説明

副腎肥大抑制剤及びそれを含有する飼料組成物又は治療用組成物

【課題】人体にやさしく安全な柑橘類又はその加工物に含まれる成分を用いて、ストレス負荷に起因する分泌系統の機能低下に伴う副腎の肥大を抑制させる作用に優れた素材、及び密集飼育による精神的ストレス負荷によって生じる副腎肥大を抑制しうる安全性に優れた飼料組成物又は治療用組成物を提供する。
【解決手段】柑橘類又はその加工物(好ましくは温州ミカンの果皮又は圧搾残渣)に多く含まれるフラボン化合物であるナリンジン及び/又はナリルチンを有効成分とする副腎肥大抑制剤を、動物又は魚介類用の飼料組成物、及び経口投与剤や皮膚外用剤等の治療用組成物に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナリルチン及びナリンジンからなる群から選択されるフラボン系化合物又はその塩を有効成分とする副腎肥大抑制剤及びそれを含有する飼料組成物又は治療用組成物に関する。詳しくは、本発明は、精神的ストレス負荷やステロイド剤の摂取等によって生じる副腎肥大を有効に抑制しうる素材、及びそれを含有する飼料組成物又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口の増加と共に、食糧の確保が重要な課題となっており、それを受けて、農業、畜産業においては労働集約化と生産効率化が広く行われている。例えば、レッグホーンなどの飼育においては、運動が殆どできないケージで、極めて多数の動物を飼育する(密集飼育条件)といったような効率化が行われている。
【0003】
しかしながら、密集飼育条件では、この飼育条件によるストレスが動物に荷重に負荷を与え、これによって副腎肥大などを引き起こし、家畜や家禽類等の生産性や品質が低下する場合が少なくない。
【0004】
その対策としては、例えば、抗生物質などを飼料に配合し、体力の向上をはかる方法などが考案されていた(例えば、特許文献1を参照)が、薬剤耐性病原菌の登場を誘発するなどの問題点が存在した。また、化学物質や抗生物質等の薬物を含む飼料を与えれば、それを摂取する人体への悪影響が懸念された。
【0005】
そこで、家畜や家禽類等の動物や魚介類の密集飼育による精神的ストレス負荷によって生じる副腎肥大を抑制してその生産性や品質を向上させ、さらにはそれを摂取する人体への弊害を防ぐためにも、副腎肥大に対する優れた抑制能を有し、かつ化学物質や抗生物質等の薬物に依存しない安全な飼料の開発が望まれている。
【0006】
また、副腎肥大の問題は、近年、人体についても問題となっている。すなわち、抗炎症剤や抗更年期障害剤としてステロイド剤が多用されているが、ステロイド剤を摂取するとその副作用として副腎肥大が生じることが知られてきている。そこで、副腎肥大を抑制しうる治療組成物の開発が望まれている。
【0007】
一方、温州ミカン等の柑橘類の皮は漢方で陳皮と称され、健胃、鎮咳、去痰、感冒などを目的とする処方に使用されてきたことから、これまでに温州ミカンに含まれる成分の生理的な作用に関する活発な研究が行われてきた。
【0008】
本発明者は、これまで陳皮と同様の成分を含む温州ミカンの搾汁(ジュース)圧搾残渣がストレスモデルに及ぼす作用について検討してきた。その結果、これらを外用で用いることにより皮膚機能低下改善作用が発揮されること(特許文献2)、及び経口摂取することによってIgA産生恒常化作用が発揮されること(特許文献3)を見いだし、それぞれ先に特許出願した。
【0009】
しかしながら、柑橘類に含まれる成分の精神的ストレス負荷による悪影響に対する作用に関しては、未だ十分な研究がなされているとは言えず、また温州ミカンの皮や圧搾残渣のほとんどが産業廃棄物として処理されている現状においては、ストレス改善作用の観点からこれらのさらなる有効利用が求められている。
【0010】
これまで温州ミカンには、ナリンジン(naringin)、ナリルチン(narirutin)等のフラボン系化合物が含まれることが知られている。これらのうち、ナリンジンには血中脂肪酸の分解作用、抗アレルギー作用、免疫力向上作用、食欲抑制作用などがあり、またこれら及びそのアグリコンには前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化促進作用があることが徐々に明らかにされつつある。
【0011】
しかし、ナリンジン及び/又はナリルチンの精神的ストレス負荷による副腎肥大等の分泌系統への悪影響に対する優れた抑制作用についてはこれまで知られておらず、このような観点からの研究例は報告されていない。また、動物又は魚介類の密集飼育時に発生する副腎肥大を抑制するために飼料と配合した飼料組成物や人体への投与を目的とした治療用組成物は全く知られていない。
【0012】
【特許文献1】特開2008−001707号公報
【特許文献2】特開2001−213775号公報
