説明

副腎ホルモン修飾剤の使用

本発明は、式(I)[式中、nは1または3であり;Rは水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、または−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は、−−(C〜C)アルコキシで必要により置換されており;R、R、およびRは独立に水素、ハロゲン、シアノまたは−−(C〜C10)アリールであり、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンで必要により置換されており;RおよびRは水素である]で表される化合物、または医薬的に許容可能なその塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または障害の治療方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患状態における、副腎ホルモン修飾特性を有する化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
副腎におけるステロイド産生は、高度に関連し制御されたシトクロムP450酵素を介して生じる。アルドステロンシンターゼすなわち酵素シトクロムP450 11B2(CYP11B2)の阻害は、過剰なアルドステロンレベルを低下させるための新たな薬理学的戦略を代表する。アルドステロンは、主に副腎で合成され、循環に放出されて腎臓上皮でナトリウム/カリウムバランスを制御し、故に水分ホメオスタシスおよび血圧を制御するほか、心臓および腎臓の非上皮組織で細胞外マトリックスの形成および臓器リモデリング(organ remodeling)を制御する鉱質コルチコイドである。アルドステロンシンターゼは、副腎において、11−ベータ−ヒドロキシル化を介した11−デオキシコルチコステロンのコルチコステロンへの末端かつ律速の変換(terminal and rate-limiting conversion)と、18−メチル水酸化を介したコルチコステロンの18−ヒドロキシ−コルチコステロンへの変換と、最後に、18−メチル酸化を介した18−ヒドロキシ−コルチコステロンのアルドステロンへの変換とを媒介する。該酵素の活性および発現は、アンジオテンシンII、カリウムおよびアドレノコルチコトロピンにより主に調節される。アルドステロンシンターゼのこれらの制御因子は、アルドステロンの作用および生理的概日リズムに感受性であり、このため内分泌フィードバックループを生み出す。アンジオテンシンIIは、低アルドステロン状態に起因するナトリウム喪失および血圧低下により引き起こされるレニン活性の刺激時に産生される。カリウムは、低アルドステロン条件ではナトリウム喪失と引き換えに保持される。最後に、アドレノコルチコトロピンは、低グルココルチコイドレベルおよび概日リズムに反応して下垂体から産生される。したがって、アルドステロンシンターゼの選択的阻害およびアルドステロン分泌の低下は、レニンの刺激およびアンジオテンシンIIの生成ならびにカリウムの保持により打ち消される。両方とも、アルドステロンシンターゼ活性および故にアルドステロン分泌の強力な刺激因子である、アンジオテンシンIIおよびカリウムレベルを増加させた。アルドステロンシンターゼ阻害時の概日リズムは、アルドステロンに関して鈍化するが、グルココルチコイドがアドレノコルチコトロピン分泌の主な制御因子であることから、アドレノコルチコトロピンレベルは、大幅には変化しない。コルチゾール分泌の律速酵素は、11−デオキシコルチゾールをコルチゾールに変換する副腎酵素11−ベータ−ヒドロキシラーゼすなわちシトクロムP450 11B1(CYP11B1)である。コルチゾールレベルは、アドレノコルチコトロピン(ACTH)の放出の制御により視床下部−下垂体−副腎フィードバックループを介して制御される。アドレノコルチコプトロピン(adrenocorticoptropin)は、副腎において初期および後期ステロイド産生反応を刺激し、コルチゾールの合成をもたらすが、デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロステンジオンの合成ももたらす(図1、副腎ステロイド産生に関する略図参照)。コルチゾール産生酵素CYP11B1は、アルドステロン産生酵素CYP11B2とアミノ酸レベルで95%の高い配列相同性を示す。したがって、過剰なアルドステロン分泌を低下させるためアルドステロンシンターゼを標的にした化合物は、酵素選択性を試験される必要がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
1つの態様では、本発明は、式(I)で表される化合物または医薬的に許容可能なその塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または障害の治療方法を提供する。
【0004】
別の態様では、式(I)で表される化合物または医薬的に許容可能なその塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群の治療方法が提供される。
【0005】
さらなる態様では、被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害または疾患を治療する医薬組成物を調製するための、式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用が提供される。
【0006】
さらなる態様では、被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害または疾患の治療における、式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用が提供される。
【0007】
別の態様では、本発明は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群から選択される障害または疾患を治療する医薬組成物を調製するための、式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用を提供する。
【0008】
さらなる態様では、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群から選択される障害または疾患の治療における、式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明において使用することができる化合物は、以下の式(I)
【0011】
【化6】


[式中、nは1または3であり、
Rは、水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、または−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は−−(C〜C)アルコキシで必要により置換されており、
、R、およびRは、独立に水素、ハロゲン、シアノまたは−−(C〜C10)アリールであり、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンで必要により置換されており、
およびRは、水素である]または医薬的に許容可能なその塩を用いて記載される。
【0012】
1つの実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)を有する4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリル(flurorbenzonitrile)である。
【0013】
【化7】

【0014】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、完全飽和分岐または非分岐炭化水素部分を指す。好ましくはアルキルは、1から6個の炭素原子、より好ましくは1から16個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から7個の炭素原子、または1から4個の炭素原子を含む。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−へキシル、3−メチルへキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、アルキルが本明細書上記に定義されているアルキル−O−を指す。アルコキシの代表例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、へキシルオキシ、シクロプロピルオキシ−、シクロへキシルオキシ−等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において使用される場合、用語「低級アルコキシ」は、約1〜7個、好ましくは約1〜4個の炭素を有するアルコキシ基を指す。
【0016】
用語「アリール」は、環状部分に6〜20個の炭素原子を有する単環または二環式芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、アリールは、(C〜C10)アリールである。非限定例には、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチルが含まれ、この各々は、アルキル、トリフルオロメチル、シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アルキル−C(O)−O−−、アリール−O−−、ヘテロアリール−O−−、アミノ、HS−−、アルキル−S−−、アリール−S−−、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルキル−O−C(O)−−、カルバモイル、アルキル−S(O)−−、スルホニル、スルホンアミド、へテロシクリル等などの1〜4個の置換基で必要により置換されていてもよい(Rは、独立に水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−アルキル−−、ヘテロアリール−アルキル−−等である)。
【0017】
