説明

創傷の処置におけるラクトフェリン

本発明は、ラクトフェリン組成物および創傷を治癒するためにその組成物を使用する方法に関する。本組成物は単独で投与するか、または他の標準的創傷治癒療法と組み合わせて投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本願は、参照によりここに援用する米国仮特許出願第60/410,981号(2002年9月16日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ラクトフェリン組成物および創傷を治癒するためにその組成物を使用する方法に関する。本組成物は単独で投与するか、または他の標準的創傷治癒療法と組み合わせて投与することができる。さらにまた、本組成物は金属キレート剤も含有することができる。
【背景技術】
【0003】
中間層熱傷などの創傷を処置するために開発された生物工学製剤は比較的少ない。努力の大半が、治癒には適正なレベルの細胞成長因子が要求される慢性創傷に向けられてきた。慢性潰瘍処置のもっとも一般的な選択肢には、鋭い創面切除(sharp debridement)による生存不能組織の完全な除去、免荷法、湿性生理食塩水ドレッシング(これは毎日2回交換し、その際に、潰瘍周辺の皮膚を低刺激石鹸と水で洗浄する)が含まれる。現行の高度な慢性潰瘍の処置には成長因子、皮膚置換療法、酵素的および機械的創面切除(debridement)による虚血組織の清掃、湿性創傷ドレッシング、非抗生物質洗浄剤、抗生物質が含まれる(Edmondsら,2000、LipskyおよびBerendt 2000、Moulinら,1998、Mandracchiaら 2001)。しかし現行の慢性創傷治療法の有効性は十分なわけではない。実際、慢性創傷(糖尿病神経障害性潰瘍)用に市販されている唯一の生物学的製品であるレグラネックス(Regranex)ゲル、すなわちベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)は、偽薬に対して9〜23%の改善しか示さず、適切な潰瘍ケアに対して4〜22%の改善しか示さない(Mandracchiaら,2001、Edmondsら,2000、Wieman 1998)。従って慢性および/または急性創傷の有効な処置が必要とされている。
【0004】
ラクトフェリンは身体の至る所で発現される免疫調節性ヒトタンパク質であり、乳汁および初乳に最も高濃度に見いだされる。組換えヒトラクトフェリン(RhLF)は糸状菌アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger;A.niger)中で生産される組換え糖タンパク質である。RhLFは構造上あらゆる点で天然ラクトフェリンと同一であり、宿主防御機構に関連する広範な一連の機能を持っている。たとえばラクトフェリンはナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、コロニー刺激活性を誘発し、多形核好中球(PMN)を活性化し、顆粒球形成を調節し、抗体依存性細胞傷害性を強化し、リンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞活性を刺激し、マクロファージ毒性を増強すると報告されている。
【0005】
組換えヒトラクトフェリンは、アスペルギルス(米国特許第6,080,559号)、ウシ(米国特許第5,919,913号)、イネ、トウモロコシ、サッカロミセス(米国特許第6,228,614号)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)(米国特許第6,455,687号、第6,277,817号、第6,066,469号)を含むさまざまな原核生物および真核生物で発現させた後、精製されたと記載されている。完全長ヒトラクトフェリンを発現させるための発現系も記載されている(たとえば米国特許第6,100,054号)。いずれの場合も、完全長cDNAの発現と、リーダーペプチドのプロセシング後にアミノ酸グリシンをN末端に持つ無傷のタンパク質の精製とが、その教示内容の一部になっている。Nuijensら(米国特許第6,333,311号)は、別途、ヒトラクトフェリンの変異体を記載しているが、彼らの視点は、ラクトフェリンのN末端ドメインに見いだされるアルギニン残基の欠失または置換に限定されている。
【0006】
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)は周知の金属結合特性を持つ合成化合物である。EDTAはキレート療法にはもっとよく使用されている。キレート療法は、血流から毒素を抜くためにEDTAの静脈内投与を繰り返す処置である。EDTA投与は、鉛、水銀、ヒ素およびタリウムなどの重金属による中毒に対して医学的に容認された処置であり、この用途については米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。
【0007】
EDTAは心臓疾患の処置薬としても提唱されている。心臓疾患のキレート療法を提唱する人々は、EDTAを経口ビタミンおよびミネラルと組み合わせると、アテローム性動脈硬化に関係するプラークおよびミネラル沈着の溶解に役立つと主張している。心臓疾患を持つ多くの米国人はEDTAキレート療法に転向してその状態が改善しているが、FDAは心臓疾患の代替処置としてはこの治療法を承認していない。EDTAによるキレート化は血流から不純物を隔離することによって免疫系の強化を助けるのだろうと考えられている。
【0008】
本発明は、急性および/または慢性潰瘍または他のタイプの創傷、たとえば熱傷を処置する目的でラクトフェリンを送達するための好適な送達系を開発した最初の発明である。さらにまた、本発明は、急性および/または慢性創傷を処置するためにラクトフェリンを金属キレート剤と組み合わせて使用する最初の発明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ラクトフェリンまたは少なくともN末端グリシン残基が切除または置換されているN末端ラクトフェリン変異体を含む組成物を対象とする。本組成物は創傷治癒のための処置薬として使用することができる。本処置方法には本ラクトフェリン組成物の投与が含まれ、本ラクトフェリン組成物は局所的、経口的または非経口的に適用することができる。本ラクトフェリン組成物は、標準的な創傷治癒療法と組み合わせて投与することもできる。
【0010】
本発明の一実施態様は、N末端ラクトフェリン変異体を含むラクトフェリン組成物からなる。より具体的には、本ラクトフェリンは組換えラクトフェリン変異体である。そのようなN末端ラクトフェリン変異体には、少なくともN末端グリシン残基を欠いている変異体またはN末端グリシン残基が置換されている変異体が含まれる。置換は、天然または人工アミノ酸残基によるN末端グリシン残基の置換を含むことができる。たとえば置換は、正荷電アミノ酸残基もしくは負荷電アミノ酸残基によるN末端グリシン残基の置換、またはグリシン以外の中性アミノ酸残基によるN末端グリシン残基の置換を含むことができる。他のN末端ラクトフェリン変異体には、1つ以上のN末端残基を欠くラクトフェリン、またはN末端に1つ以上の置換を持つラクトフェリンが含まれる。
【0011】
特定の実施態様では、N末端ラクトフェリン変異体が、ラクトフェリン組成物の少なくとも1%、ラクトフェリン組成物の少なくとも5%、ラクトフェリン組成物の少なくとも10%、ラクトフェリン組成物の少なくとも25%、ラクトフェリン組成物の少なくとも50%、またはその中間にある任意の範囲を占める。
【0012】
本発明の一実施態様は、治療有効量のラクトフェリン組成物と、室温で約1〜約12,000,000cPの粘度を持つ医薬的に許容できるポリマーとを含み、ラクトフェリンの量が創傷の改善をもたらすのに十分であるような医薬組成物である。上記ラクトフェリンは哺乳類ラクトフェリン、たとえばヒトまたはウシラクトフェリンである。より具体的には、上記ラクトフェリンは組換えラクトフェリンである。さらにまた、上記ラクトフェリン組成物は、少なくともN末端グリシンが切除および/または置換されているラクトフェリン変異体を含む。N末端ラクトフェリン変異体は、ラクトフェリン組成物の少なくとも1%、ラクトフェリン組成物の少なくとも5%、ラクトフェリン組成物の少なくとも10%、ラクトフェリン組成物の少なくとも25%、ラクトフェリン組成物の少なくとも50%、またはその中間にある任意の範囲を占める。
【0013】
特定の実施態様では、上記ポリマーが、ビニルポリマー(すなわちポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール)、多糖ポリマー(すなわちセルロース、セルロース誘導体、グリコサミノグリカン、寒天、ペクチン、アルギン酸、デキストラン、デンプン、およびキトサン)、グリコサミノグリカンポリマー(すなわちヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸およびヘパリン)、タンパク質ポリマー(すなわちコラーゲン、ゼラチンおよびフィブロネクチン)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー(すなわちポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)およびアクリルアミドポリマー(すなわちポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミド)からなる群より選択される。上記ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、好ましくは、F88またはF127である。
【0014】
さらなる実施態様では、医薬組成物のラクトフェリン(ラクトフェリンまたは少なくともN末端グリシン残基が切除または置換されているN末端ラクトフェリン変異体)濃度が、約0.0001%(w/w)〜約30%(w/w)の範囲内にある。より具体的には、ポリマー濃度は約0.5%(w/w)〜約3.0%(w/w)であり、ポリマーは約500〜約13,000,000の平均分子量を持つ。
【0015】
好ましい一実施態様は、創傷の改善をもたらすのに十分な組換えヒトラクトフェリン(rhLFラクトフェリンまたはそのN末端ラクトフェリン変異体であって少なくともN末端グリシン残基が切除もしくは置換されているもの)と、ポリマーとを含む医薬組成物であって、前記ポリマーがビニルポリマー、多糖ポリマー、グリコサミノグリカンポリマー、タンパク質ポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、およびアクリルアミドポリマーからなる群より選択され、当該組成物が室温で約1〜約12,000,000cPの粘度を持つ水性ゲルであるような医薬組成物である。ポリマー濃度は約0.5%(w/w)〜約3.0%(w/w)であり、ポリマーは約500〜約13,000,000の分子量を持つ。
【0016】
もう一つの好ましい実施態様は、創傷の改善をもたらすのに十分な量のラクトフェリン組成物と、約0.5%(w/w)〜約3.0(w/w)の濃度および約500〜約13,000,000の分子量を持つビニルポリマー、多糖ポリマー、グリコサミノグリカンポリマー、タンパク質ポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、およびアクリルアミドポリマーからなる群より選択される医薬的に許容できるポリマーとを含む医薬組成物であって、当該組成物が室温で約1〜約12,000,000cPの粘度を持つ水性ゲルであるような医薬組成物である。
【0017】
本発明のもう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、創傷の改善をもたらすのに十分な量のラクトフェリン組成物を対象に投与するステップを含む方法である。前記ラクトフェリン組成物は、医薬的に許容できる担体に分散される。さらなる実施態様では、前記ラクトフェリン組成物が、他の標準的創傷治癒療法と組み合わせて投与される。上記ラクトフェリン組成物は、たとえば少なくとも1週間、6週間、12週間、36週間、またはその中間にある任意の範囲にわたって投与することができる。
【0018】
さらなる実施態様として、医薬的に許容できる担体に分散した金属キレート剤を、上記ラクトフェリン組成物と共に投与してもよい。好ましい金属キレート剤には、たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)または[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)]四酢酸(EGTA)などがあるが、これらに限るわけではない。より好ましくは、金属キレート剤はEDTAである。
【0019】
処置することができる典型的な創傷には、たとえば皮膚創傷、骨創傷、内部創傷、胃腸創傷、口腔創傷、眼科創傷、手術創傷、またはそれらの任意の組合せなどがあるが、これらに限るわけではない。皮膚創傷は全層皮膚創傷または中間層皮膚創傷であることができる。特定の実施態様では、創傷はさらに慢性創傷(たとえば糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、圧迫潰瘍、および感染潰瘍など、ただしこれらに限らない)と定義される。さらにまた、創傷はさらに急性創傷と定義される。典型的な急性創傷には、第1度熱傷、中間層熱傷、全層熱傷、裂傷、弾創、および感染創傷などがあるが、これらに限るわけではない。
【0020】
さらなる実施態様では、ラクトフェリンを局所的、経口的または非経口的に投与する。さらにまた、前記ラクトフェリン組成物と一緒に制酸薬も投与することができる。
【0021】
特定の実施態様では、投与されるラクトフェリン組成物(ラクトフェリンまたは少なくともN末端グリシン残基が切除または置換されているN末端ラクトフェリン変異体)の量が、1日あたり約0.0001μg〜約100gである。投与されるEDTAの量は、1日あたり約1ng〜約1gである。
【0022】
さらなる実施態様では、上記ラクトフェリン組成物が、約0.0001%〜約30%のラクトフェリン濃度を持つ局所ゲル剤、溶液剤、カプセル剤または錠剤である。局所ゲル剤は、ビニルポリマー、多糖ポリマー、グリコサミノグリカンポリマー、タンパク質ポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、およびアクリルアミドポリマーからなる群より選択されるポリマーから構成される。ポリマー濃度は約0.5%(w/w)〜約3.0%(w/w)であり、上記ポリマーは約50,000〜約13,000,000の分子量を持つ。
【0023】
もう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、上記のラクトフェリン量を創傷の近傍に局所投与することによって対象の局所免疫系を補うステップを含む方法である。ラクトフェリンは創傷に感染する細菌の死滅をもたらす。
【0024】
