説明

割繊維不織布

【課題】良好なハンドリング性(操作性)及び吸湿性を有し、かつ歩留りがよく、農業用被覆材を始め、ゴルフ場、競馬場、陸上競技場などの芝生養生材、建築土木資材など多方面の緑化資材としての用途に好適な割繊維不織布を提供する。
【解決手段】(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブと、(B)ポリビニルアルコール製の割繊維ウェブ又はエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、前記接着剤層を構成する接着剤が、接着樹脂成分としてポリビニルアルコール50質量%以上を含むポリビニルアルコール系接着剤であることを特徴とする、割繊維不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は割繊維不織布に関する。さらに詳しくは、本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブ2枚が、あるいはポリビニルアルコール製の割繊維ウェブとエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、良好なハンドリング性(操作性)及び吸湿性を有し、農業用被覆材などとして好適に用いられる割繊維不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培野菜や茶樹などに対する保温、防霜、防虫用などの目的で農業用被覆材が、ベタがけ用として用いられており、そして、この農業用被覆材として、ポリビニルアルコール製不織布の使用が有効であることが知られている。
このポリビニルアルコール製不織布は、ポリビニルアルコール自体が親水性基を有することから、自重の50〜60%程度の水分を吸収することができる。この性質は可逆的であるため、ベタがけ被覆内の雰囲気が多湿である場合には積極的に吸湿し、乾燥時には保湿水分を放出して、雰囲気の湿度調節を行ったり、温度低下に伴うベタがけ被覆内の湿度変化によって発生する霧状水分や結露水分を吸収することができる。
また、ポリビニルアルコール製不織布は、前記のような湿度調節機能を有すると共に、施設栽培に必要な極めて優れた耐候性を有し、かつ高い保温力をも有している。
【0003】
施設栽培にポリビニルアルコール製不織布を用いた例としては、トンネル栽培において、換気作業を不要にし、かつ高温障害による「焼け現象」をなくし、結露による栽培作物の病害の発生を防止するために、ポリビニルアルコール製割繊維不織布を用いた農作物の栽培方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
このポリビニルアルコール製割繊維不織布は、一般に、まず、ポリビニルアルコールフィルムを製膜し、これを高倍率に一軸延伸すると同時にスプリット(割繊)加工し、高温熱処理により寸法固定化を行い、形成されたスプリットウェブを縦、横直交積層することにより、作製したものである。
【0004】
ポリビニルアルコール製不織布は、このような長所を有するものの、ポリビニルアルコール自体は収縮率が大きく、環境条件(温湿度)によって物性の変化が大きいために、その割繊維不織布を生産する際に、ハンドリング性(操作性)が悪く、品質及び歩留りの良好なポリビニルアルコール製割繊維不織布を作製するには多くの労力を必要としていた。
【特許文献1】特開2002−300815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、良好なハンドリング性(操作性)及び吸湿性を有し、かつ歩留りがよく、農業用被覆材、その他緑化資材などとして好適な割繊維不織布を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ね、エチレン−ビニルアルコール共重合体、好ましくはエチレン単位含有量が10〜50モル%の範囲にあるエチレン−ビニルアルコール共重合体は、吸湿性についてはポリビニルアルコールよりも若干劣るものの、その他の物性はほぼポリビニルアルコール並みであり、かつハンドリング性(操作性)が非常に良好であって、歩留り及び原単位の向上が期待できることに着目した。