さらに、本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、単一の芳香族環、あるいは融合された、共有結合された、またはメチレンもしくはエチレン部分などの共通基に連結された複数の芳香族環であり得る芳香族置換基を指す。共通の連結基はまた、ベンゾフェノンにおけるようなカルボニル、またはジフェニルエーテルにおけるような酸素、またはジフェニルアミンにおけるような窒素であってもよい。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の生物学的効果および特性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本発明の化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはこれに類似した基の存在により、酸性塩および/または塩基性塩を形成することができる。医薬的に許容可能な酸付加塩は、無機酸および有機酸により形成することができる。塩を得ることができる無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が含まれる。塩を得ることができる有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が含まれる。医薬的に許容可能な塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基により形成することができる。塩を得ることができる無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が含まれ、特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。塩を得ることができる有機塩基には、例えば、一級、二級、および三級のアミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等が含まれる(具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンなど)。本発明の医薬的に許容可能な塩は、従来の化学的方法により、親化合物、塩基性または酸性部分から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、カーボネート、ビカーボネートなど)の化学量論量と反応させて、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を適切な酸の化学量論量と反応させて調製することができる。このような反応は、典型的には、水もしくは有機溶媒またはこの2つの混合物中で実施される。一般に、実施可能な場合、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。さらなる適切な塩のリストは、例えば、参照により本明細書に組み込まれているRemington's Pharmaceutical Sciences、第20版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、(1985年)に見出すことができる。
【0020】
別の実施形態では式(I)の化合物は、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェート塩(dihydrogenphosphate salt)である。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容可能な担体」には、いかなる溶媒(any and all solvents)、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬剤、薬剤安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素などの物質、およびこれらの組合せも、当業者に既知であろう通りに含まれる(例えば、参照により本明細書に組み込まれているRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年、1289〜1329頁参照)。いずれかの従来の担体が有効成分と適合しない場合を除き、治療組成物または医薬組成物中でのこの使用が企図される。
【0022】
本発明の化合物の「治療有効量」という用語は、被験体の生物学的もしくは医学的反応の誘発、または症状の改善、疾患進行の減速もしくは遅延、または疾患の予防等になるであろう本発明の化合物の量を指す。1つの非限定的な実施形態では、用語「治療有効量」は、被験体に投与される場合、
(1)(i)過剰なストレスホルモンレベルおよび/もしくは不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする、または(ii)過剰なストレスホルモンレベルおよび/もしくは不十分なアンドロゲンホルモンレベルの活性に関連した、または(iii)過剰なストレスホルモンレベルおよび/もしくは不十分なアンドロゲンホルモンレベルの異常な活性を特徴とする、状態、または障害もしくは疾患を少なくとも部分的に軽減、抑制、予防および/もしくは改善すること、あるいは
(2)過剰なストレスホルモンレベルの活性を低下もしくは阻害すること、および/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを間接的にもたらすステロイド産生酵素の活性を低下もしくは阻害すること、あるいは
(3)過剰に産生されたストレスホルモンレベルの合成を低下もしくは阻害すること、および/またはアンドロゲンホルモンレベルを増加させること
に効果がある、本発明の化合物の量を指す。
【0023】
別の非限定的な実施形態では、用語「治療有効量」は、細胞、または組織、または細胞以外の生物材料、または培地に投与される場合、過剰なストレスホルモンレベルの活性を少なくとも部分的に低下もしくは阻害すること、および/またはアンドロゲンホルモンレベルを増加させること;あるいは過剰に産生されたストレスホルモンレベルの合成を少なくとも部分的に低下もしくは阻害すること、および/またはアンドロゲンホルモンレベルを増加させることに効果がある、本発明の化合物の量を指す。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「被験体」は、動物を指す。1つの実施形態では、動物は哺乳動物である。被験体はまた、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥等も指す。1つの実施形態では、被験体はヒトである。
【0025】
本特許出願を通して使用される場合、被験体において測定されるようなホルモンのレベルは、前記被験体から採取されたいずれかの試料中にあり得る。1つの実施形態では該レベルは、血液試料で測定される。別の実施形態では該レベルは、血漿試料から判定される。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「障害」または「疾患」は、機能のいずれかの乱れまたは異常;病的な身体または精神の状態を指す。Dorland's Illustrated Medical Dictionary参照、(W.B. Saunders Co. 第27版 1988年)。
【0027】
本明細書において使用される場合、いずれかの疾患または障害の「治療(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、1つの実施形態では、疾患または障害を部分的にまたは完全に改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの進展を停止または低下させること)を指す。別の実施形態では「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、患者には認識できない可能性がある少なくとも1つの身体的パラメータを部分的にまたは完全に改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患または障害を身体的に、(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的に、(例えば、身体的パラメータの安定化)のどちらか、または両方ともに調節することを指す。さらに別の実施形態では、「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患または障害の発症または進展(development)または進行(progression)を予防または遅延させることを指す。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「ある(a)」、「ある(an)」、「この(the)」および本発明の文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される類似した用語は、本明細書に特に指摘のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、該範囲内にある各別個の値を個々に指す簡便な方法として機能することが単に意図される。本明細書に特に指摘のない限り、各別個の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書に特に指摘のない限り、または文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書に提供されたいかなる例(any and all example)、または例示語(例えば「など(such as)」)の使用も、本発明をより明確にすることが単に意図されたものであり、特に特許請求された本発明の範囲を限定するものではない。本明細書における言葉は、本発明の実践に不可欠ないずれかの特許請求されない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0029】
本発明の化合物における任意の不斉炭素原子は、(R)、(S)または(R、S)配置で、好ましくは(R)または(S)配置で存在することができる。不飽和結合を有する原子での置換基は、可能であれば、シス(Z)またはトランス(E)型で存在してもよい。したがって、本発明の化合物は、可能性のある異性体の1つまたはその混合物、例えば、実質的に純粋な幾何(シスまたはトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(対掌体)、ラセミ体またはこれらの混合物のような形態であってもよい。
【0030】
異性体の任意の得られた混合物は、例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶により、成分の物理化学的な違いに基づき、純粋な幾何または光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に分離することができる。
【0031】
最終生成物または中間体の任意の得られたラセミ体は、既知の方法、例えば、光学的に活性な酸または塩基により得られたそのジアステレオマーの塩の分離、および光学的に活性な酸性または塩基性化合物の遊離により光学対掌体に分割することができる。特に、イミダゾリル部分は故に、例えば、光学的に活性な酸(例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ−O,O’−p−トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸またはショウノウ−10−スルホン酸)で形成された塩の分別結晶により、本発明の化合物をその光学対掌体に分割するのに使用され得る。ラセミ体生成物はまた、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を用いた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により分割することもできる。
【0032】
さらに、本発明は、式(I)の化合物に、その遊離型、塩型、またはプロドラッグ誘導体が含まれることを企図する。化合物は、水和物の形態で得られてもよく、または結晶化に使用される溶媒を含んでもよい。
【0033】
本発明の化合物は、WO2007/024945(この内容は参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているような方法により合成または作製され得、および該方法を特徴とし得る。
【0034】
