説明

創傷コンディショニングおよび皮膚ケアのためのプロテアーゼ

本発明者らは、ルシリア・セリカタの幼虫に由来し、創傷のデブリードマンに有用な活性があることからデブリラーゼと呼ばれるプロテアーゼを分子クローニングにより同定した。フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有するセリンプロテアーゼをコードする核酸分子が記載され、該核酸分子は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼをコードする核酸分子、および前記セリンプロテアーゼの前駆体もしくはフラグメントをコードする核酸分子;(b)配列番号3のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは95%同一であるセリンプロテアーゼをコードする核酸分子;(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(e)(b)もしくは(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷コンディショニングおよび皮膚ケアで使用するため、ルシリア・セリカタ(Lucilia sericata)由来のデブリラーゼ(debrilase)と呼ばれるプロテアーゼを含む医薬および化粧用組成物、ならびに医療品に関する。デブリラーゼは、幼虫のトランスクリプトーム、すなわちmRNA調製物およびcDNAへの変換を用いて同定され、ならびに組換え技術およびこの後の適切な宿主細胞での発現を用いて調製された。本発明のプロテアーゼは、線維素溶解活性、カゼイン分解およびPAR−2(プロテアーゼ活性化受容体2)活性化活性を有する。1つの実施形態では、デブリラーゼを含む組成物は、壊死細胞、組織およびフィブリンカフから治癒の遅いまたは治癒しない創傷を清浄にする(デブリードマンとして知られる)ために提供される。別の実施形態では、皮膚ケアおよびスムースニングの分野におけるデブリラーゼの化粧用途が提案される。
【0002】
本発明はさらに、フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有するセリンプロテアーゼをコードする核酸分子(配列番号4のアミノ酸配列を含むまたはから成るセリンプロテアーゼをコードする核酸分子である)、ならびに前記セリンプロテアーゼの前駆体またはフラグメントをコードする核酸分子に関する。さらに、本発明は、配列番号3のヌクレオチド配列を含むまたはから成る核酸分子、ならびにアミノ酸配列が配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも77%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%同一であるセリンプロテアーゼをコードする核酸分子に関する。TがUで置き換えられている上記核酸のいずれも同様に、本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、特許出願および製造者のマニュアルを含む幾つかの文献が引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連があるとは思われないが、全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、個々の文献が参照により組み込まれることが具体的および個別に示されない場合、全ての参照文献は同程度に参照により組み込まれる。
【0004】
創傷治癒は、(1)炎症、(2)細胞遊走および増殖、ならびに(3)リモデリングの3つの異なる段階を有する。炎症段階ではプロテアーゼが免疫系の細胞により放出される。さまざまなリンホカインが好中球およびマクロファージから分泌され、創傷治癒の次の段階を調節する。第2段階は、増殖段階と呼ばれ、線維芽細胞遊走、増殖および新たな細胞外マトリックス分子の合成を含む。これらの事象は、フィブロネクチン、コラーゲンおよびプロテオグリカンを含む細胞外マトリックス分子が肉芽床に分泌される明確な順番で生じるように見える。炎症段階は3日でピークに達する。創傷治癒の第2段階は、通常、傷害後約1から2週間でピークに達し、この後、数週間以内に始まり数カ月続く可能性のある組織リモデリングのより長い第3段階が起こる。リモデリング段階の間、無秩序なコラーゲン線維が、より肥厚し、より整列したコラーゲン分子に取って代わられるにつれて、結合組織マトリックスは成熟する。この組織リモデリングは、最終的に創傷の引っ張り強度に寄与し、および瘢痕形成を伴うこともある。
【0005】
皮膚病変は、事実上常に血管の傷害を伴う。したがって創傷治癒は、血液が血餅を形成する複雑な過程である凝固過程も含む。これは、損傷した血管壁が、血小板およびフィブリンを含有する血餅に覆われて出血を止め、損傷した血管の修復を開始する止血の重要な部分である。凝固の障害は、出血および/または血栓症のリスクの増加をもたらす可能性がある。凝固は、血管への傷害が内皮を損傷したほぼ直後に開始される。血小板が傷害部位で止血栓を即時に形成する(一次止血)。二次止血が同時に起こり、血漿中の凝固因子が複雑なカスケードで反応して血小板血栓を強化するフィブリン鎖を形成する。二次止血の凝固カスケードは、2つの経路、すなわち、いずれもフィブリン形成をもたらす接触活性化経路(以前は内因性経路として知られる)および組織因子経路(以前は外因性経路として知られる)を有する。現在では、血液凝固を開始するための主要経路は組織因子経路であることが知られている。経路は一連の反応であり、この中でセリンプロテアーゼの酵素前駆体(不活性酵素前駆体)およびこの糖タンパク質補因子が活性化されて活性成分になり、該成分が次いでカスケードにおける次の反応を触媒し、最終的に架橋フィブリンが生ずる。凝固因子は一般に、糖タンパク質であるFVIIIおよびFVならびにトランスグルタミナーゼである第XIII因子を除いて、セリンプロテアーゼである。凝固カスケードは、古典的には3つの経路に分けられる。組織因子経路および接触活性化経路はいずれも、第X因子、トロンビンおよびフィブリンの「最終共通経路」を活性化する。
【0006】
フィブリンは、血液の凝固に関与するタンパク質である。フィブリンは、重合されて創傷部位の上に(血小板と連動して)止血栓または血餅を形成する線維状タンパク質である。フィブリンは、この酵素前駆体フィブリノーゲン(肝臓により合成される可溶性血漿糖タンパク質)から作られる。凝固カスケードでは酵素前駆体プロトロンビンは、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換に関与するセリンプロテアーゼトロンビンに活性化される。フィブリンは、次いで第XIII因子により架橋されて血餅を形成する。
【0007】
プラスミンは、フィブリンをフィブリン分解産物へタンパク質分解的に切断し、過剰なフィブリン形成を阻害する。プラスミンは、肝臓で合成される血漿タンパク質、プラスミノーゲンのタンパク質分解性切断により生成される。この切断は、内皮により合成および分泌される組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)により触媒される。プラスミノーゲンは、血餅形成中に捕捉され、および創傷が出血を止め、血餅が分解されるときにゆっくりと活性化される。
【0008】
創傷治癒中の血餅の分解は、上述したマトリックス形成およびリモデリングを可能にする重要なステップである。治癒の遅い創傷または慢性創傷の1つの潜在的原因は、線溶の不足であると考えられる。フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、テネイシン、コラーゲンおよび白血球から成るいわゆる「フィブリンカフ」は、栄養素、成長因子およびガスの交換を妨げ、酸素欠乏、潰瘍形成および血管新生の妨害をもたらす。これらの「フィブリンカフ」のタンパク質分解的溶解は、血管新生、白血球の浸潤、線維芽細胞の遊走、新たな上皮の形成を支持し、細胞の増殖および遊走を誘導する。さらに、創傷の治癒は、デブリードマン剤により除去することができる膿、組織残屑、細菌、および滲出液の存在により遅延される。
【0009】
デブリードマンは、創傷からの失活組織の除去と定義される。慢性創傷において、デブリードマンとは壊死の排除ならびに創傷被覆材、異物、および他の失活物質の一掃を意味する。十分なデブリードマンは、遅延のない創傷治癒過程のための1つの基本的な必要条件である。創傷治癒遅延の原因因子の治療に加えて、デブリードマンは、慢性創傷のための適切な段階に応じた創面環境調整(wound−bed preparation)における第一歩であるべきである。手術、マゴットセラピー、レーザー、超音波、水中療法、ウェットトゥドライ(wet−to−dry)法、自己融解、タンパク質分解酵素、浸透圧または化学的デブリードマンなど、慢性創傷におけるデブリードマンの種々の方法が記載されている。
【0010】
デブリードマン剤は、生細胞への傷害なく壊死組織を迅速に消化し、これにより治癒過程を加速する。このようなデブリードマン剤の探求には、多種多様な植物およびウジまたはクロバエの幼虫などの動物材料の使用が含まれるが、植物起源由来のパパイン、ブロメラインおよびアナナインのような酵素(例えばUS6548556、EP0194647B1、US5106621)、微生物起源由来のプロテアーゼ(例えばビブリオ種由来のプロテアーゼ、US5145881;バシラス種由来のサーモリシン、WO03/088993A1、US2003/0198632A1)および動物起源由来のプロテアーゼ(例えば魚由来のトリプシンおよびキモトリプシン、US6846485)の使用も含まれる。幾つかのデブリードマン酵素は、凝固カスケード(トロンビン阻害性ネキシン−1(PN−1)、US5112608)または急性期反応(アルファ1−抗トリプシン、US6262020)のいずれかにおいてプロテアーゼ阻害物質として機能する。デブリードマン酵素の主な目的は、創傷から全てのさまざまな壊死組織エレメントを取り除くこと、および粘稠な滲出性分泌物を減らすことである。適切に適用されたタンパク質分解酵素は、生体組織を害することなく炎症性滲出液の感染表面を浄化する。該酵素は、局在した、化膿した血液性および線維性蓄積物の領域のドレナージを促進し、隠れた細菌の遊離を促し、細菌が免疫防御システムに接近しやすいようにする。
【0011】
デブリードマン酵素の酵素作用は、治癒しない創傷に利用することができる(例えばLobmannら、Proteases and the diabetic foot syndrome: Mechanisms and therapeutic Implications.Diabetes Care 28(2005年)、461〜471頁)が、酵素は、乾癬および湿疹等などの炎症性皮膚疾患、ならびに例えば米国特許第4,524,136号;5,439,935号;5,441,740号;5,554,366号;5,853,705号および6,780,444号に開示されているようなしわ、にきびおよび乾燥肌などのあまり重症でない皮膚状態の治療に有効な場合もある。このような酵素を含む市販品もまた利用可能である(例えばAccuzyme(登録商標)(パパイン)およびGranulex(登録商標)(トリプシン)、適応は創傷のデブリードマンに限られる)。
【0012】
より優れた創傷デブリードマン酵素を見出すための努力が続けられている。極めて好ましい創傷デブリードマン酵素の基準の幾つかは、次の少なくとも1つであり、好ましくは全てなど複数である:該酵素はフィブリン、変性コラーゲン、エラスチンおよび滲出液を迅速に消化できるべきである;該酵素は正常に見えるヒト皮膚組織を残すべきである;該酵素は創傷に対し非毒性および非刺激性であるべきである;該酵素は容易に調製され、安定で、および容易に適用できるべきである。一例として、酵素活性を維持しながら、周囲条件下での貯蔵に適した安定な濃縮酵素組成物および酵素組成物を含むキットが、WO2007/074454A2に記載されている。
【0013】
慢性創傷に対処するための幾つかのアプローチは、創傷に浸潤している免疫系の細胞の生存能力を支持するために創傷を湿潤に保つ被覆材の使用を含む。
【0014】
創傷管理には、プロテアーゼ、すなわちエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼの使用、ならびにプロテアーゼ阻害物質の使用が提案された。
【0015】
創傷のタンパク質分解的デブリードマンのため酵素の放出を制御するためのシリコンベースのデバイスは、スブチリシンファミリーのプロテアーゼを用いてBottらにより記載されている(A silicone−based controlled−release device for accelerated proteolytic debridement of wound,Wound Repair Regen.(2007年)15:227〜35頁)。同様に、US7368128は、吸収材層および分解性高分子材料から成る、デブリードマン酵素を持続放出するための被覆材を記載する。
【0016】
何世紀もの間、ウジは創傷に有益な効果を有することが知られていた。マゴットデブリードマンセラピー(MDT)の方法は、1930年代および1940年代初めを通して米国で採用され日常的に使用されたが、MDTは、ペニシリンおよび近代的な外科手技の導入に取って代わられた(Child FS、Roberts EF.The treatment of chronic osteomyelitis with live maggots.New York State J Med 1931年;31:937〜43頁;Teich S、Myers RAM.Maggot therapy for severe skin infections.South Med J 1986年;79:1153〜5頁;Church JCT.Larvae therapy in modern wound care:A review.Primary Intention 1999年;5月号:63〜8頁;Sherman RA、Hall MJR、Thomas S.Medicinal maggots:An ancient remedy for some contemporary afflictions.Ann Rev Entomol 45(2000年):55〜81頁、Courtenay,M.ら、Larva therapy in wound management、J.R.Soc.Med.93(2000年):72〜74頁)。