本発明者らは、この着目に基づき、さらに研究を重ねた結果、エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブと、ポリビニルアルコール製の割繊維ウェブ又はエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、前記接着剤層を構成する接着剤として、接着樹脂成分がポリビニルアルコール50質量%以上を含むポリビニルアルコール系接着剤を用いたものは、良好な吸湿性を有し、前記目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1](A)エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブと、(B)ポリビニルアルコール製の割繊維ウェブ又はエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、前記接着剤層を構成する接着剤が、接着樹脂成分としてポリビニルアルコール50質量%以上を含むポリビニルアルコール系接着剤であることを特徴とする、割繊維不織布、
[2](A)層及び(B)層における割繊維ウェブを構成するエチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン単位10〜50モル%を含むものである、上記[1]項に記載の割繊維不織布、
[3]ポリビニルアルコール系接着剤が水性接着剤である、上記[1]又は[2]項に記載の割繊維不織布、
[4]ポリビニルアルコール系接着剤が、接着樹脂成分として、ポリ酢酸ビニル系(変性PVA系)又はポリウレタン系を50質量%以下の割合で含むものである、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の割繊維不織布、
[5](A)割繊維ウェブ及び(B)割繊維ウェブの厚さが、それぞれ独立に10〜40μmである、上記[1]〜[4]項のいずれかに記載の割繊維不織布、及び
[6]農業用被覆材又はその他緑化資材として用いられる、上記[1]〜[5]項のいずれかに記載の割繊維不織布、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブ2枚が、あるいはポリビニルアルコール製の割繊維ウェブとエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、良好なハンドリング性(操作性)及び吸湿性を有し、農業用被覆材、その他緑化資材などとして好適に用いられる割繊維不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の割繊維不織布は、(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブと、(B)ポリビニルアルコール製の割繊維ウェブ又はエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、前記接着剤層を構成する接着剤が、接着樹脂成分としてポリビニルアルコール50質量%以上を含むポリビニルアルコール系接着剤であることを特徴とする。
【0010】
[(A)割繊維ウェブ]
本発明の割繊維不織布において、(A)層として用いられる割繊維ウェブは、エチレン−ビニルアルコール共重合体から作製されたものである。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある。)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、実質上完全ケン化することにより得られるものであって、エチレン単位含有量は、10〜50モル%の範囲にあることが好ましい。このエチレン単位含有量が10モル%未満では、吸湿性は良好であるものの、ハンドリング性が悪く、一方50モル%を超えると、ハンドリング性は良好になるものの、吸湿性が低下する。ハンドリング性及び吸湿性のバランスの観点から、該エチレン単位含有量は、16〜44モル%がより好ましく、21〜44モル%がさらに好ましく、21〜34モル%が特に好ましい。
前記EVOH製割繊維ウェブは、例えば下記のようにして作製することができる。
【0011】
まず、EVOHを従来公知の方法により製膜したのち、長尺方向に約4倍以上になるように一軸延伸しながら、次いでこの延伸フィルムをスプリット(割繊)加工によりネット状にすると共に高温熱処理によって寸法固定を行う。
前記一軸延伸処理方法に特に制限はないが、使用するEVOHのガラス転移温度以上、融解温度未満の適当な温度で、ロール間速度差によって一軸延伸を行うのがよい。これにより分子配向が延伸方向に整列し、次のスプリット加工が容易になる。また、スプリット加工には、カミソリスプリッター、ニードルスプリッター、波形粗面スプリッター、ヤスリ型スプリッターなどの既知のスプリッターを適宜使用することができる。
なお、EVOHフィルム製膜時に、耐候性をより優れたものにするために、所望により紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び酸化防止剤などを適宜加えることができる。