別の実施形態では、方法は、上記の疾患または障害を治療するための式(I)による化合物を使用することを含み、異性体、光学異性体または医薬的に許容可能なその塩を含む、好ましくは異性体、光学異性体を含む該化合物は、
4’−フルオロ−6−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ビフェニル−3−カルボニトリル;
3−ブロモ−4−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ベンゾニトリル;
5−(2−クロロ−4−シアノフェニル)−N−(4−メトキシベンジル)−N−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−カルボキサミド;
5−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−カルボン酸(4−フルオロベンジル)メチルアミド;
4−(6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル)−3−フルオロベンゾニトリル;
5−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール;
5−(2−クロロ−4−シアノフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−カルボン酸4−フルオロベンジルエステル;
5−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン;
2−ブロモ−4−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ベンゾニトリル;
3−ピリジン−3−イル−4−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ベンゾニトリル;および
3−クロロ−4−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ベンゾニトリル
から選択され、特に、
4’−フルオロ−6−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ビフェニル−3−カルボニトリル;
3−ブロモ−4−(6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−イミダゾ[1,5−a]アゼピン−5−イル)ベンゾニトリル;
5−(2−クロロ−4−シアノフェニル)−N−(4−メトキシベンジル)−N−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−カルボキサミド;および
4−(6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル)−3−フルオロベンゾニトリル
から選択される。
【0035】
好ましくは本明細書に記載されているような式(I)の化合物は、式(4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルまたは医薬的に許容可能なその塩、特に(4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェート(dihydrogen phosphate)である。本明細書に定義されているような式(I)の化合物の塩、好ましくはリン酸塩(上記のジヒドロゲンホスフェート)は、例えばChem. Commun.、2007年、419〜421頁(2007年);Development of a pharmaceutical cocrystal of a monophosphate salt with phosphoric acid Alex M. Chen、Martha E. Ellison、Andrey Peresypkin、Robert M. Wenslow、Narayan Variankaval、Cecile G. Savarin、Theresa K. Natishan、a David J. Mathre、a Peter G. Dormer、a Danielle H. Euler、b Richard G. Ball、Zhixiong Ye、Yaling Wanga and Ivan Santos;Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、P. Heinrich StahlおよびCamile G. Wermuth編、VHCA, Verlag Helvetica Chimica Acta、Zurich、Switzerland、およびWiley-VCH、Weinheim、Germany 2002年;Organic Process Research & Development 2000年、4、427〜435頁 Salt Selection and Optimisation Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities Richard J. Bastin、Michael J. Bowker、およびBryan J. Slater;Advanced Drug Delivery Reviews 56(2004年)275〜300頁、High-throughput crystallization: polymorphs, salts, co-crystals and solvates of pharmaceutical solids Sherry L. Morissettea,*、O” rn Almarssona、Matthew L. Petersona、Julius F. Remenara、Michael J. Reada、Anthony V. Lemmoa、Steve Ellisa、Michael J. Cimab、Colin R. Gardner;ならびにJournal of Pharmaceutical Sciences 、第96巻、第5号、2007年5月、Structure, Solubility, Screening, and Synthesis of Molecular Salts、Black, S. N.、Collier, E. A.、Davey、R. J.およびRoberts, R. J.に記載されているように、当業者に既知の標準的方法により調製することができる。
【0036】
本発明によれば式(I)の化合物および/または医薬的に許容可能なその塩は、被験体に投与される場合、副腎ステロイド産生の多面的修飾因子(pleiotropic modifier)となる。式(I)の化合物は、被験体に投与される場合、コルチゾールレベルを維持または低下させる。式(I)の化合物は、被験体に投与される場合、11−デオキシコルチゾールレベルを増加させる。式(I)の化合物は、被験体に投与される場合、アドレオノコルチコトロピン(adreonocorticotropin)のレベルを増加させる。式(I)の化合物は、11−デオキシコルチコステロンのレベルを増加させる。式(I)の化合物は、被験体に投与される場合、副腎アンドロゲンを増加させる。
【0037】
実施例1では、式(I)の化合物、すなわち(4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、被験体に投与される場合、副腎ステロイド産生の多面的修飾因子となることが示されている。4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、被験体に投与される場合、コルチゾールレベルを維持または低下させることが図1に示されている。4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、被験体に投与される場合、11−デオキシコルチゾールレベルを増加させることがさらに示されている。4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、被験体に投与される場合、アドレオノコルチコトロピンのレベルを増加させる。4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、11−デオキシコルチコステロンのレベルを増加させる。4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートは、被験体に投与される場合、副腎アンドロゲンを増加させる。
【0038】
増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルの臨床的関連性が、以下の状態について示されている。
(i)慢性心不全
(ii)運動耐容能障害(impaired exercise tolerance)を伴う慢性心不全
(iii)筋力低下を伴う慢性心不全
(iv)心臓悪液質
(v)COPD誘発悪液質
(vi)肝硬変誘発悪液質
(vii)腫瘍誘発悪液質
(viii)ウイルス(HIV)誘発悪液質
(ix)急性心不全
(x)急性非代償性心不全
(xi)急性冠症候群
(xii)慢性ストレス症候群
(xiii)クッシング症候群
(xiv)代謝性症候群
(xv)高コルチゾール血症(hypercortisolemia)
【0039】
(i)慢性心不全ならびに運動耐容能障害(ii)および筋力低下(iv)を伴う慢性心不全状態は、Bolgerら、Circulation 2002年;106:92〜99頁により示されているように血漿アルドステロンレベルの上昇、Ankerら、European Heart Journal 1999年;20:683〜693頁により示されているようにジヒドロエピアンドロステロン(dihydroepiandrosterone)対血漿比の上昇、およびJankowaskaら、Circulation 2006年;114:1829〜1837頁により示されているようにアンドロゲンレベルの減少を示す。
【0040】
(iv)心臓悪液質は、患者が脂肪組織、除脂肪組織(lean tissue)および骨組織の全般的喪失を患うことから、慢性心不全の重篤な合併症である。心臓悪液質患者は、Ankerら、Circulation 1997年;96:526〜534頁により記載され、ならびにWO2000/21509およびUS2009/0023639に例示されているように、アルドステロンおよびコルチゾールの血漿レベルの上昇、ならびにデヒドロエピアンドロステロンのレベルの低下を示す。
【0041】
(v)COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質(vi)、腫瘍誘発悪液質(vii)およびウイルス(HIV)誘発悪液質(viii)は、WO2000/21509またはUS2009/0023639に実証されているように増加した血漿アルドステロンレベルを特徴とし、ならびにYehら、Chest 2002年;122:421〜428頁、およびCuerdaら、Nutrition Clinical Practice 2005年 20;93〜97頁により報告されているようにアナボリックアンドロゲンまたはアンドロゲン誘導体で治療されている。
【0042】
(ix〜x)血漿コルチゾールは、Yamajiら、Circulation Heart Failure 2009年;2:608〜613頁によれば心不全患者における死および入院などの心臓イベントを予測する。
【0043】