さらにもう一つの実施態様は、創傷を負っている対象の局所免疫系を強化する方法であって、その対象に、ラクトフェリン組成物を局所投与するステップを含む方法である。ラクトフェリンは創傷に感染する細菌の死滅をもたらす。ラクトフェリンはサイトカインまたはケモカインの産生を刺激する。ラクトフェリンによって刺激することができる典型的なサイトカインには、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-12(IL-12)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびガンマインターフェロン(IFN-γ)などがあるが、これらに限るわけではない。典型的なケモカインには、マクロファージ炎症タンパク質3アルファ(MIP-3α)、マクロファージ炎症タンパク質1アルファ(MIP-1α)、またはマクロファージ炎症タンパク質ベータ(MIP-1β)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0025】
本発明のラクトフェリン組成物はサイトカインまたはケモカインの阻害をもたらすこともできる。このサイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-10(IL-10)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)からなる群より選択される。さらにまた、本ラクトフェリン組成物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)類の産生を阻害することもできる。
【0026】
さらにまた、インターロイキン-18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子は、免疫細胞の産生または活性を刺激する。この免疫細胞は、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、および多形核細胞からなる群より選択される。より具体的には、前記多形核細胞は好中球であり、Tリンパ球はCD4+、CD8+およびCD3+ T細胞からなる群より選択される。
【0027】
さらにもう一つの実施態様では、インターロイキン-18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子が、創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激する。創傷修復に関与する細胞は、ケラチノサイト、内皮細胞、線維芽細胞、樹状細胞および筋線維芽細胞からなる群より選択される。さらに、TNF-アルファの阻害は、樹状細胞の移動および成熟を阻害する。この樹状細胞はランゲルハンス細胞である。
【0028】
もう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、筋肉内、静脈内、腹腔内、眼内、関節内および手術野からなる群より選択される非経口経路で上記ラクトフェリン組成物を投与することによって、対象の全身免疫系を補うステップを含む方法である。
【0029】
さらにもう一つの実施態様は、創傷を負っている対象の全身免疫系を強化する方法であって、その対象に、ラクトフェリン組成物を非経口投与するステップを含む方法である。
【0030】
もう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、ラクトフェリン組成物を経口投与することで、対象の胃腸管におけるラクトフェリン量を増加させることにより、対象の粘膜免疫系を補うステップを含む方法である。
【0031】
さらにまた、もう一つの実施態様は、創傷を負っている対象の粘膜免疫系を強化する方法であって、その対象にラクトフェリン組成物を経口投与することを含む方法である。
【0032】
上記の説明は、以下に述べる本発明の詳細な説明がより良く理解されうるように、本発明の特徴および技術的利点をかなり大まかに概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点を、以下に説明する。本明細書に開示する概念および具体的実施態様は、それらと同じ本発明の目的を実施するために、それらに変更を加えたり、他の構成を設計したりするための基礎として、容易に利用できることを理解すべきである。また、そのような等価な構成が、本願特許請求の範囲に記載する本発明から逸脱しないことも理解すべきである。その構成と作動方法の両方に関して本発明に特有であると考えられる新規な特徴は、以下の説明を添付の図面と結びつけて考察すれば、よりよく理解されるだろう。ただし、各図は例示と説明のために提供されるのであって、本発明の限界点の定義を意図していないことは、明確に理解すべきである。
【0033】
本発明をより完ぺきに理解するために、添付の図面については、後述の説明を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本願に開示する発明には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな実施態様および変更実施態様が可能であることは、当業者には明白である。
【0035】
A.定義
本願において、特許請求の範囲および/または明細書で「を含む(comprising)」という用語と共に「ある/1つの/一(aまたはan)」という単語を使用する場合、それは「1(one)」を意味しうるが、「1以上(one or more)」「少なくとも1(at least one)」および「1または1を超える(one or more than one)」という意味も持ちうる。
【0036】
本明細書で使用する「急性創傷」という用語は、短期間で治癒する創傷を指す。急性創傷の例には、中間層熱傷、裂傷、弾創または感染創傷などがあるが、これらに限るわけではない。
【0037】
本明細書で使用する「慢性創傷」という用語は、治癒に長い時間を要する創傷、および外からの介入がなければ治癒しない創傷を指す。さらにまた、本明細書にいう「慢性創傷」は「慢性潰瘍」ともいい、3つの主要タイプ、すなわち糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、褥瘡または圧迫潰瘍に大別することができる。さらにまた、慢性創傷には、治癒に長い時間を要する感染創傷を含めることもできる。
【0038】
本明細書で使用する「サイトカイン」という用語は、他の細胞の挙動に影響を及ぼす(たとえば細胞増殖を刺激または阻害する)細胞によって産生されるタンパク質を指す。たとえばリンパ球が産生するサイトカインは、リンフォカインまたはインターロイキンと呼ばれることが多い。サイトカインという用語が、他の細胞の挙動に影響を及ぼすことができる細胞によって産生されるタンパク質を指すために文献で用いられる総称であることは、当業者には知られている。
【0039】
本明細書で使用する「ケモカイン」という用語は、細胞(たとえば食細胞およびリンパ球)の移動と活性化に関与する小さなサイトカインを指す。ケモカインが炎症過程および免疫応答過程に中心的な役割を果たすことは、当業者には知られている。
【0040】
本明細書で使用する「ラクトフェリン」または「LF」という用語は、天然ラクトフェリンまたは組換えラクトフェリンを指す。天然ラクトフェリンは哺乳類の乳汁もしくは初乳または他の天然源からの精製によって得ることができる。組換えラクトフェリン(rLF)は、遺伝子改変した動物、植物、真菌、細菌または他の原核生物種もしくは真核生物種における組換え発現または直接生産によって製造するか、化学合成によって製造することができる。
【0041】
本明細書で使用する「ラクトフェリン組成物」という用語は、ラクトフェリン、またはその一部であって少なくともN末端グリシン残基が切除または置換されているものを含む組成物を指す。
【0042】
本明細書で使用する「金属キレート剤」という用語は、金属を結合する化合物を指す。本発明で使用することができる金属キレート剤には、二価金属キレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)]四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、ヒドロキシエチレントリアミン二酢酸(HEDTA)またはその塩などがある。
【0043】
本明細書で使用する「N末端ラクトフェリン変異体」という用語は、少なくともN末端グリシンが切除および/または置換されているラクトフェリンを指す。N末端ラクトフェリン変異体には、1個以上のN末端アミノ酸残基、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個のN末端アミノ酸残基などの欠失および/または置換も含まれるが、これらに限るわけではない。従ってN末端ラクトフェリン変異体は、少なくとも1〜16個のN末端アミノ酸残基の欠失もしくは切除および/または置換を含む。ラクトフェリンの少なくともN末端グリシンの欠失および/または置換は、全長ラクトフェリンと同じ生物学的効果をもたらし、たとえばIL-18、MIP-3α、GM-CSFまたはIFN-γなどのさまざまなサイトカインの産生を刺激することなどにより、ラクトフェリンの生物学的活性を強化しうる。
【0044】
本明細書で使用する「非経口投与」という用語には、腸を介した吸収を伴わずに化合物が対象に吸収される任意の投与形態が包含される。本発明で用いられる典型的な非経口投与には、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、眼内投与、または関節内投与などがあるが、これらに限るわけではない。さらにまた、非経口投与には、手術野への投与も含まれる。
【0045】
本明細書で使用する「医薬的に許容できる担体」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆材、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを包含する。医薬活性物質へのそのような媒質および薬剤の使用は当技術分野ではよく知られている。好都合な媒質または薬剤が本発明のベクターまたは細胞と適合しない場合を除き、治療組成物にはその使用が見込まれる。補助活性成分も、本組成物に組み込むことができる。
【0046】
本明細書で使用する「医薬組成物」という用語は、医薬的に許容できる担体に分散されたラクトフェリン組成物を指す。ラクトフェリン組成物は、ラクトフェリン、または少なくともN末端グリシンアミノ酸残基が切除もしくは置換されているN末端ラクトフェリン変異体を含むことができる。
【0047】
本明細書で使用する「経口投与」という用語には、経口投与、口腔内投与、経腸投与または胃内投与などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0048】
本明細書で使用する「対象」という用語は、ヒトラクトフェリン組成物が本明細書に記載の方法に従って経口投与される任意の哺乳動物対象を意味すると解される。ある特定の実施態様では、ヒト対象を処置するために本発明の方法を使用する。もう一つの実施態様には、創傷を負っているヒト対象を処置することが含まれる。
【0049】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、疾患または状態の症状の改善または矯正をもたらす量を指す。
【0050】
本明細書で使用する「局所投与」という用語には、局所、皮膚投与(たとえば経皮投与または皮内投与)、表皮投与、または皮下投与などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0051】
本明細書で使用する「処置する」および「処置」という用語は、治療有効量の組換えヒトラクトフェリン組成物を、対象の疾患が改善されるように、対象に投与することを指す。前記改善は症状の任意の改善または矯正である。前記改善は観察可能なまたは測定可能な改善である。従って、処置は疾患状態を改善しうるが、疾患の完全治癒ではない場合もあることは、当業者には理解される。
【0052】
本明細書で使用する「創傷」という用語は、疾患または障害の結果として生じる、または事故、偶発的事象もしくは外科手術の結果として生じる、潰瘍などの任意の損傷を指す。創傷はさらに急性および/または慢性と定義することができる。
【0053】
B.ラクトフェリン
本発明に従って使用されるラクトフェリンは、哺乳動物の乳汁をはじめとする天然源からの単離および精製によって得ることができる。ラクトフェリンは、好ましくは、ウシまたはヒトラクトフェリンなどの哺乳類ラクトフェリンである。好ましい実施態様では、ラクトフェリンは、遺伝子改変した動物、植物または真核生物における組換え発現または直接生産など、当技術分野でよく知られよく使用されている遺伝子工学技術を使って組換え生産されるか、または化学合成される。すなわち、参照によりここに援用する米国特許第5,571,896号、第5,571,697号および第5,571,691号を参照されたい。
【0054】
一定の側面では、本発明は、強化された天然LFまたはrLFの生物学的活性を持つラクトフェリン変異株、たとえばサイトカインまたはケモカインを刺激および/または阻害する能力を持つラクトフェリン変異体を提供する。特に本発明は、少なくともN末端グリシン残基が置換および/または切除されているラクトフェリンの変異体を提供する。N末端ラクトフェリン変異体は自然に存在する場合もあるし、1個以上のアミノ酸の置換または欠失によって修飾することもできる。
【0055】
欠失変異体は、参照によりここに援用する米国特許第6,333,311号に記載されているように、ラクトフェリンのタンパク質分解および/または切除型ラクトフェリンをコードするポリヌクレオチドの発現によって製造することができる。
【0056】
置換変異体または交換変異体では、通例、タンパク質内の1つ以上の部位で、あるアミノ酸が別のアミノ酸と交換されている。置換は保存的であることができる。すなわち、あるアミノ酸を、類似する形状および電荷を持つアミノ酸で置き換える。保存的置換は当技術分野ではよく知られており、たとえばアラニンからセリンへの変化、アルギニンからリジンへの変化、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの変化、アスパラギン酸からグルタミン酸への変化、システインからセリンへの変化、グルタミンからアスパラギンへの変化、グルタミン酸からアスパラギン酸への変化、グリシンからプロリンへの変化、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの変化、イソロイシンからロイシンまたはバリンへの変化、ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの変化、リジンからアルギニンへの変化、メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの変化、フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの変化、セリンからスレオニンへの変化、スレオニンからセリンへの変化、トリプトファンからチロシンへの変化、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの変化、およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化などがある。
