浸透させた。前記浸透手順の少なくとも1日間、サンプルを室温で真空下で浸透させた;全ての他の工程は4℃で行った。浸透後、37℃のインキュベーター内のウォーターバスにおいて、48時間を越えて、ガラスのシンチレーションバイアル内で、ポリマー化したメチルメタアクリレートベース上でメチルメタアクリレート樹脂(85%メチルメタアクリレート、15%ジブチルフタレート、3%ベンゾイルパーオキシド)の中に脛骨を包埋した。ポリマー化後、メチルメタアクリレートの第三の層を含んで(アクリル系樹脂に加えて前記と同じコンポーネント)、更に48時間を越えてポリマー化した。サンプルを完全にポリマー化した後、-20℃まで冷やしてポリマー収縮させた後、ハンマーで粉砕して包埋した脛骨をガラスバイアルから取り出した。その後、ポリマー化した脛骨を、電動式グラインダー/ポリッシャーにおいて、骨の表面を露出させ、四角のブロックを得て、しっかりとミクロトームにセットした。Leica2165上で5μm切片をカットし、95%エタノールで伸展し、一晩37℃で挟み込むことによって、バギングプラスチックの断片によって分けられたガラスの顕微鏡スライドに接着した。セロソルブ中で、2×25分間、接着した切片を脱プラスチック化し、グレードエタノールで脱水し、標準的な組織形態測定のためにトルイジンブルーで染色した。Von Kossa染色を行い、コンポサイトイメージを得た。
【0085】
Osteomeasure Image analysis system (Osteometrics, Decatur, GA)を用いた標準的手法に従って、成長板の下3mmの幅3mm×高さ1.1mmの領域からはじめて、二次海面骨の組織形態測定を行った。一元配置分散分析とその後に行ったTukeyの多重比較検定によってデータを分析し、有意な差を求めた。
【0086】
<結果及び考察>
本実施例で得られた結果を図6から11に示す。その結果は、100グラムに対して10マイクログラムのフグPTH(1-34)によって、若い成長中のラットでは同化作用があり、骨梁体積、幅及び骨梁数において有意な増加がもたらされることが示された。この骨体積の増加は、骨芽細胞の生成が増加したことと関連しており、第一のメカニズムとして骨の形成が増すことが示唆された。統計的な有意な差は無かったが、破骨細胞数が減少する傾向もあり、破骨細胞形成の穏やかな減少(100グラムに対して10マイクログラムのヒトPTH群で観察された)も、フグPTH(1-34)のin vivoでの効果に影響を及ばすであろうことが示唆された。
【0087】
この知見の臨床的な重要性は、フグPTH及びそれらの生物学的に活性な断片だけでなく関連するポリペプチド(例えば、配列番号1と少なくとも45%一致する配列を含むポリペプチド)も、ヒトの骨粗鬆症の治療に使用でき、骨粗鬆症の予防に使用できることである。ラットで見られた効果は、より弱いが、ヒトPTHで観察された効果と類似している。それゆえ、ヒトの骨に対するヒトPTHが及ぼす類似の効果を有していると予想される。類似の活性を有するが異なるアミノ酸配列を持つ新規のポリペプチドの利用により、改善された薬物動態、より少ない副作用、異なる投与方法、又は今までのところ確認されていない利点のようなより望ましい質を有する新規のPTHアナログの産生が可能になる。
【0088】
(実施例3)他の魚類でのfPTHの相同体の検出
本実施例の目的は、異なる魚類において副甲状腺ホルモン様ポリペプチドをコードする、今まで開示されていなかった遺伝子を同定することである。
【0089】
〈材料及び方法〉
標準的な方法に従って、表2で示した魚類の筋肉サンプルからゲノムDNAを抽出した。標準的な手法により、抽出したトータルRNAも、ランダムヘキサマーを用いて逆転写し、cDNAを生成した。
【0090】
フグ及びゼブラフィッシュPTHのN末端領域(高度に保存されている)及びC末端領域(あまり保存されていない)のアミノ酸及びヌクレオチド配列に基づいて、ディジェネレートPCRプライマーをデザインした。本方法においては、大きなイントロンを含むであろうゲノムDNAからPCR産物を増幅するようにはデザインしなかった。それゆえ、大きなイントロン配列を含むであろうPTH遺伝子を検出するために、cDNAも合成した。
【0091】
フグ及びゼブラフィッシュPTH遺伝子に対して低い相同性を有する配列を検出するために、そして、ディジェネレートプライマーを使用したために、アニーリング温度は45℃を選択した。その条件を以下に記す:
5分間90℃−最初の変性
1分間95℃−変性 )
1分間45℃−アニーリング ) 40サイクル
1分間72℃−伸長 )
1分間72℃−最後の伸長
【0092】
ディジェネレートプライマーを用いたPCR反応においては、100ナノグラムのゲノムDNAを用いた。PCR産物を、エチジウムブロマイド(EtBr)を含む1.5%−2%アガロースゲルで電気泳動を行い、紫外線ライト下でDNAを可視化した。電気泳動後、PCR産物を、Southern transferの方法により、Hybond-N+メンブレン(Amersham)に転写した。Southern transferしたメンブレンをDIG Easy Hybe(Roche)中で、ジゴキシゲニンでラベルしたフグPTH DNAクローンをプローブとして用いてハイブリダイズした。ハイブリダイズ条件としては、ハイブリダイゼーション温度37℃及び洗浄温度68℃、又は、ハイブリダイゼーション温度30℃及び洗浄温度37℃のいずれかを用いた。ジオキシゲニンでラベルしたプローブを、DIG High Primer DNA labeling and Detection Starter Kit II(Roche)を用いて検出した。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
〈結果及び考察〉
魚類の範囲は、硬骨魚類及び軟骨魚類種から選択した。また、これらの種は、熱帯地域及び温暖な地域の両方から選択し、アフリカ、アジア、南アメリカ及びオーストラリアを含む、世界の大部分の地理的エリアをカバーしている。オーストラリア肺魚、総鰭類の魚は、少なくとも3億年前のデボン紀の間に発生した四足類と魚類のつながりを有している。ホシザメ類は、軟骨魚類の代表であり、進化においては硬骨魚類よりも先に位置する。
【0096】
結果を表4に示す。PTH相同体のようである、フグPTH DNAに相同なヌクレオチド配列は、グーラミ、シクリッド、金魚、タイガーバルブ、ナマズ、レッドデビルシクリッド(red devil cichlid)、ホシザメ、肺魚及びゼブラフィッシュで検出された。続いて、ホシザメの有望なPTH相同体として236bpの部分的ゲノムDNAを単離し、配列を決定した(図12及び13を参照せよ)。本実施例の結果から、魚類にわたり、フグPTH相同体が広く分布することが示された。軟骨魚類においてPTH相同体が検出されたことは驚くべきことであった。