【0017】
創傷へのウジの適用は、患者には不快および苦痛にすら感じられることが多い。にもかかわらず、種々の昆虫種の幼虫は、従来は治療不可能な創傷の清浄および治癒に利用されている。特定のハエ種のウジは、壊死組織を餌にし、このデブリードマン活性により、外科的介入または抗生物質の介入に抵抗性である褥瘡、静脈鬱滞性潰瘍、糖尿病性足感染、および術後創傷などの慢性軟組織創傷の治癒を補助する(Sherman RA、1998年、Maggot debridement in modern medicine.Infect Med 15:651〜6頁、Sherman RA、Hall MJR、Thomas S.、2000年、Medicinal maggots:An ancient remedy for some contemporary afflictions.Ann Rev Entomol 45:55〜81頁)。
【0018】
医療用ウジは、3つの主要な作用を発揮する:1)医療用ウジは死んだ(壊死した)感染組織を溶解して創傷をデブリードマンする(取り除く)、2)医療用ウジは細菌を殺傷して創傷を殺菌する、および3)医療用ウジは創傷治癒を刺激する。
【0019】
Horobinら(2006年)は、線維芽細胞遊走およびマトリックスリモデリングをトリガーして治癒を助けるため慢性創傷に適用されるルシリア・セリカタの幼虫すなわちヒロズキンバエ(green bottle fly)のウジによるMDTを記載する(Horobinら、Promotion of human dermal fibroblast migration,matrix remodelling and modification of fibroblast morphology within a novel 3D model by Lucilia sericata larval secretions、J Invest Dermatol.126:1410〜1418頁)。以前に、Horobinらは、ウジ排泄物/分泌物(ES)内に存在する特定の酵素活性を特徴付けしている(Horobinら、2003年、Maggots and wound healing: an investigation of the effects of secretions from Lucilia sericata larvae upon interactions between human dermal fibroblasts and extracellular matrix components、Br.J.Dermatol.148:923〜933頁)。
【0020】
ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの典型的な創傷生着菌に対するルシリア・セリカタのウジ由来の分泌物の殺菌活性が、三齢幼虫を用いて示された(Daeschlein,G.ら、2007年、In vitro antibacterial activity of Lucilia sericata maggot secretions、Skin Pharmacol.Physiol.20:112〜115頁)。
【0021】
線維芽細胞と周囲の細胞外マトリックスの間の相互作用は、組織形成に重要な役割を果たし、線維芽細胞の増殖、遊走、および組織リモデリングに影響を与える。ウジが創傷内の組織形成を強化する想定メカニズムは、線維芽細胞運動性の促進、細胞外マトリックスリモデリングの加速および細胞応答の調整を介して、生存可能な線維芽細胞の幅広い分布を提供すると考えられる。L.セリカタES産物は、フィブロネクチン被覆表面での線維芽細胞遊走を促進すること、およびこれはウジ排泄物/分泌物内のセリンプロテアーゼによるフィブロネクチンの分解に関係することが示された(Chambersら、2000年、Degradation of extracellular matrix components by defined proteinases from the greenbottle larva Lucilia sericata used for the clinical debridement of non−healing wounds、Brit J Dermatol.148:14〜23頁)。
【0022】
セリンプロテアーゼ遺伝子の大きなおよび多様なファミリーは、ヒツジキンバエ(sheep blowfly)、ルシリア・クプリナ(Lucilia cuprina)の一齢幼虫のcDNAで同定された(Elvinら、1994年、An estimate of the number of serine protease genes expressed in sheep blowfly larvae(Lucilia cuprina)Insect Molecular Biol 3:105〜115頁)。2つのキモトリプシン様プロテアーゼは、ルシリア・クプリナの一齢幼虫のES産物から精製された(Casuら、1994年、Excretory/secretory chymotrypsin from Lucilia cuprina:purification,enzymatic specificity and amino acid sequence deduced from mRNA、Insect Molecular Biol 3:201〜211頁)。トリプシンおよびキモトリプシン様セリンプロテアーゼの両方に対して活性なさまざまなプロテアーゼ阻害物質が、インビトロ給餌アッセイによりルシリア・クプリナ由来の腸プロテアーゼを特徴付けるのに使用された(Casuら、1994年、Isolation of a trypsin−like serine protease gene family from the sheep blowfly Lucilia cuprina、Insect Molecular Biol 3:159〜170頁)。著しい幼虫の成長遅延が、一齢幼虫にトリプシン阻害物質、特にダイズトリプシン阻害物質を給餌すると観察された。特異的キモトリプシン阻害物質、キモスタチンの給餌は、著しい成長遅延をもたらさなかった。この情報は、トリプシン様セリンプロテアーゼが恐らく主要な腸消化酵素であることを示唆する。
【0023】
Chambersら(2003年、Degradation of extracellular matrix components by defined proteinases from greenbottle larva Lucilia sericata used for the clinical debridement of non−healing wounds、British J.Dermatol 148:14〜23頁)は、ヒロズキンバエ(ルシリア・セリカタ)の一から三齢幼虫におけるフィブリンおよび細胞外マトリックス成分に対し活性を有するプロテアーゼを記載する。Chambersらは、初期幼虫段階(一および二齢)の排泄物において最も高い特異的活性を見出した。幼虫の排泄/分泌(ES)産物に含有されるキモトリプシンおよびトリプシン様活性を有するプロテアーゼは、壊死組織の除去による創傷デブリードマンに寄与すると考えられる。タンパク質分解酵素の3つのクラスは、フルオレセインイソチオシアネート標識カゼインをモデル基質に用いて分泌物において検出された:エキソペプチダーゼ特性を有する、2つの異なるサブクラス(トリプシン様およびキモトリプシン様)のセリンプロテイナーゼ(最適pH8〜9)、アスパルチルプロテイナーゼ(最適pH5)およびメタロプロテイナーゼ(最適pH9)。皮膚関連ECM成分を基質に用いてL.セリカタES産物は、フィブリン血餅を可溶化し、フィブロネクチン、ラミニンならびに酸可溶化コラーゲンタイプIおよびIIIを分解した。
【0024】
これらの結果にもかかわらず、今日まで科学者および医師たちは、該幼虫における大量のタンパク質分解的に活性なタンパク質の背後の有効成分を探求している。幼虫の分泌物は、細胞外マトリックス(ECM)/創傷成分、フィブロネクチン、ラミニンならびにコラーゲンI、III、IVおよびVを分解できることが知られている。これらの高分子は慢性創傷の脱落組織で見出され、慢性潰瘍で顕著な「フィブリンカフ」も構成する。幼虫の分泌物によるラミニンおよびフィブロネクチンの分解はPMSFにより阻害されるが、APMSFまたはメタロプロテイナーゼ阻害物質1,10−フェナントロリンには著しくは阻害されない。幼虫の分泌物の活性は、8.0〜8.5の最適pHを示し(Chambersら、2000年、Degradation of extracellular matrix components by defined proteinases from the greenbottle larva Lucilia sericata used for the clinical debridement of non−healing wounds、Brit J.Dermatol.148:14〜23頁)、これは慢性創傷における酸性から塩基性の幅広いpH範囲とは一致しない。したがって、幼虫の分泌物について記載されたもののようなさらにより広範なpH範囲で活性を有するデブリードマン酵素が必要である。
【0025】
US7144721B1では、幼虫の分泌物における主なタンパク質分解活性はセリンプロテイナーゼ活性であること、ならびに2つのタイプのセリンプロテイナーゼ活性、すなわちキモトリプシン酵素由来のものおよびトリプシン酵素由来のものが存在することが推測されている。US2008/0108551A1は、細胞外マトリックスの分解がルシリア・セリカタによるプロテアーゼ媒介創傷治癒における重要なステップである証拠を提供する。前記出願ではルシリア・セリカタ排泄/分泌産物から単離されたセリンプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼが仮定された(それぞれ、細胞外マトリックス成分フィブロネクチンを分解または細胞遊走を増加させる)。一見したところ、得られたフィブロネクチンの生物学的に活性な分解産物は創傷治癒を促進する。WO2007/138361A3では創傷の治療に使用するためのルシリア・セリカタの幼虫由来のキモトリプシンが開示されている。ヌクレアーゼのような一見したところ創傷治癒に関与すると思われるさらなるタンパク質(WO2007/122424A2)およびtoll様受容体に対するリガンド(US2005/0053597A1)が、ルシリア・セリカタ由来の幼虫の分泌産物で同定された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
デブリードマン組成物の開発における近年の進展にもかかわらず、上記に論じられた従来の技術材料と比較して改善された特性ではないとしても少なくとも類似の特性を有する定義された成分を含む、明白に定義されたデブリードマン化合物または組成物を提供することが依然として望ましいであろう。この目的は、例えばウジにより提供される創傷治癒の改善に関与する有効成分を同定することで達成することができよう。このような化合物は化粧適用にも有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、第1の実施形態では、本発明は、以下のi〜ivのいずれか:
(i)フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有するセリンプロテアーゼであって、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼをコードする核酸分子;(b)配列番号3のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼをコードする核酸分子;(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子である、セリンプロテアーゼ、
(ii)(i)のセリンプロテアーゼと同じ活性を有する、(i)のセリンプロテアーゼのフラグメント、
(iii)創傷の治療の好ましくは直前または治療中に活性型に切断される、(i)のセリンプロテアーゼのプロペプチドであって、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼプロペプチドをコードする核酸分子;(b)配列番号5のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼプロペプチドをコードする核酸分子;(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子から選択される核酸分子によりコードされるプロペプチド、または
(iv)(i)のセリンプロテアーゼのプレプロペプチドであって、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼプレプロペプチドをコードする核酸分子;(b)配列番号1のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼプレプロペプチドをコードする核酸分子;(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子から選択される核酸分子によりコードされるプレプロペプチド