(xi)心筋梗塞は、Mihailiduら、Hypertension 2009年近刊により示されているように、心臓リモデリングに影響を与えるコルチゾールレベルを上昇させる。コルチゾール反応の大きさは、Bainら、International Journal of Cardiology 1992年;27:145〜150頁により示されているように、その後の梗塞のサイズに関係する。
【0044】
(xii)身体的および心理的影響(ramification)を伴う慢性ストレス障害は、KubzanskyおよびAdler、Neuroscience and Biobehavioral Reviews、2009年;5:1〜7頁によれば、過剰なアルドステロンおよびコルチゾールレベルと関連している。特に、過剰および持続性のコルチゾール分泌は、うつ病、高血糖および免疫系の抑制をもたらす可能性がある。
【0045】
(xiii)クッシング症候群は、慢性的に過剰なコルチゾール放出の状態を言う。コルチゾール過剰は、BoscaroおよびArnaldi、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2009年;94:3121〜3131頁により例示されているように、副腎皮質腫瘍から直接、またはアドレノコルチコトロピンを放出する下垂体(クッシング病)もしくは異所性腫瘍から二次的に生じ得る。
【0046】
(xiv)代謝性症候群は、インスリン抵抗性ならびに2型糖尿病、中心性および内蔵型肥満(central and visceral obesity)、高血圧および脂肪異常症(dyslipidemia)に対する素因を特徴とする代謝調節異常の状態を定義する。代謝調節異常は、Kidambyら、Hypertension 2007年;49:704〜711頁により報告されているように、副腎ステロイドアルドステロンおよびコルチゾールにより媒介された、根底にある内分泌のアンバランスに起因している可能性がある。
【0047】
(xv)高コルチゾール血症は、高レベルの循環コルチゾールを特徴とする状態を指す。高レベルの血漿コルチゾールは、病的状態に直接寄与し得、病的状態の徴候を示し得、または病的でない性質であり得る。
【0048】
本発明は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、高コルチゾール血症、クッシング症候群または代謝性症候群、特に心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群などの過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする状態の治療としての、副腎ホルモン修飾特性を有する式(I)の化合物および/または医薬的に許容可能なその塩、もしくは上述されたようなその任意の他の形態の使用に関する。心不全は、急性心不全および慢性心不全の両方であり得る。急性心不全は、急性非代償性心不全であり得る。慢性心不全は、運動耐容能障害および/または筋力低下に関連し得る。悪液質は、心臓悪液質、COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質、腫瘍誘発悪液質またはウイルス(HIV)誘発悪液質であり得る。慢性ストレス症候群には、うつ病、高血糖および免疫抑制が含まれ得る。クッシング症候群には、副腎皮質腫瘍、下垂体腫瘍または異所性腫瘍に起因する高コルチコイド症が含まれ得る。代謝性症候群には、肥満、糖尿病、高血圧、脂肪異常症およびアテローム性動脈硬化が含まれ得る。式(I)の化合物は、実験セクションに示されているように、増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または状態における副腎ホルモン修飾特性を有する。
【0049】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体においてコルチゾールレベルを低下または維持する方法を提供する。
【0050】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体において減少したアンドロゲンホルモンレベルまたは不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態を治療する方法を提供する。
【0051】
本発明は、減少したアンドロゲンホルモンレベルまたは不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態の治療に使用するための、式(I)の化合物、または医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0052】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体においてアルデステロン(aldesterone)およびコルチゾールレベルなどの過剰なストレスホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態を治療する方法を提供する。
【0053】
本発明は、アルデステロンおよびコルチゾールレベルなどの過剰なストレスホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態の治療に使用するための、式(I)の化合物、または医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0054】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体において11−デオキシコルチゾールレベルレベルを増加または維持する方法を提供する。
【0055】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体においてアドレオノコルチコトロピンレベルレベルを増加または維持する方法を提供する。
【0056】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体において11−デオキシコルチコステロンレベルを増加または維持する方法を提供する。
【0057】
本発明は、式(I)の化合物の治療有効用量を投与することによって、被験体において副腎アンドロゲンレベルレベルを増加または維持する方法を提供する。
【0058】
本発明は、被験体における副腎ステロイド産生の多面的修飾因子としての式(I)の化合物の使用を提供する。
【0059】
本発明は、過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態を治療する医薬組成物を調製するための、式(I)による化合物の使用をさらに提供する。
【0060】
本発明は、過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害、疾患または状態の治療に使用するための、式(I)による化合物を含む医薬組成物をさらに提供する。このような疾患または障害は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、高コルチゾール血症、クッシング症候群または代謝性症候群であり得る。
【0061】
本発明は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群など、過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害または疾患または状態を治療する医薬組成物を調製するための、本発明の化合物の使用をさらに提供する。
【0062】
別の態様では、本発明は、式(I)による化合物および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物の治療有効量を被験体に投与することによって、過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または障害を治療する方法を提供する。別の態様では、このような疾患または障害は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群であり得る。
【0063】
1つの実施形態では、本発明は、過剰なストレスホルモンレベルおよび/または不十分なアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または障害を治療するため、式(I)による化合物および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物の治療有効量を被験体に投与する方法を提供する。別の態様では、このような疾患または障害は、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、高コルチゾール血症、クッシング症候群または代謝性症候群、特に心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群または代謝性症候群であり得る。
【0064】
上記に使用される場合は常に、心不全は、急性心不全および慢性心不全の両方であり得る。急性心不全は、急性非代償性心不全であり得る。慢性心不全は、運動耐容能障害および/または筋力低下に関連し得る。悪液質は、心臓悪液質、COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質、腫瘍誘発悪液質またはウイルス(HIV)誘発悪液質であり得る。慢性ストレス症候群には、うつ病、高血糖および免疫抑制が含まれ得る。クッシング症候群には、副腎皮質腫瘍、下垂体腫瘍または異所性腫瘍に起因する高コルチコイド症が含まれ得る。代謝性症候群には、肥満、糖尿病、高血圧、脂肪異常症およびアテローム性動脈硬化が含まれ得る。式(I)の化合物は、実験セクションに示されているように、増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または状態における副腎ホルモン修飾特性を有する。
【0065】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、当技術分野で既知の方法により調製することができる。該医薬組成物は、経口投与、非経口投与、および直腸投与等などの特定の投与経路用に処方することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、ピル、顆粒、粉末もしくは座薬を含む固体形態、または溶液、懸濁液もしくは乳液を含む液体形態で作製することができる。医薬組成物は、殺菌などの従来の医薬品操作に供することができ、ならびに/または従来の不活性希釈剤、平滑剤、もしくは緩衝剤のほか、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤および緩衝液等などの補助剤を含有することができる。
【0066】
本発明による医薬組成物は、0.01mgから1000mg、0.01mgから500mg、0.01から50mg、0.01mgから5mg、0.01から2mgまたは0.1mgから2mgの有効成分など、有効成分として、本明細書に記載された化合物の少なくとも0.05または1mg以上の単位投与量(unit dosage)(約50〜70kgの被験体に対し有効成分として、本明細書に記載された化合物の少なくとも0.05もしくは1mgまたは4mgから100mg、例えば2mgから50mgの単位投与量など)にあってもよい。例えば、単位投与量は、約50〜70kgの被験体に対し1〜1000mgの有効成分、約1〜500mg、約1〜50mg、約0.5〜5mg、0.1〜1mgまたは約0.05〜0.5mgの有効成分を含有してもよい。本明細書に記載された化合物を利用する投与レジメンは、タイプ、種、年齢、体重、性別、治療される疾患または障害のタイプ、治療される疾患または障害の重症度、投与経路、および使用される特定の化合物または塩を含むさまざまな要因に従って選択することができる。当業の医師、臨床医または獣医師は、障害または疾患の進行を予防、治療または阻害するのに必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