【0012】
[(B)割繊維ウェブ]
本発明の割繊維不織布において、(B)層として用いられる割繊維ウェブは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある。)から作製されたウェブ、又はEVOHから作製されたウェブである。
前記PVAは、ポリ酢酸ビニルを、実質上完全ケン化することにより得られるものであって、製膜性を向上させるために、通常可塑剤としてグリセリンが、3〜15質量%程度含まれている。
前記PVA製割繊維ウェブは、例えば下記のようにして作製することができる。
まず、可塑剤としてグリセリンを含むPVAフィルムを従来公知の方法により製膜したのち、長尺方向に約4倍以上になるように一軸延伸しながら、次いでこの延伸フィルムをスプリット(割繊)加工によりネット状にすると共に高温熱処理によって寸法固定を行う。
前記一軸延伸処理方法に特に制限はないが、使用する可塑剤のグリセリンを含むPVAのガラス転移温度以上、融解温度未満の適当な温度で、ロール間速度差によって一軸延伸を行うのがよい。これにより分子配向が延伸方向に整列し、次のスプリット加工が容易になる。また、スプリット加工には、前記EVOHと同様に、既知の各種スプリッターを適宜使用することができる。
なお、PVAフィルム製膜時に、可塑剤のグリセリンと共に、耐候性をより優れたものにするために、所望により紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び酸化防止剤などを適宜加えることができる。
また、(B)層として用いることのできるEVOH製割繊維ウェブについては、(A)EVOH製割繊維ウェブにおいて説明したとおりである。
【0013】
[割繊維不織布の作製]
本発明の割繊維不織布は、前記のようにして得られた(A)EVOH製割繊維ウェブと、(B)PVA製割繊維ウェブ又はEVOH製割繊維ウェブとを、接着剤層を介して縦、横に直交積層することにより、作製することができる。
なお、上記縦とは長尺方向を指し、横とは幅方向を指す。本発明においては、縦方向の割繊維ウェブとしては、前記(A)層の割繊維ウェブであってもよいし、(B)層の割繊維ウェブであってもよい。縦方向の割繊維ウェブが、(A)層のウェブである場合、それに直交させる割繊維ウェブとしては、(B)層のウェブが用いられ、逆に、縦方向の割繊維ウェブが、(B)層のウェブである場合、それに直交させる割繊維ウェブとしては、(A)層のウェブが用いられる。
本発明においては、(A)層の割繊維ウェブ及び(B)層の割繊維ウェブの厚さは、それぞれ独立に10〜40μmの範囲であることが好ましい。
このようにして作製された本発明の2層積層構造を有する割繊維不織布原反は、通常長さが80〜120m程度で、幅は1〜3m程度である。更に実際の現場に展張する時は広幅が必要とされる場合もあり、その時は幅つぎ加工により、30mの幅も可能である。
【0014】
(接着剤層)
本発明の割繊維不織布は、前述した(A)割繊維ウェブと、(B)割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造を有しており、上記接着剤層を構成する接着剤としては、接着樹脂成分としてPVA50質量%以上を含むPVA系接着剤を用いることが必要である。
このように、接着樹脂成分として、PVA50質量%以上を含むPVA系接着剤を用いることにより、得られる割繊維不織布は、吸湿性が向上したものになる。このPVA系接着剤としては、通常水性接着剤が用いられる。
なお、さらに強い接着強度を必要とする場合には、接着樹脂成分として、ポリ酢酸ビニル系(変性PVA系)又はポリウレタン系を50質量%以下、好ましくは30質量%以下の割合で含むPVA系接着剤を用いることができる。PVA系接着剤にポリ酢酸ビニル系(変性PVA系)接着剤又はポリウレタン系接着剤を配合して、ポリ酢酸ビニル(変性PVA)、ポリウレタンを含むPVA系接着剤を調製する場合、該ポリ酢酸ビニル系(変性PVA系)接着剤及び該ポリウレタン系接着剤としては、通常水性接着剤が好ましい。
当該接着剤層の純分塗布量は、通常0.5〜10g/m2程度、好ましくは1.0〜6g/m2である。
【0015】
[割繊維不織布の用途]
このようにして得られた本発明の割繊維不織布は、EVOH製の割繊維ウェブ2枚が、あるいはPVA製の割繊維ウェブとEVOH製の割繊維ウェブとが、縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、目付けは、通常10〜50g/m2程度、好ましくは20〜40g/m2である。