【0057】
そのような改変を行う際には、アミノ酸のハイドロパシー指標を考慮することができる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当技術分野では広く理解されている(KyteおよびDoolittle,1982)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性が、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それが結果として、タンパク質と、たとえば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などの他の分子との相互作用を規定することは、一般に受け入れられている。
【0058】
各アミノ酸には、その疎水性および電荷特徴に基づいて、ハイドロパシー指標が以下のように割り当てられている(KyteおよびDoolittle,1982):イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)およびアルギニン(−4.5)。
【0059】
一定のアミノ酸を、類似するハイドロパシー指標またはハイドロパシースコアを持つ他のアミノ酸で置換しても、類似する生物学的活性を持つタンパク質が得られること、すなわち生物学的機能が等価なタンパク質が得られることは、当技術分野では知られている。そのような改変を行なう際には、±2以内のハイドロパシー指標を持つアミノ酸同士を置換することが好ましく、±1以内のハイドロパシー指標を持つアミノ酸同士の置換はより好ましく、±0.5以内のハイドロパシー指標を持つアミノ酸同士の置換はより一層好ましい。
【0060】
類似するアミノ酸の置換を親水性に基づいて効果的に行いうることも、当技術分野では理解されている。参照によりここに援用する米国特許第4,554,101号には、隣接アミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最大局所平均親水性が、そのタンパク質の生物学的性質と相関関係にあることが述べられている。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)およびトリプトファン(−3.4)。
【0061】
さらにまた、あるアミノ酸を、類似する親水性値を持つ別のアミノ酸の代わりに使用しても、生物学的に等価であり免疫学的に等価であるタンパク質が得られると考えられる。そのような改変では、±2以内の親水性値を持つアミノ酸同士を置換することが好ましく、±1以内の親水性値を持つアミノ酸同士の置換はより好ましく、±0.5以内の親水性値を持つアミノ酸同士の置換はより一層好ましい。
【0062】
従って本発明では、たとえば参照によりここに援用する米国特許第5,220,007号、第5,284,760号、第5,354,670号、第5,366,878号、第5,389,514号、第5,635,377号、第5,789,166号および第6,333,311号に開示されている部位特異的突然変異誘発法などの標準的な突然変異誘発技術を使って、置換変異体または交換体を製造することができる。少なくともN末端グリシンアミノ酸残基は、20種類の天然アミノ酸のいずれか、たとえば正荷電アミノ酸(アルギニン、リジンまたはヒスチジン)、中性アミノ酸(アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)および/または負荷電アミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸)と交換または置換することができると考えられる。さらにまた、N1〜N16の範囲内にある任意のアミノ酸残基を交換または置換することができると考える。当該タンパク質がIL-18、MIP-3α、GM-CSFまたはIFN-γなどのさまざまなサイトカインの産生を刺激するという生物学的および/または機能的活性を保っている限り、N末端アミノ酸残基の少なくとも16個までを交換または置換することができると考えられる。従って、本発明のN末端ラクトフェリン変異体は、ラクトフェリンの機能等価物であるとみなされる。
【0063】
機能等価物に関して、許容できるレベルの等価な生物学的活性を持つ分子を維持しながらその分子の所定の部分内に加えることができる改変の数には限界があるという概念が、「生物学的に機能等価な」タンパク質の定義に内在していることは、当業者にはよく理解されている。従って本明細書では、生物学的機能等価物は、選ばれたアミノ酸(またはコドン)が置換されていてもよいタンパク質と定義される。機能的活性は、さまざまなサイトカインまたはケモカインを刺激または阻害するラクトフェリンの能力と定義される。
【0064】
さらにまた、N末端アミノ酸残基は、修飾および/または異常アミノ酸で置換することもできる。修飾および/または異常アミノ酸の典型例を以下の一覧表に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
ラクトフェリン調製物(ラクトフェリン組成物)中のN末端ラクトフェリン変異体(欠失体および/または置換体)の存在と、その相対的割合は、標準的な方法を使ってエドマン分解法でN末端アミノ酸配列を決定することによって確認することができる。N末端ラクトフェリン変異体の相対的割合は、ラクトフェリン組成物の少なくとも1%、ラクトフェリン組成物の少なくとも5%、ラクトフェリン組成物の少なくとも10%、ラクトフェリン組成物の少なくとも25%、ラクトフェリン組成物の少なくとも50%、またはその中間にある任意の範囲を占める。
【0067】
この方法では、塩基性条件下でアミノ末端にあるアミノ酸残基と反応してフェニルチオカルバミル誘導体(PTC-タンパク質)を形成するフェニルイソチオシアネート(PITC)と、タンパク質とを反応させる。次に、トリフルオロ酢酸を使って第1アミノ酸をアニリノチアリノン(anilinothialinone)誘導体(ATZ-アミノ酸)として切り離すと、次の分解サイクルに利用される新しいアミノ末端が残る。
【0068】
N末端ラクトフェリン変異体のパーセンテージは、ダンシル化反応を使って、より正確に決定することもできる。簡単に述べると、塩化ダンシルをタンパク質とアルカリ条件(pH10)で反応させることによって、タンパク質をダンシル化する。ダンシル化に続いて、反応混合物を乾燥してペレット状にした後、6N HCl中で完全に加水分解する。RP HPLCにより、インライン蛍光計を使って、既知のダンシル化アミノ酸から構成される標準品との比較で、N末端アミノ酸の割合を決定する。
【0069】
C.医薬組成物
本発明は、医薬担体中に分散したラクトフェリン組成物を含む組成物に向けられる。本発明の組成物に含まれるラクトフェリンは、ラクトフェリンまたは少なくともN-1末端グリシン残基が切除もしくは置換されているN末端ラクトフェリン変異体を含む。より具体的には、N末端ラクトフェリン変異体は、当該組成物の少なくとも1%、当該組成物の少なくとも5%、当該組成物の少なくとも10%、当該組成物の少なくとも25%、当該組成物の少なくとも50%、またはその中間にある任意の範囲を占める。
【0070】
さらにまた、本組成物は、医薬担体中に分散したラクトフェリンと金属キレート剤とを含む。従って本発明は、医薬担体中に分散した金属キレート剤を含むまたは金属キレート剤を含まないラクトフェリン組成物に向けられる。どちらの組成物(たとえばラクトフェリンのみまたは金属キレート剤と組み合わせたラクトフェリン)も本発明の範囲に包含され、所望する応答のタイプに応じて可換的に使用できることは、当業者には理解される。ラクトフェリン組成物に金属キレート剤を添加することにより、金属イオンの隔離が強化され、結果として免疫系が増強されるか、ラクトフェリンの効果が強化されると考えられる。
【0071】
ラクトフェリンと組み合わせて使用することができる金属キレート剤には、二価金属キレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)]四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、ヒドロキシエチレントリアミン二酢酸(HEDTA)またはその任意の塩などがあるが、これらに限るわけではない。好ましくは、EDTAをラクトフェリンと組み合わせて使用する。
【0072】
さらに、本発明によれば、投与に適した本発明の組成物が、不活性希釈剤を含むまたは不活性希釈剤を含まない医薬的に許容できる担体に入れて提供される。この担体は同化可能であるべきで、液状、半固形(すなわちペースト)または固形担体が含まれる。従来の媒質、薬剤、希釈剤または担体が受容者にとって、またはそこに含まれる組成物の治療有効性にとって有害である場合を除いて、本発明の方法を実施するための投与可能な組成物にそれを使用することは適切である。担体または希釈剤の例として、脂肪、油、水、塩類溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤など、またはそれらの組合せがあげられる。
【0073】
本発明では、好都合で実用的な任意の方法により、すなわち溶解、懸濁、乳化、混合、封入、吸収などによって、組成物を担体と混和する。そのような作業は当業者にとっては日常的作業である。
【0074】
本発明の特定の一実施態様では、組成物を半固形または固形担体と十分に混和または混合する。この混合は摩砕などの任意の便利な方法で行うことができる。組成物が治療活性を失わないように、すなわち胃または開放創環境で変性しないように、混合工程で安定剤を加えることもできる。本組成物に使用される安定剤の例には、緩衝剤、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの糖質、タンパク質分解酵素阻害剤などがある。さらにまた、EDTAなどの二価金属キレート剤も、本発明の組成物を安定化するために使用することができると考えられる。より好ましくは、経口投与される組成物の場合は、胃酸の分泌に対するアンタゴニストを、安定剤に含めることもできる。さらにまた、局所投与される組成物の場合は、皮膚酸に対するアンタゴニストを、安定剤に含めることもできる。
【0075】
半固形または固形担体と混合される経口投与用組成物は、さらにハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセル剤、錠剤または丸剤に製剤化することができる。より好ましくは、ゼラチンカプセル剤、錠剤または丸剤は腸溶コーティングされる。腸溶コーティングは、pHが酸性である胃または腸上部で組成物が変性するのを防ぐ。たとえば米国特許第5,629,001号を参照されたい。小腸に到達すると、その塩基性pHがコーティングを溶解することにより、ラクトフェリン組成物は放出され、たとえば腸上皮細胞およびパイエル板M細胞などの専門細胞によって吸収されることが可能になる。
【0076】
また、半固形担体と混合した局所投与用組成物は、さらにゲル軟膏に製剤化することもできる。ゲル軟膏製造用の好ましい担体はゲルポリマーである。ゲルポリマーは、血清プロテアーゼによる開放皮膚での組成物の変性を防ぐ。本発明のゲル製剤は、創傷部位で、ラクトフェリンまたはその活性の制御送達系にもなる。制御送達とは、長時間、たとえば最長24時間またはそれ以上、好ましくは1〜12時間にわたって、治療レベルを維持するのに足りる薬物放出または活性放出を指す。本ゲル製剤は、創傷部位でのラクトフェリンの接触時間を増加させ、創傷治癒速度の有意な増加を達成するのに必要な徐放性剤形をもたらす。これは、製剤を創傷に適用する頻度を下げ、その結果、創傷とその細胞成分を乱すことが少なくなるので、重要な利点である。
【0077】
本発明のゲル製剤には、創傷に付着し、不規則な身体または創傷の輪郭に適合するという利点がある。ゲルは創傷部位に直接適用するか、迎合的な多孔性または微孔性基材と一緒に、たとえば創傷部位に適用されるコーティングなどの形で、創傷部位に適用することができる。ゲルには、含水量が高く(これは創傷を湿潤に保つ)、創傷滲出液を吸収する能力があり、創傷への適用が容易で、洗浄による除去が容易であるという利点もある。ゲルは、創傷への適用時に冷感を伴うので、特に過敏な創傷での患者の快適さと製剤の認容性を向上させることができる。
【0078】
本発明の水性ゲルは、そのゲルの意図する用途に応じて、さまざまな粘度を持つ。粘度は、流動に対する液体の抵抗性の尺度である。粘度は剪断速度に対する剪断応力の比と定義される。剪断応力は、加えられた力の影響下での流動に対するその液体の抵抗性、すなわち外力に対抗する物体内部の分子抵抗性である。剪断応力は、剪断面積に対する力の比と定義される。液体を剪断する場合、層流であると仮定すると、複数の液体層が異なる速度で移動する。これらの層の相対的運動速度は、剪断速度の一因子に過ぎない。もう一つの因子は、剪断面間の距離すなわちクリアランスである。従って剪断速度は、クリアランスに対するゲルの速度の比と定義される。粘度はダイン/秒/cm2という次元を持つ。これらの次元はポイズと呼ばれる。本明細書で言及する粘度の次元は、別段の表示がない限り、ブルックフィールド粘度計を使って測定されるセンチポイズ(cP)である。全ての粘度値は、別段の表示がない限り、室温(たとえば22〜25℃)での値である。
【0079】
本発明におけるラクトフェリンの量は、ラクトフェリン約1μgから約100gまで変動しうる。好ましい実施態様では、本発明の組成物は、約0.0001%〜約30%のラクトフェリン濃度を含む。より好ましくは、10mg〜25gの範囲のラクトフェリンを経口投与するか、または1μg〜5gの範囲のラクトフェリンを局所投与する。このラクトフェリンはラクトフェリンまたは少なくともN-1末端グリシン残基が切除および/または置換されているN末端ラクトフェリン変異体を含みうる。
【0080】
より好ましくは、本発明の組成物は、金属キレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)]四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、ヒドロキシエチレントリアミン二酢酸(HEDTA)またはその塩など(ただしこれらに限らない)も含有する。組成物中の金属キレート剤の量は、約1ngから約1gまで変動しうる。好ましい金属キレート剤はEDTAである。
【0081】