をコードする核酸分子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】大腸菌のデブリラーゼ分泌クローン周囲の透明帯を示す、カゼインを含有する寒天での拡散アッセイを示す図である。
【図2】デブリラーゼ活性試料周囲の透明帯を示す、フィブリンを含有する寒天における活性アッセイを示す図である。A)フィブリン含有基質で増殖するデブリラーゼ陽性クローン、B)デブリラーゼ陽性組換え大腸菌クローン由来の粗抽出物による寒天拡散アッセイ;(a)未希釈粗抽出物、b)PBS中1:10希釈、c)PBS中1:50希釈。
【図3】A)既知のセリンプロテアーゼ(PMSF)およびトリプシン様セリンプロテアーゼ(APMSF)阻害物質の使用による、組換えデブリラーゼの活性プロフィールを同定するための酵素アッセイ;B)組換えデブリラーゼのpHプロフィールを同定するための異なるph値のフグ類におけるデブリラーゼによる活性アッセイを示す図である。
【図4】読み出しとしてのCa2+フラックスによる、HEK232細胞による細胞ベースの受容体アッセイでのPAR2の活性化を示す図である。
【図5A】NCBI BLASTアルゴリズムを用いたヌクレオチド配列およびタンパク質配列の76%同一性を示す、最近接配列がサルコファガ・ブラタ(Sarcophaga bullata)由来のトリプシン様タンパク質である、デブリラーゼのプレプロペプチドアミノ酸のアライメント(A)を示す図である。(A)デブリラーゼのシグナルペプチドは、アミノ酸1から16から成り(シグナルペプチドは太字で示されている)、プロペプチドは、アミノ酸17から254から成り(プロペプチドアミノ酸17から26が下線を付されている)およびタンパク質分解的に処理されたデブリラーゼの成熟ポリペプチドは、アミノ酸27から254から成る。
【図5B】NCBI BLASTアルゴリズムを用いたヌクレオチド配列およびタンパク質配列の76%同一性を示す、最近接配列がサルコファガ・ブラタ(Sarcophaga bullata)由来のトリプシン様タンパク質である、デブリラーゼのcDNAヌクレオチド配列(B)を示す図である。
【図6】(A)培養上清のSDS PAGEを示す図である:1)遠心分離後;2)前濾過[0.45μm];3)滅菌濾過[0.22μm]、プロペプチド25.7kDaのMW。(B)活性化成熟デブリラーゼの視覚化を示す図である:5)透析後およびこの後の5.5から8へのpHシフト;6)親和性クロマトグラフィーカラムフロースルー(非結合タンパク質);7)洗浄フロースルー、(8から12)それぞれ、分画溶出1から5(成熟タンパク質24.6kDaの分子量)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による用語「核酸分子」には、cDNAまたはゲノムDNA、およびRNAなどのDNAが含まれる。さらに、DNAまたはRNAおよび混合ポリマーの合成または半合成誘導体などの当技術分野で知られる核酸模倣分子も含まれる。本発明によるこのような核酸模倣分子または核酸誘導体には、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート核酸、2’−O−メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヒキシトール核酸(HNA)、ペプチド核酸(PNA)およびロックド核酸(LNA)が含まれる(BraaschおよびCorey、Chem Biol 2001年、8:1頁参照)。LNAは、リボース環が2’−酸素と4’−炭素の間のメチレン結合により制約されるRNA誘導体である。
【0030】
用語「セリンプロテアーゼ」は、タンパク質分解活性を有し、セリンを活性中心に含み、このセリンがヒスチジンおよびアスパラギン酸と一緒に、ほとんどのセリンプロテアーゼに共通する触媒三連構造を形成するサブグループに属するタンパク質として特徴づけられる(Rawlings,N.D.、Barrett,A.J.(1994年)、Families of serine peptidases.Meth.Enzymol.244:19〜61頁)。セリンプロテアーゼは加水分解酵素として分類され、EC数値分類体系サブグループの3.4.21に属する。本発明の核酸分子によりコードされるタンパク質は、タンパク質自体(例えば配列番号4)、または例えばタンパク質分解性プロセシングによるさらなる熟成または活性化後(例えば配列番号2または6)のいずれかにより、セリンプロテアーゼのタンパク質分解活性を示すことができる;下記の本発明のプロペプチドの考察も参照のこと。タンパク質分解性プロセシングには、プレプロペプチド(例えば配列番号2を有するプレプロペプチド)からのシグナルペプチドの切断、およびタンパク質分解性切断によるプロペプチド(例えば配列番号6を有するプロペプチド)のさらなるタンパク質分解性プロセシングが含まれ得る。
【0031】
本明細書で使用される用語「シグナルペプチド」は、特定の細胞コンパートメントへの、および好ましくは小胞体へのタンパク質の輸送を指示する短いアミノ酸配列(好ましくは、3〜60アミノ酸長)を規定する。
【0032】
本明細書で使用される用語「プロペプチド」は、タンパク質の前駆体でありかつタンパク質の成熟または活性化中に切断されるアミノ酸の線状分子鎖を記述する(例えば配列番号6のミノ酸配列または配列番号5のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列)。本明細書で使用される用語「プレプロペプチド」は、プロペプチドの前駆体であり、さらにシグナルペプチドを含む(例えば配列番号2のアミノ酸配列または配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列)。プレプロペプチドは一次翻訳産物である。また、プレプロペプチドが創傷に適用される場合、これは前記創傷の治療の好ましくは直前または治療中に活性型に切断される。
【0033】
用語「フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有する」は、好ましくは成熟タンパク質の活性のみを指すが、プレプロペプチドおよび成熟タンパク質の前駆体であるプロペプチドの未知の活性(ここでいう切断(複数可)により達成される)も含み得る。
【0034】
本明細書において、用語「タンパク質」は、「ポリペプチド」または「ペプチド」と互換的に使用され、好ましくは30個を超えるアミノ酸を含有する、一本鎖タンパク質またはそのフラグメントを含む、アミノ酸の線状分子鎖を記述する。30個のアミノ酸および30個未満のアミノ酸のアミノ酸ストレッチは、通常はペプチドと呼ばれるが、ポリペプチドとは呼ばれないであろう。本明細書では状況に応じて、用語「タンパク質」または「ポリペプチド」は、成熟タンパク質(例えば配列番号4のアミノ酸配列または配列番号3のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列)、プロペプチド(例えば配列番号6のアミノ酸配列または配列番号5のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列)またはプレプロペプチド(例えば配列番号2のアミノ酸配列または配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列)を意味する場合もある。ポリペプチドはさらに、少なくとも2つの同一または異なる分子から成るオリゴマーを形成することができる。このようなマルチマーの高次構造は、それぞれホモまたはヘテロ二量体、ホモまたはヘテロ三量体等と呼ばれる。さらに、アミノ酸(複数可)および/またはペプチド結合(複数可)が機能的類似体で置き換えられているこのようなタンパク質/ポリペプチドのペプチドミメティクスも、本発明により包含される。このような機能的類似体には、セレノシステインなど、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸以外の全ての既知のアミノ酸が含まれる。用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」はまた、修飾が例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化および当技術分野でよく知られている類似の修飾により得られる天然修飾ポリペプチド/タンパク質およびペプチドも指す。
【0035】
本発明のフラグメントに関連して、用語「同じ活性」は、本発明によるセリンプロテアーゼデブリラーゼのフラグメントに存在する、本明細書に列挙されたような生物学的活性を指す。本発明のこの実施形態によるフラグメントは、長さに応じて、ポリペプチドまたは30個以下のアミノ酸のペプチドであり得る。
【0036】
本発明によれば、用語「パーセント(%)配列同一性」は、テンプレートである核酸またはアミノ酸配列の全長を構成するヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数と比較したときの、2つ以上の整列した核酸またはアミノ酸配列の同一ヌクレオチド/アミノ酸のマッチ(「ヒット」)数を記述する。言い換えると、アライメントを用いて、比較ウィンドウ上で、もしくは当技術分野で知られる配列比較アルゴリズムを用いて測定される指定領域上で、最大の一致について(サブ)配列が比較され整列される場合、または手動で整列され目視検査される場合、2つ以上の配列またはサブ配列について、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージ(例えば80%、85%、90%または95%同一性)を決定することができる。この定義はテスト配列の相補物にも適用される。
【0037】
本発明に関連してアミノ酸配列分析およびアライメントは、NCBI BLASTアルゴリズム(Stephen F.Altschul、Thomas L.Madden、Alejandro A.Schaffer、Jinghui Zhang、Zheng Zhang、Webb Miller、およびDavid J.Lipman(1997年)、「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402頁)を用いて行われた。核酸配列を整列させるための適切なプログラムも当業者に知られている。
【0038】
配列番号2、4または6と比較した本発明のセリンプロテアーゼのアミノ酸配列における置換は、好ましくは保存的である。これは、置換が好ましくはアミノ酸の1つのクラス内で起こることを意味する。例えば、正電荷アミノ酸は好ましくは別の正電荷アミノ酸に変異される。同じことが塩基性、芳香族または脂肪族アミノ酸のクラスについても当てはまる。
【0039】
本発明による用語「縮重した」は、遺伝コードの縮重を指す。縮重は、トリプレットコードが20個のアミノ酸およびストップコドンを指定するために生じる。遺伝情報をコードするのに利用される4つの塩基が存在することから、少なくとも21個の異なるコードを生成するにはトリプレットコドンが必要とされる。トリプレットでの塩基について可能性のある4個の可能性は、64個の可能性のあるコドンを与え、これは幾つかの縮重が存在しなければならないことを意味する。この結果、幾つかのアミノ酸は、1つを超えるトリプレット、すなわち最大6つのトリプレットによりコードされる。縮重はほとんどがトリプレットの三番目の位置での変化から生じる。これは、上記に指定されたものとは異なるが依然として同じポリペプチドをコードする配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内にあることを意味する。
【0040】
創傷が適切な時期に治癒しない場合にしばしば遭遇する問題が、線維芽細胞の浸潤、およびしたがって創傷治癒過程の開始を可能にするための「フィブリンカフ」および壊死組織の除去である。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の核酸によりコードされるセリンプロテアーゼが、これらのフィブリンカフを溶解して創傷が自然治癒する準備をするための優れた特性を有することを見出した。ルシリア・セリカタの創傷治癒活性の主な有効成分と考えられているのは、生物学的に活性なセリンプロテアーゼである。該酵素は、本明細書では、創傷のデブリードマン向けに提案された用途を意味する「デブリラーゼ」とも呼ばれる。
【0041】
ルシリア・セリカタの幼虫は一般に、従来の治療に抵抗性である創傷を治療するための生きている生物として、臨床診療で使用される。マゴットセラピーは多くの患者にむしろ不快であること、該昆虫の分泌物は定義される医薬組成物とは程遠いことから、本発明者らは、分子アプローチにより創傷デブリードマンの有効成分の少なくとも1つを同定することを目指した。
【0042】
血液寒天を給餌された二齢幼虫のmRNA(トランスクリプトーム)からのcDNAライブラリーを作成することにより、ルシリア・セリカタの幼虫による創傷デブリードマンに関与する主なプロテアーゼであると考えられるトリプシン様プロテアーゼをコードする核酸、および多量に発現される対応するアミノ酸配列が同定された。該酵素は、5日齢幼虫(三齢)から単離されたmRNA由来のcDNAライブラリーでは見出されなかった。これは、幼虫期の進展に伴うデブリードマン活性の低下に一致する(Chambersら、2003年)。
【0043】