【特許文献3】特開2005−255574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、密集飼育に伴う精神的ストレス負荷による副腎の肥大を抑制する作用を有し且つ人体にやさしく副作用の少ない素材、及びそれを含む動物又は魚介類用の飼料組成物又は人体への治療用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した課題に鑑み鋭意検討した結果、温州ミカン等の柑橘類又はその加工物に含まれるフラボン系化合物の一種であるナリンジン及び/又はナリルチンが、精神的ストレス負荷がもたらす生体の分泌系統への悪影響や、抗炎症剤及び抗更年期障害剤等に使用されるステロイド剤の摂取などに起因する副腎肥大に対し、優れた抑制作用を発揮することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)に示す副腎肥大抑制剤及びそれを含有する飼料組成物又は治療用組成物に関する。
(1)ナリルチン及びナリンジンからなる群から選択されるフラボン系化合物又はその塩を有効成分とする、副腎肥大抑制剤。
(2)前記副腎肥大が、密集飼育条件下で生じるものであることを特徴とする、(1)記載の副腎肥大抑制剤。
【0016】
(3)(1)又は(2)記載の副腎肥大抑制剤を含有してなる、飼料組成物。
(4)動物又は魚介類の密集飼育用の飼料であることを特徴とする、(3)記載の飼料組成物。
(5)副腎肥大抑制剤の基源が柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣であることを特徴とする(3)又は(4)記載の飼料組成物。
(6)前記柑橘類が、ミカン、ポンカン、ハッサク及びネーブルオレンジからなる群から選択されるものである、(5)記載の飼料組成物。
【0017】
(7)(1)又は(2)記載の副腎肥大抑制剤を含有してなる、治療用組成物。
(8)副腎肥大抑制剤の基源が柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣であることを特徴とする(7)記載の治療用組成物。
(9)前記柑橘類が、ミカン、ポンカン、ハッサク及びネーブルオレンジからなる群から選択されるものである、(8)記載の治療用組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の副腎肥大抑制剤は、ストレス負荷による分泌系統への悪影響、特に密集飼育による精神的ストレス負荷によって引き起こされる副腎肥大に対し優れた抑制作用を示す。また、本発明の副腎肥大抑制剤の有効成分であるナリンジン及び/又はナリルチンは、柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣を基源とするものであり、その作用は緩和で人体にやさしく副作用も少ないため、安全性においても優れている。さらに、産業廃棄物として処理されることの多い温州ミカン等の柑橘類の果皮や圧搾残渣を有効に利用したものであり、環境性及び経済性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(1)ナリンジン及び/又はナリルチン
本発明の副腎肥大抑制剤は、ナリンジン及びナリルチンからなる群から選択されるフラボン系化合物(フラボノイド)を有効成分とする。ナリンジン及び/又はナリルチンは柑橘類に多く含まれる特徴的な配糖体成分であり、以下の化学構造を有する。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
本発明のナリンジン及び/又はナリルチンとしては、そのアグリコンから選択されるものであってもよい。また、ナリンジン及び/又はナリルチンの塩としては、ナトリウム塩が挙げられる。
ナリンジン及び/又はナリルチンは、柑橘類又はその加工物に多く含まれ、特に柑橘類の果皮及び果肉部(さのう)に多く含まれる。ナリンジン及び/又はナリルチンの単離は、従来公知の方法を用いることができる。
【0023】
(2)柑橘類又はその加工物
本発明における柑橘類としては、温州ミカン、ポンカン、ハッサク、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、キンカン、夏ミカン、甘夏ミカン、伊予かん、グレープフルーツ、レモン、ユズ、スダチ、スルガオレンジ、デコポン、ザボン、文旦等が挙げられる。これらのうち、より好ましいものは温州ミカン、ポンカン、ハッサク及びネーブルオレンジからなる群から選択されるものであり、特に好ましいものは温州ミカンである。
【0024】
柑橘類(ミカン)の構造は、表面の果皮、果皮の内壁にある白色部分(中果皮)、種子、通常食される「さのう」(果肉部)、及びじょうのう膜(さのうを包む内袋)によって構成されている。本発明の上記フラボン系化合物は、これら柑橘類の構成部分のうち、特に果皮及びさのうに多く含まれる。
【0025】
柑橘類又はその加工物としては、柑橘類の果皮、搾汁液(果汁又はジュース)、該搾汁液を濃縮した濃縮液、あるいは搾汁液もしくはその濃縮液を乾燥したり、さらに必要に応じて粉末化したりしたもの(固体)、果汁圧縮残渣などが挙げられる。また、柑橘類の果皮をそのまま又は乾燥させたもの(凍結乾燥品、通風乾燥品,天日干し品など)もしくはそれらの粉砕物なども挙げられる。