この割繊維不織布は、良好なハンドリング性(操作性)及び吸湿性を有し、農業用被覆材を始め、ゴルフ場、競馬場、陸上競技場などの芝生養生材、建築土木分野などに使用されるネット等、多方面の緑化資材としての用途に好適に用いられる。
農業用被覆材としては、例えば各種栽培野菜や茶樹などに対する保温、防霜、防虫用などの目的で、ベタがけ用等として用いられる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって、なんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)延伸前フィルム及び不織布の厚さ
20cm×20cmのサンプルについて、マイクロメータで4角を測定し、平均値を厚さとした。
(2)不織布の目付け
20cm×20cmのサンプルについて、1m2の質量を測定し、目付け(g/m2)を算出した。
<不織布の性能>
(3)引張強度及び引張伸度
幅2.5cm、長さ20cmのサンプルについて、オートグラフ[島津製作所社製、機種名「AGSJ−1KN」]を用い、速度10cm/分の条件で引張強度及び引張伸度を測定した。
(4)接着強度
幅2cm、長さ20cmのサンプルについて、オートグラフ(前出)を用いて、斜め45度の強度(接着強度)を測定した。
(5)耐収縮性
下記の試験方法に従い、縦方向及び横方向について収縮率を測定し、耐収縮性を評価した。
縦方向かつ横方向ともSd−5収縮率を求めた。Sd−5収縮率は3.0%以下になるのが望ましい。
≪試験方法≫
幅4cm、長さ50.0cmの試験片を4個用意した。
(a)乾燥機(恒温機)の温度を60℃にセットし、昇温。
(b)適当な大きさの容器に水(常温)を入れ、長さ測定済の試験片を入れ、1.0時間浸漬。
(c)濡れたままの試験片の長さを測定。この時、含水によりふやけるため、強く伸ばさないようにしながら適当に張り、
(d)長さ測定。記録(W−1)。
(e)長さ測定後の試験片を、60℃にセットした乾燥機(恒温機)にお互いが重ならないように入れ、5時間乾燥。
(f)乾燥後の試験片の長さを測定(D−1)。
(g)上記(b)〜(f)を繰り返す。
1日の測定を1回(W・D各1)とする場合は、乾燥・測定後の試験片は、ポリ袋等に入れ、次回浸漬前まで保管する。
ブランクの長さをL0、5回目の水付・乾燥後の各値をLw−5・Ld−5とすると、5回目の各収縮率Sw−5・Sd−5は、
Sw−5(%)=[(L0−Lw−5)/L0]×100
Sd−5(%)=[(L0−Ld−5)/L0]×100
となる。
(6)保温性
下記の試験方法に基づき保温性を評価した。保温性は熱損失を測定することにより放熱係数を求め、通常3.0〜4.6kcal/m2h℃程度、好ましくは3.3〜4.3kcal/m2h℃であり、放熱係数の数値が小さければ小さいほど保温性は良好である。
<保温性の試験方法>
JIS L 1096−6.28.1 A法(恒温法)によって、保温性を測定した。
(7)吸水率
10cm×10cmのサンプルを、25℃、65%RHの条件で5時間放置したのち、質量を測定する(Ag)。その後、105℃の乾燥機で3時間乾燥後、乾燥剤入りデシケータで5分間放冷して質量を測定する(Bg)。
乾燥前後のサンプルの質量から、次式により吸水率を算出する。
吸水率(%)=[(A−B)/B]×100
【0017】
比較例1
厚さ70μmの未延伸PVAフィルムを、延伸温度150℃、延伸倍率5.71倍で一軸熱延伸して、スプリット後、175℃で熱処理して得られた割繊維ウェブ2枚を、PVA系接着剤、固形分10質量%]層を介して、縦、横直交に積層することにより、PVA製割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
【0018】
実施例1
厚さ50μmの未延伸EVOH(エチレン単位含有量32モル%)フィルムを、延伸温度102℃、延伸倍率5.10倍で一軸熱延伸して、スプリット後、140℃で熱処理して得られた割繊維ウェブ2枚を、PVA系接着剤(前出)層を介して、縦、横直交に積層することにより、EVOH製割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
【0019】
実施例2
厚さ50μmの未延伸EVOH(エチレン単位含有量32モル%)フィルムを、延伸温度102℃、延伸倍率5.10倍で一軸熱延伸してスプリット後、140℃で熱処理し、EVOH製割繊維ウェブを作製した。
一方、厚さ70μmの未延伸PVAフィルムを、延伸温度150℃、延伸倍率5.71倍で一軸熱延伸してスプリット後、175℃で熱処理し、PVA製割繊維ウェブを作製した。
次に、前記EVOH製割繊維ウェブを縦に、PVA製割繊維ウェブを横に使い、PVA系接着剤(前出)層を介して積層することにより、EVOH/PVA割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