カゼインに対するタンパク質分解活性についての前記ライブラリーのスクリーニングにより、血液基質により誘導された二齢幼虫のトランスクリプトームにおいてプロテアーゼをコードする幾つかのcDNA配列が得られた。二齢幼虫が導入されたライブラリーにおけるcDNA配列の分析から、二齢幼虫から作成されたcDNAライブラリーにのみ存在するが、後の幼虫期(三齢)における幼虫のトランスクリプトームには存在しないプロテアーゼが同定された。見出されたプロテアーゼの幾つかは、それぞれホスホキモトリプシン、トリプシンまたはキモトリプシンに類似した核酸配列を示した。メタロ型、スレオニン型、システイン型、アスパラギン酸またはグルタミン酸型プロテアーゼは見出されなかった。
【0044】
脱脂乳に関する最初の寒天プレートスクリーニングでは、幾つかのcDNAクローンがカゼイン分解活性を有する酵素を分泌することが見出されたが、1つのみがフィブリン含有基質でも活性を示した。この酵素は、別のアッセイにおいて、組換え発現および生化学特性の評価により詳細に特徴付けされた。
【0045】
核酸配列分析は、誘導された幼虫のmRNA内の多量の3つのセリン型プロテアーゼおよび2つのトリプシン型プロテアーゼを明らかにした。トリプシン型プロテアーゼは、線維素溶解およびカゼイン分解活性を示した。配列番号4のアミノ酸配列により表され、および配列番号2の核酸配列によりコードされるデブリラーゼに対応する線維素溶解プロテアーゼの1つのアミノ酸配列分析は、NCBI BLASTアルゴリズムを用いた既知の酵素に最も近い類似性として、サルコファガ属菌(Sarcophaga sp.)由来のトリプシン様プロテアーゼと76.1%のタンパク質配列同一性を示した(Stephen F.Altschul、Thomas L.Madden、Alejandro A.Schaffer、Jinghui Zhang、Zheng Zhang、Webb Miller、およびDavid J.Lipman(1997年)、「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402頁)。デブリラーゼは多量に発現されることが見出され、故にこれは、ルシリア・セリカタの幼虫による創傷デブリードマンに関与する主なプロテアーゼである可能性がある。デブリラーゼは、シグナルペプチドおよびプロペプチドアミノ酸を含むプレプロペプチドとして発現および翻訳される(図5A)。該酵素活性の活性化は、シグナルペプチドの切断およびプロペプチドのさらなる切断により達成され、これによりデブリラーゼの成熟タンパク質(配列番号4)が生成する(プロペプチドは一見したところ自己タンパク質分解によりさらに切断される)。成熟タンパク質は、好ましくは配列番号3から成る核酸分子によりコードされる。成熟デブリラーゼは、フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有する。成熟デブリラーゼの活性は、PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)およびAPMSF(4−アミジノフェニルメタンスルホニルフルオリド)により完全に阻害することができる。メタロ型、スレオニン型、システイン型またはアスパラギン酸型プロテアーゼの阻害物質を用いて、阻害は検出されなかった。これは、タンパク質がセリンプロテアーゼであり、およびトリプシン様活性を有することを示している。
【0046】
進行性の創傷状態は、幅広いpH範囲を包含することが知られている(Greener Bら、2005年、Proteases and pH in chronic wounds.J Wound Care;14(2))。別の詳細な試験では、さまざまな起源の慢性創傷を有する39人の患者における247のpH値が12ヵ月の期間にわたって分析され、5.45から8.65の値を検出した(Dissemond、J.ら、2003年、pH−Wert des Milieus chronischer Wunden、Untersuchungen im Rahmen einer modernen Wundtherapie、Der Hautarzt 54、No.12、959〜965頁)。デブリラーゼは5から10のpH範囲で高度に安定および活性であり、このpH範囲のため、デブリラーゼは上述したような幅広いpH範囲を与える慢性創傷での適用に適している。
【0047】
さらに、細胞受容体活性化アッセイでは、デブリラーゼはプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を活性化する能力を有することが見出された。PAR2は、グアノシンヌクレオチド結合タンパク質に共役する7回膜貫通型受容体の大ファミリーのメンバーである。PAR2は、プロテアーゼ活性化受容体ファミリーのメンバーでもある。PAR2はトリプシンにより活性化されるが、トロンビンによっては活性化されない。トリプシンは、受容体の細胞外アミノ末端をタンパク質分解性切断し、新たなアミノ末端は、テザーリガンドとして機能し、受容体を活性化する。PAR2は、線維芽細胞増殖(Asano−Katoら、Tryptase increases proliferative activity of human conjunctival fibroblasts through protease−activated receptor−2、Invest Ophthalmol Vis Sci.、2005年 46(12):4622〜6頁)および創傷治癒に寄与する結合組織の形成(Borensztajn K.ら、2008年、Factor Xa stimulates proinflammatory and profibrotic responses in fibroblasts via protease−activated receptor−2 activation,1: Am J Pathol.172(2):309〜20頁)において、炎症および疼痛に重要な役割を果たす。故に、本発明のトリプシン様酵素は、テザーリガンドの切断により受容体を活性化し、次いで創傷治癒の促進に関与する生化学的過程をトリガーする。例えば、デブリラーゼは、壊死組織を除去するため、ならびに免疫および細胞応答の受容体媒介カスケードをトリガーするため、治癒しない創傷で頻繁に観察される「フィブリンカフ」を溶解するのに有利に利用できることが予想される。
【0048】
本発明は、線維素溶解、カゼイン分解およびPAR2活性化活性ならびに幅広いpH範囲の分子レベルでの酵素活性を有するルシリア・セリカタ由来のプロテアーゼの組換え発現を初めて記載し特徴付けしたものである。デブリラーゼおよびデブリラーゼ活性を有するそのフラグメントは、自然治癒過程および/または創傷のデブリードマンによる従来の治療(すなわち死んだ組織の除去およびフィブリンカフの溶解)に対し創傷を感受性にして、治癒の遅い創傷または慢性創傷を準備および前処理する能力を有することが想定される。さらに、皮膚の外観または質感を改善するための皮膚治療を含む化粧用途が想定される。創傷にプロペプチドを適用すると、酵素切断により成熟タンパク質に変換されるであろう。
【0049】
本発明はまた、本発明の核酸分子、すなわち本明細書に記載される成熟タンパク質、プロペプチドまたはプレプロペプチドをコードする核酸分子を含むベクターにも関する。さらに、ベクターは、上述したフラグメントをコードする核酸分子を含有することができる。
【0050】
本発明によるベクターは、複製、ならびに/または本発明の核酸分子の発現および/もしくはこれによりコードされるポリペプチドの発現を指示することができる。
【0051】
好ましくは、ベクターはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージまたは従来使用される(例えば遺伝子工学で)別のベクターである。
【0052】
例示的なプラスミドおよびベクターは、例えば、Studierおよび共同研究者(Studier,W.F.;Rosenberg A.H.;Dunn J.J.;Dubendroff J.W.、1990年、Use of the T7 RNA polymerase to direct expression of cloned genes、Methods Enzymol.185、61〜89頁)または企業Novagen社、Promega社、New England Biolabs社、Clontech社およびGibco BRL社により提供されるパンフレットに列挙されている。他の好ましいプラスミドおよびベクターは、Glover,D.M.、1985年、DNA cloning:a practical approach、Vol.I〜III、IRL Press Ltd.、Oxford;Rodriguez,R.L.およびDenhardt,D.T.(編)、1988年、Vectors:a survey of molecular cloning vectors and their uses、179〜204頁、Butterworth、Stoneham;Goedeel,D.V.、1990年、Systems for heterologous gene expression、Methods Enzymol.185、3〜7頁;Sambrook,J.;Russell,D.W.、2001年、Molecular cloning:a laboratory manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New Yorkに見出すことができる。
【0053】
適切なベクターの非限定例には、pUCシリーズ、pBluescript(Stratagene社)、発現ベクターのpETシリーズ(Novagen社)またはpCRTOPO(Invitrogen社)、ラムダgt11、pJOE、pBBR1−MCSシリーズ、pJB861、pBSMuL、pBC2、pUCPKS、pTACT1および哺乳動物細胞での発現と適合可能なpREP(Invitrogen社)のようなベクター、pCEP4(Invitrogen社)、pMC1neo(Stratagene社)、pXT1(Stratagene社)、pSG5(Stratagene社)、EBO−pSV2neo、pBPV−1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2−dhfr、pIZD35、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene社)、pSPORT1(GIBCO BRL社)、pGEMHE(Promega社)、pLXIN、pSIR(Clontech社)、pIRES−EGFP(Clontech社)、pEAK−10(Edge Biosystems社)pTriEx−Hygro(Novagen社)およびpCINeo(Promega社)などの原核生物プラスミドベクターが含まれる。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)に適切なプラスミドベクターの例は、例えばプラスミドpAO815、pPIC9KおよびpPIC3.5K(全てInvitrogen社)を含む。
【0054】
上述した本発明の核酸分子はまた、もう一つの核酸分子との翻訳融合が生成するようにベクターに挿入することもできる。これから生じる産物は融合タンパク質と呼ばれ、下記にさらに記載される。もう一つの核酸分子は、例えば本発明の核酸分子によりコードされるタンパク質の溶解性を増加および/または精製を促進することができるタンパク質をコードしていてもよい。非限定例には、pET32、pET41、pET43が含まれる。ベクターは、正しいタンパク質フォールディングを促進するように1つまたは複数のシャペロンをコードする追加の発現可能な核酸を含有することもできる。適切な細菌発現宿主は、例えばBL21(BL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRAREなど)またはRosetta(登録商標)由来の株を含む。
【0055】
本発明のセリンプロテアーゼをコードする核酸を宿主細胞に導入するのに使用することができる特に好ましいプラスミドは、pUC18/19(Roche Biochemicals社)、pKK−177−3H(Roche Biochemicals社)、pBTac2(Roche Biochemicals社)、pKK223−3(Amersham Pharmacia Biotech社)、pKK−233−3(Stratagene社)およびpET(Novagen社)である。さらなる適切なプラスミドは、PCT/EP03/07148に列挙されている。極めて特に好ましいのは、pETシリーズに属するプラスミドに基づく発現系である。
【0056】
ベクター修飾技術については、SambrookおよびRussel、2001年参照。一般に、ベクターは、1つまたは複数の複製起点(ori)およびクローニングまたは発現に関する遺伝系、宿主における選択のための1つまたは複数のマーカー(例えば、抗生物質耐性)、ならびに1つまたは複数の発現カセットを含有することができる。適切な複製起点には、例えば、Col E1、SV40ウイルスおよびM13複製起点が含まれる。ベクターに挿入されるコード配列は、例えば標準的方法により合成、または天然源から単離することができる。転写調節エレメントおよび/または他のアミノ酸をコードする配列へのコード配列のライゲーションは、確立した方法を用いて行うことができる。原核生物または真核細胞での発現を確実にする転写調節エレメント(発現カセットの部分)は、当業者によく知られている。これらのエレメントは、転写の開始を確実にする調節配列(例えば、翻訳開始コドン、プロモーター、エンハンサー、および/またはインシュレーター)、内部リボソーム侵入部位(IRES)(Owensら、2001年)および場合により転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節エレメントには、転写および翻訳エンハンサー、ならびに/または天然に関連するもしくは異種のプロモーター領域を含めることができる。好ましくは、本発明の核酸分子は、このような発現制御配列に作動可能に連結され、原核生物または真核細胞での発現を可能にする。ベクターはさらに、さらなる調節エレメントとして分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。このような配列は当業者によく知られている。さらに、使用される発現系に応じて、発現されたポリペプチドを細胞コンパートメントへ向けることができるリーダー配列を、本発明の核酸分子のコード配列に付加することができる。このようなリーダー配列は当技術分野でよく知られている。特別に設計されたベクターは、細菌−真菌細胞または細菌−動物細胞など、異なる宿主間でのDNAのシャトリングを可能にする。