【0067】
上記に引用された投与量特性は、有利には哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、サルまたは摘出臓器(isolated organs)、組織およびこれらの調製物を用いて、インビトロ(PCT出願PCT/US2007/018660およびWO2007/065942A2参照)およびインビボ(以下の実施例1参照)試験で実証できる。本発明の化合物は、インビトロで溶液、例えば、好ましくは水溶液の形態で、およびインビボでも経腸的に、非経口で、有利には静脈内に、例えば、懸濁液としてまたは水溶液で適用することができる。インビトロでの投与量は、約10−3モルと10−9モルとの濃度の間の範囲であってもよい。インビボでの治療有効量は、投与経路に応じて、0.001〜15mg/kgの間、好ましくは0.003〜0.05mg/kgの間の範囲であってもよい。
【0068】
以下に列挙されているのは、本明細書を通して使用されるさまざまな用語の定義である。
【0069】
用語「ストレスホルモン」は、本明細書において使用される場合、普通ではない生活体験(unusual exposure to life)に反応して分泌されるホルモンに関する。ストレス反応は、エピネフリンおよびノルエピネフリンの分泌を伴う交感神経副腎髄質系、ならびにコルチゾールの分泌を伴う視床下部下垂体副腎皮質(HPA)系の両方の活性化を含む。ストレスホルモンの例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO2007/105203において表1に記載されている。好ましい実施形態では、ストレスホルモンは、アルドステロンまたはコルチゾールであり、好ましくはコルチゾールである。
【0070】
用語「増加したストレスホルモンレベル」または「過剰なストレスホルモンレベル」は、ホルモンレベルのレベルが、血漿レニン活性に対するアルドステロンなどの他のパラメータのレベルと比べて統計的に有意に上昇していること、または正常な臨床参照値と比べて統計的に有意に上昇していることを示すために本明細書で使用される。例えば、ストレスホルモンレベルは、例えばEndocrinology 第9版(編者J. D. Wilson、D. W. Foster、H. M. Kronenberg、P. R. Larsen)W. B. Saunders Co.、Philadelphia、1988年に記載されているように、アルドステロンのレベルが安静時に277pMを超える場合、またはコルチゾールのレベルが午前中(in the morning)に552nMを超える場合、増加している。
【0071】
用語「過剰なストレスホルモンレベルの活性を低下または阻害すること」は、本明細書において使用される場合、病態生理をもたらす、相対的および/または絶対的な増加したまたは過剰なストレスホルモン不均衡の予防、制御、遅延、軽減または緩和におけるいずれかの改善を意味する。用語「阻害(inhibiting)」は、ストレスホルモンレベルの正常化に限定されることを意図するものではないが、該用語には、ストレスホルモンレベルが臨床参照値まで完全に正常化される可能性も含まれる。
【0072】
用語「過剰に産生されたストレスホルモンレベルの合成を低下または阻害すること(reducing or inhibiting the synthesis excessively produced stress hormone levels)」は、本明細書において使用される場合、病態生理をもたらす、相対的および/または絶対的な増加したまたは過剰なストレスホルモン不均衡の予防、制御、遅延、軽減または緩和におけるいずれかの改善を意味する。用語「阻害(inhibiting)」は、ストレスホルモンレベルの正常化に限定されることを意図するものではないが、該用語は、ストレスホルモンレベルが臨床参照値まで完全に正常化される可能性も含む。
【0073】
用語「アンドロゲンホルモン」は、本明細書において使用される場合、男性ホルモンに関し、例えば、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)およびジヒドロテストステロン(DHT)を含む。
【0074】
用語「減少したアンドロゲンホルモンレベル」または「不十分なアンドロゲンホルモンレベル」は、アンドロゲンレベルのレベルが、他のパラメータのレベルと比べて統計的に有意に低下していること、または正常な臨床参照値と比べて統計的に有意に低下していることを示すために本明細書で使用される。例えば、アンドロゲンホルモンレベルは、例えばEndocrinology 第9版(編者J. D. Wilson、D. W. Foster、H. M. Kronenberg、P. R. Larsen)W. B. Saunders Co.、Philadelphia、1988年に記載されているように、アンドロステンジオンのレベルが、例えば、2619pMより下である場合、またはデヒドロアンドロステロンのレベルが、例えば、6.94nMより下である場合、減少している、または不十分である。
【0075】
用語「不十分なアンドロゲンホルモンレベルを間接的にもたらすステロイド産生酵素の活性を低下または阻害すること」は、本明細書において使用される場合、病態生理をもたらす、相対的および/または絶対的な減少したまたは不十分なアンドロゲンホルモン不均衡の予防、制御、遅延、軽減または緩和におけるいずれかの改善を意味する。用語「阻害(inhibiting)」は、アンドロゲンホルモンレベルの正常化に限定されることを意図するものではないが、該用語には、アンドロゲンホルモンレベルが臨床参照値まで完全に正常化される可能性も含まれる。
【0076】
用語「維持する(maintain)」または「維持(maintaining)」は、ホルモンレベルに言及している場合、相対的および/もしくは絶対的な減少した/不十分なアンドロゲンホルモンレベル、ならびに/または相対的および/もしくは絶対的な増加した/過剰なストレスホルモンレベルの予防、制御または遅延における改善を意味するのに本明細書で使用される。
【0077】
用語「低下させる(lower)」または「低下(lowering)」は、ホルモンレベルに言及している場合、相対的および/または絶対的な増加した/過剰なストレスホルモンレベルの軽減における何らかの改善を意味するのに本明細書で使用される。
【0078】
用語「増加させる(increase)」または「増加(increasing)」は、アンドロゲンホルモンレベルに言及している場合、相対的および/または絶対的な減少した/不十分なアンドロゲンホルモンレベルの緩和における何らかの改善を意味するのに本明細書で使用される。
【0079】
本明細書において使用される場合、用語「異常な」は、正常な活性または特徴(feature)とは異なる活性または特徴を指す。
【0080】
用語「異常な活性」は、本明細書において使用される場合、正常な機能の何らかの乱れを指す。異常な活性は、正常な活性より強い場合もあるし弱い場合もある。1つの実施形態では、「異常な活性」は、例えば、本明細書に定義されているような、およびホルモンの過剰または低下活性(over- or under-activity)のどちらかを指す。
【0081】
用語「活性」は、本明細書において使用される場合、分子が実行またはコードできる何らかの特定の活性を指す。例えば活性は、分子が、特異親和性を有する特異的結合パートナーと結合できる、特異的反応を触媒できる、特異的反応を阻害できる、または、特定の細胞反応をもたらすことができるものであってもよい。
【0082】
用語「発現」は、本明細書において使用される場合、例えばManiatisら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press:第2版、1989年に定義されているように理解されるべきであり、例えば、該用語は、本明細書に定義されているようなホルモンなどの分子の蓄積を指す。
【0083】
用語「多面的副腎ホルモン修飾剤(pleiotropic adrenal hormone-modifying agent)」は、本明細書において使用される場合、アルドステロンおよびコルチゾールの両方の合成を阻害する一方で、ACTH、11−デオキシコルチコステロンのレベル、ならびに副腎アンドロゲン、アンドロステンジオンおよびデヒドロエピアンドロステロンの合成を増加させる、本明細書に定義されているような式(I)の化合物などの分子として理解されるべきである。
【0084】
用語「置換された」は、本明細書において使用される場合、1つ以上の置換基、例えば1個または2個の置換基、例えば式(I)の化合物について本明細書に定義されているような置換基を指す。
【0085】
用語「クッシング症候群」は、副腎皮質機能亢進症(hyperadrenocorticism)または副腎皮質亢進症(hypercorticism)とも呼ばれる。クッシング症候群には、副腎皮質腫瘍、下垂体腫瘍または異所性腫瘍に起因する高コルチコイド症(hypercortisolism)が含まれ得る。
【0086】
本発明の目的のため、本明細書に定義されているような 式(I)の化合物は、遊離型および任意の医薬的に許容可能なその塩の両方を指す。
【実施例】
【0087】
実験セクション
以下の例は、上記の本発明を例示する。しかし、いかなる形でも本発明の範囲を限定することは意図されない。他の実施形態は、前述の詳細な記載を読むうちに当業者に明らかとなろう。本発明の範囲は、上記の例に限定されないが、以下の特許請求の範囲により包含される。
【実施例1】
【0088】
インビトロ ラットCYP11B1アッセイ
Complete EDTA−freeプロテアーゼインヒビター錠は、Roche Applied Science社(インディアナポリス、IN)から得た。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、抗生物質、ジェネティシン、ハイグロマイシン、およびウシ胎仔血清(FBS)は、Invitrogen社(カールスバッド、CA)の製品であった。NADPH Regeneration Solution AおよびSolution Bは、BD Biosciences Clontech社(パロアルト、CA)から購入した。抗ヒツジPVT SPAビーズおよび[1,2,6,7−H(N)]コルチコステロンは、それぞれAmersham社(ピスカタウェイ、NJ)およびPerkinElmer社(ボストン、MA)から入手した。
【0089】