【0020】
実施例3
厚さ70μmの未延伸EVOH(エチレン単位含有量32モル%)フィルムを、延伸温度105℃、延伸倍率5.10倍で一軸熱延伸して、スプリット後、140℃で熱処理して得られた割繊維ウェブ2枚を、PVA系接着剤(前出)層を介して、縦、横直交に積層することにより、EVOH製割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
【0021】
実施例4
厚さ70μmの未延伸EVOH(エチレン単位含有量32モル%)フィルムを、延伸温度105℃、延伸倍率5.10倍で一軸熱延伸して、スプリット後、140℃で熱処理して得られた割繊維ウェブ2枚を、PVA−ポリウレタン系接着剤層を介して、縦、横直交に積層することにより、EVOH製割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
なお、前記PVA−ポリウレタン系接着剤は、PVA系接着剤(前出、固形分10質量%)70質量%と、三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「タケラックW−605」(固形分10質量%)15質量%と、三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「タケネートWD−725」(固形分10質量%)15質量%との混合物である。
このPVA−ポリウレタン系接着剤を用いることにより、接着力が向上した。
【0022】
実施例5
厚さ70μmの未延伸EVOH(エチレン単位含有量26モル%)フィルムを、延伸温度100℃、延伸倍率5.23倍で一軸熱延伸して、スプリット後、130℃で熱処理して得られた割繊維ウェブ2枚を、PVA系接着剤(前出)層を介して、縦、横直交に積層することにより、EVOH製割繊維不織布を作製した。この不織布の性状を第1表に示す。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の割繊維不織布は、EVOH製の割繊維ウェブ2枚が、あるいはPVA製の割繊維ウェブとEVOH製の割繊維ウェブとが、縦、横に直交積層されてなる2層積層構造を有し、ハンドリング性及び吸湿性が良好であり、農業用被覆材を始め、多方面の緑化資材としての用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブと、(B)ポリビニルアルコール製の割繊維ウェブ又はエチレン−ビニルアルコール共重合体製の割繊維ウェブとが、接着剤層を介して縦、横に直交積層されてなる2層積層構造の割繊維不織布であって、前記接着剤層を構成する接着剤が、接着樹脂成分としてポリビニルアルコール50質量%以上を含むポリビニルアルコール系接着剤であることを特徴とする、割繊維不織布。
【請求項2】
(A)層及び(B)層における割繊維ウェブを構成するエチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン単位10〜50モル%を含むものである、請求項1に記載の割繊維不織布。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系接着剤が水性接着剤である、請求項1又は2に記載の割繊維不織布。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系接着剤が、接着樹脂成分として、ポリ酢酸ビニル系(変性PVA系)又はポリウレタン系を50質量%以下の割合で含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の割繊維不織布。
【請求項5】
(A)割繊維ウェブ及び(B)割繊維ウェブの厚さが、それぞれ独立に10〜40μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の割繊維不織布。
【請求項6】
農業用被覆材又はその他緑化資材として用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の割繊維不織布。

【公開番号】特開2010−138524(P2010−138524A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316822(P2008−316822)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(390028451)ダイオ化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】