【0057】
上述した本発明の核酸分子は、細胞へ直接導入またはリポソーム、ファージベクターもしくはウイルスベクター(例えばアデノウイルス、レトロウイルス)を介して導入するために設計することができる。さらに、バキュロウイルス系またはワクシニアウイルスもしくはセムリキ森林熱ウイルスに基づく系を、本発明の核酸分子用の真核発現系におけるベクターとして使用することができる。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルスなどのウイルス、またはウシパピローマウイルス由来の発現ベクターが、標的細胞集団への核酸またはベクターの送達に使用されてもよい。当業者によく知られた方法を、組換えウイルスベクターを構築するのに使用することができる。例えば、Sambrook、2001年およびAusubel、2001年に記載される技術を参照。
【0058】
本発明を実施するのに特に有利であり、および特に大腸菌で使用されるプロモーターは、当業者に知られている(Sambrook,J.;Fritsch,E.F.およびManiatis,T.(1989年)、Molecular cloning:a laboratory manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)。さらなる適切なプロモーターは、T7、lac、tac、trp、araまたはラムノース誘導プロモーターから選択されるものである。他のプロモーターは、(Cantrell,SA(2003年)Vectors for the expression of recombinant proteins in E.coli.Methods in Molecular biology 235:257〜275頁;Sawers,G、Jarsch,M(1996年)Alternative principles for the production of recombinant proteins in Escherichia coli.Applied Microbiology and Biotechnology 46(1):1〜9頁)で述べられている。極めて特に好ましいのは、本発明によるベクターではT7プロモーターの使用である(Studier,W.F.;Rosenberg A.H.;Dunn J.J.;Dubendroff J.W.;(1990年)、Use of the T7 RNA polymerase to direct expression of cloned genes、Methods Enzymol.185、61〜89頁;または企業Novagen社またはPromega社により提供されるパンフレット)。
【0059】
真核宿主細胞での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母でのAOX1またはGAL1プロモーター、またはCMVプロモーター(サイトメガロウイルス)、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、ニワトリベータアクチンプロモーター、CAGプロモーター(ニワトリベータアクチンプロモーターおよびサイトメガロウイルス最初期エンハンサーの組み合わせ)、gai10プロモーター、ヒト伸長因子1αプロモーター、CMVエンハンサー、CaMキナーゼプロモーター、オ−トグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcMNPV)多角体プロモーターまたは哺乳動物および他の動物の細胞におけるグロビンイントロンである。転写の開始に関与するエレメントに加えて、このような調節エレメントは、SV40ポリA部位またはtkポリA部位またはSV40、lacZおよびAcMNPV多角体ポリアデニル化シグナルなど、核酸の下流の転写終結シグナルを含むこともできる。
【0060】
大腸菌および他の細菌で培養するための、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーによる同時トランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の同定および単離を可能にする。
【0061】
哺乳動物細胞培養用の選択可能なマーカーは、dhfr、gpt、ネオマイシン、ハイグロマイシン耐性遺伝子である。トランスフェクトされた核酸は、大量のコードされた(ポリ)ペプチドを発現するように増幅することもできる。DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)マーカーは、数百またはさらに数千コピーの目的の遺伝子を保有する細胞系を開発するのに有用である。別の有用な選択マーカーは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら 1991年;Bebbingtonら 1992年)。
【0062】
このようなマーカーを用いて、細胞は選択培地で増殖され、最も高い耐性を有する細胞が選択される。
【0063】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のベクターにより形質転換、形質導入またはトランスフェクトされる宿主細胞に関する。
【0064】
本発明の核酸分子を含有するベクターをクローン化することができる宿主細胞は、十分な量の組換え酵素を複製および単離するのに使用される。この目的のために使用される方法は、当業者によく知られている(Sambrook,J.;Fritsch,E.F.およびManiatis,T.(1989年)、Molecular cloning:a laboratory manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)。
【0065】
適切な原核生物宿主細胞は、例えば大腸菌BL21(例えばBL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRARE、BL21コドンプラス、BL21(DE3)コドンプラス)、Rosetta(登録商標)、XL1 Blue、NM522、JM101、JM109、JM105、RR1、DH5α、TOP 10、HB101またはMM294由来の株など、種エシェリキアの細菌を含む。さらなる適切な細菌宿主細胞は、ストレプトミセス属(Streptomyces)菌、サルモネラ属(Salmonella)菌またはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などのバシラス属菌である。大腸菌(E.coli)株は、本発明に関連して好ましい原核生物宿主細胞である。
【0066】
適切な真核宿主細胞は、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)もしくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)などのピキア属菌(Pichia sp.)などの酵母、ドルソフィアS2またはスポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞、または植物細胞である。
【0067】
極めて特に好ましいのは、原核生物宿主としての大腸菌BL21および真核生物宿主としてのピキア・パストリスに存在する発現系である。
【0068】
使用することができる哺乳動物宿主細胞には、ヒトHela、HEK293、H9およびJurkat細胞、マウスNIH3T3およびC127細胞、COS1、COS7およびCV1、quail QC1〜3細胞、マウスL細胞、Bowesメラノーマ細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が含まれる。
【0069】
本発明はさらに、本発明の宿主細胞を培養し、生成されたセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチドまたはプレプロペプチドを単離することを含む、セリンプロテアーゼ、そのフラグメント、プロペプチドまたはプレプロペプチドの製造方法に関する。
【0070】
原核生物または真核宿主を培養するのに適切な条件は、当業者によく知られている。例えば、細菌を培養するための適切な条件は、Luria Bertani(LB)培地において通気下で増殖させることである。発現産物の収量および溶解性を増加させるため、培地を緩衝化してもよく、または両方を増大もしくは促進することが知られている適切な添加剤を追加してもよい。大腸菌は4から約37℃で培養することができるが、正確な温度または一連の温度は、過剰発現される分子によって異なる。一般に、当業者は、これらの条件が宿主のニーズおよび発現されるポリペプチドの要件に適合されなければならない場合があることも承知している。誘導性プロモーターが、宿主細胞に存在するベクター中の本発明の核酸を制御する場合、ポリペプチドの発現は、適切な誘導剤の添加により誘導することができる。適切な発現プロトコルおよび戦略は当業者に知られている。
【0071】
細胞タイプおよびこの特定の要件に応じて、哺乳動物細胞培養は、例えば10%(v/v)FCS、2mM L−グルタミンおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMIまたはDMEM培地で行うことができる。細胞は、5%CO、水飽和雰囲気中、37℃で維持することができる。
【0072】
昆虫細胞培養用の適切な培地は、例えばTNM+10%FCSまたはSF900培地である。昆虫細胞は通常、懸垂または懸濁培養として27℃で増殖される。
【0073】
真核細胞のための適切な発現プロトコルは当業者によく知られており、および例えばSambrook、2001年の中から検索することができる。
【0074】
生成されたポリペプチドの単離方法は、当技術分野でよく知られており、およびイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ除外クロマトグラフィー)、親和性クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ディスクゲル電気泳動または免疫沈降などの方法ステップ(例えば、Sambrook、2001年参照)を含むがこれらに限定されない。
【0075】
本発明はさらに、本発明の核酸分子によりコードされる、または本発明の方法により生成されるセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、もしくはプレプロペプチドに関する。上述した通り、このセリンプロテアーゼは「デブリラーゼ」とも呼ばれる。
【0076】
上述した通り、本発明のセリンプロテアーゼは、該プロテアーゼが(i)ルシリア・セリカタに由来する、(ii)フィブリン、カゼインおよびTosyl−Gly−Pro−Arg−AMCに対してタンパク質分解活性を示すが、Suc−Ala−Ala−Phe−AMCに対しては示さない。(iii)カゼインおよびフィブリンに対する本発明のセリンプロテアーゼのタンパク質分解活性が、セリンプロテイナーゼ阻害物質PMSFおよびAPMSFにより阻害される、ならびに(iv)、デブリラーゼが好ましくはプロテアーゼ活性化受容体PAR−2を活性化することを特徴とする。驚くべきことに該プロテアーゼはpH5から10の間の幅広いpH範囲で活性があることが示された(図3B参照)。
【0077】
上述の通り、本発明はさらに、創傷の治療の好ましくは直前または治療中に活性型に切断される、本発明のセリンプロテアーゼのプロペプチドに関する。このプロペプチドは、好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を有し、同様に好ましくは配列番号5の場合、核酸配列によりコードされる。
【0078】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のセリンプロテアーゼ、本発明のセリンプロテアーゼのフラグメント、本発明のプロペプチドまたは本発明のプレプロペプチドを含む融合タンパク質に関する。
【0079】
セリンプロテアーゼ(デブリラーゼ)のアミノ酸配列、本発明デブリラーゼのこのフラグメント、プロペプチドまたはプレプロペプチドに加えて、本発明による融合タンパク質は、少なくとも1つの追加の、異種のアミノ酸配列を含有する。しばしば、しかし必ずしもではないが、これらの追加の配列は、ポリペプチドのNまたはC末端に位置するであろう。例えば、本発明のポリペプチドを特異的にトリミングすることができるプロテイナーゼにより、追加のアミノ酸残基が除去され得る融合タンパク質として、ポリペプチドを最初に発現することが簡便であり得る。
【0080】
デブリラーゼ、このフラグメントまたはデブリラーゼの(プレ)プロペプチドの例示的融合タンパク質はさらに、本発明の医療品へのデブリラーゼの安定な組み込みを達成するため、創傷被覆材に含有されるマトリックスへの融合タンパク質の接着を媒介するように機能することができるペプチドまたはタンパク質を含む。融合タンパク質は、界面活性タンパク質または抗体およびこのフラグメントの群から選択することができる。抗体およびこのフラグメントの特性は、本発明の抗体に関連して下記にさらに記載される。
【0081】