細胞系V79−4 CYP11B1−アドレノドキシン−アドレノドキシン還元酵素#259を、10%FBS、0.5×抗生物質、800μg/mlジェネティシン、および250μg/mlハイグロマイシン(二重選択培地)を補充したDMEMで維持した。酵素調製については、#259細胞を二重選択培地で150mmディッシュに播種した。2日間の増殖後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中でかき集め、回収し、1,300rpmで6分間遠心分離した。各ペレット(10ディッシュの細胞を意味する)を3mlの氷冷均質化緩衝液(8.5mM MgCl、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、50mM Tris/HCl、pH7.4、および100ml緩衝液あたりcomplete EDTA−freeプロテアーゼインヒビター錠1錠)で再懸濁し、Branson Sonifier450を用いて6パルスで超音波処理し、次いで氷上に5分間置いた。該超音波処理手順は、超音波処理と超音波処理の間に氷上で5分間静置してさらに3回繰り返した。超音波処理した材料を、次いで500×gで4分間回転させて破壊されていない細胞を除去した。上清を5%の最終グリセロール濃度にし、液体窒素で急速冷凍し、−80℃で貯蔵した。
【0090】
冷凍CYP11B1調製物からの材料を実験当日に氷上で解凍し、次いで8.5mM MgCl、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、および50mM Tris/HCl、pH7.4を含有する氷冷アッセイ緩衝液で0.5〜6mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。CYP11B1アッセイは、96ウェルU底非組織培養処理プレートで実施した。実験に応じて、35μl中50から300μgのタンパク質を、75μlのアッセイ緩衝液または所望濃度での化合物および20μlの基質混合物(アッセイ緩衝液中1.08×NADPH Regeneration Solution A、6.5×NADPH Regeneration Solution B、811μM NADPH、および3.25μM 11−デオキシコルチコステロン)と共に、25℃で最大4時間、震盪培養器でインキュベートした。10μlの1.4%トリトンX−100を添加し、プレートを短時間震盪して反応を停止した。プレートを次いで2,400rpmで6分間遠心分離し、50μlの上清をシンチレーション近接アッセイ(SPA)によるコルチコステロン含量の測定のため除去した。
【0091】
コルチコステロンの測定は、96ウェルプレートフォーマットを用いて実施した。各試験試料(50μl)は、200μlの合計容量中0.1%トリトンX−100、0.1%ウシ血清アルブミン、および12%グリセロールを含有するPBSで、0.02μCiの[1,2,6,7−H(N)]コルチコステロンおよび0.3μgの抗コルチコステロン抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。抗ヒツジPVT SPAビーズ(50μl)を次いで各ウェルに添加し、Microbetaプレートカウンターでカウントする前に室温で一晩インキュベートした。各試料中のコルチコステロンの量は、該ホルモンの既知量を用いて生成した標準曲線と比較することによって計算した。
【0092】
阻害剤の完全濃度反応曲線は、少なくとも3回実施した。IC50値は、IDBS XLfitからの非線形最小二乗曲線適合プログラムを用いて得た。本発明の範囲内の化合物、特に本明細書に開示された特定の化合物は、0.3nMから600nMの範囲のIC50を有する活性なCYP11B1阻害剤であることが見出された。
【実施例2】
【0093】
インビトロ ラットCYP11B2アッセイ
細胞系V79−4 rCYP11B2−アドレノドキシン−アドレノドキシン還元酵素#305を、10%FBS、0.5×抗生物質、800μg/mlジェネティシン、および250μg/mlハイグロマイシン(二重選択培地)を補充したDMEMで維持した。酵素調製については、#305細胞を、75〜85%コンフルエンスで増殖するT−185フラスコ培養物から、1:15の概算表面積分割により150mmディッシュ(二重選択培地)に播種した。2日間の増殖後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中でかき集め、回収し、1,300rpmで6分間遠心分離した。各ペレット(10ディッシュの細胞を意味する)を3mlの氷冷均質化緩衝液(8.5mM MgCl2、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、50mM Tris/HCl、pH7.4、および100ml緩衝液あたりcomplete EDTA−freeプロテアーゼインヒビター錠1錠)で再懸濁し、Branson Sonifier450を用いて6パルスで超音波処理し、次いで氷上に5分間置いた。該超音波処理手順は、超音波処理と超音波処理の間に氷上で5分間インキュベーションしてさらに3回繰り返した。超音波処理した材料を、次いで500×gで4分間回転させて破壊されていない細胞を除去した。上清を5%の最終グリセロール濃度にし、液体窒素で急速冷凍し、−80℃で貯蔵した。
【0094】
冷凍CYP11B2調製物からの材料を実験当日に氷上で解凍し、次いで8.5mM MgCl2、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、および50mM Tris/HCl、pH7.4を含有する氷冷アッセイ緩衝液で0.25〜1.5mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。CYP11B2アッセイは、96ウェルU底非組織培養処理プレートで実施した。実験に応じて、55μl中14から84μgのタンパク質を、75μlのアッセイ緩衝液または所望濃度での化合物および20μlの基質混合物(アッセイ緩衝液中1.25×NADPH Regeneration Solution A、7.5×NADPH Regeneration Solution B、935.75μM NADPH、および15μM 11−デオキシコルチコステロン)と共に、25℃で最大5時間、震盪培養器でインキュベートした。10μlの1.6%トリトンX−100を添加し、プレートを短時間震盪して反応を停止した。プレートを次いで2,400rpmで6分間遠心分離し、100μlの上清をシンチレーション近接アッセイ(SPA)によるアルドステロン含量の測定のため除去した。
【0095】
アルドステロンの測定は、96ウェルプレートフォーマットを用いて実施する。各試験試料(2〜10μlの細胞培養培地または100μlの細胞ホモジネート)は、200μlの合計容量中0.1%トリトンX−100、0.1%ウシ血清アルブミン、および12%グリセロールを含有するPBSで、0.02μCiの[1,2,6,7−3H(N)]アルドステロンおよび0.3μgの抗アルドステロン抗体と共に、室温で1時間インキュベートする。抗マウスPVT SPAビーズ(50μl)を次いで各ウェルに添加し、Microbetaプレートカウンターでカウントする前に室温で4時間インキュベートする。各試料中のアルドステロンの量は、該ホルモンの既知量を用いて生成した標準曲線と比較することによって計算する。
【0096】
阻害剤の完全濃度反応曲線は、少なくとも3回実施する。IC50値は、DBS XLfitからの非線形最小二乗曲線適合プログラムを用いて得る。
【実施例3】
【0097】
インビトロ ヒトCYP11B1アッセイ
Complete EDTA−freeプロテアーゼインヒビター錠は、Roche Applied Science社(インディアナポリス、IN)から得た。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、抗生物質、ジェネティシン、ハイグロマイシン、およびウシ胎仔血清(FBS)は、Invitrogen社(カールスバッド、CA)の製品であった。NADPH Regeneration Solution AおよびSolution Bは、BD Biosciences Clontech社(パロアルト、CA)から購入した。抗マウスPVT SPAビーズおよび[1,2,6,7−H(N)]ヒドロコルチゾンは、それぞれAmersham社(ピスカタウェイ、NJ)およびPerkinElmer社(ボストン、MA)から入手した。
【0098】
細胞系V79−4 CYP11B1−アドレノドキシン−アドレノドキシン還元酵素#618を、10%FBS、0.5×抗生物質、800μg/mlジェネティシン、および250μg/mlハイグロマイシン(二重選択培地)を補充したDMEMで維持した。酵素調製については、#618細胞を、二重選択培地でディッシュあたり6.75×10細胞で150mmディッシュに播種した。4日間の増殖後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中でかき集め、回収し、1,300rpmで6分間遠心分離した。各ペレット(10ディッシュの細胞を意味する)を3mlの氷冷均質化緩衝液(8.5mM MgCl、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、50mM Tris/HCl、pH7.4、および100ml緩衝液あたりcomplete EDTA−freeプロテアーゼインヒビター錠1錠)で再懸濁し、Branson Sonifier450を用いて6パルスで超音波処理し、次いで氷上に5分間置いた。該超音波処理手順は、超音波処理と超音波処理の間に氷上で5分間静置してさらに3回繰り返した。超音波処理した材料を、次いで500×gで4分間回転させて破壊されていない細胞を除去した。上清を5%の最終グリセロール濃度にし、液体窒素で急速冷凍し、−80℃で貯蔵した。
【0099】
冷凍CYP11B1調製物からの材料を実験当日に氷上で解凍し、次いで8.5mM MgCl、3.13mM KCl、7.59mM NaCl、および50mM Tris/HCl、pH7.4を含有する氷冷アッセイ緩衝液で0.5〜6mg/mlのタンパク質濃度に希釈した。CYP11B1アッセイは、96ウェルU底非組織培養処理プレートで実施した。実験に応じて、35μl中50から300μgのタンパク質を、75μlのアッセイ緩衝液または所望濃度での化合物および20μlの基質混合物(アッセイ緩衝液中1.08×NADPH Regeneration Solution A、6.5×NADPH Regeneration Solution B、811μM NADPH、および3.25μM 11−デオキシコルチゾール)と共に、25℃で最大4時間、震盪培養器でインキュベートした。10μlの1.4%トリトンX−100を添加し、プレートを短時間震盪して反応を停止した。プレートを次いで2,400rpmで6分間遠心分離し、50μlの上清をシンチレーション近接アッセイ(SPA)によるコルチゾール含量の測定のため除去した。コルチゾールの測定は、96ウェルプレートフォーマットを用いて実施した。各試験試料(50μl)は、200μlの合計容量中0.1%トリトンX−100、0.1%ウシ血清アルブミン、および12%グリセロールを含有するPBSで、0.02μCiの[1,2,6,7−H(N)]ヒドロコルチゾンおよび0.3μgの抗コルチゾール抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。抗マウスPVT SPAビーズ(50μl)を次いで各ウェルに添加し、Microbetaプレートカウンターでカウントする前に室温で一晩インキュベートした。各試料中のコルチゾールの量は、該ホルモンの既知量を用いて生成した標準曲線と比較することによって計算した。阻害剤の完全濃度反応曲線は、少なくとも3回実施した。IC50値は、IDBS XLfitからの非線形最小二乗曲線適合プログラムを用いて得た。本発明の範囲内の化合物、特に本明細書に開示された特定の化合物は、0.2nMから200nMの範囲のIC50を有する活性なCYP11B1阻害剤であることが見出された。