【0097】
レインボーシャークDNAで観察されたスメアは、ジゴキシゲニンでラベルしたフグPTH DNAプローブで、ポジティブにハイブリダイズした。この結果は、フグPTH DNAに対する様々な長さの相同体のPCR産物が反応中で得られ、更なるPCR条件の最適化によってレインボーシャークPTH相同体を表す分離したバンドが得られることを示唆している。
【0098】
【表4】

【0099】
本明細書をとおして、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」のような類義語は、言及した要素、整数又は工程、又は要素の群、複数の整数又は工程を、任意の他の要素、整数又は工程、又は要素の群、複数の整数又は工程を除外するのではなく、含むことを示すことは理解されるであろう。
【0100】
本明細書に記載した全ての出版物は、リファレンスとして本出願に組み込まれる。本明細書に含まれる書類、様式、物質、装置、商品等は、単に、本発明の中身を提供する目的のためだけである。任意の又は全てのこれらの物は、本出願のそれぞれの請求項の優先日前の如何なる場所にも存在していることから、従来技術の基礎の一部を形成し、又は、本発明に関連する分野における共通の一般的な知識であると認めたと言っているわけではない。
【0101】
この業界の当業者ならば、具体的な実施態様に示したように、広く記載した本発明の精神又は範囲をから外れること無しに、多くの変更及び/又は改変を本発明になすことができることは自明であろう。本実施態様は、それゆえ、代表としての態様であり、制限しないと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、244bp フグPTH DNAのヌクレオチド配列を、フォワード及びリバースプライマーの位置を強調して(太字及び囲い文字)示す(配列番号3)。
【図2】図2は、フグPTH(1-80)のアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
【図3】図3は、フグPTH遺伝子のヌクレオチド配列を示す(配列番号2)。
【図4】図4は、フグPTH(1-80)及びヒトPTH(1-84)、ニワトリPTH(1-88)、フグPTHrP、ヘダイPTHrP(AF197094)及びヒトPTHrP(p12272)の推定アミノ酸配列の複数の配列アライメントを示す。PTH及びPTHrPそれぞれの一致する残基を、黒又は灰色で囲う。
【図5A】図5Aは、UMR106.01細胞における、フグPTH(1-34)、フグPTHrP(1-34)、ヒトPTH(1-34)及びヒトPTHrP(1-34)のアデニル酸シクラーゼ応答を示す。
【図5B】図5Bは、フグPTH(1-34)、フグPTHrP(1-34)、フグPTH(1-26)、フグPTH(1-29)、フグPTH(2-34)、フグPTH(1-32)及びフグPTH(7-34)のアデニル酸シクラーゼ応答を示す。結果は、三重測定の平均値±SEで表す。フグPTH(1-34)のID50は15nMであり、フグPTHrP(1-34)のID50は1.5nMであり、フグPTH(1-32)のID50は9nMである。フグPTH(1-34)及びフグPTH(1-32)は両方とも、フグPTHrP(1-34)よりも高い最大cAMP応答値に達した。フグPTH(2-34)は、100nM又はより高い濃度で使用した場合に、cAMP応答の刺激に効果があった。
【図5C】図5Cは、5nM及び500nMのフグPTH(1-29)を別々に、5nM及び100nMのフグPTH(1-34)の存在下及び存在しない状態でともに培養した場合の、アデニル酸シクラーゼ応答を示す。如何なるアンタゴニスト効果も検出されなかった。フグPTH(1-29)それ自身では、アデニル酸シクラーゼ応答の刺激に効果があるようには思われないので、観察されたcAMP応答は、フグPTH(1-34)と同じ値を有していた。
【図5D】図5Dは、5nM及び500nMのフグPTH(2-34)を別々に、5nM及び100nMのフグPTH(1-34)の存在下及び存在しない状態でともに培養した場合の、アデニル酸シクラーゼ応答を示す。如何なるアンタゴニスト効果も見られず、100nMのフグPTH(1-34)を500nMのPTH(2-34)とともに培養した場合に、cAMP応答が、別々にテストした場合の2つのペプチドの効果の合計よりも大きくなることが観察された。
【図5E】図5Eは、5nM及び500nMのフグPTH(7-34)を別々に、5nM及び100nMのフグPTH(1-34)の存在下及び存在しない状態でともに培養した場合の、アデニル酸シクラーゼ応答を示す。如何なるアンタゴニスト効果も見られなかった。100nMのフグPTH(1-34)を500nMのPTH(7-34)とともに培養した場合に、観察されたcAMP応答が、別々にテストした場合の2つのペプチドの効果の合計よりも大きくなった。
【図6】図6は、フグPTH(1-34)での治療を行っていないラット及び治療を行ったラットの近位脛骨の染色切片(左から右)を示す。若いラットにおいては、フグPTH(1-34)によって骨の塊が増大していることが示された。具体的には、図は、治療を行っていないコントロールラット、一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラムのフグPTH(1-34)で治療したラット(「低投与量のfPTH」)、一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラムのフグPTH(1-34)で治療したラット(「高投与量のfPTH」)、一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラムのヒトPTHで治療したラット(「低投与量のhPTH」)、及び一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラムのヒトPTHで治療したラット(「高投与量のhPTH」)の近位脛骨のトルイジンブルー染色した切片を示し、フグPTH(1-34)で治療したラットにおいては骨梁密度の明らかな上昇が見られた。