本発明はさらに、本発明のセリンプロテアーゼ、セリンプロテアーゼのフラグメント、本発明のプロペプチド、本発明のプレプロペプチド、本発明融合タンパク質、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、またはこれらの組み合わせを含む組成物に関する。
【0082】
好ましい実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0083】
本発明による、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。医薬組成物は、好ましくはアジュバント状態で、すなわち壊死組織の除去およびフィブリンカフの溶解(デブリードマン)により、治癒の遅い創傷に自然治癒過程または従来の治療に対する準備のために使用される。本発明の医薬組成物は、上記に列挙された化合物を単独または組み合わせで含む。組成物は、固形または液状であってもよく、特に、粉末(複数可)、溶液(複数可)もしくはエアロゾル(複数可)、クリーム(複数可)、軟膏(複数可)またはゲル(複数可)の形態であってもよい。本発明の医薬組成物は、任意におよび追加的に、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。「薬学的に許容可能な担体」により、非毒性の固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、封入材料または任意のタイプの補助製剤を意味する。適切な薬学的担体の例は、当技術分野でよく知られている。このような担体を含む組成物は、よく知られた従来方法により調製することができる。医薬組成物は、局所的に投与することができる。投与のための適切な用量に対応する投与レジメンは、担当医および特に、創傷のサイズ、創傷の状態のステージまたは重症度により決まり得る臨床要因により決定されよう。局所適用のための組成物中の上記に列挙された化合物(複数可)の濃度は、0.001から1%(w/w)、好ましくは0.01〜0.1%(w/w)の範囲であり得る。創傷への局所適用は、好ましくは1日1回または1回を超える適用で繰り返される。
【0084】
上記に列挙された化合物(複数可)は、フィブリンカフの溶解により慢性創傷および治癒の遅い創傷をデブリードマンするための医薬組成物中の活性成分として使用することができる。本発明による医薬組成物は、好ましくはアジュバント状態で、すなわち壊死組織の除去およびフィブリンカフの溶解(デブリードマン)により、治癒の遅い創傷に自然治癒過程または従来の治療に対する準備のために使用される。
【0085】
本発明の医薬組成物は、(固体)担体または被覆材(複数可)、絆創膏(複数可)もしくはテープ(複数可)などの母材と併用して適用することができる。化合物(複数可)は、前記担体または母材に共有または非共有結合させることができる。これらは、創傷治癒を促進するために創傷に適用することができる。
【0086】
例えば、化合物(複数可)は、創傷に適用される被覆材に組み込まれてもよい。このような被覆材の例には、創傷治癒材料を含有する徐放性親水コロイド粒子を組み込んだ段階的または層状被覆材、または場合により従来の被覆材によって覆われた創傷治癒材料を含有するスポンジが含まれる。創傷被覆材の母材に固定化される医薬組成物の溶液の濃度は、一般に0.001から1%(w/v)好ましくは0.01〜0.1%(w/v)の範囲にある。さらに、上記に列挙された化合物(複数可)は、徐放様式または制御放出様式で創傷に酵素を送達できる適切な材料に組み込むことができる。
【0087】
適切な間隔(例えば24時間)での創傷被覆材の更新は、フィブリンカフおよび壊死組織の完全な除去が達成されるまで繰り返されるべきである。被覆材は、下肢潰瘍、褥瘡、糖尿病性足潰瘍および熱傷を含む壊死組織を含むいずれの創傷にも適切である。好ましくは、被覆材は、親水コロイド、泡(例えばポリウレタンフォーム)、アルギン酸塩、キトサンなどの吸収材の層を含み、このため周囲の皮膚を浸軟から保護しながら被覆材を滲出創傷で使用することができる。創傷接触層は、被覆材が創傷に密着するのを防ぐため賦形剤(例えばワセリン)で被覆することができる。本発明による化合物(複数可)は、例えばセルロース、ポリ乳酸、ポリビニル、アクリル共重合体などの高分子材料に組み込まれてもよく、および種々の方法で被覆材に組み込むことができる。1つの実施形態では高分子材料は、被覆材の創傷接面上の薄膜形態である。高濃度の化合物(複数可)は、酵素の高度の初期放出によるより効果的なデブリードマンを得るため、創傷床に接触する被覆材の表面上にあることが望ましい。薄膜は層形態であってもよく、またはネットで被覆されていてもよい。
【0088】
特に第三度熱傷の場合、デブリードマン酵素としてデブリラーゼを含む絆創膏を創傷デブリードマン療法において使用することができる。
【0089】
場合により滅菌担体に含まれる、上記の化合物(複数可)を含む製剤では、液状での本発明の医薬組成物を、創傷領域上に振り撒く、または創傷に適用される担体に固形もしくは液状で組み込んでもよい。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明のセリンプロテアーゼは、創傷被覆材またはテープなどの固体担体に不活性型で含まれ、および例えば創傷滲出液との接触が生じる場合には、種々の手段により上述した(プレ)プロペプチドの切断により活性化することができる。酵素活性は、滲出液の量に応じて、被覆材の推奨装用時間中持続することが好ましい。
【0091】
本発明の医薬組成物のゲル製剤は、薬学的ゲル製剤に一般的に使用される少なくとも1つのゲル形成剤をさらに含む。ゲル形成剤の例は、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー;およびカーボポールなどのカルボキシポリメチレン誘導体である。本発明に使用することができるさらなるゲル化剤は、ペクチン、ガム、アルギン酸塩、寒天およびゼラチンである。さらに、ゲルまたはエマルゲル(emugel)製剤は、保存料、抗酸化剤、安定剤、着色剤および芳香剤など、この種の製剤に一般的に使用される補助剤を含有することができる。
【0092】
別の好ましい実施形態では、組成物は化粧用組成物である。
【0093】
本発明による化粧用組成物は、非治療適用で用いる。
【0094】
化粧用組成物は、クレンジング、美化、魅力の促進、または容姿の変更のためヒトの身体に擦られ、注がれ、振り撒かれ、噴霧され、または他の方法で適用されることを意図された組成物として、用途により定義することもできる。
【0095】
本発明による化粧用組成物の特定の製剤は、限定されない。想定される製剤には、洗浄液、乳液、クリーム、ミルク、ヒドロゲルなどのゲル、軟膏、懸濁液、分散剤、粉末、固形スティック、泡、スプレーおよびシャンプーが含まれる。この目的のため、本発明による化粧用組成物はさらに、美容的に許容可能な希釈剤および/または担体を含むことができる。所望の製剤に応じた適切な担体および希釈剤の選択は、当業者の技術内である。適切な美容的に許容可能な希釈剤および担体は、当技術分野でよく知られており、およびBushellら(WO2006/053613)で言及された剤が含まれる。前記化粧用組成物のための好ましい製剤は、洗浄液およびクリームである。
【0096】
本発明の組成物の化粧品での適用は、ピーリングおよびスムースニングおよび/または瘢痕形成への介入のため酵素的に皮膚を治療することを目指している。化粧用途のための本発明の化合物(複数可)の適切な濃度は、0.0001から1%(w/v)、好ましくは0.0001から0.1%(w/v)、さらにより好ましくは0.001から0.1%(w/v)の範囲にあると考えられる。
【0097】
単独適用で適用される本発明による化粧用組成物の好ましい量は、0.1から10gの間、より好ましくは0.1から1gの間、最も好ましくは0.5gである。適用される量はまた、治療される領域のサイズによっても決まり、およびこれに適していなければならない。
【0098】
別の態様では、本発明は、最も好ましくはアジュバント療法の形態での、皮膚ピーリング、皮膚スムースニングまたは瘢痕形成による介入のための化粧用組成物を調製するための、本発明のセリンプロテアーゼ、本発明のセリンプロテアーゼのフラグメント、本発明のプロペプチド、本発明のプレプロペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞に関する。
【0099】
本発明はさらに、創傷の治療で使用するための、本発明のセリンプロテアーゼ、本発明のセリンプロテアーゼのフラグメント、本発明のプロペプチド、本発明のプレプロペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞に関する。
【0100】
化粧品および治療法での上記適用と関連して使用される本発明の化合物(複数可)を含む組成物の詳細は、上述されている。
【0101】
好ましい実施形態では、創傷は慢性創傷または治癒の遅い創傷である。
【0102】
さらなる態様では、本発明は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物において創傷の治癒を促進するために創傷を治療する方法に関し、該方法は、本発明によるセリンプロテアーゼ、そのフラグメント、プロペプチド、プレプロペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクターまたは宿主細胞を活性成分として含む滅菌組成物の治療有効量を創傷に適用することを含む。本発明はまた、創傷をデブリードマンおよびフィブリンカフを溶解するための絆創膏、被覆材またはテープのような医療品の調製または製造における、上記に列挙された本発明の化合物の使用にも関する。
【0103】
本発明はさらに、皮膚病変および/または創傷治癒障害を伴う皮膚疾患の治療に使用するための、本発明のセリンプロテアーゼ、本発明のセリンプロテアーゼのフラグメント、本発明のプロペプチド、本発明のプレプロペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明の核酸、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞に関する。このような皮膚病変および/または治癒障害の例は、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎ならびに湿疹および蕁麻疹である。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、さらなるプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、賦形剤、抗菌剤および疼痛緩和剤の群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0105】
デブリードマン処置および被覆材交換は、患者に疼痛を生じさせる可能性があり、故に鎮痛または麻酔化合物などの疼痛緩和剤を本発明の被覆材に組み込むことが好ましい場合がある。
【0106】
本発明の被覆材は、相加的または相乗的デブリードマン効果を有する可能性がある、酵素以外のデブリードマン組成物をさらに含むことができる。このような化合物の例は尿素であり得る。
【0107】
本発明はまた、本発明のセリンプロテアーゼ、もしくはそのフラグメントまたは本発明のセリンプロテアーゼのプロペプチドもしくはプレプロペプチドに特異的に結合する抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体にも関する。
【0108】
本発明による抗体は、上記本明細書に詳細に記載されるセリンプロテアーゼ(デブリラーゼ)、もしくは上述したデブリラーゼの活性を有するそのフラグメント、または本発明のセリンプロテアーゼのプロペプチドもしくはプレプロペプチドに特異的に結合する。
【0109】
本発明の抗体は、例えば、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。用語「抗体」は、結合特異性を依然として保持するこの誘導体またはフラグメントも含む。このようなフラグメントは、特に、Fabフラグメント、F(ab’)、FvフラグメントまたはscFv誘導体を含む。抗体およびそのフラグメントの産生技術は当技術分野でよく知られており、例えばHarlowおよびLane「Antibodies,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988年ならびにHarlowおよびLane「Using Antibodies:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press、1998年に記載されている。これらの抗体は、例えば、デブリラーゼまたはそのフラグメントの免疫沈降またはアフィニティー精製に使用することができる。
【0110】