【実施例4】
【0100】
インビトロ ヒトCYP11B2(アルデステロン)アッセイ
ヒト副腎皮質癌NCI−H295R細胞系は、ATCC(American Type Culture Collection)(マナッサス、VA)から得た。インスリン/トランスフェリン/セレン(ITS)−Aサプリメント(100×)、DMEM/F−12、抗生物質/抗真菌剤(100×)、およびウシ胎仔血清(FBS)は、Invitrogen社(カールスバッド、CA)から購入した。抗マウスPVTシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズおよびNBS96ウェルプレートは、それぞれGE Health Sciences社(ピスカタウェイ、NJ)およびCorning社(アクトン、MA)から得た。固体黒色(solid black)96ウェル平底プレートは、Costar社(コーニング、NY)から購入した。アルドステロンおよびアンジオテンシン(Ang II)は、Sigma社(セントルイス、MO)から購入した。D−[1,2,6,7−H(N)]アルドステロンは、PerkinElmer社(ボストン、MA)から入手した。Nu血清はBD Biosciences社(フランクリンレイクス、NJ)の製品であった。
【0101】
アルドステロン活性のインビトロ測定については、ヒト副腎皮質癌NCI−H295R細胞を、10%FCS、2.5%Nu血清、1μg ITS/ml、および1×抗生物質/抗真菌剤を補充したDMEM/F12を含有する100μlの増殖培地で、25,000細胞/ウェルの密度でNBS 96ウェルプレートに播種する。培地は、5%CO/95%空気の雰囲気下、37℃で3日間培養後に交換する。翌日、細胞を100μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすぎ、1μM Ang IIおよび種々の濃度で化合物を含有する100μlの処理培地と共に、4通りのウェルで24時間、37℃でインキュベートする。インキュベーションの最後に、50μlの培地を、マウス抗アルドステロンモノクローナル抗体を用いたSPAによるアルドステロン産生の測定のため各ウェルから取り出す。
【0102】
アルドステロン活性の測定も、96ウェルプレートフォーマットを用いて実施することができる。各試験試料は、200μlの合計容量中0.1%トリトンX−100、0.1%ウシ血清アルブミン、および12%グリセロールを含有するPBSで、0.02μCiのD−[1,2,6,7−H(N)]アルドステロンおよび0.3μgの抗アルドステロン抗体と共に、室温で1時間インキュベートする。抗マウスPVT SPAビーズ(50μl)を次いで各ウェルに添加し、Microbetaプレートカウンターでカウントする前に室温で一晩インキュベートする。各試料中のアルドステロンの量は、該ホルモンの既知量を用いて生成した標準曲線と比較することによって計算する。
【実施例5】
【0103】
CYP11B1およびCYP11B2のIC50値の判定
アルドステロン、コルチゾール、コルチコステロンおよびエストラジオール/エストロンの培養培地への排出は、市販の特異的モノクローナル抗体により、製造者の指示に従って放射免疫アッセイで検出および定量化することができる。特定のステロイドの放出の阻害は、添加した試験化合物による各酵素阻害の尺度として使用することができる。化合物による酵素活性の用量依存的阻害は、IC50により特徴づけられる阻害プロットを用いて計算される。データの重み付けなしに阻害プロットを構築するために、活性な試験化合物のIC50値は単回帰分析により確認される。阻害プロットは、最小二乗法を用いて生データポイントに4−パラメータロジスティック関数を適合させることによって計算される。4−パラメータロジスティック関数の方程式は、以下のように計算される:Y=(d−a)/((1+(x/c)b))+a(式中、a=最小データレベル、b=勾配、Ic=ICED、d=最大データレベル、X=阻害剤濃度)。
【0104】
アルドステロン産生の阻害活性は、所与の濃度でのパーセンテージ阻害(%阻害)(例えば1μMでの%阻害)で表すこともでき、%阻害は、細胞が本発明の化合物の所与の濃度(例えば1μMの濃度)で処理される場合のアルドステロンレベル 対 細胞が本発明の化合物がない場合のアルドステロン排出であり:
%阻害アルドステロン産生=[(Y−X)/Y]×100
式中、Xは、細胞が式IからIVBのいずれか1つによる化合物、または医薬的に許容可能なその塩で処理される場合のアルドステロンのレベルであり、およびYは、細胞が式IからIVBのいずれか1つによる化合物、または医薬的に許容可能なその塩がない場合のアルドステロンのレベルである。
【0105】
CYP11B1産生の阻害活性は、所与の濃度でのパーセンテージ阻害(%阻害)(例えば1μMでの%阻害)で表すこともでき、%阻害は、細胞が本発明の化合物の所与の濃度(例えば1μMの濃度)で処理される場合のコルチゾールレベル 対 細胞が本発明の化合物がない場合のコルチゾール排出である。
%阻害コルチゾール産生=[(Y’−X’)/Y’]×100
式中、X’は、細胞が式IからIVBの化合物で処理される場合のコルチゾールのレベルであり、およびY’は、細胞が式IからIVBの化合物がない場合のコルチゾールのレベルである。上記のようなCYP11B1(コルチゾール)およびCYP11B2(アルドステロン)を測定する試験アッセイを用いて、本発明の化合物は、表1に示すような阻害有効性を示した。
【0106】
【表1】

【実施例6】
【0107】
インビボ CYP11B1アッセイ
血漿アルドステロン濃度(PAC)および血漿グルココルチコイド(コルチコステロン)濃度(PCC)に対する化合物のインビボ効果を、覚醒ラット(conscious rat)において評価した。
【0108】
オスSprague−Dawleyラット(約400〜600g体重)に対して、大腿動脈および静脈カテーテルを外科的に装着した。カテーテルは、ラットを常に自由に動けるようにするステンレススチールスプリングおよびスイベルシステムにより、腰部(lower back)から露出させた。ラットは、実験を開始する前に少なくとも1週間、手術から回復させた。
【0109】
実験の朝に、前処理血液試料を動脈カテーテルからヘパリンで採取した。血液試料を冷蔵遠心分離機で回転させて血漿を生成した。血漿は、(放射免疫アッセイにより)PACおよびPCCを後に測定するまで−70℃で冷凍貯蔵した。副腎皮質刺激ホルモン(本明細書でACTHと呼ばれるACTH(1〜24))を、次いで、静脈内(i.v.)ボーラス(100ng/kg)と、この後に続く9時間の持続i.v.注入(30ng/kg/分)として投与した。1時間の注入後、ベースライン(タイム0)血液試料を動脈カテーテルから取り出し、処理し、上記のように貯蔵した。次いで、強制経口投与によりp.o.または動脈カテーテル(i.a.)を介した非経口で試験化合物をラットに投与した(典型的には0.01から100mg/kg)。化合物は、生理学的に適合可能な容量(典型的には1〜2ml/kg)で、適切なビヒクル(例えば、水(p.o.)または生理食塩水(i.a.))で処方した。さらなる血液試料を、化合物を投与後0.083(i.a.のみ)、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、および24時間で取り出し、処理し、(LC/MS/MSによる)PAC、PCC、および血漿化合物濃度の後の判定のため上記のように貯蔵した。経口生物学的利用能および伝統的薬物動態(PK)パラメータは、血漿化合物濃度から推定した。
【0110】
対照ラットでは、ACTH投与は、9時間の実験の期間中、PACにおける約10倍(約0.26nMから約2.5nM)およびPCCにおける約4倍から5倍(約300nMから約1340nM)の持続的上昇をもたらした。対照的に、試験化合物の投与は、化合物固有のCYP11B2およびCYP11B1阻害能力ならびにADME(吸収、分布、代謝、排泄)特性により、PACおよびPCCを0から97%、時間および用量依存的に低下させた。各用量での血漿化合物濃度に基づき、各化合物のPK/PD(薬力学的)プロファイル(PACおよびPCCの減少)を判定した。以下の表2は、代表的な化合物のCYP11B1およびCYP11B2阻害活性をまとめたものである。
【0111】
【表2】

【実施例7】
【0112】
原発性アルドステロン症と診断された患者における、式(I)の化合物、ジヒドロゲンホスフェート4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルのホルモン効果を評価するため、パイロット・単盲検・強制滴定試験(pilot, single-blind, forced-titration study)を実施した。適用可能な地域の規制による臨床試験実施の基準(good clinical practice)に関するICH調和三極ガイドラインに従って、臨床試験をデザインし、実施し、および報告した。各患者は、選別審査/ウォッシュアウト期間、2週間のプラセボ導入期間(run-in period)、4週間の治療期間、および1週間のプラセボウォッシュアウトに参加した。治療期間は、1日2回、用量0.5mg、2週間と、これに続く1.0mgへの用量増加、1日2回、さらに2週間との式(I)の化合物の経口投与から成った。血液試料は、ベースライン、1および2日目、8日目、15日目、22日目、29および30日目(全て投与前すなわち、最終投与の12時間後)、および最終試験36日目に採取した。いかなる姿勢またはストレスに誘発された値の変化も回避するため、被験体は少なくとも60分間安静にした後で、各試料を、アルドステロンおよび免疫応答活性レニン、11−デオキシコルチコステロン、コルチゾール、11−デオキシコルチゾールならびにアドレノコルチコトロピン(ACTH)について評価した。血漿アルドステロンは、市販の放射免疫アッセイキット(DPC社、フランス)を用いて測定した。血漿活性レニンは、市販の免疫放射測定キット(CisBio社、フランス)で、2つのモノクローナル抗体3E8および125I−4G1を用いて測定した。血漿11−デオキシコルチコステロン、コルチゾールおよび11−デオキシコルチゾールは、標準化LC−MS/MS方法を用いて測定した。血漿ACTHは、市販の免疫放射測定キット(CisBio社、フランス)を用いて測定した。
【0113】
薬力学的バイオマーカーの統計分析は、記述統計ならびに、図式および/または回帰方法を用いて要約した。2週間、2回にわたる、原発性アルドステロン症患者への式(I)の化合物、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートの投与は、図2に示されており、増加した活性レニンレベルに反映される(ただし、前駆体ステロイド11−デオキシコルチコステロンの予想外に高い蓄積(build-up)にも反映される)、期待された強力なアルドステロン抑制を誘発した。11−デオキシコルチコステロン(P11DOCS)の蓄積は、増加したACTHレベルにより刺激された。増加したアドレノコルチコトロピンレベルは、減少するコルチゾールレベルおよび酵素基質11−デオキシコルチゾール(P11DOC)の蓄積に反映される、11−ベータ−ヒドロキシラーゼを介したコルチゾール合成の阻害の結果生じた。阻害されたストレスホルモン合成の存在下での増加した11−デオキシコルチコステロンレベルは、副腎アンドロゲンアンドロステンジオンおよびデヒドロエピアンドロステロンの合成増加にシフトする(図1、副腎ステロイド産生に関する略図参照)。故に、式(I)の化合物は、これがアルドステロンおよびコルチゾールの両方の合成を阻害する一方で、ACTH、11−デオキシコルチコステロンのレベル、ならびに最終的には副腎アンドロゲン、アンドロステンジオンおよびデヒドロエピアンドロステロンの合成を増加させることから、多面的副腎ホルモン修飾剤の薬理学的プロファイルを示した。