本発明のゲル形成材料は、粘性水性溶液を形成する能力を持つ水溶性ポリマーであるか、またはやはり粘性溶液を形成することができる非水溶性膨潤性ポリマー(たとえばコラーゲン)であることができる。膨潤性ポリマーは、水に溶解するのではなく水を吸収するポリマーである。本明細書に記載するポリマーの架橋型は、水溶性ではなく水膨潤性でありうる。従って架橋型ポリマーは本発明の範囲に包含される。架橋とは、グルタルアルデヒドなどの二官能性試薬でポリマー鎖同士を共有結合することを指す。また、ある種のポリマーは、水溶性にするために、塩の形で使用するか、部分的に中和する必要があることは、当業者には理解される。たとえば、ヒアルロン酸は、適切な水溶性を得るために、ヒアルロン酸ナトリウムとして使用することが好ましい。
【0082】
局所または切開創傷治癒用の水溶性ゲル製剤の場合、ポリマーは、ビニルポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、多糖ポリマー、タンパク質、ポリ(エチレンオキシド)、アクリルアミドポリマーおよびその誘導体または塩からなる群より選択することができる。ポリ(エチレンオキシド)にはポリエチレングリコールが包含されると解される。前眼房の創傷の治癒に使用されるゲル製剤の場合、ポリマーは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーまたはポリ(エチレンオキシド)を使用することが好ましくない点を除けば、同じであることができる。また、前房用には、ポリマーが生分解性であること、すなわち前房から排出されるか、前房中で代謝されうる無害な構成成分に分解されることが好ましい。眼科創傷治癒用の低粘度水性製剤の場合、ポリ(エチレンオキシド)の使用が好ましくない点を除けば、ゲル形成ポリマーは、局所または切開創傷治癒用と同じであることができる。
【0083】
本発明で有用なビニルポリマーは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群より選択することができる。本発明で有用な多糖は、セルロースまたはセルロース誘導体、グリコサミノグリカン、寒天、ペクチン、アルギン酸、デキストラン、デンプンおよびキトサンからなる群より選択される。デンプンは、2つの形態、すなわちα-アミロースおよびアミロペクチンで存在する。より高い水溶性を持つα-アミロースが好ましい。グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸およびヘパリンからなる群より選択される。グリコサミノグリカンは、創傷治癒を強化するために、他の任意のゲル形成ポリマーと組み合わせて使用される。本発明で有用なタンパク質は、コラーゲン、ゼラチンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される。アクリルアミドポリマーはポリアクリルアミドまたはポリメタクリルアミドポリマーである。生体適合性ポリアクリルアミドポリマーは好ましい。さらなる実施態様では、カルボマーが好ましいポリアクリルアミドポリマーである。カルボマーは、スクロースまたはペンタエリスリトールのアルキルエステルで架橋されたアクリル酸の合成高分子量ポリマーである。カルボマーの好適な市販品には、カーボポール910、カーボポール934P、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール971P、カーボポール974P、カーボポール980、カーボポール981、カーボポール1342、レオジック252L、レオジック250H、およびホスタセリン(Hostacerin)PN73などがある。
【0084】
局所または切開創傷治癒用のゲル製剤の場合、粘度は室温で1,000〜12,000,000cpの範囲内にありうる。粘度範囲は50,000〜2,000,000であることが好ましい。本発明の一実施態様として、局所ゲル製剤は、約450,000〜4,000,000の平均分子量を持つポリアクリル酸を、0.01〜5重量%含みうる。好ましい実施態様では、ポリアクリル酸が0.5〜1.5重量%存在し、2,000,000〜4,000,000の平均分子量を持つ。ポリアクリル酸ゲルのpHは4.5〜8、より好ましくは6.5〜7.5の範囲内にあるべきである。
【0085】
もう一つの実施態様として、本発明の局所および切開創傷ゲルは、約500〜50,000の平均分子量を持つポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを、15〜60重量%含みうる。好ましい実施態様では、前記ブロックコポリマーが15〜40重量%存在し、1,000〜15,000の範囲の平均分子量を持つ。本発明で使用されるブロックコポリマーはプルロニックとして一般に知られている。好ましいプルロニックはプルロニックF88およびF127である。
【0086】
さらにもう一つの実施態様として、局所または切開創傷ゲルは、約50,000〜700,000の分子量を持つセルロースポリマーを、1〜20重量%含みうる。好ましい実施態様では、前記セルロースポリマーが2〜8重量%存在し、80,000〜240,000の平均分子量を持つ。好ましいセルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびメチルセルロース(MC)である。
【0087】
さらにもう一つの実施態様として、局所および切開創ゲルは、500,000〜8,000,000の平均分子量を持つヒアルロン酸を、0.5〜10重量%含みうる。好ましい実施態様では、前記ヒアルロン酸が1.5〜6.0重量%存在し、平均分子量は1,000,000より大きい。
【0088】
アクリルアミドポリマーは、とりわけ前眼房における、あらゆるタイプの創傷治癒に役立ちうる。ポリアクリルアミドなどの吸収性アクリルアミドポリマーは、眼科用途に現在使用されているヒアルロン酸などの担体系に代わる良い代替品になりうる。アクリルアミドポリマーは100万〜1300万、好ましくは400万〜600万の平均分子量を持ちうる。ゲル中のアクリルアミドポリマーの重量パーセントは2〜5%、好ましくは3.5〜4.5%である。メチル置換ポリマーおよびアルキル置換ポリマーなどの置換アクリルアミドポリマーも本発明の範囲に含まれる。
【0089】
前眼房での使用に関して、アクリルアミドゲル送達系は次の特徴を持つ。すなわち、送達マトリックスの溶解産物または分解産物はいずれも線維柱帯網を詰まらせない。ゲルは光学的に透明である。また、ゲルを前房に残しても、許容できない眼圧の上昇などといった有害な臨床作用を引き起こさない。
【0090】
製剤中のポリマーの分子量とパーセント濃度を変化させることによって所望の粘度範囲が得られることは、当業者には明白だろう。たとえば、低い粘度を持つゲルは、低分子量ポリマーを使うか、低いパーセント濃度を使うか、またはその組合せによって得ることができる。高粘度ゲルは、高分子量ポリマーと、高いパーセント濃度を使うことによって得ることができる。中間の粘度は、分子量とパーセント濃度を相応に変化させることによって得ることができる。
【0091】
低粘度溶液は、約100,000〜4,000,000の分子量を持つポリアクリル酸を、0.01〜2.0重量%含みうる。好ましい実施態様では、前記ポリマーが0.05〜0.5%存在する。もう一つの実施態様として、この希薄粘性溶液は、500〜500,000の平均分子量を持つポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを、2〜40重量%含みうる。好ましくは、濃度は2〜20%であり、分子量は1,000〜15,000である。あるいは、希薄粘性溶液は、約80,000〜240,000の分子量を持つセルロースポリマーを1〜20%含んでもよい。濃度は1〜10%の範囲にあることが好ましい。さらにもう一つの実施態様として、希薄粘性溶液は、約500,000〜8,000,000の平均分子量を持つヒアルロン酸を、0.5〜5.0重量%含みうる。好ましくは、濃度は0.5〜2.0%であり、平均分子量は1,000,000〜6,000,000である。希薄粘性溶液を点眼薬として使用する場合は、粘度は1〜100cpの範囲にあることが好ましい。たとえば包帯を浸漬するなど他の用途に使用する場合は、1.0〜5,000の範囲内の任意の粘度が適切だろう。
【0092】
製剤化したら、その投与製剤に適合する方法により、症状の改善または矯正をもたらすのに治療的に有効であるような量で、溶液を投与する。これらの製剤は、たとえば摂取可能な溶液、薬物放出カプセル、ゲル軟膏など、さまざまな剤形で容易に投与される。処置対象の状態に応じて、投与量には多少の変動が起こりうる。いずれにせよ、投与責任者は個々の対象に適した投与量を決定することができる。さらに、ヒトに投与する場合は、調製物は、FDA生物製剤局の基準が要求する滅菌性、一般安全性および純度基準を満たす。
【0093】
D.創傷の処置
本発明によれば、上述の医薬担体のいずれかに入れて提供されるラクトフェリン組成物を、創傷を持つ対象または創傷を持つと疑われる対象に、経口的、局所的または非経口的に投与する。当業者は、対象に投与すべき組成物の治療有効量を、いくつかの考慮すべき事項、たとえば吸収、代謝、送達法、年齢、体重、疾患重症度、その治療法に対する応答などに基づいて決定することができる。組成物の経口投与には、経口投与、口腔内投与、経腸投与または胃内投与が含まれる。本組成物を食品添加物として使用することもできると考えられる。たとえば、摂食に先立って、本組成物を食品に振りかけるか、液体に加える。本組成物の局所投与には、局所投与、皮膚投与、表皮投与または皮下投与が含まれる。非経口投与には、たとえば筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、眼内投与もしくは関節内投与または手術野への投与などがあるが、これらに限るわけではない。
【0094】
本発明は、たとえば皮膚創傷、内部創傷、胃腸創傷、口腔創傷、骨創傷、眼科創傷、手術創傷、またはそれらの任意の組合せなどを含む任意のタイプの創傷の処置に向けられる。創傷は、たとえば皮膚、内臓、胃および腸(胃腸)、口腔粘膜および眼(眼科創傷、たとえば角膜潰瘍、放射状角膜切開、角膜移植、エピケラトファキア、および手術によって眼に生じる他の創傷)などに見いだすことができる。創傷をもたらした過程に応じて、創傷は切開創傷、切除創傷、糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、褥瘡または圧迫潰瘍、化学薬品創傷、および熱傷創などに分類することもできるが、これらに限るわけではない。
【0095】
本発明のさらにもう一つの実施態様は、皮膚創傷を処置するために本発明の組成物を投与することである。皮膚創傷はさらに全層創傷および中間層創傷を含むが、これらに限るわけでない。全層創傷は、筋膜面または皮下脂肪の深さに達する表皮および真皮の完全な除去を伴う。弛んだ皮膚を持つ種では、真皮の基部に強固に付着している肉様層の薄い筋系も、通常は除去される。中間層創傷ではかなりの量の真皮(主として網状層)が残り、より重要なことに、ほとんどの表皮付属物の基部(脂腺および汗腺、毛包)が無傷のままである。
【0096】
さらにまた、創傷はさらに急性創傷と定義することもできる。急性創傷は比較的迅速な治癒速度を持ち、健常な対象では特にそうである。しかし、高齢または免疫不全状態の対象では、治癒が長引く場合もある。創傷が感染した場合も、治癒は長引く。本組成物で処置すべき好ましい急性創傷には、たとえば中間層熱傷、裂傷、弾創または感染創傷などがあるが、これらに限るわけではない。
【0097】
創傷はさらに慢性創傷とも定義される。慢性創傷または慢性潰瘍の例には、たとえば糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、褥瘡または圧迫創傷などがあるが、これらに限るわけではない。さらにまた、慢性創傷には、感染創傷を含めることもできる。慢性創傷は修復されない創傷または極めてゆっくりと修復される創傷であり、正常組織が持つ構造機構および機能協調を部分的にまたは完全に失っている。慢性創傷または慢性潰瘍は、3つの主要タイプ、すなわち糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、褥瘡または圧迫潰瘍に大別することができる。糖尿病性潰瘍はしばしば足に生じる。慢性的な糖尿病状態および不十分なグルコース制御は、進行性動脈硬化による末梢循環および微小循環の悪化、外傷を生じやすい無知覚の末端部をもたらす神経障害変化、および細胞成長因子の量および細胞成長因子に対する応答の低下を含みうる創傷治癒過程の内在的欠陥を引き起こす。静脈性潰瘍の場合は、静脈性高血圧が、微小循環の乱れおよび毛細血管の病理学的変化、炎症誘発性サイトカインおよびプロテアーゼの持続的なレベル上昇を引き起こす。線維芽細胞は老化し、成長因子に対する応答量が減って、分布しにくくなる。タンパク質分解酵素とその阻害因子は不均衡になる。圧迫潰瘍は、血流が可能なように動かずに8〜12時間にわたって皮膚が圧迫を受けた場合に生じる。
【0098】
本発明の好ましい一実施態様では、創傷を封鎖し、または閉鎖し、または改善し、またえは修復するために、本発明の組成物(ラクトフェリンのみまたはラクトフェリンと金属キレート剤との組合せ)を有効量で投与する。また、本発明の組成物は、創傷の細菌感染を減少、低下または阻害して、創傷の治癒過程を助けることもできる。
【0099】
処置方法もさまざまな形をとることができ、創傷のタイプ、創傷の位置、創傷および/または治癒の進行、ならびに患者の健康状態と年齢に依存することが多い。一定のタイプの創傷には、より積極的な処置が必要になり、また同時に、一定の患者は、面倒なプロトコールには耐えることができないことも、明らかである。治療製剤の既知の効力と(もしあれば)毒性とに基づいてそのような決定を下すには、臨床家が最適だろう。
【0100】
特定の実施態様では、本組成物を単回投与量または複数回投与量で与える。単回投与量は毎日1回、または1日に複数回、または1週間に複数回、または1ヶ月に1回、または1ヶ月に複数回投与することができる。さらにもう一つの実施態様では、本組成物を一連の投与量で与える。一連の投与量は、毎日1回、または1日に複数回、または1週間に1回、または1週間に複数回、または1ヶ月に1回、または1ヶ月に複数回投与することができる。従って、創傷のタイプ、位置、対象の健康状態などに応じて、創傷が少なくとも50%、60%、75%、80%、90%、95%もしくは100%またはその中間にある任意の範囲、治癒するまでの期間、本発明のラクトフェリン組成物を投与できることは、当業者には理解されるだろう。
【0101】
局所投与の場合、本発明のゲル製剤を使って吸収性ガーゼドレッシングの繊維をコーティングすることにより、創傷治癒包帯を形成させた後、それを創傷の上に置くことができる。この用途には低粘度製剤が好ましい。創傷治癒包帯は、創傷治癒活性を持つラクトフェリンを含有する水性ゲル溶液にガーゼドレッシングを浸漬することによって製造することができる。次に、コーティングされたガーゼ繊維が創傷と接触して創傷治癒速度を刺激するように、その包帯を創傷に適用することができる。
【0102】