本発明の抗体はまた、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体などの実施形態も含む。さまざまな手順が当技術分野で知られており、このような抗体および/またはフラグメントの産生に使用することができる。さらに、一本鎖抗体の産生について記載される技術は、上述したデブリラーゼまたはそのフラグメント等に特異的な一本鎖抗体を産生するように適合することができる。同様に、トランスジェニック動物は、デブリラーゼまたはそのフラグメントに特異的なヒト化抗体を発現するのに使用することができる。最も好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の調製には、連続細胞系培養物により産生される抗体を提供する任意の技術を使用することができる。このような技術の例には、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein Nature 256(1975年)、495〜497頁)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor、Immunology Today 4(1983年)、72頁)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.(1985年)、77〜96頁)が含まれる。BIAcoreシステムで使用されるような表面プラズモン共鳴は、上述した化合物のエピトープに結合するファージ抗体の効率を向上させるのに使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996年)、97〜105頁;Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995年)、7〜13頁)。用語「抗体」が、細胞で発現され得る抗体構築物、例えば、特に、ウイルスまたはプラスミドベクターを介してトランスフェクトおよび/または形質導入され得る抗体構築物を含むことも本発明の文脈では想定される。本発明による抗体が得られれば、抗体自体またはこれをコードするDNAを配列決定することができ、小規模または大規模に本発明の抗体を組換え産生するための情報を提供する。組換え抗体の産生方法は、当業者に知られている。
【0111】
本発明による「〜と特異的に相互作用する」と互換的に使用される用語「〜に特異的に結合する」は、抗体が類似の構造のエピトープと交差反応しない、または本質的に交差反応しないことを意味する。研究下の抗体パネルの交差反応性は、例えば、目的のエピトープおよび幾つかの多かれ少なかれ(構造的および/または機能的に)密接に関連したエピトープへの、従来条件下での前記抗体パネルの結合を評価してテストすることができる。関連した状況(例えばタンパク質構造における特定のモチーフ)では目的のエピトープに結合するが、いずれかの他のエピトープには結合しない、または本質的に結合しないような抗体が、目的のエピトープに特異的であると考えられ、故に本発明による抗体であると考えられる。対応する方法は、例えばHarlowおよびLane、1988年および1999年、前掲箇所に記載されている。
【0112】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を説明する目的で添付の図面を参照して、単に例示として本明細書に記載される。
【実施例】
【0113】
本発明を実施例により説明する。
【0114】
一般的方法および材料
ルシリア・セリカタからの種々の幼虫期のmRNAの単離
ヒロズキンバエ(green bottlefly)(ルシリア・セリカタ)からの2日齢ウジは、BioMonde社(BioMonde社、22885 バルスビュッテル、ドイツ)から購入した。全RNAの単離は、プロテアーゼの産生を増大させるため血液寒天(10%ウシ血液を含有する1.5%(w/v)寒天)を24時間給餌した後(二齢期)、および酵素の産生が著しく低下する3日後(三齢期に)行った(Chambersら、2000年、Degradation of extracellular matrix components by defined proteinases from the greenbottle larva Lucilia sericata used for the clinical debridement of non−healing wounds、Brit J Dermatol.148:14〜23頁)。全RNAの単離については3幼虫(約30mg)を液体窒素により衝撃凍結し、および機械的に粉砕した。RNAはキット「Total RNA Isolation、NucleoSpin RNA II」(Macherey−Nagel社、52313 デューレン、ドイツから購入)を用いて単離し、47μg全RNAを得た。
【0115】
ルシリア・セリカタの幼虫から単離した全RNAからの大腸菌cDNAライブラリーの作成
前記ルシリア・セリカタRNAからのcDNAライブラリーの作成は、「SMART cDNA Library Construction Kit User Manual」(CLONTECH Laboratories,Inc.社)により行った。大腸菌XL−1 Blueにおける最終ライゲーション反応およびこの後の形質転換のin vitroパッケージングにより、1.5×10一次プラーク形成単位が得られた。
【0116】
一次ファージを回収し、ならびに大腸菌でのこの後の感染およびマス切除(mass excision)のため、7%DMSOを含有するファージ安定化緩衝液で−80°Cで貯蔵した。
【0117】
対応するプラスミドライブラリーへのラムダファージライブラリーの変換は、「SMART cDNA Library Construction Kit User Manual」(CLONTECH Laboratories,Inc.社)に従い、ファージ組み込みプラスミドの「Cre」リコンビナーゼ媒介マス切除により実施した。多様性およびライブラリーの質は、制限分析によりテストした。
【0118】
ルシリア・セリカタcDNAライブラリーからのプロテアーゼの同定
上述したマス切除から得られたコロニー形成単位は、選択条件下、2%脱脂乳を含有する寒天培地でスクリーニングした。異種プロテアーゼの発現は、誘導性Placプロモーターを含むベクターにより駆動した。異種プロテアーゼを発現するコロニーは、コロニー周囲の混濁した脱脂乳培地における透明帯の形成により検出した。
【0119】
大腸菌発現培養物からのデブリラーゼタンパク質の単離および精製
酵素の特徴付けのための十分な酵素活性を含有するデブリラーゼの酵素試料を得るには、対応するプロテアーゼを発現するcDNAクローン、または例えばpET26bベクター(Novagen社)のような典型的な発現ベクターおよび例えば大腸菌Rosetta(DE3)(Novagen社)のような適切な発現宿主で構成されたより適した発現構築物のどちらかを使用した。発現構築物の構築には、対応するデブリラーゼ遺伝子をPCR増幅してオープンリーディングフレーム(ORF)の上流および下流に固有の制限酵素認識配列を導入し、発現ベクター(例えばpET26b)によりプロテアーゼをコードする遺伝子を一定方向にライゲートすることを可能にした。制限酵素認識配列は、デブリラーゼ遺伝子のコード領域での該配列の欠如に基づき選択し、および例えばNdeI、HindIII、EcoRI、XhoIであり得た。ポリメラーゼによる誤った増幅による不必要な第2の部位変異の欠如は、クローン化アンプリコンの配列決定により確認した。
【0120】
cDNAクローンまたは発現構築物は、例えば適切な抗生剤を補充した培養培地200mlを1lエルレンマイヤーフラスコに播種するのに使用した。LB培地および以下の濃度での抗生剤を使用した:100μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、クロロアンフェニコール12.5μg/ml。初めの最適密度(OD580)を0.05に調整し、細胞を旋回シェーカーで28℃の温度で増殖した。最適密度が約1の値に達したとき、pTriplEx2(Clontech社)のlacプロモーターまたはpETベクターシリーズ(例えばpET26)からのベクター由来のT7プロモーターからの発現を、20μM〜500μMの濃度でIPTGを添加して誘導した。細胞は遠心分離による誘導の4から20時間後に回収した。細胞沈殿物を5ml 1×PBS、pH7.0で再懸濁し、細胞を超音波処理により破壊した。
【0121】
デブリラーゼの分子量は、シグナル配列を含む完全タンパク質では27.4kD、仮定的プロペプチドでは25.7および成熟タンパク質では24.6である。
【0122】
線維素溶解活性に関する固相活性アッセイ
カゼイン分解クローンの抽出物における線維素溶解活性を同定するには、固形寒天アッセイを使用した。このため、200mgアガロース、87mg NaClおよび3mg CaClを含有する溶液Aを、10ml 0.1M Tris pH7.4に添加し、および50℃でインキュベートした。10ml 0.9%NaClおよび100mgフィブリン(Sigma F3879)を含有する第2の溶液Bに、20μlプラスミノーゲン(2単位/mg、Sigma P7397)を添加し、および50℃でプレインキュベートした。両方の溶液を12μlトロンビン(175〜350NIH単位、Sigma T4265)と組み合わせ、マイクロウェル形成装置を用いて寒天プレートに塗布した。線維素溶解活性の場合、空洞を含有する抽出物周囲の不透明な培地に透明帯が現れる。
【0123】
カゼイン分解クローンでの線維素溶解活性を同定するには、固形寒天アッセイを使用した。したがって200mgアガロース、87mg NaClおよび3mg CaCl2を含有する10ml 2×ルリアベルターニから成る培地Aを、50℃でインキュベートした。10ml 0.9%NaClおよび100mgフィブリン(Sigma F3879)を含有する溶液Bに、20μlプラスミノーゲン(2単位/mg、Sigma P7397)を添加し、および50℃でプレインキュベートした。両方の溶液を12μlトロンビン(175〜350NIH単位、Sigma T4265)および選択のための適切な抗生剤と組み合わせ、ならびに滅菌条件下で寒天プレートに注ぎ、不透明な寒天培地を形成した。異種クローンにより発現される線維素溶解活性の場合、一晩のインキュベーション後、コロニーの周囲に透明帯が現れる。
【0124】
液相活性アッセイおよび阻害性プロファイリング
タンパク質分解活性の定量化は、基質に使用されたBODIPY−FL−Casein(Molecular Probes社)を有する96ウェルプレートで蛍光アッセイにより実施した。ここで、未消化基質カゼインでは標識分子は互いに密着し、したがって蛍光は消光機構により抑制される。加水分解の場合、これらの分子は互いから分離し、蛍光を485nmで励起、および520nmで測定することができる。
【0125】
標準的アッセイは、100μl PBS緩衝液中5μg/ml BODIPY−FL−Caseinおよびプロテアーゼ抽出物の希釈シリーズを含有した。試料を37℃で60分間インキュベートし、以下のパラメーター、すなわち励起485nm、発光520nm、ゲイン5、1サイクル、10フラッシュを適用して蛍光を分光光度計を用いて測定した(NovoStar、BMG LABTECH社、オッフェンブルグ、ドイツ)。セリンプロテアーゼ阻害物質APMSF(4−アミジノフェニルメタンスルホニルフルオリド)およびPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)は、単離したプロテアーゼの特異性をテストするのに使用した。以下のアッセイ濃度を使用した:
PMSF=セリンプロテアーゼ阻害物質 5mmol/l
APMSF=トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害物質 1mmol/l
【0126】
以下の例は実例であるが、本発明の範囲を限定するものではない。当業者に想定される合理的な変更は本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0127】
ピキア・パストリス発現培養
本発明のセリンプロテアーゼ、すなわちデブリラーゼの異種発現は、食品医薬品局によりGRAS生物に分類され、およびしたがって医薬品産生行程が確立されているメチロトローフ酵母ピキア・パストリスにおいて行った。発現にはメタノール誘導性プロモーターを提供する組み込みベクター系を使用した。デブリラーゼの天然シグナルペプチド(「MFRFVALFAFVSCALA」)を、サッカロマイセス・セレビシエ由来のベクターコード因子シグナル配列で置き換えてピキアでの効率的な分泌を促進した。
【0128】
発酵は、最初のバッチ相において唯一の炭素源としてグリセロールを有する無機培地で行った。給餌バッチモードは、最初のバッチグリセロールの消費後に開始した。異種発現の誘導は、遺伝子発現中にインデューサー/炭素源としてメタノールを、および追加の非阻害飼料としてソルビトールを追加して開始した。
【0129】
培養物はバッチ/給餌バッチ(FB)相後に定常増殖となり、最適密度約600が得られた。誘導は、MeOHを添加して開始した。この段階で異種酵素が自己触媒的に活性化されるのを防ぐため、処理温度を30℃から20℃に低下させた。デブリラーゼの発現は、給餌により工程の最終相で支持した。プロペプチドの自己触媒的活性化は、精製手順中に、培養培地のpHを5.5から6.8に増加させることにより行った(下記参照)。
【0130】
ピキア・パストリス発現培養物からのデブリラーゼタンパク質の精製
精製は、セファロース担体材料(GE Healthcare社)に結合したセリンプロテアーゼ阻害物質ベンズアミジンを用いて親和性クロマトグラフィーにより行った。精製した非結合タンパク質の除去後、本発明のセリンプロテアーゼを、遊離ベンズアミジンを添加した緩衝液を用いて競合的溶出により回収した。下流手順のSDS PAGEは図6に視覚化されている。クエン酸貯蔵緩衝液に対するこの後の透析後、精製タンパク質を凍結乾燥し、および白い乾燥粉末として表示した。
【0131】
組換え発現デブリラーゼのN末端配列決定
エドマン配列決定のため、ブロットを試料調製カートリッジに取り付けた。アミノ酸配列の決定には、タンパク質シーケンサーProcise 492(Applied Biosystems社)を使用した。試薬およびプロトコルは、製造者により助言されたように適用した。得られたクロマトグラムは、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社)を用いて分析した。各試料の前に標準試料およびブランクを流した。