【図7】図7は、近位二次海綿骨の組織形態計測的分析を示し、高投与量のフグPTH(1-34)で治療したラット(一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)において、骨梁間隔(μm)は減少せず、骨梁体積(体積全体の%)、骨梁幅(μm)、及び骨梁数(mmあたり)が有意に増加することが明らかになった。それぞれの群の値は、平均値+SEMである(一つの群あたりn=5-8のラット)。一元配置分散分析とその後にTukeyの多重比較検定を行い、治療を行っていないコントロールに対して、はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図8】図8は、異なる治療群から選択した、近位脛骨の切片を示し、組織形態計測によって求めた骨梁体積の平均値を表す。切片を、石灰化マトリクスを黒色に染色する改変したvon Kossa染色、及び、骨髄のポンソー/オレンジG対比染色によって染色した。図の左に示される切片のボックスは、組織形態計測的分析のために選択された領域を表す。表した治療群は、治療を行っていないコントロールラット、一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラムのフグPTH(1-34)で治療したラット、一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラムのフグPTH(1-34)で治療したラット、一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラムのヒトPTHで治療したラット、及び一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラムのヒトPTHで治療したラットである(左から右)。
【図9】図9は、ヒトPTH(hPTH)によって、及び、ヒトPTH(hPTH)ほどではないにせよ高投与量のフグPTH(1-34)(一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)によって、骨形成の組織形態計測マーカーが有意に上昇することをグラフで示す。骨芽細胞数及び骨芽細胞表面の両方の増加によって、ヒトPTH(hPTH)で観察されたように、フグPTH(1-34)に応答して骨芽細胞の増殖が増すことが示唆された。低投与量のフグPTH(1-34)(一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラム)では、骨芽細胞の増殖を増す方へ向かわせる傾向があった。それぞれの群の値は、平均値+SEMである(一つの群あたりn=5-8のラット)。一元配置分散分析とその後にTukeyの多重比較検定を行い、治療を行っていないコントロールに対して、はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図10】図10は、低投与量(一日あたり体重100グラムに対して3マイクログラム)の、及び、高投与量の(一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)のフグPTH(1-34)の両方によって、並びに、最も高い投与量(一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)のヒトPTH(hPTH)によって、類骨表面ユニットあたりの骨芽細胞数が、有意に増加することをグラフで示す。それぞれの群の値は、平均値+SEMである(一つの群あたりn=5-8のラット)。一元配置分散分析とその後にTukeyの多重比較検定を行い、治療を行っていないコントロールに対して、はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図11】図11は、高投与量のヒトPTH(hPTH)(一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)によって、骨吸収の組織形態計測マーカーが有意に減少するが、フグPTHによっては有意に変化しないことをグラフで示す。しかしながら、高投与量のフグPTH(1-34) (一日あたり体重100グラムに対して10マイクログラム)を与えた動物では破骨細胞の数は減少に向かう傾向があった。それぞれの群の値は、平均値+SEMである(一つの群あたりn=5-8のラット)。一元配置分散分析とその後にTukeyの多重比較検定を行い、治療を行っていないコントロールに対して、はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図12】図12は、ホシザメPTH遺伝子のヌクレオチド配列を示す(配列番号4)。
【図13】図13は、フグPTH及びヒトPTHのアミノ酸配列に対する、ホシザメPTH遺伝子の3つの可能性ある翻訳産物のアライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも45%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、実質的に単離したポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項2】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも55%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項3】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも65%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項4】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも75%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項5】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項6】
配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも95%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はそれらの生物学的に活性な断片。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸1-34の配列と少なくとも65%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸1-34の配列と少なくとも75%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸1-34の配列と少なくとも90%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸1-34の配列と少なくとも95%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸7-34の配列と少なくとも65%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸7-34の配列と少なくとも75%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項13】