【実施例8】
【0114】
クッシング病患者における非盲検・単群・連続的用量増加・多施設試験(open-label, single arm, sequential does-escalation, multi-center study)は、以下の本明細書に記載のように実施する。
【0115】
試験は、10〜14日のベースライン期間、増量(escalating dose)による隔週の治療から成る10週間の治療期間および14日のウォッシュアウト期間と、これに続く最終薬剤投与14日後の試験完了評価から成る。試験薬剤は、2mg、5mg、10mg、20mgおよび50mg(1日2回(bid))の増量、各々2週間で適用する(以下の試験タイムライン参照)。最適治療用量は、根底にある病的状態の重症度および反応性に依存する。
【0116】
【化8】

【0117】
集団:試験集団は、下垂体からのACTH[副腎皮質刺激ホルモン]産生増加に起因する内因性高コルチコイド症(クッシング病)を有する男性および女性の患者から成る。
18〜75歳の男性または女性の患者
患者は、
・UFC[尿中遊離コルチゾール]>1.5×ULN[正常の上限](14日以内に採取された3つの24時間尿試料の平均値)
・10pg/mLを超える午前中(morning)血漿ACTH
により証明される場合に、クッシング病と確認される。
【0118】
被験体は、クッシング病の診断を既に受けている場合、これらの組入れ基準を満たすために現在の薬物療法をウォッシュアウトすることが認められる。
【0119】
療法:被験体は、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェート 2mg、b.i.d.の用量で開始し、2週間ごとに用量を増加する。最適治療用量は、介入の治療効果および忍容性により判定される。
【0120】
有効性/薬力学的評価: 有効性評価には、尿中遊離コルチゾール、血漿ACTH、コルチゾールおよびレニン、血漿および尿中アルドステロン、血漿および尿中ナトリウムおよびカリウム、唾液コルチゾールおよびアルドステロンならびに血漿インスリンが含まれる。
【0121】
安全性評価:安全性評価には、理学的検査、ECG(心電図)、バイタルサイン、標準的臨床検査室評価(血液検査、血液化学検査、尿検査)、有害事象および重篤な有害事象モニタリングが含まれる。
【0122】
データ分析:主要有効性変数(primary efficacy variable)は、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートへのレスポンダーの割合として定義される。患者は、10週目24時間尿試料からの平均UFCレベルが≦1×ULNであれば、レスポンダーと見なされる。疾患もしくは治療に関連した理由(例えば死亡、有害事象、臨床疾患進行等)のため中止する患者、または平均10週目24時間UFCレベルが正常の限界より高い患者は、非レスポンダーとして分類される。1回のベースラインまたはベースライン後24時間UFC測定のみを有する患者は、主要有効性分析に含まれないであろう。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする疾患または障害の治療方法であって、
式(I):
【化1】


[式中、nは1または3であり、
Rは、水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、または−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は−−(C〜C)アルコキシで必要により置換されており、
、R、およびRは、独立に水素、ハロゲン、シアノまたは−−(C〜C10)アリールであり、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンで必要により置換されており、
およびRは、水素である]
で表される化合物、または医薬的に許容可能なその塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
化合物が、式
【化2】


を有する4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
疾患または障害が、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群、代謝性症候群または高コルチゾール血症である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
疾患または障害が、急性心不全、急性非代償性心不全、慢性心不全、運動耐容能障害を伴う慢性心不全、筋力低下を伴う慢性心不全、心臓悪液質、COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質、腫瘍誘発悪液質、またはウイルス(HIV)誘発悪液質から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレスクッシング症候群(chronic stress cushing's syndrome)、代謝性症候群または高コルチゾール血症の治療方法であって、
式(I):
【化3】


[式中、nは1または3であり、
Rは、水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、または−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は−−(C〜C)アルコキシで必要により置換されており、
、R、およびRは、独立に水素、ハロゲン、シアノまたは−−(C〜C10)アリールであり、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンで必要により置換されており、
およびRは、水素である]
で表される化合物、または医薬的に許容可能なその塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項7】
化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
疾患または障害が、急性心不全、急性非代償性心不全、慢性心不全、運動耐容能障害を伴う慢性心不全、筋力低下を伴う慢性心不全、心臓悪液質、COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質、腫瘍誘発悪液質、またはウイルス(HIV)誘発悪液質から選択される、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害または疾患を治療するための医薬組成物を調製するための、
式(I)
【化4】


[式中、nは1または3であり、
Rは、水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は、−−(C〜C)アルコキシから選択される1つまたは2つの置換基で必要により置換されており、
、R、およびRは、独立に水素、ハロゲン、シアノおよび−−(C〜C10)アリールから選択され、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンから選択される1つまたは2つの置換基で必要により置換されており、
およびRは、水素である]
の化合物、または医薬的に許容可能なその塩の使用。
【請求項11】
化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートである、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
疾患または障害が、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群、代謝性症候群または高コルチゾール血症である、請求項10〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
被験体における増加したストレスホルモンレベルおよび/または減少したアンドロゲンホルモンレベルを特徴とする障害または疾患の治療において使用するための、式(I)
【化5】


[式中、nは1または3であり、
Rは、水素または−−C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは独立に−−(C〜C)アルキル、または−−(C〜C)アルキル−(C〜C)アリールであり、RおよびRの各々は、−−(C〜C)アルコキシで必要により置換されており、
、R、およびRは、独立に水素、ハロゲン、シアノまたは−−(C〜C10)アリールであり、前記−−(C〜C10)アリールは、R、R、およびRの1つ以下が水素であることを条件に、ハロゲンで必要により置換されており、
およびRは、水素である]
の化合物、または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項15】
式(I)の化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式(I)の化合物が、4−[(5R)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−5−イル]−3−フルロルベンゾニトリルジヒドロゲンホスフェートである、請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
疾患または障害が、心不全、悪液質、急性冠症候群、慢性ストレス症候群、クッシング症候群、代謝性症候群または高コルチゾール血症である、請求項14〜16のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
疾患または障害がクッシング症候群である、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
疾患または障害が、急性心不全、急性非代償性心不全、慢性心不全、運動耐容能障害を伴う慢性心不全、筋力低下を伴う慢性心不全、心臓悪液質、COPD誘発悪液質、肝硬変誘発悪液質、腫瘍誘発悪液質、またはウイルス(HIV)誘発悪液質から選択される、請求項13または17に記載の化合物。

【公表番号】特表2013−517280(P2013−517280A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549066(P2012−549066)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/021100
【国際公開番号】WO2011/088188
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】