【0132】
[実施例1]
ルシリア・セリカタから作成した発現ライブラリーでのプロテアーゼのスクリーニング
8×10個の一次クローンのファージライブラリーをプロテアーゼの発現についてスクリーニングした。この目的のため、「SMART cDNA Library Construction Kit User Manual」(CLONTECH Laboratories,Inc.社)に従い、ファージライブラリーをf1型ヘルパーファージによる大腸菌の共感染によりプラスミドライブラリーに移した。得られたコロニーは、ファージベクターから切除された内因性プラスミドを有する。
【0133】
プラスミドライブラリーの多様性は、代表的なクローンからの40個のプラスミドの単離によりテストした。事実、どのプラスミドもインサートを有し、これらのインサートはサイズで完全な多様性を示した。合計で、3×10cfuを選択条件下で2%脱脂乳を含有する固体培地でスクリーニングした。
【0134】
16個のこれらのハロ−形成コロニーからのプラスミドDNAの単離および配列決定により、サルコファガ・ブラタ由来のトリプシン様酵素とアミノ酸レベルで76%同一性を有するプロテアーゼのプレプロペプチド配列を同定した(配列番号2)。
【0135】
[実施例2]
線維素溶解プロテアーゼの特徴付け
線維素溶解活性の同定は、上述した寒天プレートアッセイで実施した。線維素溶解活性を発現するコロニーは、濁ったフィブリン基質を含有する栄養寒天で組換え細胞をストリークして同定した。同定したプロテアーゼを有するプラスミドを保有する細胞は、37℃で一晩のインキュベーション後、コロニーの周囲に透明帯を示した。
【0136】
無細胞粗抽出物での線維素溶解活性は、フィブリンを含有する緩衝寒天培地を用いて判定した。プレートは、最大200μlの容量を有するウェルを含有し、寒天培地の固化中にマイクロプレート装置を用いて形成した。組換え細胞を超音波処理し、得られた抽出物を遠心分離し、寒天ウェルに入れ、一晩37℃でインキュベートした。線維素溶解活性を有する粗抽出物を、配列番号1のプロテアーゼ遺伝子を有する組換えクローンのマイクロウェル周囲の透明帯により検出した。
【0137】
[実施例3]
線維素溶解プロテアーゼのプロファイリング
組換えプロテアーゼタイプは、種々のタイプのプロテアーゼに特異的な阻害物質を用いて96ウェルプレートでの液体アッセイで同定した。本明細書では、トリプシン(4−アミジノフェニルメチルスルホニルフルオリド、APMSF)、セリン(フェニルメチルスルホニルフルオリド、PMSF)、アスパルチル型(ペプスタチンA)およびメタロ型プロテアーゼ(1,10−フェナントロリン)に対する特異的阻害物質を測定した。図3Aに示したように、組換えクローンの阻害物質プロフィールはトリプシン型活性を示唆する。これは、BLASTデータベースによる配列番号2の比較アミノ酸配列アライメントデータに対応し、サルコファガ・ブラタ由来の酵素との最も近い相同性が76%であることを示す(図5)。
【0138】
[実施例4]
種々のpH値での安定性
デブリラーゼの活性は、3〜10(0.1から0.2Mクエン酸緩衝液、pH3〜7;0.05Mトリス緩衝液、pH8;0.1M炭酸塩緩衝液、pH9〜10)の範囲および蛍光発生基質Z−Gly−Gly−Arg−AMCで適切な緩衝液系を用いて液体アッセイで測定した。7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)の放出は、BMC Novostar蛍光光度計(λ励起365nm、λ発光440nm)により測定した。結果を図3Bに示す。デブリラーゼは、創傷環境の同様に幅広いpH範囲と一致する5〜10のpH範囲で酵素活性を示す。
【0139】
[実施例5]
PAR2(カルシウム画像)の活性化
PAR2のアゴニストとしてのデブリラーゼの活性は、ヒトPAR2を内因的に発現する野生型HEK293細胞系の使用により細胞ベースの蛍光アッセイで経時的にモニターした。簡単には、アッセイを実施する1日前に、ヒトPAR2を発現するHEK293細胞を96ウェル、ブラックウォール、アッセイプレートに、1ウェル当たり45,000細胞の密度で播種した。96ウェルマイクロプレートリーダー(FlexStation(登録商標)、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、細胞カルシウム濃度の変化をカルシウム感受性蛍光色素fluo−4(励起494nm、発光516nm)の使用によりモニターした。PAR2アゴニストトリプシン(8nM)は陽性対照に使用した。プレート中の色素負荷細胞を蛍光マイクロプレートリーダーに入れて、アゴニストを追加した50μlアッセイ緩衝液(118mM NaCl;4,7mM KCl;1,2mM MgSO;1,2mM KH PO 4,2mM NaHCO;1,3mM CaCl;10mM HEPES(pH:7.4)の添加後の蛍光(励起488nm、発光520nm)変化をモニターした。カルシウム動員は、ベースラインレベル(F)に対するピーク蛍光(ΔF)の変化として定量化した。データは、反復独立試料のΔF/F値(=RFU、相対蛍光単位)の平均S.E.として表した。分析はFlexStation(登録商標)のソフトウェアにより行った。
【0140】
[実施例6]
成熟デブリラーゼの最初の10個のアミノ酸の配列
本例の目的は、N末端エドマン配列決定により最初の10個のアミノ酸の配列を決定することである。試料(図6Bからのタンパク質、レーン5)は、N末端からの配列決定に成功した。以下の主な配列を検出した:
IVNGVDTTIQ
これは、一次配列の分析により提案された成熟タンパク質に対応する(図5A)。
【0141】
[実施例7]
デブリラーゼの分子および酵素特性
【0142】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のi〜ivのいずれか:
(i)フィブリンおよびカゼインを切断する能力を有するセリンプロテアーゼであって、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼをコードする核酸分子;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼをコードする核酸分子;
(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または
(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子
である、セリンプロテアーゼ、
(ii)(i)のセリンプロテアーゼと同じ活性を有する、(i)のセリンプロテアーゼのフラグメント、
(iii)創傷の治療の直前または治療中に活性型に切断される、(i)のセリンプロテアーゼのプロペプチドであって、
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼプロペプチドをコードする核酸分子;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼプロペプチドをコードする核酸分子;
(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または
(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子
から選択される核酸分子によりコードされるプロペプチド、または
(iv)(i)のセリンプロテアーゼのプレプロペプチドであって、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むもしくはから成るセリンプロテアーゼプレプロペプチドをコードする核酸分子;
(b)配列番号1のヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(c)アミノ酸配列が(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一;好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるセリンプロテアーゼプレプロペプチドをコードする核酸分子;
(d)(b)のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むもしくはから成る核酸分子;
(e)(d)の核酸分子に関して縮重した核酸分子;または
(f)(a)から(d)のいずれか1つの核酸分子に対応し、TがUで置き換えられている核酸分子
から選択される核酸分子によりコードされるプレプロペプチド
をコードする核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸分子をコードするベクター。
【請求項3】
請求項2に記載のベクターで形質転換、形質導入またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項4】
セリンプロテアーゼ、そのフラグメント、プロペプチドまたはプレプロペプチドの製造方法であって、請求項3に記載の宿主細胞を培養し、生成されたセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチドまたはプレプロペプチドを単離することを含む上記方法。
【請求項5】
請求項1に記載の核酸分子によりコードされる、または請求項4に記載の方法により製造されるセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、またはプレプロペプチド。
【請求項6】
請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、またはプレプロペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のベクター、請求項3に記載の宿主細胞、請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、もしくはプレプロペプチド、または請求項6に記載の融合タンパク質、またはその組み合わせを含む組成物。
【請求項8】
化粧用組成物である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
医薬組成物である請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
皮膚ピーリング、皮膚スムースニングまたは瘢痕形成による介入のための化粧用組成物を調製するための、請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のベクター、請求項3に記載の宿主細胞、請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチドもしくはプレプロペプチド、または請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
創傷の治療に使用するための、請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のベクター、請求項3に記載の宿主細胞、請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチドもしくはプレプロペプチド、または請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
創傷が慢性創傷または治癒の遅い創傷である、請求項11に記載の核酸、ベクター、宿主細胞、セリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、プレプロペプチドまたは融合タンパク質。
【請求項13】
創傷治癒障害を伴う皮膚疾患を治療するための、請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のベクター、請求項3に記載の宿主細胞、請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチドもしくはプレプロペプチド、または請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
さらなるプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、賦形剤、抗菌剤および疼痛緩和剤の群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項5に記載のセリンプロテアーゼ、フラグメント、プロペプチド、またはプレプロペプチドに特異的に結合する抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−519007(P2012−519007A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552363(P2011−552363)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001328
【国際公開番号】WO2010/099955
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503442204)ブレイン・バイオテクノロジー・リサーチ・アンド・インフォメーション・ネットワーク・アクチェンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】BRAIN Biotechnology Research and Information Network Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】