本発明が内部創傷または切開創傷に適用されるゲルである応用例では、ゲル形成ポリマーが生分解性であることが好ましい。天然ポリマーは一般に生分解性である。これらの例はコラーゲン、グリコサミノグリカン、ゼラチンおよびデンプンである。セルロシックス(cellulosics)は生分解性でない。ビニルポリマーなどの合成ポリマーは分解性でない。本明細書に記載するポリマーの生分解性は当業者にはよく知られている。
【0103】
本発明のさらにもう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、その創傷の近傍にあるラクトフェリンの量を増加させることによって、局所免疫系を補うステップを含む方法である。好ましくはラクトフェリンは創傷に局所投与される。
【0104】
さらにまた、本発明は、創傷を処置する方法であって、全身循環中のラクトフェリン量を増加させることによって全身免疫系を補うステップを含む方法も提供する。好ましくはラクトフェリンは、たとえば筋肉内経路、静脈内経路、腹腔内経路、眼内経路、関節内経路または手術野への投与などを含む非経口経路によって投与される。
【0105】
さらにまた、もう一つの実施態様は、創傷を処置する方法であって、対象の胃腸管内のラクトフェリン量を増加させることによって粘膜免疫系を補うステップを含む方法である。
【0106】
さらなる実施態様として、本発明は、創傷を負っている対象の免疫系を強化する方法であって、その対象にラクトフェリン組成物を投与することによる方法を提供する。投与様式に依存して、免疫系の異なる機構が強化される。たとえば、組成物の局所投与は局所免疫系の強化、すなわち創傷の近傍にある免疫系の強化をもたらす。組成物の非経口投与は、全身免疫系の強化をもたらす。さらにまた、組成物の経口投与は粘膜免疫系の強化ももたらし、それもまた全身作用をもたらすことができる。さらなる実施態様では、ラクトフェリン組成物をたとえばEDTAなどの金属キレート剤と組み合わせて投与する。
【0107】
免疫系は、局所免疫系であるか、全身免疫系であるか、粘膜免疫系であるかにかかわらず、サイトカインおよび/またはケモカインを刺激するラクトフェリンによって、強化されると考えられる。典型的サイトカインには、胃腸管中のインターロイキン-18およびGM-CSFがあり、これらは免疫細胞を強化するか、または免疫細胞の産生を刺激することが知られている。たとえばインターロイキン-18は、創傷に感染する細菌を殺すことができるナチュラルキラー細胞またはTリンパ球を強化する。特定の実施態様では、インターロイキン-18(IL-18)がCD4+、CD8+およびCD3+細胞を強化する。IL-18が、インターロイキン-12およびインターロイキン-2と相乗的に作用してリンパ球IFN-ガンマ産生を刺激するTh1サイトカインであることは、当業者には知られている。他のサイトカインまたはケモカイン、たとえばIL-12、IL-1b、MIP-3α、MIP-1αまたはIFN-ガンマなど(ただしこれらに限らない)も強化されうる。他のサイトカインまたは酵素、たとえばIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-αまたはマトリックスプロテイナーゼなど(ただしこれらに限らない)は阻害されうる。さらに、IL-18またはGM-CSFは、創傷修復に関与する細胞、たとえばケラチノサイト、内皮細胞、線維芽細胞、および筋線維芽細胞など(ただしこれらに限らない)の産生または活性を刺激することが考えられる。さらに、ラクトフェリンはTNF-アルファの産生を阻害し、それが炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【0108】
E.併用処置
本発明組成物の有効性を増加させるには、本発明の組成物を創傷の処置に有効な他の薬剤、たとえば成長因子、皮膚置換療法、酵素的および外科的創面切除、湿性創傷ドレッシング、洗浄剤、抗生物質などと併用することが望ましいかもしれない。そのような創傷治癒剤は、皮膚細胞の成長速度を高め、皮膚細胞への血液供給を増強し、創傷に感染する細菌に対する免疫応答を促進し、細菌を死滅させ、虚血組織を清掃し、創傷の閉鎖を促進することにより、対象の創傷に負の影響を及ぼすことができる。より一般的には、これら他の創傷治癒剤は、創傷の治癒を促進するのに有効な併用量で与えられる。この工程には、本発明の組成物と、薬剤または複数の因子とを同時に投与することが含まれうる。これは、両薬剤を含む単一の組成物または薬物製剤を投与することによって達成するか、または一方の組成物がラクトフェリン組成物を含み他方の組成物が第2の薬剤を含む2つの異なる組成物または製剤を、同時に投与するか、もしくはこの効果が互いに重なり合うように充分短時間の間に投与することによって、達成することができる。
【0109】
あるいは、本発明の組成物を、他の創傷治癒剤処置の前または後に、数分から数週間の範囲の間隔を空けて投与することもできる。他の創傷治癒剤と本発明の組成物とを創傷に個別に投与または適用する実施態様では、薬剤とヒトラクトフェリン組成物とが創傷に対して有利な複合効果をまだ発揮することができるように、一般に、各送達時の間には、あまり時間を置かないようにする。そのような場合は、創傷を両方の治療様式と(創傷に両方の治療様式を)互いに約1〜14日以内に、より好ましくは互いに約12〜24時間以内に接触させる(投与する)ことができると考えられる。しかし状況によっては、処置期間をかなり延長することが望ましい場合もあり、その場合は、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)〜数週間(2、3、4、5、6、7または8週間)が経過する。
【0110】
1.成長因子
創傷治癒療法として、成長因子に基づく処置があげられる。レグラネックス(Regranex)(ベカプレルミン-BBゲル)、AuTolo-Gel(自己活性化血小板放出物)、Procuren(自己トロンビン誘導血小板放出物)などが、その例であるが、これらに限るわけではない。成長因子は、たとえば肉芽形成、すなわち新しい高度に血管化された結合組織の形成を促進すること、上皮細胞、血管内皮細胞および他の皮膚細胞の増殖、分化および移動を刺激すること、コラーゲン、コラゲナーゼおよび細胞外マトリックスの産生を促進することなどによって作用する。
【0111】
2.皮膚置換療法
たとえば、Apligraf(二層型の生きた皮膚)、Trancyte(ヒト線維芽細胞由来の一時的な皮膚代替物)、Dermagraft(永久一層型皮膚代替物)、Epicel(生きている一層型の人工皮膚)、Integra(コラーゲンに基づく皮膚再生テンプレート)、AlloDerm(ヒトの死体から製造される単層型人工皮膚)、CCS(生きている培養人工皮膚)などがあげられる。
【0112】
3.酵素的および外科的創面切除(debridment)
創面切除は虚血組織または死んだ組織を清掃するプロセスまたは手順である。酵素的デブリーダーには、Accuzymeパパイン-尿素創面切除軟膏およびコラゲナーゼSantylなどがある。外科的創面切除は、創傷中の虚血組織または死んだ組織の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。創面切除は、たとえば1、2、3、4、5、6または7日ごとに、または1、2、3、4および5週ごとに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月ごとに繰り返すことができる。酵素的創面切除処置も同様にさまざまな投与量を持ちうる。さらに、本発明を酵素的または外科的創面切除と一緒に使用することもできると考えられる。
【0113】
4.ドレッシング
創傷治癒療法には、ドレッシングに基づくさまざまな処置が含まれる。ドレッシングの種類には、たとえば無定形ヒドロゲル、ヒドロゲルシート、吸収剤、アルギナート、生物学的および合成ドレッシング、コラーゲン、コンポジット、コンタクトレイヤー、弾性ガーゼ、フォーム、ガーゼおよび不織ドレッシング、親水コロイド、含浸ドレッシング、シリコーンゲルシート、銀ドレッシング、透明フィルム、創傷フィラーなどがある。
【0114】
5.洗浄剤
たとえば、Biolex、Lamin、Wound Wash Saline、Techni-Care、CarraKlenz、DiaB Klenz、MicroKlenz、RadiaCare Klenz、UltraKlenz、Comfee Sea-Clens、Optipore Sponge、Saf-Clens、Shur-Clens、Dermagran、DermaKlenz、Dumex、Gene Klenz、GRX、Allclenz、Restore、Hyperion、Medi Tech, Skintegrity、MPM Antimicrobial、ClinsWound、Septicare、Lobana Salineなどがある。
【0115】
6.抗微生物剤
たとえば、Sulfamylonクリーム、Thermazeneクリーム(1%スルファジアジン銀)、カデキソマー-ヨウ素パッドまたはゲルなどがある。静脈内抗菌剤の例には、イミペネム/シラスタチン、β-ラクタム/β-ラクタマーゼ阻害剤(アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム)、および広域セファロスポリン(セフォキシチン、セフチゾキシム、セフタジジム)などがあるが、これらに限るわけではない。他の例として、Bensal HP、Barri-Care、Care-Creme、Formula Magic、Baza、Micro-Guard、Ca-Rezz、Diabet-X製品、Mitrazol散剤、PiercingCare、Triple Care製品、および種々の抗真菌クリーム剤および散剤などがあげられるが、これらに限るわけではない。
【0116】
7.圧迫
動的圧迫の例には、ArtAssist、ArterialFlow、EdemaFlow、PulStar、Circulator Boot、Flowplus、Flowpress、Flowtronなど(ただしこれらに限らない)のポンプおよびスリーブがある。静的圧迫には、たとえば脚ラップ材、手袋、靴下、レッグウェア、レッグサポート、アームスリーブ、止血パッド、圧迫下着類、非弾性バンド、高圧迫包帯、亜鉛含浸包帯、弾性包帯などがあるが、これらに限るわけではない。
【0117】
8.酸素療法
全身高圧酸素療法の例には、患者一人が横になるための区画、患者一人が25度の角度まで起きあがっておくための区画、患者一人が90度の角度まで起きあがっておくための区画、複数の患者を同時に処置するための区画などがあるが、これらに限るわけではない。局所高圧酸素療法の例には、下肢潰瘍用の使い捨て局所高圧酸素システム、褥瘡、術後および外傷創傷用の使い捨て局所高圧酸素システムなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0118】
9.水治療法、電気療法
たとえば、乾式水治療法機、創傷区域の暖かさと湿度を維持する中間層および全層創傷用の非接触式温熱創傷ケアシステム、急性および慢性創傷における浮腫および疼痛を処置するために非温熱パルス高周波高ピーク出力電磁エネルギーを提供するシステム、湿潤創傷治癒のために制御された局所的陰圧および支持を用いるシステム、さまざまな先端部を持つ、さまざまな創傷を部位特異的に処置するための、15psi未満の可変圧力を持つパルス灌注器、さまざまな創傷灌注および渦巻システムなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0119】
10.栄養療法製品
たとえば、創傷治癒を支援するための等張性高タンパク質・繊維含有経管栄養剤、高タンパク質・コレステロール非含有栄養補助剤などがあるが、これらに限るわけではない。
【0120】
11.粘着剤、接着剤、密封剤、パッチ剤
たとえば、Dermabond、CoStasis、CoSeal、BioGlue、FibRx、FocalSeal、FloSeal、AutoSeal、Indermil、Syvek、LiquiSheild、LiquiBand、Quixil、CryoSeal、VIGuard Fibrin Sealant、ならびに種々のテープ、閉鎖材および固定製品などがあるが、これらに限るわけではない。
【0121】
12.局所創傷治癒促進剤
たとえば、慢性創傷の毛細血管床を刺激する局所エアロゾル剤、亜鉛栄養製剤を含む皮膚保護材、瘢痕を柔らかく滑らかな感じにするのに役立つ局所ゲル、分解したタンパク質を洗浄し、健常な肉芽形成を促進し、局所炎症を制御し、創傷臭を減少させる親水性軟膏、マクロファージを選択的に動員する油水創傷ドレッシング乳剤などがあるが、これらに限るわけではない。
【0122】
13.他の生物学的療法剤
本発明と一緒にアジュバント療法も使用することができる。アジュバントまたは免疫調節剤の使用には、腫瘍壊死因子、インターフェロン-アルファ、ベータおよびガンマ、IL-2および他のサイトカイン、F42Kおよび他のサイトカイン類似体、またはMIP-1、MIP-1ベータ、MCP-1、RNATESおよび他のサイトカインなどが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0123】
F.実施例
本発明の好ましい実施態様を例示するために、以下に実施例を記載する。下記の実施例で開示する技術は、本発明の実施に際してうまく機能することを本発明者らが見いだした技術に相当し、従って本発明の好ましい実施の形態を構成するとみなしうることを、当業者は理解すべきである。しかし、ここに開示する特定の実施態様には多くの変更を施すことができ、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは同等の結果が得られることを、当業者は、本明細書の開示に照らして、理解すべきである。
【実施例1】
【0124】
rhLFカルボマーゲルの製造
グレード980のポリアクリル酸またはカルボマーゲル(カーボポール980)を本発明に従って製造した。
【0125】
0%、0.1%、0.3%、1%、2.5%および8.5%の理論表示力価を持つ6つの30g rhLFゲルを製造した。このゲルの処方は表1および表2に示すとおりだった。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
前もって重量を計測しておいた125mlステンレス鋼製ビーカー中でゲルを混合し、Caframo製ミキサー(モデルBDC1850、カナダ・オンタリオ州)を使って混合した。通常の混合速度は、直径1/2インチの羽根を持つステンレス鋼製撹拌棒を使って、600rpmとした。カーボポール980をリン酸緩衝液(6mM第一リン酸ナトリウム一水和物、9mM第二リン酸ナトリウム七水和物、50mM NaCl、pH7)に加えることによって、ゲルを製造した。第1ゲルを製造するために使用したリン酸緩衝液の体積を、表2の第4欄(「リン酸緩衝液の体積」という見出しを付けた欄)に示す。カーボポール980を完全に水和させた後(通常45分以内)、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびフェノキシエタノールを加え、次にクエン酸を加え、次にエデト酸二ナトリウムを加えた。最後にジメチコーンを加えた。これらのゲルのpHは、pH3〜3.5の範囲にあった。この時点で、20%水酸化ナトリウムを加えてpHを上昇させた。pHが約6に到達したら、(表2の第3欄「原液の量」に示すように)rhLFを加えた。次に、pHを7まで上昇させた。上記の手順に従わなかったのは8.5%w/w rhLFゲルの場合だけである。この場合は、必要な原液の体積が大きかったので、rhLFを含有する26mlのリン酸緩衝液に、カーボポール980を直接添加した。従って、8.5%w/wゲル中のrhLFは、約30〜45分の間、3〜3.5のpHにさらされた。