【0026】
柑橘類の圧搾残渣は、柑橘類を搾汁した後に残るもので、繊維質、ペクチン等を含む。本発明で用いられる圧搾残渣は、かかる搾汁後の残渣をそのまま用いても良く、あるいは乾燥後粉末化したものを用いても良い。
【0027】
本発明のナリンジン及び/又はナリルチンは、柑橘類の果皮及びさのうに多く含まれることから、本発明で用いられる柑橘類又はその加工物としては、柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣(主にさのうの圧搾残渣)が好ましい。さらに、ナリンジン及び/又はナリルチンは柑橘類の果皮に特に多く含まれることから、特に柑橘類の果皮が好ましい。
【0028】
本発明の副腎肥大抑制剤の有効成分であるナリンジン及び/又はナリルチンとしては、柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣から抽出・単離したものを用いても良く、またナリンジン及び/又はナリルチンを多く含む柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣それ自体を、そのまま本発明の副腎肥大抑制剤として用いても良い。
【0029】
(3)副腎肥大抑制剤
本発明の副腎肥大抑制剤は、副腎肥大に対する抑制作用を有する。このような副腎肥大をもたらす要因の一つとしては、精神的ストレスの負荷が挙げられる。精神的ストレスが負荷されると、分泌系のストレス兆候として副腎の肥大が起こるが、本発明の副腎肥大抑制剤は、かかる副腎の肥大に対して顕著な抑制作用を有する。特に、動物又は魚介類の密集飼育によるストレス負荷によって生じる副腎肥大に対する抑制作用に優れている。
【0030】
また、副腎肥大をもたらす別の要因として、ステロイド剤の摂取が挙げられる。ステロイド剤は、抗炎症剤及び抗更年期障害剤等に使用されており、近年これを摂取する機会が多くなっている。
本発明の副腎肥大抑制剤は、上記要因によって起こる副腎肥大に対し特に顕著な抑制効果を示すが、それだけでなくその他の要因によって生じる副腎肥大に対しても優れた抑制効果を有する。
【0031】
(4)飼料組成物
本発明の副腎肥大抑制剤を動物又は魚介類用の飼料に配合して用いる場合、対象となる動物又は魚介類としては、家禽などの動物や、養殖魚介類が挙げられる。より具体的には、豚、牛、馬、山羊、鹿、ウサギ、山羊、羊等の家畜; ブロイラー、採卵鶏などのニワトリ、アヒル、ウズラ、カモ、七面鳥、キジ、ガチョウなどの家禽類; 猿、マウス、ラット、モルモット等の実験動物; ハマチ、マダイ、フグ、マグロ、ヒラメ、シマアジ、マアジ、サケ、ギンザケ、コイ、ウナギ、ニジマス、アユ、エビ類(クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ロブスター、ブラックタイガー等)、カニ類(タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニ等)、貝類(アワビ、サザエ等)などの養殖水産動物が挙げられる。
【0032】
本発明の副腎肥大抑制剤は、上記のような動物又は魚介類用として従来一般的に用いられているものであれば、いかなる飼料に配合して用いることもできる。そのような飼料は、通常、とうもろこし、ふすま、米、麦、綿実粕、マイロ、大豆粕、魚粉、脱脂米糠、油脂、アルファルファ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、各種ビタミン剤(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸)、無機塩(硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト)等の一部又は全部を混合して調製される。
【0033】
飼料中の主要な成分としては、トウモロコシ、粉砕したトウモロコシ、トウモロコシ粉、トウモロコシ胚芽粗粉、マイロ、キビ、カラスムギ、小麦、小麦粉、小麦胚芽粉、大麦、米、ライ麦、燕麦などの穀物類又は加工穀物類副製品;米ヌカ、フスマ、麦ヌカなどの糟糠類、エンドウマメ種子、ピーナッツ粉、大豆粉などのマメ類、ジャガイモ粉などのイモ類;大豆粕、脱脂大豆、綿実粕、菜種粕、ゴマ粕、ヒマワリ粕、サフラワー粕、ココヤシ粗粉などの植物性油粕等;オオムギモルト、ビール粕、酒粕、グルタミン酸発酵粕、トウモロコシ発酵粕、コーングルテンフィード、コーンジャームミール、コンニャク飛粉などの製造粕類;魚粉、肉粉、肉骨粉、ミートミール、ミートボーンミール、血粉、フェザーミール、脱脂粉乳、乾燥ホエー、ヘビーミール、オキアミミール、カゼイン、ゼラチンなどの動物質材料;ビール酵母などの酵母類;トウモロコシデンプン、デキストリンなどの糖類;アルファルファ、乾燥アルファルファ粉、牧草粉、各種リーフミール、大豆タンパク、小麦グルテン、トウモロコシツエインなどの植物性タンパク質;結晶性セルロース、タルク、シリカ、白雲母、ゼオライト等の無機物質の微粉末;炭酸カルシウムなどの無機カルシウム化合物;並びにリン酸カルシウムなどの無機リン酸塩;などを挙げることができる。飼料には、さらに必要に応じ、畜産分野で許容されている他の添加物(例えば、他の抗生物質や殺菌剤、駆虫剤、抗酸化剤など)を飼料に配合することもできる。