配列番号1のアミノ酸7-34の配列と少なくとも90%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸7-34の配列と少なくとも95%一致する配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項15】
配列番号1のアミノ酸1-34又は7-34の配列に実質的に対応するアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項16】
N末端にスレオニンを有するアミノ酸配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片。
【請求項17】
N末端にスレオニンを有するアミノ酸配列を含む、請求項7から15のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片。
【請求項18】
N末端にスレオニンを有するアミノ酸配列を含む、副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチド又は生物学的に活性な断片。
【請求項19】
硬骨魚類又は軟骨魚類に由来する、請求項18に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片。
【請求項20】
請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片をコードする、単離した核酸分子。
【請求項21】
請求項7から15又は17のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片をコードする、単離した核酸分子。
【請求項22】
配列番号2で示したヌクレオチド配列に実質的に対応するヌクレオチド配列又はそれらの断片を含む、請求項20又は21に記載の核酸分子。
【請求項23】
配列番号4で示したヌクレオチド配列に実質的に対応するヌクレオチド配列又はそれらの断片を含む、副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチド又は生物学的に活性な断片をコードする、単離した核酸分子。
【請求項24】
請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸分子を含むリコンビナント宿主。
【請求項25】
請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片、請求項7から15又は17のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片、又は、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸分子を、任意に医薬的に許容できる担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項26】
患者に、治療に効果的な量で、請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片、請求項7から15又は17のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸分子、又は、請求項25に記載の医薬組成物を投与することを含む、患者の異常なカルシウム恒常性に関連した病気を治療する方法。
【請求項27】
前記病気が、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、骨肉腫、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、乾癬及び他の皮膚に関連した病気を含む群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者に、治療に効果的な量で、請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片、請求項7から15又は16のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片、第一の態様の請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸分子、又は、請求項25に記載の医薬組成物を投与することを含む、PTH受容体の変化した又は過度の作用によりもたらされる病気を治療する方法。
【請求項29】
患者に、効果的な量で、適切に検出可能な標識でラベルした、請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片、又は、請求項7から15又は16のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片を投与すること、及び、前記患者の骨への前記ポリペプチド又は生物学的に活性な断片の取り込みを求めることを含む、骨形成、骨吸収及び/又は骨再形成の速度を調べる方法。
【請求項30】
請求項1から6、16、18又は19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は生物学的に活性な断片、又は、請求項7から15又は17のいずれか一項に記載の生物学的に活性な断片に特異的に結合する抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−517086(P2006−517086A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534866(P2004−534866)
【出願日】平成15年9月15日(2003.9.15)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001201
【国際公開番号】WO2004/024758
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(505092234)ティールオスティン・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】