【0129】
ブルックフィールドDV-III+レオメーターを使って、ゲルの粘度を三重に測定した(0.5mlの各ゲル)。条件は、温度:25℃、平衡時間:5分、回転速度:1.7RPM、回転時間:5分とした。結果を表3に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
標準曲線を作成するために、100mg/ml rhLF原液(ロット番号E01764-03L)を脱イオン(DI)水に希釈することによって、1.563〜25μg/mlのrhLF標品を調製した。実試料はすべて、3mlアルミニウム圧着チューブの上部、中央部および底部から採取し、DI水中に約10μg/mlの理論濃度で調製した。全ての実ゲルは、均一性の仕様を満たしていた(±10%)。
【実施例2】
【0132】
全層開放創上のカルボマーゲルからのrhLFの生物学的利用率
それぞれ3匹のICR雄マウス(体重22±2グラム)からなる5群を使用した。ヘキソバルビタール(90mg/Kg,IP)麻酔下で、肩部および背部を剃毛した。鋭い穿刺具(ID 12mm)を使って、肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した。
【0133】
表4に示すように、傷害直後に、低用量および高用量の組換えヒトラクトフェリン(rhLF)を局所投与するか(カーボポール980ゲル製剤)、または1用量を静脈内投与した(溶液剤)。創傷傷害直後に20gのマウスにrhLF用量を与えた。次の用量を用いた:(1)偽薬,0.04ml/マウス,局所;(2)50mg/Kg,0.04mlの2.5%ゲル;(3)170mg/Kg,0.04mlの8.5%ゲル。試験化合物を適用してから0、15、30、60、120および240分後に、3匹(雄1匹、雌2匹)を屠殺した。屠殺した動物を放血し、血液をEDTAで抗凝固処理し、血漿をEDTA血から分離し、試料を急速冷凍し、−80で保存した。
【0134】
【表4】

【0135】
OXIS Health Products,Inc.のBIOXYTECH(登録商標)Lacto F EIAキットを製造者の指示に従って使用することにより、血漿中のrhLF濃度を決定した。波長490nmでの吸光度を測定することによって、結果を得た。
【0136】
達成されたピーク血漿濃度を、IV投与後のピークrhLF血漿濃度と比較して計算した。50mg/Kg(151ng/ml)および170mg/Kg(75.1ng/ml)の用量で開放全層創傷に局所ゲル適用後のrhLFの用量調整ピーク濃度は、5mg/kg IV rhLF(92,455.1ng/ml)後の規格化ピーク濃度の0.5%未満だった(表5参照)。50mg/Kg局所ゲル用量での血漿rhLF時間経過の、170mg/Kgに規格化した平均濃度曲線下面積(AUC)によって計算される総血漿生物学的利用率は18.4μg・分/mlで、0.5%未満の絶対全身生物学的利用率を示した。170mg/Kg局所ゲル用量でのAUCは9.6μg・分/mlであり、これも0.5%未満の絶対全身生物学的利用率に相当した(表5参照)。
【0137】
【表5】

【実施例3】
【0138】
創傷治癒実験におけるrhLFカーボポールゲルの効力
rhLFカーボポリマーゲルを2.5%および8.5%の濃度強度で正常マウスおよび糖尿病db/dbマウスの全層開放創に直接適用した。糖尿病(db/db)マウスでは、治癒速度低下の少なくとも一因であるいくつかの成長因子および受容体の発現レベルが低くなっている。
【0139】
マウスを麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)を使って、肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した(開放全層創傷)。異なる用量のrhLFを、正常マウスの場合は11日間、糖尿病db/dbマウスの場合は20日間にわたって毎日1回、創傷に局所適用(創傷1箇所あたり0.02ml)することにより、治癒速度を陰性対照の治癒速度と比較した。陰性対照は偽薬ゲルとした。いくつかの時点で、創傷区域を透明なプラスチック上にトレースし、イメージアナライザーを使って測定した。75%創傷閉鎖に到達した動物の発生率を評価し、フィッシャーの正確検定を使って差を比較した。差はp<0.05水準で統計的に有意であるとみなした。計算50%創傷閉鎖到達時間(CT-50)を多項式(2次)によって測定し、スチューデントt検定を使って差の有意性を評価した。
【0140】
図1は、0.1%〜8.5%のrhLFゲルによって、75%創傷閉鎖の発生率が、正常マウスでは12日目に77%(p<0.01)、糖尿病db/dbマウスでは15日目に66%改善されたことを示している(p<0.05)。下記の表6は、正常マウスについて、75%創傷閉鎖に関する各濃度での個々の値と、計算50%創傷閉鎖到達時間(CT-50)を示している。
【0141】
【表6】

【0142】
これらの結果に基づいて、局所、経口または非経口ラクトフェリンは、創傷に感染する細菌の死滅、IL-18、IL-12、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、またはIFN-γの刺激、およびIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、またはマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害をもたらすと考えられる。さらに、IL-18またはGM-CSFは免疫細胞および創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激し、TNF-アルファは炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【実施例4】
【0143】
正常マウスにおけるrhLF、CGS-21680、およびレグラネックス(Regranex)の創傷治癒時間経過
それぞれ7匹のICR雄マウスからなる群を麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)を使って、肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した。3、5、7、9および11または12日目に透明なプラスチックシート上にトレースした創傷区域を、イメージアナライザーで定量化した。
【0144】
rhLF溶液、賦形剤(緩衝液)または陽性対照(rhPDGF)を、傷害直後に局所適用し、その後は、合計10日間または11日間連続して、毎日1回、局所適用した。各測定時点での処置群と賦形剤群との比較には、対応のないスチューデントのt検定を適用した。差はP<0.05で統計的に有意であるとみなした。CGS-21680はアデノシンA2A受容体アゴニストであり、創傷治癒の促進には極めて有効であり、実際、レグラネックス(Regranex)(商標)よりも迅速な創傷治癒を助長するのに極めて有効であると、先に記載されている。慢性創傷(糖尿病神経障害性潰瘍)用として現在市販されている唯一の生物学的処置薬であるrhPDGF(組換えヒト血小板由来成長因子-BB,レグラネックス(Regranex)(商標),ベカプレルミン)を、100マイクログラム/グラム(0.01%)の承認力価で、陽性対照として使用した。
【0145】
図2AはrhLFがCGS-21680に匹敵する治癒効果を発揮したことを示している。このことから、rhLFはレグラネックス(Regranex)(商標)(rhPDGF,ベカプレルミン)よりも迅速な創傷修復を促進することが示唆される。図2Bは、rhLFがレグラネックス(Regranex)(商標)よりも高度な創傷治癒を促進することを裏付けている。
【0146】
これらの結果に基づいて、局所、経口または非経口ラクトフェリンは、創傷に感染する細菌の死滅、IL-18、IL-12、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3αまたはIFN-γの刺激、およびIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、またはマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害をもたらすと考えられる。さらに、IL-18またはGM-CSFは免疫細胞および創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激し、TNF-アルファは炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【実施例5】
【0147】
創傷治癒実験におけるrhLF局所溶液とレグラネックス(Regranex)の効力の対比
マウスを麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)で肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した(開放全層創傷)。異なる用量のrhLFを、正常マウスの場合は11日間、糖尿病db/dbマウスの場合は20日間にわたって毎日1回、創傷に局所適用(創傷1箇所あたり0.02ml)することにより、治癒速度を陰性対照および陽性対照の治癒速度と比較した。陰性対照、すなわち偽薬は、rhLF賦形剤(PBS溶液)とした。
【0148】
慢性糖尿病性潰瘍処置用の承認薬であるrhPDGF(組換えヒト血小板由来成長因子-BB,レグラネックス(Regranex),ベカプレルミン)を、100マイクログラム/グラム(0.01%)の承認力価で、陽性対照として使用した。いくつかの時点で、創傷区域を透明なプラスチック上にトレースし、イメージアナライザーを使って測定した。75%創傷閉鎖に到達した動物の発生率を評価し、フィッシャーの正確検定を使って差を比較した。差はp<0.05水準で統計的に有意であるとみなした。
【0149】
図3は、5回の実験から得たプールデータを示す。これは、創傷修復に関するrhLFの効力が、0.1%〜10%の用量で、レグラネックス(Regranex)よりも優れていることを証明している。0.1%〜10%のrhLFで処置した動物(147匹)では、実験最終日における75%創傷閉鎖の発生率が、偽薬に対して34%増加し(42匹,p<0.0001)、レグラネックス(Regranex)に対して32%増加した(21匹,p<0.001)。健常マウスでは、1%rhLFにより、このパラメータが、偽薬に対して38%、ベカプレルミン(レグラネックス(Regranex)(商標))に対して36%(p<0.01)、有意に(p<0.01)増加した。創傷修復機能障害を持つ糖尿病db/dbマウスでは、1%rhLFゲルにより、15日目における75%創傷閉鎖の発生率が、偽薬に対して83%増加した(p<0.01)。
【0150】
これらの結果に基づいて、局所、経口または非経口ラクトフェリンは、創傷に感染する細菌の死滅、IL-18、IL-12、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、またはIFN-γの刺激、およびIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、またはマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害をもたらすと考えられる。さらに、IL-18またはGM-CSFは免疫細胞および創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激し、TNF-アルファは炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【実施例6】
【0151】
創傷治癒実験における経口rhLFの効力
マウスを麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)で肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した。異なる用量のrhLFを、正常マウスの場合は11日間、糖尿病db/dbマウスの場合は20日間にわたって毎日1回、創傷に局所適用することにより、治癒速度を陰性対照の治癒速度と比較した。陰性対照、すなわち偽薬は、rhLF賦形剤(PBS溶液)とした。いくつかの時点で、創傷区域を透明なプラスチック上にトレースし、イメージアナライザーを使って測定した。75%または100%創傷閉鎖に到達した動物の発生率を評価し、フィッシャーの正確検定を使って差を比較した。差はp<0.05水準で統計的に有意であるとみなした。
【0152】
いくつかの時点で、創傷区域を透明なプラスチック上にトレースし、イメージアナライザーを使って測定した。75%創傷閉鎖に到達した動物の発生率を、正常マウスの場合は9〜12日目に、また糖尿病マウスの場合は15〜19日目に評価し、フィッシャーの正確検定を使って差を比較した。差はp<0.05水準で統計的に有意であるとみなした。
【0153】
図4Aは、健常マウスに0.5〜4.5mg/Kgの用量で与えられた経口rhLFが、75%創傷閉鎖の発生率に経口偽薬と比較して43%の改善をもたらし、最高用量では52%の改善を示した(p<0.01)ことを表している。図4Bは、4.5〜65mg/KgのrhLF用量で糖尿病db/dbマウスに与えられた経口rhLFが、15日目における75%創傷閉鎖の発生率を偽薬との比較で75%増加させ、試験した最高用量では偽薬に対して83%の増加(p<0.01)が達成されたことを示している。同様に、図4Cは、糖尿病db/dbマウスへの経口rhLFが4.5〜65mg/Kgの用量で、19日目までの100%創傷閉鎖の発生率を75%増加させ、最高用量では偽薬との比較で100%の増加(p<0.01)に達したことを示している。
【0154】
これらの結果に基づいて、局所、経口または非経口ラクトフェリンは、創傷に感染する細菌の死滅、IL-18、IL-12、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、またはIFN-γの刺激、およびIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、またはマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害をもたらすと考えられる。さらに、IL-18またはGM-CSFは免疫細胞および創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激し、TNF-アルファは炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【実施例7】