【0034】
本発明の飼料における副腎肥大抑制剤の含有量は、一般的には0.0001重量%〜1重量%であり、好ましくは0.001重量%〜3.0重量%の範囲である。しかしながら、本発明における飼料組成物中の副腎肥大抑制剤の含有量は、上記の量に制限されることなく、対象動物の種類、成長段階、年齢、体重、環境条件、体調、飼料の材料の種類、給餌する季節などに応じて必要量を適宜選択して添加配合することができ、それにより得られる効果を調整することができる。
【0035】
(5)治療用組成物
本発明の治療用組成物は、上述した柑橘類又はその加工物由来の特定のフラボン系化合物を有効成分とする副腎肥大抑制剤を含むものである。このような治療用組成物の投与経路及び剤形は特に限定されず、例えば経口投与剤及び経皮投与剤のいずれであってもよい。具体的には、経口投与であれば食品あるいは医薬品等の液剤や内服剤が挙げられ、経皮投与であれば化粧料、皮膚外用医薬等の皮膚外用剤が挙げられる。
【0036】
食品、医薬品等の内服剤としては、例えば錠剤、粉剤、顆粒剤等の固形剤や、液剤、半固形剤等が挙げられ、経口投与により体内に吸収させることができる。
【0037】
柑橘類又はその加工物以外の任意成分としては、前記内服剤が食品であれば、例えば、甘味剤、塩味剤、香辛料、酸味料、うま味料などの調味料、乳化・分散剤、抗酸化剤、防腐剤、増粘剤、結合剤、香料などが例示できる。また、医薬品であれば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、滑沢剤、増量剤、希釈剤、pH調整剤、乳化・分散剤、安定化剤、嬌味嬌臭剤、着色剤などが例示できる。
【0038】
皮膚外用剤としては、例えば軟膏剤、液剤、貼付剤、噴霧剤、口腔用剤、リニメント剤等が挙げられ、口腔(経粘膜)投与または経皮投与により組成物を体内に吸収させることができる。
【0039】
軟膏剤の場合は、柑橘類又はその加工物以外の任意成分として、一般的な軟膏剤に用いられるものを必要に応じて適宜配合することができるが、例えば基材として脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、ろう、樹脂、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、乳化剤、懸濁化剤等を配合することができる。柑橘類又はその加工物の含有割合は特に限定されるものではないが、例えば0.5〜5重量%程度がよい。
【0040】
液剤の場合は、柑橘類又はその加工物以外の任意成分として、一般的な液剤に用いられるものを必要に応じて適宜配合することができるが、例えば保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル)、糖類、甘味剤、エタノール、脂肪油、石けん、グリセリン、乳化剤、懸濁化剤等を配合することができる。柑橘類又はその加工物の含有割合は特に限定されるものではないが、例えば1〜10重量%程度がよい。
【0041】
貼付剤の場合は、柑橘類又はその加工物以外の任意成分として、一般的な貼付剤に用いられるものを必要に応じて適宜配合することができるが、例えばカオリン、精油成分、l-メントール、ハッカ油、ユーカリ油、グリセリン、プロピレングリコール、懸濁化剤、乳化剤、水等を配合することができる。柑橘類又はその加工物の含有割合は特に限定されるものではないが、例えば0.5〜5重量%程度がよい。
【0042】
なお、化粧料として使用する場合は、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス,オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。
【0043】
なお、皮膚外用剤として用いる場合は、炎症を鎮める成分、例えばインドメタシンやブフェキサマック等の非ステロイド抗炎症剤やゴボウ根エキス、シラカバエキスなどの抗炎症生薬及び/又はその抽出物を含有することも好ましい。
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
本実験では、過密負荷(密集飼育)により精神的ストレス負荷を与えられた動物を用い、精神的ストレス負荷による影響(副腎肥大)に対する本発明の副腎肥大抑制剤の作用効果を検証した。
【0046】
I.実験の方法
<使用動物>
HOS:Hr−1ヘアレスマウス(雌、7週)を、1ケージ(cage)当たり5匹の割合で馴化した後、以下の6グループに分けて飼育し、使用した。