【0155】
感染創傷における局所および経口rhLF創傷治癒実験
細菌感染創傷における局所rhLFの効力を調べた。この動物モデルは臨床上重要な状況に相当する。なぜなら、糖尿病患者は感染潰瘍を持つことが多く、そのような感染は創傷修復障害の一因になると考えられるからである。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は糖尿病性足潰瘍に感染する最も一般的な細菌の一つであり、死亡率の増加に関連している。
【0156】
それぞれ7匹のICR雄マウスからなる群を麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)を使って、肉様層および付着組織を含む皮膚を除去した。穿刺直後に、9.6×105CFU/0.02ml/マウスの黄色ブドウ球菌(Smith株)を各動物の創傷領域に適用した。3、5、7、9および12日目に透明なプラスチックシート上にトレースした創傷区域を、イメージアナライザーで定量化した。
【0157】
局所rhLF、経口rhLF、賦形剤(緩衝液)または陽性対照(レグラネックス(Regranex) 0.01%)を、傷害および細菌適用直後に適用し、その後は、合計11日間連続して毎日1回適用した。ラクトフェリンを経口適用する場合は、胃管栄養法(可撓性チューブを使って動物に直接給餌)により、0.130mlのrhLF溶液をマウスに与えた。75%創傷閉鎖に到達した動物の発生率を評価し、フィッシャーの正確検定を使って差を比較した。差はP<0.05水準で統計的に有意であるとみなした。
【0158】
図5Aおよび図5Bは、局所rhLFにより、75%閉鎖の発生率が偽薬との比較で86%増加し(p<0.01)、レグラネックス(Regranex)との比較で71%増加した(p<0.05)ことを示している。図5Bは、経口rhLFにより、75%閉鎖の発生率が偽薬との比較で72%改善した(p<0.05)ことを示している。
【0159】
これらの結果に基づいて、局所、経口または非経口ラクトフェリンは、創傷に感染する細菌の死滅、IL-18、IL-12、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、またはIFN-γの刺激、およびIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、またはマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害をもたらすと考えられる。さらに、IL-18またはGM-CSFは免疫細胞および創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激し、TNF-アルファは炎症に関与する細胞を阻害すると考えられる。
【実施例8】
【0160】
最適な局所rhLF用量の決定
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒を促進する最低経口rhLF用量を決定する。rhLFの用量を減らして、さらなる創傷修復効果が認められなくなるまで、体系的に試験する。rhLFの効力を増加させて、有効であるrhLF用量をさらに低下させる試みとして、EDTAを加える。局所賦形剤を陰性対照として使用する。
【実施例9】
【0161】
最適な経口rhLF用量の決定
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒を促進する最低経口rhLF用量を決定する。rhLFの用量を減らして、さらなる創傷修復効果が認めれなくなるまで、系統的に試験する。rhLFの効力を増加させて、有効であるrhLF用量をさらに低下させる試みとして、EDTAを加える。経口賦形剤を陰性対照として使用する。
【実施例10】
【0162】
併用試験
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒速度を決定する。経口rhLFと局所rhLFとの併用および経口rhLFと局所レグラネックス(Regranex)との併用を、EDTAありおよびEDTAなしで、試験する。経口賦形剤+偽薬ゲルおよび経口賦形剤+レグラネックス(Regranex)を、それぞれ陰性対照および陽性対照とする。経口rhLF+偽薬ゲルおよび経口賦形剤+局所rhLFを相乗作用対照とする。
【実施例11】
【0163】
ドレッシングで覆われた創傷におけるrhLFゲルおよび液状食塩水製剤の効力の比較
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒速度を決定した。rhLFの液状製剤0.2mg/ml(0.02mlの10mg/ml溶液)を創傷に適用する。次に、創傷区域を食塩水で湿らせたガーゼドレッシングで覆う。この工程を10日間毎日繰り返す。10日間にわたって毎日、rhLFゲル0.2mg[0.020mLの10mg/mlゲル]を創傷に直接適用し、ドレッシングで覆う。10日間にわたって毎日、0.02mlのrhLF溶液賦形剤および偽薬ゲルを創傷に適用し、ドレッシングで覆う。レグラネックス(Regranex)を陽性対照とし、同様の方法で、0.02ml(100μg/ml臨床濃度)を局所適用する。
【実施例12】
【0164】
rhLFゲルおよびドレッシングの異なる適用方法の効力
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒速度を決定する。10日間にわたって毎日、rhLFゲル0.2mg[0.020mLの10mg/mlゲル]を創傷に直接適用し、食塩水で湿らせたガーゼドレッシングで覆う。もう一つのマウス群では、ドレッシングを一日おきに換える。第3の群では、レグラネックス(Regranex):rhLFゲルを創傷に適用し、ドレッシングで覆う。12時間後に、潰瘍を食塩水または水で静かにすすいで、残っているゲルを除去し、創傷を新しいドレッシングでさらに12時間覆う。偽薬ゲル0.02mlおよびレグラネックス(Regranex) 0.02ml(100μg/ml)をそれぞれ陰性対照および陽性対照とし、最後の方法を使って適用する。
【実施例13】
【0165】
rhLFゲル:毎日1回と毎日2回との比較
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける創傷治癒速度を決定する。rhLFゲル0.2mg/創傷/日[0.020mLの10mg/mlゲル]を10日間にわたって創傷に直接適用する。第2の動物群には、0.1mgを毎日2回(BID)、12時間の間隔を開けて、適用する。1日1回適用する偽薬ゲル0.02mlおよびレグラネックス(Regranex) 0.02ml(100μg/ml)を、それぞれ陰性対照および陽性対照とする。
【実施例14】
【0166】
局所rhLFのみまたはレグラネックス(Regranex)と組み合わせた局所rhLFの効力
実施例5の実験プロトコールを使って、マウスにおける治癒速度を決定する。rhLFゲル0.2mg/創傷/日[0.020mLの10mg/mlゲル]を10日間にわたって創傷に直接適用する。第2のマウス群には、rhLF 0.2mg/創傷とレグラネックス(Regranex) 2μg/創傷(0.02ml/創傷,100μg/ml)とを与える。第3群には、rhLF 0.02mg/創傷とレグラネックス(Regranex) 0.002μg/創傷とを与えて、潜在的相乗作用について調べる。偽薬ゲル0.02ml、偽薬+レグラネックス(Regranex) 0.02ml(100μg/ml)、およびレグラネックス(Regranex)のみを、それぞれ陰性対照、相乗作用対照、および陽性対照とする。
【実施例15】
【0167】
糖尿病性潰瘍を持つ患者における局所rhLFの用量増加、薬物動態および薬力学試験
これは、慢性糖尿病性潰瘍を持つ患者における局所rhLFゲルの用量増加投与法を評価し、1%から8.5%までのrhLF濃度で最大耐量がもしあれば、それを決定するために計画される、ヒトでの第I/II相14日用量増加試験である。rhLFを、その潰瘍治癒促進能力について評価する。
【実施例16】
【0168】
糖尿病性潰瘍を持つ患者における経口rhLFの用量増加、薬物動態および薬力学試験
試験計画は、rhLFがEDTAと共に、およびEDTAを伴わずに、経口投与される点以外は、実施例14の試験計画と同様である。
【実施例17】
【0169】
糖尿病性潰瘍を持つ患者における偽薬および標準治療と対比したrhLFの試験
これは、ヒトでの無作ため化二重盲偽薬対照多施設試験である。これは、2つの用量レベルでのrhLFの局所または経口投与による処置の効力を、偽薬、レグラネックス(Regranex)、標準治療のみの場合と比較して評価するために、糖尿病性慢性潰瘍を持つ患者で行われる12週間第II相臨床試験である。効力は、部分創傷閉鎖および完全創傷閉鎖の発生率ならびに治癒までの時間によって評価する。
【実施例18】
【0170】
カルボマーゲルからのrhLFの放出
いくつかの濃度強度のrhLF-カーボポール-980ゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について調べ、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例19】
【0171】
他のrhLF-ビニルポリマーゲル試験
ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールポリマーに基づくrhLF含有ゲルを製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、タンパク質濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらのビニルポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。これらのビニルポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度のこれらビニルポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例20】
【0172】
rhLF-多糖ポリマーゲルの試験
rhLF-多糖ポリマーゲル製剤を製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、タンパク質濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらの多糖ポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。多糖ポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度の多糖ポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例21】
【0173】
rhLF-グリコサミノグリカンポリマーゲルの試験
rhLF-グリコサミノグリカンポリマーゲル製剤を製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、タンパク質濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらのグリコサミノグリカンポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。グリコサミノグリカンポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度のグリコサミノグリカンポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例22】
【0174】
rhLF-タンパク質ポリマーゲルの試験
rhLF-タンパク質ポリマーゲル製剤を製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、タンパク質濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらのタンパク質ポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。タンパク質ポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度のタンパク質ポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例23】
【0175】
rhLF-プルロニックポリマーゲルの試験
rhLF-プルロニックポリマーゲル製剤を製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、プルロニック濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらのプルロニックポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。プルロニックポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度のプルロニックポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例24】
【0176】
rhLF-アクリルアミドポリマーゲルの試験
rhLF-アクリルアミドポリマーゲル製剤を製造する。実施例1で説明したように、ゲルの粘度はブルックフィールドDV-III+レオメーターによって決定し、アクリルアミド濃度の均一性はBCAアッセイを使って測定する。実施例2で説明したように、正常マウスの開放全層創傷上にこれらのアクリルアミドポリマーゲルを適用した後、生物学的利用率を評価する。アクリルアミドポリマーゲル製剤の創傷治癒活性の効力を、実施例3〜5で説明したように、マウスモデルで試験する。いくつかの濃度強度のアクリルアミドポリマーゲルを、剤形からの経時的なrhLFの放出動態について試験し、インビトロ拡散系の受容緩衝液中に検出する。
【実施例25】
【0177】
N-1切除体の割合が異なるrhLF調製物による創傷治癒速度
N-1切除体のパーセンテージが異なるrhLF調製物の生物学的活性を、創傷治癒のマウスモデルを使って比較した。それぞれ7匹のマウスからなる群を麻酔し、各動物の肩部および背部を剃毛し、鋭い穿刺具(ID 12mm)を使って、肉様層と付着組織を含む皮膚を除去した(開放全層創傷)。rhLF(マウス1匹あたり20マイクログラム)または偽薬を11日間にわたって1日1回、創傷に局所適用した。いくつかの時点で、創傷区域を透明なプラスチック上にトレースし、イメージアナライザーで測定した。CT50(50%閉鎖までの時間)を評価した。(実験AN-W2、W3、W9)。
【0178】
表6に示すように、全く無傷なタンパク質を含有するrhLF調製物と、27%〜42%のN-1切除体を含有するrhLF調製物は、いずれも、それぞれの偽薬との比較で統計的に有意な効力を示した。改善率はバッチ間で似ており、統計的に区別できなかった。
【0179】
【表6】

【実施例26】
【0180】
N-1切除体の割合が異なるrhLF調製物による創傷閉鎖発生率
実施例25で説明した実験において、80%創傷閉鎖の発生率を、偽薬またはrhLFで処置したマウスで測定した。同じ実験の偽薬動物に対する80%創傷閉鎖の発生率の絶対増加を、9日目(7001およびL007)または12日目(L005)に決定した。
【0181】
表8に示すように、全く無傷なタンパク質を含有するrhLF調製物と、27%〜42%のN-1切除体を含有するrhLF調製物は、いずれも効力があり、それぞれの偽薬との比較で統計的に有意に増加した創傷閉鎖が起こった。
【0182】
【表8】

【引用文献】
【0183】
本明細書で言及したすべての特許および刊行物は、本発明が関係する技術分野の当業者の水準を示すものである。すべての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物が参照によってここに援用されることを個別に明示したかのように、参照によりここに援用されるものとする。
米国特許第4,554,101号、
米国特許第5,220,007号、
米国特許第5,284,760号、
米国特許第5,354,670号、
米国特許第5,366,878号、
米国特許第5,389,514号、
米国特許第5,571,691号、
米国特許第5,571,697号、
米国特許第5,571,896号、
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米国特許第5,789,166号、
米国特許第5,919,913号、
米国特許第6,066,469号、
米国特許第6,080,559号、
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【0184】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、これには、本願請求項によって定義される発明から逸脱することなく、さまざまな変更、置換および改変を施すことができると理解すべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載したプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施態様に限定されないものとする。当業者には本発明の開示からすぐに理解されるだろうが、既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップであって、本明細書に記載の対応する実施態様と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果をもたらすものは、利用することができる。従って、本願請求項は、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップを、その範囲に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】健常マウスおよび糖尿病マウスにおいて、組換えヒトラクトフェリンカーボポールゲルを投与した場合および投与しなかった場合の、75%創傷閉鎖の発生率を示す図である。
【0186】
【図2A】健常マウスにおいて、組換えヒトラクトフェリン溶液を局所投与した場合および局所投与しなかった場合の、創傷治癒の時間経過を示す図である。CGS-21680(図2A)を陽性対照として使用した。図2Aにおいて、は、緩衝液と比較して有意(p<0.05)であることを表し、**は、緩衝液と比較して著しく有意(p<0.01)であることを表し、#はCGS-21680と比較して有意(p<0.05)であることを表す。
【図2B】健常マウスにおいて、組換えヒトラクトフェリン溶液を局所投与した場合および局所投与しなかった場合の、創傷治癒の時間経過を示す図である。レグラネックス(Regranex)(商標)(図2B)を陽性対照として使用した。図2Bにおいて、は、緩衝液と比較して有意(p<0.05)であることを表し、’は、rhPDGF[レグラネックス(Regranex)]と比較して有意(p<0.05)であることを表し、**は、緩衝液と比較して著しく有意(p<0.01)であることを表し、”はrhPDGF[レグラネックス(Regranex)]と比較して著しく有意(p<0.01)であることを表す。
【0187】
【図3】局所rhLFが健常マウスにおける75%創傷閉鎖の発生率に及ぼす効果を表す図である。レグラネックス(Regranex)(商標)を陽性対照として使用した。
【0188】
【図4A】経口rhLFが、健常マウス(図4A)における75%創傷閉鎖の発生率に及ぼす効果を表す図である。
【図4B】経口rhLFが、糖尿病マウス(図4B)における75%創傷閉鎖の発生率に及ぼす効果を表す図である。
【図4C】経口rhLFが、糖尿病マウスにおける100%創傷閉鎖の発生率に及ぼす効果(図4C)を表す図である。
【0189】
【図5】組換えヒトラクトフェリン溶液を局所投与(図5A)または経口投与(図5B)して治癒させた感染創傷、および組換えヒトラクトフェリン溶液を投与せずに治癒させた感染創傷における、75%創傷閉鎖の発生率を表す図である。レグラネックス(Regranex)(商標)を局所陽性対照として使用した(図5A)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端ラクトフェリン変異体を含むラクトフェリン組成物。
【請求項2】
前記ラクトフェリンが組換えラクトフェリンである、請求項1のラクトフェリン組成物。
【請求項3】
前記N末端ラクトフェリン変異体が少なくともN末端グリシン残基を欠いている、請求項1のラクトフェリン組成物。
【請求項4】
前記N末端ラクトフェリン変異体がラクトフェリン組成物の少なくとも1%〜少なくとも50%を占める、請求項1の組成物。
【請求項5】
治療有効量のラクトフェリン組成物と、室温で約1〜約12,000,000cPの範囲の粘度を持つ医薬的に許容できるポリマーとを含む医薬組成物。
【請求項6】
前記ラクトフェリンが哺乳類ラクトフェリンである、請求項5の組成物。
【請求項7】
前記ラクトフェリンが組換えラクトフェリンである、請求項5の組成物。
【請求項8】
前記ラクトフェリンがN末端ラクトフェリン変異体である、請求項5の組成物。
【請求項9】
前記N末端ラクトフェリン変異体がラクトフェリン組成物の少なくとも1%〜少なくとも50%を占める、請求項8の組成物。
【請求項10】
ポリマーがビニルポリマー、多糖ポリマー、グリコサミノグリカンポリマー、タンパク質ポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマーおよびアクリルアミドポリマーからなる群より選択される、請求項5の組成物。
【請求項11】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマーがポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである、請求項10の組成物。
【請求項12】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーがF88またはF127である、請求項11の組成物。
【請求項13】
ラクトフェリン濃度が約0.0001%(w/w)〜約30%(w/w)の範囲内にある、請求項5の組成物。
【請求項14】
ポリマー濃度が約0.5%(w/w)〜約3.0%(w/w)であり、ポリマーが約500〜約13,000,000の平均分子量を持つ、請求項10の組成物。
【請求項15】
対象の創傷を処置する方法であって、その創傷を請求項5の組成物と接触させるステップを含む方法。
【請求項16】
創傷を処置する方法であって、治療有効量のラクトフェリン組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項17】
前記ラクトフェリン組成物が局所的、経口的または非経口的に投与される、請求項16の方法。
【請求項18】
前記ラクトフェリン組成物が経口投与される、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ラクトフェリン組成物と一緒に制酸薬を投与することをさらに含む、請求項18の方法。
【請求項20】
ラクトフェリン組成物と組み合わせて標準的な創傷治癒治療を施すことをさらに含む、請求項16の方法。
【請求項21】
投与が、少なくとも1週間〜少なくとも12週間にわたって前記組成物を投与することを含む、請求項16の方法。
【請求項22】
投与されるラクトフェリンの量が1日あたり約0.0001μg〜約100gである、請求項16の方法。
【請求項23】
前記組成物が、約0.0001%〜約30%のラクトフェリン濃度を持つ局所ゲル剤、溶液剤、カプセル剤または錠剤である、請求項16の方法。
【請求項24】
前記局所ゲル剤が、ビニルポリマー、多糖ポリマー、グリコサミノグリカンポリマー、タンパク質ポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、およびアクリルアミドポリマーからなる群より選択されるポリマーから構成される、請求項23の方法。
【請求項25】
ポリマー濃度が約0.5%(w/w)〜約3.0%(w/w)であり、ポリマーが約50,000〜約13,000,000の分子量を持つ、請求項24の方法。
【請求項26】
創傷が、皮膚創傷、骨創傷、内部創傷、胃腸創傷、口腔創傷、眼科創傷、および手術創傷からなる群より選択される、請求項16の方法。
【請求項27】
創傷がさらに慢性創傷と定義される、請求項26の方法。
【請求項28】
創傷がさらに急性創傷と定義される、請求項26の方法。
【請求項29】
慢性創傷が、糖尿病性潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、圧迫潰瘍、および感染潰瘍からなる群より選択される、請求項27の方法。
【請求項30】
急性創傷が、第1度熱傷、中間層熱傷、全層熱傷、裂傷、弾創、および感染創傷からなる群より選択される、請求項28の方法。
【請求項31】
創傷を処置する方法であって、ある量のラクトフェリン組成物を創傷の近傍に局所投与することによって対象の局所免疫系を補うステップを含む方法。
【請求項32】
ラクトフェリンが創傷に感染する細菌の死滅をもたらす、請求項31の方法。
【請求項33】
創傷を負っている対象の局所免疫系を強化する方法であって、その対象に、ラクトフェリン組成物を局所投与するステップを含む方法。
【請求項34】
ラクトフェリン組成物がサイトカインまたはケモカインの産生を刺激する、請求項33の方法。
【請求項35】
ラクトフェリン組成物がサイトカインまたはケモカインの阻害をもたらす、請求項33の方法。
【請求項36】
サイトカインが、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-12(IL-12)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびガンマインターフェロン(IFN-γ)からなる群より選択される、請求項34の方法。
【請求項37】
サイトカインが、マクロファージ炎症タンパク質3アルファ(MIP-3α)、マクロファージ炎症タンパク質1アルファ(MIP-1α)、またはマクロファージ炎症タンパク質1ベータ(MIP-1β)である、請求項34の方法。
【請求項38】
サイトカインが、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-10(IL-10)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)からなる群より選択される、請求項35の方法。
【請求項39】
ラクトフェリン組成物がマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)類の産生を阻害する、請求項33の方法。
【請求項40】
インターロイキン-18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子が免疫細胞の産生または活性を刺激する、請求項35の方法。
【請求項41】
インターロイキン-18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子が創傷修復に関与する細胞の産生または活性を刺激する、請求項35の方法。
【請求項42】
免疫細胞がTリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、および多形核細胞からなる群より選択される、請求項40の方法。
【請求項43】
多形核細胞が好中球である、請求項42の方法。
【請求項44】
Tリンパ球がCD4+、CD8+およびCD3+ T細胞からなる群より選択される、請求項42の方法。
【請求項45】
創傷修復に関与する細胞が、ケラチノサイト、内皮細胞、線維芽細胞、および筋線維芽細胞からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項46】
TNF-アルファの阻害がさらに樹状細胞の移動および成熟を阻害する、請求項38の方法。
【請求項47】
樹状細胞がランゲルハンス細胞である、請求項46の方法。
【請求項48】
創傷を処置する方法であって、ある量のラクトフェリン組成物を非経口経路で投与することによって対象の全身免疫系を補うステップを含む方法。
【請求項49】
創傷を負っている対象の全身免疫系を強化する方法であって、その対象に、ラクトフェリン組成物を非経口投与するステップを含む方法。
【請求項50】
創傷を処置する方法であって、ある量のラクトフェリン組成物を経口投与することによって対象の粘膜免疫系を補うステップを含む方法。
【請求項51】
創傷を負っている対象の粘膜免疫系を強化する方法であって、その対象にラクトフェリン組成物を経口投与することを含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503044(P2006−503044A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536558(P2004−536558)
【出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/029069
【国際公開番号】WO2004/024180
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(505098694)エイジェニックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】