(1)Normal(ノーマルグループ);1cageあたり5匹入れ、市販飼料を与えて12日間飼育した(1グループ)。
(2)Stress(精神的ストレス負荷グループ);1cageあたり20匹入れ、市販飼料を与えて12日間飼育した(5グループ)。
【0047】
<実験手順>
上記飼育法にて飼育した実験動物群(6グループ)について、実験を開始した。すなわち、市販飼料(製造者;オリエンタル社(株)、商品名;普通飼料「MF」)を、上記6グループに摂餌(Food Intake)し、7日間飼育した。ただし、上記(2)(精神的ストレス負荷グループ;5グループ)のうち1グループには、検体を含まない飼料を与えた(Control)。別の1グループには、公知の抗精神薬である塩酸クロルプロマジン(Chlorpromazine hydrochloride)を混ぜた飼料を与えた(Positive Control)。残りの3グループには、下記表1に示す量の検体(ナリンジン及びナリルチン)を投与した。なお、この検体(ナリンジン及びナリルチン)は、温州ミカンの果皮を温州ミカンの果皮を粉砕後、50%メタノールで抽出し、その抽出物をHP−20及びシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより調製したものである。
【0048】
II.実験結果
実験開始から7日後に、各グループのマウスについて、副腎(Adrenal)の重量を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1からわかるように、密集飼育による精神的ストレスが負荷されると、副腎は肥大する(Control)が、ナリンジン又はナリルチンを与えることにより、公知の抗精神薬(Chlorpromazine hydrochloride)に比べて格段に優れた副腎肥大抑制効果が発揮されることがわかる。
【0051】
このように、実施例1の結果によれば、本発明の副腎肥大抑制剤は、副腎肥大に対する優れた抑制作用を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の副腎肥大抑制剤は、精神的ストレス負荷による生体の分泌系の機能低下に伴う副腎肥大を抑制させる作用に優れている。
このような本発明の副腎肥大抑制剤は柑橘類又はその加工物に多く含まれ、人体にやさしく安全性が高いものであるから、動物又は魚介類の飼料に配合することにより、動物や魚介類の密集飼育によるストレス負荷によって生じる生産性及び品質の低下を抑える効果を有し、かつ化学物質や抗生物質等の薬物に依存せずそれを摂取する人体への弊害を防ぎうる安全な飼料組成物を提供することができる。また、経口投与剤や皮膚外用剤に配合することにより、ステロイド剤の副作用等の種々の要因によって生じる副腎肥大を抑制しうる安全性の高い人体への治療用組成物を提供することができる。
特に、温州ミカンの果皮又は果汁圧搾残渣を用いるのが有効であることから、我が国の優れた農産物である温州ミカンのさらなる有効利用に役立つことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナリルチン及びナリンジンからなる群から選択されるフラボン系化合物又はその塩を有効成分とする、副腎肥大抑制剤。
【請求項2】
前記副腎肥大が、密集飼育条件下で生じるものであることを特徴とする、請求項1記載の副腎肥大抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の副腎肥大抑制剤を含有してなる、飼料組成物。
【請求項4】
動物又は魚介類の密集飼育用の飼料であることを特徴とする、請求項3記載の飼料組成物。
【請求項5】
副腎肥大抑制剤の基源が柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣であることを特徴とする、請求項3又は4記載の飼料組成物。
【請求項6】
前記柑橘類が、ミカン、ポンカン、ハッサク及びネーブルオレンジからなる群から選択されるものである、請求項5記載の飼料組成物。
【請求項7】
請求項1又は2記載の副腎肥大抑制剤を含有してなる、治療用組成物。
【請求項8】
副腎肥大抑制剤の基源が柑橘類の果皮又は果汁圧搾残渣であることを特徴とする、請求項7記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記柑橘類が、ミカン、ポンカン、ハッサク及びネーブルオレンジからなる群から選択されるものである、請求項8記載の治療用組成物。

【公開番号】特開2009−234926(P2009−234926A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79077(P2008−79077)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(594163109)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】